07/04/27 企業年金研究会第8回議事録

 

第8回企業年金研究会議事録(案)

 

 

                  日時 平成19年4月27日(金)

                       13:00~15:00

                  場所 全国都市会館第二会議室(3階)

 

 

 

○森戸座長 ただいまより「第8回企業年金研究会」を始めます。初めに委員の交代に

ついてご連絡します。加子委員が4月1日付で海外に転勤されたため、後任として王子

製紙株式会社人事本部労政部長岩本泰志様に委員としてご参加いただくことになりまし

たので、ご報告します。ただ、本日は所用によりご欠席ということですので、代理とし

て前回に引き続き日本経団連経済第三本部遠藤副本部長が出席されています。本日は駒

村委員が所用により途中退席されることになっていますので、ご了承ください。島崎座

長代理は遅れていらっしゃる予定ですので、途中からご参加いただくことになっていま

す。また、私を含めて4月1日付で職場が変更になった方が委員の中に結構いらっしゃ

いますが、本日配付されている名簿をご覧いただきたいと存じます。

 それでは議事次第に沿って会議を進めてまいります。事務局から資料の確認をお願い

します。

 

○簑原課長補佐 資料の確認をします。資料として1「被用者年金制度の一元化等に伴

う企業年金制度の改正について」、2「成長力加速プログラム」、3「投資教育において加

入者が求めている情報の内容について」、4「確定拠出年金における運用商品の除外の実

績について」、5「企業年金のリスク管理について」、参考資料として先ほど座長からお

話のありました委員名簿とオブザーバー名簿を配付しています。落丁等はございません

でしょうか。

 

○森戸座長 ありがとうございました。4月13日に閣議決定され、同日に国会に提出さ

れた「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律

案」の中の企業年金改正にかかわる部分、「成長力加速プログラム」および前回の研究会

でご指摘のあった事項について、事務局からご説明をお願いします。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 ご説明します。資料1です。「被用者年金制度の一

元化等に伴う企業年金制度の改正について(主な改正事項)」です。先般、国会に提出さ

れました一元化法に合わせて、その中で企業年金制度についても若干の改正事項が入っ

ています。企業年金制度共通の改正事項です。一元化に伴うものですが、今回の一元化

に伴いまして、厚生年金被保険者の中に公務員も含まれるようになるわけですが、現在、

厚生年金被保険者につきましては、自動的に企業年金制度の加入対象となっています。

今回、厚生年金被保険者に公務員が入ることになりますが、公務員につきましては、従

前どおり企業年金制度の対象としないための、加入対象に係る規定の整理を行うもので

す。

 2番目以降が、これまで税制改正関連等でご紹介した事項です。2の(1)税政改正関連

ですが、これは平成21年4月施行を予定しています。1つが企業型確定拠出年金の資格

喪失年齢の引上げです。現在60歳で一律資格喪失になるわけですが、高齢者雇用に対

応しまして、企業が60歳から65歳の間の資格喪失年齢を規約で定めた場合には、60

歳以降も引き続き加入対象として掛金拠出ができるようにするという内容です。

 2番目が中途脱退要件の緩和です。企業の退職者について個人型に移換した後、2年

間継続して掛金拠出をせず運用指図を行った場合、資産額25万円以下等の要件を満た

す場合につきましては、個人型からの脱退を認めるという内容です。

 その他ということで、平成20年4月施行を予定していますが、2点あります。この2

点は、先般この研究会でもご議論された内容等を踏まえまして、今般法律に盛り込んだ

ものです。1点目が運用商品の除外に係る手続緩和です。現在、運営管理機関あるいは

事業主が運用商品を除外する場合には、当該商品で運用している方の個別同意が必要と

なっていますが、なかなか個人情報等の観点等もあり、個別合意が事実上とれないこと

などを踏まえまして、労使合意等による手続を経た場合には運用商品の除外を可能とす

るという内容です。

 2点目の確定給付企業年金です。現在、年齢につきましては60歳から65歳の年齢到

達時、規約で定められるわけですが、退職につきましては50代の退職に限られていま

すが、60代前半の雇用促進が図られることを踏まえまして、60代前半の退職時に年金

支給することを可能とするという内容です。

 続きまして資料2です。今週水曜日に経済財政諮問会議におきまして、「成長力加速

プログラム」が諮問会議として決定されています。その紹介です。いくつか柱がありま

すが、この中の成長可能性拡大戦略という中で「貯蓄から投資への加速」という項目が

あります。確定拠出年金についても、貯蓄から投資への加速、言わば金融資本市場改革

の一環として米国等の例を踏まえまして、確定拠出年金を通じた投資促進の観点から、

いわゆるマッチング拠出や従業員の個人型年金への拠出制限の緩和を検討することが決

定されています。経済財政諮問会議におきましては、民間議員から4月17日にこうい

った内容のペーパーが提出され、それを踏まえまして検討ということで、諮問会議とし

て決定されました。

 資料3、4につきましては、前回の宿題事項です。1点ですが、「投資教育におきまし

て具体的に加入者がどのような情報を求めているか」と、こういうご質問、ご指摘があ

りました。NPO法人の調査、昨年10月の調査結果ですが、上のほうに左側の1~3を

見ていただきますと、退職給付の説明、DCあるいは離職、転職時の手続の説明など、3

割から4割程度は基礎的な制度の説明をしてほしい、導入時教育をもう少し丁寧にして

ほしいという内容がありました。

 一方で右側のほうですが、12~14を見ていただきますと、主な金融商品の種類と種類

の説明とリスク・リターン、商品選定の際の具体的な投資アドバイス、資産配分の見直

しのタイミングと見直し内容等も2割程度の要望があります。そういう意味では二極化

しているといいましょうか、一方で導入時教育をもう少ししてほしいという基礎的な要

望と、さらに進んだ継続教育的なアドバイスがほしいという要望、いずれも求められて

いるということです。

 最後、資料4です。前回手元に資料がありませんでしたので、やや曖昧な説明で恐縮

でしたが、これまでの運用商品の除外の実績について改めて調査しました。結論として

は個別同意をとって除外した例はいまのところ皆無でして、すべて投資信託の繰上償還

ということで、6商品、4規約というのがいままでの実績です。

 

○森戸座長 ありがとうございました。前回の宿題も含めて性格の違う資料1から4ま

でに関してのご説明、これについて皆様からご質問等はありますか。

 

○小島委員 資料1の企業年金関係の改正法案です。基本的には、これは出されている

これまでの議論等もありますので理解できますが、1つだけ質問なり意見を述べたいと

思います。「その他」の項目、運用商品の除外に係る手続のところです。これについては

前回も少し意見は述べたのですが、今回の法改正の内容を見ますと、運用商品を除外す

る場合には本人同意を基本とし、しかし例外的な扱いとして、労使の合意によって除外

も可能とするという法規定です。心配しているのは、そのときに仮に除外しようという

商品の運用を現実にされている方がいると、その方が必ずしも本人は除外をすべきでは

ないと思っていても、それが労使合意によって除外をされてしまったという場合に、新

しい商品に変えなければならないということですが、そのときに何らかの形で損失が生

じかねない。その場合の訴訟リスクの問題です。そのときに労使合意ということなので、

一方の合意をした労働組合のほうが責任を問われるということはないのか、といったこ

とがいちばん心配していることです。もしそういう可能性があるとすれば、もしこうい

う法律改正をした場合には、そういうリスクがあるのだということを、我々としては労

働組合に対して説明しなければならないということになりますので、そこは十分検討し

なければいけないので、そこの解釈がどういう扱いになるのかと思います。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 民事上の訴訟リスクの責任については、個別、個別

の対応等もありますので、一概には申し上げられないところもありますが、ただ、いず

れにしても除外する場合には、いまご指摘のように個別同意に代えて労使合意、あるい

は加入者の代表等による合意ということを要件としますが、ステップが2つあります。

まずはこういった個別同意ではなくて、労使合意で除外できるということを規約でまず

書いていただく。かつ個別の商品を外す場合には個別、個別で労使合意が必要というこ

とで、規約で定めるに当たって、加入者等にそういったことの手続を緩和することを十

分にご説明いただく。あるいは個別の商品を個別に除外するときにも、加入者等に十分

説明した上で合意形成を行う。そういった丁寧な手続を踏むように、運用に当たっては

配慮したいと考えています。

 

○小島委員 いま言われたように除外をする場合、労使合意によって除外をする場合に

ついては、規約で改めて規約に明記をするという、いま入っていないので新たな規約改

正が必要だと。次に具体的に除外するという場合には、改めて労使で合意するという二

重のチェックということですが、それである程度の回避ができると思います。もう少し、

除外をする場合には個別の利用者について特定するのは難しいということのようですが、

何らかの形で事前に、この商品について除外することをいま検討しているとか、そうい

う事前通知というか、そういうのはできないかということですが。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 労使合意をするに当たっては、当然、加入者の方々

にお諮りしながら実際には合意するという手続になろうかと思いますので、そういう意

味では事前の十分な情報提供等も行われるように、行政としても指導してまいりたいと

考えております。

 

○森戸座長 いま課長がおっしゃったような形の法規定になるということは、大体決ま

りの話ですか。ここには「労使合意等による除外を可能にする」と。いろいろなパター

ンがあり得るわけですが、いまのような2段階のチェックをかけてさらに説明もせよと

いう形にするということは、大体そういう方向で考えていらっしゃるということですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 2段階にするという、規約に定めるあるいは個別同

意がいるということは、これは法律の条文上担保されています。事前に十分な説明、こ

れは運用マターですので通知レベルの話ということです。本日、分厚いのでお配りして

いませんが、条文についてはご要望がありましたらお届けしますので、個別にお申出い

ただきたいと思います。

 

○森戸座長 ほかの資料もありますが、ほかにご質問はありますか。よろしいですか。

その他のご質問がないようでしたら次の「企業年金のリスク管理について」に移りたい

と思います。事務局から資料のご説明をお願いします。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 資料5「企業年金のリスク管理について」です。こ

