第11回社会保障審議会年金部会(議事録)

日時

令和5年12月26日(火)14:00~16:00

場所

東京都千代田区平河町2-4-2

全国都市会館 3階 第2会議室

出席者

会場出席委員

菊池部会長   玉木部会長代理   小野委員   駒村委員   小林委員   是枝委員   佐保委員

島村委員   永井委員   原委員   百瀬委員

オンライン出席委員

権丈委員   たかまつ委員   嵩委員   平田委員   深尾委員   堀委員

井上参考人(出口委員代理)

議題

(1)国民年金における育児期間の保険料免除について

(2)標準報酬月額の上限について

議事

議事内容

○総務課長 ただいまより、第11回「社会保障審議会年金部会」を開催いたします。

 皆様、お忙しいところをお集まりいただきありがとうございます。

 初めに、本日の委員の出欠状況を報告します。

 出口委員、武田委員から御欠席の連絡をいただいております。また、たかまつ委員がまだオンラインに入られていないようです。

佐保委員、たかまつ委員につきましては、所用により途中退席されると伺っております。

 御欠席の出口委員の代理として、日本経済団体連合会の井上様に御出席いただいております。井上様の御出席につきまして、部会の御承認をいただければと思います。いかがでしょうか。

(首肯する委員あり)

○総務課長 ありがとうございます。

 権丈委員、たかまつ委員、嵩委員、平田委員、深尾委員、堀委員、井上様はオンラインでの参加となります。

 出席委員が3分の1を超えておりますので、本日の会議は成立しております。

 続いて、資料の確認をいたします。本日の部会はペーパーレスで実施しております。傍聴者の方は厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。

 本日の資料は、資料1「国民年金における育児期間の保険料免除について」、資料2「標準報酬月額の上限について」を事務局で用意しております。

 事務局からは以上でございます。

 以降の進行は菊池部会長にお願いいたします。

○菊池部会長 皆様、こんにちは。師走も押し迫った大変お忙しい中、お集まりいただきましてどうもありがとうございます。

 カメラの方はここで御退室をお願いいたします。

(カメラ退室)

○菊池部会長 それでは、早速、議事に入らせていただきます。

 本日は「国民年金における育児期間の保険料免除について」、そして「標準報酬月額の上限について」。この2つを議題といたします。それぞれ分けて議論をしていただきます。

 では、まず、事務局から資料1について説明をお願いします。

○年金課長 年金課長でございます。資料1を御覧ください。

 今回のテーマである「国民年金における育児期間の保険料免除」については、本年6月26日の年金部会で一度御議論いただきました。その後、政府部内で子育て支援策全体の検討が進みまして、先週22日に「こども未来戦略」が閣議決定され、その中にこれも盛り込まれています。本日は、6月の年金部会の議論を踏まえて具体的に制度設計したものをご用意しています。

 まず2ページです。こちらは現行制度の内容ですが、国民年金、厚生年金のそれぞれについて、産前産後期間や育児期間の免除がある中で、今般、国民年金の育児期間についての免除措置、赤い部分を新設することで考えています。

 3ページは、具体的な制度の要件等をまとめた案です。

 まず、対象者や要件について6月部会での議論を踏まえて整理しています。

対象者については、子を養育する国民年金第1号被保険者について、父母ともに、養父母を含む形で措置の対象とすることで考えております。これは、育児休業制度あるいは厚生年金の保険料免除制度において、夫婦ともに育児休業を取得した場合はともに免除になることを参考にしています。

 要件については、所得要件や休業要件は設けないこととしています。こちらは、今回の対象者である第1号被保険者の皆様が、自営業・フリーランス・無業者など様々な就業の形態や所得の状況がある中で、そういった多様な実態を踏まえて、こういった要件は設けないことで考えています。

 それから、免除期間の考え方については、子が1歳になるまでを今回の免除の対象期間としています。実母の場合は産前産後免除が適用されますので、この場合には終了後に引き続く9か月間が対象期間になります。こちらは、現行の育児休業制度、育児休業給付の対象期間が原則として子が1歳に達するまでということを踏まえたものです。

 年金額については、対象期間中の基礎年金額は満額が保障されます。

 その下がイメージ図で、実母の場合は右側ですが、産前の1か月、産後の3か月間の免除に引き続く形で、1歳までの9か月間が今回新設される免除になります。

 左側は実父あるいは養父母の場合で、この場合は産前産後免除の対象外になりますので、12か月ということになります。

 それから、対象となる子の範囲ですが、現行の厚生年金の免除と同様の範囲で考えておりまして、法律上の親子関係がある子である実子及び養子に加えて、特別養子縁組の監護期間にある子と、養子縁組里親に委託している要保護児童も対象として含んでいます。

 続いて4ページは今回の措置に要する費用の財源についてです。

 この資料は、12月11日に、こども家庭庁に置かれた支援金制度の具体的設計に関する大臣懇話会に提出されたものです。

 この中で、今回のこども・子育て政策の全体像と費用負担のスキームがあり、新たな特別会計として「こども・子育て支援特別会計」を設置することとされています。その中では「こども・子育て支援納付金」を歳入として、それを充当する事業が整理されています。

 特別会計全体の中に、右側にある「こども・子育て支援勘定」が新たに設けられて、そこの歳入に「こども・子育て支援納付金」があり、これを充当する事業として、今回の国民年金の保険料免除措置が挙げられています。

 今回の措置の財源としてこの支援金を充当する考え方について、次の5ページを御覧ください。

 まず、支援金の財源ですが、「こども未来戦略」では、少子化対策に充てる費用は、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯して拠出する仕組みを新たに設けるとされています。具体的には、医療保険者に支援金を徴収していただいて、それを充てることで整理されています。

 この支援納付金を今回の育児期間免除に充当する考え方については、その下に現行制度と比較する形で整理しています。まず、既存の免除の仕組み、左側の薄い色の点線で囲った部分ですが、厚生年金の産前産後休業あるいは育児休業については、明確に休業あるいは所得の減少が生じることが免除要件になっています。それから、国民年金の産前産後期間の免除についても、こちらは母体保護の観点で措置を講じていますが、この期間に所得を得ることは一般的に困難であって、所得の減少が生じることが予想されます。これらの既存の免除措置については、こういった所得の減少を前提に、被保険者間の支え合いという形で、保険料財源を使って免除分の保険料に相当する額を充てています。これが現行の仕組みです。

 これに対して、右側の今回新設する育児期間の免除については、先ほどの要件とも関わりますが、第1号被保険者の多様な実態を踏まえると、所得の減少を把握して免除を行うのは困難ではないかと考えています。したがって、今回は所得要件を問わないことにしており、この点で既存の免除とは考え方が異なるものと考えています。

 そのことについて整理したものが矢印の下になります。繰り返しになりますが、今回の育児期間の保険料免除は、既存の各制度による免除とは異なり、必ずしも所得の減少が生じない方を含めて広く支援の対象とします。そういう意味で、従来の免除のように、被保険者間の支え合いという考え方で財源を捻出することにはなじまない面があるのではないかと考えています。加えて、今回の施策は、政府全体として子育て支援策を強化する中で、育児支援措置の一環として実施すると位置づけることがふさわしいと考えられ、これらのことから、措置に必要な費用については今回の支援金を充てることとしています。

 以上について案という形でまとめたものが6ページです。

 改正の概要としては、第1号被保険者について、その子が1歳になるまでの間、国民年金の保険料免除措置を創設するもので、これは国民年金法の一部改正になります。

 要件については、繰り返しになりますが、父母を対象にするとともに、所得要件や休業要件は設けないこと、期間は子が1歳になるまでとして、その期間の基礎年金は満額を保障します。また、財源についても先ほど御説明したとおり、「こども・子育て支援納付金」を充てます。

 最後に、施行時期については、2026年度中に実施することで実務面の準備も含めて検討しています。

 それから、今回の措置の対象者ですが、推計で約19万人を見込んでいます。

 本日の御議論を踏まえて、法案提出に向けて準備を進めてまいりたいと考えています。

 以下は参考資料で、8ページから12ページまでは、前回6月の年金部会で御議論いただいた時と同じ資料です。対象者、対象期間、あるいは給付への反映について御議論いただきました。

