2014年9月18日 第24回社会保障審議会年金部会議事録
年金局
○日時
平成26年9月18日(木)10:30~12:30
○場所
農林水産省共済組合南青山会館 新館2階 大会議室
(東京都港区南青山5-7-10)
○出席者
神 野 直 彦 (部会長)
小 塩 隆 士 (委員)
柿 木 厚 司 (委員(代理出席))
菊 池 馨 実 (委員)
駒 村 康 平 (委員)
小 室 淑 恵 (委員)
武 田 洋 子 (委員)
出 口 治 明 (委員)
花 井 圭 子 (委員)
原 佳 奈 子 (委員)
諸 星 裕 美 (委員)
山 口 修 (委員)
山 本 たい 人 (委員)
米 澤 康 博(委員)
○議題
短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大について
○議事
○神野部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第24回を数えますが「年金部会」を開催したいと存じます。
秋がささやかに感じられるころとなりましたが、皆さんにはむしろお忙しい時候になったのではないかと思います。万障繰り合わせて御参集いただきましたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。
本日の委員の出欠状況でございますけれども、植田委員、小山委員、佐藤委員、藤沢委員、宮本委員、森戸委員、吉野委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。また、駒村委員からは少しおくれて御出席との御連絡を頂戴しております。
少し欠席の方が多いのですけれども、御出席いただきました委員の方々が3分の1を超えておりますので、会議は成立しているということを御報告させていただければと思います。
それでは、議事に入ります前に、事務局のほうから出席者の御紹介と資料確認などをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○総務課長 それでは、事務局からの出席者でございますが、お手元の座席図のとおりとなってございますので紹介にかえさせていただきます。
次に、お手元の資料について確認をさせていただきます。
本日は、配付資料といたしまして、資料「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」、それから、参考資料といたしまして「今後の検討の進め方」、前回8月20日にお配りをした資料、この2点の配付をさせていただいております。
お手元の資料、不足等ございましたら事務局にお申しつけください。よろしく御確認いただきたいと存じます。
○神野部会長 ありがとうございました。
お手元の資料を御確認いただければと思います、よろしいでございましょうか。
それでは、ここで大変恐縮でございますが、カメラの皆様方には御退出をお願いしたいと思います。御協力いただければと思います、よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○神野部会長 それでは、議事のほうに入らせていただきますけれども、お手元に第24回の議事次第が行っているかと思います。
本日は、議事といたしまして「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大について」という議事を準備させていただいております。
前回御了承いただきました方針に従いまして、課題を一つ一つ検討していくということで、まずこの問題を取り上げたいと考えておりますが、事務局から御説明いただければと思います。
よろしくお願いいたします。
○年金課長 年金課長の度山でございます。
お手元の資料「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」という資料、全部で57ページございまして、議論の時間を十分にとりたいと思いますので、30分を目標で御説明をさせていただきたいと思います。
ちょっと早口の説明になるかと思いますが、御容赦いただきたいと思います。
まず、幾つかの課題がある中で、本日この課題をとりあげましたのは、多様な働き方ということと密接に関連したテーマでもございますし、この問題が例えば現役の期間を延ばすという問題であったりとか、女性の活躍促進の関係の130万円の壁の問題であったりとか、いろいろなテーマと裏でつながるようなテーマである、1つの鍵になる問題ということで、まず最初のほうで御議論いただくのがよかろうということで、テーマを設定させていただいた次第でございます。
たくさんの論点がございます関係で目次をつくりましたけれども、平成28年10月施行で、どういうことが決まっているかということについて、まず最初に確認をさせていただきたいと思います。
ページをめくりまして、3ページ目に平成28年10月の短時間労働者への適用拡大の枠組みで決まっていることをまとめてございます。現在、おおむね通常の労働者の4分の3の時間を働いている人が被用者保険の適用対象となっておりますのを、ここに書きました5つの要件を満たした短時間労働者、およそ見込みで25万人ぐらいと思っておりますけれども、これに対して適用拡大するということが決まっております。
さらに、本日御議論いただく意味としましては、これで終わりということではなくて、3年以内に検討を加えて、その結果に基づき、必要な措置を講ずるという検討規定が法律に明記してございますので、先々これをどういうふうにしていくべきかということを、議論しなければいけないということでございます。
4ページ目に、関連する条文を抜粋いたしました。
最初の「厚生年金保険法」の12条(適用除外)という項目がございますが、この前に適用事業所に使用されるものは被保険者にするという規定があって、ただ、そのうち、ここに掲げるカテゴリーに入る人に関しては被保険者にしないという、抜く対象として、例えば所定労働時間が20時間未満であるとか、1年以上使用されることが見込まれないとか、報酬が幾ら未満であるとか、除外の要件という形で法律上は規定をしてございます。
それから、適用事業所は、後ほど御説明いたしますが、法人だと従業員規模問わずと、個人ですと5人以上という規定になってございますが、今回適用拡大をするのは、これも後ほど議論になりますけれども、従業員501人以上の企業ということになってございますので、適用事業所ではあるけれども500人以下の企業を除くということが、このパートの適用拡大を決めた機能強化法の附則第17条に、当分の間の経過措置という形で規定をされております。 さて、今申し上げましたそれぞれの要件について、どういうどのような経過や意味合いでこのように決まったかということを5ページ、6ページ、7ページにまとめてございます。
まず、20時間以上あるという要件に関しては、20時間以上働いているということで、被用者性を判断しているということであり、20時間という基準自体は、雇用保険法の短時間労働者の適用基準ということで採用されているもので、これを参考にとったということでございます。
賃金月額8.8万円以上ということでございますが、これは正社員とのバランス、あるいは国民年金の給付負担とのバランスということを考慮されて、この水準に設定されたという経過になってございます。
詳しく申し上げますと、当初、政府案では7.8万円以上という形で提案をしておりましたけれども、三党協議において、幾つかの要素を考慮したわけでございますが、これは後ほど御説明いたしますが、国民年金の定額の保険料とのバランスというところもかなり考慮され、この8.8万円という設定になっているということです。
3番目の勤務時間が1年以上見込まれるという要件ですが、現在の被用者保険の適用に関して言うと、実はこのメルクマールは2カ月以内の期間を定めて使用される者を適用除外にするという定めになってございます。これも後ほど御説明いたしますが、短時間労働者の場合はかなり出入りが激しいということに伴う事務負担を考慮して、少し長めの期間を設定したという説明になってございます。
4番目の「学生を適用対象外とすること」ということでございますけれども、学生さんはずっと学生さんではないということなので、学生さんの期間が終われば就労をメインに生活をされるということで、どこまでこの厚生年金という長期の所得保障を当てはめるかというときに、必ずしも高くないということで適用除外にしたという説明になっております。ただ、現在の適用基準であります、フルタイマーの労働者に関して言うと、学生の身分を持っているいないにかかわらず適用となっているということは申し添えたいと思います。
5番目の規模501人以上の企業ということでございますけれども、これは中小企業に対するいろいろな事務負担もございますし、経済的な負担というものの激変緩和的な意味合いで設けられたと承知をしております。
なお、従業員規模501人以上と説明しておりますが、実は事業所規模のカウントは、現在の基準で適用対象になる労働者の数、平たく言うと正社員の数と理解していただければと思いますが、それで行うということになってございます。したがって、例えば正社員の方が200人、パートの方が300人で合わせて500人という企業に関して言うと、今回の適用対象からは外れるという整理になっているということを申し添えたいと思います。
最後に6番目、前回も御質問が出ましたけれども、施行時期を平成28年10月にするということに関しましては、消費税の引き上げが平成26年4月、平成27年10月と決まっておりまして、その事業主の事務負担ですとか、適用拡大に伴う雇用に及ぼす影響なども考慮をして、これも三党合意の決めという形で設定をされたということです。
ただ、一体改革で大変大きな改正をやっておりますので、それを一つ一つ施行に移しているということと、当然社会保険の適用でございますので事業主への周知とか、例えば事業主側のシステム対応の準備とか、そういうこともございますので、一定の期間は必要だという事情はございます。
以上、枠組みを確認させていただいてきましたが、この法律が通って以降、適用拡大についてどのような議論が行われてきたか、これもその都度御報告をしてまいりましたが、改めて振り返させていただきたいと思います。
9ページ目でございますけれども、まず平成25年8月にまとめられました社会保障制度改革国民会議の報告書では「適用拡大の努力を重ねることは三党の協議の中でも共有されており、法律の附則にも明記された適用拡大の検討を引き続き継続していくことが重要」というまとめになってございます。
これを受けて立法されました、いわゆる社会保障改革プログラム法では「短時間労働者に対する厚生年金保険及び健康保険の適用範囲の拡大」と、拡大という方向が明記された形で検討を加えて、その結果に基づいて必要な措置を講ずるということが定められている。すなわち、方向性はプログラム法にしっかりと書かれていると御理解をいただければと思います。
10ページ目でございますが、これを受けて6月に公表いたしましたオプション試算(平成26年財政検証)で、被用者保険の適用拡大について、20時間というものをベースにして220万人の適用拡大を行った場合と、この部会での御議論を踏まえまして、一定の賃金収入がある全ての被用者に適用拡大を進めた場合と、2つのケースでオプションの試算をやってございます。どちらの試算からも言えることは、ある程度、この被用者保険の適用拡大というものを通じて、年金の水準の確保も図られるということが確認をできたことだと思います。
対象がどうなるかということに関しましては、11ページに財政検証のときに御説明したのと同じ図をつけておりますので御参照ください。
12ページの短時間労働者に対する適用拡大の問題は、国会でも随分質疑が行われているところでございます。
今年の通常国会でも、総理大臣の答弁あるいは厚生労働大臣の答弁で適用拡大についての検討を進めるということ、あるいは5月に行われました委員会での田村前厚生労働大臣の答弁の中では、施行後3年を目途に検討するということになっているけれども、検討自体はもうスピードアップして早目に着手をしたいという方針が述べられております。
13ページの政府の経済財政運営方針等におきましても、いわゆる骨太方針の2014、日本再興戦略の中でも、被用者保険の適用拡大の検討を着実に進めることが、明記されているという状況にございます。
以上のような状況を踏まえて、どのようなことが適用拡大に関して論点になるか、すなわち、きょうどのような視点から御議論をいただきたいかということに関しては、以下のように整理ができるのではないかと考えてございます。
まず、最初の○でございますけれども、適用拡大の方向性は既に確認をされているということでございますので、先ほど御説明いたしました5つの要件そのものについて、一つ一つについて、そのあり方をどのように考えるかということがまず1つの論点になります。
もう一つは、平成28年10月という形で政治的な決定がされたわけでございますけれども、そういう枠組みを前提としながらも、現時点において、この問題をさらに進めるための方策があるやなしやと、このようなことについて、御議論を賜ればということでございます。
以下、そのための材料を準備をさせていただきました。
15ページをおめくりいただきますと「適用拡大の5要件について」それぞれの要件ごとに、資料の準備をしてございます。
まず、最初の要件の週の「労働時間が20時間以上ある」ということに関しましては、雇用保険に倣ったということを御説明で申し上げましたが、16ページには具体的な雇用保険の適用の基準というものが書かれてございます。
