2018年11月2日 第6回社会保障審議会年金部会

年金局

 

○日時   平成30年11月2日(水)10:00~12:00

 

○場所   東京都港区新橋1-12-9

AP新橋 3階

○出席者

神 野 直 彦(部会長)

小 野 正 昭(委員)

菊 池 馨 実(委員)

権 丈 善 一(委員)

駒 村 康 平(委員)

高 木  朋 代(委員)

武 田 洋 子(委員)

出 口  治 明(委員)

永 井  幸 子(委員)

原 佳 奈 子(委員)

平 川 則 男(委員)

牧 原 晋(委員)

諸 星 裕 美(委員)

山 田 久(委員)

米 澤 康 博(委員)

小林参考人(山本委員代理)

○議事

○神野部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第6回「年金部会」を開催したいと存じます。

過ごしやすい天候が続いておりますが、皆様方には、大変お忙しい時期をお過ごしのことではないかと御推察申し上げます。にもかかわらず、万障を繰り合わせて御参集いただきましたことに、深く感謝を申し上げる次第でございます。ありがとうございます。

本日の委員の出席状況でございますが、阿部委員、小室委員、藤沢委員、森戸委員、山本委員から御欠席との御連絡を頂戴しております。

また、武田委員からは、おくれて御到着との御連絡を頂戴いたしております。

まず初めに、出席をいただいております委員の方々が3分の1を超えておりますので、この会議が成立していることを御報告申し上げたいと思います。

また、山本委員の代理として、本日、日本商工会議所より、小林参考人にお越しいただいております。小林参考人の御出席につき、皆様方の御承認を頂戴できればと思います。

よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○神野部会長 ありがとうございます。

それでは、そのようにさせていただきます。

議事に入ります前に、審議会のペーパーレス化につきまして説明していただくことと、資料の確認をさせていただきます。

事務局から、お願いいたします。

○総務課長 総務課長でございます。

厚生労働省におきましては、審議会等のペーパーレス化を推進しておりまして、本日、当部会でもペーパーレスで初めてさせて実施いただくことといたしました。御協力ありがとうございます。今後も、可能な限りこのようなペーパーレスで開催していきたいと考えております。

委員の皆様には、机上にタブレットを置かせていただいております。現在、議事次第が表示されていると思いますが、タブレットの左上に表示しております、薄い水色のマイプライベートファイルというところを1回タップしていただくと、資料一覧が見られます。こちらに、01・議事次第、02・委員名簿、03・座席図、1・資料1という4種類のPDFファイルが入っていると思いますけれども、よろしゅうございましょうか。その下に第5回までの会議資料のボックスがありまして、このボックスをクリックしていただくと、中に過去1回目から5回目までの資料が入っているということになってございます。ためしにマイプライベートファイルの資料1をタップしていただきまして、資料1の画面が出てまいりますが、この画面につきましては、タッチして、2本の指で拡大・縮小をすることができるようになってございます。適宜そのように御利用いただきたいと思います。また、もとに戻るときは、左上のマイプライベートファイルというところを1回クリックすると、また資料一覧に戻るという形になってございます。

操作につきましては、お手元に説明書を配付しておりますけれども、もし何か不都合がございましたら、事務局にお知らせいただければ、サポートをさせていただきますので、よろしくお願いします。

傍聴の皆様につきましては、あらかじめ厚生労働省ホームページでお知らせしておりますけれども、御自身のタブレットとかスマホの携帯端末などを利用してごらんいただくということでお願いしたいと思っております。具体的には、厚生労働省のホームページなのですけれども、例えば、スマホとパソコンで画面の見え方は違うと思いますが、スマホですと、右上にメニューというところがあります。パソコンですと、上のほうに青いラインで「報道・広報」とか、「政策について」とか、「厚生労働省について」とか、「統計情報・白書」というようなコーナーが青く表示されていると思います。この「政策について」というところをクリックすると、中に上から4つ目ぐらいのところに「審議会・研究会等」というものがございまして、この「審議会・研究会等」のページの「社会保障審議会」、たくさん部会の一覧が並んでおりますけれども、その真ん中ら辺のほうの「年金部会」というところをタップをしていただきますと、第6回の今回の会議の資料が掲載されているページがごらんいただけるというふうになっております。どうぞよろしくお願いします。

事務局からは、以上です。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

審議会のペーパーレス化について、御協力いただければと思います。

ただ、私につきましては、網膜剥離を患っておりまして、光源を目に入れて網膜を裂孔させて痛めてしまうおそれがありますので、依然としてペーパーでやらせていただきますので、御寛容いただければと思います。

それでは、議事に入りたいと思いますので、カメラの方はここにて御退室いただければと思います。いらっしゃいませんね。

それでは、議事に入らせていただきます。

本日は、議事次第にございますように、「その他」を入れれば2つでございますが、「雇用の変容と年金(高齢期の長期化、就労の拡大・多様化と年金制度)」という議題をまずは取り上げ、次に「その他」として、他の議題について御議論を頂戴できればと思っております。

まず、事務局から資料についての御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○年金課長 年金課長でございます。

資料1につきまして、御説明申し上げたいと思います。

1ページ、本日の資料の構成でございます。まず、諸外国及び日本における雇用と年金について御説明し、その後に多様な雇用・就労と年金の組み合わせといたしまして、繰上げ・繰下げや在職老齢年金制度、被保険者期間などについて、制度の概要と現状を御説明いたします。

3ページ、諸外国と日本における雇用と年金についての資料でございます。年金制度におけます支給開始年齢と受給者本人が選択できる受給のタイミングに関する言葉の使い分けについて混乱が若干生じておりますことから、これらを整理したいと思っております。これまで「支給開始年齢」と峻別するため、個人が選択した上で実際に受給を開始するタイミングを「受給開始年齢」と表現し、両者を使い分けてまいったわけでございますけれども、最近、両者が混同されまして「支給開始年齢」とすべきところを「受給開始年齢」と誤記する報道がふえてきておりますことから、改めて言葉の使い方を整理する必要を感じた次第でございます。多くの公的年金制度が採用します確定給付型の年金制度におきましては、報酬額や加入年数をもとに給付額を定義する算定式がございまして、その算定式により求められる給付額を受け取ることができる年齢が定められております。これが一般的に年金の「支給開始年齢」と呼ばれるものでございます。その上で、多くの国では、支給開始年齢の前後に実際に年金を受け取り始めることのできる期間を定めております。これを一定幅の期間の中で選択が可能だという意味で「受給開始可能期間」という言葉で整理したいと思っております。この場合、平均余命までの期間におけます給付総額と財政中立になるように、支給開始年齢より遅く受給を始める場合は増額いたしますし、早く受給を始める場合には減額されることになっております。年金制度におきましては、この「支給開始年齢」と「受給開始可能期間」の2つの要素が制度的に定められていることになります。また、「受給開始可能期間」の中から、こちらは受給者本人が年金をいつから受給するかを選択しまして、実際に年金を受け取り始める時期、タイミング、このことを「受給開始時期」と整理してはいかがかと考えております。

4ページ、諸外国における高年齢者雇用法制と年金の支給開始年齢等について御説明したいと思います。諸外国では、定年等と年金の支給開始年齢が制度的には接続していることになっております。例えば、アメリカやイギリスでは、定年制を設けることは原則不可となっておりますし、支給開始年齢はそれぞれ66歳や65歳などとされております。ドイツでは、定年を一律に規定した法律はございません。その上で、労働者が支給開始年齢に達した際に、解雇通知なしに雇用関係を終了することを契約や労働協約で規定することは合法とされております。フランスは、定年は原則70歳以上で、70歳未満の定年退職は、原則、年金の満額受給年齢に達した労働者が承諾した場合のみ認められることになっております。また、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスでは、それぞれ受給開始可能期間が設定されております。スウェーデンは、労働者は67歳になった月の月末まで職にとどまる権利がございます。なお、67歳を超えた場合につきましては、整理解雇、再雇用における優遇がなくなるなど、解雇等に対する法的保護が縮小されます。一方で、年金に関しましては、概念上の拠出建て方式を採用しているために、支給開始年齢という概念はございません。61歳から上限なしの「受給開始可能期間」が設定されております。また、右側の2つの欄にございますとおり、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスにおきましては、年金財政の調整手法として支給開始年齢の引き上げが行われておりまして、ドイツを除きまして、年金の給付水準の調整機能は持っておりません。ドイツは、年金受給者数と保険料納付者数の比率の変化を年金額に反映させる機能である持続可能係数が導入されているところでございますけれども、その反映度合いは、第3回の年金部会で御報告申し上げましたように、部分的な反映という形になってございます。

5ページ、一方で、日本では、これまで雇用と年金の改革は必ずしも制度的に接続した形で進んできたとまでは申し上げられないかと思います。1994年の改正で、60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金の定額部分の引き上げを始めるのを機に、雇用法制では60歳定年の義務化や65歳までの継続雇用制度の導入に関する計画の作成指示等に係る改正が行われました。2000年改正によりまして、60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分の引き上げが始まることを踏まえまして、雇用法制では65歳までの高年齢者雇用確保措置導入の努力義務化がされました。こうした中で、年金の2004年改正におきましては、それまでとは全く異なる新たな財政フレームとして、年金制度の持続可能性を給付水準の調整により確保する枠組みが採用されたわけでございます。同時期に、雇用法制では、65歳までの高年齢者雇用確保措置の義務化がなされました。2012年には、雇用法制で65歳までの希望者全員の継続雇用義務化がなされました。こうしまして、60歳台前半の雇用確保措置が先行する年金改革に追いつきまして、60歳台前半は雇用を中心にという形が我が国でも整いつつあるということではないかと思います。

6ページ、現在、未来投資会議で70歳までの就業機会の確保の進め方に関して、政府部内で議論がされております。先月22日の未来投資会議におきまして、内閣官房日本経済再生総合事務局が提出した論点メモでございますけれども、70歳までの就業機会確保として、65歳までとは異なり、それぞれの高齢者の希望・特性に応じた活躍のため、多様な選択肢を許容し、選択ができるような仕組みを検討する必要があるのではないかとされております。また、年金制度との関係、一番下の欄でございますけれども、70歳までの就業機会の確保に伴っての年金支給開始年齢の引き上げは行うべきではなく、年金受給開始年齢を自分で選択できる範囲、これは今回整理させていただこうと考えている言葉を用いますと「受給開始可能期間」の拡大ということになりますけれども、こちらを検討すべきではないかとされております。

