2012年4月24日 第12回社会保障審議会年金部会議事録
年金局
○日時
平成24年4月24日(火)14:00~16:00
○場所
全国都市会館3階第2会議室
○出席者
神 野 直 彦 (部会長)
植 田 和 男 (部会長代理)
逢 見 直 人 (委員)
小 塩 隆 士 (委員)
柿 木 厚 司 (委員)
菊 池 馨 実 (委員)
駒 村 康 平 (委員)
小 室 淑 恵 (委員)
小 山 文 子 (委員)
佐 藤 博 樹 (委員)
武 田 洋 子 (委員)
花 井 圭 子 (委員)
藤 沢 久 美 (委員)
森 戸 英 幸 (委員)
諸 星 裕 美 (委員)
山 口 修 (委員)
山 本 たい 人 (委員)
吉 野 直 行 (委員)
米 澤 康 博 (委員)
○議題
(1)第180回通常国会に提出した法律案について
(2)年金制度における世代間の給付と負担の関係について
○議事
○神野部会長 そろそろ定刻でございますので、ただいまから第12回になります「年金部会」を開催したいと存じます。年度が明けまして初めての部会でございますが、皆様には、お忙しいみぎり御参集いただきまして本当にありがとうございます。心より御礼を申し上げる次第でございます。
本日の委員の出席状況でございますが、植田委員、小室委員、藤沢委員、森戸委員、山本委員から御欠席の旨、御連絡をちょうだいいたしております。御欠席の委員のうち、山本委員の代理として大井川参考人が御出席をしてございますので、お認めいただければと思います。よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○神野部会長 それでは、お認めいただいたとさせていただきます。
議事に入らせていただきますが、議事に入る前に資料の確認をさせていただきます。
事務局の方からよろしくお願いいたします。
○藤原総務課長 よろしくお願いいたします。
本日の資料でございますが、枝番が振ってございますけれども、資料1-1、1-2、1-3とございます。資料2-1、2-2。最後に参考資料ということで参考資料1、参考資料2という編綴になってございます。よろしく御確認をお願いしたいと思います。
○神野部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
それでは、ここでカメラの方々には、大変恐縮でございますけれども、御退席をお願いしたいと思います。御協力いただければと思います。
(報道関係者退室)
○神野部会長 それでは、議事に入らせていただきますが、お手元の議事次第にございますように、本日は2つの議事を用意しておりまして、最初の議事は「第180回通常国会に提出した法律案について」ということと、2番目の議題は「年金制度における世代間の給付と負担の関係について」。この2つの議題を準備させていただいておりますが、初めに、第1の議題に関する資料について、事務局の方から御説明いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○梶尾年金課長 年金課長でございます。
それでは、資料1-1~1-3につきまして、一括して御報告したいと思います。
前回、2月14日の第11回までの年金部会では、昨年の夏に決定いたしました社会保障・税一体改革の、当時は成案というものを基に、それの具体化に向けた検討ということで御議論をお願いいたしました。政府では、1月6日の日に社会保障・税一体改革の素案というのをまとめ、この2月14日の部会の3日後の17日にはそれを大綱という形で閣議決定し、そして現在法案提出に至っているということでございます。
その2月14日までの会議で、具体的に最終的にどうというところまでのおまとめはお願いしなかったわけですけれども、御審議でいただいたさまざまな御意見等を踏まえて、政府においてまた与党と御相談をして法案を国会に提出しているという状況でございまして、あの段階で2月10日に予算関連法案を1本出しておりましたけれども、都合3本を提出したということで、主に今から御説明する2本目の法案の関係を中心に御議論いただいていたと思いますけれども、どのような内容で法案を提出したかにつきまして御報告したいと思います。
お手元の資料1-1でございますけれども、これは「国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案について」ということで、2月10日に予算関連法案ということで国会に提出したものでございます。この内容につきましては、昨年末の24年度予算編成の中で決定し、1月23日の会でも概要は一度御報告したところですけれども、大きく2つの内容がありまして、1つは基礎年金の国庫負担2分の1の関係ということで、24年度については、国庫は交付国債で2分の1と36.5%の差額を負担するということによって24年度分の2分の1を実現する。これに伴って免除期間についても2分の1で計算するということにするというような話。
もう一つは、特例水準の解消ということで、これは昨年のこの部会での議論でも是非やるべきだというような御意見をいただいていたところですけれども、2.5%の特例水準、本来水準より高い部分というのを3年間かけて解消する。1年目の24年度については10月から、25、26は4月にしようということでございます。
2ページ「基礎年金国庫負担1/2の実現について」ということで、これまで段階的に少しずつ上げて、21~23年は臨時財源で行われたわけですが、23年度は夏にも御検討いただいて23年度も復興債ということになりましたけれども、24年度については年金交付国債でと。更に特定年度ということがあって、特定年度以降については税制抜本改革により安定財源を確保してということになるわけです。これは後ほど御説明しますけれども、次の法案で26年度、消費税が8%になるタイミングを特定年度にするということにしてございます。
3ページ、年金交付国債は、24年度分について2分の1と36.5%の差額分を年金交付国債(2.6兆円+運用収入見込み額)ということで発行するということについて、2月に提出した法律で決めたのですが、一方で、これをどう償還するか、具体的には消費税による増収で償還するのですけれども、2月の段階では消費税法案がないタイミングでしたので、このタイミングでは3つ目の○にありましたとおり、毎年いくらずつ償還するか等は消費税増税の具体的の決定に合わせて別に法制化ということにしておりました。
それが資料1-2の6ページ、資料1-2というのは、2本目に出しました公的年金の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための法律ということで、言葉を拾いまして、通称年金機能強化法案と呼んでおります。その中の6ページ、この法律の中で交付国債の償還に関する事項ということで2月10日に出した法律で差額を24年度交付国債で発行・交付でやるということですけれども、これにつきましては税制抜本改革により得られる税収を償還財源とするということで、この法律の中で、8%に上がります26年度から20年間をかけて、24年度分としては元本プラス運用収入相当額で3兆円の交付をしておりますので、約20年間で償還するという内容を法律で記載しているということでございます。
これに関連して5ページ、2個目の年金機能強化法案の中で、これは3月30日に国会に提出したわけですけれども、同じ日に消費税法の改正法案、こちらも若干長い名前になっておりますけれども、消費税法との改正法案で26年4月から8%で、27年10月から10%にということを基本として定めてございますので、8%になるタイミングから基礎年金の国庫負担を2分の1にするという、特定年度26年度にするという法律改正を盛り込んでいるということになってございます。
資料1-1に戻っていただきまして、先ほど資料1-1の3ページのところで飛んだわけですけれども、以上が、最初の2月の法案の1つ目のテーマである24年度の基礎年金国庫負担で復興債の発行を行うということ。後ろの法律と併せて消費税で償還ということになります。
4ページ、5ページに特例水準の解消ということで、3年間かけて2.5%を解消する、26年度からは本来水準に戻るということになっています。なお、結局23年の物価下落というのが0.3%でしたので、4ページの右の表にありますとおり、24年4月から0.3%の引き下げが現行法に基づいて行われているということでございます。これを10月以降、こういう計画どおり引き下げることにつきましては、提出している法律の成立が行われればこのように下がっていくというような形で提案しているということになります。
なお、この資料につきましては、概要の資料を5ページまで付けておりますけれども、法案の要綱を後ろの方に6、7、8ページと字が小さいですけれども、付けてございます。この後の資料も同様の構成にしてございます。
次に、資料1-2、先ほど少しだけ触れました年金機能強化法案ですけれども、1ページ目に法律案の項目ということになっております。主要項目として(1)が年金制度の最低保障機能の強化を図り、年金給付の重点化・効率化を図る観点からということで、受給資格期間の短縮ということと、低所得者等への年金額の加算、高所得者の年金額の調整を行っております。これが昨年夏以来、御議論いただきました内容の消費税の増収の5%分のうちの1%を社会保障の2.7兆円の機能強化に充てる中で、年金に0.6兆円を充てると、その0.6兆円をどのような形で機能強化に充てるかということで、資格期間の短縮や年金額の加算と併せて、高所得者について年金額の調整を併せて実施するということです。後ほど各項目について御説明しますけれども、これにつきましては2月14日の第11回の会議で御議論いただいて、それを元に政府で案をつくり、与党で御議論いただいて、この後、御説明しますような法案内容で法案化をしたという過程でございます。
(2)と(3)は先ほど御説明しました基礎年金の国庫負担の2分の1恒久化の年度と24年度の分の償還を定めた内容ということです。(2)はもう一つの短時間労働者の特別部会でずっと議論いただいてきて、具体的な案をどうするかの段階では、与党における調整の結果、内容を固めたということで、別途、短時間労働者の部会では3月19日にこういった内容でということで報告したものを盛り込んでございます。
(5)(6)はこの部会でも御議論いただいてきました産休期間中の厚生年金、保険料免除と遺族基礎年金の父子家庭への支給ということになります。
なお、これらのうち、(1)(2)(3)と(6)につきましては、国庫の財源が関わるということがございますので、(1)につきましては消費税が10%になるタイミング、27年10月からの施行、(2)(3)は26年度からという話になります。(6)につきましても、基礎年金というのは2分の1の国庫負担がございますので、この分の給付費増になるという面がございます。これにつきましては、若干早いですけれども、8%になるタイミングの26年4月からの施行ということで、消費税の増収により得られる財源を充てて実施するということで考えてございます。
2ページは「受給資格期間の短縮について」ということで、これも昨年来、るる御議論いただいた内容で10年に短縮するということで、27年10月実施です。
3ページは「低所得者等への加算について」ということで、改正内容につきましては、定額の加算、月額6,000円というものと免除期間の加算で、この免除期間について6分の1相当額を加算するということであります。前回御議論いただきましたとおり、21年度以降の4分の1免除の場合は8分の1だけの加算をして1は超えないようにする形にしてございます。
定額の加算の部分につきましては、定額の加算以外にも納付インセンティブを考えた場合の3通りの別案も前回の会議では御議論いただきまして、それらの案を支持する御意見もいただいたところでありますけれども、定額の案でいいのではないかという御意見もございまして、全体の中で与党との相談の中でも低所得者への支援というのを考えるということですとか、余り制度が複雑になりすぎないようにするというようなことも重視して定額の加算という形で法案化提案をしているということでございます。
低所得者の範囲につきましては、前回も御報告しましておおむね御指示をいただいたと思いますけれども、他の社会保障制度とのバランスですとか、事務執行が余り複雑、困難なものにならないようにということで、介護保険で使用している基準の形で低所得者の範囲としております。という内容で法案化をしまして、これも27年10月実施ということでございます。
