第9回社会保障審議会年金部会(議事録)
日時
令和5年11月21日(火)14:00~16:00
場所
東京都千代田区平河町2-4-2
全国都市会館 3階 第1会議室
出席者
会場出席委員
菊池部会長 玉木部会長代理 小野委員 小林委員 佐保委員 たかまつ委員
永井委員 原委員
オンライン出席委員
権丈委員 駒村委員 是枝委員 島村委員 武田委員 嵩委員 平田委員
堀委員 百瀬委員 井上参考人(出口委員代理)
議題
(1)高齢期と年金制度の関わり ②
(2)多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方について
議事
議事内容
○総務課長 では、ただいまより、第9回「社会保障審議会年金部会」を開催いたします。
皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。
初めに、委員の出欠状況を報告します。
出口委員、深尾委員から御欠席の連絡をいただいております。
また、佐保委員、堀委員は遅れて参加される旨の御連絡をいただいております。武田委員、百瀬委員につきましては、途中退席される予定と伺っております。
御欠席の出口委員の代理として、日本経済団体連合会の井上様に御出席いただいております。井上様の御出席につきまして、部会の御承認をいただければと思います。いかがでしょうか。
(首肯する委員あり)
○総務課長 ありがとうございます。
権丈委員、駒村委員、是枝委員、島村委員、武田委員、嵩委員、平田委員、堀委員、百瀬委員、井上様は、オンラインで参加されています。
出席委員が3分の1を超えていますので、会議は成立しております。
続いて、資料の確認をお願いします。本日の部会はペーパーレスで実施しております。傍聴者の方は、厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。
本日の資料は、資料1「マクロ経済スライドの調整期間の一致」、資料2「第8回年金部会でご要望があった資料・これまでの年金部会における主なご意見」、資料3「多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方」を用意しております。
事務局からは以上でございます。
以降の進行は菊池部会長にお願いいたします。
○菊池部会長 皆様、本日も大変お忙しいところ、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
カメラの方はここで退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○菊池部会長 それでは、早速議事に入らせていただきます。
本日は「高齢期と年金制度の関わり」の2回目、そして「多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方について」を議題といたします。
「高齢期と年金制度の関わり」につきましては、資料1の「マクロ経済スライドの調整期間の一致」について、この後、説明がございますが、加えまして、前回も取り扱いました在職老齢年金制度、基礎年金の拠出期間延長、年間生活者支援給付金につきましても、さらに御意見などがあればお出しいただければと考えてございます。
それでは、まず、事務局から資料1と2について御説明をお願いいたします。
○数理課長 数理課長でございます。
私からは資料1について御説明いたします。こちらの資料ですが、マクロ経済スライドの調整期間の一致につきまして、現行制度の仕組みがどうなっているか。また、背景となる社会状況、及びこういった現状を踏まえまして、どういった課題があるかについて整理した資料となっております。
表紙をおめくりになり、3ページを御覧ください。まずは、公的年金の財政構造となります。公的年金につきましては、大きく3つの財政に分かれております。赤く色塗りした部分になりまして、国民年金財政、厚生年金財政、基礎年金財政の3つとなっております。
このうち国民年金財政につきましては、国民年金の制度といたしましては、1号被保険者だけではなく、2号被保険者、3号被保険者も加入する制度となっておりますが、財政単位といたしまして国民年金と言った場合は、1号被保険者の財政を指すこととなります。したがって、1号被保険者の保険料と国庫負担を収入といたしまして、1号被保険者に係る基礎年金拠出金を支出とし、さらに約10兆円の積立金も活用して財政を賄っているというものでございます。
一方、厚生年金につきましては、2号被保険者に加えて、3号被保険者も含めた財政単位というものになっております。2号被保険者の保険料及び国庫負担を収入といたしまして、2号及び3号被保険者に係る基礎年金拠出金に加えて、2階部分の給付というものを支出として、約230兆円の積立金も活用して財政を賄うというものになっております。
基礎年金財政につきましては、毎年度必要な給付を完全な賦課方式で、国民年金・厚生年金から拠出金で賄う財政となっております。したがって、長期的な財政、給付と負担のバランスを図る必要があるのは国民年金と厚生年金の財政となっておりまして、基礎年金は、この両者のバランスが取れていれば、給付に必要な拠出金を確保できるものとなっております。
続いて、4ページを御覧ください。基礎年金拠出金の仕組みを説明したものとなります。基礎年金拠出金は、国民年金と厚生年金の間で、現在の加入者の頭割りにより分担することとなっております。その半分が、また国庫負担となっている仕組みであります。
続いて、5ページを御確認ください。基礎年金拠出金の按分率の推移を見たものになります。左側のグラフで1号被保険者は減少しているということが分かります。その結果、国民年金の按分率も低下してきておりまして、足元の2021年度では12.2%となっているところであります。財政規模としては、厚生年金のほうが相当大きいというものになります。
続いて、6ページを御覧ください。平成16年改正で導入されました財政フレームとなります。保険料を固定しまして、基礎年金の半分の国庫負担に加え積立金も活用し、固定された財源の下で長期的に財政が均衡するまでマクロ経済スライドにより給付水準を調整していく仕組みとなっております。つまり、このときに導入されたのは、長期的に財政を均衡させる仕組みを導入したとなっております。
続いて、7ページを御覧ください。この長期的に財政を均衡させる仕組みですが、詳しく見ていきますと、2段階に分かれております。
まず、第1段階で第1号被保険者に係る国民年金の財政が均衡するところまで基礎年金を調整していくことになります。そこで決まった基礎年金の水準を所与のものとして、第2段階で厚生年金の財政均衡を図れるまで、今度は2階部分の報酬比例を調整していく仕組みとなっているものであります。ここで注意していただきたいのは、この仕組みの下では、全国民に共通の基礎年金の水準が第1号被保険者の財政状況のみで決まる仕組みになっているということであります。
また、国民年金の財政が悪化して基礎年金の水準が低下いたしますと、第2段階で1階に充てる財源が少なくて済むということになりますので、2階部分の調整は逆に少なくて済む。それによって2階の報酬比例の水準が上昇する。1階が低下すれば2階は上昇するといった構造も組み込まれているものであります。
続いて、8ページを御覧ください。この財政フレームの下で調整期間の見通しの変化を確認しております。制度が導入された2004年財政再計算では、1階基礎年金、2階報酬比例、共に19年で調整は終了する見通しでした。しかし、その後の社会経済状況の変化によりまして、1階と2階の調整期間に大きなずれが生じてきております。1階の基礎年金は27年間に延び、将来の給付水準も大きく低下するという見通しになったのに対して、2階の報酬比例は6年で終了し、給付水準の低下も小さくなったということになります。
このような結果となった要因を次に見ております。9ページを御覧ください。まず、デフレ経済が長引き、マクロ経済スライドの発動が遅れたため、足元で給付水準が高止まりしたということがあります。その結果、将来、より大きな調整が必要となりまして、調整期間の長期化、調整終了後の給付水準の低下が生じたというものであります。この図、基礎年金で書いておりますが、この効果は実は基礎年金だけではなく、報酬比例にも生じたものであります。ただ、基礎年金でより大きな影響があったということであります。
どうして1階と2階で調整期間が異なる効果となったのかというのを次のページで確認しております。10ページを御覧ください。まず、1つがデフレの影響の大きさが1階と2階で異なったというものであります。算定式を見ていただきますと、2階の報酬比例は賃金を基礎に給付を計算します。そうすると、賃金が低下すれば、その分、将来の給付も低下するというものであります。一方、基礎年金は、賃金低下の影響は基礎年金満額を賃金スライドとすることにより反映するということになっております。そこで、令和2年までの仕組みでは、賃金が下がったときに物価までしか年金を下げないというルールでしたので、リーマンショックのときなどに年金が賃金に比べて高止まりしたということが生じました。この違いによって、基礎年金がほとんどを占める国民年金の財政が大きく悪化するということになったものであります。
一方、もう一つのずれの要因が②の被保険者の構成の変化というものになります。2004年のときの見通しでは、2号被保険者は団塊世代が引退すると減少すると見込んでおりましたが、実際には増加を続けおりまして、当時の見通しより1000万人以上増加しているということであります。一方、3号被保険者は200万人以上減少しているということでありまして、この変化が厚生年金の財政を大きく改善しております。その結果、2階の調整期間を短縮しまして、1階と2階のずれが拡大することになったということであります。
次に、11ページを御覧ください。こちらは基礎年金拠出金の現状を確認したものであります。基礎年金拠出金は頭割りで分担していると御説明いたしましたが、そのときに1人当たりの拠出額というものが計算できまして、2021年度で1万8543円となっているものであります。一方、国民年金の保険料は1万6610円となっておりまして、つまり、保険料で拠出金の全てを賄えない状況になっているということであります。この差額は、つまり積立金の運用収入や元本を充てて、積立金で賄われることになっているところであります。
続いて、12ページを御覧ください。基礎年金拠出金単価と国民年金保険料の推移を比較したものであります。赤の折れ線が基礎年金拠出金単価となりまして、青の折れ線が国民年金保険料となります。赤の折れ線が青の折れ線より上に位置しているということは、拠出金の一部を積立金で賄っているということを意味しております。おおむね2000年代以降、積立金を活用している状況にあるということです。
続いて、13ページが厚生年金についても同様の推移を見たものとなります。赤の折れ線が総合費用率ですが、これは毎年度の支出を保険料換算したものということになります。総合費用率が青の折れ線である実際の厚生年金保険料よりも上に位置しているとなっておりますが、これは厚生年金においても支出の一部を積立金で賄っている状況にあるということを示しております。
これらは過去の状況を示したということになりますが、将来どうなるかというものが次の14ページとなります。右の図の黄色の部分が積立金の活用状況の推移を見たものとなります。足元で積立金を活用しているということでありますが、本格的に活用していくのは2040年代以降、団塊ジュニア世代が引退した後という見通しとなっているところであります。すなわち、積立金は将来のより高齢化した社会において給付水準を確保するために用いられるものであります。