7ページ、こちらも同じく先月27日の未来投資会議におきまして、厚生労働大臣が提出した資料の抜粋でございます。厚生労働大臣のほうからも、高齢者雇用・就業機会の確保をまずは進め、さらに年金では、右下にございますように、受給開始時期選択の拡大等を検討していく旨を説明したところでございます。

8ページ、こちらは前回年金部会に提出した資料の再掲でございます。高齢期の長期化と就労の拡大・多様化を受けまして、年金制度としては、就労期間の延長を年金制度上も反映し、長期化する高齢期の経済基盤を充実するとともに、多様な年金と雇用の組み合わせを可能にする制度の柔軟化・改善を図っていく必要があるのではないかと整理させていただいたところでございます。

9ページ、続きまして、多様な雇用・就労と年金の組み合わせです。

10ページ、その中で、多様な年金受給といたしまして、繰上げ・繰下げと継続就労について、御説明いたします。

11ページ、公的年金の受給開始時期は、原則として、個人が60歳から70歳の間で自由に選ぶことができる仕組みとなっております。このうち65歳より早く受給を開始する繰上げ受給を選択した場合には、年金月額は最大30%の減額となる一方、65歳より後に受給を開始します繰下げ受給を選択した場合には、年金月額は最大42%の増額となります。なお、繰上げによる減額率と繰下げによる増額率については、選択された受給開始時期にかかわらず、年金財政上中立となるように設定されております。

12ページ、ここでは繰上げ・繰下げ制度の最近の利用状況を確認するために、受給開始時期の選択を終了しました70歳の受給権者についてのデータをお示ししております。繰下げの利用率はおおむね1%程度となっております。他方、かつては非常に高い水準にございました国民年金における繰上げの利用率については、低下傾向が続いていることが見て取れるかと思います。

13ページ、ここでは繰下げ受給が選択されにくい要因をまとめておりますが、個々人の事情によるさまざまな理由が考えられるところではございます。このペーパーでは、制度的な要因をまとめたものとなっております。1点目として、60代前半に支給される特別支給の老齢厚生年金の存在がございます。現在、厚生年金の支給開始年齢は引き上げの途上にございますため、厚生年金の被保険者期間を持っている方は、65歳到達前に特別支給の老齢厚生年金の受給を開始いたします。このため、60代前半で既に年金収入を前提とした生活を形づくることとなっており、65歳に到達した段階で一旦年金受給をやめまして、繰下げ受給を選択することは現実的にはなかなか難しいのではないかと受けとめております。なお、こうした状況につきましては、厚生年金の支給開始年齢の65歳の引き上げの完了、男性ですと2025年度、女性では2030年度には消失するということになります。2点目といたしまして、加給年金や振替加算の影響があるかと思います。加給年金は老齢厚生年金の受給権者が65歳未満の配偶者の生計を維持している場合に、老齢厚生年金に加算される配偶者手当的な存在ですけれども、こちらは老齢厚生年金を繰り下げている間は支給されないことになっております。また、振替加算は加給年金の支給対象となっている配偶者が65歳になって以降、この配偶者の老齢基礎年金に加給年金から振りかえられる加算でありますけれども、こちらも老齢基礎年金が繰り下げられて、加算の対象になる配偶者が老齢基礎年金を繰り下げている間は支給されないことになっております。3つ目が、在職老齢年金制度の影響でございます。この点については、次のページのイメージ図をごらんいただきたいと思います。

14ページ、上の図が65歳から年金を受給している方が70歳まで就労し、在職老齢年金制度により老齢厚生年金の一部が支給停止になっている場合のイメージとなります。この方が繰下げにより受給開始時期を、例えば、70歳までおくらせた場合が下のイメージ図になりますけれども、右端の赤字で示している在職支給停止部分につきましては、繰下げによる増額の対象から除かれますので、繰下げのインセンティブがそがれているということが考えられます。ただし、こうした制度設計は、受給開始時期の選択にかかわらず、在職老齢年金制度を適用するための措置でございまして、繰下げ受給者を不利に扱うためのものとはなってございません。

15ページ、繰下げ制度の周知につきましては、65歳時に送付するリーフレットなどによって行っておりますけれども、従来、左側のものは文字のみで、また、メリットがわかりづらかったものとなっていたために、昨年度に見直しを行いまして、右の図のように、図を活用したり、直感的にメリットが伝わるような見直しを行わせていただいたところでございます。

16ページ、前回の年金部会の資料でもお示ししましたように、高齢期の就業が拡大しておりまして、特に60歳台前半の就業率の上昇が大きくなっております。また、こういった傾向は男性だけではなく、女性の就業率の上昇も大きくなっていることも前回御説明したとおりです。必ずしも全ての60~64歳の方々が継続雇用などで働けて厚生年金に適用されているわけではございませんけれども、先ほど申し上げたような、前回お示ししたデータも踏まえますと、現在、国民は相当程度何らかの形で働かれて保険料を厚生年金に拠出しているとも言えるのではないかとも思っております。そこで、60歳までの保険料拠出を前提としているモデル年金に対しまして、60歳で退職せずに継続雇用などで働いたら水準がどうなるかを見るため、一定の仮定、60~64歳までの継続雇用とか、65~69歳までのさらなる継続雇用、あるいは65歳以降の繰下げが行われた場合におけます年金水準の変動を事務局で機械的に試算してみたものでございます。これによりまして、継続雇用が個々の方の年金水準にどのような効果を与えるのかということがある程度ごらんいただけるのではないかと思っております。

17ページ、これらの試算は、現行制度をベースにしたものとなってございます。モデル年金と異なりますのは、60歳以降の継続雇用や繰下げといった要素でございまして、いずれも個人の選択の結果、もたらされる変動となってございます。まず、65歳以降に継続して働いた場合の年金水準の変動を2014年度の数字で見てまいりたいと思います。左端に番号を振ってございますが、①は平成26年度財政検証のモデル世帯になってございます。20歳から60歳まで、現役男子全体の平均標準報酬42.8万円で働いた場合、夫婦を合わせて世帯の年金額は21.8万円、所得代替率は62.7%となっております。②のケースは、①の方が、さらに65歳まで、60~64歳の平均的な標準報酬月額でございます35.1万円で継続就業した場合にどうなるかですが、年金月額は22.8万円に改定されます。さらに、所得代替率と比較してどの程度水準が上昇したかを見るために、この年金額を所得代替率で用いている分母である現役男子の平均手取り賃金の34.8万円で割った水準をお示しいたしますと、65.4%になります。この数字は、本資料では所得代替率とは異なる指標であることを明確にするために「改定後水準」という形で表記して、使わせていただきたいと思います。③の場合は、この②の方がさらに70歳まで繰り下げた場合にはどうなるかというものでございます。ですので、繰下げはしていない形で、65歳に接続する形で70歳まで継続して就業した場合でございまして、⑤は、今のケースの方がさらに働いて賃金をもらいながら、年金を繰り下げるという選択をした場合でございます。それぞれ改定後の水準は上昇していることがごらんいただけると思います。特に繰下げを行った③と⑤の改定後水準は90%を超えるということがごらんいただけると思います。⑥と⑦は賃金構造基本統計調査の短時間労働者の男性のケースの賃金で、週20時間という厚生年金の適用の一番下の水準で働いた場合の数字でございます。こちらの改定後の水準は上昇しているということがごらんいただけると思います。

18ページ、こちらは60歳以降に継続して働いた場合の年金水準の変動につきまして、平成26年財政検証のケースEの場合におけるマクロ経済スライドの調整期間終了年度であります2043年度で見た場合のものになります。2043年度では、マクロ経済スライドの調整によりまして、①にありますとおり、モデル年金の所得代替率は50.6%になっております。一方で、60~64歳までの継続雇用をされた場合とか、65~69歳の継続雇用、65歳以降の繰下げが行われた場合の年金水準、先ほどと同じパターンでやっておりますけれども、それぞれお示ししている数値のとおりの上昇となっております。例えば、70歳まで継続雇用いたしまして70歳まで繰り下げた場合である⑤のケースを参考までに御紹介申し上げますと、改定後の水準は77.6%になっております。

20ページ、続きまして、在職しながらの年金の受給の在り方、いわゆる在職老齢年金制度や退職後の年金の改定などにつきまして、御説明申し上げたいと思います。在職しながらの年金受給の在り方といたしましては、まず、在職老齢年金制度の概要を御説明したいと思います。在職老齢年金制度は、就労いたしまして一定以上の賃金を得ている60歳以上の厚生年金受給者を対象に、原則として、被保険者として保険料を求めるとともに、年金支給を停止する仕組みとなっております。60歳台前半につきましては、基本的に就労期間であるという位置づけのもと、賃金が低い在職者の方に対しましては、その賃金を保障するという観点から、在職老齢年金として一定のルールのもと年金を支給する仕組みであるという位置づけになっております。具体的には、賃金と年金の合計額が28万円を上回る場合に、賃金2に対して年金1が支給停止されております。65歳以降につきましては、働いても不利にならないようにすべきだということと、現役世代とのバランスから一定以上の賃金を得ている方につきましては、年金給付を一定程度我慢してもらいまして、年金制度の支え手に回ってもらうべきであるという2つの要請のバランスの中で、高賃金の在職者の年金を支給停止する仕組みとなっております。こうした趣旨に鑑みまして、65歳以降の在職老齢年金は60歳台前半のものよりも緩やかな仕組みとして設計されておりまして、支給停止の基準額は46万円となっております。なお、数字でございますけれども、こちらは平成28年度末の最新の数値にアップデートをさせていただいておりまして、一元化の影響もあって共済の数字が入っておりますために、65歳以降の在職老齢年金の支給停止額は、従前3000億円と比較しまして上がっておりまして、約4000億円となっております。