2つ目の○の適用除外の項目の中で「1週間の所定労働時間が20時間未満である者」を雇用保険の対象から外しているということですが、これに倣った形で整理をしたということでございます。
17ページでございますけれども、実は雇用保険も、昔は通常の労働者のおおむね4分の3以上、あるいは年収に対する要件というものがございましたが、平成元年、平成6年とかけてこの4分の3という基準を撤廃いたしまして、恐らくこれは44時間労働を前提にしてその半分の22時間、あるいは40時間労働を前提にしてその半分の20時間という形で、要件となる時間の拡大を進めてまいりました。
後ほど議論になりますけれども、年収の要件は雇用保険においてはもうなくなってございますし、雇用期間の見込みも昔は1年以上だったのが、現在は31日以上と短くなってきてございます。
一方、被用者保険のほうは、4分の3という目安を昭和55年に内かんという形で示してございましたが、これが変わらずに今日まで来ております。一度、平成19年には通常国会に法案が提出されたわけでございますけれども、廃案となって、今回の一体改革でようやくこの適用拡大ということに踏み切った、こういう流れになってきてございます。
18ページ、昨年の年金部会で参考になる外国の事例ということで御報告させていただいたときにも御説明いたしましたけれども、先進諸国の年金制度においては、基本的には稼働収入があればそこから保険料をいただくという形で、時間によって適用か非適用かというものを分ける例というのは、余り見られないということがございます。
ただ、一方で、年金の制度の建て付けで言いますと、基本的には稼働収入のある人だけが年金の被保険者になるという構成をとっている国が多くございますので、我が国のように、国民年金という全国民に提供される器の準備をしてそれに入れているというところは、ちょっと扱いは違う面があるとも考えられます。
19ページ、これも以前御説明させていただきましたが、かつてドイツには週15時間という目安がございましたが、それは現在では撤廃されているという状況です。
ただ、20ページにありますとおり、実際にパート労働者ということで短時間労働に従事していらっしゃる方のデータで見ますと、1号被保険者で見ても、3号被保険者で見ても、20時間という基準を設けても過半の方はそれに該当することになるということで、ほかの要件がなければ、かなり広い範囲をカバーできるということは言えようかと思います。
21ページ、特別部会あるいは本年金部会でも、この問題は何度か議論をされておりますけれども、20時間というのは1つのベースになるのではないかという考え方、それから時間に関係なく適用していくべきではないか、両方の立場から御意見をいただいております。
次に、22ページ、月額8.8万円の基準でございますが、先ほど8.8万円というものが設けられた背景に、国民年金の保険料とのバランスという問題がございますので、この点について丁寧に解説をさせていただきたいと思います。
保険料も、給付水準もこの後変わっていきますので、現時点での計算ということになりますけれども、国民年金の世帯は現在およそ1万5,000円程度の保険料を支払って満額になりますと、基礎年金の給付が6.4万円という構成になっているということです。
この1万5,000円という額と同じ額を、被用者御本人が御負担をしていらっしゃる所得の水準はどれくらいかということで計算しますと、およそ標準報酬が17万円の世帯ということになります。ただ、労使折半ということでございますので、同額を事業主の方が保険料を負担されて、トータルとしては3万円ぐらいの保険料を負担していただいて、給付としては6.4万円の基礎年金の給付に上乗せして、3.6万円の報酬比例の給付が保障されるという形になってございます。
それでは、労使合わせて保険料が1.5万円ぐらいになるポイントはどこにあるかということで、逆算をしていきますと、ちょうど今回適用拡大の下限になります、標準報酬8.8万円というラインがほぼ相当するという額でございます。この額を納めていただきますと、基礎年金の給付に比べて先ほどよりは小さくなりますが、報酬比例の給付がつくという構造になってございます。
財政検証のときに、オプション2では標準報酬5.8万円という設定で計算をしております。これで計算をいたしますと、労使合わせた保険料がおよそ1万円程度ということで、1.5万円の国民年金の保険料よりは低くなり、それに対して、給付のほうは基礎年金が満額保障されるのに加えて、厚生年金ですので、報酬比例の給付が相応につくという形となります。この逆転がどうかということが議論になっているということで、政治の場でもそういう議論がございましたし、後々の適用拡大を議論いたしました特別部会においても、そういう御意見が関係者の中からあったということでございます。
ただ、23ページを見ていただきますと、短時間労働者の収入の分布を見てみますと、週20~30時間で働く1号被保険者あるいは3号被保険者の実際の収入というものをパートタイムの実態調査から集計をしてまとめてみますと、俗に言うところの100万円くらいのところに山が来ていて、月額8.8万円を12倍しますと106万円になりますので、山の右側にになります。今回の106万円という基準は、一番山の高いこの90~100万円のところはカバーできていないということになります。
この問題がよく問題になりますのは、この山のところでいわゆる就業調整をしているという問題でございます。「103万円の壁」あるいは「130万円の壁」と指摘される問題ですが、この問題は個人にとって社会保険料の負担が発生するかしないかということで、一旦年収がダウンするとか、手取りがダウンするという問題として理解をされております。しかし、同時にこれは事業主にとっても、社会保険料負担が発生するかしないかというポイントで起こっている、事業主と労働者両方の保険料の回避行動が作用して、部分均衡点という形でこの就業調整の山ができているとの理解が必要な問題ではないかと考えております。
逆に言うと、この問題を解決しようと思うと、いわゆる被用者保険の適用のランク、基準を下げていって、どういう働き方をしても同じ負担の構造に入るという形での処理が必要ではないかと考えられるわけでございます。
25ページ、103万円の壁というのは、実際には存在するかしないかというのはいろいろ議論のあるところですが、現実の就業調整においては、非課税限度額の103万円というのが強く意識をされているということでございますので、今回の適用基準の拡大で106万円というところに新しくラインができることになりますが、103万円と非常に近いところのラインができることとなります。このため、就業調整の問題に関する解決という意味では、今回の措置は限定的であるという評価はできるかと思います。
26ページ、今度は別の観点からこの考察をしてございますけれども、いわゆる「最低賃金水準との比較」ということでございます。
仮に、週20時間の労働というものを前提にした場合に、理論的な最低の賃金額というのは幾らかということを計算してみました。平成26年以降、新しく適用される予定の最低賃金額、月額単価が高いところで888円、低いところで677円ということですので、一番低いところで月額の賃金というものを考えてみますとちょうど5万8,000円くらいになるということでございまして、現在の適用拡大の基準額8.8万円から言うと、3万円ぐらい差があります。逆に言うと最低賃金で働いても適用しようということになると、5万8,000円のラインまで適用基準を下げてくるということが、必要になるということが言えるかと思います。
それから、冒頭御説明をいたしました、国民年金の第1号保険料との関係ということで言いますと、実はこれまでの年金部会の議論の中でも、この点についてどう考えるかというところに関しては、議論のあったところでございます。
28ページに、それを図示してございますけれども、国民年金の世帯は所得の水準を問わずに、皆さんに同じように適用するという構成でございますが、厚生年金の場合には報酬に応じて応能負担をしていただくという構成になってございます。一方で、基礎年金の額は皆さん同じということで、実際にはそれぞれの国民年金、厚生年金の制度から頭割りの基礎年金の拠出金というのを被保険者の数に応じて、基礎年金の勘定に振り込んでいただいて、それで現在のお年寄りに対する基礎年金給付を賄うという構図になっております。
ところが、もともと厚生年金のファンドに御負担をいただく保険料の額というのは所得に応じて違うということですし、議論のあるところですが、第3号被保険者、被扶養者の分も被用者年金から負担するという構成になってございます。真ん中のところに書いてございますけれども、厚生年金の制度の中では被保険者1人当たり一定額を拠出するという基礎年金の拠出金の負担を、報酬比例の保険料で負担するということで、制度の中で、同世代の中である程度再分配を働かせる仕組みになっており、その分、低所得者に優しい仕組みになっているということでございます。こういう構造の中では、国民年金との逆転というのがあっても不思議はないのではないかと、そういう考え方も論理的には成り立ち得るのではなかろうかということがございます。
29ページに、これまでのこの要件についてのさまざまな意見が書いてございますけれども、原則として収入のベースというのは、広くとっておくべきだという意見が強いように思いますが、ただ、逆転問題に対する不公平感というのも存在するというのがこれまでの議論であったかと思います。
3つ目の要件、勤務期間が1年以上という要件でございますけれども、この要件が設けられた理由として、出入りが激しいということを申し上げましたが、例えば、離職した人の勤続期間のデータ、あるいは入職や離職率、両方の指標でとってみても、確かにパート労働者の方は、かなり通常の労働者に比べると勤続期間の短い人が多くて、入職・離職の割合も高いということになってございます。
一方、31ページ、実際にはどういう契約期間の定めになっているかということに関しては、大体の人が契約期間の定めがあり、1回当たりの契約期間は半年とか、1年以内の方が大半であるという状況でございます。ただ、実際にはこの半年とか1年という形で定められた期間の契約更新がされるということがかなり一般的に行われていて、ほとんどの方が、複数回の更新がされて働いていらっしゃる現状にあります。
その結果、32ページになりますけれども、実際に短時間労働者として従事している方に、何年その事業所で働いていらっしゃいますかということを尋ねた調査で言うと、1年未満という方は非常に少なくて2割くらい、8割程度の方は1年以上働いているという実態にございます。
今回の適用拡大に関して、このような実態を踏まえてどういう取り扱いがなされるかということでございますが、具体的な業務の取り扱い要領は、これから関係者の皆さんともよく協議をしながらつくっていくということになりますが、雇用保険法が今、現在31日以上雇用されることが見込まれない者を適用除外にするという形で定められておりまして、文面的に言うとこの31日を1年に変えると、今回の適用拡大の要件になるわけでございます。
実際に、31日以上雇用されることが見込まれない者というのは、どういう形で運用されているかと言いますと、30日以内の契約だったら一律排除するかというとそうではなくて、たとえ、雇用期間が31日未満であったとしても、例えば、契約の更新がないということが雇用契約書に明示されているということでありますとか、あるいは実際にその事業所において契約更新された人がいないとか、そういう事情でない限りにおいては31日以上雇用されるというふうに見込まれると取り扱って、被保険者にするという取り扱いがなされております。いわゆる反復更新に対する現在の雇用契約の取り扱いや、各種の判例というものを踏まえて、このような運用がされているということになりますが、被用者保険に関しましては、これと同じような考え方で運用していくということに、法律上は予定されているということを申し上げたいと思います。
そうなりますと、先ほど見ていただいたように、1回当たりの契約期間が1年以内の方が大半なのですが、契約期間が1年ないからといって、それで適用が排除されるということではなく、実際の事業所における例えば、実際の雇用契約上の更新の定めだとか、あるいは契約方針の実態というものも踏まえて判断されると、こういうふうに御理解をいただければと思います。
さて、この点について34ページになりますが、これまでの意見といたしましては、もちろん、通常の被保険者の要件に合わせるべきという御意見はあるわけでございますけれども、ただ、実際にはかなり出入りの激しい短時間労働者の実態に合わせて、ある程度事務負担というものも考慮すべきではなかろうかという御意見があって、このような決定になっているということでございます。
それから、4つ目の要件、学生を適用除外にするということでございます。
35ページになりますが、これも確認をしておきますが、まず現行の適用基準である「通常の労働者の4分の3以上」に該当する者に関しましては、学生であっても第2号被保険者となるということです。
例えば、昼間は会社勤めをして夜学に通っておられる方ですとか、あるいは例えば、会社の命を受けて雇用関係を存続した中で、留学のような形で大学院などに在籍していらっしゃる方というのが該当するだろうと思います。実際のデータを見ても、32万人ぐらいは本人が学生だと言って、第2号被保険者になっている方が実際にいらっしゃるということです。ただ、大半の方は就業の前段階としての学習ということで、学生をやっていらっしゃるということで、252万人は第1号被保険者、結婚していらっしゃる方がいて、第3号被保険者になっていらっしゃる方が11万人ぐらいいらっしゃるという実情でございます。
