2018年6月22日 第2回社会保障審議会年金部会

年金局

 

○日時   平成30年6月22日(水)10:00~12:00

 

○場所   東京都千代田区西神田3-2-1

ベルサール神保町(住友不動産千代田ファーストビル南館3階)

○出席者

神 野 直 彦(部会長)

小 野  正 昭(委員)

阿 部 正 浩(委員)

小 野 正 昭(委員)

菊 池 馨 実(委員)

権 丈 善 一(委員)

駒 村 康 平(委員)

小 室 淑 恵(委員)

武 田 洋 子(委員)

出 口 治 明(委員)

永 井 幸 子(委員)

原 佳 奈 子(委員)

平 川 則 男(委員)

牧 原   晋(委員)

森 戸 英 幸(委員)

諸 星 裕 美(委員)

山 本 𣳾 人(委員)

米 澤 康 博(委員)

○議事

○神野部会長

 それでは、定刻でございますので、ただいまから、第2回を数えますけれども、「年金部会」を開催したいと存じます。

皆様には、御多用のところ、かつ、天候の不順が続く中を、万障を繰り合わせて御参集いただきまして、本当にありがとうございます。伏して御礼を申し上げる次第でございます。

まず、委員の異動がございましたので、御報告させていただきます。高木朋代委員に新たに委員に御就任いただいております。詳細につきましては、配付してございます名簿を御参照いただいて、御紹介にかえさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 さらに、本日の委員の出欠状況でございますが、阿部委員、植田委員、高木委員、永井委員、森戸委員から、御欠席との御連絡を頂戴しております。また、武田委員からは、少々遅れるとの御連絡がございましたので、いずれお越しいただけると考えております。

御出席いただきました委員の方々が3分の1を超えておりますので、まず、会議が成立しているということを御報告申し上げたいと存じます。

それでは、議事に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。事務局からお願いいたします。

○総務課長

 お手元に配付いたしました資料につきまして、確認させていただきます。

本日は、配付資料といたしまして、資料1「社会保障審議会年金数理部会平成28年度公的年金財政状況報告について」、資料2「財政検証の意義・役割等」をお配りしておりますので、御確認ください。

以上でございます。

○神野部会長

 ありがとうございました。

それでは、大変恐縮でございますけれども、カメラの方にはここで御退室を頂戴したいと存じます。御協力いただければ幸いでございます。

(報道関係者退室)

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

それでは、議事に入らせていただきますが、お手元に議事次第が行っているかと存じますので、御参照いただければと思いますが、本日は「平成28年度公的年金財政状況報告について」と「財政検証の意義・役割等について」という2つを議事にさせていただきます。

ごらんいただければわかりますように、いずれもといいますか、私どもがこれから議論や検討に入る前に共有しておくべき認識を御確認していただければという内容になっております。

2つの議事の内容につきましては、関連いたしますので、事務局からまとめて御説明を頂戴した後でもって、委員の方々から御質問、御議論を頂戴したいと思っておりますので、まず、資料1から御説明いただければと思います。

よろしくお願いいたします。

○首席年金数理官

 首席年金数理官の真鍋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

私から、資料1について説明申し上げます。

1ページ、「1.財政状況の分析、評価」で、今日御報告申し上げる公的年金財政状況報告の位置づけを少し御説明申し上げます。今日の報告は、この真ん中の濃い青で塗っているところでございまして、毎年度の財政状況の分析、評価についてです。この後、資料2で財政検証について説明がありますけれども、財政検証は将来を見据えて年金財政の健全性を検証するという役割を持っておりますが、資料1の財政状況の報告につきましては、毎年度の決算や実績に基づきまして、時系列変化とか、制度横断的な比較とか、あるいは将来見通しとの比較や分析をすることによって、現時点での財政状況がどうかということを評価しているものでございます。

 2ページ、これは社会保障審議会のもとにある年金数理部会でおまとめいただいておりまして、数理部会自体は平成13年の閣議決定に基づいて設置され、今、申し上げました毎年度の財政状況報告を取りまとめていただいておりますとともに、5年に1回行われております財政検証につきましても、それが適切に行われているかにつきまして検証をしていただいています。

 3ページからが今日御報告する内容でございます。財政状況報告自体はいろいろな角度からの大部のものでございますけれども、きょうは特徴的なところとしてその一部をピックアップして御報告申し上げたいと思います。まず、3ページ、「3.公的年金の被保険者数の推移」でございます。グラフを見ていただくとわかりますように、ここ数年、国民年金第1号被保険者、第3号被保険者は年々減っております。一方で、厚生年金というのは大きい意味で被用者全体ですけれども、厚生年金の被保険者数は増えているという中で、ただ、公的年金全体の被保険者数は18年度以降一貫して減少しておりましたけれども、平成28年度は、0.3%という微増ではありますが、増加したということでございます。その中で厚生年金に着目いたしますと、厚生年金の被保険者の増加率は平成28年度3.3%でありまして、平成28年度のトピックスとして10月に適用拡大があったわけですけれども、この適用拡大による短時間労働者を除いた増加率は2.6%で、0.7%分は適用拡大によるものです。

 4ページ、「4.被保険者の年齢分布」になります。一番左が厚生年金全体ですが、一番のボリュームゾーンは40代前半、ここには団塊ジュニア世代がいますから非常にボリュームゾーンであるということです。左から2つは、そのうち先ほど申し上げた短時間労働者です。このグラフは青が男性で赤が女性ですが、この短時間労働者を見ていただきますと、男性は60代が非常に多いことが見ていただけます。女性につきましては、40代から60代前半までに幅広く分布しています。3つ目の国民年金第1号被保険者は20歳代が2割を占めて非常に多いわけですけれども、ここには学生がいるということでこういう分布になっています。

 5ページ、この被保険者の年齢分布につきまして、10年前、5年前と一番直近の平成28年度末を比べたグラフです。青が男性、ピンクが女性、一番薄い色が10年前、真ん中のトーンが5年前、一番濃いのが直近になります。まず、男性を見ていただきますと、一番のボリュームゾーンが40代前半にいますけれども、10年前は当然30代前半、5年前は30代後半で、直近では40代前半ということで、このピークがシフトをしてきています。ここは、先ほど申し上げました団塊ジュニア世代がいるということで、もちろん人口も多いのですけれども、高さ自体も高くなってきていますから、より被用者化が進んできていることが見ていただけるかと思います。10年前の薄い青を見ていただきますと、50代後半にももう一つの山があり、ここは、団塊世代が、10年前はまだ現役でいらっしゃったのでもう一つの山があったわけですけれども、引退に伴ってこの山は今は消滅しています。女性につきましては、40代~50代前半の中高年といったところの被保険者が非常に増えていることが見ていただけます。それから、65歳以上を見ていただきますと、特にこの5年間、10年前と5年前はそう差はないのですが、5年前と直近で言いますと、かなり被保険者数が増えていまして、65歳以上の雇用が進展していることが見ていただけます。もちろんここは団塊世代がいらっしゃって人口も多いのですけれども、人口比で見ましても被保険者の比率は高くなっています。

6ページ、国民年金第1号被保険者の年齢分布の変化ですけれども、第1号被保険者はどんどん減っていることが見ていただけます。

 7ページ、第3号被保険者の年齢分布の変化になります。第3号被保険者は99%女性ですので、男性は見ていただけないかと思いますが、39歳以下の被保険者数の減少が非常に著しい。これにつきましては、もちろん対象人口の減少もありますし、被用者化が進んでいることもありますし、もう一つは、非婚化が進んでいるといったこと、いろいろな要素が重なって減っています。

 8ページ、「8.厚生年金の標準報酬月額別被保険者の分布」でございます。濃い青が男性、濃い赤が女性、28年10月から適用になりました短時間労働者もプロットしておりますが、緑がその男性、オレンジ色がその女性です。ただ、人数がすごく違いますので、全体につきましては左目盛りを見ていただきまして、短時間労働者につきましては右目盛りを見ていただければと思います。全体の男性の被保険者の標準報酬月額の分布ですけれども、一番多いのは62万円の上限のところ、それから、26~30万あたりと41万円にもピークがあるという分布になっております。女性につきましては、22万円のところにピークがあります。短時間労働者は、9.8~11万円のあたりが一番多いですけれども、その後もだらだら分布はしているといった形になっております。