 13ページは、6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」で、赤の部分に記載があります。

 14ページは、先週閣議決定した「こども未来戦略」です。上段にありますが、2026年度に施行するため、所要の法案を次期通常国会に提出するとされており、準備を進めてまいります。また、支援納付金の考え方については、その下の部分の(別紙)から抜粋しており、新たな特別会計を設置して支援納付金を充当する事業として今回の措置が挙げられています。

 15ページは、6月の年金部会で議論いただいた際のご意見を事務局で整理したものです。

 資料は以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、皆様から御意見・御質問をいただければと思います。

 まず、いつものように会場から伺いたいと思いますが、佐保委員、途中退席とのことですが、大丈夫ですか。

○佐保委員 まだ大丈夫です。15時40分ぐらいには。

○菊池部会長 分かりました。

 それでは、是枝委員どうぞ。

○是枝委員 国年の保険料免除の期間の話と、あと、捕捉率の話をさせていただきます。

 まず、期間についてですが、支援金を用いて国年の第1号被保険者だけに免除を行う、財源を充てる形になりますので、やはり厚生年金との公平性については意識すべきだと思います。今回の案は、母に13か月、父に12か月で、計25か月の保険料の免除を与えるもので、厚生年金被保険者の夫婦の平均的な産休・育休期間と比べても長い期間となっており、この点は公平性に疑問があると思っております。支援金を用いて厚生年金の被保険者以外からも広く財源を集めて次世代育成支援を行う理念は理解できますが、そうであるならば、いずれは厚生年金被保険者も含めた共通の育児期間の保険料軽減制度をつくっていくことが望ましいと考えております。

 2点目として、現行の産前産後の国民年金の保険料免除の捕捉率が非常に低い点について指摘させていただきます。第5回年金部会で現行の産前産後の国民年金の保険料免除の適用者数のデータが示されました。これと、国民健康保険における出産育児一時金の適用件数を照らし合わせることで、国年の第1号の女性が出産した際に保険料免除をどのぐらい受けているかという捕捉率が推計できます。すると、2020年度末において約3万人が国民年金の産前産後の保険料免除を受けられるはずですが、実際には1万人ほどしか免除を受けていない状態で、3割ほどしか捕捉されていないと推計されます。厚生年金においては、健康保険の出産育児一時金の件数と、女性の産休・育休の保険料免除件数がいずれも約40万人で一致しており、大規模な適用漏れはなさそうです。

 年金局に1点質問、1点お願いになります。

 まず、現行の産前産後の国民年金の保険料免除の捕捉率について認識されているか。そして、捕捉率向上のための取組を行っているようであればそれをお答えいただきたいと思います。

 もう一点はお願いで、新たな制度として育児期間の国民年金の保険料免除を設けるのであれば、必要な人にきちんと支援が届けられ年金受給権につながるよう対策をお願いいたします。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、御質問についてお願いします。

○年金課長 御質問ありがとうございます。

 まず、捕捉率についての数字ですが、先生から3万人が対象となるべきところを1万人とご指摘いただいた点は、本来は10万人が対象となるべきところを3万人とみております。

○是枝委員 年間の対象者数は10万人ですが、免除期間が4か月なので、年度末時点の対象者数はその3分の1で3万人程度ということです。

○年金課長 私どもも同じ認識を持っておりまして、おっしゃったとおり、今、産前産後休業を利用されている方が年間で約3万人いらっしゃいますが、国保の一時金は約10万人が支給されています。そういう意味で、その差分は、本来なら産前産後免除の対象者になっている可能性が高いとみています。

 これについては、何よりも周知に努めるということだと思っており、パンフレット等の一般的な周知に加えて、例えば来年3月からはスマホを使った申請ができる仕組みを導入します。なるべく多く使っていただきたいところであり、特に今後、育児期間中の免除が始まりますので、御指摘を踏まえて周知への取組強化を図っていきたいと考えております。

○菊池部会長 よろしいでしょうか。

○是枝委員 はい。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、佐保委員、どうぞ。

○佐保委員 ありがとうございます。

 この間、こども未来戦略会議には連合として参画しており、とりわけこども・子育て支援金制度について、様々な政策の財源確保について前例となる懸念があること、社会全体でこども・子育てを支える考えに基づき、税や財政全体の見直しなど、幅広い財源確保策を検討すべきであることを主張してまいりました。連合としては、財源については引き続き同じスタンスではあるものの、本日はあくまでも年金部会であるため、国民年金における育児期間の保険料免除の導入に対しての意見を申し上げます。

 この間も申し上げているとおり、全ての労働者への社会保険の適用を目指すに当たり、勤務先や雇用形態等により社会保険の適用有無が変わる現行制度は不合理であり、社会保険のさらなる適用拡大が求められます。

 このような点も踏まえ、とりわけ同じ雇用労働者でありながら企業規模を満たさない事業所や非適用業種、5人未満を雇用する個人事業所など、勤務先の規模や業種などにより被用者保険の適用となっていない第1号被保険者について、本日提案いただいた育児期間に係る保険料免除措置を創設する方向性には賛同します。

 ただ、休業要件や所得要件を設けないことによる公平性、子が1歳になるまでとする期間の妥当性、さらに、被保険者間の支え合いという考え方とは異なり、年金保険料とは別の財源を第1号被保険者の保険料免除に恒久的に充当することの是非については十分な議論が尽くされていないと考えます。

 本日提案された制度が施行されたとしても、国民健康保険料の免除の在り方や財源も含め、国民が広く納得できる制度の構築を目指し、引き続き議論を行うことを要望します。

 私からは以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 駒村委員、お願いします。

○駒村委員 今、佐保委員、是枝委員とお話しされた部分とかなり類似した部分を指摘しておきたいと思います。

 まず、国民年金の育児期間中にこういう負担軽減をすることは賛成です。実務上、休業要件、所得減少要件をつけないのもやむを得ないのかなとは思います。そこは仕方がない部分もあるかなと思う一方で、公平性の点からどうなのか。これは考えてみれば子供に着目した給付になるわけですので、子供がいる自営業に対して現金をあげる代わりに保険料免除という形で給付を上げているようなものだというふうに映ります。そうすると、夫婦2人そろっている場合、12か月プラス産前産後を仮に抜いたとしても9か月掛ける2人分掛ける1万7000円を免除すると、35~36万円免除をする、国民年金保険グループ内で給付を行う。

 これは総額がどのぐらいなのか、後で教えてもらいたいのですけれども、どこか資料があったかどうか、見ているのですが、仮に10万人の新生児が対象、80万人が産まれるうちの10万人が自営業の家だとすると、360億円ぐらいの給付が国民年金の第1号の勘定に入ってくる。それに対して、厚生年金グループは既に免除されている。この免除は自身の保険料から捻出しているわけでありますので、普通に考えれば別財源からもらう。子供を着目して出すならば、恐らく去年産まれた子供が70万人、使用者側にいるとすれば、同額のお金を出せば2500億円ぐらい、こちらの厚生年金財源も頂いてもおかしくないのではないかなと、バランス上、そう見えるわけです。

 もちろん、今回の支援金がこの年金だけで議論する性格のものではないのかもしれませんけれども、やはりこの年金に着目してしまうと、どうしても、今、お二人の委員がお話しされたように、不公平感が残る感じは否めないかなと思いますので、その辺をどう整理されたか、教えていただきたいなと思います。

 以上です。

○菊池部会長 お問合せであると思いますが、いかがでしょうか。

○年金課長 まず対象者については、私どもは約19万人を見込んでおります。これはどういう計算かというと、先ほど是枝先生からお話がありましたとおり、国民健康保険の出産一時金を約10万人の方が受給されています。その方々は基本的に第1号被保険者であろうという想定の下、そのまま今回の育児期間の保険料免除を利用されると考えて、加えて今回は父母ともに対象になるので、その倍で約19万人という想定です。

 要する費用については、保険料の定額分に月数を掛けたものになりますので、2026年施行に向けて改めて予算の整理はしますが、おっしゃったとおり、300億円から400億円ぐらいの範囲内ではないかと見込んでいます。

