07/02/16 企業年金研究会第5回議事録

 

第5回 企業年金研究会議事録

 

 

                                      日時 平成19年2月16日(金)

                                            15:00~17:00

                                      場所 厚生労働省専用第18会議室

 

 

○森戸座長 ただいまより、第5回「企業年金研究会」を始めます。本日は、企業年金連合会の西山部長が所用によりご欠席です。また、渡邉年金局長は国会業務により遅れて参加されると伺っており、間杉審議官は業務の都合によりご欠席です。

 では、議事次第に沿って会議を進めます。まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。

 

○簑原課長補佐 本日の資料は「企業年金共通の課題について」という横の資料を1つお配りしております。

 

○森戸座長 続いて、事務局より資料の説明をお願いいたします。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 「企業年金共通の課題について」という資料を1枚めくりますと目次です。この資料の位置づけですが、前回私どもがお出しいたしました企業年金の共通の課題の論点と、前回の議論を踏まえた論点について、基礎資料を含めて整理したという位置づけです。全体で5つのパーツがあります。

 1つは企業年金制度の制定の経緯です。特に、退職金との関係を含め、実態としてはどのような形で企業年金制度が発展してきたか、というのが1番目のパーツです。

 2番目は、企業年金の性格と規制・税制ということで、伝統的な厚生年金基金、あるいは適格退職年金、新たな確定拠出年金、確定給付企業年金の性格。性格と言いましても、現在の目的規定などに照らした制度上の位置づけなど、それに関連する論点。それから、現行の規制・税制、その今後のあり方ということです。

 3点目は、前回ベスティングということで、アメリカの受給権保護の仕組みも含めて、今回企業年金の性格論で議論すべきではないかというご指摘がありましたので、受給権の保護についての資料です。

 4点目は企業年金の水準ということで、特に厚生年金基金ということですが、企業年金の水準の経緯と水準のあり方という論点です。

 5点目は、企業年金に対する税制のあり方ということです。掛金等の拠出、運用、給付時の課税のあり方。特に議論の中心になりますのは、特別法人税だと思いますが、特別法人税の課税の基本的な考え方。それから、具体的な税率の考え方。それから、拠出時・運用時・給付時を含めた税制の全般のあり方。それから、現在は凍結されているわけですけれども、凍結のあり方等々ということです。

 資料に沿ってご説明いたします。2頁ですが、特に企業年金については退職金との関係が現在でも実質上密接に関連があるわけです。遡りますと昭和20年代、昭和30年代において、そもそも二階の厚生年金保険を厚くするに際し、経済界から退職金が社会保障制度の事実上の肩代わり、競合関係にあるのではないかということで、厚生年金保険、すなわち二階と退職金との調整を図るべきという指摘がなされたのが、そもそもの退職金と企業年金の関係です。

 他方ということですが、企業においては当時退職一時金がかなり導入されてきたわけです。賃金上昇等に伴い、退職金の増加が見込まれる中で、一遍に退職一時金という形で払いますと、企業負担が一時的に大きくなるということで、資金の平準化の観点から、退職金を企業年金制度に振り替えるという要望が高まり、その結果できたのが昭和37年の適格退職年金制度ということです。

 税制については、昭和37年の適格退職年金制度の税制が、いわば骨格・基本になっております。この頁のいちばん下の資料に「昭和37年度税制改正要綱案」があります。その当時は、入口の退職金等掛金という概念がありませんでしたので、掛金等の損金算入がなかったわけです。この際に、外部積立で一定の要件に該当する退職年金基金に対しては、一定の要件に該当する掛金を拠出したときには、その拠出の際に企業の損金に算入するということが第1点です。

 これに対する所得税の課税を年金受給のときまで繰り延べる措置という考え方がとられたということです。これは後ほど出てまいりますが、企業の損金算入ということは経費とみなすということですが、これは、いわば給与を払ったとみなした上で、その払った給与の所得税を即時に本人に課するのではなくて、受給時まで繰り延べるという考え方に立ったということです。その結果、掛金相当分と運用益に関して、所得税の繰延分を利子も含めて課税するという特別法人税ができたということです。

 上に戻りまして(3)です。ここで適格退職年金ができたわけですが、企業年金と厚生年金保険、いわば二階と三階の調整という問題は引き続き残っていたわけです。昭和41年に企業年金に厚生年金保険の一部を代行させることにより、二階と三階との調整を図るという目的で厚生年金基金ができたということです。このような経緯から、厚生年金基金は、かつて「調整年金」と言っておりましたけれども、我が国独特の労使慣行たる退職一時金と密接不可分の関係にあるという実態があるということです。

 4頁では、確定拠出年金、確定給付企業年金ということで、平成13年、平成14年と相次いで新たな確定拠出型の確定拠出年金、それから代行部分を持たない純粋な確定給付型の企業年金であります確定給付企業年金制度が創設されたわけです。実態としてみますと、資料4はいつもの資料ですが、確定給付企業年金、確定拠出年金とも、退職一時金あるいは厚生年金基金の代行返上、適格退職年金からの移行等によって創設されてきていて、従来の厚生年金基金、適格退職年金、それから退職一時金とも密接な関連があるという実態があるということです。

 関連資料で5頁ですが、これは以前からお出ししている資料です。確定拠出年金については、新制度からの移行がない純粋な導入と一応見られるものが約4割、残りについては適格退職年金、あるいは適格退職年金及び退職金、厚生年金基金等からの移行。確定給付企業年金に至りましては、8割が適格退職年金、厚生年金基金からの移行等ということです。実態としては、もともとの退職金からの関係で出てまいりました適格退職年金、厚生年金基金、それからいまある退職一時金等、それらの経緯を経てこういう制度が導入されているという実態があるということです。

 6頁ですが、一方で「企業年金の性格と規制・税制」ということで、特に税制等を中心に、これまでの経緯をまとめたのが6頁です。適格退職年金は先ほど申し上げたような経緯で導入されておりますが、これについては一時金払いもありますが、いわば退職金が原資になっている、退職金の年金化だということでは名称もそうですけれども、そういうことでここは明確だろうということで、独自の税制上の適格要件が設定されております。

 先ほど申し上げましたけれども、入口損金算入、所得税の課税は繰り延べ、運用時に特別法人税を課税して、給付時は年金並びという税制です。適格退職年金が独自の要件ということです。

 他方、その後できました厚生年金基金については、厚生年金保険と退職金との調整を図る目的で設立されております。代行部分を持っておりますので、当然公的年金の代替としての性格も一部併せ持っております。こういうことから、公的年金に準じた規制・税制ということです。

 具体的にはあまり詳細は申し上げませんが、資料6の下にありますけれども、厚生年金基金のところを見ますと、例えば加算部分の半分以上は終身とか、プラスアルファ部分は代行部分の5割以上という給付基準がある一方で、税制については一定の水準までは給付時課税ということで、拠出時、運用時の一定水準まで非課税で、給付時に課税する。いわば公的年金と同じような税制の扱いをされているということです。

 (3)で「さらに」と書いてありますが、さらに平成5年に厚生年金基金、当時は加入員が500人以上ありませんと、単独型等については設立ができなかったわけですが、500人に満たない中小企業、厚生年金基金がつくれない中小企業を対象として、適格退職年金のうち、給付の内容が厚生年金基金に準ずるもの。つまり、総現価の半分以上が終身、終身部分がかなりある、あるいは厚みが報酬比例部分、いわゆる代行部分の1割以上ということで、給付が厚生年金基金並みのものについては、厚生年金基金の代替・補完的機能を有するものとして、厚生年金基金との均衡等の観点から、厚生年金基金に準じた税制上の優遇措置、ひいては公的年金に準じたということになるわけですが、「特例適格退職年金制度」が導入されたという経緯があります。

 このように税制上の措置については、まずは退職年金独自の優遇措置というところからスタートして、公的年金の代替機能を持つ企業年金(厚生年金基金)ですけれども、これに対する優遇措置。それから、厚生年金基金の代替・補完的機能を有する企業年金に対する優遇措置ということで、いわば順を追って優遇措置の範囲が拡大されてきた経緯があるということです。

 8頁からは、事務方でこれまでの議論を踏まえ、ご議論いただく素材として論点の原案といいましょうか、たたき台を提示しております。確定拠出年金と確定給付企業年金の法律上の性格ですけれども、これまで申し上げてまいりましたように、事実上は退職金制度との密接な関連がありながらも、この法律上の目的を資料8で見てみますと、確定拠出年金、確定給付企業年金のいずれも国民の高齢期における所得の確保に係る自助努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与するという目的です。

 この目的を見ますと、自社年金あるいは退職年金とは異なり、老後の所得保障について公的年金と補完関係にあることが、この法律上の規定からは明確であろうかと思います。現在の目的規定はこういうことですけれども、このような確定拠出年金と確定給付企業年金の目的についてどのように考えるか、というのが性格論としての1つの論点と考えております。

 例えば、これまでのご議論でもありましたように、退職時の所得保障、あるいは企業の福利厚生の充実を通じた従業員の福祉の増進とか、ほかの企業年金の目的というものもあろうかと思いますけれども、このように公的年金との関係ではなくて、公的年金と切り離した目的とするということも制度論としては考えられるわけですが、そのようなことについてどのように考えるか、というのが論点としてあろうかと考えております。

 少し切り口が違いますが、現在公務員については適用除外になっております。企業年金は、基本的には労使合意、事業主が労使合意に基づいて設定するということです。公務員については労使合意ではなくて、処遇一般が人事院勧告等に基づいて法律で規定するという形になっておりますので、公務員については適用除外にしているわけです。現在、公務員についていろいろな議論がされておりますが、企業年金法制において、公務員を適用除外にすることについてどう考えるか、ということも論点としてはあろうかということです。

 9頁からは、確定拠出年金と確定給付企業年金を分けて少し具体的に論点を提示させていただきました。確定拠出年金については、新たなタイプの年金ですので、これまでの確定給付型の年金とは異なる規制が現在はあるということです。具体的に言いますと、原則中途引出し禁止、例えば10年以上加入しないと60歳から受給できないなどの、年金性の担保のための要件設定。それから、拠出限度額が設定されて、掛金が青天井ではないということ、あるいは加入対象者を限定するといった、いわば確定給付型に比べると厳しい規制が課されているということです。

