第9回 社会保障審議会企業年金・個人年金部会 議事録

日時

令和元年11月8日(金)8:59~11:08

 

場所

AP新橋 3階ルームA

 

出席者

神野部会長、森戸部会長代理、伊藤委員、井戸委員、臼杵委員、大江委員、小川委員、金子委員、小林委員、白波瀬委員、藤澤委員、細田委員

(オブザーバー)松下国民年金基金連合会理事長、宮園企業年金連合会理事長

議題

制度の普及等に向けた改善について

議事

 

議事内容

○神野部会長

 それでは、定刻でございますので、ただいまから第9回の「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」を開催したいと存じます。

 委員の皆様方には、大変お忙しいところを万障繰り合わせて御参集くださいましたことに深く御礼を申し上げる次第でございます。

 本日の委員の出欠状況でございますが、内田委員、渡邊委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。

 御出席いただきました委員の方々が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことをまず御報告させていただきたいと存じます。

 それでは、議事に入らせていただきたいと思いますが、まずは事務局から資料の確認についてお願いいたします。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 企業年金・個人年金課長です。本日もよろしくお願いいたします。

 また、本日、局長は公務の都合で途中で退席しますので、御承知おきください。

 資料の確認をさせていただきます。

 本日の資料は、資料1「制度の普及等に向けた改善について」。

 参考資料1「制度の普及等に向けた改善について(参考資料)」。

 参考資料2として、委員名簿を用意しています。

 事務局からは以上になります。

 

○神野部会長

 ありがとうございました。

 それでは、議事に入らせていただきたいと存じますので、恐縮でございますが、カメラの皆様方にはここで御退室をお願いいたします。御協力を頂戴できれば幸甚でございます。

 議事次第をご覧いただければと思いますが、本日は1つ議題を準備させていただいております。「制度の普及等に向けた改善について」という議題でございます。

 進め方は、慣例どおりでございますが、事務局から資料、参考資料を一括して御説明していただいた上で、委員の皆様方から御質問、御意見を頂戴しながら、御審議を頂戴したいと思っております。

 それでは、事務局から、資料の説明につきまして、よろしくお願いいたします。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 それでは、御説明させていただきます。

 税制改正に関係するものは、中小企業向け制度、iDeCo、ポータビリティまでになります。そのほか、来年度の制度改正に向けて、法律に限らず、政令省令事項、運用事項を含めて、これまでの部会での御議論を踏まえ、論点を整理しています。

 前回の部会同様、論点の資料の前に、まずは参考資料を御説明いたしますので、参考資料1をお開きいただきたいと思います。分量が多いですが、これまでの部会に提出してきた資料が大半です。全体を編集し直しておりますので、ポイントとなる資料や新しい資料を中心に簡単に御説明をいたします。

 2ページから企業年金の加入者数や実施状況になりますが、4ページまでお進みいただきまして、2つ目のマル、退職年金制度の実施割合が低下していますが、従業員規模300人未満で減少が大きくなっています。

 5ページ、非正規雇用労働者については、企業年金や退職金制度の適用割合が低くなっています。

 8ページまで進んでいただいて、中小企業における企業年金の実施率は低いため、主に中小企業が取り組みやすいよう支援策を実施しています。その1つが9ページの簡易型DCであったり、10ページのiDeCoプラスになります。簡易型DCについては、既に一部の運営管理機関がこの制度に即した中小企業向けの制度を提供しています。また、iDeCoプラスについては、10ページ右の絵をご覧いただきたいと思いますが、既に事業主数で836、対象人数で5,748人が対象となっています。

 11ページ、サンプル数が小さいアンケートですが、企業型DCの導入の障害や実施中の問題について尋ねたところ、「財政的負担」のほか、「加入者への投資教育の負担」、「手続き上の負担」が挙げられています。「手続上の負担」を挙げる割合は従業員規模が「300人以上」となると減りますが、「1~99人」と「100~299人」では大差がありません。

 12ページから加入者資格です。企業型DCにおいては、特定の者について不当に差別的でない範囲で、制度の対象者について「一定の資格」を設けることができます。DB・厚生年金基金も同様です。

 13ページから15ページまで、加入者資格に関する関連の通知になります。

 16ページ、DBと企業型DCの法令解釈通知ですが、記載内容が整合的でない点が一部あり、企業型DCにおいては、足りない記述を後のQ&Aで補足していますが、一覧性がなく、企業や地方厚生局の担当者にとっても非常に分かりにくいものとなっています。

 17ページ、昨今定められました同一労働同一賃金のガイドラインになります。

 続きまして、個人年金の関係です。

 19ページ、拠出限度額の一覧です。

 20ページ、iDeCoの拠出限度額の考え方です。国民年金第2号被保険者の2万円や1.2万円については、絵の青色の点線で囲った部分、マッチング拠出の実態の大半をカバーする水準、具体的には累積9割の水準を勘案して設定しています。

 この点、21ページ、マッチング拠出は2万円以下が9割となっており、iDeCoの拠出限度額を引き上げる状況にはありません。

 22ページ、マッチング拠出の考え方ですが、「企業年金制度は退職給付制度であって事業主による拠出が基本であるとの考えの下」、制度設計されており、2つ目のマルの最後の部分、「事業主掛金を超えない範囲」とされています。

 23ページ、企業型DCの実施企業は、この絵にある1から3を選択することとなっています。3つ目のマル、企業型の加入者のiDeCoへの加入については、企業型の事業主掛金とiDeCoの掛金の合計額が拠出限度額に収まるよう、事業主掛金の上限の引下げが必要となること等から、規約に定めた場合に限っています。

 24ページ、企業型DC加入者のマッチング拠出とiDeCo加入の比較になります。

 25ページと26ページ、iDeCoの加入手続は、現在、インターネットだけでは完結せず、各種書類が必要になっています。

 27ページ、iDeCoの手数料になります。

 28ページ、中途引き出しが例外的に認められる要件として、真ん中の点線囲みの要件全てを満たすことが必要であり、具体的には保険料免除者であること、通算の掛金拠出期間が3年以下であること等が必要となっています。

 ※の部分、この3年というのは、外国人に対する公的年金の脱退一時金とのバランスを考慮して設定したものです。

 29ページ、外国人の帰国に伴う脱退一時金受給要件の緩和を求める要望です。若干補足しますと、外国籍人材が帰国するときには、公的年金の脱退一時金は受給できる一方で、DCについては保険料免除者が要件となっています。しかし、帰国時には日本の公的年金制度から外れるわけですので、保険料免除者に該当することはなく、DCの脱退一時金を受給できないといった矛盾があり、改善を求める意見となっています。

 30ページは公的年金の外国人脱退一時金制度、31ページはその見直しの方向性の資料で、いずれも年金部会に提出されたものになります。

 続きまして、ポータビリティです。

 33ページ、ポータビリティは順次拡充されてきましたが、34ページにあるように、一部に不十分な点が残ります。

 続きまして、手続関係です。

 36ページ、企業型DCとDBにおいては、規約変更において労使合意を得てから、厚生労働大臣の承認を受ける必要がありますが、例外もあります。

 また、2つ目のマル、DBについては、届出自体が不要とされている規約変更の事項もあります。類似の規約変更の事項でも、事業主の必要な手続が、企業型DCとDBとの間で異なっています。申請の際には、実施内容の概要や実施事業所の一覧等を記載した概要書、労働組合等との協議の経緯を明らかにする書類等を添付する必要があります。

 37ページ、事業主は、事業年度ごとに、企業型DCに係る業務報告書を提出する必要があります。報告書の記載事項は、施行当初と比べて大幅に増加しています。

 38ページ、国民年金基金連合会は日本年金機構との情報連携を行っていますが、国民年金第2号被保険者については企業年金の実施状況によってiDeCoの拠出限度額が異なるため、事業主証明や年1回の現況届けが必要となっています。

 39ページ、運営管理機関の登録を受けようとするときは登録申請書を提出する必要があり、登録事項に変更があったときはその旨を届け出る必要があります。

 40ページと41ページは、リスク対応掛金とリスク分担型企業年金の仕組みの概要で、これまで部会に出してきた資料になります。

 42ページからは、「将来発生するリスクの算定方法」の資料ですが、これまでの部会に示してきたものになりますが、リスク分担型企業年金以外のDBにおいては、手続が二度手間になっているということで、45ページの改善案を来年度当初の掛金変更から適用できるよう、現在、告示改正のパブリックコメントを実施中です。

 46ページ、給付設計の変更を行う際、給付現価や最低積立基準額が減少する場合に給付減額と判定しています。

 47ページからもこれまでの部会に示してきた資料になりますが、リスク分担型企業年金の給付減額の判定基準には、DBとは異なる基準が設けられており、49ページ・50ページ、合併・分割、事業所の増減の際に問題が生じています。

 51ページ、DBの給付設計について、勤続期間に応じて給付額は増加していくものの一定の勤続期間を超えると増加幅は緩やかとなるS字カーブを描くことがあります。定年延長に伴って支給総額が増える場合であっても、その増加に対して、定年延長に伴う割引の方が大きい場合には、給付現価が低下します。給付減額と判定された場合は、手続要件として、給付減額に該当する者の個別の同意等を得ることとなっています。

 52ページは定年の推移になります。

 53ページ、給付減額を伴う規約変更申請の際に添付書類として、同意書自体の添付を求めています。

 54ページ、給付額の改定の手続について、日本年金数理人会から提案のあった内容になります。

 最後にガバナンスの確保等です。

 56ページ、DBのガバナンス確保に向けた取組です。これまで様々な取組を行ってきましたが、この表の右の欄に通知改正と記載があるように、多くが運用上・行政指導上の取組でした。具体的な改正事項は、57ページから59ページのとおりです。

 60ページ、事業主等は、DBの業務概況について加入者に周知しなければなりません。DBの業務概況からは給付の種類ごとの標準的な給付の額や給付の設計などは把握できますが、財政の観点から作成されるものであり、加入者にとっては自らの状況が把握できません。

 このため、61ページ、最近では、DBでも、キャッシュバランスやポイント制など、個人ごとの仮想の積立金を積み立てていくような給付設計の場合などでは、個々人の資産残高が計算できますので、通知・開示する取組が見受けられるようになっています。

 さらに、62ページと63ページは、公的年金、企業年金、iDeCoなどについて、退職金も含めて、将来のシミュレーションを行っている例になりま す。

 64ページはイギリスの「見える化」の取組です。イギリスは1階の国家年金に、2階は自動加入の企業年金という制度体系ですので、生涯で平均8種類の年金に加入すると言われています。自分がどのような年金に加入しているか把握・管理することができる「年金ダッシュボード」というプラットフォームの開発を行っています。

 66ページ、企業型DCの運営に当たって、年金委員会のような組織を設ける事例も見受けられるようになっています。

 67ページはその実例になります。

 68ページ、企業型DCの導入時・変更時のみならず、日常的・定期的な制度運営に際しても、加入者の意見を聴取し制度運営に反映できる体制としている事例があります。

 69ページ、継続投資教育について実施率は向上しつつあります。しかし、最新のデータは努力義務化施行前になりますので、引き続き、施行後の実態把握に努めることが必要です。

 70ページ、企業年金連合会は、事業主からの委託を受けて、2017年4月から継続投資教育を実施しています。

 71ページ、再びイギリスの取組ですが、先ほど説明したダッシュボードという取組に加えて、これまで3つの団体が、国家年金、DC、その他金融資産に関する個別ガイダンスを適用してきましたが、これらの機関を統合し、一貫したガイダンスを適用するようになっています。