21ページ、在職老齢年金制度の導入と見直しの経緯をまとめたものになります。昭和29年の厚生年金制度創設当時は、在職中は年金を支給しない制度となっておりました。それが、昭和40年の改正で、65歳以上の在職者に支給される年金として在職老齢年金制度が導入されました。昭和44年改正で、在職老齢年金は60歳台前半にも拡大されましたし、その後、就労インセンティブをできるだけ阻害しない方向を基本とした類似の改正を経まして、現在の形に至っております。

22ページ、こちらは支給開始年齢の引き上げと在職老齢年金制度の関係を整理させていただいたものです。60歳台前半、左側ですけれども、在職老齢年金制度は、支給開始年齢の引き上げが完了する2025年、女性で2030年までの経過的な措置となっております。受給者の約19%が対象となっており、一定の就業抑制効果を認める研究結果もございます。なお、60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金は繰り下げることができない年金となっております。他方、65歳以降の在職老齢年金制度では恒久措置となっております。受給者の約1.4%が対象となっておりまして、明確な就業抑制効果を認める研究結果は見られません。なお、65歳以降の年金は70歳までの繰下げが可能でございます。

23ページ、60歳台前半の在職老齢年金制度の状況でございます。60歳台前半の在職している年金受給者につきまして、賃金と年金の合計額を階級別に見てみますと、「70万円以上」を除きますと、支給停止基準額である28万円の直前の階級に最頻値がございまして、60歳台前半の在職老齢年金の基準が意識された雇用環境あるいは働き方となっている可能性が示唆されるデータとなっております。

24ページ、他方で、65歳以降の在職老齢年金制度の状況につきましては、70万円以上を除いた場合の最頻値は「22万円以上~24万円未満」にございまして、在職老齢年金の支給停止基準額と就労の状況の間には明確な関係は見られない形となっております。

23ページと24ページは賃金と年金の合計額で見てまいりましたけれども、25ページは賃金と年金の組み合わせの状況がどうなっているかを分解して見ているものになります。横軸が賃金額、奥行きをあらわす軸が年金額となっておりまして、高さは賃金と年金の組み合わせに該当する受給権者数の数をあらわしています。青色の部分が在職老齢年金制度による支給停止の対象でない方で、オレンジ色と茶色の部分が支給停止の対象者となっております。60歳台前半、65歳以降ともに、大きく分けて、年金額・賃金額ともに低いあるいは中程度と評価できるグループと、右端のように、賃金額も年金額も高いグループの2つに明確に分かれていることがごらんいただけると思います。60歳台前半につきましては、在職老齢年金による支給停止の基準が低いために、年金額、賃金額ともに低いまたは中程度のグループの中で、賃金額が比較的高い方も支給停止の対象となっていることもごらんいただければと思います。なお、65歳以上についてはこういう傾向が見られないところです。

26ページ、在職老齢年金制度が高齢者雇用に与える影響を分析した研究を、幾つか御紹介申し上げます。まず、60歳台前半につきまして、在職老齢年金制度による一定の就業抑制効果を認める研究を2つ御紹介します。2004年の清家教授、山田教授の研究では、1994年改正前後における、厚生年金受給資格者及び受給資格のない者の勤労収入分布の比較により分析を行っており、1994年改正前では、年金受給資格者の多くが8割の年金受給を受けるために就労を抑制したと分析しています。また、1994年改正で一律2割停止後は緩やかな制度に、先ほど御紹介申し上げたとおり、改正が行われておりますけれども、それにもかかわらず、収入制限の制度は厚生年金受給資格を持つ高齢者の就業行動になお影響を与え続けていると分析しております。下にございます、2012年の山田教授の研究では、退職老齢年金制度の就業抑制効果について、就業確率関数を用いた分析をしておりまして、2009年時点において在職老齢年金制度の支給停止が定額部分まで及ぶ63~64歳について、就業確率を引き下げる効果が観察されております。ただ、この解釈については、改正高年齢者雇用安定法の影響も考えられるために、一定の留保が必要と分析されております。

27ページ、2つの研究論文からの抜粋ですので、御参照いただければと思います。

28ページ、こちらは2018年に発表された内閣府政策統括官(経済財政分析担当)による研究結果でございます。こちらの研究では、60代が、フルタイム、パートタイム、非就業といった就業形態を選択する際に影響を与える要因でございます。健康状況、親族への介護、在職老齢年金制度、企業における継続雇用制度などについて、分析を行っております。この中で、在職老齢年金制度につきましては、60代全体で見た場合に、在職老齢年金による支給停止がなかった場合にフルタイム就業を選択する確率が2.09ポイント上昇するとされてございます。他方で、年齢別に見た場合、65歳以上では年金支給停止の基準額は高いことなどから、在職老齢年金制度による年金停止が比較的起きにくいため、こういった影響は小さい結果となっております。なお、この結果には、試算に用いた期待賃金が実際よりやや低目に分布している点に留意が必要となっております。また、年齢別に見た場合における65歳以上への影響は小さい結果となっておりますけれども、今後は、65歳以上においても高齢者の就業環境が整備されることで報酬が上がりまして、支給停止の対象となるケースがふえた場合、これまで以上に就業意欲を抑制するリスクがあるという点も指摘されております。

29ページ、年金受給開始以降に納付した保険料が、どのように年金給付へ反映されるのか。いわゆる退職改定の概要の説明になっております。65歳以降に年金を受給しながら厚生年金に加入し保険料を納めた場合には、その納めた分の反映は、退職するか、あるいは70歳になって被保険者でなくなったときに年金額に反映・増額されるという、このタイミングで増額されるようになってございます。

続きまして、高齢期の就労と年金制度に関する過去の年金部会による議論の整理や最近の政府決定について御紹介申し上げたいと思います。

31ページ、2015年1月に年金部会でまとめていただいた議論の整理でございますけれども、就労と年金受給の関係、繰下げ受給のメリットを国民に伝える工夫が求められる。65歳以下の在職老齢年金制度については、見直しという方向で検討してもよいのではないかという意見と、現行の財政フレームのもとでどのような財政影響があるのかも考慮する必要があるとの意見が両方ございました。65歳までの在職老齢年金については、支給開始年齢の引き上げに伴い自然と対象者が減少していくことにもなるので、特段の見直しを行う必要はないと整理されてございます。

32ページ、高所得者の年金給付の見直しにつきましては、年金制度内部の部分最適の追求だけではなく、年金に係る税制、福祉制度などを含めた全体最適の観点から、公平・公正となるよう、また、高齢者の就労インセンティブを阻害しない観点から、幅広い議論を行う必要があると整理されております。

33ページ、こちらでは平成30年度に行われました公的年金等控除の適正化と基礎控除の振りかえという税制改正の概要について御紹介いたします。公的年金等控除につきましては、公的年金等の収入が1000万円を超える場合の控除額に条件が設けられまして、また、年金以外の所得が1000万円超えの年金受給者の控除額が引き下げられております。こちらの税制改正は2020年1月1日よりの施行となっております。

34ページ、こちらは税の改正内容でございますが、フリーランスや起業、在宅で仕事を請け負う子育て中の女性など、さまざまな形で働く人をあまねく応援いたしまして、また、働き方改革の後押しとなるように、基礎控除の引き上げが行われておりますが、その振りかえ財源として、先ほど御説明した公的年金等控除の減額が使われております。

35ページ、2018年2月に決定された高齢社会対策大綱でございます。

36ページ、2018年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2018、いわゆる骨太における記述でございますので、御参照いただければと思います。

最後になりますけれども、被保険者期間等の在り方です。

38ページ、まず、国民年金・厚生年金保険の被保険者資格における年齢の考え方について御説明申し上げるものです。国民年金の被保険者は、1961年の制度創設時から、20歳から60歳までの者とされております。これは、保険料を一定程度抑えた中で一定水準の給付を支給するのに足る期間を確保することと、加入対象となる自営業者は、60歳までは一般的に保険料の負担が可能でございますけれども、60歳を超えれば所得能力が減退し始めまして、保険料を負担する能力はなくなるという就業実態を踏まえて、60歳と設定されております。現在、厚生年金の被保険者は、適用事業所に使用される70歳未満の者で、下限は設けられていないところでございます。厚生年金につきましては、1985年改正前は上限がございませんでしたけれども、1985年改正におきまして、老齢基礎年金の支給開始年齢を平均的な当時の引退年齢と考えられました65歳を原則としたことを踏まえまして、被保険者の年齢の上限を65歳未満と設定したところでございます。また、2000年改正におきましては、60歳台後半でも報酬のある方は、保険料を負担して年金制度を支える側に立つことが望ましいという理由から、65歳から70歳へ上限が引き上げられたところでございます。

39ページ、老齢基礎年金の受給権者の加入履歴を御紹介申し上げたいと思います。基礎年金のうち、1号期間に係る給付が男性で約2割、女性で約5割程度、下のグラフの青いところでございますけれども、厚生年金に係る赤の給付の割合のほうが大きく、受給権者の年齢が下に下がっていくほど、1号期間の割合が低下しておりまして、この傾向は特に女性で顕著にあらわれていることがおわかりいただけると思います。また、さらに下の図でございますけれども、現役でございます基礎年金拠出金の算定対象者の数で見ましても、1号保険料の青の部分は全体の14%となっておりまして、今後、1号期間のウエートはさらに低下していくことが見込まれているところでございます。

40ページ、こちらは、いわゆる自営業者として第1号被保険者期間のみを持っている方がどの程度なのかを見たデータとなっております。1号期間のみを有する方は11%となっておりまして、約9割の方々は厚生年金にかかわる期間を持っていらっしゃるということがわかります。これは、右にあります65歳の方だけで見ますと、1号期間のみを有する方は4.4%となっておりまして、1号期間の割合は年齢が低いほど減少していくことが考えられます。以上のことからわかりますのは、1つには、国民年金の期間だけの方は少なくて、人生のうちで何らかの厚生年金の期間を持っている方が大宗であるというということ。それから、基礎年金は今や厚生年金の方々のための制度でもあると、十分に説明可能な状況になっていることではないかと思っております。

