2016年1月19日 第34回社会保障審議会年金部会議事録

年金局

 

○日時  平成28年1月19日(火)18:00~20:00

○場所  東京都港区新橋1-18-1

航空会館 大ホール 7階

 

○出席者

神 野 直 彦 (部会長)

植 田 和 男 (部会長代理)

小 塩 隆 士 (委員)

菊 池 馨 実 (委員)

駒 村 康 平 (委員)

武 田 洋 子 (委員)

出 口 治 明 (委員)

原 佳 奈 子 (委員)

平 川 則 男 (委員)

藤 沢 久 美 (委員)

牧 原    晋 (委員)

宮 本 礼 一 (委員(代理出席))

森 戸 英 幸 (委員)

諸 星 裕 美 (委員)

山 口    修 (委員)

山 本 たい人(委員(代理出席))

○議事

○神野部会長 それでは、定刻でございますので、ただいまから第34回の「年金部会」を開催したいと存じます。

 委員の皆様方には御多用中のところを、さらに日が落ちてからの開催となりましたけれども、万障繰り合わせて御参集いただきましたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。

 本日の委員の出欠状況でございますが、小室委員、佐藤委員、宮本委員、山本委員、米澤委員から御欠席との御連絡を頂戴しております。武田委員はお見えになりまして、出口委員も後ほどおくれて御出席いただけるというふうに伺っております。

 本日御欠席の宮本委員の代理といたしましてJAMの古川参考人、さらに山本委員の代理として日本商工会議所の大井川参考人に御出席をしていただけるということになっておりますので、部会の御承認を頂戴できればと思います。よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○神野部会長 どうもありがとうございます。

 さらに、御出席いただいております委員の方々が3分の1を超えておりますので、この会議は成立しているということをまず御報告申し上げておきたいと思います。

 議事に入ります前に、事務局から出席者の御紹介と資料の確認をさせていただきます。事務局、よろしくお願いいたします。

○総務課長 まず、事務局からの出席者ですが、お手元に座席図を配っております。そのとおりとなっておりますので、御紹介にかえさせていただきます。

 お手元の資料について確認をさせていただきます。

 本日、配付資料として、資料1、本日ヒアリングにお見えいただきました、名古屋市立大学の臼杵先生の資料。

 資料2、これまでの議論をまとめましたGPIF運用のあり方に関する現在までの議論。

 それから、参考資料を2つ準備をさせていただいております。

 また、菊池先生から資料の提出がございましたので、それをつけておりますので、よろしくお願いいたします。

 それから、本日は遅い時間帯の会議の設定になったことにつきまして、申しわけございません。こういう時間帯のセッティングでございますので、お手元に軽食を準備させていただきましたので、合間にお召し上がりいただきながら進めさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 お手元の資料を御確認いただいて、不足はございませんでしょうか。

 それでは、ここでカメラの方はいらっしゃらないかと思いますが、いらっしゃるようであれば御退室をお願いしたいと思いますので、御協力方、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、議事に入らせていただきます。

 お手元に議事次第が行っているかと思いますが、ごらんいただきますれば、今回も前回に引き続きまして、年金積立金の管理運用にかかわる法人の運用のあり方についてということを議事にさせていただいております。

 今回の部会の議事の運営でございますけれども、初めに事務局から資料の御説明をしていただきます。次いで、日程の都合でもって前回お越しいただくことが難しかった有識者の方から、前回も御紹介申し上げましたが、ヒアリングを頂戴したいと思っております。もちろん、その上でもってヒアリングに関して質疑応答をさせていただきます。その上でといいましょうか、その後、運用のあり方についての議論を行いたいと考えておりますので、よろしく御協力をいただければと思います。

 なお、前回ヒアリングのときに時間が十分でなかったこともございまして、運用改革に当たって現在の状況などについてお尋ねもあろうかと思いますので、そうしたことを想定いたしまして、ヒアリングの質疑の際には、年金積立金管理運用独立行政法人の水野理事にも御臨席をいただいております。重ねてでございますが、どうもありがとうございます。質問があればお答えをいただけるということになっております。

 それでは、事務局から、前回のヒアリングを踏まえて、運用のあり方に関する今までの意見を整理した資料を作成していただいておりますので、それについて御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) それでは、私のほうから、お配りしております資料につきまして、簡単に御説明をさせていただきます。座ったまま、失礼させていただきます。

 まず、資料2でございますけれども「GPIF運用のあり方に関する現在までの議論」ということで、これまでこの部会におきまして、運用のあり方をめぐって出されている資料や意見等を論点ごとにまとめたものでございます。本日の議論の参考に、本日の議論をより効率的に進めていただきますようにまとめたものでございます。簡単にポイントを御説明させていただきます。

 1ページでございますけれども、大きな論点になっていることの一つが株式のインハウス運用についてということであろうかと思っております。

 そのうち、この株式のインハウス運用に係る全般に係る事項といたしましては、現在のGPIFにおける状況、あるいはインハウス運用をやることによるメリット等の指摘がこの1ページ目にまとめてあります。

 2ページでございます。【市場その他民間活動への影響】ということで、現行のGPIF法では、運用に当たりまして「年金積立金の運用が市場その他の民間活動に与える影響に留意」すべきとされております。GPIFによる株式のインハウス運用を容認するとした場合に、個別銘柄を選択すること、あるいは議決権を行使することが、市場や企業に対し影響を与える可能性があるのではないかということが論点になっていようかと思います。こうした論点につきまして、それぞれ賛成の立場、あるいは反対の立場からの御議論がこれまで交わされてきたということでございます。

 2番目の○にありますように、近年では、受託者責任を果たすために、機関投資家は議決権を積極的に行使する。これによって、企業の中長期的な価値を高めていくことが必要ではないかという御意見もございます。

 一方で、下から2番目の○にございますような、GPIFの資金規模は、海外の公的年金運用機関と比べて大きい点などを捉えて、個別銘柄の選択や議決権の行使が持つ影響力は大きいのではないかという御議論などもあったと思っております。

 3ページには、株式の個別銘柄の選択・売買に関する御意見、また議決権の行使に関する議論などを整理しております。

 4ページに入りまして、株式のインハウス運用に並ぶ大きな論点といたしましては、プライベートエクイティー、インフラストラクチャー、不動産等のいわゆるオルタナティブ資産に対する直接投資という論点がございます。

 これにつきまして、現行のGPIFに課せられている仕組みのもとでは、例えば投資信託を活用した仕組みが認められているわけでございますが、これでは複雑な仕組みとなって、高額な手数料等を要する仕組みとなっているのではないかという議論、あるいは海外の年金基金との共同投資等ということも意見として出てきたかと思っております。

 5ページでございますが、こうしたことに加えまして、規制のあり方ということでまとめておりますのは、いわゆるデリバティブ、あるいは短期資産の中でのコール市場の利用などに関しての議論もあったかと思っております。

 最後、4点目として「改革の進め方について」ということで、この間の議論の中で、ガバナンス改革と運用の見直しの関係につきまして、一体として議論すべきではないか。

 あるいは運用のあり方に関しまして、理想的には制約条件は少ないほどいいのではないかという御意見等々もございました。

 また、現実的にはインハウス運用を拡大していくに際して、例えばアクティブ運用などの本格的な運用拡大は困難ではないか。限定的に実施することが現実的ではないかといった議論等があったかと思っております。

 こうした本日の議論に資するよう整理をしたところでございますので、御参考までにお配りしているところでございます。

 また、参考資料といたしまして、参考資料1と参考資料2をお配りしておりますので、簡単に追加した部分を中心に御説明させていただきます。

 参考資料1の1ページ目には、今回におきまして追加した資料として「日本銀行における保有株式の取扱いについて」を簡単にまとめております。

 日本銀行におきましては、金融機関における株式保有リスク削減努力を支援する観点から、金融機関の保有する株式の買い入れ等を行っているところでございまして、日銀が株式を持つという状況が生じております。この株式を保有する場合の取り扱いにつきまして、この1~2ページに書いてありますような取り扱いを行っているということでございます。

 買入対象株式の要件を定め、また買入方式につきましては信託方式によって買い入れを行っていく。買入限度額といたしましては、日銀の保有する当該株式の数が総株式の議決数の5%に達するまでという制約などを設けているということでございます。また、買い入れた株式の処分につきましては、日銀の損失発生を極力回避すること、あるいは日銀の株式処分によりまして株式市場に与える影響を極力回避することという制約を設けて信託を行っているということでございます。

 2ページ目で、この株の保有に伴います議決権の行使につきまして、どのような形で日銀が行っているかということですが、これは日銀が選定いたしました受託者、この場合は信託銀行に限るという要件がございますけれども、この信託銀行に対しまして株式の議決権を行使させております。

 議決権の行使は日銀の経済的利益を増大することを目的として行われること、株主の利益を最大にするような企業経営が行われるよう議決権を行使することということを考慮して議決権行使の指針を定めているところでございます。議決権行使の指針としては、ここのマル1からマル5のようなものが書かれてございます。いずれにしましても、個別の議案につきましての判断というものは、受託をした信託銀行のほうが行っているということでございます。

 3ページでございますけれども、これまでの議論の中で、株主議決権の行使に関しまして、外に委任するような形ができないのかという御議論も一部、ございましたので、そのイメージ図を、現行のGPIFでの取り扱いを含めまして、資料としてまとめております。

