2014年11月4日 第27回社会保障審議会年金部会議事録
年金局
○日時
平成26年11月4日(火)14:00~17:00
○場所
東京都千代田区霞が関1-2-2
厚生労働省 18階「専用第22会議室」
○出席者
神 野 直 彦 (部会長)
小 塩 隆 士 (委員)
柿 木 厚 司 (委員)
菊 池 馨 実 (委員)
駒 村 康 平 (委員)
武 田 洋 子 (委員)
出 口 治 明 (委員)
花 井 圭 子 (委員)
諸 星 裕 美 (委員)
山 口 修 (委員)
山 本 たい 人(委員)
米 澤 康 博(委員)
○議題
(1)働き方に中立的な社会保障制度について
(2)第1号被保険者の産前産後期間の保険料の取扱いについて
(3)遺族年金制度の在り方について
(4)その他(報告事項)
○議事
○神野部会長 それでは、定刻でございますので、ただいまから第27回「年金部会」を開催したいと思います。
委員の皆様方には大変御多用中のところ、万障繰り合わせて御参集いただきまして本当にありがとうございます。心より御礼を申し上げる次第でございます。
本日の委員の出席状況でございますが、植田委員、小室委員、小山委員、佐藤委員、原委員、藤沢委員、宮本委員、森戸委員、吉野委員、米澤委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。
また、駒村委員はおくれて御出席いただけるということでございます。
御出席いただきました委員の方々が3分の1を超えておりますので、会議が成立しておりますことをまず御報告申し上げたいと思います。
それでは、議事に入ります前に、事務局から出席者の御紹介と資料の確認をさせていただきます。事務局からよろしくお願いいたします。
○総務課長 まず、事務局からの出席者ですが、お手元の座席図のとおりとなっておりますので、紹介にかえさせていただきます。
続きまして、お手元の資料について確認をさせていただきます。
本日は配付資料といたしまして資料1「働き方に中立的な社会保障制度(いわゆる「130万円の壁」の問題、第3号被保険者制度など)」。
資料2「第1号被保険者の産前産後期間の保険料の取扱い」。
資料3「遺族年金制度の在り方」。
参考資料1「今後の検討の進め方」。
参考資料2と3ですが「女性の働き方に中立的な制度整備に向けて」ということで、経済財政諮問会議で提出された資料が参考資料2、3となってございます。
参考資料4と5でございますが「社会保障審議会年金部会年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班」の開催要綱、参考資料5がその委員名簿でございます。
参考資料6といたしまして「年金積立金管理運用独立行政法人中期計画の変更について」。
以上を配付させていただいてございます。何か不備がございましたら事務局までお申しつけください。よろしく御確認をいただきたいと存じます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。それでは、よろしいでしょうか。
大変恐縮でございますけれども、ここでカメラの方々には御退室をお願いいたします。よろしく御協力いただければと思います。
(報道関係者退室)
○神野部会長 それでは、議事のほうに入らせていただきます。議事次第をごらんいただければと思いますが、本日は4つの議題を準備してございます。
議題1は、働き方に中立的な社会保障制度について。
議題2は、第1号被保険者の産前産後期間の保険料の取扱いについて。
議題3は、遺族年金制度のあり方について。
議題4は、その他(報告事項)となっておりますけれども、これはGPIFの作業班の状況につきまして御報告申し上げたいと思っております。
議事の進め方ですが、議題1の働き方に中立的な社会保障制度についてと、議題2の第1号被保険者の産前産後期間の保険料の取扱いについては、一括して議論をお願いしたいと考えております。この後、つまり議題1、議題2が終了した後、議題3以降との間に5分ほどの休憩時間をとらせていただいて、遺族年金制度のあり方についてという第3の議題以降を引き続いて御議論いただければと思っておりますので、あらかじめ御承知おきいただければと存じます。
それでは、早速でございますけれども、事務局から議題1と議題2について資料の御説明をお願いいたします。
○年金課長 年金課長の度山です。
まず最初に資料1、資料2について御説明を申し上げたいと思います。
資料1は働き方に中立的な社会保障制度ということで、いわゆる130万円の壁と言われる問題あるいは第3号被保険者制度の問題などを扱ってございます。
下に注釈を入れておりますが、特に第3号被保険者の資料の上に、夫、妻という表現が出てまいりますが、これは正確には被用者保険の被保険者とその被扶養者ということになるのですけれども、早口言葉みたいになってしまいますので、簡便のため便宜上、夫、妻という表現をさせていただいております。性別役割分業意識に基づいてこう書いているのではないということだけ最初にお断りをさせていただきます。
さて、ページをめくっていただきまして、まず働き方に中立的な社会保障制度、いわゆる130万円の壁の問題について資料をまとめてございます。
3ページ、6月に閣議決定された日本再興戦略では、この働き方に中立的な税・社会保障制度ということで、税制の配偶者控除の問題、社会保障制度の130万円の壁の問題、それから、給与体系における配偶者手当の問題について、経済財政諮問会議で年末までに総合的に検討するということが記述されました。これを受けて、去る10月21日の経済財政諮問会議におきまして、社会保障を担当いたします塩崎厚生労働大臣も出席をして、議論が行われました。
この資料、4ページから16ページまで厚生労働大臣のプレゼンの資料をそのままつけております。これに沿ってお話を申し上げますが、大臣からお話いただいた内容については一度、短時間労働者の適用拡大のところで議論をした内容を下敷きにして説明をさせていただいた次第です。
5ページ、被用者保険の被保険者の配偶者がどういう適用関係になるかということで、通常の労働者の4分の3以上就労する場合には、みずから被用者保険の被保険者になるということですが、4分の3を切る働き方をしている場合には、130万円を境に国民年金の1号の被保険者として自分で保険料を納めなければいけないか、あるいは扶養される配偶者ということで第3号被保険者として保障されるかというところが分かれる。130万円の壁というのは、この壁のところの問題ということでございます。
ただ、6ページを見ていただきますと、これも前に御説明した資料ですけれども、確かにパート労働者の就労の山が100万円前後のところにあるということですが、これは保険料負担のない第3号被保険者だけではなくて、実は自ら保険料負担をしている第1号被保険者についても同じような山が確認できるということですので、この問題は単純に130万円の壁があって、その手前でとどめているという以外の要因も作用しているのではいなかということがうかがわれます。
この点については様々な説がありまして、例えば税負担が103万円を超えると生じるという心理的な障壁という問題ですとか、あるいは103万円、130万円が給与体系の中で配偶者手当の支給の基準になっている実態がある。そのような影響がよく指摘されますが、それに加えて次の7ページ、8ページ目にございますように、いわゆる被用者保険の適用の基準、特に被用者保険の適用ということになりますと、本人のみならず、雇い主、事業主においても社会保険料負担が発生するということがありまして、8ページ目にもありますように、2つの壁のちょうど角のところで就業調整の山ができている。こういうふうに考えられるのではなかろうかということでございます。
9ページ目、10ページ目は既に一体改革で法律が成立いたしました適用拡大の枠組みです。先ほどの絵と比べますと30時間というところが20時間におりてきて、年収106万円以上という限定つきではありますが、一定の適用拡大がこれで図られるということになるということです。
11ページ、12ページ目は、前回の議論を受けまして計算をしてみた新しい資料でございます。時給が1,020円の方ということで想定をいたしますと、52週間フルに働いたと仮定いたしますと、週の労働時間24.5時間のところで年収が130万円になります。なので、この方にとっては130万円の壁を超えると、国民年金の保険料負担がかかってくるという問題になります。
ただ、今回の適用拡大で20時間まで適用範囲がおりてくる。しかも、この方の場合、ちょうど20時間働くと年収が106万円ということですので、この壁が消えて報酬に応じた保険料負担ということで、第2号被保険者になるというように変わることとなります。
次に12ページ、もう少し時給が低い場合で計算をいたしました。800円で就労するということで全く同じ計算をしてみますと、実は30時間働いても年収が130万円に到達しないことになります。ですので、この方にとっては130万円の壁の手前に被用者保険の適用の壁があるということになります。
真ん中のところ、適用拡大後は年収106万円以上のところまで適用がおりてまいりますので、適用が拡大して報酬に応じた保険料が賦課されるということになりますし、前に当部会で議論したとおり、年収要件を外して20時間ということで整理をしますと、さらに報酬に応じた保険料の賦課のラインが下がってくる。このような形で適用がされることになります。
13ページ、14ページは、国民会議でこういう議論をし、その結果を受けて14ページに書いたようなオプション試算をしたということで省略をさせていただきます。
16ページ、経済財政諮問会議では、最後に9月18日に年金部会でこの論点について議論をした上で、適用拡大については28年10月の施行後、さらに拡大をしていくというときの各要件のあり方あるいは28年10月の適用拡大の枠組みを前提としながら、現時点においてさらにこの問題を前に進める方策のありやなしやについて御議論をいただいているところだということを、厚生労働大臣から報告をさせていただいた次第です。
17ページ、18ページは、経済財政諮問会議において有識者の4人の先生の連名で出された資料から抜粋をしてきてございます。18ページ、少し見にくい図なのですけれども、民間有識者の先生方の御提案としては、適用拡大をさらに進める一方で、いわゆるあるラインに来たら急に保険料負担が発生して、可処分所得が減少するということを防ぐためには、給料が増えるにしたがってなだらかに保険料負担が増えていく。そういう仕組みを考えてはどうかということで、3号被保険者の収入に応じて段階的に保険料を賦課するという考え方が、示されているところでございます。
ただ、17ページのほうに戻っていただいて、下線を引いた部分ですが、こうした負担増に関しては、何らかのベネフィットが戻ってくる制度改革にすることが重要だという御指摘も同時にいただいておりまして、実際に行われました議論を次の19ページ、20ページに議事要旨を抜粋してございますけれども、厚生労働大臣からは、何らかの給付の反映があるということになると、国民年金の世界で幾ら保険料を負担しても、それは基礎年金給付しかないので、給付に反映するということであれば、上乗せ給付のある厚生年金に加入していただく。すなわち適用拡大で2号被保険者になっていただくことが重要だということを説明の中で申し上げたということでございます。
以上、経済財政諮問会議における議論について御報告をさせていただきました。
その上でということで、次の第3号被保険者制度に移ってまいります。
まず22ページ、第3号被保険者、基礎年金が発足した昭和60年の制度改正で設けられた仕組みでございますけれども、この導入の経過について簡単にまとめてございます。
基本的に厚生年金というのは片働きを想定し、夫の保険料納付で夫婦2人の生活を保障するという体系でずっと構築されてきていた。そのため、国民年金が昭和36年にできたときも、いわゆる被扶養の配偶者に関しては国民年金の強制加入の対象とスタートしてございます。ただ、この仕組みですと、例えば離婚などした場合には、妻自身の年金額がない、無年金になってしまう等々の問題も指摘され、女性の年金権の確立というものが昭和60年の改正の1つの大きなテーマになりました。
それで下のほうに絵を描いてございますけれども、夫婦2人分ということで設計をされていた厚生年金の一部分を分離する形で、妻の基礎年金を作ったという経緯でございます。もともと夫の払っていた保険料で夫婦2人分の生活保障をしていた中から切り分けて妻の年金を作ったということなので、別途保険料負担は求めないという形で整理がされたということでございます。
それ以前、専業主婦の方は、強制加入の対象ではありませんでしたけれども、国民年金に任意に加入できるという仕組みがございました。この絵の外側にもう一つ、別途国民年金というものが存在をしていたということでございますけれども、両方合わせるとかなりの給付になり、それぞれに国庫負担がついているなど問題があるということと、国民年金も最初は積立方式で発足しましたけれども、徐々に賦課方式に移行する中で、入っても入らなくてもいいという任意加入の方がたくさんいるというのは運営上、非常に問題であるという御意見があって、基礎年金創設時にこの国民年金の任意加入制度については廃止をされたという経緯がございます。
この問題について割とまとまった議論を行いましたのが、次のページ、2001年に開催されました女性のライフスタイルの変化等に対応した年金のあり方に関する検討会、通称、女性と年金検討会の時でございます。
その次のページ、24ページ、25ページ、26ページにありますように、第3号被保険者制度を見直すとするとどういう考え方でやるかということについて、幾つかの案を提示して議論をしたという経過がございます。例えば夫婦の賃金を分割して、それぞれの年金を構成するという考え方であったり、あるいは一定の保険料を負担していただくという案だったり、あるいは保険料を負担しないかわりに給付を減らすという案だったりとか、いろいろなことを議論させていただきました。
当時の女性と年金の検討会から2004年改正までの議論としては、総体として第3号被保険者を縮小していくという方向性については、参加された皆さんは方向性としてはそうだということに落ち着いたわけですけれども、では具体的に第3号被保険者制度を何らかの形で見直すかということについては、どの案がいいという形ではまとまらなかったというのが2004年改革のときの現状でございます。
さはさりながら、検討会までつくって議論をしたのに、何も成果が出ないということでは大変もったいないということで、最後に2004年の改革をまとめる際に、27ページになりますけれども、先ほど申し上げた幾つかの案で言いますと、賃金を分割するという案に近いのですが、それをベースとした上で離婚など年金を分けなければいけない事情が生じたときに、夫婦の年金を折半できる制度というものを導入した。そのときに合わせて、いわゆる夫の払った保険料は夫婦2人で共同負担したものであるというふうに考えて年金のことを考えるんだという、そういういわゆる理念規定を置く形で整理をしたのが、2004年改正時の状況でございます。
この結果ということでございますけれども、28ページに何度か御説明をさせていただいた今の負担と給付の構造を示しておりますが、夫でも妻でもいいのですが、1人当たりの賃金水準が同じであれば、基本的に負担も給付も同じになるという構造になっております。この28ページの資料では、ともに40万円、1人当たりで言うと20万円の計算で出してございますけれども、1人当たり20万円の負担ということに対する年金給付は基礎年金1つと20万円の厚生年金。夫のみ就労の世帯は夫が40万円と2つ負担していると考えますと、基礎年金が夫、妻それぞれ1つ分ずつと、20万、20万ですから合わせて40万円分の報酬比例年金という形で揃っているということでございます。
ただ、別の見方もできまして、29ページには片方の負担を固定する。夫の負担20万というところで固定をしたときにどうなるかということで計算をしてみますと、この比較においては、単身世帯と夫婦共働き世帯はともに基礎年金1つと20万円分の報酬比例年金なのに対して、夫のみ就労の世帯については、ここだけ基礎年金が1つ分多い。このような形になっているという問題でございます。この点については後ほどまた触れたいと思います。
30ページには、社会保障・税一体改革の中での議論では、この問題をどのように取り扱われてきたかということでございますけれども、恐らく年金部会でもこれまでこういう議論がございましたということで、いろいろな紹介があった上でということだったと思いますが、当時、民主党政権のときに新しい年金制度の方向性として所得比例に一元化するという議論の中で、この所得比例の年金額というのは夫婦の納めた保険料を合算して2分をする、いわゆる2分2乗的な考え方で設計がされていたので、この方向を踏まえながら第3号被保険者も考えていくんだということが一体改革の大綱について挙げられて、具体的な見直しは行われなかったという次第でございます。