 72ページ、3つ目のマル、事業主には運営管理機関の評価を行う努力義務が課せられています。そして、4つ目のマル、運営管理機関が自身の選定した運用の方法の一覧をインターネットで公表することを求めています。

 この点につきまして、73ページ、厚生労働省のホームページに掲載している運営管理機関登録業者一覧に各社の運用方法一覧のページのURLを追加しましたので、御紹介します。

 74ページと75ページ、事業主による運営管理機関の評価や運用商品のモニタリングですが、実績が芳しくなく、引き続き動向を把握していく必要があります。

 76ページから、支払保証制度、年金バイアウトなどの資料を用意していますが、これまでの部会でお示ししてきた資料になります。

 80ページ、選択型DCや選択制DCと呼ばれているもので、これまでの部会における議論を紹介しています。

 論点になります。資料1をお開きいただきたいと思います。

 1ページ、前回の部会において、高齢期の就労の拡大を制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤を充実できるよう、公的年金の見直しに併せて、企業年金・個人年金の加入可能要件を見直して加入可能年齢を引き上げるとともに、受給開始時期等を柔軟化すべきであることを確認しました。

 また、拠出限度額、中途引き出し等については、引き続き丁寧に検討を継続していくことを確認しました。

 ※の部分ですが、本日のテーマは、制度の普及です。これら拠出限度額、中途引き出し等の見直しの内容によっては、企業年金、特にDBの普及を阻害しかねないことに留意する必要があります。

 一方、企業年金・個人年金の現状を見ますと、

・中小企業を中心にそもそも企業年金がない者がいる

・企業に企業年金があっても適用されていない者がいる

・iDeCoについて、加入可能範囲が拡大されたが、企業型DCの加入者がiDeCoに加入できるのは同時加入を認める規約の定め等がある企業に限られる

といった課題があります。そのほか、様々な手続上の課題について指摘があります。

 これらを踏まえると、加入可能年齢の引上げ等の制度の充実を図ることに併せて、より多くの企業・個人が制度を利用できるよう、制度面・手続面の改善を図るべきではないか。

 また、将来の給付が確実に行われるよう、ガバナンスの確保等が重要であり、これまで様々な取組を行ってきたが、引き続き、必要な改善を図るべきではないか。

 2ページ、中小企業向け制度の対象範囲の拡大です。企業年金の実施率の低下は300人未満の企業で著しいことから、中小企業向けに設立手続を簡素化した「簡易型DC」や、企業年金の実施が困難な中小企業がiDeCoに加入する従業員の掛金に追加で事業主掛金を拠出することができる「中小事業主掛金納付制度(iDeCoプラス)」について、制度を実施可能な事業主の対象範囲を、現行の100人以下から300人以下に拡大することとしてはどうか。

 3ページ、加入者資格です。1つ目のマルの※の部分の2つ目、「同一労働同一賃金ガイドライン」では、正社員と非正規雇用労働者との間に待遇の相違が存在する場合に、いかなる待遇の相違が不合理と認められるものであり、いかなる待遇の相違が不合理と認められるものでないのか等の原則となる考え方及び具体例が示されています。

 同ガイドラインでは、企業年金や退職手当等の待遇については原則となる考え方が示されていませんが、これらについても、「不合理と認められる待遇の相違の解消等が求められる」ことや、「各事業主において、労使により、個別具体の事情に応じて待遇の体系について議論していくことが望まれること」が同ガイドラインの「基本的な考え方」に明記されています。

 これを受けまして、上のマルに戻っていただきまして、企業年金の加入者の資格等は、特定の者について不当に差別的なものでないことが法令に規定され、その詳細が法令解釈通知等に規定されているが、「同一労働同一賃金ガイドライン」の「基本的な考え方」を踏まえた取扱いがなされるべきであり、その旨を確定給付企業年金と確定拠出年金の法令解釈通知においても明記することとしてはどうか。

 また、法令解釈通知について、現行はDBと企業型DCとの間で記載内容が整合的でない点が一部あることから、記載内容を整理してはどうか。

 4ページ、企業型DCのiDeCo加入の要件緩和です。企業型DC加入者がiDeCoに加入できるのは、現行は労使合意に基づく規約の定めがあって事業主掛金の上限を引き下げた企業に限られるが、これを改め、規約の定めや事業主掛金の上限の引下げがなくても、iDeCoに加入できるように改善を図ってはどうか。

 括弧書きの2つ目のポツにありますように、事業主掛金の上限を引き下げない限り、当該企業型DCの加入者全員がiDeCoに加入できないため、事業主掛金が低い、例えば若い従業員にとっては拠出限度額が余っているにもかかわらず、iDeCoに加入できない状態となっています。これまで規約の定めと事業主掛金の上限の引下げを求めていたのは、拠出限度額の管理という事務処理の観点からですので、この点、括弧書きの一番下の部分、掛金の合算管理の情報連携の仕組みを企業型の記録関連運営管理機関(RK)4社と、国民年金基金連合会との間で構築することで、規約の定めや事業主掛金の上限の引下げがなくても、全体の限度額から事業主掛金を控除した残余の範囲で、iDeCo(月額2万円以内)に加入できるように改善を図ることが可能となります。

 RKを含む運営管理機関協議会の担当者の皆様と国民年金基金連合会の担当者の皆様と年金局でこの半年間検討を重ね、本日、この提案と、後に御説明しますiDeCoのオンライン申請の提案ができる状況に至ったことを申し添えます。関係者の皆様には、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。

 続きまして、5ページをご覧ください。実現に際しては、企業型DC加入者がiDeCoの拠出可能額を把握できるようにすることが重要となります。このため、企業型RKの加入者向けのホームページにおいて、iDeCoの拠出可能額(見込み額)を表示する方向で調整中です。

 6ページ、iDeCoに係るその他の改善です。併せて、マッチング拠出を導入している企業の企業型DC加入者は、マッチング拠出かiDeCo加入かを加入者ごとに選択できることとしてはどうか。

 下段部分をご覧いただきまして、iDeCoの加入申込みや変更について、現行は紙による手続となっているが、オンラインで行うことを可能にするなど、各種手続面の改善をできる限り速やかに実現する必要があるのではないか。

 iDeCoの手数料について、2012年に、2016年までの収支計算で計算されたものが基になっています。その後、2016年の制度改正があり、システム改修を要し、その費用は手数料で賄うことになりますが、その一方で、手数料を負担する加入者数も大幅に増加しました。国民年金基金連合会は、今回の制度改正によるシステム改修費等の増額要因、手続の効率化等の減額要因、加入者数の現状と今後の見通し等を踏まえて、収支を再計算して手数料を再設定するとともに、前提となる期間を終了するごとに再計算・再設定していく必要があるのではないか。

 7ページ、確定拠出年金における中途引き出しの改善です。例外的に認められている中途引き出し(脱退一時金の受給)について、外国籍人材が帰国するときは、制度に加入できず年金資産を積み増すことができなくなることから、通算の掛金拠出期間が短いこと等の他の要件を満たせば、中途引き出しを認めてはどうか。

 また、上の箱の最後のポツ、脱退一時金の要件(3年以下)は、外国人に支給される公的年金の脱退一時金の支給額(3年以下)を考慮して設定されており、公的年金の脱退一時金の見直しが行われるのであれば併せて見直すことが考えられます。

 8ページ、ポータビリティの改善です。企業年金・個人年金制度間のポータビリティは順次拡大されてきたが、終了したDBからiDeCoへ資産を移換できないことや、企業型DCから通算企業年金へ資産を移換できないこと等、一部に不十分な点が残ることから、ポータビリティの不十分な点について改善を図ってはどうか。

 9ページ、DCの各種手続の簡素化・負担軽減です。DCについて、企業型・個人型ともに手続が負担となっていることから、それぞれ次のとおり簡素化して、事業主・個人・国民年金基金連合会・運営管理機関の負担軽減を図ることとしてはどうか。項目としては5点あります。企業型DCの規約変更の手続、事業主による企業型DCに係る業務報告書の提出手続、事業主による従業員の資格の確認手続、国民年金第1号被保険者のiDeCo加入手続、運営管理機関の登録手続、この5点について手続の簡素化・負担軽減を行ってはどうかという提案になります。

 1点だけ補足しますと、9ページに戻っていただきまして、マル2の業務報告書の提出手続をご覧ください。現行の課題ですが、事業主は、事業年度ごとに、企業型DCに係る業務報告書を提出する必要がありますが、報告書の記載事項は施行当初と比べて大幅に増加しており、その大半が企業型RKに確認しなければ分からない情報となっています。このため、実際は、事業主は企業型RKから得た情報を基に、投資教育の実施の有無等を一部追記して報告しています。

 対応の方向性ですが、業務報告書の記載事項を簡素化してはどうか。また、企業型RKが事業主に代わって業務報告書を提出できることとしてはどうか。

 その際、事業主による投資教育等の実施とその確認の重要性はいささかも変わるものではありません。※の部分ですが、投資教育等について、業務報告書で実施の有無のみの報告を求めるのではなく、投資教育の内容等を地方厚生局がヒアリング等で把握して指導にあたる方が効果的だと考えます。これは運用商品のモニタリング、運営管理機関の評価等も同様になります。

 11ページ、DBの各種手続の見直しです。DBの各種手続について、それぞれ次のとおり見直してはどうか。

 マル1、リスク対応掛金に係る規約変更の手続について、対応の方向性ですが、リスク分担型企業年金以外のDBが予定利率の低下を見込む場合等、施行後これまでの間で定型化した算定方法について、厚生労働大臣の個別の承認を不要としてはどうか。

 マル2、リスク分担型企業年金の合併時・分割時等の手続について、対応の方向性ですが、合併・分割事業所の増減の際に問題が生じている点ですが、これは制度の施行段階において、開始時・終了時の手続とともに、合併時・分割時等の手続も整備したものの、後者の規定に一部不備があったことに起因します。規定の不備を放置することは望ましいことではなく、制度趣旨を踏まえた適切な手続の規定を整理した上で、改めて議論することとしてはどうか。

 12ページ、マル3、定年延長等の雇用延長に伴う給付設計の見直しに当たっての手続について、対応の方向性ですが、支給開始要件を見直す場合、予定利率で割り引く期間が延びることによって給付現価が減少する場合がありますが、このような場合を給付減額として扱うべきという意見と扱うべきではないという意見、また、給付減額として扱う場合も個別同意等の手続要件を課すべきという意見と課すべきではないという意見に分かれたところです。それぞれの意見の考え方を整理した上で、改めて議論することとしてはどうか。

 マル4、給付額の改定の手続について、対応の方向性ですが、DBの給付は、あらかじめ規約で給付額の改定ルールを定めることができ、支給を開始して一定の期間が経過したときに定率を乗じる方法が認められています。この改定ルールの一つとして、死亡率の更新ごとに、死亡率の変動による終身年金現価率の増加を勘案した調整率を乗じることを可能としてはどうか。

 13ページ、ガバナンスの確保等です。DBのガバナンスの確保に向けて、これまで様々な取組を行ってきました。特に、総合型DB基金については、ガバナンスを確保し、中小企業における確定給付型の受け皿となることが期待されているところです。ガバナンスの確保に向けたこれまでの取組は、多くが運用上・行政指導上の取組だったわけですが、権利義務に関わる点、下に記載の3点ですが、これらについては法令で規定することを基本的な方針として取り組むこととしてはどうか。

