第34回 社会保障審議会企業年金・個人年金部会 議事録
日時
令和6年4月24日(水)16:00~17:30
場所
5AP新橋 3階 Aルーム
出席者
森戸部会長 渡邊部会長代理(オンライン) 岩城委員 大江委員 金子委員
小林(由)委員 小林(洋)委員 島村委員(オンライン) 谷内委員
冨樫委員 原田委員 藤澤委員 松田委員
(オブザーバー)
鮫島企業年金連合会理事長 松下国民年金基金連合会理事長
議題
企業年金の加入者のための運用の見える化について
議事
議事内容
○森戸部会長 皆さん、こんにちは。
定刻になりましたので、ただいまより第34回「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」を開催いたします。
お忙しいところ、今日も、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日ですが、島村委員、渡邊部会長代理は、オンラインで御参加いただいております。
御出席いただきました委員の方が3分の1を超えていますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
それでは、議事に入らせていただきたいと思いますが、まずは事務局から資料の確認をお願いいたします。
○海老企業年金・個人年金課長 資料の確認をさせていただきます。
本日の資料といたしましては、資料1「企業年金の加入者のための運用の見える化」、参考資料として、参考資料1の企業年金連合会提出資料、参考資料2の企業年金・個人年金部会委員名簿を御用意しております。
○森戸部会長 ありがとうございます。
それでは、議題に入りたいと思います。
まず、カメラの方がいらっしゃいましたら、ここで退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○森戸部会長 事務局に異動がありましたので、それについて、お願いいたします。
○海老企業年金・個人年金課長 事務局に異動がありましたので、御紹介させていただきます。
泉大臣官房審議官に替わりまして、武藤大臣官房審議官が着任しております。
○武藤官房審議官 年金担当審議官の武藤です。よろしくお願いいたします。
○森戸部会長 ありがとうございます。
本日は、企業年金の加入者のための運用の見える化を議題といたします。
こちらについて、事務局から、説明をお願いいたします。
○海老企業年金・個人年金課長 資料1について、事務局から、御説明いたします。
お手元の資料1を御覧ください。「企業年金の加入者のための運用の見える化」と書いてございます。
めくっていただいて、これまでの議論です。
3ページになりますが、これまでの議論として、御案内のとおり、昨年12月、令和5年12月に、資産運用立国実現プランにおいて、加入者のための運用の見える化の充実が盛り込まれているところでございます。DBに関する改革として、真ん中の<施策>になりますけれども、加入者のための運用の見える化の充実、DBに関しては、運用状況や専門人材の活用に係る取組状況を含む情報の他社との比較できる見える化(情報開示)を行う、その具体的な方策については、規模等の状況にも配慮し、厚生労働省が情報を集約し公表することも含めて、次期年金制度改正に関する結論と併せて結論を得ると記載をされております。また、3ページの下、DCに関しては、<施策>に傍線を引いておりますけれども、事業主ごとの運用の方法のラインナップや運用状況等を含む情報の他社と比較できる見える化(情報開示)を行う、その具体的な方策については、厚生労働省が情報を集約し公表することも含めて、次期年金制度に関する結論と併せて結論を得るという形で記載されているところでございます。
昨年10月・11月、この資産運用立国に関する御議論をいただいたところでございまして、そういった議論を踏まえて、4ページ、社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の中間整理の中でも、加入者のための見える化の充実という記載をさせていただいております。4ページの上のDB・DC共通の論点としての加入者のための見える化の充実というところで、企業年金の趣旨を踏まえれば、受託者責任の観点が重要だ、一義的には、加入者、受給権者のために行われていくべきであるといった御意見、そうした観点から、加入者のための見える化の充実で他社との比較を行う目的は何なのかといったところを適切に整理する必要があるといった御意見、また、海外での議論も参考にして検討していくべきだといった御意見が共通の御意見としてございました。また、4ページの下のところ、DBに関する加入者のための運用の見える化に関しましては、運用の結果の良し悪しだけを見える化するべきではないという御意見、厚生労働省に今報告されている事業報告書も参考にしながら、開示された情報について比較ができるようなことを考えていくべきではないかといった御意見、また、5ページで、情報の開示に関して、各制度の見える化を行う場合の各種配慮するべき事項ということで、様々な御意見をいただいております。
また、5ページの下、DCの加入者のための運用の見える化に関しても、DCの見える化は、現状行われているものに加えて、さらなる見える化というところで、現在の報告を取りまとめて厚生労働省で開示してはどうか、事業主が個別に対応を行うのではなくて運管がやってはどうか、厚生労働省のサイトで様々なラインナップ等を見られるようにするべきではないかといった御意見があったと中間整理の中に盛り込んでいるところでございます。
次のスライドから、まず、DBの加入者のための運用の見える化です。
7ページは、DBにおける加入者への周知・報告書の提出の現状をスライドにまとめたものになります。DBにおいては、事業主・基金という主体が、毎事業年度1回以上、加入者へ業務概況の周知を行うこととされております。図中のピンクの矢印です。一方、右側へ向かう黒い矢印ですけれども、毎事業年度ごとに、厚生労働省に対して、事業及び決算に関する報告書を提出することになっているということです。この報告された報告書の一部に関しては、厚生労働省で、一部の項目について、統計を作成し、公表しています。今は、このようなフローになっているところでございます。
次の8ページ、DBに係る事業及び決算に関する報告書ということで、現状、厚生労働省がDBの実施状況等を把握するためということで報告をいただいている内容が、こちらに整理している内容です。主な事業の実施の状況が分かるもの、資産の運用状況が分かるもの、決算の状況が分かるものについて、厚生労働省に提出いただいているところでございます。
次の9ページは、御参考で、DBの見える化を昨年11月に御議論いただいた際に提出した資料になりますけれども、DBの業務概況の周知に関するものになります。事業主はDBの業務概況において加入者に周知をしなければいけないとなっておりますけれども、こちらに関する項目は、ここに書いてあるとおり、各社のDBの基本的な情報、運用の状況も含めて、盛り込むべき事項ということで示されており、周知に関しては、ここに示されているように、各種掲示をするあるいはイントラに掲載する形での周知が図られているということが今の状況でございます。
次、DCに関する加入者のための運用の見える化に関する基本的な資料になります。
11ページからです。DCにおける主な情報提供・報告書一覧と書いてございますが、企業型DCにおいては、事業主が適切な運用を行って加入者が適切に運用の方法を指図できるようにするという目的で、運営管理機関、事業主から、加入者への情報の提供、当局への報告が行われています。少しDBより矢印が増えておりますが、図中左下が事業主になります。事業主は、基本的に、記録関連運営管理機関や運用関連運営管理機関に各種業務を委託しておりますので、加入者に対しては、運用に関することに関しては、運用関連運営管理機関から各種情報提供が行われ、あるいは、ホームページ等で情報の公表がされ、また、個人別の管理資産額の通知は、少なくとも年に1回、記録関連運営管理機関(RK)から加入者に行っているという、このピンクの矢印がございます。一方で、事業主報告書あるいは運営管理機関の報告書に関しては、一番太い矢印ですけれども、基本的にはRKから厚生労働省に出されているようなフローになっているところです。
12ページは、今の事業主報告書と確定拠出年金運営管理機関業務報告書の項目を挙げているものです。左側、事業主の報告書に関しては、各事業主が行っている規約、事業年度、加入者の状況などが分かるようなもので、右側の運管の業務報告書は、そこが受託を受けている運営管理機関の業務状況が分かるものになっているところです。
13ページは、昨年11月の部会でも資料として出していますが、DCの見える化に関する資料ということで、運管が、運営に関する情報を加入者に提供する、運用の方法の一覧をインターネットで公表するというルールになっているということをまとめているものになります。
14ページは、運用方法の公表例で、運用の方法の一覧をホームページに公表するという公表のやり方は運管ごとに少し異なっていることを昨年の部会でもご紹介している資料です。
15ページですが、DCの見える化の定期通知ですけれども、RKは、毎年、少なくとも1回、企業年金のDCの加入者の個人別管理資産を通知するというルールになっておりますので、ここに書いてあるような項目について通知をしている状況です。