31ページ、32ページは、その後の展開を書いてございますけれども、社会保障制度改革国民会議では第3号被保険者の仕組みそのものについては、それほど深い議論をしたわけではございませんけれども、制度の支え手を増やす方向で検討を進めるべきであるという考え方が述べられ、それを受けて行ったオプション試算においては特に適用拡大をした場合に3号被保険者の人数や期間がどのように変わるかということについて、データを切り出して御紹介をしたというところでございます。
33ページ以降は、この問題を考えるときの幾つかキーになるファクトをまとめさせていただきました。
34ページ、よく言われますとおり、共働き世帯と片働き世帯の推移を挙げてございますけれども、今や共働き世帯が多数派であるという事実は確認できます。ただ、女性の方がまだパート労働が多いということがございまして、次の35ページを見ていただきますと、年金制度の目から見るとこれがどういうふうに映っているかということで言いますと、見ていただくとわかるように、2号、2号カップルよりも2号、3号カップルのほうが倍ぐらい多い。このような現状にございます。これは共働きの働き方が厚生年金の適用されないパート就労が多いことを反映して、このようになっていると考えられます。
35ページ、ダグラス・有沢の法則というふうに古くから言われてございますけれども、夫の稼働所得が高いほど専業主婦率が高いという傾向は、36ページのデータでも確認ができると思います。ただ、高所得の男性が世の中全体でそれほど多いというわけではございませんので、実際に第3号被保険者である妻がどれぐらいの所得の世帯に分布をしているかということで見ますと、所得層の必ずしも高くない層の人数もそこそこ多いという現状になってございます。
37ページ、先ほど見ていただいたように、パート就労する女性もかなり多いということでございまして、どの年収層にも短時間労働者で100万円前後で仕事をしていらっしゃる方はいらっしゃるということだと思います。ただ、所得が低い層でも妻の所得がないという割合は実は結構高いということがありまして、その原因を考えると、恐らく出産に伴う就業継続がなかなか困難であるという問題が指摘できようかと思います。
38ページには労働力率カーブを有配偶と未婚に分けて示してございますけれども、まだまだ有配偶の女性の労働力率は高くないということがございますし、39ページ、いわゆる子供を産んだ後に女性の就業がどう変わったかというデータでございます。以前に比べると継続就業する割合は高くなってきた。以前は、最初の子供を産んだときにそれまで働いていた女性の7割は仕事をやめると言われておりましたが、最近はやや改善をして6割ぐらいということになりましたので、就業継続率は上がってきたというふうに言えると思いますが、依然として半数以上の方がまだ離職をしているという状況にございます。
40ページ、子供が大きくなるにつれて労働復帰してくる方は多いわけでございますけれども、なかなか常勤の仕事に就くことができずに、パート、アルバイトという形での就労が多いという現状がございます。
41ページ、以前、高齢者の就業の議論をしたときに、佐藤先生から女性は特に50代ぐらいになるとかなり労働力率が落ちる、就業率が落ちるんだというお話がございました。そのデータを確認するためにデータをまとめてみたわけでございますけれども、確かに非就業の人がふえてくるという傾向にございます。ただ、3号被保険者制度が非就業の方々を一定程度拾っているということはあろうかと思います。
42ページ、43ページには、長い目で見たときに第3号被保険者がどうなってきているかという数字を挙げてみました。現状としては数、割合とも減少傾向にあるということが言えようかと思います。
43ページは世代別に拾ってみました。5年おきにデータをとっておりますので、矢印、右斜め下にずっと見ていただくと、同一コホートの推移ということが見ていただけると思いますけれども、依然として30代後半のところに山がございますが、以前は50%近い方が3号になっていたものが、最近の一番新しいデータですと4割を切るところまで減少してきている。このようになってきてございます。
44ページ、諸外国にこのような仕組みがあるのかないのかということでございますけれども、まず諸外国は無収入の配偶者含めて無業の方は基本的に年金制度の外側にいるということが一般的でございますが、そうした上で2つやり方があるということでございます。
1つのやり方は、働いているほうの拠出の記録に基づいて、無業の配偶者にも一定の年金給付が保障される。これは我が国で言うところの第3号被保険者の仕組みに近いやり方だと思います。この例としてアメリカがございます。
配偶者という立場ではないけれども、出産や育児の期間について無収入であれば年金の外側に行くのだけれども、それを外側に置かずに、保険料を何らかの形で払った期間というふうに見なして給付を保障するという例がございます。これが表にまとめてございますようにドイツ、イギリス、フランス、スウェーデン、いずれもこのようなやり方をとっています。
1と2の違いは、働いている人の拠出記録に基づいた配偶者への給付の保障の仕方というのと、働いていなくてもそういう事情を考慮して、配偶者自身の年金記録を何らかの形でつけてあげる。このような2つのやり方で一定の保障が行われるように配慮していると考えられると思います。
さて、全体を整理いたしまして45ページ、検討に当たっての論点ということでまとめてみました。まずは短時間労働者の就業実態というものを踏まえますと、いわゆる就業調整問題のソリューションとしては、被用者保険の適用拡大が重要であるということが最初のパーツから言えるだろうと思います。その上で第3号被保険者のあり方の検討ということになるわけでございますけれども、現在、第3号被保険者の中には非常に今まで申し上げたとおり、いろいろな属性を持つ人が混在しているということを考えなければいけないだろうと思います。
ただ、短時間労働に従事している者については、被用者保険の適用拡大をいたしますと2号被保険者に移ってくることになります。それから、出産や育児のために離職をした人については、一体改革でも力を入れてございますけれども、いわゆる子育て支援の充実によって両立支援がさらに図られる、あるいはワーク・ライフ・バランスが推進していくということで、継続就業の割合が今後とも高まってくるということも期待ができますし、配偶者というステータスでなくても諸外国に見られるように、出産や育児期間という形での配慮措置のあり方というのも考えられると思います。
このように第3号被保険者を分けて考えていきますと、最後に残るのが純粋な専業主婦ということでございます。特に配偶者が高所得である方についてこういう仕組みをどう考えるかというのは、先ほどの28ページ、29ページの比較で見ていただいたように、1人当たりの賃金水準が同じであれば、同じ程度の再分配を受ける制度設計というものが果たして妥当なのかどうなのか。先ほどの28ページの絵で申しますと、平たく言うと40万円の月収のある片働きの夫婦と、20万円の単身者あるいは20万円ずつ収入を得る共働き世帯というものを、同じ程度の再分配の必要性があるという形で判断をしているということですが、その制度設計が妥当かどうかというところが、この問題を整理していく上での分かれ道になるのではないかということでまとめてみました。
45ページ、一番下の○にありますように、どちらかというと今までの議論は2004年の制度改正も、それから、社会保障・税一体改革のときに行われた議論も、どちらかと言うと賃金分割の考え方、夫婦の分割の考え方を念頭に制度のあり方を考えてきているという流れがございますけれども、このことをどう評価するかということにもつながるかと思います。
以上で資料1の説明を終わりまして、続いて資料2の1号被保険者の産前産後期間の保険料の取扱いについての資料に移ります。
3ページ、社会保障・税一体改革においては、次世代育成の観点から、厚生年金の被保険者について保険料免除措置のなかった産前産後休業期間について、育児休業期間と同様に年金保険料は免除する。将来の年金給付には反映させるという、このような措置をとったというところでございます。
ただ、この問題は3党協議の過程で次世代育成支援の観点ということであれば、国民年金の第1号被保険者についても何らかの措置が必要ではないかという御指摘がございまして、最終的には年金機能強化法の附則に検討規定を追加するという形で、この問題が設定されているところでございます。
経過を4ページ目、5ページ目、6ページ目にまとめておりますけれども、育児休業期間の厚生年金の保険料の免除措置は平成6年の改正で導入をされました。特にこのときに議論になったのは、育児休業をとって無給になるのに社会保険料負担がそれまで以前どおりにかかるということについて、育児休業をとりにくい1つの要因になっているという御指摘を受けて、免除措置を導入したという経過がございます。これを5ページ目にありますように、最初は御本人の負担分だけだったのですけれども、2000年改正のときに事業主負担分も免除をする。あるいは2004年改正のときには育児休業を基本的に1歳までということですが、3歳未満の子を養育しながら就業を継続する、あるいは休業をする方についての特例という形で整理をしたという経過がございます。
その結果、どういう形になっているかというのを6ページに絵でまとめているところでございます。
7ページ目、社会保障制度改革国民会議の議論の中では、年金について基本的には将来の生産の拡大が重要だという観点から、次世代育成の配慮を強化するという観点から検討する必要があるということを言ってございます。
ここまでがこの問題の経過でございますけれども、では1号被保険者の保険料の免除措置ということを考えたときに何を考えなければいけないかということを次ページ以降まとめてございます。8ページ目、先ほど説明したように、2号被保険者の保険料免除というのは無給になることに対応して、その間の保険料はいただかない。ただし、給付に関しては従前の給与で働き続けていたというふうに評価をして、年金額を算定するということですので、基礎年金も保障されますし、報酬比例年金も従前の給与に対応する形で保障されることになります。
一方で1号被保険者に関しましては、基本的に世帯として所得があるかどうかということで免除措置を考えてございますので、次の9ページ目に書いてございますように、世帯として特に非課税ぐらいの水準にある方に関しては、保険料を納める余力はないだろうということで全額免除をする。ただ、免除をしますと保険料をお支払いした方と全く同じ給付というわけにはいかないということで、保険料を納付していただいた分に対応する形で給付額が変わるという制度設計になってございます。したがって、全額免除を受けた方の給付は半分になってしまうという問題がございます。
そういう意味で言うと、国民年金制度にある免除制度と産休や育休で厚生年金に作った免除措置というのは、仕組みと効果がかなり違うということをまず頭に置いて考える必要があるということでございます。
10ページ目、これまで国会でどういう議論があったかということでございますが、一体改革の審議の中では、この国民年金制度に育休、産休中の保険料免除を盛り込むということについては、1つは育休、産休という仕組みが基本的に労働者を対象とした制度であるということで、これを自営業の方などに広げるということをどう考えるかという論点。もう一つは、この措置のために例えば財源的な措置をどういうふうに考えるか。こういうことを答弁してきております。
11ページに今まで説明してまいりましたことから論点を抽出いたしますと、1つは労働者と違って就労の形態が様々な第1号被保険者について、産前産後の期間に着目をして、国民年金の保険料の納付を免除するという、いかなる考え方でこれを行うかという問題。もう一つは、この保険料の納付義務を仮に免除するということにしたときに、そのときに給付をどう考えるかという問題がございます。
以下、この論点に沿って御説明をします。13ページには、産前産後休業とはどういうものかというものを法律上まとめてございます。根拠は労働基準法にございまして、産前6週、産後8週。この目的は母体保護だと言われております。
14ページに実際の規定あるいはコンメンタールからの引用をしてきてございますけれども、母性保護上、重要な産前産後の休業ということ、特に労働者の場合には使用者に使用されるということなので、使用者にこの期間は就業させてはならないという形で法律上、規定をしているわけでございます。ちなみに育児・介護休業法は、目的は職業生活と家庭生活の両立という形で整理がされてございます。
自営業者の場合には、自分が雇い主を兼ねていると考えることができるので、法律上は規定していないものの、母体保護という観点ではこれは共通するということは整理ができようかと思います。
2点目の論点、給付をどう考えるかということで15ページをあけていただきたいと思います。これは国民年金と厚生年金の免除を受けた場合の取扱いの違いというのを端的にあらわした図表でございますけれども、先ほど申し上げたとおり、厚生年金の場合、産休や育休の免除者については保険料をいただかないということに整理をしてございますけれども、給付は保障するということですので、例えば基礎年金の拠出のカウントにおいてはこの免除を受けた分も含めて人数カウントをして、厚生年金のほうから基礎年金の勘定に払い込みをしている。その結果、基礎年金の給付はされるということでございます。この費用をどうしているかということに関しては、これは厚生年金全体で負担をしている。このような整理になってございます。
ところが、左側、国民年金に関しては、免除を受けた方については基礎年金の拠出のカウントから外してございます。給付のときに国庫負担分を特別に措置するということで、特別国庫負担という形で入れているということでございます。仮にこの方の給付を保障するということになりますと、厚生年金と同じようなことを国民年金でもする。すなわち基礎年金の拠出のカウントに入れて、その費用を皆さんで負担をするということが必要になるわけですが、16ページにございますように、厚生年金の財政規模と国民年金の財政規模はかなり違いがある。一方で対象になる免除者の数は、大体両制度とも20万人程度ということで変わらないだろうということになるわけでございます。
これらを整理して、17ページ、この第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除という制度を設計すると考えますと、2つ問題がございます。
1つは、今の国民年金の免除は世帯で所得を判定している。これは自営業が家族就業であるという考え方から、そのようになっているわけでございますけれども、そうしますと、妊娠中の方が個人としては働けなくても、世帯として所得がなくなるわけではないということを、この問題を考える上でどのように考えるかということが1点。
もう一つは下の給付設計のほうになりますけれども、国民年金制度上は免除期間の給付は2分の1になるということですので、仮にこれを2分の1にしないということであると、国民年金全体で免除を受ける方の分の基礎年金拠出を負担することが必要ですが、先ほど見ていただいたとおり、国民年金の財政規模は非常に小さいということですし、厚生年金のように2階部分の給付というのが制度設計上ほとんどない制度でございますので、結果、さらにマクロ経済スライドの調整期間がより長期化をするという心配も出てくるということになります。
18ページ、諸外国ではどうしているかということですが、先ほど御説明したように、ドイツ、イギリス、フランス、スウェーデンにおいては、いわゆる育児のために休業する機関について、特別の考え方に基づいて設計をすることがなされております。どの国も基本的に財源については税財源を投入しているケースが多うございます。ただ、諸外国の年金制度は基本的に日本のように一般的に税財源を投入するという仕組みではございませんので、このように給付と負担の釣り合わないことをやった場合に、その部分について税財源を投入するという考え方で行われております。我が国の場合は基礎年金の2分の1という形で税財源をいただいていますので、同じ考え方でプラスアルファの税投入ができるかどうかというのは、結構難しい問題ではないかというふうに考えられます。
以上、まとめてみますと最後19ページでございますけれども、第1号被保険者について産前産後期間に着目をすることに関しましては、母体保護の規定と考えますと、稼得活動に従事できない期間というふうに擬制をするということは考えられないことではないかと思いますが、このような理由で保険料を免除するということの是非をどう考えるか。あるいはその際に、特に1号被保険者の世界では個人ではなくて世帯の所得で見てきたということとの関係をどう考えるかという問題がございます。
仮に免除する場合に給付をどうするかということに関しては、今、申し上げたとおりで、もし仮に厚生年金と同様に給付を保障するということになりますと、これを国民年金財政で負担ができるかどうかということになりますし、そうではない現行の国民年金の免除制度の枠の中で考えた場合には、国庫負担分のみか、あるいは学生さんなどの納付猶予扱いと同じように保険料の追納を要するような仕組みとして考えるか、そのような形になるかということで整理をさせていただきました。
説明が長くなりましたが、以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