41ページ、最後のページの資料は、就業年齢と公的年金等の適用(加入)・受給の関係をまとめた資料になります。

私からの説明は、以上になります。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

高齢期の雇用とそれに関連する年金制度の事実関係について詳しく御説明をいただきました。

それでは、ただいま御説明いただきました内容につきまして、御質問あるいは御意見があれば、頂戴したいと思います。いかがでございましょうか。

○牧原委員 在職老齢年金についてこの部会では、高齢期の就労に対して中立な年金制度という観点で検討をされていると理解しています。65歳以上を対象にする在職老齢年金制度については、今回の説明の資料で、必ずしも就業への影響はないという結果が出ていると理解しました。また、65歳以上の在職老齢年金の基準額は月額で46万円ということでありまして、平均的な現役の世代に比べれば相対的に恵まれた方々でありますので、この在職老齢年金制度の見直しを通じて、こうした方々の年金給付を増やすということは、年金の本来持っている所得再配分の機能から考えると、その必要性があるのか疑問に感じています。

さらに、これを廃止・見直しとした場合に、今回の資料にありますけれども、4000億円という財源が必要になるということが大きな課題であり、それについても考えなければならないと思います。公的年金は真に必要な人への給付の重点化を図ることが重要であると考えますと、この在職老齢年金制度の枠組みは基本的には維持すべきではないかと考えています。

他方で、公平性の観点で言いますと、この在職老齢年金制度というのは、被用者保険の加入者のみが対象になっているということであります。就業形態が多様性を持っているということを考えると、こういう点については見直しが必要ではないかと思います。さらに、高齢者の中でも特に所得が多い方々については、今回の議論の中でも触れられておりましたけれども、年金支給停止を考えていくことは一つの論点としてはあるのではないかと考えています。

在職老齢年金制度について、以上、意見を申し上げました。

○神野部会長 ありがとうございます。建設的な意見を頂戴いたしました。

ほか、どうぞ御遠慮なく、いかがでございましょうか。

どうぞ。

○永井委員 ありがとうございます。

在老の話ではないのですが、スライドナンバーでいきますと、17ページ、18ページのところですが、60歳以降、継続して就業した場合の年金水準の変動について示されております。17ページは2014年度、18ページのほうが2043年度でございまして、さまざまなパターンで想定される年金月額の表が示されております。こうした表が提示されることで非常にイメージが湧くところなのですが、ただ、私もちょっと違和感を持つところがあります。今回、2014年財政検証のモデル世帯が基準とされておりますので、当然現役男性全体の平均標準報酬というところがベースになっておりますし、基本的に男性のモデルになっているわけなのですけれども、例えば、女性が働いた場合の年金水準の変動は残念ながらこの表では読み解くことができないと思います。

8月の労働力調査では、15歳から64歳の女性就業者の比率が初めて7割台に達したということでございますし、2015年の国勢調査によりますと、単独世帯の割合では65歳以上の女性が男性を上回っているということが出ております。男性も女性もともに、働き方やライフスタイル、また、家族形態も非常に多様化し、変化しておりますので、今後の議論に際しましては、そのような観点も広く視野に入れていただいて試算も示していただきたいと思っております。

以上です。

○神野部会長 これは、事務局でいずれかの時点で準備していただくことは可能でしょうか。

○年金課長 このような形での一定の仮定を置きました機械的なものであれば、ある程度はお答えできるのではないかと思いますが、お時間いただいて、あとはタイミングもございますので、その辺はまた御相談をさせていただきながらと思います。

○神野部会長 わかりました。運営状況を見ながら、事務局にも御努力いただくかと思います。

ほか、いかがですか。

どうぞ、諸星委員。

○諸星委員 今まさに永井委員がおっしゃっていたことを私も意見として述べさせていただこうかと思っておりました。先ほどのところですが、以前も確認したときに、現役男子をとにかく基本にしているということだったのですが、これから女性の就労をもっと促進しましょうとか、適用拡大を進めていきましょうという流れであれば、現役女子を基準にした資料についても、先ほど御回答がありましたけれども、可能ではないかということを感じました。

最初のころの部会で、今、現役女性で一番多い標準報酬月額は22万円という数字に、正直、私は驚いたので、そうなると、65歳以降の繰下げについて、女性の方々は、先ほど牧原委員のお話もありましたけれども、よほどの層でない限り選択をするメリットをそもそも感じることができるのかという疑問を持たざるを得ないということを感じています。

御指名いただきましたので、別に幾つか御意見を述べさせていただきますと、繰下げ制度自体は、前回の部会でも原委員が発言されていたように、きょうの資料にも、12ページ、13ページとありますけれども、阻害原因として、65歳前に年金をいただいている方が一時的にやめて繰下げを選択するのかというと、現場で御相談を受ける限りは、あまりそこは選択の眼中にないと言ったら言い過ぎかもしれませんが、これは65歳時にか確認する際にマルをすればいいのかという程度で、そのままわからずに65歳以降も引き続きいただいてしまうということが実態です。ですので、先ほど、7年たたず一定の阻害原因がなくなれば、選択が65歳という一本になるので、逆にわかりやすくなりますから、そのときにどういうことが起きるのか、あるいはそれを踏まえてこの中でどうするのかということを議論していくほうがいいのかなと思います。

もう一つ、先ほどの15ページに繰下げの広報として、リーフレットの改善後の抜粋がございましたが、図を多くしてわかりやすくなったのですけれども、まだまだ一般の方々に伝えるためにはもう一工夫必要ではないかということを、正直、感じております。例えば、本日の資料にありますように、目安として年収が幾ら以上の方だったら65歳以降の繰下げもいいですよとか、あるいは、現実には賞与の支給の有無は関係するため個々の事情にもよるのですけれども、現在、健康に問題がないですかとか、まだ意欲的に働きたいですかとか、働く場所が現在もあるのですかとか、あるいは少しでも将来の年金額をふやしたいのでしょうかとか、決して誘導ではないのですが、そういった周知の中に、このようなことを希望するのであれば繰下げということもありですよということ、目的を具体的に示していただくこともいいのかなと、感じております。

それから、前回の原委員が発言された議事録を読んでいるのですけれども、繰下げを選択する知識をどうやって広げていくのかということは、先ほど言いましたように、重要なことですし、実際、現場で繰下げを選択する方はほとんどが大手企業の役職の経験者であったり、中小企業の事業主の方で比較的高収入の人が多いことが現実でございますので、70歳以降に広げるにしても、その点をきちんと考慮しなければいけないと思いますし、もう一つは、70歳以降も在職老齢年金の調整は続きます。いわゆる厚生年金の資格は喪失をするのだけれども、調整が続くということを意外と知らない方が多くて、実際、届出もしなければいけないのに、していなかったと。うっかりしていて、後で届け出て戻すのが大変だったとかというお話も聞いていますので、丁寧に現場で御説明をすることも必要なのかなということを感じました。

○神野部会長 権丈委員。その後、出口委員。

○権丈委員 先ほどの共働きの試算、今は女性も多く働いているというところがあるのですけれども、2009年だったかな、そういう声を反映した試算をやりました。やったときに、男性の平均所得が1、女性は大体男性0.6だという形で、1.6の家計所得で計算し、そうすると、夫婦で1人当たり0.5、0.5から0.8、0.8になって、年金給付水準は上がります。上がるけれども、所得代替率が下がります。そういう仕組みになっています。それを見たメディアを初め、いろいろなところで、専業主婦優遇だとかという議論が巻き起こって、これを静めるのにえらい大変だったので、くれぐれもそのあたりのところは注意しつつ公表していただければと思っております。

それと、在職老齢年金の話はなかなか難しくて、本日の資料にもありましたように、低在老には就労インセンティブに悪影響を与えるが、高在老は与えていないということがわかっていると、今までの制度でいいのではないかと思う人が多くなるのですけれども、現実には専門家でさえそうした知識を持っていない人が多くて、世の中では在老は廃止すべしという論調のほうが強かったりします。これも面倒くさい話で、これまでの在老は見直し、廃止を視野に入れた検討項目として、長い間、いろいろと会議とか報告書で触れられてきたわけで、恐らく私の読みでは5年後の年金部会でも在老をどうするかの議論をしていると思います。

そうなってくると、このあたりでいい加減に廃止してもいいのではないかと思うところもありまして、廃止することができるのであれば、社労士さんとか、ファイナンシャルプランナーの人たちによる繰下げ受給に対するアドバイスがよりシンプルでストレートなものになりますし、いわれのない年金批判も免れることができると思っています。何よりも、スウェーデンのオレンジレターのようなものを国民に送ることができますし、ワークロンガー(Work Longer)を掲げる人生100年社会における年金として、ストレートなメッセージを発することができるとも思っております。とはいっても、これは現実に廃止することは難しいわけで、これ廃止しようとすると、メディアは格好の餌食が出てきたということで、高所得者優遇と言って、政治家と年金局を総攻撃すると思います。

このあたりは実に難しいところで、義務教育である小学校とか中学校が無料であることを高所得者優遇とは言わないのですね。だけれども、保育を無料化しようとすると、世の中は高所得者優遇と言って大変な騒ぎになります。つまり、現状の保育料の設定方法から保育の無料化のほうに図ろうとすると、高所得者優遇という形で相当批判が出てきて、1回でき上がった制度を社会全体の理念に沿った価値のあるシステムに変えようとすると、これは大変なハードルを越えなければいけなくなってくる。

それと似たように、在老をなくした公的年金制度は、人生100年年金としてすっきりしたものになるとは思っておりまして、70歳以上の在老は、スライドの21の「70歳以上にも、60歳台後半と同様の在職支給停止を導入」とありましたように、平成16年改正のときに、このままでは保険料率が18.35%になるから、何とかして18.3%にならないかという政治家の要請に応えて、年金局が0.05%を捻出するために生まれたという、大した理屈があってつくられたものではないのですね。

そういうこともあって、先週、日本年金学会がシンポジウム「2019年財政検証に向けて」というものを開いて、そこでまとめた議論としての「まとめ」というもので、人生100年時代の公的年金保険、Work Longer社会に向けた平成16年フレームの深化のためにというものがあるのですけれども、そこでは65歳以上の在職老齢年金の廃止の財政影響を示してほしいというものがあります。