4ページは「高所得者の年金額の調整について」ということで、前回の議論でも基本的には方向としてはこういうことでした。対象者の範囲を従前1,000万以上として、これを下げるか下げないかみたいな議論がございましたけれども、1,000万以上よりも多少広めにお願いしてはというのが与党の中での御議論が強うございまして、最終的な提案としましては、前回の提案の中でも幾つかの選択肢の中に入れておりましたが、年収850万以上のところから少しずつ減額を開始して、年収1,300万以上の方については半分、国庫負担分を支給停止ということで、前年所得による支給停止という形で、年によって所得が変わりますので、所得が下がった場合には支給停止が解除されて満額が支給されるというような形でございます。
なお、3つ目の○にありますように、前年は所得が高かったわけですけれども、災害があったり、あるいは失業・廃業等によって今年は明らかに所得が減っているというようなケースにつきましては支給停止しないで、それは申請していただきますけれども、元の額を支給するという形の措置を条文上設けるということにしてございます。
これにつきましても、こういったことについての財産権の問題等あるのではないかという御議論、あるいは税制との関係を検討する必要があるのではないかといった御議論もあったところではありますけれども、法制局とも検討しまして、世代間、世代内の公平というのを図っていくという公益の目的ということと、一方で、全額支給停止になるといっても基礎年金の国庫負担分ですから月約3万2,000円で年38万ぐらい、1,300万以上の方に38万ということですので、収入に比べて3%程度というようなことである。そういうことを総合的に考えて、後からの法律によってこういったことをやることも可能であろうということで整理しまして法案化をしているということでございます。
なお、年金課税などもそういう姿があるべきではないかという御議論もございました。これは一体改革の大綱の中でも閣議決定され、そしてそれは今回の消費税法等の改正の中でも年金課税の在り方については引き続き検討を行うというような検討条項も置かれているというような形になってございます。
5~6ページは先ほど御紹介しましたところでございます。
7ページに短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大ということで、これにつきましては、下の方から5行目ぐらいに、参考で平成19年法案というのがございました。このときの基準と少し出入りがございまして、?の月額賃金のところをやや低い額のところまで対象にし、一方で従業員規模についてやや大規模という形で最終的に調整が入りましたけれども、約45万人の方について対象拡大する。ただし、更に3年以内に対象を拡大するのだということも法律に明記するという形で整理がされて国会に提出しているということでございます。
なお、併せて、今回、影響緩和措置ということで、短時間労働者などの賃金が低い加入者が多くて、その保険料負担が重い医療保険者に対してその負担を軽減するという観点から、後期高齢者医療の支援金ですとか介護納付金の負担についての特例措置を広く負担していただくという形での措置も盛り込むという形で法案化をしているということになってございます。
8ページは産休期間中の保険料免除ということですけれども、これは以前より議論いただいておおむねその方向でとなったところでございます。なお、この項目につきまして、厚生年金保険法の改正ということですけれども、併せて健康保険法などにつきましても同じ改正を盛り込むということで、同じ法案の中で健康保険法の条文も合わせて措置をしているということになっています。
9ページは遺族基礎年金の父子家庭への拡大及びその他の改善事項ということで、遺族基礎年金の父子家庭への拡大は26年4月実施ということでございます。これにつきましては、前回、2月14日の会議で、この分はこれとして遺族年金に関わる問題のさらなる宿題もいただいているところでございますので、引き続き検討して行く必要があると思っているところでございます。
次の○以降につきましては、これも制度改善事項ということで御審議いただいたものでございますけれども、これらにつきましては施行準備の時間が若干ございますので、公布の日から2年以内で政令で定める日での実施ということで施行準備を進めて実施に移していきたいと思っております。
最後に資料1-3でございます。被用者年金制度の一元化の関係の法案ということになりますけれども、これはこの部会との関係につきましては、昨年の夏以来、関係省庁間で平成19年の法案をベースに検討を進めて状況を報告するということで、必ずしも十分なこの部会の報告ができていなかったということは大変反省しておりますけれども、年度末までの間でおおむね詳細をまとめて法案化をしたということでございます。
基本的には19年の法案とほぼ同じ内容で整理してございまして、1ページ、厚生年金に公務員も私立学校の教職員も加入するということで、基本的に2階部分の年金は厚生年金に統一する。
遺族年金の話ですとか在職老齢年金の話とか制度間の違いが若干ありますけれども、これも厚生年金になるわけですので、厚生年金にそろえて解消する。共済年金の保険料も一気には上げられませんけれども、計画的に上げて、厚生年金の保険料率18.3%で合わせるようにしていく。
あと厚生年金事業の実施に当たっては、効率的な事務処理を行うという観点から、共済組合や私学事業団というのも引き続き活用はする。ただ、全体がどうなっているかというのはちゃんとわかるように表示していくというような形です。
共済年金にある公的年金としての3階部分は廃止する。その後どうするか。それを廃止した後の新たな年金については平成24年中に検討を行って別に法律を定めるということで、公的年金として廃止するのはこの法律で決定し、その後どうするかはこれから検討するということで、岡田副総理の下に有識者会議が設けられることになっておりまして、明後日にその第1回が行われるということであります。
追加費用の削減につきましても27%を引き下げるというのが19年の法案と同様ということでございます。これらにつきまして若干事務の準備等ございますので、27年10月の実施ということでございます。
各項目につきまして2ページ以降にそれぞれ付けてございます。簡単に申しますと2ページ目にありますとおり、制度的な差異については、この表に載っているものに限らずさまざまありますけれども、基本的には厚生年金に合わせてそろえていく。
3ページは保険料率の統一ということで、現在でも厚生年金と同様、共済年金も0.354%ずつ毎年上げております。ただ、これは現在の黒い太い線の階段は3階分までを含めた保険料率なわけです。点々で薄く書いているのが1、2階分を計算したらそうなるということですけれども、これを統合の段階で今の太い線のところが1、2階分だということで1.2ないし1.6ぐらい保険料率が上がるということに概念としてはなる。更にその上で引き続き0.354%ずつ上げていって18.3%にそろえていくというようなスケジュールになっております。そのことを4ページに文章で書きました。
5ページは、現在、共済を持っている積立金というのがあります。これは3階部分まで含めた積立金なのですけれども、ここは現在は区別はないわけですが、新たな共通としての厚生年金としてはどこまでかということにつきましては、厚生年金が1、2階分ですので、何年分の積立金を持っているのかということを共通部分として考えまして、その部分は新たな厚生年金の部分です。そして、残りの部分というのができますけれども、これは何になるかといいますと、注2に記載しておりますけれども、旧3階部分の処理に充てるということで、これまで保険料、掛け金として納付をしてきて給付を約束している部分がありますので、これの給付に充てられるということで、それ以降は新たな加入期間というのは生じない、廃止するわけですけれども、それまでの加入期間に対応する給付を行うというために用いられるという形でございます。
6ページは事務組織の活用ですとか新しい制度全体の財政状況の開示等ということで、厚生労働大臣に加えて共済組合、私学事業団も事業の実施主体としての位置づけになるということで、全体像がどうなっているのかというのは厚労大臣を中心として明らかにしていくというような形を考えているということです。
7ページは現在このように職域部分というのがありますけれども、これを廃止していくということで、その廃止後にどうするかにつきましては、8ページに24年中に検討するということで条文があるということでございます。
9ページは追加費用の削減ということで、追加費用というのは国家、地方の公務員共済制度が発足する前は恩給ということで全額国負担、地方負担での給付はされていた。それを共済組合が引き継いで給付をするのですが、恩給期間分というのは税金で賄われるわけですのでその分が共済組合に渡されて、共済組合から共済年金として支給されるということなのですけれども、この期間は発足後の共済組合に比べると、掛け金への自己負担に相当する恩給納金という割合が少なかったということに着目して、過去の恩給期間分の年金は引き下げることにしよう、その分だけ税財源の投入を小さくしようというようなことを合わせて行うということでございます。
こういった内容でほぼ19年のときの、当時も関係団体等とまとまった内容ですけれども、それとおおむね同じ内容で条文、法案化をしまして国会に提出していというようなことでございます。
以上、3法案、こういった内容で今国会に年金関係の法案を提出したということで御報告させていただきました。
以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
この部会で前回11回まで御審議いただきました内容に基づいて、今通常国会に提出している法案3つについて御説明いただきました。委員の皆様方から何か御質問、御意見。
柿木委員、どうぞ。
○柿木委員 今回の審議プロセスについて2点、私の方から申し上げたいと思います。
まず1点目ですけれども、今の各法案には、現行制度のいろんな見直しが盛り込まれているわけですけれども、先ほどお話にもありましたように、これを年金部会として最終的な審議報告をとりまとめるという形がなくて、言わば与党内の手続で法案化されたということは、極めて残念なことではないかと思っております。
たしか12月のときに一度中間で議論の整理はあったわけですけれども、それ以降、最終的に年金部会としての見解をまとめるという形に至らなかったということは、この審議会の進め方については疑問を持たざるを得ないということを1点申し上げたいと思います。
2点目ですけれども、これは先ほどお話もございましたけれども、被用者年金一元化法案は再三にわたりまして年金部会の中で内容についてお話しいただきたいとお話ししたのですけれども、結果報告が全くなくて、やはり最終報告の説明を受けるというだけでした。そういう意味で意見を申し上げる機会がなかったということで、我々としては厚生年金を支える使用者の立場としては、こうしたプロセスには納得しがたいものがあるということを申し上げておきたいと思います。
2点です。
○神野部会長 いずれも私の所管というか、私の責任事項に関わることでございますが、まとめるような形をとらずにやらせていただくという事情につきましては、最終回のときに私の方から皆さん方に御説明を申し上げて、一応の御了解はいただいたとは私の方としては了解いたしています。
事務局の方で何かコメントはございますか。よろしいですか。
○梶尾年金課長 非常に短時間の中だったので大変失礼だったとは思います。今後の進め方につきましてまた気をつけていきたいと思っております。
○神野部会長 ほかはいかがでしょうか。
山口委員、どうぞ。
○山口委員 同じように一元化法案に関する意見なのですけれども、前回のときもそうだったのですが、この資産、積立金の仕分けについて当時平成19年のときにもいろいろ世の中で批判されまして、これは官のお手盛りではないかといった批判が随分あったのです。この計算は厚生年金の積立金が給付金額の4.2年分あるので、共済の方も同様の計算をするとこうなるというわけですけれども、例えば7ページに資料を付けていただいているように、共済年金の職域部分というのは報酬比例年金の約2割で、全体から見れば1割以下です。ですから、給付から見れば1割ぐらいの給付に対して全体の44.7兆円のうち20.7兆円、46%がこれに充てられるというのは、いかにもバランスが欠けているのではないかということが前回も指摘されたところです。