 それから、財源の整理は、資料の5ページで、なぜ今回の措置については、保険料の引上げではなくて支援金を充てるのかという点を整理させていただいたものです。

 政府全体の方針として広く少子化対策の費用を用意する中で、第1号被保険者の方については通常の免除と違って、所得要件の設定が難しいことから、厚生年金の育児期間中のように保険料引上げによる財源を用いた免除とはなじまないのではないかという整理をさせていただいたところです。

 それに対して、ご指摘の考え方もあると思っておりますし、今後も議論していく面はあると思いますが、今回についてはこういう形で整理させていただきたいと考えております。

○菊池部会長 よろしいでしょうか。

○駒村委員 一応、考え方だけ指摘しておきたいと思いますので、それはまた議論があるのかもしれませんので、よろしくお願いいたします。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 小林委員、お願いします。

○小林委員 御説明、ありがとうございました。国民年金に関する免除についても、本来であれば、厚生年金と同様に、休業の取得と所得の減少を要件とする制度にすべきと考えますが、その場合、確認に要する事務負担やコストが施策理念の公平性をはるかに超えた膨大なものになると思われます。そうした費用対効果を踏まえて、許容範囲であるならば、要件を設けない今回の御提案もやむなしと考えております。

 なお、本制度の施行後においては、保険料を免除された人数や、その総額等のデータ及び免除期間中の就労状況についても、分かる範囲で当部会に御報告いただき、ある程度のチェック機能を果たせるようにしていただければと思っております。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 小野委員、お願いします。

○小野委員 ありがとうございます。私も財源を確保した施策と考えられることとか、基礎年金の将来の給付水準に影響しそうにないこととか、あるいは就業や収入の状況を実務的に把握できないといった前提等を踏まえますと、実施するなら御提案のような形になるのだろうと思っております。

 ただ、御指摘いただきましたが、こども・子育て関係の政策における国民年金と厚生年金との財源対策がばらばらなのはやはり気になります。これを含めまして、前にも申し上げましたが、現在の財政構造や、事務局が提案されているスライド調整期間の統一の下での、各制度において今後検討していく制度改定が互いの制度に与える影響と財源の在り方について整理していくことは必要だと感じます。

 それと、今の御議論を聞いていて1つ確認させていただきたいのですが、この支援は免除した対象者に対して国民年金の保険料を拠出時に補助するということなのか、あるいはそれを給付時に補助するといいますか、支弁するような形なのかが、積立金等への影響も出てくると思いますので、一応確認させていただきたいと思いました。

 以上です。

○菊池部会長 今の点、いかがでしょうか。

○年金課長 具体的な財源の流れになりますが、今回新しく特別会計が設けられて、そこに支援納付金が歳入として立てられます。それから、歳出として国民年金保険料の免除措置があり、この新しい特別会計から年金特会への繰入れが行われます。年々に免除された方々の保険料に相当する部分については、その年に支援納付金が充当されますので、いわば拠出時ということになります。

 給付については、通常どおり国庫負担割合が2分の1で、将来になりますが、国庫負担がついた形で給付されることになります。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 ここでたかまつ委員が途中退室されるということですので、よろしければお先に御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。

○たかまつ委員 すみません。ありがとうございます。申し訳ございません。たかまつです。よろしくお願いします。

 申し訳ないのですけれども、次の仕事の関係で先に退室しますので、私から先に意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、国民年金における育児期間の保険料免除についてお話しさせていただければと思います。

 今回御提示いただいた案は、国民年金における育児期間の保険料免除については1年間ということですけれども、第1号被保険者の方の子育て支援のためには私自身は必要な制度だと思いますが、厚生年金の場合は、休業した場合、最長3歳まで取得できるということなので、将来的には3歳まで延長するようなことも私としては御検討いただきたいなと思っております。

 それは、第1号被保険者の方は一般的に賃金が低く、生活に苦しい方も多くいらっしゃると思われますし、厚生年金の場合は育児休業給付金も給付されます。こういうものも第1号被保険者の方は適用されないため、子育てに対する給付や支援がないので、対象期間を延ばすことがひとつ、子育て支援として御検討いただきたいなと思っております。

 また、今回は国民年金におけるということですけれども、厚生年金において、会社の経営者とかが育児・育休制度がないために保険料免除ができない点についても、子育て支援のために制度の変更を御検討いただきたいなと思っております。

 すみません。あと、途中で抜けさせてもらうので、標準報酬月額の上限についてもお話しさせていただければと思っています。

 標準報酬月額の上限については、私自身はより高い等級を設置することにはいいと思っております。賛成しております。

 私は、上限について特に逆に設ける必要はないと考えています。それは、年金財政はこれから少子高齢化により悪化することが予測される中で、所得が高い人や余裕がある人により保険料を負担してもらうことによって年金財政を安定させる。それを運用させて、厚生年金全体の将来の受給の金額を上げていくことは重要だと考えているからです。本人にとっても、将来的な受給金額が増えるので、いいことだと思っています。

 私は、世代間格差をより縮小していくことが若者世代にとって不可欠だと考えているので、将来の世代の所得代替率が上がるためにも、こちらは検討してもよいのではないかと考えています。

 以上になります。すみません。先に発言させていただきましてありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、会場に戻ります。いかがでしょうか。

 百瀬委員、お願いします。

○百瀬委員 私からは2点申し上げたいと思います。

 1点目は、利用率を高める対策の必要性についてです。これは既に是枝委員がおっしゃっていたことと重なりますが、すでに実施されている産前産後免除は、利用率が低く、相当の申請漏れがあると考えられます。この状態で育児期間免除を導入したとしても、同じように申請漏れが生じると思います。特に育児時間免除は女性だけではなく男性も対象になりますので、利用率がさらに悪化することが予想されます。それゆえ、利用率を高めるための対策を取っていただきたいと考えております。

 先ほど国民に対するパンフレット等による周知という御回答がありましたが、恐らくそれだと対象者にはほとんど届かないのではないかと思います。国民健康保険と連携する、市区町村や保健センターと連携するといったように、対象者に直接届く、あるいは対象者に直接利用を促せるような仕掛けが必要になってくると思っています。これが1点目です。

 2点目は、育児期間免除の対象者についてです。資料を見ると、育児期間免除については、基本的には子供が産まれたときに第1号だった人が、そのまま子供が1歳になるまで第1号であることが想定されているように思います。しかし、実際には途中で被保険者種別が変わるケースもあります。例えば子供が産まれたときに第1号だった方が、6か月後に正社員で株式会社に採用された場合は第2号になります。このケースでは、育児期間免除は終了します。

 一方で、この方の就職先が厚生年金の非適用業種の個人事業所の場合、フルタイムで働いていても育児期間免除が継続されます。同じフルタイムで雇われて働きはじめたのに育児期間免除が続いたり続かなかったりすることに違和感を覚えます。

 また、たかまつ委員が先ほどおっしゃっていたように、第1号被保険者は育児休業や育児休業給付金を利用できないことが一般的です。ただし、実際には個人事業所で雇われて働く人の場合、国民年金は第1号であっても、雇用保険に加入していて育児休業給付金を受け取ることができる場合があります。育児期間免除の仕組みでは、こうした方と、育児休業給付金を受け取ることのできない自営業者やフリーランスの方が同じ条件で免除対象になります。この点にも違和感を覚えます。

 この違和感の正体が何なのだろうと考えた場合、育児期間免除の仕組みに問題があるというよりも、フルタイムで雇われて働いているのに国年の第1号になっている人がいることが、違和感として現れてしまっていると考えられます。この仕組みを導入するのであれば、個人事業所への厚生年金の適用拡大への取組がより一層求められるのではないかと思っております。

 私からは以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 原委員、どうぞ。

○原委員 はい、私からは特に大きな事はないのですが、6ページにあるように、年金の第1号被保険者で父母ともに対象とすることや、所得要件や休業要件を設けないということもありますので、期間については、やはり最初の原則であった子供が1歳になるまでというよいかと思います。ところから制度設計を検討していくのがいいのではないかと思います。また、いろいろなケースも想定されるので、そういった事例を事前に想定して分かりやすい情報発信をしていくことが大切かと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 いかがですか。ほかには特によろしいですか。