次のスライドからは、参考で、海外の状況、米国における企業年金の情報開示をまとめさせていただいている資料になります。
17ページは、アメリカにおける企業年金の情報開示で、上の枠、DB・DCの情報開示について、まず、ERISA法においては、DB、企業型DCの実施主体は、それぞれのプランについて、労働省に対して、年に1回、Form5500を報告し、この当該報告書は一般に公開されるということが、法律上、規定されている形になっております。これは、ERISA法の成立した翌年からずっと行われているものです。ERISA法における受託者責任として、DBについては、加入者の資産を保護すること、DCについては、加入者の合理性に応じた的確な商品を選定することが求められているところでございます。
18ページは、企業年金の運用に係る情報開示の日米比較です。先ほど申し上げたとおり、ERISA法に基づいて企業年金の運用状況等を含む年次報告書に関して、労働省のウェブサイトで公開されています。日本においては、先ほど御説明したとおり、事業主・基金から厚生労働省に業務報告がなされております。また、事業主・基金から加入者に必要な事項は通知及び周知されていますが、情報公開は義務づけられていない形になっております。
次のスライドから、本日の議論のポイントになります。
まず、20ページになりますけれども、加入者のための運用の見える化の目的・意義としてまとめさせていただいております。資産運用立国実現プランにおいて、企業年金の改革として、他社と比較できる形での加入者のための運用の見える化の充実を行うとされておりますが、中間整理の中でも御指摘は様々にございましたとおり、企業年金の運用に関する情報について他社と比較できる見える化を行うことの目的や意義について、我々として、少し整理をさせていただいたものがこちらでございます。1つ目の丸にありますとおり、これまでも御自身が加入されている企業年金の情報に関しては、御本人に対して適切に通知をされているという仕組みになっておりますが、今回の見える化では、他社の企業年金の状況が公開されるということになります。企業年金は、従業員の老後の生活を保障し、現役期・退職以降を通じて安心と生活の質の向上をもたらす重要な手段だというところでございます。このため、企業年金の運用についても適切に行われることはとても重要でございますが、他社の企業年金の情報を活用することによって、DBにおいては、運用の基本方針や政策アセットミックスの見直し、運用委託先の評価や選定に役立てること、DCにおいては、運用の方法の選定について、運営管理機関との対話を促進し、加入者に対する情報提供や継続投資教育の在り方を充実させることが考えられます。この結果、DBにおいては、運用の効率性を高めることなどを通じて、DCにおいては、より適切な運用の方法が選定されることなどを通じて、加入者の利益になるといった効果が期待されています。また、企業年金の担当からは、加入者が自社の企業年金に関心を持っていないといった悩みも多く聞こえるところ、今回の見える化で広く就労世代の企業年金に対する関心が高まり、適時の見直しに向けたモチベーションになるといったところで、労使の話合いが活発化し、企業年金のガバナンス向上につながるといった効果も期待されるのではないかということで、整理させていただいております。
21ページになります。本日御議論いただきたい点でございます。加入者のための他社と比較できる見える化で、企業年金の加入者のための運用の見える化として、具体的な方法、開示項目について、どのように考えるか、例えば、以下のような方法、開示項目はどうかということで、まず、DBの見える化についてです。DBの見える化に関して、開示項目については、毎年の事業報告書・決算に関する報告書の報告項目をベースとすることは一つの考え方としてあるのではないか(一部新規に報告)ということで、書かせていただいております。「※」のところにあります運用の状況、例えば、運用の基本方針等や専門人材の活用に係る取組状況を含む情報については、最初に御説明したとおり、資産運用立国実現プランの中でこういった項目についての開示を検討することが盛り込まれておりますので、こちらに関する項目について、事業報告ベースでの開示を考えるということであれば、ここに新たな報告をした上で開示していくということなので、ここに「※」で記載しております。開示の方法に関して、厚生労働省がDB別に公表を行うことも考えられるのではないか、開示の対象の要件で規模の要件を設けていってはどうかというところで、個人情報の保護の観点からの配慮も必要と書かせていただいておりますが、少数のところ、加入者が少ない場合に、項目によっては加入者個人の情報そのものとなる可能性もありますので、そこは項目によって検討が必要になってくるところもあるのだろうということで、記載しております。次に、DCの見える化に関してです。DCの見える化に関しても、開示項目に関しては、毎年の事業報告書・確定拠出年金運営管理機関業務報告書の報告項目をベースにしてはどうかというところで、一部新規に報告も考えられるのではないか。先ほど御説明いたしましたとおり、今の事業主の報告書はRK経由での報告が基本になっていますので、こちらを想定していくというところではなかろうか。開示の方法については、厚生労働省が事業主・規約・運営管理機関別に公表を行っていくという方法が考えられるのではないか。開示は、全事業所を対象とするところが考えられるのではないか。個人情報保護の観点からの配慮という記載に関しては、先ほどのDBと同様でございます。
それに加えて、運用の方法の見える化に関して、運営管理機関等において既に各種公表が義務づけられている項目もございますけれども、こういった開示の仕組み、公表の仕組みに関して、より取組の改善を促進していくことも考えられるのではないか。このような形で、見える化に関する論点、御議論いただきたい点をまとめさせていただいております。
22ページです。DBに関しては、資産運用立国実現プランの中でも「規模等の状況にも配慮し」という形で記載されているところですけれども、この規模要件について、どのように考えていくか。例えば、加入者という切り口で見たときに加入者の大部分、あるいは、基金という切り口で見たときに大部分をカバーできるといったところも一つの切り口になるのではないかということで、今のデータをつけているところでございます。
説明としては、以上です。ありがとうございます。
○森戸部会長 ありがとうございました。
それでは、議題について、委員の皆様から、御質問、御意見を御自由にいただきたいと思います。22ページも絡むと思いますが、21ページで本日御議論いただきたい点を事務局にまとめていただいていますので、これについては、意見があれば、ぜひ積極的におっしゃっていただければと思います。どなたからでも、御意見がありましたら、よろしくお願いいたします。
谷内委員、お願いします。
○谷内委員 谷内です。
まず、資料1の21ページに記載のDBとDCの見える化については、大まかな方針としては賛同します。開示の方法につきましても厚生労働省で公表を行っていただくということで、厚生労働省にはいろいろと仕事を増やして申し訳ない部分はありますが、それによってDBやDCの実務担当者の負担は一定程度軽減されると考えます。
また、開示項目につきましても異論ありません。既に、DBもDCも、必要な項目や重要な項目は、企業から加入者・受給者への情報開示がなされています。具体的には、資料1の9ページにDBの業務概況の周知の状況が記載されていますが、業務概況の周知の項目は、事業報告書や決算報告書の内容がほぼベースになっております。そうした意味でも、毎年の事業報告書あるいは決算報告書の項目をベースとするところから始めるべきと考えます。
一方で、資料1の21ページに記載の開示項目のうち、運用状況や専門人材の活用に係る状況については、なお検討が必要と考えます。「運用状況(運用の基本方針等)」の開示はまだいいのですが、「専門人材の活用」というところは、何をもって活用していると判断するのでしょうか。例えば、証券アナリストの有資格者を何人そろえましたという外形的な基準を設けることはあまり意味がないので、ここはもう少し検討が必要と考えます。
以上、加入者のための見える化については、現行の各種報告書の項目をベースとすること、開示方法として厚生労働省に一肌脱いでいただくこと、この2点につきましては賛成いたします。
私からは、ひとまず、以上です。
○森戸部会長 ありがとうございます。
専門人材の話は、元の資産運用立国プランにも入っている言葉なので、何らかの形で見える化に反映させることにはなるのだと思いますけれども、今、谷内委員からもあったように、その専門人材とはどういう人かということは、これから項目を検討していくことになりますかね。
事務局から何かあればお願いします。
○海老企業年金・個人年金課長 ありがとうございます。
まさに、項目、あるいは、「取組」と書いてありますが、どういった取組が必要なのかといったところも含めて、検討していくことになるかと思います。
○森戸部会長 ありがとうございました。
小林洋一委員、お願いします。
○小林(洋)委員 私からは、2点、意見を申し上げさせていただきます。