一方で、今回の適用拡大により新たに適用範囲となる範囲と、通常の労働者の4分の3未満であって、週20時間以上のカテゴリーに属する方に関しましては、学生さんであると適用除外になるということでございます。
なお、学生さんに関しましては、大半の方が第1号被保険者になっているわけでございますけれども、一定所得以下の方に関しては申請によって保険料の納付が猶予され、勤め始めてから納められる能力があれば納めてくださいという「学生納付特例制度」が設けられて、学生さんがこの制度から排除されないように措置がされているということでございます。
同じように、雇用保険法ではどういうふうに扱われているかといいますと、雇用保険法の適用除外の規定の中に、学生さんというカテゴリーがございます。ただ、これも学生さんだからといって機械的に適用されるわけではございませんで、業務取扱要領の中には、基本的には「昼間学生」、昼間に学生をやっていらっしゃる方に関しては被保険者とならないと、一方で夜学に通っていらっしゃって、昼間にお仕事をしていらっしゃるような方に関しては、学生さんであっても雇用保険に適用するという扱いがなされております。今回被用者保険の適用拡大に当たって、どういう範囲に学生さんのカテゴリーを入れるかというのは、具体的には厚生労働省令で定めるということに法律上はなってございますけれども、これに準じた扱いをするのが妥当なのではないかと、考えているところでございます。
そういうことを前提に、37ページ以降、学生さんを適用除外にするという考え方に関して、どのようにこれから考えていけばよいかということがございます。
まず、37ページでございますけれども、進学率が上がっていて、10%くらいの方はさらに大学院に進学をされるということで、非常に学生期間自体が長期化をしているということと、38ページになりますけれども、特に下のほうのグラフでございますが、特に学生さんの親世代の経済環境が非常に厳しくなっているということがあって、学生さんで常時アルバイトに従事される人の割合というのが、非常に高くなってきているということがございます。
ただ、一方で学生さんがどれくらいアルバイトに従事をしているかということに関しましては、民間機関の調査ではございますけれども、20時間以下という方が非常に多いという状況でございますので、今回の適用は20時間を前提に考えるのだとすれば、学生さんという要件でなくても、この時間要件で対象外になる方は多いものと考えているところでございます。
39ページ、学生要件についてのこれまでの御意見ということでございますが、冒頭申し上げたように、学生さんは基本的には就業の準備段階だからということで、対象の外に置くという整理をしておりますが、もう一つ、やはり学生さんのアルバイトというのは非常に短期のアルバイトが多かったりとか、あるいは出入りが多かったりとか、そういう事務の煩雑な学生さんの適用というものを、事業所サイドがやや嫌ったという側面も実際にはあるようでございます。その一方で、学生さんを適用除外にするというのは、実務上煩雑だという御意見もあったということでございます。あるいは今の「4分の3」の基準においては学生だからということで対象外にしていない、そういうこともどう考えるかという論点があろうかと考えてございます。
40ページ、最後に規模501人以上の強制適用という問題でございますけれども、政治的な意思決定でこのような決定になってございますが、40ページのデータを見ていただきますとわかるように、従業員規模501人以上と500人以下で比べますと、500人以下の事業所に勤められる方が圧倒的に多いということは、まず押さえておかなければいけないと思います。
41ページ、42ページは現在の雇用動向についてデータを拾ってまいりましたけれども、だんだんいろいろな業界で人手不足感が強くなってきてございますけれども、特に中小企業について人手不足感が非常に強くなってきているということと、近年、中小企業の雇用動向の中でもやはり処遇の改善とか、あるいは人員をふやさなければいけないと、その場合には常用雇用者を増やすと、社会保険料負担が発生しても、常用雇用労働者を増やすという傾向も出てきているところでございます。
43ページ、44ページ、業種別に見てございますけれども、短時間労働者が比較的多いと言われる業種について44ページ、特にパート労働者の不足感というものも非常に強くなっているということも言えるかと思います。
また、ちょっと切り口が変わりますが、45ページ、被用者年金の一元化で同じ基準で公共団体も適用になるわけでございますけれども、職員規模500人以下の市区町村というのも、全国的には、数で言いますと7割ぐらい、職員数の比重で言いますと4分の1ぐらいあるということがございます。
46ページ、企業規模要件について、これまでどういう意見があったかということでございますけれども、原則的にはやはり勤務先において適用の有無が分かれるというのはおかしいという意見がありながらも、激変緩和の観点から段階的に拡大していくとか、そういう考え方はあるかなという考え方が述べられているというところでございます。
ここまで時間も超過しておりますので駆け足になりますが、47ページ、48ページ、49ページには、ここまで御説明したことを踏まえまして、それぞれの要件の検討に当たっての論点を我々のほうで提示をさせていただきたいと思います。
まず、週の所定労働時間が20時間以上という要件に関しては、被用者にふさわしい保障のメルクマールとしての労働時間の要件というものをどう考えるか、外国では労働時間の要件が設けられていない、一方で、我が国には非被用者の国民年金の体系を別に有しているということの関係でどう考えるか。あるいはかなり「20時間以上」の要件でもカバーされる範囲は広いことを踏まえて、どう考えるかということ。
賃金水準の8.8万円ということで考えますと、就業調整の問題解決に有効な賃金水準の設定というものをどう考えるかということ、先ほど御説明したように、最低賃金との水準で適用対象から外れてしまうという矛盾をどう考えるか、先ほど御説明した国民年金保険料との関係をどう考えるか。
勤務期間1年以上の見込みということに関しましては、短期間で入離職を繰り返す割合がやはり通常の労働者より高いということに伴う事務負担という論点と、一方で1年以上の見込みでも、契約更新見込みを考慮した適用をいたしますと、実際にはかなりカバーできるということを踏まえてどう考えるか。
学生さんを適用除外にするということに関しましては、学生の就労実態とか、ほかの20時間以上とか、1年以上見込みという要件との関係をどう考えるかと、あるいはこれから議論していくことになりますから、例えば、就労期間を延ばすということですとか、進学が高まっているとか、学生期間が長くなっているなどの現状を、就労期間の延長など他の改革との関係でどういうふうに考えるかということもあろうかと思います。
49ページ、501人規模の要件で言いますと、中小企業で勤務される方がまず圧倒的に多いということ、それから、その中小企業ではかなり人手不足感が強くて、処遇の改善に踏み出す中小企業も出現しているということ、それから、冒頭御説明したように被保険者の適用除外の規定で定められておりますので、500人以下の企業の方は被保険者になれないという法律構成になっていますので、加入の道が閉ざされているということになりますが、このことについてどう考えるかという論点があろうかと思います。
それから、時間超過していて申しわけないのですが、あわせて50ページで適用事業所について幾つかデータを準備しておりますので、簡単に触れさせていただきたいと思います。
法人の事業所に関しましては、ペーパーカンパニーでなければ強制適用になります。個人事業所で法律上16業種が定められていて、常時5人以上使用される者がいる事業所に関しましても強制適用ということになります。ただ、この16業種以外の事業所でありますと、個人事業所の場合には強制適用にならないということでございますし、それから、5人未満の個人事業所に関しましては強制適用の外にあるということです。
52ページに、強制適用の対象事業所、順々に業種とか規模とかを広げてきているわけですが、その経過をまとめております。昭和60年の改正で基礎年金をつくったときにこの整理がされているということです。適用対象外の事業所が存在するということに関しましては、昭和60年の改正のときから議論があるわけでございますけれども、主に雇用者を把握するという実務的な問題とか、あるいは社会保険の適用は結構事務的にも煩雑でございますので、事務遂行能力などの観点から強制適用という対象にしないで、ただ、54ページにございますように、対象外にされた事業所について使用される者の半分以上の同意を得て認可を受ければ、適用事業所にできるという任意包括適用制度というものをつくっておりまして、これによってカバーするという考え方でやってきているところでございます
55ページ、厚生年金保険の適用の状況は以前も御説明させていただいたと思いますけれども、56ページにございますように、実は法人の事業所であってもパーフェクトに適用できていないのではないかという問題が指摘されてございまして、ペーパーカンパニー等々もありますので会社登記のデータとは一致はしないまでも、実際に給料が支払われてそこから所得税が源泉徴収されているという、その義務者との比較でいっても数に違いがあるということで、やはり、適用が漏れている法人がまだ少なからずあるのではないかということで、55ページのデータに戻っていただきましても「適用調査対象事業所数」というので、まだ適用されていませんが、今適用対象になるのではないかということで事務所が調査に入っている事業所の数ですが、30万~40万件近くあるということと、57ページにありますように、この適正な適用に向けては、特に本年中に国税庁から厚生労働省に稼働中の法人の情報をいただきまして、それと突き合わせてきちんと適用をやっていきたいということを進めているというのが現状であるということを御報告させていただきます。
ちょっと時間を超過して、申しわけございませんでした。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
適用拡大問題をめぐる現状と課題について、要領よく説明をしていただきました。
それで、お手元の資料で言いますと、論点として現行の枠組みを前提にした場合、しない場合と大きく分けた上で、具体的なフェーズで論点を5つばかり提起をしていただいておりますので、これらの論点を念頭に置きながら御質問・御意見を頂戴したいと思います。
何か、御質問ございましたら承っておきますが、なければ菊池委員が30分で御退室と伺っておりますので、口火を切っていただければと、いかがでしょうか。
○菊池委員 ありがとうございます。あと30分くらいで退室させていただかなければならないので、発言の機会をくださいましてありがとうございます。
私から、まず述べさせていただきますが、短時間労働者に対する厚生年金のさらなる適用拡大については、報酬比例年金受給者の拡大を通じて、低所得・低年金者の年金額の引き上げにつながる。この部会でも議論してまいりました世代間公平の視点と、世代内公平の視点の2つがあるとすれば、ここは世代内公平の視点かと思いますが、そういう観点からして、私としても、この拡大の方向性には賛成であります。
前回改正が平成28年10月施行であるとしても、準備期間が必要なことも勘案すれば、現段階でさらなる改正を行うということには賛成であります。
まず、1,000円でも1時間でも働いていれば被保険者にすべきという議論があり得るかもしれませんが、これに関しましては厚生年金の被保険者は「適用事業所に使用される者」と規定されておりまして、いわゆる使用関係の存在が前提となっています。これは労働基準法などにおける「労働者」とは異なるわけでして、賃金等で少なくとも生活の一定部分を営んでいる、あるいは営んでいたという状態に着目して、老齢、障害、遺族といった要保障事故の発生に際して一定の生活保障を行うということを目的とした制度であります。ですので、当然に一定以上の賃金の稼得というものが、被保険者性を認めるための前提となると言わざるを得ないと思います。
その上で、きょうはこの5つの論点が出ましたので、これらについてどう考えるか簡単にコメントさせていただきます。まず20時間要件に関しては、どこに線引きするのが妥当かというのは難しいのですが、雇用保険の下限であるということからして、差し当たりは妥当ではないかと考えております。資料の20ページにありますように、どこまで拡大をするかによって、いわゆる3号問題の部分的な解消策につながるという面もあるかと思います。
それから、月額8万8千円の基準ですが、これは27ページの花井委員、駒村委員の御発言に私も全く賛成でありまして、これは3号被保険者の問題、議論においても同じような議論が出てきますが、国民年金の1号被保険者との公平論というのは、必ずしも当を得ないのであって、直接の利害関係者は同じ2号被保険者、その報酬比例年金の連帯の輪の中にいるのはやはりこの2号ですので、その2号被保険者間での公平論として論ずべきものではないかと思います。その意味では、この8万8千円を一定程度引き下げるというのも妥当であると考えます。
ただ、そういう視点で見ますと、この問題は一方で標準報酬上限額の引き上げのあり方と、セットで見ていく必要もあろうかと思っているところであります。ですから、標準報酬上限額引き上げについても議論するのであれば、やはりここの部分で、セットで議論するという視点をぜひ持っていただきたいということです。