 現行の委託運用での取り扱いが上段の部分でございますけれども、GPIFは株主の名義は全て資産管理機関。右から2番目にありますオレンジ色の機関が株式をそれぞれのファンドごとの口座を持っておりまして、名義を持っているということでございまして、実際の株主議決権の行使は、この資産管理機関が行うというたてつけでございます。そして、資産管理機関への議決権の行使の指図は運用受託機関が行うという仕組みでございまして、その結果といたしまして、例えば同じ議案でありましても運用受託機関ごとに議決権の行使の指図が、賛否が分かれるというケースも理論的にはあり得るということでございます。

 下段でありますけれども、仮に株主議決権行使、インハウスで株式を保有し、運用するようなことが考えられた場合に、その議決権の行使を外に出すことが可能なのかどうかということで一つのイメージ図というものを記載しております。この場合も株主の名義は全て、現在の運用受託機関を使った場合と同様、資産管理機関が持つことになります。このため、実際の株主の議決権は資産管理機関が行使いたしますけれども、GPIFは議決権の行使の指図を行わずに、信託銀行や投資顧問会社等の第三者に議決権行使の指図を一任することもスキームとしては可能ではないかということでございます。もちろん、これがすることが望ましいのかどうかということは議論があるという前提の上で、こういうことも考えられるということでございます。

 4ページ以下はこれまでの議論等を出している資料でございますので、御参考にしていただければと思います。

 最後に参考資料2といたしまして、これまでに委員からお求めのあった事項について整理したものをお配りしております。

 参考資料2の1ページ及び2ページは、年金積立金をめぐる過去の審議会、検討会等の被保険者の関与に関する議論をまとめたものでございます。平成9年の年金自主運用検討会報告書、また、それを受けた年金審議会「国民年金・厚生年金保険制度改正に関する意見」の該当部分。

 そして、近年に至りまして、公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議報告書の中での、ステークホルダーの参画に関する項目などを抜粋して掲載しております。

 また、3ページ以降では公的年金の財政方式の推移。

 4ページでは、大きく財政方式、長期的な財政の枠組みに変わりました平成16年改正の内容につきまして、簡単に整理をしております。

 5ページですけれども、積立金の運用が結果として年金水準に与える影響につきまして、これまでの財政方式の推移あるいは平成16年改正による長期的な財政の枠組みを前提といたしまして簡単に整理しておりますが、公的年金は、平成16年改正によりまして、将来の保険料水準を固定した上で、積立金の活用を含め、おおむね100年程度の財政均衡期間を通じて年金財政の均衡が保たれるように、年金額の水準を将来に向けて調整していくという仕組みとなっています。

 したがいまして、年金額は物価または賃金の変動に応じて改定される仕組みでございまして、単年度の運用実績を理由として改定される仕組みにはなっておりません。長期的には、人口構造、就業構造等の動向と同様に、長期間の年金積立金の運用実績がマクロ経済スライドの調整期間の変動等を通じまして将来の年金額の水準に影響を与えることがあり得る。このような仕組みになっているということでございます。

 大変駆け足で恐縮ですけれども、資料2、また参考資料1、参考資料2の追加部分につきまして御報告をさせていただきました。

 以上でございます。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 特に御質問がなければ。

 どうぞ。

○平川委員 ありがとうございます。

 最初に、1月13日の一部新聞報道におきまして「年金運用、株に直接投資」という報道がございました。内容もどうも、この前の年金部会のときとかなり方向性が違うような新聞記事だったのですけれども、本日、資料2として出されている「GPIF運用のあり方に関する現在までの議論」についても、そもそも実質的には本日から議論されるというものと思っています。

 確認ですけれども、議論の整理のようなペーパーが出るということは、場合によっては、今後の議論はこのペーパーをもとに取りまとめが行われていくという懸念もありますので、本日出された「GPIF運用のあり方に関する現在までの議論」が今後の取りまとめの案もしくはたたき台を想定したものではない、全く影響しないということについて、まず確認させていただきたいと思いますので、事務局から考え方を示させていただければと思います。

○神野部会長 当面、先ほどもありましたように、きょうの議論を効率的にするために提出いただいていると思うのですが、事務局のほうからあれば。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 部会長からもお言葉がありましたけれども、本日の議論をより深めていただくためにこれまでの議論を論点ごとにまとめただけでございまして、何かこれが本部会での意見の整理というものを前提にまとめたものではございません。いろいろな議論が出ており、何か一定の方向性をここで目指したものではございません。

○神野部会長 どうぞ。

○平川委員 ということであれば、12月8日の第31回の年金部会の「今後の議論の進め方」の「運用のあり方についての論点」に記載されていた4つの論点に沿って議論をしていくということでよいのですね。

○神野部会長 今、ちょっと聞き取れなかったのですが。

○平川委員 12月8日の「GPIFのあり方」というペーパーがございますけれども、その中の3ページ以降、「今後の議論の進め方」のことです。

○神野部会長 論点は、最初に論点というふうに整理していただいたものに基づいて論点としていきますし、それから、今後取りまとめるということについて言えば、1回ごとに取りまとめたものを出していただいておりますが、前回は時間が足りなかったこともありますので、今回、また議論していただいたものを今後取りまとめていただくというふうに運営していこうと思っております。今回の意見なども反映してまたつくってもらいますが、そういった積み重ねの上にまとめに入りますということです。

○平川委員 基本的には、前回の年金部会の議論の性格はあくまでヒアリングであって、そこでさまざまな意見も出されましたけれども、本格的な議論は本日から行われるということでよろしいのですね。

○神野部会長 そうです。

 ただ通常、私の参加しているさまざまな審議会でもそうですけれども、説明その他も、税調でもみんなそうですが、発表していただいたときの御議論もちゃんと拾って、もう一回確認しているということだけですので、後でもう一回整理を、最終的な整理をいたしますが、今回の議論等々を含めて整理をしていく。

 そういうことでいいですね。

○大臣官房参事官(資金運用担当) はい。そのとおりでございます。

○神野部会長 どうぞ。

○駒村委員 参考資料2について、ありがとうございます。これは私がお願いした資料が出てきて、前々回の議論の中で、年金の積立金の性格や運用に不調があった場合の影響、効果がどういう形で出るのかというのが委員の間でどうも意見の共有ができていなかったのではないかと思われましたので、きょうの資料をお願いしたわけですけれども、この資料からも明らかになるように、年金の積立金、今ある残高そのものは過去の拠出者、現在の受給者、それから今の拠出者によって構成されているものであるというのは間違いない。したがいまして、これまでの議論もあるように、ステークホルダーとして労使は当然、これにかかわるのは当たり前の話であるというのがわかった。

 その上で、しかし運用に問題があった場合は、順番としてはマクロ経済スライドを使うわけですから、まずは現受給世代、次に加入世代、そして、まだ加入していない将来世代に影響が及び得るという形で効果はあるという可能性があるということですので、その辺はちゃんと議論を整理しておかないと、なぜ労使がかかわるのかという話を非常に曖昧化・相対化してはいけないと思いますので、これで根拠ははっきりしたと思っております。

○神野部会長 今のは、申しわけありませんが、今後ともそうですが、この段階では御質問だけ受けておいて、後でまた御議論していただければ。

○駒村委員 もし、今の認識について、事務局に確認したい。積立金は過去の拠出金の固まりであるというのと、影響は現在、受給世代、加入世代、将来世代に影響を与えていく可能性があるということでいいかどうか。これが確認です。

○神野部会長 では、どうぞ。

○数理課長 若干補足しておきますと、参考資料2の5ページに、今、駒村先生がおっしゃった資料がありまして、平成16年改正のフレームで公的年金制度ができておりますので、繰り返しにはなりますけれども、将来の保険料水準を固定した上で給付水準調整が行われている。その中で積立金を活用していくというフレームでございます。

 短期的な影響と長期的な影響がございまして、短期的には物価・賃金の変動に応じて年金額は改定していくということになりますので、単年度の運用実績が年金額に影響を与えるものではないということが1つ。

 あと、長期的には、これは運用実績のみではなくて、人口構造や就業構造等の変化、動向と同様に、長期の年金積立金の運用実績がマクロ経済スライドの調整期間の変動を通じて、将来の年金額の水準に影響を与えるということです。

 そういうことで、もうちょっと違う言い方をしてみますと、長期的な人口の動向や運用実績などの影響を受けることとなるのは、程度の差は出てくるとは思いますけれども、現在の受給者も含めて、調整終了年度以降の年金を受給する全ての方ということになると思います。

○神野部会長 それでは、どうぞ。

○山口委員 前々回、これは私が申し上げた話なので少しだけ補足しておきたいのですが、ここに書いてありますように、長期的には運用のリスクを負担するのは給付を受ける人であるということになっているわけですね。

 私は、運用の結果によっては、今のマクロ経済スライドが予想以上に長引いて、実質的な給付水準が予定以上に低下するような事態も想定されますので、場合によっては上限で固定された保険料の引き上げを検討しなければならないといったステージがあるかもしれない。そういう意味で、拠出者である労使がこの運用の問題にも積極的にかかわっていくのだというふうに捉えたいということで申し上げた訳であります。したがって、将来の話としてそういう保険料引き上げの際には拠出者にも追加のご負担いただく可能性もあるのかなといった議論が出てくることも期待して問題提起をしていたのですが、今の段階は未だそこまで議論する段階には至っていないということであると思います。

○神野部会長 ありがとうございます。

 よろしいですか。承っておけばいいですね。

○山口委員 はい。

○神野部会長 大変申しわけありませんが、ヒアリングのためにわざわざ名古屋からおいでになって、きょうお帰りになりますので、この後、すぐ退席されることになっておりますので、御意見は後で十分時間をとって伺いたいと思っておりますので、ヒアリングに移りたいと思います。