続いて、15ページを御確認ください。ここで積立金の性質について整理しております。リード文を御確認ください。まず、公的年金は、毎年の給付を毎年の収入で賄うという、賦課方式を基本とした年金制度となっております。この賦課方式の年金制度における積立金は、保険料を給付に充てて、残余が積み立てられたものとなっております。このため、積立方式のように個人の持ち分という考え方はありません。したがって、被保険者か移動しても積立金は移動しないということになっております。
また、先ほど見ていただきましたように、近年、保険料の残余というものはなくて、現在の積立金は、過去の被保険者の保険料が積み立てられて、さらに運用で増大してきたものとなっております。したがって、ここで言えるのは、厚生年金・国民年金の積立金は、必ずしも今のそれぞれの制度に加入している被保険者が積み立てたものではないということが言えます。例えば、厚生年金の積立金を積み立てたのは、現在、1号被保険者になっているということかもしれませんし、当然、その逆も考えられるということであります。
それでは、制度間の移動がどの程度あるかというのを確認したのが次のページ以降となっております。16ページを確認ください。こちらは20歳から58歳の人が1年間でどの程度、制度間を移動するかを見たものになります。赤枠で囲っている部分が、先ほど見てもらった国民年金財政と厚生年金財政の間で移動する者となりまして、全体の6%が1年で移動していることになります。
続いて、17ページを見ていただきますと、こちらは移動の多い20歳代で同じものを見たものであります。20歳代前半では17%が1年間で制度間を移動しているということになります。
続いて、18ページを御確認ください。先ほどまでは1年間でどれだけ移動したかということですけれども、18ページは、受給者について生涯の加入履歴を見たものになります。生涯ずっと1号だった者は、65歳の受給者で見ますとわずか3%ということになっておりまして、約7割の者が1号と2号、3号、両方の期間を保有している。つまり、厚生年金と国民年金の財政の両方の期間を持っているということになります。
続いて、19ページ以降は被保険者について、同様に過去の加入履歴を見たものになります。19ページは、40歳の被保険者について、過去の加入履歴を見たもの。つまり、40歳ですから、過去の加入履歴というのは20から40歳までの加入履歴となります。過去の加入履歴が全て1号期間のみという人が5.6%となっておりまして、2号、3号のみの人が6%、約9割の人は厚生年金財政・国民年金財政、両方に属していたことになります。
また、現在、2号の人について見てみますと、9割超、92.1%の人が1号被保険者期間を持っているということになります。
次の20ページ以降は、同じことを45歳、50歳、55歳で確認したものとなっております。傾向として言えますのは、若い世代のほうが1号と2・3号の期間、つまり、国民年金・厚生年金、両方の期間を持っている人が多いという傾向になっております。
続いて、23ページを御覧ください。こちらは1号と2号、3号の期間の混じり具合を個人単位で見たものになります。1号期間の短い者から、順に左から個人を並べていった図になります。真ん中の部分、両方の期間を持っているのが88.3%というのは、先ほど見てもらった数字です。この中で見ていただきますと、1号期間の短い者、長い者、様々の者がいるということであります。
続いて、24ページは同じことを50歳の被保険者について見たものということになります。
25ページを御確認ください。このように両方の期間を持つ者が増加しているということから、基礎年金のみの受給者が今後減少していくということが見込まれているところであります。こちらは現在の受給者について、年齢別に基礎年金のみの受給者の割合を見たものになりますが、年齢が低いほうになるほど低下しておりまして、65歳では男性4.8%、女性7.2%となっております。つまり、今後、低年金というのは、基礎年金のみの受給者よりも、基礎年金に、薄い報酬比例の年金がある受給者が中心になっていく可能性があるということであります。
続いて、26ページを御確認ください。こちらは1号被保険者の就業状況の変化を見ております。1号被保険者の性質も変化してきておりまして、就業状況を見ますと、自営業よりも被用者や無職の方のほうが多くなっているところであります。また、学生も自営業に迫るものになっているということであります。
こういった現状を踏まえて、27ページ以降は現行の仕組みの課題について整理したものとなります。
28ページを御覧ください。まず、マクロ経済スライドの終了の決定方法についての課題となります。さきに御説明したように、2段階で決定する仕組みとなっております。この結果、全国民共通の基礎年金の給付が、1号被保険者の財政状況のみに依存して決まる仕組みとなっているということであります。このように、一部の者の財政状況で共通の給付の水準が決定される仕組みをどのように考えるかということであります。
続いて、29ページを御覧ください。こちらは個人単位で同じことを確認したものになります。各個人の加入期間は、1号、2号、3号期間が混じっている人が多くいるというわけですが、将来の基礎年金は、期間としては全ての期間を通算して計算されるわけですから、その算定基礎となる基礎年金の満額の水準につきましては、1号期間だけの財政状況で決まることになっております。
この結果、どういったことが起きているのかというのを30ページにまとめております。御覧ください。現在、第1号被保険者に係る国民年金の財政は悪化してきているわけですが、その結果、全国民共通の基礎年金の水準低下が生じているところであります。さらに、基礎年金の水準の低下というものは、厚生年金の所得再分配機能の低下と、その2分の1の国庫負担の低下を引き起こすことになっております。すなわち、1号被保険者に係る国民年金の財政状況が、厚生年金の所得再分配の大きさと厚生年金に投入される国庫負担の大きさを決めているというのが現状となっているということであります。
次の31ページを御覧ください。このようなことから、令和2年に追加試算を行いまして、1階と2階の調整期間を一致させればどうなるかというのをお示ししております。その結果、厚生年金の受給者を含めて、多くの受給者の給付水準が上昇するということをお示ししたものであります。
31ページはそのときの公表資料でありますが、次の32ページに要約をお示ししておりますので、御覧ください。現行制度と比べまして、報酬比例は8年ほど調整期間が延びますが、基礎年金は13年間短縮して、2033年に同時にマクロ経済スライドを終了することができるという見通しになっております。そのときの調整終了後の所得代替率は、基礎年金は上昇して報酬比例は低下するということになりますが、トータルの水準は上昇しまして、51%から55.6%まで上昇することになっております。さらに45年化というものを組み合わせれば、前のページにありましたが、所得代替率は60%台まで上昇しまして、足元と同等の水準となるということであります。
このように給付水準が上昇する最大の要因は、基礎年金が大きくなるため、その2分の1の国庫負担も大きくなるということでありまして、すなわち財源が大きくなるためというところであります。
続いて、33ページを御覧ください。こちらも当時の公表資料でありますが、調整期間を一致した場合の給付水準がどのように計算されるかというのを、当時の資料にも注1のところに記載しております。ここで書いているのは、厚生年金と国民年金を合わせて、トータルで財政状況を考えるということであります。
これを分かりやすく図示したのが次のページ、34ページになりますので、御覧ください。現行の仕組みでは、財政の均衡を2段階で考えておりましたが、全体を足し合わせて財政均衡を考えて、1段階で1階、2階、同時決定するというものであります。こういうふうにすることによって、全国民共通の基礎年金の水準は、現行の制度では1号被保険者の財政状況のみで決定されているというものでありますが、公的年金全体の財政状況で決定される仕組みとなるものであります。
続いて、35ページ、御覧ください。ここで調整期間を一致させると給付水準が上昇する要因を分解してお示ししております。所得代替率を見ますと、基礎年金が6.4%上昇し、2階の報酬比例が1.9%低下して、トータルで4.6%上昇するということになっております。基礎年金の半分は国庫負担ですから、基礎年金の上昇の半分、3.2%は国庫負担の増加により上昇したものということになっております。この部分は財源が増加している部分ですので、純粋に給付が増加したということであります。
残りの下の図の網かけの部分ですが、こちらは保険料財源を2階から1階に移転することによる効果となっております。この効果によりまして、1階の基礎年金が残りの3.2%上昇いたしまして、報酬比例が1.9%低下しておりますが、トータルで見ても1.3%上昇しているということになります。ここのトータルで上昇している要因ですが、赤字で記載しておりますが、世代間の分配の調整により将来の給付水準を確保するという効果が、この調整期間の一致にあるところであります。
調整期間を一致すると2階の給付調整が長引くことになりますので、足元の受給世代の2階の財源が、将来の受給世代の1階の給付に充てられることになります。すなわち、これは1階、2階を併せて考えますと、給付水準調整が現行より早く進むということを示しておりまして、その結果、将来の給付水準確保に資するということになるものであります。これは世代間の分配に関しては、マクロ経済スライドの名目下限の撤廃と同様の効果があると評価できるものであります。
続いて、36ページを御覧ください。こちらは、この効果を積立水準で見たものになります。調整期間を一致させれば、2階部分の調整が長引くことになりますので、給付水準が現行より早く低下し、その結果、積立水準が上昇するということになっております。この上昇した増加した積立金は、将来の給付水準確保に活用されることになりまして、将来の給付水準の上昇に結びついているということであります。
続いて、37ページを御覧ください。令和2年のときの公表資料ですが、赤枠のところを御覧ください。調整期間を一致させるために必要となる基礎年金拠出金の見直しについては、具体的な前提を置いていないが、どのように見直したとしても調整期間を一致させた場合の給付と負担への影響は同じとなると記載しております。すなわち、基礎年金拠出金の見直しが必要であるということは、事務局も当然認識しているところでありますが、当時、年金制度において重要な論点というのは、国民の給付と負担がどうなるかだろうと考えまして、まずは給付と負担の変化をお示しして御議論いただこうと考えたものであります。もちろん、何らかの見直しは必要ということでありますので、今後、検討していく必要があると考えているところであります。
そこで、基礎年金拠出金の課題と考えられるものを、次の38ページにお示ししております。前に御説明いたしましたように、現状、保険料だけで基礎年金拠出金の全てを賄うことはできず、一部は積立金から賄われております。この積立金から賄われている部分についても、現行制度では現在の加入者数による頭割りで分担されているところであります。積立金は必ずしも現在の加入者が積み立てたものではないという性質を踏まえますと、この現在の加入者で按分する仕組みについて、適切かどうか検討していく必要があると考えております。
そこで、参考となりますのが次の39ページにつけました厚生年金拠出金の按分方法かと考えております。厚生年金拠出金、被用者年金一元化の際に導入されたものですが、こちらでは積立金で賄われている部分については、積立金残高に応じた積立金按分というものが導入されております。このような仕組みを参考に、今後具体的な仕組みについて検討していきたいと考えております。
続いて、40ページを御覧ください。調整期間を一致させれば、保険料負担は変わらず、国庫負担が増加することによって、厚生年金を含む大部分の受給者の方の給付が増加することになります。ただ、一部の受給者については給付が低下するということになりますので、この点、課題となるかと思います。その一例がこちらに示しております、極めて高所得の方ということでありまして、夫婦2人で40年間、平均で1790万円以上の世帯年収のある方の給付が低下するということになります。こちら、所得再分配機能が大きくなった結果ということであります。ただ、これに該当する高所得者の方は極めて少数と見込んでいるものであります。