議題1と議題2にかかわって関連する資料を要領よく御説明いただきました。それぞれ検討に当たっての論点を御指摘いただいておりますが、冒頭申し上げましたように、議題1、議題2についてまとめて御議論を頂戴したいと思っておりますので、御質問、御意見ございましたら議題1に関連してでも、議題2に関連してでも構いませんので、頂戴できればと思います。いかがでございましょうか。どうぞ。
○山口委員 ありがとうございます。今、非常に詳しい説明をしていただきありがとうございました。
第3号被保険者の中身というのはいろいろあって、パートで働いておられる人もおられますし、純粋に無業の専業主婦の方もおられるということであります。したがいまして、これまでの議論にもありましたように、まず被用者年金の適用拡大をまず進めることが第一義的に必要なことであろうかと思っておりまして、短時間労働者の2号適用を進めていくことが、まず第一のステップとして必要だと思います。ただ、これを進めていきましても本当の意味の専業主婦の問題が残るわけでありますので、私といたしましては、将来的な話ですけれども、どこかのタイミングで今回つくっていただきました資料3の給付調整方式に移行していくことが妥当ではないかと考えております。
先ほどの説明にもありましたように、今日の基礎年金ができましたのは1985年だったと思いますけれども、それ以前の厚生年金では配偶者の加給制度等があって、それとの整合性ということもありまして、現在の第3号被保険者制度をつくって、それまでの既得権の侵害にならないように配慮をしつつ、また、過度な給付水準にならないように、任意加入制度を廃止するといったようなことであったと理解しております。
しかし、それからもう既に30年近くたちまして、現在、3号の適用になっている人でもなぜ拠出もせずに基礎年金の給付が受給できるのかということについて、不思議に思っている人も多いのではないかと思っております。
先ほど申し上げた基礎年金制度導入前には国民年金の任意加入制度というものがあり、たしか6割ぐらいの専業主婦の方が加入されておられました。そういうことも考えますと、恐らく専業主婦の中でもそういった負担能力の高い人もたくさんいらっしゃるのではないかと考えられるところでございます。
したがいまして、短時間労働者への新たな適用拡大を、まずやって、そして、その後のに残った第3号につきましては基本的に免除者と同じ取り扱いとして2分の1の給付をし、別途任意の保険料を拠出した期間については2分の2の給付を行うという形の方法を採用することにしてはどうかと考えているところでございます。
この場合、激変緩和という観点から任意の保険料の水準につきましても、一定の経過期間を設けて毎年、水準を引き上げていくといったような配慮をしてはどうかと考えております。
また、3号分割の問題との関連でありますけれども、これにつきましては世帯単位を想定して設計されています年金というのは報酬比例の部分であろうと考えられますので、その部分については従来どおりの3号分割というものを継続する。しかしながら、個人単位の基礎年金につきましては、今、申し上げたような応分の負担をしていただくといったようなことで、必ずしも矛盾することではないのではないかと思っております。
以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
菊池委員、どうぞ。
○菊池委員 産前産後のほうもあわせてということで。
3号被保険者のあり方につきましては、2001年の検討会でおおよそ考え得る主な選択肢が提示されたにもかかわらず、いまだに制度改正がなされていないということで、いずれも一長一短がある案でなかなかすっきりした解決は難しいということだと思います。私個人としては将来的には年金分割の方向性がよろしいのではないかと思っておりまして、3年前の見直しの議論の中でも、次善の策として当時事務局から提示された夫婦共同負担の考え方を支持する意見を述べさせていただきました。
ただし、現在ここで議論しております制度改革の課題と方向性としては、将来的に目減りしていく年金額をどのように維持するか。あわせて低年金者対策をどうするかということが大きな問題となっています。
また、今回の資料で3号被保険者世帯の中には、収入がそれほど高くない世帯も多いことが明らかにされたように思います。こうした観点を踏まえた場合、先ほど山口先生から新しいプランが提示されましたのですが、従来の一律に給付調整をする考え方ではさらに低年金者をふやすことにつながりますので、そのままではとれないと思っております。
また、一律に負担調整する考え方も、まず事業主に負担を求める理由づけがなかなか難しい上に、定額の負担を求める場合に所得の高くない世帯にとって、総体的に重い負担となる可能性があることから、これもやや慎重にならざるを得ない。私も3号被保険者制度の問題性は理解しておりますが、現時点では被保険者範囲のさらなる拡大や130万円の基準の引き下げといった方策により、段階的に問題解決を図るのが現実的であろうと思っております。
ただ、事務局資料の最後の論点との関連で申しますと、1つは出産や育児に対する配慮をより重視するというのであれば、第3号被保険者のうち育児に従事する者に対して何か特別の配慮をするというような制度設計が可能であるのかどうか。これは2号との関係もあるのでなかなか難しいかなとも思うのですが、これは外国の法制度との兼ね合いも見ながら検討する価値はないのだろうかと思いました。
もう一つは、これはよりあり得る方策かもしれませんが、3号被保険者のうち世帯としての所得水準に配慮するのであれば、配偶者、つまり夫の所得に応じて特別の配慮をするということが、そういう制度設計が可能かどうかも検討してみる価値があるかもしれないと思いました。
1号被保険者の産前産後期間の保険料取り扱いですが、私は保険料免除の方向性には賛成であります。ただ、既存の免除制度の給付設計では年金水準の低下につながり、制度を導入する次世代育成支援という目的を推進するに当たってメリットが少ない。ですので、やはり厚生年金と同様に免除期間分の基礎年金を満額保障することが必要であると思います。
本来的には、こうした個別の特定の政策目的の達成のためにこそ、公費の財源を充てるべきという考え方も十分あり得るとは思うのですが、ただ、公費負担の限界を前提にせざるを得ないとすれば、国庫負担分を除く免除分の保険料負担を他の被保険者が分担することとならざるを得ない。この場合、1号被保険者間での保険料負担の分担ということが考えられますが、先ほど御説明があったように対象者の規模がかなり違うということもございますし、将来的な基礎年金制度の担い手をふやすという目的の限りにおいては、共通性を持つということで、部分的に被用者保険加入者との間でも負担を分かち合うという仕組みを考えることもできなくはないのかなと考えております。
長くなりましたが、以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
ほかいかがでございましょうか。駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 前と後ろと2つありまして、今、菊池先生がおっしゃった産前産後のほうからコメントしたいと思いますけれども、私も1号の保険財政の中で何とか捻出できないかというふうに以前コメントして、ただ、今回財政検証で出てきて、国民年金の財政がかなり際どい状態になっているということで、それを捻出する余裕は多分ないとなってくると、あとは1号の中で対応するか、今、菊池さんがおっしゃった2号を含めて対応するかという判断になってくると思います。
1号だけでやるならば、これはある種、国民年金の1号に対する新たなサービスというふうに考えれば、保険料はその分だけ上乗せで全加入者、1号の中で割増しで、今、想定しているものよりも若干高い保険料にする。それは新しいサービスが加わったからというふうに考える。
菊池先生おっしゃったように、厚生年金との間でやりとりするとなると、これは1つロジックが飛ぶ話になりますので、ここは国民年金と厚生年金の財政の融通をどこまで認めていいのかということをきちんと整理しないと、これは国民年金の基礎年金でマクロ経済スライドはかなりきつい状態ですから、同じ理屈でいろいろなことができてくるということになりますので、ここはきちんと整理しておかなければ、厚生年金と国民年金の間の財政のやりとりというのはそう簡単ではないのではないかと思います。
3号問題なのですけれども、この2001年の女性と年金の検討会、私も参加してもう13年もたっています。私は、このときから個人単位で考えるか世帯単位で考えるのか、応益負担で考えるのか応能負担で考えるのかによって答えが違うのです。全部の考え方を納得させる組み合わせは結局ないということで、私自身もある種の理想は年金・賃金分割の考え方。つまり夫婦は別にばらばらに働く時間や働く量を決めているわけではないので、世帯一体で意思決定はしているだろうということで、賃金収入というのは個人の所有権にはなっているわけですけれども、実際には夫婦一体で決めたものだろう。それを年金権にするときは個人単位に変換する。個人単位化するという考え方が年金分割で、これは今、2号、3号の組み合わせですけれども、本来ならば徹底的にやるならば2号、2号でも入れてしまうという考え方もある。このことによって3号問題と、遺族年金の問題が一気に解決できることになると思います。これは1案です。ただ私自身が当時から他にも2つの案持っていましたので。
第2案が、保険料調整で、これは1案と全く違うロジックなのですけれども、専業主婦世帯の2号にのみ割増保険料率、両立を高める。大体1%ぐらい当時だったら高くとれば、その分だけ逆に共働き世帯の保険料を調整できるということになりますので、両者で差をつけるという案もあります。資料に載っていますので議論したと思いますが、これは事業主負担をどうするのかということで、1つ障害があったかと思います。
3つ目は、給付抑制方式としては3号期間を出産、育児あるいは介護を入れるかどうかですけれども、というような時期に限定してしまうというのもあるのかなと思いますが、これはなかなかいずれの案も一長一短ありますので、1回年金制度を切り変えてしまうとまたもとに戻すのが非常に難しくなりますので、適用拡大をまず王道ですから、それを徹底的にやった後に、究極的にはこの3号をどうするかという議論で、私は3つ案のいずれもありかと思って、どれを支持するか決めかねている状態ですけれども、以前から悩んでいました。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
いかがでございますか。出口委員、どうぞ。
○出口委員 まず最初の3号被保険者の問題ですけれども、今、駒村先生がおっしゃったように、総論では3号被保険者をやめるということについては異論がない気がするのです。でも、具体的にどうするかということは今、先生の御指摘があったようにすごく難しい問題だと思います。
こういうふうに考えればどうかなと思うのですけれども、まず大原則としては3号被保険者はやはりやめる。これはおかしいということをまずはっきり言うということが必要だと思うのです。総論としては。
各論の問題としては、時間軸で解決できないかと思うのです。これを全部きれいにやろうと思うと、制度改正までまた時間がかかるかもしれない。ですから、まず短時間労働の被用者保険の適用拡大、月額5.8万円でしたか。そこまでをまず最優先でやってしまう。その次に、それと同時に今回教えていただいてすごく勉強になったのですが、44ページにある出産や育児の期間について保険料を納付した期間とみなすことで、給付を保障する例が諸外国にもありますが、これは今、日本でも子育て、出産、育児で人口をふやそうと進めている大きい政策にもすごく合致しているように思いますので、この被用者保険の適用拡大と、出産や育児のために離職したものに対する配慮措置の2つをを先にまとめて立法化してしまって、その中で多分、働き方が変わってくれば、配偶者が高所得であるものについてもまた変化があると思いますので、ここは2段階ロケットで対処してはどうか。大原則は3号被保険者はおかしいということを言い切る。
第1段階としては、被用者保険と出産育児のための配慮を先にやってしまう。それで2段階目で、この3号のある意味では神学論争になりそうなところは、その次の段階に置いておくという解決策がないのかなと。まとめて全部やってしまうのは理想なのですけれども、そのために被用者保険の拡大や出産、育児のために離職した者に対する配慮までが遅れてしまうのは余りよくないと思いますので、そういうふうに2段階で考える、時間軸を考えるというやり方をとっていただけたらどうかなと思いました。
もう一点の第1号被保険者の産前産後期間の保険料の取り扱いですけれども、もしこういうことをやるのであれば、原理原則をおろそかにすれば制度は歪んでくるので、1号被保険者の中で整理するというのが正論であるような気がするのですが、そうすると割増保険料しか具体的な方法はなくなってしまうように思います。でも、これはもともとの経緯を考えてみたら、今の御説明があったように政治的な判断で3党合意の中で問題提起をされたものですから、ここは整理の仕方としては例えば1号被保険者の中で整理をするという原理原則を踏まえた上で割増保険料をとるのか、あるいはこれは本当に政策優先なので、これは税金を使うのかというのは、ある意味では政治判断に属する問題かなと思った次第です。どちらがいいかということは原理原則から言えば割増だとは思うのですけれども、今の国民年金の納付状況等を考えれば、場合によっては政策判断で税金を使うということも、もしやるのであればあるのかなと思いました。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございます。
ほかいかがでしょうか。山本委員、どうぞ。
○山本委員 御報告いただきましてありがとうございました。
3号被保険者の問題については、私も専門知識がございませんけれども、いずれにしても日本の持ってきた風土の中の1つに今、これは入っているようにも思われます。
しかし、先ほどの表の中で3号被保険者が、今の状況の中におきますと少しずつ減っているようにありますが、そんなにすごく減っているわけでもないなという感じがいたします。どうしてそうなるのかということですけれども、要するに今の育児あるいは子供たちを育てていく環境づくりが十分整っていないため、3号のほうに入っているのだと思います。そこに安住する気持ちなのか、それとも例の103万円、130万円の壁がはだかるものとなっていることに、余り大きく減らない要因があるのか、なぜ、専業主婦が割と少ない率で減っているのかという感じを受けました。
ですから、3割以上を占めているということは結構な構成比だと思われ、まだ日本人の考えの中に3号というものがかなり根付いた状況にあるなという感じがしますので、これがある程度ぐっと減って、本当に10%ぐらいになったというところで3号を取り払う議論をするべきだとおもいます。これから主婦の方が社会で労働していくほうへいざなっていく、そういう国家的命題を負っていると考えますと、なぜ主婦にとどまっているのかというところはもう少し掘り下げが必要で、対策を講ずるに当たってはそういうことの解決が主婦の労働参加を打流ことへの結果につながり、その時になって、最終的には保険も個人化をしていくという方へのベクトルが働いていくのかなという感じもいたしました。
産前産後の問題ですけれども、これについては世界各国の状況を今日の報告の中で拝見しましても、世界ではかなり導入されているようにも思われますが、資料1にありましたが、日本では産後になって元の職場への復帰率というものが意外と低いのです。割とパートタイマーとかそういう形でもって職場復帰している例がかなりあるやに拝察をしたのですけれども、実際、我々企業としては、育児休暇あるいは出産休暇をとった場合に、もとと同じ程度の職場に復帰させることが、これは私ども企業に対しては1つの義務づけみたいになっているのです。
我々中小企業ですと、働く場所というのはそう幾つもないですから、その方が例えば1年とか1年半とか、出産と育児のために仕事をあけた場合に、後の人を入れておかないと間に合わないわけです。そういうことが起きたときに、その方が1年半たって戻るというときに、戻る場所が実はないということにならないように、企業はちゃんと受け皿を、もとと同じグレードの仕事が与えられるように考えておかなければいけませんよと指導を受けているわけです。しかし、実際のところこれを見ると、出産後はパートさんに戻っているということが出ているとすると、日ごろ我々が受けているそういう話と不突合みたいなものを感じたので、それは1つ質問としてお願いしたいと思います。
基本的には適用拡大の問題、これも賛成でございますし、3号被保険者の問題、今の出産前と後の問題、これらについて、できればその間の年金が要するに保険料を納めていなくても将来補填されていくという方向性で、この問題が解決されていくことについては賛成をいたしたいと思います。
そのときの財源負担のあり方は、企業側の負担にもなってきます。企業負担が増えるから反対だということではないのですが、そこのところは企業負担が増えるということも鑑みながら、年金財政本体との絡みもありますが、保険料を支払うときの免税措置の拡大のようなことに、もう少し配慮をいただくとか、いろいろな形で企業側の負担を若干緩和していくことも十分加味していただいて、今回の大きな流れを進めていかれるような配慮も必要なのではないかと思った次第です。