それが今回も同じような計算がなされているということについて、私としては腑に落ちないところがあるのですが、一方で、保険料の引き上げスケジュールが3ページにありますように公務員については、本来は点線で書いてあるような引き上げ計画であったものが実線の形で、言わば前倒しされている分があります。したがって、先ほどの積立金の仕分けについても、そういう保険料負担の増加といった部分との比較において金額的にきちんと見合っているものかどうかよくわからないのですが、保険料の前倒しと、3階部分に充てる資産が多いということとが、うまくバランスが取れているのかなとも思ったりしていますので、これは半分質問でもありますが、そういった辺りについて御説明いただければありがたいと思っております。
○神野部会長 御意見をちょうだいする機会がなかったことについては重ねて私の方の運営の不手際その他ございまして、タイムプレッシャーの中でやっている事項なのでお詫びをした上で、事務局の方から今の御質問された事項について。
関連ですか。どうぞ。
○逢見委員 被用者年金一元化法案における共通財源と積立金の仕分けという部分が資料1-3の5ページにありますが、ここは論点としてクリアーにしなければいけない点だと思っております。
被用者年金一元化を行う場合、年金制度間の給付と負担の公平性という観点と、年金制度全体の持続可能性ということがきちんと説明され、関係者の納得を得ることが必要です。そういう点で、共済年金の積立金については、厚生年金の積立金の水準に見合った額として4.2年分を共通財源として仕分けるということになっておりますが、制度間の公平性の観点からより詳細な説明が必要であると考えます。
年金数理部会が3月27日に開かれ、公的年金財政状況報告が示されておりますが、それを見ますと、国共済、地共済は厚生年金に比べて年金扶養比率が低い。一方、私学共済は年金扶養比率が高く、被用者年金の各制度で成熟度の違いが異なっています。そういう前提で資料1-3の5ページのイメージ図の中で共通財源のあり方を考えた場合、仮に今後もミシン目のようなもので共通財源として拠出する財源を現厚生年金と現共済年金で区分すると仮定した場合に、扶養比率が低い共済年金は共通財源として仕分けた財源の取り崩しのペースが速くなるのではないか。この状態をそのままにしておくと、現共済年金の共通財源が枯渇し、今度は現共済年金の積立金不足とも言える部分を現厚生年金から持ち出しをしなければいけなくなるのではないかということが危惧されます。
また、持ち出し以外の影響として、平成21年財政検証では、厚生年金も共済年金も平成24年度から平成31年度にかけてマクロ経済スライドを発動するということが予定されていたわけですが、一元化法案で示されたように、制度間の成熟度を度外視した形で積立金を仕分けることで、こうした厚生年金のスライド調整期間に影響が及ぶことがないのかどうかも確認したい。
仮に共済年金について、一元化法施行のタイミングで現在3階部分を含めた保険料率を1、2階分含めた料率とする、すなわち共済年金の保険料率を実質的に引き上げるということ、あるいは共済年金では女子の支給開始年齢の引き上げスケジュールが男子と同じであるということといった要因で現厚生年金から積立金の持ち出しを発生させずに将来的に公平を図ることができるということになるという説明があるのだとしたら、それは実際のデータでそこは示していただきたい。
また、6ページにも○の3つ目のところで、「一元化された厚生年金全体の負担と給付の状況を厚生年金勘定にとりまとめて計上する」という表現があるわけですが、現在は厚生年金、共済年金など制度毎に財政検証がされるわけですけれども、一元化以降はとりまとめた厚生年金全体の数字しか示されないとしたら、仮に年金相互間での積立金の持ち出しということが起こった場合に、そういうことが検証できなくなるのではないかという懸念があります。制度的には共通財源にするとしても、何かの形でそういう持ち出しがあったかどうかを事後的にでも検証できることはきちんとやっておいた方がいいのではないかと思っています。
以上です。
○神野部会長 ほかは関連してよろしいですか。
それでは、一元化に伴ってどういう資金を集めていくかということに関する質問だと思いますので、事務局の方から御説明いただけますか。
○梶尾年金課長 では、まず私の方から御報告をしまして、あと数理課長から更に補足をしていただこうと思います。
現在、共済組合それぞれによって扶養比率が違う等々の御指摘もあるわけですけれども、数理部会でも検証がされておりますとおり、現在、厚生年金にしろ、国家公務員、地方公務員、私立学校教職員共済にせよ、21年の財政検証、財政再計算で長期にわたる財政の健全性というのはそれぞれの中で健全性が確認されている。それを、あるタイミングにおいて共通化をしようということにするということなので、基本的にはそれぞれ単独で健全な運営が想定されている者同士が集まるというようなことです。その中で多少の出入りはあると思いますけれども、健全性が確認されている者同士が集まるというようなことだというのが大前提としてあるということなります。
次に、公的年金というのは賦課方式を基本としている年金制度であり、更に16年改正以降はマクロ経済スライドということも導入されているわけで、保険料を払った時点でこれに伴う給付がどれだけかというのが決まるわけではない。その保険料を払ったのに対して積立金がどれだけあって、それを基に給付が行われるというわけではなくて、積立金は勿論ありますけれども、今後入ってくる保険料も含めて将来の給付がされるわけです。
そういう意味では具体的な数字が現在あるわけではないけれども、積立金はこうだけれども、保険料から見ると大目に今後共済の方は進めることになるからそれであっているのかなというような御指摘が山口委員からあったと思いますが、今持っている積立金だけで給付を行うという財政方式ではありませんので、今持っている積立金は勿論ありますけれども、基本的には賦課方式であって、そのときに入ってくる保険料収入で給付を行う、積立金も活用していくという構造ですので、その全体の中でどのように賄えるかという話になってくるということなので、必ずしも過去の加入期間に対応する積立金だけで将来の給付をどうこうするということではない。ある時点において、賦課方式の年金制度の下でどの部分を共通であると整理するかというと、その年の支出の何倍か、何年後持っているかという形で、その時点での積立金として、ここを共通部分として仕分けるというのが合理的と言えるやり方なのではないかということで、前回もそういった整理がされ、今回もそれを踏襲しているということでございます。
いろんなタイミングの話とか具体的な数字がどうかというのは今は数理課長もなかなか難しいとは思いますけれども、飛ばしまして、2つめの、6ページにある制度全体の給付と負担の状況を国の会計にとりまとめて計上しての部分ですが、そこは現在は厚生年金については収入、支出というのがちゃんと特別会計に計上されるわけですけれども、共済組合については全く国の予算決算上には出てこない。それが少なくとも共済組合経由の拠出金あるいは交付金という形で厚生年金に相当する部分については、共済年金が保険料として集め、共済年金が給付としてやる分についても、厚生年金に相当する部分については拠出金、交付金という形で国の会計上に表れるようになりますということで、従来全く表れなかったのが表れるようにしますということをやっているわけでございます。
では、それ以外の部分がどうか。収入のうちどれだけが拠出され、給付のうちのどれだけが交付金の対象になっているかという辺りがわからないといけないのではないかという御指摘があると思いますので、そこは国の会計として表示していくというものとは若干違う話にもなりますけれども、そういったことを検証できるようなやり方がちゃんと必要だという問題意識はしっかり受け止めて考えていきたいと思っております。
○逢見委員 将来的な制度間の公平性を担保する情報の開示というのは必要なので、お願いしたいと思います。
○神野部会長 では、数理課長、どうぞ。
○安部数理課長 今、御指摘ありましたとおり、データがすぐあるわけではありませんけれども、基本的な考え方としては、繰り返しになりますけれども、ある意味、給付、保険料、積立金というのを完全に例えば給付比率で切り分けるという考え方が勿論ないわけではないわけですけれども、そうしますと保険料は厚年よりは低くなる。それをあえて厚年にそろえるということを一方で考えたときに、出発点としての積立比率というのが1つの基準になるであろうという考え方で今回設定したわけでございます。いろいろと御指摘がございましたので、今後、データの開示等につきましては、工夫をしてまいりたいと思っております。
○神野部会長 よろしいですか。ほかにいかがですか。
諸星委員、どうぞ。
○諸星委員 一元化についてですが、確認したいことが1点と、あとは意見を言わせていただきます。
6ページに、今回一元化することによって被保険者の記録管理、標準報酬の決定とか、いわゆる保険給付の裁定等を行う主体として厚生労働大臣に加え、とあり、共済及び私学事業団を想定するということなのですが、裁定を行うというのは行政処分になりますので、これに対して審査請求とかそういったものがあると思うのですけれども、それも同じく厚生労働大臣が所管する社会保険審査会が対応するのか、それとも別に独自にそういった審査請求の場所で対応するのかということを確認したいのです。
といいますのは、社会保険審査会は、実は平成22年1月に年金機構になってから、年間の不服件数が1,230件から1年間で1,750件と約550件増えているのです。これは正直あり得ない数字で、委員長始め委員6人でそれらをすべて全国から来たものに対処しているという状況なのです。今年度はどうも2,000件に達するのではないかとも聞いています。その中には過去に厚生年金に統合された農林共済とか旧公社のNTTとか国鉄、そういったものの不服も来るのです。そうなると、今回の一元化をすることによって、こういった行政処分に対する不服がすべてそこで携わることになっては大変な状況になりますので、一元化をするのであれば、行政不服審査法が改正されるかどうかわかりませんけれども、それらの対処をどうされているのかお聞きしたいと思います。
また意見ですが、先ほど逢見委員もおっしゃっていましたが、年金制度の成熟度が異なるということがあると、実は、実際窓口でも各共済組合の対応について全くばらつきがあるのです。そして、ばらつきがあるためにいろんな問題が生じているということです。ですから、今はまだ年金機構で対応が統一されていますけれども、各共済によって給付に関する説明とか対応が異なっているがために、何か問題が起きて不服申請が来ているという実態もございますから、その辺り、まだ年金機構と統一しないで各共済窓口を残すというのであれば、事務対応や体制についてもきちんとした一元化を進めるべきではないかと思っています。
そして施行日が27年10月ということで、今から約3年6か月後ということなのですけれども、実際問題としては、年金をいろいろ過去のものを統合したとか記録とか、そういった共済のいろんなデータがあるものを厚年に統一するという作業は事務手続上いろんな問題が発生すると考えられるので、果たして今から3年6か月で本当にできるのかどうかということが正直私としては思いますので、その辺りもしっかり今後きちんと御検討していただきたいなと思っています。
以上です。
○神野部会長 特に行政処分の不服申請について御説明いただければと思います。
○梶尾年金課長 この資料にそこまで書いてございませんけれども、資料の12ページの要綱の中で、実施機関という言葉を使ってございますが、被用者はすべて厚生年金に加入ということになるのですけれども、結局、国家公務員共済の人については国家公務員共済組合連合会等々。地方公務員もそうですし、私学も私学事業団が厚生年金の事業の実施機関ということで位置づけて、ここが保険料の徴収ですとか給付というものを行うということにしています。これに関する不服申立につきましては、現在も国共済の審査会、公務員の審査会等になっておりますけれども、そこは従来どおりの形の不服申立先という形で、この法律上、要綱にそこまで記載しておりませんが、そういう形で法律上事務の分類をしているということです。したがって、すべて社会保険審査会ということではなくて、こういった団体が行った処分、それに相当するものにつきましては共済の審査会にいくという形でございます。