 加入者への情報開示・分かりやすい説明は、ガバナンスを確保する上で欠かせない要素です。これまではDBの業務概況を分かりやすくする取組を進めてきたものの、業務概況からは給付の種類ごとの標準的な給付の額や給付の設計などは把握できますが、財政の観点から作成されるものであり、加入者にとっては自らの状況が把握できません。このため、加入期間に応じた給付額や将来見込額などについて加入者ごとに通知・開示する事例があります。こうした取組は、加入者の制度への関心・理解をより深める意義のある取組であり、取組事例の周知等により事業主の取組を促してはどうか。

 DCのガバナンスの確保に向けて、2016年の確定拠出年金法等の改正において、制度を健全に運営し、加入者等が適切に資産運用を行うことができるようにする観点から、様々な環境整備が行われました。継続投資教育、運営管理機関等の評価、運用商品のモニタリング、運用商品提供数、商品除外手続、指定運用方法の設定などについて、施行後の実態を把握した上で、改めて議論することとしてはどうか。

 14ページ、企業型DCの運営に当たって、社内に年金委員会のような組織を設ける事例があります。また、制度の導入時・変更時のみならず、日常的・定期的な制度運営に際しても、加入者の意見を聴取し制度運営に反映できる体制としている事例があります。こうした取組は、事業主の受託者責任の観点から意義のある取組であり、取組事例の周知等により事業主の取組を促してはどうか。

 iDeCoの運営に当たって、実施主体である国民年金基金連合会が受託者責任を負っています。事業主による退職給付制度と個人の資産形成手段であるiDeCoとでは制度に違いがあり、事業主と国民年金基金連合会の受託者責任にも違いがあるものの、現行法上、国民年金基金連合会には、継続投資教育の努力義務、忠実義務などが課せられています。この点に関して、iDeCoの継続投資教育については、国民年金基金連合会は他の者に委託することができることとし、運営管理機関がこの委託を受けていますが、企業年金連合会はこの委託を受けることができません。企業年金連合会は2017年4月より事業主からの委託を受けて継続投資教育を実施しており、国民年金基金連合会からの委託も受けることができるようにすることで企業年金連合会の実施するセミナー等にiDeCo加入者が参加できるようにするなど、両連合会の連携を強化してはどうか。

 15ページ、支払保証制度について、賛否が分かれたが、財源のほか、「導入する必要性、企業年金の性格、受給権との関連、モラルハザードの回避方策など」の検討課題を整理した上で、改めて議論することとしてはどうか。

 イギリスで導入されている閉鎖型DBのバイアウト等のように年金支払義務を社外に移転させる仕組みについて、我が国での導入の必要性、可能性等を、受給権の保護、ガバナンスの確保等の幅広い観点から整理した上で、改めて議論することとしてはどうか。

 企業年金の実施・変更、掛金の設定・変更等は、労使合意が原則必要となるが、いわゆる選択型DC・選択制DCは、労働条件の不利益変更であるとともに社会保険・雇用保険等の給付にも影響するものであり、導入に当たって事業主はこれらの点を含めて正確な説明をすべきであることを法令解釈通知に明記することとしてはどうか。また、規約の審査を行う地方厚生局は、事業主がどのような資料を用いてどのような労使協議を行ったのかを「協議の経緯を明らかにする書類」に記載させ、これらの点を確認すべきであることを厚生労働省から地方厚生局に宛てた通知(審査要領)に明記し、確認の徹底を図ることとしてはどうか。

 長くなりましたが、以上でございます。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 事務局から、復習を兼ねて参考資料を御説明していただいた上で、本日の議題につきまして、論点を提示していただいております。

 それでは、それぞれの論点につきまして、委員の皆様方から御議論を、質問でも御意見でも構いませんが、どうぞ。

 伊藤委員、どうぞ。

 

○伊藤委員

 前回と同じ意見書を提出させていただきました。今回、本日の論点に即した部分についての考え方を説明させていただければと思います。

 前回もお話ししたのですが、700万人の連合の組合員の中には、厚年基金からDB・DC、またこれらを併用しているところもあれば、企業年金、退職給付自体がないという組合まで含めて、それをどういう形で、総意の形で連合の考え方にするかということは非常に悩ましい検討でありましたが、そのような経過の中での意見ということで御理解賜りたいと思います。

 3ページをご覧いただきたいのですけれども、一番上はDCのところなのですが、企業型DCと個人型DCの併用については、事業主の掛金負担が引き下げられないように、個人型の限度額を維持しつつ企業型DCのみの拠出限度額まで事業主拠出が可能となるように見直しを検討すべきという考えに至りました。今回提案されているということで、了としたいと考えております。

 次に、企業型DCに対する加入者によるマッチング拠出については、退職給付である企業年金の趣旨を踏まえて、事業主の掛金負担が労働者に転嫁されるようなことにならないように、現行の制度を維持していただきたいと思います。

 それから、疑似マッチングについては15ページに書いていただいておりますけれども、ぜひ、規約の認可の際に、労働条件の変更に当たりデメリットがあることをちゃんと労働組合などに説明した、そして、十分に協議を尽くしたということを確認していただきたいと思います。

 投資教育のところですけれども、9ページのマル2にあると思います。これにつきましては、やはり継続投資教育の実施状況がまだ低調ですので、先般の改正の効果をフォローアップしていただきたいと思いますが、今回も若干、提案としてはさらに促進していくというふうに理解しておりますので、その点についても了としたいと考えております。

 DBの方なのですけれども、こちらにつきましては、11ページのマル2と12ページのマル3に給付減額に該当する場合の個別同意のことが言及されているところです。今後の検討ということではございますけれども、この点については労働組合としては問題意識が非常に強くありまして、定年延長の実施に際して掛金水準を抑制するということは現時点で給付減額になりますので、事業主は、真意に基づく同意が行われるように加入者や受給者に対し十分内容を丁寧に説明していただきたい。そして、労働組合と十分に協議を尽くす必要があります。

 個別同意に関しましては、受給権又は期待権の侵害につながり得る重要な手続だと考えていますので、給付設計の変更を行うプロセスにおいて納得いく説明を行って、その真意に基づく同意を担保するということで、自署と押印を必要とする現行手続については緩和すべきではないという考えであります。

 支払保証制度は15ページに今後検討と記載されていますが、国会の附帯決議を踏まえて引き続き検討をしていきたいと思っております。

 次は、中小企業の普及のところですけれども、こちらは2ページに簡易型DCとiDeCoプラスについての対象拡大ということが提案されておりますが、簡易型DCを含む企業年金の一層の普及に向けて、国、経営者団体、金融機関、企年連などが協力して、普及、整備、充実に取り組んでいただくということが重要だと考えております。

 次に、パート・有期等で働く者に対する企業年金につきましては、同一労働同一賃金のガイドラインを踏まえた指導、周知徹底を図る提案がございますので、非常にありがたいと考えております。ぜひ、この点についてはDB・DCの法令解釈通知にきちんと明記をしていただきたいと思っております。

 それから、ガバナンスのところは、それぞれDBとDCについて書かれております。13ページがDBですが、基金型については、労働組合のない企業の年金基金や総合型における互選代議員の選定に当たって、きちんと加入者を代表する者が選出されるように促していただきたいと思います。また、年金委員会の設置の例が資料で示されていますが、こうした労使参画による意思決定の体制の整備をぜひ促していただきたいと思っております。

 また、規約型DBにおいても、企業型DCについても、こういった労使が参画して実施をしていくということを促していただきたいと思っております。その際、労働組合や加入者による関与・監視に当たっては、非常に専門的な内容ではありますので、それが本質的に議論に参加できるように平易な説明や解説を行うなどの条件整備をぜひ促していただきたいと思います。

 長くなりまして、失礼しました。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。論点につきまして、幅広く包括的に御意見を頂戴いたしました。

 ほかはいかがでございましょうか。

 小川委員。

 

○小川委員

 日本年金数理人会の小川でございます。よろしくお願いします。

 資料1の11ページからまとめていただいておりますので、それに沿って、ちょっと多いのですけれども、6点ほどコメントさせていただきたいと思います。全般的には、これまで日本年金数理人会から提言させていただいていることを取り入れていただいて、どうもありがとうございます。

 まず、マル1のリスク対応掛金のところですけれども、企業年金制度の導入の目的の一つは、企業が従業員の退職給付を準備するに当たって、毎年のキャッシュ・フローの負担を平準化するということにございます。この観点でリスク対応掛金が導入されているため、これが目的にかなっているため、実際に多くの利用実績があるのだと思っております。

 今般の対応については、これまでの実績を踏まえて問題ないと考えられる定型化したケースでの事前の厚生労働省大臣の個別承認を不要とするものでありますので、手続のスリム化に資すると考えられます。また、あくまで特別算定方法としての位置づけは変えていないため、これまでどおり年金数理人が算定方法の妥当性を確認することとなりますので、この観点でも今回の御提案の対応はいいのではないかと考えております。

 2点目、マル2のリスク分担型企業年金についてですけれども、御説明があったように、リスク分担型企業年金への移行は減額と位置づけられているのですが、将来の給付減額の可能性を低くするために、将来発生するリスクの2分の1以上を上乗せした高い水準の掛金を徴収する場合に限っては、加入者等の個別の同意は不要とされています。

 一方、移行後に合併・分割あるいは事業所を追加する際には、個々人の持ち分に注目した判定が加わることから、将来発生するリスクの2分の1以上上乗せした高い水準の掛金を徴収する場合であっても個別の同意が必要ということになって、移行時とバランスを欠いていることになっています。

 本件につきましては、3月19日の第2回部会で日本年金数理人会から提言させていただいた件でもありますけれども、昨今の企業においてはM&Aなどが日常的に行われています。したがって、ハイブリッド型のすぐれた制度であるにもかかわらず、導入事例が伸び悩んでいるわけですけれども、その原因の一つが移行後の手続にあるということも考えられますので、ぜひとも改善していただきたいと思います。

 12ページに移りまして、3点目、定年延長時の給付設計の見直しのところでございます。昭和40年代の初めから導入されていた厚生年金基金制度におきましては、実質的に給付減額は認められていなくて、認められるようになったのは平成9年からということになっています。その際に考えられた将来の給付の総体、集まりを一つの数値であらわした給付現価というものでの判定が、後の平成14年に創設された確定給付企業年金においても引き継がれています。この間、定年年齢は60歳を中心として大きく変わってこなかったため、定年延長に伴う給付設計の見直しの際の取扱いは話題に上ってきていません。そもそも給付現価の算定に用いている予定利率、これはすなわち掛金を計算する利率なのですけれども、保有している年金資産及び掛金を運用する際に、ポートフォリオから想定される利回りに関して定めるべき年金資産の運用の見込みでありますので、この予定利率が必ずしも給付額の算定と関係するものではございません。したがって、今後、件数の増加が見込まれます定年延長時の給付設計の見直しにおきましては、同じく第2回部会でも提言させていただいているとおり、給付減額というものを再定義する、あるいは手続を変更した方がいいのではないかと考えております。