 一方で、拠出限度額については、企業型、個人型で異なる水準になっておりますけれども、ベースになる企業型の拠出限度額については、厚生年金保険法に規定する厚生年金基金の望ましい水準、これは後ほど出てまいりますが、具体的には退職直前所得の6割を、公的年金と企業年金とで合わせて確保するという考え方です。このような厚生年金基金の水準を勘案して設定されております。

 さらに、受託者責任の明確化ということで、いわばこれまでの旧来の適格退職年金と比較すると、受給権保護の仕組みもあるということです。例えば、公的年金と相まって老後の所得保障を行うという目的、それから具体的な保障水準を確保するための拠出限度額がきっちり決まっている。また、受給権の保護等の規制が敷かれているという一方で、税制上の扱いについては、これまで旧来の昭和37年に導入された、適格退職年金並びの措置に止まっているということです。このような税制上の扱いについてどのように考えるか、ということが論点としてあろうかと思います。

 いままで申し上げましたのは、現行の目的規定とか現行の制度を前提にした税制等のあり方です。そうではなくて、仮に確定拠出年金について、公的年金と切り離した独自の目的を設定した場合には、規制あるいは税制上のあり方についてはどのような考え方に基づいて、具体的にどのような内容にするのかということも、目的規定から性格論を現行と異なる考え方にする場合には、そのようなことが論点としてあるのではないかと考えています。

 11頁ですが、参考資料で1点だけご説明させていただきます。具体的なことについては次回と考えておりますが、「企業型確定拠出年金の拠出限度額の設定の考え方」を宿題でいただいていますので、ざっとご説明させていただきます。

 「給付ベース」というのが左側の箱にありますが、平成16年年金法改正後という真ん中の給付ベースの右側の箱を見てください。ベースは左端に書いてありますが、退職直前給与の6割を厚生年金と企業年金とで確保するということです。右側の箱の望ましい上乗せ水準と書いてあります、基金代行部分までが厚生年金の部分です。その上乗せ部分を企業年金で確保ということです。現在は、代行部分の2.23倍を上乗せするというのが水準として決まっております。この給付をベースにして、掛金ベースに置き換えて限度額を設定しているというのが、企業型確定拠出年金の限度額の考え方です。

 「掛金ベース」というところでもう少し具体的に申しますと、水準を保険料ベースに換算するということで、真ん中に免除保険料率とありますが、これが代行部分に相当する保険料率です。平成16年当時の推計では、代行部分を賄う保険料水準は3.2%だろうということ。それに上乗せ水準が2.23倍ですので、3.2%×2.23倍ということで7%ぐらいになろうかと思いますが、これが料率換算だろうと。それに標準的な報酬といいましょうか、給与を掛けて限度額を設定するということで、当時の大多数の民間サラリーマンの標準給与が約65万円程度ということで、65万円に保険料率が3.2×2.23倍の料率を掛けて4.6万円ということで限度額が設定されています。いわば、掛金換算したときの望ましい水準を賄うための掛金が4.6万円ということです。

 以上が確定拠出年金の関係ですが、12頁からは確定給付企業年金です。確定給付企業年金については、従来型の確定給付型ですので、ある意味でわかりやすいわけです。適格退職年金とは違うところが何点かあります。1つは、公的年金と相まって老後の所得保障を行うという公的年金の補完としての目的が明確になっております。もう1つは適格退職年金を廃止した理由でもあるわけですが、積立義務など受給権保護のための措置がとられております。一方で、税制上の措置については適格退職年金並びの措置に止まっているということです。

 他方で、適格退職年金の中でも、特例適格退職年金という給付について一定の厚みがあるものについては、厚生年金基金の代替・補完的機能を有するものとして、厚生年金基金、ひいては公的年金に準じた税制上の措置がとられておりますが、こういう確定給付企業年金と特例適格退職年金の税制上の均衡についてどのように考えるか、という論点があろうかと思います。

 また、特例適格退職年金については給付設計、特に終身年金に着目して、厚生年金基金に準じた税制上の措置がとられておりますけれども、ここの点をもう少し論点として広げて考えますと、そもそも企業年金の給付設計のあり方についてどのように考えるのか。終身を原則にするのかどうかというところも、論点としてあるのではないかということです。ここまでが、現行の確定給付企業年金の目的なり、基本的な枠組みを維持した場合の論点です。

 「さらに」というところは、もう少し発想を転換した場合ということで、仮に確定給付企業年金について公的年金と切り離した目的を設定した場合に、規制・税制上の措置についてどのような考え方に基づいて、どのような内容にするのか。先ほどの確定拠出年金の議論と同じような議論があろうかということです。

 参考資料を少しとばして15頁です。これは3つ目の柱である「企業年金における受給権の保護」ということです。厚生年金基金、確定給付企業年金においては、積立基準、受託者責任等により受給権の保護が図られているわけですが、このほかにも加入者、受給者の受給権を保護する観点から、年金額を減額する場合には一定の要件を課しているということです。皆様ご存知かと思いますが、資料13ということで下に要件が書いてあります。

 加入者、現役世代の減額については労働協約の変更等、母体企業の経営悪化等いくつかの要件のいずれかに該当するといった実態要件と、手続としては対象者の3分の2以上の同意という要件があります。受給者減額については、もう少し厳しい要件ということで、真にやむを得ない場合ということで、要件としては母体企業の経営悪化、あるいは掛金の負担が困難といった実態要件と、減額対象者の3分の2以上の同意取得等、手続要件もある意味で厳格に課されております。

 他方アメリカにおいては、ベスティングという仕組みにより、勤続年数等の一定の要件を満たした労働者について、100%の受給権、ただし、過去分の受給権に限るわけですが、付与するよう義務づけられているということです。アメリカの仕組みについては16頁です。資料14ということで「アメリカのベスティング」と書いてあります。アメリカのエリサ法においては、勤務年数等の一定の要件を満たす労働者については、企業年金の受給権、過去分について受給権を付与することが義務づけられているということです。

 具体的には、加入者が5年勤務した時点で100%の受給権を付与する。あるいは、加入者が3年勤務した時点で20%、以後1年ごとに20%ずつ上乗せして、7年で100%の受給権を付与といういずれかを満たす必要があるということです。また、一旦付与された受給権は、労働者が早期退職したり、懲戒解雇された場合であっても没収されないということです。

 15頁に戻りまして(3)です。日本においては、加入者減額、受給者減額は一定の要件を満たした場合に、将来分も含めての要件ということで、ある意味厳格な要件が設定されています。一方でアメリカについては、過去分については要件ということではなくて、基本的には100%の受給権を付与するという制度になっているわけです。こういう年金減額のあり方を含めて、企業年金における事業主の責任、あるいは受給権の保護のあり方についてどのように考えるか、ということが論点としてあろうかと考えております。

 17頁で「企業年金の水準」です。企業年金の水準の経緯ですが、企業年金というのは、従来は老齢年金の代行部分を持つ厚生年金基金について、最低保障すべき給付水準が規定されるに止まっていた。従来というのは昭和60年の改正前ということですが、給付の厚みを規制するということが基本です。

 ただ、別途税の観点から特別法人税については、国家公務員共済組合法の長期給付の水準まで非課税ということが従来の考え方でした。これは遡って昭和60年の公的年金の二階の改正前までは、国家公務員共済年金と民間サラリーマンの厚生年金との間で水準に格差がある。公務員のほうが高いということで、税制上官民の均衡を図るための措置、いわば公務員の水準までは民間も税制上優遇しようという考え方で、特別法人税は非課税になっていたということです。

 昭和60年改正により、国家公務員共済年金と厚生年金の水準が統一されました。そうすると、厚生年金基金でこれまでは特別法人税の非課税の水準は、国家公務員共済の水準と倣っていたわけですが、独自の水準を設ける必要が生じたということで、厚生年金基金として目指すべき「望ましい水準」を厚生年金保険法で規定した上で、これを特別法人税の非課税水準とする扱いとしようということになったものです。

 17頁の資料15の昭和63年のところの(参考)のところに、「昭和63年度自民党税制改正大綱」の抜粋があります。厚生年金基金の積立金に係る特別法人税の非課税水準については、厚生年金保険法の改正を踏まえ、現行水準を維持するものとし、所要の措置を講ずる、という税制改正大綱が決定されております。

 18頁では、昭和60年の二階の水準の統一に伴い、独自の水準を昭和63年に設定したわけです。この厚生年金基金の望ましい水準については、先ほど来申し上げておりますように、退職直前所得の6割を公的年金と厚生年金基金とで確保するという考え方で設定されたものです。これは当時の賃金、あるいは消費支出等に照らすとともに、当時の特別法人税の非課税水準と概ね同レベルになるということを考慮したものです。

 ちなみに、当時の消費支出の状況等が資料16にあります。当時の退職直前所得、勤続20年以上の男子の平均給与額が46万円で、その6割が約27万5,000円です。この27万5,000円を二階と三階とで確保するということです。当時の厚生年金の標準的な年金額は、夫婦で18万5,000円、消費支出が20万6,000円ということです。27万5,000円程度あれば、消費支出も含めて概ねカバーできるだろうという考え方です。

 望ましい水準についてはこのような考え方が基本ですが、具体的な法律上の規定としては、代行部分に対する一定比率、代行部分の何倍という形で定められております。当初は2.7倍からスタートしたわけですが、公的年金の給付水準が下がると、その分企業年金で賄う部分が高くなってまいりますので、徐々にその比率が引き上げられてきたということです。老後の所得保障に占める企業年金の比率が事実上高まってきています。

現在は、平成16年改正を経て、制定当時の2.7から3.23と上がってきております。このような望ましい水準の考え方についてどのように考えるか。現在でも妥当なものかどうかという論点があろうかと思います。また、現行制度では望ましい水準は、厚生年金基金のみに適用される水準ですが、他の企業年金における企業年金の水準のあり方についてどのように考えるか、という論点もあろうかと思います。