続いて、41ページを御覧ください。基礎年金の受給者につきましては、調整期間が一致したことによって給付水準が低下する方はいないと考えておりますが、報酬比例も受給する方は、一時的に給付水準が低下するということがあります。右の図を見ていただきますと、現行制度では2025年度で報酬比例の調整が終了いたしますが、一致させると2033年度まで延長しますので、調整のスピードが速くなるということで、その間、一時的に給付水準が現行より低下するということであります。
ただ、2004年当時の想定を考えますと、給付水準はより速く低下することを想定しておりましたので、一致させた場合でも当時の想定よりは高い水準にあるということは留意が必要かと思います。
続いて、42ページを御覧ください。もう一つの課題が、増加する国庫負担ということになります。黒線が現行制度における国庫負担の見通しということであります。調整期間を一致させた場合が赤の実践で、加えて45年化も実施した場合が赤の点線となります。現行制度と比べまして、2030年代以降、緩やかに増加していくことが確認できます。
次の43ページ、計数表がありますので御覧いただきますと、制度が成熟化する2060年で見ますと、調整期間一致で約2兆円、45年化で1兆円強、合わせて3兆円強の国庫負担が増加いたします。給付の増加というプラス面も御説明しておりましたが、給付が増加する理由は、まさにこの国庫負担が増加するということになりまして、したがって、給付の裏返しの負担である国庫負担に対して、財源をどう確保していくかというのが大きな課題かと考えております。
私からの説明は以上であります。
○年金課長 続いて、資料2について御説明申し上げます。資料2は、前回の部会で御要望があった資料と主な御意見をまとめたものでございます。
まず、2ページは前回の年金部会に提出したものですが、男女を合わせたものになっています。これについて男女を分けた資料のお求めがありましたので、3ページが男性のもの、4ページが女性のものになります。
5ページも前回の年金部会に提出したものですが、こちらも男女別ということで、6ページが男性、7ページが女性の数字になります。
それから、8ページも前回の年金部会に提出したものですが、こちらも男女別ということで、9ページの左側が男性、右側が女性になります。
10ページは前回議論した在職老齢年金について、高在老を見直した場合の将来の給付水準への影響について前回の財政検証で行ったオプション試算になります。左側のケースIIIで所得代替率が50.8%になっていますが、これについて高在老を撤廃した場合には50.4%となってマイナス0.4%の影響があります。
11ページ、12ページは国庫負担額に関する資料のお求めがございましたので、本日の資料1の再掲で載せております。
13ページは、老齢生活者支援給付金について、こちらも男女別でということで14ページの青が男性、赤が女性になります。
15ページ以降は、前回御議論いただいた在職老齢年金制度、基礎年金の拠出期間延長といったテーマについて、いただいた御議論、御意見を事務局の責任で整理したものになります。
資料2については以上です。よろしくお願いします。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、皆様から御意見、御質問などございましたらお願いしたく存じます。いつものように会場から、まずお願いしたいと思いますが、本日、武田委員、百瀬委員が途中退出と伺っておりますので、まず、お二方からございましたら、先にいただきたいと思いますが、武田委員、いかがでしょうか。
○武田委員 時間について御配慮いただきまして、ありがとうございました。また、資料についても大変充実した御説明、そして前回の部会での男女別についての要望への御回答もありがとうございました。本日の資料の後半で、財源についての数字を定量的にお示しいただいております。このような議論をする際には、目指さなければいけない方向性とともに、どの程度の財源が必要かという点を示した上で、定量的なデータに基づいて議論を進めることは非常に重要と思っておりますので、その点を示していただいたことに感謝いたします。
データを見させていただき、これからの議論を深めていかなければいけないと感じている点は、基礎年金のみの方の水準低下が、調整期間を一致させることによって食い止められることは、データでも示されているところです。就職氷河期、バブルが崩壊した後の数年間は、特に団塊ジュニア世代などが該当すると思いますが、就職が厳しかった時代が長く続き、かつ不本意な非正規という形で勤務された方の中には、中高年を迎えられている方も多くいらっしゃいます。そういった方々が老齢期になって、一定の水準を確保できることについては、社会保障機能において、非常に重要な側面ではないかと感じています。
しかしながら、同時に財源のことを考えますと、調整期間の一致による影響として、ここに示されているとおり国庫負担がかかる点。そして、45年加入についても、プラスアルファの財源が必要なこと。これらの財源はどう考えるのかということも併せて、しっかり議論していく必要があるのではないかと思います。
繰り返しになりますが、基礎年金だけで賄われる方は、以前より人数が減っているとはいえ、先ほど申し上げたような厳しい時代だった方の高齢期の生活を支えるという意義は大いにあろうかと思いますので、その辺はぜひとも確保していただきたい。その上で、財源をどう考えていくかということ、その検討が必要なのではないかと思います。
以上になります。ありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、百瀬委員、いかがでしょうか。
○百瀬委員 後ろの会議を調整して16時まで出席できることになったのですが、それでも先に発言してよろしいでしょうか。あるいは、対面の方を優先していただければと思います。
○菊池部会長 御指名させていただきますので、どうぞ。
○百瀬委員 承知しました。
まず、調整期間の一致についてです。国民年金の財政状況が悪化した理由、基礎年金の調整期間と厚生年金の調整期間がずれる理由について丁寧に御説明いただき、ありがとうございました。国民の中には、保険料未納で国民年金の財政が悪化しているので、厚生年金が国民年金を助けるのではないかという誤解をしている方もいらっしゃると思います。そうした誤解を解消するために、調整期間がずれる理由についてきちんと周知をしていただきたいと思っております。それが1点です。
もう一点、前回の質問に関する補足をしたいと思います。45年化に関することなのですが、よろしいでしょうか。
○菊池部会長 どうぞ。
○百瀬委員 前回の部会で基礎年金の45年化と、平成16年改正法附則第2条の関係について質問いたしました。今回、資料3で条文が引用されていましたので、これに関連して質問の補足をさせてください。前回の部会での私の質問に対して、基礎年金の拠出期間の45年化を行う場合、附則第2条の条文の480月を540月に見直すことも論点の一つになるという回答が事務局よりございました。つまり、モデル年金を計算するときの被保険者期間を480月から540月に変更するという見直しになります。
ただ、この見直しというのは、平成16年改正時の取り決めを大きく修正することになります。基礎年金の45年化については、私も賛成の立場ですが、仮に45年化を行う場合であっても、附則第2条の見直しについては、別途慎重に御審議いただきたいと思います。特に、基礎年金の拠出期間の45年化に併せて、厚生年金の被保険者期間も540月に変更してモデル年金額を計算するというのであれば、それを正当化する根拠というのが必要になると思っております。
それから、この附則とは少し離れるのですが、基礎年金の拠出期間の45年化に関連して、45年化をしても多くの被保険者の保険料負担は増えないということが、国民に十分理解されていないように思います。何らかの形で、それがうまく伝わるような周知広報をお願いいたします。
取り急ぎ、以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
御質問の部分ございましたけれども、いかがですか。
○年金課長 前回もお答え申し上げたとおり、この部分は論点の1つと思っておりまして、本日の御指摘、特に厚生年金の計算の仕方については新しい御指摘だと思いますので、併せて検討させていただきます。
○菊池部会長 御指摘いただいて、引き続き検討という趣旨だと思いますが、百瀬委員、いかがですか。
○百瀬委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。
○菊池部会長 貴重な御指摘ありがとうございます。
それでは、会場に一旦戻させていただきます。いかがでしょうか。お手を挙げていただけますと幸いです。
佐保委員、小野委員の順番でお願いいたします。
○佐保委員 ありがとうございます。
まず、遅参についてお詫び申し上げたいと思います。
前回の部会においてマクロ経済スライドの調整期間の一致について、「財政の具体的な見直しなどは本日の論点に含まれていないため、論点として設定いただきたい」と発言しましたが、本日の論点に設定いただいたことに感謝申し上げます。その上で、資料1について意見を申し上げます。
厚生年金においては、基礎年金があることにより世代内の所得再分配機能が働いていること、また、基礎年金のみ受給者も含めて誰もが老齢・障害などにより生じるリスクに対して安心して暮らし続けられる公的年金制度を目指すことを踏まえ、基礎年金の給付水準の引上げの方向性については賛同いたします。ただしその方法については、この間も申し上げているとおり、税財源による国民年金の財政基盤強化という選択肢を排除せず、幅広い視点で議論すべきであると考えます。
また、2019年12月の議論の整理では、公的年金制度が有する所得再分配機能の維持のための方策として、被用者保険の適用拡大や保険料拠出期間の延長が中心に掲げられており、まずは、それらを優先して取り組む必要があると考えます。したがって、来年の財政検証に向けて、適用拡大に係る企業規模要件や個人事業主の非適用業種の撤廃、拠出期間の延長など、優先して取り組むべき事項による年金財政への影響を踏まえた試算を行い、その結果に基づき、調整期間の一致に関する議論を行うべきであると考えます。
その際、厚生年金の調整期間が延伸することによる障害厚生年金のみ受給者への影響、また本日の資料41ページで示された、モデル年金における一定期間の年金水準の低下の影響、さらに前回の部会で挙げられていた厚生年金の独自給付の今後の改正による基礎年金への影響などについて丁寧に検証するとともに慎重に検討すべきであり、拙速に議論を進めるべきではないと考えます。
なお、39ページのとおり、確かに被用者年金一元化に伴う厚生年金拠出金においては、一定の積立金按分が行われておりますが、そのことをもって国民年金勘定と厚生年金勘定からの拠出方法を類似の方法にすることは、国民の納得を広く得られるとは言いがたいと考えます。昨今の物価上昇や社会保険料の負担が増加する中で、納得性と合理性を追求すべきであるということは申し添えておきたいと考えます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
小野委員、お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