それから、1年以上見込みについてですが、保険料徴収の方法が異なりますので、雇用保険に合わせることは必ずしも容易ではないかと思いますが、やはり老後あるいは障害の際の所得保障という観点から、自らの所得記録に基づく給付を受けられるというのはメリットが大きいわけでして、1年以上見込みというのは非正規等の労働者に対するハードルがかなり高いので、短縮すべきではないかと思います。
昨今の雇用法制や判例法理によって、継続雇用の見込みという部分で、できるだけそういう期待を持たせないという方向での労働形態の実態に移行しているかとも思いますので、その点もちょっと留意する必要があるかと思います。
現行法上も、臨時に使用される者は適用除外となっており、日々雇用ですとか、2カ月以内の雇用ですとか、季節雇用ですとか、臨時的雇用ですとか、そういった規定が参考になるかと思います。実務上の制約も踏まえた上で、2カ月、4カ月、6カ月、その辺が1つの1つの落としどころというか、基準になり得るのかなと思います。
学生についてですが、どうも私、大学にいる者からすると、学生というものをちょっとステレオタイプに捉えていらっしゃるなという部分があって、若い二十歳前後の学生あるいは古典的な夜学に通っておられる社会人というイメージなのでしょうか。例えば、私の研究室には社会人で40代になって、ある程度キャリアのある方で充電するために一旦会社をやめて、大学院で蓄積をしようという方がおられます。手に職があるというか、専門性のある方なので、転職は多分容易なのですけれども、ただ、その間、その専門性を生かして少し働くとか、そういう方もいらっしゃって、そういう様々な状況におられる学生がいる中で一律除外ということについては、それでいいのかなという疑問を持つところであります。障害年金なども考えますと、そこは何か工夫できないかなということはやや感じるところです。
最後に、企業規模要件ですが、これも私は縮小すべきものだと思っていますが、お話の中で任意包括適用の問題が出ましたけれども、私はこれについてはやや消極的です。
というのは、資料にもあった法人形態をとらない個人経営の事業所も、この任意包括適用の対象であるということと対比させて言いますと、個人経営の事業所の任意包括適用の趣旨というのは、1つは事業の特殊性ということ、実は何が特殊なのかというのはよくわからないのですが、これが1つと、もう一つは保険技術的な適用の困難性ということがその趣旨だとされています。
ここで問題になっている企業規模要件には、今言った2つの趣旨は当てはまらないということです。端的に言えば、事業主の経済的、事務的な負担ということがその主な理由ではないかと。そうすると、本来的には企業規模にかかわらず、この保険制度の利益を享受させるということが制度目的にかなうということからすれば、負担を負わないことを選択する事業主の許にある労働者に適用されないのはやはり不公平ではないかということで、突破口として任意包括適用からというのはわからなくはないのですけれども、筋としては、やはり一律に適用すべきだと思います。
長くなって申しわけありませんが、以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
包括的、体系的に御意見を頂戴いたしまして、本当にありがとうございます。
ほか、出口委員、どうぞ。
○出口委員 丁寧に説明していただいて、どういう筋道で今の制度ができあがっているかはよくわかったのですが、議論をするときには幹と枝葉の問題があると思いますので、まず、私の考える幹の部分からお話をさせていただこうと思います。説明があったように被用者保険の適用拡大というのは、この国の課題である働き方の問題とすごくリンクしているので、これを一番最初に取り上げるということは、すごく意味があると思います。
それから、この資料で12ページですか、大臣が国会で答えられていると思いますが、せっかくシミュレーションをやったので、そのシミュレーションの結果をもとに議論をきちんとしたいということをはっきり言われている。あれだけ労力をかけたものを使わなくては意味がないと、それはそのとおりだと思います。
そういうふうに考えたときには、年金は何かと言えばサステイナブルで、持続可能で市民のためになるということがやはり根本ではないかと。そうであれば、この10ページの試算にあるように、この表を見たら明らかなように、「適用拡大(2)」というのが所得代替率の変化が全て大きいわけですから、進めるべき方向はこのシミュレーションで明らかであって、この「適用拡大(2)」をこれから目指していくことは、数字的に明確に答えは出ているように思います。ですから、やるべきことは「適用拡大(2)」をできるだけ早く実地するというゴールを目指して、どういうことをやっていけば一番合理的で早いのかということを議論することに尽きるのではないかと、個人的にはそういうふうに考えています。
こういうふうに考えると、国民年金というのは極論すれば個人事業主のものであって、働く人は全て厚生年金の世界に入っていくと、それが多分ゴールの目指すところであろうと。ここをしっかり押さえる、また平成28年10月の問題は政治的な問題があって、個人的には何でもっと早くできないのかという気持ちはあるのですけれども、そこは置いておいて、その後にやるべきことはこの10ページの表を見たら、どなたが見ても進んで行く方向は明らかだというのが、幹で申し上げたいことです。
それから、枝のほうですが、この5つの議論で申し上げたら、まず労働時間の問題ですけれども、これからの働き方を考えたら、まさにホワイトカラーエグゼンプションがそうであるように、時間で労働を管理するという考え方がこれから正しいのだろうかと、やはり多様な働き方を考えて、成果で見ていくというのがこれからの多様な働き方の基本であると考えたら、まず時間という条件が本当に必要だろうかという問題があって、確かに20時間以上でも過半がカバーされているという現実はありますが、それ以前に時間という要件がこれからの働き方の中で意味があるのだろうかどうかということをもう少し考えたほうがいいのではないかと。だから極論ですけれども、個人的には時間の要件は要らないと思います。
その次の8.8万円の問題ですけれども、これは理屈の上では性格が違うので、国民年金との比較は意味がないというのはそのとおりだと思います。でも、そんなことを国民がわかるはずがない。
1.5万円払って、6.4万円しかもらえないのにという話は必ず出てきますから、これはそういう法律論ではなくて、国民年金が個人事業主だけに将来は縮小されると考えたら、ここは税金を投入しても私は構わないと思いますので、むしろ22ページの絵にありますけれども、この一番右の5.8万円をベースにして、ここに国民年金を損にならないように、見えるように国民年金のほうを変えればいいと、そういうふうに考えるべきではないかと思います。それが8.8万円の議論です。
その次ですが、勤務期間についても、これも考えれば時間の問題と同じですから、これは不要ではないかと私は思いますし、学生についても一々学生かどうかをチェックする問題もありますので、これも不要ではないか。
規模についても、まさにこれからの働き方の根底にダイバーシティがあり、多様であるということを考えればこれも不要ではないかと思います。今の御説明を聞いていますと、この5要件にはそれぞれ根拠があって、いろいろ御苦労されてこういう5要件をつくられたということはわかりますけれども、その結果が25万人では誰も喜ばないのではないか。
そういうことを考えれば、諸外国のようにこのような要件は必要ないと、確かに国民年金があるという例外はありますけれども、やはり年金というのはどんな国がやっても、どんな人間がやっても同じような制度ですから、基本的に諸外国にないものは大体必要がないのだと、それぐらいの割り切りで考えるべきかと。むしろ将来の年金、前にも申し上げましたけれども、シンプルでわかりやすくて、サステイナブルな年金というのが我々の目指すところであれば、そういうふうに見える制度をつくらなければと。ですから、できるだけこれからの議論については、世界ではどうなっているかということを必ず資料につけていただいて、我々自身も議論をするときに、世界にないものはいろいろな過去の経緯があるとしても、やはり変なものだと、そういうふうな認識を持って議論したほうがいいのではないか。
以上、枝の部分になりますが、感じたことを申し上げました。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
問題点を構造的に整理していただいた上で、これはまた体系的に御議論を頂戴いたしました。
ほか、いかがでございましょうか。
小室委員、どうぞ。
○小室委員 きょうは少し早目に出させていただきますので、申し上げたいと思います。
今、出口委員のおっしゃっていることにすごく共感しました。その上で、幾つか申し上げたいと思うことがあります。
まず、やはり平成28年なのだと、平成28年なので変わらないよということなのですが、私が企業をコンサルしていると、人手不足感に関して、資料の中にもありましたけれども、企業の認識は大幅に変わってきているように感じています。
当時、非常に強い傾向があってこの時期でなくてはとおっしゃった企業さんも、そういうことは言っていられなくなってきているという現状があるはずなのです。ですので、もう一押しできるタイミングだと思うのです。決まったものはやらないと、という考え方でやっていたら柔軟に動くことはできないですので、それで海外に人が逃げてしまいますよということを考えても、もう一度、本当にそれでいいのですかということを、特に小売だとか飲食だとかの人手不足感は激しいので、今回の適用の企業において状況はすごく変わっているということをもとに、しつこいのですけれども、もう一度時期について検討するということを言いたいと思います。
それから、もう一つなのですけれども、全体的に5つの観点の中でどれも要らないと思うのですが、時間だとか金額だとかというものは全部というと横暴なので、1点、やはり2点目の8.8万円以上というところが、結局は御説明いただいたように不公平感の根拠もないですし、これは5.8万円程度にするべきではないかと思います。実際に、そこのところは大きく作用してくるのではないかと思っております。地方において、それだと最低賃金で8.8万円を切ってしまいますので、むしろそれが不公平ではないかと感じます。
それから、3点目の1年以上というところですけれども、1年以上はやはり長過ぎます。正社員でも1年以上雇用するのをためらうぐらいとても悩むのです。人を雇用するときには本当に思い切って採用しますので、ましてや短時間労働者を雇用するときに1年以上などということを最初から決めて雇用したりなどということは非常に難しいですし、途中で1年以上という気持ちになってきたときに切りかえるというのは、それこそ煩雑なのです。
とにかく、もっともっとシンプルにしていかなくては、企業にとって、いろいろなごちゃごちゃした条件があってそれをやるのが、一番負担なのです。日本人はそういう面倒なことができてしまうからいっぱいつくってきてしまったと思うのですけれども、逆に言うと、海外で人の入れかわりも激しくてこんなことは絶対できないはずですので、もっともっとシンプルにやっているはずなのです。できるからやってしまっている。でも、そのために多くの人が残業していますから、そういった負担を考えたら、きっとそれはすごいコストなのです。
ですので、面倒なことはできない、シンプルでなくては企業に負担という、そういう考えでつくっていくというのも、直接的には見えないけれども、逆に企業のコストを下げるということにつながりますので、とにかくシンプルにするということを考えてみてください。
それから、さまざまな事務負担ということをおっしゃられていたのですけれども、それも同時に検討していくことが大事だと思うのです。こういった短時間労働者に適用ということを考えていくと単位が小さくなっていくので、事務負担が相対的に大きくなってしまうわけですから、そういったさまざまな事務負担を下げるにはどうしたらいいかという大きな議論も一緒にしていかないと割に合わないという議論が必ず出てきてしまうのではないかと思います。
4点目の学生というところなのですけれども、これは3点目の1年以上ともちょっとかかわるのですが、今、私が学生にボランティアでいろいろかかわっているので感じることは、親の都合で休学して働く学生が大変多いということです。
半年だけ払えないの、ごめんねと親から言われて、半年間仕事をして、そしてまた学生に戻ってということを在学中に3回したといった女の子もいました。そういった中で1年という形になるとそれがとりこぼされてしまいますし、学生像というのが、今それぐらいの状態になっているという認識が、先ほど菊池委員からも学生像が見えていないのではないかということがありましたが、本当にそういう状況なのです。
そういった親の貧困みたいなものは子供に今ダイレクトに来ていますので、学生においても労働をせざるを得ないという状況。それから、子供がいる学生もとてもふえています。大学院生などにもかなりいらっしゃいます。そういった子供がいる夫婦にとって、非常に働くことというのが必然になっていますので、たとえ昼間学習をしていても、そういう人も適用の範囲ということを考えていかなくてはいけないのではないかと思っています。
そして、5つ目の501人以上というところですけれども、これも任意でなどというのは、本当にこれは国民の不信感につながるというか、そんなものはやはり善意ではない雇用主に雇用されてしまった場合には、どうにも救ってもらえないのですねという話になってしまいますので、ある程度、ほぼ全ての企業といったら何なのですが、適用になるような方向で考えていかなくてはならないのではないかと思います。