 9ページ、「9.受給権者の年金総額の推移」をグラフにしたものでございます。基本的には受給権者数というのは増えていて、年金総額自体も増えるトレンドにはありますけれども、例えば、ここで見ていただきますと、平成25年度は前年度よりも年金総額は1%強減っております。この年につきましては、男性と共済組合等の女性において報酬比例部分の支給開始年齢が60歳から61歳に引き上げられ、特別支給の定額部分がなくなったということ、加えて、国共済、地共済につきましては、25年8月から恩給期間に係る給付の引き下げが行われまして、年金総額が減ったということでございます。直近の28年度ですけれども、ここは微増しておりますが、0.3%という低い伸び率になっております。やはりこの年も、男性及び共済組合等の女性において、報酬比例部分の支給開始年齢が61歳から62歳に引き上げられたことが影響して低い伸びになっています。

 10ページ、「10.老齢・退年相当の受給権者の年齢分布」です。老齢・退年相当といいますのは、老齢年金自体は期間が短くても出るわけですけれども、原則として被保険者期間が25年以上のある程度の年金のことです。60年改正前は実際に老齢年金と通算老齢年金に分かれていたのですが、改正後は区別はなくなりましたけれども、昔でいう老齢年金相当の受給権者を取り出して、その年齢分布を見たものでございます。上の左側が旧厚生年金ですが、60代後半が一番多く、年齢が高くなるとともにどんどん減っていく分布になっております。ここに被用者年金を並べており、例えば、その右側の国共済を見ていただきますと、特に女性では顕著ですけれども、どの年齢階級を見ていただいても余り人数が変わらない、男性でも旧厚生年金と比べていただきますと、例えば、70歳代から80歳代前半の人数というのはそんなに変わらないということで、制度によって受給権者の年齢分布もかなり異なっていることが見ていただけるかと思います。

11ページ、この後、年金額の話をいたします前に、「11.共済組合等の年金給付のイメージ」ということでポンチ絵をつけております。60年改正前につきましては、共済は共済独自の算定式で年金額を算定されていましたので、退職年金という形でこのポンチ絵のようにひとかたまりのものとして、年金額が算定されていたわけです。左から2列目のように、60年改正で基礎年金制度ができて、基本的には年金額の算定式も共通になったわけですけれども、共済につきましては一部職域加算がありその部分も含めて退職共済年金として一括して裁定されていた。27年10月に一元化が行われまして、その部分は廃止され、今は共済につきましても基礎年金と厚生年金、名前も厚生年金という名前に変わりましたが、年金額を見るときには、過去に裁定されたものにつきましては職域加算部分が含まれていることにご留意いただきたいという意味でポンチ絵を用意しております。

 12ページ、平均年金月額を各実施機関ごとに単純に比較いたしますと、先ほど申し上げた職域加算部分が入ってきてしまいますので、それは一種の企業年金みたいなものですから、そこの部分を外す推計をしたものです。これは被用者年金の老齢・退年相当の平均年金月額がどのくらいというもので、旧厚生年金は実績そのものですけれども、共済について先ほど申し上げた職域加算部分を除く推計をしたものです。例えば、計を見ていただきますと、旧厚生年金では14万5,638円、国共済が隣にあり、17万1,971円と結構大きく差があるように見えるわけですが、これを男性・女性別に見ていただきますと、男性では16万7,000円ぐらいと17万6,000円ぐらいで、そこまでの差ではないことがまずは見ていただけるかと思います。そうはいっても算定式は同じなのに差があるということにつきましては、年金額は、現役時代の報酬、加入期間、年齢に応じた乗率によって算定されますので、報酬が共済のほうが少し高いことと、先ほどちょっと年齢分布で見ていただきましたように、国共済などでは受給権者の年齢が結構高いということがありまして、こういう差が出ているところです。女性につきましては、例えば、旧厚生年金では10万3,000円ぐらい、国共済ですと15万4,000円と1.5倍の差があるわけですが、女性につきましては、報酬の問題もありますし、先ほどの高齢のところに受給権者がたくさんいらっしゃるということもあるのですが、半分ぐらいの要素は加入期間でして、旧厚生年金に比べますと国共済の女性の加入期間は1.5倍ぐらいですので、そういった影響で差が出ています。

 13ページ、細かくて恐縮ですが、これは「13.平成28年度の単年度収支状況」です。決算につきましては、各制度あるいは厚生年金の各実施機関で行われておりますけれども、その決算を制度横断的に整理、取りまとめを数理部会で行っていただきまして、ここでいう厚生年金計、公的年金制度全体の財政状況を明らかにしているところです。ここでは、運用損益分を一旦取り外しまして、運用損益分を除いた単年度収支に着目し、その上でその運用損益を別途把握して全体を見ています。

14ページは、結果をポンチ絵にしたものです。28年度の状況を申し上げますと、解散厚生年金基金等徴収金が4兆4,000億ほどあるということもありまして、厚生年金勘定、厚生年金計、公的年金制度全体ずれも収入が支出を上回っております。それが上から2つ目に運用損益を除く単年度収支残という形で明らかにしていまして、それにこの3行目の運用損益を加えますと、全体の収支残を加えた年度末積立金が出てくるわけですけれども、結論から言いますと、運用損益を除く単年度収支残もプラスだった、運用損益も大きくプラスだったということで、年度末積立金は公的年金制度全体で見ますと、前年度末に比べ、約11兆円増加しています。

 15ページ、少し分析的になりますけれども、「15.厚生年金の保険料収入の増減要因の分析」です。上のほうを見ていただきますと、緑の囲ったところですが、厚生年金勘定で5.9%、国共済でいうと9.2%、厚生年金計で見ますと6.2%で、厚生年金の保険料収入は大きく増加しております。これはどういった要因によるものかということを分析したものが次の表で、厚生年金勘定と私学共済については、ピンクで囲ったところ、被保険者数の増が大きく寄与しています。青で囲った保険料率では、保険料率が引き上がっている影響でどの制度も増加しておりますが、特に国共済、地共済におきましては、一元化に伴って1階及び2階部分に相当する保険料率が大幅に引き上げられたため、7%台という高い伸び率になっています。

 16ページ、「16.国民年金勘定の現年度保険料収入の増減要因の分析」です。国民年金勘定全体の保険料収入は、平成28年度、-0.5%でした。国民年金の保険料につきましては、2年分さかのぼって支払うことができますので、現年度、すなわち当年度分と過去の過年度分に分けることが出来、現年度保険料に着目いたしますと1.7%の増加であったということで、これについてどういった要因かを分析したものがこの真ん中の大きい表です。例えば、28年度でいうと1.7%の増であった。被保険者数につきましては、一番初めに申し上げましたように、国民年金第1号被保険者数はどんどん減っていますので、28年度でいいますと-4.9%という寄与になっております。しかし、保険料額が上がっている新法もありますし、納付率がここ数年どんどん改善しておりますので、その影響で2.6%の増となっています。それから、一番下のその他は、その他ですから取り出した分析以外の残りの雑多な影響ではあるのですけれども、大きな要因といたしまして、26年4月に保険料の2年前納制度が導入されまして、その影響で、26年度は、例えば、初めて2年分払った方がいらっしゃって、そうすると27年度に入るべき保険料が26年度にもう入っていますから、27年度にその反動があって、また28年度に2年分を払ってということになりますので、そういった影響が出ているところです。

 17ページからは将来見通しとの比較でございます。まず、人口関係です。17ページ、「17.合計特殊出生率の実績と前提との比較」です。ここでお断りいたしますが、この人口推計につきましては、平成26年財政検証の前提となりました人口推計ですので、平成24年将来推計人口になります。17ページの合計特殊出生率につきましては、出生中位の仮定値を上回った状態で推移しています。

 18ページ、「18.65平均余命の実績と前提との比較」ですが、ほぼ近いのですが、男性ではやや上回り、女性ではやや下回る水準になっているところです。

 19ページからは経済前提との比較で、まず、「19.物価上昇率の実績と前提との比較」です。物価につきましては、28年度はマイナスということもありまして、前提をかなり下回っています。

 20ページ、名目賃金上昇率の比較ですけれども、名目賃金上昇率で比較いたしましても前提をかなり大きく下回っている状態でございます。

 21ページ、実質賃金上昇率、すなわち対物価上昇率で見た賃金上昇率で比較いたしますと、そもそも前提自体も2018年くらいまで参考ケースと再生ケースはあまり変わらないわけですが、その実績は経済再生ケースと参考ケースの間で推移している状況になっております。

 22ページ、実質的な運用利回りにつきまして実績と前提を比較したものです。実質的な運用利回りといいますのは、対名目賃金上昇率で見た運用利回りのことで、経済再生ケース、参考ケースのいずれも実績が前提を大きく上回っています。