私、前回申し上げたことは繰り返しませんけれども、今、佐保委員の御発言の中にも少し触れられておりました、前回、是枝委員が最後に指摘した点について、ちょっと私からも質問させていただきたいと思います。例えば、過去、国民年金の産前産後の保険料免除というのが、第1号被保険者の連帯として国民年金の保険料を100円引き上げました。一方、厚生年金保険の産前産後休業及び育児休業期間中の保険料免除や、終了後の標準報酬月額の改定の特例などは、保険料率を変更することなく実施しました。しかし、これは現在の基礎年金拠出金の仕組みによりまして、厚生年金の対応が基礎年金の給付水準に影響しなかったために可能であったと考えております。
ここで調整期間を一致させた場合、厚生年金の制度変更は基礎年金の給付水準に影響することになるのではないかと思っておりますけれども、この辺りを踏まえまして、様々な制度変更があると思いますけれども、その制度変更に対して、財政上、いかに対処するかということについて、一定程度整理がついていらっしゃったらお聞かせいただきたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
いかがでしょうか。
○数理課長 御質問は、調整期間を一致させると、それぞれの制度変更がお互いに影響するというお話かと思います。そういった面はもちろんあって、その点、論点かと思います。ただ、現状、どうなっているかということを踏まえて考えていく必要があると思っております。現状は厚生年金の財政と国民年金の財政が完全に分離されているというものではなくて、先ほども説明したように、基礎年金の水準は国民年金の財政状況によって決まる。それによって厚生年金にも影響するといった形で、つながったものになっております。
現状は、国民年金の財政が厚生年金に影響するといった一方通行で、逆に、厚生年金の財政は国民年金に影響しないといった形になっています。調整期間を一致させると、それぞれの財政が影響し合うことになるかと思います。ですから、現状の一方通行がいいのか、両方影響し合う形がいいのか、そういった選択肢になるのではないかと思ってございます。
○菊池部会長 小野委員、いかがでしょう。
○小野委員 ありがとうございます。
いろいろなパターンがあると思いますけれども、それぞれ慎重に検討なさっているということで了解しました。ありがとうございます。
○菊池部会長 それでは、ほかに会場からいかがでしょうか。
たかまつ委員、お願いします。
○たかまつ委員 私は、マクロ経済スライドの調整期間の一致は、いち早く取り組むべきことだなと思っております。年金の財政の悪化をいち早く改善しまして、将来世代の所得代替率を上げるためには、今の年金の給付を抑える必要があると私は考えています。高齢者の人口が多いうちにマクロ経済スライドの調整期間の一致をいち早く行うことで、今の世代の所得代替率を下げれば、将来世代の所得代替率がより上がりまして、世代間の格差というものがより少なくなると思っています。それは、なぜ今かというと、高齢者の人口ボリュームが多いうちにやるほど、積立金の取り崩しが少なくなって、将来世代の所得代替率が上がるので、これは理解を得るのは非常に難しいことだと思うのですけれども、将来世代のために国民的合意が必要だと私は考えております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
小林委員、お願いします。
○小林委員 まずは、御説明ありがとうございました。今回、参考となるデータをいろいろ揃えていただき、感謝申し上げます。
マクロ経済スライドの調整期間の一致ですけれども、資料1の35ページに、調整期間を一致させた場合の所得代替率は、報酬比例部分が若干下がり、基礎年金部分が大きく上昇して、全体で5%弱高まるとの試算が掲載されております。
このページでの重要なポイントは、2点あると考えております。
1点目は、基礎年金は、半分が国庫の負担であるということです。このため、基礎年金を増やすための財源確保として、国民負担が増加する可能性があることを念頭に置かなければならないと思いました。
2点目は、2階から1階への財源移転という記述です。これにより、第2号被保険者の将来の報酬比例部分の受給額がどうなるかが、非常に気になりますが、資料を読む限り、報酬比例部分の受給額が減っても、基礎年金の部分が増えるということで、厚生年金の受給額が減ることにはならないということについては、理解させていただきました。
いずれにせよ、本日の資料だけでは、調整期間の一致で将来世代が得られるメリットの内容が分かりにくいと思っております。調整期間の一致がどのような効果を生むのか、さらに分かりやすく整理していただき、それを基に議論を深めるべきと考えております。
加えて、マクロ経済スライドに関連するお願いとして、繰り返しで恐縮ですけれども、名目下限措置はなくすべきと、改めて申し上げておきたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかには会場からいかがでしょうか。
玉木部会長代理、お願いします。
○玉木部会長代理 資料1の16ページ以降に1号、2号、3号の間の移動のデータが出てございます。また、少し後ですけれども、23ページ、24ページ辺りには、1号、2・3号期間の配分の分布が出てございます。このようなものをよく見て改めて思うことは、国民年金族とか厚生年金族とか1号民族、2・3号民族というものがいるのではなくて、誰もがライフステージに応じて1、2、3号の間を行き来すると考えるべきかなということでございます。
この調整期間の一致とか、いろいろなことを進めていく場合には、国民各層から様々な声が出てくると思うのですけれども、今後、国民に説明していくに当たりましては、無用の損得論といったことが起きないように、この辺の理解を広めていく必要があるのかなと思った次第でございます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
原委員、お願いします。
○原委員 本日の資料、細かいものをご用意いただき、ありがとうございました。
まず、すごく難しい問題だと思うのですけれども、前提として、厚生年金の加入者は国民年金にも同時に加入していて、給付については、老齢であれば老齢厚生年金だけではなくて、老齢基礎年金の給付も受けられるという制度設計になっているということ、誤解している方にその辺を正確に知っていただくということは必要かと思います。あと、国民年金と厚生年金を行き来する人も多くなっていくということで、現在の状況を基に将来の状況も想定して検討していくという視点は必要なのだろうなと思います。
幾つかコメントがあるのですけれども、1つめは、基礎年金拠出金のところで、11ページにあったのですけれども、今、もう現実のことということで、1号被保険者納付者と2号・3号被保険者の人数比によって按分して決定されているということでしたけれども、11ページのところで基礎年金拠出金単価が、国民年金保険料より高くなってしまっているということで、その差額は積立金から賄っているとあります。12ページを見ると、国民年金のほうがずっと赤字が続いていて、13ページの厚生年金のほうを見ると、最近に向けて改善されつつあるようにみえます。
こういった中で、財政力が異なる中、前提となる制度設計を考慮すると、このままでいいのだろうかという思いはあります。
それから、18ページですが、65歳の受給権者のうち、加入歴が第1号被保険者のみの人が3%ということで、全受給権者全体でも8%であるというデータがあります。2号または3号というところを移動する人、両方を有する人が増えているということで、5年刻みに加入履歴を40歳から55歳までということで出していただいたのですが、そういったことを見ると、28ページにある現行のところですけれども、全国民共通の基礎年金の水準が、第1号被保険者、国民年金の財政状況のみに依存して決まるというやり方は、今後少し議論していかないといけないのではないかと思われます。
これに対して、34ページの図ですけれども、下の図に描いてありますけれども、国民年金・厚生年金、それぞれの保険料や積立金で、基礎年金と報酬比例部分を決定するということですが、制度設計や現在の受給権者や加入者の加入歴の状況に照らし合わせた場合、そういった意味では、いろいろ種々の問題などがあるかと思うのですけれども、議論は引き続きしていったほうがいいのではないかと思います。
例えば、適用拡大ですとか、基礎年金の拠出期間延長といったいろいろな議論がありますので、財源の問題なども出てきますが、合わせて引き続き議論していく必要があると思います。将来の状況は、この調整期間のところもそうですけれども、想定どおりになるかどうか分からないというところもあると思われますので、検討できるものは議論を進めていき、できることがあれば、そこは合わせて検討を進めていくというのがよいのではないかと思います。横断的にそれぞれを議論していくという形で進めていくのがいいのではないかと思います。改めてみると、2004年当時の見通しと、今はズレてしまっているので、あと厚生年金の調整だけが止まってしまうというのもありますし、そういった部分も含めて、いろいろと議論して、また資料等も出していただきながら、この辺りを深めていければいいのではないかと考えます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかにはいかがですか。よろしいですか。
それでは、ひとまず、対面参加の皆様、終わりということにさせていただき、次にオンライン参加の皆様からお願いいたします。
私から見える順番で、是枝委員からお願いします。
○是枝委員 よろしくお願いいたします。
基礎年金と報酬比例年金の調整期間を一致する際に、積立金は何なのかということをもっとよく考える必要があると思います。資料1の15ページにあるとおり、厚生年金・国民年金の積立金は、必ずしもそれぞれの制度の現在の加入者が積み立てたものではないとあり、また、16ページ以降にあるとおり、また、玉木部会長代理や原委員がおっしゃったとおり、国民年金族・厚生年金族というものがいるわけでなく、制度間を人がたくさん行き来しているというのは事実でございます。
ただ、厚生年金と国民年金の間の被保険者の動きをネットで見てみますと、1986年の基礎年金創設当時から、ほぼ一貫して国民年金から厚生年金に人が流れております。資料1の15ページにあるとおり、賦課方式の年金制度における積立金は、保険料を給付に充てて、余った残余が積み立てられたもので、被保険者が制度間を移動しても積立金は移動しないため、国民年金から厚生年金にネットで被保険者が移動すると、国民年金の財政にプラス、厚生年金の財政にはマイナスになります。繰り返しますが、厚生年金・国民年金の積立金は、必ずしもそれぞれの制度に現在の加入者が積み立てたものではないというのは事実ですが、マクロ的に見ると、国民年金から厚生年金に移った者が、国民年金に加入していた時期に積み立てた積立金を国民年金に残してきているというのが実態です。
つまり、積立方式的に考えると、これまでも厚生年金から国民年金に事実上の財政支援が行われたような形になっていますが、これは社会全体としてどれぐらいの割合の人が雇用により働くのか、超長期の予測ができない中で、賦課方式の公的年金を支え合うための仕組みとして許容されてきました。これに加えて、基礎年金の支給額の調整が遅れたことによる調整を行うために、さらに厚生年金の積立金を国民年金も含んだ基礎年金部分に使うべきか、慎重な議論が必要だと思っております。私としては、積立金の使い方を制度的に改正して無理やり調整期間を一致するよりも、国民年金から厚生年金に被保険者が動くことによって、結果的に調整期間一致に近づく形を取るほうが、厚生年金保険料を負担する労働者と使用者の理解を得やすいと考えております。
佐保委員からも、まず、被保険者の適用拡大を優先したほうがいいということ。厚生年金拠出金の仕組みと同様に、基礎年金拠出金の使い方を考えることについては、佐保委員として国民の納得を得られるとは言いがたいという主張があったことも重視する必要があるかと思います。