 それでは、オンラインの皆様からお願いしたいと思いますが、挙手機能で合図をお願いいたします。いかがでしょうか。

 平田委員、お願いします。

○平田委員 すみません。ありがとうございます。

 私は今回、この案に賛成です。いろいろな公平性等の問題もありましょうし、また実際、育児期間中に高い所得を得られる人も含まれると思いますけれども、公平性よりも、必要な人に必要な支援が行き届いて、その方がその措置によって、フリーランスを選びやすくなったり、就労し続けることができる。働き方の多様化が進んで、みんなが労働参加できる。支え合いの社会をつくる。この礎になっていくことのほうが大事なのではないかなと思っております。

 また、父母に関しても、母のみとすると、やはり育児は母の責任という意識を何となく強化してしまうことにつながる。こういったことを避けるためにも、男女ともということにも、賛成をしております。

 ただ、両親ともに国民年金保険料を免除することの目的をしっかりと伝えていくことはとても大事だと思います。男性の場合、免除されても働き続けることに、やはりなりやすいと思います。つまり保険料免除が共働き・共育て、これは大事なことだと思いますが、ここにつながりづらく、こども・子育て支援という本来目的が薄れてしまうことが起きてしまうことは、避けたいと思いました。

 また、告知手段としては、フリーランス協会さんなど、民間の支援団体があると思います。そういったところにアナウンスをお願いすると、必要な人にダイレクトに届くし、皆さんが使いたがる、欲しい情報なのではないかなと思いました。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 権丈委員、お願いします。

○権丈委員 6月の第5回年金部会でこの問題を扱ったとき、制度設計は難しいと言っていて、あのときは難しいとしか言っていなかったわけですけれども、やはり難しいですね。

 国民年金の場合だけ、財源としては支援金を使うわけですね。支援金は再分配政策の財源であって、一般論として、この再分配政策について言っておくと、この話は4月に開かれたこども未来戦略会議の第1回で話したことですが、再分配政策は薄く広く負担してもらうために、受益者よりも負担者の数が圧倒的に多い政策なのです。人間は価値を感じることには喜んでお金は出すのだけれども、出したお金の使途に納得がいかないときには革命さえ起こす生き物だ。再分配政策は費用負担者の意向を酌み取って、受益者はもちろんなのだけれども、そして、できれば協力者として支える人たちの満足感高揚を高めるような制度を設計する工夫の余地がある、極めて政治の力量が強く問われる政策なので、大いに頑張ってくださいということをこども未来戦略会議の第1回で話しているわけですが、人間は経済学が想定するような利己的な存在ではなくて、むしろ、再分配とか贈与によって効用が高まる生き物のようなのですけれども、その変化する高揚の行程は給付設計の在り方に依存すると見ています。

 私としては、こども・子育て支援は多くの人が進んで、1口と言わずに何口も、もっと言えば、多くの人たちが遺産を寄附したくなるような給付設計にできるとは思うのだけれども、政治家が陳情を聞いて得票率極大化行動の下に決めていく給付の在り方は、恐らく費用負担者が進んでお金を出してもよいと考える給付の在り方とは違う。そこを調整していくのが官僚の仕事だと私は位置づけているわけですが、制度設計で皆さんが関与することができる側面では、最近では年金でも年収の壁支援強化パッケージとかという形で、年金局そのものがなかなか関与することができないわけですけれども、これからも頑張ってください。

 そして、今日、いろいろな意見、不公平とか、いろいろな意見が出てきたわけですけれども、これはある決まった方向性で今日は提示されているわけですが、これからいろいろと検討していく余地、そして、皆さんが関与することができる側面では、ぜひとも今日の意見を反映させた形で、みんなが進んで財源を協力したくなるという世の中の人たちの社会適合性を高めるような再分配制度をしっかりつくってくださいというエールを送って終わりたいと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 井上参考人、お願いします。

○井上参考人 ありがとうございます。

 本件は既に22日のこども未来戦略会議で閣議決定されていますので、これは次元の異なる少子化対策の一環という、ある程度割り切りが必要だと思います。6月にも年金として考えた場合の意見を申し上げたのですが、第1号被保険者とはいえ、子が1歳になるまで男女とも働かないというイメージが湧かないことと、やはり厚生年金との整合性の話が年金として考えた場合には残ると思います。

 免除というよりは、どちらかというと給付という形で割り切る話と受けております。その面では、共働き・共育てをどうしっかり対策していくかは、やはり年金ではなく、子育て政策で重要になってきます。免除しても働いているということであると、ちょっと違う感じがいたします。

 また、お願いですけれども、6月の部会で本件について1回議論しましたが、できれば12月に閣議決定される前に、年金制度としてどうなのかということはもう1回、案をもんでおくべきではなかったか。議論の進め方としてお願いを申し上げておきます。

 以上でございます。

○菊池部会長 ありがとうございます。議論の進め方についても御意見として承らせていただきます。

 それでは、嵩委員、お願いします。

○嵩委員 ありがとうございます。御説明ありがとうございました。

 まず、こちらの件につきまして、既に閣議決定されていることでもありますし、今回御提案いただいた対象者や対象期間についても異論はございませんが、先ほど御説明がありましたように、今回の保険料免除は、従来の免除と異なり、所得の減少に免除の必要性を認めるものではないことの整理について、条文上も明確にしていく必要があると思います。特に、財源が特殊である点、つまり保険料ではなくて、こども・子育て支援金になることを条文上分かりやすく示すような規定とするといいと思います。

 あと、厚生年金における保険料免除との公平性については確かに、各委員の御指摘のとおり、重要な論点かと思います。この点については、厚生年金の保険料免除の趣旨が、今回議論している国年の免除のように、少子化対策となっているのか、あるいは先ほどの御説明のように、所得の減少に対する補償と捉えるのか。その両方もあると思いますけれども、厚生年金の保険料免除の趣旨をいま一度、どのように捉えるべきであるのかとも関わると思いますので、その点も踏まえて、中期的な検討が年金全体として必要になってくるかなと思っております。

 私からは以上です。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 ほかにはよろしいですか。

 ありがとうございます。

 今、嵩委員からございましたけれども、この支援金は、徴収するほうはかなり制度設計に法的性格づけも含めて苦労されたと伺っていますが、それはこちらで、年金法でどう具体的に明確に書き込んでいくかという御指摘でもあったかと思います。

 それでは、この辺で1つ目の議題を終了させていただきまして、続きまして、議題2「標準報酬月額の上限について」、事務局から説明をお願いいたします。

○年金課長 資料2を御覧ください。「標準報酬月額の上限について」は、次期改正に向けた検討テーマの一つとして挙げられている中で、まだ1巡目の議論を行っていないテーマとして今回取り上げています。

 2ページは、現行制度ですが、厚生年金保険・健康保険では、保険料あるいは給付の算定の際に標準報酬月額という概念を用いて計算しています。2ページが現在の健康保険と厚生年金の等級で、両者には差があります。上限と下限に差があって、厚生年金の方が、範囲が狭いという特徴があり、厚生年金の上限は32等級で65万円になっています。

 3ページを御覧ください。この上限設定の考え方について、幾つか参考文献を挙げています。年金については、この標準報酬が年金額に反映される点で健康保険と異なっており、給付額の差があまり大きくならないようにする、あるいは高額所得者・事業主の保険料負担に配慮する、厚生年金の保険料率は18.3%で健康保険より高くなっており、これらに配慮する観点から低く設定しています。

 4ページは、現在に至る上限設定の経緯です。昭和29年から現在までですが、現行のやり方につながるものとしては昭和60年の改正が一つポイントになっています。このときに、将来の給付額の差があまり大きくならないようにする観点から、当時、男子被保険者の平均標準報酬月額のおおむね2倍になるように設定しています。それから、平成元年改正では少し修正して、女子も含めた被保険者全体のおおむね2倍としています。さらに、平成16年の改正では、このルールを法定化して、2倍に相当する額が上限を上回り、その状態が継続すると認められる場合に政令で上限を追加できる規定が置かれました。この規定は現在も適用されており、実際、令和2年9月に、このルールに基づいて現在の32等級が追加されました。

 そのときの経緯が5ページです。表の【A】とあるのが、全被保険者の平均標準報酬月額の推移で、それを2倍にした額の数字が右側の欄です。当時の上限であった62万円を上回る状態が平成28年から始まり、その後、令和2年に至るまでの5年間、こういった状態が継続して、令和2年9月の政令改正で今の65万円を加えました。