 本日は、名古屋市立大学大学院経済学研究科教授でいらっしゃいます臼杵政治様においでいただいております。

 それでは、臼杵様のほうから御発表いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○臼杵氏 ありがとうございます。

 前回までの御審議の様子は、資料を拝見したり、あと、年金局の方からもお話をお伺いしておりまして、そういう意味ではかなり、ある程度の議論は出ているかと思いますので、なるべく簡単にさせていただければと思っています。

 資料をごらんいただきまして、今、議論になっている点は株式のインハウス、デリバティブあるいはコールマーケットの活用、それからオルタナティブ投資におけるリミテッドパートナーシップへの直接投資というふうに理解しております。

 結論を申し上げますと、運用体制・運用手法の拡大による投資管理上のメリットはそれなりに認められるのではないかと思います。多分、一番その場合に留意すべきリスクとしては、やはり株主権をどう行使していくか。特にインハウス運用をする場合の銘柄選択、それから議決権行使における説明責任、あるいはそれに対するさまざまな干渉がある可能性があるということでございます。

 「2.各論」というところで表にまとめてございます。それぞれ、今、前回までで議論になっているところで、メリット、デメリット、それに対するコメントというところでまとめてございます。これを全部読み上げても時間が足りませんので、主なところだけ御説明申し上げたいと思います。

 まず、インハウス運用のメリットでございます。パッシブ運用についてはいろいろなことがあるかと思いますが、私の理解しているところでは、やはりマーケットインパクトといいまして、例えば昨今、株式市場が非常に不安定になっている中で、リバランスといいまして、株の保有割合をもとに戻すという取引をする場合に、非常にマーケットが一方通行になっておりますので、もし公的年金が株を買うのであれば、みんなが売っているときになるべく買うということが結果として取引価格をうまくコントロールする、仮に買うのであれば安く買うということが必要になってくるわけですが、その場合にもちろん、委託先も一生懸命やってくれるとは思うのです。けれども、やはりインハウス運用によってマーケットの今の動きを適時適切に把握していると安く買える可能性が高くなります。

 もう一つは、トランジションマネジメントと申しまして、外部の運用機関をA社からB社に例えば変えるようなときに、その場合にポートフォリオの中身が変わってまいりますので、それをスムーズに受けて、またA社の株を一旦預かってB社に移すということをやる場合にも、やはり自分でやれることではかなり取引コストを抑制するのではないかと思います。

 それから、○のところだけ申し上げますと、例えば株式と債券、あるいは大型株と小型株というところで、相関といいまして、普通のときのリターンがどのぐらい同じ方向に動くかということと、マーケットが非常に今のように荒れているときとではまた変わってまいりますので、そのあたりをうまく取引をすることでコストを抑えてリターンをあげられる可能性がある。

 それから、これはパッシブとアクティブの中間になるのですけれども、正直申し上げますと、アクティブ運用でアルファを得るのは非常に難しいだろうと思いますが、さまざまなインデックスの採用、株式のインデックスの多様化にいろいろGPIFでも取り組んでいると理解しておりますけれども、そういうものを開発したり評価していく場合にもインハウスの取引ができるということはメリットになるのだろうと思います。

 それから、デリバティブとかLPSに関しては当然、これは普通の運用主体であれば、例えば日本の保険会社とかであれば普通にやっていることですので、当然ながらメリットはありますし、デメリットも余りないだろう。ただ、LPSに直接投資することになりますと、例えば数年前にありましたように、AIJとか、ああいう不祥事が仮にあったとした場合には、よりはっきりとした説明責任を問われるようになるだろうと思います。

 あと、※印の1つ目から3つ目について、御説明申し上げます。

 ※の1つ目は、インハウス運用をした場合に多分、一番難しいのは、先ほども申し上げましたように、議決権を含めた株主権をどう行使していくかということでございます。この1ページ目の※1のところに少し説明してございますけれども、厚年法には被保険者の利益のためにということではっきり書いてあるのですが、その被保険者の利益の意味は必ずしも十分に理解されていない可能性があります。

 被保険者の利益とは何かといえば、あくまで投資家としての経済的利益を指すはずなのですけれども、例えばですが、これはわかりませんけれども、どこかの電力会社の株主総会で原発廃止という株主提案があったときにどうするのかとか、あるいはいわゆる昨今言われています雇用に関するブラック企業というものになぜGPIFは投資しているのかとか、あるいは逆にアベノミクスを応援するような、例えば国内で設備投資を一生懸命やっている会社とか賃上げに積極的な会社に投資しなさいということが一部政治家から、あるいは政治家だけではなくて受託者責任の意味を理解していない人から、干渉があり得るということでございます。

 その辺にどう対処していくか。その辺に関連して、昨今、ESGということで、社会的な利益を株式投資によって推進すべきであるという議論が少しあるようにも仄聞しておりますが、例えばESGでよく言われております国連の責任投資原則でもそこに書いてございますように、前文にはきちんと、Fiduciary responsibilitiesとコンシスタントである限りにおいて以下の責任投資原則を守りますときちんと書いてあるわけです。

 それから、これも去年出たアメリカの労働省の解釈規定でありますけれども、これもETI、Economically Targeted Investment、いわゆる経済的な、むしろ社会的な利益を推進する投資は、これはやってもいいけれども、それはほかの条件が同じである場合、あるいは考慮することでより有利な運用ができる場合にやってもいいのだということを言っているだけでありまして、むしろ経済的利益がまず第一であるということがはっきりしているわけです。

 経済的利益とは何かといいますと、要するにリスク当たりの運用利回り、あるいはもう少し言いますと、年金給付におけるリスクとリターンを見ていくということであるわけで、それ以外のことを推進しようとすると、例えそれが善意であっても、目標とか評価の基準、物差しが2つ以上出てきてしまって、いわば言いわけの手段になってしまうということであります。ですので、これは極力排除すべきだとは思うのですが、ただ、そういうリスクがあることは無視できない。仮にそれを排除できたとしても、国会議員の方々に説明をする時間とかコストが非常にかかってしまうことが多分難しい点かなと考えております。

 ノルウェーの政府年金基金などですと、かなり株主活動を積極的にやっているわけですけれども、資料のマル1からマル8のことをやっているということになってまいりまして、例えば去年のレポートを見ますと、企業と2,000回、1年間でミーティングをするということであります。ですので、恐らくこれをきちんとやるとなりますと、それなりのスタッフも必要になってくるだろうなと考えているところであります。

 これが※の1つ目でございます。

 ※の2つ目につきましては、インハウス運用については、リスクは基本的には増えないと考えております。アクティブとパッシブの比率を同じ配分にするのであれば、基本的にはインハウスであろうと、アウトソースをしてもリスクは変わらないだろう。仮に、これは国内の株式の10%ですが、それをパッシブからアクティブにしたとしても、これはポートフォリオ全体のアロケーションを債券から株式に1%振りかえたほうがリスク量としては大きな増加であり、基本ポートフォリオの中でどう動くか、株式と債券の配分をどう配分するかに比べますと、アクティブリスクというものは非常に小さいものであります。

 その一方で、先ほども少し申し上げましたように、逆に言いますと、ポートフォリオ全体に意味のあるスケールでアクティブリターンを上げることは多分、相当難しいであろうと思っております。

 ※の3番目ですけれども、これは先ほど申し上げたところで、オルタナティブですと若干ヘッドラインリスクというもの。要するに、新聞の見出しになってしまう。それによって、またいろいろなところから批判とかが出てくるということは気をつけたほうがいいだろうなと思います。

 そういうデメリットあるいは、リスクをできるだけ小さく、もちろん結論をどうするかということについてはわからないという前提でお話をしておりますが、仮にそういう運用手法の拡大が認められたとして、そのデメリットを小さくすることが必要であろうと思います。

 その方策として大きく2点ほど書いてございまして、1つはやはりインハウス運用についての政治的干渉をどうやって小さくしていくか。

 例えば海外の年金基金の例などを見ましても、株主権行使をどういう基準でやっていくのかということについて、きちんとした方針あるいはガイドラインをつくっていく。それから、専門スタッフをある程度雇っていく。5人とかそのぐらいのレベルだろうとは思いますけれども、そういう専門スタッフが必要になってくるだろう。そのガイドラインについては、先ほどから申し上げていますように、投資行動において、投資家としての被保険者の、被保険者の経済上の利益を優先するということ。あるいはESGを考慮するのは上記利益にプラスの場合とか、あるいはマイナスの影響を及ぼさない場合に限るということをきちんと書いていく。

 2番目としては、先ほど少し事務局の方からも御説明がございましたけれども、議決権の行使、あるいはそれにかかわらず投資先との話し合い、いわゆるエンゲージメントと言われているようなことについては、一部外部委託をするような可能性も考えられるであろう。

 それから、株式保有については、上限を設ける考え方もあるのかなと。先ほど日銀が5%までということで決められていたわけですけれども、同じような5%ということで、余り最近は言われていませんが、たしか独禁法では銀行法の経営権に対する干渉を防ぐために上限を5%としているということもございますので、何らかのそういう上限を設けるという考え方もある。逆に、設けることによって政治的な干渉を抑えられる可能性もあるのかなと思います。

 (2)としては、これは今回の運用に限った話ではございませんで、全体的ないろいろな運用をやっていく上での、当然のことではありますけれども、リスク管理をさらに充実させていく必要があるだろう。