 23ページ、「23.労働力率の実績と前提との比較」です。まず、ここで比較している推計値については、毎年出ているわけではありませんので、一番近いものが2020年という4年先のものであることに留意して見ていただきまして、そうは言いつつ男性はほとんどグラフが重なっているような状況でございまして、50代後半ぐらいからは経済再生ケースと参考ケースの間に実績があるという状況でございます。女性につきましても、4年先のものと比較いたしましても再生ケースと参考ケースの間において、高齢のほうではむしろ4年先の経済再生ケースより労働力率の実績のほうが高いといったことが見ていただけるかと思います。また、女性のほうはグラフで見られるのですが、2012年の実績がこの薄いグレーになり、この4年間の変化を見ていただきましても、非常に労働力率が上がっていったところが見ていただけます。

 24ページ、こういったものを踏まえた上で「24.被保険者数の実績と将来見通しとの比較」になります。左が厚生年金計で、右が国民年金第1号被保険者ですけれども、厚生年金計では実績が将来見通しを大きく上回り、国民年金第1号被保険者については実績が将来見通しを下回っている状況です。赤いものが見通しの経済再生ケース、青いものが参考ケース、実績については星印でプロットをしております。

同じようなグラフがこの後に続くわけですが、25ページ、「25.受給者数の実績と将来見通しとの比較」、これは見通しと実績は大体同じような数値ですが、あえて言うならば、厚生年金計では見通しをやや上回っており、基礎年金ではやや下回っている状況です。

 26ページ、保険料収入の比較です。ここで実際の財政検証はケースAからケースHまでありますけれども、もとの報告書もそうなのですが、8通りもありますので、例示で、ケースC、ケースE、ケースGを評価しております。一番薄い青がケースC、青色がケースE、紫はケースGです。厚生年金計では、1人当たりの標準報酬額自体は賃金上昇率が前提を下回っていることもありまして、実績が将来見通しを下回っていますけれども、被保険者数の実績が将来見通しを大きく上回っているために、保険料収入は厚生年金計では将来見通しを上回っています。一方で、右の国民年金勘定では実績が将来見通しを下回っています。大きな要因は、被保険者数の実績が将来見通しを下回っていることによります。

 27ページ、「27.給付費の実績と将来見通しとの比較」です。やや将来見通しを下回っている状況になっております。財政検証上は年金改定率をプラスと見込んでおりましたけれども、実際には経済状況を受けて年金改定率が28年度はゼロだったことによります。

 28ページ、「28.基礎年金拠出金の実績と将来見通しとの比較」です。基礎年金拠出金単価は全制度共通で、実績が将来見通しを下回りましたけれども、基礎年金拠出金算定対象者数が厚生年金計では実績が将来見通しを上回っておりますので、基礎年金拠出金の額も厚生年金計では実績が将来見通しを上回っております。国民年金勘定では、単価も下がり、かつ、被保険者が減ったため、基礎年金拠出金算定対象者数も見通しより少なかったので、基礎年金拠出金も実績が将来見通しをかなり下回っている状況です。

 29ページ、「29.積立金の実績と将来見通しとの比較」ですけれども、積立金につきましては、厚生年金も国民年金勘定もどちらも将来見通しを大きく上回っているところでございます。

 30ページ、この積立金の実績と将来見通しの乖離分析を細かくしているわけですが、その内容のフローチャートです。

 31ページ、28年度末の将来見通しからの乖離は、例えば、厚生年金のケースEでは21兆円強あったわけですが、まず、足元の26年度末の積立金の乖離分が22兆円強ありまして、27年度につきましてはマイナスでしたけれども、28年度はプラスだったということで、この3つが積み重なって、28年度末で財政検証と実績を比べますと、実績が21兆円強多い状況です。

 32ページ、28年度につきまして、どういった要因でこういう乖離が出たのかということを細かく分析したものです。

これを見ていただく前に、まず、33ページで各々の要素が積立金にどういった影響を与えるのかというものをイメージ図でまとめておりますので、こちらを見ていただきまして、まず、一番上から、名目運用利回りが実績が前提より高かったということになりますと運用収入が将来見通しより多くなりますので、それは積立金に対して厚生年金、国民年金ともにプラス、多くなるように働くことのイメージした図でございます。その次の賃金上昇率につきましては実績のほうが低かったということで、厚生年金しか関係がありませんけれども、保険料収入が減る方向に働いて、それは積立金を減らす方向に働くということです。収入については、ここの矢印の向きと積立金らの影響が同じ向きになります。その次の年金の改定率は、実績が前提より見通しを下回ったということになりますと、年金改定が行われなかったことで、給付費も見通しより少なかったということになります。しかし、この給付費は支出でございますから、積立金への影響は逆に働きまして、要は、支出が見通しより少なかったということになりますので、積立金にはプラスになるということで、逆の向きになりまして、厚生年金も国民年金もプラスの影響となります。その次の被保険者数につきましては、厚生年金は見通しより多く、国民年金は見通しより少なかったと申し上げましたけれども、保険料収入につきましてはそのままといいますか、厚生年金の保険料収入は被保険者の増を受けて見通しより多く、国民年金は見通しより少なかったということになります。一方で、被保険者数は基礎年金拠出金にも影響を与えまして、基礎年金拠出金算定対象者数が見通しより多かった、少なかったという影響が出ますので、基礎年金拠出金は厚生年金につきましては見通しより多かった、国民年金については見通しより少なかったということになるわけです。被保険者数の影響は、厚生年金でいうと保険料収入の増と、基礎年金拠出金の支出増と相殺しまして、保険料収入の増の影響のほうが多かったので、積立金への影響はプラス、要するに、積立金を増やす方向に働いたことになります。国民年金につきましては、保険料収入も減り、基礎年金拠出金という支出も減りましたけれども、その支出の減のほうが多かったということで、国民年金につきましても積立金にはプラスの影響となります。受給者数については、やや多かった、やや少なかったというのが支出である給付費にそのまま影響があって、積立金には逆に影響しますので、厚生年金では積立金を減らす方向に働き、国民年金では積立金を増やす方向に働きました。スライド調整ついては、マクロ経済スライドのことですけれども、マクロ経済スライドの調整率自体は人口によって決まりますけれども、そもそもこのマクロ経済スライドが発動するかどうかということは経済要素によって決まり、28年度は経済環境のもとマクロ経済スライドが発動されませんでした。一方、財政検証上は見込んでおりますので、その分、給付費は見通しより多くなっているということで、積立金への効果といたしましては、どちらも積立金を減らす方向に働いたということでございます。

 そういった前提のもと32ページを見ていただきますと、例えば、ケースCの厚生年金を見ていただきますと、28年度にかかる発生要因の寄与計は6.64兆円ですが、大きいのは名目運用利回りの効果が大きくて、5.10兆円は運用がよかったことによるもので。それ以外の収支残につきましても1.54兆円というプラスの効果がありまして、先ほど申し上げたような形でプラスマイナス各々の要素が出ているということでございます。中でも人口要素が2.00兆円ということで、厚生年金につきましては積立金を増やす方向に大きく働いているといったことが見ていただけます。

 最後に、34ページです。今、申し上げた乖離分析につきましては、実績と将来見通しの積立金額をそのまま比較していましたが、最後のここにつきましてはさらに踏み込んだ分析です。例えば、この棒グラフのケースCで見ていただきますと、将来見通し上の厚生年金積立金の見通しは167.8兆円であり実績は一番右のピンク色で188.9兆円です。先ほど申し上げたのは、これらを比較していたわけですが、実際には既に財政検証の後、27年度、28年度、経済の実績が出てきていて、そこで前提と乖離が生じています。その乖離は将来にも影響を及ぼしますので、27年度、28年度の乖離分の影響につきまして評価し積立金が真ん中の青でございまして、これを評価の基準となる積立金額と呼んでいます。これが額で言いますと160.3兆円になります。これと実績を比較することが妥当であろうということで評価の基準となる積立金額を100といたしまして、実績を指数化しますと117.8となります、要するに、17.8%ほど実績が評価の基準となる積立金額を上回る結果となっています。ただ、この結果を評価する際に、ご留意いただきたいのは、これは物価上昇率、賃金上昇率の実績が出ているところまでは評価し直していますけれども、今後、また前提と実績では乖離が生じる可能性があるということと、公的年金の財政運営自体が積立方式ではなくて賦課方式を基本としておりますので、この積立金から得られる財源というのは、押しなべて言うと1割程度であることを踏まえた上でこの結果を見ていただければということです。いずれにしても今の時点ではこういう積立金を保有した状態であると言えるかと思います。