 4点目ですけれども、終身年金部分の給付額の改定です。本件についても第2回部会で提言させていただいた内容でございます。取り上げていただいてありがとうございます。国の年金と企業年金の機能分担は、公的年金を繰り下げて受給して、退職後、公的年金の受給開始までの間は、有期間の企業年金を受給する縦割り型と、退職後に公的年金に上乗せして企業年金を同時に受給する横割り型というのが大きく考えられます。この後者の横割り型のケースでは、終身年金の方がふさわしいのですけれども、退職金からの移行時には、通常は亡くなる時期にかかわらず、必ず受け取れる保証期間部分といいますけれども、こちらを退職金とさせることになりますので、保証期間後の終身年金部分は死亡率が低下していきますと、年金財政上は掛金上昇の要因となりますし、企業の貸借対照表上も、いわゆるPBO、退職給付債務と言われている負債増加の要因となります。

 したがって、これらが終身年金の導入の阻害要因の一つとなり得ます。したがって、死亡率低下前後の終身年金部分の現在価値が等しくなるよう、給付を調整することができれば、こういった問題が解消して、ひいては終身年金普及の一助となり得るのではないかと考えております。

 13ページに進んでいただきまして、DBのガバナンスです。これは7月24日の第6回部会でも申し述べさせていただいておりますけれども、ほかの制度では法律あるいは政省令で規定されているガバナンス関連が、確定給付企業年金では一部通知によっておりますので、これは即時性に鑑みたものだと思料いたしますけれども、確定給付企業年金に先行していた厚生年金基金の対応を踏まえて、通知による行政は避けるということになっていたと記憶しておりますので、提案のとおり、順次法令での規定としていただきたいと思います。

 最後に6点目が加入者への情報開示のところでございます。御案内のとおり、国の年金に関しましては、ねんきん定期便やねんきんネットで現状とか将来の状況を確認できる環境が進められております。前回の部会で申し上げましたとおり、公的年金の所得代替率が将来的に低下していくことが見込まれる中で、加えて老後の所得において一定の自助努力が必要であることに国民レベルでの意識は高まっていると思います。したがって、企業年金においても、個人ごとに現状や将来の状況を確認できる取組というのは極めて重要であると考えます。

 我々年金数理人というのは、個別に企業に対応するというケースも少なからずありますので、年金数理人たちが企業への啓蒙に今後も協力できると考えております。

 長くなりましたけれども、以上でございます。

 

○神野部会長

 ちょっと大江委員、お待ちいただけますか。

 済みません。今の小川委員、伊藤委員の御提案も含めて、事務局の方から特にコメントすることがあれば、お願いできますか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 分かりました。伊藤委員については賛同の意を示していただいていて特にコメントすることはないのですが、小川委員からありましたリスク分担型企業年金、また、予定利率の関係でコメントしたいと思います。

 今回、来年度の税制改正・制度改正に間に合わせるために議論を急いだわけです。これについては、例えば、加入可能年齢、中小企業向け、iDeCo、ポータビリティがあり、結論を急いでいたわけですが、「改めて議論する」としたものとして、御指摘のとおり「リスク分担型企業年金の合併時・分割時の手続」、また、「定年延長時の雇用延長に伴う給付設計の見直しに当たっての手続」がまずあります。これらについては、税制改正とは関係のない省令・通知事項ですので、できる限り速やかに準備を行いまして、議論できるようにしたいと思っています。

 しかしながら、もちろん私どもも努力をいたしますが、これから税制改正のプロセスと、また年明け後には法案の提出の準備があることについては御理解を賜れればと思っています。

 リスク分担型企業年金については御指摘のとおりでして、規定の不備を放置してはいけないので、リスク分担型企業年金全体をもう一度制度趣旨に立ち返って、どうあるべきかというものを再整理して、資料としてお出ししたいと思っていますので、御議論を賜れればと思っています。

 御指摘の定年延長の関係での予定利率ですが、そもそも予定利率というのは、約束した給付に対して必要となる掛金の設定に用いるものでして、その利率を前提とすれば、設定した掛金の下で将来的な財政の均衡が担保できるという意味で設定されているものであり、御指摘のとおり、必ずしも給付額の算定とは関連するものではありません。

 定年延長のように算定の土台となる加入期間が追加されるようなケースでは、給付現価が土台となる加入期間が追加された部分の給付の増加額が予定利率で付利される場合の利息以上にならないと、現行ルールでは給付減額となるというところです。これまで予定利率で算定された給付現価でなぜ比較してきたのかということについては、給付設計の実態として退職一時金と等価となるように一時金の相当額を定めて、それを予定利率等によって年金化する取扱いが一般的であったこと、現実的には各DBにおいて様々な給付設計の変更があるわけで、そのとき給付減額かどうかを判定しないといけないので、実務面の簡便性を考慮して、掛金の算定に用いる各DBの予定利率を基準として導入しているわけです。

 今回の定年延長のような算定の土台となる加入期間が追加されるケースにこの給付減額の今までの算定ルールをそのまま適用していいかどうかというところが御議論のあるところで、委員御提案のように給付減額の定義自体を再定義するのか、手続自体を見直すのか等、今後改めて整理をして提示したいと思っています。

 

○神野部会長

 ありがとうございました。

 失礼いたしました。大江委員、どうぞ。

 

○大江委員

 大江でございます。

 今回、非常に多岐にわたるので、DCを中心に賛成のところはコメントせず、お願いさせていただきたい点を中心にお話ししたいと思います。

 本当に手続等の簡素化につきましては御努力をいただきまして、制度にかかわる人全てにとってプラスなことを随分考えていただいているということ、まずその点は感謝を申し上げたいと思います。その上で幾つかございます。

 まず、外国人の方が本国に帰国した際の脱退一時金の件です。特に大企業を中心に非常に要望が強かった事項で、ありがたいことだと思っているのですけれども、欲を言えば、企業型から直接脱退一時金がとれるというような仕組みについて御検討いただけるとありがたいと思います。

 それから、中小企業向けの確定拠出の普及ということですけれども、人数拡大も悪くないと思うのですが、いただきました参考資料1の11ページだと思うのですが、企業型DC導入の障害になっていることが手続上の負担ということが出ておりましたので、iDeCoの加入手続だけではなくて、iDeCoプラスの方の事業主の手続についても、極力紙を廃止して、単純にフォームに入力するだけで事業主がスタートできるような取組というのは、御検討をお願いしたいと思います。

 あわせまして、簡易型もプランがあるというお話でしたし、総合型のDCというのも受け皿の一つになると思います。中小の事業主様からはどんなプランがあるのか、どこだったらオープンに自分たちが参加できるのかということについて、どのように情報をとったらいいか分からないというお声がございますので、オープンに参加してもらっていいよというプランについては、例えば企業年金連合会さんであるとか厚生労働省さんのホームページに掲載するなどして、広く知っていただけるような機会提供の御検討をお願いしたいと思います。

 それから、企業型のDCの加入者のiDeCoの加入、マッチングの選択という点でございます。今回、マッチングを導入している企業でも、個人ごとにマッチングをする社員とiDeCoを利用する社員が混在することになるわけですから、これは企業の制度運営が大きく変わると思います。事業主としては説明する事項も増えます。現場で混乱が起きないように御調整をいただいているRKだけではなく、事業主にもよく聞き取りをしていただいて、実務上負担がないということを十分御配慮していただきまして、制度構築、法制化ということの御検討をお願いしたいと思います。

 それから、この件についてあと2つ言いたいのですけれども、今回の改正は確定拠出においては全員が入れるのがまずはiDeCoということになって、企業型と個人型の枠を取り払う大きな転換点なのだと思います。来年度以降、穴埋め型の議論もiDeCoベースで行うというお話が資料1の14ページの末尾に書かれておりました。加入者数は8割以上が現在企業型でございますので、その実態も踏まえた上での議論をお願いしたいと思います。

 それから、伊藤委員も御指摘ございました選択型、いわゆる給与賞与内枠選択制というスキームについてでございます。資料1の15ページあたりでも書いていただいておりますが、これは事業主が拠出すると称していながら、実質的には個人が自分のお給料の中から一部を削って掛金として出している、いわば疑似個人拠出というものだと思います。これについては外形上、企業型というだけで、法定枠までなら個人が自由に拠出できるということになっております。

 ところが、マッチングのように正当な本人拠出については事業主掛金以下という制約があるのは非常に違和感がございます。実態として私どもの今年の調査結果ですと、2018年以降導入された企業型の規約で、半数以上がこの選択制というものになっております。本人拠出の問題については、こうした観点も踏まえて大所高所から深く議論をお願いしたいと思います。

 それから、ポータビリティの拡充についてですけれども、資料1の8ページあたりでしたか。企業型から通算企業年金への移換というお話がございました。企業型、個人型を含めて確定拠出というのは自分で資産管理、運用を行うという制度でございますので、通算企業年金と制度の成り立ちであるとか受け皿となる組織の役割なども少し違うところがあると思いますので、できれば引き続き議論をお願いできればと思います。

 それから、資料1の14ページ、個人型の方のガバナンス関係でiDeCoの継続教育の件がございました。こちらもなかなか実効性がないと意味がないと思いますので、現在のiDeCoの継続教育の実施の現状を踏まえまして、有効なスキーム構築等、ぜひお願いしたいと思います。

 最後になりますけれども、企業型のDCガバナンスについて、実態把握、好事例等につきましては、弊協会も調査、それから表彰などの取組を通じて、できるところはぜひお手伝いをさせていただきたいと思います。

 以上です。

 

○神野部会長

 コメントはありますか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 様々御指摘いただきましたが、まず手続面の改善ですが、これまでの私的年金行政は、税制と密接不可分のため、税制改正又は制度改正を念頭に、どちらかというと制度面の議論を中心にやってきましたし、我々もそういうスタンスだったのと思うのですが、私どもは、制度のみならず、その制度の執行も抱えていますので、現場に埋もれている課題一つ一つにちゃんと答えを出していくことが大事だと思っておりまして、今回、手続面を含めて総点検をさせていただき、論点として提示をさせていただきました。

 引き続き、現場で抱えている矛盾点があれば遠慮なく言っていただければ、私ども、労をいとわず検討を行って、改善を行っていきたいと思っています。

 そのような中、外国人の中途引き出しの関係ですが、これは私もおかしいと思っている部分です。企業型DC加入者が脱退一時金申請する場合、資産額が1.5万円以下という極めて少額であると、企業型DCから直接脱退一時金をもらえるので、それをRKに申請します。一方、1.5万円超であれば、一旦iDeCoに入るという手続をお願いしています。このような取扱いにしているのは、企業型DCの資格を喪失した人が新たに年金資産を積み増す選択肢としてiDeCoがありますので、まずはiDeCoに加入し、その上でiDeCoにさえ加入できなくなった場合は、要件を満たせば脱退一時金を支給するという原則からこのような仕組みになっています。

 一方、外国人はこのルートに乗りにくいわけでして、資産額が1.5万円超の企業型DCである外国籍の労働者が帰国する際には、今後、iDeCoにもう加入できないことが明らかであるにもかかわらず、一旦iDeCoに入るようにしていますので、iDeCoの移換に伴う手数料と期間を浪費してしまうことになっています。直接、企業型DCから脱退一時金を受給できるようにすべきではないかとも思われますので、細部の検討に当たって、そういうことも検討していきたいと思っています。

 企業型DC加入者のiDeCoの同時加入の件についても御指摘を様々いただきました。今、実務面でRK、国基連とは意見交換しておりますが、引き続き、どういう制度があるべき姿か、事業主・関係団体の声も聞きながらやっていきたいと思っています。

 iDeCoプラスのオンライン化については、今回、iDeCoのオンライン申請は関係者の御苦労もあって実現できると思っていますが、iDeCoプラスについては、本人の自由意思だけでなく、事業主が関与していますので、この部分について全く同じようにオンライン化というのは今すぐはできないところです。しかし、政府としてもデジタル化を押し進めるという大きな方針がありますので、その一環の中でしっかり検討していきたいと思います。