○神野部会長 よろしいですか。
では、花井委員、どうぞ。
○花井委員 一元化法案以外でもよろしいですか。
○神野部会長 勿論。
○花井委員 それでは、資料1-2の7ページのところの社会保険の適用拡大のことにつきまして意見を述べさせていただきたいと思います。
私ども連合はこの間、すべての雇用労働者は社会保険に原則適用すべきだということを主張してきました。今回の年金機能強化法案では、適用拡大の対象人数が45万人となったことにつきましては、極めて残念だと考えております。さまざまな意見があり、最終的に政治決着に至ったことは十分承知しておりますが、今後は法案に明記された3年以内に適用を拡大していくということを是非とも引き続き行政としても進めていただきたいということを述べておきたいと思います。
そして、何よりも今、雇用労働者の4割が非正規であるということ、今もう日本は既に超高齢社会に入り、人口減少社会に入ったという中で働き方というのは非常に重要な課題だと思っております。その中で、非正規労働者の処遇改善、格差是正が今後の社会の在り方を大きく左右します。そういう意味で是非とも社会保険の適用対象は、今後も絶えることなく拡大を続けていただきたいと思っております。
もう一つ、どうしても言っておきたいことは、日本の社会保険というのは強制適用であるということです。昨年が国民皆保険、国民皆年金50周年という年であり、先輩たちが努力されて今日の制度をつくってきました。その中で強制加入の仕組みは、ヨーロッパ諸国と日本の制度が大きく違っており、そのことは日本の社会保険の大きな特長であり、今後とも続けていくべきだと考えております。
今回、法案をとりまとめる過程において、社会保険に加入したい、加入したくないという問いかけが行われたわけですけれども、社会保険の本質から考えてそれは適切ではない。例えば、現在既に適用対象となっている労働者に社会保険に加入したい加入したくないか聞くのかというと、そういうことはしていないわけです。そういう意味で、非正規社員あるいは短時間労働者に対する差別的取扱いをしているのではないかということも強く思っております。強制加入であるということは、是非とも年金部会では共通認識にしていただきたいと強く申し述べます。
また、被用者一元化とも絡んでくるのですが、現在、共済年金では「1か月に18日以上勤務する月が12月を超える者」は適用対象になりますが、それ以外の方は現在共済年金の適用にはなっていないということがあります。被用者年金の一元化が実現すれば、短時間労働者を含む公務員は厚生年金に加入できることになるわけですが、今回の適用拡大の趣旨を踏まえて、共済については被用者年金一元化を待たずに長期給付、短期給付について見直していただきたい。短期給付については年金部会で議論はできないことは重々承知しておりますが、今、公務員の非正規が急増していますので、是非とも被用者年金一元化を契機に、公務員の適用拡大を進めていただきたいという意見があったことをお伝えいただければと思います。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。事務局の方にも意見として承っていただければと思います。あと、いかがでございましょうか。よろしいですか。
本年金部会に関わる事項でありながらここで直接議論しなかったことについて、時間的な猶予がなかったこともあり、私の運営の不手際で、皆さんともお約束しながらどうしてもできなかった点がございますが、今後、可能な限り年金部会の皆様方から意見をお伺いできる機会を設けるように努めていきたいと思いますので、お許しいただければと思います。
それでは、第1番目の議題につきましてはこの程度で終わらせていただきまして、引き続いて第2番目の方の議題です。この点については数理課長でしょうか、事務局の方から御説明いただければと思いますので、よろしくお願いします。
○安部数理課長 数理課長でございます。
私の方から、資料2-1と2-2につきまして御説明を申し上げます。今回、この資料を作成いたしましたのは、昔からある話ではございますけれども、最近、公的年金制度を始めとしました社会保障制度のことだけを考えた状態で、世代ごとに一生涯に受給する給付と支払う負担、これを一定の仮定の下に推計して、現時点における高齢者の方々というのは受益が大きい一方で、若い世代というのは損失が大きい。こういうことは問題ではないかという内容の研究とか主張とかといったものが出てきておりまして、特に公的年金制度におきましては、そういった問題が発生するのは賦課方式で運営しているということが問題であって、積立方式に移行することが望ましいのではないか。そういうふうな御意見といったものが出てきているというのが最近の状況でございます。
これらの事項につきまして、今回事務方の方で論点ペーパーとそれに関連します参考資料を作成いたしましたので、これから御説明を申し上げました上で委員の方々から御意見をいただければと考えております。本日いただきました御意見を基にしまして、また事務方の方で更に整理をさせていただければと考えている次第でございます。
まず、資料2-1、こちらはタイトルにございますように、世代間の給付と負担の関係について整理したもので、それと密接に関係します財政方式につきましては、次の資料2-2の方に整理いたしております。
資料2-1でございますけれども、2ページ目に論点の整理ということで御議論いただきたい論点を少し整理させていただいております。論点としては大きく3つあるのではないかということでこのように整理させていただいたところでございますけれども、まず1つ目でございます。結局のところ、公的年金制度の役割というのを考えますと、年をとられた高齢者、親の世代、親の生活を支えるということは、実は公的年金制度があろうがなかろうがやっていかなければならない必要なことであります。かつてはそれを個人個人が私的に扶養していたものを公的年金制度という仕組みをつくって社会全体で支えるようにしてきたといった経緯があるわけですけれども、そういう経緯の中で、今、出てきております研究とかといったものは年金制度の中で限定して、給付と負担を計算して比較するということがなされているわけですけれども、そういったことが本当に適切なのかどうかということが1つの論点としてあろうかということで整理したものでございます。
例示として■のところで3点ほど挙げさせていただいておりますけれども、例えばということで公的年金制度が存在せず従来どおり私的な扶養というのを続けていたとしたら経済成長とともに起こってきた都市化とか核家族化というように対応できてきたであろうかといったこととか、また実際に給付と負担のバランスを考える際には、公的年金制度創設前には制度の外で私的な扶養によって親世代の負担というものを実際行ってきている。今の高齢者の方々は若いころそういう負担を行ってきていたということをどのように考えていくべきなのか等々、そういったことが論点としてあろうかということで整理したものが1つ目でございます。
2つ目の論点でございますけれども、仮にということで年金制度の中だけで一定の仮定の下で世代間の給付の負担の関係というのを計算するという場合であっても、計算の方法として以下のような視点というのがあるのではないかということで何点か整理させていただいております。
1つ目としては、これもあくまで例示ではございますけれども、実際このような計算というのは平均値、期待値のようなものをそれぞれ給付と負担について計算して比較をするわけですけれども、実際にそのように機械的に計算した数値だけではなくて、実際公的年金の役割ということを考えれば、非常に長生きをした場合、また非常に急激な経済変動、インフレなどが起こった場合であっても、老後の生活というのを支えていくといった役割もあるわけでございますけれども、機械的に計算してしまいますとそういったことというのはなかなか表れてこない。そういった単純な計算では表れてこないような効果というものも考慮する必要があるのではないかといったことが1つ目でございます。
また、こういった計算というのは、どうしても、長期間にわたる給付なり負担なりというものを推計して、ある一時点に換算するわけですけれども、そのときの換算率としてどのような指標を用いるのが適切なのか。利回り、賃金上昇率、物価上昇率といろいろとございますけれども、こういったものの中で特に公的年金制度というのは現在積立方式ではなくて賦課方式で運営されて、基本的には賃金上昇率というものが保険料負担にしても給付にしても影響を与えるという仕組みの中でどういったものを割引率として使うのが適切かといったことが2つ目の論点としてあろうかと考えています。
また3番目といたしましては、事業主負担というものをどのように考えるのかといったことも非常に大きな論点ではないかと考えております。今、いろいろと出てきております研究の中では、事業主負担というものは結局は一旦本人に帰属して、それを負担しているのと同じではないかという考え方に基づき、負担を推計される際に事業主負担も合わせて計算されるということが行われておりますけれども、仮に公的年金制度というのがなかったとした場合に、本当に当然のごとく事業主負担というのは本人に帰属するものであるかどうかといったことは、これはなかなか一概にそうとも言えないのではないかと考えておりますが、そういった中で事業主負担というのをどのように取り扱うべきかといったことを3つ目の論点として挙げております。
また4番目は、結果の示し方ですけれども、こういった給付と負担の推計をした後で差し引き、引き算として出すものか、比率として出すのが適切なのか。これは示し方ですけれども、そういったことも論点としてあろうかということで4つ目の項目として挙げております。
最後に大きな論点の3つ目ということで、これは資料2-2にも関係してまいりますけれども、そのような問題点を挙げた上で、こういった問題というのは積立方式にすることによって是正できるというような意見があるわけですけれども、これについてどう考えるのか適切なのかと。実際、これは資料2-2の方で御説明いたしますけれども、仮に積立方式に移行しようとした場合に、いわゆる二重の負担といった問題等々、さまざまな問題が出てまいるわけですけれども、そういったことを一方では考える必要があるのではないか。そういったことが3つ目の論点としてあろうかということでまとめております。
以上が、世代間の給付と負担の関係について、論点として考えられる項目を整理いたしました内容でございます。
2ページ以降はそれに関連する資料ということで幾つか資料をお付けいたしております。2ページにつきましては、基本的には今、御説明いたしました論点の大部分の繰り返しになるわけですが、この中で特に1つ目と2つ目にありますのは社会保障・税一体改革大綱の中でも世代間の公平の確保というのは1つ重要な視点と挙げているわけですけれども、ただ、この大綱における世代間の公平の確保といったものにつきましては、子育て支援とか、高齢者にも応分の負担をしているための税制とか保険料の利用負担の在り方含めて、かなり幅広い視点での改革といったことを運用しているわけですけれども、一方で、現在出ているような研究といったものは非常に狭い範囲で、制度の中でも保険料と給付の関係だけを見たことで世代間の格差というのを示しているという違いがあるといったこと、これが2ページ目の内容でございます。
申し上げたものを少し数式的に表したものということが3ページ目でございます。1つ目の○というのが、いわゆる一般的に言われている生涯の保険料の負担の総額と生涯年金給付の総額を割り算、比率を取って倍率を計算するわけです。
2つ目の○にありますように、今の高齢の方々というのは、公的年金制度が整備されていなかった現役の時代に自分の親を私的に養っている。そのような費用を別途負っていたといったことを考えますと、こういう給付と負担の倍率というのを計算するときに分母として挙げられるべきものは、単純な年金制度への保険料負担だけではなくて、かつて私的に自分の親を扶養されていた費用といったものを考えるというような視点があり得るのではないか。
