2013年10月24日 第16回社会保障審議会年金部会議事録

年金局

 

○日時

平成25年10月24日(木)13:00~15:00

 

○場所

全国都市会館2階 大ホール

(東京都千代田区平河町2-4-2)

 

○出席者

神 野 直 彦 (部会長)

植 田 和 男 (部会長代理)

柿 木 厚 司 (委員)

菊 池 馨 実 (委員)

駒 村 康 平 (委員)

武 田 洋 子 (委員)

出 口 治 明 (委員)

花 井 圭 子 (委員(代理出席))

原 佳 奈 子 (委員)

宮 本 礼 一 (委員)

山 口  修 (委員)

山 本 たい 人 (委員)

吉 野 直 行 (委員)

米 澤 康 博 (委員)

○議題

(1)平成16年改革による年金財政フレーム下での「財政検証」の意義について

(2)厚生年金・国民年金の積立金の運用について

○議事

○神野部会長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第16回を数えますが、社会保障審議会年金部会を開催したいと存じます。

 委員の皆様方には、御多用中のところ、また、あいにくの雨模様のところを御参集いただきまして本当にありがとうございます。心より感謝を申し上げる次第でございます。

 本日の委員の出欠状況でございますけれども、小塩委員、小室委員、小山委員、花井委員、藤沢委員、森戸委員、諸星委員から御欠席との御連絡を頂戴しております。また、吉野委員からは少しおくれて御出席との御連絡でございます。いずれ佐藤委員も御出席いただけるものというふうに考えております。

御欠席の花井委員の代理として、本日、日本労働組合総連合会より照沼参考人に御出席をいただけるとのことでございますので、照沼参考人の御出席につき、この部会で御承認いただければと思いますが、よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○神野部会長 それでは、お認めいただいたということにさせていただきます。

御出席をいただきました委員の方々が3分の1を超えておりますので、定数を満たし会議は成立していることを御報告申し上げたいと思います。

 また、事務局からの出席していただいている方々につきましては、お手元の座席表のとおりとなっておりますので、御紹介にかえさせていただきます。

 まず、議事に入ります前に資料の確認をさせていただきたいと思います。事務局のほうから、よろしくお願いいたします。

○八神総務課長 それでは、お手元の資料について確認をさせていただきます。

 お手元、本日、配付資料といたしまして、束になっておりますが、

資料1   平成16年改革による年金財政フレーム下での「財政検証」の意義について

資料2   厚生年金・国民年金の積立金の運用について

参考資料1 社会保障審議会年金部会「年金保険料の徴収体制強化等に関する専門委員会」の設置について

参考資料2 年金保険料の徴収体制強化等に関する専門委員会委員名簿

参考資料3 年金保険料の徴収体制強化等に関する専門委員会検討スケジュール(案)

参考資料4 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案

以上を配付させていただいております。よろくしく御確認をいただきたいと存じます。

○神野部会長 それでは、お手元の資料、御確認いただければと思います。特に問題ございませんでしょうか。

それでは、大変恐縮でございますけれども、カメラの方にはここで御退室をお願いしたいと思います。よろしく御協力のほど、お願いする次第でございます。

(報道関係者退室)

○神野部会長 それでは、議事に入らせていただきたいと思いますが、お手元の議事次第をごらんいただければと思います。本日、2つの議題を用意してございまして、1番目の議題は「平成16年改革による年金財政フレーム下での『財政検証』の意義について」、2番目の議題は「厚生年金・国民年金の積立金の運用について」ということになっております。

それでは、事務局から、この2つの議題について、資料1、資料2につきまして、続けて御説明いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○度山年金課長 それでは、資料の御説明をいたします。きょう議事として、「平成16年改革による年金財政フレーム下での『財政検証』の意義について」、それから「厚生年金・国民年金の積立金の運用について」という議事を立てております。

この年金部会で財政検証の枠組みを当面御議論いただくことになるわけでございますけれども、それに先立ちまして、現在の私たちの制度がどういうポジションに立っているのか、いわば立ち位置の確認、それから、社会経済の諸要素がどのようなメカニズムで年金制度に影響を及ぼすかということを押さえておきたいという趣旨で資料を準備させていただきました。諸先生方には自明のことということもあるかもしれませんけれども、その点は御容赦いただきたいと思います。

まず資料1のほうから御説明を申し上げます。

まず、「財政検証」についてという中見出しをつけてございますが、2ページ目、2004年改革以前には、財政再計算というものを定期的にやっておりました。これがどういう仕組みであったかということをまとめてございます。法律的には厚生年金保険法の規定を引きましたけれども、保険料率について、給付に要する費用の予想額、予定運用収入、国庫負担の額に照らして、将来にわたって財政の均衡を保つことができるものとして再計算をしなければいけないという規定になっていまして、具体的に保険料率は当分の間、1000分の幾つにすると、こういう定め方をしてございました。

歴史をたどれば、そもそも労働者年金保険を創設した後、戦後、社会混乱の中で厚生年金としてリスタートすることになりましたけれども、何せ戦後の混乱期の中で年金制度を実質的に始めるということで、当時の負担能力も考慮し、本来、必要とされる保険料率よりもかなり低い暫定的な保険料率でスタートをした。いずれこれは社会経済の発展に対応して引き上げていくということをある意味で組み込んだ形で制度がスタートをしたということでございます。

そういうことでございますので、以後、保険料率を将来に向けて段階的に引き上げていくという段階保険料方式を採用して運営をしてきたということでございますけれども、戦後の経済発展、非常に社会経済の変化が大きゅうございましたので、そういう意味で言うと、給付の設計であるとか、いろんな手直しが必要になってきたということでございまして、昭和40年には1万円年金、44年には2万円年金など、経済の発展に合わせた給付の充実ということをやってきた。そうなりますと、そういうことも含めてファイナンスをどうするかということを考えていかなければいけないということで、あわせて保険料を計算し、設定し、それを繰り返して運営をしてきたということでございます。

それから、後ほど具体的に見ていただきますけれども、特に高度成長が終わりを迎えた後については、保険料率の将来見通しを作成するに当たって、余りにも将来の保険料率が高くなりすぎるのではないかということも議論になってございまして、将来の保険料水準が負担可能な範囲を超えて高くなりすぎないように給付の見直しを行うこともあわせて財政の均衡を考えながら保険料を設定してきたというのが、これまでの財政再計算の歴史と言えるかと思います。

次の3ページ目に、財政再計算の歴史、昭和48年以降の状況を表にしてございます。

 昭和48年と申しますと「福祉元年」と言われた年で、5万円年金ですとか賃金再評価、物価スライド、いわゆる年金の実質価値を維持するための基本的な制度が整った、そういう改正を行った時期でございましたけれども、その当時の保険料率はまだ6.4%という数字でございました。その当時の見込みでは、こういう改正を行った上で、最終的には標準報酬のベースで19.6%まで保険料を上げなければいけないことになっておりましたが、一気にそこまでにはいけないので、段階的に6.4を7.6にするということを定めるということをやりました。

 そういうことをずっと繰り返してきているわけでございますけれども、右側から2番目の欄のところに「人口・経済の諸前提」ということをまとめてございますけれども、例えば当時前提にしていた出生率は人口を維持できる2.1という水準をキープすることが前提になってございましたし、基本的な数値であるところの賃金上昇も年率7%と、今から見ればかなり高い率を前提に置いて年金財政の将来を考えていたということが言えようかと思います。

 ただ、そういう状況の中、昭和51年、55年と来るに従って、最終的な保険料率の見通しがかなり高い水準になるということがございました。昭和60年(1985年)に基礎年金の導入初め大きな制度改正をやったわけでございますけれども、そういうことで、将来の保険料率を標準報酬ベースで大体30%弱ぐらいに設定をして、それを意識しながら、必要な給付の見直しを行うと、そういう歴史だったかと思います。

 ただ、その後、バブルがはじけて以降、低成長基調に移行したこと、あるいはその後の出生率の前提の数字を見ていただきますとわかるように、2.00前後で考えていた出生率が現実にかなり低下をすることになって、人口を維持する2.00までは戻らないだろうということを人口推計の上でも考えざるを得なくなった。そういう見通しになるに従って、給付と負担のバランスをどうとっていくか。あるいは将来の保険料率をどこまで上げられるのか、それぞれ見通しがある意味では厳しくなってきたという歴史の中で、4ページ目にございますように、1994年の改正ですと、支給開始年齢の定額部分の支給開始年齢を65歳に引き上げるということや将来の保険料上昇を踏まえた上で、年金のスライドを可処分所得にスライドさせるような形にするとか、そのような見直しが行われて、将来の保険料率を、そのままの制度であれば35%弱になってしまったであろう保険料率を大体標準報酬ベースで3割ぐらいに抑えるという制度改正が行われました。

 それから、次の2000年の制度改正でございますと、そこからさらに少子化が進む。あるいは経済成長も非常に金融危機以降、厳しい状況になるという見通しの中で、なかなか将来の保険料負担がどこまで負担ができるのかということが強く意識をされ、このときには大体年収の2割程度ということを頭に置いて、標準報酬のベースで言うと27~28%というあたりに、ある意味でおさまるように、給付のあり方をどう考えるかという議論をいたしまして、例えば報酬比例部分の支給開始年齢を65歳に引き上げるとか、後ほど御説明いたしますが、65歳の既裁定の年金については物価スライドのみを行うということにする、そのような改正を行ってきたということで、整理をいたしますと、段階保険料方式をとっていたこともございますし、社会経済の状況に合わせた給付設計の見直し、いずれもこれらは法律をもって規定をされるということになりましたので、財政再計算をやりつつ、保険料率の引き直し、給付設計の見直しという形での法律改正をセットで行ってきた。特に低成長下に移行しましてからは、将来の給付規模を抑制するという観点からの給付の見直しを随時行ってきた。これが財政再計算の歴史ということでございます。