まず、1点目です。7ページに記載されておりますDBの事業決算に関する報告書は、毎年、厚生労働省に紙で提出された後に統計処理が行われる関係で、情報が公表されるまで1~2年の時間がかかっていると伺っております。「見える化」が加入者のために行うものであるならば、情報開示はリアルタイムに近い形で、迅速に公表することが重要なのだろうと思っております。政府におかれましては、必要な予算を確保の上、電子化を進めていただきたいと思います。
また、加入者が開示された情報を正確に理解できるよう、金融リテラシーを高めることも重要です。政府として、新たな組織体である金融経済教育推進機構をつくって金融教育の拡充・強化を進める方針であることは、大変ありがたいと思っております。商工会議所としても、職域での金融教育が広がるよう協力してまいりたいと思います。
なお、「見える化」については、御留意いただきたい点もございます。これを進めるために事業者側に新たな事務負担が発生することになると、専任の担当を置くことなどが難しい中小企業には大きな負担になる点であります。電子化を進めていただく一方で、「見える化」のための事務負担が事業者に過度に生じないよう、御配慮いただきたいと思います。
2点目は、DBの開示対象についてです。22ページに、情報の開示対象とするDBについての資料が掲載されております。最終的には全てのDBで情報が開示されることが望ましいと思いますが、今申し上げたことに関連しますが、今回の「見える化」に伴って事業者にどの程度の負担が生じるかは分からない状況と言えます。そうした観点から、開示については、直ちに全DBで進めるのではなく、一定規模以上からスタートし、段階的に拡大していく形が望ましいと思います。例えば、中小企業基本法の従業員数の定義でもある300人で線引きをすれば、加入者の9割をカバーできます。影響の度合いを探りながら徐々に拡大していくことを御検討いただければと思います。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございます。
いずれも非常に御貴重な御意見だったと思います。確かに、見える化の話で、具体的なスピードというか、そのイメージをあまりしておりませんでしたけれども、確かに、どういうタイミングで開示されるのか、ものすごく前のことが出てきてももしかしたらあまり意味がないのかもしれないし、それももちろん検討事項に入るかと思います。
規模の件、どのぐらいのところから開示をしていくか、特にDBのところについて、御意見がありました。事務局に確認なのですけれども、確かに事業主さんに過度な負担を課すことはしないようにしたいということはありますが、先ほど谷内委員がおっしゃったように、例えば、情報は出して、厚生労働省で開示するということだったら、別に事業主の負担はそんなにないのかなとも思ったのですけれども、そういうことでもないですかね。それも検討になるのでしょうけれども。
○海老企業年金・個人年金課長 方法、やり方という話でいうと、今やっていただいている事務よりも負担が増えないようにするという観点はとても大事だと思っておりますので、事業報告書をベースにしていくというところで、現在の負担以上のものが大きく生じるものではないという形は目指していけるのではないかと思っています。
一方で、先ほど小林洋一委員がおっしゃったような、事務手間だけではない、例えば、加入者から様々なお問合せをいただくあるいは外部からの様々な御意見も含めていただくということは、なかなか数値化できるものではないですが、開示による影響は、恐らく一定程度、何らかのことは起こってくるだろうとは考えています。それを負担と見るのか当然の事務と見るのかというところはありますが、その辺りの影響の範囲は、なかなか数値化できないものとして、生じ得るのかなとは考えております。
以上です。
○森戸部会長 補足をありがとうございます。
確かに、事務的負担といっても、そういうやってからの負担や反応とかもあるのですね。浮世離れした生活をしているので、あまりその辺の実感が湧きませんでした。大変失礼いたしました。
今のような点も含めて、加入者でやるか、試算額でやるかという規模の具体案なども出ていますので、その辺についても、ぜひ御意見があればいただきたいと思います。
ありがとうございました。
金子委員、お願いします。
○金子委員 ありがとうございます。
単純に質問したい点が1つと意見として2つを述べたいと思います。
まず質問についてですが、21ページ目に、見える化についてDB・DCともに個人情報保護の観点からの配慮も必要と書かれています。DCについては理解できますが、DBは、これまでも、議論される際に、日本の場合には特に受給権が確定しないという言葉で言われることが多かったと思います。それにもかかわらず、個人情報に配慮とありますが、要するに、個人情報に配慮しなければいけないほど受給権は確立しているのでしょうか。そこら辺の考え方がよく分からないので、教えてください。
○森戸部会長 今のお話で、まず、事務局から、ありますか。
○海老企業年金・個人年金課長 DCのほうは、御指摘のとおり、多分分かりやすいのかなと思っています。DBのほうは、恐らく項目によるのだろうとは思っておりまして、こういった観点があるかないかという点も含めて、そこは議論の俎上には上げておく必要があるのかなということで、記載させていただいています。
○森戸部会長 要は、DBでも、例えば、加入者が1人とか、つまり、このDBの資産は幾らですと言ったら、これがこの人のお金だって分かってしまうだろうと。これは別に言ってもよかったことでしょう。しようがない。そういう意味ですよね。ただ、金子委員の質問は、DBは受給権が法的には確定していないのではないかと。それは法的な話になりますけれども、確かにそういう形にはなっていて、変な話、その人が懲戒解雇で辞めたらそれはゼロになるかもしれないとか、そういう話はあるのかもしれないですが、他方で、大体その人がもらうお金であろうということは決まっているということでしょうね。だから、金子委員がおっしゃるように、法的に受給権は確定していないのだから、これを公開しようが別に個人情報保護に全く関係ないと言い切るかどうかだとは思うのです。
金子委員、何かありますか。
○金子委員 少なくとも個人情報保護の観点から厳密に議論されるべきものではないのではないのかなと思いました。
○森戸部会長 それは、その受給権が確定していないからということですか。
○金子委員 そこら辺は、私も、別に専門ではないので、何とも言えないのですけれども、DCは分かるけれどもDBは本当なのですかというところを純粋に理解したいという意味で、御質問させていただいたのです。おかしいから改善を迫るという話ではないです。
○森戸部会長 ありがとうございます。
私も、整理せずにしゃべっているから、よく分からない点もあるのですが、いずれにしても、DCとDBは個人情報といっても違う感じはしますので、今後、そこはきちんと事務局にも整理していただいて、一応配慮は必要と書いてあって、ここでこれを削除すると配慮しないみたいになるから、それはそれでおかしいので、一応これはこれでいいかなと。
○金子委員 考慮は必要だと思います。1回、こういう観点で検討するという形だと思います。
○森戸部会長 ありがとうございます。
貴重な御指摘だったと思います。
御意見のほうに行きましょう。
○金子委員 2つございます。
21ページ目にあるような視点の中の部分的なものを2つほど取り上げたいと思います。1つ目は、DBの見える化の開示対象の要件について、結論としては、小林洋一委員がおっしゃられたことと全く同感なので、改めて言う必要もないのかもしれないですけれども、委員の中でこの点に関しては関心があるということを示すために、述べさせていただきたいと思います。資産運用立国実現プランの中で、小規模なDBにおける受託者責任の徹底や専門性の向上についての問題点を指摘されておりました。この指摘を実直に捉えるならば、規模の小さいところを開示対象から外すべきでないのかもしれないと思っております。他方で、企業年金に対して一律にハードルを設定した場合に、退出してしまう企業年金が出るのではないかということも危惧しております。資産運用立国実現プランでも、別のページで、恐らく民間企業社員という意味だと思うのですけれども、私的年金の加入率は3割にすぎず、加入率の向上に向けた取組の重要性を訴えています。このような取組に逆行すると危惧されるような施策については、少し慎重に考えるべきだろうと思っております。このため、経過措置として、開示対象を規模によって限定し、影響を見ることは妥当だと思っています。ただし、経過措置であることは明確にしておくべきではないかとは思っています。いつの間にかやらない感じになっていたとはならないようにしたほうがいいのではないかと思っております。
2つ目は、DCの運用方法の見える化について、運営管理機関による取組の改善を促進すると記載されているのですが、DCの運管が行う見える化によってどのような効果を期待しているのか、資料を見ても釈然としないところがございます。運管にとっても、期待されていることが明確なほうが取り組みやすいとは思います。何が期待されているのかが明確になればきちんとやると思いますので、実施に当たっては、DCの運管が行う見える化によってどのようなことを期待しているか、もう少し明確にしていただいたほうがいいのではないかと思いました。
以上でございます。
○森戸部会長 ありがとうございます。