 例えば、アクティブリスクをもし、あるいはオルタナティブのリスクをとるのであれば、リスクバジェットという言葉がございますが、リスクの総量を新しいガバナンスの下での経営委員会になるのか、私はよくわかりませんが、そういう上からの縛りをきっちり決めていって、その範囲の中でCIOはできるだけ高いリターンを上げるような仕組みをつくる必要があるのではないか。ですから、ポートフォリオトータルのリスクをきっちり抑える仕組みが必要になってくるであろうと思います。

 それから、先ほども少しございましたけれども、リスク量なのですが、もちろん、これはむしろ目標を与える厚生労働省も考えていくべきことなのだろうと思いますが、いわゆる例えば目標リターン、賃金プラス1.7%ですか。それに対する達成確率とか、達成しなかった場合の不足の率とか、それはそれで一つのきちんとした考え方ではあるのですが、今後はむしろ、例えば労使が参加することになりますと、一体それが給付水準に引き直した場合にどのぐらいのリスクなのか。リスクをとるということは当然、より高いリターンが期待できるわけですから、それが実現した場合には給付水準がどうなって、逆にリスクシナリオが実現した場合には給付水準、マクロ経済スライドの終了年がおくれることによる給付水準の低下がどのぐらいあるのか。そういうことでできたら見ていくようにしていただきたいなと思っているわけでございます。

 オルタナティブ投資については、そこに書いているとおりですけれども、市場性のない商品ですので、価格評価、それからデューデリジェンスを充実していくということですし、それがトータルポートフォリオの、先ほどから申し上げているようなリスク・リターンに影響があるかということも検証していただきたいなと思っています。

 それから、前々回あたりまでガバナンスの議論をされていたということでございますが、仮称経営委員会が執行部をきっちり監視するということでありますと、やはり組織の枠組みだけをつくっても、それはなかなか画竜点睛といいますか、仏つくって魂入れずといいますか、そういうことになりかねませんので、きっちりした人を選んでいただくとともに、その経営委員会のほうのスタッフ、例えばリスクについては、CIOにレポートをするのは必要だろうとは思いますけれども、例えば経営委員会に直接レポートするようなことも考えてもいいのかなと思っております。

 そういうことがデメリットを小さくするために必要になるだろうということでありまして、最後に実際にどうやってそれを担保するかということについては、前回の議論を伺うとそこに書いてある、A、B、C、3つのやり方があるのかなと考えています。書いてあるとおりですのでいちいち読み上げませんが、実際には項目によってやり方をどれかに変えていくこともあるのかなと思っています。

 さらに言わずもがなで恐縮なのですが、今日はGPIFさんの議論ということで、余り直接関係はないと思うのですけれども、私が仄聞したり、あるいは幾つかの共済の運用委員会とかで見ていますと、全部GPIFがやることと同じことをやるのがいいのだということを共済の方が思っておられるような節がないこともない。

 むしろ、脱線してしまって座長には甚だ申しわけないのですが、厚生年金全体で考えれば、例えばオルタナティブは、むしろGPIFがやれば、ほかのところはやらないことをも含めて、自分なりに考えて、自分なりのリスクとリターンを考えてやればいいのではないか。そこがどうも徹底されていないような感じがいたします。

 同じ厚生年金の給付と保険料を扱っているわけですから、そこで少ない人材と少ない案件を奪い合って競争するのが本当にいいのかどうか。むしろ、共同投資のような形も考えられるのではないかなと思っている次第でございます。

 以上、最後はかなり脱線して申しわけありませんでした。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 運用対象の拡大等々のメリットとデメリットを適切に整理して御説明いただいたわけでございますが、御質問に移りたいと思いますけれども、冒頭に申し上げましたように、水野理事にも御出席いただいておりますので、あわせて御質問がございましたら頂戴したいと思っております。

 それでは、どなたからでも結構でございます。

 どうぞ。

○牧原委員 臼杵先生、わかりやすい説明、どうもありがとうございます。

 1つ質問したいのが、GPIFの運用資産規模は138兆円ぐらいありまして、そのうちの半分ぐらいを今、株でやっていて、七十何兆円になるのですけれども、厚生労働省さんの資料でも、この規模は国外のマーケットで言いますと、今は31兆円で23%の比率で、7.6%ぐらいの比率を占めている。仮に50%を国内でやりますと、15%ぐらいの比率を占めるようになる。

 一方で、カルパースだの、カナダの、韓国が12%ですけれども、0.9~0.4%ぐらいの比率であるのですが、要はこのぐらいの規模になってきたときに、運用がどこまで可能なのかというところについて御示唆をいただければと思っております。

○神野部会長 よろしいですか。

○臼杵氏 済みません。多分、15%ではなくて7.6%かなと。

○牧原委員 15%はもし株式の運用をふやしていくと仮定しての話で、今の国内株式の運用は、7.6%で31.7兆円です。

○臼杵氏 多分、その辺はあれですけれども、いずれにしろ、7%にしろ8%にしろ、高いことは確かで、全く運用できないということはないと思うのですが、やはり先ほどから申し上げていますように、さきほどのマーケットインパクトなどはちょっとした動きでも生じてきますので、そういう面でのやりづらさはそれなりにあるでしょう。

 もう一つは、アクティブファンドを、アクティブを例えば30兆円のうちの1割とか2割とかにしても相当な金額になりますので、それをアクティブで運用してアルファの源泉を見つけるということはかなり難しいであろう。

 それから、繰り返しになりますけれども、やはり規模が大きければ大きいほどいろいろな政治的な圧力は多分出てくるであろう。

 その3つぐらいは、確かに若干難しい面はあるのではないのかなという気がしております。

○神野部会長 水野理事、何か追加したい御意見があれば。

○水野氏 一応確認ですけれども、今の御質問で7.5%が15%になるかということですが、現在の基本ポートフォリオは国内株式25%、海外の株式25%と明確に分けられておりますので、これは15%になることはないということだけ、まず御説明させていただきたいと思います。

○牧原委員 ありがとうございます。

○神野部会長 よろしいですか。

 山口委員、どうぞ。

○山口委員 今のご質問に関連するのですけれども、臼杵先生の資料の中で、独禁法の銀行保有5%までというものがあるのですが、これをGPIFに当てはめるときには多数の外部マネジャーを使っているわけですので、それらをトータルして各銘柄について5%を上限とするというふうに解釈していいのかどうか。

 これまでのGPIFの説明ですと、外部委託しているファンドごとに5%の制約があるという説明があったようですが、私はそれだけで果たしてよいのだろうか、GPIFとして、もし議決権行使を何らかの形で行っていく場合には、すべての外部ファンドに対して、こういう方針でやってくださいというわけですから、ルールづくりとしては全部の保有資産を銘柄ごとに足して判断すべきではないだろうかと思うのです。

 しかし、現行のGPIFの規模や資産配分比率からすると、その上限は銀行などの5%上限ではとても入りきれないと思いますので、あるいは生命保険の場合のように、生命保険の場合は確か10%上限だったと思いますが、GPIFの場合もその資産規模等を踏まえた上限の水準も考慮しつつ、運用している全てのファンドを銘柄ごとに合計した基準というイメージで臼杵先生は書いておられると理解してよろしいのでしょうか。

○神野部会長 よろしいですか。

 どうぞ。

○臼杵氏 私は、独禁法は一応こういう例があるということで申し上げましたが、済みません、若干十分な理解がなく挙げている面もあるかとは思います。その上で申し上げますと1つは今、山口先生がおっしゃったような考え方かと思います。

 ただ、議決権というレベルで見ると、それぞれの外部運用機関がそれぞれに判断するということでいけば、例えばインハウスでGPIFが指図をするというものを5%以内にするという発想も考えられなくはないのかなと思うのですけれども、いかがですか。

○神野部会長 よろしいですか。いいですか。

○山口委員 はい。

○神野部会長 ほかはいかがでございましょうか。

 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 臼杵さん、ありがとうございます。

 これは最初、臼杵さんの御意見の2ページの、リスク量の策定は給付水準への影響を定量的に評価する。これは私もそのとおりだと思いまして、このポートフォリオを組んだら、今度はこのくらいの給付水準のばらつきが出ますということをキャッチボールしなければいけないのではないかと思うのです。一方通行だとやはりまずいと思います。

 それで、今の山口先生に御質問にも絡む話なのですけれども、とはいうものの、アメリカのアクティブ・ヘッジファンド等はもう少し戦略的に動いて、年金基金のお金をもうちょっと戦略的に使っているのではないかと思うのです。つまり、あるときは議決権、あるときはエンゲージメントを使いながら、企業に対して効率的な運営をするようにというふうに締め上げていくわけですから、それを見ていれば、それはGPIFから受託している運用機関も、それはGPIFと異なるポジションがとれるのかなというのはちょっと疑問に思うのですよ。

 つまり、5%以内であるといっても、その効果は外部に委託している人たちの別の機関の行動も誘発してしまうわけなのです。5%制限で、実は意味がないといいますか、もっと大きい効果を持ってしまうのではないかという疑問があるのですけれども、この辺はどうなのでしょうか。

○臼杵氏 それはそうかもしれません。そこは、私は特に否定するものではないです。

 ただ、私は別にこれを擁護するという立場ではないですけれども、もう一つの考え方としては、それはそれとして、やはり先ほどから申し上げていますように、もしその議決権行使が被保険者の利益を最大化するという受託者責任の範囲でやるということであれば、それが一つの足かせにはなり得るかなという気はしています。

 それはそれで長期的な株主としての利益、投資家としての利益を、リスク当たりの利益を最大化するという指針の下での行動であれば、いろいろな議論はあるかもしれませんけれども、一つの足かせにはなるのかなという気がしています。

 