 その枠組みががらりと転換をしたのが2004年の改正でございまして、5ページ目には、国民会議で、先日御説明したものと同じ資料でございますけれども、将来の保険料率を法律に設定をしてしまう。基本的には固定された財源の中で給付を賄うと。言ってみれば、将来の負担を固定した上でその負担に見合う額が給付額だと、そういう仕組みをすると。少子高齢化の進行に対応する形で決められた財源の範囲の中で給付を賄うための給付の水準を自動的に調整する仕組みというとで、マクロ経済スライドというものを制度の中にビルトインして、法律に給付調整のルールを書き切ってしまいまして、法律改正なくしても、負担と給付のバランスがとれるように、そういう制度設計をしたということが2004年の改正の大きな意味でございます。

そうしますと、このパラダイムのもとでは、例えば1994年、2000年の改正でやったように、将来の給付規模を抑制するための給付設計の見直しという話とは違ってまいりまして、給付の総額というのは負担に規定をされてしまうわけでございますので、例えばこれから将来の給付規模を抑制するという議論をすると、18.3%に固定した保険料水準をさらに下げるという選択をするのかどうかということとセットになる。そうでないとすれば、基本的に18.3%に固定した保険料水準をベースにしつつ、その財源の中でどのように給付のあり方を考えるか、いわば分配のルールをどのように考えるか、問題が変容したのではないか、そういうことを申し上げてきたわけでございます。

6ページ目でございますけれども、2004年の改正前と改正後で、それぞれの切り口で制度がどう変わったかということを整理いたしました。保険料については、財政再計算のときに、保険料の将来見通しを作成した上で段階的にそこに向けて引き上げていく保険料を法律に規定をした。改正後については、保険料の引き上げスケジュール、最終的に保険料水準まで含めて全て制度的にはビルトインしてしまったということでございます。

年金額の改定についても、平成元年以降は一応自動物価スライドという仕組みを入れましたので、基本的には毎年給付はCPIに連動して変わることになってございましたが、いわゆる賃金上昇を踏まえた年金の実質価値を維持するという意味合いでの改定については、5年に一度の再計算時に法律改正をして、後ほど御説明いたしますが、賃金再評価という仕組みを通じて年金額を改定したということでございますが、2004年の改正で改定ルールもどうするかということを法律に書き切った上で、18.3%に固定した負担の枠の中に給付が調整できるメカニズムとして、スライド率の調整という意味でマクロ経済スライドというものを制度的にビルトインをした、そういうことでございます。

3つ目に財政フレーム、「給付と負担の均衡を図る仕組み」と書きましたけれども、再計算のときに保険料負担の見通しを踏まえて、どうもこのままだと保険料負担が高くなりすぎる。その都度、給付設計の見直しをどうするかということを議論をしていたということでございますけれども、新しい制度によれば、財源の範囲の中で自動調整機能というものを働かせていたということなので、基本的にこれがきちんと機能すれば給付と負担の均衡が図られる、そういう仕組みにしたということですし、財政検証というのは、この仕組みがきちんと機能して財政バランスがとれているかどうかということを確認する作業、そういう形になっています。

それから、後ほど積立金の議論もいたしますが、積立金の性格という意味でも、基本的には改正前の仕組みでは、運用収入を活用して、高齢化がかなり高い水準で均衡する将来の保険料負担を抑制する。この要素は、改正後の仕組みについても残っておりますけれども、100年間の有限の期間の均衡を考えるということで、運用収入だけではなく、積立金そのものを給付に充てるということでバランスをさせるというふうに性格が変わったということです。

財政検証の役割、繰り返しになりますけれども、将来の保険料の見通しを作成した上で適切な保険料を設定する。それに当たって必要があれば給付設計も見直すというのが改正前の仕組みでございましたけれども、改正後の財政検証の規定は、給付と負担の均衡を自動的に図るという仕組みというものを入れたということを前提に、そのもとでの年金財政の健全性を検証する、そういう位置づけになったということです。

7ページ目の資料でございますけれども、これも先日、国民会議の御報告をさせていただいたときに使った資料の繰り返しになるわけでございますけれども、このもとでの例えば給付設計の見直しをやるということはどういう意味合いを持つかということでございますけれども、一定の保険料負担を固定して、それを調整する仕組みというものの中で言うと、限られた年金給付に充てることのできる財源をどのように分配をすると、国民がハッピーに暮らせるような形になるかどうか。そういう分配ルールをどのように設定するかという問題の性格が変わったと捉えられるだろうと思います。

先日の繰り返しになりますが、例えばマクロ経済スライドの見直しという問題であれば、早く調整を進めると最終的な均衡水準としての年金の給付水準は高くできる。逆に調整がおくれると、将来の給付水準が低くなる、そういう関係に立つとすれば、これは現在の高齢世代と未来の高齢世代の間の分配ということになろうかと思います。

あるいは年金の支給開始年齢の見直しというテーマがあるわけでございますけれども、御存じのとおり、平均寿命はかなり延びてきておりますので、ある意味では延びる高齢期の中で、就労と年金受給のあり方をどのように配分をするか、そういう問題の中で考えていくことになろうかと思います。あるいは高齢期の中でも低所得の方、高所得の方がいらっしゃるということであれば、そういう方々への分配をどう考えるかというのが高所得者に対する年金をどう考えるか、そういうふうに考えられるということになると思います。

言ってみれば、限られた財源の中で、社会的厚生が最も高められる分配ルールをどのように考えていくかというディメンションでの問題であるということが言えようかと思いますし、法律上は将来の所得代替率50%という1つの基準を示しているわけですが、これもある意味では社会的厚生の判断のメルクマールと位置づけられるというふうに言えるかと思います。

前回、国民会議の御報告をした際に、将来の給付の抑制とか、年金財政上の問題ではなくというようなことの御説明の中で、やや認識が甘いという御意見も頂戴をしたところでございますが、別にそれに反論するわけではなく、どういうロジックでそのような説明になったかということについて、時間をいただきまして、改めて御説明をさせていただきました。

次のテーマ、8ページ目以降ですが、「年金制度と社会経済の情勢の変化」というところに移ります。

最初に9ページ目に「年金財政と諸要素の関係(長期モデルを単純化したイメージ)」を準備させていただきました。経済の大家の先生方を前にこのお話をするのは非常に顔が真っ赤になるぐらい恥ずかしいのですが、いわゆる経済モデルというのは用途に応じてさまざまなモデルが開発をされていると思います。専門家の先生方からは突っ込みどころ満載の資料だと思いますけれども、ここでは100年という長期間の財政均衡を考える年金制度と社会や経済の関係ということを説明するために相当単純化したイメージ図をつくったと御理解をいただきたいと思います。

次の10ページ目に「年金財政に影響を与える諸要素とその関係について」ということでまとめてございますので、2つ見ながら聞いていただきたいと思いますが、まず人口の要素で出生と死亡という要素がある。出生の動向は出生が増加すると、労働供給を通じまして成人するおよそ20年後に被保険者がふえる。この方々、多くの方々は高齢者になられるということで、65年後に受給者が増加をするという関係に立つと思います。

問題は出生率の高低、いわゆる合計特殊出生率の高低で、合計特殊出生率が高ければ出生率一定のもとでの人口がどれぐらいのバランスで均衡するかということの、高齢者と現役世代の割合、年金について置き直すと、受給権者と被保険者の割合というものが変化をしてくる。出生率が高ければこの割合が比較的高くできるということですし、出生率が低い前提で考えることになりますと、この扶養比率も非常に低い状況で考えなければいけない、こういう関係に立つと思います。

死亡のほう、平均余命ですが、途上国のモデルですと、生まれた子供が何人労働力になるかというところに影響いたしますが、成熟した先進社会を念頭に置きますと、およそ死亡率の改善というのは高齢者のところで起きていますので、平均余命の伸長、すなわち年金受給期間の延長、長期化するという形で影響を及ぼすことになります。出生率一定の前提で考えますと、平均余命が延びるということになりますと、受給権者、被保険者の比率であります扶養比率は低下をする。それだけ厳しい状況で年金財政を考えなければいけないことになろうかと思います。

次に経済要素のほうを御説明してまいりますが、長期を考えるときには、実は物価上昇はモデル的には余り入ってこないことが通例だと思いますし、長期的な均衡状態で考えれば、物価の高い、低いというのはそれほど影響がない要素と思っておりますが、これも後で御説明いたしますが、マクロ経済スライドによる年金給付の水準の調整局面では、物価がプラスになって年金額が上がるところの上がり幅を抑えるという形で年金水準の調整をかけていきますので、この物価上昇の大小がどれだけ調整が機能するかということにかかわってくるという影響を及ぼすということになります。

次の賃金上昇のところですが、基本的に年金の給付は、これも後ほど絵で御説明いたしますけれども、保険料の収入も年金の給付もある意味では賃金の関数でございますので、長期的に言うと中立的な要素と考えることができると思いますが、これも後ほど詳しく御説明いたしますが、2000年に導入されました既裁定の年金については物価スライドのみを行うという仕組みを入れたということでございますので、実質賃金上昇率が高ければ高いほど保険料収入の伸びよりも年金給付の伸びが抑えられる、そういう効果が出てくるということで年金財政の改善要因になる。逆に実質賃金上昇が余り見込めないということになりますと、この調整が十分に機能しない、そういう仕組みになっているということで、そのように作用するということが言えようかと思います。

運用利回りにつきましては、これは後ほどまた具体的に御説明あると思いますけれども、保険料収入、年金給付の基礎要素であるところの賃金上昇率をどれぐらい上回って利回りが確保できるかということで、年金財政にどれぐらい寄与できるかということが考えられるということでございます。

最後に労働力率をどう設定するか、いわゆる労働供給をどう考えるかという問題がございますが、これは出生動向とある意味では問題が似ていると思います。労働供給がふえる、すなわち労働力率が高まりますと、足下では保険料収入の増加要因になる。数十年の期間を置いて年金給付に影響してくるということになろうかと思います。これも労働力率が上昇傾向にあるか、あるいは下がる傾向にあるかということで、労働力率が上昇傾向にあるということになりますと、ある意味では子どもがより生まれるようになることと同じ効果が出てくる、そのように整理ができるかと思います。