まず、1点目、既に金子委員にはきちんとその論点を指摘していただいたのですけれども、確かに、これは加入者のための見える化だと言っているので、むしろ小さい企業とかの加入者にもしこの見える化がプラスになるのだったら、何で小さいからといって外すのかということは、論理として、非常に分かるのですよね。他方で、おっしゃったように、小さい企業でそんなことを言ったらむしろ「企業年金なんて面倒くさいものをやるか」というマイナス効果のほうが大きいのではないか、これについてどのように折り合いをつけるか、まさにその論点を御指摘いただいたと思うのです。金子委員としては、原則開示で、1のほうが原則で、ただ、2のような観点なり影響も考慮して、例えば、経過措置の期間を設けて、それはどのぐらいになるかという問題はあるけれども、最初は、少し限定して、例えば、規模などによって線を引いたらいいのではないかという御意見だと承りました。非常に具体的な御意見だったと思います。
2点目、21ページ、DCの最後、運用方法の見える化について運営管理機関に取組の改善を促進するとは、具体的にどういうことか。私も、分かっていないと言ったら笑われるかなと思って言わなかったけれども、金子委員も分からないなら、聞こうと思います。これは、どういうことですか。事務局、教えてください。
○海老企業年金・個人年金課長 ありがとうございます。
運営管理機関がこの見える化の文脈の中で関わってくるところとして、13ページのスライドにまとめさせていただいています。13ページのところで書いてある運営管理機関が行うべきものということで、まず、各運用の方法に関する情報を加入者に提供しなければいけない、自身の選定した運用の方法の一覧をインターネットで公表しましょうというところがかけられている。制度上は、今、こうなっていますというところです。ここのところは、制度上も既に取り組むべきこととして書かれておりますので、様々に工夫されて取り組んでいただいているところかと思いますけれども、例えば、先ほどの14ページでございますとおり、運用の方法の一覧の公表というところで出ているものを見ても、運営管理機関によって、開示のやり方、方法は様々です。開示の表だけを出していますけれども、例えば、ここにたどりに行くまでのフローがかなり違うというお話も、部会の中でも御意見としては出ていたものとは認識しております。制度上、入っているものについての改善の取組も運用の方法の見える化の一環として考えられるのではないかということで、記載させていただいております。
以上です。
○森戸部会長 そうすると、新しく法的措置をするというよりは、今も法律的にやるべきことは最低限でやられているが、もう少し分かりやすくできないかと促すみたいなイメージなのですかね。
○海老企業年金・個人年金課長 部会の中でもっとここまでという御意見があればあれですけれども、もともとこのような取組はもう少し改善していくべきではないかということは昨年の中間整理の議論の中でもいただいていたものとは認識しておりますので、取組の改善で一つ考えられるものは、先ほど申し上げたとおり、13ページ、14ページにある今の取組をより見やすく分かりやすく改善していくことは、一つの取組のツールかとは思っております。
以上です。
○森戸部会長 金子委員、よろしいですか。
○金子委員 この場で明確にする必要はないと思っていますが、もう少し丁寧に期待することをお伝えしたほうがいいかなと思います。今の説明だと、見えにくいとか、ホームページがたどりにくいとかという御指摘なのですが、もっと本質的に、これは何のために使う情報なのでというところも踏まえて、要望というか、期待をお伝えしたほうがいいのではないのかなと思います。一覧表が見やすいかどうかとやっても、何のためということがないと、見栄えなどは人によって評価の仕方が違うわけです。どんなことをやってほしい、そのための情報としてここに集めてほしいとかという感じのことを、この場でなくても全然いいので、もう少しいろいろと考えてコミュニケーションを取っていただけたらと思っております。
○海老企業年金・個人年金課長 すみません。言葉足らずで恐縮ですけれども、もともとの見える化は、DCの場合は、御本人が適切に商品を選定していくために必要な情報は何だろうかというところが出発点なのだろうとは思っておりますので、そうした観点で見たときに改善できる余地がまだあるのではないかといったことかと理解しております。対話は、おっしゃるとおり、様々な現場の方といろいろと意見交換は進めていきたいと思います。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございます。
DCについても、同じように、21ページ目の案では、一定の情報を厚生労働省で公表はするのだけれども、その項目はもちろんこれからの検討ですけれども、それに加えてこの運管のやっている取組を、どのように、セットでといいますかね、組み合わせてうまくやっていくかという話かと思います。もちろん中身はこれからということですが、それについては、これからもぜひ御意見をいただければと思います。
大江委員、お願いします。
○大江委員 ありがとうございます。
全体感について、3点、今の金子さんのお話で出てきたDCの関連のところは具体的にコメントをさせていただければと思います。
まず、開示全体については、よりよくするために比較できるようにとは言うものの、数字は、比較が容易ですし、平均みたいな算出も簡単で、それが標準や基準といった誤解を生みやすい面に留意すべきだと思っています。特に、日本は、この資料にも書いていただいていましたけれども、アメリカのように、秘匿すべきもの以外はオープンにすることが当たり前で、データ解釈もいろいろで、訴訟がいろいろとあって大体その是非が定まってくるという社会環境ではないので、数字を出したことにより生じ得る誤解やインパクトが大きくなることを危惧しております。項目を決めるに当たっては、そういう意味で、その一つ一つを検証して、例えば、誤解を与えないように、解説というか、解釈というか、そういったものも一緒に載せておかないと、間違った方向に使われかねないと思っております。
方法として、導入企業の負担または普及阻害を避けるために、既に報告されているもの中で開示していくということには、賛成です。その開示の単位については、規約ごとよりも事業主ごとのほうが、経営の方に制度運営主体として責任を認識していただきやすいので、好ましいと考えます。
ここからは、先ほど出てきた企業型のDCの話で、資産運用立国実現プランの中でも、企業型DCにおいて、具体的な商品ラインナップを企業ごとに開示するみたいなことが例としても挙げられていますので、これについて、意見を述べたいと思います。他社と自社の商品ラインナップを比べられるということは、自社のものをモニタリングする、見直しをする上で、一定程度は役に立つところがあるのだろうとは思います。一定程度と申し上げたのは、現在の事業主からの報告は、商品のところでいいますと12ページのように、商品の手数料や実績といった情報がない、いわゆる名前だけということになってしまうのではないか。そうすると、参考にする側がそれも付加して比較しなければならないということになると、負担が大きいので、開示されている情報を活用するのは、投資信託やDCに非常に関心が高い個人や加入者、熱意と時間がたくさんあるDCの担当者、コンサルタントの方、研究者などのごく限られた層になる気がいたします。一方で、広く加入者の方に利益をもたらす見える化としては、先ほど金子委員から話題に出していただいた、21ページの最後の行に入れていただいた、各運営管理機関のユニバースを比較が容易な形で開示することです。今ですと、運営管理機関さんのサイトではなく厚生労働省のサイトの一覧表からクリックしてなんとかたどり着き、開けてみると、PDFで、並べ替えや同じカテゴライズでの比較をしてみることがなかなか難しいという状況です。この開示の仕方は、比較のための見える化としては、適していないと思っていまして、比較に適した形でこちらを整備することのほうが、個社の商品ラインナップを開示するよりも、企業型のDCラインナップの商品をよくしていくということにおいては、優先だと、私は考えております。こちらですと、各運営管理機関のユニバースは、14ページにありますように、項目としては、カテゴライズは載っています。手数料なども、載っています。運営管理機関さんによっては実績もPDFで開けなければいけないようなものもありますけれども、一応実績といった情報も含まれているので、自社プランのものとの比較に比較的容易に活用できるという点があろうかと思います。整備に当たっては、運営管理機関さんごとに今は様式もいろいろと違いますし、サイト改修の費用負担があってなかなか進まないということであれば、いっそのこと厚生労働省さんにこの形式のデータを提出してもらって、その情報を厚生労働省がホームページで開示するほうが効率的であるように思います。
さらに、本当の意味で有効に、企業型DC、iDeCoを含む加入者の利益向上のためにということであれば、厚生労働省と金融庁が協力して、非常に高い手数料を出している運営管理機関さんについて、その選定理由をヒアリングするという取組も考えられるのではないかと思います。既にある情報でできる取組ですし、なかなかアクションをしにくい比較的小規模のプランにおいても、商品ラインナップが改善されて、広く老後資産形成に貢献するのではないかと考えます。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございました。