○駒村委員 これは多分、水野さんに、前回、私が議論した続きになる部分だと思うのです。私、水野さんがこれに対して、「5%制限で大丈夫です」というふうに回答されたと思うが、私は途中で帰ったままでしたのでちょっとお話を聞きたいのですけれども、結局、今のような話についてはどうか。また、一方では政治的な背景を持っているところが本当にそういうふうに捉えられるのかどうかというのは非常にマーケットに対してノイズになるのではないかなという気がしまして、これは水野さんに、5%で済むかどうかというのを聞きたいと思っております。

○神野部会長 どうぞ。

○水野氏 先生、ありがとうございます。

 まず1つは、ないということを証明するのは極めて難しいことでございますので、できるだけは御説明したいと思うのですけれども、まず私どもが政治的な影響を受けるかどうかということで申し上げますと、今回のガバナンス改革によって、それは排除されるべきであるというところからまずはスタートしなければいけないと思うのですが、それが排除されたとしても、私たちの投資行動が他のマネジャーにまねされるかということが今の5%を超えての影響力があるかということだと思います。

 率直に申し上げますと、私たちがインハウスで運用して、ほかのマネジャーがそれをまねするというレベルになっているときはGPIFの運用成績が相当よかろうと思いますので、それであればうれしい悲鳴だと思うのですが、実際は何が起こるかといいますと、委託先の運用機関は彼らの運用成績がいわゆるマーケットに対する超過収益、アルファで評価されていますので、彼らはそれが上がるか上がらないかということを基準に判断いたします。

 そこで、例えばGPIFがある会社に関してのエクスポージャーを減らしているときに、彼らがそれをまねしたところで、アルファが下がってしまえば彼らの評価が下がって、次に資金を受けられないということになりますので、そうした場合、民間の運用機関が、ただ単にGPIFがやっているという理由でフォローするのは正直考えがたい。

 あと、ガバナンスのどれだけの強化という、以前の問題として、先ほど先生が何度も読み上げてくださっていますけれども、いわゆる受託者責任というものはGPIFにも課されておりますので、そういう政治的な影響をもって投資の判断を行うということはガバナンス以前の問題で、現在のGPIF法上も違法行為であるということははっきり理解をしていただきたいと思っております。

 これは私どもだけではなくて、私どもが委託している運用機関にも全く同じ受託者責任が課されておりますので、もし彼らが、GPIFが売っているという理由だけで売買をするのであれば、これは受託者責任に反する行為になるということで、そちらのほうが問題になるのではないかと私は考えております。

○神野部会長 よろしいですか。

 それでは、小塩委員どうぞ。

○小塩委員 臼杵先生、どうもありがとうございます。

 先生のお考えに基本的に賛成するのですが、ちょっとお聞きします。お話を伺っていますと、インハウスにすると非常にメリットがありますということです。リスクについても、パッシブとアクティブの比率が現行と変わらない限り、そんなに心配しなくてよろしいということでした。

 ところが、その一方で、現在のようなGPIFの規模でしたら、アクティブリターンを期待することはできませんとおっしゃったわけですね。さらに、銘柄選択等々ややこしい問題があるということです。

 そういう点をざっと考えますと、極端な議論かもしれないのですが、インハウスを認めるとしても、全部パッシブでやったらどうかという発想が出てくると思うのですが、それについていかがでしょうか。

○臼杵氏 私、個人的には先進国の株式については別にそれでもいいのではないかなと思います。ただ、それはむしろ運用する人あるいはGPIFが判断すればよいと思うのか、先ほどのA、B、Cの議論のAのように、最初からそれを足かせみたいにしてルールにしてしまうのか否か、その辺はいろいろ議論があると思います。

また、先進国の株式ではパッシブがほとんどでもよいですが、一部、先ほど申し上げたような、例えば小型株のマーケットとかで少しアクティブリターンが上がる可能性はありますし、それから、もうちょっと可能性としては、インデックスをいろいろ多様化していく点はインハウス運用によって工夫できる余地があると思います。

○神野部会長 よろしいですか。

○小塩委員 はい。

○神野部会長 ほかはいかがですか。よろしいでしょうか。

 どうぞ。

○森戸委員 臼杵先生、ありがとうございます。

 ちょっと細かい話になってしまうかもしれませんが、2つほどありまして、1つは2ページのインハウスの政治的干渉を最小限にするのあたりに書いてあることですが、被保険者の経済的利益が最優先である。それで、ESGの話なのですけれども、ESG要因を考慮するのは上記利益にプラスの場合か、マイナスの影響を及ぼさない場合に限る。これは前のページのERISAの話とかから出ているのだと思うのですが、これは要するに当たり前といいますか、経済上の利益を最優先するということはこういうことになりますね。

 逆に言いますと、こういうものをわざわざ書くということは、そう言いつつ何かESG的投資も別にいいのだという、何かそういうことを誘発ではないですけれども、つまり本当に被保険者の経済的利益が優先であったら、こういうことは別に書かなくても、経済的利益があると思えばそういう投資をするというだけなので、こういうことを書くのがある意味、ちょっとバイアスがかかっている話ではないかなというふうに、うがり過ぎなのですけれども、思うのですが、ですから、その辺はあえてこういうことは書いたほうがいいのかというのが1つ。これはしようもない質問かもしれません。

 2つ目は、これもまたすごくひねくれているのですが、最初の「1.総論」で、運用対象・運用手法の拡大による投資管理上のメリットは認められるというものが結論で、投資管理上のメリットという意味なのですが、投資管理上のメリットがあるというのは、別に運用利回りがすごくよくなるわけではないけれどもねという意味で書かれているということなのか。

 投資管理上のメリットは、下の表に書いてあることなのでしょうが、つまり、逆に投資管理上のメリットはあるけれども、その投資管理上の体制を整えるお金なり機会費用なりいろいろかかるとすれば、ある意味、メリットは実はそんなにないという話なのかなとか、いろいろ考えてしまったのですけれども、その辺はどういう趣旨で「投資管理上」と書かれているか。2つ目にお伺いしたのはそのことです。

 以上です。

○神野部会長 よろしいですか。2点、お願いします。

○臼杵氏 わかりました。

ESGのほうを先に申し上げますと、ESGは私が、この書きぶりは私の個人的な書きぶりでありまして、よく言われていますのは、アメリカで去年、労働省のこの解釈通知が出ましたので、もっとESGをやろうと。それで、労働省の解釈通知は、むしろアメリカはESGにどちらかといいますとシュリンクといいますか、フィディシャリー・レスポンシビリティーの観点から後ろ向きな方向があるので、いや、そんなことはないのですよ。ESGをやってもいいのです、ただ、それは経済的な利益を侵さない場合、あるいは場合によってはESG投資でより高いリスク・リターンが期待できる場合であるというふうに、アメリカの解釈通知はそう書いてあったのです。ただ昨今、いろいろなところで論文とかを見ていますと、日本でももっとESGをやるべきであるということが出ていたので、私はあえてそれを裏返して書いたということであります。ありていに言いますと、私はESGにあまり積極的になりすぎるのもリスクがあると考えております。

 もうちょっと言いますと、正直なところ、政治的な干渉のリスクを考えますと、日本株投資にもそんなに積極的ではないです。ただ、済みません、また余計な脱線をしまして。配分はもう決まっていて今日はそういうことを議論する場ではないので、そこは置いておくという前提でずっと話をさせていただいています。

 それから、2つ目の話に関して言いますと、投資管理は要するにインベストメントマネジメントを指すとお考えください。ですので、メリットは運用の収益も含めたものであります。

 以上です。

○神野部会長 よろしいでしょうか。

 では、藤沢さんどうぞ。

○藤沢委員 先生、ありがとうございました。

 3つ質問させてください。

 1つは、インハウスの運用をすることで政治的干渉があり得るという感じのお話であったかと思うのですが、実はここの部会で議論しているガバナンス改革と運用改革という2つありまして、ガバナンス改革のほうは政治的干渉を今後きちんと法的に起きないようにしましょうということでガバナンス改革をやってきて、ある程度それは落ちついたかなと認識しております。その観点から行きますと、この新たなインハウス運用というものをまた運用改革の中で入れていきますと、今、私たちが議論したガバナンス改革は機能しなくなるというふうに理解したほうがいいのか。そこら辺がよくわからなかったので、教えていただきたい。もし、今の私たちが改革として案を出しているガバナンス改革が政治的干渉をきちんと抑えられるものであったら、インハウス運用であっても余り心配しなくていいのかなと、ちょっと素朴に思いました。

 2つ目は、リスクの管理も1つ、経営委員会とかでリスクバジェットを決めるというのは1つ、いい考えだなと思いながら伺っていたのですが、最後に先生がちらりと、経営委員会もきちんとした人を選ばないといけないというお話をされて、きちんとした人というのは一体どういう人なのでしょうかということがわからなかったので、先生みたいな方だということなのかもしれないですけれども、どういうスキルや経験を持った人がいいのでしょうかということでございます。

 あと、先生のお話を最初に伺うと、全体的にメリットがある。つまり、リスクをしっかり管理しながら、どれも導入することで運用のパフォーマンス、リスク1単位に対してのリターンも効果的・効率的によくなるのではないかというお話であったように思うのですが、最後のどのように担保するかというところでA、B、Cを書いていただいて、Aが体制ができ上がることが確認できるまで現行のルールということなのですが、つまり、この体制ができ上がるまでこのままにしておくということは、基本的にはこの方向に行ったほうがいいですと。インハウスもやったほうがいいですし、デリバティブもやったほうがいいですし、LPSもやったほうがいいというのが先生の御提案なのかどうかを確認させてください。