れはその他の課題ですが、それをまとめましてリスク管理ということで資料にまとめま

した。1枚目が目次です。I「企業年金の運営におけるリスク」で、総括的なスケッチ

です。具体的にはそれに従って、いわゆる企業年金のガバナンス(権限・責任分担)の

在り方、積立金の在り方、積立金の運用の在り方、こういった3つの課題についてご議

論いただきたいということです。

 2頁です。「企業年金の運営におけるリスク」です。大きく分けて3つあるということ

です。下の(資料1)ということで図にしていますが、1つが受託者リスクで、企業年

金の関係者が言わば自分の責任を果たさないリスクということです。事業主の経営リス

クは典型的には倒産ですが、経営が悪化するということです。3つ目が財政リスクで、

多くは投資リスクということで、資産運用におきまして実用実績が予定利率を下回るリ

スク。あるいは広い意味では財政リスクの一環ですが、加入者が見込みより減少するな

どの企業年金の財政運営上のリスク。こういった3つのリスクがあろうかと思います。

 現在、こういったリスクにつきまして、管理方法としては、受託者リスクについては

関係者の行為準則の策定等。経営リスクにつきましては外部積立・積立基準の策定等。

財政リスクにつきましてはポートフォリオ、あるいは年金ALMといった手法で管理を

しているわけですが、現行のこういった管理方法も個別具体的にいくつか論点がありま

すので、それを今回ご議論いただこうということです。

 第1点目に企業年金の運営におけるガバナンスの在り方で、受託者責任、行為準則の

関係です。総括的に申しますと、企業年金、労使合意に基づいて創設・給付設計を行い

まして、事業主あるいは基金型年金においては、基金が企業年金運営、具体的には掛金

を取って資産運用して年金の支給を行うといった運営がとられています。また、通常は

5年に一度程度ですが、必要に応じ労使合意、または基金型においては代議員会の議決

です。これも労使同数で構成されていますので、言わば労使合意の変形かと思いますが、

それに基づき必要に応じて給付設計の変更を行うといった形です。基本的には労使合意

に基づきまして作り、基金型の場合には基金関係者が責任を分担するといった仕組みが

基本です。

 また、企業年金の具体的な資産運用につきましては、事業主等が資産管理運用機関に

資産運用を委託する場合が大半ですので、資産管理運用機関も実際の企業年金の運営に

当たっては大きな役割を果たし、忠実義務等の法律上の義務も課されている状況です。

 また他方、企業年金につきましては、特に退職給付会計の導入によりまして積立不足

が各企業の財務諸表で顕在化するという状況がありますので、企業の経営という観点か

らも重要な位置を占めるに至っておりまして、事業主は株主に対する責任も負っている

という状況です。

 つらつらと申し上げましたが、一言で申しますと、関係者は責任の所在がわかりづら

いのではないかということ、事業主につきましても企業年金を作り運営する立場と企業

の経営者としての立場、2つの顔を持っているわけでして、そういったところに利益相

反する等の議論、問題が出てくる場合があるというのが問題です。

 4頁、5頁に以上申し上げましたことを模式図的にと言いましょうか、図にしたもの

です。規約型におきましては、創設、あるいは設計変更につきまして労使合意という形

で行う。運営につきましては、基本的には事業主が責任を持ち、資産運用についてはそ

の一部資産管理の機関が責任を分担するという形です。言わば事業主を基軸にした比較

的シンプルな設計ということです。ただ、これから論点として挙げますが、下に2つほ

ど書いてありますが、事業主が2つの顔を持つ、株主・加入者の双方の利益を代表する

わけですが、その利益が相反する問題。あるいは資産運用のところは資産管理運用機関

が大きな役割を果たすわけですが、そこの責任分担というところが課題としてあるとい

うことです。

 一方で基金型ですが、5頁です。基金型につきましても、創設の際には事業主と組合

の労使合意ですが、違いますのは右端の設計変更というところです。この設計変更も言

わば設定機能といいましょうか、企業年金の設計機能であるわけですが、ここが一旦、

独立した法人である基金ができた暁には、事業主ではなくて基金の中で労使代表の代議

員会が決定権を持ち、責任を持つという形になっています。基金型特有の問題としては、

右端の下に書いてありますが、こういった独立の基金というものができたが故に、実質

的に母体企業の労使合意で決定する場合もあると伺っていますが、そういった場合には

代議員会の権限が形骸化しているのではないか、という議論、論点があろうかというこ

とです。また、上につきましては、ここは代議員会の決定に従って基金の理事と資産管

理の機関が運営を行うわけですが、理事の専門性の問題、また規約型と同様に責任分担

の問題があるわけです。

 6頁以降、以上申し上げたところを少し具体的に文字にしています。規約型ですが、

先ほど申し上げましたが、すべて基本的には事業主が絡むということで、法律上、実態

的にも権限及び責任の所在は明確であろうと考えています。ただ、(3)ですが、企業年金

に関する意思決定は企業の内部組織で事業の一環としてなされるということで、透明性

の確保というところで議論があるかということです。特に(4)ですが、資産運用につきま

しては、例えばですが、事業主が主要株主の利益を図るために当該株主を資産管理運用

機関に選定する、そういう事例があるとすればですが、事業主の利益と加入者の利益が

相反するということになるわけです。その場合のチェック機能についてどうするかとい

う論点があろうかということです。

 ちなみに企業内部の意思決定のチェックという意味では、現在の考え方としては、給

付設計の変更等については法令上労使合意ということで、言わば使用者側、組合のチェ

ックが一応制度上の担保ですし、資産運用につきましてはガイドラインですが、(4)です

が、DBの役割及び責任に関するガイドラインにおきまして、事業主を補佐するため財

務・労務担当役員等、ちょっと誤植がありますが、および労働組合等の加入者を代表す

る者で構成される「資産運用委員会」を設置して、専ら加入者の利益を考慮して事業主

に意見を述べることが望ましいということです。望ましいということですが、こういっ

たガイドラインにおきまして、双方、こういった委員会がチェックをするということで

す。

 少し飛びますが8頁、基金型です。基金型における論点ですが、基金型におきまして

は、独立した社団法人的な基金が代議員会において運営方針を決定すると。基金の理事

は代議員会の決定した方針に従いまして、基金のために業務を忠実に行うという忠実義

務が課されています。また、一方で(3)ですが、積立金の管理及び運営については、基金

に対して連帯して損害賠償の責めに任ずるということで、重い責任を課されています。

こういう法律の形だけ見ますと、基金の代議員会が決定権限を有し、理事が忠実に業務

執行するということで、法律上は権限、責任所在は明確になっています。ただ、実態論

としては(5)ですが、掛金額の決定及び給付設計変更、あるいは積立金の運用という運用

レベルにおきましても、母体企業において労使合意した結論を、代議員会及び基金の理

事が追認する場合があるというようにも聞いていますが、こういった形骸化の議論につ

いてどう考えるかということです。

 制度論としては、いろいろな組み方もあろうかと思いますが、(6)で書いていますのは

実態論として例えばですけれども、代議員及び基金の理事と各企業の財務の責任者、あ

るいは従業員の代表を一致させるとか、企業年金法における責任と、企業における実態

的責任を一致させるような工夫が必要ではないか。現行制度を前提にした場合ですが、

そういった論点です。

 10頁です。資産管理運用機関の関係です。現行法におきましては規約型、基金型、い

ずれにおきましても資産管理運用機関におきましては、加入者等、あるいは基金のため

に忠実にその業務を遂行しなければならないということです。また、法令あるいは通知

等に基づき、この資産管理運用機関の忠実義務ですが、事業主あるいは基金が策定した

運用の基本方針と整合的な運用指針を事業主または基金が資産管理運用機関に示しまし

て、この運用指針に基づいて運用するというのが現行の仕組みです。

 実態としては、資産管理運用機関側から運用指針の作成に関しても関与する、原案作

成等に関与するということがあるように聞いていますが、責任の明確化の観点からは事

業主または基金の資産運用能力、実務的な資産運用能力を向上させ、責任関係を明確化

する、関与を排除するということが考えられないかということです。この点につきまし

ては、最後の議題の資産運用の所でもまた論点として挙げています。

 13頁です。いまの基金の資産運用能力の向上ということに関連するわけですが、基金

の理事につきましては、積立金の管理・運営について任務を怠ったときは、基金に対し

て連帯して損害賠償の責めに任ずるということが法律上規定されています。一方で理事

の要件ですが、法律上の要件としては代議員であるということのみでして、実態的な要

件としては通知で規定していますが、基金の財政状況に精通し、積立金の管理運営業務

を適正に執行できる者であって、基金の業務に熱意を有する者を充てること、という指

導方針になっています。

 また、厚生年金基金につきましても同様で、常務理事が管理運営業務を兼務する場合

もあるわけですが、そのような場合にも常務理事について同様の要件を課すという形に

なっています。要件としては抽象的な要件でして、重い責任を持っているという一方で、

担当理事の要件は必ずしも高い専門性が要求されていないということをどのように考え

るか。もう少しカッチリとした専門性の要件が必要ではないかという問題意識です。た

だ「他方」と書いてありますが、特に厚生年金基金、いま残っているのは総合型、中小

企業のものが多いのですが、必ずしも人件費等の負担能力が高くないわけでして、そこ

のコストとの兼ね合いも含めてどのように考えるかということです。

 関連して17頁です。そういった運用担当理事の専門性の確保という観点から、これ

は関係団体から従来からご要望いただいているわけですが、外部の専門家の理事選任を

制度化できないかという論点です。現行制度では、基金の理事は労使半数ずつ代議員会

で選定した代議員から選定することとされておりますが、そういう意味では、例えば事

業主側の職員として基金で採用して、代議員として選任し、常勤の運用担当理事を雇用

すると、そのような形が現行制度も可能ですが、主として代議員として常勤の運用担当

理事を雇用することが、なかなかコスト的に難しい中小規模の基金を対象として、管理

運用業務の専門性の確保の観点から、通常の理事の定数の言わば外枠で外部から運用担

当理事を選任することについてどのように考えるか。こういったご要望をいただいてい

るところです。

 ただ、この場合論点が2つありまして、1つは、代議員会あるいは理事会ですが、労

使合意の変形と申し上げておりますが、労使合意の手続・仕組みを基本にしていますの

で、言わば労使自治の原則との関係、労使のバランスをどのように考えるか。労使同数

というところがこういった方々が入ってくると崩れますので、そういったところをどう

考えるか。2点目としては、運用担当理事、損害賠償責任等重い責任を負うわけですが、

一方で経費等の観点から身分は非常勤を想定することをどのように考えるか。少しバラ

ンスが悪いということです。会社でも社外取締役を置くこともありまして、そういった

場合には責任が一定程度限定されるような仕組みもあるようですが、そういった責任と

権限の関係をどう考えるかという論点もあります。以上がガバナンスの議論です。

 大きな2つ目、積立金の在り方です。積立金の議論、運用も含めてですが、受給権の

保護という観点でくくれるということで、こうした構成にしてあります。いま申し上げ

ました企業年金のガバナンスの話、あるいは積立金の適正な運用、さらには現行制度で

もある財政状況の情報開示等につきましては、これも広い意味では年金を確実に支給す

るための手段でして、受給権の保護の一環ですが、年金額を確実に保証するという、言

わば直接的な受給権の保護の手段としては3つぐらいあるのではないかということで、

下の図です。1つが受給者個人の年金額を保証する受給権付与(ベスティング)です。

そういった個々人の年金額の原資を確実に担保する積立規制、仮にその原資に不足があ

る場合にこれを保証する、支払保証。直接的に手段としては3つあるということで、こ

の3つについて議論するということです。

 19頁です。受給権の在り方、ベスティングの議論につきましては、企業年金の性格論

