2017年活動方針
Ⅰ.最近の年金をめぐる特徴的な動向
安倍政権の進める「アベノミクス」のもとで、日銀の「異次元の金融緩和」が導入され4年経過したが、デフレ不況からの脱出の状況を作り出せず、最近の総務省の家計調査では、2016年のエンゲル係数が25.8%(2人以上の世帯)と約30年ぶりの高さになったと発表されている。国民の暮らしが急激に厳しくなってきたことを示している。
このようなもとで政府は社会保障費の自然増を抑制する政策を強め、年金削減だけでなく高額医療費の上限の引上げ、後期高齢者医療保険料の特別減免措置の廃止、介護保険から要支援1・2の保険外し、社会保障費の毎年の自然増抑制のため新たな改悪、負担増と給付削減を予定している。
年金については、政府は少子高齢化のもとで、将来の年金を確保することが必要だ、世代間の公平性、年金制度の持続性を口実に「年金カット法」を強行成立させた。またこの間非正規雇用者が増大するもとで、短時間労働者の社会保険適用拡大をすすめているが、政府が予想した適用拡大になっていない。
一昨年から続いている全日本年金者組合の「年金引下げ違憲訴訟」は全国43都道府県で4600人以上が原告となり、かってない規模の歴史的な集団訴訟となっており、社会保障改悪を許さない運動にも発展している。
1.公的年金分野
1)2017年4月分からの年金額が0.1%減額されることになった、今年度はマクロ経済スライドによる調整はない。
(6月上旬に年金額改定通知書が届く)
2)昨年末の国会で「年金カット法」が強行採決で成立した。
改定の内容は
① 2018年4月から物価・賃金の上昇時、マクロ経済スライドによる過去の未調整分を繰り越し合算して年金額を減額する(キャリーオーバー)
② 2021年4月からは、物価が上がっても賃金が下がれば賃金に合わせて年金額を減額する。
3)2017年4月から、昨年10月からの501人以上の企業での短時間労働者の被用者保険適用拡大に続いて、500人未満の企業でも労使の合意があれば、適用拡大を可能とすることになった。
4)年金受給資格期間10年に短縮され、該当者には2月から7月までの間に、高齢者順に年金請求書(黄色便)が送られてくることになっており、年金事務所では3月から請求書の受付を始めている。
年金の支払いは9月分からで、第一回目は10月13日となっている。
受給資格10年短縮は、全日本年金者組合が永年要求してきた運動が実現したものであり、無年金者約120万人を救済できる大きな成果となった。
2.企業年金分野
1)2014年4月から厚生年金基金制度の見直し(健全化法)が施行され、 厚生年金基金の解散が進んでいる2017年3月末現在で、厚生年金基金数110のうち解散内諾済基金31基金、代行返上内諾済は69基金、残りは10基金となっており、加入員数は約150万人、解散基金の加入員・受給者の企業年金受給権が侵害される事例が多くなることが懸念される。
他の企業年金の状況は次の通り
2017年1月末現在、 確定給付企業年金加入者数 795万人
確定拠出年金の企業型加入者数 589万人
〃 個人型加入者数 33万人
2)確定給付企業年金の制度改定の政省令により、2017年1月から
「リスク分担型企業年金」が施行された。
受給者の同意なしで、現行確定給付型からリスク分担型に移行できるものであり、企業年金受給権が従来以上に不安定なものとなる。
3)少子高齢化により公的年金は先細りとなるため、老後の所得を企業年金や個人年金で補足することが必要だとして、個人型確定拠出年金の加入対象者を専業主婦や公務員、企業年金加入者に拡大し、今年1月から愛称名「iDeCo」という名前で盛んに加入促進を計っている。
厚労省の調査では、今年1月のみの加入者数が2万5千人だった。
Ⅱ.企業年金連絡会を企業年金受給者の受給権を守るセンターとして、自他ともに認知されるような運動を推進する。
1.組織の拡大強化を図る。
(1)「連絡会」活動の結節点として例会を重視する。
会員の減少傾向を食い止め、情勢にふさわしい会に成長させるため各界の 団体・団体職員などに対して当会への参加を要請する。
個人会員を募り、この会員が複数集って自発的主体的に個別基金ごとに受給者の会を組織する方向を目指す。
(2)受給者の組織化、参加団体の拡大を進めるなかで世話人を増やし会の円滑な運営に一段と努力する。特に会員の高齢化のもとで60歳台の会員の加入を心がけよう。
(3)会議の議事録を作成し全会員に報告する。
2.学習活動を「会」の主活動に位置付ける
(1)会員学習
①企業年金受給権の法的基礎を明らかにするとともに、企業年金受給権に関する論点整理を進め例会で討議し理解を深める。
②政府の「経済政策・社会保障政策」財界の「戦略(社会保障・企業年金に係る政策)と狙い」などについて知見のある会員の報告を基に議論し理解を深める。
③企業年金部会や年金部会の議論を注視し、議事録、公表文書を分析し問題点について討議する。
④ 会員の関心に応え、企業会計と基金の関係、基金の財政報告、欧米の支払保証制度などの学習を進める。
(2)広く呼びかける学習会 。
学習会を会員拡大に繋げる。
3. 対外活動を積極的に行う。
(1) 効果のある厚労省への質問状送付、その後のレクチャー、直接訪問(担当者との面談)などの活動を引き続き追求する。
(2) 政党、国会議員、経団連などへの要請行動を強める。
厚労省の施策などの問題点について、政党経由の質問主意書で問い質す。
(3) 連合、全労連との懇談、要請活動を強める。
(4) リスク分担型企業年金が施行された下で、各出身労組との交流を重視する
(5) 広く年金問題について 全日本年金者組合との連携を図り強める。
4.個別の闘いを支援する。
(1) 法政大学「年金減額無効訴訟」、キャノン電子労組の年金減額に伴う「不当解雇事件」、を支援する。
(2) 厚年基金改廃に伴う被害者の相談に積極的に応える。
(3) 個別の闘いの支援は、例会待ちにせず当事者の要請に沿う迅速機動的な支援を図る。
5. 広報活動に取り組む
(1) HPでは、厚生年金基金廃止、解散の被害者、加入する基金で廃止・減額に直面し相談先を探している受給者を想定し、「会」の目的、活動の実績・現状を繰り返し広報する。
ホームページ掲示板を 積極的にPRする。
また、「厚労省の施策・方針そのもの」、「施策についての会の考え方」、「施策についての会の取り組み」などについても一早く知らせていく。
(2) 個別の闘いについては、可能な限り当事者の声をホームページに載せる。
(3) HPでは「企業年金受給権の法的基礎」について、用語解説を含め分かり易く解説する。
(4) わかりやすく、親しみやすいHPとなるよう表現の工夫とともに、内容の充実に努める。
団体