 

○神野部会長

 金子委員、お待たせしました。

 

○金子委員

 私の方からも、ちょっと長くなりますが、DCを中心に6点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、他の委員の方が恐らくどなたも御指摘されないような、ある意味では細かな話なのかもしれませんけれども、御指摘させていただきたい と思います。

 企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和についてでございます。これについては老後の生活をより安定的なものにするためにも、従業員本人が希望すれば規約の定めいかんにかかわらず加入できることは非常に重要なことだと思っております。ただ、その際に余りにも緻密に制度を設計し過ぎますと、加入者にとっても分かりにくく、また、運営するためのコストも高くなってしまうと考えております。そのような複雑な制度とならないように留意していただきたいと思います。

 例えば、さきの改正で拠出の年単位化を可能とする制度が導入されましたが、事業主掛金を年単位化している企業の場合、ある月のiDeCoの拠出可能額がその月に確定しないために、恐らく限度額管理は相当複雑なものになると思います。年単位化を導入している企業は極めて少数と聞いておりますので、そのような極めて少数の企業のために限度額管理を複雑にすべきかは、よくよく検討すべきだと思います。今後、より詳細に仕組みを検討していく際には、利用者の理解のしやすさだとか、実務を回す際の負荷も十分考慮して検討を進めてもらいたいと思います。

 多少極論めいた言い方になるかもしれませんけれども、拠出を年単位化している企業のDC加入者については、iDeCoの加入要件緩和の対象から外すことも一考に値するのではないかと思っております。

 それから、他のDC制度の改善についても賛成なのですが、その中でも幾つかコメントさせていただきたいと思います。まず、iDeCoの手続のオンライン化についてですが、制度の利用を高めるという観点からすると、手続に係る負担の軽減というのは、制度そのものの魅力を高めるのに匹敵するぐらい重要なことだと思っております。したがいまして、オンライン化による手続を簡便にすることは非常に重要なことだと思っております。

 それと、企業型DC加入者のiDeCo利用に係るRKと国基連の情報連携についてでございます。この部分の設計は、企業型DC加入者のiDeCo利用に関する利便性の肝となるところだと思っております。両者による調整作業が始められていることを評価したいと思います。今後、細部の詰めは大変だと思いますけれども、頑張っていただきたいと思っております。

 もう一つ、企業型DC加入者のiDeCo利用に関することでございます。これはRKによる、先ほどウエブなどのiDeCoの拠出可能額の表示みたいなことをお話しされていましたけれども、企業型DC加入者のiDeCo利用を促す上で非常に大きな効果があると考えております。iDeCoを含めたDCでの運用額を増やすことにもつながりますので、RKにおかれてもしっかりと取り組まれることを期待しております。

 あと2点ほどお話しさせていただきたいと思います。iDeCoの加入時手数料だとか掛金納付に係る手数料の再計算だとか再設定についてでございますが、これは似たような話を私が以前の部会でもお話ししたのですけれども、DCの中でも例えば投資信託の信託報酬については競争により値下がりしております。

 それから、これも競争によってだと思いますが、iDeCoの運管手数料に至っては、無料にしているところも多数存在しているという状況でございます。そんな状況の中、今回、手数料の再計算、再設定を試みようとされている国基連の姿勢を評価したいと思っております。何年かに一度、手数料の再計算だとか再設定をすることは、社会からの信用を厚くすることにもつながるのではないかと思っております。

 最後、これはDBの件なのですが、DBの加入者への情報開示についてでございます。給付額の通知というお話がございましたけれども、DBを含めて資産を把握することは、個々人にとって様々な選択肢を組み合わせて豊かな老後を設計するのに必要なことであり、非常に重要なことだと思っております。ただ、イギリスのペンションダッシュボードの取組をちょっと御紹介されておりましたけれども、イギリスは結構ねちっこくやっていて、細かな整合性をとろうとしています。そうなると途端に進捗が遅くなるというのが見えていますので、余りにも細かな定義にこだわって進捗が遅くなるくらいだったら、将来の見込み枠の扱いについては、事業主ごとに開示できる情報でいいのではないかと思っていますので、まず開示を促すべきではないかと思っております。

 以上でございます。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 コメントはありますか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 年金局にいると制度を緻密に考えてしまうのですが、そこは、制度の分かりやすさと、また、システム面の負荷というものも含めて、よく考えていきたいと思っています。

 特に御指摘のあった年単位化の部分ですが、これは先の改正で導入されました。あとで複数月分の掛金をまとめて拠出するというのが年単位化ですが、事業主掛金を年単位化していると、ある月のiDeCoの拠出可能額、つまり残余の額でiDeCoに入れるというのが今回のコンセプトであるわけですが、その月内に残余額が確定しないということになります。あとで調整をすればもちろんやれるにはやれるのですけれども、また、システムももちろんロジックを組めばやれるにはやれると思っていますが、御指摘のとおり非常に複雑になってくるので、この部分についてどうするのかというのは、よく考えていきたいと思っています。

 年単位化は始まって間もないというのもありますが、平成30年度の業務報告書ベースで見ると、実施している企業は全体の企業のわずか0.2%程度でして、そのためにシステムの負荷を過重にかけることについて、手数料にも跳ねますので、その部分をどのようにするのかというのは、細部を検討する中で考えていきたいと思っています。

 手数料の御指摘もいただきました。加入者範囲拡大後、大幅に加入者数は増加していますが、先の法改正でシステム開発・整備として長期の借入を国基連はしていただいていますので、この返済計画もあり、今の手数料になっているところです。

 論点にも出させていただいたように、今回のシステム整備費は増加要因ですけれども、効率化分で減額要因があるというのと、加入者数の増加も見込まれていますので、こういうものを織り込んだ上でそれを開示するということが大事だと思っています。国基連とともに、制度の細部に加えて、また、開示のあり方や手数料の設定も含めて考えていきたいと思います。

 

○神野部会長

 臼杵委員、どうぞ。

 

○臼杵委員

 ありがとうございます。

 基本的には多岐にわたって非常に意欲的にお考えいただいていて、ほとんどは賛成なのですけれども、幾つかお願いというか質問がございますので申し上げたいと思います。1つは、企業型DCがある場合にもiDeCoに入れる、あるいはマッチングとiDeCoを選択できるというような、これは大きな流れとしては賛成です。

 ただ、1つ気になっているのは、多分、企業型がある人は、iDeCoと2つ入ると結局手数料も両方で取られて、手続的にやや面倒なことが本人としては起きる。もちろん限度額管理もやらなければいけないということなのですけれども、例えば企業型をやっている運管がそこの会社のiDeCoをまとめて募集管理できるような、いわゆる職域iDeCoというのですか。そういう形で募集をして、しかも、マッチングと同じように今ある企業型のプラットフォームの中でiDeCoを管理するというようなことももしかしたら御検討いただいてもいいのかなと。そうすると限度額の管理も非常にやりやすくなりますのでというのが一つの質問というかお願いになります。

 DCのことを先に申し上げると、2番目に、DCをしっかりしていくときにガバナンスが大切で、例えばそういう意味では、今の運管、運用商品のモニタリングについては引き続き改善の検討をしていただきたい。投資教育についても、やっている、やらないよりは、実際にどういう内容をやるかをヒアリングした方がいいのだと。これもごもっともですので、モニタリングについても、そのあたりをヒアリングしながら、あるいはこういう点をモニタリングしてくださいというようなアドバイスをしながら進めていただければと思います。

 同じくiDeCoの投資教育ですけれども、企年連さんのつくられているものを国基連さんと共有していただくという、これも賛成ですので、セミナーだけではなくて、オンライン上のいろいろなマテリアルとかも使っていただければと思います。

 それから、ガバナンスに戻って今度はDBなのですけれども、DBについては基本的に法令化していくことに賛成なのですが、ただ、やはりワン・サイズ・フィッツ・オールというのですか、同じルールを規模とか実態にかかわらず全てに当てはめていくというと、逆にDBの普及を妨げる可能性もありますので、そこは義務にする場合も、ある程度実態を考慮した中で法令上の義務にするのか、あるいは努力義務にするのか、もう少し別の形にするのか、その辺は考えていただければというのがお願いでございます。

 最後に、定年延長時の給付減額の話でございますけれども、これは非常に難しい問題だと思いますので、引き続き検討の必要はあると思うのですが、ただ、実際に、これはもし間違っていたら訂正いただきたいのですけれども、私の理解ですと、恐らく定年延長するときというのは退職金だけではなくて、給与とかフリンジとか雇用形態、その辺をまとめてパッケージで労使合意がされていると思うのです。そういう中で1つ、年金のところだけ、余りそこだけをきちんとすると、かえってパッケージが結びにくくなって、逆に定年延長、今は65歳まで進めていて、いずれ将来的にはもしかしたら68とか70まで進めようという話になるのかもしれないのですけれども、そういうことが逆に全体として阻害されることになる可能性がありますので、そこはパッケージの中での労使合意があれば、ある程度柔軟に求めていくということも、もしかしたら考えられるのかなと思います。

 以上です。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 まず1点目の職場単位で企業型DC導入するときにiDeCoをパッケージでやっていけば、より効果的ではないかというのはそのとおりだと思うのですけれども、新たにそういう企業で企業型DCをやりつつ、加入員の方もiDeCoにパッケージで入ってもらうということを促すときには使えると思うのですけれども、既にiDeCoに入っている方々もいる中、どのようにやっていくかというのは一つ課題と思いました。

 地方厚生局のヒアリングについては、今、投資教育の実施の状況・有無だけを聞いているわけでして、それに基づいて事業主の必要な指導を行っていますが、資料にも書かせていただきましたが、これからは実施の有無だけではなくて、やはり投資教育の内容や方法、また運用商品のモニタリングの方法や運管の評価もまだ実績が芳しくないので、そこはできる限り事業主に寄り添いながら地方厚生局も指導していくようなことができたらと思っています。

 総合型DBのガバナンスについて、杓子定規な対応をしてはいけないと私も思っていまして、今まで運用上・行政指導ベースでやってきた取組について、法令に根拠を求めるのが今回の主眼です。今も、代議員規制を実施するに当たっても、総合型DB基金を設立している母体組織が代議員会に代わる役割を担っている場合は対象外にしていたり、過大な負担にならないよう、代議員の定数に一定の上限を設けるなどの配慮もしています。

 監事監査・会計の正確性の確保についても、全ての総合型DBではなく、資産要件を設定しています。引き続き、こうした配慮は維持しようと思っています。

 定年延長の部分ですが、御指摘のとおり、全体の人事労務の観点からパッケージで議論がなされますし、給付減額に該当する、該当しないにかかわらず、企業年金は規約の変更がありますので、その部分では労使合意がもちろん必要です。それに加える形で、給付減額ですと、個別の同意となるところでありまして、どのように取り扱っていくべきかは、また御議論いただきたいと思います。

 

○神野部会長

 どうぞ。

 