いろいろ細かく根拠が必要で、そういった根拠を一生懸命つくって決めていくのだと思うのですけれども、大枠で考えると国学も私学も女子学生には大量の税金が投入されて勉強しているわけですので、その勉強をして教育をした女性がしっかり仕事でアウトプットを出せないというのは、それこそが税金の無駄なのです。大枠でいうと、もうずっと多大な無駄がなされているという状況ですので、そういうもっと大きな枠で見ていただいて、推し進めていただいたらいいのではないかと考えます。
とにかく、スピードに関してはもう一回念を押したいと思います。よろしくお願いします。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
諸星委員、先に行きましょうか。
○諸星委員 私は、一応、実務家という立場でこちらの部会では発言させていただきます。
先ほど皆様からありましたように、平成28年10月は遅いのではないかということが前回の部会でもお話があったと思いますけれども、適用拡大が一度頓挫した経緯もあって、周知や準備も含め、やはり平成28年10月からの開始については、基本的には私は妥当ではないかと思っています。
実は現場では、今回の適用拡大の対応については、皆さんがおっしゃるように20時間とそもそも切る必要がないのではないかというのですが、それを切るような契約に移行させたり、501人規模ということがあると、分社化を検討することも実際見聞きしていたのですが、昨年の労働契約法の改正や先ほど小室委員がおっしゃっていたように人手不足もあって、いい意味での方向転換をしています。
ただ、これは一部大手で見られることであり、やはり2年後に同様の今のような経済状況で果たしてあるのかとか、雇用環境がこのまま良好でいるのか。もしかしたらオリンピックの影響はあるかもしれませんけれども、それは一部首都圏だけへの影響であって、やはり地方には格差が残るので、それを一律全て条件なしというのは、今後どうなのかと考えます。
それから、これは年金局のほうの確認なのですが、実は健康保険のことも議論したほうがいいのではないかという前回の議論がありまして、ここが年金部会であることは確かなのですが、健康保険の被扶養者の年収の範囲というのは、60歳未満であれば基本的に130万未満ですね。働く側としては3号被保険者のままでいたいという思いがまだ強いと思われます。もう1つ3号は2号被保険者の被扶養者という厚年法には明文があるわけです。そうすると、130万未満の働き方をもし御本人がどうしても希望したいといった場合、一方で適用拡大による今回の加入要件があるので、社保に加入しなければならないはずなのに、現場では実際は106万と130万の2つの基準ができるということになるのです。
そうすると、本人も事業主も本来は選択できないはずなのに、では、短時間、130万の健康保険の扶養のままでいて、3号のままでいようということを選択してしまうことを実際は否定できないのです。
実は、この種の届け出というのは事業主が責任を持ってやりますので、また、短時間被保険者の数が今回の資料にもあるように、どの業界でも非常に増加をしてきております。今、4年に1回の調査をやっておりますけれども、全てを正しく確認することは実務上無理なのです。
今後はマイナンバー制が導入されますので、それが運用も含めしっかりと浸透して、それぞれの所得の把握が間違いないということになれば別ですけれども、今のこの健康保険の被扶養者の範囲というのはどうなるかわかりませんが、このままでは103万、106万、130万、税法上のもう一つに141万とあるのですが、そういったものの女性が働くときの悩める選択をふやすだけになってしまうのではないかと思っております。
年金部会というのは、本当に限られた場面ではあるのですが、やはり健保とか税金、それから先ほどからあったように多様な働き方の雇用全てにかかわることなので、厚労省内部でも関係部署や各省庁と横の連携をこれからさらに図ってもらって、この部会の中でもこういう情報がありますということをしていただいたうえで、平成28年10月以降の適用拡大の次の段階をどう議論していくかという視点が必要ではないかと思っております。
それから、社労士としての現場では、以前から事業主に対しては法律でこう決まっていますよ、だから、社会保険の適用になるのですよということを言うのではなくて、働く労働者に安心感を生み、よい人材が確保されますと。ここの資料の中でもそれをおっしゃっていたようですが、それで実際加入を進めています。
ただ、大手企業とは異なり、やはり中小・零細企業では社保加入ができたとしても、最低賃金が今、毎年上がっているのに加え、社保の負担はかなり重いと言うのが本音です。払わないというより、先ほどわざと入らないというお話もありましたけれども、払えないというところが実際なのです。
私がこのような発言をしたら、そのような会社の事業主は経営する資格がないと反論されそうなのですけれども、実際、多くの雇用という場を提供しているのも中小・零細企業であることを、やはり御理解していただきたいと思います。
もう一つは、働く側の意識の問題も実はあります。将来、年金がもらえないとか、今の高齢者は特だなどと言う若い世代もまだまだ多い。これは教育にかかわってくると思うのですけれども、実は、先日も女性の再就職支援のセミナーを担当させてもらったときに、出席者の人たちにどんな働き方をしたいですかと手を挙げてもらったら、9割以上が短時間勤務の働き方を最初から希望しているのです。これはいろいろな事情があると思います。
そこで働き方を当初調整しても、厚生年金に加入する働き方を目指すようにそのセミナーの中で健保や年金の仕組みをちゃんと説明するのです。理解をしていただくと、全く終わったあとに意識が変わっているのです。最初はそうだけれども、次にはステップアップするような働き方を目指したいですということがあるのです。ですから、やはり適用拡大をこれからどんどん進めるという上では、事業主ももちろんそうですけれども、働く側に対する正しい理解もあわせて行うことが必要ではないかと私は痛感しております。
もう1点心配なことは、先ほどの払えないという話もいたしましたが、適用拡大を中小・零細企業に極端に急に進めてしまうと今度は必ず滞納事業所を生みます。
滞納事業所がふえるとどうなるかと言えば、本人は給与から保険料を引かれているのだけれども、実際は年金の保険料の収入が国には入らないわけです。将来、その人たちが年金をもらう年になったときに、さあ、私は負担をしていました、くださいと言ったときに、財源で見れば、実は保険料として入っていないという現実があるのです。
そうすると、やはり最終的には国民が負担するという形になりますから、適用拡大はみんな全部取っ払ってしまえというのは、ある意味、最終極論の話であって、そこに行く過程まではやはり実態をきちんと見て、いろいろな側面で事業主の教育も必要だし、働く側の意識の持ち方をちょっと変えるなどということも必要で、あわせて私は適用拡大を進めていくべきではないかと思います。
ちなみに1年は区切るなというのですけれども、実は短時間の勤務者というのは現場採用が多いのです。現場採用が多いと手続するのが本社だったりするのです。そうすると、現場で入れました、連絡しないうちにやめました。入れました、入ったらすぐやめましたということがいっぱいあるのです。そうなったら、それこそ事業主の負担になりますから、やはりここは期間について、年収については先ほどの選択が広がるのでもうちょっと考えてほしいのですが、期間についてはある程度決めておくべきではないかと私は思っています。
以上です。
○神野部会長 健保を初めとする他の諸制度との関連について御質問がありましたので、あと、今までの御意見で何か事務局としてコメントしておくことがあれば補足していただければ、どうぞ。
○年金課長 まず、全体的な議論の建て付けとして、5つの要件は本来どうあるべきかということもあると思いますし、それから、今ちょっと御意見があったように、では、現状を踏まえてどういうステップを踏むか。
特に、紙にも書かせていただきましたが、政治的な決定を前提とした上で、そうはいっても一歩前に踏み出すためにどういう知恵があるか。そういう観点からの議論をお願いしたいと思いますので、今までいただいた意見もそういう筋に沿っていると思いますけれども、本来どうあるべきかということを踏まえる、ただ、いろいろ現実との関係で、どういうことをどう処理していかなければいけないかということを明確に述べていただけるとありがたいというのが事務局からのお願いです。
それから、今のことでコメントをいたしますが、まず、健康保険との関係では、被用者保険ということで同じ枠に入っておりますし、これまでも御意見をいただいておりますので、ここは年金部会なのですが、医療保険制度のことを議論する医療保険部会でもあわせてこの議論をしていただくことになっております。特に、医療保険については年金にはない後期高齢者医療の支援金負担の問題などもございますので、そういうこともあわせて御議論がされると予定しているということで聞いております。
あわせて、例えば税金とかというお話もございましたが、これもきょうの資料の中で準備をさせていただきましたが、13ページ、日本再興戦略の働き方に中立的な税制、社会保障制度の見直しということの中で、税制、社会保障制度、配偶者手当等について、経済財政諮問会議で年末までに総合的に検討するというアナウンスがされております。
具体的な経済財政諮問会議の日程はまだセットされてはいないようでございますけれども、当然、そちらのほうでも恐らく厚生労働大臣が出席して議論するということになると思いますし、また、その議論の状況をこちらのほうでも御紹介をして、広い視野で御議論を賜れればと考えているということだけ申し添えます。
もう一点だけ、被扶養者基準との関係の御質問があったので、そこだけ解説をしておきますと、前にも一度お答えしたかと思いますけれども、被保険者の順序としてはまず、被用者保険の適用を受ける第2号被保険者がまず第一にあって、第2号被保険者にならない者のうち被扶養の人が第3号で、それ以外の人が1号という順番で人がはまっていきますので、そういう意味でいうと、106万円以上の年収があって今回の適用基準に当てはまる人は、130万円未満であっても、まず第2号被保険者の適用になるという、制度的にはそういう建て付けになっていることをご理解いただければと思います。
○神野部会長 ありがとうございます。
山本委員、御退室ですか。
○山本委員 すぐ戻ります。
○神野部会長 では、その次にお願いいたします。
では、山口委員、お願いいたします。
○山口委員 この話は、現実的にワークしていかないと意味がないわけです。ですから、方向として、理想としてどうあるべきかという議論はもちろんあると思いますが、実際に適用拡大が現実の姿として進んでいくということが大切だと思います。
そういう意味では、現場のいろいろな議論というのは私もよく承知はしていないのですけれども、少なくとも雇用保険でできていることは、こちらの社会保険でもできるのではないだろうかと考えるわけです。
そういう意味では、17ページにございますような過去の経緯を見ますと、雇用保険については徐々に適用拡大をされてきて、今日では所定労働時間20時間以上、雇用期間31日以上、年収の要件は廃止されているということで、非常に幅広い適用範囲になっております。したがいまして、そういったことを参考にして現実的に進めていくということが重要ではないかと思います。
また、諸外国でも被用者は収入の多寡にかかわらず、所得比例年金の適用対象になるというケースが多いわけですから、そういう国際標準みたいなものと、やはり整合していくということも大切だと思います。
そう考えていきますと、労働時間については今の雇用保険と同じように20時間以上ということで良いか思いますし、標準報酬の要件については廃止してはどうかと申し上げたいのですけれども、一挙にそこまでいくのは無理だとすれば、オプション試算に出ていますような5万8,000円といったところで進めていくということがあるのかと思います。
そうすると、国民年金との関係で、低い負担で大きな給付が受給できるということになるわけですけれども、先ほども御意見がございましたように、働いている人は基本的に被用者年金の適用になるというのが本来の姿でありますから、そういう形に近づけていくことが大事だと思います。積極的にその方向に誘導していくのだというスタンスを明確にしていくということで問題ないと思います。つまり、被用者年金に入るプラスがあって、加入者の側でメリットが感じられて、被用者年金に入ることが有利だからそのほうがいいよねということが対象となる人達に、よく理解されればされるほど、現実の適用関係もそちらの方向にシフトして拡大していけるのではないかと考えているわけです。
それから、勤務期間の問題についても、これは雇用保険に合わせて31日以上にできればいいと思いますけれども、少なくとも今の厚生年金で2カ月以上となっているものをさらに広げて1年以上にするというのは、いかがなものか、広げることについて意味がよくわからない。ですから、最低でも2カ月以上でよいのではないかと思います。
それから、学生についてはいろいろなケースがあるのですけれども、現在でも学生の特例制度の適用を受けている人が多いわけでして、雇用保険でも昼間学生は適用除外とされているということから考えると、私は少なくとも昼間学生は適用対象外でいいと考えております。
それから、事業所の規模の要件ですけれども、これは最終的には政治的に決まったということなのでしょうが、先ほど来出ていますように、今後、人手不足が深刻化していく中で、中小・零細企業であっても、この社会保険の適用といった基本的な処遇制度が整っていないようなところには人は集まらないと思いますので、現下の雇用情勢も考えた場合、まず第一歩として、全ての適用事業所を対象にするとしてはどうかと思っております。