 私からは以上です。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

引き続き、資料2についてお願いいたします。

○数理課長

 数理課長です。

 私からは、資料2に沿って御説明申し上げますけれども、本日の御説明ポイントを大別すると3つございます。

 まず、1つ目は、法律に基づいて行われております公的年金の財政検証について、その意義とか役割とか主な結果について御説明申し上げます。

 2点目ですけれども、前回の法定財政検証に合わせて行ったオプション試算というものがございますが、試算をやることになった経緯や主な結果を御説明したいと思います。

最後、3点目ですけれども、前回の財政検証以降に判明した経済指標等の実績がございまして、ただいま首席年金数理官より報告もあったところではございますけれども、それらの年金財政に与える影響を簡単に御説明申し上げたいと思っています。

 年金部会の委員の皆様には既に御案内の話が多いところで大変恐縮ではございますけれども、新任の委員の方もいらっしゃいますし、何よりも来年の財政検証に向けて議論の素材となるように、改めてきょうお話しさせていただくところでございます。

 資料2、1ページ、財政検証は平成16年改正による長期的な年金財政フレームに基づく仕組みですので、まずは平成16年改正のポイントを説明いたします。ここで上にシーソーの絵が描かれておりますけれども、シーソーの左側に年金制度から見た収入、右側に年金の支出がございまして、これは長期的な年金財政の収支バランスをさせる必要があるという観点から描かれたものでございます。平成16年改正において左側の保険料収入や国庫負担が固定されまして、右側の年金支出がマクロ経済スライドという手法を通じて調整されて、この手法によりおおむね100年間の長期的な収支均衡が図られる仕組みとなったことは御案内のとおりでございます。ここで平成16年改正前はどうだったかというと、右側の年金支出を固定して、それに必要な保険料収入を設定していくという仕組みでございました。現在でも諸外国はそのような仕組みが多いわけですが、日本では平成16年改正で基本的な考え方を展開してこのような形になったということです。

 2ページ、平成16年改正前も現在の財政検証と同様に5年に1回長期的な財政見通しを作成して、長期的な年金財政の収支バランスをさせるために将来の保険料率を段階的に引き上げていくという財政再計算というものを行っておりました。下に絵がありますけれども、財政再計算時には、青い実線の保険料率のように、まずは左下に黒い丸で囲んだ部分がありますけれども、当面5年間の保険料率は法律で規定して、その後の保険料率は段階的に引き上げていって、最終的に一定の水準で賄えるような保険料率の見通しを作成してございました。その際、あわせて給付と負担の見直しを同時に行ってきていたというところでございます。

 3ページ、その具体的な給付と負担の見直しの歴史でございます。この表は、一番上が昭和48年になっていますけれども、思い出してみますと、当時、オイルショックの時代で、物価とか賃金の伸びが大変大きくて、昭和48年に導入された賃金再評価とか物価スライド制というもので年金改定がなされていたわけですけれども、この時期、給付の充実が大変図られていた時代でございます。ただし、長い目で見てみますと、昭和60年改正があったわけですけれども、そのころを境に徐々に給付の適正化が図られていくこととなったところです。この表は、右から2列目に財政再計算の前提としての出生率が書かれておりまして、これは御案内の将来推計人口の前提値になりますけれども、数字を確認してみますと、2を上回る水準から徐々に少子化が進行していって、下から2行目、平成6年改正からは2を下回るような値が設定されて、賦課方式を基本とする公的年金制度において給付の適正化が必要となってきました。このように平成16年改正前は、給付水準を法律で定める一方で将来の保険料水準については見通しを示して、少子高齢化が急速に進展する中で、将来の現役世代の負担を過重なものとしないために財政再計算ごとに給付と負担の見直しが必要となっていったということです。一例として、下から2段目が平成6年財政再計算の例ですけれども、この欄で確認してみますと、真ん中あたり、左から3列目、4列目に、改正前の足元の保険料率が14.5%でした、それがまずは17.35%に引き上げられたということがあります。また、その右隣に、改正前制度での最終的な保険料率が括弧書きにある34.8%という数字と見通されてございました。この最終的な保険料率が高くなり過ぎないように制度改正が行われて、これは左から2列目に書かれてありますけれども、例えば、平成6年改正では、厚生年金の定額部分の支給開始年齢の引き上げとか、可処分所得スライド制というものが導入されまして、その結果、最終的な保険料率が29.8%に抑えられたところでございます。このような給付の適正化と保険料率の引き上げの見通しが財政再計算ごとに繰り返されてきたわけですけれども、平成16年改正前ごろの時代を思い出してみますと、将来の保険料負担がどこまで上昇してしまうのかというような負担の声もありまして、平成16年改正では、将来の現役世代の過重な負担を回避するという観点から、保険料水準を法定化して、マクロ経済スライドにより給付水準を自動的に調整する仕組みが導入され、基本的な考え方がここで転換されたことになります。

 4ページ、この平成16年改正フレームのもとで、少なくとも5年ごとに長期的な年金財政の健全性を検証する仕組みが財政検証になります。5年ほど時間が経過すると、新しい国勢調査を受けて人口推計が新しいものに置き換えられますので、経済の状況も変わることになって、それらの動向を踏まえておおむね100年間の財政見通しを作成し、あわせてマクロ経済スライドの終了年度の見通しを確認します。先ほど年金数理部会の報告がございましたけれども、年金数理部会で5年ごとの財政検証の結果と実績を毎年度比較して、つまり、過去を振り返って検証する作業が行われているわけですけれども、一方で、私どもが行う財政検証は、将来に対して一定の前提を設定し、将来の財政見通しや給付水準の見通しを作成して、そのことを通じて長期的な年金財政の健全性を検証しているということです。ここに所得代替率が、左下に、足元で平成26年度62.7%という数字が書かれてございますけれども、マクロ経済スライドを続けていく間に徐々に低下していくこととなります。ただ、公的年金の給付水準が低下し過ぎると問題がないわけではありませんので、ある財政検証を行って、5年のうちに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、スライド調整を終了して、給付と負担のあり方について検討を行い、所要の措置を講ずることが年金法上の規定になります。

なお、5ページ、6ページは、今、申し上げたことの条文の解説なので、省略いたします。

 7ページ、平成26年財政検証の諸前提です。大別して4つの前提があって、上から順に、人口の前提、労働力の前提、経済の前提、その他の前提になります。

 8ページ、財政検証の経済前提の基本的な考え方になります。年金部会の下に経済前提に関する専門委員会が設けられておりまして、年金部会の委員の中でも、植田委員をはじめ6名の方が専門委員会の委員でいらっしゃいます。この資料の文章は前回の財政検証時の専門委員会の報告書の抜粋ですけれども、確認しておきますと、前半の下線部のとおりですけれども、財政検証の前提は、それを行う時点において、使用可能なデータを用いて、最善の努力を払って長期の平均値として設定されているということです。また、後半の下線部にあるとおり、財政検証の結果は、将来の状況を正確に当てにいくという性格のものではなくて、法律や計算時点で得られるデータの将来の年金財政の投影という性格のものであって、だからこそ平成26年財政検証では複数ケースの前提を設定して、その結果についても幅を持って解釈する必要があるということが報告されております。

 9ページ、平成26年財政検証の主な結果で、人口推計中位の前提としますと、幅の広い8ケースの経済前提のうち、A~Eの5ケースでは最終的な所得代替率が50%以上ですが、F~Hの3ケースでは50%を下回る見通しとなっております。

10~12ページ、経済前提の比較的高いケースから低いケースまでの3ケース、C、E、Gごとに見た年金額や所得代替率の結果でございます。各ケースとも、足元の平成26年度から将来の4つの時点における夫婦世帯の標準的な年金額で、緑色の棒グラフで書いているところですけれども、その下にある所得代替率の数値を確認したものでございます。

 13ページ、これは世帯類型との関係で公的年金の給付と負担の構造を見たものでございます。一番上が夫のみ就労を仮定した夫婦世帯、真ん中が夫婦共働きの世帯、一番下が単身世帯ですけれども、このページのケースではいずれも世帯1人当たりの賃金水準が20万円と同じですので、1人分の年金月額も所得代替率も同じになるということです。

 14ページ、賃金水準別に見た年金月額や所得代替率ですけれども、年金月額は右上がりの赤い線で、所得代替率が右下がりの緑色の線ですけれども、御案内のとおりで、定額の基礎年金を通じて所得再分配効果があって所得代替率が右下がりになっていることがわかります。

