民進党

1.企業年金の受給権について

 年金受給権は、憲法29条第1項の財産権に該当します。しかし、憲法29条第2項は「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」と規定しています。最高裁判例は、

 

①法律でいったん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り、違憲ではない、

②財産権の内容の変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかどうかは、

ア)いったん定められた法律に基づく財産権の性質、

イ)その内容を変更する程度、

ウ)これを変更することによって保護される公益の性質などを統合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるか否かによって、判断すべきであるとしています(昭和53年7月12日最高裁大法廷判決)。確定給付企業年金は、高齢期における所得確保の為の役割を果たしており、その受給権は尊重されなけれがなりませんが、受給権の制約として認められるかどうかは、上記の最高裁の判例に基づいて判断されるべきであると考えます。

 

2.「厚生年金保険法等の一部改正」案について

 2013年の法改正は、代行制度が廃止されることとなっても、厚生年金基金は、代行給付を行わない確定給付企業年金制度に移行することが可能です。その場合には、代行部分の給付が基金ではなく国からの給付に変わるだけで、上乗せ部分は企業年金として存続することから、受給者等には実質的な不利益が生じません。

 そもそも、代行制度は本来、国民全体の年金財政の財源に組み込んで助け合いの財源として充当すべき保険料を、厚生年金基金という一部の者が独占的に利用し、利益を享受してきたもので、「公的年金」と「企業年金」の財政責任が渾然一体となっています。

 加えて、近年は、保有資産が代行部分に必要な水準に満たない。いわゆる「代行割れ」となっている基金が多数発生していました。

 代行部分の給付責任は最終的には厚生年金本体が負うため、代行割れを放置すると厚生年金本体の財政リスクが高まり、基金に加入していない厚生年金の被保険者等にも負担を肩代わりさせることになりかねません。このようなリスクを完全に排除するこことは、極めて重要な公益です。

 したがって、厚生年金基金を全廃しても、それは公共の福祉に適合するものであり、財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであると考えます。

 また、厚生労働省は付帯決議にもつづいて通知を改正し、厚生年金基金の解散等を許可する場合には、厚生年金基金が事業主に対して、退職金規程等に基づく退職給付義務を履行するこたが必要であることを説明したかどうかを確認していると承知しています。

 

3.確定拠出年金法の改定について

 旧民主党は、公的年金制度を補完するという確定拠出年金制度の意義は認めるものの、GPIFの株式運用比率のひきあげににより経済実態以上の株高が演出されているとの指摘もある中、アベノミクスによる株価対策のために利回りを重視した商品を過度に推奨することは個人の商品選択を歪めるものであるとの認識の下、確定拠出年金の運用の方法の選定に関し、元本保証型商品の提供義務を削除することとする闇法を修正し、現行どおり、1つ以上の元本確保型商品の提供を義務付ける修正案を提出した経緯があります。

 

4.リスク分担型(仮称)確定給付企業年金について

(1)事業主が従業員と給付の内容を約し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができるようにする確定給付企業年金を変質させてしまうことがないようにする観点から、現在行われているパブリックコメントを踏まえて、必要であればさらに精査されるべきであると考えます。

(2)受給権の侵害とならないようにする観点から現在行われているパブリックコメントを踏まえて、必要であればさらに精査されるべきであると考えます。

(3)仮に、確定給付企業年金法の規定に収まらない制度変更を行うのであれば、法改正で対応すべきであり、国会審議のなかで確定給付企業年金の本旨から乖離した制度であるかどうか精査していく必要があると考えます。

 

5.支払保障制度の法制化について

 「支払保障制度」については、負担の給付の関係など、関係者の合意が必要であり、さらなる検討が必要ではないかと考えます。

 

 

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