たかまつ委員から、いち早く調整期間の一致を決定すべきという意見もありましたが、前回から申し上げているとおり、報酬比例年金の調整期間が終わるまでであれば、人口構成にかかわらず、いつ調整期間の一致を決定しても結果は同じであり、必ずしも結論を急ぐ必要はありません。このため私としては、まず、2025年改正で大胆な適用拡大を行い、それを踏まえて、さらに積立金の使い方にまで手を入れる必要があるのか、2030年改正で検討するというプロセスを踏むとよいのではないかと考えております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、駒村委員、お願いします。
○駒村委員 ありがとうございます。
今日の厚労省が用意していただいた資料、大変重要なことが書かれていたと思いますので、ありがとうございます。基礎年金へのスライドが長くなる原因と、その帰結ですね。マクロ経済スライドが基礎年金に対して逆進性があるということ。それから、3つ目ですけれども、基礎年金の性格が、国民年金1号、2号、3号という入り方はあるものの、国民共通年金の性格を持ってきていると。そして、国庫負担が今後どのように変化するのかということも見せていただいたと思います。
途中でありましたけれども、有限均衡方式を2段階に構えているというところに、どうも構造的な問題があるのではないか。物価や賃金や就労形態の変化に対して、この予期しなかったような結果になったわけですけれども、マクロ経済スライドが国民年金に長く適用されるという問題を生み出しているということで、39ページに、厚生年金内での財政調整の仕組みについてお話がありました。事務局がこれを今日、用意されたのは何らかの理由があるとすれば、一元化後の厚生年金拠出金の計算方法について、もう少し詳しく御説明する必要があるのではないかと思います。
私が見ると、右手の赤い囲まれている部分の計算について、従来の厚生年金から基礎年金への拠出金の計算方法に、新たに考慮すべきファクターとして積立度合い、積立金の状況というものを入れてくるというふうにも読み取れる。つまり、加入者数と積立金のウエートというものを、このファクターに入れてやるというようにも読み取れるわけですけれども、39ページの一元化後の拠出金の仕組みについて、もう少し丁寧に事務局から御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○菊池部会長 ありがとうございます。
今、事務局へのお求めがございましたが、もう少し補足説明をということでございます。お願いします。
○数理課長 39ページの厚生年金拠出金の仕組みについてということですけれども、この厚生年金拠出金というのは、被用者年金一元化によって、毎年必要な費用を、従来の厚生年金、民間の被用者の厚生年金と共済組合で拠出金を出し合って賄うという仕組みが導入されているというものであります。
右側の按分方法ですが、現在、一番下の支出費按分というものがありますけれども、この経過措置を除いてお話しさせていただきます。本来の仕組みといたしましては、積立金から賄う部分については積立金残高でそれぞれ按分する。それで、保険料から賄う部分については、これは被用者ですので報酬比例ということで、報酬比例で按分するといった仕組みが導入されているものでありまして、積立金から賄っている部分を積立金残高で按分するというのが、基礎年金の拠出金と大きく違うところではないかと思っております。
それから、1点、是枝委員からあったお話ですが、ネットで見ると、国民年金から厚生年金に移動しているので、本来であれば国民年金から厚生年金に積立金を移動すべきなので、現在、厚生年金が国民年金に財政支援しているという話ですけれども、これは賦課方式の年金制度でありまして、足元では積立金を積み立てているのではなくて、逆に使っているという状況です。なので、移動すると国民年金にいた人たちは、ここ10年~20年ぐらい積立金を使ってきた人たちになります。なので、逆に、積立金を移動するのであれば、反対に動かさなければいけないということになるのかもしれません。国民年金から厚生年金にネットに移動しているので、厚生年金から国民年金に財政支援がされていると言えるものではないということを御指摘させていただきたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 直接のお答えについては、駒村委員、いかがでしょうか。
○駒村委員 ありがとうございます。
結構です。共済からどういうお金が流れているかというのは、参考になるのかなと思って御質問させていただきました。今の御説明ありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
是枝委員、よろしいですか。今の。
○是枝委員 追加で申し上げてよろしいでしょうか。
○菊池部会長 長くなりますか。
○是枝委員 30秒ぐらいです。
○菊池部会長 今のことに関連してですね。どうぞ。
○是枝委員 はい。先ほど数理課長より説明あったとおり、直近の動きに対して、お金の出し入れだけを考えれば、確かに今の積立金を幾ら使うかということが動いているということになりますが、過去のことを考えるのであれば、過去、国民年金被保険者として、国民年金の積立金を積み立てている期間において積み立てた金額を残してきているというふうに解釈もできますので、実際には積立方式的に解釈するか、賦課方式的に解釈するかによって変わってはくるものの、何らか財政支援のようなものが厚生年金から国民年金に行われているものと解釈しております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。是枝委員の御見解ということで、数理課長から、それに対してよろしいですか。
○数理課長 計算してみないとどっちの方向に動いているか分からないですけれども、必ずしも財政支援が行われているわけではないということを御指摘させていただいたものであります。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ひとまず、ここで締めさせていただいて、次に井上参考人、お願いします。
○井上参考人 ありがとうございます。
詳細な御説明をありがとうございました。御説明にもありましたけれども、マクロ経済スライド調整期間のズレは、資料1の10ページのとおり、デフレ下での基礎年金水準の高止まりというのが大きな要因であると思います。本来であれば、名目下限措置を撤廃して、マクロ経済スライドの早期適用を実現すべきだったと思います。今後、マクロ経済、インフレへ大きく動いていく時代になると思いますので、給付調整が着実に進むような仕組みをまず構築することが非常に必要であり、議論の大前提になると考えます。
調整期間の一致に当たっては、「国庫負担の増」と、「2階から1階への財政移転」という点が指摘されておりますので、この2点について申し上げたいと思います。
まず、「国庫負担の増」でございますけれども、いずれにしても、相当程度の財源の確保が必要になってくるということでございます。したがいまして、この一致に当たっては、拠出期間の延長とともに国庫負担の財源を確保するために、税と社会保障の一体改革の議論を国民全体で進めていく必要があるのではないかと思います。
次に、「2階から1階への財源の移転」、これはいろいろな御説明があったのですけれども、一般の厚生年金の加入者からしてみると、積立金が厚生年金に充当されると思っている方が多いのではないかと思います。制度間の移動が非常に多い、多様であるという御説明もありましたけれども、一般的には恐らく20歳の段階では学生・無職で国民年金に入って、その後就職して厚生年金に入るという流れだと思います。いずれにしても、この基礎年金拠出金の公平性・必要性を、厚生年金の加入者にとっても納得性があるように、より丁寧かつ慎重に説明していただきたいと思います。
以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、権丈委員、お願いします。
○権丈委員 今回は、前回に引き続きということなので、資料2の「これまでの年金部会における主な御意見」をベースに話をします。
まず、拠出期間の延長だけれども、これがいいか悪いかというのは、2013年に国民会議が開かれていて、その後の年金部会というところで大体議論は終わっているなというのがある。ただ、それが実現できるかどうかというのは、要は国庫負担ですね。しかもかつての基礎年金への国庫負担引上げ問題などとは違って、今すぐ必要でない財源をどのように確保していくかという、これは極めて難易度の高い問題なのですね。したがって、かつてよりも強固な社会保障・税の一体改革の枠組みが必要なんだけれども、社会保障・税一体改革をやっていく上での一方が、それは難易度が高過ぎるからといって、はしごを外したら、それは相手は怒るよなというのがある。
ということで次に続くわけですけれども、マクロ経済スライドの調整期間という名前の厚生年金と国民年金の積立金を通じた一元化の話ですが、この話は、私の専門は政治経済学なのだけれども、政策形成過程に焦点を充てる政治経済学という俯瞰的な観点から見れば、国庫負担という財宝を奪ってきて、労使みんなで山分けしましょうというのと似た話になる。そうした観点から見れば、前回の小野委員による、かつて会計検査院が、年金制度の仕組みが給付水準の調整を進行させずに現在の状況を招いたと指摘したという発言は、かなり重要な発言なのですね。しかし、そうした核心的な話は資料2からは外れている。
そして、この話は今日の資料にもあるとおり、基礎年金の給付水準や再分配の必要性に焦点を充てて議論をスタートせざるを得ないのだけれども、その延長線上には、普通に考えれば、生活苦に陥っていない人たちのクローバックの話が出てくる。しかし、そうした話も前回は意見としていただいたことにはなっていない。年収の壁・支援強化パッケージというものがいい制度だと説明しているという話も聞きますけれども、もしかすると、よそからお金を持ってきたのだからいいじゃないかという文化があるのかもしれないのだけれども、政府の1部局が庭先を掃いて、はい、きれいになりましたということにはならないのではないかというのが私のベースにある。
ということで、前回と同じ発言に近いことを話すわけで、若干省略しながら話しますが、調整期間の一致というのは、積立金を用いた給付水準の調整と言われているわけだけれども、これは露骨過ぎるということで、名前を調整期間の一致に変えていった。これは、物は言いようというか、フレーミング効果といいますか、結構うまく行っている。それを気に入った新聞記者たちがよく報道するようになっているんだけれども、この前も話しているのですが、全く意見に入っていないので、もう一回言っておくと、どうしてこの調整期間の一致が必要なのかという話を突き詰めていくと、貧困とか基礎年金だけに頼っている人たちの生活苦とか格差とか再分配の強化という話に行き着いていきます。あるいは、そこからスタートせざるを得ない。
ここから先、そこからスタートしていった話が、つまり基礎年金の給付水準に焦点を充てて、この改革を進めていくと、いつの間にか、今、この年金部会の委員とか、今日の年金部会のフロアにいる記者たち、みんなへの国庫負担が増えていく話になる。そして、基礎年金の給付水準が高くなっていくということになっていく。これは日頃から財政のことを考えている人たち、私も結構そのタイプなのですけれども、彼らからは、じゃぁ、常日頃から基礎年金に定率で入っている国庫負担を、基礎年金だけで生きていない人たち、基礎年金が下がったからといって生活苦になっていない人たちからクローバックで戻していいですねという論を突かれてきたときに、何て答えるかというのがあり、私は答えるのはなかなか難しい。