以上が私の意見なのですが、ただ、先ほど来出ていますように、すでに決まっている適用拡大がようやく平成28年10月からスタートするということで、今やっている議論はそれから後の話をやっているわけですので、非常に迂遠なところであります。
そういう意味では、やはり平成28年10月をできるだけ早く前倒しできるようにするということが必要なのですけれども、これは先ほどは、私もちょっと実態はよくわからないのでどの程度効果があるかわからないのですが、その準備ということも含めて申し上げるとすれば、今は強制適用になっていない今回の平成28年10月で実施する適用拡大の対象者について、あらかじめ、今の任意包括適用制度に似たような任意の適用制度を設けて、新たに適用対象となる被保険者の過半数の同意等があれば、これはもう適用拡大を早目に実施できるといったような道を切り開くとともに、この適用拡大についての周知徹底を図るためにさまざまな啓発的な活動を行っていくといったことが必要ではないかと考えております。
それから、話はそれてしまうのですが、今回の資料を拝見していて、思ったことがありまして、今回の対象者の給与を把握するときに、月例の給与を12倍して年収にされています。確かに実態を考えれば、これは正しい認識だと思います。非正規のこの人たちはボーナスが普通ない訳です。したがって、12倍だけするというのは、これはこれで正しいのですが、実は過去の厚生年金の改正の沿革を考えてみますと、現在の給付乗率、5.481ですか、それは以前の7.125の乗率を1.3で割ってつくられているわけです。そのときの議論は、給与以外にボーナスが3割相当ありますから、保険料をボーナスからもとるので、給付もボーナスも含めて計算して、そのかわり乗率を下げますという議論だったわけです。
私は今、こういう低所得者の典型になるのかも知れませんが、こういう非正規の人たち、あるいは正規の方でも低所得の方については、結果的に年収ベースに変えたことによって給付減額になっているのではないかということをあらためてこれを見て感じていまして、そういう意味では先ほど2号の中での公平の議論が少しありましたが、2号の中での格差が拡大したことになっており、私はあの改正が果たして正しかったのかといったことを改めて今これを見て思っているような次第です。これはきょうの議論とは離れてしまうのですけれども、そういった検証も必要ではないかと感じた次第でございます。
○神野部会長 今の何かコメントはありますか。
どうぞ。
○年金課長 2000年の法律改正で今、私どもは総報酬制と言っておりますけれども、それが導入されたのですが、結局、報酬比例の給付を考えるときの従前の報酬というものを年収ベースで捉えるか月収ベースで捉えるかというところの違いで年収ベースに変えたという、そういう構造の中で起きているので、確かにボーナスが出ている割合というのは、当然、お勤めになっている企業で違うので、そのときには全体の平均が大体ボーナス込みでいうと全体の捉える報酬額が1.3倍になるということでそう設定をしているので、確かに人によってどういう影響が出たかというのは違うわけなのですが、結局、考え方としては年収ベースで報酬比例の計算をするようにしたとなっているので、そういうことを踏まえた措置になっているという解説になります。
○神野部会長 ありがとうございます。
山本委員、お願いいたします。
○山本委員 山本でございます。
いろいろ貴重な調査、分析の資料を出していただきまして、まことにありがとうございます。総論的には恐らく財政検証で高齢者、女性の就労というものが促進されない限り、その代替率は改善しないということもわかっております。
そういうことの中で、こういう短時間の非正規の方々も含めての社会保険の適用を受けていくという大筋の方向性については、まことに私も賛成をしたいと思っております。
企業経営の立場から見ますと、先ほどの健康保険料の話もございますけれども、これをとっても、例えば倒産企業などが出ますと、残った企業がその分を全て案分で割り算で負担がふえていくということもございます。要するに、保険料の納付額がふえていくわけです。これはやはり今の企業収益をかなり圧迫する1つの要因になっているということもございます。
ですから、総論では私は受給者がふえること、拡大されて国民総労働していくという形は賛成なのでございますけれども、今の企業環境のことを考えますと、そういうことの負担が今ここで1つの枠がございまして、それ以上のところという1つの設定がございますので、ある意味ではそういうことが必要かと。あるいはもし外すのであれば、こういう考え方は乱暴かもしれませんが、今の法人税減税の問題がございますけれども、例えばそういうところに、この枠外に漏れてくる中小の業者というのはいっぱいいるわけです。そういう方々に対して、それはどういう基準でどう判定するのかというのはまことによくわかりませんけれども、要するに、全ての人がこの社会保険を受益できると持っていくことがこれからの日本の経済を支えるもとになるのだという根底に立つとすれば、多少、法人税減税の部分の中小企業向けの枠外に外れてくる中小の業者、こういう方々に対して、例えば1%というのはよくないかもしれませんが、何か税制上の特典を与えることによって、むしろこの社会保険制度を適用する会社になりなさいということで、逆に全部に広げるなら、そういうところで政府として国家としての補助をしながらでも国民皆保険を進めるのだという配慮が手法上、うまくできるかどうか。そのようなことも検討してもいいのではないかと感じております。
もう一点は、先ほどの諸星さんの意見に私は大変親近感を持ったのでありますけれども、女性の就労の問題でございます。130時間、106時間という問題がございますが、今の主婦のどこかに表があったかもしれませんけれども、要するに、負担がふえるならやはり3号にとどまろうではないかというインセンティブが働くということもあり得ると思います。
今、女性が家庭にとどまるのではなくて出ていくことを奨励するのが全体の流れに沿った対策になるとしますと、このことによって、短時間労働者の枠が、適用が広がったということによって女性が就労しなさいと、でも私はいいわと言って、より少ない年収の中に自分をおさめ込んでしまうという、これまでの精神的なマインドですね。そういうものが引き続き引きずるかもしれないと考えますと、女性が労働市場に出ていくときのインセンティブを与える、そういう政策をもう一つあわせて打っていくことによって、結果として女性がどんどん前向きに仕事に就いていってくれる。就労時間もふえていくというほうが、例えば散々あれしておりますけれども、短時間正社員ですとか、そういうことをもっと労働力のマーケットを拡大することによって、将来はその道が開けていくのだ。だから、これからの日本を支えていくためには、女性もそうやって正社員になって将来は仕事をしていくのだということのきっかけになるように、こういう改善を使っていかれるような、そういう補足的手立てを、これはいろいろな方の所見も聞きながら、具体的な手法はいろいろあると思うのですが、そんなことを絡めて実際に所得代替率が50を上回っていく方向へ向けて、今回の短時間労働者に対する制度改革が寄与していくような方向で進めていかないと、ただこれだけが走ると、みんなまた家庭へ戻ってしまうということにならないように配慮する必要があるのではないか。このようなことであります。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございます。
花井委員、それから、原委員と行きます。申しわけありません。
○花井委員 意見と質問がまじるかと思いますが、よろしくお願いします。
私は、本来、働いて賃金を得て生活する雇用労働者には、基本的には原則全て適用すべきだと思っております。ただ、そうはいかない現実があることも十分承知しておりますので、ある程度の条件はやむを得ないと思います。ただし、我が国では国民皆年金、皆保険といわれております。にもかかわらず、排除する要件をどんどんふやしていくということは、このことをみずから否定するものではないかと思います。そういう考え方のもとに(1)から(5)について意見を述べたいと思います。
まず20時間につきましては、雇用保険との並びということで、やむを得ないのではないかと現時点では思います。
それから、賃金ですが、8.8万円は5.8万円に引き下げるべきだろうと思います。なぜなら、前ページにあります最低賃金の関係で、地方に行くと例えばスーパーでのパートとか、高校生や学生がアルバイトをしていますが、多くの人の時給が最賃に張りついています。極端な話、タクシーの運転手でも最賃だという方に私は出会ったこともあります。そうすると、地方に住んでいて8.8万円に届かない人は適用されないという、まさに都市と地方の格差、差別にも近いと思うのですが、そういう状態が出てくる8.8万円は引き下げるべきだと思います。
それから、勤務期間です。これも先ほど来出されています、1年というのは余りにも長い。見込みなので、本当に契約が更新されるかどうかはそのときになってみないとわからないわけです。そういう状態で働くことが本当に労働の質を高めるのかということからすれば、2カ月、4カ月、6カ月とあろうかと思いますが、短縮を目指すべきと思います。
学生については、私もなぜ除外なのか全くわかりません。先ほど、学生像を把握されていないのではないかという意見がありましたが、全く同じです。私が知っている学生は、お昼御飯に自分でおにぎりをつくって持っていくとか、寮に帰って食べるとか、本当に豊かではありません。親の賃金が下がっていたり、親の貧困ということも影響しておりますが、日中大学に行って夜働いている学生はたくさんいるわけです。それから、先ほど出されたように、40歳を過ぎてから退職して大学に行く人もいますし、いろいろなケースがある中で、学生という基準で括る理由が全く理解できません。先ほど昼間の学生を除外とするといった話も出されていましたが、それもできれば除外ではなくしてほしいと思います。
それから、規模は論外です。一定の規模ということで、いつも労働法制にしろ何にしろ、中小の猶予措置などが入るのですが、なぜたまたま中小で働いていることでさまざまな制度が適用されないのか。それで、片方では中小企業が日本経済を支えていると言っていて、生きていく上で必要な制度から排除する規定を設けるということはあってはならないことだと思います。501人という規定が政治的な決着の中で決まったということは十分承知しておりますが、少なくとも、もし仮に入れるとしても、経過期間というか、あと何年とか、そういう期間を設けていずれは引き下げるべきだと思います。
それから、質問で、規模についてですが、昨今ホールディング形態をとる会社がふえてきております。1つのホールディングの中にある個別企業がそれぞれ501人を切っていた場合、それはどういうカウントをするのかということです。
それと、2016年10月施行というのは余りにも遅い。是非、前倒ししてほしいわけですが、それがどうしても難しいということであれば、任意適用という方法もそれまでの間あるのではないかと思います。
といいますのは、後のページに出てまいりますが、54ページの任意包括適用制度で、約8万6,000の事業所が入っていて、約27万5,000人が適用を受けているということです。大変立派な事業所ではないかと思いますが、この数が、今回、対象になる25万より多いわけです。
そのように考えると、2016年10月施行までの間に何ができるかとなれば、こういう方法もあるのではないかと思います。そのために法改正が必要かどうかということでは、多分、必要かと思うのですが、そのことが可能にならないかということを強く意見として述べておきたいと思います。
以上です。
○神野部会長 今の質問事項について、お願いできますか。
○年金課長 ホールディングスの場合の適用の関係ということで、もし現場でいろいろ見ていらっしゃる方がいらっしゃれば補足いただけるとありがたいのですが、私の理解ではホールディングスというのは持ち株会社ということですので、恐らく、従業員との雇用契約関係は、それぞれのもとの実際に勤務しておられる会社との間で成立しているものと理解しております。私も幾つかのホームページを見たのですが、結構、採用など人事管理の業務はホールディングスのほうでまとめてやっていらっしゃる実例もあるようでございますが、適用の関係は事業主負担との関係もございますので、実際に勤務していらっしゃる、雇用関係のある相手方である会社との関係ということになりますので、そこの人数でカウントするというルールで適用を考えていく。そういう形になろうかと思います。
ホールディングスの関係で、雇用契約がどうだとか人事管理がどうだとかというところは多分、いろいろなパターンがあると思いますけれども、原則的な考え方としてそういうことになると御理解いただければと思います。
○神野部会長 一般的には会社の規模の問題で、従業員ではかるということに関するいろいろな問題が生じるというのが、背景に御意見があるのですね。それは大きな問題だとしても、ホールディングの問題は少し後で調べておいていただければと思います。
原委員、どうぞ。
○原委員 原です。発言させていただきます。
私のほうは47ページ以降の検討に当たっての論点というところに沿って(1)から(5)をコメントさせていただきたいと思います。
まず、先ほどから出ていますけれども、私個人の考えとしては、やはり現実的な対応で進めていくべきではないかと思っております。私も仕事柄いろいろな企業様とお話ししている関係もありますが、平成28年10月からというのは妥当だと思っております。