では、これらの要素が直近ではどのように変化をしているかということをまとめてございます。

まず11ページ、人口でございますけれども、出生に関しては、2009年の財政検証で見込んだときよりも実績は高く推移をしてきている。それだけ子どもが推計していたよりは生まれるようになってきているということでございます。ただ、生まれた子どもはすぐに生産活動には従事しておりませんので、直近の年金財政には影響はしておりません。

それから、平均寿命のほうは、これも震災の影響がありますので、でこぼこあるのですけれども、大体トレンドとしてはおおむね見込みどおりだろうと思います。

年金財政を考える上では、出生や死亡がどのように長期的に推移するかということが問題になってまいりますので、まず12ページ、出生のほうですが、平成24年に新しく行われた推計ではやや出生率が改善トレンドにあることを踏まえまして、それ以前の平成18年に行った推計よりも、最終的な出生率の見込みを高く設定をしている。平成18年の推計ですと、中位推計の最終的な出生率1.26と置いておったのを、24年の推計では1.35と置いているということでございますので、このように推移すれば、先ほど御説明したとおり、年金扶養比率の改善という形につながるだろうと言えると思います。

一方で死亡のほうですが、13ページ、平均寿命の推移。これに関しては、先ほど御説明したように、平成18年のときに推計していたトレンドとそう変わらない形で進んできているかと思いますし、新しく24年の推計も、大体そのトレンドの上には乗っかっていると思います。ただ、最終的に寿命がどこまで延びるかということに関しては、新しい推計では、前の推計よりも男性・女性ともおよそ半年ぐらい平均寿命が延びる、そういう推計になっているということですので、この結果を使えば、出生率とは反対にやや年金扶養比率が低下をする、そういう影響が出てくるということが予想されます。

14ページですが、経済のほうにまいります。

まず物価と賃金をそれぞれ表にまとめてございますが、これはデフレ経済がなかなか脱却できないということで、物価もマイナス基調、賃金もなかなかついてこない、こういう状況で推移しているというのは御存じのとおりだろうと思います。

15ページですが、運用のほうでございますけれども、このように短期的に成果を見るということは必ずしも適当ではないのかもしれませんけれども、2009年の財政検証以降の4年間のトレンドということで言いますと、名目で見ても対賃金変動の実質の運用利回りで見ても、平成21年の財政検証の見込みよりは上回る形で推移をしてきていると、このように言えるかと思います。

それから、労働ということで、代表指標で厚生年金の被保険者数をとってみましたが、厚生年金の被保険者数についてはおよそ財政検証の見込みどおり推移してきている、このように整理ができるかと思います。

さて、これをトータルにどのように評価をできるかということで、16ページにまとめてみました。

収入と支出と分けましたけれども、(保険料収入)は賃金水準の低迷により見込みを下回って推移をしてきている。

(運用収入は)、変動はございますけれども、全般的に見ると財政検証の見込み以上を稼いでいる。

支出に関しては、次のページには具体的な数字出してございますけれども、名目額としてはほぼ財政検証時の見込みと同水準になっているということです。ただ、先ほど御説明したように、デフレ経済が継続していることで、特例水準が解消していない。あるいはマクロ経済スライドが発動していないということなので、本来、保険料収入が伸びて、年金の支出も伸びるところを調整の仕組みで抑えて、しかるべき水準になっているものが、そういうデフレ経済のもとで、調整が働かずに結果的に同じぐらいの水準になっていると、そういう状況であると言えるかと思います。

その下の「年金積立金の状況について(厚生年金+国民年金)」とございますが、次のページめくっていただきまして、17ページの一番右側の欄、「年度末積立金の見込みと実績の差」ということで、平成23年度の時点ではおよそ3兆円のマイナスという状況でしたが、24年度特別会計のほうだけで大体7~8兆円ぐらい年度末の積立金がふえてございますので、これに厚生年金基金の代行部分を足し合わせた数字がそのうち入るのですけれども、恐らくこの3兆円のマイナスというのはカバーしているだろう。そういう意味で言うと、24年度末で見たときの年度末積立金は大体財政検証の水準をキープするか、あるいはそれ以上になっているだろうというふうに評価ができると思います。

ただ、基本的に我が国の年金制度は賦課方式を基本に運営をしている制度ということで考えますと、保険料収入と年金給付のバランスをどのように考えるかということがかなり大きな要素になろうかと思います。あるいは積立金の運用ということでも、結果的に見込みよりも高い利回りがとれたということですが、デフレ経済のもとで債券中心の運用をしてきて、実質利回りを確保できてきたということだと思いますけれども、デフレ脱却を目指した経済政策の中でこれをどのように考えていくかということが問題になろうかと思います。

そういう意味で、次の18ページになりますが、今後の年金財政を考える上でどこに視点を置かなければいけないかということになりますと、1つは、賃金上昇、特に実質賃金上昇というものをどのように見るかということ。

それから、デフレ脱却を目指した経済政策の中での運用というもの、あるいは運用利回りの見込みをどのように考えるかということが影響の大きい要素として考えられるということでございます。

それで、前者の賃金上昇との関係で、先ほどざっと説明したことを詳しい資料で御説明をさせていただきたいと思います。

まず19ページ、これは現行の制度で保険料収入と年金給付がどういう算定式で計算をされるかということの非常に単純な、実際にはいろんな経過措置がついてもっと複雑なのですが、単純化して計算式を引っ張りだしてきた資料でございますが、厚生年金の保険料ですと標準報酬の額に保険料率を掛けますので、賃金がふえれば保険料収入がふえるということでございますし、国民年金の保険料も定額の保険料ですが、賃金上昇率を用いてこの額を改定することになっていますので、こちらのほうも賃金の水準に連動する。

一方で、年金給付のほうですが、給付算定式で平均標準報酬に乗率を掛け、期間を掛けて報酬比例年金が計算されますけれども、昔の賃金を現在の価値に賃金上昇率を用いて再評価するという仕組みのもとでは、賃金の水準に連動するという形になっている。

基礎年金も定額の給付ではございますけれども、これも賃金上昇率を用いて改定する。言ってみれば保険料の収入も年金の給付も賃金の関数として説明がされると、そういう制度設定になってきているということです。

20ページには、年金額の実質的な価値を維持する基本的な仕組みである賃金再評価、昭和48年の改正で導入された仕組みでございますが、その説明をしております。昔、15万円だった賃金が、今の価格で言うと大体30万円ぐらいと考えると、昔、15.5万円と記録されている年金の保険料の標準報酬については、再評価率1.939という数字を掛けて、言ってみれば30万円だということで年金給付額を計算する、こういう仕組みを入れて年金の実質価値を維持しているということです。

21ページにございますように、先ほど御説明したように、これが基本的なルールなのですけれども、この基本のルールではなかなか低成長、人口の見通しが厳しい中で年金財政がバランスをしないということで、例えば1994年には、賃金再評価を生の賃金の上昇率ではなくて、年金保険料の上昇分を控除した可処分所得の上昇に応じた再評価ということにルールを変える。

あるいは2000年には、既裁定の年金に関しては、賃金再評価を行わず物価スライドのみ行うということで実質価値を担保する。

さらに2004年の改正では、こういう措置を講じた上で、さらに長期的な給付と負担の均衡を図るために、この改定指標となる賃金上昇率や物価変動率について、マクロ経済スライドという仕組みを使って調整をするということでバランスをとる、こういうふうにスライドの仕組みにも変更が講じられているということです。

22ページは、2000年の改正で導入された既裁定受給者のスライドの仕組みの変更ということを説明しております。

毎年、年金については、物価スライドを平成元年の改正で自動物価スライドということで保証していましたが、先ほど御説明したように、財政再計算のときにそれまでのおよそ5年に一度やってきましたので、5年間の賃金上昇を踏まえて年金額を再評価するということをやってきたわけでございますけれども、2000年改正以降は、65歳で年金が裁定されてからは、賃金上昇を反映した、いわゆる再評価を行わずに、その後は物価上昇のみで年金額を改定をする、そういうルールにしたということです。

そうしますと、点線部分が、そういう意味で言うと、2000年以前の改定ルールで年金給付がどうなっていったか。それぞれの時点で65歳を迎えた方の年金がその後どう推移するかということを表に落とすとこういう形になると思います。矢印のところにその差を表示をしておりますが、ある意味ではこの差の分だけ、保険料収入がふえたよりも年金給付の伸びが抑えられる部分、年金財政が改善する部分ということになりますけれども、この斜線の傾きが大きいか、小さいかで、この矢印がどれぐらい効果が出てくるかどうかということが違ってくるということです。

ちなみに最近のデフレ経済のもとでは、むしろこの傾きが下がるほうに効いているということなので、実質的にこの効果は、ほとんど出ていないというのが現状だろうと思います。

次の23ページは2004年の改正で導入されたマクロ経済スライドの仕組みでございますが、新しくもらい始めるまでは賃金上昇を反映した年金額というものを裁定する。もらい始めてからは、物価の上昇を反映した形で年金額の改定を行うというルールを基本に置いた上で、財政均衡がとれる水準までは一定のスライド調整率を掛けて、その分、改定の幅を小さくして、それで財政バランスをとろうと、そういう仕組みを入れたということです。

そういう仕組みであるがゆえに、23ページの右側になりますけれども、例えば賃金や物価の伸びが小さい場合には、マイナスまでの調整はしないという形で設定をいたしましたので、本来、予定したスライド調整率が十分に機能しない場合が出てくる。あるいは賃金や物価がマイナスで推移した場合には、さらに追っかけの調整まではしないというルールにしましたので、ここではその調整機能は働かない、そういう制度設計になっている。言ってみれば、賃金水準、物価水準について、一定の名目値での上昇があった場合に調整率の分だけ給付の水準を調整できる、そういう仕組みになっているということです。