 ちなみに、19頁で資料17は改正の経緯です。資料18は、現在の望ましい水準です。

いま厚生年金基金を構成している企業の実態に基づいて算定すると、厚生年金基金の望ましい水準についてはどうかということです。平成16年実績でいうと、代行部分が真ん中にありまして3.1万円が実績です。その2.23倍ということですので、プラスアルファ部分は6.9万円になります。これが、現在厚生年金基金を構成している企業における厚生年金基金における望ましい水準の実額です。以上が水準論です。

 20頁からが「企業年金に対する税制のあり方」です。先ほど来申し上げていることと少し繰り返しになって恐縮ですが、少し丁寧にということでお許しいただきたいと存じます。公的年金については、拠出時は企業拠出は損金算入、本人負担については社会保険料控除適用ということで非課税になっております。運用時も非課税ということで、給付時に課税するという扱いです。原則給付時課税ということです。ただし、給付時に公的年金等控除ということで一定の控除を適用するという考え方になっております。厚生年金基金については、公的年金に準じた取扱いということです。

 他方で、適格退職年金を中心に、他の企業年金については、拠出時においては企業の経費(損金算入)とする一方で、その経費として算入するということは、いわば給料として払うという考え方がベースになっているわけですが、直ちに従業員に対し、企業が出した掛金を給与所得として課税するという方式も、やり方としては考えられるわけですけれども、拠出時において、従業員にとっては年金の受給権が発生しておりませんので、このような段階で給与所得として課税することは適当ではないだろうということで、所得税の課税を受給が確定するまで繰り延べるという考え方に立っております。

 22頁です。こういう考え方ですので、本来拠出時に企業年金の掛金を本人の給与所得として課税すべきところを、繰り延べるという考え方に現在は立っております。そうしますとこの企業拠出分、その運用益の部分に非課税の部分ができるということです。この非課税となっている企業の拠出部分、その運用益について、他の投資形態に対する課税とのバランス、あるいは現在は縮小になる方向ですが、社内における退職給与引当金に係る課税とのバランス等に着目し、従業員の所得としての課税は年金受給時に行うことによる、その期間の繰り延べによる利益、即ち税金の納付を延期するための利益相当分を、年金積立金を運用する法人に課税するのが導入当時の特別法人税課税の考え方です。

 それを模式図にしたのが23頁です。23頁の下の図ですが、いちばんわかりやすいのは確定拠出年金の下の右の図です。確定拠出年金の企業型については、事業主掛金と運用益しかないわけですが、このような事業主掛金とそれを運用したときの運用益。適格退職年金等については、従業員個人の掛金は別にして、事業主が掛けた分とその運用益に対して課税するという考え方です。

 24頁から、このようなことを前提として論点をいくつか提示しております。まず、税率の設定の考え方ということです。特別法人税の税率については、以上申し上げたとおり繰り延べによる利益、即ち遅延利子に相当するものとして、従業員の給与所得に対する平均上積税率、住民税の負担率に対して、日歩2銭の利子税率を基礎として税率が設定されているということです。

 具体的に申しますと、給与所得に対する上積税率というのは、年金掛金の事業主負担分を、給与所得として従業員に仮に払ったとした場合、その給与に対して上乗せして課税することとした場合の所得税、あるいは住民税の適用税率ということです。利子税率というのは、税金の延納等の場合に通常の国税に合わせて納付しなければならないというものです。

 資料22の下に「現行」と書いてありますが、所得税の平均上積税率、いわば企業の掛金を給与として払った場合に、所得税としては平均12%の税がかかるだろう。住民税は5%かかるだろう。それを払わずに延滞しているので、延滞税率を掛けるというのが7%です。それを、国と地方で分けて1%という税率だということです。このような特別法人税の税率の設定についてどのように考えるか、ということが1つあろうかと思います。

 ちなみに、※でいちばん下に書いてありますが、利子税率については原則7.3%ですが、現在の低金利等の状況を踏まえて、平成12年1月1日以降の期間に対応する利子税率は、公定歩合+4%という特例となっております。現在の所得税等の通常の延滞の場合の利子税については、平成18年11月末の公定歩合によりますと、約4.4%の利子税率に相当するという状況です。

 25頁ですが、各論で特別法人税の設定の考え方から入りましたので、税率という少し細かい論点が先に出てまいりました。そういう意味では議論の順序が少し前後していることは恐縮です。もう少し大括りな話として、税制改正大綱においては、年金課税については特別法人税のあり方を含め、拠出・運用・給付を通ずる負担の適正化に向けて抜本的な検討を行うということになっております。27頁に税制改正大綱の抜粋を付けてありますが、平成15年度、それから平成17年度とほぼ同趣旨です。平成17年度については特別法人税のあり方を含めたこのような文言が入っております。いずれにしても、年金に係る拠出・運用・給付を通ずる負担の適正化に向けて抜本的な検討というニュアンスです。

 25頁に戻りまして、こういう抜本的検討とされておりますけれども、拠出・運用・給付を通ずる税のあり方についてどのように考えるか、というのが大きな論点であろうかと思います。仮にということでこの研究会でも出ておりますが、いまのような拠出時課税が原則で、その利子の延滞分を繰り延べて取るということではなくて、根っこから給付時課税なのだといった場合には、現行の年金における公的年金等控除等のあり方についてどのように考えるか。給付時の課税のあり方についてどのように考えるかという論点があろうかと思います。

 企業年金全部ではありませんけれども、企業年金のうち公的年金に準じたものについて、ある意味限定ですが、税制についても公的年金に準じた扱いという考え方もありますけれども、これについてどう考えるか。それ以外の考え方は何かあるだろうかといった論点かと存じます。

 以上をイメージ図にしたのが26頁です。現在の通常の適格退職年金を含め、通常の企業年金の課税がいちばん上の現行というところです。拠出時に所得税を課税すべきところを課税繰り延べで、運用時に繰り延べ利子相当分をいただいて、運用時に利子をいただいていますので、給付時は通常の公的年金等控除、退職所得控除ということで、通常の年金と同様の扱いをするということです。

 仮に給付時課税原則に変更した場合ということでは、拠出時・運用時は非課税ということですが、給付時の課税というところで、公的年金等控除、あるいは選択一時金に係る退職所得控除のあり方についてどう考えるかというところが論点かと思います。

 ちなみに、参考までに公的年金、厚生年金基金、特例適格退職年金という、いわば一定の要件を満たしたものについては、給付時課税原則で、かつ公的年金並びの税制扱いということに現在はなっているということです。

 諸外国の例が28頁です。原則論からいたしますと、いわば給付時にかっちり課税するという考え方が、アメリカ、イギリス、カナダです。具体的に給付時課税のときの控除等のあり方については、我々もまだ詳細を承知しておりませんけれども、いずれにしても給付時にかっちり取るというのが上の3カ国です。それから、運用時・給付時に課税するという考え方がスウェーデンですが、具体的な中身はわかりません。そういう意味では、日本に少し似ているのかと思います。そうではなくて、拠出時に賃金として課税するというのがドイツです。フランスは積立金がないということですが、基本的には給付時課税ということです。

 29頁ですが、いま申し上げましたところは特別法人税のそもそものあり方です。もう

少し小ぶりな論点としては、現在凍結されていることについてどう考えるか、ということがあろうかということです。特別法人税については、平成11年度の税制改正大綱を資料25ということで下に付けております。現在の超低金利の状況、企業年金の財政状況、退職年金等に係る新しい会計基準の設定等を踏まえ、2年間の時限措置として運用停止と。平成13年度においては、退職年金の新しい会計基準が既に入りましたので、低金利と企業年金の財政状況等を踏まえて2年延長するということです。

 平成15年度以降については、特にそのような条件が書いていないということです。

仮に特別法人税が存続するという前提に立った場合、金利あるいは企業年金の財政状況等を踏まえ、特別法人税の凍結についてどのように考えるか。あくまで、これは仮に存続する場合という前提ですが、そういう論点があろうかと思います。

 ちなみに、30頁に具体的な金利等の状況を資料として提示しております。長期国債と、いわゆる短期のコールレートと金利について例示ということで2つ出しております。平成9年、10年、11年と長期国債は2.3、1.5、1.7です。一方で金利については、直近の平成18年で1.7ということで、ほぼ導入時と同じぐらいの金利水準かということです。

短期のコールレートについても0.47、0.32、0.05というところで、現在は0.275ということで平成10年と平成11年の間にあるわけですが、ここもほぼ同水準という状況です。

 一方で企業年金の財政状況ですが、平成9年、10年、11年、それから12年、13年、14年のかなりの落ち込み、それから平成15年、16年と分けてありますが、平均的にならしてみますと平成9年、10年、11年と、平成15年、16年のところで少しならしてみますと、ほぼとんとんぐらいかというのが、現在の企業年金の財政状況です。

 32頁は、給付時における課税のあり方です。特に、一時金と年金払いとの課税のあり方ということです。これは、前回小野委員から諸外国の例ということがありましたので、それも参考にして論点としての提示をさせていただきました。我が国の企業年金においては、選択一時金制度により、事実上年金と退職一時金が選択的に導入されているという経緯があります。

 一方で税制については、企業年金における年金給付については、公的年金と同じ枠内で公的年金等控除が、企業年金における一時金については退職所得として分離課税されて、退職所得控除が適用されているという現状です。このような企業年金における年金払いと一時金払いの税制上の均衡についてどのように考えるかということです。諸外国においては個人単位で一括して非課税の拠出枠が設定されている例がありますけれども、このような点をどのように考えるかということです。

 諸外国の例ということで34頁です。いわゆる「アカウント型優遇制度の概要」です。

アカウント型というものを、イギリスとカナダを例示で出しております。少しわかりやすいカナダの下の例をご紹介いたします。カナダの登録引退貯蓄制度ということです。

69歳未満の所得のある方については1万3,500ドル又は前年所得の18%のうち低い額までを非課税で拠出できるということです。老齢での引出しということで、69歳まで拠出を続けられるということで、拠出・運用時非課税で、69歳時点で、年金か一括かで引出しを開始するということです。基本的には給付時、支給時に一括課税ということで、しかも年金・一時金とも変わらず同じような課税形態で課税されるという例かと承知しております。