1つ目の週の所定労働時間を20時間以上とするということについては、雇用保険についても週20時間以上ということで、現在、短時間労働者に適用しているということから、る時間としては妥当ではないかと思っております。御説明があったかと思いますが、日本には国民年金という体系が別にありますので、一概に諸外国と同一と比べているのは少し異なるのではないかと思います。
また、そういった中で20時間というものを決めた場合に、例えば複数の企業で働くなどの就業調整があるのではないかという懸念もあるのかと思うのですけれども、新しいことを始めるといろいろな状況が出てくるというのはある程度いたしかたないと思われます。まずは雇う側と働く側の意識の問題が大きいのではないかと思います。
働く側の方にとっては、より大きな意味で社会保険に加入するメリットですとか、私も働く女性に対してセミナー等をすることがありますけれども、自分で働いて厚生年金保険料を納めて、そして、自分自身の将来の年金額を厚くしていくということを、ぜひ、情報発信あるいは社内教育等で発信していただいて、理解していただく。また、もう一つ、キャリアという部分の形成、育成という視点でも、会社にとっても戦力になるような人材を育てるということも考えても、1つのところに20時間以上というように長く働いて、複数の企業で20時間未満で働くということはないようにしていくほうがいいといった方向性を打ち出すなどより大きな積極的な意味で制度を捉えていったほうがいいと思います。
いろいろな届け出などで把握するという事務的な方法もあるのかもしれませんが、社会保険に入って働くということを理解していただきながら、週20時間以上働いている方には社会保険を適用していくということで、まずは1段階目としてはいいと思います。
それから、論点(2)の賃金が月額8.8万円以上であること。これは、先ほどからも出ていますとおり、少し引き下げの方向で動いてもいいのではないかと思います。
国民年金保険料との不公平ではないかという問題があるかと思うのですが、先ほど各委員からもお話があったとおり、国民年金というのは今の第1号被保険者の中にはいろいろな方が入っていますけれども、本来は自営業の方ということですので、働き方の違いとか所得捕捉の違いとか、単純に金額で比較できないという問題がありますので、厚生年金の中での話ということかと思いますので、そう単純に比較するということではないのかと思います。それよりも、現在、若年層などで非正規、非適用で一定時間以上働いている人への社会保険の適用というほうを優先していただいて、将来あるいは障害時、死亡時などの保障を厚くしていくというほうが重要と考えます。
論点(3)の「勤務期間が1年以上見込まれること」ということですが、これはいろいろ先ほどから意見がございますけれども、雇用保険も最初は1年以上で始まったというところもございますので、これについても最初、当初は勤務期間が1年以上見込まれる人という要件は、導入時としては妥当ではないかと思っております。
ただ、(4)の学生を適用対象外とすることについては先ほど菊池委員がおっしゃったかと思うのですが、今、大学院生という形での期間が延びているということを考慮すると、学生という肩書きというのか属性であっても実態は家庭を持ったりと、いろいろ考えられるかと思います。
公的年金は支え手である働く人への社会保険の充実というのを目指すべきところではあるのではないかと思いますので、一定の労働時間があるのであれば、学生であっても被用者であることができるというのではないかなと、そこは検討するべきではないかと思います。属性を問わず社会保険を適用して社会保障の充実をさせていくという方向性が、例えば就労調整の問題についても意識の改革ということにつながっていく。ほかのところにもつながってくのではないかと思います。
また、学生の方は短時間で資格変更が生じるから手続が煩雑ではないかというものもあったのですが、論点(3)の「勤務期間が1年以上見込まれること」というものがあれば、そこで、ある程度、一般の短時間労働者と同じ扱いになるのではないかと思います。
学生納付特例があるというのもあると思うのですが、追納しないと将来の年金額にはなりませんので、年金額は低額になってしまうということがあります。同じ世代の人が社会人として働いている一方で、自分の何か目指すべきところがあって学生としてまだ勉強しながら仕事をしているという人で、ある程度の一定時間働いているという人にとっては、社会保険が適用除外されてしまうというのは、若干、そこで区切っていいのかなと思います。現在、確かに普通の方ですと、30時間以上の学生が適用されているという現実を見ると、そこはもう一度考えていくべきではないかと思います。
それから、最後の規模の問題については、これはやはり強制適用とするという対象企業は、私は当初はそういった形で501人などで区切らざるを得ないのではないかと思っています。段階的に中小企業等に広げていくのが現実的かと思います。
どうしても事業主負担というものがあるわけで、いろいろな新しい試みがほかの制度で導入されるときには、やはり体力のある大企業から導入されていって徐々に中小企業に広がっていくというのが今まで多いように思いますので、適用対象、強制適用対象ということになると、ある程度の規模以上の企業から始めたほうがよろしいのではないかと。数年の猶予を得て広げていくというのがいいのではないかと思います。
ただ、どうしても入りたいという中小企業があれば、任意適用のような形で事業所ごとにそういう制度もあっていいのかと思っております。
それとは別に、本来適用されるべき企業の社会保険の適用逃れ、そういうことが起こらないようにしていかなければいけないということは確かかと思います。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
小塩委員、退室時間なので、いいですか。
○小塩委員 そろそろ出ないといけないので、申しわけないです。発言させていただきます。
きょうは、委員のメンバーの皆さんは大体、適用拡大でコンセンサスが得られているのではないかと思いますが、私も全く賛成いたします。
そこで、質問を2つとコメントを幾つか申し上げたいのですが、まず、オプション試算で5.8万円という下限が出ておりますが、これには何か具体的な根拠があるのでしょうか。既に説明があったかもしれないのですが、改めてお聞きします。
2つ目の質問は、特にオプション試算のうちの1,200万人ベースです。これの効果はかなり大きいのですが、適用範囲を拡大すると、恐らく、所得の低い層が入ってくると思うのです。そうすると、保険料も低いはずです。そういう人が入ると、保険料を定額でもらう状況よりもむしろ入ってくるお金が少なくなるのではないかという気がするのです。にもかかわらず、所得代替率は大きく改善するということなので、これは一体なぜなのか。その理由をお聞きしたいです。
説明によると、国民年金あるいは基礎年金の財政が非常に改善するということです。収納率の関係かとも思うのですが、もし、この試算が正しかったとしたら政策的なインプリケーションは非常にはっきりしていて、できるだけ国民年金は圧縮しましょう、削っていきましょうということになります。きょうもお話がありましたけれども、国民年金は自営業の人に限定しましょうということが非常に明確に出てくるので、特にどうして効果があるのかという根拠をお聞きしたいところです。以上が質問です。
次に、コメントなのですが、適用範囲の拡大ということで多くの方が賛成しているのですが、政治的な反論も結構あって、これまでもいろいろブレーキがかかっているということなのですが、少なくとも余り根拠のない反論に対してはやっつける用意をしておく必要があると思います。
そこで一番問題になるのは、公平感です。国民年金と厚生年金のメンバーで保険料の間で差が出てくるのではないかということですが、これはおかしな話であって、そもそも問題は国民年金のほうなのです。つまり、定額の保険料がそもそも是認できないのです。所得に応じてみんなで最低の老後の所得保障をしていきましょうというのが、本来のあるべき姿ですから、定額の保険料をお願いするというのは間違っています。特に、所得の低い層にとっては、非常にこれは大きな問題です。そういう人をできるだけ厚生年金のほうに向けましょう、それで負担を軽減しましょうということですから、負担がどうのこうのという反論はどう考えてもおかしい話であるということです。
現在の国民年金の逆進性を軽減する1つの方法としては、厚生年金の適用範囲の拡大というのは非常に重要なオプションであるということを申し上げたいと思います。
もう一つですが、そうは言っても、いろいろな反論が特に企業の方々からあると思うので、やはり先ほど山本委員もおっしゃったのですが、何か税制上の優遇措置が必要ではないかと思います。
現在、アベノミクスが奏功しているからかもしれないですけれども、雇用は改善していますが、かなりの部分が非正規の部分です。正規はあまり改善していないということです。やはり、コストは企業にとって大きな問題だと思うのです。社会保障の仕組みが企業の行動にゆがみをかけて非正規にシフトしていくというのは、日本経済の長期的な潜在成長力を考える上でも問題だと思いますので、少なくとも企業にも無理なく被用者保険を拡大すると合意していただく仕組みが必要であると思います。
最後のコメントですけれども、先ほどから適用の時期が遅すぎるという議論があったのですが、これをフルに活用しても、やはり将来にしか効果は発生しないと思うのです。既に拠出実績が乏しい人が結構いらっしゃいますので、そういう人たちが高齢化を迎えるときに、この制度がうまくいったとしてもなかなか救えないという問題があります。この適用拡大というのは重要だと思うのですが、その一方で、これから深刻になる高齢者の貧困問題というはちゃんと別の方法で手当てしていく必要があると思います。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
それでは、試算にかかわる2点の質問をお願いできますか。
○年金課長 2つの御質問にお答えします。
まず、オプション試算で5.8万円を設定したのは、1つは税制の給与所得控除が65万円あるということがあるので、課税対象所得が65万円から後は発生してくるというあたりが1つのラインかと考えたのと、それから、現実に健康保険のほうは報酬上限と報酬の下限が年金制度より広うございまして、上は100万を超えていますし、下は5.8万円という設定になっているので、そのあたりかと考えて計算を回したということでございます。
それから、1,200万ベースにやったときに所得代替率が改善するというのは、まず最初のほうで、所得の低い人が入ってくるのになぜということに関しては、確かに1号被保険者で考えるとそうなのですが、実は3号被保険者から2号被保険者の動きもあって、3号被保険者のほうは既に制度的には基礎年金の拠出金負担を払っているということがありますので、従前から大体、厚生年金の財政ということでいうと、適用拡大は大体とんとんの効果かと言っておったのが、今回の財政検証で確認できたかと思っております。
もう一つのロジックは、実はまさに先生がおっしゃったように国民年金のほうにございまして、言ってみれば、国民年金のほうから本来、厚生年金に適用されてしかるべき人が抜けるということで、純粋に賦課方式でやっていればそうでもないのかもしれませんが、国民年金は若干積立金を持ってございますので、その関係でその積立金の恩恵に浴する層が限定されるということで、全体として国民年金のほうのウエイトが高まる。その結果、1階部分は国民年金、厚生年金共通でございますので、その分、基礎年金の代替率といいますか、マクロ経済スライドの期間が短くなって、結果的には代替率計算でいうと改善するというメカニズムが働いていると理解いただければと思います。
○神野部会長 柿木委員、お願いいたします。
○柿木委員 私も企業経営の立場から一言、言わせていただきたいと思います。
今、いろいろな意見が出ましたけれども、私ども経団連の加盟企業の中でもいろいろな業種がありまして、今回、比較的条件が緩いと思われるような適用拡大についてもさまざまな意見があります。
中には以前、諸星委員がおっしゃっていましたけれども、今回の改正を受けて、従業員、特に女性従業員は適用対象から外れるような就業行動を必ずとると明言している経営者もいるわけです。ただ、全体的な方向性として、私どもの中の議論としては、やはり日本の公的年金の現状とか働き方の多様性を踏まえたときに、さらなる適用拡大は避けて通れない方向だと認識をしております。
ただ、2つほど意見と1つ質問をしたいと思います。1つは、これは何度も申し上げているのですが、さらなる適用拡大を検討する場合は、年金と、先ほど出ていましたけれども、健康保険、特に医療保険財政に対する影響もチェックするというのは欠かせないということです。事実、今回の平成28年10月改正を受けて、ある卸売関係の健康保険組合は保険料率を2.5%上げなければいけないとか、そういうことになってきているわけです。
もちろん、適用拡大を進めるという方向性は正しいわけですけれども、急激な負担の増加は企業の持続性を失わせて、結局、雇用を失わせるという結果を招くので、やはりソフトランディングのやり方をきちんと考えていかないと、日本の企業の存続性にとって大きな問題になるのではないかと我々は考えております。
