積立金不足、苦しむ中小 国へ代行返上できず 厚生年金基金
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年金制度の一翼を担ってきた厚生年金基金の制度が限界に近づいている。▼1面参照
厚生年金基金は高齢化で年金受給者が増え、現役社員の加入者が減ってきた。さらにバブル崩壊後の株価低迷や08年秋のリーマン・ショックなどで多くの基金が運用難に陥った。大企業の基金などは厚生年金基金の運用が見通せず、厚生年金の代行部分を国に返上して企業年金だけに移行したり解散したりしてきた。
しかし、代行部分の積立金が不足していると国に返上することはできない。このため、中小企業でつくる基金の多くは代行返上することができず、積み立て不足が放置されてきた。
いま解散を予定する基金が増えているのは、最近の株価回復で積み立て不足が改善し、解散しやすくなったからだ。厚労省が2014年、代行部分の積み立て不足を穴埋めする期間を長くするなど条件を緩めた「特例解散」を認めたことも解散を促している。
しかし、代行部分の積み立て不足をなんとか解消できても、上乗せの企業年金の積み立て不足を解消するのは難しい。14年末時点で解散を予定する290基金のうち9割の261基金は依然として企業年金の積み立て不足で、多くの基金で企業年金の支給が打ち切られる可能性がある。
14年春に解散を決めた関西地方の基金は企業年金の支給を打ち切った。この基金に入っていた中小企業は「社員のために入っていたのに、代行部分の積み立て不足を払うのがやっとだった。何のために続けてきたのかわからない」という。
年金にくわしいプライスウォーターハウスクーパースの谷岡綾太ディレクターは「運用の改善で、厚生年金の代行部分を確保した基金も出ている。ただ、企業年金の積み立て不足のまま解散すれば、そのしわよせが現役社員や年金受給者にいく。企業や基金はきちんとした説明が必要だ」と指摘する。
(座小田英史)
■解散方針を決めた主な厚生年金基金
・北海道トラック
・東京都家具
・東京アパレル
・東京貨物運送
・東日本ニット(東京都)
・日本ハム・ソーセージ工業(同)
・東部ゴム(同)
・全日本バルブ(同)
・神奈川県建設業
・神奈川県石油業
・愛知県石油
・愛鉄連(愛知県)
・ナオリ(同)
・京都織物卸商
・京都機械金属
・大阪自動車整備
・大阪府貨物運送
・大阪料飲サービス業
・西日本冷凍空調(大阪府)
・兵庫ゴム工業
(加入企業の公表資料などから)
■厚生労働省がまとめた厚生年金基金の状況
◇各年度末に存在した基金数
2011年度末…577
2012年度末…560
2013年度末…531
◇企業年金部分の積み立て不足がある基金数
2011年度末…561
2012年度末…500
2013年度末…419
◇厚生年金の代行部分の積み立て不足がある基金数
2011年度末…287
2012年度末…148
2013年度末…102
◇代行部分の積み立て不足の総額と1基金あたりの平均額
2011年度末…1兆1058億円(平均39億円)
2012年度末…5295億円(平均36億円)
2013年度末…3709億円(平均36億円)
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