以上です。
○神野部会長 今の御質問といいますか、1つは減少率が停滞している話と、職場復帰をするときの2点ぐらいあったかと思いますが。
○度山年金局長 多少補足をさせていただきます。
今、御指摘があったように、育児休業法だったと思いますけれども、育児休業をとったということを理由にして、不利益な扱いをしてはいけないという規定が設けられておりますので、例えば育児休業をとったからペナルティ的に降格をするとか、仕事を与えないとか、そういう不利益な措置はかたく禁じられておりますので、そういう実態があったときには、恐らく各都道府県の均等室から指導を受けることになるかと思います。それはそのとおりです。
その上でということなのですが、第3号被保険者が減っているけれども、減少スピードがそれほど速くないことの裏返しで言うと、依然として継続就業が難しいという実態があるのだろうと思います。
特にいわゆる正規の労働者の場合には恐らく休業も保障されていますし、復職もかなりの確率でされていると思いますが、例えばこれがいわゆる非正規的な契約社員であったり派遣社員であったりと、一応、同様の権利保障はなされているとは言え、出産等を契機として雇用契約が終わってしまうようなことも実態としては多いように思います。あるいは短時間労働の場合には30時間を超えないと2号被保険者にもならないということもございます。
以前よりも継続就業への意識も高いし、一旦離れたとしても職場復帰をする意欲は高まってきているように思いますけれども、年金制度の目から見たらどうなるかという話で言うと、第3号にとどまっているような方が結構多くなっている。このように考えられるのではないかと思います。
○神野部会長 ありがとうございます。
ほかいかがでしょうか。諸星委員、どうぞ。
○諸星委員 ありがとうございます。
第3号被保険者については、私は以前から年金部会で、急に減らすとか、なくすという方向は基本的には反対でした。と申しますのは、今日この資料の論点にもあるように、単純に専業主婦世帯を優遇しているというイメージだけ先に先行していて、第3号被保険者制度をなくすべきということが一般的に言われていたのですが、現実問題として第3号の中身を見てみますと、本日まとめていただいたように育児、介護を理由としており、先ほどからもっぱら出産、育児の話が中心となっていますが、介護も実際あるのです。それと本人が病気であって仕事ができないとか、さまざまな問題がありますから、一くくりにするのはどうかなと思いまして、基本的には第3号をなくすことについては反対と思っていました。
ただ、先ほど駒村先生もおっしゃっていたように具体的な議論からもう13年たっているのに、まだ全然進んでいない。その当時の議事録を見たのですけれども、本当に進んでいないなというのが現実で、申しわけありませんが、本気でやってくださったのかなという気持ちが出てしまい、済みません。
ただ、その当時と比べて雇用情勢がかなり変わってきています。実は3号被保険者の人たちの話を聞くと、まだ働かない専業主婦、ここの資料にもありますように、いわゆる御主人が高所得者の方々がどこか素敵な場所でランチをしていた、でも一方では、130万の調整をしつつ働く第3号の方はたくさんいらっしゃって、その人たちから言わせるとうらやましいというわけではないとは思いますが、適用拡大が進むと自分たちはこれから2号として保険料を払う、だけれども働かなくてもいい人がいる、いわゆる結婚の格差、本当にはっきり言うとそうなってしまうのです。それなのに同じ額がもらえるのはどうなのか。その点はどうにか正してほしいということを現場ではよく言われます。
ですので、論点2にありますように多様な属性を持っている人たちがまだまだいるということは、今回の資料でよくわかりましたので、第3号被保険者をなくす、方向的にはいいかもしれませんけれども、すぐなくすことは難しいということ。それと第3号被保険者の存在意義を改めて実態に近づけるような見直し、今回のような資料を提出していただいて、今後見直しをしたらいいのではないか最近よく感じます。
結局のところ、今回の被用者保険の適用拡大と共働き世代がふえているということからも、第3号被保険者は今は減らないというお話があったのですけれども、多分、将来的に減るようになることは間違いないと思われます。そうすると残る3号被保険者はどんな属性を持つものになるかで、これから検討をしていく必要があるのではないかと思いました。
もう一点、第1号被保険者の産前産後の保険料の取り扱いについてですが、ここの資料にありますように産前産後期間は母体保護の観点からの制度であれば、その間に休むということは、別に1号であっても2号であっても同じだと思います。その間の稼得収入を確認できる2号被保険者と異なって、1号の収入把握については正直、実態を調べるのは難しいと思います。ですので、保険料免除制度の利用が今回提案されていますけれども、最も妥当だと思います。
ただし、認める場合には多分、申請免除という形になりますので、資料にもありますように、免除の理由が出産に伴う休業であれば、世帯もしくは配偶者の所得要件は外すべきだと思いますし、免除申請に当たって基礎となる本人の前年度の所得。やはり出産は直前に休むということで、前年度は収入が高いということも考えられますので、免除自体で言えばそういったところも見ないということがここに書いてありますけれども、そこは別の方向で考えるべきではないかと思っています。でないとせっかく厚生年金で行われている産前産後期間の保険料免除と趣旨が同様にならない、あまり導入する意味がなくなってしまうのではないかと思います。
ただ、論点2の一方、給付を考えると、全額免除の場合はここにありますように2分の1の給付であるので、本来、厚生年金と趣旨を同じくするのであれば、制度内での持ち出しが出ることについては、財政が先ほどから各委員の皆様からお話があったことと絡むので、やはり慎重にならざるを得ないかなと思っております。
一方で仮に給付が2分の1のままであったとしてしまうと、申請免除をせずに世帯的にも余裕がある1号被保険者の中には、納付したほうがいいのではないかということを選択する方も出てくる。ここで1つの格差みたいなものが出てきてしまうということもあるので、その点も含めて検討したほうがいいのかなと思います。
では何がいいのかというのは、2分の1というのは変わらずとしても、給付について例えば全額免除のほかにも2分の1とか半額とか4分の3、4分の1といろいろ免除があるのですけれども、そこは若干国庫負担がふえています。ですので、そこを例えばここの期間についてはふやすというやり方も、1つの方法としてあるのかなということは思いました。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
ほかいかがですか。武田委員、どうぞ。
○武田委員 りがとうございます。
本日は大変詳細な資料を御説明いただき、ありがとうございました。
私は働き方に中立的な社会保障制度に関し、意見を2点申し上げたいと思います。
第1に、これらの改革はスピード感を持って進めていただきたいと考えております。
1つ目の理由は、先ほど駒村委員からございましたとおり、13年、議論されてきたということでございますので、議論は出尽くしている。つまり、その議論を踏まえて結論を我々が出すべきときに来ているのではないかと思います。
もう一つは、マクロ経済の状況でございます。直近9月の日銀短観の雇用判断DIを見ますと、非製造業では人手不足感が一段と強まっている状況でございます。製造業では以前、人手の過剰感を抱えていらっしゃったわけですが、直近の値を見ますと大企業、中堅企業、中小企業、全てで不足超になっております。これは本当に珍しいことでございます。
一方で、景気はどうかといいますと、増税後は回復がおくれている状況。つまりこれは何を意味しているかといいますと、需要要因ではなく供給側の要因、つまり労働力人口の減少の影響がじわじわ経済に影響してきていることを統計は示唆しております。したがって、かねてから申し上げている経済再生と社会保障制度の持続性、それを実現していくスピードは、以前に思っていたよりは急ぐ案件として我々は捉えたほうがいいという点が、マクロ経済の統計から見たときの事実でございます。
第2に、ではどのように改革を進めるかでございますが、私は先ほど出口委員がおっしゃられたように、共働き世帯が専業主婦世帯を上回っているなどの社会の構造変化を踏まえると、総論としては第3号被保険者制度を廃止する、つまりこの制度は少し時代に合わなくなってきていることを、まずは出発点に置くべきだと思います。
一方で、諸星委員が先ほどおっしゃられたように、今回の資料に基づくと多様な方々がいらっしゃるのは事実と思いますので、原則論として廃止することを前提に、そのための移行措置といいますか、進める順番をきちんと考えることが重要と思っております。
まず、検討に当たっての論点として45ページに整理いただいておりますけれども、まずは基本的に適用拡大を進めることについては、これは先ほど来、意見が出ているとおり、私も賛成でございます。
次に、同時に行っていただきたいのが、先ほども御意見で出ておりましたが、海外の事例として配偶者の立場として出産育児期間への配慮を行うのではなくて、個人の単位の設計としていくことがあるのではないかという点。
最後に、急に第3号全てを廃止するというのは難しいという御指摘はございますけれども、一方で現役世代の所得平均を上回っている世帯の方々に、税金を投入している。つまり消費税で皆さんからいただいている貴重な税金を使って、高所得世帯で保険料を納めていない配偶者に基礎年金を支給することは、合理的には説明できないと思います。これらを踏まえると、過渡的な移行期間として、少なくとも平均所得を上回る世帯の配偶者には、保険料をいただくことが移行措置として考えられると思います。
ただ、先ほど駒村先生から御指摘のありました労使折半の問題があると思いますので、労使折半ではなく、一人1万5,000円を御負担いただくというのが1つの案と考えます。その制度変更を適用拡大と同時に行えば、先ほども諸星委員がおっしゃられたように、適用拡大によって頑張って保険料を納める方からも納得が得られる形になるのではないかと考えましたので、意見として述べさせていただきました。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
ほかいかがでございましょうか。小塩委員、どうぞ。
○小塩委員 皆さんからいろいろ御意見が出ておりまして、私からつけ加えることはあまりないのですが、私も第3号被保険者は基本的にできるだけ縮小していく必要があると思います。さらに、国民年金については、今までの財政検証の数字を見ましても、持続可能性が非常に難しくなっています。そのため、改革の方向としては第2号に第3号の人を移していって、それで国民年金の規模を実質的に縮小していくという方向しかないと思います。
その場合、オプション試算でも既に明らかになっていますが、適用拡大の(1)、(2)のうち、(1)の適用拡大だとほとんど効果がないという印象を強く持ちます。実際にやるのだったら(2)を考えていいと思います。所得代替率への影響を見ても差は歴然としています。ですから、働くことに対して年金を中立的にするということと、国民年金の持続可能性を高めるという二兎を追うのであれば、できるだけ被用者保険の適用拡大をすることを考えていいのではないかと思います。それが1つです。
それから、産前産後に対する支援のあり方です。先ほどから御議論がありますけれども、私は1号であろうが2号であろうが3号であろうが、皆さん同じような制度的なメリットを受けるべきだと思います。
国民年金の人たちは厚生年金の人に比べて難しいという御指摘がありました。まさしくそのとおりだと思いますが、それも現行の国民年金、厚生年金の枠組みを想定したらそうなるということだと思います。国民年金の規模を圧縮して、厚生年金の規模を拡大するという形の改革を思い切って進めると、国民年金の抱える問題も全体として解消しやすいのではないかと思います。
ですから、問題の多い国民年金、第3号をできるだけ縮小していって、全体で国民年金の問題あるいは第3号の問題を解消する。そういう改革がいいのではないかと思いました。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
○山口委員 すみません、先ほど第1号の産前産後の話を言うのを忘れていましたが、今、小塩先生おっしゃったのと私も基本的に同じでございまして、1号、2号、3号であっても同じようなメリットを受けられるようにすべきだと思っております。
以前、当部会で発言したときには税財源等も含めてということを申し上げていたわけで、もちろんそれができれば一番いいわけですけれども、一方で年金制度側で何とかできないかということもあろうかと思います。その場合、国民年金の保険料を上げるという話は今の2004年改正で保険料を固定して、その中で運営していくという約束のもとで今、やっているわけですので、なかなか難しい面もあるのではないかと思います。小塩先生もおっしゃったように、国民年金を縮小していくようにすれば、その中で積立金はそのまま残りますから、それを活用していくといったような方法もあると思うのですけれども、私は先ほど菊池先生おっしゃったように、どちらかと言えば被用者年金から支援していくといったことをもっと目的限定的にして、こういう次世代支援とか、産業構造の変化といったような全体で考えなければいけないテーマに限って、被用者年金から国民年金を支援する。そのときに基礎年金への拠出金の算定方法を見直して、これは前回申し上げたのですけれども、これを変えまして、それで要するに国民年金から基礎年金に出す部分を減らして、そして被用者年金から出すものをふやすといったような算定方式の変更をするといったようなやり方の中で、実質的には国民年金の財産をふやすことになるのですけれども、何かできないものかと考えております。
ですから目的限定をして、その目的に限って被用者年金からの支援を行うといったような工夫があるのではないか。これは例の調整期間が今回の財政検証で非常に開いていますけれども、基礎年金と被用者年金の間で随分差がある。これを何とかそろえたいというときの方法論でもありまして、そういった議論についてはまた別途の機会にこの部会でやることもあるのではないかと思いますけれども、その中でこの問題もまた議論してはどうかと思っております。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
御発言のない花井委員、どうぞ。
○花井委員 1つは130万円問題ですが、私はこの制度ができたころからおかしいと思っていました。保険料を払わないで給付を受けるというのは、保険としてあり得ないと思っておりました。85年にこの制度が導入され約30年近くたつわけです。ただ、この間のさまざまな女性の就業状況等を見ますと、いまだに第1子出産で6割近い女性がやめている、そして、再就職した多くがパートタイマーにならざるを得ないという、非常にまだまだ差別的な雇用状況が解消されていない中で直ちに解消するというのはとても難しいだろうということはわかります。
それから、仮に負担をふやすということで、今の1号保険料を追加するにしても、現実的な家計の状況からは無理だろうと。そういうことを考えますと、やはり適用拡大で縮小していくしかないのではないかと思います。ただ、その縮小のスピードは上げていく必要があるだろうということです。
それから、1号被保険者の産前産後期間の扱いですが、なかなか難しい問題だと思います。説明を受けて、当初はとてもいいのではないかと思っていましたが、財源を考えるとやはり難しいと思います。
もし仮にやるのだったら、国民年金の財源の中でやることではないかと思います。被用者である2号から支援してはどうかということもあり得るかとは思うのですが、今、医療保険でも全面総報酬割を導入して浮いた国庫負担を国保に、というふうに、被用者というか、取りやすいところから持っていくということが安易に行われようとしているという危惧があります。仮に2号から何らかの支援を、といった場合に、今の段階で絶対反対とかそういうことではないですが、やはり慎重な検討をしていただきたいと思います。
もう一つ、3号のところで「出産や育児の期間について保険料を納付した期間とみなす」諸外国の例もあるのですが、この資料44ページのところ、みな「母親」という表現になっていますが、育児期間も「母親」と限定しているのでしょうか。これは質問です。出産は間違いなく女性にかかわる話なのですが、育児は育児休業を男女ともにとれることになっておりますので、それをこれから先の社会に向かっていくときに女性と限定していいのかというのが気になりました。
○神野部会長 これは表現上、こうなる場合とこうならない場合。
○年金課長 補足で説明します。
44ページの資料は各国の制度を調べて、かなり忠実に書いていますので、親と書いてあるところと、父とか母とか書いてところは書き分けていますので、基本的に親と書いてあるところは両性とも同じ扱いを受けると考えてください。