 事務局からの資料の説明は以上です。

 

○森戸座長 非常に詳細な資料を用意していただきましてありがとうございました。これからの議論の進め方ですが、この資料の論点に関して、目次を見ますと1、2、3、4、5と項目が分かれています。最初の2つの「企業年金制度の制定の経緯」と「企業年金の性格と規制・税制」というところ、それから3、4の「企業年金における受給権の保護」と「企業年金の水準」というところが2つ目、3つ目として「企業年金に対する税制のあり方」と大きく3つに分割して、この後の議論をしていきたいと思います。もちろん、相互に関わるところはあると思うのですけれども、大体資料を説明していただいた順番に沿って議論していきたいと思います。

 早速ですが、「企業年金制度の制定の経緯」及び「企業年金の性格と規制・税制」ということで説明していただいた部分について議論していきたいと思います。皆様から、資料に関してご質問、ご意見等がありましたらお願いいたします。

 

○駒村委員 いまの話で少し気がかりなのは、水準の話と性格の話がやや重なる部分があるかと思って、どちらで聞こうか悩んでいます。

 

○森戸座長 いまでもいいですよ。

 

○駒村委員 1つは資料の確認です。19頁の望ましい水準の2.23のほうはよくわかったのですが、2.7というのは何が根拠だったのかということ。それから、17頁の2.7を2.84、2.84を3.23に上げたというのは、平成12年のほうは乗率を5%引き上げたときの補完措置であると。つまり、公的年金の守備範囲を下げたので、それを補うために上げたと。

 平成16年のほうは、マクロ経済スライドで15%長期的には下がっていく部分を補っていると考えるのか、そのことと代行部分との関係についてはどのようにみるのか。その辺の数字の根拠というのを、要するに公的年金の縮小と企業年金の水準というのは、水準論だけではなくて性格論にもかかわってくるので、その資料のところを確認させてください。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 昭和62年の2.7は制定当初の水準です。18頁に書いてあることが、そもそもの2.7の水準です。具体的に申しますと、退職前所得の6割を公的年金と厚生年金基金とで確保するという考え方ですけれども、この当時の賃金、消費支出に照らす、あるいは当時の特別法人税の非課税水準も概ね2.7と。2.7というのは、代行部分に対して2.7倍の水準が上乗せ水準ということです。代行部分に対して2.7倍を上乗せ水準とすると、ちょうど退職時の6割の所得の確保ができる、というのが制定当初の考え方です。

 平成12年改正と平成16年改正のことで、19頁の資料17ですが、平成12年改正で2.84、平成16年改正で3.23と変更されております。平成12年改正についてはご指摘のとおり、公的年金の水準が若干下がったことを厚生年金基金のプラスアルファで補完するということです。

 平成16年改正について詳しく申しますと、もう少し説明が必要になります。マクロ経済スライドの導入なのですが、これは時間軸の概念が入っています。長期的に見ますと、マクロ経済スライドで、将来的には所得代替率がモデルでは50.2まで現在の水準が下がることになります。その将来下がったときの水準を考慮して、そのときでも退職時の所得の6割を、公的年金と厚生年金基金のプラスアルファで確保できるようにという数字を推計し、その数字を基に代行部分との比率で3.23をはじき出しております。

 具体的に申しますと2050年の時点での数値を基に算定しているわけです。将来のマクロ経済スライドがすべて終わった後の公的年金の水準をベースに、企業年金と合わせて6割を確保するという考え方です。

 

○駒村委員 代行部分に対し、マクロ経済スライドというのはどのように関係してくるのですか。

 

○早川基金数理室長 詳しく申し上げますと、報酬比例部分というのは、賃金の再評価、物価スライドしたものになります。そこがマクロ経済スライドで変わりますので、代行部分の割合が変わるという要素があります。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 その上で、代行部分が将来的にいくらになるか。そのときの通常の公的年金の二階の水準がいくらになるかということで、基本的なベースとしては退職時の所得が、例えば退職時の所得の6割が60万円ですと、そのときの公的年金の一階と二階を合わせた水準が40万円だったら、20万円をとにかく企業年金で確保する。代行部分についてはいろいろな計算で出てきますが、20万円を代行部分で割り返して3.23というものを出しているという性格のものです。

 

○駒村委員 関連するところを一気に行ってしまいますが。確定拠出年金の限度額の拡大の話ともバランスがとれて同じような話になってくるわけですけれども、そうなってくると私の理解では、代替ということをどう定義づけるかということがあると思うのです。企業年金の20%ぐらいに相当するかもしれませんが、一定部分については公的年金的補完、代替的な性格が入ってきているという感じでいいわけですか。確定拠出年金についても、厚生年金基金についてもというような説明もできるわけですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 代替とか、いわゆる諸外国でインテグレーションというような、必ず企業年金はここまで確保しろというように、そこまでかっちりしたものではありませんけれども、法律上の位置づけとしては、厚生年金基金については望ましい水準ということで、ここははっきり努力義務として目指せということが書いてあります。

 確定拠出年金については、事実上ですけれども、同じ水準までは掛金ベースで確保できるようになっているということと、目的規定で公的年金と相まって老後の所得保障を行うということです。いわば代替とまで言わないけれども、公的年金との補完的な位置づけというのはある程度明らかであろうと考えております。

 

○森戸座長 資料に関してのご質問は、いま駒村委員がおっしゃったように、前半を議論する場合でも、後半の話が関係する部分があると思いますので、ここがわからないということがあれば先にお聞きになっても結構です。

 

○藤井委員 資料の確認のみということでお伺いします。5頁の資料で、確定拠出年金のほうで「他制度からの移行なし」というところが39%上がっているように書かれています。おそらくこの資料は、過去分に関する資産の移換があったことについて、それを分類しているものではないかと思うのです。制度間の移行という、設計上の発想からすると、過去分の移行がない場合であっても、掛金の社内的な位置づけというか由来というか、制度上の由来ということを考えると、このうちの大半が退職金又は適格退職年金などからの移行ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 確かに統計上の今回の整理は、過去分の移換ということで整理しております。もっと遡って実態例を踏まえれば、そういう整理も可能かと思います。

 

○小野委員 2つ質問させていただきます。11頁の資料10における、大多数の民間サラリーマンの標準給与の65万円というのは、どのような根拠になっているのかということが1点です。もう1つは、給付水準の関係になってきてしまうのかもしれないのですが、昔、若かりし頃厚生年金基金の決算再計算というのをやっていたときに、課税厚生年金基金というのは非常に少なかったわけです。それこそ10数基金とかそれくらいのものだったと思うのです。これが、当時2.7倍のときだったので、これが3.23倍になった現在、課税されていないのでわからないと思うのですけれども、おおよそ給付水準だけ見ると、現在の制度というのは、終身などは除いて給付水準だけで見ると、非課税の枠内に入っていると考えてよろしいのでしょうか。感覚的なことで結構ですけれども。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 大多数の民間サラリーマンの給与ですが、当時の給与実態の調査に基づいて、概ねサラリーマンの9割がカバーできる水準ということで65万円を設定しております。2点目は厚生年金基金についてということでよろしいですか。

 

○小野委員 いまの厚生年金基金とか確定給付企業年金の給付水準のざっとしたイメージです。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 まず、かっちりした統計資料はございませんので、おっしゃるとおり感覚ということになるわけです。厚生年金基金については、実態としては平均的な給付レベルを見ましても、加算部分は2万円強ぐらいだったと思います。一方で、一応理論上の望ましい水準は7万円ぐらいですので、実態上あまり引っかかるということはないという水準かなと思います。

 一方で確定給付企業年金については、これからいろいろ調べたいと思っているのですが、給付水準に関するかっちりとした統計がありません。つまり、平均年金額などがあるのですが、有期とか終身といったものが分類されておりませんので、いわば一時金現価の換算がいまのものではできないわけです。そこはよくわからないというのが現状です。ただ、確定給付企業年金は単純に給付レベルだけ見ますと、厚生年金基金より結構厚みのあるものもありますので、そういう意味では一概に引っかかるとか引っかからない水準ということは、少なくとも現時点では言えないかと思います。

 

○野村委員 いまの11頁にも、ほかの頁にも何度か出てきたと思うのですが、水準の話になってしまいます。退職直前給与の6割という数字が何度か出てきたように思うのです。なぜ6割なのかという部分がわかったらお願いいたします。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 これは、昭和50年代から昭和60年代にかけて、研究会等でもいろいろ議論しています。そういう意味では決めになるわけですが、もともとは6割から7割程度と。それは、消費支出も、実際の支出としても現役から引退しますと、支出自体も下がりますので、そういう意味では現役と同じだけの所得は要らないだろうということです。

 そういう消費支出は、18頁に消費支出の実態として当時の資料を付けております。平均的には、70歳以上で21万円、60~69歳では全世帯で21万円、勤労者世帯で24万円ということで、当時の水準で、6割確保が27万円です。そういう意味では平均的なところのかなりの部分が6割ということでカバーできるだろうということがあります。

 あとは、現実的、あるいは実態的な話では、当時のもともとの特別法人税の非課税レベルも、国家公務員の共済年金の水準自体も、退職所得の6割というところがベースになっていますので、そういうレベルにあったということが背景にはあるということです。

 

○森戸座長 元をずっと辿っていくと、国家公務員の年金の水準が6割を前提に始まっていて、そこからずっと来てということですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 おっしゃるとおりです。

 

○森戸座長 国家公務員のはなぜ6割で、それがどういう正当性があるのかというのは、言ってみればわからないのでしょう。そう言ってはいけないのですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 国家公務員のレベルを、全然別の消費支出のレベルで捉えたのが、これは国家公務員がそうだということではないのですけれども、こちらの観点で捉えたのは支出も下がるから6割程度でいいだろうということだろうと思います。

 