そういう意味で、先ほど43ページにいろいろな業種が示されていましたけれども、短時間労働者の比率というのは、業種によって大きく異なるわけです。比率の高い業種、卸売業、小売業、宿泊、サービス業は非常な負担になるわけです。理想論的なあるべき姿としてみんなやったらいいではないかということになりますと、では、こういう企業が潰れてしまってもいいのか。雇用は誰が保障するのだ。ここをきちんと考えないと、この議論に関しては、多少危険なところがあるのではないかという気がいたします。
もう1点は、適用拡大とあわせて、前から私は言っているのですけれども、最後のページにあるように、厚生年金の適正な適用をぜひとも徹底していただきたいと思います。
前の年金部会でも申し上げたのですけれども、本来、厚生年金の適用対象でありながら事業所が適用を受けられないために厚生年金に加入できない方の数、これは今回の適用拡大で25万人ふやしますが、明らかにこれより大きな規模があるわけです。
やはり、こうした事業所の適正な適用を進めないと、1つは年金制度の全体の信頼感が損なわれる。それから、我々企業経営者にとっては、イコールフッティングではないだろう、同じ競争条件ではないだろうという意見も、我々の中では強く出ております。
最後、これは質問なのですが、先ほどらい、任意包括適用という制度をお話になっているわけですけれども、私なりに資料を読みますと、確かに任意包括適用は27万5,126人の方がやっているということですが、傾向を見ると、増えているわけではないのです。
25年度の数字はわかりませんが、本来雇用状況が非常に好転してくるのであれば、事業主も従業員を引きとめるためには、任意包括適用に踏み切ろう、雇用継続のためになればお金を出そう、従業員もお金を出そうと、それで任意包括適用がふえていくという明らかなトレンドがあるのでしょうか。それとも、これは一貫して見ますと大体26、27万にとどまっているということですけれども、そういう傾向は見られないのでしょうか。最後の点は質問でございます。
○神野部会長 適用のトレンドがあるかどうか。この点、いかがですか。
○年金課長 まず、任意包括適用のトレンド自体については、余り変わっていないということだと思います。
どう解釈するかということなのですけれども、かなり規模の小さい個人事業所ということなので、要は、自営業をやっていらっしゃる方が何人か人を雇っていらっしゃると考えればいいと思いますが、自営業ということ自体が、社会全体でいうとだんだんいわゆる法人格を取得したりとか、むしろ廃業して企業経営のほうに移っていったりという大きなトレンドがあると思いますので、きちんとデータを確認したわけではありませんけれども、任意包括適用の対象になる大もとの母体自体が、おそらく小さくなっていると考えられるのではないかと思います。
○神野部会長 武田委員、申しわけないです。お待ちいただいて、駒村委員、先にお願いいたします。
○駒村委員 では、2点ほどですけれども、きょうの議論で本来はどうあるべきかというのは、やはり適用拡大(2)は将来目指すべき道だと思います。
今、議論をお聞きして、今の年金制度の中に国民年金と3号があることによって、かえって障害とか逃げ場になってしまっているわけです。国民年金の性格は、これは自営業年金であるということをしっかりと改めて性格づけをして、年金制度の中心は厚生年金2号である。2号厚生年金の2号の形が一番真ん中にあるのだ。そういう意味では、3号の適用もなるべく面積は小さくするということ。そうしないと、なまじ国民年金があるから、そこは逃げ場や、かえって先ほどから議論があるようにバランス論みたいな、適用拡大の障害にすらなっているという問題があるのではないかと思います。
そういう意味では、国民全体として、年金の中核、財政的にはそうなのですけれども、所得保障の中核は厚生年金の2号に入ることであるということをはっきりと理解させていただくように制度改正を進めていくべきではないかと思います。
適用拡大に至っては、今お話があったように雇用がなくなって倒産してしまったら元も子もないというのは、これはおっしゃるとおり。でも、適用拡大をしなかったらどうなるかというと、年金の水準が下がっていき、しかも低所得者がふえていくわけですから、これは生活保護とか別の公費がかかるわけです。やらなかったからといって何かが節約できるわけでも何でもないわけです。
問題は、適用拡大に伴う社会的コストを誰が引き受けるのかという話であって、これは1つの方法は企業が利益でということになると思いますけれども、中小企業では対応できない。賃金下げますかというと、それもなかなか実際には難しい。そうなってくると、あと2つ可能性があるのは、価格に転嫁する形。要するに、産業構造的に見ると、サービス業が多いわけですから、今後、物の値段が上がっていく局面があるわけですから、社会保険料コストという人件費が上がっていくのだから当然、価格に転嫁して当たり前だねと。そうしないと、薄く広く負担してもらわないと、これは生活保護のような形で別の公費がまたふえるのですと、ただのものはないのですという理解をしていただく。
それもなかなか難しいとなってくれば、いよいよ先ほどもお話にあった公費、税制上のインセンティブ、財政資質のほうでやる。でも、これもコストですから、どこかにコストがいくのだということを理解していただくというのが、議論の進め方としては大事なのかと思います。やらなければ何かコストがどこかに消えるという発想は間違っていると思います。
以上です。
○神野部会長 お待たせいたしました。武田委員、どうぞ。
○武田委員 どうもありがとうございます。意見を2点、述べさせていただきたいと思います。
1点目は、既に皆様の意見として出ておりますように、私も基本的に適用拡大に賛成でございます。私もオプションの(2)を将来展望として目指すべきではないかと考えております。
ただ、適用拡大を進めるに当たって、かねてより申し上げておりますけれども、13ページにございますとおり、日本再興戦略に書かれている働き方に中立的な税制や社会保障制度の見直しとあわせての議論を、つまり、第3号制度の見直しと同時に議論を進めるべきではないかと考えます。
その背景には、この場で何度も申し上げてきましたとおり、労働参加の促進が年金制度の持続可能性を高めることに加え、成長の天井の低下が進んでおり、労働者不足が日本の成長力の面で大きな問題になってきていることがございます。日本経済全体の成長力が低下しかねないという問題でございますので、こうした日本再興戦略で書かれている見直しの議論は、重要な論点ではないかと思います。
加えて、本日も議論がございましたとおり、仮に第3号制度を見直さずに短時間労働者に対する適用拡大を進めますと、何人かの委員の方がご指摘されておりましたけれども、これまで130万が心理的な抑制要因になっていた方の一部は、もちろん個々人によって異なるとは思いますが、むしろ働くことを抑制するインセンティブにつながる可能性もあります。つまり、別のハードルをつくる可能性もあるということです。
さらに、短時間でも働こうと一生懸命頑張られた方が保険料を納める一方で、世帯所得に比較的ゆとりがあるために働かず、かつ保険料も支払わない第3号制度の方が、将来年金を受ける形を続けますと、前者の方々が後者の方々の年金を支えるという、説明しがたい状況をつくり出してしまうのではないかと考えます。
したがって、第3号制度の見直しとあわせて行っていくべきではないかと考えておりますので、意見として述べさせていただきます。
2点目でございますが、5要件については、先ほどから複数同様の意見が出ておりますので、多少細かい点で意見を述べさせて頂きます。51ページの適用事業所の業種分類ですが、これだけ経済の移り変わりが激しく、産業も変わり、新しいビジネスも生まれる中で、この業種で区分している意味はありますでしょうか。つまり、こうした業種で区別することも現状とそぐわないのではないかと思います。制度をシンプルにしていくという視点の1つとして、こうした見直しも必要ではないかと考えます。
私からは以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございます。
米澤委員、どうぞ。
○米澤委員 時間的な制約がありますので、出口委員のおっしゃった幹のところだけ述べさせていただきたいと思います。
そもそもこの法律のたてつけ、法律が検討されたときは非常に経済が悪かったときだと思います。その後、御存じのように、私の理解だとデフレギャップがほとんどなくなって、これからは今の御意見もありましたけれども、小室委員もおっしゃったように、むしろ人口の天井に張りつくようなところなので、短い期間ですが、大分、状況が変わってきていると思います。
ですので、そのもとでこの法律を見直せるところは見直す。追加するところは追加するという意味では、大分、経済の状況がよくなって、企業としてはこれから足りないのは、何が必要なのかというのは、雇用をいかに確保するかということに重点が移ってきているのではないかと思います。
ですので、もう少し拡大するという環境ができ上がってきていると私は認識しておりますので、適用の拡大というのは、再検討の余地が出てきているのではないか。要するに、経済全体がデフレギャップが解消されたというのが非常に大きな基礎的な要因になっているかと思います。
それに加えて、先ほどもお話に出ました年金財政に与える影響。年金財政からも見直す必要があるということも書かれていますので、そこへ行きますと、220万人ベースでもって拡大した場合に、この10ページにありますように、例えばケースEですと50.6%が51.1%と若干上がるわけですね。ですから、多少、先ほどのマジックがあるらしいのですけれども、これより1ケタ少ない人数で拡大したところで、ほとんど効果がないというのが見えているわけなので、いろいろ作業がふえて年金財政に与える影響がほとんどないとなれば、これは財政上から見ればどういうことかということで、ぜひ最低限、この220万人ベースで拡大する必要があると思います。
具体的にいいますと、ここに書いてありますように、1番は月5.8万円以上ということ。ここの線に沿って改善していくことが必要だと思いますし、それは今できる環境になりつつあると思います。
企業においては、若干の税制などのインセンティブを与えないと難しいのではないだろうかと思うかもしれませんが、厚生年金に適用しますということで、随分、雇用を集めやすいというメリットも出てきているような状況になっているかと思いますので、改めて、前の数値に余りこだわる必要はないのかということです。
以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
出口委員、どうぞ。
○出口委員 済みません。質問を1点だけしたいのですが、柿木委員の言われた43ページです。卸売業や小売業、宿泊業、飲食サービス業に偏っているので、適用拡大というのは企業の経営を難しくし、雇用をなくすのではないか。この御指摘は大変重要だと思うのですけれども、お聞きしたいのですが、ドイツの改革時点でも同じようにこのように業種によって短期の労働者がかなりアンバランスだったと思うのですが、現実にアジェンダを行った結果、そういう業種で倒産がふえ、雇用が失われたという実績はお持ちですか。教えていただければと思います。
○神野部会長 ドイツのデータということですか。
○出口委員 例えば、ほかの国でも同じような状況にあると思うのですけれども、基本的には社会全体で私は駒村先生の言われたとおりだと思うのですが、もしこういう特定の業種で雇用が失われるということであれば、ほかの国でも同じようなデータがあるはずなので、教えていただければと思うのです。
○神野部会長 柿木委員、どうぞ。
○柿木委員 すみません。私の言い方が非常に悪くて誤解をされているのかもしれません。
基本的に、適用拡大に私どもとして反対しているわけではないのです。この方向は間違っていないと思うのですが、私が先ほど例を出したのは、ここでいきなり雇用が失われますということではなくて、スピード感とやり方について一旦間違えると、大きく失われるようなことになりかねないと言ったわけです。今いきなりやると卸売や飲食サービス業がなくなるとか、そういったつもりで申し上げたわけではないということをよく御了解いただきたいと思います。
○出口委員 わかりました。
○神野部会長 とはいえ、いずれにしても何か資料はありますか。あるいは、今ではなくても結構でございます。
○年金課長 今、手持ちがないので、何か調べる方法はあるかどうかわかりませんけれども、ミニジョブのいろいろな歴史もありますので、その辺の資料を調べてみようと思います。
○出口委員 わかればいらぬ懸念がなくなりますね。
○神野部会長 ありがとうございました。
大変精力的に、しかも生産的な御議論をたくさん頂戴いたしましたことを深く感謝いたします。
私の不手際で、終わりの時間を大幅にオーバーしてしまいました。昼食抜きという非人間的な労働条件にならないことを願って終わりにしたいと思いますが、本日は冒頭、御説明がありましたように、働き方の多様性等々、さまざまことに関連する問題として、前回、皆様から御了解いただいたテーマのうち、適用拡大の問題を取り上げました。
この問題はこの問題として、この部会で整理をしていきたいと思いますが、これからは、前回御了解いただきましたように、設定いたしましたテーマについて一巡、この部会としてやっていきたいと思いますので、そういう方向でお願いさせていただきたいと思っています。
事務局から何か連絡事項等々ございましたら、どうぞ。
○総務課長 次回の開催の日程につきまして、また追って連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○神野部会長 それでは、大変遅くなりましたことを重ねて深くおわび申し上げまして、これにて部会のほうを終了させていただきます。どうもありがとうございました。
(了)
団体