最後の点で、非常に貴重な具体的な御提案もありました。ただ、最後の話は、要するに、今も出ている情報は出ているから、それをもう少しうまく整理するなり、見せ方を考えることは今でもできる話ではないかということでしょうか。
○大江委員 今もできるし、比較のための見える化ということが今日の本題ではあるのですけれども、加入者のための運用に貢献する方法論としては、既に厚生労働省で持っている情報をうまく使うという手だてもあるのではないかという話です。
○森戸部会長 分かりました。ありがとうございます。
規模の話は、22ページの資料にもありましたけれども、大江さんの御意見だと、2点目の話は、公表の主体というか、単位とおっしゃいましたよね。それが、規約ごとではなくて、事業主ごとであるべきではないかという御意見でしたよね。
○大江委員 はい。この表はDBについてだと思うのですけれども、例えば、総合型DCプランなどにおいては、一つの規約に1,000社とかが参加されている規約もあろうかと思います。そうしたときに、その規約の情報ということになると、改善していこうという、いい刺激というか、いい効果が薄れてしまうのではないかと思っており、そこに事業主名みたいなものもあったほうがいいのではないかということです。
○森戸部会長 ありがとうございます。
事務局の資料、22ページとかの加入者数は、規約ごとの人数を意味しているのかな。
○海老企業年金・個人年金課長 DBはDB単位で報告いただいておりますので、その意味では、規約型であれば規約ごと、基金であれば基金という単位で見ている加入者の数が、この22ページのところです。逆に、それを個別の事業主へ落とし込んで何かをしてもらおうと思うと、今のその仕組み上はそこまでの事務負担がないものを付加するということにもなりかねないので、その点を考えるときには、開示項目としてどうするかという話と開示のやり方としてどうするのかという話はあろうかと思いますので、今のDBのルートでは事業主の個々人に全部ということはないので、そこまでやると新しい負荷をかけることになってくるかと思います。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございます。
確かに、そうですね。そこはまた検討しなければいけないですね。
全部にコメントをして申し訳ないのですけれども、1点目、数字が独り歩きしないかという話は、確かに大事な問題で、悩ましいところですね。よりすぐってこの数字しか出しませんとやると物すごく目立つし、「これは、0.5と書いてありますけれども、全然問題がないのです」とかと言って、括弧で厚生労働省の海老と、コメントをつけるとかね。でも、そんなものもかえって怪しいし、その項目は非常に悩ましいですよね。本来は、全部をばんと出して、後は皆さんできちんとそれを比較してくださいとなるのだけれども、だからといってデータを絞ることも違う気もする。また同じことですけれども、開示項目どうするかというときには、かなり考えてやらないと、変な話になってしまう。それは、みんな、私たちで全部気をつけたいと思います。
小林由紀子委員、お願いします。
○小林(由)委員 御説明ありがとうございました。
最初に、見える化の目的・理由に関して、加入者の利益に資するために見える化を充実させるという方向性は理解しますが、情報の開示に当たっては、改めて加入者のための見える化であることを念頭に置いた上で、留意すべき事項が幾つかあると認識しております。
これまでの部会でも申し上げてきましたとおり、企業年金制度は、各企業がそれぞれの人事・報酬戦略を踏まえて労使の合意に基づいて決定・運営するものです。企業ごとに、前提となる従業員の状況や制度の運営方針・状況等々も異なる中で、開示された情報をスポットで切り取って表面的あるいは近視眼的に解釈し、単純比較して優劣の判断や順位づけなどが行われることは本意ではありませんし、各制度の運営に混乱・支障を来すおそれもあると思います。よって、開示範囲については、そもそも比較可能性が高く、かつ、加入者にとって真に必要な情報に、ある程度、限定すべきと考えております。具体的には、DB・DC、いずれについても、事業主に追加的な事務負担が生じないように、既存の報告書をベースとすることはもちろんですが、報告書に記載があったとしても、当該制度を運営する企業の経営・人事に関わるような情報・契約関係あるいは特定の個人・組織に関わる機微な情報等に該当するものについては、開示すべきではないと考えます。例えば、先ほど来お話が出ています専門人材の活用についても、そもそもその専門性をどう測定するのかという議論は必要ですし、やり方によっては個人情報の開示につながる懸念もあると思いますので、特に慎重な検討をお願いしたいと思います。
一方で、DCの見える化に関しては、運用商品の比較可能性を高めることは、加入者だけでなく、制度の実施事業主である企業からみても重要であり、運営管理機関における積極的な対応を後押しするような方法・仕組みの検討をお願いしたいと思います。事業主には運営管理機関の評価・モニタリングが義務づけられておりますが、それを進めやすくすることで運営管理機関における取組の改善を促進するという観点も重視して、御対応いただきたいと考えます。
最後に、情報開示の対象範囲について、DBについて規模要件を設定して一部を対象外とすることは、たとえ加入者や基金の大部分をカバーできる範囲であったとしても、今回の見える化の目的や意義に照らすと違和感があります。先ほど事務局からも言及がありましたが、DCにおける加入者数の少ない事業所の取扱いとのバランスも踏まえて十分に検討いただきたいと考えております。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございます。
最初のほうにおっしゃったことで、開示項目については、慎重に考えるべき、比較可能で加入者にとって真に必要であることが大事ではないかという御意見がありました。それは全くそのとおりだと思いますが、問題は、何が当たるか。ちなみに小林由紀子さん的に何が当たりますかと聞いてもすぐには答えられないと思うので聞かないですけれども、そのことを考えていかなければいけないのだと思います。なかなか難しいですよね。
すみません。最後、少し聞き逃してしまったかもしれませんが、DCについても、またDBとは違う観点でという御指摘はもっともだと思います。私が間違えて聞いてしまったかもしれませんが、規模で切る話は、むしろ、小林委員としては、規模が小さいからといって開示させないことはおかしいという御意見と思っていいですか。
○小林(由)委員 そうですね。基本的には、DCのほうが今は全事業所対象という御提案になっていて、その中には、先ほどのお話にありましたように、個人の情報を開示することに等しいようなケースも含まれてしまうのであれば、一方で、DBを開示しないのはなぜだろうかという話になると思います。
○森戸部会長 そうしますと、むしろ、開示は、原則、全規約というか、全制度をやれと、ただ、項目のほうでしっかりと慎重にその枠をはめることで対応すればいいのではないかという御意見ということでよろしいですか。
○小林(由)委員 はい。
○森戸部会長 分かりました。また、非常に貴重な御意見だったと思います。
ありがとうございます。
岩城委員、お願いします。
○岩城委員 ありがとうございます。
頂戴した資料について少し違和感を持ってしまいまして、議論の場でもあるので、誤解を恐れずに述べさせていただきたいのですけれども、方向性としては、厚生労働省がまとめてくださいました、20ページ、21ページの方向性に基づいて、厚生労働省のサイトでリアルタイムの加入者のための運用の見える化が必要だと思います。DC法・DB法の両方とも、目的条文をもう一回読んでみますと、やはり加入者のために、ということをもっとしっかりと考えないといけないのですよね。企業年金は、加入者の利益になるように、より合理的によりよい制度運営で運用をしていく必要がある、そのほかのステークホルダーのためではなくて加入者のためということなので、情報をオープンにして、競争原理を働かせて、不要なコストを削減して、加入者の利益を最大化していくことを目指すものではないかと思います。情報を一般公開してほかの制度と比較が可能になることで、より適切な運用が行われるようになること、運用委託先の評価や選定がなされることなど、期待できる点は多いと思うのです。そもそも、これが労使合意の上で成り立つ制度である以上、労使ともに判断材料がしっかりと与えられるべきだと思います。また、現実問題として、運用の知識が、ないとまでは言いませんけれども、不足しているにもかかわらず、基金の責任者になってしまって、結果、運用機関に丸投げをして、運営の透明性を欠いてきたという面もあると思うのです。見える化は、つまり、労使ともに企業年金制度に関心を持つべき環境をつくっていくために必要だと思います。