だから、この前、そういうクローバックを考えている人たちから見ると、カモがネギを背負ってやってきたように見えるという話をしたわけですけれども、これはこの路線からいくと反論するのは難しいなというのがあって、そういうふうにならないように拠出期間の45年というのは、40年のままはおかしいねというスタートとか、あるいは適用拡大をしっかりやっていこうとか、あるいはマクロ経済スライドをフル適用していこうというような、制度そのものの本体の弱点から、この論を攻めていって、最終的に結果として国庫負担が増えていくことになるけれども、その点に関しては一緒にみんなで、この難易度の高い問題を検討していこうというのが、ずっと続いてきていた議論ですね。
ところが、前の年金局長ぐらいのところから話が変わってきて、基礎年金への国庫負担というのは義務的経費なのだから、こっちの年金側で調整していったら自動的に国庫負担が上がっていくのだから、その国庫負担の議論はほぼしなくてもいいという議論になっていくと、これは社会保障・税一体改革のときの蜜月といいますか、厚労、財務の双方が相手を利用しながらうまくやっていこうという戦略的互恵関係というのはどこに行ったのかというぐらいに対立していくことになる。両者の信頼関係が崩れていっているわけですけれども、一体改革の精神を放棄するような話をし始めていった年金局に責任があるなというのは、この前、話していたことです。
ということで、今日も何度も出ましたけれども、財源と給付を一体的に考えていく一体改革の精神というものをしっかりと考えていくことが重要なわけであります。これまで年金のほうでやらなければいけなかったけれども、やることができなかった、政治の壁があるからといってできなかったということは、今回はこれをしっかりとやっていかないことには、年金局は結構そっぽを向かれるよというのがありますね。
政治経済学では、アジェンダーセッターという会議を回す権限を持っている人たちが力を持つという、自分たちの思う方向に事態を進めていく力を持つということが言われているわけですけれども、年金部会の進め方というのも政治経済学の研究対象として、私は興味深く眺めておりますので、頑張ってくださいということになります。
以上、よろしく。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、嵩委員、お願いします。
○嵩委員 ありがとうございます。
大変分かりやすい資料の作成と御説明、どうもありがとうございました。
私からも意見させていただきますが、今、様々な御意見がありましたけれども、私としては、基本的には調整期間の一致と、そのための国年財政、厚生年金の財政との連携という方向性については、賛成です。御説明ありましたように、国年財政と厚年財政とは異なるカテゴリーの被保険者集団を対象としておりまして、確かにそれぞれの枠組みで各被保険者集団の利益に配慮する必要があるかと思いますけれども、まず、本日御説明あったように、人の出入りが少なくないという実態があり、被保険者集団の利益といっても固定的ではないという面を理解する必要があるかと思います。
そして、制度に即して見ましても、それぞれ被保険者集団の利益といっても、基礎年金の仕組みによりまして各被保険者集団は連続的でありまして、その利益も独立のものではないと思われます。さらには、基礎年金の給付水準の著しい低下を阻止するということは、今もお話ありましたけれども、所得再分配の維持、ひいては基礎年金のみの方も含めた国民皆年金の実質を確保するという、従来の公的年金制度の根幹を維持することに資することだと思います。
この国民皆年金の実質化ということを考えますと、これは各被保険者集団の個別の利害を超えて、公的年金制度全体で実現していくべき理念かと思いますので、こうした公的年金制度の基本的な理念を維持するために、調整期間を一致させるという方法があるのであれば、それが必要であり、そのために厚生年金の財政に対して、基礎年金拠出金の算定に当たって、これまでの頭割りだけではなくて、その財政力に応じた拠出を求めるという選択肢は当然あり得るのではないかと思っております。
ただ、スライドの40ページにもありましたように、高所得者については、所得代替率が低下するという影響が出ておりますし、あと、スライド41ページにもありますけれども、2025年から一定期間については、現行よりも給付水準が低下することが見込まれていますので、こういった調整期間がもし一致するといったときには、それに伴ってどの程度の低下が誰に影響するのかということを数値として把握して、その不利益の程度も踏まえて検討する必要があると思います。
また、財源につきまして、国庫負担につきましては、確かに財政当局との折衝というか、理解も必要かと思いますけれども、資料にありましたけれども、国庫負担の42ページの見通しについても、広く国民の皆様方、自分も含めてですが、理解・周知をしていただいた上で議論していく必要があるかなと思っております。
私からは以上です。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、平田委員、お願いします。
○平田委員 ありがとうございます。
私は、基礎年金の拡充は大事なことだなと改めて思いました。その手段として、基本的には1号の方に2号になっていただくという方向性に、是枝委員もおっしゃっていましたけれども、私もそこに賛成です。実際、25ページの基礎年金のみ受給者割合の推移を見ましても、そういった方々は女性でも非常に少なくなってきているというのもあるし、これは65歳以上の方々のデータですが、今後、それより低い年代の方はさらに減っていくことが見込めるだろうと思います。
一方で、これは多分ゼロにはならない。つまり、2号にどうしてもなれない人がいる。例えば、今、働き方の多様化が非常に進んでいて、フリーランスで、特に若手のお母さん、女性とかで在宅ワークを業務委託で請け負っているような方が増えているというのを肌身に感じています。一方で、働けない人であったり、冒頭で武田委員がおっしゃった、2号でも賃金が低かった人がまだまだたくさんいらっしゃる中において、基礎年金というものが果たす役割は大きいのではないかと思います。
その手段はどうなのかということですが、1つには調整期間の一致があると思います。そして、だいぶ以前の議論でもどなたかおっしゃっていたかと思うのですが、ちょっと乱暴ですが、国民年金と厚生年金の制度の一体化、がっちゃんこするみたいなことですね。ほとんどの人が2号になっていくということであれば、それもまた1つの視野ではないかなと思いました。
理由は、厚生年金は所得再分配機能が、特に高所得者に関しては非常に働いていくからです。今、雇われていない人でも高所得者はいっぱいいらっしゃると思うのです。一方、玉木部会長代理がおっしゃっていたとおり、まさに、ライフステージにおいて息する者の集まりが国であり、国民だとも思うのですね。人はいつまで生きるか分からないなかで、そういった全員の将来にわたる最低限の安心というものを全体でつくっていくという意味において、両者ををがちゃんこして所得再分配機能を働かせるというのは、目の前の貧富の差を感じるだけにすごく強く思うところです。
こども食堂の支援をしていたり、支援を手伝ったり、そういうところにできるだけ顔を出すようにしているのですが、今、ここに集っている人たちとは全然違う暮らしをしている人たちが、それはマジョリティーではないかもしれないけれども、いらっしゃる。その方々のことをどういうふうに考えてあげるかということは、我々が無くしてはならない視点ではないかなと思います。もちろん、クローバック、出したからには、ということが考えとして働くのは当然だと思うのですけれども、一方で社会保険とは何なのか。
前回、健康保険のことを少し例に出して申し上げたのですけれども、私、めちゃめちゃ健康体で、ほとんどお医者さんにかかりませんが、自分で会社もやっているので結構保険料は払っていると思います。同じように年金制度でも、日本全体、苦労している人のことを忘れずに。それは年金だけで支えられるものではないかもしれないけれども、そこへの視点を常に持ち続けていたいなというのが思いであり、私の意見です。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、島村委員、お願いします。
○島村委員 どうもありがとうございます。
詳細な資料を丁寧に御説明いただきまして、ありがとうございました。難しい問題で、自分の中でもまだ整理し切れていない状態での発言になることを、まず、お詫び申し上げます。
その上で、財政の均衡については、2段階に分けて、最初に国民年金だけで財政均衡を図るというのが問題の本質になっていると思いますので、それを変えようとする方向性については私も賛成したいと思っております。国民年金における基礎年金こそ、所得の再分配機能や最低保障機能を有するものなので、それを強化していくことが大事で、そのために基礎年金と厚生年金とのパイプ役になっている基礎年金拠出金の算定方法というのは、変更する必要があるのではないかと考えています。問題は、算定方法をどう変更するかにあるかと思うのですけれども、積立金に関しては、国民年金法や厚生年金保険法の中でも、それに関連する規定がありますので、それらに抵触することはないかというのをしっかり確認した上で進めていきたいと思っています。
また、厚生年金の積立金と国民年金の関係については、慎重に検討する必要があると思っています。そもそも厚生年金の保険料には、いわゆる国民年金の保険料相当分というのも含まれるという構造があり、ただ、それでも国民年金保険料の相当分というもの、その相当分をどう勘案するかということ自体が難しいのかもしれないですけれども、それが厚生年金勘定から国民年金に関する勘定へと全て移転しているかと考えると、そうでもないと考える余地もあるような気がしておりまして、そういうお金の複雑な流れについても改めて確認した上で、どうして積立金に応じた負担にするのかとか、その必要性や納得できるだけの理由とか根拠についても、丁寧に今後議論して説明できるようになっていく必要があると考えております。ありがとうございます。以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございます。
堀委員、お願いします。
○堀委員 どうもありがとうございます。
資料1について申し上げたいと思います。今回、本当に詳細な分析をお示しいただきまして、誠にありがとうございます。特に、参考資料の辺りは、年金の研究だけではなく、広く労働研究などにも参照される大変重要な資料ではないかと感じたところでございます。
そこで、1点お願いなのですけれども、参考資料で19ページから始まる、それぞれ40歳、45歳、50歳、55歳の被保険者の加入履歴をお示しいただきまして、ありがとうございました。大変興味深いのですけれども、なぜこのような変化をしてきているのかということにつきまして、この資料で分析することは難しいと思うのですけれども、この後の23ページ、24ページの辺りで2号・3号を分けていらっしゃるのですけれども、2号と3号を分離して分析するか、あるいは男女別に分析していただけると、さらに大変参考になります。
この変化につきましては、55歳から50歳につきましては、大学進学率はそれほど上がっているわけではないのに、2号または3号期間のみが減って両方を保有しているという辺りは、50歳がちょうど就職氷河期の始まりでありますので、そのキャリアの多様化の影響がかなり大きいのだろうというふうに推測しております。ただ、ここではすぐに年金が将来、一体幾らもらえるようになるのかということについて積算するということは難しいことは承知しているのですけれども、できるだけ詳細に示していただけるといろいろと類推できる余地が広がると思いますので、1つ御検討いただければ幸いです。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
御要望がございましたが、いかがですか。
○数理課長 いろいろ御要望いただきましたので、何ができるか考えていきたいと思います。必要な資料は提出していきたいと思います。