○森戸座長 もちろんそうなのですけれども、計算で出ているとか、あるいは国としてそもそもそうだということが、すごく理論づけされて決まったということではないのかなと。おそらく野村委員もそういう質問だと思うのです。ただ、ずっとその基準で特別法人税なり、基金の給付水準なりがそれを基準にして決まってきていることは確かですけれども。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 おっしゃるとおりです。国家公務員が、なぜもともと退職所得の6割だったかというのは調べてみようと思います。

 

○森戸座長 何か説明があるかもしれないですね。それは調べていただければと思います。1、2と分けてここで議論ということにしたのですが、結局ここで説明していただいたことは、企業年金制定の経緯ということです、もともとは退職金制度というものとの関係は切り離せないだろうということは、経緯からも明らかなわけです。ただ、検討していくと確定給付企業年金法、確定拠出年金法では老後所得の保障という観点が目的規定にも入っていますので、公的年金と相まって補完してということが入ってきていることは確かである。その辺りが制度の元はそうだけれども、徐々に内容は、法律の中身では少し変わっているというか、少なくとも確定給付企業年金法、確定拠出年金法では老後の所得保障だということを言われていることは確かなわけです。それが経緯ですから、企業年金の性格はまさにそういう段階で、この性格をどのように考えるかだと思います。

 適格退職年金と厚生年金基金は明確に性格が、税制上の扱いも違っていて、ただ特例適格退職年金が厚生年金基金並みの課税だと。それは特例適格退職年金が厚生年金基金に近いような給付設計をしているからだというところからすると、一応公的年金に近いものかどうかという分け方をしているのです。公的年金に近いのなら公的年金と同じような扱いにしようと。適格退職年金とかはそうではなく退職金からきているようなものだから、特別法人税もかけるしということなのだけれども、これが確定給付企業年金法、確定拠出年金法と一応衣替えして新しい法律ができて、それでどう考えるかという話を議論するということだと思います。

 ですから、結局1、2の話も最後の話も、全部5の話とつながってきてしまうので、分けて議論しろというのもなかなか難しいかもしれませんが、徐々に時間が経つにつれて広げていきますが、1、2の辺りで何か議論されたいポイントはありませんでしょうか。

 

○藤井委員 先ほどは質問だったのですが、議論ということですから質問と兼ねたようなことで申し上げます。いろいろ出てきますが、例えば6頁、当時、適格退職年金を退職金の年金化という性格が明確であり、独自の税制上の適格要件が設定されていると位置づけされていると思うのですが、そこのところが非常に重要なポイントだと思います。一言でいうと、適格退職年金における特別法人税の性格は、優遇なのか優遇でないのかという点が重要だと思います。ここに書いてある内容を素直に読めば、適格退職年金が特殊な形を採っていることから、その特殊性に着目し、しかし均衡を逸しない税制を工夫して作ったのではないかと思うのです。そうであれば、特別優遇する発想は入り込んでいないので、特別な計算方法を用いているにすぎないのではないかと思うのですが、その辺りの経緯がどうなのか、その辺について議論してみたらいいのではないかという気がします。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 まず個人に対する給与所得の課税という観点からは、単に繰り延べているだけなので、全く優遇ではなくて技術的に形態を変えているだけだと思います。ただ、1つ、企業が掛金を出した段階で損金算入できることが、現在特に退職金制度においては引当金は実際に払ったときしか損金算入できない仕組みになっていますので、入口の掛金段階で損金算入できるのは、法人税的というか、企業にとってはメリットがあるのではないかと思います。

 

○藤井委員 当時退職給与引当金の繰入れに関する税制上の損金はなかったのですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 当時あったかどうかはわかりませんが、少なくともここ何年かの退職給与引当金の廃止の話があるまでは、引当金制度はありましたので、そのような意味では退職給与引当金の損金算入とのバランスも考慮して損金算入すると。企業年金だけの独自の優遇ではなくて、退職一時金とのバランスを踏まえた損金算入という意味での、バランスのとれた優遇という形ではなかったかと思っています。ただ、現時点でみますと、退職給与引当金については損金算入が認められていないので、一時金との関係からすると、いわば少し出っ張っている形にはなろうかと思います。

 

○藤井委員 それも優遇かどうかはやや疑問で、損金算入のどの年度で理解するか、同じ損金額であれば早いほうが優遇だという意味とすれば、確かにそうかもしれないけれども、いずれにしても出ていくものは損金であることは特別疑問はないわけでしょうから、あるとすればせいぜいその程度ぐらいではないかということでよろしいですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 おっしゃるとおりです。

 

○藤井委員 そうであるとすれば、逆の言い方をすれば、わずかにその程度のことなわけですから、それについてとやかく、さほどの規制を加えることに均衡があるのかどうかの議論が必要ではないかという気がします。特に確定拠出年金では上限さえ設けて、非常に厳しい取扱いをしているわけですが、そのよって立つ源は何なのかが重要なポイントなのではないかと思います。

 

○森戸座長 いまの前半のご指摘は私もそのとおりだと思います。別に制度全体としては特別法人税をもし取るのであれば、税制上何かすごく優遇していることはない枠組みでできています。藤井委員が「であれば、さほどの」とおっしゃったことを、もう少し説明していただけますか。

 

○藤井委員 これは議論の切り口になればですが、特別法人税を取るような特殊な税を適用する場合と、そうではなく通常の税を適用する場合の区別が問題であって、どちらかをすごく優遇しているわけではないのですから、問題はどちらの税制を用いるか区分点が問題になるにすぎないのではないかと思うのです。そうすると、その区分点をどのように捉えるかで、例えば確定拠出年金でいえば掛金に上限がありますと、その上限は上限以内であれば特別法人税を適用する区分点です。それを超えるものであって、かつ確定拠出年金とほとんど同じようなものを、確定拠出年金法に基づくことなく勝手に事業主がやることだって、理屈上はあり得るわけです。その場合にはいわゆる特別法人税の形の税制を適用しないとなるのだと思うのです。さほどにメリットを与えていないとすれば、そこにそれほど強い違いを設ける謂われがあるのかどうかという気がしています。

 

○森戸座長 ご指摘は税制をどう変えるかの問題として、現行法上も、例えば確定拠出年金でいえばいまのような税制にして、特別法人税は凍結されていますが、かかるような形にしていることの意味が上限までの話ですね。それがあまり薄いのではないかといことですね。

 

○藤井委員 そのような感じがしますね。だから上限を設けることであれば、特例適格退職年金がそうであるように、あるいは厚生年金基金における非課税枠がそうであるように、何らかの積極的な税の枠組みがあればこそ、その枠が生ずるのではないかという感じがします。

 

○森戸座長 それは確かにご指摘のとおりだと思います。ほかにこの点に関連していかがでしょうか。どうしても最終的には全部税制の話に絡んでくる感じもしますが、時間の経過とともに少し広げまして、3、4辺りも、受給権の保護、水準の辺りも含めて議論していきたいと思います。

 事務局に1つ質問ですが、9頁の(3)の(1)確定拠出年金の話で、中途引出し禁止、60歳からでないと受給できないなど、年金性の担保を図るための要件が課されるとともにと、この場合の年金性という意味はどういう意味で使われているのですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 確定拠出年金導入時は、通常の貯蓄と区別して年金であることが必要だろう。貯蓄であれば、課税の関係は別にして、いつでも下ろせるのが、年金であれば中途で引き出すのではなくて、老後に引き出して使うのが年金だろうという要件です。

 

○森戸座長 要するに老後の所得保障のための制度だという性格を、年金性とおっしゃっていますね。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 はい。確定拠出年金の議論はまた次回にと思っています。

 

○森戸座長 わかりました。ほかにいかがでしょうか。

 

○野村委員 8頁に確定拠出年金と確定給付企業年金の目的があります。先ほどの説明ですと「公的年金の給付と相まって」の部分を強調しておられたのですが、その前の「自主的な努力を支援」という文言も実はポイントかなと思っており、この自主的な努力の支援とはどういう内容なのか。いまの特別法人税の性格を考えると、特段税制優遇を意図しているわけではないようだと。いまは凍結されていますが、いずれ撤廃しない限りはこの確定拠出年金も確定給付企業年金も戻ってくる特別法人税の対象です。そう考えますと、この自主的な努力を支援するのは、税の形で支援する意味があるのかという疑問もあって、自主的な努力を支援するというのはどういうことなのでしょうか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 実態的には税の話も含めてですが、税の話に限らず、例えば確定給付企業年金についていえば、受給権保護のためのいろいろな積立金規制やいろいろな規制が入っているわけです。そのような意味で年金としてきちんと受給できるように、枠組みも含めて自主的な努力を支援する意味合いだと理解しています。

 

○森戸座長 この場合の自主的な努力をする主語は何なのですか。個人と事業主の両方ですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 最終的には国民のということです。

 

○森戸座長 国民の自主的な努力ということですね。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 ええ、国民の高齢期における所得確保に係る自主的な努力の支援です。

 

○森戸座長 いま課長の野村委員の質問に対するお答えもわかったような、わからないようなというか。結局おっしゃるように税制上そんなに優遇がないのだったら、支援しているのは何か頑張れよと言っているだけかということですよね。

 

○野村委員 アメリカのその制度を調べているときに、タックス・インセンティブという言葉が出てきて、それを税制優遇と訳することが多いのですが、まさに税の優遇をもって頑張って老後のために貯蓄しなさい、資産形成しなさいというロジックがとても強いように思えたので、どう考えていいのかと思った次第です。

 

○森戸座長 先ほどの説明だと、少なくとも税制上かなりの優遇をしているのだからという意図ではないということですよね。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 優遇かということは、先ほどのように少し価値判断が入りますので難しいところですが、一定の税制上の措置を講ずることはいずれにしても特別なというか、企業年金として税制上の措置を講じていますので、そういった措置も含めてということにはなろうかと思います。ただ、一方で現在の支援で十分かどうか、あるいは均衡がとれているかどうかは、この後ろで論点として提示させていただいています。

 

○小島委員 いま言われた8頁の確定給付企業年金、あるいは確定拠出年金のところで、目的を見ますとほとんど同じで「自主的な努力を支援し」ということで、あとは「公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上」ですので、老後の生活保障という位置づけを確定給付企業年金も確定拠出年金もしているので、運用、あるいは指図の違いだけという整理の仕方もできると思います。そこはいまの確定給付企業年金、確定拠出年金は、基本的に性格としては同じような性格に法律上は位置づけられるのだろうと思います。