○臼杵委員

 ありがとうございます。

 最初のところで私の説明が余りよろしくなかったのかもしれませんけれども、基本的には今、企業型の運管がiDeCoを募集したときには、今のプラットフォームをできるだけ使う。ですから、新しい導入ではなくて追加的なときでも、今のプラットフォームを使って同じ商品で同じレコードが来るようにする方が多分いいのではないかと。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 それはあると思います。企業型DCを導入するときに、今、うちが用意しているiDeCoのラインナップはこうなので、あわせてやったらどうかという御提案です。

 

○臼杵委員

 追加的なときも。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 それは非常に利便性が増すと思います。

 

○神野部会長

 お待たせしました。井戸委員、どうぞ。

 

○井戸委員

 ありがとうございます。

 DCに関する制度改善は制度の普及の観点から見て、全て賛成でございます。個人的要望が多い手続など、御努力していただいて感謝申し上げます。

 私の方からは5点、コメントとお願いをさせていただこうと思います。

 まず1つ目、iDeCoプラスですけれども、既に実施の企業もだんだん増えていて、人数の要件が緩和されるとさらに広がりを見せると思いますので、分かりやすさということを追求して、拡充につなげていただきたいと思います。

 2つ目でございます。企業型DCとiDeCoなのですけれども、個人の相談などでお客様と会うときに、加入したいのに私は入れないのというような要望をよく聞きます。特に若い人は2万円まで拠出できるというメリットがあるので、周知すると広がっていくと思います。ただ、一方で、各委員の先生方がおっしゃっていたように、企業の負担がないようにしていただければと思います。

 3つ目でございます。iDeCoの加入に当たってオンラインで手続ができるようになるということは絶対重要なことで、今も御努力いただいて、簡素な手続で加入がだんだんできるようにはなっているのですけれども、まだiDeCoの手続の印鑑が残っていたりしますので、それは事業主のマイナンバーなどを使えば省ける要件ではないかなと思っています。あわせて、手数料の再設定というところについて検討していただくということも賛成でございます。

 4点目です。企業型DCのよりよい商品設定につながるために運管が示している情報提供というのは非常に重要でありまして、あと、参考資料の72、73に載っているのですが、個々の状況がどうなっているのかというような見える化のグラフは重要だと思います。大企業は導入しやすいのですけれども、中小はなかなか難しいところがあるので、何とか中小企業の方にもそのように公的年金とあわせてどうなっていくのかというグラフをお見せすることによって、継続教育の興味というところに非常につながっていくと思いますので、ぜひここは強化していただきたいです。

 5点目です。大江委員も触れていらっしゃいましたけれども、選択型のDCでございます。これはDCだけではなくて、社会保険制度全体の根幹にかかわることだと考えていただきたいと思います。ネットで調べていただきますと、コンサル会社が増えていますが、社会保険料を下げることを目的とした会社もあるように聞いています。また、民間資格を使いまして選択型DCを勧めて、保険料負担が少なくなったことで、保険を売る団体があるようです。こういう広がりはとても気になります。中小企業を中心に広がる可能性も非常に高いと思います。これから穴埋め型というのを長期で見ていくのであれば、こういう選択型DCの定義づけや、要件を厳しくしていただきたい。引き続き、議論に上げていただきたいと思います。

 みんながきちんと社会保険料を納めて、みんなで支えていくというのが社会保険ではないかと思っています。

 以上です。

 

○神野部会長

 どうぞ。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 まず、iDeCoプラスですが、開始の届出や対象者の届出について、今は紙である必要があって事務負担が大きいという指摘はごもっともです。この点については、過去の当部会での御指摘も踏まえて、届出のフォーマットを国基連のホームページで公表しダウンロードできるような形になりましたので、手書きではなくて電子的な書類作成はできるようになりました。今後、電子的な方法を含め、どのような提出方法があり得るかというのは、引き続き考えていきたいと思っております。

 企業型DC加入者のiDeCoの加入の部分ですが、企業型DC加入者の自助努力としては、マッチング拠出かiDeCoの同時加入の二択であったわけです。マッチング拠出というのは事業主の御負担もあるので、今、導入が3割程度です。マッチング拠出を導入していないところに限ってみれば、iDeCoに加入できるようになることで自助努力が可能となりますし、その3割の企業にお勤めの方についてはマッチング拠出との選択ができるようになるということです。

 大江委員からの御指摘もあったように、手続が複雑になって事業主の負担にならないよう、しっかり配慮していきたいと思っていますが、基本は企業型のRKから国基連が事業主掛金のデータを頂戴できれば合算管理ができますので、事業主の負担は今のところ想定していません。ただ、従業員への御説明という点はもちろん生じますので、そこは簡素に分かりやすい仕組みにしていきたいと思っています。

 国民年金第2号被保険者の事業主証明書を今の時点ではなくすことができないというところは御理解をいただければと思います。オンライン化に当たっては、今はハンコを押してもらって、それを郵送しているという紙でやっていますが、第三者としての事業主の証明という意味でハンコは必要ですが、それをスマホで撮影してもらって送付するということを可能にしようと思っています。

 マイナンバーや事業所の番号を活用するという御指摘のところも、内閣官房の方から我々も御指摘を受けていますので、どのような仕組みができるか、国基連も含めて考えていきたいと思っていますが、先ほど金子委員からもあったように、全てを取り込み複雑にしていこうと思うとシステム改修費が高くなっていくので、この部分を含めてよく考えていかなければいけないと思っています。

 以上でございます。

 

○神野部会長

 ほかはいかがでしょうか。

 それでは、まず、小林委員、あと細田委員に参ります。

 

○小林委員

 御説明ありがとうございました。

 私からも何点かコメントをさせていただきたいと思います。

 まず、資料4ページ以降で企業型DC加入者のiDeCo加入要件緩和等、DCの改善に係る事項を挙げていただいていますが、これらは個人の自助努力支援強化の観点で経団連としても要望してきた内容であり、会員企業の従業員からも求める声が多く、ぜひ早期実現に向けて着実な実行をお願いしたいと思います。

 また、資料の6ページあるいは9ページ、10ページにあるiDeCoの加入申し込み等を始めとするDC関係の各種手続の簡素化、負担軽減については、多くの委員の方からも出ているように、制度の普及拡大の基盤、インフラとなる重要な取組であると認識をしております。今後は、むしろ紙ではなく電子化を基本対応にするというような大胆な発想転換も含めて、ぜひスピーディーな取組推進をお願いしたいと思います。

 一方で、11ページ、12ページにあるDB関係の各種手続については、今後の継続検討課題とされているものもありますが、リスク分担型での合併・分割時、あるいは雇用延長に伴う給付設計見直し時の給付減額判定手続等につきましては、会員企業から見直し要望が多いこともありまして、ぜひ事務局での整理が完了次第、速やかに議論ができるように御対応いただきたいと思います。

 加えて、13ページ以降のガバナンス確保等に関するその他の論点ですが、これについては、提案の趣旨は理解できますが、事業主の負担増となる内容が含まれており、制度実施意欲の減退につながりかねない部分もあるかと思いますので、その点を懸念しています。

 例えば、給付見込み額の個人別通知については、将来見通しの提示はテクニカルにも難しく、事業主として責任が持てないものであります。一方で、要支給額の通知であれば、例えば受託機関が標準的なフォーマットを用いて事業主に提供をサポートする、というような対応も可能なのではないかと思います。事業主だけに対応を求めるのではなく、制度全体のインフラとしてどうするのが望ましいかという観点から、ぜひ御検討いただきたいと考えます。

 最後に、今後、継続検討課題として整理された事項が幾つかあると思います。それらについては、今後具体的な議論が行われる際に別途意見は述べたいと思いますが、現時点で改めて申し上げておきたい点は、資料の1ページ目にも記載いただいていますが、特にDBについては慎重かつ丁寧な議論が必要ということであります。これまでの部会でも繰り返し申し上げておりますが、企業会計上も実務運営上もDB制度を実施することに係る事業主の負担は非常に大きいということ。加えて、DB型の年金は既に減少傾向にあり、今後、雇用環境が変化していけば、それにますます拍車がかかるのではないかと思います。そうした状況もよく踏まえて議論をすべきと思っておりまして、制度の普及、適用拡大は大事ですが、それを重視する余り、かえって制度を衰退させては意味がないと思いますので、その点には十分留意が必要と考えます。

 以上です。

 

○神野部会長

 コメントありますか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 まず、積み残しの課題については、先ほど小川委員にもお答えしたとおり、省令事項であるリスク分担企業年金や定年延長時の点は、可能な限り早く準備をして、御議論をいただきたいと思っています。

 DBの関係ですが、資料にも書かせていただいたとおりで、見直しの内容によっては普及を阻害しかねないというところにも十分留意しながら、丁寧に議論をしていくというのは前回の部会でも確認をし合ったところだと思っています。

 DBのガバナンス、13ページにある「見える化」の取組ですが、これはDBの事業主の皆様に無理に強制するようなものではないということを御理解いただきたく、ここの資料にも書かせていただいたとおり、取組事例の周知等により、事業主の取組をまず促していくことが大事だと思っています。先ほど金子委員からもありましたように、イギリスのように事細かにやろうとすると、逆にその「見える化」も停滞するというところがあります。将来見込額の提示等をルール化していこうとすると、より一層それも進まないということも起き得ると思っていますので、簡便な仕組みで何ができるか、また、何を行政がやるべきかというところはよく考えていきたいと思います。

 

○神野部会長

 ありがとうございました。

 細田委員、お待たせしました。

 

○細田委員

 ありがとうございます。日本商工会議所社会保障専門委員会委員の細田でございます。

 商工会議所の立場から申しあげますと、御提案の方向についてはおおむね賛成であります。特に「iDeCoプラスの対象範囲の拡大」や、「企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和」、「企業型DC加入者のマッチング拠出とiDeCo加入の選択」は、企業年金を広げたいという発想が見えていますので、ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。

 今後のことになると思いますけれども、iDeCoと企業型DCの拠出限度額の引き上げやマッチング拠出の自由化についてもぜひ進めていただき、併せて、拠出限度額内でiDeCoと企業型DCを自由に組み合わせて拠出できるようにすることも、ぜひ検討していっていただきたいと思っております。

 加えて、多くの方々がお話しされていましたけれども、いろいろな手続の簡素化について、御説明の中でもハンコが多いとおっしゃっていたので認識されているのだと思いますけれども、そういったことも今後、進めていくべきと思います。

 また、年金部会でも申し上げたのですけれども、手続簡素化におけるマイナンバーの活用ということを、国を挙げて取り組まれているはずなので、ぜひ活用していっていただければいいかなと思います。マイナンバーカードの普及が今どれぐらいなのか分かりませんけれども、多分2割もないのではないかと思うのですが、それによって、特に若い方たちが自分の年金に興味を持ったり、自分の将来の生活設計に興味を持ったりするということになってくれれば、さらに効果が上がるのではないかと思います。

 さらに、これも年金部会でお話が出ましたが、外国人の方の中途引き出しの要件緩和についても、ぜひ進めていただきたいと思います。私どもの会社も特定技能外国人の雇い入れが可能になりましたので、こういった方たちを雇っていく上でも、積極的にそういった緩和をお願いしたいと思っております。

 最後に、企業の数として何割という正確な数字は分かりませんけれども、いわゆる1階、2階部分までの企業が多い中、3階部分というのは、どの辺の企業がどの程度までやっておられるのか、データがあればぜひ教えていただきたいと思います。

 以上です。

 