その上でフランスの(2)の子を養育した母親について云々というところは、これは母親だけです。子供を育てた期間1年につき1適用四半期、子1人につき8適用四半期を上限としてということでやった上で、(3)で育児休業を取得した父、母、これは両方になっていますし、母親については(2)を除くと書いていますので、(2)はそういう意味で言うと(3)に包含される関係にあるのだと思います。いずれにしても、(2)の部分は母親に限定された措置と考えていただければと思います。
○神野部会長 よろしいですか。では、駒村委員どうぞ。
○駒村委員 先ほどの山口先生と菊池先生の1号の産前産後のお金をという話を2号と合算して、2号というか厚生年金財政の調整も含めてというお話は、完全に私は否定するわけではないですが、この問題でよく考えなければいけないのは制度、つまり保険料の徴収とか、保険料の設計も含めて分かれたまま財政をあたかも一体化するようなことをやるということがどこまでいいのか。もしそういうことを考えていく。確かにそのことをやることによってマクロ経済スライドまで視野に入れれば、いろいろなメリットも出てくると思うのですけれども、ただ、そこをちゃんと整理しておかないと、そうなってくると基礎年金の意味とか、基礎年金の拠出金の計算とか、そういうものに全部かかわってきてしまうので、もしそこまで踏み込んでいくとするならば、ちゃんとそういうところを整理していおかないと、苦しくなったら厚生年金から持ってくればいいんだというのは非常にルーズなことになるのではないかと思いますので、ただ、そこを超えて財政を統合するような話になってくると、かなり大がかりなというか、理屈を整理しなければいけない話だなと思います。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
小塩委員、どうぞ。
○小塩委員 ちょっと話がずれるかもしれないのですが、先ほど山本委員から第3号が減ってはいるのだけれども、そんなに減っていないという御指摘がありましたが、第3号とうはどういう人なのかもう少し調べておく必要があると思うのです。
実は私は日本と韓国の既婚女性の生活満足度、結婚満足度の比較をしたことがありますが、日本の既婚女性の満足度は高いのです。どうしてかというと、日本の既婚女性は、仕事はパートで、おうちでも家事をやっているというケースが多い。韓国の女性はフルタイムの人がほとんどですが、儒教的な規範が強いので、家事もさせられるということで結婚満足度は低いのです。日本の既婚女性は韓国の女性に比べると――こんなことを言うと男女共同参画に完全に逆行する言い方になりますが――仕事もそこそこやって、家事もそこそこやるという、非常にうまくバランスをとっているということです。その背景にあるのが第3号被保険者問題だと思うのです。
あまり働いても保険料を持っていかれるからほどほどにしておいて、おうちで家事をやりましょう。それで微妙なバランスがとれるということです。働くことに中立的にする制度にしましょうということで我々は議論しているわけですが、今までも第3号については問題が多いと指摘がありました。でも、ずっと残っているわけです。それだけ第3号をやめるということに対する世間の意見は結構ネガティブだと思うのです。反論が十分予想されるわけです。
そういうことを考えますと、第3号が女性の働き方にブレーキをかけているというのは、それはそのとおりだと思うのですけれども、それ以上に、制度を変えることによって、あるいは解消することによって、もっといい世界が実現するという絵を描かないと、世の中の現時点の第3号の人たちを納得させられないのではないかと思うのです。
そういう観点から言いますと、有識者会議が出しているように、所得に応じて国民年金の保険料を上げますというだけではだめだと思うのです。これは保険料を払うだけで全然もらえるお金はふえないということですから。厚生年金の適用範囲を拡大するというのは、それは理にかなっていると思うのですけれども、それだけで国民は納得できるのかなと言われると、私は自信がないのです。この制度を改変することによって、もし何かもう少しメリットがないと。ういうことがもし事務局でお考えであれば、教えていただきたいと思います。
○神野部会長 最初の実態にかかわる資料をもう少しというのと、ビジョンを描けという2つあるのですね。
○小塩委員 そうですね。実態につきましてはきょう既に、ダグラス・有沢の法則では説明できないとか、第3号はいろいろな配偶者の所得層に万遍なく散らばっているという実態を示していただきました。第3号の問題というのはそんなに一面的に議論できませんよという説明を受けたので、それで納得したのですが、何か国民を納得させるような第3号の改革のビジョンというものがもしあれば、教えていただきたいと思います。○神野部会長 今の時点でコメントしていただけることがあればお伺いします。
○年金課長 なかなか現在、以上のメリットというのは難しいのですが、先ほど説明のときにも触れましたが、19ページ、20ページ、確かに20ページにあるように民間有識者の御意見の中からも、負担をするというからには何かベネフィットというかメリットというものがないとというのは、かなりこの議論の中でも強調されたところだと思います。私ども大臣に出ていただきましたけれども、言ったのは、先ほどお話があったとおり厚生年金に加入しないとメリットはない。年金の世界はそうなのですけれども、実は同じ問題が医療保険にもあって、医療保険のほうは被保険者本人も被扶養者も3割負担で同じになってしまったので、休んだときの傷病手当金とか、そういうものがあるよということぐらいで、実は年金はまだ上乗せ給付のメリットがあるほうで、医療保険はさらにメリットが少ないという事情もございます。
御指摘いただいたのでいろいろ考えてみようとは思いますが、現行の社会保険の仕組みの中では制度設計上なかなかこれ以上のメリットはつくりにくいというところです。
○神野部会長 柿木委員、どうぞ。
○柿木委員 どうもありがとうございました。
大体議論も出尽くしているので私から特に言うこともないですが、第3号被保険者問題は難しい問題だと思います。先ほど小塩委員がおっしゃったように、まずは短時間労働者に対する適用拡大です。最初は25万人しか対象にならないので、早く非適用事業所に勤めるパートを含む600万人に適用して、ここを洗った上で、残った第3号被保険者というのはどういう内容になるのか。それをもう少し考えたほうがいいのではないか。今、聞いていますといろいろなパターンがあると思うので、まずは適用拡大の促進をするというのが第一義ではないかというのが第1点です。
先ほど山口先生からお話が出ました被用者年金からの支援という問題ですが、確かにマクロ経済スライドの調整期間に差があるというのも非常に気になりますが、雇用者年金からすると本来の制度の趣旨から言って、ここで枠組みを崩して支援をするというのはなかなか理解を得られないのではないかという気がします。これについては皆さんから御意見が出たのであえて言いますけれども、基本的なフレームから変えるのだったら話はわかりますけれども、被用者年金からの支援については疑問があるというのが私の意見です。
○神野部会長 ありがとうございました。
諸星委員、どうぞ。
○諸星委員 先ほどの小塩委員のお話から思ったのですが、実際に3号の人たちの話をいろいろ聞いてみると、基本的に自分の保険料は旦那さんの給料から引かれているのでしょうという意識があるのです。それは違うはずなのに、要は第3号の仕組みを知らないのです。
もう一つ、以前、私も何回かお話をしましたが、再就職支援のときに皆さん3号でずっといるとこれだけしか年金をもらえません。2号になるとこれだけもらえますという差をつけて見せると、将来倍近い金額がもらえますよというと、すごくそういったところは女性はシビアですので納得するのです。そうすると自立した生き方をしましょうかと説明をすると、今まで3号でよかったわという方でがらっと考え方が変わることがあるのです。
ですからベネフィットで言うにも正しい年金のあり方とか、いつも何回も言うようですけれども、子どもさんだけではなくてそういった女性の方々にもこれから就労機会をどんどん強化する、適用拡大を進めるという意味であれば、基礎年金だけで満足する働き方ではない働き方を目指すというような方向性にもっていける方法を厚労省において何か検討されたらいかがかなと思います。
本当にアンケート結果を見ますと、今までは3号でよかったんですというのがうまく伝えるとがらっと変わるというのは、もしかしたらこれから今の旦那さんとは将来うまくいかないから離婚するわという頭にあるのかもれしませんけれども、本当にそこのあたりは女性がシビアですし、もしかしたら小塩先生のアンケートを受けた方々は比較的高齢者の方だったのかもしれません。若い人は今、専業主婦を夢ではないですけれども、あこがれの、1つの私は職業だと言い切るぐらい若い人たちが専業主婦でいたいと言う方も多いので、ちょっと待てよということでお話しています。また本日の資料でおもしろいところは、41ページにある中高年層の就業形態を見ると、女性が50~54の場合は2号被保険者がある程度多いのですけれども、定年前の55歳、59歳と下がっているのです。これは何でだろうということもありまして、もしかしたら3号に1回戻って楽しようという気持ちもあるのかもしれませんが、やはりそういった部分で3号に対しては誤解がある。それから、3号でない働き方を目指すというものをうまく伝えていけば変わってくるのかなと私は思いました。
すみません、小塩先生のお話を聞いて、うーん、そうかということもありつつ、でも現実そういうこともありますということでお伝え申し上げました。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
○年金課長 若干補足をさせていただいていいですか。
まず、今、御指摘があった41ページの特に女性で50代後半のときに第1号被保険者が結構ふえていますが、これは恐らく60歳でパートナーが会社を退職する。そうすると2号被保険者でなくなるので、女性の方も被用者保険の被扶養者にならなくなるので、制度的には2でも3でもない1になるという形でふえてきているということです。ただ、この率は恐らく男性の方が60を超えても継続就業するようになると、変わってくる可能性はあると思います。
もう一つは、いろいろメリットという話で1つ考えなければいけないのは、きょうの資料にはデータはないのですが、実は2004年の改革のときにはモデル年金のベースになっている男性の平均的な手取り収入というのは40万弱ございましたけれども、今回の財政検証ではそれが35万円程度にある意味では下がってきているということがございますので、そういう意味で言うとできるだけ男性も女性も稼得活動に従事をして、結局、男性に寄りかかっていても男性の給料自体が減ってきているという現実があるので、そういうことも含めてどう考えるかということを、これは社会全体で考える必要があるように思いました。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
それでは、ほかに。どうぞ。
○山本委員 雑感のようなことでまことに申しわけなく思いますけれども、今、消費に意欲を持っている人と、今は消費を縮小していても将来の担保をたくさんとりたいと思っている方、今までの議論と外れていることを言っているのかもれしませんけれども、いろいろ個人差がこれからかなり幅広に出てくるときだろうと思います。
そこに企業年金の問題や、個人加入保険の問題もありますから、選択肢はなるべく広いほうがいい。そこに自分の働きによって将来というものをどう描くのかという問題も絡んでくるので、例えばヨーロッパのような高負担高福祉型の国を日本は求めていこうとするのか、それとも日本はもっと違う、活力のある国を目指していくのだから、若いころからいろいろな消費活動を活発にやりながら将来も働いていくんだというふうにするのか、そういう国家像や働く労働者像みたいなものについて、何を目指すのかということによって随分価値観が変わってくる。将来はうんと年金がもらえると概念を頭に固定化してしまっている方は、何だこれしかもらえないのかよということの不満につながったりもするのですけれども、その辺の皆さんの庶民の方々が持っておられる将来の生活のありよう、あるいは今の生活のありよう、つまり、消費税が上がって、給与所得が上がるからと言っていながら、経済が本当に活性化しているような実感というものが、ここのところほかの円安の問題とかいろいろあると思いますけれども、ちょっと停滞を感じている状況もありますから、今はもっと経済を活性化する方向に向けて、むしろ将来の担保よりは今をもっと活力ある国にしていこうと考えるか、先ほど小塩さんはビジョンとおっしゃいましたが、その辺のあり方によって今の30代、40代の人たちもどういう自分の人生設計を描いたらいいのかというところが明確になり、それによって今の経済が活性化するかどうかというのは、そこにかかってくるのかなという気もしまして、こういう議論と同時に、その辺の概念形成の問題をどういうふうにやっていくのかということも非常に重要なポイントではないかということも感じました。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
それでは、ほかになければ冒頭申し上げましたように、一旦ここで5分程度の休憩をとらせていただいて、議題3に移りたいと思います。
(休 憩)
○神野部会長 それでは、引き続き部会のほうを開催させていただきます。
冒頭申し上げましたように、引き続いて議題3「遺族年金制度の在り方について」に移りたいと思います。
関連する資料につきまして、事務局から御説明をお願いできますでしょうか。
○年金課長 それでは、引き続いて資料3「遺族年金制度の在り方」について資料をまとめてございますので、御説明いたします。
まず、遺族年金制度はこれまで議論の対象になることが少なかったので、現行の仕組みがどうなっているかということについて、まず誰に支給されるかということをまとめてございます。この表を見てもなかなかわかりにくいのですけれども、遺族年金は基本的に世帯の生計の担い手が死亡したときに、その者によって生計を維持されていた遺族の生活を保障するという仕組みになってございます。
基礎年金のほうは、子のある配偶者または子供自身ということになってございます。これは先般の一体改革で女性だけ、いわゆる母子世帯だけだったものを父子世帯にも拡大をいたしました。
一方で2階の遺族厚生年金の支給対象に関しては、基礎年金よりもかなり広うございまして、1つは配偶者、子ども、そのほかに例えば父母とか祖父母とか孫とか、非常に範囲が広く設定されているところでございます。特に実際に支給対象になるケースとしては配偶者が多いと思いますので、後の議論は基本的には配偶者、それから、それをめぐっての男女差というところに焦点を当てて御説明をしたいと思います。
4ページ、遺族年金の受給の要件と年金額ということでございます。遺族基礎年金は先ほど申しましたように18歳未満の子どもがいる場合に、国民年金の被保険者あるいは受給権者などが死亡した場合に支給をされるということでございます。年金額も基礎年金ですので定額で、子どもがいるということでございますので、子どもの人数によって加算があるという仕組みです。
一方、遺族厚生年金のほうは仕掛け的には2つの給付がございます。我々短期の給付と言っておるものと長期の給付と言っておるものです。
遺族年金としてイメージをしやすいのは、現役時代、いわゆる働いているときに亡くなった場合ということで、厚生年金に加入中に死亡した、あるいは加入中に初診日のある病気やけがで死亡した場合ということで支給をされます。この場合、年金額は亡くなった方の老齢厚生年金の4分の3ということになりますが、加入期間が1年とか5年とか非常に短い場合は、この加入期間をもとに年金額を計算すると非常に低くなりますので、最低25年300月分の年金が保障される。このようになってございます。これが短期要件という仕組みです。
一方、長期要件、下のほうになりますけれども、これは老齢厚生年金の受給権者とか受給資格期間を満たしている人が死亡した場合に支給されるということですので、主に中高齢期での死亡ということになります。この場合には死亡した方の老齢厚生年金の4分の3を引き継ぐ形で自分が受給するということになります。御自身も老齢厚生年金の加入期間をお持ちの場合には、4ページの右下に書いてあるように、一定のルールで調整をするという仕組みになってございます。
5ページ、遺族年金は基本的に生計を維持していた人が亡くなったときにということですので、生計維持の要件を満たすということがポイントになります。この生計の維持の要件として定めておりますのは、年収が一定程度高くないというところでございまして、現在は850万円。したがって、ある方が亡くなったときにパートナーの方が御自身の所得が850万円より上か下かということで、生計を維持されていたいないという判断をするという仕掛けになってございます。
真ん中ほど下線を引いてございますけれども、これは法律上の権利発生要件として設定しておりますので、通常の所得制限とは違う考え方で、850万を超えていれば、それは自分の稼ぎで生計を立てていたのだろうということで、生計を維持されていたという要件に当たらないということで、遺族年金の支給の対象にならないという考え方で制度を動かしてきてございます。