平成26年財政検証のときのオプション3では、高在老を廃止した場合の試算がなされています。けれども、来年、もし可能でしたらば、仮に継続した場合の試算を行って、高在老をなくしたためにマクロ経済スライドの調整期間がどれほど長くなるのかということを議論の材料として提供していただければということが、先週、大体皆さんの議論をしたところでまとまっているところかと思っておりますので、発言させていただきました。

○神野部会長 ありがとうございました。

お待たせしました。出口委員、どうぞ。

○出口委員 4ページの「諸外国における高齢者雇用法制と年金の支給開始年齢等」の表を素直に読み、これにプラス、日本はここに掲げられた国に比べたら、はるかに長寿ですよね。日本が最長寿の一つであり諸外国がこうなっているということを素直に考えて、どういう示唆が得られるかといえば、普通に考えたら定年はやめなければいけない。仮に残すとしても、フランスのように原則70歳以上ぐらいにすることが一番やらなければいけないことだと思いますし、支給開始年齢についても、アメリカやドイツ、イギリス等で引き上げているというファクトを見れば、日本はさらに高齢社会なのだから、この4ページの表を見て、日本が一番長寿国であるというファクトを見れば、これからの政策の基本は、定年の廃止であり、支給開始年齢は例えば70歳ぐらいにすることが、誰が考えても自然ですよね。そのように私は4ページの表を読んだのです。

同じように、ごく自然に考えたら、11ページにシンプルな表がありますが、これも少なくとも5歳ずつ右に持ってくるというのが、諸外国や日本の平均寿命を考えたらごく普通の発想だと思うのですよね。だから、そういうファクトに基づいた大きい方向性にみたいなものをきちんと示すべきだと、私は思います。

それから、全てのデータで、男性、女性を併記するのが当然だと私も思います。権丈先生がおっしゃったように、もしそれが、専業主婦優遇とか、大問題を引き起こすのであれば、逆に専業主婦というものがおかしいということをもっと言っていくべきであると思いますし、後ろで聞いておられるメディアの方も、本当に議論をちゃんと聞いていただいて、この資料を見ていただいたら、そんなアジテーションをされるとはとても思えませんので、男性も女性も入れて、健全なデータを示していくほうがいいと思います。

1つ、権丈先生のお話でショックだったのは、5年後にもまだ在老を議論しているかもしれないという見通しだったのですけれども、せっかく今議論しているのだったら、ここで結論を出してしまったほうがいいのではないだろうかと私自身は思います。決して金持ち優遇でも何でもないので、いろいろな問題点があるとしても、基本的には廃止すべき方向で、ここで議論していったらいいのではないかと思いました。

肝は、4ページをちゃんと見て、何が大きい方向かということをみんなでシェアすることが一番大事だと感じました。

以上です。

○神野部会長 ありがとうございました。

どうぞ。

○山田委員 在職老齢年金の話が出ていますので、私の意見ということで言わせていただきたいと思います。

65歳以上の在職老齢年金については、しっかりデータも示していただきました。現状で、特に就労に対してディスインセンティブになっているということは、それほど大きくないということが実態ということかと思います。

ただ、将来の方向性を考えていったときに、この中でもずっと議論がされているように、まさに就労ですね。シニアの就労はどんどん進んでいくという方向にあるわけですね。現状は60歳以上の就労は進んでいるわけですけれども、言葉は少し悪いのですけれども、やや福祉的就労的な側面で、ともかく雇用をふやしていこうということのわけですね。

ただ、人口動態を見ていくと、どんどん60歳以上の人たちがふえていって、今のような考え方だと、多分企業自体も回らなくなってくる。本当に戦力化していくということにしないと、日本企業自体が成り立たないとなっていくのだと思います。そうしますと、今の賃金制度自体が、60歳を超えると大きく下げるとなっていて、これは当面は仕方ないにしても、いずれこの賃金カーブをフラットにしていく、つまり、がくっと落とすということをなくしていくという方向で調整をしていかないとだめになっていくだろう。

そうすると、結果的に、60歳代後半の人も含めて、賃金水準が徐々に上がっていくという方向になっていくのではないか。あるいは、そうでなければ、日本経済全体として成り立っていかないのではないか。そうなると、在職老齢年金についても、現状65歳以上は問題はないにしても、将来的にはディスインセンティブになっていく可能性を考えますと、基本的には縮小ないし廃止の方向で考えていくことが妥当ではないか。特に今、政府全体としてシニアの活躍を示していることとの整合性から考えても、そういうメッセージは重要ではないかと思います。

ただ、実際には、確かに高所得者の優遇であったり、財源手当てなしにこれをやると、世代間の公平という問題がありますから、当面は徐々にそちらの方向性を示しながら、当面は上限を少し上げるというメッセージを出していくことが重要ではないかと思います。付随して言いますと、こういう今日議論になっている制度も含めて、かなり複雑な仕組みになっているということがあると思います。税の部分と社会保障制度のところは、渾然一体となっている印象がある。

本来的には、恐らく、これはいろいろな議論があると思うのですけれども、私自身の整理ですと、税は所得再配分という意味合いが極めて強いわけですけれども、社会保険、特に年金制度は、基本的には報酬比例的な部分があるわけで、むしろこれが就労インセンティブになったり、その賃金を上げて頑張っていこうという形のものでもありますから、そういう側面から考えても、在老は基本的には縮小していく方向。逆に、そこで穴が空いてくる財源の部分に関しては税でやるべきで、今回の資料にも少しありますけれども、公的年金控除のところですね。ここの見直しによって、まさに税社会保障の一体改革という発想の中でやっていくことが筋論ではないかと考えます。

以上でございます。

○神野部会長 ありがとうございます。

どうぞ。

○小林参考人 在職老齢年金について、意見を申し述べたいと思います。

低在老につきましては、高齢者の就労意欲を阻害している、あるいは就労調整の原因になっていることがデータでも明らかになり、実際に現場の声もいただいております。そこで、28万円の基準金額を引き上げる、あるいは月額賃金が46万円を超えても現状制度のように全額支給停止とするのではなく、支給額を徐々に縮小するなどの措置が必要と考えます。ただし、このように支給対象者や支給停止金額を縮小する場合、年金財政を毀損しないよう代替財源を確保することを大前提とすべきと考えます。

なお、高在老の部分につきましては、現在、商工会議所として実態調査を行っておりますので、コメントを保留させていただきたいと思います。

もう一点、高齢者雇用の法制化について意見を申し述べたいと思います。高齢化が進んでいるという実態はデータ等で明らかになっておりますが、高齢者の方は、体力面、気力面、あるいは働く意欲で個人差が大きいということが現実にございます。したがって、法制化あるいは実質的な義務化によりまして一律強制的に継続雇用年齢を引き上げることについては、反対でございます。また、高齢者をめぐる年金制度を議論する際には、現実に元気で働くことができる高齢者の実数など、データを交えて、実態を踏まえて議論を進めるべきと考えております。

以上でございます。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

菊池委員、どうぞ。

○菊池委員 まず、在老の関係ですが、直近の御発言がございましたけれども、従来、5年ぐらい前まで、低在老の見直しが議論の中心だったと思うのですが、専ら現在は高在老の議論にシフトをしています。このことは低在老が2025年で消滅することとも深く関連していると思いますが、低在老の趣旨が65歳支給を基本とした65歳未満の者に対する特別支給の老齢厚生年金を低賃金の在職者に支給するという趣旨である以上は、就業抑制効果の観点とはまた別に、低賃金在職者の生活水準の引き上げといった観点から議論していく意味が、今でもないわけではないと思います。

ただ、これから法改正を行ってそれを施行していく時間を考えると、やや時期を失した感がなくはないということで、以前からこの部会の委員を拝命しておった身としては、もっと早い段階できちんと発言してこなかったことを遺憾に思っておりますが、それでも議論しておく意味がないわけではないとは思います。

それから、高在老について、経済的な観点だけではなく、みずからの拠出記録に基づく給付という社会保険の対価的性格を重視しますと、賃金を勘案して一部支給停止はするべきでないという考え方もあり得るところではあります。ただ、実質的には、賦課方式化している年金財政に鑑みますと、保険料の拠出を担う現役世代とのバランスを勘案しなくてよいのかという疑問を生じます。その意味では、少なくとも高在老の全面的な撤廃という選択肢は直ちにはとり得ないように思っております。

なお、この問題は、高所得者の年金減額の問題とは切り離して考えるべきだと思っております。法的な議論はいたしませんけれども、高在老のほうは年金リスクを老齢と見るか退職と見るかという問題に、より直接的にはかかわっていることかと思います。

受給開始時期の繰下げについては、柔軟な選択肢の確保という観点から、70歳を超えての繰下げを認めることに反対ではないです。ただ、きょうも御説明がありましたように、現在でも繰下げ支給の選択をされる方は1%にとどまるということは、事実上、ほとんど選択肢としては機能していないということだと思います。

資料の13ページ、14ページで、選択されにくい要因分析がなされておりますけれども、この辺は諸星委員が現場のことをよく御存じかと思うのですが、どこまで個々人の方が冷静にその制度の中身、損得を考えて受給開始時期を考えておられるのか。あるいは、周知不足がどこまでこの数字に影響しているのかというあたりはよくわからないところで、可能なら意識調査みたいなものをやってみるという手はあるのかもしれないなと思います。

基本的には雇用の問題であって、65歳以上、高齢者の雇用保障が進んでいかないと、繰下げ時期の柔軟化をしても、結局、絵に描いた餅に終わってしまう可能性が高いということかと思います。それに関連して、先ほど出口委員が少しおっしゃっておられましたが、支給開始年齢の引き上げをはなから議論の俎上から除外してしまうのではなくて、せっかく財政検証の時期でもありますので、将来的なこともありますので、支給開始年齢の引き上げというものも、議論しておく必要があるのではないかということが私の考え方でございます。