あわせて24ページですけれども、通常、物価上昇よりも賃金上昇が高くて、それで生活水準が改善していくというのが経済の通常の姿であろうということですが、デフレ経済のもとでは、逆に物価の下落以上に賃金が下がっているというようなこともあるということで、長期的に年金財政がバランスするようにということで、賃金と物価について、それぞれ高い・低い、プラス・マイナスだった場合にどのようなルールで改定を行うかということについて、2004年改正の際に整理をしたところでございます。賃金上昇を超える物価上昇に関しては、基本的には賃金上昇のところで物価スライドについてもストップをする、そういうルールをつくって、保険料収入以上に年金給付が伸びていかないように工夫をした制度を入れているということでございます。

こうやって設定されたいわゆる賃金や物価上昇の改定率に、先ほど御説明したマクロ経済スライドを掛ける、こういう制度設計になっているということでございますので、通常の経済であれば実質賃金上昇を見込むということが普通だろうと思いますけれども、どういうふうに物価上昇や賃金上昇を将来にわたって見込むかということで、実際に年金額がどのように変わってくるかということが変化をする、そういう仕組みになっているということを御説明させていただきたいと思います。

続いて、積立金の運用の説明に移ります。

○森大臣官房参事官 引き続きまして資料2、「厚生年金・国民年金の積立金の運用について」をごらんください。

1枚めくっていただきまして、「年金積立金の在り方」でございます。ただいま御説明いたしましたように、平成16年の改正前でございますけれども、これは積立金を年金財政のために永久に活用するということでございまして、「永久均衡方式」というものをとっておりました。

平成16年改正の後でございますが、今後100年間、特に高齢化が進行するということでございまして、この高齢化に対応するために、運用収入のみならず、積立金元本取り崩して活用するという制度、これは「有限均衡方式」と申しますが、それに変更したところでございます。

しかし年金積立金の運用の考え方でございますが、一番下の四角でございますが、積立金は、被保険者から徴収された保険料の一部で、かつ将来の保険給付の貴重な財源ということでございますので、専ら被保険者の利益のために長期的な観点から、安全かつ効率的に行うということにつきましては、この改正でも変わってないところでございます。

2ページ目、「積立金の役割」ということでございまして、1つ大きなものにつきましては高齢化対応というところでございます。年金を給付する財源につきましては、保険料収入、これは現役世代の雇用者報酬の一部を高齢者に移転するというものでございますが、積立金を使いますと、利子とか配当等の資本収入、もしくは資本の売却収入である積立金の取崩しでございますが、そういう収入が得られるということでございまして、このような積立金を少子高齢化に対して使用することにつきましては諸外国でも通例となっております。

また、一番最後の「※」でございますが、積立金はバッファー機能を持っていまして、どういうことかといいますと、仮に保険料収入が少なくとも長期的には将来の給付も低下する等、長期的には収支は均衡する場合があるのですけれども、短期的には当座の給付費用が足りないということで、キャッシュフローが困ることがあるのですが、この資金繰りのために積立金というのは役に立っていると、ここが1つ、大きな役割かと考えております。

3ページめくっていただくと、このような「厚生年金・国民年金の積立金運用について」の概略図でございます。考え方に基づきまして、現行の積立金運用につきましては、最もリスクが少ないと考えられている「国内債券中心」、市場全体の収益をとるということで「インデックス運用中心」、あとは、株式を含めました分散投資ということで、「ポートフォリオ全体のリスクを抑制」するという方針によりまして運用しております。

基本ポートフォリオでございますが、ことしの6月に改定しまして、国内債券が6割、国内株式が12%のポートフォリオとなっております。

運用の仕組みでございますが、年金財政の責任を持つ厚生労働大臣がステークホルダー等の御意見を聞きまして、年金制度の設計、検証等を行っているところでございますが、そのもとに年金積立金管理運用独立行政法人、「GPIF」と略称しておりますが、GPIFのほうで、運用委員会の金融・経済等の専門家の方の御意見を聞きつつ、70名という小ぶりでございますが、ここで運用しておるところでございます。

年金積立金全体の運用実績につきましては、自主運用開始以来の13年度から、24年度の累積収益額が約36兆円ということでございまして、これは名目賃金上昇率を約2.8%上回っておりまして、財政検証上の前提を上回っているところでございます。

4ページにつきましては、現行のリスク・リターンの考え方でございます。

これは自主運用を始めましたときの検討会、「年金積立金の運用の基本方針に関する検討会報告」等によるものでございますが、年金積立金の運用は、年金事業の運営の安定化が目的でございますので、必要な利回りをより小さいリスクで長期的に確保することが基本ということが出されております。

また、年金給付費は基本的には名目賃金上昇率に連動して増減するため、これに対応した実質的な運用利回り、つまり名目運用利回りから名目賃金上昇率を引いたものでございますが、その確保を目指すことが必要ということでございまして、GPIFになりましてからも、第1期の中期目標期間、これは平成18年からでございますが、そのときの運用目標につきましては、実質的な運用収益の確保ということで、年金財政は実質的な運用利回りが確保される限り基本的な影響を受けないことから、年金財政上の諸前提における実質的な運用利回りを確保するよう資産構成割合を定めろと言っていたところでございます。

ただし、現在、平成22年からの第2期の中期目標期間につきましては、当時、年金の抜本改正等を予定していたために、このような定量的な目標を示さずに、安全、効率的かつ確実な資産構成割合にしろということで、定性的な目標を提示しまして、このためGPIFにおきましては、国内債券並みのリスクということで、現行ポートフォリオを策定しております。また、先ほど申しましたように、ことしの6月のポートフォリオの改定を行ったところでございます。

この運用目標のあり方につきましては、現在、「経済前提と積立金の運用のあり方に関する専門委員会」で検討しているところでございます。

めくっていただきまして、5ページ目でございます。

このような運用につきましては、先ほどデフレ脱却を目指した経済運営ということもございましたけれども、内閣官房のほうで、年金積立金の運用を含めまして、「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」で御検討いただいているところでございます。

そこが出しました中間論点整理、これは9月26日でございますが、それによりますと、運用目的につきましては、それぞれの運用目的に沿った運用というのが結果的に日本経済に貢献するだろう。

あと、運用目標でございますが、デフレ脱却等を踏まえれば、国内債券等を中心とするポートフォリオについては見直しが必要ではないか。また、ポートフォリオにつきましては、今、GPIFにつきましては、流動性の高い典型資産運用しておりますが、そのほかに新たな運用対象としまして、REIT、不動産投資、インフラ投資等の追加も検討すべきではないかという御意見が出されております。

また、ガバナンスにつきましては、資産運用の最終責任が大臣であることにつきましては、運用機関の自主性や創意工夫を損なっているという御意見もありましたし、また、公的年金の保険者である大臣が最終責任を持つのは当然だけれども、各資金により柔軟性のある運用を認めるべきではないかという御意見があったということでございまして、また、運用機関の内部的なガバナンスにつきましては、常勤の専門家が合議制により実質決定をすべきだとか、そもそも、今、独法でやっておりますけれども、認可法人に変更が必要ではないか等の御意見がございました。

あと、議決権行使ということで、今、GPIFにつきましては、運用機関に任せた議決権行使を行っておるところでございますが、もうちょっと株主価値最大化の観点から対応が必要ではないかという御意見も出されております。

6ページにつきましては、「平成24年度の年金積立金全体の運用状況」でございます。

幸いにして、これも先ほど説明がありましたが、短期で年金積立金の運用を評価することはいかがかと思いますけれども、24年度は9.56%(約11.2兆円)ということで、過去最大ということでございまして、年金積立金の自主運用開始からの平均値で言いますと、2.26%でございまして、その間の国内債券の運用利回りは1.76%程度でございましたので、株や海外資産を含めて分散投資した結果が、上乗せ分0.5%とれたということにはなっております。

一番最後のところで、海外の年金資金の運用についてどうなっているかにつきまして、参考につけさせていただいています。

海外の公的年金資金といいましても、例えば2番目のところにありますCalPERSは、積立方式でございまして、企業年金に近いもの。

また、ノルウェーにつきましては、原資は保険料収入ではございませんで、北海油田で原油が出ますので、石油収入等々いろいろ性格は違うものでございますが、主な資金ということで、5カ国を挙げさせていただいております。

アメリカにつきましては、ポートフォリオのところでございますけれども、債券100%全額非市場性国債ということで運用していまして、この理由は連邦政府により私企業への政治的介入の懸念があるからということで、このように行われているとされております。

あとの国につきましては、割と株式比率が高こうございまして、6割程度。カナダも実際はインフラ投資や、オルタナティブ投資をある程度多様なものをやっておるという姿でございます。

ただ、運用実績につきましては、実質、これはCPI引いたものですけれども、直近5年間で見ますと、リーマン・ショックもございましたので、若干苦戦している面もございまして、例えばCalPERSで言いますと、過去5年平均ですと0.4%でございまして、カナダも実質運用利回りで、予定は4%とれると想定していますが、過去5年では2.4%と、運用は国際的には難しい状況かと考えております。

以上でございます。

○神野部会長 どうもありがとうございました。財政検証と積立金の運用につきまして、制度と状況についての認識を共有すべく丁寧に御説明をいただきました。

それでは、議題2つございますが、どちらからでも結構でございますので、御質問、御意見があれば頂戴したいと思います。いかがでございましょうか。武田委員、どうぞ。

○武田委員 御説明いただきまして、どうもありがとうございました。今後の年金制度の課題について意見を申し上げます。

前回の御説明とも絡む点だと思いますが、前回の資料では、医療・介護の問題の大きさに比べてみますと、年金については制度設計上大きな問題がないということで、若干楽観的な御説明であったと記憶しております。確かに医療・介護の負担増が大きな問題であることは重々認識しておりますが、私は年金制度についても見直すべき点はあり、しっかり取り組んでいかなければいけないと認識しております。

結論を申し上げますと、年金制度を、年金財政の中だけで閉ざして考えるのではなく、経済全体の視点から年金制度改革を進めていくべきだと考えております。例えば先ほど御説明いただいた中にも含まれておりましたけれども、世代間のバランス、世代間の格差の問題もございます。年金財政としては計算上閉じている世界であっても、御説明いただいたとおり、受益と負担の面ではひずみがございますので、そのひずみをどう直していくかという点は課題だと思います。仮にそのひずみが今後ますます大きくなるということになりますと、現役世代の将来不安の高止まりが需要の抑制につながり、ひいては経済全体の成長率を抑え、それが賃金抑制につながり、結果的には年金財政へ跳ね返ってくる部分があろうかと思います。