6ページ、遺族年金制度、たびたび改正をしてきてございますけれども、大きな改正としてはそれまで2本立てだった、いわゆる国民年金の遺族年金、厚生年金の遺族年金というものを基礎年金制度の導入に際して、これも1~2階の構成に改めたということがございました。2004年改正のときにも遺族年金制度について若干議論をいたしまして、特に夫の死亡時に年齢が若い方、20代の方に関しましてはずっと給付するということではなくて、5年間の有期給付にするというふうに改めるとか、あるいは御自身の老齢厚生年金の受給権を持っている場合には、まずそれを優先して出す。遺族年金はその差額分を出すという形で制度改正を行ってきてございます。
一体改革では、平成24年遺族基礎年金の対象者を父子家庭に拡大するというのが、今年の4月から施行されてきてございます。
平成16年の改正のときの年金部会の意見書の遺族年金に関する部分を抜粋しておりますが、今日は省略をさせていただきます。
8ページ、どれくらいの方が遺族年金を実際に受給しておられるかというデータをまとめてございます。このデータは父子拡大前ですので、まだ遺族基礎年金は妻、子どもしかございませんけれども、合わせて大体受給権者で24万人、実際に受給されている方は妻に支給されますと子どもは支給停止になりますので、そういう意味で言うと9万5,000人ぐらいの人が受給しておられるということでございます。
一方、遺族厚生年金は子どもが巣立った後も高齢期にも出るということですので、全体では440万人ぐらいの方が受給しておられる。このようになってございます。
9ページ目に年齢分布を整理してみましたけれども、遺族基礎年金の場合には18歳未満の子を養育しているという要件がかかりますので、年代としては40代が中心となっている。これに比べると遺族厚生年金のほうは受給権者の死亡というケースも引き継ぎますので、どちらかと言うと65歳以降、特に70代に入っての受給者が圧倒的に多い。これは要は年金を受給していた男性のほうが平均寿命が短いですので早く亡くなって、それを遺族厚生年金という形で残っている女性が受け継ぐ。そういう人が多いという実態を表していると言えるかと思います。
ですので、遺族年金と言っても実は子どもを育てている若齢期の給付と、高齢期に特にパートナーが亡くなってお一人になった特に女性の方が受け取っていらっしゃるというのと、2つの給付が同じ遺族年金という仕組みの中に混在しているということをまず御理解いただきたいと思います。
10ページ、11ページ、12ページは、今、申し上げたことを夫婦が同年齢というふうに単純のために仮定をいたしまして、それぞれいつの時点でなくなったらどういう給付がいつから出るかということを矢印で示してございます。詳しい説明は省略をさせていただきたいと思います。
13ページ、ここまで、申し上げたとおり、遺族年金、特に遺族厚生年金の設計は、まだ第3号被保険者は男性も女性も同じ扱いを受けるのですけれども、遺族年金は完全に男性と女性で扱いが違うということで考えると、かなりいわゆる男性稼ぎ手モデルをベースにした設計となっていると思いますけれども、第3号被保険者のところでも議論があったように、だんだん社会としては共働きのほうに移行してきている。女性も継続就業するようになってきている。そう考えたときに遺族年金というのはどういう姿になるかというものを考えてみる必要があろうかということでございます。
14ページには困ったときには各国の比較をするということで、主要国における遺族配偶者に対する遺族の給付の仕組みというものをざっと並べてみました。大変細かくてわかりにくいのでございますが、大ざっぱに申し上げますと、受給資格における男女差というのは、日本を除いてほかの国には基本的にはない。なので男性も女性も同じ扱いを受けるというふうになっている。
それから、真ん中ほどになりますけれども、子どもを養育する遺族配偶者に対する遺族給付というのは、家族給付制度というものが別にあるフランスを除きまして、基本的にどの国にも存在をしているということになります。そういう意味で言うと日本の男性が亡くなっても、女性が亡くなっても遺族基礎年金を給付するという設計に関しては、この流れに沿っていると考えられると思います。
一番大きな違いは、その下にございます子どもを養育しない遺族配偶者に対する遺族給付というところでございますけれども、特に若い年齢でパートナーを亡くした方に関しましては、給付がないという国もございますし、給付があっても2年間とか5年間の有期給付となっているのが多い。日本の場合にも20代に関しましては5年間の有期給付としておりまずか、30代以降は基本的に亡くなるまでずっと出るという仕組みでございますので、ここは大きな違いだろうと思います。
また、その下に中高齢の遺族と書きましたけれども、こちらはどうしてもパートナーが亡くなったときに、中高齢の方はなかなか働くということが期待しにくくなるので、ある程度の配慮は設けられているということかと思いますけれども、細かい字で恐縮なのですが、年齢のところだけ拾って申し上げますと、アメリカは60歳以上、ドイツは45歳以上、フランスは55歳以上となっておりますので、どちらかと言うと年齢の定めのない日本よりはかなり狭い範囲で給付が捉えられている。日本の遺族厚生年金も男性に関しては55歳以上だと支給になるということなので、むしろ諸外国の子どもを養育しない場合の遺族年金の設計というのは、日本の現在の男性の遺族厚生年金の設計にかなり近い。このようなことが言えようかと思います。
今、口頭でざっと申し上げたようなことを、15ページには遺族年金制度の諸外国比較から得られるインプリケーションをまとめてみました。繰り返しますと、男女差は多くの国で解消されている。子どもを養育する遺族配偶者に対しては通常給付はある。子どもを養育しない、特に若い年齢の配偶者の場合は給付がない国もあるし、あっても有期の給付である。子どもを養育しない中高齢遺族配偶者に関しましては、どの国にもあるにはあるのですけれども、有期の国というのもありますし、無期給付になる国でも年齢が55歳とか60歳とか高いということが言えるかと思います。
一番この点についてラディカルな制度改正をやっておりますのが、16ページにまとめましたイギリスでございまして、左下、年金支給開始年齢に達した遺族に対する給付ということで、現行の仕組みにおいては当然、女性の方は働くと御自身で基礎年金の加入歴を持っているということですが、それに死亡した配偶者が納付した保険料に基づく基礎年金額を最大満額まで加算をするという措置がとられておりましたが、この仕組みを2014年の制度改正でなくしてしまうということをしました。
改正の理由ということで、英国政府の資料から引用しておりますが、受給開始年齢に達した女性の75%が配偶者の年金記録ではなくて、自身の加入歴に基づいて満額の基礎年金を受給している。御自身で働くということもあると思いますし、第3号のときに御説明したように、出産や育児で離職した期間については、保険料納付済みというカウントをするという仕組みもございますので、そういうことで言うと自身の年金記録に基づく年金権ということでかなり保障されるようになってきたので、もうこういう給付は要らないということで廃止をしたということが、かなりラディカルな改正だと思いますけれども、実際にやった国もあるということでございます。
さて、こういうことから論点を整理しますと17ページ、現行の遺族年金の仕組みというのは、主に男性が家計の担い手であるという考え方を色濃く残した制度設計になっている。これを共働きが一般化していく中でどういう所得保障の仕組みにしていくか。こういう問題として考えてみることが必要かということです。その場合には男女の要件の違いもさることながら、特に養育する子どものいない場合の給付設計をどう考えるかというところがポイントになるように思います。
以下、18ページは男女差についての資料をまとめてございます。
19ページ、遺族年金の男女の要件の違いについて整理をしてみました。基礎年金については繰り返しになりますが、父子家庭も給付対象としたことで男女差はなくなっております。遺族厚生年金については、残された配偶者の受給要件には男女の違いが残っている。男性の場合、55歳以上という年齢が高い設定になっているということですが、実は養育する子どもがいる場合には、配偶者ではなくて子ども自身に2階の遺族厚生年金が支給されることになっておりますので、母子家庭にも父子家庭にも給付は出ていることになります。
一方で、養育する子がいない場合には男性の場合には出ない。女性の場合には子どもが巣立った後もずっと遺族厚生年金は出続けることになるという違いがあるということになってございます。
20ページ、21ページには、遺族年金の受給者の実態調査からのデータです。細かくは説明いたしませんけれども、確かに現役世代、65歳未満の遺族年金受給者については、就業に関して言うと半数以上の方が就業していらっしゃいますが、これは先ほどの第3号被保険者と同じように臨時雇用の形態が大きくて、収入も決して高くない。これは子どもを育てながらの就業という非常に制約の多い就業ですので、なかなか満足に仕事をすることがままならないという事情は考えなければいけないかと思います。
特に次のページになりますけれども、かつて働いていた人は引き続き就業しているという割合が高いのですが、パートナーが亡くなる前に働いていなかった方というのは、なかなかパートナーが亡くなったからということで急に働けるかというと、そうではないという実情も垣間見ることができると思います。
22ページには、男性と女性のいわゆる賃金格差の問題のデータを出してきております。共働きを前提にした諸外国のような制度設計に変えていくことを方向性として志向することを考えたとしても、今、見ていただいたデータのように、それを一時に行った場合には、高齢女性の貧困問題をさらに大きくするという心配はあろうかと考えます。そういう意味で言うと移行の仕方というものが非常にこの問題を考える上では1つのポイントになろうかと思います。
23ページは4つ目のテーマですが、遺族基礎年金の支給対象の拡大の施行過程における問題ということで、1点、先生方へのお断りがございます。
24ページに書いていますとおり、遺族基礎年金の父子家庭の拡大はもう法律も通りまして、今年4月から施行されております。この議論については次のページにございますように、男性と女性で支給要件に差がある。特に父子家庭には支給されないということの問題について問題視されて、特に児童扶養手当については父子家庭に拡大をした。遺族年金にもという議論の中で、一体改革で課題になって、実際に措置が行われたということでございます。
26ページには、その際に当部会でも御議論をいただいたときの議論を御紹介してございますが、その際に1点、特に父子に拡大をすることになりますと、先ほどの3号制度のところで御説明したように、2号、3号カップルというものが非常に多い。妻のほうが亡くなるというふうに考えますと、第3号被保険者の死亡というケースが相当多くなる。このことについて3号被保険者が亡くなったとしても、2号被保険者が働いていることについては変わりはないので、いわゆる所得喪失がない。したがって、支給をする必要性は余り大きくないのではないかという議論があったところでございまして、そのような議論を経て、その次のページ、一体改革における遺族年金の見直しということで、当方事務局から出したペーパーでは、父子には拡大をするのだけれども、被扶養者である第3号被保険者が死亡した場合には、遺族基礎年金を支給しないこととする。このような形で見直しを行いたいということで御説明をして、御了承をいただいたという経緯がございます。
ところが、実際にこれを施行しようということで、第3号被保険者死亡の場合には、いわゆる生計維持に当たらないというという形で生計維持要件の1つとして書き込んで、政令案を規定しようとパブリックコメントにかけましたところ、28ページにあるような様々な御意見が寄せられたところでございます。
29ページ目、特に問題ではないかと指摘をされましたのは、実は3号の死亡というのは、第3号というのは必ずしも女性に限られた制度ではなくて、実際に男性の方で第3号被保険者になっていらっしゃる方も1万人ぐらいいらっしゃいますが、特にずっと家計を支えていたのだけれども、病気などで仕事をやめざるを得なくなった。パートナーが働いていたので、その扶養に入る形で第3号被保険者になっていた。こういう方が亡くなった場合に、今の仕組みは男性が亡くなった場合には1号でも2号でも3号でも支給がされるということになりますが、3号被保険者死亡の場合に支給しないというふうに改めますと、この場合、出ないという結論になります。
ところが、実際には家計は長らく夫のほうが主に支えてきたような家庭でも、夫が亡くなっても出なくなるというようなことは余りにも酷ではないか。このような御意見をいただいたわけです。法律の授権の範囲内での政令の規定において、どういう措置ができるかいろいろ考えたのでございますけれども、最終的には30ページ、これはパブリックコメントに対する厚生労働省の回答ということで、ことし1月にお示しをしたものでございますが、政令で規定できることには限りがあるということで、第3号被保険者が死亡した場合に支給しないというふうな従来の方針を見直して、3号被保険者が死亡した場合にも給付は出るという形で一旦施行しておいて、ただし、共働きの増加などの社会実態の変化を踏まえた遺族年金全体の見直しということの中で、この問題をもう一度再整理をしたい。このような形で回答して今日に至っているというところでございます。
31ページ、そういうことにして以降、ではこの問題はどういう形で考えればよいかということで論点整理をしてみたのが31ページの資料でございます。現行の仕組みというのは繰り返しになりますが、主に男性が働いて家計を支えるという考え方で制度構築をしている。なので死亡した男性が何らかの事情で稼得活動から離れていて、第3号被保険者になっていたとしても、父子拡大前に関しても遺族年金が支給されるという扱いになっていたということです。
逆に、女性が死亡した場合には男性は基本的に働いて家計を支えているという考え方で制度構築されていますので、残されたに男性が現役期であれば、それは所得保障の必要性は薄い。したがって、基礎年金の給付対象には父子家庭は入れないということですし、2階の遺族厚生年金についても、被保険者死亡時点で55歳以上でなければ対象でない。こういう形で制度設計がされていたということでございます。
遺族基礎年金の父子拡大というものは、このような遺族年金についての制度設計上の考え方を本来変更しないとできないということであったということだと思います。
(1)のように特定の性に生計を維持する役割を当てはめるのではなくて、実際に生計を維持していたということに対応して、そういう方が亡くなったときに遺族年金給付を出すという形で制度を設計するか、あるいは(2)に書きましたように、これからは男性も女性も一時離れている期間はあるかもしれないけれども、基本的には生涯を通じてともに生計を維持する役割を果たしているという考え方で制度を設計するか、どちらかに考え方を変更するという形で行うべきものであったと考えられるわけです。
若干この議論が不十分なまま、父子拡大をやったかなという思いはございますが、特に第3号被保険者死亡の場合には遺族基礎年金の支給対象としないという考え方は、この(1)、(2)で言うと(1)の考え方を念頭に置かれていたものだと考えられるわけです。
ただ、これを制度上、徹底をしようと思いますと、先ほどパブリックコメントで指摘されたようなケースの取り扱いが問題になる。それから、これから被用者年金の適用拡大をやってまいりますが、特に段階的、経過的な拡大ということで、例えば同じ働き方をしていても企業規模によって適用になる人ならない人みたいな適用が分かれる。2号か3号かがそこで分かれると、同じ働き方をしていても遺族年金の対象になる人ならない人みたいなのが出てくるとか、あるいは第1号被保険者の世界においても、例えば学生さんのように働いていないので保険料の納付猶予であるという人についても、遺族年金は対象にしているということですとか、実際に生計を維持していたことに対応して制度を設計するというものを徹底しようと思うと、いろいろな問題が拡大するなということを考えたということです。
一方で(2)の考え方を基礎に置いた場合には、亡くなったのが男性であっても女性であっても遺族年金の支給対象になる。ところが、先ほど外国の例で見ていただいたように、支給の内容は男性も女性も就労するという考え方に見直されるということを意味すると思います。
先ほど御説明しましたように、子どもがいる場合には男女ともに出すけれども、子どもがいない場合にはかなりシビアな給付設計に外国はなってございますので、(2)の考え方でいくと遺族年金全体がそういう形で見直される。そういうことになろうかと思います。
最後に、第3号被保険者が死亡した場合の遺族基礎年金の取扱いと書きましたけれども、こういう遺族年金制度全体の見直しの方向とともに検討する。単純に第3号被保険者死亡だから外す外さないという議論はなかなかしにくいのではないかということで、このように論点をまとめさせていただいたところでございます。