 その下は、厚生年金保険法の引用で、第20条が該当条文ですが、2倍を超える場合において「その状態が継続すると認められるときは」とあります。この「状態が継続する」という点は解釈によりますが、このときは5年の経過を経て設定しています。

 6ページは、同じように標準報酬を使うものとして、健康保険の上限についての考え方です。健康保険は、厚生年金のように、被保険者の2倍という考え方を用いていません。上の箱の2番目の○にあるとおり、標準報酬月額の最高等級に該当する被保険者数の全体に占める割合が1.5%を超える場合、かつその状態が継続すると認められる場合に政令で追加する規定になっています。

 実際に追加された経緯がその下でして、大きなものとして平成18年と平成27年に健康保険法が改正されて現在に至っています。

 7ページは、今あげた近時の2つの改正の経緯で、平成18年改正では、当時の最高等級について、その下の等級と比べて多くの被保険者が該当していたことを踏まえて改定しています。また平成27年改正では、負担能力に応じた負担を求め、保険料に係る国民の負担に関する公平を確保する観点から改正しています。

 8ページは、健康保険の等級に関する考え方について『健康保険法の解釈と運用』という本からの引用です。等級区分に関する基本的な考えとして、その時々の社会経済情勢及び賃金水準、賃金の分布等の実態を勘案して定めること、それから真ん中辺りですが、負担能力に応じた負担を求める観点から引上げを行ったという経緯、考え方が説明してあります。

 9ページからはデータになります。9ページは実際の標準報酬月額別の分布で、こちらは男女を合わせたものです。左側が厚生年金保険で上限65万円に該当されている方が264万人、約6.3%という数字です。

 その右側が健康保険で、上限が違いますので四角で囲ったところの合計が242万人です。また各等級にどれぐらい人数がいらっしゃるかについて、小さく数字を書いています。恐らく厚生年金も実際の報酬は同じような分布であることが想定されます。

 10ページ、11ページは男女を分けており、10ページが男性の分布割合で、左が厚生年金、右が健康保険になります。男性の場合は報酬が高い方が多く、65万円以上の方が一番多くて全体9.2%を占めており、この階層の方が各等級の中で一番多い状態です。

 続いて、11ページは女性です。女性は男性と少し異なり、上限に占めていらっしゃる方は全体の1.9%で、ピラミッドのような形で分布しています。

 12ページ、13ページは、厚生年金の最高等級に該当する方が全被保険者のどれぐらいを占めているかを経年で見ています。健康保険ではこの上限に該当する方が全体の1.5%になるように改定していますが、厚生年金ではおおむね6%台で推移している状況です。

 ここまでは月額のサラリーの話をしてまいりましたが、14ページは、賞与額、ボーナスの上限についてです。平成15年4月から総報酬制が導入され、賞与についても月額給与と同じ保険料率で負担いただくことが始まりました。ただし、こちらも上限が設けられており、1か月で150万円という上限が現在に至るまで使われています。

 他方で、健康保険の上限については年度で573万円と、やはり年金より高い形で上限が設けられています。その下は、賞与に関する厚生年金と健康保険のそれぞれの条文です。

 このボーナスも加えた形で分布を見たものが15ページ、16ページになります。まず15ページは、標準報酬月額別の年間標準賞与額の分布で、一番上は総数ですが、その下の月額1~15等級の方では、ボーナスゼロという方が38.0%で、全体で見ても100万円以下がほとんどという分布になっています。

 それが、その下の16~31等級、報酬月額で24万円~62万円になると、ボーナスの額にばらつきが出てきます。一方で、上限である32等級だけ少し他と違っておりまして、一番下にあるとおり賞与ゼロが一番多くて39.6%、約4割という数字になっています。

 同じような視点で見たのが16ページで、今度は月額給与とボーナスを合わせた総報酬の分布を見たものです。点線が健康保険で、実線が厚生年金ですが、厚生年金については、ボーナスがない場合の総報酬額の上限である65万円に12か月分をかけた780万円が特に多い4.4%になっています。そのうち※のところで小さく書いているとおり、65万円かつ賞与額ゼロという方が全体の2.4%を占めており、特徴的になっています。

 この標準報酬月額については、前々回の改正で議論が行われており、17ページは、平成27年1月21日の「年金部会における議論の整理」から抜粋しています。下線を引いた辺りですが、「保険料負担についても、再分配機能の強化の観点から、将来的には上限を撤廃していくことも考えられるとの意見があった一方で、年金における給付の効率化・重点化が実行されないまま財源対策として引上げを行うことは適切でないという意見があった。」とあります。

 その下は、今年5月8日の第3回年金部会でいただいた御意見の紹介です。厚生年金の標準報酬月額の上限が健康保険と比べ低く設定されており、上限に至っている方が多くいること、健康保険より低く設定することの考え方として、現役世代の格差を年金に持ち越さない意義がある一方で、厚生年金については再分配機能もあり、上限の引上げが再分配機能の強化につながるのではないかという御意見です。また、その下では、私的年金との連携・役割分担も検討する必要があるという御意見をいただいています。

 18ページは、仮にですが、上限を引き上げた場合の年金財政への影響について、イメージ図としてお出しするものです。保険料への影響が左側で、年金額への影響額を右側に分けており、さらに、上限引上げに該当する方とそうでない方で分かれます。まず、保険料について、上限引上げに該当する方は、これまでの65万円が上がりますので、その上がった分について保険料負担が増えます。これが青い斜線で示したところです。一方で、引上げに該当しない方については、負担の面では何も変わらず、変化はありません。

 年金額については右側で、まず上限に該当する方は保険料の負担が増える分、将来の報酬比例の給付額も増えます。これが赤い斜線です。基礎年金部分が変わらないのは上限に該当する方もそうでない方も同じです。加えて、緑の部分ですが、マクロ経済スライドの調整期間が短縮することで報酬比例部分が増加します。どういうことかと言うと、上限の引上げによって厚生年金の保険料収入が短期的には増加して、これが給付に反映されるまでタイムラグが生じます。その間、積立金の運用益が増加することになり、これは厚生年金財政全体にとってプラスの影響が見込まれます。

 これによって報酬比例部分のマクロ経済スライドの調整期間が短縮し、その結果として将来の所得代替率が上昇する効果が生まれて、その効果は、上限引上げの該当者に限らず、厚生年金受給者全体の給付水準にプラスの効果がでてきます。実際にどれくらい効果があるかは計算してみなければなりませんが、こういうプラスの効果がイメージとしては生じると考えています。

 最後、19ページは、ここまでの御説明をまとめたものと、本日御議論いただきたい点として用意しました。

 まず、現状については、繰り返しになりますが、平成16年改正で今に至る全被保険者の平均標準報酬月額の2倍に相当する場合の改定ルールが法定化され、それに基づいて、令和2年9月に現在の等級が追加されました。法定化後のルールで追加されたこの1回だけです。

 それから、仮に等級を追加した場合の効果については、上限に該当する本人の報酬比例の年金給付が増加するとともに、保険料収入の増加が積立金の運用益の増加につながり、厚生年金受給者全体の給付水準の上昇につながります。これは所得再分配機能の強化につながると言えます。

 他方で、現状のデータを御覧いただいたとおり、上限に該当する方は6.3%で、健康保険と比べて多くの方が該当している状態です。さらに男女で分けると、男性については上限等級に該当している方が最も多い状況になっています。また、上限の65万円に該当する方のボーナスの分布を見ると、約4割がゼロになっています。

 平成16年に今のルールが法定化されましたが、その段階から現在に至る健康保険と厚生年金の上限等級を比べると、当時は1.5倍ぐらいの報酬月額の差であったものが、現在では2倍を超えるまで開いている状況です。

 以上を踏まえて、御議論いただきたい点を3点にまとめました。

 まずは、御覧いただいた厚生年金被保険者の分布や、上限等級に該当するボーナスの実態、健康保険との比較を踏まえると、現行ルールでは、負担能力に応じた負担を求めることができていないのかどうかという点です。負担能力に応じた負担を求める観点、あるいは所得再分配機能を強化する観点から、現行のルールを見直して上限を追加することについてどう考えるのかが1点目です。