 15ページ、財政検証の結果、わかったこととして、デフレが給付水準に与えた影響の図を掲載してございます。この絵には2本の線がありまして、オレンジ色の矢印が平成26年財政検証の給付水準の結果、青い矢印が10年前の平成16年財政再計算の結果ですが、ごらんのとおりでございまして、10年前には、基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドによる調整期間が20年間で同じであったものが、平成26年財政検証では、足元の基礎年金水準が上昇して、基礎年金の水準調整期間が約30年と長くなって、逆に厚生年金は短くなってということがわかります。これは、この10年間にデフレによってマクロ経済スライドの給付水準調整が発動しなかったことや、賃金が低下する中で年金が維持されたことなどによって、足元の基礎年金の給付水準が上昇したことを背景とするものですが、これらの点が確認され、平成28年の年金法改正では賃金スライドの徹底が図られることとなったということは御案内のとおりでございます。

 16ページ、マクロ経済スライドの調整期間の終了メカニズムで、基礎年金と厚生年金の調整期間のずれが生じることの構図を解説したものです。シーソーの絵が2つありますけれども、左側が国民年金法による規定、右側が厚生年金保険法による規定で、それぞれがおおむね100年間で収支均衡を図るようにスライド調整期間を決定することを図示したものです。基礎年金は両者共通のものになりますので、まずは国民年金勘定において、1万6,900円の国民年金保険料などと基礎年金の支出が均衡するよう、基礎年金のスライド調整期間が決定されることになります。次に、厚生年金勘定において、その基礎年金水準を所与として、18.3%の保険料率等と均衡するよう、報酬比例部分の調整期間を決定するため、御案内のような調整期間のずれが生ずることとなります。結果として、下の表にありますように、報酬比例部分と基礎年金を合計した水準は横ばいからやや上昇している中で、将来の基礎年金水準が従前より低下する見通しとなっているところです。

 17ページからがオプション試算になります。これは、25年8月に取りまとめられました社会保障制度改革国民会議の報告書を踏まえて実施することとなりました。

 18ページ、オプション試算の内容で、3つやりましたということが書かれていますけれども、主な結果とあわせて19ページ以降で説明させていただきたいと思います。

まず、オプションIはマクロ経済スライドの仕組みを見直した場合の試算になります。つまり、現行制度では、賃金とか物価の伸びが低かった場合に名目の年金額が前年度を下回ってまでマクロ経済スライドを調整されることにはなっていませんけれども、その点を見直してフルに調整する仕組みとした場合の影響を見たものです。ケースCやEのように高成長のケースでは所得代替率の影響は+1%にも達しない0.何%という程度ですけれども、ケースGとかHのように低成長のケースであるとその効果が大きいことがわかります。オプションIIですけれども、被用者保険の適用拡大をさらに進めたケースを見たものです。現行の厚生年金適用事業所にいらっしゃる週20時間以上勤務の短時間労働者へ例外をなくして220万人ベースで拡大したものが①、②は現行の非適用事業所の被用者をはじめ全ての被用者にまで1,200万人ベースで拡大したものになります。②まで到達するのは簡単な話ではないと思いますけれども、その効果はかなり大きいことがわかります。

 このオプションIIを行うとどういう効果があるかということで、飛んでいただきまして21ページに行っていただきますと、下に基礎年金と報酬比例部分の内訳の数字が書かれておりますけれども、基礎年金の給付水準が赤い字で書かれているとおり上昇していることがわかります。この構造ですけれども、上のグラフにありますように、適用拡大によりまして短時間労働者が1号から2号に移動することになりますので、1号被保険者当たりの積立金が増加することになります。国民年金財政が改善することになりますので、基礎年金の所得代替率が改善することになります。

 20ページにお戻りいただきまして、オプションIIIです。基礎年金のための保険料拠出期間を45年間に延長して、さらに65歳以降も厚年適用事業所で働くことを選択して、繰下げ受給をすることで年金額がフルに増額される仕組みとした場合の試算です。この見直しを行うとかなりの給付水準の上昇につながることがわかりますけれども、その一方で、60歳代前半が基礎年金期間となることに伴って将来の国庫負担が増加していきます。

 22ページ、その数字を掲載させていただいていますけれども、例えば、40年後ごろ、平成67年ごろを見ていただきますと、国庫負担の額が1兆円強のプラスになっていることが留意点でございます。

23ページ、以上、申し上げました平成26年財政検証とオプション試算の結果を総括したもので、これは飛ばさせていただきます。

 24ページ、このオプション試算についてどのような評価が行われているかというものです。これは2つ○があって、上の○が当年金部会において平成27年に行われた議論の整理の抜粋でございます。下の○は年金数理部会のピアレビューの抜粋でございますが、記述を年金部会のほうで確認しておきますと、オプション試算は、改革の必要性や効果についての共通認識を形成する上で非常に重要な役割を果たし、今後の財政検証に当たっても課題の検討に資する検証作業が行われることが望ましいという記述になってございました。よって、財政検証の作業を行います我々としては、次回の法定財政検証におきましても、あわせてオプション試算のようなものを行うつもりで準備は進めていきたいと考えておりますけれども、そのような試算を行うことが必要かどうかという点につきましても、委員の皆様におかれましては、本日、御議論いただければと思っております。

 平成28年に年金改革法が成立しましたが、25ページ、1.にありますように、被用者保険の適用拡大や3.にある年金額の改定ルールの見直しには、今、申し上げましたような26年財政検証あるいはオプション試算の結果を踏まえてのものであり、制度改正的に考えても一歩前進するような改革がなされたということです。

ちょっと飛ばしまして、28ページ、第1回の年金部会で御相談しました当面の議論の進め方でございます。

29ページ、経済前提に関する専門委員会が昨年7月からスタートしております。既に御案内の話ではございますが、紹介させていただきます。

 30ページ、平成28年年金改革法の附帯決議において、2つ線が引かれていますけれども、次の財政検証においては、経済前提の設定方法あるいは所得代替率の示し方等において課題が示されている点についても御紹介させていただきます。

 最後、31ページ以降が残り3分の1で、年金財政に与える諸前提、つまり、最新の将来推計人口や最近の制度実績等を確認して、その与える影響を考えていきたいと思います。

32ページ、平成29年に公表された将来推計人口の結果ですけれども、今回の推計では出生率の仮定が前回推計よりも上方修正されているということなどから、前回推計よりも人口減少の速度や高齢化の進行度合いが緩和されているということです。

 33ページ、出生率の仮定ですが、前回推計と中位の前提同士で比べますと、前回推計がグレーの点線の1.35、今回推計が緑色の点線で1.44となってございます。

 34ページ、平均寿命の実績と仮定値の推移になりますけれども、実績は前回推計の仮定値と近い値となっておりますので、今回の推計もそのトレンドが延長されたものとなっております。

 35ページ、マクロ経済スライドの概念図ですけれども、左側の絵は、人口の年齢構成が安定した状態であると、下にある年金制度を支える力が賃金上昇に応じて増えていくので、上の年金額も賃金上昇に応じて改定できることを表したものですが、右側の絵のように、少子高齢化が進行して労働力人口が減少したり、あるいは平均余命が延びていくと、長期的な年金財政の均衡が崩れる要素となりますので、賦課方式を基本とする日本の年金制度においては、その均衡を図るために労働力人口の減少と平均余命の影響を織り込んだマクロ経済スライドに調整が導入されているということです。

 36ページ、その年金制度を支える力となる公的年金被保険者の実績を財政検証と比べてみますと、特に高齢期の厚生年金被保険者の増加に伴って公的年金被保険者が見込みよりも増加していることが赤枠囲いの部分でわかります。

 37ページ、経済前提が年金財政へ与える影響を見たものです。賦課方式を基本とした公的年金は、人口構造の変化による影響を大きく受けますので、だからこそ先ほど申し上げたマクロ経済スライドが導入されているわけですが、ここでは人口構造の影響を除いた経済変動の影響だけを見たものです。真ん中にシーソーの絵で描かれているとおりですが、基本的には収入、支出ともに賃金水準の上昇に応じて改定されていくところですけれども、逆に考えてみますと、収入、支出の中で賃金に連動しない部分が年金財政にとって影響を与えることになります。上の四角い枠の中の下の部分に書かれている2つの要素がございますけれども、1つは、運用収入は必ずしも賃金に連動するものではありませんので、運用収入のうち賃金上昇との差に当たる部分、つまり、「スプレッド」と呼んでいる実質的な運用利回りが年金財政に影響を与えることになります。もう一つが、裁定後は物価スライドということになりますので、物価上昇率と賃金上昇率の差、実質賃金上昇率がもう一つの要素になってまいります。