3つ目の○ですけれども、一方、現在の現役世代の給付というのを考えたときに、年金制度だけを考えれば年金給付総額の合計になるわけですけれども、それ以外に過去の人たち、自分の親の世代の努力によって経済成長というのがなされて、それによって生活水準が向上してきた。生活水準の向上というメリットを受けている、そういったことも受給の側に考える、そういった視点があるのではないかといった視点がそれぞれあろうかということでお示ししてありますのが3ページ目でございます。
4ページ目でございますけれども、これ以降は私どもが平成21年5月26日、これは21年財政検証を行ったときに年金部会に提出させていただいた資料でありますけれども、このときに一定の仮定を置いて、まさしく年金制度における給付と負担の関係というものを計算したわけですけれども、そのときには4ページ目の四角にあります、あくまでも一定の考え方の整理というものをした上で行っているということでございます。内容としては今論点等で御説明したとおりでございまして、下半分のところに図を書いてございます。
まず左側の方の図が示しておりますのは、現在の高齢者の方々の負担といいますものは、実際には年金制度だけを考えた場合には、昭和30~40年代の非常に低いところからどんどん上がってきたわけですけれども、ただ、その当時、年金制度以外でも私的な扶養というものの負担が一方であったということが左側の図でございます。
右側の図というのは、もう一方の生活水準の向上ということで、昭和30年とか40年代とか、現在、そして将来を考えたときに1つの例示として1971年と2006年のエンゲル係数等々の指標をお示ししておりますけれども、昔というのは現在に比べますと非常に経済の成長というのもまだ低かった。そういったところでたとえ3%とか4%の保険料率であったとしても、現在の感覚で考える以上にその負担というのは重かった。そして、一方で、今後、こういった経済成長の結果としてさまざまな生活水準の向上という要素がある、そういったことを考えていく必要があるのではないかというのが右側の図でございます。
そういった考え方というのを整理した上で、5ページ以降で財政検証の結果をベースといたしまして、世代ごとに給付と負担の比率というものを推計したものでございます。例えば5ページ目の下半分に基礎年金を含んだ厚生年金についての給付と負担の倍率というものをお示ししておりまして、確かにこのような計算で年金制度の中だけで給付と負担の比率というものを計算いたしますと、この表の一番下の欄が給付と負担の比率ということでございますけれども、現在時点で考えたときに、例えば1940年生まれの方が一番左にありまして、10年ごとに刻んでいって、一番右で2010年生まれの方をお示ししておりますけれども、確かに差というのは存在するというのが計算上出てくるわけですけれども、ただ、これをそのまま受け取るということは1つ問題であろうということを先ほど申し上げたということでございます。
資料としてはあと6ページ、7ページがございます。これは申し上げた計算結果、それの更に細かいもの、また計算の前提ということでどういうふうな仮定を置いているかという結果でございますけれども、これはまた後ほどごらんいただきたいと思います。
以上が資料2-1の世代間の給付と負担の関係ということでございます。
引き続きまして、資料2-2でございます。こちらの方は公的年金の財政方式ということで整理したものでございます。
同じように、最初に論点ペーパーということで御議論いただきたい論点ということで整理いたしております。こちらの方も大きな項目としては3つの点を論点として整理いたしております。1つ目といたしましては、仮に公的年金というものを積立方式で運営する場合を想定したときに、以下のような問題があるのではないかということで、ここでは3点ほど挙げさせていただいております。
1つといたしましては、このように積立方式で運営した場合に、確実に終身の年金というものを支給することができるのかということ。また、想定を超えたインフレとか賃金上昇が起こった場合でも本当に実質的な価値のある年金というものを支給することができるのか。また、仮に、積立方式で運営しようといたしますと、現在の積立金に加えまして500兆以上の積立金というのを持たなければいけないということになるわけですけれども、現実問題としてそれだけの規模の積立金を運用していくということが本当に可能であろうかといったさまざまな問題があるのではないかということが1つ目の論点として挙げている点でございます。
2つ目でございますけれども、このように現在、賦課方式で運用しているわけでございますけれども、過去の経緯を見てみますと、戦後非常に貧しい時代から我が国経済というのは成長して、現在の姿になったわけでございます。その一方で人口構成というのは少子高齢化が進んできた。そういった経緯の中で公的年金の保険料といいますものは、過去、経済成長の度合いが低かった時代というのはなかなか保険料負担というのを一気に上げることは難しい。やはり段階的に引き上げていくといった方策というのが現実的ではなかったのではないか。
先ほどもありましたように、保険料率の数字として見ますと、過去というのは現在に比べますと低かったわけですけれども、当時の生活水準と経済規模を考慮した場合には、今の感覚で考えるほど実質的な低い負担であったわけではないのではないかといったことも考えていく必要があるのではないかということが2つ目の論点でございます。
3番目ですけれども、これはよく言われる話でございますけれども、現在、賦課方式を基本として運営している公的年金、これを完全に積立方式に移行しようとした場合には、今後支払われる保険料というのは積立方式ということで積立金の方へ回すことになりますが、その一方で、現在の受給者に対する給付の負担というものも必要になってくる。いわゆる二重の負担と言われている問題ですけれども、これをどのように考えていく必要があるかといったことが3番目の論点としてあるのではないかということで、大きく3つの論点をこの論点ペーパーでは整理いたしておるところでございます。
以降、それに関します参考資料ということで、現在の公的年金、厚生年金、国民年金というものがどのようなやり方で運営されているかということを御説明したものでございます。
3ページ、現行の公的年金における年金財政のフレームワークの方で御説明いたしますと、基本的には給付と負担というのがバランスをしなければいけないわけですけれども、平成16年改正におきまして現在の年金財政のフレームワークというのが設定されたわけでございます。この図でみますと左側ですけれども、こちらの方は3つの項目、保険料、積立金、国庫負担、この3つというのが負担サイドとして挙げられていて、給付サイドの方は給付水準という、この負担と給付がバランスするということが必要になってくるわけでございます。
16年改正では、保険料というのは段階的に引き上げて、一定の上限で止める。積立金というのは現在の積立金があり、国庫負担というのは基礎年金の2分の1ということで決める。そういう意味で負担の側というのは設定をされたわけですので、その範囲の中で給付水準というのを決めていくということで、マクロ経済スライドという仕組みを導入したというのが平成16年のフレームワークでございます。
このようなフレームワークで運営しているわけでございますけれども、公的年金の財政方式、これが過去どのように推移してきたのかということをまとめましたのが2ページにわたってフローチャートのように書いている資料でございます。
まず公的年金が制度発足当初は積立方式の1つでございます「平準保険料方式」というものでスタートしております。ただ、ここで御注意をいただきたいのは、制度発足当初、これは厚生年金の場合ですと、戦前、昭和17年でございますし、国民年金ですと昭和36年になるわけでございますけれども、その当時は、給付の実質価値の維持というスライドとか再評価の仕組みというのはございませんでした。そういう意味で、現在の企業年金とか個人年金と本質的には似たような考え方での制度でございまして、そういったこともありまして、当初は積立方式でスタートしたわけでございます。しかしながら、制度発足後間もなく、特に厚生年金の場合ですけれども、戦後のインフレによる積立金の目減り等、また当時は経済成長というのが十分なされていなかった。特に戦後ですと非常に状況としては悪かったわけですが、そういった負担能力を考慮し、結局のところ、平準保険料を下回る保険料というものを設定せざるを得なかった。
そして、そういった状況が何回か続いた後でこの保険料というものを将来に向けて段階的に引き上げていく段階保険料方式というものが採用されるようになったわけでございます。厚生年金では昭和29年から、国民年金は昭和42年からですけれども、そのように保険料の設定方法というのが変わってまいりました。
5ページ、その中で昭和48年には物価スライド・賃金再評価という給付の実質的な価値を維持するような仕組みというものが新たに導入された。そういったことで、物価スライド・賃金再評価によって給付が増額されたわけですけれども、当然これは保険料拠出時には想定されなかったものですので、後世代の負担で賄っていく必要があるということで、賦課方式の要素が強まっていったという歴史的な経緯があると思います。そういうことで、その一方で、また少子高齢化ということも少しずつ進行していきました。
そして、最終的には先ほど御説明いたしました平成16年改正においてフレームワーク、おおむね100年程度の期間を対象としての給付と負担のバランスをとる仕組みが採用されたというのが、大ざっぱではございますけれども、我が国の公的年金制度の財政保障の推移でございます。
6ページ、積立方式の問題点ということで何点か挙げてございます。年金制度の財政方式は、大きく賦課方式と積立方式とに分けられるわけです。2つ目の○でございますが、公的年金において積立方式を採用する場合の問題点ということで、これは先ほども御説明したとおりでございますけれども、想定を超えたインフレや賃金上昇、経済変動が起きた場合に、終身年金が維持できるか、また実質的な価値のある年金ができるかといったこと。仮に積立方式とした場合に、非常に大きな多額の積立金を積み立てる必要があるといったことがございます。
これは少しページが飛びますけれども、13ページ、14ページに、やはり平成21年の財政検証において算定いたしました厚生年金と国民年金の財源と給付の内訳という資料でございます。厚生年金の方で御説明を申し上げますと、給付の総額ということで右側の四角になりますけれども、現在価値に直しますと、約1,660兆円、おおむね100年間分の給付現価でございます。これは今後100年間の給付の総額でありますけれども、平成21年度末を基準にして2つに切り分けておりますが、どういうふうな考え方で切り分けているかと言いますと、過去の加入期間に基づいて年金額が発生している部分と、今後年金制度に加入することによって発生する給付というふうに大きく2つに分けております。そういたしますと、たまたまではございますけれども、ちょうど半々になりまして、過去期間分が830兆円、将来期間分が830兆円というふうに切り分けられたものでございます。
その一方で、それに対応するものとして財源ということで、当然のことですが、これは同額、1,660兆円あるわけですけれども、このうち、その時点での厚生年金分の積立金としては140兆円、基礎年金2分の1国庫負担分として約330兆円、そして、残りの保険料というのが1,190兆円、これを合計することによって1,660兆円に対応するということになるわけでございます。
この国庫負担の330兆円というのは、同じように将来期間と過去期間に分けますと、過去期間分が大体190兆円ということになりますので、純粋に過去期間だけを考えた場合の対応を見ますと、給付の方は830兆円、その一方で国庫負担というのは190兆円、過去期間分としてはございますので、残りの640兆円というものが過去期間の国庫負担以外に係る給付の現価ということになるわけでございます。
仮にですけれども、本当に積立方式で運営するということになりますと、まさしく640兆円分の積立金をもって運営するということになるわけでございます。この時点では積立金140兆円でございますので、その差額の500兆円を何らかの形で積み増さないと積立方式に移行するということができないということで、いわゆる二重の負担の問題というものも出てまいりますし、本当にこの640兆円もの積立金というのをどうやって運用していくのかといった問題が出てくるといったことが積立方式の問題点として1つ大きな点として挙げられるのではないと考えております。