また、成長戦略との整合性という視点も年金制度を考えるうえで重要ではないかと思います。例えば女性の労働参加率、これは人口が減少していく中では高めていったほうが成長力の底上げにつながります。この問題は、もちろん年金制度だけが影響しているわけではなく、制度であったり慣習とかであったり複数の要因が相互に関係しており、制度的補完性の部分はあると思いますけれども、例えば年金制度の中ではどういったことができるのかという視点が大事であり、第3号被保険者制度の位置づけについて、改めて議論していくべきではないかと思っております。

つまり、年金財政さえ閉じればよいという考え方ではなく、むしろ成長戦略を促進するような方向性、あるいは経済全体、社会厚生の観点から、年金制度はどうあるべきかという視点で議論することが重要ではないかと感じております。

以上です。

○神野部会長 どうもありがとうございました。今後の審議の過程で、参照基準にさせていただきたいと思いますし、また、議論の過程でまた個々に具体的に御指摘いただければと存じます。何かございますか。

○度山年金課長 すみません、1点だけ補足をさせてください。私、説明を飛ばしてしまった感があるのですが、9ページのイメージ図をごらんいただきますと、今、御指摘いただいたことも意識はしておりまして、9ページの模式図の「年金制度」という一番上の大きな囲みから点線で、経済要素、特に労働供給のほうに点線が伸びていると思います。要は年金というのはある意味で就労して得る稼働所得の代替という性格がございますので、こういう観点からは御指摘いただきました第3号被保険者の問題ですとか、高齢者の在職老齢年金の問題ですとか、あるいはそもそも年金の支給開始年齢の問題というのも、そういう文脈の中が語られてきていると思います。あるいは、今、申し上げたようなテーマをどう考えるかというときには、将来の社会経済の変化をどう考えるかということと、ある意味であわせて考えていかなければいけないという要素はあるだろうと思います。

十分に御説明できずに申しわけありませんでしたが、多少意識はしておるということで補足をさせていただきました。

○神野部会長 ありがとうございます。ほか、いかがでございますか。どうぞ。

○宮本委員 ありがとうございます。積立金の運用について、2点お聞きをしたいことがあります。この資料2の1ページの一番下段の枠組みのところに、「積立金が被保険者から徴収された保険料の一部であり」との内容が記載されていますが、GPIFの管理運用している年金積立金は、ある意味、法律に基づいて強制的に労使から徴収した保険料の一部だと、こういうことだと認識しています。

そこで事務局に改めてお聞きしますけれども、積立金の原資は徴収された保険料の一部と、こうなっていますけれども、保険料とは別に原資は何があるのかということを確認したいということが1点。もう一点、2点目は、前回も保険金を徴収されている側の労使の代表という立場で発言させていただきましたけれども、同じ資料2の5ページの「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」が示しております中間論点整理の2では「国内債券を中心とするポートフォリオの見直し」、同じ3では「新たな運用対象の追加の検討」との記載がここにされております。積極的に運用した結果、仮に積立金が棄損した場合は、同じ5ページの4のところで、「保険者である大臣が最終責任を持つのは当然」ということになっていますけれども、しかし現実的にはマクロ経済スライドの調整期間が延びるというようなことも含めて、結局は被保険者や受給者がリスクをとる、あるいは被害をこうむるということになってしまうのではないかと心配をしております。この点について改めて御説明をいただきたいと思います。

以上です。

○神野部会長 これは森参事官でよろしいですか。すみません、2点、原資の問題と棄損した場合の問題をお願いします。

○森大臣官房参事官 御指摘のとおり、年金積立金の運用につきましては、積立金が被保険者から徴収された保険料の一部ということで認識しております。これにつきまして、御意見としましては、年金制度の基礎年金部分につきまして、税が入っているとか、そういう御指摘もございます。経済学的に見ればそういう見方もあるのかと思いますけれども、あくまで税は給付に使われているものでございますので、たまった年金積立金の部分につきましては、保険料で形成されたと考えております。これが1点目のお答えでございます。

2点目の運用につきましては、御指摘いただいた公的・準公的資金のところでございますけれども、見ていただきましたように、諸外国では公的年金資金といっても、いろんなものに投資をいたしまして、より分散投資効果を高めて、同じリスクでリターンをとっているのではないか。もしくは今後のデフレ脱却局面におきまして、もうちょっと国内債券中心を考えたほうがいいのではないか。これは例えばCPIが上がり、金利もこれから上がるということになりますと、国内債券だけの運用が必ずしも安全と言えるのかという問題意識から御意見が出ているものだと思います。これにつきましては、中間論点整理でございますので、大体11月内にご勧告がいただけるものと考えております。

○神野部会長 よろしいですか。原委員、先に、その次、山口委員。

○原委員 御説明いただきまして、ありがとうございました。私のほうからは、質問というよりも、今後の課題というか、お願いという部分でコメントをさせていただきたいと思います。最初の資料の5ページに、平成16年の改正で、年金財政の考え方のパラダイムチェンジという言葉がありますけれども、考え方ががらっと変わったということが、一般の方にどのぐらい伝わっているかということがございます。その中で、この図にもありますとおり、先ほど課長もおっしゃっていましたけれども、日本の年金制度は賦課方式のもとで行われて、保険料収入というものが収入のメインで、そのほかに積立金、国庫負担というものがあるという図がありますけれども、この部分でも、賦課方式の中での、特に積立金の部分の役割や定義といったものが伝わっているかどうかということがあります。

そして、下に1、2、3、4と5ページに書いてありますが、特に3の積立金の活用とマクロ経済スライドの導入というのが、なかなか一般の方には、伝わっていないのではないかと思われます。保険料の引き上げというのは実感していらっしゃるかと思います。それから国庫負担についてもいろいろ言われているので実感していらっしゃるかと思いますが、マクロ経済スライドについては、まだ発動されていないということで、将来的に調整していくという仕組みをきちんと伝えていき、理解してもらうことがすごく重要で、特に現役の方については重要だと思います。あとは積立金ですが、まずそれが収入のメインではないということと、ここでは「積立金の活用」という言葉を使っています。次の資料だと「積立金の取崩し」という言葉が法律的にあると思うので使われているのですけれども、一般的に法律的用語と一般的な人が使う言葉とでニュアンスが微妙に違うことがあるかと思います。ここでは、活用するというか、使うということを平成16年改正で決めて計画的に行っているということを、若い人たちに誤解を与えないような、また、不安を与えないような形でしっかりと伝えていっていただきたいと思っておりますので、ちょっとそれだけコメントさせていただきました。

○神野部会長 何か事務局からコメントありますか。

○度山年金課長 今、おっしゃられた、特に給付調整をする仕組みがまだ発動はされていないので、そういう実感が保険料を納めていらっしゃる被保険者や受給者の方に十分伝わってないのではないかということに関しては、確かにそういうことは否めないだろうと思います。

今、実はその前の特例水準を解消するという段階にあるのですけれども、特例水準、この10月から、ちょうど1%年金額が下がって、その振り込みが12月に初めて行くということになるのですけれども、額が変わりますので、当然受給者の方には通知をいたします。そのときにどういう趣旨でこういうことが行われているのかというのはかなり我々も頭を働かせまして、きちんと御案内をするというように心がけてやっていきたいと思いますし、実際にマクロ経済スライドが発動されるという局面でも、物価が上がったほどには年金は上がらないということになりますので、同じ丁寧な説明が必要かと思います。

ただ、なかなかお年寄りの方は書いても読んでいただけないことが多くて、結構厚生労働省のほうに苦情を言われる方も多数いらっしゃるのが現実ではございますけれども、いろいろな工夫をして、そういうことをきちんと御理解をいただくように努力をしていきたいと思います。

それから、積立金の運用に関しても同じことで、非常に長期の話で、人間の想像をちょっと超えるという部分がございますし、現に積立金は現在はある程度取り崩して給付に充てているという財政運営がここ数年続いておりますので、そのことをもって、年金はこのペースでいくと何年には破綻するみたいなことを報道されたりもいたします。そういうことに関してはやはりきちんと財政検証をして、その結果を国民の皆様にお示しをするということが大事な作業かなというふうに思っております。

○原委員 ありがとうございました。

○神野部会長 今のに関連してですか。ちょっとお待ちいただけますか。山口委員、失礼申し上げて。

○山口委員 私のほうからは、財政検証について少し御意見申し上げたいのですが、まだ2014年の財政検証の結果は出ていないので、これからということになるのですけれども、前回、2009年の財政検証の結果と比べると、出生率が一応改善されており、これはプラスの要素。そして死亡率はむしろ寿命は延びているということで、死亡率の低下、これはマイナスの要素ではないかと思います。したがって、人口要素だけ見ても、プラスマイナスの両方の要素があるので、恐らく結果は前回と大きく変わらないのではないかといった見通しが考えられるわけです。

そういう意味で、前回の試算結果を改めて見ておりますと、いわゆる基本ケースと言われるもので、マクロ経済スライドによる終了時点の違い、これはいろいろ指摘されておるところなのですが、基礎年金では、2038年までかかるのに対して、厚生年金の報酬比例部分では2019年に終わるということで、19年間も差があるということになっていたわけです。しかも、所得代替率で見た場合に、比例部分は25.6から23.4まで-2.2ポイントに対して基礎年金の部分は36.6から26.8までほぼ10ポイント近く低下するということでありまして、そういう意味では、基礎年金の代替率の低下というのは、今後さらなる低年金者の増加という形につながっていく懸念であります。これまでは年金制度の外で福祉的な給付措置などで対応してきたわけですが、これにつきましては、年金制度の中でもいろんな工夫がまだできるのではないかと私は思っております。例えば現在基礎年金の拠出は20歳から最大で40年間ということになっているわけで、仮に20歳で加入すると、40年後の60歳で拠出は止まってしまう仕組みです。支給開始が通常ですと65歳からだということは、60歳から65歳の5年間は非常にもったいない状態で空白の期間になっているわけですね。つまり拠出もしないし、もちろん受給も始まってないわけです。