全体を通じて32ページに整理をしてございますけれども、共働きが一般化するということを前提とした場合に遺族年金をどう考えるかということで、特に欧米諸国に見られるような、養育する子どもがいない場合の給付設計への見直しの必要性とか是非というものをどう考えるか。あるいはそういうふうに見直していくにしても、タイミングやスピード、あるいはどこからどう変えていくかというところを上手にやらないといけないという問題。それから、こういうことの中で今、御説明した第3号被保険者死亡の場合の取扱い。そのようなことを考えていく必要があるということで整理をさせていただきました。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいま御説明いただいた資料に基づいて、検討に当たっての論点などを整理していただいておりますので、御意見を頂戴できればと思います。いかがでございましょうか。
○出口委員 きちんと説明していただいてよく理解ができたのですが、1つの観点は、先ほどの議論で山本委員が御指摘になった活性ある社会をつくっていくという点は、すごく大事な点だと思います。そうすると、本当に社会が活性化するということを考えたら、今の人口構成を考え、財政の状況を考えたら、これは31ページであれば(2)ですけれども、男性も女性もともに生計を維持する役割を果たしているという哲学というか、基本的な考え方を、これからの働き方というのはちょうど総理を初め、皆さんもおっしゃっていますから、男性も女性も半分ずつ天を支える。そういう考え方を明確に打ち出すべきだと思います。
しかも、今の少子高齢化と財政状況を考えたら、未来の子供たちへの負担が大きくなることは目に見えているわけですから、そのためにも見直さなければいけない。先ほど事務局の方が困ったときの諸外国の調査という御発言があったのですが、私自身は年金とか高齢化というのは人類共通のものなので、世界がやっていることはやはり正しい。世界がやっていて日本だけしかやっていないことがガラパゴスなんだと。むしろ見るほうがよくて、困ったときではなく、やはり世界の常識の水準に合わせる考え方をしていくというのがいいのではないか。
そういうふうに考えれば男女差は当然なくし、男性も女性も当然働くということを大前提にして、そうであれば若い世代で子供がいない家庭については、有期化もしくはカットするというのはむしろ当然ではないかと思います。
少し雑談っぽくなって恐縮ですが、資料の16ページを拝見していて、連合王国が改正理由の中で、これは国会でお話をされた資料かどうかわかりませんが、配偶者の年金から発生する受給権や相続という考え方は、男性が働き云々のところですが、このような考え方は時代に合わなくなっており、というくだりなど非常に読んでいてすっきりして、我が国の国会でも早くこういうまともな議論が行われるように、ぜひ事務局は頑張っていただきたいと思いました。
1点だけ、これも細かい点ですが、私は山本委員の言われた社会を活性化するということは大賛成で、何よりも価値を置くべき1つのポイントだと思うのですけれども、高福祉・高負担と社会の活性化の関係には、大いに疑問があって、これは例えば世界の競争力の指標を見ると、一般には高負担・高福祉と言われている北欧諸国の競争力はすごく高い。ですから、恐らく社会の活性化は多分国際競争力とニアリーイコールと考えてもいいと思うのですけれども、高負担・高福祉であっても社会は活性化するし、中負担・中福祉であっても社会は活性化するので、両者の相関関係については一度どこかで教えていただければいいなと思った次第です。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
○山口委員 私は先ほどの統計の数字で、遺族厚生年金30代の人とか40代の数を見ていたのですけれども、1万3,000人とか5万8,000人という人たちの実態を私はよく承知しておらないので、こういう人達について働いたらいいでしょうというふうに、単純になかなか言うことができないわけです。どういう事情があってこういう遺族厚生年金を受給して生計を営んでおられるかという実態のところを、もう一度教えていただきたいなということがあります。
それと、今、連合王国の話があって、配偶者の年金から発生する受給権という考え方がどうかということで書いてあるのですが、現実にこの考えを広げていきますと、今、厚生年金で夫の年金額の4分の3を遺族厚生年金ということで、高齢者の場合、受けているわけです。これもまさに配偶者の年金から発生する受給権なわけです。これが仮になくなるといったようなことになると、これは大変なことでありまして、現実に今、夫が亡くなって、それによって生計を立てておられる方が、たちまち困ってしまうということですから、そういう理念で考えるというのと、実態を踏まえて現実にどう展開していくかというのは別に考慮すべきであるというふうに強く思っておりますので、その辺だけコメントをさせていただきたいと思います。
○神野部会長 ありがとうございます。
○出口委員 すみません、その点は舌足らずで、私自身も今、山口委員の言われたことに全く反対ではございません。言いたかったのは、これくらいすっきりした議論を国会でもしていただきたいなということで申し上げたので、言いたかったことは、男性が働き、女性が家庭を支えるという考え方はもう合わないんだということを、こういうふうにすっきりしていただくことがうらやましいと申し上げたので、そこは舌足らずで申しわけございませんでした。
○神野部会長 ほかいかがでございますか。
菊池委員、どうぞ。
○菊池委員 基本的な考え方を整理していただいて、大変勉強になりました。
先ほど私も申しましたが、3号のところで将来的な年金分割の方向性がよろしいのではないかということで、夫婦単位での賃金分割ということですが、そうすると遺族年金制度の位置づけというものが変わってくる。ただ、3年前の議論の夫婦共同負担の中で、夫婦で分けるとどちらかが先に亡くなった場合にかなり残されたほうが少なくなってしまうねという話になって、これは課題ではないかという議論があったのを覚えていますが、それはそれとして、遺族年金制度の位置づけは変わってくるとは思います。
そうすると、そういう頭で考えると31ページで整理していただいた(1)、(2)では、(2)の方向性なのかなと私としては考えていますが、ただ、これも先ほどイギリスの例の中で、見直しができた背景としてさまざまな社会状況の変化とか、年金制度自体が変わっていくことで環境整備がなされたというのが前提になっているということですので、このあたりは、先ほどの3号被保険者問題でも直ちに切りかえるという御意見は余りなかったように思いますので、徐々に環境整備とあわせて改めるところは改めていく。そういうことになるのかなと。ですので、遺族年金制度は多分、今回改正でどこまでできるかというのはあると思いますが、少し時間をかけて基本的な考え方の整理からやっていくのがよいのかもしれないと思いました。
ただ、1点、支給要件の男女差につきましては、まだ男女差が残っている分につきましては、ここはできるだけ早く解消していただきたいと思っているところです。
去年の今ごろ、大阪地裁で遺族補償年金の違憲判決が出まして、憲法14条1項に反する、法の下の平等に反するという判決が出たことをこの場で発言させていただいたのですけれども、実は昨年10月2日の東京高裁の判決で、改正前の遺族基礎年金の男女差について合憲判決が出ているというのを最近知ったのです。判例集未登載ですけれども、これは要するに広い裁量、立法府の裁量に委ねられているんだという、法律的な話で恐縮ですが、堀木訴訟を引用した合憲判決が出ているのですが、これが25年10月2日なのですけれども、先ほどの違憲判決が大阪地裁で25年11月25日なのです。
結論を分けた1つ大きな理由は、大阪地裁の違憲判決では地方公務員災害補償法で、これは社会保障的な性格を持つけれども、損害賠償的な性格も併せ持つ。労災なものですから、もともと使用者責任から始まっているので、単純な社会保障立法ではないという言い方を裁判所はしていて、これが結論に影響したかもしれないのですが、しかし、そうだからと言って、1つは一般国民から見ると労災補償年金と公的年金の違いというのはそんなに性格が違うと考えないのが多くの方の受けとめだと思いますし、もう一つは、違憲だと述べた大阪地裁では、法律制定時の立法事実が現在では妥当していない面があるというような見方もしていて、立法事実が現在でも該当するかということについての判断、評価について東京高裁と違っているのです。なので、やはり違憲判決を重く受けとめるべきではないかと思っておりまして、そういった意味で裁量であるとは言いつつ、先ほどの基本的な考え方から考えていかなければいけないというのもありますけれども、男女差については早目に統一していただきたいというところが意見であります。
1点だけ確認させていただきたいのですが、今、企業年金のほうの改革の中で、遺族の位置づけというのは基本的には余り考えられていないという理解でよろしいでしょうか。つまり遺族の所得保障のあり方という問題は、ここも公私の分担という視点から考えていく必要があるという理解なのか。その点だけ確認をさせていただければと思います。
以上です。
○神野部会長 今、お答えになることが可能でしたら。
○年金課長 すみません、企業年金課長が今、外していまして、私もはっきりとは覚えていないのですけれども、一般的に企業年金の設計において遺族給付というのは、全くないというわけではないかもしれませんけれども、ない場合が多いという実態にはあると承知しています。
○神野部会長 またいずれわかり次第、御報告いただければと思います。
ほかに、駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 確認なのですが、31ページの5個目の○ですが「第2号被保険者の保険料は夫婦共同負担したものであると認識した旨の規定の存在」と書いてあるのですが、3号分割というのは老齢年金だけであり、遺族年金には関係なかったのでこういう問題が出てきてしまったという理解でよろしいのでしょうか。このとき議論にかかわっていたのに曖昧な質問で申しわけないです。
○神野部会長 度山課長でいいですか。
○年金課長 お答えします。
まず資料の28ページを見ていただきたいのですが、実際にパブリックコメントをしたときに寄せられた意見で、実際には29ページのようなことを考えて3号を外すのを見送ったという御説明をさせていただきましたが、そのほかに例えば3号でもパートとして働いている人がいるとか、あるいはそもそも保険料というのは共同負担をした。すなわち、要は先ほどの話とも重なりますけれども、ある意味では妻も家計に貢献をしているんだみたいな御意見があったということです。
特に年金分割、賃金分割的に考えると、要はパートナーの所得の半分は自分が寄与しているというふうに考えるとすると、第3号被保険者であったからといって全くそれが生計維持に寄与していないというのも言い切れない。御意見をいただいた方の御意見ということで言うと、そういう意味合いであったかなと思います。
ここは3号被保険者死亡の場合に遺族基礎年金を支給しないというふうに考えたときに、具体的にどういう点がひっかかるかということをいろいろ書き連ねた中には、そういう問題もあるということです。
制度的に言うと分割をしてしまうと半々になりますので、しかも基本的には離婚とか分けなければいけない事情が生じたときに分けるという話なので、分けてしまった後は恐らく遺族年金という問題は発生しない。制度的にはそうなります。
○神野部会長 いいですか。
○年金課長 要は生計にどこまで寄与したか。
○年金局長 これ実は中でこの資料をつくるときに大激論になりまして、この31ページの(1)と(2)の話で言うと、実は生計維持というのを我々は遺族年金の支給なんかをする場合に考えているのですが、実は共働きがベースになった世界を考えると、そもそも生計を誰かが誰かにぶら下がるという意味でのディペンダントという意味での維持、扶養という概念が恐らくほとんどなくなっていくのです。
実は個人単位、世帯単位の話もこれにちょっと近いのですけれども、例えば年金制度を個人単位化します。一人一人がかけてもらいます。そうなると個人個人ですから扶養という関係は発生しませんので、だから今の遺族基礎年金は明確に扶養関係にある子供に出る。夫婦の間では何が起こってもお互いに遺族年金は発生しないという非常にわかりやすい構成になっているわけです。
では厚生年金はどうかと考えたときに、世帯で考えれば誰か死ぬとぶら下がっている人は子供以外にも奥さんもいれば、おじいちゃんもいればみたいな話になってくるのですが、実は2人がともに働いているというふうに考えると、世帯は1個で稼ぎ手が2人いるという構成になったときに、片方が死んだときの所得の欠損を年金制度が保障するのかしないのか。誰に対してするのかというのが問題になって、実はこの問題の本質は多分そこに立ち至るのだろうと思います。
例えば子供のことを考えると、子供は父親が2号で亡くなり、母親が2号、例えば共働きの夫婦がいて飛行機が落ちました。同時に死にます。子供には制度的に2つ遺族年金が発生するのですが今の制度ではどちらかを選択して受給することになります。そう考えると、仮にお互いが働いているときに、片方が亡くなったときに、それをこちら側に保障するのかしないのか、どのぐらいするのか、完全に切り離してしまうと考えるのか、ある程度それを認めるのか。多分そこの頭の整理をすることになるのではないか。
もう一つは先ほどのイギリスの例ですが、実は日本の制度でも本当に世の中がみんな共稼ぎで全員が働くようになると、イギリスと同じことが起こるのです。つまり全員が自分の老齢年金を持ちますという世界になると、例えば70歳の夫婦がいると、それぞれ老齢年金を持っています。片方が亡くなると、今でも日本では遺族年金が出ますが、それは遺厚、老厚の1年金選択になりますから、必ずどちらかを選択する。その場合は通常、賃金がそろっていれば自分の老齢年金のほうが高いので選択する。その世界になるといわば制度的には存在しますが、実際にはイギリスと同じように夫の年金権から発生する年金はある意味、必要ないという世界になるということなので、今の日本の年金制度も考え方としてはそういう考え方に立っていて、ただ、現実の実態は今、例えば老齢年金、お年寄りの方はたくさんもらっていますけれども、あの時代の高齢者の方は御自分の年金をほとんど持っておられない、あるいは御自分の老齢年金の額が非常に少ないので、夫の遺族年金のほうが高いのであの事態が生じている。ということは、逆に言うと皆さんが働いてちゃんと年金をもらえるようになれば、あの数字はかなり変わってくるということなのだろう。その辺も頭に置いて、この問題をどういうふうに考えるかということになって、実は中でもかなり相当意見が違っていまして、というわけでこういう少しいろいろな含みのある資料になっているということでございます。
○神野部会長 よろしいですかね。
ほかいかがでございますか。御発言どうぞ。
○諸星委員 今、局長の話を聞いて私もこの意見を言うのに少し揺れてしまったのですが、当初、ことしの財政検証の結果にもあるように、女性の就業を進めていかないと持続可能な年金制度にはいかないということで、共働きがこれからふえるということが必然であるという前提で多分これからは議論がされると思います。
先ほど菊池委員がおっしゃっていたように、男性のみが55歳以上という条件で残っていて、夫のみが55歳以上というのは、多分遺族年金制度ができた当時に55歳の定年制が主流であったということが背景としてあると思うのですけれども、今は、ハーフインカムという非正規雇用の共働き世帯も非常に多いのも現実となっています。ですので、ここの部分は今の議論を聞いていると、考え方が少し揺らいできてしまうのですけれども、やはり夫の55歳以上という前提は、なるべく早いうちになくすということが必要だと思います。
適用拡大を進めるとなれば、厚年に加入する妻がふえるということになりますので、妻の死亡に伴う遺族年金は夫の年齢を根拠に支給がないと、先ほど菊池委員がおっしゃったように、公務災害での裁判結果もあったような問題になると思います。適用拡大により将来的には2号になって保険料を負担しろと言われて妻が加入しても、万が一妻が亡くなっても自分には年齢の制限があってもらえないんだとなれば、将来的には社会問題になることもあり得ると思います。
この年齢制限については正直なところ、一般的にはあまり知られていないし、夫側も自分の収入が非常に高い方が多いので、先ほどお話がありましたように、遺族年金より自分の老齢年金を男性側は選択するといいますか、必然的にもらうということが圧倒的に多いという問題があると思いますけれども、今後の共働きはそこが同じとは限らないと思います。
あとは今後の遺族年金については共働きをキーワードにされると思いますけれども、もう一つ、共働きで言えば今や日本は3組に1組が離婚しているという状況です。離婚制度に関して、先ほど離婚分割の制度は一応、高齢期の方々に対してある程度存在意味がありますが、離婚の場合については、当然に遺族年金は離婚した一方にはもらわないという前提があるのですが、実は例えば離婚後に子供を引き取った一方が亡くなった場合に、子供にとって親であることは変わらないのですけれども、仮に生存している一方が引き取ったときに、子供に支給されている遺族基礎年金は支給停止になるのです。