一方、見える化に反対する方々の御懸念として、一般公開して他制度と比較することでより高い利回りを求めるというミスリードにつながるという声もあることは知っています。しかし、労使自治に基づいて加入者の信頼を得てうまく運用もやっているということであれば、設定している利回りについて仮に的外れな批判があったとしても、それは胸を張って反論されれば済むことだと思うのです。だから、開示することには何の不都合もないと思います。また、これまでも自分が加入している企業年金の情報については加入者本人に適切に通知されているから十分ではないかという御意見もあります。しかし、これはそうでもないような気がします。リタイアメントプランの御相談を受けていますと、本当に企業年金制度についてよく分からないという人がほとんどなのです。また、最近は、インフレによって退職金の実質的な水準が下がるのではないかという不安を持っている方も多いです。制度運営に関わっている担当者の方でさえ不安を持っているケースがあります。従業員一人一人が老後に対する不安もなくしっかりと仕事に取り組んでいくためには、老後の生活設計の見通しが立てられることは非常に大事だと思います。公的年金制度も、ねんきん定期便や公的年金シミュレーターで将来の需給見込み額などを開示しているわけですから、企業年金制度も、加入時、加入期間中、受給時、それぞれが一体化した情報開示、見える化が必須だと思います。今後就職先を選ぶ学生さんなどにもそういった企業年金制度に関心を持ってもらうことも必要だと思いますし、そうすると、おのずと運用の効率化を考えるのではないかと思います。各企業年金においては、支給額の決め方ももちろん様々ですし、インフレの対応なども、財務状況などが関係してくると思います。だからこそ労使ともに客観的な視点を持って理解をすることが大事で、そのための情報開示だと思うのです。今は問題がなくても将来にこういう懸念があるのでこういう対策をすべきであろうということを労使で確認していける制度であることが望ましいと思います。むしろ、こういう流れをつくっていくためにどうすればよいのか、開示項目で不足していることはないかということを議論し尽くしていくべきだと思います。
開示対象の規模要件は加入者100人以上ということで、割と網羅されているとは思うのですけれども、100人未満の企業も、内容はより簡素にするとしても、開示が必要だと私も思います。とにかく、加入者のための見える化ということで、年金を受給する人の権利保護のスチュワードシップ、受託者責任の明確化が大事だと思います。
DCについても、21ページに記載されていますとおり、他社比較をすることが可能になることで、自社のラインナップの改善すべき点が見えやすくなるので、進めていくべきだと思います。ただ、改善点が見えても、このラインナップの入替に莫大な費用がかかってなかなか進まないというケースも実際にありますので、この見える化の先にどう進めていくのかという具体的な対策も講じていく必要があると思います。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございました。
原則加入者のためということであれば、基本的にはなるべく開示を進めるべきだという御意見だと伺いましたが、さらに、最後におっしゃった点も、確かにそうですね。もちろんその見える化をどういう形にするかは決めていかなければいけないのですが、それを具体的にどのように生かしていくのかということも考えて、その先も見ながら、議論しなければいけないという御指摘だったと思います。
原田委員、お願いします。
○原田委員 ありがとうございます。
今までに皆さんがおっしゃっていたことと、おおむね同意といいますか、同じ方向の意見ではあるのですが、1つだけ、大きく違っているところがあります。加入者のための見える化ということであれば、例えば、特定の会社の状況はこうだという情報は、果たして要るのかと。世間的にどうかとか、たくさんある制度がこのようになっているという情報は有益だと思うのですが、それがA社のものである、B社のものであるという情報が、果たして要るのかということは、私は、今の段階では、必要ないのではないかという気がしています。例えば自社の情報が出たときに私に何のメリットがあるかということもなかなか想像がつかなくて、一般的にとか、ほかがどういう工夫をしているかという情報は有益だと思うのですが、あそこの会社がこうだという特定まで本当に必要なのかという気がしています。そこが、皆さんと大きく違う点です。特に、DB・DCも、それぞれ、小林由紀子委員がおっしゃったように、処遇の一形態であって、どういうバランスで、給与、賞与、退職金、DB・DCをどう配分するかということは各社の労使合意の中で行われていることであるし、また、DB・DCに関しても、例えば、DBであれば、予定利率という目標とする運用収益率があり、DCでは、設計上の利率、これだけの利回りを稼げば今までと同じぐらいの退職金になりますよという目標水準が大体あるのです。それも各制度がどういうバランスで配分されているかによっても変わってきますし、特に、DBなどでは、本業のリスクの取り方と関係するケースもありまして、要は、本業でリスクを取っているからDBではリスクを取らないとか、そのような考え方も当然あるわけです。それを外から見た場合に何がいいのかという議論なりデータとしての見方はなかなか難しいと思うので、一概に並べることがいいことではない、個社名・基金名を出すことがいいことは限らないと思います。それでは、どうするのか。確かに、情報が多ければ、知りたい人にとってはすごく活用できる情報になってくると思いますが、そうでない大多数の人からすると、情報の海になってしまって、結局、そこで溺れてしまうということで、情報を活用できないことにもなりかねないので、ある程度、統計的に処理した情報も、見える化のための情報の一つとしては、必要なのではないかと思います。
細かい話をすると、14ページでDCの運管ごとの公表例が2つ載っていましたが、個人的な好みでは公表例1のほうが好きで、こういうリターンや信託報酬が並んで表示されていると、すごく分かりやすくていいと思います。実際に、自分で公表例2のような形でファンドを探そうとすると、目論見書に入ったり、月次レポートに入ったり、やっているうちにどれがどれだか分からなくなったりもするので、見やすい方法、要は、加入者がアクセスするときに見やすい内容かということは非常に重要だと思います。
本当に個社名は必要なのかということと、皆さんもおっしゃっていたとおり、何が本当に必要な情報かということは、よく整理する。ただ、部会長もおっしゃられたように、あまり絞ると、恣意的に「この情報は重要だ」と言っているようなものになってしまうので、それはそれで、色づけというか、重みづけをしないほうがいいと思います。その辺のバランスを考えながら、どういう形でどういう情報を公表していくのかということを整理していけたらと思っています。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございます。
いずれも貴重な御指摘でしたが、特に1点目は今までにあまりなかった視点ではありますよね。確かに、加入者のためと言うのだけれども、別に、こっちの制度がいいと思った会社にすぐ転職できるわけでもないし、どこの会社か分からなくても、全体のデータやA社はこうでB社はこうと出ていれば足りるのではないかということは、おっしゃるとおりかと思いました。今のところ、恐らくそういう方向では考えられていないと思います。でも、問題点は御指摘いただいたとおりなので、実際上、いずれにしても、これも開示項目と開示方法のやり方ということで議論していかなければいけない話だとは思います。
何か、補足はありますか。お願いします。
○海老企業年金・個人年金課長 ありがとうございます。
個社との比較の点をどのように考えるのかというところかと思いますので、加入者の視点で見たときに、御自身の情報が常に分かっていらっしゃる方であれば、個社名が出ていなくても、基金名が出ていなくても、比較は可能というところではあるのでしょうけれども、そうではないようなケース、あるいは、先ほどの学生さんや求職者は加入者ではないだろうと言えば、そこは除外されるのかもしれません。視点として、他社との比較をどのような形で捉えるのか、それが加入者目線に立ったときにどう集約されているとより使いやすいのか、見やすいのかというところも、視点としては、考える必要があるのかなとは思っております。
以上です。
○森戸部会長 そうですね。「加入者」と言っていますけれども、これは「受給者」とは書いていないけれども、受給者も関係があるかもしれないし、潜在的なこれから加入者になるかもしれない人とかは別だとも言えるし、加入者に近接・類似する人もいるかもしれない。もちろん株主のためではないのでしょうけれども、いずれにしてもまた議論しなければいけない貴重なポイントをありがとうございました。
松田委員、お願いします。
○松田委員 ありがとうございます。
簡潔に申し上げます。
運用の見える化については、あくまでも労使合意を前提とし、加入者にとって有益な情報開示の在り方を検討すべきと考えています。そのことを前提とし、DB・DCともに、事業主や運営管理機関から厚生労働省に提出される報告書を基に、ホームページなどで情報を公開し、加入者がほかの企業年金の情報を入手できるようにする方向性自体は否定しません。ただ、特にDBを実施している事業主や企業年金基金の負担が増加してしまうと、DBの普及や維持を阻害する可能性があります。皆さんからも御指摘があったように、負担増につながらないことを前提に、開示項目などについて検討し、慎重に見える化を進めていただきたいと思います。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございました。