 そこで、その前のいままでの適格退職年金と厚生年金基金との違いでいえば、6頁にあるように、適格退職年金は退職金の年金化、いわば資金の平準化というところが主な目的に作られている、しかし厚生年金基金は公的年金の一部を代替していると。その適格退職年金と厚生年金基金の中間ぐらいに位置するのが特例適格退職年金で、ここの文章では中小企業等で基金が設立できないような中小企業に対する支援という形で、厚生年金基金の代替・補完的な位置づけになるという話です。そこが税制上の多少色合いが違うということ。公的年金の代替あるいは補完については一定の水準、制度設計に終身も入れろという縛りがあることによる公的年金との関係での位置づけ、代替か補完かという性格のところが違ってくるのだという整理なのだろうと思います。

 そういう公的年金との位置づけ、公的年金との関係で代替・補完といっても、その中には当然公的年金ですので老後の所得保障という性格を持っています。現在の確定給付企業年金、確定拠出年金は自主的な努力に支援も加わっていますが、やはり基本は公的年金と相まってということなので、老後の所得保障の性格を持っている、だからこそ一定の税制上の優遇を付けている。制度上はそのような整理だろうと思います。とりあえず私の頭の中ではそのように整理した程度です。

 次の15頁の課題、受給権保護、欧米でいうベスティングとの関係で、ここは企業年金の制度上の性格づけ、公的年金との関係での制度上の性格づけだったのですが、このベスティングの考え方は公的年金との関係もありますが、それよりは退職金、賃金との関係というもともとの原資との関係で、受給権保護が出てくるのではないかと思います。

いわゆる日本の企業年金の原資はもともとは退職一時金で、退職一時金とは何かといえば、労働組合的にいえば賃金の後払いで、原資はまさにすでに労働によっての対価を繰り延べて企業年金にしていることなので、それはすでに労働の対価として確定している。

それを繰り延べしているところなので、そこは完全に保障しろというのがこのベスティングの考え方なのだと思います。

 そういう性格のものだと整理をすれば、賃金なり退職金との関係でいえば、まさにそこは性格は全く同じだと思いますので、そういう意味では日本の企業年金についても賃金との関係、あるいは労働対価との関係で整理をすれば、すでにそれは完全に確定されたものという整理ができるので、100%保障が前提ではないかという理解ができる。これはいまの欧米の企業会計、あるいは年金会計はそういう立場に立っているのだと思います。

 それも現在は日本でも企業年金会計上は、賃金との関係でいえば、企業年金に対する性格としての位置づけは欧米的な考え方、そういう立場になってきています。そのような整理ができるのだろうと私はかねがね理解はしているのですが、それを中で今後日本の企業年金の受給権保護といった場合に、どこまで過去すでに確定した分と将来的な給付との関係をどう整理するか、議論でどのような形で整理されるかだと思います。

 

○森戸座長 いまの点ですけれども、確かに労働の対価であることは日本でもアメリカでも明らかです。そこはただ労働の対価だからというと、両刃の剣ではないですが、労働の対価だから絶対確定するのだという言い方もできるでしょうけれども、労働の対価は契約で決めればいいわけで、それをどうすればいいかは究極には労使自治で契約自由で決まるのだ、後で奪ってもいいのだ、契約ならいいのだというようにも言えると思うので、両方あると思うのです。それは法的にどう決めるかという話になってしまうと思います。

 私の理解ではアメリカのエリサ法も労働の対価だという考え方もあるでしょうけれども、やはり基本は、なぜベスティングしたり支払保証があったりするかというと、老後の所得保障のお金だから、悪いことをした人にも老後はあるのだから奪ってはいけません、という発想はアメリカ法にも絶対あると思います。ベスティングの裏にあるのは、労働の対価だから奪ってはいけないという考え方だけではないと思います。

 その証拠には、アメリカでもエリサ法の税制優遇を超えたような高給なランクの高いような従業員に対する給付は、別にこのようなベスティングやバッドボーイという規制がなかったりしますので。それは要するに最低限老後の所得に必要な部分は確保してねと。そのためにはベスティングして、ここは確保させる、最終的には支払保証まであるという枠組みがいいかどうかは別として、老後の所得保障的な考え方が、アメリカでもヨーロッパでもあるのではないかと思います。賃金であることだけ、労働の対価だからというだけではないのではないか。

 先ほど申し上げたように、賃金であるというのは両方あり得るので、賃金だったら労使が決めればそれで国が文句を言うことではないだろうという意見も出ると思います。そのような整理もできるかと。ただ、小島委員がおっしゃった点、結局どのような性格づけをするかに、当然労働の対価であること、自主的な努力とはそういうことだと思いますので、そこにもかかわってくると思いますので、そのご指摘も踏まえて議論したいと思います。ほかにいかがでしょうか。

 

○加子委員 9頁と12頁は同じことなのですが、私ども実際に実務をやっていますと、こういう理屈は大変困ったと思っています。というのは、「適格退職年金より規制の厳しい確定給付企業年金が税制上は適格退職年金並みの措置に留まっているので、規制が厳しい分、確定給付企業年金に税の優遇を与えよう」といった考え方になりますと、我々は特別法人税撤廃などの税の措置と規制緩和の両方を申し上げていますから、いいとこ取りかということになってしまう。しかしながら、適格退職年金特別法人税物事は必ずしも二者択一では実際には起きていないと思っています。

 公的年金の上乗せか補完かといった議論についても、理屈上はそのような整理になるのでしょうが、我々が企業年金制度を作るときに、公的年金の補完をしようと考えて企業年金を、例えば私どもには確定給付企業年金がありますが、導入しているかと言われると、率直に言ってそうでもありません。あくまで、退職金の一部を年金で手当てしているといった認識です。いま企業では、特に退職給付会計基準が変わってから、年金そのものの財務インパクトが非常に大きいものですから、私どものところも代行返上し、キャッシュバランスプランを導入したといった流れがあります。

 したがって税と規制との関係が、「公的年金の補完として国の代替をする企業年金は、税の優遇を措置する代わりに規制もしっかりかけなければならない」という方向にどんどんいってしまいますと、理屈とは別に、現実問題として企業年金制度を維持することは、会社としては非常に難しいということになりかねません。特に財務上のインパクトが大きい確定給付企業年金制度の維持は困難になっていくのではないかと思います。

 つまり、政策的に企業年金制度を普及させ、結果として公的年金の補完になるような方向に持っていくのだとすれば、税と規制に関しては、理屈の世界とは別に、できるだけ自由な設計ができるようにしておかないと、普及させることはできないだろうと思います。これは意見です。

 

○森戸座長 具体的に9頁で。

 

○加子委員 9頁がそのようなことを意図しているのかどうかもわからないのですが、この考え方について問題提起されているので申し上げますと、まさにそういうことなのです。規制がしっかり課されている一方で税制上の取扱いは適格退職年金並みになっていることをどう考えるかとなると、規制がかかっている代わりに税は厚生年金基金並みにしてくださいとなる。我々としては、必ずしも税と規制が二者択一となる議論ではないと考えています。

 

○森戸座長 一応ここは理屈を議論するところだとは思うのですが、それは置いておいて。別にいいとこ取りだというつもりはありませんが、結局それは具体的にどういう規制が、その規制も一応目的があるわけで、税制も規制の裏でしょうけれども、税制も何か目的があって、企業なり個人をこちらの行動に誘導するために税制優遇がおそらくあり、規制もこれはこうでないと困るから規制がかかっているわけです。その個々の規制がこれはおかしい、不必要だ、かえって企業の自主性を損ねているものは、それはそれ

で個別に見直しはしなくてはいけないと思います。

 ここでは要するに何か特別法人税を廃止するから、代わりにここを厳しくするとか、そういう取引をしている場ではありませんので、理論的に説明できればと思います。いまの流れでいけば、特別法人税がかかっている以上は、そもそもいまのところそれほど税制優遇でないのではないかという話になっていますから、それでいけば別に特別法人税を廃止した分、何か規制を強くするということがイコール、そのようなことはいま話には出ていないと思うのです。ですので、おっしゃる趣旨はよくわかりますので、具体的にどのようなルールがあるべきかというところで、個別にご意見をいただければと思います。

 

○島崎座長代理 先ほどから聞いていて感想めいたことも含めて申し上げます。結局企業年金については、他の国では一定の要件を満たしている場合には、企業年金を強制設立し、強制的に給付をしなければいけないという立て方をしているところがあるにしても、日本の場合は少なくとも設計段階では自由なわけです。そうすると、企業年金を推進していこうとすると、その推進力となるのは規制ではないわけですから、税制上の優遇措置しか現実的にはあり得ないと思うのです。もちろん公的年金を補完するものとして、安全性や確実性の確保の要請上から規制されることがあったとしても、基本的な推進力としては税制上の措置ということしかないと思うのです。

 その場合に、税制と補助金とは全然違うもののように思われるかもしれませんが、税制上の優遇措置をすることは、タックス・イクスペンディチャーという考え方があるように、一種の補助金を出しているのと同じなわけです。そうすると、それに見合うだけの公共性や政策目的との適合性があるのかということとの関係で詰めていく必要があろうと思います。

 その意味で、森戸座長が先ほどおっしゃった、そもそも企業年金の政策的な目的をどう見い出すかといったときのメインストリームは老後の所得保障になるのだろうと思います。そうすると、老後の所得保障の意味をもう少し細分化して考えてみたときに、年金ドグマと言われるかもしれませんが、長生きするリスクを分散する意味では、一時金よりも終身年金化したほうが好ましいという考え方が当然出てくるわけです。もっとも、それをドグマだと考えるかどうかで、いくつか議論の枝葉は分かれるのだろうという気はしますが、1つの考え方としては十分あり得ると思います。