○菊池部会長 御検討をよろしくお願いします。確かに、もう少し細かくいろいろ見ると、いろいろなことが分かるかもしれないなと私も思ったところでした。
これでお手をお挙げいただいた皆様に御発言いただきましたが、追加で御発言おありの方は、ぜひお手をお挙げいただきたいと思います。会場でいかがですか。よろしいですか。オンラインの皆様。
駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 ありがとうございます。
さっき積立金の性格について整理する必要があるというお話がありましたので、いろいろなところに、健康保険も多少積立金を持っていますから、社会保険における積立金はどういう性格のものか、1回整理した資料を事務局に用意していただければなと思って、お話を聞いていました。よろしくお願いいたします。
○菊池部会長 事務局で御検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。
権丈委員、どうぞ。
○権丈委員 「これまでの年金部会における主なご意見」というのが今日、資料にあったので、高在老の話もしておきますと、これはつくった人間が悪いわけで、制度の予測という観点からいえば、これを廃止することはほとんど不可能ですね。ほとんどというのは、いつぞやのように担当している課長とかが、この制度はどう考えても理不尽。何とかして自分の手で廃止したいという強い意思を持っている場合は考えられるかもしれないですけれども、それでも頓挫する。この話はそういう話だということです。
高在老の対象者は、働くことは苦役だとあまり考えていない人たちですから、ほとんどの人が就業調整しないだろうなというのはある。しかし、この制度の理不尽さに不満を持って、頭を抑えつけられて鬱悔の念を抱きながら従わされているというのが現状かな。そして、近い将来というか、未来もそうなっていくかなというのがある。だから、この制度の理不尽さは幾つもあるわけですけれども、それを理解するのは時間も要します。ところが、廃止については、前回の年金改革のときの国会のように、野党が高所得者優遇だとか、世代間格差の拡大だと言っておけば、圧倒的多数の人たちがそうだろうなと思う。こういう制度というのは初めからつくってはいけないのですね。
ところが、保険料率を少し下げろという政治家の要請に応えて、官僚が道理を捨てて知恵を貸したと。問題は、こうした禍根を残した、かつての年金官僚のありようだということがあるわけで、今ある高在老は1985年以前に存在していた高在老を廃止していった1985年改革と矛盾するわけですけれども、どういう理由づけで年金局は今に至るおかしな制度を2000年、2004年に復活させるに至ったのかという、そうした資料をいつかつくってもらえればなと思っております。ということでよろしく。
○菊池部会長 ありがとうございます。御要望ということで承らせていただきます。
ほかにはいかがですか。ございませんか。よろしいですか。
ございませんようですので、この議題については、ここまでとさせていただきます。非常に重要な論点でございますので、また引き続き、今後も議論することになろうかと思います。
続きまして、議題2「多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方」につきまして御説明をお願いします。
○年金課長 年金課長です。資料3を御覧いただければと思います。
こちらの議題について、まずは現行の制度ということで、2ページですが、年金額や年金水準を取り上げる際の示し方について幾つか整理したものです。
まず一番上にあるのは、受給者1人当たりの年金平均受給額で、これは文字どおり、実際に受給されている方の統計的な受給額のデータで、単身での年金額になります。
これに対して、現在の受給者の年金額ではなく、一定の仮定を基に計算した水準については「モデル年金」という示し方をしてまいりました。具体的には、昭和40年改正で、そこにある計算方法で始まりまして、当時1万円年金ということで言われています。こちらは老齢厚生年金の男性1人分の年金額で計算しています。
その下の昭和44年改正で少し考え方を進めて、加入期間を延ばしたということと、世帯単位の考え方を入れて、夫に生計を維持されている妻がいるという世帯を想定しました。ここでは加給年金1000円を加えた額にして、当時は2万円年金と示しています。
3ページですが、昭和60年改正で基礎年金が導入されたことで計算方法が大きく変わりました。ちょっと飛びますが、5ページに昭和60年改正前後の「モデル年金」の考え方の変化がございます。世帯単位という考え方は維持して、左側の改正前は夫婦2人で見ており、夫の厚生年金に妻の加給年金が加わるという形でしたが、右側では基礎年金2つ分に分かれたということです。
3ページへ戻って、昭和60年改正以降の考え方はその後も続いていますが、平成16年改正で新しい考え方が入り、新たに「モデル年金」を定義して所得代替率を算出し、これを将来にわたって50%上回ることを法律によって定めました。以降、法律で定義された「モデル年金」を基に、5年に一度の財政検証の際に所得代替率を計算して、50%を上回っているか確認しております。そういう意味では、現在に至る「モデル年金」については、同じ算出方法を使うことで年金の継続的な給付水準の変化を示す「ものさし」としての機能を有しているということです。
それから、4ページ目ですが、もう一つ年金額の示し方がございまして、毎年1月に、年金額の改定、これは物価または賃金のスライドによる改定ですが、これを基にしたものを公表しています。実際に令和5年に公表したものが真ん中、四角で囲っている部分でして、令和5年度の年金額の例として、国民年金の満額、それから厚生年金については、平成16年改正で定義された「モデル年金」を踏襲した形で掲示しています。こういった形で幾つかの方法で年金額を示しているところです。
5ページは先ほど御覧いただいた資料になり、6ページは平成16年改正法の規定です。
7ページは、こういった「モデル年金」という考え方について、平成13年の検討会でいただいたご意見になります。太字にしていますが、一番上のところを御紹介しますと、片働き世帯を標準とするという考え方の再整理が求められている。具体的には、モデルとして共働き世帯を想定し、女性も一定の厚年期間を持つという前提で考えていくことが妥当である。その際、従来からの継続性という観点から片働き世帯を想定したモデルも提示していくことが必要である。また単身世帯を考えたモデルも検討すべき、といった指摘をいただいています。
この報告書は平成13年にいただいたものですが、その後の平成16年改正では、先ほど御紹介した、それまでのいわゆる「モデル年金」の定義を法定化して、給付水準の「ものさし」として現在まで使用してきている経緯となっています。
8ページは、前回の年金部会の報告書で、紹介しますと、令和元年の財政検証では、世帯類型でなく1人当たりの賃金水準によって所得代替率あるいは水準が決まることを示している一方で、モデル年金以外の所得保障の状況についてもイメージできるような分かりやすい工夫を重ねていくことが重要である、といただいています。
それから、その下のほうですが、自分が受け取れる年金は幾らかということへの関心が高いことから、個々の老後の公的年金の支給額が幾らになるか、若い頃から見通せるようにすることが重要であるといただいており、公的年金シミュレーターの運用などを開始しているところです。
9ページは、今回のテーマについて年金部会でいただいた意見で、ご紹介しますと、「モデル年金」のリアリティーは薄れているが、年金の給付水準の経年的な推移を把握するために今後も意義がある指標であり、現在は給付水準の下限が設定されていることとの関係で変更することは難しい。その一方で、共働き世帯あるいは単身世帯が増加している中で、もっとリアルな給付水準を知る目安として、様々なパターンを提示する形で広報してはどうかといった意見をいただいております。こういった委員の皆様の問題意識が本日議題として取り上げたことにつながったものです。
最後は、現行の公的年金の給付と負担の構造です。前回の年金部会の報告でも触れられていますが、現行制度は世帯1人当たりの賃金水準が同じであれば、どの世帯類型でも1人当たりの年金額は同じという構造になります。10ページの下にある例では、一番上が片働き世帯で、真ん中は共働き世帯になりますが、共に世帯で見れば1人当たり収入は20万円ずつと同じで、その右側の年金額あるいは所得代替率についても同じです。現行制度は世帯類型が異なっていても同じになる構造を取っています。
そこで11ページは、今申し上げた1人当たりの賃金水準について横軸で比較して右側ほど賃金水準が高くなっており、真ん中辺りが「モデル年金」の賃金の水準になります。赤い線で22万円という水準ですが、こちらを中心に、右側の賃金水準が高くなれば、年金月額が高くなる一方で所得代替率は低くなり、賃金水準が下がればその反対になるという構造です。
以上、御覧いただいたとおり、現行制度では、一人あたりの賃金水準の違いで年金月額が変わってくるという構造にあること。それから、いわゆる「モデル年金」は、あるべき世帯類型を示すという意味ではなくて、経年的な給付水準の変化を把握する「ものさし」としての機能を有しているということが言えると考えております。
他方で、ライフスタイルが多様化する中で、例えば4ページの毎年の年金額をお知らせするような広報資料において、これまでの「モデル年金」の1パターンのみを公表しているということについては、幾つかご指摘いただいているとおりで、先生方から御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、御意見、御質問等ございましたら、お願いいたします。オンラインの皆様、挙手機能でお示しください。会場からいかがでしょうか。永井委員、原委員、小野委員、小林委員、たかまつ委員。
まず、永井委員からお願いします。
○永井委員 ありがとうございます。
資料2・3について、3点意見を申し上げたいと思います。
まず、資料2について、これまでの各委員からの要望を踏まえ、資料を提示いただきありがとうございました。
特に、2、3、4ページにある男女別の高齢者の就業理由、所得階層分布などの資料を準備いただいたことに感謝申し上げたいと思います。2014年と2019年の男女別の就業理由を比較すると、経済上の理由と回答している割合は、女性のほうが率として増加していると思います。また、5ページからの高齢者単身世帯の所得階層では、男性に比べ、女性のほうが所得200万円未満の割合がいまだ高い状況であり、貧困状況にある、あるいはその可能性が高い高齢者単身女性が多いとも言えると思います。
これらの状況を踏まえれば、セーフティネットを拡大する観点で社会保険の適用拡大は重要であり、次期制度改正では、全ての労働者への社会保険の適用を目指すべきであると考えます。また、この間論点となっていた第3号被保険者制度や年金生活者支援給付金制度などについても、高齢期の貧困を防ぐといった観点から議論を進めるべきと考えます。
続いて、資料3について2点申し上げます。モデル年金については、家族類型の変化や働き方の多様化など、現状に即しているとはなかなか言いがたいと思いますが、同条件での試算により、人口推計に基づく過去の試算結果からの経年変化を観測する必要性に鑑みれば、給付水準の「ものさし」として引き続き設定することは理解いたします。
一方で、多数派とは言えない世帯類型をモデル世帯としていることで、「年金制度では男性が雇用者として外で働き、女性が被扶養者として家事を担うモデルを前提に設計されている」といった誤ったメッセージが伝わり、特に若年層がイメージする世帯像との乖離が進み、社会保険制度に対する信頼性の低下が懸念されます。したがって、2019年12月の議論の整理を踏まえ、単身世帯やひとり親世帯、共働き世帯、片働き世帯など、それぞれの世帯類型での年金額について、分かりやすく示していくことが必要と考えます。