以上です。

○神野部会長 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 ありがとうございます。

きょうの一つの中核的なテーマは高在老ですけれども、これについては、私は先ほどの山田委員とほぼ同じ見解ですので、ここは繰り返しません。

きょうあまり議論がされていない部分で、39ページの部分はこれは大変興味深い資料でありまして、まさに基礎年金あるいは基礎年金拠出金が、こういう年金制度全体を下支えする仕組みになってきていると、財政調整の意味がここでかなりはっきりしてきたので、これは大変興味深いだろうと思います。

1つ、これについて質問があるのですけれども、39ページの下段にある拠出金対象者数は、将来もこういう傾向が続くのかどうかと見るためには、年齢別につくることはできるのか。あるいは、コホート的に見ることができるのか。それは適用拡大の問題も含めて意味が出てくるのではないかと思いますので、もし可能であれば、ここは資料が加わればいいと思います。

17ページは、本当に書き方の問題であくまでも確認事項ですけれども、注2「現役男子全体の平均手取り賃金」という表記なのですけれども、これも念のためにデータはどういうふうな意味だということなのか。2号なのか、厚生年金加入者の平均給与なのか、労働統計からつくられたのかということははっきり表記があったほうがわかるかなと思いました。

3つ目が、4ページ、これは全く今まで議論されていなかった質問になるのですけれども、繰上げ・繰下げ受給について、まず、繰下げはほとんどなくて繰上げが多い。これはそのとおりで、平成26年数理部会のピアレビューでは、繰り上げている方、つまり早くもらっている方は、老齢年金の失権率、死亡率が高く、短命の方が繰り上げている。つまり、長生きをしないから、自分はリスクが高いので早目にもらっているという意味では、繰上げについては、データを見る限りでは一部合理的な行動かと思います。

質問したいのは、財政中立的に繰下げ・繰上げの指数を決めておく必要があるのかどうかというところでありまして、先ほど事務局からは財政中立的にこれを設定しているとお話しされましたが、繰下げ・繰上げを実際に導入している国で、これは私が調べたのは2007年代時点の各国比較なので、その後、どうなっているかわかりませんけれども、両方がそろっている国は、日本、アメリカ、ドイツ、フィンランド、スウェーデン。このスウェーデンやフィンランドは恐らく最低保障を除いた部分だろうと思いますけれども、これらの国の日本以外は、もちろん平均寿命のみならず、金利も影響があると思うのですけれども、必ずしも平均寿命と中立的にはしていないような感じもするのです。これは、繰下げ・繰上げを誘導的に多少調整することは、選択肢であり得るのかどうかということを聞いてみたいと思いました。

○神野部会長 資料の要求については、また後で検討していただくとして、今、2つばかり御質問があるかと思いますが、それをお答えいただければ。

○数理課長 数理課長です。

ただいま駒村委員から2つ御質問がございましたけれども、繰上げ・繰下げの率の決め方の考え方についてということですが、諸外国についての考え方につきましては、今、この場でぱっとわかりませんので、可能な範囲で、今後、調べさせていただきたいと思います。

日本の繰上げ減額率、繰下げ増額率につきましては、数理的に生涯受給額が等価となるようにということを基本にしてやってきておりまして、直近の繰下げ増額率につきましても、2000年改正の際に政令で定めたということになっておりますので、基本的には生涯受給額が等価を基本に考えていくということかと、現段階では考えております。

もう一点、データの関係で、17ページの注2のことだったと思いますけれども、これは基本的には平成26年財政検証で所得代替率をはかるときのモデルとベースを合わせておりますので、①の年金月額なり所得代替率は、平成26年財政検証の足元の数字、年金月額21.8万円、所得代替率62.7%となっているということでございます。

その際の現役男子の公租公課を控除する前のグロスの平均標準報酬額が左上にありますように42.8万円ということでございまして、所得代替率を計算するときの分母が手取りベースになりますので、それが34.8万円になるということですが、この手取りの割合につきましては、足元の家計調査などの実態を見て可処分所得割合を設定して、財政検証の出発データとしているところでございます。

○駒村委員 今の部分で、その「現役」は何歳から何歳までか。

○数理課長 基本的には、全被保険者の平均ということになりますので、15~70歳までの平均ということになります。

○神野部会長 よろしいですか。

小野委員、どうぞ。

○小野委員 ありがとうございます。

在職中の年金の扱いに関しては、さまざまな方法があると思いますし、さまざまな工夫があっていいのではないかと思います。例えば、スウェーデンでは、仮想勘定の一定割合、25%、50%、75%の中から年金受給を選択できると聞いております。これは、部分繰下げという概念に相当するのだろうということであります。

アメリカでは、就労に伴う収入と年金額の調整は、繰上げ受給に対してのみ適用されるということだったかと思います。Full retirement age到達後は減額されないということでありまして、また、繰上げ中の減額は、概念としてはWithheldでありまして、Full retirement age到達時に、これを原資として年金額の増額に充てられるという仕組みになっていると理解しております。

ここまでは海外の例なのですけれども、資料を拝見していまして、在老の支給停止と繰上げ・繰下げというのは少し相性が悪いなという印象を受けました。また、低在老がなくなった後の繰上げ受給に関しましては、私の理解では、在老の支給停止が適用されないのではないかと思っております。財源の問題はありますけれども、これは先ほど権丈委員が御指摘のとおり、年金数理の立場からいっても、財政検証で検討していただき、それを踏まえた検討が必要になってくるのではないかと思います。

続きまして、75歳までの受給開始可能期間の拡大は支持いたしますし、被用者年金の被保険者の年齢も引き上げることが相当だと思います。その際に、75歳まで就労した人が65歳からの10年間に積み上げた年金の取り扱いなのですけれども、65歳~70歳までの分は、一旦70歳で整理した上で5年間繰り下げるという取り扱いもあり得るのではないかと思いますし、そのほうが就労インセンティブは高まるかもしれないと考えています。このあたりも、財政検証の中で御検討いただくようなことかと思います。

最後になりますけれども、以上のコメントの一部は、先週開催されました日本年金学会のシンポジウムにて私自身が学ばせていただいたことを含んでいることを申し添えます。

以上でございます。

○神野部会長 ありがとうございます。

平川委員、どうぞ。

○平川委員 最初に、スライド12ですけれども、繰上げ・繰下げ制度の利用状況で、国民年金の繰上げ割合を見ると、大分下がってはきていますが、まだ相当の方が繰上げを選択されているということかと思います。先ほど駒村先生が言いましたとおり、それぞれの事情の中で繰上げを選択せざるを得ない方も大変多いとは認識している一方で、ただ、この繰上げの理由がそれだけではない方もいるかと思いますので、引き続きどういう形で制度の理解を進めていってもらうのかということも含めて、広報も含めて考えていく必要があると思っているところであります。

そういう中で、スライド11で、受給開始時期の期間についてですが、加給年金や振替加算が支給されないという問題等々を含めて、この繰下げをためらわせる要因についてどう考えていくのかということは引き続き検討していくことかと思いますし、また、先ほど広報の工夫や手続の実務の面の改善ということも議論がありましたけれども、私としてもそういうことは大変重要なのではないかと思っているところであります。

それから、在職老齢年金についてです。公的年金は社会保険であり、給付と負担の関連性が高い制度です。また、社会保険としての信頼性を維持するという観点からすると、今のこの高在老の在り方はどうなのかということも考えていかなければなりませんが、一方で、年金の目的が高齢や障害になって就労することが困難になって、これによってこの所得の減少や喪失に対応するということからすると、高齢のリスクという意味を考える必要があります。またさらに若年世代との均衡から考えると、高在老を一律に廃止することは少し疑問があるのかなと思います。その辺はいろいろな側面がありますので、一つ慎重に考えていく必要があるのではないかと思っているところであります。

また、60歳~64歳の低在老の関係でありますけれども、これは明らかに就業抑制の効果があるということでありまして、私の経験上からも、職場で労働組合の役員をやっていたころは、この就労抑制は、勤務時間を短くする・長くするというだけではなくて、モチベーションまで影響を与えてしまうような感覚もありましたので、この辺は大きな課題としてあったと思います。感想として述べさせていただきたいと思います。

最後のほうのスライド40~41の基礎年金の拠出金の関係であります。この辺は、今回は紹介のみという形でありますけれども、基礎年金制度は1985年制度改正で導入されましたけれども、それを導入するための国会の議論の議事録を読んでいますと、この拠出金に対しての考え方がさまざまに議論されております。国会答弁で当時の年金局長は、各厚生年金や国民年金等を含めて、共済もそうですけれども、それぞれの制度から共通のルールでこの基礎年金拠出金にお金を出していくのだということで、特に公平性をすごく強調されていたのかなと思っているところであります。

ただ、現実問題、厚生年金の2号の方からよく言われることが、例えば、18歳から就職して、19歳までの保険料、60歳から64歳の期間の保険料は基礎年金に反映されないのはおかしいのではないかとよく言われるのですが、そうではなくて、共通のルールのもとで基礎年金勘定の拠出しているのであって、マクロとしては全体の年金財政に貢献しているという、そういうことも含めて、この拠出金の在り方についてのしっかりとした説明というか、考え方を引き続き整理していく必要があるかと思っています。

我々としても、この拠出金の在り方、基礎年金の算定基礎の問題も含めて、今回の年金改革の大きな課題になるのではないかと認識をしつつありますので、ぜひとも今後の資料提供に関して、事務局の御努力もお願いしたいと思っているところであります。

以上です。

○神野部会長 ありがとうございます。

どうぞ。

○高木委員 当然、70歳まであるいは70歳を超えてまで働きたいという意欲を持った方々が働ける社会になることはすばらしいことですし、また、思いますのは、受給開始時期を繰下げする人々が多く出てくる、そういった社会になることもすばらしいことだと思うのです。それはなぜかというと、財源的な問題はあるかもしれませんけれども、それ以外にも、それがすばらしい社会と言えることがあると思うのです。

例えば、今、繰下げ受給を選択する人は非常に少ないということで、リーフレットの改善をしたり、あるいは最大で42%の増額が見込まれることを広く周知することが大切かもしれないのですが、それは一種の経済的な人間像に訴えかけるという方法だと思うのです。しかし、それ以外の方法もあるのではないかと思います。