この資料の中にもそういったことが少し書いてあるのですが、そういった問題も実際、出ているので、いろいろな意味で今後遺族年金に関して、この年金部会では総枠で検討されてはいくと思うのですけれども、各論の部分でもいろいろと以前の部会であったように今後検討していくようなことは改めてお願いしたいと思っております。先ほどのように局長が御説明された3号被保険者にからむ問題ですが、遺族基礎年金については、パブリックコメントもあって受けてそのように判断されたと思ってもおります。今後も現実問題を含めて本日のように、本当に資料とか非常にすばらしく作成していただいておりますので、多くのデータを今後も出して頂いた議論の中で深めさせていただければと思います。
以上です。
○神野部会長 ほかいかがでございますか。よろしいですか。どうぞ。
○菊池委員 1点、思いつきなのですけれども、29ページの資料で25年あるいはこれから10年という老齢基礎年金の受給資格、潜在的な受給資格を取得したというのは、法律的にはその評価というのは違う。より評価されるという議論は可能だと思うのですけれども、そこで何か変えるというアイデアはあり得ないか。そういう議論はないでしょうか。
○年金課長 お答えをします。実際にパブリックコメントでいろいろな御意見をいただいて、それで例えばまさにケース(2)のように、要は自分の保険料納付によって受給資格期間を満たしてあるような人、言ってみれば受給権を持っている人と言いかえられると思いますけれども、こういう方に出すという判断は制度的にはあり得るのではないかということも実は考えました。
ただ、法律改正が終わっていて、政令で規定できるのは死亡の当時生計を維持していたということの要件だったものですから、過去に長い加入歴があるということをその政令上、表現をするというのは法律の授権の範囲を超えるのではないか。そういうふうに理解をして、確かにケース(2)のような場合は3号死亡でもOKにするという制度設計は、全くないわけではないなというふうに当時も考えたのですけれども、法律の授権の範囲の中でこれを制度化するということは、法律改正は終わってしまっていましたので、できないなという判断をいたしました。
それから、誤解のないように申し上げますが、受給資格期間、25年から10年に短縮していますけれども、障害年金や遺族年金の長期要件の要件は実は25年に置いたままにしておりますので、ここは短縮されないということは念のため申し上げます。
○神野部会長 ありがとうございます。
ほかいかがでございましょうか。よろしいでしょうか。
それでは、第3の議題についてはこの辺で打ち切らせていただきます。
最後にですが、議題4「その他事項(報告事項)」について御報告申し上げたいと思います。
前回のこの部会でもって作業班の開催について御了解をいただきました。その人選等々につきましては、私が大臣、事務局と御相談しながら決定させていただく。つまり御一任をいただいたわけでございます。その作業班についての私の責任においてまとめさせていただいた開催要綱、メンバーリストを定めさせていただいておりますけれども、これは繰り返すようでございますが、大臣、事務局と相談を申し上げながらまとめたものでございます。これにつきまして事務局から御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○総務課長 それでは、参考資料4、参考資料5の2枚を御参照いただければと存じます。
参考資料4が、この年金部会に置きました、年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスのあり方検討作業班開催要綱でございます。
趣旨でありますが、年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンス体制のあり方について、この年金部会の検討を効率的に進めるために検討作業班というものを開催するということです。
「2.構成等」ですが、作業班の委員は、この年金部会に属する委員から部会長が指名をする。作業班に座長及び座長代理を置き、部会長が指名するということで、参考資料5をご覧いただきますと、委員の名簿になってございます。ここに記載された10名の方々に委員に御就任をいただいております。
※印のついている方々が今回、専門委員として新たに委嘱をしてお願いをした方々です。植田先生が座長、伊藤先生が座長代理ということで開催をしております。
参考資料4に戻っていただきますと、「3.運営」とございます。作業班の会議及び議事録は原則公開といたします。市場に影響を与えるといった必要があると認められる場合には一部、座長の判断で非公開とすることができるということです。必要に応じて関係者の意見聴取を行うことができる。また、求めに応じ、検討状況を社会保障審議会年金部会に報告をするとさせていただいております。
「4.その他」上記のほか、作業班の運営に関し必要な事項は座長が定めるということでございます。
以上、報告をさせていただきました。
○神野部会長 ありがとうございました。
私に御一任いただきましたので、私の責任において大臣、事務局と御相談申し上げながら今、御報告いただきましたような形でGPIFの作業班の人選及び要綱を決めさせていただいております。何か御質問ございますか。
○駒村委員 資料4の運営の一番最後ですけれども「作業班は、求めに応じ」というのは、これは誰の求めなのか。年金部会の求めに応じてですか。日本語の意味としては「作業班は、求めに応じ」というのは、年金部会の求めに応じということですね。読み方としては。どういう意味なのか。年金部会の求めに応じるという理解よろしいですか。
○総務課長 そうです。
○駒村委員 そうすると作業班の行われている資料とか議事録とか発言速記なんかは、年金部会で配付していただくという理解でよろしいのでしょうか。
○神野部会長 というよりも随時御報告をいただくことになっています。ということでいいですね。
○総務課長 御報告もいたしますし、資料等もオープンでございますので、必要に応じて配付をいたします。
○神野部会長 よろしいでしょうか。
それでは、前後になりますが、既にこの作業班につきましては、本日の午前中に第1回目の開催をさせていただいております。これについて何か状況について御報告をいただくことがあれば、事務局からお願いいたします。
○総務課長 今朝、第1回目を既に開催しましたので、簡単に御報告します。
本日は、座長代理の伊藤先生が座長を務められた有識者会議の報告書というものをまず御説明いただきました。今回は何か結論を出したりまとめたりというものではございませんので、これをたたき台、題材にいたしまして御質疑をいただいたということでございます。いろいろ御意見、御質問等がございまして、責任はどうするのか、大臣、GPIFの責任といった問題ですとか、年金財政、財政検証との関係、一体で考えるべきではないかといったことですとか、リスクについての考え方あるいは決定と執行の分離が必要ではないか。こういったさまざまな意見をいただいたところでございます。
また、今日は有識者会議の提言の御説明をいただきましたが、現状のGPIFというものがどうなのかといったこと、あるいは外国の例など、これも紹介をしてほしいということもございましたので、今日いただきました御意見等を踏まえまして、次回以降、そういったものも紹介しながら、整理をしながら進めていきたいと考えてございます。
また、先ほど出ましたように年金部会にも進捗に応じて御報告をし、御意見をいただくといったことで進めていきたいと考えてございます。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございました。
何かございますか。
○駒村委員 今日は特段、作業班で配付資料はなかったということですか。
○神野部会長 資料の配付等々はありましたか。
○年金局長 今日は前回年金部会、この部会でガバナンスの資料をお出ししましたが、あれをもう一度お出ししたのと、あとは去年の有識者会議の報告書をお出しして、基本的にはそれをベースに御議論がされたということですので、実は新しい資料は出しておりません。
○神野部会長 よろしいですか。どうもありがとうございました。
それでは、引き続き精力的な御議論をお願いするとともに、議論の進捗状況につきましては、適宜この部会にも御報告いただきたいと思っております。御参加いただいている部会の委員の方々には御苦労をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。
さらに参考資料6といたしまして、GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画の変更が公表されておりますので、添付いたしてございます。御参照いただければと思います。
それでは、少し時間をオーバーいたしておりますけれども、一応8月から整理をいたしてまいりました検討課題の議論が一巡を本日をもっていたしました。次回の部会では、これでの部会でもって頂戴いたしました御議論を反芻しながら、議論を概観しながら、それぞれの議題に共通する要素あるいは課題間の関連性などに着目しながら、横糸で少し見ていくという視点を交えながら議論を行っていきたいと思っております。
次回以降の開催について事務局から。
○花井委員 すみません、その前にきょう、参考資料6が出されております。GPIFの関係で、きょうは説明がないのだと思いますが、そのことで質問を1個だけよろしいでしょうか。
きょうの午前中の会議でも、ポートフォリオの変更によってリスクがどうなるのか、リスクの最終負担者は誰かということが随分問題になりました。今回1つどうしても質問したいのは、今回のポートフォリオの変更によって単年度の最大リスクの程度がどのぐらいなのかということが出されているのかということです。そういうリスクというものが全然見えないものですから、ぜひともお聞かせいただければと思います。
○大臣官房参事官(資金運用担当) 結構です。参考資料6、年金積立金管理運用独立行政法人のプレスリリースでございますが、中期計画の変更についてをごらんください。
これにつきましては今年6月3日のこの場の財政検証を踏まえまして、GPIFで運用環境の変化ということで前倒しで作業をしておったわけでございますが、先ほど御紹介がございましたように、去る31日に中期計画の変更という形で厚生労働省も承認したところでございます。
今お尋ねのリスクの関係でございますが、9ページをご覧ください。今回、新たにリスクにつきまして下振れリスクというものを導入しました。年金積立金の運用につきましては年金財政上、必要なリターンを最小限のリスクということでございますが、下振れリスクというものがどうなるかという御関心がございましたので、これは経済前提積立金の在り方検討会のほうで、下振れリスクというものを検討するということで導入いたしました。
そこの基本ポートフォリオの属性を見ていただきたいということでございますけれども、今回の基本ポートフォリオ、経済中位ケース、市場基準ケースという経済前提で示されたパターンで、それぞれ2パターンとりましてそれぞれ下方確率をとっているわけでございますが、参考の全額国内債券ポートフォリオの属性を見ていただくと、これは下方確率、つまり名目賃金上昇率より下振れする確率が経済中位ケースで51.7%、市場基準ケースで50.8%でございますが、新しいポートフォリオにつきましては下方確率がそれぞれ44.4%、43.8%という形でございまして、経済前提積立金の在り方検討会で与えました全額国内債券ポートフォリオよりも下振れリスクが少ないという要件を満たしているということでございます。
私からの説明は以上でございます。
○花井委員 すみません、私が伺いたいのは、単年度の最大損失です。
○大臣官房参事官(資金運用担当) 単年度といいますと、また年金財政は長期的に見るという形でございますけれども、見ていただくと標準偏差が一般的なこのポートフォリオのリスクというものでございまして、それは12.8%になっております。
○年金局長 私のほうが素人なので、素人っぽく説明をしますと、運用のリスクというのは市場の環境に依存していますので、どういう市場環境で運用するかということによって運用の結果というのは左右される。これは御案内のとおりで、景気がいいときはそういう運用になりますし、悪いときはそのようになる。
したがって、今回の基本ポートフォリオの策定に当たってはどういうリスクの与え方をしたかといいますと、今、森参事官が説明をしたのは、実は4ページに基本ポートフォリオ策定の前提条件ということで、こういう前提条件のもとで運用をしなさいと言っています。
(3)にありますように、市場関係が悪いと当然運用の結果は上振れ、下振れしますので、当然悪ければ下振れをする、下回ることがあります。これはある意味どのような運用の仕方をしても下回るときは下回るということが起こるわけですが、その場合にどこまで下振れを許容するかということで、全額国債で運用した場合に目標値を下回るという確率を出しまして、そのリスクを超えない、つまり全額国債でやった場合よりも傷が少ないポートフォリオを組みなさいというのが基本的な前提条件になります。
その条件で名目賃金上昇率が1.7%という利回りが確保できる最適なポートフォリオを組むようにというのが、私どもからといいますか、審議会の議論を踏まえて私どもがお示しした条件ということになります。
その条件に基づいて下振れリスクを最小化する組み合わせというものを数字的に出したというのが9ページ以下の結論となりまして、申し上げたように現在の基本ポートフォリオの特性は、全額国債で運用した場合の下振れ、運用目標利回りを下回るリスクよりも小さいということなので、この条件がクリアできているという趣旨なので、そういう意味で言うと国債のリスクを上回らないとか下回らないというざくっとした言い方をしますが、その意味では全額国債運用のリスクをいわば超えない範囲でポートを組んだという理解だと思います。
○神野部会長 よろしいですか。
○花井委員 すみません、国内債券の下振れリスクを下回らないというのは理解していますが、やはり気になるのが、リターンをとるということで、それを目指した運用ということは十分理解するのですが、一方でリスクがどの程度出るのかというのは、やはりとても気になるところです。市場に影響を与えるということだったら出さないということは十分理解できるのですが、単年度の最大損失がどのぐらいかというのは、やはり情報開示というか、そういうことをきちんと出すことが必要ではないかと思います。どうしても市場に影響があるので難しいということであれば、それはやむを得ないとは思いますが、こういう議論に参加している限り知っておくべきではないかと思います。
以上です。
○大臣官房参事官(資金運用担当) わかりやすい表が12ページにあると思うのですけれども、これは積立金の見込みで上の経済中位ケースで説明させていただきます。下のX軸につきましては年でございまして、平成31年から平成51年まで、黒い太線が財政検証で予定された積立金の額でございます。
今、運用が悪かった場合とよかった場合という話がございますが、75%タイルというのは運用が非常によかった場合。20%タイルというのは運用が非常に悪かった場合というふうにお考えください。それで中央値というものがございますが、新しいポートフォリオですと黒いところに線がございますけれども、予定された運用利回りというものを上回る。逆に言うと25%タイルでございますと、平成51年でいきますと159.2兆円ということで、予定された180兆よりも下回る。逆に非常によかった場合には237兆ということで予定された財政積立金の額を大きく上回る。
他方、全額国内債券でございますと、そもそも利回りは悪うございますので、これは非常によかった場合でも非常に悪かったときでも、予定された積立金額を満たせないということでございまして、今の花井委員おっしゃった悪かったときというのは別にシミュレーションでございまして、明確なのですけれども、25%タイルところを見ていただければと存じます。
○駒村委員 初めて拝見したので、まだいろいろとわからないところがあるのですけれども、例えば6ページとか12ページというのは、財政検証によれば経済指標によって異なるものの、おおむね25年云々と書いてありますけれども、具体的に言うとどのシナリオを想定してつくっているのか。余りにも要約だけで情報量、例えば6ページですね。想定運用期間25年というのは、これを長期と言っているのかどうかわかりませんけれども、一度部会で解説していただいたほうがいいのではないかと思いました。
○総務課長 改めてそういう機会をと思います。
○神野部会長 あとよろしいですか。
次回以降の連絡事項等々あれば。
○総務課長
次回の開催日時につきましては、また追って連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○神野部会長 それでは、本日は御熱心に、また、建設的な御意見をたくさん出していただきまして、ありがとうございました。これにて本日の審議を終了いたします。
私の不手際で時間を大きくオーバーしてしまったことをおわび申し上げます。
どうもありがとうございました。
(了)
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