 2点目では、仮にそのような見直しを行った場合、御覧いただいたように上限等級に該当する方とその事業主の保険料負担が増加します。それから、歴史的に見ると、健康保険との考え方の違いとして、給付の差があまり大きくならないように上限が設けられています。こういったものを考慮した場合、どのようなルールで上限を新たに設定することが適当かというのが2点目です。

 さらに、短期的に保険料収入が増加して、積立金の運用益も増加することから、その増加分の使途についてどう考えるかが3点目です。

 以上、御説明と御議論いただきたい点になります。よろしくお願いいたします。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、皆様から御意見・御質問などをお願いしたいと思います。

 まず、会場の皆様、いかがでしょうか。

 是枝委員、お願いします。

○是枝委員 私から3点、施策の組合せと、企業年金への影響と、そして、給与と賞与のバランスの3点について意見を述べさせていただきます。

 まず1点目、施策の組合せですが、資料2の18ページにあるとおり、仮に標準報酬月額の上限を引き上げた際には、財政的には報酬比例年金全体が引き上げられる効果がありますので、こちらは報酬比例年金全体が引き下げられることとなる在職老齢年金の廃止とぶつけるのがよいのではないかと考えております。在職老齢年金を廃止することとすれば、高所得者の追加的な保険料納付も必ず老後の年金の給付に結びつくこととなりますので、制度論としても在職老齢年金の廃止と標準報酬月額の引上げは相性がよいと考えております。

 2点目、企業年金への影響です。報酬が高い企業においては、上限を超える報酬に公的年金がない分、企業年金や退職金制度などにより、独自に老後の所得保障を行っている面があります。もし標準報酬月額の上限を大幅に引き上げるということであれば企業年金や退職金制度への影響についても考慮する必要があり、企業年金・個人年金部会との合同部会を開催する必要があるのではないかと思っております。

 最後に、給与と賞与のバランスについてです。15ページの資料はかなり衝撃的なものだったかと思います。最高等級である標準報酬月額65万円の者の4割に賞与がない形ですので、実態としては、これは賞与を月給に組み込むような形にして、労使で保険料を免れているような実態があるのではないかと見られます。もしくは使用者側として保険料負担を免れる形で、労働者としては年収の割に老後の年金額が少なくなってしまっているような方がいるのではないかと思います。保険料の公平な負担を求める観点と、現役の収入に応じた適切な給付を行うという両面から、理想的には月給と賞与を合わせた年収ベースで付加対象とする報酬上限を定めるのがよいと思います。

 ただ、事業主や日本年金機構における実務負担もありますので、どのような形がよいのか。できるだけ年収ベースでの上限に近づくような形で制度設計をするほうがよいのではないかと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 駒村委員、お願いします。

○駒村委員 ありがとうございます。

 まず、16ページで、是枝委員は前の15ページは衝撃的でしたと。16ページもなかなか衝撃的でして、これは初めて見ましたけれども、きれいにこぶが出ているのは、まさに年金政策が企業の賃金政策に非中立的な影響を与えている証明になっているかと思いますので、今、是枝さんがおっしゃったように、基本と哲学は年収ベースで考えていくべきだろうとは思います。哲学的にはそうだと思います。

 それから、2ページ、9ページ、18ページに関わるところですけれども、まず2ページは現行の等級が非常に分かりやすく出ていて、上下も含めて切れているということで違いがあるのかなと思います。9ページを見るとこの分布が極めてよく分かるわけでして、果たしてこの平均の2倍がどういう根拠があるのか、合理的な意味があるのか、分からないのですが、やはりなるべくならば健康保険と同じ考え方にしていったほうがいいのではないかと思います。

 その際にはもちろん、健康保険と違うところは報酬比例部分が給付に跳ねる部分があるわけですけれども、一方で基礎年金の再分配効果もあるわけですので、18ページにあるように、今度の年金財政検証においては、このいろいろなパターンで、上下を広げたパターンを分析していただいて、年金財政にどう影響を与えるのか。また、今、是枝さんもお話ししたように、在老の見直しとうまくリンクした形で効果を見る必要があるのではないかなと思いますので、この18ページの議論をぜひ検証のときには深掘りしていただきたいなと思います。私は上下ともに広げたほうがいいという考え方を持っております。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 小林委員、お願いします。

○小林委員 私からは、3点、申し述べさせていただきます。

 上限の引上げは、当該労働者にとって将来の給付が増える面から望ましいことではありますが、一方で毎月の保険料が上がるわけで、事業者にとっては負担が増えるのみでございます。現在、深刻な人手不足、物価高を背景として、中小企業でも既存の従業員や人材確保のために何とか賃上げしようと努力しているところでございます。上限引上げは、事業者のそうした賃上げ努力に水を差すイメージとなること、また、実際に社会保険料負担の増加要因となることが懸念されます。

 5ページの下段に、厚生年金保険法の第20条第2項が掲載されております。これによれば、最高等級を追加することができる。すなわち、上限の引上げができるのは、平均標報額の2倍が既存の上限額を超え、その状態が継続すると認められるときとあります。また、その上の表を見ますと、前回の上限引上げの経過として、5年間の状態継続が背景となったことが分かります。法律の条文と現下の事業者の賃上げに対する努力を踏まえれば、一時的な数値で判断するのではなく、ある程度の期間を取り、データの積み上げを基に判断するのが適当であり、今、直ちに上限を引き上げるタイミングではないものと考えております。

 2点目です。標準報酬月額の上限を引き上げることで厚生年金財政にプラスの影響があるということを資料にまとめていただきましたが、仮に上限を引き上げた場合、労使双方にとって、どのような影響があり得るのかについては、示されていないと思います。

 資料2の9~11ページを見ますと、標準報酬月額の上限に該当する方が多くいらっしゃることについては分かりますが、このうち、中小企業の従業員がどれだけいるのかなど、今後議論を行うに当たり、そうした企業規模別などのデータの御提示などがあるとありがたいです。

 3点目です。19ページの一番下に、保険料収入の増による運用益増加分の使途についての論点が掲げられております。これはマクロ経済スライドの終了年度の前倒しに用いるべきであり、それ以外の使途は考えられないと思っております。この点は、はっきりしていただきたいと強く思っております。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 小野委員、どうぞ。

○小野委員 ありがとうございます。いろいろな方法があると思いますけれども、見直しに関しては賛成いたします。

 既に何人かの委員から御指摘いただいていますけれども、賞与と月給の分配の件ですが、かつて賞与に保険料が賦課されなかったとか、ないし1%の保険料が賦課されていた。こういった時代には、被保険者と事業主の双方にとって、社会保険料負担について、年間の報酬を月給と賞与の配分する際の裁定行為が指摘されていたように記憶しております。資料の15ページを拝見しますと、私も驚きましたけれども、まさにそういった状況かと思います。報酬を月額と賞与に区分している限りは、このような裁定行為が疑われる状況は解消されないのではないかと思います。

 諸外国の例があれば教えていただきたいのですが、私は諸外国で日本のように区分して運用しているような例を知らないのですけれども、将来的には年間報酬に一本化した運用ができるように、実務を踏まえて見直すのがよろしいのではないかと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 島村委員、お願いします。

○島村委員 御説明ありがとうございます。社会保険ですので、能力に応じた負担が鍵になってくるかなと思っております。そうすると、負担能力があるのに負担が相対的に軽い現状は改める方向性に賛成したいと思います。標準報酬月額の上限を引き上げることで再分配機能を強化できればと思っています。

 上限設定の基準については、給付との差があまり大きくならないようにという観点からとのことですが、それで標準報酬月額のおおむね2倍となっているかと思うのですけれども、それについては検討の余地もあるのではないかと思っています。今後はますます所得格差が広がるとすると、広がった分だけ上限に張りつく人が増えてしまうのを野放しにする設計よりは、張りつく人の割合については一定の範囲を事前に決めておく健保のような方法のほうが基準としてはよりふさわしいのではないかと思っております。

 再分配機能の強化をより一層進めるのであれば、負担は能力に応じるけれども、給付に対する反映は一定部分にとどめること、つまり、諸外国で見られるようなベンドポイント制のようなものも一つの選択肢にはなり得るかと思います。