のところでも議論いたしましたので、今日は確認ということで資料提供になりますが、

確認的に説明をします。アメリカでは受給者だけではなく加入者も含めて、過去の勤務

期間については受給権を付与して減額は認められていない。一方では将来分の減額につ

いては特に制限がない。我が国では将来・過去勤務期間とも減額が認められていますが、

ただし加入者と受給者とで減額要件が異なり、加入者は柔軟であるが受給者の減額につ

いては厳格な仕組みになっています。こういった我が国の受給権の仕組みについてどう

考えるかということです。積立規制、支払保証を考える意味でも、こういった我が国の

受給権の仕組みを前提に考える必要があるかという問題意識です。

 21頁です。次は積立基準の在り方です。確定給付型の厚生年金基金、確定給付企業年

金につきましては、事前積立で運営を行うということでして、受給権の保護の観点から

外部積立を義務づけるとともに、積立基準を定めています。積立基準につきましては、

これは従来の厚生年金基金、確定給付企業年金同様ですが、将来にわたって継続するこ

とを前提にした継続基準と、そこで終了した場合に十分な積立額が、その時点で確保さ

れているかどうかの検証をします非継続基準があります。なお、積立基準につきまして

は、平成23年度末までは0.9掛けでよいという緩和措置を採っているところです。

 一方で諸外国におきましては、近年、積立規制が強化されていまして、アメリカでは

最近の改正によりまして、積立目標の150%までの掛金を損金と認める。また、オラン

ダでは歴史的に十分な積立金を持つことが求められ、平均積立比率は125%です。我が

国におきましてこういった諸外国における動向等を踏まえ、受給権の保護の観点から積

立基準を強化することについてどのように考えるかということです。ただ、我が国の場

合には比較的給付減額が柔軟に認められていますので、積立基準を満たす方法を給付減

額で満たす方法もある中で、欧米と同じような堅い基準が必要かどうかという議論が一

方であるということです。

 24頁です。支払保証制度についてです。諸外国での支払保証制度、詳細は申し上げま

せんが次の頁にあります。アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデンにおきましては、

確定給付型年金につきまして支払保証制度があります。今回、ご紹介するアメリカです

が、アメリカにおきましては過去の勤務期間について受給権を付与され、減額が一切認

められていない。仮に過去分について積立不足がある場合に、支払保証制度により保障

する仕組みが基本です。

 こういったこともあり、確定給付企業年金法制定時におきましても、資料をお付けし

ていますが、附帯決議におきまして支払保証制度は検討課題の1つとされていますが、

この支払保証制度についてどのように考えるかということです。

 いくつか留意点ですが、仮に支払保証制度を創設した場合には、アメリカと異なり年

金額の減額が認められている中で、どのような場合に支払保証をすることとなるのか、

という論点があります。モラルハザードの問題はもともと指摘されていますが、具体的

要件としても年金額減額との関係は出てくるということです。

 なお、下に(資料17)としてお付けしていますが、OECDで「積立と給付の保障に

関するガイドライン」が出ています。このガイドラインにおきましては、いわゆる内部

留保型の確定給付企業年金の場合には支払保証制度は必須、求められるという位置付け

になっていますが、外部積立型については必須ではないと、こういう整理になっていま

す。また、我が国におきましても、代行部分を持ちます公的年金の代替機能を有します

厚生年金基金につきましては、企業年金連合会が基金間の共済事業という位置付けです

が、支払保証事業を行っています。ただ、この支払保証事業も要件を限定していまして、

基金が解散した際の残余財産を企業年金連合会に持ち込んで年金化した解散基金加入員

に保証対象者を限定している状況です。

 ご参考までに27頁、28頁に「厚生年金基金の現行の支払保証制度の概要」を掲載し

ています。左側の2「事業の概要」ですが、現行の保証給付の支給要件ですが、「次のい

ずれかの事由によりやむを得ず解散した場合」ですが倒産、設立事業所の業績悪化等が

要件ということで、かつ、残余財産が支払保証限度額を下回るという要件です。保証範

囲につきましては、左側の下に図がありますが、代行給付現価の3割相当プラスそれを

上回る部分の5割相当が支払保証限度額です。また保証対象につきましては、右側の真

ん中ぐらいに図がありますが、年金選択をしたところに限るということです。最後に財

源ですが、下の(4)です。財源は各基金からの拠出金とそれを積み立てた資産の運用収益

で賄っています。拠出金の水準につきましては、5年に一度財政再計算時に解散の発生

確率、積立水準等を総合的に勘案して決定をします。ちなみに拠出金については各基金

ごとに定めていますが、加入者ごとの頭割り、支払保証限度額に比例した受益比例割り、

リスク比例という意味で、不足の未積立債務額に比例した部分の3つから構成されてい

ます。

 財政状況ですが、28頁です。平成14年度からの収支状況の資料ですが、収支差を見

ていただきますと、平成17年度に若干赤になっていますが、おおむね黒字ということ

です。年度末資産額も平成18年末で310億円ということで、責任準備金に比して相当

積立額が多い状況になっています。一方、支出を見ていただきますと、支払保証の給付

額自体はご覧のとおりでして、平成15年、平成16年ぐらいに解散が多かった年は9、

16、あるいは平成17年度13と多かったのですが、平成18年度から落ち着いてきて、

平成18年度は7,500万、1件という見込みです。

 こういったことで支払保証事業自体の財政状況としては非常に余裕がある状況ですの

で、平成17年度と平成19年度に積立金の剰余金を活用して拠出金について平成17、

19とそれぞれに3割程度減額するという措置を講じますとともに、少し使い勝手が悪い

という声も聞かれましたので、使い勝手がよくなるような運用上の見直しも平成19年

に行っています。以上が積立金関係です。

 最後に、積立金の運用の在り方、運用におけるリスク管理です。大きく分けて2つ、

ポートフォリオの策定と新たな商品デリバティブを議論したいということです。ポート

フォリオの策定ですが、効率性と安全性の両面から資産運用はチェックが必要だという

ことで、そういった安全性リスクと効率性の目標水準を定めることがポートフォリオの

考え方です。

 30頁です。ポートフォリオの作成の際には、現在は企業年金においては「年金ALM」、

資産と負債の総合的な管理と呼ばれる手法が用いられることが多くなっています。ご案

内かと思いますが(注)の「年金ALM」を簡単にご紹介します。資産運用と年金財政

の運営を別の問題として取り扱うのではなくて、資産運用における下ぶれのリスクと、

年金財政における加入者減少等のリスクを総合的に検討して、企業年金関係者、母体企

業関係者の協議の上で許容できるリスクの水準や目標利回りを定めて、それに基づいて

最適な基本ポートフォリオを長期的な観点で作成するというものです。

 現在、企業年金におきましてポートフォリオの作成とその専門的知識・経験を有する

者を配置するよう努める、という努力義務が課されていますが、一般的には義務化され

ていません。作成が義務づけられていますのは、基金が自家運用を行う場合と掛金を株

式で納付する場合の2つに限られています。近年、運用手法が多様化する中で企業年金

の成熟化も進んでいますが、そういった中で資産の運用をより安全かつ効率的に行うこ

とが求められる中で、ポートフォリオの作成や、その専門的知識・経験を有する者の配

置の義務づけの対象の拡大についてどのように考えるかということです。その際、例え

ば、小規模な企業年金等における事務的な負担の増加、あるいは外部の専門機関の活用

についてどのように考えるかということです。

 いま申し上げました現状につきまして、32頁に現行規制の概要を付けています。現在

の規定はどうなっているかといいますと、「運用の基本方針」の策定につきましては、規

約型のそれは小規模のものを除いて義務化されています。ちなみに「運用の基本方針」

の策定の中で「資産の構成に関する事項」、※印の所ですが、これはポートフォリオその

ものではなく、かつての5・3・3・2規制のような株式を35%以下で、債券を50%以上

とか、例えばそのような資産構成の上下限に関する自主ルールの策定を意味するという

ものです。

 一方でポートフォリオそのものにつきましては、厚生年金基金規則及び確定給付企業

年金法施行規則規則においてポートフォリオの策定およびそれに関する専門的知識・経

験を有する者の配置は努力義務というのが基本でして、自家運用あるいは掛金を株式で

納付する場合に限り義務化されているというのが現行の規制の現状です。

 最後です。33頁で「デリバティブの活用」です。運用における資産価格の変動リスク

の軽減、あるいは売買による市場への影響を回避するという目的で、先物取引、あるい

はオプション取引などのデリバティブが現在活用されています。デリバティブにつきま

しては、適切に用いるとリスク軽減に役立つ反面、管理が適切に行われませんとリスク

の原因となることもあり得るということで、現在、資産運用の安全性の確保の観点から、

自家運用でデリバティブを用いる場合におきましては、購入可能なデリバティブの種類

を法令で先物取引とオプション取引に限定した上で、利用目的もリスクヘッジに限定し、

購入可能額も、ヘッジ対象となる原資産の額以内に制限するという規制を行っています。

また、当該運用に関する運用方針の決定にかかわるような経験者を3人以上配置するな

ど、内部体制の整備も求めているところです。

 しかし近年、金利スワップを初めとしたいろいろなデリバティブ商品が出てきていま

すし、預貯金や債券の中にもデリバティブが組み込まれるような複合型商品が出てきて

いまして、運用リスクを管理する上で有用と考えられるデリバティブが登場・普及しつ

つある中で、すでに世界的には活用されている状況です。こういった状況を踏まえ、リ

スク管理の重要性の増大、他方デリバティブ利用に伴う運用リスク等を踏まえまして、

デリバティブの取扱いについてもう少し詳細な基準が必要ではないかということです。

 参考までに35頁ですが、現行の「企業年金の自家運用におけるデリバティブの利用

に関する法令等の規定の概要」です。自家運用における利用が認められているデリバテ

ィブの種類は6種類です。また利用の目的については、危険の防止、軽減、またはポー

トフォリオとの乖離の縮小ということ。投機的取引は行わない。また、限度額について

は原資産の時価額以下ということです。4「基金の内部体制の整備」として経験者、あ

るいはコンピューターシステム等の構築を求めています。

 36頁です。36頁、37頁で、現行企業年金、法令に規定のないデリバティブです。ス

ワップ取引ということで、例えば固定金利と変動金利を交換するようなスワップ。ある

いはクレジット・デリバティブということで、信用リスク、保険契約的なものをマーケ

ット間で取引をするようなデリバティブ。あるいは天候デリバティブ。37頁ですが、複

合型商品ということで、預金や国債とか通常であれば安全かつ確実というものの中でも、

株価と連動したような預金。日経平均株価が一定範囲内で推移した場合にはプラスアル

ファーが付くと、ただ、日経平均株価の一定範囲内を一度でも外れますと金利が全く付

かないというようなリスクがあるようなものです。また、物価連動国債ですが、通常は

元本・利率とも国債は変わらないわけですが、元本が消費者物価の動向に応じて変化す

るというような国債も、現に市場に出ています。インフレヘッジの手段として有用であ

る反面、物価がデフレ傾向のときには差損が生じる可能性もある、そのようなリスクも

あるわけです。資料の説明は以上です。

 

○森戸座長 ありがとうございました。今日は前回までに積み残した分の論点というこ

とで、「企業年金のリスク管理について」ということでまとめていただいたのですが、わ

りに制度全体の枠組みにかかわる大きな論点が目白押しなのですが、項目ごとに議論し

ていきたいと思います。まずIの企業年金の運営におけるリスク、IIの企業年金の運営

におけるガバナンスの在り方の1「企業年金の運営におけるガバナンスの在り方」。です

から資料の5頁までになりますが、ここについて議論したいと思います。最初から5頁

目まで、皆様からご質問、ご意見等をお伺いしたいと思いますが、いかがですか。

 