また、その際には「標準」という言葉、我々労働界でも標準労働者といったような言葉を使ってきておりますが、今後はこのような言葉の使い方も検討すべきと思います。
もう1点は、現行の国民年金法附則にある、モデル年金の給付水準は所得代替率50%以上を上回るものとする規定についてです。これまでも意見がございましたが、現行は納付済み期間40年が前提となっており、仮に基礎年金拠出期間延長となった場合には新たな拠出期間に応じた相応の法改正が必要と理解します。その際、あくまでも40年間の納付で所得代替率50%以上を上回ることが実質的に担保されるような改正とすべきと考えます。
以上です。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
あと8名の皆様からお手が挙がってございます。恐縮でございますが、お時間を御勘案の上、若干御協力いただけますと幸いでございます。
それでは、会場から、原委員、小野委員、小林委員、そしてたかまつ委員の順番でお願いします。原委員からお願いします。
○原委員 ありがとうございます。
では、簡潔にコメントさせていただきます。私は、4ページで、今もありましたけれども、モデル年金というネーミングで様々な捉え方がされていて、これは財政検証時に「ものさし」的に使用されているものということで、先ほどご説明がありましたけれども、4ページの資料というのは私も毎年必ず見ますが、4月以降の年金額の改定の発表時に説明の例として示されるものなので、その際に1つだけこれを出すとなると、その前提を含め、現在の状況との違いで違和感として伝わってしまって、これを財政検証のときに使う「ものさし」だと思わずに、これが全ての標準だと思う人もいるかもしれません。
なので、この発表のときは、あくまで年金額の改定の説明なので、先ほどおっしゃっていましたけれども、厚生年金の加入期間があったり、国民年金の単身者、夫婦世帯、共働きなど、幾つかのパターンを使って見せ方の工夫が必要だと思います。これが財政検証のときのものだと皆思っていないと思いますので。あと、モデル年金という名前もちょっと紛らわしいところもあるかもしれないですけれども、その辺、ご検討いただければと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
小野委員、どうぞ。
○小野委員 それでは、本当に手短にします。
当然ですけれども、法律に規定する現状の、いわゆる括弧つきのモデル年金ですけれども、この所得代替率は引き続き必要だということですね。
ところで、2019年財政検証の際に、年金局から財政検証関連資料というのが公表されまして、その中に多様な世帯類型における所得代替率という資料がありました。これは皆様御承知かと思います。この資料は、現在の議論に真摯に応えたものだと私は思っていますけれども、ここまでしても社会の理解が得られないのはなぜなのかというのが非常に疑問であります。皆様、いろいろお考えはあると思うのですけれども、この際、どういう方法で、どういう見せ方で、どういうタイミングでお示しするのがいいのかというのは、皆さん、案があるのではないかと思うので、それを示していただくというのを、事務局だけに頼らずにやっていただいてもよろしいのではないかと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
小林委員、どうぞ。
○小林委員 年金の給付水準の示し方ということで、資料3の7ページから9ページにかけて議論が整理されておりますけれども、今後の見直しの方向性としては、まさにそのとおりだと思っております。
家族の在り方や働き方、ライフスタイルは大きく変化していますし、さらに言えば、受給開始時期も選択できるようになっております。将来の年金受給額を多くの国民がイメージできるよう、家族構成、働き方、年金受給開始年齢といった変動要素を基に、できるだけ多くのパターンを用意し、それぞれの場合の年金受給見込み額を算出し、国民へ分かりやすく提示することが重要と考えております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
たかまつ委員、どうぞ。
○たかまつ委員 私は、モデル年金が今の家族観に合ったものではないので、今の時代に合わせた新しいパターンを何パターンか追加することができるといいのではないかなと考えております。生涯未婚の方や離婚する方もいる中で、1人当たりどうなっているのかという点で見れると分かりやすいと思っています。そもそも3号があることが制度を分かりにくくしていて、女性の就労を阻害している1つの要因であると思うので、私自身は3号を廃止したらいいのではないかと考えている立場です。なので、例えば生涯1号の人とか生涯2号の場合とか、1号と2号、半分ずつ入った場合など、複数のパターンみたいなものが見れると、自分のより近い人生設計に合ったものを見れるのではないかなと思います。
さらに、男女の違いというのも指標などで示せるとよいと思います。それによって単身世帯の高齢者の女性の貧困という問題や、女性の平均所得の低さというのが社会でより可視化されて、女性の非正規の人をどうやって減らすのかとか、女性を厚生年金にどうやって加入させようかという動きが社会全体で広まることを期待しています。
加えて、平成16年の改正でモデル年金が法定化されていますが、これは時代に合っていないので、モデル年金を単身世帯に変更し、それを新たに法律で定義することなどができるといいのではないかと考えています。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、是枝委員、どうぞ。
○是枝委員 資料3の11ページ目の3ポツ目にあるとおり、所得代替率や年金月額の違いは、世帯類型ではなく賃金水準の違いから生じているものであり、賃金水準に着目することが重要です。ただ、世帯の1人当たりの賃金水準の分布が、世帯類型により、あるいは男女で差があるために、結果的に世帯類型や男女それぞれで見た平均的な所得水準の世帯の所得代替率が世帯類型により異なっているということを、丁寧に説明する必要があると思います。世帯類型ごとに1人当たり賃金水準が異なることの問題と、年金制度における再分配の構図が混同されないように、丁寧な情報発信が必要となります。
また、モデル年金については、2004年改正時の将来的な年金水準の意味もありますけれども、社会全体の平均的な年金水準の目安という意味もございます。このため、私はより一般的なものとして、各世代における男女それぞれの平均厚生年金加入期間や標準報酬を基にしたモデル年金というのも試算しておりますので、このような指標も出していく必要があるのではないかと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
平田委員、お願いします。
○平田委員 ありがとうございます。
モデル年金には2つ役割があると理解しております。1つは、過去からの変化で、これからを見る指標として。もう一つは、個々人が自分の将来もらえる年金の目安を知る手段として。一番の指標としては、これまでとの比較という意味から、今までどおりのものを保持するということは必要だろうと思っています。
2番目ですけれども、これは新たなものとする必要があって、複数用意する。では、どうするのがいいのかということですけれども、自分がもらえる年金の目安を知り、かつ年金への信頼とか興味喚起にもつながると思うので、できるだけ国民の一人一人のリアリティーに近いものをどう出せるかだと思います。では、何がリアリティーかというと、実際に20代はどんな世帯が多くて、30代はどうなのかということの現実を見ること以外に、こうしたらいいのではないかというのは言えないなというのが、資料を見ながら私が感じたところでした。
その中で、標準報酬を男女合わせるのはまだ尚早だと思います。非正規労働者は高齢化していて、25歳から34歳の世代は、女性は男性の2倍弱。でも、45歳から54歳層は、女性は男性の6倍弱という形で、まだまだたくさんいらっしゃるというところがあると思います。なので、これを合わせてしまうと、いろいろなものを見えなくさせるのではないかなと思っています。
あと、世帯の違いというのは、構成員だけではなくて、賃金水準によっても大分違うと思いますので、賃金水準を少しばらけさせて出していくことが大事なのではないかなと思います。観点として、より賃金水準が低い世帯のほうが、年金に対する将来の依存度が高くなると思いますので、そこを意図的に含めることはとても大事なのではないかなと思っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 今もお話があったように、モデル年金という名前が非常に話をややこしくしている。2つの機能があるわけで、1つは代替率を計算するために必要ですね。つまり、年金の「ものさし」という価値があると。先ほどの資料6ページの法律に書かれているのも、下限を確認するための計算方法というだけのことだと思いますので、それに対してモデルがもう一個、目安とか見落としとか望ましいとか、そういう年金額を意味しているのだという誤解をもたらしているのではないか。
そうなると、性別・役割分業、ジェンダーギャップを前提にした昭和世帯みたいなものをモデルとか理想とか言って、それで目安を出しているのかということで批判を受けていると思いますので、「ものさし」年金であることを明確にするためには、参照年金とか、「ものさし」機能の部分は名前を変えたほうがよくて、そしてモデル年金のほうは、多様な世代像をお見せするというように、1つの言葉で2つの役割を持たせているから話がややこしくなるので、「ものさし」機能は名前を変えてしまったほうがいいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
島村委員、どうぞ。
○島村委員 ありがとうございます。
私も「ものさし」機能のほうは、そのまま制度としては維持するけれども、名前を変えるという駒村先生の御意見には賛成したいと思います。
他方で、標準的な年金額については、片働きだけではなく、共働きや単身世帯も必要かと思っているのですけれども、悩ましいのは、一口に共働きと言っても、どれぐらいの期間、働いているかとか、賃金もどれくらいか等、人によって随分変わりますので、どういうパターンを出すのか、どうしてそのパターンにしたのかというのをちゃんと説明できるようにしておく必要があると思います。この標準的な年金額を知らせることで、何を国民に伝えたいのかという目的をはっきりさせた上で議論していくとよいかと思っております。多過ぎると、逆に分かりづらくなるということもあるかと思いますので、その辺の配慮も必要かと思います。
すみません、以上です。ありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかにはよろしいですか。
時間に御協力いただきまして、ありがとうございました。
様々、こちらも御意見いただきまして、2つの機能をしっかり分ける。それを認識する。多くの皆様の御意見、おおむね集約できそうな方向性のあるものであったと思いますので、どうお示しするかはなかなか難しい、悩ましい部分がございますけれども、引き続き事務局のほうで御検討いただいて、またどこかの段階でお示しいただくような形にしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、予定しております議事は以上で終了とさせていただきます。
今後につきまして、事務局からお願いいたします。
○総務課長 次回の議題や日程につきましては、追って連絡いたします。
○菊池部会長 それでは、本日の審議はこれにて終了いたします。お忙しい中、お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。
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