 ただ、それを検討するに当たっては、殊さらに高所得者に負担増と給付減とだけなって、高所得者の制度に対する信頼を損なうことのないように、在老の廃止とか私的年金への拠出上限額の引上げとかもセットにした上で、所得保障制度全体との関係で高所得者のケアを考えていく必要があるように考えております。

 以上です。ありがとうございます。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 永井委員、お願いします。

○永井委員 ありがとうございます。標準報酬月額の上限についてですが、社会保険制度の一つとして公的年金が持つ所得再分配機能は極めて重要であり、その強化を図ること、また、応能負担として負担能力がある人に必要な負担を求める点から、上限の等級の追加の検討の必要性は理解します。

 ただし、「全被保険者の平均標準報酬月額の2倍に相当する額が標準報酬月額の上限を上回り、その状態が継続すると認められる場合には政令で上限の上に等級を追加することができる」との今のルールについては、2024年10月の企業規模要件の引下げ、また、次期年金制度改革での要件の撤廃・見直しによるさらなる適用拡大の影響も十分に踏まえた上で議論する必要があると考えます。

 したがって、まずは企業規模要件の撤廃、5人未満や非適用業種の個人事業所への社会保険の適用拡大などによる平均標準報酬月額への影響、また、そのような適用拡大に係る制度改正とともに上限の等級を追加した場合、18ページに示されているようなスライド調整期間の短縮にどの程度影響があるかなどについて、次期財政検証などにおいて試算いただくことを検討いただきたいと思います。

 また、本日の論点には入っていない下限についてですが、私の組織が所属する連合では、被用者保険の適用拡大を進めるため、最低賃金や健康保険の基準を念頭に、下限を引き下げることを提言しています。上限の等級の追加だけでなく、下限の等級の追加、つまり、月額賃金8.8万円以上という短時間労働者等の加入要件の引下げについても併せて検討する必要があると考えます。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 原委員、お願いします。

○原委員 ありがとうございます。既にいろいろな委員の方から言われていることなので重複してしまうことがあるかもしれませんが、御了承ください。

 やはり私もこの標準報酬月額の上限のところで、まず10ページの図がやや衝撃的でありました。32等級65万円という、これは男性のものですけれども、そこが一番多くなっているところが、少しいびつな感じがいたしました。

 これに関して、いろいろと考えられることが、既に他の委員からも出ていますけれども、あると思います。もう一つは15ページ、16ページですが、15ページで年間標準賞与額の分布ですけれども、標準報酬月額上限の65万円の被保険者の方の約4割が年間賞与が0円という調査結果があります。もちろん、いろいろな報酬の支払い方は、今、様々だと思いますが、これに関しては、小野委員からも御発言がありましたが、以前、総報酬制が導入された平成15年4月前は、賞与は給付に反映されず保険料率も低かったわけで、そのとき、いろいろと言われたこともありまして、結果、賞与にも同じ保険料率を掛けた総報酬制が導入されたという経緯もあったと思います。

 現在は、実態がどうかは厳密には分かりませんけれども、状況は反対かもしれませんが、当時と同じようなことが起きているのかもしれないと捉えられてしまいかねないのではないかと思います。もちろん、実態は全部把握することはできませんが、標準報酬月額が65万円で賞与なしという方もいれば、一方で、最高等級65万円で賞与も150万円が2回という方もいると思われます。、もちろん、実態に即してということになるのですけれども、この両者では、保険料の負担は違いますが、将来受けられる年金の給付額も異なるわけです。

 賞与のあるなしで給付に差があることが、従業員の方、つまり厚生年金加入者の方が分かっているかどうかが少し気になるところです。

 また、最高等級の従業員の方の場合ですと、会社の形態とか、その方の働き方もありますが、一般的に中高齢になっていることが多いと思われますので、自分の報酬に見合った保険料を払ってでも年金額を増やしたいと思う人もいるだろうと思います。

 16ページのグラフなどを見ていますと、やはり健康保険とは異なるところで山になっているわけで、10ページの図なども見ても実際の負担能力に応じた保険料負担、そして、年金給付というようなこともここで検討してもいいのではないかと、今回の資料を見て思いました。

 現行のルールはあると思いますけれども、そういったことも、健康保険の例なども参考にしながら検討してみてもよいのではないかと思います。

 以上です。ありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 百瀬委員、お願いします。

○百瀬委員 標準報酬月額の上限設定については、議論の前提としてもう少しデータが欲しいと思います。厚生年金保険の上限額が健康保険よりも低く設定されている理由として、給付額の差が大きくならないように配慮していることが挙げられています。ただし、例えば若いときは給与が低くて、徐々に上がっていって、職業人生の後半で少しの期間だけ上限を超えるような方が多ければ、当然、年金額を計算するときは平均にしますので、上限額を上げたからといって、そこまで給付額の格差は広がらないと思います。

 逆に、上限額を超えている方は、若いときから上限額を超えていることが多いのであれば、当然、上限額の引き上げによって支給額の格差は大きくなります。それゆえ、上限額を超えている方の実態や履歴などに関するもう少し詳しいデータがあれば、それを拝見したいと思っています。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 ほかには会場ではいかがでしょうか。よろしいですか。

 それでは、オンライン参加の皆様からお願いいたします。いかがでしょうか。

 深尾委員、お願いします。

○深尾委員 ありがとうございます。標準報酬月額の2倍というところで等級をつくる現行のルールがあることを前提にすると、経済はかなりインフレが進んでいて、実質賃金が下がったわけですが、今後、名目賃金の引上げが当然かなり予想されることも前提にすると、早めに等級の追加を検討することに私も賛成です。

 それから、年収ベースにすることで、今回、現在のようなゆがみをできるだけなくすことにも基本的に早急に検討すべきだと思います。

 3点目、何人かの委員から御指摘ありましたけれども、在職老齢年金の問題はやはりこれとセットで、できるだけ早く改定を考えるべきだと考えています。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 井上参考人、お願いします。

○井上参考人 ありがとうございます。

全世代型社会保障改革の基本として、負担能力に応じて負担を求めていく考え方は経団連としても一応支持しておりますので、負担能力に応じて今回のような形で負担を求める方向性につきましては理解いたします。

 ただ、資料にありますとおり、上限に張りついている方の人数と割合はあまり変わっていません。何らかのルールの変更が必要になってくるとは思いますが、その際、最後の2つ目の○にある考慮要素に加えて、やはり全世代型社会保障を進める上で、今、現役世代の過剰な負担をどう変えていくかという観点や、官民一体で最重要課題として取り組んでいる賃金引上げに対する影響も、しっかり勘案しながら検討を進めていく必要があります。

 また、その上限にいる方への配慮も施行の際には必要となってきます。上限に張りついている高所得者に対する自助努力として、例えば私的年金の拠出枠を大幅に拡大することも、併せて検討してはどうかと思います。

 以上でございます。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 権丈委員、お願いします。

○権丈委員 3点ほど。

 今は、年金は平均標準報酬月額の倍数基準で、医療は被保険者の割合基準で行われているわけですけれども、どのくらいが妥当か、ちゃんとワークしているのかどうかという、妥当かどうかの判断は資料の12ページとか13ページの割合基準で見ることになりますので、医療にそろえて被保険者の6%とか5%というようにしてもいいと思います。

 そして、総報酬制における賞与への保険料賦課の在り方が相変わらず事業主による保険料負担節約というふうに読まれていいようなことが起こってくるわけですが、ニュートラルになる方法にするのは当たり前で、今の制度は2003年から賞与を加えることになったときに、年収ベースにするのは当たり前だと思っていたのだけれども、各種インフラも整備されていなかった状況下で急いで取られた簡易方式、暫定的な制度と理解しておこうと思います。20年たった今、当然変わるものと期待しております。

 3つ目になりますが、その上で一人一人の年金給付に反映される標準報酬月額以上の月額のある一定の幅の人たちに年金保険料を賦課して、その財源を高在老改革の財源に用いたいとは思っています。高在老をなくすには規模が要するに届かないわけですが、そのために使う。頑張っていけば届くかもしれないけれども、高在老はみんながおかしな制度だ、賃金だけが対象となるなど不公平な扱いだとみんな思っているのですが、この前も言いましたように、この層の人たちは働き続けます。だから、労働経済学者が就労に悪影響を与えているかどうかを検証していっても、これは結果が出てきません。