この5年間について、保険料を拠出して制度の支え手のほうに回っていただければ、これは財政的にもプラスですし、さらに言えば、基礎年金だけで低年金の人が単純に考えても拠出期間延長に見合って40分の45といった形で給付額が1割以上増えるわけですね。このような改革をすることによって、低年金者対策といったことについても1つのサポートができる要素があると思います。ですから報酬比例の部分も含めて、拠出期間であるとか、受給期間といったようなものを一律に定めるということではなくて、さまざまなライフスタイルの多様性に応じて、個人の選択肢を拡大させるような、そういった仕組みを入れて、マクロ経済スライドによる給付水準の低下を何とか個人の努力によってカバーできるような道も広げていくことが必要ではないかといったようなことを思っておりますので、ぜひこの部会でも御議論していただきたいと思っております。

○神野部会長 ありがとうございました。事務局で、現時点でいただけるコメントで構いません。

○度山年金課長 そういう意味で言うと、国民会議の報告の中でも、高齢期の就労と年金受給のあり方という形でテーマが立っておるということでございます。ただいまいただきました御意見については、結構重要なヒントをいただいたのかなという印象も持っておりますけれども、これも前回御説明したことですが、財政検証の作業は、今の仕組みにおける財政の健全性を評価するということとともに、次の制度のあり方を考える上での材料となるような検証作業ということも、国民会議のほうの要請でございますので、そういうことの中で、どういうふうに枠組みを設定して考えていくのかというところにつながっていくのかなと受けとめさせていただきます。

○神野部会長 ありがとうございます。柿木委員。

○柿木委員 ありがとうございました。先ほどの意見に関連して、財政検証の意義について、非常に難しいのでしょうけれども、国民にわかりやすく情報発信することは非常に重要ではないかと思うんですね。

今の年金財政のフレームのもとでは、対国民経済比でみれば給付や負担は一定の水準にとどまるということは非常に理解しやすいですし、評価したいと思うんですけれども、今後の1つの参考として、例えば次回の財政検証にあわせて追加の試算を考慮できないかどうか、検討していただければと思います。例えば7ページに出ているのですけれども、課題の整理ということで、少なくとも対応する項目として、マクロ経済スライド、多様な働き方の実現を支える適用拡大、在職老齢年金の見直しに関して、一定の前提を置いて、例えば所得代替率を初めとして、各世代における給付と負担がどういった形になるのか、これが年金財政の改善効果にどういった影響を及ぼすのか、数字で示すことができないかというのが1つお願いです。

既に現在の年金財政フレームでの課題は、国民会議等で整理もされていますし、次のステップとしては、ある程度、定量的な一定の前提を置いた分析結果を提示できれば、より深まった議論なり国民に対する理解を深めることができるのではないかと思うんですね。そういった点も検討はできないでしょうか。

○神野部会長 ありがとうございます。

○山崎数理課長 数理課長でございます。国民会議の御要請で、単に財政の現況と見通しをつくるだけではなくて、制度改正の検討に資するような財政検証にという御提言を賜っておりますので、ただいまの御意見も十分参考にさせていただきまして、どのような推計、試算が可能かということにつきまして前向きに検討させていただきたいと存じます。

○神野部会長 どうぞ、出口委員。

○出口委員 運用と年金の制度について意見を申し上げたいと思いますが、まず、5ページの表、これを前提に考えれば、パラダイムチェンジが起こっているわけですから、年金の資産運用をより多様化するというのはリスクをとるということですから、これは私の理解では、左のほうでは財源が固定されているわけで、保険料収入、積立金、国庫負担となっているわけですから、積立金にもし穴があいた場合は、これは右のほうの給付額が減るという理解になるわけですね。

ということは、この枠組みのもとで資産運用の多様化を行うということはそういうことであるということをまず大前提に、運用の多様化を議論しなければいけないと。リスクをとるのであれば、そのことがわかった上で、そういうふうに給付額が減るということですよということの国民的理解のもとにリスクをとるということが大前提であると。これが第1点です。

それから、2点目は、海外の事例を非常に丁寧に説明していただいて非常によくわかったのですが、私自身、大した経験ではないのですが、バブルの絶頂期、ザ・生保と言われたときに日本生命で運用企画をやっていたのですが、そのときの経験では、実は運用の一番の問題はリスク・リターンの問題ではなくて大きさの、ボリュームの問題だと。これは当時、池の中の鯨だとかいうジョークがあったのですけれども、リスク・リターンで運用の多様化を考えるということは、ある意味では、運用手段や運用マーケットが無限に大きいということをアプリオリに前提しているのであって、運用で一番難しいのはcan、can ’ t だと。できるか、できないかで、海外の例を見ていただいても、実は100兆円を超える資金というのはアメリカしかここの例ではないわけですね。CalPERSは大変アグレッシブで有名な基金ですけれど、わずか二十兆円しかない。だから、運用問題を考えるときには、ボリュームというか大きさの問題、マーケットに比べて、ボリュームがどれほどあるのかということを議論しないと、そこがリスク・リターンよりもはるかに根源的な問題ではないかというのが2点目です。

それから、運用の3点目は、今回のこの枠組みの中では100年持つと。100年間にこの運用部分を取り崩して充当するということを一応前提に置いておられると。そういうことであれば、自主運用を開始されてから2.26%ですか、これは債券運用を0.5%ぐらい上回っているという御説明があって、すばらしいマネジャーがいらっしゃるのだと尊敬の気持ちを禁じ得ないのですけれど、100年という期間で考えてみたら、これはリスク・リターンで、要するに報酬を払ってプロのファンドマネジャーを何人か雇ったら本当にできるのかという問題ではない気がするんですね。100年の運用を考えたら、大体できることは、成長率、我が国の債券や株式が中心になるのであれば、我が国の成長率に大体見合ったぐらいしかリターンは稼げないというぐらいに謙抑的に考えておかなければ問題が残る可能性が高いと思いますので、運用については以上の3点を、私自身は問題だと考えておりますので、先ほど申し上げた多様化するということは給付に直結するのだというこの仕組みの徹底と、ボリュームの問題、100年間というロングランで見るのであれば、成長率ぐらいのことしかできないのではないか、そういうふうなことを踏まえた上で検討していただければいいと思います。

それから、運用を離れて年金制度について1つだけ思いますのは、これは武田委員が先ほど指摘されたことでもあるのですければ、私自身も医療・介護に比べて年金の問題はやや小さいのかなと思わないわけでもないのですけれども、ただ、今の実際の社会の認識を見ていますと、むしろ、普通の人が、この先年金はもらえないのではないかというふうに実は思っておられて、この意識の格差というのがすごく大きいと。年金をもらえないのではないかと思ってしまえば、後はためるしかない。消費に甚大な影響を及ぼすわけですから、この普通の市民との間の意識落差を埋めるということは、これは物すごく大きい政策課題だと思います。

それと同時にもう一つの、大きい課題は、この前の国民会議の報告書を読んだ限りでは、誤解があるのかもしれませんが、やはり社会の変化に合わせて社会保障を変えていかなければいけないということが、私自身は一番の骨子であったと思います。要するに20世紀後半型の人口がふえ、高度成長で専業主婦が大多数であった社会の姿を前提にした制度から、今の社会の実態に見合った制度に変えていくというのが根幹であった。

そうであれば、年金についても、これはグローバルに見てもそうですけれども、男性でも女性でも、働きたい人は能力に応じて、意欲に応じて働いていくということが、しかも単身世帯が3割を超えている中ではこの社会の基本だと思いますので、第3号被保険者の問題は、これはいわば哲学にかかわる、理念にかかわる大変大きい問題だと考えていますので、そこの点を踏まえた議論をしていければ大変ありがたいと思っています。

すみません、少し長くなりましたが、失礼しました。

○神野部会長 今後、この部会でも詰めて議論していく参考にさせていただきたいと思いますが、運用にかかわる3点は、森参事官、お願いします。

○森大臣官房参事官 運用について3点、御指摘いただきました。年金資金につきましては、御説明いたしましたように、将来の年金給付のための貴重な財源でございますので、その性格を踏まえて運用していくべきだということは先生の御指摘のとおりかと存じます。

 2点目でございますけれども、例えば民間で言いますと、御存じだと思いますが、例えばフィデリティは1.76兆ドルと 、非常に大きな額を運用しているとかということがございますけれども、大きくなればなるほど市場に対する影響が大きくなる、もしくは、度山のほうから説明いたしましたけれども、年金といっても、将来生産される財やサービスとか、そういう付加価値を原資にしていますので、金融だけ実体経済を離れて大きな利益が取れるものではないという御指摘はそのとおりだと存じます。

 あと、3点目でございます。年金につきましては、積立金、これは経済の分配で考えますと、保険料のほうは、先ほど御説明しましたように、賃金収入のほうから取ってきまして、もう一つは、積立金のほうは資本収入から取ってきますので、この組み合わせというのをどのように考えていくか、ベストミックスというのは重要だと考えております。

 以上でございます。

○神野部会長 どうもありがとうございます。米澤委員、どうぞ。

○米澤委員 今、出口委員からの御発言で、私の意見が解決されたような感じがするのですけれども、つけ加えさせていただいて、おっしゃるとおりという感じなのですけれども、今、とかく年金財政の側面から離れてもう少し株式の比率を高めようとかという概念的なことだけで、ないしデフレ脱却だから株式の比率を少し高めようかという議論が出始めてきているので、私もちょっと心配なのですが、やはり根幹として、年金財政に戻って考えていく必要があって、要するにそこで何を考えるか。今、おっしゃったとはまさにリスクなのですね。運用のリスクで、うまくいった場合にはスライドの調整期間が早く終わる可能性もあるかもしれませんけれども、逆のときは逆になるということで、そこのリスクは新たに認識される必要があるかと思います。

 幸か不幸かと言っていいかわかりませんけれども、パラダイムシフトになったので、言ってみれば給付のところが調整役になるので、リスクが明確に反映されてくるので、そこのところがあえて必要になってくるかなと思います。