○神野部会長

 ありがとうございます。

 特にコメントございますか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 様々な御指摘をいただきましたが、中小企業向け施策については、簡易型とiDeCoプラスについて、スタート時は従業員100人以下でスタートしたわけですが、企業年金の実施率が300人未満で落ちているということがありますので、その部分を手当てしたいと思います。

 委員御指摘の実施率は、参考資料の4ページにありまして、これは就労条件総合調査で、5年に1度調査をしているものです。5年ごとの統計ですが、比較対照できるよう特別集計をやっております。10年前、青の部分ですが、37.5%の企業が企業年金をやっていたわけですが、今は22.6%に落ちています。特に1,000人以上のところの減少率は5ポイントぐらいという状況ですが、300人未満、また100人未満のところはそれぞれ16ポイントぐらい両方とも減少しているところです。これが今の企業年金の実態でして、日本はこれ以外に税制優遇のない退職一時金制度があります。それをやっている企業は今4割あって、また、自身で退職金を用意できないところは共済制度としての中退共があって、そこが3割というようなイメージですので、退職一時金が4割、中退共が3割、企業年金2割と、こんなざっくりしたイメージを持っていただければと思います。

 また、マッチング拠出の自由化や限度額の引上げの御指摘をいただきました。前回の部会でも御議論いただいた穴埋め型の議論もあります。経団連からも御指摘いただきましたが、DBの扱いをどのようにするのかも含めて丁寧な議論をしていきたいと思っています。その中で水準論というものももちろん議論になってくると思っています。

 以上です。

 

○神野部会長

 どうぞ。

 

○細田委員

 ありがとうございます。

 多分、中小企業は退職金でもって一回従業員との関係を清算してしまいたいという部分が結構強いのだろうと思いますので、その辺も今後の企業年金の考え方に入ってくるのかと思います。

 事務局におかれては、これから税務当局との交渉もいろいろあると思いますが、その辺も含めて頑張っていただきたいと思います。

 以上です。

 

○神野部会長

 よろしいですか。

 お待たせしました、白波瀬委員、どうぞ。

 

○白波瀬委員

 全体的にこれということはないのですけれども、少しいつものように少々大雑把な意見となりますけれども、もし普及を考えるというところを中心に議論を考えると、誰にとってということと、担い手が誰ということがあって、今、参考資料の4ページで企業別の話があったのですけれども、これを見てもかなり企業規模別に違いがあって、ただ、知りたいところとしては業種別もこの中でどうあって、時系列的にどう違うのかなというところが見たいところで、若い人たちが結構入っているIT企業とか、産業的にも違ったところでどのような動きがあるのかというのは、少し細かく分析していただけると、今後の特に若い人たちの行動というのがもう少し見えてくるのではないかなと思いました。

 やはり普及ということで、使う方としては、すごく複雑だととても使い勝手が悪く、分かりやすいというのがよくて、最終的には個人のお財布をみんな持っていて、それが分かりやすいようにチェックできるような形にしていただくのが、よろしいのではないかと思いました。それは後ほど穴埋めのところで議論されると思うのですけれども。

 ただ、それを全ての国民ができるような状況というのも難しいので、それは委員の先生方があるように、できるだけそういうことを自分でコントロールできる人たちの集団を大きくするけれども、あくまでもベースはということですから、最終的にはいつも大きな公的年金を含めたところの議論でやっていただきたい。全体の公的な老後の所得保障という観点からも、企業年金・個人年金の議論をする重要性がどんどん高まっているのではないかと思うのです。

 それと一方で、やはり制度間のDB、DCの話なのですけれども、これも普及ということで、全く同じウエートで普及させるというよりも、恐らくこれまでの制度そのものの特徴なり建て付けから考えると、どちらかに偏りながら使い勝手をよくするというのは考えなくてはいけないので、どれも同じようにDBをというわけではなくて、この間の関係性というのは区別することも含めて検討する必要があるのではないかと考えました。

 あと、中途引き出しのことは、これも若干個人的な意見なのですけれども、世の中が変わっているので、20年前に契約した内容ということがあって、それの有効性をどこまで担保するのかがポイントだと思います。例えば定年延長しますよといったとき、時代も変わりますし、自分が持っているいろいろな資材も違うので、そういう総合的な前向きの決定をする際に後ろ側というか、バックキャストしてどこまでを不動のこととして保障すべきなのかという議論はどこかでやる必要があって、私は一旦契約したとしても、その時々の変動を考慮して完全に全て保障というのは難しいのではないかと思っています。

 以上です。

 

○神野部会長

 コメントありますか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 まず、企業年金の実施率の業種別というのは就労条件総合調査の分類で見ることができますので、それはまたしっかり分析して議論に供したいと思います。

 DBとDCについて、前回も拠出時・給付時の仕組みを御議論いただいたわけですが、我々が目指しているのは何もDBとDCをイコールフッティングにしようというわけではなくて、DBもDCもそれぞれ目的が、公的年金の給付と相まって老後の所得保障を図るということでして、その目的のためにDBとDCがどうあるべきかというのを、制度の源流も違っているところがありますので、その特徴も踏まえながら、どうあるべきかを考えるのが本筋なのだろうと思っています。

 中途引き出しの件につきましては、DCの中途引き出しの原則禁止というのが税制上の優遇措置をもらっている最大の要件でありまして、それをどのようにできるかというのも、先ほど言いましたDB・DCのあるべき姿を考える中で、また引き続き議論ができればと思います。

 

○神野部会長

 藤澤委員、お待たせしました。

 

○藤澤委員

 藤澤です。コメントが3点ございます。

 資料1の12ページのマル3の定年延長の部分ですが、定年延長の対応は高齢者の雇用を促す意味で必要だと考えています。小川委員からもコメントがあった予定利率の部分ですが、定年延長後の給付設計が全く同じであっても、予定利率によって減額か否かという判定結果が変わってしまうのは、第三者にも説明しにくい判定基準だと思います。DBの手続の要件が定年延長を阻害することのないように配慮していただきたいと思っています。

 同じく、資料1の12ページのマル4の死亡率の変動による給付額の改定の部分ですけれども、具体的な仕組みとして参考資料1の54ページにイメージ図が載っていますが、これは見方によっては一種のキャッシュバランスプランと見ることができると思っています。キャッシュバランスの場合は金利等の変動に伴って給付額が改定される仕組みですが、この仕組みは死亡率の変動に伴って給付額が改定される仕組みであって、経済的なリスクではなくて人口動態リスクである死亡率に対してニュートラルな設計になっていると考えています。

 金利と死亡率の変動の違いとしては、金利は上下に変動する可能性がある一方で、死亡率は一方的に下がり続けると考える意見が日本では大宗を占めていますが、海外の先進国の死亡率を見ると必ずしもそうではなくて、死亡率の改善が鈍化したり悪化しているような先進国も出てきています。むしろ、先進国の中では日本は例外的に死亡率が改善し続けているという意見もあります。

 54ページのスライドを見ると減額という方向での説明となっていますが、調整率の設定の仕方によっては増額の可能性もあると考えられますので、これは人口動態リスクを企業と従業員でシェアする新しいキャッシュバランスと考えることができると思っています。

 最後、全般的なコメントとなりますが、DCやDBの制度面や手続の改善を図る方向の見直しは、ぜひ進めていただきたいと考えています。特に中 小企業に対する企業年金の普及は喫緊の課題だと考えていますので、簡易型DCやiDeCoプラスの人数要件やDCの各種手続の簡素化、負担軽減の部分は実現に向けて対応いただきたいと考えています。

 また、雇用の流動化が進む中で、これまでの改正でDBとDCの間のポータビリティはおおむね確保できておりますけれども、選択肢を広げる観点と企業年金連合会の通算企業年金は終身年金を提供するという魅力もございますので、資料1の8ページに示されているような改善もぜひ進めていただければと考えております。

 以上です。

 

○神野部会長

 コメントがあればどうぞ。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 日本年金数理人会から提案のあった給付額の改定の手続ルールの見直しにつきまして、この仕組みは死亡率の変動を指標とした給付額の改定方法の一つでして、委員御指摘のとおり、一種のキャッシュバランス制度と見ることもできると思っています。我が国では死亡率が改善している状況にありますので、参考資料において給付額が段階的に減額改定されるものを示しましたが、御指摘のとおり、あるDBの集団で死亡率が悪化したりするのであれば給付額は増額改定されますので、論点の対応の方向性のところに「終身年金現価率の増加を勘案した」となっていますが、「増減を勘案した調整率を乗じる」というのが正しいと指摘を聞いて思っておりました。

 現行では、一定期間経過後、給付額を改定する方法として、一定の率を乗じること、また、金利の変動に合わせて改定することが認められているわけですが、それに限っています。数理人会が提案したこの仕組みですが、死亡率が大きく影響する終身年金において、これまでの改定ルールに新たに死亡率の変動を踏まえた調整率を給付額に乗じることが可能になるというものです。

 死亡率の設定方法をどのように見込むかというのは技術的な問題が出てきますので、数理人会ともよく議論をしていきたいと思っています。

 

○神野部会長

 会長代理、何かありますか。

 

○森戸部会長代理

 御説明ありがとうございました。

 今回、資料を拝見して最初、規制改革会議の資料かと思うぐらい、いい意味でいろいろなところまで目を配られて、細かい問題も全部対応されていて、本当に全体的に非常に頑張ってというか、改革の方向を示されていて、ありがとうございます。

 特にその方向性が簡素化を図るという使いやすい制度にする、より普及を図っていくという観点があるのはもちろんですけれども、法的に今まで割とちょっと曖昧になっていたり、本来法令で定めるべきところをQAに譲っていたのは本当はよくないとか、そういうところの法的な整備もきちんとやろうというふうにされているところも非常にすばらしいと思っております。

 それから、皆さんから部会で今まで出た意見も、さらによりよい方向を目指す意見が多くて、それもぜひあわせて検討していただければと思います。

 私からは、急に細かい話ばかりで申しわけないのですけれども、1点は質問で、確認ですかね。参考資料の36ページで、細かいことなのですけれども、厚生労働大臣の承認がと出てくるのですが、正確には認可と承認かなと思ったのが1つあります。それは言葉の問題です。

 もう一点だけ、これはより大きな話というか、本来の資料1の方の3ページの加入者資格の話ですが、これを法的にちゃんと整理されようという方向は非常によいかと思います。ちょっと補足みたいになりますけれども、いわゆる同一労働同一賃金、均等均衡待遇というのは、もちろん労働条件の話なわけですね。労働条件というのは労働契約に定まっているもので、企業年金は厳密には、法的には本当に全部が、特に基金型は労働契約に根拠があるのかというと恐らく違うのですけれども、それから、DCも規約型DBも、実はどういう契約関係で給付がなされているかというのはそんなにはっきりしていないところが実はあります。労働契約と関係することは確かですけれどもね。

 ただ、はっきりしていることは、実質的には労働条件だということでして、そういうことに鑑みて、同一同一の動きに合わせて企業年金の方でも法令を整備しようというのは非常によいことだと思っております。

 ただ、1点だけ、3ページの※の3つ目です。ガイドラインの基本的な考え方にこのように書いてあると書いてあるのですけれども、退職手当のことは書いてあるのですが、ガイドラインは企業年金とは明言していないので、そこは正確には、基本的な考え方で退職手当等とは言っていると思うのですけれども、わざと入れたのではないと思いますが、もちろん企業年金も退職手当等に含まれるとは思いますが、そこは確認していただけたらよいかなと思います。