繰下げ受給を選択するということがどういうことかというと、寿命は予見できないので、ギャンブル性が伴うものと考えています。そうしますと、堅実な人ほど65歳を選択するのだろうと思うのですが、このより堅実な人が65歳ではなくて70歳まで繰下げを選択するときに、何がその人を動かすのかと考えると、この年金部会とは全く異なる文脈で、私の研究分野で思いつく言葉があるのですけれども、かつてのハーバーマスとかフーコーが「公共圏」という言葉を使っていたのですが、彼らの言う公共圏は、みんなが集まって議論するカフェとかコミュニティなどに象徴されるものでした。もしかしたら現代における公共圏は、年金制度というものに参加する、それは受給するだけではなくて保険料を払うということ、それによって社会と個人が結びついて、対等な市民という言い方はおかしいのですけれども、自分の存在をそこで認識するといいますか、人間としての実存を認識するということがあるかと思うのです。ですから、前々回議論された短時間労働者への被用者適用拡大もそうですし、70歳まで繰り下げて受給する人々が多く出てくることは、社会にとっても、またご本人にとっても意味があると思うわけなのです。

繰下げ受給をし、例えば、70歳まで働くということ、そういった人々が多く出る社会はすばらしいと思うのですけれども、ただ、今、議論されているように、70歳までの就業促進を段階的にステップを踏んでやるとしても、法制化するということを手放しに奨励していいのかというと、それは疑問が残るというところでございます。

例えば、今回のデータでもありましたけれども、雇用確保措置を義務化するということが2004年に行われて、それから15年近くたつわけなのですけれども、厚生労働省が毎年発表している高年齢者雇用実態調査のデータによると、例えば、14~15年たっているにもかかわらず、301人以上企業で定年引き上げを選択している企業の比率は8~9%程度しかないわけです。大多数の企業が60歳定年に据え置いて、その後、再雇用で対応していることには十分な意味があって、全員雇用できるということがあるのであれば当然引き上げるわけなのですが、それができないからこそ、困難性があるからこそ、定年を据え置くということがあるわけです。

前回も申し上げたのですけれども、雇用というのは労働者側の働きたいという意欲・能力と企業側の雇いたいという思いがあって、双方の合意があって契約が成立することになるので、企業側にとって全員を雇用してもよろしいという状況にならない限り、今後、65歳以上の継続雇用法制化ということは、ただ企業にとって負荷がかかるだけだということは前回も申し上げたとおりでございます。

それとともに、今、我々は、年金の仕組みも、高齢者の雇用に関しても、日本においては他国に比して非常に高年齢者の就業意欲が高いということを前提に話が進められているのですれども、20年後、30年後、40年後に、本当に人々が今と同じように働き続けたいと思う、そういった就業意欲の高い人々が8割以上を占める社会であるのかということなのですね。

今、さまざまな法改正であったり、ガイドラインがつくられて、成果主義あるいは業績主義的な人事管理にシフトをしてくるとか、同一労働同一賃金の導入とか、あるいは、兼業・副業を認める社会にしていくということが言われていますけれども、そういった雇用社会の中で、現在のように、企業に対して、ロイヤリティー、つまり愛着を感じて、そして、働くことをすばらしいと考えて、65歳、70歳まで、あるいはそれ以上を超えて働きたいと思う、そういった人々が、新しい雇用社会の仕組みの中で育っているのかと考えるわけなのです。いま一度、我々は、日本人のすばらしい勤労観がどうやって育まれていったのかということ、その根本を考える必要があるのではないかと思います。

それと関連してあと一言だけなのですけれども、在職老齢年金のお話があったのですが、企業の人事管理を見てきた者として思いますのは、当然のことながら、ここで示されたデータのように、賃金と年金の合計額が28万円のところで、そこが最頻値になるということは現実的に理解できるところです。実態としては、在職老齢年金があるから就業抑制をするというよりは、企業側と御本人で減額されない28万ぐらいに抑えようということで、賃金を設定するということがなされてきたということだと思うのです。なぜそれができたかというと、労使がそれに合意したから、そこに水準が置かれた。その賃金水準に納得し、受け入れた人が就業しているということがあったと思うのです。そして実際に、多くの人がそれに合意して、就業を続けたということがあったわけです。

しかし、今後は、低い賃金で60歳以降働くということは現実的ではないということで、これは改定しようということになるかと思うのですけれども、なぜこの低い賃金で労使が合意することができたのか。それは、60歳前までの長期にわたる雇用関係の中で、労使の関係がきちんとでき上がっている中で、労働者側はこれまでの職業人生の中で、確実に企業から決まった賃金を、納得的な賃金をいただくことができた。そういう関係のもとで、60歳の再雇用のときには、賃金を下げてもそれでよしとしようという合意が得られたということがあったわけです。これを改定するとなるならば、年金額ではなく賃金がかかわってくるので、どういう水準で労使が合意に至るのかということを考える必要があると思うわけです。新しい仕組みの中での新しい賃金水準を考えるときには、この労使の関係の下では、一時点のスポットではなくて、これまでの長期にわたる中での延長線上に、当然60歳以降の人事管理もあるということを考えなければいけないのではないかと考えています。

以上です。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

原委員、どうぞ。

○原委員 細かい資料をありがとうございました。

私は、今日は広報や周知について、繰下げのところも含めてコメントをさせていただきたいと思います。

まず、先ほどもいろいろな委員から出ているとおり、15ページにもあるとおり、すごくいろいろなリーフレットとか、細かいものが多いのですが、正しい情報を正確に伝えようとすると、いろいろな特例等もありますので、細かく情報量も多くなってしまいがちなのですが、そういうものは別途用意しておくとして、最初から読んでくれないという場合もありますので、この改正後にあるとおり、これは繰下げに限らず、図など、こういったビジュアル的に訴えかけて読んでもらえるようなものをぜひ検討していただいて、両方用意しておくことが良いと思います。これでもまだちょっと細かいかなということはあるのですが。繰下げについても、今、先に言ってしまいますと、繰下げの意思についての確認を年金事務所等で、説明に使われているそうですが、あれもまた見たら細かくて、図がいっぱいあり過ぎて細かいというのもあるので、最後まで聞いてもらえるよう工夫していただければと思います。すごく大事なことだと思いますので、年金が難しくてわからないとならないように、ビジュアルに訴えかけていくようぜひ周知も考えていただきたいと思います。

あと、17、18ページもあるのですが、いろいろ幾つか今までも皆さんからコメントが出ていますけれども、シミュレーションは、いろいろなことが読み取れて非常に興味深いと思います。これも広報とか周知にも使えるものかと思うのですけれども、もちろんいろいろな世帯があるので、最終的に自分用にできるようなもの、自分のこととしてわかるようなものがあるといいのですけれども、そうはいっても、これもとてもわかりやすいと思います。いろいろなことが読み取れるなと思います。

特に、簡単に2014年度の方の④、⑤を見ると、65~69歳までですが、厚生年金に加入して、しかも平均標準報酬を見ると、通常勤務というか、平均値で働いていれば、その間の65~70歳までは平均的な生活費はほぼカバーできるのではないかという数字になっています。おそらくこれは話題に出た高在老にもかからないので、この人は、給料とイコールではないのですけれども、30.5万と書いてありますが、それほど生活に困らない例だと思われます。

なので、繰下げをしてもいいかなとなるのだろうということだと思いますし、その70歳以降の金額の違いを見ても、これは繰下げをしたほうがいいよねという話にもなってくる。ただ、普通に受給する人を否定しているわけではなくて、どこに厚みを持たせるかということだと思います。普通に受給する人については、給料と年金を両方とも受け取るわけですから、65から70歳までが非常に厚くなるわけですよね。したがって、自分のライフスタイルとか、健康とか、いろいろなことを加味して、自分は繰下げをするのかどうするのか判断するのかと思います。確かに終身ですから、繰り下げるといいかもしれないのですけれども、年金のどこに厚みを持たせるかなど受け取りの計画などを立てるときにはとてもわかりやすいなと思います。

一方、⑥、⑦の例をお出しいただいたのですけれども、これは短時間勤務の人かと思いますが、給与で捉えると、割と少ない月10万円位で働く人が、ここにはないのですが、繰下げをしようとすると、65~70歳までの収入だけではやや生活が困難かもしれないのですよね。⑦は繰下げなしバージョンかと思うので、この年金と給料と合わせて生活をしていくことになるかと思います。仮にこの方々でも就労収入以外のものが65歳~70歳の間にあれば、例えば、企業年金とか、個人年金とか、有期年金のようなほかのものがあって、それでやりくりができるのであれば、公的年金は終身だから繰り下げようとか、いろいろなストーリーが出てくるのかなとと思います。

このように、いずれにしても、この表からいろいろ読み取れるのですけれども、65~70歳までの報酬の額が多いか少ないかとか、報酬以外に収入があるかないかということが、繰下げをするかどうかの判断に影響するでしょうし、その後の長い人生を想定して、寿命はわからないですけれども、老後の計画を立てられていくのではないかと思いますので、こういったことが、シミュレーションなどを使って、60歳以降の働き方とか、公的年金、私的年金を活用して、老後の所得確保の仕方を考えること、自分のケースで考えていくようなこと、計画していくことが今後重要になっていくのではないかと思います。

したがって、こういった説明をしていただいて、多分初めて見たと思うのですが、17ページ、18ページのような形で、いろいろなケースを示していただいたいい資料だと思うので、ここからどうするかということを考えなければいけないのですけれども、こういったいろいろなケースを見ていくのは良いと思いましたので、周知の仕方にも使えるのではないかと思っております。

以上です。

○神野部会長 ありがとうございます。

お待たせしました。米澤委員。

○米澤委員 どうもいろいろ説明をありがとうございます。

この辺になってくると、制度が細かくて理解がなかなかしにくいのですけれども、1点ないし2点ぐらい。

質問は1点なのですが、11ページのところで、きょうの言葉で言いますと「受給開始時期」を繰上げ・繰下げをした場合の図が非常にわかりやすくなっているのですけれども、これはあくまでも年金財政上、中立的になるように設定されているということが一番大きなポイントかと思っております。