 とはいいながら、1つ、今、一番の根幹がどこのポートフォリオをとるかに関しては、全額債券で運用したときと同じリスクというところを決めてやっているわけですね。これは1つ大きなベンチマークであると思いますし、今、超長期的な実体経済の成長から考えると、経済成長率プラスちょっとぐらいしかないだろうというのは、比較的その目的とは整合的かもしれませんけれども、もうその周辺、年金財政にとって一番リスクが少なくていいような目標というところも考えられてしかるべきだと思うのですね。

もう少し具体的に言いますと、運用利回りから賃金上昇率を引いたものを、これ自体は確率なので、それをリスク評価して最大になるように、ないしはそれを下回らないというようなことも考えていいのかなということで、その辺、財政のほうの理論武装がないと、CalPERSに比べて株式のウェートが低いから高めるべきだと言われるとなかなか反論の余地が少なくなってくるので、少し年金財政のところに立ち位置をして、かつそこのところをどのくらいリスクをとるのかというのを、国民的な合意は難しいかもしれませんけれども、何らか皆さん方の理解が必要かなと思っております。

プラス1点で教えていただきたいのですが、運用とはかけ離れて、スライドの調整なのですけれども、調整がいつまで続くかというのは、将来において財政が均衡するまで続けるという理解で、そのときの所得代替率というのは、結果として、要するに内数変数として出てくるというので、50との兼ね合いと財政のバランスというのはどちらを優先して、どのようにストップさせるのか、そこのところを教えていただきたい。

○神野部会長 よろしいですか。

○度山年金課長 現行制度上どのように規定をされているかということで御説明しますと、少なくとも5年に一度財政検証するということがルール化されていますので、5年に一度財政検証をやると。今の六十数%のモデル年金の所得代替率では出と入りが合わないのでスライド調整をかけるということになりますが、ずっと20年、30年かけ続けていると、もうかけなくても一応100年間の出と入りが合うというタイミングがまいりますので、そういうふうに確認がされたところでスライド調整はとめるというルールになっています。この仕組みだけだと理論的には何%で均衡するかというのは、状況によっていろんなパターンがあって、極端に言うと30%ぐらいで均衡するというような結果も出るわけですが、そこに一定の歯止めをつけているのは、さすがに公的年金の老後の所得保障という役割から言って代替率が何%でもいいというわけではないだろうと、そういう御議論がありまして、先ほど私は社会的厚生ということの1つのメルクマールというふうに説明申し上げましたが、一応マクロ経済スライドによる調整は50%まではかけましょうということにしています。それで、50%に達したときに、まだ100年の出と入りが合わないということになると、これは別の調整方法をいろいろ考えるということも含めて議論をしましょうと、そういうルールになっていると、そういうことでございます。

○神野部会長 山本委員、どうぞ。

○山本委員 皆さんの貴重な御意見伺っておりまして大変参考になっております。ここのところの運用の問題がまず1つ疑問に感じます。疑問といいますか、パラダイムシフトが起き、株式市場も、これまでの流れと違った動きが出てきた。先ほどボリュームの話がございましたけれども、これまで株式運用のシェアというのは11%上限と伺っていたのですが、こういった運用上の問題が1つの誘因となって、株式運用のシェアをさらに高めたら年金財政は改善するのではないかというような論調を世間的には見受けます。解釈が間違っているかもしれませんけれども、パラダイムが変わってきたことで、そう簡単に物事の価値観の置きどころ、重心を移していくという軽さはどうなのだろうかという感じがしております。今日も朝の新聞を見ると、カナダから資産運用のプロが大勢来ていて、日本はそれを学んでいこうという話も出ていて、どうも加速度的にそういう考え方を導入していく気配を感じます。しかし、そこにはリスクをとっていかなくてはいけないという問題もありますから、実際に将来の安定性ということにつながるということが前提になって、進められているのならいいのですが、どうも何か、急に物事の視点が変わってきているような感じに、若干驚きを持っております。

先ほどの財政検証というのは5年に一度ということですが、果たして5年というタームがいいのかどうかということが1つありますのと、マクロ経済スライドで給付水準が変わっていく際に、先ほどいろんな方からの御指摘もありましたが、受給者がどうしてこういうふうに給付額が変わっていくのかということの理解が追いつかないし、理解できない。この前こうだったのに、今度見たらまた違うのだということが常に起きるような気がします。今、年金の案内便みたいなもので事が済んでいるようにも思えますけれど、もうちょっとその辺をこまめにしてはどうか。例えば若くても保険は払っているわけですね。そういう人たちが、全体のフレームがこうなっているから、だから自分の負担部分がこうなっているのだという理解が行き届くように、単なる文書を1本送っておけばそれで責任は逃れたみたいなやり方では、本当にこのことを国民全体が理解を進めていくという方向づけがうまくいかないのではないかという不安があります。マクロ経済スライドとか、そういうことを考えていくにつけ感じるということなので、その辺の対策を厚めにやっていただければと思います。

○神野部会長 最初の運用の問題は森参事官、いいですか、もう。

○森大臣官房参事官 ただ、1つ言えますのは、例えばことしの8月8日に、内閣府から長期的試算ということで、例えば長期利子率が3%に上がるとかというシナリオもございますので、このようなデフレ脱却化を見据えたところということで、先生方だけでなく内閣府のほうでも御議論いただいているものだと認識はしております。

○神野部会長 後者の検証の問題、度山課長。

○度山年金課長 まず5年に一度というサイクルでございますけれども、先ほど諸要素として説明した、いわゆる人口の要素が5年に一度、国勢調査が実施をされて、その人口ベースに将来人口推計をおよそ5年に一度出していると。確かに社会経済は刻々変化するのですけれども、ある程度トレンドを捉えるということを前提に、そのトレンドを将来に投影するという形で予測やっていますので、その頻度を頻繁にするというのも余り現実的ではないかもしれないという要素がございます。ただ、マクロ経済スライドは年々のことでございますので、確かに5年に一度のサイクルで行われるこういう検証作業と、給付調整は毎年行われるというところのギャップがあるのはあります。

それから、2004年の改正以降、言葉で言うと「ねんきん定期便」という言葉になっているのだと思いますが、実はそれ以前の年金制度は非常に不親切でございまして、年金受給のおよそ1年前ぐらいになって、あなたの年金、こんな感じになりますのでというような、詳しくは年金事務所まで御相談をみたいな感じの御案内だったのを、スウェーデンが「オレンジレポート」というのを受給者に定期的に送っていらっしゃるというような情報も得まして、我が国でもこれからそういう情報提供が重要ではないかということで、そういうことを制度改正をきっかけに始めるということにしましたし、それから、法律が通りました社会保障・税番号制度というものを活用しますと、これもいろいろ議論があって、どこまで範囲にするかというのはあるのですが、社会保障ポータルサイトのようなものをつくって、認証システムを厳格にしなければいけませんが、個人の給付と負担のいろいろな状況を確認ができるようなシステムもつくっていこうというような話もございますし、いろんなことを考えて、もうちょっと年金の給付と負担というものを現実の問題として捉えられるような仕組を考えていかないと、既に給付が50兆ですから、大体GDPの10%相当という非常に大きなお金が動く仕組みになっていますので、ある意味ではそれに相応した感覚を持ってもらう工夫は考えていかなければいけないと思っております。

○神野部会長 菊池委員、どうぞ。

○菊池委員 私からは、既に委員の皆様から出ている話なので、新しいことはほとんど何もないのですが、2点感想というか、意見というか、させていただきますと、1点は、私も運用について、運用の専門家ではありませんけれども、被保険者の利益ということが強調されていますけれども、当然ですけれども、超長期の制度ですので、これから被保険者になる人たちの利益も将来世代に非常に大きくかかわってくる、そういう視点を持って慎重に議論していただきたいと思っております。外国の制度の紹介がありましたけれども、当然ですけれども、CalPERSの性格というのは、果たして日本の公的年金とパラレルに考えられるのかとかいろいろありますし、当然考えてやっておられると思いますけれども、慎重に御議論いただきたいというのは私から申し上げたいと思います。

もう一点は、これは神野部会長と駒村委員がおられる中ではちょっとおこがましいのですけれども、国民会議の議論の中で、先ほど御意見ございましたように、これから医療・介護を中心にやっていくというメッセージが出ていると思うのですが、逆に言うと、年金については、去年、今年でここで随分議論して、ある程度の改革、改正はやったという、そういう中での、次は残された医療・介護のメッセージだと思うのですが、プログラム法案も非常に事細かにこれからの工程表、平成何年までにこれをやるというのが書かれていますけれども、その中で、給付の範囲を見直して、同時に負担も見直すという、なかなか国民の側からすると、生活にかかわってくるような厳しい改正が幾つも待っていると思うわけです。

医療・介護の工程表はある程度示されましたが、同時に年金についても、当座の大きな改正はひと山超えた感はありますけれども、課題が幾つも提示されていますし、年齢別ではなく負担能力に応じた負担になっていく中で、その負担は年金から支払うということもになっていきますし、その年金も減らざるを得ないという面があるのであれば、そういう議論を小出しにしていくのではなく、年金についても、しかるべき時期にある種の工程表みたいな、こういう議論をやっていこうという、もう少し明確なビジョンというか、そういうものを明らかにして、国民の皆さんに提示していくという、そういうことが求められるのかなと思いました。

以上です。

○神野部会長 ありがとうございます。駒村委員。

○駒村委員 3点あります。先ほどの山本委員の財政検証に関することですけれども、資料1の17ページに、年金数理部会のほうで出した検証結果が一応出ていて、私も年金数理部会のメンバーなのですけれども、これを見ると、大体この間のずれが、一応毎年健康診断のチェックみたいなことをやっていて、経済状況のずれによって、どのくらいの実質的な乖離が発生するか、大体-3.1兆円、これが大きいか、小さいかというのは議論あるところですけれども、このくらいの幅の中に入っているということが出ていますので、これはもう少しアピールしていただいたほうがいいのかなと。