 38ページ、公的年金は賦課方式で運営されていることから、おおむね100年間のうち積立金から得られる財源は約9%で、給付の約9割は保険料と国庫負担から賄われているということを御紹介いたします。

以上の観点から、39ページ、経済前提と実績の推移を比較してみますと、青い枠に書かれているのが物価上昇率ですけれども、これは見込みよりは低い。マクロ経済スライドが発動していないというのは御案内のとおりです。ただし、実質賃金上昇率が黒い枠で、ほぼ見込みどおりの推移でございますし、スプレッドの赤い枠ですけれども、見込みは高い水準で推移しているところです。

 40ページ、これらの結果ですけれども、マクロ経済スライドの調整が平成27年度に1回発動しただけになっておりますということ、あるいは、41ページにありますけれども、積立金の実績は、数理部会の報告にもございましたけれども、見込みよりも実績が+21.9兆円になっているということでございます。

 私からの資料説明は以上です。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

これから議論していく前提として、共有すべき事実認識として年金財政の現状について真鍋首席年金数理官から御説明いただいた上で、武藤課長から、おさらいのようなことになるかもしれませんけれども、財政検証についての意義等々について御説明を頂戴いたしました。

それでは、御議論をどうぞ。

○権丈委員

 新任の委員の方もいらっしゃいますのでと説明されていたことに、新任の委員が追加説明するのもおかしな話ですけれども、最近の報道の2040年の社会保障給付費190兆円という名目値の報道を見ていると、恐らく彼らは、財政検証の意義、役割も理解できないだろうと思えます。あの報道を正しいとする、あるいはああいう形で報道すること自体におかしさを感じない人たちは、恐らく財政検証を理解できないですね。そのあたりのところの説明をさせていただければと思います。

 まず、資料2のスライド8をごらんください。この資料2のところで「そもそも、財政検証の結果は、人口や経済を含めた将来の状況を正確に見通す予測(forecast)というよりも」で、「というよりも」と書かれているのですけれども、ここは予測「ではなく」、「人口や経済等に関して現時点で得られるデータの将来の年金財政への投影(projection)という性格のものであることに留意が必要である」。「このため」という話があるのですけど、ここは、この投影、プロジェクションをやっているのだということを100回読んで覚えてもらわないといけないところですね。絶対にこれは予測ではないということをご理解いただかなければなりません。

 資料1のほうは世界が違ってきます。これは、たとえば骨太の方針で、3年、5年先の財政運営を議論しようというときの議論では名目値は意味を持ちますけれども、20年後、30年後の議論をしようとした瞬間に世界が異次元の世界に行ってしまいますので、そこで名目値の議論をしても全く意味がありません。

どうしてそういうことが起こるのかというと、将来は不確実だからなんですね。不確実だから公的年金があるのだけれども、年金を議論するときには将来の議論をしなければいけない。だから、プロジェクションで対応していきましょうという形で進んでいるのが年金の財政検証になります。将来が不確実であるからプロジェクションをやるのですけど、基本は何をやっているかというと、我々が高校時代とかの「傾向と対策」みたいなものです。傾向と対策で、この範囲で問題が起こってくるだろうと傾向を可視化して、その問題にみんなで満点をとれるように対策を練ろうよということをやるために、懸命にこの財政検証をしているわけです。

 そういう意味では、2004年のときの50%という制度の見直し規定は、システムとしては、不確実な未来に対する対策の練りよう、対策を打つという規定がまだ不十分だったのですね。このシステムとして不十分だったところを、2013年の社会保障制度改革国民会議で、「単に財政の現況と見通しを示すだけでなく、課題の検討に資するような検証作業を行い、その結果を踏まえて遅滞なくその後の制度改正につなげていくべき」ということが組み込まれて、ある程度システムが進化することになります。

 財政検証に関しては、そういう展開を見せたわけですけれども、将来は不確実であることがまた大きな意味を持っていきまして、今度は資料2のスライド37を見てほしいのですが、「経済変動が年金財政に与える影響」のスライドですけれども、ここに書いてあることは、金利にしてもいろいろなものは名目値では意味がありませんと書いてあります。これは、本当に名目値で議論をしても意味がありません。将来の年金給付額は、基本は賃金に連動して決まり、その賃金の将来の推移は長期的には不確実なものですから、将来の年金給付水準は賃金を分母と置いた形での所得代替率あるいはマクロだったらばGDPを分母と置いた場合のGDP比でしか議論することさえできないぐらい、長期になっては意味が変質してしまいます。そのあたりのところを理解していなければいけないということがございます。

 そういうことを考えていくと、財政検証について、多くの人がなぜ自分が理解できないのかということを考えるときには、先ほどのスライド8のところにあった、予測ではなくプロジェクションだ、投影なんだというこの意味を理解しているかどうかということが極めて重要になってくる。と同時に、先ほど武藤課長から話がありましたけれども、オプション試算はやるべきかどうかという議論がありましたけれども、システムを退化させることはもうできませんので、さらに進化させる形でもっと細部のところまでやっていくということを、私は、年金部会、年金局のほうに要求したいと思っております。

○神野部会長

 ありがとうございました。

 駒村委員、どうぞ。あとは原委員に行きます。

○駒村委員

 あまり時間もないので質問と事務局の見解をお聞きしたいと思っています。

資料2の1ページ目です。この左側と右側の図です。バランスのとれている図ですけれども、左側がいかにパイをふやしていくのかあるいは大きくしていくのかということで、保険料収入が期待できるところでありますけれども、多くの方に長く働いてもらうことが大事だということだと思います。それから、オプションII、IIIがまさにパイをふやす政策だったと思います。右側が今度は未来世代と現役世代でパイを分けるためのルールとしてのマクロ経済スライドで、オプションIのキャリーオーバー、前回の法律改正がこれを意味していたのだと思います。だから、パイを増やす政策とパイを分ける政策と分けて考えていきたいと思います。

 1つ確認なのですけれども、有限均衡方式がどんどん未来世代を5年置きに組み入れていくということになってくると、理屈上、これは事務局に確認なのですけれども、38ページ、現行は財源構成の内訳のうち積立金から得られる財源は9%となっていて、右側ではだんだん時間の経過とともに積立金のウエートが上がっていくように見えているのですけれども、これは新しい世代、人口が少ない世代がどんどん視野に入ってくる。つまり、今後、この辺がどんどん入ってくると、今の状態であれば、より積立金の依存度が高くなるのかどうかということを確認させていただきたいと思います。それが質問です。

 あとは、コメントというか、事務局の見解の確認になりますが、今後の議論の切り口になると思うのですけれども、資料2の15ページを見ると、マクロ経済スライドがもたらす副作用が見えてきた。代替率で見ると、現在、62.7のものが50.6、これは100のものが80になることに相当していることになるのですけれども、基礎年金で見ると、36.8が25.6ですから、100のものが70になるということを意味している。

 これが各世帯にどういう影響を与えているのか。つまり、基礎年金の実質低下がどういうダメージを与えていくのかということを細かく見ると、14ページを見ればわかってきて、トップの所得階層の代替率の変化は100のものが83になる。つまり、49.2%の代替率が41.0%になるということは100のものが83になることを意味している。それに対して、一番下の15万円層は111.4%のものが84.9になる。これは100のものが76になることを意味している。つまり、標準で考えると100のものが80になるのだけれども、高所得階層だと83にとどまる。ところが、低所得階層だとそれが76まで落ちる。

 これはまさに基礎年金の給付水準、実質水準の低下を意味しているということなのですが、そのような部分を読み取れるかどうかというと、この15ページの表現が甘いのではないかと思う。将来の基礎年金の所得代替率の低下という表現はちょっとわかりづらくて、もっとはっきり言うと、対賃金上昇率で評価したときの基礎年金の実質価値が3割低下するおそれがある、それにどう対応するかと表現したほうが、よりこの基礎年金マクロ経済スライドが基礎年金に効いていくダメージがよくわかるのではないか、危機感が見えるのではないかと思います。基礎年金の低下は現行所得保障政策を基礎にすると障害年金も遺族年金も老齢年金も道連れということになりますので、所得保障政策上、ものすごく負荷がかかる。特に生活保護などに負荷がかかるのは明らかであろうと思いますので、この辺は、基礎年金の所得代替率低下という表現よりは、もう少し直感的に危機がわかるような表現にしたほうがいいのではないかと思います。