資料の7ページ目に戻っていただきまして、この問題点は今数字でごらんいただきましたものが2つ目の○の2ポツ目と3ポツ目でございます。主に論点といたしましては以上でございまして、7ページ目は今御説明した計数についての御説明でございます。
8ページ目は先ほどの公的年金の財政方式の推移ということでお示ししましたけれども、それの具体的な数字、平準保険料としては幾らを設定して、実際に取ってきた保険料というのは幾らかといったことを時系列で並べたものでございます。これは御参考にごらんいただければと思います。
9ページ目につきましては、賦課方式と積立方式につきましてのそれぞれの特徴というものを一覧表にまとめたものでございます。内容的には先ほど御説明したとおりでございますが、これもごらんいただければと思います。
10ページ以降は、賦課方式と積立方式の対応関係をポンチ絵でお示ししたものでございます。賦課方式というのはそのときそのときでの現役世代の方が高齢者世代の方の生活を支えている。積立方式はそういった世代間の支え合いではなくて、それぞれ自分が将来受け取る年金についての保険料積立という内容でございます。
11ページは、仮にそれを賦課方式で運用しているものを積立方式で切り替えようとした場合に、どうしても二重の負担というものが出てくるといったことを図でお示ししたものでございます。
12ページ目と13ページ目は、先ほど御説明した、それぞれ厚生年金、国民年金における給付と財源の内訳のバランスということでございます。
資料といたしましては以上でございまして、あと参考資料をお付けいたしております。参考資料1というのは近年そういった世代間の格差の問題を指摘した研究の1つの例ということで、今年の1月に内閣府の経済社会総合研究所のディスカッションペーパーということで公表されたものというのがございます。報道もされておりますのでごらんになられた方もいらっしゃるかもしれません。
これは内閣府という名前は付いておりますけれども、あくまでも個々の研究者の個人論文をこういうふうな形で公表したものという位置づけと聞いておりますけれども、こういった研究などが出されているということでございます。
もう一つ、参考資料2としてお付けいたしておりますのは、内閣府の研究に対しまして、これは厚生労働省の政策統括官室の方で社会保障の教育推進に関する検討会というものをやっておりますけれども、その中で、内閣府のディスカッションペーパーということで出されておりますペーパーに対する論点の整理というものをまとめたものでございますので、これは御参考までにということで本日お付けしているところでございます。
説明は以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
2つ大きく御説明をいただきまして、1つは年金制度において給付と負担を世代間でどう考えるのか。これも年金給付の枠内といいますか、ジクソーパズルの1つの小片だけで考えていいかどうか。またそう考えるとしてどういうふうに計算し、負担して考えていけばいいかという問題と、現在、その議論がどうやら年金の財政方式と結び付けられて議論されているようなので、公的年金、つまり私的な年金ではなく社会保険としての財政方式としてどういう方式を取るべきかという問題提起ですが、これは物事の本質に関わる議論なので、個別に今日個々に論点ごとにお時間をちょうだいしながら議論していただくというよりも、それぞれ御関心のあるところから自由に討議をしていただいた方が生産的かなと思いますので、この2つのテーマにつきまして、それぞれ皆様方から忌憚のない御意見をちょうだいできればと思っております。
吉野委員、どうぞ。
○吉野委員 これは経済学者が一番手を挙げたがるところではないかと思います。いろいろな制度を考えるときに、今の制度が悪いからこちらの制度がいいのだというのをよく議論するのですけれども、最近でいきますと司法試験、数年前に今の司法試験の制度はよくないからもっと自由に入れましょうと。そうしたら、最近、それは全くよくなかったではないかという議論がありまして、ここでも現在の賦課方式は問題があるので、そうしたら積立方式にすれば何でも解決するというような感じだと思うのです。
ですから、我々は気をつけなければいけないのは、賦課方式も問題があるのですけれども、どういう形で給付と負担を変えていけば一番いいのだろうか。そして、いろんな論文で言われるときには、我々経済学者はある仮定の下にこういうものがいいですと言うわけです。その仮定を全部取り崩すと、必ずしも積立方式がよくないということになりますから、1つ我々がやらなければいけないのは、積立方式のそういう論文のところでどこが抜けていて、先ほどのように例えばインフレのときに困りますし、長寿化が進めばまさに困るわけですし、諸外国でも調べていただきたいのですけれども、アルゼンチンのようなところでこういう積立方式をとったようですけれども、結局あそこはすごいインフレでだめになったわけですから、では本当にそれでいいのかというのをきちんとしないと、また司法試験と全く同じことをやってしまって大変になると思うのです。それを注意しなければいけないと思います。
細かいところですけれども、先ほど御説明がありましたけれども、資料2-1の1ページのところで、こういう計算をするときに割引率が違いますと完全に違ってしまうのです。よく我々が使うときはインプライド・フォワードレートというのを使うのですけれども、この中ではそれはなかったのですが、どういう割引率にするかによって現在の負担と将来の給付のベネフィットが物すごく違いまして、結果が全部逆になってしまうのです。
ですから、そういう意味ではいろいろな論文があるのですけれども、それのいい部分、欠点を考えて、一番重要なのは今の制度をどういう形で枠の中で変えていけば100年もつ制度になるかどうかというのを考えるのが一番重要ではないかと思います。
関連して言えば、例えば事業主負担のところも、もしそれが払われていないとしたならば、事業主の行動が変わるわけですから、2分の1が完全に賃金として来るわけではなくて、利潤と賃金の関係が全部変わるわけです。ですから、ここの仮定だけ見ても非常に限られた中での結論のように思いますので、我々が少しそれをきちんと注意して精査する必要があると思います。
○神野部会長 ありがとうございます。
では、米澤委員、どうぞ。
○米澤委員 もう少し細かな議論に入らせていただいて、大半は質問をお聞きしたいのですが、私は基本的に積立方式というのは無理なので賦課方式にならざるを得ないと思っております。事務局の方の説明からですと、今までいろいろとその場合には負担と給付の比率が変わってきてそれが非常に問題だということになったのですけれども、それはいろいろ制度がスタートして、特に戦中から始まって戦後の制度が変わってきて、その経緯の中で変わってきているので、そこに関してはなかなか政治的要素も多いので議論しにくいことがあるかと思います。
ただ、その下でよく言われているのが資料2-1の5ページの1980年生まれ以降は負担給付率というのは全部2.3倍になっております。ここからは差がないのだという話をお聞きすることがあるのです。今後、一番心配するのは、少子高齢化で、これでもって乗り切れるのかどうか、この2.3倍というのは賦課方式が一番弱い少子高齢化が入って2.3なのかということです。
もう一つ、お聞きしたいのは、資料2-2の3ページに負担と給付のところがあるのですが、?のところで給付水準というのが書かれているのですが、普通は2.3倍とかと出すときは、過去の平均の給料に一定の乗率をかけているということで計算されて出てくるのではないかと思うので、それが75年生まれ以降動かしていないのだから、2.3倍なのですということで格差がないのですという説明だと思うのです。
そうすると、少子高齢化の問題もここにどういうふうに入ってくるのか、どういうふうに入ってこられないのか、それが全部マクロ経済スライドで調整されるのか。そうすると、その調整された下での2.3なのか。ないしは、所得代替率、50%というのは目的なのか、たまたまこれまでの乗率で計算したならば一定の経済前提の下で出てくる数字なのか、そのところが整理できていないので教えていただければいいかと思います。
要は一番のテーマでいきますと2.3というのはどういう数字なのか、これは少子高齢化の下で実現性があるのか。そうであれば賦課方式でこれからは問題ないのではないか。多分これは無理ではないかというのが質問の半分の意見になります。
○神野部会長 要領よく今の御質問にお答えいただけますか。2.3倍の話。
○安部数理課長 まず順番といたしましては、資料2-2の方にあります平成21年の財政検証が最初にあるわけでして、これは経済前提を置いて、別に目標ではなくて一定の経済前提を置いて、更にこの時点で見込まれている少子高齢化も見込んだ上で財政試算を行った結果として、マクロ経済スライドを発動して、最終的に50.1という所得代替率になるという見込みが、これは一定の仮定を置いて自然に出てきたということがまずあります。それを踏まえた上で、その前提の中でそれぞれの世代の将来の給付というものを推計し、また過去の負担というのを計算して倍率を取ったら、将来の世代というのは大体どの世代でも2.3倍になった。
これは保険料を段階的に引き上げておりますけれども、最終的に18.3%を頭打ちにする、それ以上上げないというふうな、負担面ではそういうふうなことで、ある一定の世代以上について言えば、負担水準というのは固定されている。一方、給付の方もマクロ経済スライドで下がっていって2038年以降は50.1で、これも下げ止まりますので、そこも変わらない。その結果として、一定以上の若い世代については2.3倍というので変化しないという推計結果になったということでございます。
○神野部会長 小塩委員、どうぞ。
○小塩委員 私、内閣府出身で、現在、大学で世代間問題研究機構という組織の責任者をしておりますので、こういう問題については一言言わないといけない立場にあるのですが、先ほど安部課長が非常に丁寧に論点を整理していただきましたので、資料2-1の「議論していただきたい論点」というところを見ながら私の意見を申し上げます。
まず世代間の格差の問題ですけれども、過去の沿革がありますから、現在、いろいろなところで試算されている世代間の格差について、これは全部だめでフラットにしろ、そんな極端なことを言う人はまず世の中にいないと思います。しかし、先ほど非正規の問題が指摘されましたが、年収100万円も稼いでいない人が国民年金の保険料を払おうと思って非常に大変な一方で、厚生年金を20万円以上もらって豊かな生活を送っている高齢者がいるわけです。そうした状況を見れば、世代間格差を問題にするなとはやはり言えないと思います。ですから、世代間格差の数字はいろいろ問題があるかもしれませんが、ああいう試算が持っている政策的なインプリケーションはやはり無視できないと思います。
先ほどの御説明で注意して聞いていたのですけれども、少子化とか人口減少という言葉はあまりありませんでした。世代間格差の問題というのは、人口が順調に拡大していって経済成長が十分に高かったら全然問題にする必要はありません。将来世代にツケをどんどん付け回しても問題ないわけです。ですから、世代間格差というのは極めて少子化の下での問題なのですが、現在は御存じのようにこれからどんどん少子化は進みますから、やはり重要な問題だと思います。
ちょっとマイナーな話ですが、世代間格差の議論をする場合、年金だけではなくてほかの制度も合わせて議論しましょう、プライベートな所得移転も合わせて議論したらどうですかという議論があります。これはもっともな議論だと思うのですが、公的な所得移転の裏側で私的な所得移転が働いて、あまり事態は変わりませんという議論は、経済学で言う中立命題とか等価定理の話です。この議論は確かに改革を進めましょうという議論に関してブレーキをかけるのですけれども、その一方で、現行制度を積極的に正当化する論拠足り得ないのです。というのは、この中立命題というのはどんな制度改革をやっても変わりませんよと言っているわけですから、現行制度を積極的には正当化しません。そういう点を考えると、世代間格差の問題はいろいろ議論、論点はありますけれども、その持っている政策的な意味はやはり重要だと思います。