ただ、もう一方では、確かに積立金が取り崩されている時期もあるわけでありまして、これは先ほどの運用の話になるわけですけれども、資料2の2ページの一番最後に書いてあるのですけれども、米澤委員にぜひとも運用のほうの部会でも強調していただきたいわけですけれども、このお金というのは、資金繰りのお金でもあって、バッファーファンドなのだと。いざというときに使えないと大変困ることになるのだという点は、ぜひとも強調していただきたいというのが2点目です。

それから、3点目は、これは資料1の24ページ、これをずっとにらんでいるわけですけれども、実質賃金上昇率が記録してないと年金財政は安定しないわけですから、これで言うと、45度線となるのでしょうか、斜めに入っている点線よりも左上にならないと年金財政は安定しないわけですし、一方で、マクロ経済スライドが効く条件というのが、なお、言うと、第一象限と45度線の部分しかないということになるので、非常にそういう意味ではめったに、めったにというか、この間は当然ほとんどなかったわけですね。

今後もそういう事態がないとは限らないわけでして、そういう意味で、国民会議のほうでは、将来再びデフレの条件が生じたとしても、年金水準を計画的に調整しなければいけないと書いてあって、私はこれは撤廃したことも考えなければいけないよということを意味していると思いますので、次回の財政検証のときには、名目下限を撤廃したらどういうことになるかとか、ただ、マクロ経済スライド、またずれて進むわけですけれども、その際に代替率50%というものの、50%の内訳も少し注目しなければいけなくて、基礎年金と厚生年金のバランスが、2004年のときのバランスと2009年の検証のときのバランスが随分変わってきていると。そうすると、今後どうなるのかということも同時ににらんでおかなければいけないのではないか。

以上です。

○神野部会長 どうもありがとうございました。菊池委員と駒村委員、あわせて何か事務局のほうで。

○度山年金課長 まず、1点だけ弁明をさせていただきたいのは、7ページの資料だと思いますが、国民会議の報告もそうですし、どちらかというと、医療・介護中心の今後は改革でと、こういう話があったりとか、先ほど医療・介護に比べると年金の問題の大きさは小さいようにと思われるとか、そういうお話があったのですが、ここで言いたいのはそういうことではなくて、ある意味では保険料率を固定したという制度を導入したことで、給付規模が対国民経済との間では一定の規模におさまるような制度になってしまったと、そういうことになったので、そういうことを通じて問題のディメンションがこういうふうに変わっているのですよということを言いたいだけなので、これによって問題の大小を論じたかわけではないということは1点弁明させてください。

それから、資料の中に参考でプログラム法案の概要と中身もつけてございますが、確かに医療・介護のボリュームが大きくなっていますが、これはいわゆる消費税を二段階に引き上げるということの中で、社会保障の充実と重点化、効率化をやっていこうということになっていて、医療・介護のボリュームが大きくなっているのは、まさに御議論をいただいて、年金制度に関しては、先に少子化問題と一緒に一定の対応をしたと。医療・介護についてはその対応がこれからだということで、そこを特にスケジュール的に明記をしたという構成になっているので、ボリューム的にはそういう問題と。

ただし、消費税10%に対応した改革という意味では、年金制度はやるべきことはやったわけなのですけれども、一定改革の積み残しの課題もございますし、法案審議の過程で出てきた問題もございますので、そういうことに関しては、時期は明示しておりませんけれども、前回、御説明したように財政検証を踏まえて、その次のステップを刻んでいくということを、これはプログラム法に明記をさせていただいておりますので、それは次の改革を射程に入れて議論をしているというふうに御理解をいただければと思います。

○森大臣官房参事官 御指摘のとおり、諸外国との比較につきましては、賦課方式か積立方式か、原資の性格がどのようなものか丁寧に見比べつつ、またリスク許容度を考えていかなければならないというのは御指摘のとおりでございます。また、公的年金の場合には実質的な価値の保持、これはインフレになればその分の対応をしなければいけないので、資産運用において、どのように実質的な価値を保持していくかという観点も重要かと考えております。

 またバッファーファンドについて御指摘いただきました。まさに賦課方式におきましては、保険料の足りない分を積立金から補う。保険料につきましては、景気変動によりまして、多い年、少ない年もございますが、その間も年金積立金できちんと対応しておかなければいけませんので、この点は、給付につきまして、あらかじめ予定できる積立方式と違いまして重要な点かと存じます。

○神野部会長 ほかに、どうぞ。

○山崎数理課長 駒村委員に御指摘いただきました名目額下限を撤廃した場合にどうなるかというような試算も財政検証においてということでございまして、将来デフレを脱却したといたしましても、平均的にはプラスの賃金・物価の状態でも景気の循環によりまして、一時的にはマイナスになることもあるということがございますので、経済前提と積立金のあり方の専門委員会におきましても、将来の経済前提を置きます場合に、そういう変動がある場合にどうなるかということについても、ある種オルタナティブのケースとして考えるべきだという御指摘いただいておりまして、そういうような前提の設定の仕方とあわせまして、名目額下限というものがどのように年金財政に影響を及ぼしているかということがわかるような試算に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

○神野部会長 ありがとうございます。ほか、いかがでございましょうか。照沼参考人、何かございますか。よろしいですか。

○照沼参考人 はい。

○神野部会長 それでは、どうもありがとうございました。ほかに特に御発言がないようであれば、そろそろ予定させていただいております終了の時間が近づいておりますので、最後に2点ばかり、この部会に御報告させていただきたいと思います。

第1点でございますが、これは前回のこの部会で設置を御了承いただきました「年金保険料の徴収体制強化等に関する専門委員会」の設置に関してでございます。この委員会は、既に第1回が10月11日に開催されております。この第1回の委員会において配付された資料のうち、委員会名簿、検討スケジュールにつきまして、参考資料2、3として、お手元に御配付してございますので、御参照いただければと思います。

もう一点、先ほども関連した法律のことでございますが、第2点目については、事務局のほうからお願いできますか。

○八神総務課長 お手元資料で参考資料4とございます。10月15日に国会に提出をされました「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律(案)」でございます。この法律案は、前回の本部会で、この「社会保障制度改革推進法第4条の規定に基づく『法制上の措置』の骨子について」というものを配付させていただきました。これに基づきまして、講ずべき社会保障制度改革の全体像、進め方を示すとともに、社会保障制度改革推進本部の設置などを定めるというものでございます。内容につきましては、お手元に御用意をいたしましたので御参照いただければと存じます。

○神野部会長 よろしいでしょうか。何か御質問ございますか。よろしいですか。

それでは、そろそろ予定させていただきました終了の時間でございますので、本日はこれにて審議を終了させていただきたいと思います。

次回の開催等々につきまして、事務局のほうから御連絡いただければと思います。よろしくお願いします。

○八神総務課長 次回ですけれども、11月27日(水曜日)の午後2時からを予定しておりますが、詳細は追って連絡をさせていただきます。

○神野部会長 それでは、どうもありがとうございました。

○八神総務課長 すみません、2点、局長より補足させてください。

○香取年金局長 年金局長でございます。きょうは熱心な御議論ありがとうございました。私のほうから2点ちょっとお話をいたします。

1点は運用の問題ですけれども、いろいろ新聞紙上もにぎやかでございますし、大変各方面が高い問題、特に年金制度というよりは、運用ですとか金融ですとか、そういうことにかかわる方々の関心が非常に高い。年金制度の規模の大きさ、資金の大きさということにもよるのだろうと思っておりますが、きょういただいた御意見、実はこの会議、私どもの共同事務局ということで参画をしておりまして、冒頭、参事官から御説明申し上げましたように、一方でデフレ脱却の局面の中で、日本の経済が一定の成長軌道に乗ると。その中で、その成長の果実を確実に年金制度の財政に反映させると、1つ、そういう観点が、ある意味では運用ということだけではなくて、年金制度にとってもそういう視点が要るだろうという御指摘はこの検討会でもいただいているところでございますが、他方で、お話ありましたように、資金それ自体の性格とか、法的な規制、あるいは運用それ自体の形、長期にわたって運用するという年金の性格、あるいはきょうまさにお話がありましたが、最終的にリスクをとる人は誰なのだということを、ある程度踏まえながら議論していくということは私どもも必要だろうと思っています。

経済との関係で、ウインウインの関係にしていくというのは、大きい意味では、基本的には、内閣官房と私ども共通の事務局ですが、共通の理解ではありますが、年金制度としてやるべきこと、できること、できないことというのはきちんと整理をしながら臨みたいと思っております。これが1点。

それから、もう一点は、次回の関係でございますが、きょう冒頭で、武田委員のほうからも、年金財政ということだけではなくて、年金制度それ自体の何といいますか、社会保障制度としての役割でありますとか、特に年金と経済との関係ということでお話がありました。きょうどうしても財政検証のお話を御説明するということで、財政問題を中心に御説明したわけですが、言うまでもなく、年金は60兆近い規模の給付をいたしておりますので、給付という局面では、国民それぞれの皆さんの生活、経済では消費にかかわることになりますし、負担という意味でも数十兆という保険料を毎年企業や個人からいただいているわけですから、そういった影響もありますし、運用はまさに今お話ありましたように、資本市場からの果実をいただいているということになりますので、我がほうの運用それ自体が金融市場に大きな影響を与えるということですので、次回は少し、こういう年金の財政の問題だけではなくて、制度としての年金制度と経済の関係でありますとか、あるいは雇用との関係でありますとか、その辺についても少し御議論をしていただいて、それでその後、諸外国の年金制度の改正の動向でありますとか、そういった議論の前提となるような、さまざまな材料について御提供するという形でさせていただきたいと思っております。

よろしくお願いします。

○神野部会長 ありがとうございました。いずれにいたしましても、きょう熱心に御議論いただきましたことを念頭に置きながら、この部会の運営に当たっていきたいと思っております。

 時間でございますので、本日の部会はこれにて終了させていただきます。最後まで熱心に御議論いただき、また生産的な御意見をたくさんちょうだいしたことを深く感謝を申し上げる次第でございます。

どうもありがとうございました。

 

(了)