○藤井委員 皮切りということで観点だけ申し上げます。2頁に3通りのリスクがある

ということで、よくまとまった表かと思いますが、私はあとの議論にも関係するという

点として、このリスクをリスクと感じる人は誰なのかということが極めて重要だと思い

ます。企業年金は、例えば基金型の場合には1個の法人ですから、法人という人がそれ

のリスクを感じると言えば形式的にはそうかもしれませんが、それは実体ではなくて、

基金に関連する事業主または加入者または受給者、あるいは他の関係者がそのリスクを

本当は引き受けているということです。

 その際考えなければならないのは、よく考えずにリスクの負担者を言いますと、あた

かも加入者や受給者がその負担者であるように感じる場合が多いと思うのですが、一般

的にはそうではなくて、事業主が掛金の変動、あるいは会計上の費用の負担とか引当金

の負担ということで引き受け、最終的にそれは結局株主が引き受けるということになっ

ているわけです。加入者が引き受ける場合はないわけではないですが、非常に限定的で

あるということでして、そのあたりの、誰がどういうリスクを引き受けるのかというこ

とを含めて考えていく必要がある。

 だんだんと世の中が複雑になってきますと、あるものの真の所有者が誰かという議論

になってくるわけですが、一般的な議論としてはリスクを引き受ける人がそのものを所

有している、というふうに広くは考えるところだと思うのです。そういう点からいって、

加入者あるいは受給者と事業主の関係につきまして、リスクの負担者ということから考

えていくのが重要ではないかと思います。

 

○森戸座長 いまの点は確かにこの先の議論全体にかかわると思うのですが、藤井委員

のおっしゃった趣旨としては、いま企業年金のリスクといっても、結局、運用がうまく

いかなかった場合に、直接その加入者と受給者に負担が行くかというと、一応そうでは

なくて、追加の掛金も払ったりするのは事業主であって、結局、母体であり株主であり、

そちらの負担だと、そちらが第一ではないかということですか、単純に言えば。

 この先の話もかかわりますが、ただ日本の場合は、例えば給付減額とかそういう可能

性があるかもしれないと。財政が悪くなって給付が減額されて、あるいは制度が終了し

てという形で、加入者とか受給者にこのリスクが行くという可能性がなくはないわけで

すよね。ただ、それはステップとしてはその先の話で、最初は誰がリスクを負うかとい

うと経営側、母体側ではないかという、そこの確認かと思ったのですが、そのような理

解でよろしいですか。

 

○藤井委員 まさにおっしゃるとおりです。加入者、受給者がリスクの負担者ではない

ということでは一切ないわけですが、それは将来労使合意を経て給付減額に至る、ある

いは解散あるいは母体企業の倒産という場合に、具体的に被害者となり得ることではあ

りますが、そうなる前の通常の状態では一般的には株主が被害者となるわけです。そう

いう被害性質と程度に応じてそれぞれがリスクを負担しているわけでありますから、そ

れに応じて発言、その後の権限とか責任とか、その点に関して議論する場合に、その点

を念頭に置くことは重要ではないかと。特にこれは確定給付型年金のことをいま議論し

ているのだと思うのですが、確定給付ということは、確定された内容は変わらない限り

は、加入者、受給者にとっては特別内容について関心がないわけでありますから、その

点を念頭に置くことが重要だと思います。

 

○森戸座長 結局、まさにガバナンスの話そのものだと思いますが、イセキソケンのウ

スキさんもよく書かれていることですが、リスクをいちばん負担している人がその制度

をコントロールするなり責任を負うのがいちばんいいと。つまり、損をしたら自分が損

する人が権限なり責任を負っていたほうがいいのではないかと考えると、その受託者責

任などを考えるときも、この先の話になりますが、加入者のために行動しろということ

の意味や解釈などを考える上でも、いまのご指摘は関係してくるのかと思います。2頁

の整理はこれでいいと思うのですが、確かにリスクはどのように事業主あるいは労働者

側にかかってくるかという観点で、企業年金制度全体の動かし方を見ていくのは大事な

ポイントかと思います。ほかにいかがですか。

 

○島崎座長代理 2頁の受託者リスク、経営リスク、財政リスクという捉え方というか

分類の仕方は、一般的なものなのかという感じが正直言ってします。ディメンション(次

元)の異なるものを並列させているのではないかという印象があります。別にあとの議論

の中で検討していけばよいのかもしれませんが、私は、こういう捉え方をすべきではな

いかと思うのです。

 藤井委員のおっしゃったことも関係するのですが、確定給付型年金の場合は、それを

設けるか設けないかは労使の自由なわけですが、一旦セットすれば、給付を約束する形

になるわけです。ところが、実際に制度がセットされるというか給付の約束をしてから

実際受給するまでの間は1年とか2年とかという間ではなく、何十年という非常に時間

が空くわけです。当然その間にはいろいろな変動要素があります。それが基本的にはリ

スクとして捉えていくべきものだろうと思うわけです。

 例えば、経営環境が変わるわけですから、加入者が本当に確実にそれだけ入ってくる

かどうかは分からないし、母体企業の経営が傾くこともあります。また、確定給付型年

金の場合については賦課方式を採るわけにはいかないですから積立方式とならざるを得

ませんが、運用の前提条件となる経済環境も変わってきてしまいます。それもリスクで

す。さらに、積立不足が生ずればどうするのかといえばら、追加掛金を掛けて穴埋めを

せざるを得ないわけですが、先ほど申し上げましたように、母体企業がその負担に耐え

られるかという問題が生じます。

 積立方式の下ではそもそも相当膨大な資産を蓄積し運用していかなくてはいけないわ

けですから、そうすると資産運用・資産管理面でも受託者責任が全うされるかというこ

とも問題になる。確かにこれもリスクですが、運用環境が悪いということは景気が悪い

ということですから、資産運用の状況が悪いということは、一般的には母体企業の追加

拠出の能力が一般的には低いということになります。つまり、リスクが顕在化する悪い

状況が重なってしまうわけで、給付減額のような問題が起きてしまう。企業年金のリス

クというのを構造的に捉えれば、以上が全体の確定給付企業年金を巡る問題状況という

かリスクの問題状況ではないかという気がします。そのようなことを考えてみたときに、

こだわるわけではありませんが、この受託者リスクと事業主の経営スクと財政リスクを

並列的に並べるというのが、適切な捉え方なのだろうかという印象が否めません。

 

○森戸座長 確かにリスクはこれだけであるとか、こういう分け方しかないというわけ

ではないのですが。例えば、財政リスクの中にはある程度どうしようもないようなリス

クもあるかもしれないわけですが、受託者リスクというのは責任を果たさないリスクな

ど、リスクの性格は違うものかもしれませんが、そこの整理の意図についてもし何かご

説明があればお願いします。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 企業年金のリスク、いくつかこれまでの論文等を拝

見しましたが、必ずしも体系的に整理されているものは見つかりませんでしたので、い

ままでのものを大きく分けるとこういう整理になるのではないかということで、今回、

事務的に、事務局として整理をさせていただいたものです。島崎座長代理ご指摘のとお

り、事業主の経営リスクと財政リスクというところと受託者リスクは多少性質が違うか

と思います。直接的な財政的な面での企業年金がカッチリいくという意味では、経営リ

スクと財政リスクの、財政リスクの中には加入者が減少するということも含めてですが、

そういったものに尽きるのかということです。

 ただ、広い意味でのリスク管理ということからしますと、関係者が責任を果たさない

とか、あるいはもう少し広げますと情報開示の問題とか、そういうことで透明性の確保

によって適正な運用を確保する。そういったものも含めてリスク管理としては考えるこ

とができるのではないかという認識です。

 

○駒村委員 リスクの話とあとのガバナンスのところでは、先ほどの藤井委員のお話と

も絡むところですが、私なりには企業年金基金によって資産運用をするというのは、代

理人というかエージェントであると。一方、先ほど藤井委員がおっしゃったのはプリン

シパルは一体誰なのかというお話でした。私も最初は加入者なのかと思ったわけですが、

拠出主である企業、あるいは企業の下にいる株主、ここまではマルチのプリンシパルの

関係になっているのかもしれません。その辺、全く加入者にリスクがないのかというこ

とになってくると、リスクの程度によってどちらがより中心的なプリンシパルになるの

かという話が出てくると思います。

 今日のお話を聞いていると、本人と代理人の間で運用に関する、あるいは制度運営に

関する情報の非対称性のようなものがあります。その中には利益に相反するような問題

も発生するという問題があるわけです。そこで、インセンティブやリスクシェアリング

の仕組み、あるいは規制を使って、そういうことがないように押さえつけましょうとい

う話だったと思います。

 その中で、かねがね気になっていたのですが、最後のところで加入者の一部をどう置

くのかというのは先ほどの話でも大変気になっています。ここでいずれにしても労使合

意という話が出てきます。その労使合意を見ると、代議員、労働者から選ばれた代議員

が果たしてどれぐらい自分たちのことについてわかってその議論をやっているのだろう

かと思いますか。

 先ほどの資料などを見ると、労使合意自体が本当に大丈夫なのだろうかという疑問が

まずあります。あるいは、もし、加入者本人に対して仮にリスクがかなり少ないという

ことになってくれば、例えば理事の同数代表の根拠は一体どうなってくるのか。そうい

う問題にかかわってくるような感じがします。労使合意、労働者の代表制にかかわると

ころも絡んでくるのではないかと思って聞いていました。

 

○森戸座長 ご指摘はそのとおりです。肝心の制度の核になっている点、何かというと

労使合意が出てくるわけです。そこが実際上どういうようになされていて、また加入者

側に広い意味でのリスクを認識した上での労使合意なり、あるいは適正な労働者の代表

としての意識なり、決定がなされているかというところは大いに問題であると思います。

 

○小野委員 先ほどの藤井委員のリスクに関するご発言をサポートするような感じにな

ってしまいますが、リスクを誰が負担するかということは、最終的なところに行くとお

そらく訴権が誰にあるかという話になってくるような気も若干します。アメリカの年金

制度で見たとき、積立金の運用に関していい加減な投資マネージャーに一部委託し、そ

れに関して従業員が訴訟を起こしました受託者責任違反ではないかといってです。しか

し、その制度というのは財政的には剰余金があったといったとき、この従業員に関して

訴権があるかという話があって、結局は認められなかったように記憶しています。それ

は剰余金があったからなのかどうかよくわかりませんが、そういったところから見ると、

最終的なところではリスクの負担者が誰かというのは、訴権が誰にあるかという話にな

ってくるかと思います。

 被告や原告という話になってくると、例えば規約型の年金制度自体、OECDが求める

ようなリーガル・エンティティとなり得るかどうかという話も、1つ論点になってこよ

うかと思います。もし、そういった法的主体ということで話を進めていくとすれば、私

のレポートでも書きましたが、やはり制度の運営上、例えば掛金の債権について、複数

事業主制度の中で一部事業主が倒産したときに、拠出漏れの掛金があった場合にどうや

って徴収するのか。果たして債権者団体、債権者会議の中に制度が入るのかどうか。あ

るいは、入ったとしても、いまの債権の強さがどの程度であるのか。この辺は専門では

ないのでわからないのですが、そういったところも含めて、かなりトータル的な話にな

ってくるのではないかという気がします。以上です。

 