ある意味、全体をうまくまとめていただいたと思いますが、まさにその問題点をこれから詰めていかなければいけないのだと思います。
藤澤委員、お願いします。
○藤澤委員 ありがとうございます。
加入者のための運用の見える化は、情報開示の拡充に繋がると思います。20ページの一番下の○ところにございますが、情報開示を拡充すると、一般的には、ガバナンスが向上する効果が期待されるという点があると思います。それに加えまして、企業年金への関心が高まってほしいという一部期待も込めてなのですけれども、情報開示が進むと、より企業年金に対する関心も高まるという方向に持っていけるような議論ができるといいと思っています。
その上で、2点、コメントをしたいと思います。
1点目は、関心を高めるという点と関連しますが、開示することによってDB・DCに関するリサーチが促進される方向に持っていけないかと思っています。特にアカデミアが利用可能なデータが増えると、中立的な研究が世の中に広まり、年金研究の裾野が広がるという効果も期待できると思っています。その観点で言うと、小林洋一委員もおっしゃっていましたが、開示の方法として、例えば、紙で出しているものをPDF画像で開示するのではなくて、利用しやすい形で、よりタイムリーに公表してほしいと思っています。
2点目、これも複数の委員がおっしゃっている、ネガティブな情報が世の中に広まるのではないかといった懸念の観点ですが、それを防ぐ意味でも、厚生労働省の中で集約した結果も併せて示すことがいいと思っています。以前の部会でも、カナダの事例を御紹介して、その後、カナダのレポートを事務局に送付いたしましたが、カナダの事例も参考にしながら、厚生労働省の中で選択した結果を集約して公表するということも考えてほしいと思っています。これまで以上に、誰が集約したのか、データのソースはどこなのが重要になってくると思っています。少し違った領域ですが、医療の領域で開示しているNDBのオープンデータというものがございます。レセプトや特定健診といったローデータを厚生労働省の中で集約したデータで、国民の医療動向を評価する上で有用なデータだと思っています。その作成の背景を見ると、多くの研究者が必ずしも詳細な個票データを必要とするわけではないので、多くの人々が使用できるようなあらかじめ定式化された集計データを整備することが重要ではないかという議論が有識者会議等でなされてきたという記載がございました。この多くの人々が使用できるようなあらかじめ定式化された集計データを整備するということは、今回も必要な観点だと思っています。今後、開示した結果がメディア等で取り上げられる機会が出てくる可能性があると思います。そのときに厚生労働省の中で集約したグラフや結果があると、そういったものが世の中に広まっていく方向になるのではないかと思っています。最初に申し上げたとおり、企業年金の関心が高まる方向に持っていくような開示をどうやって推進していくのかといったところを中心に、今後、議論をしていくといいと思っています。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございます。
藤澤委員の御意見だと、基本的に、データを全部出させる、プラス、厚生労働省で見やすく加工したもの、言わば両方を出せという案ということですかね。
○藤澤委員 そうですね。両方ですね。
○森戸部会長 今まではどっちでいくかと話していたけれども、両方やったらいいではないかという御意見です。そう言われればそうだという気がしてきました。ただ、全体を聞いていると、厚生労働省の仕事がさらに増えそうな案だったような気はしますけれども、私たちは血も涙もなく議論をする立場ですので、それはそれで、考えたいと思います。非常に貴重な御指摘をありがとうございました。
冨樫委員、お願いします。
○冨樫委員 私も、あくまで加入者にとって有益になり得る情報開示を目指すことは重要だと考えております。他委員の方からも既にございましたが、情報の開示に当たっては、中間整理でも触れられているとおり、運用結果の良し悪し、例えば運用利率や想定利回りだけが注目されることでDB基金の運用実績やDCの商品ラインナップが評価されるようなミスリード、ひいては予定利率や想定利回りの引上げを誘導するような事態が懸念されます。これは、当該労使の判断が最大限尊重されているとは言えない状況であり、また、必要以上にリスクを取った運用を行うことは受給権保護にも関わるため、そのような事態は避ける必要があると思います。情報開示の内容や方法、特に広報について、データの解釈の仕方や活用方法も併せて、慎重に検討いただきたいと思います。
また、DCの情報開示に当たっては、投資教育の実施状況の内容も重要と思いますので、DCの情報開示の項目に入れていただくことを検討いただきたいと思います。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございます。
具体的な御提案もいただきました。参考にしていきたいと思います。先ほど松田委員のところで言えばよかったのですけれども、20ページ、さっきほかの委員の方が御指摘された最後の○のところですね。見える化で労使間の話合いが活発化し、企業年金のガバナンス向上につながる効果も期待されるとあって、見える化がどういう形になるかは分かりませんが、これは組合の労側だけではなくて使用者側もそうですが、労使でぜひガバナンス向上に尽くしていただきたいと期待したいとは思いますが、意地悪な物の見方をするタイプなもので、これは、見ようによっては、つまり、見える化によってこれを頑張ってということは、本来は今も労働条件なのだから労使でしっかりとガバナンスを企業年金に利かせておかなければいけないのに、やんわりと「きちんとやっているのか」と言っているとも考えられます。今、課長が「いや、そんなつもりはありません」という顔をされたのですけれども、要するに、ガバナンス向上につながるということは、今もガバナンスはやっているのでしょうけれども、「見える化でもっと企業年金について労使がしっかりと話し合うようになってください」と言っているということは、「まだ実は足りないではないか」と言っているという読み方もあるかと思いました。私しかしていないかもしれないけれども。いずれにしても、労使の労働条件の一部であるということで、各委員が再三おっしゃっていますけれども、労使交渉においてもこの話が出てきて、それなりに内容のある話合いができるようになればいいなとは思います。すみません。余計なことですけれども、一言、申し上げました。
オンラインでまだ委員がいらっしゃるので、オブザーバーには後で御意見をいただこうと思います。
オンラインの島村委員、何か御意見はありますか。
○島村委員 島村です。ありがとうございます。
繰り返しになることばかりなのですけれども、私自身は、この見える化の議論について、ほかの会社の情報を開示して制度比較をできるようにすることが何のためなのか、その目的や意義に疑問を持っています。本当に皆さんのおっしゃる加入者のための利益になるのかどうか、本当になるのかなという気がしていて、利益になるようにするには、見える化したものを加入者の人が使えるように、情報の使い方についての環境整備とか、プラスアルファも必要なのではないのかなと思いました。
紙媒体は改めていただく必要があると思いますので、デジタルでの情報収集はより促進していただきたいと思っています。
最後に、皆さんもおっしゃられたように、現場の負荷が増すことによって、「企業年金は、大変だから、やめた」とは決してならないような方向で進んでいただけるといいなと思いました。
以上です。ありがとうございます。
○森戸部会長 あえて時間を取っていただいて、ありがとうございます。
非常に貴重な御意見だったと思いますので、参考にさせていただきたいと思います。
渡邊部会長代理、何かありますでしょうか。
○渡邊部会長代理 ありがとうございます。
既にいろいろな視点から様々な御意見が述べられておりまして、私から新たに付け加えるようなことはありませんので、簡単なコメントだけ、させてください。
具体的な開示方法として、厚生労働省が行うといった御提案自体は、中立性などの観点からも、大変望ましいのではないかと思っておりますので、その線で進めていただければと思っております。
その上で、公表化するために必要となるシステムの構築が求められてくるかと思います。今、紙媒体で出されている情報をデジタル化することも含めて、システムの構築が必要となるだろうと思っていますので、そういった御対応もぜひお願いしたいと思っています。新たに報告を求める事項が生じるとか、公表化のためのシステムをつくる過程において企業などに新たな対応を求めることも出てくるかと思います。その際に、既に何回も出ておりますが、企業側の負担に十分配慮する必要があると思っています。そこで重要なことは、企業年金の普及を妨げないといった視点であろうかと思っていますので、先ほど、DBの情報開示の対象、規模をどうするかという話があったかと思いますが、開示による影響の程度も不透明な段階でありますので、事務負担だ、何だということも考えますと、初めは一定規模以上のところから進めていただいてもいいのではないかと思いました。
私からは、以上です。
○森戸部会長 ありがとうございました。
オブザーバーの方からも、企業年金連合会からは意見を資料でもいただいていますので、御発言をお願いしたいと思います。
○鮫島企業年金連合会理事長 ありがとうございます。