 以上です。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

それでは、質問を、これについて、つまり、38ページのこれについて、武藤課長、よろしいですか。何かコメントがあれば、特に御意見で述べたことについて、基礎年金、コメントが、今の状況であればで構いません。今後議論していくことになるかと思いますので。

○数理課長

 38ページの資料で、左側におおむね100年間を累積して一時金化して、積立金が給付の約1割程度になっているということで集約させていただいておりますけれども、これは過去及び将来でどうかということで考えてみますと、平成21年財政検証あるいは平成16年財政再計算がありまして、同じような財源の内訳を書いているわけですけれども、大体約1割程度という意味では同じような数字になっているということです。

将来について、これはこの表にあるとおりでして、将来の見込みについては、ケースEにおきましては、平成35年後以降ぐらいですかね。2110年までにかけて積立金を活用していく見通しになっているということです。ただ、この将来の財源内訳について、これも皆さんは御案内のとおりなのですけれども、財政検証の結果は将来の人口や経済の影響を大きく受けることになりますので、将来仮に財政検証を置き換えたときにどうなるかということを確定的には申し上げることは難しいということになります。

 ここで、水色の保険料、黄緑の国庫負担、あるいは黄色い部分が積立金から得られる財源ということですけれども、仮に少子化が改善して出生率が上がったということになりますと年金制度を支える力が増えることになりますので、ここの水色の部分が増えることになって、その逆で黄色い部分が減るということになりますし、少子化が進行して出生率が低下したりするとそれは逆の結果になると思いますので、今後どういうふうになるかというのは確定的に申し上げることはできませんので、5年ごとの次期財政検証の中でお示ししていきたいと考えているところでございます。

○神野部会長

原委員、お待たせしました。

○原委員

 短目に。

 ご報告いただきまして、ありがとうございました。

 私は、まずは、こういったことをどのように正しく伝えていくかということが非常に大事なのではないかと思っております。5年に1度ということで、財政検証とか年金の財政の話は専門用語や数字が幾つも出てきます。所得代替率、スプレッド、実質賃金上昇率など、特有な用語もあります。基礎年金拠出金といった言葉も仕組みとしては難しい言葉になると思うのですが、それらの言葉が何を意味するのかということを広く一般の方に理解してもらう努力が非常に重要で、いろいろな数字が出てくる中で、その数値が何を意味するのかということを含めて、正しい情報をきっちりと国民に伝えていかなければいけないと思います。

 来年の財政検証を控えて、今後年金がより注目される時期になってくると思いますので、財政のことも含め、そして公的年金のもっと基本的なところも含めて、先ほど、財政検証の意義などについて、御説明がありましたけれども、そういったことを特に将来の話になりますので、若い方にも興味を持って知っていただきたいと思います。そのために、情報の提供の仕方とか、在り方とか、教育というところも含めて考えていくべきと思います。

この機会に、財政検証という年の前に、基本的なことが事前にきちんと伝わっていれば、いざ財政検証の結果が出たときに正しい理解、誤解のない理解をしていただくことができ、冷静に次をどうすればいいのかという議論の検討に進むことができると思います。

 これはお願い事ですけれども、前回の部会で遺族年金とか障害年金についての議論は順番に議論していくことが決まっていますが、この財政検証の前という大事なときに、公的年金の情報の提供の在り方とか教育の問題について、できればこの時期に年金部会で取り上げていただきたいと思っています。情報提供の身近な例を1つあげますと、私が業務で携わっている企業研修では、年金の情報提供という意味でねんきん定期便を使って将来の皆さんで将来設計とか、働き方とか、そういう計画を立ててもらっているのですが、ほぼ従業員の皆さんが根本的なところを理解していないまま数字を手にしているので、公的年金について質問・疑問がたくさん湧き上がってくるといったことがあります。皆さんも興味はあるところですけれども理解がなかなかしにくいというところがあるので、そういったことも含めて、基本的なところの情報の提供をどうしていくか、数字の見方とか、用語とか、そういう情報発信といったこと、教育の問題も含めて、今、この時期に、とりあげていただくことが必要なのではないかなと、これはお願いですけれども、思っておりますので、ぜひお願いしたいと思います。

 以上です。

○神野部会長

 ありがとうございます。

適切なアドバイスをありがとうございます。

時間がないものですから、出口委員、引き続いてお願いできますか。

○出口委員

それでは、3点だけ申し上げようと思います。

 まず、1ページの絵ですが、前にも申し上げたような気がしているのですが、普通の市民はやはり絵を見て理解しますので、この④の年金額のところにこういう矢印があると、下がるのではないかという印象を与える。これは私は大変まずいと思いますので、年金といえば不安をあおるのが大体メディアの皆さんの常態なので、これは恒等式なのですから、こういう不必要な矢印は取っていただきたいということと、この2004年改正の基本は、ベースはマクロ経済スライドにあるわけですけれども、この当たり前のことがきちんと行われてこなかったことを説明することが私は一番大事だと思うので、この現行の制度を市民の皆さんに理解していただくポイントは、決して不安をあおることでもなく、マクロ経済スライドが、いろいろな理由で、中には理不尽なものもあったように思うのですけれども、ちゃんと行われてこなかったのですよということを、まず、市民の皆さんに認識していただくことが一番大事なポイントだと思います。これが1点です。

 2点目は、権丈委員が全て言われたと思うのですけれども、予測ではないので、今、経済前提等いろいろ議論されていると思うのですが、この前の審議会等で伺った限りでは、諸外国ではこんなに細かい経済前提を設定している国はないという御指摘があったわけですから、プロジェクションであれば大体の枠さえわかればいいわけですから、ぜひ今回の財政検証に当たっては、諸外国と同じレベルの経済前提で私は十分だと思います。逆に言えば、前回に比べて何でこんなに経済前提が簡単になったのですか、それは予測ではなくてプロジェクションだからですという説明にも使えると思いますので、ぜひ世界標準の経済前提をつくっていただきたい。これが2点目です。

 3点目ですが、オプション試算については私は当然だと思うのですけれども、特にIIの②、前回は1,200万人ベースで計算していただいたのですが、これはよく考えてみたら、ある社会保障の本を読んで大変感銘を受けたのですけれども、社会保障というのはまさに再分配が基本であって、差別をなくすもの。それが、例えば、適用拡大を限定的に捉えることにより、むしろ差別を拡大しているのではないか、笑い話にもならないと指摘していた本を読んで大変感銘したのですけれども、オプション試算IIの②については、当然全ての被用者をオプション試算にぜひ加えていただきたい。ですから、今、2,000万人ぐらいでしたでしょうか。それをぜひお願いしたいと思います。本来の趣旨から言えば、私の理解する限り、国民年金は自営業者のものであり、厚生年金は被用者のものであるという前提から考えたら、全ての被用者に対するオプション試算を今回やっていただくのは当然だと思いますので、以上、3点をお願いしたいと思います。

○神野部会長

 ありがとうございました。

 それでは、小野委員、お願いできますか。

○小野委員

 ありがとうございます。

 資料1と2について、それぞれ1点ずつコメントさせていただきたいと思います。

 資料1について、年金数理部会委員、また、部会長がいらっしゃる中で恐縮なのですが、年金数理部会の報告書を年金部会の場で御披露いただくというのは、非常に意義のあることと思っております。中身を拝見していますと、非常に詳細な分析をされた後、いろいろなコメントをされているわけですが、私は、最後の34ページ、まさにこれが、先ほど権丈委員がおっしゃられた、基本は実質で評価しなければいけないということを踏まえた上で、それができるように評価の基準となる積立金額を算定し直しているところが、かなりテクニカルな面があり複雑なのですけれども、非常に努力をされている点を評価したいということでございます。

 資料2は簡単でして、オプション試算、数理課長から御指摘がありましたとおりなのですが、私もぜひお願いしたいと思います。平成26年財政検証を踏まえて、その後のいろいろな経緯もございますので、過去のオプション試算をベースにしながら、いろいろ工夫をしていただきたいということです。

以上でございます。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、武田委員、お願いします。

○武田委員

 時間だと思いますので、短か目に。

オプション試算の是非について御議論いただきたいということで先ほど課長からお話がございましたので、ぜひお願いしたいという意見を述べさせていただきたいと思います。

 理由としましては、2点ございます。まず、制度改正の必要性の有無とか方向性についての共通認識ができること。共通認識が生まれ、改正の方向性が見えてきたところが前回のよかった点の1つ目ではないかと思います。2つ目は、具体的な効果が分かる点です。方向性は数字がなくても議論できる部分はあると思うのですけれども、データに基づいて議論をしますと、政策の効果の大小、インパクトについて明確になるという点です。その2点においてぜひオプション試算を今回もお願いできればと思います。