 いずれにしても方向としては必要なことで、繰り返しになりますが、やはり法的な整備をきちんとしつつ、使いやすく簡素な制度にしていこうという今回の方向性は非常にありがたいというか、よいことだと思っております。

 以上です。

 

○神野部会長

 御指摘いただいた2点について。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 参考資料の36ページ、厚労大臣の承認、これは認可の誤りだと思いますので、ホームページ上は修正します。

 

○森戸部会長代理

 両方かな。承認・認可。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 確認させていただきます。

 また、加入者資格とガイドラインの関係は、ガイドライン上、企業年金は明示的に書いていなくて、退職手当が例示されているのは御指摘のとおりです。ただ、加入者の資格については、労使合意の下、一定の資格を設けられる形に今の企業年金もなっていまして、その際には退職給付の範囲と揃えることで、我々は承認しているという実務面の対応をしていますので、その点、同一同一の考え方も適用されると思って、法令解釈通知にその旨を記載しようと考えています。

 

○神野部会長

 宮園オブザーバー。

 

○宮園企業年金連合会理事長

 ありがとうございます。ほかの委員の方の御発言と重複することもあろうかと思いますけれども、できるだけ簡潔に発言させていただきたいと思います。

 まず、企業年金等の私的年金に対する期待が高まる一方で、制度の恩恵を十分に受けられない人が相当数いるというのがこの会議での課題でもあったと思うのですけれども、これまでの議論の成果として、今日の資料にあるような方向性が示されたということは、制度利用の均てん化を大きく促進するということでありますので、企業年金のナショナルセンターとして現場の声を届ける立場から、まずは感謝を申し上げたいと思います。

 若干、駆け足でコメントさせていただきたいと思いますけれども、とりわけ企業年金の空洞化が問題となっている中小企業に対する制度の対象範囲を拡大することでございますとか、企業型DCの加入者のiDeCo加入について、規約の定め、事業所掛金の引き下げがなくてもiDeCoに加入できるように改善されるということは、被用者の年金資産の形成に大いに寄与することでもありますので、これは非常に高く評価をさせていただきたいと思います。

 それから、ポータビリティにつきましては、せっかく企業年金に加入しても途中で途切れて年金支給につながらないといった、こういう方々に対し てポータビリティの選択肢をできるだけ増やして老後所得として確保できるようにするということは大変意義のあることだと思っております。

 それから、3点目、長寿化に伴う財政リスクについて、これも繰り返しになりますけれども、終身年金の課題であります長寿化の進展に伴う財政リスクへの対応につきまして、私どもの方からも影響緩和の方策をたびたびお願いしておりましたけれども、死亡率の変動を年金給付に反映させるという調整の仕組みを改定ルールの一つとして取り上げていただいたということは、大変意義のあることだと思っております。

 4点目はガバナンスですけれども、企業年金のガバナンスに関しましては、DBにつきましては、これまでも代議員選任規制とかAUPといった様々な取組を行っておりまして、私ども連合会でも各基金における制度の円滑な実施を支援してまいりまして、企業年金側としても相応の努力をしてきたと認識しております。

 権利義務に関する点について、法令で規定するという方向性自体は一般論として妥当だと考えますけれども、これも先ほど来、臼杵委員からも御指摘がありましたように、企業年金にはいろいろな規模や構成の基金が存在しておりまして、特に総合型基金の中には非常に小規模な事業主で構成されている、財政規模も事務処理体制も非常に小さい基金がたくさんございます。こうした基金こそが中小企業の企業年金の受け皿になっているという実態を踏まえまして、こうした基金が持っている制約とガバナンス向上を両立できて、円滑な運用を続けられるように、課長からも御発言があったように、引き続き、きめ細かな制度運用をお願いいたしたいと思います。

 最後に、DCの継続投資教育でございますけれども、私ども、御紹介があったように平成29年度から事業主の委託を受けて実施しております。正直言いまして、まだすごく繁盛しているというわけではございませんけれども、一定の評価は事業主からいただいておりますし、大江委員が登場していただくコマは大変好評いただいているところでございまして、そういう意味では一定の評価を受けていると思っております。

 仮に、新たにiDeCo加入者に対する継続投資教育の委託を受けることになりました場合には、これまで蓄積してまいりましたノウハウやコンテンツを活用しながら、国基連さんともよく連携をいたしまして、iDeCo加入者のニーズも踏まえまして、それから何よりも客観的な立場からの教育ということを念頭に置きまして、事業内容のさらなる充実に取り組んでまいりたいと思っております。

 以上、長くなりましたけれども、何といいましても委員の皆様方の積極的な御提案が今日の成果につながっているのではないかと思いまして、そういう意味では感謝を申し上げたいと思います。

 最後ですけれども、吉田課長から今後の検討課題の中でDBとDCにおいて、イコールフッティングが目的ではないという御発言もありましたが、そういう趣旨で、またさらに長年の議論を再び深めていきたいと考えております。

 以上でございます。

 

○神野部会長

 コメントありますか。いいですか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 傍聴者にも誤解があるといけないので、iDeCo加入者への投資教育ですが、引き続き運管にもやっていただきつつ、企年連も受託ができるという形で重層化するということですので、運管はもう何もやらなくていいというわけではないというのを、この際、言っておきたいと思います。

 以上です。

 

○神野部会長

 伊藤委員、お待たせしました。

 

○伊藤委員

 最後の時間がないところで済みません。私、最初に紙に基づいて連合の意見を披歴させていただきましたけれども、そういう意味でおっしゃったのではないかもしれませんが、課長から、賛同していただいているのでというような趣旨で聞こえましたが、決して全て賛同していませんし、iDeCoプラスのところとか、給付減額判定に関する個別同意の手続は極めて重いものと受けとめていまして、そこは誤解なきようにお願いしたいと思います。

 それから、企業年金の改正議論をずっとやってきて、緩和一辺倒です。結局、つくっても利用されないような改正をしてきていることもあると思うのです。こんな大きな労力をかけて、役所の皆さん、それから国会にも負担をかけてやりながら、結局使われない改正をするのだったら、非常に無駄になってしまいます。普及のためには余り規制はよくないのだという趣旨でこの間議論していますけれども、それならばちゃんと普及されるような努力を関係者みんながしていかなくてはいけないということを改めて言いたいと思います。

 あと、6ページの国基連ですけれども、iDeCoの手数料見直しはいいことなのですが、加入者の現状とか今後の見通し等を踏まえてということを書いてありますけれども、ぜひ算定根拠を明らかにしながら、納得できるような手数料改定の仕組みをちゃんと考えていってほしいと思います。

 あと2つ聞きたいのですけれども、投資教育のところの報告を求めないということで、今後はヒアリングで把握して指導するというのはいいことだと思うのですけれども、実際問題、どれぐらいヒアリングができるのでしょうか。継続教育を確認するためのヒアリングということは、規約の承認時ではないと思うので、一つの企業年金について何年置きにヒアリングができるのかという見通しをお聞きしたいと思います。

 最後です。DBとDCの法令解釈通知の書き方に差があるという点は、どちらにそろえるのかという考え方を教えてください。

 

○神野部会長

 よろしいですか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 まず冒頭、不適切な私の発言は取り消します。御賛同すると言った点について、その箇所についての御賛同をいただいたという理解です。

 御質問いただいている点で、まず加入者資格の方ですが、資料にあるように、DBとDCで違いがある部分を、後にDCは足らない分をQAで補っていますので、それは論理必然的にDBの方に合わせて、しっかり対応をしていくということです。

 継続投資教育の実施状況ですが、業務報告書の報告は実は私の手元に来るのは2年後です。2年前の情報が分かってもしようがないので、地方厚生局がまず承認時にちゃんとヒアリングをしていただき、その後に、どのスパンでやるかはこれからよく考えなければいけませんが、DBの指導のときもそうですが、まず書面監査をやっています。そこをどういうタイミングでやるか、これから体制を含めて考えていきたいと思っていますが、今の2年後に来る、しかもマル・バツの実施の有無のみという現状よりは、しっかり状況把握をできるような形になると思っています。

 

○神野部会長

 松下オブザーバー。

 

○松下国民年金基金連合会理事長

 最後に済みません。国基連の松下でございます。

 iDeCoの実施機関の立場から2点コメントをさせていただきたいと思います。

 まず、企業型のDCとiDeCoの同時加入の緩和についてであります。本日の資料にございます合算管理の情報連携の仕組みにつきましては、制度の詳細を踏まえて連合会としても検討してまいりたいと考えておりますけれども、iDeCo側で企業型との制度をまたいだ合算管理を行うためのシステム対応が必要になると考えております。

 御案内のとおり、iDeCoの事業運営につきましては、iDeCoの加入者の手数料で賄われているわけでございますけれども、今回の企業型とiDeCoをまたいだ合算管理をどういう形でやっていくのか。この手法の確定に伴うシステム開発費、あるいは運営費、これらにどのように対応していくかということを今後、十分慎重に詰めてまいりたいと思います。

 具体的には特に適切な費用負担の方法やシステム整備のあり方が非常に重要になってくると考えておりますので、厚労省や関係者と十分連携をして、検討していきたいと考えております。

 2点目は、本日、先ほども御指摘がありましたように、iDeCoの手数料の設定につきましても様々な御意見をいただいております。連合会としては、平成28年の法改正を実施するためのシステム開発のために、長期の借り入れを行っている状況にございますけれども、現行の手数料水準につきましては、借り入れを行った平成28年度以降、毎年度、最新の加入者等の推計値に基づいて返済を含めた収支計画を整理して、この妥当性の確認を行ってきております。

 本日の資料の中では、手数料の増額要因として今回の改正によるシステム改修費等も挙げられておりますけれども、私どもとしては、新たな要因を今後加味しながら、具体的な手数料水準を検証することについて、あるいはそれを分かりやすく皆様にお示しすることについて、厚労省と連携して進めていきたいと考えております。

 以上でございます。

 

○神野部会長

 コメントはいいですか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 手数料については、根拠を持って設定して、それを開示していく、これが大事だと思っていますので、その点、国基連と連携して対応したいと思っています。

 

○神野部会長

 ありがとうございました。

 それでは、予定の時間を超過しておりますので、以上をもちまして、本日の議論を終了させていただきたいと思います。

 委員の皆様方には、極めて生産的な御議論を頂戴したことを深く感謝申し上げます。事務局から論点を整理していただいて、それについての方向性を提示していただいたわけですけれども、私の印象としては、そう大きな異論はなかったと。ただし、もう少し慎重に検討すべき点とか、進めていく上での問題点や気をつけるべき点について御指摘を頂戴いたしましたので、事務局においては、こうした極めて生産的な御指摘を踏まえた上で、必要な調整をこれから税務当局と行われると思いますので、進めていただければと思います。

 今後の日程等々、ございましたら、よろしくお願いします。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 本日はありがとうございました。

 部会長から御指示がありましたように、今日いただいた御意見をしっかり踏まえまして、事務局としては細部の検討と、また、税務当局との事務的な調整を進めていきたいと思っております。

 次回の部会の開催日時と議題につきましては、事務局から各委員の御都合をお伺いした上で、正式な御案内をお送りしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

○神野部会長

 それでは、申しわけありません。私の不手際で時間を少々オーバーいたしましたことをおわびいたしまして、最後まで御熱心な御議論を頂戴したことに深く感謝を申し上げる次第でございます。

 以上をもちまして、第9回の「企業年金・個人年金部会」を終了させていただきます。どうもありがとうございました。