○森戸座長 ありがとうございました。ほかに最初の5頁のところまではよろしいでし

ょうか。結局、全部かかわってくる話だと思いますが、一応先に進ませていただきます。

ただいまのところも関係したご質問等もかまいません。一応、1回区切らせていただき

ます。

 次にIIの2、6頁からIIの2「企業年金における意思決定権限及び行為準則の在り方」、

結局この話もいまのご質問等の中に入っていたことだと思います。(1)から(3)、6頁

から12頁までのところに関して議論したいと思います。ご質問、ご意見等をいただき

たいと思います。いかがでしょうか。

 

○藤井委員 どこでもいいのですが、例えば6頁を見てください。これはよくある議論

なのですが、規約型の意思決定と責任の関係が論じられているところの(4)です。「事業主

が主要株主の利益を図るため当該株主を資産管理運用機関に選定するなど、事業者の利

益と加入者の利益が相反する場合のチェック機能について」云々とあります。これはア

メリカ型の受託者責任を引用してきて、時折聞く議論なのですが、これが本当に利益に

反するのかどうかということは深く考えてみる必要があると思います。

 ここで言っている「加入者の利益」というのはそもそも何なのか、それが反するとい

うのはどういう意味なのかということがあるのではないかと思います。「相反する場合」

というのは、よほどよく考えなければそういうことは普通起きないというか、どういう

場合に相反するのかというのは、なかなか考えにくいのではないかという感じがします。

問題意識の根本のところに遡って議論してみる必要があるのではないかという気がしま

す。

 

○森戸座長 私も実は、ここは当然に利益が相反する場合という前提で書いてあるのだ

と思っております。しかし、実際は微妙というか、いろいろ考えることがあるのではな

いかと思って読んでいました。ただ、一応、いわゆる現行の受託者責任ガイドラインの

ようなものでは、確かこういうようなものが「駄目な例」のようなところに挙がってい

たような気もします。その点、事務局から何か補足はありますか。主要株主の利益を図

るための内容が問題でしょうが、当該株主を資産管理運用機関に選定するというのは現

行法上、少なくとも受託者責任ガイドライン上はバツだという理解でいいですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 実際にどういう場合が当たるかというのは、具体的

には、アメリカはあるかもしれませんが、日本では実際の例はないかもしれません。そ

ういう意味では、ここは頭の中の体操みたいな話です。これから起こるかもしれない。

 ここの書き方も「主要株主の利益を図るため」という点が本当に明確であれば、「第三

者の利益を図る目的をもって、資産管理運用契約を締結することをしてはならない」と

いう法律上の規定に違反します。そういう意味ではガイドラインの問題ではなくて、法

律違反の問題ということになります。ただ、おっしゃるとおり明らかに、例えばその資

産管理運用機関があまり能力が高くない、いろいろ問題が起きているなど、どういう場

合に主要株主の利益を図っているかの個別具体の認定については、おっしゃるとおりの

議論というか、問題はあろうかと思います。

 

○森戸座長 資産管理運用機関の選定が主要株主の利益を図ることが目的であれば、ガ

イドラインと申し上げましたが、法令上、目的はそちらが主であれば違反になるのでし

ょう。ただ、問題はおそらく、目的は多分いかなる場合も1つではなく、2つあったり

3つあったり、あるいは結果的にこちらを選んだらこちらが主要株主というときにどう

するか。そういうときが難しい問題だと思います。藤井委員がご指摘になったのも、多

分、実際上はそう単純ではない、いろいろな例が考え得るということだと思います。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 ガイドラインでは、運用受託機関の評価を資産運用

委員会が行うということも入っています。しかも、専門家の外部の人も資産運用委員会

に入れられる。7頁にガイドラインを抜粋していますが、そのようになっています。そ

ういう意味では、資産運用機関を第三者も入れて評価した中で、ここではなくてほかの

所がいいのではないかという議論が出てきたときに、変えるという助言をしたけれども、

株主なのでなかなか変えられませんという結論だとすると、そのような具体的な議論が

生じるのではないかと思います。

 

○野村委員 この辺りの話は確定給付型が中心かと思います。ただ、このような、いろ

いろな企業年金の運営にかかることを委託する業者の選定といった観点に立つと、実は

確定拠出型にも大いに通じるところがあるという気がしています。

 具体的には、運営管理機関の選定が確定拠出年金についても行われるわけですが、こ

のときにも1つ目の項目に書いてあったと思うのですが、まさに事業主がいわば2つの

立場を持っています。ビジネスを運営する事業主としての立場、企業年金の設定から運

営にかかわる立場の2つです。利益が必ずしも一致しないということで、全く重なる部

分です。確定拠出年金についても運営管理機関を選定する際、必ずしも株主とは限りま

せん、それ以外にも、事業本体については例えば借入れをすればメインバンク的な関係

も生じますし、その他いろいろあり得るように思います。そういった部分を考えないで

選定しなさい、というのがもちろん本則ではあると思うのですが、先ほどからあるよう

に、非常に難しいと思うのは良い運営管理機関、あるいはその先にある商品選定でもそ

うなのですが、良いものを選んだかそうでなかったかという結果がそう簡単には出ませ

ん。

 おっしゃるように、チェック機能ももちろんあるわけです。ただ、年金制度の運用の

特徴だと思うのですが、長い期間に渡って見なくてはならないので、例えば四半期に1

回、ポートフォリオの状況をチェックするのが一般的だと思うのですが、そのときの結

果で判断するというのはいくら何でも早過ぎる。結局、運用がいちばん大きい部分だと

思うのですが、良い業者選定をしたのかどうか、この1点だけ取っても非常に判断が難

しいというのが、年金の根本的に難しい点ではないかと思います。そして、それは実は

確定拠出型についても全く共通ではないかと思っています。

 

○森戸座長 確かに、資料のここに入れるかどうかは別ですが、DCに関しても同じよ

うに受託者責任を負っている人がいて、運営管理機関等の選定の責任なりチェックとい

うのはあるので、やはり、取りまとめなり何なりのときには、その話もどこかで入れて

いただいたほうがいいかと思います。

 

○島崎座長代理 藤井委員が先ほどおっしゃったことは、実を言うと、受託者責任のめ

ぐる非常に重要な点です。それは、結局そのリスクを誰がテイクしているのかというこ

ととも関係しますし、もっと言ってしまうと、そもそもなぜ受託者責任を問う必要があ

るのかという問題があると思います。

 例えば、取引関係にある株主や運用機関の利益を考えて、運用機関を選定する資産管

理機関を選定する、あるいは運用や資産管理報酬を決めるといった行為があったとき、

藤井委員が先ほどおっしゃった趣旨は、これらは必ずしも受託者責任違反としてとがめ

る必要はないという意味でおっしゃったのですか。それとも、極論すれば、約束した給

付額がきちんと払われればいいのであって、積立がきちんとされていれば約束した給付

はなされるわけですから、受託者責任というのはそれほど重要な問題ではない、プライ

オリティーが低い問題だという意味でおっしゃったのでしょうか。

 

○藤井委員 いまおっしゃった中の後のほうに相当近いと思います。民間企業ですから

一見無駄に見えることとか、もちろん、不当にどこかの企業に利益を供与することは悪

なのですが、一定の範囲で経営の裁量というのは存在している。どこまでそれについて

事細かに、一挙手一投足良いの悪いのと言うのかという観点というのは、結構重要だと

思います。

 企業年金を企業が実施している限りにおいて、いちばん重要なのは給付を確実に行う

ことであります。運用のよしあしというのはよほどのことがない限りは、その影響とい

うのは母体企業に及ぶのであって従業員には及びません。運用が悪ければ掛金を積み増

すことによって、積立水準は従業員には重大な関心があると思いますが、運用が良いか

悪いかというのは掛金にはね返ることを通じて事業主に重要にかかわりがあります。あ

るいは、運用管理機関がエラーばかりするようであれば、そのエラーを通じて従業員は

被害を被る可能性がなきにしもあらずですが、その程度のことであって、それによって

コストがかかる、かからないという問題は総合的に経営者が考えている可能性がありま

す。それについて一企業年金という側面だけを切り取ってきて、それについて良いか悪

いかを誰かが論ずる必要があるのかどうかという観点だと思うのです。

 それが被害だと考えて、例えば小野委員がおっしゃったように加入者が誰かを訴える

ほどのことかどうか。誰がそれについて迷惑を被るから、それについて争う用意がある

のか。そういう問題が結構重要だと思います。そういうことがない限りにおいては、そ

う事細かに論ずる必要があるのかどうかと思います。現実に私の聞き及ぶ範囲では、「受

託者責任」ということが重要な問題となっている事件・事故があるのかどうか。我が国

においてはほぼ聞かないのではないでしょうか。そういう意味では、総体的に相当うま

く機能しているのが現状ではないかという気がします。

 

○小島委員 その発言の関係もあるのですが、6頁の規約型というのは、まさに事業主

が責任を負うことがはっきりしています。そこは最終的に退職金規定、あるいは企業年

金規定がそのまま履行されれば、運用はどうでもいいという話ではないのですが、保障

されれば最終的には従業員の立場からすればそこが問題となると思います。しかし、長

期的に見た場合、その運用が健全に行われているかどうかというのは、常にチェックが

必要だと思います。そういう論理で、規制があるのだろうと思っています。

 それとの関係で、6頁にある規約型は最終的に事業主が責任を負う。その事業主が企

業年金を運用するに当たってそれをサポートするという形で、ガイドラインでは「資産

運用委員会の設置が望ましい」と書いてあります。これは基金型で言う理事会に相当す

ると思うのですが、実際、規約型で労使の代表が入っているような資産運用委員会が設

置されているのかどうか。その辺の実態がわかればと思います。もし、設置されている

ということであれば、実際にそれがどう機能しているのかという質問です。

 

○柳樂企画官 「理事会」と「資産運用委員会」というのは機能がやや違っています。

基金の理事会は、自らが基金の運営管理の執行機関ですので、自らが執行を決定し行う

機関です。それに対し、資産運用委員会的なものは、規約型ですとあくまで決定者は事

業主のままですが、いずれにしろ法人でもありますし、また運用などの専門機関でもな

いため、それを補佐し専門的な知識を補充するとともに、構成によりますけれども、労

使、特に被雇用者側の意見も反映して、忠実義務の履行を全うするという観点から行わ

れているという、位置付けの違いは若干あります。

 それから、実行上、どの程度実際に設置されているかという点については調査を行っ

ていませんので、正確な数字は把握しておりません。現にあるかどうかという点につい

てはいくつか有名なところ、例えば日産自動車などで置かれていると承知していますし、

それなりに機能している。とにかく、位置付けとしては、これ自身が最終責任を負って

決定しているという場ではないので、そういう機能を持つものとして回っているという

ように理解しています。

 

○森戸座長 ありがとうございました。連合会、いかがですか。

 

