2013年9月13日

厚生労働省年金局

局長  香取 照幸 様

                 東京都北区志茂2-43-1 木村方

                   電話・Fax 03-3902-2189

                 企業年金の受給権を守る連絡会

                 代表世話人 佐々木 哲夫、夏野 弘司

 

拝啓 ようやく秋風が感じられるようになりましたが、ご苦労の多いことと存じます。

 さて、 厚生年金基金制度の見直しに関する改正法が成立したことを受けて、貴省から移行措置概要やFAQなどが発表されました、これらの内容について下記の質問をいたします。ご多忙のところ恐縮ですが、回答は書面により今月中に戴けますよう宜しくお願いいたします。

敬具

1.受給権について

田村厚生労働大臣は、第183回国会 厚生労働委員会 第12号平成25年5月17日(金曜日)において以下のように企業年金は労働契約上賃金の後払いという認識のご答弁をしています。

(1) 国の見解として、法的には企業年金は賃金の後払いという認識をされているということでよろしいでしょうか。

1.この認識に立てば、企業年金受給者の減額は後払いたる賃金の一部不払いとなり、一般的な賃金の不払いと本質的に共通しますので、貴省としては指導監督の対象になるのではないでしょうか。受給者の給付減額について貴省としてはどのように保護すべき方針を持っていられるのでしょうか、お伺いします。

2013年9月13日金曜日

○高橋(千)委員  今日、随分議論をされてきたところでありますけれども、改めて質問します。

 まず、簡単な認識を確認いたします。企業年金は賃金の後払いであり、賃金の一部である、だからこそ受給権が保護されるのは大前提である、これはよろしいですよね。

○田村国務大臣 今そのような形で、労働契約といいますか、就業規則等々に書かれておったりですとか契約されている場合には、そういうふうになるわけでございます。賃金の後払いの部分という意味、この上乗せ部分に関してそういう意味合いというものは、仮にそうであったとするならば、当然、これは企業とそれから働く方との契約の中で成り立っているというような、そんなものであろうというふうに思っております。

○高橋(千)委員  今日、随分議論をされてきたところでありますけれども、改めて質問します。

 まず、簡単な認識を確認いたします。企業年金は賃金の後払いであり、賃金の一部である、だからこそ受給権が保護されるのは大前提である、これはよろしいですよね。

○田村国務大臣 今そのような形で、労働契約といいますか、就業規則等々に書かれておったりですとか契約されている場合には、そういうふうになるわけでございます。賃金の後払いの部分という意味、この上乗せ部分に関してそういう意味合いというものは、仮にそうであったとするならば、当然、これは企業とそれから働く方との契約の中で成り立っているというような、そんなものであろうというふうに思っております。

2.受給権の保護について

受給者への減額が行われる際の最低積立基準額相当の特別一時金は選択肢として貴省通達にて明示されています。しかしながら、減額についての同意・不同意を求める際に、同意の場合は、その時点で特別一時金の選択の放棄を求められる実例が見受けられます。この実例について貴省としては把握しておられるでしょうか。通達の内容の変更や弾力化が行われたことがあるのでしょうか、或いはその予定がおありなのか、お伺いします。

 

3.第183国会の附帯決議を受けての貴省の対応について

厚生年金保険法の一部改正の参議院における附帯決議では、「政府は本法の施行にあたり次の事項について適切な措置を講ずるべきである」として、第三項目で「厚生年金基金の解散・移行に当たり、母体企業が退職金規程等に基づく退職給付義務を履行するよう指導を行うこと」が掲げられています。

これについて、貴省は本年8月2日に発表したFAQで、第9項の「現時点での考え方」として「退職金規程に基づき、労使間で適切な対応がなされるよう、厚生労働省としても基金の解散に向けた指導を行う中で関係者に周知を図っていきたいと考えています」と述べています。

(1) 附帯決議の文脈からしますと、この項の「指導を行う」中心点は、退職給付義務の履行についてではないでしょうか。附帯決議文の貴省としての解釈、受け止め方についてお伺いします。

(2) 「関係者への周知を図る」とは具体的にどういう施策を考えておられるのでしょうか。関係者の中には受給者を含めるのか、受給者団体、労働組合、労働団体、ナショナルセンターの参加も含めての説明会はないのか、今後どのように周知を図る予定なのか、お伺いします。

(3) FAQ第四項には「丁寧な説明」を基金に行わせるとし、その説明対象として「加入者、事業主等」と述べており、受給者が欠落していますが、受給者の位置づけはどのようになっているのか、お伺いします。

(4) 基金の「丁寧な説明」や「指導」があったとしても、これに納得できない受給者が貴省に直接指導を求めることは可能でしょうか、その場合、受付窓口(担当部署)はどこになるのでしょうか、お伺いします。

 