 だけれども、みんなおかしな制度だと思いながら泣き寝入り状態なわけです。この泣き寝入りはなかなか検証できない。そうした問題を高所得者たちが高所得者の所得で解決して、Work longerという高い優先順位とインセンティブが両立して、長く働こうとしている人たちへの現在のペナルティーを消していくことに優先的に使っていくことが考えられる。これは保険料が全部、自分の給付の算定基礎になるわけではない意味では一種のベント方式になるわけですが、高在老というゆがんだ制度を政治に求められて過去につくってしまったから生まれた経路依存的な日本型ベント方式という形でこれから標準報酬月額の基準を考えていくときには、この観点も私の中では考えていこうかなと思っております。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 堀委員、お願いします。

○堀委員 ありがとうございます。私からは2点申し上げたいと思います。

 まず、上限の引上げにつきましては、先ほど百瀬委員もおっしゃいましたけれども、もう少しデータをお示しいただけると判断しやすいのではないかと考えます。これだけを見ますと、私としましては、所得の再分配という側面があるにしろ、やはり絶対的な格差を拡大してしまうことと、何より現役世代の負担をさらに増加させる印象を強く与えてしまうような感じがいたします。もう少し、この後の財政検証等でいろいろな分析をしていただきたく存じます。

 また、第2点目ですけれども、標準報酬月額と賞与のバランスにつきましては御指摘されるような要因があるのだろうと思うのですが、働き方もかなり多様化していますので、年金の得だけを考えるとこのような形になっているかということは判断がつかないのですけれども、ただ、できるだけ公平性を追求することは大変重要だと思いますので、実務的にはいろいろまだ課題があるかもしれませんが、ぜひ公平になるように御検討いただければと考えております。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 嵩委員、お願いします。

○嵩委員 ありがとうございます。私からも、先ほど来、各委員がおっしゃっていることと同じなところもあるのですけれども、重ねてということで意見させていただきます。

 まず、この標準報酬の等級の引上げですけれども、所得再分配が強化されることになると思いますので、基本的に望ましいと考えています。今まで低めに設定されていたことについては、年金額について格差が著しく大きくならないようにという説明がされてきて、私もそのように理解してきたのですが、今まで各委員の御指摘があったように、所得の二極化がある程度進んでいるとしても、被保険者期間を通じてずっと上限の等級に位置している人はあまりいないのではないかと直感的には感じますので、現在、標準報酬月額の平均の2倍を上限にしていますが、年金額そのものが2倍になるようなことに直結はしないのだろうと想像しています。

 ここで私も重ねてのお願いになりますけれども、上限の等級に位置している期間について、平均してどのくらいの年数いらっしゃるのかとか、そういうデータについて追加でいただけますと、より検討がしやすいかなと思いますので、事務局にお願いしたいと思います。

 以上になります。よろしくお願いいたします。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 平田委員、お願いします。

○平田委員 ありがとうございます。

 まず、上限下限ですが、上限は、百瀬先生がおっしゃったとおり、上限額を超えている方の実態、データを踏まえた議論は大切ながら、その上でやはり広げていっていいのではないかなと思っております。下限については、短時間労働者へのさらなる適用拡大策と関わり、その議論の中でおのずから決まっていくのではないかなと見えています。

 上限について、年齢にかかわらず高額所得者の保険料負担は大きくなると思いますけれども、やはりそれに見合う所得を得ていると考えてよいと思います。給付について、もし高くなり過ぎて格差拡大につながるのであれば、資料の17ページにもあった、報酬額が高くなるに従って給付率が低減していく仕組みにも視野を広げていいのではないかと私は思っております。

 理由は、年金はあくまで社会保険であって、離職の道具ではないという点にあります。より所得が少ない人を守る保障であり、あるいは自身に万が一があったときの場合の補償ということであるが、これは健康保険も同じ考えなのではないかなと思っています。

 話は広がりますけれども、親の経済的貧困が子供から学習の機会や様々な体験・機会を奪っていろいろな、さらに所得が低い状態を連鎖させるということが言われております。こういうことが年金などでも起こるのであれば、国全体の大きな損失につながるのではないかという視点を持っております。

 もちろん、島村先生がおっしゃった高所得者からの反発はあると思います。それでも、前回、最後に菊池部会長が御紹介くださった、共生社会の実現を推し進めることがそれ以上に大切なのではないか。それを、権丈先生がおっしゃった、みんなが参加したくなる制度。つまり、ありがとうと言ってもらえるとか貢献の喜びはあると思うのですが、そういうことでなっていければ一番、未来をつくる世の中を年金からもつくっていけるのではないか。そんなふうには思っています。

 ただ、人ではなくて法人にも格差があると思います。私は企業のコンサルティングをしていて、大企業さんと中小企業さんの持っている資産と全く違うことを本当に肌身に感じていますので、企業間の格差拡大につながって大企業のみが生き残る。これも日本の未来を考えたときに本当にいいのか、効率性だけでいいのかということがあると思うので、その面において、まだ具体策は私にあるわけではないですけれども、企業間の格差拡大につながらない視点も大切なのではないかと思っております。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 堀委員、何か追加で御意見はおありでしょうか。よろしいですか。

○堀委員 はい。

○菊池部会長 承知しました。

 それでは、玉木部会長代理からお願いします。

○玉木部会長代理 本日の2つのテーマに関する事務局の御説明、あるいは皆様の御意見・コメントなどを伺いながら、私が持つに至りました感想について一言申し上げます。

 まず、国民年金における育児期間の保険料免除の件でございますけれども、誰にでもある出産というライフイベントにつきまして、働き方によってあまりに大きく違うことになるのはいかがなものかという思いがございますので、今回の措置があれば厚生年金に加入しておられる方々と似た方向に制度が動いていく点で私は大いにポジティブに捉えてよろしいかと思ったところでございます。

 また、こういうふうに働き方によってあまり変わらなくなることがこういった社会保険という制度、あるいはしばしば再分配を伴う制度への国民の支持の向上に資するところがあるのではないかと思うところでございます。

 それから、2番目の標準報酬の上限の件で、多くの方々が御指摘のとおり、資料の15ページ、16ページのグラフはいろいろな意味で驚いたといいますか、ショッキングなものでございました。それで、こういったものを見るにつけ思うのですけれども、我々、今までさんざん適用拡大について議論してまいりましたが、適用拡大はどちらかといえば収入が少ないセグメントの方々にとっての公的年金保険を、今の時代によりよく合った、より合理的な制度に持っていこうという試みではないかと思います。

 また、これに対しまして、高在老の件とか、あるいは本日のテーマ。こういったものはどちらかといえば収入が多いセグメントに関するものでありまして、こちらについても合理的なものにしていこうという試みではないかと思うところでございます。

 これら両方につきまして、公的年金保険制度が果たすべき再分配機能に着目しつつ、また、より緻密なデータの収集・分析を踏まえつつ、着実に進めていっていただきたいと思います。

 1番目の国民年金の育児期間の件と合わせて、トータルで国民に対して公的年金保険制度は最終的に全体としてこのようによくなりましたといった形で御説明していただくと、再分配の出し手の方々を含め、公的年金保険という共助の仕組みへの支持・共感が広まっていくのではないかと思うところでございます。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 ほかには何か御意見等はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

 ありがとうございます。

 様々な御意見をいただきましたが、今後、また議論を続けることになると思いますけれども、その際、可能な限り、データをさらに示していただいた上で議論すべきであるといった御意見をかなりいただいたように思いますので、事務局で可能な範囲で御準備いただければと思います。また、財政検証との関係も何人かの委員から御要望があったかと思います。

 予定しておりました議事は、以上で終了でございます。

 今後の予定について、事務局からお願いいたします。

○総務課長 次回の議題や日程につきましては、追って連絡いたします。

○菊池部会長 それでは、本日の審議はこれで終了とさせていただきます。御多忙の中、お集まりいただきありがとうございました。皆様、よいお年をお迎えください。

 

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