○企業年金連合会 規約型の実態はあまり把握していない部分が多いものですから。私

自身、いま具体的に把握していることはありません。

 

○遠藤副本部長(岩本委員代理) 資産運用委員会については、私どもが知る限りでは

名称はいろいろあるのですが、規約型企業年金でも使われているところは多いという印

象を受けています。労使が入るかどうかというのは、それぞれの企業によって違ってい

ます。仕組みとしてはある程度望ましい形でチェック機能等を果たしており、現状、そ

れほど大きな問題にはなっていないと認識しています。チェック機能を強化するために、

あまりの規制強化になるようなこと、義務化等は、避けるべきだと思います。

 

○森戸座長 ありがとうございます。まだあるとは思うのですが、運用のところ(4)

その他、13頁から17頁のところの残りがあります。そこも併せて、13頁から17頁の

ところではいかがでしょうか。

 

○藤井委員 私は先ほどから似たような流れの話をしようかと思います。全体に難しく

考え過ぎではないかと思っています。専門性の追求とか、熱意を持っている者にしなさ

いということでいろいろ書いてあるわけですが、これは事と次第の程度によりけりだと

思います。1万人や5万人の企業で何千億という資金を扱っておられる場合、放ってお

いても一生懸命やるのでしょうし、ごくちょっとの場合にはそうでもないということも

あります。

 現在、300人未満であれば簡素の取扱いが認められている。それも例外的な表示であ

って、本来は大小かまわず、熱心に優秀な人を置いてやるということですが、やむなく、

コストの観点から小規模のものは除外という立て付けになっているかと思います。元来、

そうであろうかと思うところがあります。そもそも、程度に応じて一般に要求される程

度のことをすればいいわけで、重要なところは重要にするということは、もちろんその

とおりだと思います。それを全体として、程度問題のものだというような理解の仕方が

重要ではないかと思います。

 これまでは、厚生年金基金の代行返上ということが中心で、大手の企業を中心として

器を移した形で、厚生年金基金自体の取扱いを引きずってきています。それはそれでよ

ろしいかと思いますが、適格年金からの移行ということをこれから考えていく場合、原

理原則という点についても非常に難しい感じが強くなりつつある傾向があると思います。

13頁の(3)に若干中小規模への配慮についての記載が見られるところですが、むしろこの

あたりをもっと重要に考えていく必要性のほうが、今後大きいのではないかという感じ

がしています。

 

○森戸座長 いま、藤井委員が最後におっしゃった点というのは13頁のどこでしょう

か。

 

○藤井委員 13頁のいちばん下、「他方、厚生年金基金は現在、中小規模のものが多く」

と書いてあります。これは先ほど、総合型が多いというご説明があったと思うのですが、

勘違いしていました。言い直しますと、総合型というのは実は基金の規模としてはそう

小さくない。参加している企業は中小の企業が多いかもしれませんが、総合型自身は小

規模とは言えない。むしろ、中小規模のものが多いというのは、適格年金から移行する

と思われている確定給付企業年金、確定拠出年金のほうがそれに当たるわけです。それ

らにおいては、まさに人件費の負担能力がそれほど高くないと考えられます。また、人

件費だけではなくて、資産規模などを考えてみても重要性がそう大きくないことが考え

られます。そういう点も考えて、全体に簡素な取扱いに関する検討が重要性を増すので

はないかと思います。

 

○森戸座長 藤井委員がおっしゃったことをこのように言うと曲解し過ぎかもしれませ

んが、要するに大して熱意がなくても、専門家でなくてもできると。全体としては重要

な責任を負った、受託者責任を負った人なのだから、より専門的な高度な能力を持った

人を当てないといけないのに、という感じでまとめてもらっていますが、いまのお話だ

とそのようなこともない。そのようなこともないと言うと変ですが、先ほど藤井委員が

おっしゃったことにつなげると、要するに企業年金というのは経営マターである。そう

であるとすれば、企業の経営する中でそれなりの能力の人がそこに来ているはずだから、

そこは自ずと資産規模なり、会社の大きさなりに合わせてやれるのではないかというこ

とをおっしゃったのかなと思ったのですがそれは言い過ぎですか。

 

○藤井委員 言い方は非常に難しいのですが、重要なところに重要な人を置いて力をい

れてやっていくというのは当然ですし、そうあるように規定することも必要かと思いま

す。仮に規定しなくてもそうするとは思いますが、規定して、それを促すということも

重要だと思います。ただ、何から何までそうというわけではなくて、いまの規定ですと

300人未満だったら何々規定を設けなくてもいい、301人だったら必要ということにな

ります。基本的に、重要か重要でないかというのは非常に流動的連続性のあるものであ

って、それぞれの規模に応じてそれぞれの状況で行う。どのようにそれを表現するのか

結構難しいのですが、そういうようなことだと思います。

 全体のトーンとして、ものすごく難しく言っていくような傾向があると思います。我

が国の対象給付の根本を考えると、退職金から始まっているわけです。退職金というの

は積立金がゼロなのです。ゼロと比べれば、仮にどのように変な運用をしていたとして

も、積立金があるということはとても素晴らしいことなのです。何と比べるかという問

題だと思います。いろいろ難しいことを言う結果、企業年金をやめてしまう企業が現れ

ることの影響も、逆に大きく考える必要があるのではないかという気がします。

 

○島崎座長代理 先ほどのことと関連していうと、確かに外部積立というのは、事業主

の資産と分離させ企業年金の資産に手を付けさせないための重要な仕組みであるし、後

ほど出てくると思いますが、積立基準の設定や遵守も受給権を保護するための極めて重

要な仕組みだと思います。そのこと自体は全く否定するつもりはありません。

 だからといって、受託者責任を軽視していいかというと、私は必ずしもそう思ってい

ません。なぜかというと、資産を毀損させるからです。企業年金の資産というのは結局

実質的には誰のものかといえば受給権者のものであり、なおかつ、運用の方法、資産管

理の方法いかんによって資産を非常に毀損させる可能性があります。なおかつ、率直に

言えば、先ほどの取引関係の例ではありませんが、企業年金には利益相反が至るところ

に存在しているという現実がある。そうした中で、積立水準を保持することと受託者責

任とどちらが重要かという、抽象的な比べ方は無意味だと思いますが、受託者責任とい

うのは、それなりに重要な位置付けをしておくべきではないかと私は思います。

 それからもう1つ、資産運用全体について言えることなのですが、比喩的に言うと、

安普請の家を造って、その中のデコレーションに非常に凝ったことをやっているような

きらいが見受けられます。家というのは地震に強い火事に強い、それが重要なことです。

それは企業年金の資産運用に当てはめていうと、リスクをどのぐらい取れるか取れない

かという吟味をしっかりして、ハイリスク・ハイリターンで行くのか、ローリスク・ロ

ーリターンで行くのかというリスク許容度を踏まえた基本的な投資方針が非常に重要で

あるということです。そしてそれは判断行為です。しかし、いろいろ資料等を拝見する

と、いろいろな条件をインプットすると自動的にその解が導かれる。あるいは、洗練さ

れたリファインされた運用理論を使えば最適解が出てくるというのは私は違うような気

がします。

 つまり、申し上げたいことは、責任の分担の話に関してもそうなのですが、どこから

どこまでが企業や事業主が負う責任なのか。それから、どこからどこの部分は基金なり

運用の担当理事の責任なのかということが、意外にはっきりしていない。それが問題だ

ということです。先ほどの議論ではありませんが、リスク許容度というのは一体誰が判

断するのか。企業が越権的に企業年金の世界の中に入ってきて勝手に決めているという

議論が出てきていますが、リスク許容度はリスクを取れる者しか判断できない。そのあ

たりの責任の仕分けができていないことが受託者責任をめぐる議論が混迷する1つの原

因なのではないかと思いますし、枝葉末節なところで議論が行われているような部分も

あるような気がします。

 そこの点に限って言えば藤井委員のご意見に賛成です。しかし、受託者責任について

は、はっきり申し上げればあまり軽視しないほうがよろしいのではないか。あえて言え

ば、これまで日本で大きな問題がそれほど起きていないというのは、これまで受託者責

任について関係者がそれなりの熱意を払ってきちんとやってきたことの1つの成果とい

う面もあるのではないかという気がします。

 

○森戸座長 ほかにいかがでしょうか。やはり大きな問題ですので、非常に根本的な問

題提起がいろいろなされたと思います。時間の関係もありますので次に進みます。18頁

から「積立金の在り方等」とあります。また関係はするのですが、3「積立金の在り方

等」ということで、18頁からベスティングの話とか、28頁まで、支払保証も入ってい

ます。そこまで、大きくはベスティング、支払保証というところでしょうか。ここに関

してご意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 

○駒村委員 基礎的なことを1つ教えてください。27頁の支払保証制度の拠出金の部分

の記述なのですが知識不足ですみません。「拠出金の水準は、解散の発生確率、積立水準

等を総合的に勘案」とあります。これは何かルール式のようなものが設定されて、客観

的な式のようものが設定されているという理解でよろしいのでしょうか。

 

○企業年金連合会 いまの点も含めて、支払いについて補足も含めて少し説明をさせて

いただこうと思います。1つは先ほどの説明にもあったのですが、実は厚生年金基金の

共済的な事業という位置付け、実を言うと、法律上この事業をやりなさいというように

書いてあるわけではありません。厚生年金基金同士が拠出金を出し合って、解散した基

金の積立金が足りないときにそれを上乗せするという仕組みになっています。そうした

意味で、私どもでも各基金の代表の方々から委員会を作って審査をするという形になっ

ています。

 例えばここにあるような事業の概要にあるもの、設立事務所の倒産や業績悪化など、

解散の場合にもいろいろなケースがあるかと思います。もちろん、当然厚生労働省の認

可があるわけですが、拠出金を出し合っているほかの基金の目から見ると、これはやは

り拠出金を上乗せするべきだと、どうしても仕方がないと。そのときでも何とか努力を

してやってきたときだと。基本的には共済事業的な色彩があるという意味でございます。

 そこにあるのはここにあるような保証範囲、例えば非常に高い水準があるときは、そ

の基金の積立不足を全部ほかの拠出金で賄うのかというと、実際上拠出金を出している

基金には運営が厳しいところもあります。そこである程度、範囲を限定しようというの

があります。それが事業の概要の支給要件でもあります。

 それから、ここには書いてありませんが、例えば解散した基金がそこまできちんと経

営努力的なことをしていたのかということも認定して、不十分なところがあれば減額を

するというようなこともしています。そのような形での共済事業的なものとしていると

いうことでございます。支払保証の財源ですが、拠出金については私どもで一定の基準、

規定を設けて、そこでこういう形で定めているという形です。

 

○森戸座長 駒村委員のご質問は、おそらく解散発生確率とか、そのようなものをお聞

きになっているのではないでしょうか。

 