次に、テクニカルな論点を先ほど幾つか指摘されましたけれども、それについて私の意見を申し上げます。まず1番目のリスクの問題。これは確かにそのとおりですが、リスクのカバーをタダでやっているわけではなくて、コストがかかっているわけです。インフレのコストとか長寿のコスト、それは公的年金でカバーするのだけれども、その一方で、賦課方式の下では、それを支える現役世代の人たちがちゃんとコストを払っている、あるいは将来世代にツケが回っているわけですから、コストなしでリスクをカバーしているわけでは決してないということを忘れていただきたくないと思います。
2番目の割引率ですが、年金に議論を限定すると、賃金上昇率で割り引くというのは理にかなったことかもしれません。スウェーデンでも行っているという話も聞いていますが、ただ、これも先ほどの話と同じように、年金に話を限定するのではなくて、いろいろな社会経済の中で年金の話をしましょうというときに、お金の割引の仕方を、年金の場合は賃金上昇率で行うとして、それ以外のところはどうするのかという問題があります。銀行の預金は利子率で割り引こうと言われると、これは整合的ではないわけです。やはり社会全体のお金の在り方というのを議論する場合は、統一的な尺度で割り引かないといけません。どうしても賃金上昇率で割り引きたいと言うのだったら、ほかのお金も全部それで統一してやっていかないといけません。経済学者はそれには反対します。教科書を全部変えないといけません。どのようなものでも利子率で統一的に割り引くべきだと思います。
次は、事業主負担です。これは吉野先生がさほど御指摘のあったとおりで、すこぶる実証的な問題でありまして、どこまでが事業主あるいは事業に帰着するかというのはやってみないとわからない、実証問題ということであります。ですから、100%事業主に帰着するという仮定も間違っているし、100%雇用者に帰着するという前提も間違っていると思います。
ただ、注意していただきたいのは、事業主負担、個人負担の分担の仕方は国によって違うという点です。日本は折半ですけれども、6・4のところとか7・3あるいはほとんど事業主が負担しているというのもあるでしょう。例えば日本で、99%事業主負担で1%個人負担だとしたら、公的年金の収益率はプラス無限大になってしまいます。そうしたらみんなハッピーかと言われるとやはりまずいわけです。だから、こういう議論はやはり事業主負担と個人負担を合わせて議論する必要があるかと思います。
最後に、積立か賦課かという、昔から繰り返されている議論があります。資本蓄積への影響とか、いろいろな影響を全部考慮に入れると、経済学者が行うシミュレーションでは積立に軍配が上がる傾向があります。
ただ、議論を限定して、損得勘定というここで議論されている点に話を絞りますと、私は積立方式のファンではありますが、積立方式に移行しても世代間の格差の是正にはあまり効果がないと言わざるを得ません。なぜかというと、先ほどこれも御説明がありましたけれども、二重の負担を解消するという追加的なコストを考えると、年金数理的に考えた場合、積立方式に移行したときに発生するメリットは追加的な負担でちょうど相殺されるからです。ただ、この説明は、ものすごく誤解が多いのですけれども、現行制度を積極的に正当化する根拠足り得ないのです。積立方式への移行にはあまり意味がないけれども、だからといって今の制度の方がいいということまでは言えないのです。積立に移行しても、賦課のままとどまっても問題は残るのです。それは、若い人の負担が重過ぎるということです。今の公的年金だと重すぎるのです。
どうしたらいいかということですけれども、これは非常に問題が多いので、私はこんなことを言ったらいろんなところから批判されると思いますが、積立の下でも賦課の下でも、今まで高齢者にあるいは高齢者になりそうな人に約束していた年金給付を削減するというところに手を付けない限り、効果は出ないと思います。それは積立方式の側から見ても正当化できる改革案です。なぜかというと、それだけ公的年金がスリム化されていくからです。積立方式というのは要するに個人に貯蓄しろというのと同じような話ですので、賦課方式の公的年金は、スリム化は積立方式に移行するということと同じ効果を持ちます。
先ほど、積立方式に移行する場合は、かなり大量の積立金の不足を国債発行で賄わないといけないと安部課長はおっしゃいました。確かにそのとおりなのですけれども、そんなことをしなくても、年金給付を削減し、今ある年金をスリムにしていけば、そしてそれで若い人はちゃんと無理なく維持できるようにすれば、積立方式の主張者も賦課方式の主張者も納得できる改革が進められると思います。
以上です。すみません、長くなりました。
○神野部会長 では、まず先に武田委員、どうぞ。
○武田委員 私も基本的には小塩委員の意見に賛成でございます。試算は一定の前提のもとで行うので、その前提を変えれば当然結果は変わり得るのです。大事なことは、保守的な試算にしても前提を多少変えたとしても、やはり世代間格差はあるということだと思います。その下で今何ができるかということを考えていかなければいけないのではないかと思っています。
その意味では、見える化を進めることは重要であると思っています。当然、その試算の前提によって結果は変わりますけれども、受益と負担の構造の見える化を進めるために、どの前提の下ではどういう結果になるかというところをもう少しオープンにしていけば、こういった議論が少なくとも国民の前に明らかになっていきますし、逆にあらぬ不安を駆り立てない部分もあると思います。つまり、国民の信頼を得るために、受益と負担の構造を年金だけではなく社会保障全般として見える化していくべき、という点が1つです。
2点目は、先ほど申し上げたように世代間格差の是正のために、では、今、何ができるかですが、その際には実現可能性といった視点も当然大事になってくると思います。理想の姿を一からつくり直すというのは現実的に難しく、また、財政に余裕がかなりあるのであれば話は違ってくるかもしれませんが、GDP比200%という大変厳しい中でその余裕もない。では、そういう中で何をしていけばいいかというと、年金部会において年末のとりまとめの際に宿題として残されていた部分、例えば1つの案としてはデフレ下のマクロ経済スライドの発動とかなど、現実的に対応可能で、かつ、少しでも世代の公平性あるいは年金の持続性を担保するものをどうやって取り入れていくかというところを、年金部会でも議論を進めていった方がいいのではないかと思っています。
制度・法創設前にはこうであったとか、歴史を振り返るとこうだったとか、それは常に時代が変化してきていますので、余り過去にさかのぼって整合性を議論しても意味はないと思います。そう言い始めれば、今の現役世代からすると、非正規の方が4割だとか、今は共働き世帯が家族の形としては増えているとか、いろんな環境が変わってきていますので、その時代に合わせた制度設計が必要だということだと思います。必ずしも制度創設前にこうだったので今は恵まれているといった議論ではなく、更にそこから進んだ環境の変化に応じて制度を見直していく、後ろ向きではなくて前を向いた制度改革といった視点が必要です。そうした観点からは、繰り返しになりますが、年末のとりまとめの際で宿題になっている部分、先ほどデフレ下のマクロ経済スライドの話をしましたけれども、併せて第3号被保険者なども今の共働きの社会への移行の中においては時代遅れの制度になってきていますので、そうした点の議論を進めていくことが大事ではないかと思います。
○神野部会長 それでは、お待たせしました。諸星委員、どうぞ。
○諸星委員 済みません。所用があって間もなく退席させていただきますので先に意見を言わせていただきますと、正直私は現場の者なので余り数字的なことはわからないのですが、やはり何か世代間格差が独り歩きをするようなデータが公表されて来てしまっているので、どうしても現場では、若い人たちがだから年金は信頼ならないと、そのときに説明をするときには、やはりこういった手元にある資料が年金に格差があるけれどもという説明しかできないわけです。でも、ここにまとめていただいたように、年金の歴史や賦課方式である経緯というものがあるという前提をきちんと伝えなければいけないなと思ってはいます。
ただ、説明するときに、資料2-1の5ページ、平成21年財政検証の基本ケースということで、最終的には1980年生まれ以降の人は2.3倍ですよと。ここの前提を見たときに、果たして私は現場で説明できるかなと疑問に思いました。ここではいわゆる計算の前提が夫は20~60歳まで厚生年金に加入し、標準報酬が42.9万円。現在、非正規雇用が増えているということもございまして、果たして本当にこれだけの額での持続でいいのか、そうして妻はその間専業主婦とありますが、先ほど適用拡大して女性の雇用を促進しようと言いつつ、専業主婦で設定をするという前提での計算方法もおかしいのではないかと思います。2.3倍だからいいですねということではなくて、若い人たちに世代間格差があるけれども、こういった部分でこうですよともう少し説明ができるような、もしかしたら統計学的には同じ条件でなければだめだというのはあると思うのですけれども、先ほど武田委員もおっしゃっていましたが、世代に応じて、あるいは時代が変化している、それに対応したデータをいただいて見える化をして説明をするということが私はこれからは必要ではないかなと思っております。
すみません、帰らなければならず先にお話しさせて頂き申し訳ございませんでした。
○神野部会長 あといかがでしょうか。では、挙がった順で菊池委員からいいですか。
○菊池委員 前提をどう置くかという適切さについては私は評価能力はないのですが、いずれにしても、今、出てきましたように、財政的な意味で給付と負担がどうなるかというのをきちんと見える化していくというか、情報をどんどん開示していくというのは前提として必要なのだろうと思います。
ただ、そういう財政的な意味での損得論というのも大事ですけれども、より重要なのは、制度を支える人々の意識というか、社会保障の前提は連帯だという言い方をよくしますけれども、そういった制度を支える社会的な基盤が維持されていれば、現役世代がたとえ受けられる方が平均的に少なくても、損であってもそこに一定の社会的な納得というか、公平感を損なわないという基盤が維持されていれば、それは制度として成り立っていくのだと思うわけです。
その際、年金制度の中で議論するのは勿論大事で、そのために年金部会がありますけれども、ちょっと踏み越えますけれども、制度を支える一人ひとりの市民、国民というのは生活をしているわけで、その生活は年金だけではなくて、いろんなサービスを受けながら、それが広い意味での社会保障なのかもしれませんし、更に税制とかそこまで広がるかもしれませんが、そういった生活に関わるさまざまな制度全体として自分たちの生活がどう支えられているのかという、それらを含めた納得感というか、公平感というものが非常に重要ではないかと思うわけです。
そう考えていくと、今回の改正もそうですけれども、原点はどこだったかというと、いわゆる一体改革で検討会の報告書でも今回は全世代型社会保障ということで、高齢世代に偏らないというはっきりしたメッセージを出して、世代間公平というものに取り組んでいくということであったはずなのですけれども、問題は全体として今行おうとしていることが、勿論その線で実現しようとしている部分もありますけれども、例えば子育ても含めて3法案が国会に出ましたけれども、一方では、全体としてどういうメッセージが伝わっているかというと、これは年金だけではないですけれども、例えば70歳前半の一部負担金が結局1割に据え置かれたとか、受診時定額負担も後期高齢者の方にもう少し負担していただこうという含意があったと思いますけれども、実現していないとか、こども手当と言われていたものもなくなったとか、全体としてのメッセージは、全世代型というよりはまだまだ世代間の公平というものに踏み込んでいないではないかという意識が、そういうメッセージが発せられているのではないかと感じるところです。そこが問題なのではないかと思います。
あと小さい論点2つですけれども、事業主負担については法学的にも余り議論されてこなかったのですけれども、賃金であるという考え方も少数ながらありますが、受益者負担であったり原因者負担であったり、定説がないというのが正直なところですので、賃金であるということを前提に議論するというのは無理があるという。だからといって労働者の側から全く事業主負担は関係ないということも言えないでしょうけれども、賃金性というのを前提にして議論するのは乱暴だなという気がいたします。