○神野部会長 よろしいですか。3点です。

○臼杵氏 最初は何でしたか。

○藤沢委員 いっぱい伺って済みません。

○神野部会長 政治的干渉です。

○臼杵氏 ですから、最後の質問とも少し絡んでくると思うのですけれども、ガバナンス改革をされて、その政治的な影響がきちんと隔離できるのであれば、それはそれですばらしいことですし、このA、B、CでいきますとBかCでいけばよろしいのではないか。それは私が今、どうこう判断できることではないので、一応そういうお答えになるかと思います。

 それから、真ん中の質問ですけれども、これはコーポレートガバナンスのほうでいろいろ、例えばガバナンスの優等生と言われていた会社が実はそうでなかったりとか個別企業の名前は出しませんけれども、そういうこともありますので、やはり体制をつくると同時に、そこで労使の代表もそうかもしれませんし、資産運用に対して、あるいは年金制度に対してきちんと見識を持っていて、しかも責任がある人にメンバーになっていただいて、その方々にきちんと教育をする、情報提供をするということがないとガバナンスがきかないのかなということです。

 済みません。お答えになっているかわかりませんけれども。

○藤沢委員 ありがとうございます。

○神野部会長 よろしいですか。

 では、平川委員どうぞ。

○平川委員 先生、ありがとうございました。

 3点ほど質問させていただければと思います。

 最初に、2ページ目の「政治的干渉を最小限にする」というところですけれども、要するにガイドラインを制定し、専門スタッフを雇用していくということが大きな柱かと思いますが、これだけで本当に政治的干渉をそれなりに抑えることができるのか、もう一回説明をお願いできればと思います。

 2点目です。「リスク量の策定は給付水準への影響の定量評価を前提」というところですけれども、2014年10月に基本ポートフォリオが変更されたとき、リスクとリターンについての説明が十分されたのかよくわからないところがありましたので、臼杵先生から見てどういう評価をされているのかお聞きしたいと思います。どうも、リスクに関してはそれぞれの立場によって、説明の仕方がちょっと違ったような気もしますので、お聞きしたいと思います。

 3点目ですけれども、臼杵先生の資料「株式のインハウス運用他、運用対象・手法の拡大に関するメモ」(1)インハウス運用:政治的干渉を最小限にする、(2)リスク管理 をどのようにして担保するか?について、A. 体勢ができあがることを確認するまで現在のルール(法律)を変えない、と書いてありますが、この意味はガバナンスの話で、体制というものはガバナンスのことなのかどうなのかも含めて再度確認させていただければと思います。

 以上です。

○神野部会長 よろしいですか。

 どうぞ。

○臼杵氏 ありがとうございます。

 1と3は多分関連しているので申し上げたいと思いますけれども、1をやったから絶対政治的干渉がなくなるかどうかというのは、これは保証はないです。ただ、それをできるだけ確率を小さくする手だてとして、さきほど、私が申し上げた内容は、諸外国の例から見ますとこういうことで影響を小さくできるかなということです。それこそ、日銀の政治的独立もそうですけれども、いろいろな場面があって、GPIFがきちんとした株主として振る舞うのだということがだんだん信頼されていく中で、実際にはこういう政治的干渉が減っていくのだろうと思います。

 ですから、干渉があるかどうかということと、実際にその干渉の影響を受けるかどうかというのはまた違ってくると思うので、干渉自体はやはりなくならないと思います。そういう意味では政治的干渉の影響を受けることを最小限にするというふうに資料に書いたほうがよかったのかもしれません。

 それと、最後の御質問ですが、A、B、CのAというものは前回までの、失礼ですけれども、平川委員の御議論があったようにも伺っておりますが、どこまでそういう実際に体制ができて、評判が立つことを確認するのを待つかどうか。それで、走りながらやっていくのか、どこまできっちり、例えばガバナンスがきっちりあって、投資行動についていろいろな信頼ができてからもっとインハウスをやるのだという考え方もあるとは思いますので、そういう意味でここには選択肢の一つとして書いているわけで、繰り返しますけれども、特に私が今、このA、B、Cのどれについてどうすべきかということについて、何か非常に強い意見があるということではありません。

 それから、リスク管理の点に戻りますけれども、リスク管理についてはいろいろな考え方があると思うのですが、やはりわかりやすいのは給付がどうなるかということです。今の保険料率固定方式の中で給付がどうなるかということをきっちり書いて、例えばリスクが発生した場合には、他の条件が一定であればマクロ経済スライドの終了年がこれだけ延びるから給付はこれだけになるという検証は、それは割と企業年金だと普通にされているだろうと思います。悪い場合には、確定給付であれば保険料がこのぐらい上がります。確定拠出でも、例えば給付がこのぐらいになりますという見せ方をしているはずで、そういう方法を取り上げていただければ労使の代表などでももう少し理解できるのかなという、そこはこれから是非考えていっていただきたいなと思います。

○神野部会長 よろしいですか。

 では、時間の関係もありますので、あとは挙がっていませんか。失礼ながら、これで最後にさせていただければと思いますので。

 出口委員、どうぞ。

○出口委員 済みません。事務局に対して質問させていただいても構いませんか。

○神野部会長 はい。

○出口委員 議論を聞いていて思ったのですけれども、臼杵先生のお話は途中からで本当に申しわけなかったのですが、例えば株の比率が50%まで上がるという御指摘が最初にありましたけれども、これは、基本ポートフォリオをどういうふうにするかという問題だと思うのです。

 もう一つ、これは私の理解が間違っているのかもしれませんが、この年金部会を始められたときに、今回は法律改正を前提に考えていますというお話があり、その法律改正の中でガバナンスと運用の多様化ということが車の両輪ですという説明があった気がしているのです。そうしますと、議論はいろいろありますし、全部お互いに絡んでいるとは思うのですが、基本ポートフォリオの話は、株をどこまでやるかということについては、例えば市場の7%はちょっと大きいではないですかという話はあるかもしれませんが、これは基本ポートフォリオを決めた段階で、ある意味ではルビコン川を渡ってしまった問題なので、それは一つの議論としてはもちろんあるのですけれども、今回のイシューではないような気がいたします。

 その次の問題は、法律改正をやるのであれば、こういういろいろな問題がある中で、これは法律のレベルで規定するのが望ましい問題なのか、そうではないのかということを多分、我々は一番議論しなければいけないのであって、これは法律のレベルで決める、あるいは法律以下のレベルで決める、もちろんどちらであってもインハウスがいいのか悪いのかという議論は引き続きやらなければいけませんが。ですから、議論の段階をきちんと考えて、基本ポートフォリオの話ではなくて、多分、法律問題をここでは議論しているので、こういう問題を法律で決めたほうがいいのか、そうではないのかということについて議論をしなければいけないと私は考えているのですけれども、こういう理解でいいのでしょうかということを1点事務局にお聞きしたい。

 2点目は、きょうはたまたま米澤委員がいらっしゃいませんので武田委員にお聞きしたいと思うのですけれども、この前の会議でも、今は運用委員会でよろしいのですか。

○武田委員 はい。運用委員会です。

○出口委員 運用委員会でかなりの程度合議ができていると。それで、我々が議論するときには、観念論ではなくて生きた事実、現に生きて活動しているGPIFがどんなことをやっていて、どの程度までいろいろなことができているのかということをよく知ることがやはりすごく大きい気がします。

 もちろん、委員の中のお一人なので、それは個人的な見解で結構なのですけれども、今の法律改正というものは現在ワークしているこの運用委員会をもっと強化し、法律的な根拠を明らかにするためという米澤委員のお話もあったのですが、これは実際に事実上の合議制でやっていらっしゃる中でお仕事をされていて、こういう運用規制の問題は法律で決めたほうがいいとお考えなのか。あるいは合議制の中で、法律以下で決めたほうがワークするとお考えなのか。

 実態がわからないものですから、実際にやられている方の御意見を聞きたいと思いまして、1点事務局と、1点武田委員に御質問させていただきます。

○神野部会長 済みません。出口委員、今の御質問については、お答えはヒアリングの、わざわざお越しいただいている方が御退席いただいた後でよろしいですか。

○出口委員 申しわけありません。そこはちょっと、最初いなかったのでわかりませんでしたので、失礼いたしました。

○神野部会長 それでは、御退席いただいて。

 どうもありがとうございました。臼杵先生、多分、汽車は大丈夫だと思いますが、よろしくお願いします。臼杵先生と水野理事におかれましては、これにて御退席ないしは、水野理事は傍聴していただくということでございますので、臼杵先生、お忙しい中、本当にどうもありがとうございました。

(臼杵氏退室)

○神野部会長 それでは、今の出口委員の御質問に事務局のほうと、それから、申しわけありません、武田委員よろしいですか。お答えいただいた上で、あとは冒頭に申し上げましたように、運用のあり方に関する議論に移っていきたいと思っております。

 では、事務局のほうからお願いします。

○大臣官房審議官 端的にお答えしたいと思います。

 まず、基本ポートフォリオでどう組むか。ただ、先ほど申し上げましたように、日本の株式市場の中で全体のGPIFの運用はどのくらいのレベルになるかというのはポートフォリオで決まります。これはある意味で、日本の場合はGPIFで株式運用をすることを決めていますので、そういう意味ではそれは決着済みである。むしろ、今回議論すべきことは、まず1つは、株式運用をGPIFが直接行うかどうか。それが民間市場に与える影響との関係でどうかということが大きな論点です。これは法律改正が必要な事項で、まず法律改正をすべきかどうかという判断になります。