資料を提出しましたので、参考資料1を御覧いただければと思います。
企業年金の運用の見える化につきまして、私どもは、内部に政策委員会を設けておりまして、地方組織等から選任された会員による討議の場でありますけれども、そこで検討してまいりました。そこでの現場の声を踏まえて、かいつまんで、以下、意見を申し述べます。
まず、見える化の目的でありますけれども、これもいろいろと議論があるところですけれども、ここでは、事業主と加入者・受給者が、他の企業年金の運用状況を見て、自らの運用と比較し、運用を見直す契機とすることと認識しております。そうした目的で見える化を進めるという方向感については、理解をしております。
ただ、企業年金の現場では、それを不特定多数が閲覧する結果、企業年金の運営や普及の面で支障が生じるのではないかといった懸念が非常に強いことが実情であります。例えば、一部を切り取った不適切な分析記事や不適切な営業活動に伴う負担や不利益の発生といったことです。そこで、運用の見える化の目的を法令上明確にしていただくとともに、目的外利用の禁止についても法令上に位置づけることが適当ではないかと考えています。また、それがかなわない場合には、企業年金の個別名称を不開示とすることも検討する必要があると考えております。
以上を前提としまして、情報開示の方法につきましては、企業年金の事務や費用の追加的な負担を最小限にとどめるため、現在企業年金やRK等から厚生労働省に提出している報告書を基に、厚生労働省において開示していただくことが望ましいと考えています。
また、開示の内容につきましては、個別には御説明しませんけれども、参考資料1の4.に、これまでの検討でおおむね異論のない項目を挙げました。考え方としては、運用利回りだけではなく、その背景にある資産運用や制度運営の考え方を理解するために必要な項目も含めております。他方、当事者間の取引情報である取引相手の個社名、資産運用と直接の関係がなく労働条件の開示につながる情報は、含めておりません。さらに、開示を行うに当たっては、加入者・受給者の理解を助けるため、期待収益率、リスク等の専門用語や資産運用に関する平易な解説を併せて提供することも必要だと考えております。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございます。
オブザーバーとしての御意見ではありますが、問題点も整理していただいて、最後のほうでは、これをこれからまさに議論していこうとしているわけですが、開示主体・方法、開示すべき項目も具体的に挙げていただいています。今後の議論の参考になるかと思います。最初のほうでは、企業年金連合会ですから当然かもしれませんが、非常に慎重に目的外利用の防止などについても触れられていますが、最終的な項目としては、予定利率なども含め、きちんとこういうものもセットで開示するのであればよろしいという御意見ということですかね。
○鮫島企業年金連合会理事長 目的外利用を何とか防ぎたいということです。そうでないとすれば、先ほどからお話が出ておりますけれども、企業年金の名称は出さないこととし、その場合は、こういう項目が考えられるのではないかという意味でございます。
○森戸部会長 匿名化の御意見は、先ほど原田委員からもありました。目的外利用は、その目的をどう設定するか、法的にどのぐらい絞りをかけられるかという議論は必要かと思います。いずれにしても、貴重な御意見ですので、参考にしたいと思います。
ありがとうございました。
国民年金基金連合会さんも、ありますか。お願いします。
○松下国民年金基金連合会理事長 簡単に意見を述べさせていただきます。
今日の加入者にとっての見える化というテーマなのですが、もちろん一般論としての見える化や情報開示の効果については否定するものではありませんけれども、皆様の議論も伺っていまして、目的と手段の関係が制度によっては必ずしも同一ではないというところを十分に留意する必要があるのではないかという気がしております。結論から申し上げると、企業型のDCにおける加入者にとってという意味、あるいは、今日のテーマではありませんけれども、アセットオーナーにとっては、見える化を進めていく、情報開示を進めていくことは、あくまでも手段でありまして、それをよりよい運用を実現するという目的のためにうまく使えるかという意味では、ある程度、合理的な目的の達成方法が確立されていると思いますけれども、一方で企業型DBの場合において、仮に情報開示や見える化が進んだ後に、いろいろな比較も行えて、さて、加入者がよりよい運用の実現のために一体どういう手段を行使できるのかという状況は、ほかの制度とは違って、必ずしも確立されていないのではないかという懸念を持っています。したがって、仮にその目的の達成方法が十分確立されていない状況だとすれば、同じような開示の状況を実現することは、やや慎重に考えることが必要な面もあるのではないかという気がいたしております。
以上です。
○森戸部会長 ありがとうございます。
御指摘のとおりの点もあるかと思います。ただ、いろいろなものが開示されないとどういう目的で使っていくかも分からないというところもあるので、そこはどっちが先かの議論ではありませんけれども、いずれにしても、また貴重な御指摘だったと思いますので、これも参考にさせていただければと思います。
一応、皆さんから御意見をいただきました。
私として、特に強い意見というわけではありませんが、見える化の話は、事務局がというか、元の資産運用立国実現プランが「加入者のために」とつけた時点で、それに反対だということはあまり言えないというか、「だって、加入者のためにやると言っているでしょう」と言われて、「いや、反対です」と言う人はいないので、ある意味、これは問題設定がうまいというか、それはしようがない。冷めた言い方ですけれども、「あとは中身ですね」という話にならざるを得ないのかなと思います。ただ、この企業年金は、本来は企業の中での労使のプライベートの話でしょうということを、ある程度、外に開示していかなければいけないということがあるとしたら、労働条件なのだけれども、公的な性格を持っているということで、税制優遇もあるし、公的年金を補うものだし、ということから説明するのかなとは思います。話が飛ぶようですけれども、だから、特別法人税とかをかけるのはおかしいという話につながっていくのかなと思います。
さっきの「加入者」のためにということも、「加入者等」であり、その範囲をどのように考えるのかという話もあるとは思います。
項目の点は、これからですけれども、伺っていて思ったことは、藤澤委員の両方を出せばいいということは、ある意味、鋭い御意見かなと思いましたが、すごく絞ってこれだけ出そうとやるとすごく目立つし、既にここで予定利率とかだけを出すのはいけないよねという議論をさんざんしているから、多分少しウオッチをしている人は予定利率とかが出るとそんなに大変なことになるのですねとものすごく思ってしまっているわけで、どのように対応するかは難しいですよね。加工し過ぎてもそこに思想が出てしまうし、逆に、何もしないで、全部出しますから、あとは好きにやってね、あとはプロなりコンサルなり研究者なりが整理してやればいいでしょうと、素材だけ出すということも、アメリカなどはどっちかというとそういう発想なのかなと思って、さっきの事務局の説明も伺っていました。
私の意見というか、感想はそのぐらいにいたしまして、いろいろと御意見いただきました。もちろん、皆さんの御意見は違いがあって、慎重な御意見もありましたが、先ほど申し上げたように、加入者のために何らかの形で見える化を考えていこうという方向については、一応皆さんに御異論はなかったのではないかと思います。21ページの具体的な方法の大きな方針としては、ここに書いてあるような方向を、今後、議論していく。そのときには、当然、皆さんが御指摘になったように、その事業主の負担にも十分配慮しなければいけない。あまりに「開示」と言い過ぎて、「企業年金など、やらなくていいや」みたいなことにならないようにしなければいけない。結局、どういう項目を、どのように開示させて、どのように今後は使っていくのですかということが一番大事で、そこはこれから議論していく。そういうことを前提に、今言ったようなことが21ページに入っていると思いますので、事務局が示したこの21ページのような方向性で今後は進めていくということで、一応合意していただいてよろしいのかなと私としては判断しているのですが、よろしいでしょうか。オンラインの先生方も、よろしいですかね。一応方向としては御異論がないと考えております。
(首肯する委員あり)
○森戸部会長 ありがとうございます。
もちろん、詳細な開示項目、実務上の問題点等々は、この方向性や今日御指摘いただいた問題を十分踏まえて、事務局で引き続き検討を続けていただこうと思いますので、その点はよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
本日の議事は以上で終了いたしたいと思います。
今後の予定等について、事務局から、アナウンスをお願いいたします。
○海老企業年金・個人年金課長 次回の議題や開催日程につきましては、追って御連絡させていただきます。
○森戸部会長 ありがとうございました。
それでは、第34回企業年金・個人年金部会を終了いたします。
お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございました。
団体