最後の参考資料でありましたが、社会保険のとらえ方という資料がありましたけれども、これは何年も前から議論があると思うのですけれども、社会保険と税を並べて、所得再分配は税でやるのだという議論がありますけれども、日本の社会保険というものをずっと成り立ちのところから見ていくと、社会保険というのはそもそも所得再分配が組み込まれているものなので、そこで言われている提案というのはもう従来型の社会保険とは違うものをつくるのだと、そういう主張だと思うのですけれども、非常に議論を混乱させると思います。
以上です。
○神野部会長 では、逢見委員、どうぞ。
○逢見委員 世代間の公平性は社会保障制度の根幹に関わる論点の1つだと思います。ここで社会保障とは何かという話をしてもしようがないのでしょうけれども、やはりリスクの分担、分散ということになるわけです。リスクを負った人に給付を行い、リスクを負わなかった人には給付はしないという助け合いが社会保障の本質でありますから、それを損得で払った方がいいのか悪いのかという議論を持ち込むというのはふさわしくないのだろうと思います。
世代間の公平という議論をする場合には、果たして年金だけに限って世代間の公平を議論すべきなのかというと、違うのではないかと思います。例えば教育費は親の世代から子の世代に移転するわけですけれども、これは歴史的に見れば、最初はずっと親の負担が多かったわけですけれども、徐々に公的負担が増やされていって、教育そのものを社会的にみんなで面倒を見ようという方向になりました。それを特定世代で区切れば、昔の世代では子どもの教育費を私的扶養として負担していた一方、ある時期になればその負担は減っているということがあるわけです。年金も同じような部分があって、社会経済における様々な便益を総合して見ないと世代間でうまく公平がとれているかどうかという判断はできないのだろうと思います。
そういう意味で年金の議論をする場合は、むしろ制度の持続可能性の観点からきちんと議論していくということで、その中で負担と給付のバランスをどう取っていくかが重要ではないか。この部会でもそういう観点から議論してきたと思いますので、余り損得論に引っ張られるような議論に与するというのは当部会としては余りすべきではないのではないか。ただし、世の中の誤解があるものについてはきちんとした説明が必要だと思っております。
○神野部会長 お待たせしました。駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 この世代間の格差の情報というのが余り十分な解説がなくて提供されていて、若い世代から非常に年金や社会保障全体に対する不満とか不安をよく聞きます。今、もう何人かの先生に言い尽くされたところでありますけれども、積立方式の是非です。金融市場や経済成長に対するある想定を置いた上での議論になっている、まずここが1つ。
2つ目としては、今まで議論があった移行可能性が技術的に可能なのかどうなのか。積立方式に移行できるのか、技術的にどうなのか。
3つ目としては、これによって本当に積立方式にすることによって世代間の公平性の確立ができるのか。これをするためには、先ほど御議論がありましたように、厳密にやるためには今の高齢者の年金を3分の1にするとか、今から保険料を払ってもらうとか、そのぐらいしないと厳密な意味では均衡ができないわけですから、それはできない。ただ、そういうふうに誤ってとらえられている可能性もあると思います。
4つ目としては、この考えの世代間の公平性というのは正しい公平性の考え方なのだろうかどうかというのが余りよく考えられていない。例えば医療について考えてみれば、積立金が付いてその世代のためておいたお金がなくなってしまった結果、その時代、その時代でアクセスできる医療をあきらめろというのかと。その時代、その時代で生きている均たちに対してどの程度の医療水準や生活水準を保証するのかというのも1つの社会保障の重要な役割であって、ある仮定の下で計算された積算額の損得を議論する、それが損があるか、得があるかだけで世代間の公平性を議論するのかどうなのか。この世代間の公平性とは一体何なのかというのをきちんと考えなければいけない。
こう考えていくと、こういうデータを全く無視するというわけではないと思うのですけれども、1つの参考になるのは、将来世代に現在のツケを回すというわけにはいかないでしょうと、現在の世代、余裕のある高齢者はやはりある部分の負担をちゃんと受け取るべきだろうと。どうすれば高齢化を乗り越えられるのだろうかというというインプリケーションが出てくるわけでありまして、そのために必要な、しかも実現できる改革は何なのかと、今回の年金改革や一体改革はそれに応えているのかどうなのかということを考えなければいけないのかなと思います。
以上です。
○神野部会長 山口委員、おまたせしました。
○山口委員 積立方式の問題点については、いろんな先生がすでにご指摘になったところでして、二重の負担であるとかリスクヘッジ機能に欠けるとかといったようなことを私も申し上げようかと思っていたのですけれども、重複しますのでそれはやめておきます。むしろ先ほど小塩先生がおっしゃった点、すなわち積立方式の問題点がいろいろあって現実的な選択肢にならないとしても、そのことが必ずしも現行方式を積極的に正当化する根拠足り得ないという点に関しては私も全く同感でございます。賦課方式の現行システムで若い人の負担が重すぎるということが、非常に先行きに対する不透明感というか閉塞感につながっており、若い世代に対して際限のないツケ回しをしているといったよう感じがあると思うのです。実は前回の財政検証でも、先ほど諸星委員はモデルの設定がよくないとおっしゃいましたけれども、あのモデルで計算しても所得代替率で50%をかろうじてクリアーした状態だったわけです。経済前提と出生率の2要素についてそれぞれ高位、中位、低位の3つのケースに組合せによる9つのケースによる財政検証結果のうち、実に4つのケースでは50%を割り込んだ形でのマクロ経済スライドの継続的な調整が必要になっていたわけです。ですから、2004年改正について、今後もこの形でうまくいくかどうかというのは、ある意味でぎりぎりのところだったとも言えるわけです。
仮に目標の所得代替率50%維持が難しいとなったときに、今、18.3%で引き上げを止めることになっている保険料を更に引き上げるのか、それとも給付水準を更に引き下げるのかといったところが全然議論されていないために、もしかしたら保険料が上がるかもしれないといったような不安もあるわけです。閉塞感を打開していくためにも、保険料は本当に18.3%を上限としてそれ以上は引き上げないで、今後は給付の方で調整していく、所得代替率が50%を切っても更に引き下げるといったことをはっきりと打ち出していくことによって、際限のないツケ回しみたいな感じから脱却し、将来不安を打ち消し、すっきりさせていくような見識を持つべきではないかと私も感じております。そういう意味で、先ほど小塩先生がおっしゃった点は非常に同感するところは多かったと感じた次第です。
○神野部会長 では、お待たせしました。
○山本委員(代理:大井川) 全体の所感めいたことで恐縮ですが、今回初めて世代間の給付と負担の関係について具体的に意見を伺うという話になったわけですが、そもそも一体改革の議論が一昨年の暮れから始まりまして、その間の議論の経過につきましては、いわゆる国民負担率そのものの議論が一体改革の議論の中でどこまで行われてきたかといいますと、私の記憶ではほとんど行われていなかったと認識しております。国民負担率というのは税と保険料になるわけなのですけれども、その保険料については、当然事業主負担が半分入るわけですが、これに対する議論の深みがほとんどなかったと思います。当然、世代間格差をどうするのかという議論の下でスタートしたわけですけれども、保険料の議論については最終的にそのような状況であったということです。
今回、具体的に事業主負担の考え方についても論点に挙げられておりますが、先ほど来お話がありましたように、事業主負担は一体どこに帰着するのかという問題は確かにいろいろな学説がありまして結論めいたものがないというのは認識しております。ただ、今回の一体改革では社会保障に子育てが加わり、4経費に変わったわけですが、社会保障というものをどこの範囲まで見るのかというところの議論が残っているのではないかと思います。社会保険方式をとる医療、年金、介護の部分で企業の事業主負担があるというのは是としたとしても、それ以外の社会保障分野について事業主負担がどこまで入るべきなのかという議論がどこかで抜け落ちているのではないかということでございます。
新年金制度については、来年の国会へ法案を提出する予定ということで今後議論が始まるかと思いますが、個人事業主として国民年金に加入している者が所得比例年金に統合された場合に、事業主負担の部分はどうなるのか、こういった議論がいずれ始まると思いますので、そのときまでに社会保障各制度における事業主負担の範囲や在り方というものをもう一回考えていただきたいというメッセージを、この本部会というよりは政府に対して申し上げておきたいと思います。
済みません、時間を超過しました。
○神野部会長 ほかにありますか。
どうぞ。
○佐藤委員 皆さん言われたことはもっともなことで、社会保障なり年金制度はどういうものかということを国民の皆さんにきちっと理解してもらうこと、特に若い人たちに説明することが大事です。ただ、難しいのは、その説明をしても、やはり長期の視点で物事を考えられない状況に若い人たちが置かれているため、確かに自分の老後のことを考えれば負担した方がいいと思うけれども、それができていない状況とか、短期的に判断せざるを得ない状況とか、制度に信頼を置けないと思っているということがあると思うので、説明すれば理解してもらえるのかというと、今非常に難しい状況にあるかなと思いますので、その辺の改善というのは併せてやっていく必要があるかなと思っています。
○神野部会長 あとよろしいですか。
柿木委員、どうぞ。
○柿木委員 済みません、最後に一言だけ。
世代間格差の問題も大きいと思います。ただ、我々が考えるに、白紙の状態から制度をつくるわけではないので非常に難しいと思いますが、まず取り組んでいただきたいのは、とにかく法案に織り込まれた制度改正を踏まえて、新しい人口推計とか経済前提を置いた結果、年金財政はどうなるのかということを今回早く国民の前に提示する必要があると思う。前に私も申し上げたように、各政策提案が年金財政に与える影響を試算するということは非常に重要ではないかと思うので、それを是非お願いしたいと思う。
○神野部会長 ありがとうございます。
あと特になければ、済みません、時間をオーバーしておりますので、とりあえずこの議論についてはこの辺で閉めさせていただければと思います。
私、ドイツ財政学をやっているのですが、そもそも社会保険というのはビスマルクが最初につくったときの背景になるのはドイツの財政学があって、ドイツ財政学の考え方から言うと、そもそも公共財、つまり、割り当て可能ではない治安とか軍事的なサービスをやっていたのに加えて、なぜ割り当て可能な教育サービスとかをやるのかというと、鎮圧主義から予防主義。社会を統合していくためにあらかじめ予防するという視点で社会をまとめていけば経済もうまくいくし、社会もうまく回っていくという発想方法なので、財政学で利益といったときには、功利主義的な利益、個々の人に与えられる利益ではなく、社会契約説的な利益、社会を契約してまとめていくための利益と考えます。
したがって、通常、スウェーデンなど、フランスでもそうだと思いますが、日本のように年金というのは世代間の闘争の資金だと思っているのではなく、ソリダリティー、連帯の資金なので、それがないと制度は成り立たないというような感想を持っております。事務局では、今日はさまざま貴重な御意見が出ておりますが、ただ、まだいずれにしてもそれぞれご興味のある視点から各種突っ込んでいただいたということなので、これを踏まえながらまた御検討をしていただければと思います。
特に事務連絡がないですか。それでは、少し私の運営その他で皆様に御迷惑をおかけしたことを重ねてお詫び申し上げまして、本日の年金部会を終了したいと思います。
どうもありがとうございました。
(了)
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