 もう1つは、何と比べるのかということです。賃金について、例えばA社とB社で賃金水準が違うからけしからんという議論はないのだろうと思うのですが、企業年金に税制上の優遇措置をするときには話は違ってきます。つまり、そのような制度もない人も、観念的なことを言えば税金を払っているわけですから、優遇措置に見合うだけの公共性があるかどうかということがポイントだということを申し上げたいのです。先ほどの議論を聞いていて思ったのですが、何に比べて優遇しているかどうか。つまり賃金に対してなのか、退職金に対してなのかという議論を基本に据えるべきだろうと思います。

 日本の企業年金は退職金を年金化したという沿革的な理由もあるわけで、多分に退職金を引きずっている部分が一方ではある。しかし、それをさらにベクトルをもう少し年金、あるいは公的年金に準じたものにしていく方向を取るときに、そこはいまの税制上の退職金に対する優遇措置に比べて、さらにもう少し上乗せするかどうかという議論はあるかもしれないし、もっと遡って、いまの退職金に対する税制上の優遇措置まで突き詰めて考えると、なぜそこまで優遇しなければならないのかという議論も出てくるかもしれません。どこのところを基準に優遇の議論をするのか、遮断するかということは結構難しいという気がしています。

 

○森戸座長 いま最後におっしゃった退職金の税制の話は。

 

○島崎座長代理 年金化されていない一般の退職金に対しても、いろいろ税制上優遇措置はあります。例えば給付時の特例にせよ、そもそも退職金自体が一定の優遇措置がとられているわけです。優遇措置というかどうかの議論はあるかもしれませんが。

 

○森戸座長 そこなのです。退職金の税制も優遇と一般に言われますが、一応あれも理由があって、ああいうようになっているわけです。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 33頁に「退職所得控除の概要」の資料があります。これは計算式だけなのですが、具体的には資料30に退職所得、収入から退職所得控除額を引いて、さらにそれを2分の1にすることで、概ね計算すると2,000万円ぐらいなので、ほとんど課税所得がない状況になっています。趣旨、目的ですが、老後の生活資金が要るだろうというところで、特別な扱いをしているのが導入当初の目的のようです。

 

○森戸座長 やはりそれは事実上終身雇用的なものを前提に、長く勤めて辞めるときにまとめて一度にもらう。でも、それを普通の所得と同じように課税すると、老後の生活に障るからという趣旨だということですかね。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 そうです。終身雇用のところでいまカーブが実際にあるのですが、そこ自体については議論はあるところですが、いずれにしてもかなり高齢で辞めたときに、一時金で老後の事実上いろいろな支出を賄うための優遇措置だと理解しています。

 

○森戸座長 島崎座長代理のご指摘は、この退職金の税制と企業年金の税制とを比較してということですか。

 

○島崎座長代理 つまり、先ほどの藤井委員のご指摘に関して言えば、大してさほどの優遇措置はしていないのではないかというご趣旨の発言だったと思うのですが、それは一体何に比べておっしゃっているのか、少し疑問があったものですから申し上げたのです。

 

○藤井委員 まさにおっしゃるとおりだと思います。ただ、私は退職金の税制にまで遡って議論するつもりがあって申し上げたわけではなくて、それをベースとした上で企業年金をどう置くかでお話をしたように思います。というのは、ここでも必ず議論からやや漏れがちなのですが、企業年金は積立てをしているだけでも退職金と比べれば受給権の保護に大いに資するところがあるわけで、それだけでも推進する理由に相当足りるのではないかと私は思っています。それに加えて何に規制を加えるかということと、税とのバランスがどうかということだと思います。

 話を元に戻しますと、エリサ法でもそうですが、税の優遇に該当しない場合であっても、さすがに労使で老後保障の約束をする以上は、少なくともこのぐらいは守ってくださいという範囲もあると思うのです。加えて税の優遇をする以上は、これは守りなさいという2段構えのようなことではないか。社外に積み立てるだけでも、すでにその積立方法がどんなにいい加減であろうとも、積み立てていることだけでも、企業の資産から遮断しているだけでも、ある程度の税制上の措置があってもいいのではないかと思うわけです。適格退職年金の本質を考えてみると、特殊な税制を用いている理由は、ほとんどそこに尽きるのではないかという気さえします。

 それはそれとして、話がまた元に戻って申し訳ないのですが6頁に戻ります。これも1つの質問を含む意見で、特例適格退職年金が制定された当時に興味があるのですが、当時どのような社会的な動きの下に特例適格退職年金が出てきたのかを確認したいことと、確定給付企業年金が生まれたときに、どのような経緯があったのか。特例適格退職年金の要件を満たせば、税の観点からすれば特別法人税を適用しないほどに内容が十分であると、税の観点から当時決まったものだと思うわけです。

 そのときの税制の立て方の問題だと思うのですが、概念規定をしていたとすれば、その概念に該当する新たな制度が生まれた場合には、自ずとそれについても同様の税制を適用することは、特別な疑問点はないと思うのです。しかしながら、確定給付企業年金が制定されたときには、特例DBなどが特別議論されたかどうかはわからないのですが、それが現時点では存在していない。概念規定が税の観点であったとすれば、その後に参考的に列挙しているものの中に、確定給付企業年金をただ列挙すればいいだけのことで、どうしてそれがそうならなかったのかという点が1つあります。

 加えて個人の意見ですが、終身がどれほど重要かという議論もしてみたらいいと思うのです。先ほどの意見の繰り返しですが、社外積立てをして一定の要件を満たすだけでも相当に優遇して、それを税のなにがしかの恩典を付けてまでも推進するほどの意味がないのではないかという気はします。

 

○森戸座長 事務局から、現在特例DBはなぜないのかというご説明をお願いします。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 まず、特例適格退職年金ができた背景は、いま手元に資料がないのですが、推測するに当時は厚生年金基金と適格退職年金しかありませんでしたので、中小企業を中心にもう少しかっちりした中小企業向けの企業年金がほしい。

そういう要望がおそらくあって、当時の厚生省と大蔵省とで研究会を設けていろいろ議論した結果、このような仕組みができたという経緯は承知しています。確定給付企業年金については制定当時の資料が手元にないので定かではありませんが、少なくとも特例的なものをどうこうという議論自体はされていないのは事実です。もともとは厚生年金基金の代行返上も含めて、純粋な企業年金を作る目的も背景にあって作ったものなので、当時からおそらく背景としては特例適格退職年金並みのとか。少なくとも事務方の案では、確定拠出年金については特別法人税非課税で、要求省庁は出したけれども、結果的にはいろいろな経緯があって特別法人は課税となり、ただしばらくは凍結という結論になった。その後、確定給付企業年金法ができたということです。おそらく性格としては、確定拠出年金と確定給付企業年金とで基本的には純粋に代行部分は持たないという意味では同じレベルのものであるということで、確定拠出年金と同じような整理に当時はなったということではないかと思います。

 

○藤井委員 勝手に整理をすれば、その点は十分な考慮が漏れていたのではないかという気がします。いま現在考え直したときに、終身にこだわる必要があるかどうかは別途議論はあるとした上で、現実おかしなことが2点起こっています。1つは厚生年金基金が代行返上した場合、返上した結果、返上したものについては国から支給され、返上しなかったものは丸々権利義務を移転した確定給付企業年金において、国の年金と合計すれば従来と全く寸分違わぬ給付をするわけです。しかしながら税の恩典を受けないこととなるという点。もう1点は特例適格退職年金を実施している会社が、適格退職年金が法律上なくなるので、やむなく確定給付企業年金に移行した場合、何も中身が変わらないのに課税がされる。場合によっては、受給資格などに関してはより一層確定給付企業年金のほうが厳しいので、それに合わせたところ課税されることとなるということで、少なくとも外見上少し不思議なことが起こっていることとして2点があるかなと思います。

 

○森戸座長 確かに特例適格退職年金の話は少し、その問題は現にいま起きています。

確定給付企業年金法ができるときにもちろんいろいろ考えられたのだと思いますが、適格退職年金の後釜で、ある程度引き継がなければいけないというのがあったから、確定給付企業年金法をいまの法律以上に厳しい特例適格退職年金並みにしようという話にはならなくて、結局適格退職年金を引き継げるようにその辺の規制で落ち着いたと理解してはいるのですが、そうすると特例適格退職年金がある意味浮き上がってしまった感じにはなっていますね。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 確定給付企業年金法の制定時の税制改正の扱いについては事務局で調べまして、次回にご報告させていただきます。

 

○森戸座長 お願いします。あと15分ぐらいなのですが、結局目次にあまり関係なく、1から5まで含めてすでに出ていますが、税制を含めて議論していただきたいと思います。小野委員どうぞ。

 

○小野委員 先ほど来から税制について優遇なのかどうかという議論がされているかと思います。基本的に優遇しているかどうかは、異なる時点に発生するお金の評価の話になるわけなので、そこで利子率をどのように設定するかによって、価値の判断はかなり違ってくるのだろうと思います。いわゆる包括的所得課税と支出課税を評価するときに、基本的には課税前利子率で割り引くことをやれば、大体同じなのかという話とか、あるいは積立時に収益に課税する話になると、これは二重課税になるとか、という話なのだろうと思います。それの大前提は、基本的にそれぞれの限界税率が等しいときです。その前提の下にお話をしているわけですが、ご案内のとおり現役の従業員と年金受給者との間の限界税率の違いを見ると、それなりの優遇という評価があってもいいのではないかという気はします。

 ただ、注意しなければいけないのは、年金受給者にかかる課税は加入員とか加入員であった者に対する課税であって、確定給付企業年金の場合の特別法人税は特別法人税を支出することによって、結果として企業の負担が増えると、ある意味綱引きの関係みたいなものもあるだろうと。この辺の税制の優遇がある程度あったとすれば、そこのハードルを税制上どこに設定するか。いろいろあると思うのですが、例えばいまの4万5,000件の適格退職年金をなるたけやめさせないように、退職後の貯蓄として存続させるように、解約しないようにするところに比重を置くのか。あるいはもう少し確定拠出年金として残し、できれば確定給付企業年金として残したいとか。あるいはできれば終身年金にしたいとか。いろいろなハードルの置き方があると思うのですが、そのどの水準に置くかが税制の議論では1つポイントになってくるのではないかと思います。