お聞きしたいのは、私の記憶が違っていた場合には直していただきたいのですけれども、以前に、支給開始年齢を例えば70歳ぐらいにした場合に、年金財政のところにどういう影響を与えるか、バランスをしたときの所得代替率か何かの数字かと思ったのですけれども、改善されているような記憶があったわけですが、きょうのこのお話の繰下げの話でいくと、仮に全員が70歳になったとしても、ここに関しては年金財政上は全く影響がないという理解でよろしいと思うのですけれども、もしそこのところに支給開始のときには多少改善されるとしますと、そこのところの違いはどこにあったのか、教えていただきたいと思います。

もう一点は、極めて技術的なのですけれども、もしもう一度受給開始の今の現実的な話が、もっと広報等、周知徹底されて、いろいろな人がいろいろな繰上げとか、繰下げとか、かなりバラエティーに富んだ選択をされた場合に、その年金の支給がつつがなく行えるのかどうかということです。キャッシュマネジメントに近いようなことですけれども、なかなか事前に幾ら支出が出ていくのか読めなくなって、そこのところはどこが大きく担うのか。幸いなことに積立金がありますので、そこで調整するのでしょうけれども、そこのところがかなり大変になるのではないかということで、ちょっと感想なのですが、だからといってできないわけではないのですけれども、そういう問題もあるのではないかと思っております。

前者に関して、もし違っていたら正していただくことも含めて、お答えいただければと思います。

○神野部会長 解説される方、お願いします。

○数理課長 数理課長です。

支給開始年齢の引上げで財政効果があるかどうかということにつきましては、まず、平成16年改正前の時代か後の時代かということで大きく違うということになります。仮に年齢を引き上げたときに財政効果があるという資料があったとすれば、それは平成16年改正前の時代のものではないかということです。つまり、保険料が高くなりすぎないように、現実に受け取る年金額を固定したままで年齢をおくらせたとして、その効果だけを考えたとすると、その期間の分の年金の支給額は減ることになりますので、恐らく先生が昔ごらんになった記憶があるとすれば、その当時のものではないかと思います。

平成16年改正後につきましては、保険料を固定してマクロ経済スライドによる給付水準調整を行い、65歳を支給開始年齢とし、受給開始時期を自分で選択できる仕組みになっておりますので、その上においては財政中立であると考えております。

○神野部会長 どうぞ。

○米澤委員 わかりました。

そうしますと、きょう出口委員がおっしゃっていた説明は、私も極めて直観的な図からわかるのですけれども、年金財政を少しでも維持するための方策としては、今、いろいろ議論に上がっています、受給開始時期の話とか、現在考えられるような支給開始のあれというのは、直接は年金財政には影響がないような格好でもって検討されている、ないしは、ないような格好でもってシミュレーションされているという理解でよろしいでしょうか。

○神野部会長 お願いします。

○年金課長 年金課長でございます。

時間の関係で、そのあたりの私の説明が少し足りなかったと反省しております。

御指摘のとおりで、年金財政の観点からは、数理課長が御報告と御説明を申し上げたとおりでありますので、政府としてはそういう観点から支給開始年齢の引き上げは考えていないということを、総理以下、繰り返し外に向かってお話し申し上げております。

その上で、きょうも整理させていただいたのですが、ただ、世の中は受給可能期間を少し緩めようという話と支給開始年齢の引き上げとを混同しがちな傾向がありますので、安易に支給開始年齢の引き上げを議論しましょうと言ってしまいますと、年金財政のために70歳までもらえなくするつもりだということをおっしゃるような専門家と称するような方々もいらっしゃる関係もございまして、できれば年金部会の中でも、仮にきょう菊池委員とか出口委員がおっしゃったような意味での支給開始年齢の議論を排斥せずに、仮にやるといたしましても、それは別にきょうの4の図にあるような観点も含めてのものであって、年金財政論的なことではないということを常に御確認いただきながらやっていただいたほうが、そういった無用の誤解と無用の批判を受けなくて済むのかなと思っております。その辺の丁寧な説明を私は冒頭に欠いていたことを陳謝いたしたいと思います。

プラス、4ページの図は、どちらかといいますと、途中そういう御議論もございましたけれども、定年制度とか雇用法制の在り方と年金の支給開始年齢との結びつきとか、今、米澤委員から御指摘いただいたような、年金財政というか、給付の十分性をとるときに、支給開始年齢という選択を選ばざるを得なかったという国の状況と、日本のようにそこをむしろ年金の給付額の調整で選択していった我が国において、そこの選択を前提としながら、きょうも一部御議論がございましたけれども、給付の十分性のために少し年金を手厚くする方法は、このフレームワークの中でもないわけではないのではないかという形での御議論をいただけないかというつもりで出したわけでございましたけれども、もっと私どもの意図よりもっと広いところでの御議論だったものですから、少しそういった御議論が出てまいったのかなと受けとめて、いずれにしても説明が足りなくて大変申しわけございませんでした。

米澤委員の言うとおりで、財政の観点からこういった資料を出させていただいているわけではございません。

○神野部会長 権丈委員、どうぞ。

○権丈委員 最後、私も言っておかなければいけないと思って。

支給開始年齢の議論をやったほうがいいのではないかという話が本日出てきて、このまま終わってしまうと、やっぱりやるんだとかというような話に記事とかがなってしまう可能性がありますので。

この3ページのところは、これでもかということで年金局がまとめているところですね。私は、2011年ぐらいから「支給開始年齢」と「受給開始年齢」という言葉を使い分けて、これで意味は全部通るよなと思ってはいたのですけれども、ことしに入っても年金の大先生の資料の中には、定額部分の受給開始年齢引き上げが1994年に決定と書かれていたりして、そこは「支給」だよということがわからないのですね。そして、恐らくここで説明している3ページのところでも、「支給開始年齢」が、国語辞典に出てくる支給開始年齢、この6文字を見ただけでわかる意味とは意味がずれていますので、恐らくこのあたりの、「支給開始年齢」とは「報酬額や加入年数をもとに給付額を定義する算定式があり、 その算定式により求められる給付額を受け取ることのできる年齢」のことであるというのは、世の中には伝わらないだろうなと思います。

だけれども、こういう情報発信はしっかりとやっていかなければならないと思っておりまして、支給開始年齢というと国民は怖がります。怖がる記事を書くとアクセス数がふえます。したがって、そういうものをどうしても使いたくなる気持ちはよくわかります。けれども、もういいよというところで、恐らく年金局のほうは、これでもかというぐらいに、今まで彼ら自身が「受給開始年齢」という言葉をこの前の財政検証などでも使っているのですけれども、それをやめるよという形で、「受給開始年齢」という言葉を「受給開始可能期間」と「受給開始時期」という2つに分けているということ。このベースを押さえないことには、建設的な年金の議論ができないので、ぜひともこのあたりは押さえておいてもらいたいと思います。

資料の4ページのところでも、ドイツなどでは支給開始年齢を上げたら、雇用のほうの法制の義務も延びるという形で、ほかの国は、この国の年金の支給開始年齢を上げることと日本でいう高齢法がセットに動くというのが労使の中で決まっていたりするわけですね。これは別個に動かさないとこの国は全く動かないと同時に、年金を動かさなくても高齢法を動かしていったら動きますよというところもあるわけなのです。だから、この3ページ、4ページは、本当に年金教育を年金局がしっかりやってくださっているという形で、非常にありがたい資料になっております。

幾つかのところがあるのですが、1つは、高在老をどうするかというところで、財源0.4兆円をどうするかとかというところで、そもそも税でやるべきだとかというところは確かにあります。しかし、ここできょうも資料の29ページに出てきておりますけれども、公的年金等控除の適正化が、これから先少し動き、平成32年1月1日に動いていくことを考えていて、これを動かしていき、そこで得られた財源をどう考えれば年金財政に使うことができるようになるのか、それが仮にできたとしても、今のシステムのどこに組み込んだら、この0.4というところが矛盾なく吸収されていくのかということまで、研究者は、そういう代替財源をどこから持ってくるのかとその実行可能性、そしてどういうふうに充てていくのかというところまで考えることが、普通、当たり前の政策論だと思います。連合も、この前、基礎年金にはマクロ経済スライドを適用しないことを考えていますという意見がありましたけれども、その代替財源をどこから持ってきてどのような形で充てていくのかということも、研究者であれ、どこであれ、政策論とはそういうものだということを、まずは共有しておきたいと思っております。

先ほどのところで、繰上げ受給がどんどん減っているということがあるのですが、これは2009年、2010年ぐらいに年金が破綻したとかというような本がぼんと出て、メディアがこれのキャンペーンを張っていて、年金が破綻をするぞ、繰上げをしないと大変なことだ、繰り上げることが得だぞという形でキャンペーンが張られ、それに金融機関が口座ほしさに便乗し、年金事務所にみんながどっと殺到していくという状況が出てきます。桑田佳祐さんなどは、2011年ぐらいになってくると、年金が破綻したという歌をつくってどんどんはやらせていくわけですけれども、そのときに繰上げた人たちが繰上げ受給のデメリットを知って、お金を返してでもいいからもとに戻してほしいというようなことがあるのですが、制度上、それは難しい。私は二度とああいうことが起こらないように、年金局には、しっかりと世論といいますか、世間といいますか、そういうところの情報が誤っているときには速攻でたたきに行くということを、この平成28年改正の時は朝日新聞の誤報を対象にやっていましたけれども、ああいうことをしっかりとこれから先はやっていただきたいと思っています。大変な不幸につながっていきますので、よろしくお願いします。

○神野部会長 ほか、よろしいですか。

それでは、どうもありがとうございました。

特に御意見がなければ、議事をめぐる審議はこれにて終了させていただきますが、今後の予定について事務局からお願いできればと思います。よろしくお願いします。

○総務課長 総務課長でございます。

本日は、ありがとうございました。

次回の議題、開催日程につきましては、また改めて御連絡を差し上げます。

以上です。

○神野部会長 それでは、最後まで建設的な御議論を頂戴したことに深く感謝いたしまして、第6回の年金部会をこれにて終了させていただきます。

どうもありがとうございました。

 

 

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