4.キャッシュバランスプランの設計弾力化について

昨年、貴省が専門委員会に提出された「試案」では、キャッシュバランスプランの設計弾力化の具体策の中に指標選択肢の多様化がありました。これについて専門委員会の2月1日付意見書には、①大筋賛同の意見、②別の施策を求める意見、③反対の意見が併記されていました。しかし貴省は「試案」そのままの施策を推進するご意向です。

(1) 専門委員会での②や③の意見を貴省はどのように評価されたのか、何故排除されたのか、お伺いします。

(2) もともとキャッシュバランスプランは給付額が変動する制度であり、この指標がゼロ以上であればよしとする仕組みは、労働者の老後保障に資することを目的にする確定給付企業年金法の第1条「公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする」とどのように合致するのかお伺いします。

(3) これの更なる弾力化が実施された場合に、受給者にはどんな問題が起こり得るとお考えなのかお伺いします。

(4) 基金が受給者に対してこの弾力化措置を含むキャッシュバランスプランを導入する場合の理由要件、手続き要件はどういうものでしょうか。全受給者に対して規約変更の提案を行って三分の二以上の同意があれば宜しいのでしょうか。改めてお伺いします。

(5) ゼロ以上の指標を導入する規約変更により、受給者の退職給付たる金銭債権が履行されなくなるリスクが発生しますが、貴省としてはどのような見解かお伺いします。

 

5.企業年金の選択肢の多様化について

(1) 制度維持のための救済措置として財政検証の基準値、予定利率の適用の弾力措置が予定されていますが、これは二重基準となり、その一律適用は優良な年金基金であっても本来の基準値による積立義務などを負わず、モラル・ハザードを生む素地となり得ます。

 同時にこれは、受給者・加入員にとって不安材料となります。この点を考慮し一律適用を回避するなどの必要性や今後の措置についてどのようにお考えか、お伺いします。

(2) キャッシュバランスプランの設計弾力化は、既存のDBも活用できることとなるため、モラル・ハザードの問題を作り出しますし、受給者・加入員にとっては不安材料である上、結果として不利益を生じる可能性を有しています。この点を考慮し一律適用を回避するなどの必要性や今後の措置についてどのようにお考えか、お伺いします。

 

6.所得代替率の努力目標について

   国会答弁(第171国会衆議院厚生労働委員会10号平成21年4月15日)で当時の厚生労働省渡辺年金局長は「企業年金は公的年金とあいまって、より豊かな老後生活を送るための制度という位置付けであり、公的年金と合わせて退職前所得の六割程度を努力目標としており、六割程度という努力目標は企業年金の基本となっている」と企業年金の役割について答えています。

  この努力目標は現在どのようになっていますか。また現状の公的年金及び企業年金の代替率のそれぞれの割合及び過去からの変化状況をお教え下さい。

 

7.中小企業と大企業の企業年金制度の格差解消について

  現在存続している総合型厚生年金基金制度は中小企業が中心に構成され多くが代行割れの状況にあることは貴省の分析の通りです。今回の法改正で多くが解散に追い込まれ受給権が反故にされる状況があります。代行部分が制度全体の8割相当となっており、他のDC、DBなどの制度に移行できても、多くは減額などの措置が講じられます。その結果、大企業と中小企業の老後所得格差が拡大していきます。

 こうした格差について貴省は検討されているのでしょうか。お伺いします。

また、格差解消のために貴省が考えておられる施策があればお示し下さい。

 

8.支払保証制度の確立について

  当会では、貴省宛に2013年1月11日付け「厚生年金基金制度見直しについて(試案)に対する意見と要望」にて以下のように支払保証制度の早期確立について要望を提出していますが、ご回答を戴いていません。

  この要望は確定給付企業年金法が制定・施行(平成14年4月)された際の附帯決議「支払い保証制度については、企業年金の加入者及び受給者の受給権保護を図る観点から、モラル・ハザードの回避などに留意しつつ、引き続き、検討を加えること。」を根拠とした要望です。

  運用難などで企業年金制度の破綻が多発する状況が危惧される中、支払保証制度の確立は切実な課題となっています。附帯決議の実行をどのように実施されるのか、お伺いします。

1月11日付要望書から)

4.「支払保証制度」の早期確立を

 最後に支払い保証制度の早期創設を求めたい。

この問題は当連絡会設立当時から、厚労大臣、「連合」、全労連など労働組合の全国組織、全日本年金者組合などにことあるごとに要請してき ているところである。

本年4月の民主党「AIJ問題ワーキングチーム」の報告書の中にも『日本版エリサ法』の制定を考えようという件があった。

 私たちはAIJ問題の教訓として厚労省は早期に『日本版支払保証制度創設についての有識者会議』の立ち上げ国会付帯決議の具体化に着手するよう訴えるものである。

以上

 

追記 本件に関する連絡先 〒261-0011

             千葉県美浜区真砂3-18-3-1201

                  佐々木 哲夫

             電話・Fax 043-279-1266

 

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