 

○森戸座長 いまの前半のお話は簡単に言うと、年金をもらっている世代の人のほうが、全体の所得は少ないはずだから、後ろに課税自体が繰り延べられるだけでも、事実上優遇になり得るのではないかということですか。

 

○小野委員 税務当局からすれば、そのようなことになるのではないかということです。

 

○森戸座長 たとえ特別法人税を取っても、一応大まかに言えばそういうことになるのですかね。

 

○小野委員 特別法人税は運用時の課税ですので、それがあるのは理屈からいうと、価値の基準として課税前利子率を適用した場合には、それは二重課税になってよくないという話になるのではないかと思います。

 

○森戸座長 後半におっしゃったことは、そこまでおっしゃったかどうかは分かりませんが、例えば老後の所得保障のために、先ほど藤井委員がおっしゃったこととつながりますが、終身で外部に積み立てていることが非常にいいことだとしたら、これには非常に税制優遇はあるけれども、積み立てているだけでも少しは優遇があるとか、例えばそういうグラデーションが付くようなイメージというか、どこに落とすかを議論しろという話だと理解していいですか。

 

○小野委員 そうですね、基本的には日本の企業年金は任意設立ですので、その設立を促す手段としての税制措置をどの水準のハードルにするかなのだろうと思います。当然それは特例適格退職年金と似たような特例DBということを議論しても、それはそれでいいかと思います。もっと端的に中途脱退で一時金を給付してしまうような確定拠出年金制度も、それはないよりはいいですということであれば、それはそれなりの整理かと。どこに水準を置くかという問題になるのではないかと思います。

 

○森戸座長 その場合にいわゆる老後所得保障の度合いに差がある場合に、税制優遇が

全く同じでいいのかどうかの話には一応なるわけですね。先ほどから何度か出ているの

ですが、私も老後の所得保障といった場合に、少なくとも特例適格退職年金か何かを見

る限りは半分以上は終身だとか、やはり終身であるのはいいことだという価値判断が、

これまでの制度の中に一応入っているとは思うのです。結局長生きリスクというか、人

はいつ死ぬかわからないので、それに備えるにはやはり死ぬまで払いますというのがい

ちばんいいだろう。それはおそらく異論がないと思うのです。他方で特に確定拠出年金

などはその辺は別にそういうものである必要はないですし、もともと退職金もそうです。

その辺りは島崎委員からも出ましたが、終身をどう考えるかは議論はしなければいけな

いという気はしています。ただ、それを老後の所得保障のための税制優遇をするならば、

絶対終身年金でなければいけないというところまで言うかどうかはまた別の問題だと思

います。

 

○藤井委員 そこについて私の考えを申し上げますと、例えば確定拠出年金の場合、終

身であることを要求するのはほとんど無意味なわけですが、現実には本人の選択にすぎ

ないわけです。終身年金というメニューが用意されている場合に、それを選択するのは

本人の勝手で、有期年金であっても別に価値に変わりはなくて、それは本人の自由です。

したがって、終身を促すかどうかは、受け取る本人に関する税の問題ではないかと思う

のです。それを用意して差し上げる企業に負荷のかかる特別法人税云々に関していうと、

それは関係ないことであって、水準しか議論の対象がないのではないかと思うのです。

 青天井で優遇する必要はおそらくなくて、青天井でない場合に限度を超えるものが同

じ器の中に混ざっている場合に、いまの厚生年金基金のように切り分けて課税部分と非

課税部分を見い出すのか。それとも税の優遇を受ける器はそもそも上限があって、それ

を超えることは一切まかりならぬ。それ以外のものは別の器でやってくださいとするの

か、というような切り口もあるかと思います。いまの確定拠出年金の場合には、とにか

く上限は超えてはいけませんとは言いながら、税の優遇はあるようにも見えるし、ない

ようにも見えるかもしれないけれども、理屈上はおそらくないのだと思うのですが、そ

うなっていると。もう少し優遇する理屈を明確化した上で限度を設けて、優遇すること

が確定給付企業年金でも確定拠出年金でもやるべきではないかという感じがします。

 

○森戸座長 それに関していかがでしょうか。

 

○島崎座長代理 私は終身年金に関していうと、先ほどの公的年金の補完なのか代替なのかということはともかくとして、年金の本質をどう考えるかの問題がそもそもあると思うのです。別に挙げ足を取るわけではないのですが、本人が終身という選択をするか、あるいは一時金の形で受け取るかどうか、それは個人の選択の話だとしても、そういうプランを提供する仕組みになっているのか、逆にいうと終身年金というオプションがあるかないかは重要な話だろうと思います。

 私が申し上げたいことは、代替・補完といっても、公的年金の部分をここまで縮小したから、残りの部分を企業年金で必ず保障しなければいけないということにはなっていません。あるいは公的年金と企業年金が合わさった形で、インテグレートされた形で給付水準を設定するほどの厳格性は持っていないので、企業年金が公的年金の補完なのかという議論はともかくとして、公共的な目的に照らしてみたときに、企業年金の要件というか、どの程度のハードルなり段階を付けていくのか。あるいは余計な段階を付けることが企業における労使の自主性をいたずらに損なってしまって、かえって企業年金の普及を妨げることになりはしないかどうか。企業年金の本質に即して、そういうことを1つひとつ詰めていく議論が重要なのではないかという気がしています。

 

○森戸座長 それはおっしゃるとおりで、まとめようと思っていたのですが、いま島崎委員に大体おっしゃっていただいたので、今日はいろいろ自由にご意見をいただきました。明らかになってきたことは、国民が老後の所得保障のための何か受皿が公的年金以外にも必要だということは確かで、そのために老後になってお金がないことにならないように、企業年金に対する税制優遇なり規制なりは要るだろうということは言えるわけです。ただ、他方で日本の企業年金が強制的にやれと企業に義務づけられているものでない以上、何か変な余計なお世話の規制をしすぎて、かえってそれならやらないと企業が思ってしまうようでは困るわけで、労使の自主性を損なわないような形でやらなければいけないと。これは両方があるわけで、結局そのバランスをどこに取るかに尽きるわけです。それは当たり前なのですが、それをどこに落とすかが大問題ですが、そこは両方を意識した上で見ていかなければいけないことは確かだと思います。

 終身の話を少しお話すると、確かに絶対終身でなければ駄目だとは私も思っていませんが、ただ、他方でそこでの議論が確定拠出年金だと終身は無理だから駄目で、確定給付企業年金や厚生年金基金は終身でも設計できるからやれとかやれるという話だと、それは技術的な理由だけみたいで、あまり理論的には説得力がない気がするのです。確定拠出年金でも確定給付企業年金でも、もしこれが同じ性格を持った老後所得保障の制度なら、それはやはり終身でなければ優遇できない筋もあるだろうし、逆に終身でなくてもある程度老後の所得保障に寄与するのでいいのだと。「公的年金と相まって」というのはその程度だということであれば、別に確定給付企業年金でも確定拠出年金でも終身が絶対ではないという切り分けになるのだと思うのです。

 だから、技術的にとか制度の性格としてそうだからというだけで、つまり、確定給付企業年金と確定拠出年金がどのぐらい違う制度なのかにかかわってくるのですが、一応理屈は何か付けなければいけないかという気はしています。

 あっという間に時間になってきているのですが、ほかに何かいかがでしょうか。

 

○駒村委員 もう時間がないので今日は議論できないのですが、25頁の特別法人税をやめて、給付時課税にした場合に、意味合いが変わってくることは次回ですか。

 

○森戸座長 本当はこの資料を全部今回議論するつもりでしたが、まだ議論が足りない部分もありますので、次回にここも議論できるような形にしていただきたいと思います。

まだ皆さんこれからというところですので、そこは是非時間を取りたいと思います。今日議論できなかった点も次にやりますが、ほかにいかがでしょうか。

 

○小野委員 1つだけ税制優遇の話の中で、非常に書生じみた意見なのかもしれませんが。企業年金の労働者への適用範囲が限られた状態であることになると、それは税制の優遇という意味では恵まれた従業員に対する制度でしかないのか、ということも指摘されかねないと思うのです。かつて、退職給与引当金制度という税制優遇措置が、あれは大企業優遇税制だということで廃止されたやに聞いております。同じように一時厚生年金基金の設立の認可基準でも、加算適用加入員の加入員に対する比率によって、基本部分の上乗せの支給率が変わっていたり、そういう時代もありました。その意味では現実問題として退職金の移行なので非常に無理だというのはわかっているのですが、適用範囲の問題は1つあるのではないかと思います。

 

○森戸座長 いまの話は現行法上は全く自分が気に入った者だけ入れるのはおそらく駄目でしょうけれども、具体的には正社員かどうか、契約社員か、そういうことで事実上加入者の範囲は決められますね。その辺りも、もし税制優遇という話ならば、そして老後の所得保障という話なら、会社が好きなように当然に適用範囲を決めていいかどうかという議論もあるというご指摘でいいのですか。そこは加子委員が何かおっしゃるのかもしれませんが、その辺りも規制をすることがいいのかどうか、その議論も当然あると思います。元が退職金だったということも含めて、どう位置づけるか議論をしなければいけないと思います。

 座長の不手際もありまして、本当は税制の辺りにもう少し議論にいくはずだったのですが、その前段階で今日初めてこういうディスカッションの機会が取れましたので、一応時間の中で皆さんのご意見もかなり出てきました。次回はわりと近い時期ですので、今日の続きも含めてになると思います。次回は第4回研究会の論点にあった「個別制度の課題」について議論していこうという予定です。それももちろんやりますが、今日残した部分も事務局にお願いして、十分議論できるようにしますので、結局今日の続きと思っていただければいいと思います。事務局から何かありますか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 1回で議論するには少し資料が多くて申し訳ありませんでした。次回は今回の続きで同じ資料と宿題関係、個別制度の課題の資料を用意させていただきます。

 

○森戸座長 よろしくお願いいたします。本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。

 

 

(照会先)

厚生労働省 年金局 企業年金国民年金基金課 企画係

(代表)03-5253-1111(内線3320)

 

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