以上です。

○神野部会長

 ありがとうございました。

 それでは、手短にお願いできますか。

○米澤委員

 1点だけ、極めてアバウトな話なのですけれども、何人かの人の指摘がありましたけれども、年金数理部会の報告は極めて広範囲で、しかも適切な報告がされていると思います。自分の提案は、これは毎年レビューしているということなので、5年間の間をつなぐという意味では、非常に重要な資料だと思っております。にもかかわらず、少なくとも私の知っている限りではあまりメディアに取り上げられていないのではないかと思っているのです。それは広報する側の責任もあると思いますけれども、GPIFが何かをすると場合によっては1面で取り上げられることもあるかと思うのですけれども、それ以上にこちらの内容が広範でしかも年金のほうに直結しているわけですので、さっきいろいろな皆様方が情報の共有と言ったのですけれども、特にこの年金数理部会の報告を易しく皆様方に連絡するような方法をぜひ考えていただきたいと思います。内容に関しては非常にすばらしいものがありますので、その広報に関して国民全体が共有できるような努力をぜひしてほしいということです。

以上です。

○神野部会長

 山本委員、手が挙がっていましたね。

○山本委員

 .御指名いただきまして、ありがとうございます。山本でございます。

 大変詳密な御説明をいただきまして、私も理解が全て追いついているかまことに不安ではございますが、感じた点を申し上げます。

 どのように国民に影響を与えるかという、いわゆる新聞など、情報を吸収する側の立場、一般人の立場でこれらのことを考えますと、私が一番目にとまりましたのは、資料1の13ページ、「13.平成28年度の単年度収支状況」を拝見させていただきましたときに、厚生年金も国民年金も含めた公的年金制度全体として見ますと、積立金の額が増額になっている1年間であったということ、プラスとマイナスが織りなしてこうなっているわけでしょうけれども、このことが一番私はわかりやすかったと思いました。

 したがって、100年後の将来へ向かっていく道程において、言ってみればこの1年間は予定よりは上振れをしていったと、理解したわけであります。

 一方で、これはペシミスチックに、若い人たちは本当に将来の自分たちの生活はどうなるだろうかという不安感を強く持っています。長いトレンドで見れば、将来的にはマクロ経済スライドが発動され、所得代替率が62から50近くまで落ちるわけです。ということは、年間、50兆円ぐらいが年金の総予算になっていることからしますと、所得代替率が10%下がりますと5兆円ぐらいが人々の手元へ入るお金が減る、と単純に理解していいのかどうかわかりませんが、自分で働いてその部分をリカバーしていくということを、これからの生活ビジョン、将来ビジョンを描くときに考える必要があります。今のところ運用の経過は良好だということですが、中長期トレンドで見ると、年金だけで生活して老後が暮らせるというものではないので、マスコミの方々に報道いただくときには、労働市場は拡大していて、労働のチャンスがあり、半分は働いて半分は年金を国からもらうという人生設計こそ、これから描かなくてはいけない道筋だということ、ロマンを持って共有することが必要ではないかと思いまして、意見を申し上げました。

 以上です。

○神野部会長

 あと、山田委員、諸星委員、平川委員ですかね。時間がないのですが、いいですか。申しわけありません。

それでは、山田委員、どうぞ。

○山田委員

 本日から参加させていただいています、山田と申します。

オプション試算に関して、事務局から必要性云々という話がありましたが、これはやるのが非常に有効だと思いました。その上で、1つ、もし今後できればということで申し上げたいのは、年金の持続性を考えるときに、シニアの就労は非常に大きな鍵を握っていると思います。まさに人生100年構想ということで、そういう意味では、シニアの就業率が実際に足下で上がっているわけですけれども、その上昇によってどれぐらい影響があるかとか、あるいは、最近60歳前半の給料自体が徐々に上がる傾向が見えていることもありまして、そういう所得、賃金の面も含めて試算していくことが、まさに年金自体は特に雇用との連動が強いということだと思いますので、そういう意味では年金制度以外のところも変えていくことが大事だと思うのですけれども、そういう情報発信にも使えるのではないか。

 もう一点だけ、駒村委員が御指摘したところなのですけれども、私もこれは非常に考えておかないとだめな問題ではないかと。このままいくと、もちろんこれはプロジェクションということでどうなるかわからないわけですけれども、やはり基礎年金としての機能が低下する傾向が高くなっているという警告だと思いますので、例えば、調整の仕方として、16ページ、報酬比例のところの調整のほうが比較的緩いわけですけれども、こことの調整のやり方を少し変えるということが可能なのかという話であったり、あるいは、基礎年金というもの自体を別の仕組みのところで所得保障の仕組みの中で補足していくという、これは年金制度の外になってきますけれども、そういうことも含めて議論していくことが必要なのではないかと思います。

 以上です。

○神野部会長

 ありがとうございます。

諸星委員、どうぞ。

○諸星委員

 時間の関係もあると思いますので、私は簡単に。

まず、資料1、大変興味深いデータをいただきまして、ありがとうございました。今、シニアの就労という話もありましたが、女性の雇用拡大を迎える上で、標準報酬が非常に低いなという印象がございますので、今後、女性の働く中で標準報酬を引き上げるような働き方をぜひ推進していきたいなと思っております。

 1点だけ、昨年8月から開始されました10年年金で受給権者が増えていると思うのですね。微々たる影響だと思いますけれども、今後、議論する中で、10年年金の受給者の年齢構成あるいは金額といったものもある程度少しずつ影響があるのかなと思いまして、その点も資料の中に入れていただければよろしいかと思います。

 以上です。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 牧原委員も手が挙がっていたので、抑圧的な運営はしたくないので、どうぞ。

○牧原委員

 資料1、13ページの話で、今回の財政状況について、従来の財政検証の前提を上回る形の実績が出たという話ですが、基本的には積立金が積み上がってはいる一方で、28年度収支では、一時的な要素を除いてみると、2.5兆ぐらいの収支の赤字になっています。これは運用損益が9兆円ということでうまくいっている部分はありますが、基本的な収支を考えた給付のあり方を冷静に見ていく必要があるのではないか。もう一つは、運用のほうなのですが、もちろんうまくいっていることが前提なのですけれども、その上で、積立金が200兆ぐらいのレベルで積み上がるというなかで、これはどういう形で最終的に落着を考えながら積立金を使っていくのか。その中での運用の方針のあり方というのも考えていく必要があって、そこも議論の中で考えていくべき問題ではないかと思います。

 以上です。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

それでは、平川委員、お待たせしました。

○平川委員

 問題意識は皆さんと同じで、将来の年金の財政検証のあり方の問題とか、基礎年金の代替率が低くなっていくということについては、重要な課題として挙げられると思いますので、引き続きその点について発言させていただきたいと思います。

 最後に、きょうの課題、資料にないのですけれども、被保険者については、大変多くなっており、プラスの実績が公表されております。これはやはり短時間労働者の社会保険の適用拡大とか、年金事務所の取り組みによって、適用していなかった事業所を適用させるという適用の促進という実務の面での成果が大きかったのではないかと思っています。

 先ほど出口委員が被用者全員に厚生年金を適用させるというのは私も大賛成でありまして、その方向性をしっかりと実現させていくためにも、実務をどうやって回していくのかというのは重要だと思います。そういった意味で、今後、適用の拡大や適用の促進が、この間どのように行われてきたのかということが見えるようなデータや実績などを示していただきたいと思っています。

以上です。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

大変生産的な御意見をたくさんいただきましたことに深く感謝を申し上げる次第でございますけれども、私の運営の不手際でもって、まだまだ御意見は、言い足りないといいましょうか、あるかと思いますけれども、この辺で打ち切らせていただきます。

 いただきました御意見につきましては、事務局と相談しながら、今後のこの部会の資料の作成や運営に可能な限り活かさせていただきたいと、事務局と相談をしながら運営を進めてまいりたいと思いますので、また御協力いただければと思います。

 申し訳ありません。時間をオーバーしておりますけれども、今後の日程等々について、事務局からお願いいたします。

○総務課長

 次回の議題や開催日程につきましては、追って御連絡を差し上げます。

○神野部会長

 それでは、これにて第2回「年金部会」を終了いたします。

熱心な御議論を最後まで頂戴したことに深く感謝を申し上げる次第でございます。

どうもありがとうございました。

 

 

 

 

(了)