○企業年金連合会 実はこの事業自身、実は5年に1回財政再計算をしています。その

ときに、これまでの動向を見ながら、そのようなものも一応数字として数理的に整理を

して、その上で拠出金を出していく。例えば28頁の資料も、単年度だけを見ると収入・

支出でずいぶんバラつきがあるようなのですが、5年に1回、一応今後の動向を見てあ

る程度積み上げていく。しかも、いろいろな請求が出てきても、当然積立金が足らなく

なったらどうしようもないですから、そのようなものを積んでやっていこう。ですから、

見直していくと平成17年度の収支差は多少▲になりますが、またこれを積んでいく。

それでも、実際上は当方に対する申入れが少なかったり、減額があって、積立金額がだ

いぶ多いというときには、今回も実は3割という形で拠出金の減額をしたという整理を

しています。

 

○森戸座長 5年ごとに、拠出金の基本的な計算の式自体が変わってしまうということ

ですか。

 

○企業年金連合会 考え方自身は変わっておりませんが、そうした考え方のもとにやっ

てみて、例えば積立金の水準はこれだけあればいい、目標額があるとなると拠出金の額

を下げようということも含めて考えているということであります。

 

○森戸座長 18頁から28頁、ほかにいかがでしょうか。

 

○小野委員 事実確認というか、補足だけです。アメリカについて言うと、発生給付は

必ず守られるということにはなっているというようによく言われるわけです。まず1点

は、あまりに年金給付が高い制度、航空会社のパイロットの制度などがそうなのですが、

これについてはもし1回倒産した場合、PBGCの保証上限を上回る部分は何ら担保され

ないという事実があります。

 それから、法律上の規定だけなのですが、財務長官に申請すれば既発生給付の減額は、

法律上は認められます。ただ、認める要件として、日本で言う給付の引下げ基準などと

かなり近しい基準になっていたかと思います。一応、このように規定されていたと記憶

しています。ただし、その規定が実際に適用されたかというと、なかなか基準としては

曖昧な面があると思いますので、そのような実例は多分ないのではないか。結果的に、

保証上限の範囲内であれば、いまペーパーでご指摘いただいているような事実が実質的

には正しいということになるかと思います。

 

○小島委員 この受給権のところですが、前のところで受託者責任と表裏の関係だと思

います。受給権の保護、最終的に規約、あるいは退職金規定で定められているものが最

終的にどう履行されるか。その際、特に企業年金にした場合には長期的な財政状況とい

ったものもありますので、そのために一定の積立金、あるいは支払保証をどう考えるか

ということだと思います。ここはあくまでも加入者、従業員の受給権をどう保証するか、

そのためにどう担保するかということでのさまざまな制度、あるいは仕組みを考えると

いう論点だと思います。

 その際に19頁にあります1つのベースティングと言われる受給権の付与、どこまで

受給権というのは確保されるのかというところの論点として、アメリカと日本、あるい

は欧米との違い。いま、小野委員からも指摘されましたが、アメリカと言えども全く減

額が認められていないわけではない、実際にはそうなっていないということです。日本

の場合も、一応現行の規定では受給権の原則は相当厳しい規制がなされている。もし減

額する場合には、一時金で支払うということも選択に入れるという点、それと対象者の

3分の2以上の同意と相当厳しくあるということです。

 多分、これをもっと厳しくするか、もっと緩和するかという論点だと思います。私と

しては、やはり企業年金の原資、退職金というのは労働組合の立場から先ほどから何度

も言っていますように、賃金の後払いということがあります。既に「労務の対価」とし

てもう確定しているものだということなので、それを減額するということについては極

力認めるべきではない。いまの規定をさらに緩和するということについては、それはす

べきではない。逆に、もう少しそこは厳しくすることが必要ではないか。本来は、欧米

のような形で既に確定しているものということなので、減額はすべきではないという考

えです。

 その際、将来的なところはどうするかというところも当然かかると思いますが、いま

の日本の企業年金と言っても退職金を横倒ししたもの、その原資はと言えば賃金の後払

い、労働の対価として確定したものだという性格をきちんと押さえる必要があると思っ

ています。それが1つです。

 その辺の関係でもう1つ、アメリカあるいはイギリス等ヨーロッパにある、支払保証

制度をどう考えるか。これについては、25頁に日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、ス

ウェーデンという国際比較が出ています。最近の動きでは、アメリカは各企業年金の積

立比率を高めたということが言われています。

 イギリスのほうは逆に、個別企業年金のほうの積立比率を緩和してきたということと

合わせて、新しい年金保護基金というものを作った。確か、そういうような流れがあっ

たのではないか。特に、イギリスの場合は積立保護基金というか、年金保護基金が作ら

れてきた経緯というのは、かつて企業年金の運用先、運用機関の不正が指摘され、その

支払保証といったものについての議論があったことを聞いています。

 日本の場合でも、いまの積立比率をきちんと確保するということで、確定給付につい

ては一定の受給権保護ということにはなります。ただ、そうはいっても母体企業、ある

いは運用主体の責任に寄らないような、例えば運用先の運用機関の不正といった場合が

ないこともないと思います。そのような場合についても、一定支払いをお互いが支えて

いく。先ほどの基金の共済事業としてやっていく、そういうものを是非考えるべきでは

ないか、というのが従来から主張している点です。ですから、アメリカのようなところ

まで、保証の範囲を広くするというところまでは難しいと思いますので、少しイギリス

やドイツといったところも踏まえて、運用主体の責任だけではない点が出てくるような

問題点について対応することが必要ではないかと思います。

 基金がなぜそういう支払保証を持っているかというと、共済事業と言っていますけれ

ども、やはり代行部分を抱えており、公的年金との関係が強いということがあると思い

ます。企業年金のほうも、公的年金を補完していくといった性格をこれからも強めてい

くということであれば、そのような観点からも支払保証制度については検討すべき課題

ではないかと思います。以上です。

 

○森戸座長 ありがとうございます。

 

○藤井委員 21頁のところで発言します。受給権の確保という観点で言うと、先ほど受

託者責任とかいろいろな議論が出ています。どれもすべて重要だとは思うのですが、私

などがいちばん重要だと思うのは積立水準だと思います。これが確保されているという

ことが、実質的に受給権を確保することの中心課題だと思います。そのためには、ここ

でちょっと触れているように、100%を超える運用を目指す、ということを念頭に置い

た仕組みづくりが重要ではないかと思います。いまの形ですと、100%を目指すという

ことですから、運用が良くない限りは100%を超えるという実態はあり得ないというこ

とだと思います。

 ところが、運用というのは良かったり悪かったりするわけで、一時100%を超えてい

るからといって、翌年には100%を下回ることもあり得るというわけです。目標として

は100では足りなくて、少し高めにしておくというのが運用が揺れ動くということから

すれば割合当然のことなのではないかという気がします。

 ただ、一概に強化するといっても積立ができる場合、できない場合があるでしょうか

ら、目標の上限を少し上げるということがいいのではないかと思っています。……委員

会からの要望の趣旨でもご説明したように、「拠出の柔軟性」という点もまた重要であり

ます。一定の掛金を納めることになりますと、将来、減額化することを懸念して、事業

主は全般的に低目の掛金を設定する懸念もないとはいえません。決して、積立を低くす

ることを奨励するわけではなく、むしろ逆に良いときには積立をより多く行うことによ

って、長い目で見て全体として積立水準を引き上げることは受給権確保の最も重要な点

ではないかと思います。

 

○森戸座長 ありがとうございました。「現行法上は100が目標となっている」という

ご理解の理由というか、100が目標というのは現行法でのどういうルールで100が目標

となっていると理解されているのでしょうか。

 

○藤井委員 掛金の設定の仕方です。年金資産というのは掛金で増え、給付で減り、運

用益によって増えたり減ったりするという3要素であります。事業主が直接手を下せる

というのは掛金によるところでして、掛金をどのように計算するのかというのがポイン

トだと思います。

 

○森戸座長 私の理解では、日本でも別に100以上でも損金にはなるのだろうと思いま

す。

 

○藤井委員 100を超えることを目標に掛金を設定するようにはなっていません。たま

たま運用が良くて100を超えている場合には、それを別途積立金で傍らに置いて掛金を

計算することは可能ですが、最初から100を超えることを目指して積み立てるというこ

とにはなっていないと思います。

 

○森戸座長 よくわかりました。

 

○遠藤副本部長 支払保証制度については、この研究会の第1回で申し上げたとおり、

基本的には必要ないというスタンスです。年金受給権については、企業年金財政の健全

化と、情報をしっかり関係者に周知徹底すること、この2本柱でやっていくというのが

基本だと考えています。積立水準の問題についてはいろいろ議論があると思いますが、

基本的には年金数理的に合理的な範囲で行うということを目標にして、積立金の水準を

維持していく、またそれに向けて、掛金をしっかり拠出していくということが基本的に

重要だと考えています。

 支払保証制度に関連して、退職金の意味合いについて先ほど小島委員から、賃金の後

払いというご指摘がありましたが、退職金がそのような性格を持っているかどうかにつ

いては、立場によって大きく考え方が異なっています。後払いという性格を必ずしも持

っていないのではないか、企業によっては一時金をどのような年次で与えるかについて

もさまざまですので、一律的な考え方でベスティングを考えることは難しいのではない

かと思っています。

 最後に、社会保障制度の基本的な考え方について先ほど指摘があったのですが、やは

り企業の労使合意で、自己責任の範囲で行うということが基本であると考えています。

 言い忘れた点が1点あるので、一言だけ付け加えさせていただきたいと思います。資

料の10頁、資産管理運用機関の忠実義務の(2)です。運用機関のほうが運用指針の作成

に関与しているので、関与を排除すべきではないかというご指摘がありました。最終的

に、運用の基本方針は事業主なり、基金が決めるというのが基本スタンスです。確かに

関与しているというか、アドバイスをするということはあるのですが、それを100%否

定してしまうようなことがありますと、実際の企業年金の運用が回らなくなる恐れもあ

り得るのではないか。この辺、非常に懸念される面がます。企業年金が実際に回せるよ

うなことでお考えいただきたいと思います。

 

○森戸座長 ありがとうございます。最後、29頁から37頁のところはいかがでしょう

か。デリバティブとか、ポートフォリオ策定の義務か努力義務かです。

 

○藤井委員 冒頭でいろいろ述べ、島崎座長代理にもご批判をいただいた点なのですが、

30頁をご覧ください。私の意見の1つの切り口だと思うのですが、30頁の(6)です。い

ろいろ運用の内容が高度化して難しいことが増えている。それについて、専門的知識・

意見を有する者の配置の義務付けの拡大をするか云々というあたりです。あるいは「そ

の際、例えば、小規模な企業年金等における事務的な負担の増加や外部の専門機関の活

用について」とあります。この辺の着眼だと思います。現状よりも管理責任等について

軽減する必要があると思っているわけではなくて、むしろ逆に非常によくできたシステ

ムで、関係者のご努力によってうまく運営されていると思っています。さらにどんどん

難しくすることについて、「義務化する」云々という考えをどこまでやっていくのかが、

かえって普及との関連でどうか。必要に応じて、必要な方々が自ずと配置されるぐらい

のことも考えればいいのではないかと考えております。

 それから、小規模な企業に関する取扱いについては、相当十分な配慮が必要だと考え

ます。そもそも、このペーパーに書いてあるとおりだと思うのですが、相当の配慮をし

ないとかえって小規模な企業年金を排除するという結果になりかねないのではないかと

思います。聞くところでは、例えば米国ですと確定給付企業年金型の企業年金があまり

新設されないとか、閉じるようなケースが割合多いという中に規制の強化があると思い

ます。規制を強化するというのは、ある面では非常に良い点もあるのですが、必要に応

じてする必要がありますが、全体のバランスという点で考えたときに、普及という側面

とのかね合いが相当重要ではないかという感じを持っています。そのようなことだと思

っています。

 