 次に、法律改正をした上で、そのルールを法律上の規則として維持するのか、それとも、せっかく経営委員会ができたので、将来の判断は経営委員会でいいとか、あるいは厚生労働大臣の認可を要するといった仕組みとするかという点は、次の議論です。まず、そもそも国の機関であるGPIFが議決権を行使したり、個別株式を判断することでいいかどうかということです。

 それと並んでもう一つの話は、デリバティブとか、あるいはコールといった、国の機関がやるかどうかの問題ではなくて、むしろ今は認められていない運用手法について、これをこの際、拡大するかどうか。これは国の機関の問題とやや違っていまして、新たな金融商品が出てきている中でこれをどのように認めるのか、認めないのか。あるいは認めるとしたとして、現行のルールのようにこういう運用商品の問題を個別に決めるようなルールがいいのか。それとも、もう少し、弾力的にできるほうがいいのかということを決める。これも法律改正の必要な事項と思っております。

○出口委員 わかりました。

○神野部会長 それでは、武田委員お願いいたします。

○武田委員 御質問いただきまして、どうもありがとうございます。

 2点御質問をいただいたと思いますが、1つ目については、前々回にも意見として述べさせていただいたのですが、事務局から御提示いただいた資料では理事長の独任制という現状評価になっており、それを合議制にするとの趣旨だと思いますが、守秘義務があるので子細には申し上げられないですけれども、さまざまなことについて時間をかけて丁寧に現在の運用委員会でも議論はしておりますので、独任制というよりは事実上の合議制という認識はございます。

 ただ、法律でそれをよりしっかり担保する、つまり仮称の経営委員会としてやるべきことをより明確にすること、また、経営委員としてどのような方がふさわしいのか、そうした論点についてはこの部会で議論されている方向で私は進めていくことが望ましいのではないかと思います。独任制か合議制かと問われれば、既に合議制であるとは思いますが、だからといって、ここでの議論が不要かと問われれば、不要ではないという見解です。

 二つ目の法律上で決めるか以下かという点については、かなり多くのことが議論されていますので、一言では申し上げられませんが、私が気にしているのは特に、先ほど審議官から御発言いただきました後者のほうです。運用の環境、あるいは金融商品は日々多様化し、発展していますし、ヘッジのために必要な手段でもある。つまり、リスク管理上の必要なツールといった面もあるかと思います。

 前回いらしていただいた先生方のご意見でもあったと思うのですが、余り法律で縛ってしまいますと、それを一つ一つ変えるのに時間もかかりますし、その間、ヘッジできたはずのものがヘッジできずに損をしたときにどう説明するのかという問題にもなりますので、法律上では、ある程度、機動的にできるように改正していくのが望ましいのではないかと思います。

 その点、本日、臼杵先生からいただいた御示唆は非常に有意義であったと思いますが、どのような方向で広げるのか、法律ではないとしても、経営委員会の決定事項として定めていくものなのか。それとも、先生の資料にもございますけれども、中期計画とか年度計画に明記し、それを守る。例えばまずは始めて運用体制も変化していくとともに、年度計画や中期計画の中で年ごとに見直していくことができるようにするのか。私は何らかのチェック機能といいますか、法律レベルではなくとも、規定のレベルで皆様が不安に思っている点、例えばリスク量の問題とか議決権の問題とか、そうしたものを書き込んでいくことは可能なのではないかとは思います。

 つまり、申し上げたかったことは、法律で余りにも縛り過ぎている項目については、前回のヒアリングでも専門家の方々がおっしゃったとおり、少し枠を広げていく方向と考えます。もっとも、現実的には、仮にインハウス運用が認められたとしても、一気にGPIFの中の体制が整うとは思えない点もございます。マッキンゼーの方がおっしゃったと思いますが、10年ぐらいはかかるというお話もございました。

○出口委員 ジャーニーとか言われていましたね。

○武田委員 そうです。ジャーニーと言われました。そのジャーニーを自由にジャーニーするのではなく、どのレベルがよいかは事務局から御示唆いただきたいですが、法律ではなく規定であるとか、中期計画や事業計画でできるものかどうかを御検討いただくのがよいのではないかと思います。その上で具体的な規定の中身や数字はここでの議論が重要になってくるのではないかと考えます。

 以上、私の意見でございます。

○出口委員 ありがとうございました。よくわかりました。

○神野部会長 それでは、意見のほうでいいですか。

○駒村委員 はい。意見です。

○神野部会長 どうぞ。その後、山口委員に行きますので、まずは駒村委員お願いします。

○駒村委員 今の議論の続きになるのですけれども、今のGPIFのガバナンス構造は既にOECDから余りよろしくない部分がたくさんあるという指摘があったわけですから、やはりこれはちゃんと直さなければいけない。海外の評価機関から見ても不十分であるという指摘があるわけです。これは当然、直すのが当たり前です。

 それで、この意見の取りまとめを見ますと、例えば1ページ目なのですけれども、この1ページの4つ目の○です。「インハウス運用の方が効率的・効果的な場合はインハウスで行い、特殊な専門性を必要とする場合は委託、、、」。この書き方を見ますと、どうもインハウスのほうが主になるような書き方になるわけですが、それは私は非常に心配なのではないかなと思います。今の議論がありましたように、また先ほどの議論がありましたように、また先ほど小塩先生が触れかけたわけですけれども、この臼杵さんのマトリクスを見たときに、さまざまな、多様な運用手段がある。インハウス、デリバティブ、オルタナティブと、いろいろな方法があると思います。

 そのリスクをヘッジするために、余りGPIFを縛り上げてもよろしくないとは思いますが、この中でインハウスのパッシブとアクティブはかなり性格が違うものではないのか。先ほど小塩さんは、このアクティブの部分については少し慎重になるべきであるというお話をおっしゃったわけですけれども、私もこのアクティブのところは若干心配だと思うのです。といいますのは、パッシブと異なり、アクティブはGPIFがみずから、この企業は伸びる、あるいはこの企業は伸ばしたいという証明をしていくわけですので、そういう意味ではパッシブ、アクティブいずれも議決権はあるとはいうものの、アクティブはかなり踏み込んだ構造になるのではないかと思います。

 その際に、その中に政治の尻尾があるという心配がありまして、政治の尻尾を切るために今回ガバナンス改革をやっているのだというものの、これは先ほど藤沢委員が指摘されましたように、それは我々に責任があるわけですけれども、ただ、この改革で、人選も含めて、本当に政治リスクは排除できたかどうか、まだわからないわけです。絶対大丈夫とは言い切れないわけです。ですから、いきなりガバナンス改革で終わったからインハウスのアクティブまで認めていくことはちょっと危険なのではないか。まず、ガバナンス改革の結果、動くかどうかです。完全に人選も含めて政治的リスクが遮断できているかどうかを見きわめてから、このアクティブまで認めるかどうかということはあるのではないかと思います。

 先ほど少しお話ししましたように、北米ではアクティビスト・ヘッジファンドと年金基金が連携して、非常に積極的に企業行動に介入している。それでも恐らく機関投資家なり年金基金は市場の規律を受けていると思うのです。市場の規律を受ける、あるいは受給者からの訴訟リスク、場合によってはお客さんがとれなくなるという市場の規律を受ける組織がやっているわけなのですけれども、GPIFは、国民からの直接の訴訟リスクがあるいかどうかはどうかわかりませんが、多分ないのだと思いますけれども、倒産という概念もないわけですから、市場の規律を受けない組織が非常に大きな役割を市場で果たし、非常に影響を与えるような行動をしていいのかどうなのかというのは、私はやや疑問なので、アクティブまでこのまま一気に認めるというのは、私は非常に違和感を感じるなと思います。

 以上です。

○神野部会長 ありがとうございます。

 山口委員、どうぞ。

○山口委員 今の駒村先生の意見と私は全く同じなのですけれども、それについては以前に申し上げましたので、きょうはちょっと別の観点からお話をしたいと思います。

 先ほど出口先生から、法律のレベルなのか、あるいはその下のレベルなのかということでお話があったのですが、私もやはり何らかの形で運用のルール、枠組みというものはきっちり決めていかなければいけない。経営委員会が見ているから、その枠の中で自由に任せるという立場はとっていないのです。

 最近の具体的な例でお話しするほうがわかりやすいと思うのですが、この前、GPIFのユーチューブを拝見していましたら、去年の10月から外債のハイイールドボンドへの投資を始めましたという報告がありました。ハイイールドボンドというのは、私たち古い人間は以前、ジャンクボンドというふうに呼んでいました。格付けがBB格以下の債券でありまして、これについては投機的格付債券などという言い方もされているわけです。それだけに、この種の債券への投資は高い専門性と長期的な視点に立ったリスク分散が必要であり、小規模な企業年金などではなかなか取り組めないものだと思います。

 今回、GPIFがこのハイイールドボンドを開始されるにあたっては、もちろん運用委員会でそれらのリスクの特性やその分散効果などを慎重に御議論された上での結論だと思います。私はこのように運用対象を拡大していく場合には、リスク特性の分析という側面は極めて重要ですが、それだけではなくGPIFとしての運用の大原則みたいな大きな方針がまずあってその枠組みに照らして、判断していくようにした方がよいのではないかと思っています。つまり、リスクだけを判断して、後は現場が動きやすいように全部任せるといったスタイルをとるのはどうかなということです。ある程度大きな原則的なルールをつくって、その枠組みの中でリスク判断も含めて、きちんとやっていただく、そういうことが必要ではないかと思っている訳です。

