公開質問状への回答  2019年3月20日 日本共産党

 

1、 (企業年金の受給権について)

 ご指摘のとおり、企業年金は、現役時代の労働にもとづく賃金の後払いという性格をもつものです。受給権は退職時に確定しており、決定した条件の一方的な変更や、受給者の同意のない減額は権利侵害であると考えます。受給者は、現役加入者のように、雇用の確保や給与の改善などで減額分に代わる利益の回復も図ることもできません。受給権の問題を安易な行政的手法で処理し、削減要件を緩和することは許されないと考えます。

 

2、(近時の企業年金改定への基本姿勢について)(1)

 公的年金は、国民の生存権を明記した憲法25条のもとづき、国民の老後の生活保障を国の責任で確保する制度であり、各企業が労使合意によりながら退職年金として給付する企業年金とは制度の目的も成り立ちも違います。

 現行の公的年金は、基礎年金の満額が月6・5万円しかないなど、到底、老後のの生活保障とはなり得ておらす、しかも、政府は、その貧弱な給付の水準を「マクロ経済スライド」や「賃金マイナススライド」など給付削減の仕組みによって、さらに低下させようとしています。このような公的年金の給付抑制を前提に、企業年金をその“補完物”と扱うのは、国の責任放棄にほかならないと考えます。日本共産党はこうした路線に反対し、年金削減政策の中止、低年金への上乗せ、最低保障年金の導入など、公的年金を「減らない年金、頼れる年金」にする制度改革を提案しています。

2-(2)

 安倍政権が、「日本再興戦略」等の文章で「金融・資本市場の活性化」の項で企業年金を位置づけているのは、国民の資産を金融市場に誘導して株価の吊り上げを進めるとともに、口座管理や運用手数料などで金融機関の儲けの場をつくろうとしているからだと考えます。2016年の確定拠出年金法改定による確定拠出型企業年金(DC)への移行促進や、2017年の政省令改定によるリスク分担型企業年金の導入も、そうした路線の具体化にほかなりません。加入者・受給者のリスクを増やして財産権を侵す、危険な動きであると考えています。

 リスク分担型企業年金は、確定給付企業年金(DB)の運用リスクを“労使で分かち合う”という看板で導入されましたが、その実態は、運用損が出た場合は、企業は既定の掛け金だけを負担し、年金給付の減額によって対応するというものです。“企業の責任による定額給付”というDBのあり方を変質させ、確定給付企業年金法に定めた目的規定にも反する、制度改悪であると考えてます。この仕組みがもはやDBと言えないことは、リスク分担型企業年金が“企業が追加掛け金の拠出義務を実質的に負っていない”という理由で、退職給付会計においては確定拠出制度に分類されている事実にもあらわれています。このようなDB制度に大穴をあけるような仕組みを、政省令の改定だけで導入した手法も大問題であると考えています。

 

3、(リスク分担型企業年金について)(1)

 リスク分担型企業年金は、DB本来のあり方に重大な変質をもたらすものです。既存のDBがリスク分担型に移行した場合、受給者は、退職時に確定したはずの給付を一方的に減額されるリスクにさらされることになります。こうしたやり方は、不遡及原則から見ても問題があると考えます。

3-(2)

 受給者の受給権は退職時に確定しており、決定した条件の一方的な変更や、受給者の同意のない減額は権利侵害です。設問の①でご指摘のとおり、たとえ「減額にならない設定」であったとしても、積み立て不足による給付減額があり得る内容を受給者の合意抜きで決める仕組みを認めるのは、行政による権利侵害の容認になりかねないと考えます。設問の②でいわれるとおり、少数不同意者の受給権が一方的に侵害されることも大問題と考えます。

 

4、(支払保証制度の法制化について)

 日本共産党は、この間の企業年金に関連する諸法案の国会審議の場で、支払保証制度の確立と受給権保護を訴えてきました。基金の解散やDCへの移行、リスク分担型企業年金の導入などによる年金減額が多くの受給者に襲いかかろうとしている今、これらの改悪を食い止めることと同時に、支払保証制度の創設が急務になっていると考えます。引きつづき早期の法制化を求めていきます。

 

 

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