○島崎座長代理 基本的な認識として、資産と負債の総合的な管理がなぜ必要なのかを

考えてみる必要があるように思います。企業年金の資産運用というのは、年金給付を行

うためにやっているわけで、言ってみれば、「負債を元手に運用をしている」ようなとこ

ろがある。そういう面では、例えばアメリカの大学の寄付基金(エンダウメント)と本質

的に違う点があり、ALMというその言葉を用いるかどうかは別にして、企業年金の資

産運用に当たっては負債サイドがどうなっているのかということを絶えずやはり意識し

ないといけない。それは当たり前の話です。

 先ほど藤井委員もおっしゃったのですが、受給権保護と言ったときに、いろいろな仕

組みがあるわけですけれども、私も、その中で一番重要なのは、適正な積立水準の確保

であり、継続、非継続両方の観点からきちんと積立がなされているか検証することが重

要だということを否定するつもりは全然ありません。その上で、受託者責任であるとか、

支払保証制度をどう考えるのか、あるいは受給権付与いわゆるベスティングの問題をど

ういうふうに考えるかということだろうと思うのです。

 支払保証制度あるいはベスティングの問題に関して言うと、私は結論から言いますと、

非常にアバウトな言い方ですけれども、日本の制度というのは、それなりに好い線を行

っているのかなと思います。

 アメリカの場合には、過去分については100%保護するけれども、将来分については

保護されない。将来分の変更は全く労使の自由ですよという割り切りであり、日本の場

合の切り分け方とは異なります。日本では、受給者と待機者も含め受給者等とそれ以外

の加入者という切り分け方をした上で、一定の要件と手続を満たせば、過去分について

はアメリカみたいに完全に白(受給権を完全に保障)ではないけれども、極めて白に近

い灰色というか、本当に潰れそうなときに限って給付減額を認めるという立て方をして

います。一方、将来分についても、全て黒(変更は自由)かというと、一定の要件と手

続きは求めている。その灰色の程度が違うという、イメージ的に見るとそういう感じな

のだろうと思います。

 私は、企業年金が公的年金を補完するものだという立場からして見たときには、将来

分の変更が全く自由でいいというのは行き過ぎだと思いますし、一方、過去分について

は、既発生だから100%保証しなければいけないというのは筋論としてはあるかもしれ

ませんが、さりとて母体企業が潰れて沈没しそうなときにそれを求めるのはが本当に現

実的ではない。したがって、現行の給付減額の要件や仕組みは、逆に言えば権利の与え

方というのは、結構好い線いっているのかなという気がしています。

 

○森戸座長 ありがとうございます。

 

○小野委員 資産運用に関して、私は受託者責任とかの関係から、どう整理をしていい

のかというのが良く分からない面が長い間あったんですけれども。年金ALMというの

は1980年代ぐらいにアメリカでかなり流行ってきたと。その時に85年にFAS87と

いうのが出来まして、会計基準に基づく債務、これらを意識したバランスシート型の

ALMというのが流行ってきたわけです。それが流行ってきていろいろこう運用政策が

出てきたわけですけれども、どうも実は基金の資産運用というのはそのとおりにやられ

ていなかった、というのが実態なのだろうと思います。それでなぜかなということを考

えて、2つぐらいあるなと思っています。

 1つは、受託者責任の話だろうと思います。企業会計に基づいてそこではリスクをヘ

ッジするようなそういう運用政策をすることが、加入者、受給者のためだけに行動をす

るという例の受託者基準、責任基準ですけれども、あれに違反するのではないかという

懸念が1つと。もう1つは、いよいよ困ってくれば企業年金というのは逃げ込めば、も

う放り投げてしまっていいという部分が少しあると思うんです。PBGCに移管してしま

えば。そうなったら事業主というのは、なるべく低い掛金でやるんではないのかなと、

つまりリスクを取るんではないのかなというような話というのがあるんではないのかな

と。

 支払い保証というのは、やはりちゃんと積立上で給付を保証しましょうよという話だ

と思います。実はアメリカにおいては、事業主は直接的な給付義務を負っていないんだ

ろうと考えています。そこのところが少し履き違えると、会計基準みたいに直接的な給

付義務があるかのごとく評価するようなことになってしまっていて、それが最終的に確

定給付企業年金制度の存続にとって、やや少しマイナスの要因になっているというよう

な話があるんではないのかな、というふうに漠然と思っています。

 受託者責任の関係からいうと、最近はLDIなんかが出てきまして、さっきのデリバテ

ィブの中にありましたけれども、金利スワップとかこういったものを使って、債務をヘ

ッジしていこうというような話が出てきているわけです。最近になってようやく米国労

働省から、そういった考え方というのが何も受託者責任に反することではないのではな

いか、という意見が出てきたように記憶をしているんですけれども、そういったものを

含めて企業のため受給者のためというのは、そんなにきっちり整理をされているのかな

というと、そうでもなさそうな雰囲気があるという感じがしています。

 

○森戸座長 ありがとうございます。もう大分時間も迫ってきているんですが、いまの

最後の運用のところも含めて全体を通して、もうあと本当にあまり時間がないんですが、

まだご意見、ご質問等があればいくつか受けたいと思います。

 

○藤井委員 4、5頁のところなんです。現状で特に問題があるというふうに思っている

わけではないんですけれども、それぞれの役割分担というのを、もう1回よく見直す必

要があるのではないかというふうに思っています。例えば5頁のところで基金の最高意

思決定機関というのは代議員会でありまして、ここに労使の代表者が集まって給付の増

額減額とか財政運用あるいは資産運用の全般にわたって、この代議員会が意思決定する

とこういうことになっているんです。ところがその主に給付設計に関して言うと、基金

の外側で労使の合意が行われることが一般的に多いと。したがって、これによって代議

員会の機能の形骸化があるのではないかということがあるのです。

 しかし、例えば給付を減額するような場合ですけれども、現在の基準に基づけば代議

員会の議決のほかに、そもそも労使の合意を行う必要があるということに規定されてい

るわけです。法令の段階においても、代議員会よりも場合によっては基金型であっても

労使の合意を、直接的な労使の合意のほうを優先していると。優先というかそれを必要

としているという点があると。こういうようなことを考えますと、基金型の場合であっ

ても労使関係に関わる部分と、純粋にその基金という法人の運営に関わる部分という機

能の分析と、本来担うべきものが誰なのかというような辺りの見直しということもある

のではないかというような気がします。

 

○森戸座長 私、今日はいろいろテーマ的にいろいろ言いたいことはあったんですけれ

ども最後に一言だけ申し上げると、最後に終わろうとしている感じになって申しわけな

いですけれど、先ほど島崎座長代理もおっしゃいましたけれど、日本の企業年金の給付

減額なども含めて、そういう柔軟性があるところがわりとうまく行っていると。それは

そうだと思います。ただ柔軟に出来るというと、いま訴訟とかで問題になっている企業

さんは全然柔軟だとは思っていないでしょうから、それはそれでご意見があるでしょう

けれど、あまり画一的な規制ではなくて、柔軟な感じになっていることは確かだと思う

んです。今日見ても分かりましたけれど。

 ただその前提には、そこの基礎に労使合意というものがあるという法的な枠組みにな

っていて、要するに労使が決めたことが基礎になっているんだからというのがすべての

局面においてあると思うんです。私はよく申し上げるんですけれど、小島委員も遠藤副

本部長もいらっしゃいますけれども、労使の役割というのが結構企業年金の制度上非常

に重要な位置付けがされていて、労使合意で決めているんだからというところがあると

思うんです。駒村委員から先ほどご指摘いただいたように、その労使合意の部分がもし

例えば形骸化しているとか、何か実際にどういうふうに意思決定されているんだろうと

いうところに問題があるとすれば、そのある意味大袈裟かも知れませんけれど企業年金

制度の現在の法大系の根本に関わるところだと思うので、そこは非常に重要なご指摘、

問題があるのかなと思います。

 すみません一言だけ言わせていただきましたけれども、他に全体を通じてあと1人ぐ

らいになってしまいますが、ご意見、ご質問があればお受けしたいと思いますがいかが

でしょうか。

 

○遠藤副本部長 29頁、ポートフォリオの策定に関することです。日本の企業年金運営

を見ますと、外部委託や、コンサルタント機能などをうまく活用をして結構効率的な運

用になっているのではないかと思われます。ここに書いてあるような、新たな配置の義

務付け等が本当に効率的なのかどうかにつきましては、資産運用のパフォーマンスの結

果がどうなっているか、実態を踏まえて検討する必要があると思います。

 

○森戸座長 ありがとうございます。それでは大体時間になりましたので。

 

○小島委員 企業による労使の合意が形骸化かどうかというのは、そこは確かに指摘さ

れるところはあると思います。多分藤井委員が先ほど指摘された5頁の基金型でも実質

的には母体企業の労使合意で決定されているということですが、多分それは各企業の退

職金規定というのがありまして、その中の内枠として企業年金というのが位置付けられ

ています。多分その退職金規定全体の中で、その企業年金をどう維持するかということ

で、多分そこは労使合意がまず前提になるということなのでしょう。そういうことが影

響をしているのではないかと思います。その関係で指摘されるように、まさに労使合意

が実質的に機能をしているかどうかと。そこは退職金規定と企業年金の設計まで含めて、

そこはどこまでの論議がされているかというところは、課題であると思います。

 

○森戸座長 ありがとうございます。それではよろしいでしょうか。まだ、私も含めて

いろいろ皆さんご意見がまだあるとは思いますが、一応時間がまいりましたので、ご質

問、ご意見はここで終わりにいたしまして、本日の議事はここで終了したいと思います。

本研究会は、昨年10月から本日まで8回開催しましたけれども、企業年金のかかえる

論点について、必ずしもすべて深く出来たというわけではないでしょうが、一通り議論

することが出来たのではないかと思っております。本研究会の設置目的が、企業年金二

法について施行の状況の検証等を行うということですので、従って検証結果の整理とい

うことをしなければいけませんので、その作業に入って行きたいと思います。

 整理の方法に関しては、さまざまあるとは思うのですけれども、私と事務局と相談を

いたしまして、事務局の方で叩き台の案を作成していただきまして、それを基に皆さん

からそれにご意見をいただくという形で議論をしていきたいと思うのですが、いかがで

しょうかそれでよろしいでしょうか。

                                (異議なし)

 

○森戸座長 それではそのように進めて行きたいと思いますので、また事務局の方は叩

き台の作成をよろしくお願いします。

 次回の日程に関しては、別途事務局からご連絡をいたします。時間がまいりましたの

で、本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

 

(照会先)

厚生労働省 年金局 企業年金国民年金基金課 企画係

(代表)03-5253-1111(内線3320)

 

 

33

 

 

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