 先ほどのヘッジの問題でもそうですが、例えば為替のヘッジですと、GPIFは外貨運用については、全部、外部委託をしているわけです。そういう中で、みずから為替の先物とか、そういったポジションをとるということは、オーバーレイマネージャーとして行うというような立場、それはあり得るのですが、その場合取引そのものだけを取り出して見れば、これはスペキュレーションと形の上では同じになるわけです。

 ですから、デリバティブは様々なヘッジ手段として有用な仕組みですが、実施にあたっては色々なルールを定めて慎重にやるようになっていると思うのです。あるいはコールにしてもそうです。私は、短期運用の手段としてコール市場に放出するのは全く問題ないと思っています。ただ、金融機関で使っているコールというものはコール市場に放出する、それから、コール市場から資金を取り入れるといったこと、両方あるわけです。そういう意味では、市場からお金を借りるといったことまで含めてGPIFがやる予定は多分ないとは思うのですけれども、例えばコール市場の使い方一つとっても、そういったことをきちんと定めてやっていかないと、全部現場に任せますという話ではありませんということを私は申し上げたいわけです。

 そういう意味では、法律のレベルの話ではない場合も多いかも知れないのですが、運用のルール、枠組みについては、個別具体の案件は経営委員会でもちろん見ていただくにしても、こういったルールをきちんとつくった上で行うということが必要ではないかと思っておりますので、あえて申し上げさせていただきました。

○神野部会長 どうもありがとうございます。

 それでは、古川参考人どうぞ。

○古川参考人(宮本委員代理) 私は専門家ではありませんが、保険料を支払っている労働者の立場からインハウス運用について意見を申し上げたいと思います。

 年金積立金というものは、社会保険原則をやはり念頭に議論すべきであると思います。年金積立金というものは社会保険制度による強制加入のもとで、労使が拠出した保険料が中心であるため、やはり運用のあり方についても拠出者の意見が確実に反映されることが必要であると思います。GPIFの運用のあり方の議論の前提として、私たちが強制保険として拠出しているお金であるということを十分に認識した上で議論していただきたいと思います。

 また、前回のヒアリングでは、公的な年金基金と職域の年金基金の話が混在し、年金とは無関係な政府系ファンドまで比較対象にされておりましたが、これは検討に当たって不適切であったと言わざるを得ません。社会保険は政府が管掌する国家管理のもとにある制度で、直接GPIFが株式に対して投資するというインハウス運用によって個別企業の株主となることは国の直接的な民間企業支配につながりかねないのではないかと思います。

 また、本日の参考資料1の8ページにありますように、これまでインハウス運用が禁止されているのは「公的資金による企業支配との疑念を生じさせない」という考え方に基づくものであり、このような懸念が払拭されない中で株式のインハウス運用を認めるべきではないと思います。

 最後になりますけれども、株式のインハウス運用のメリットとして手数料減によるコスト削減が掲げられていますが、投資対象がはっきりしない中ではこれは説得力に乏しいと感じます。また情報が得られないことが運用のリスクになっていることについても根拠に基づく具体的なデータが示されていないと思います。

 以上です。

○神野部会長 ありがとうございます。

 まず、原委員、菊池委員、小塩委員といきますか。

○原委員 現在までの議論のまとめ、ありがとうございました。

 何名かの委員の方もお話しされているのですけれども、3点についてコメントさせていただきたいと思います。

 まず、資料2の「1 株式のインハウス運用について」ということなのですが、前回と今回、いろいろ御説明をお聞きいたしまして、その対象拡大についてはやはり慎重であるべきではないかと考えます。

 一つの側面として、いろいろな情報を得られるなどという点が、前回のヒアリングでもそういう利点があるということですが、例えばパッシブ運用から検討するということも考えられるのではないかと思うのですけれども、株式のインハウス運用を始めると、やがてアクティブ運用ということにもなっていくと思うのですが、そうなると、少しでも運用成績を上げるという方向へ進むことになると思います。やはり議決権の行使の問題や民間企業に対して多大な発言権を持つようになるとも考えられます。あるいは議決権を行使しないにしても、保有や売却によって影響力を持つというものになるのではないかなと懸念をしております。

 海外の話もよく出るのですけれども、運用規模とか国民の理解というものも勘案すべきかと思っております。日本では、やはり国民の理解がまだ進んでいない状況がありますし、額が大きいわけですから、状況が異なるかと思います。そういったことで、いろいろな問題が払拭し切れないようにも思われますので、まとめにもありましたけれども、もし仮に実施するとしても、ガバナンスといったものをしっかりきかせた上で、市場とか企業に対する影響などの各種の懸念を払拭することができるという前提があるべきではないかと考えます。

 一方でデリバティブ等の規制のあり方についてなのですが、こちらもいろいろヒアリングさせていただきまして、これはやはり、今、運用環境が変化していく中でさまざまな運用手法や運用商品が開発されているといったことを考えますと、現在、一定の制約を設けられているものについて、リスク管理を目的とした方法については、ある程度認められていいのではないかなと考えております。

 ただし、やはり投機的なものにならないように、厳重に、その目的をリスク管理といったものにするという、ルール的に制限するといったことが重要ではないかなと考えております。その目的の範囲内において、できる限り弾力的な仕組みというふうにしていくことが今の環境を見ても必要になってくるのではないかなと思っております。

 最後に、4番目の改革の進め方というものをまとめていただいたところを見ましても、やはり公的年金の積立金という性格をしっかりと踏まえた上で進められるべきで、何度か申し上げていますけれども、国民への説明責任といったことをしっかりと行い、国民の理解といったことを得ることが重要かと思います。

 ここにも書かれているのですけれども、運用に対して必ずしも積極的とは言えない日本社会の意識といったものを鑑みますと、運用拡大については部分的に、慎重に進めるべきではないかなと考えます。これらのことを一気に進めるということには、まだ十分な理解が得られないのではないかなと思いますので、ガバナンス体制といったものをしっかり行いながら順次進めていくべきかと思います。

 運用のあり方とガバナンスのあり方は一体として、議論されるべきであり、加えて国民のコンセンサスといったものも必要かと思いますので、そういった国民に対する情報の開示とか理解とかコンセンサスといったものを前提に運用のあり方を具体的に議論していくべきと考えます。例えばの話ですけれども、一般的な社会人の方がこういった議論にある程度ついてこられるようなレベルにならなければ、一気に実施というのはまだ早いのではないかと考えます。

 長い目で見た場合は、方向性は問題ないのかもしれませんが、時間をかけて検討していくのが今の日本の状況から見ても妥当ではないかと思っておりますので、そういった意味で国民の理解、ガバナンスの確立の状況を確認しながら、それに応じて慎重に検討していくべきなのではないかなと思っております。

 以上でございます。

○神野部会長 どうもありがとうございます。

 では、菊池委員どうぞ。

○菊池委員 まず1点、本日、簡単なペーパーを提出させていただきました。これはきょうのテーマとは直接かかわらない、ガバナンス改革にかかわる、とりわけ経営委員会と新しい審議会部会のメンバー構成について考えたことです。ただ、これから2巡目の議論に次回以降入っていくと思いますので、少し早目に出させていただきました。労使が経営委員会に加わるべきであるという御意見が出されていましたが、もう少しそこを詰めて考えてみました。厳密に考えますと、労働者側と事業主側で理屈は違うと思うのですけれども、そこはもしよろしければ御一読いただければ幸いです。

 それ以外の利害関係者として、第1号被保険者、受給者、あるいは若年世代、将来世代といった広い意味での利害関係者といったものがどうかかわっていくかということも、以前意見を述べさせていただきましたが、これも少し詰めて考えてみました。結論的には、第1号被保険者の利害というものは労働者代表が代弁していくという形でとることが可能ではないか。それ以外の利害代表といったものを経営委員会に入れる選択肢もあり得ないわけではないですけれども、どちらかといえばそういった公益代表的な観点というものは新しい部会のほうで展開していくのが整理としてはいいのかなという、ざっくり言うとそういう中身になっております。

 それで、私は運用の専門家ではないのですけれども、ヒアリングをお聞きした上での現時点での若干の感想なのですが、2つの点で、ひとつは被保険者などが拠出した保険料が原資になっているということをやはり考える必要があるということ。もうひとつは、保険者が政府であることも考える必要があるということです。

 1つ目ですけれども、保険料が原資となっているという点ですが、法律論ではないのですが、公的年金制度に加入する国民の素朴な感覚を端的にあらわしているのは、私は確定拠出年金の運用のあり方であると思うのです。そこでは恐らく多くの加入者が元本保証型の低金利商品を選択していると言われております。こうした運用に対して慎重な日本国民の意識と大きく異なる運用方針を立てることに対しては、やはり違和感があります。

 また、経営委員会での具体的な運用に係る方針決定のあり方、つまりガバナンスの問題と、運用のあり方をどのように制約づけるか、先ほどの臼杵先生のお話で言えば、足かせをどうはめるかという問題とは同じではないわけで、前者、ガバナンスのほうでは、ある程度、運用に関しての専門的な判断が相対的に強く求められると思いますが、この足かせをどうはめるかという問題は、既に御意見が複数出ていると思いますが、強制加入・強制拠出に基づく非常に公共性の高い社会保険制度であることからする制約で、労使など利害関係者の意識とか感覚をより強く反映させる必要があるのではないか。これを受託者責任といったもので引き取るだけではやはり不十分ではないかと思います。

 以上のことから、アクティブ運用やオルタナティブ資産への直接投資については、少なくとも現段階においては慎重に対応することが望ましいのではないかという感想を持ちます。

 もう一点は、保険者が政府であるということに関して言えば、GPIFはそれ自体、独立した法人格を有していますが、国民年金及び厚生年金の保険者、運営主体は政府であります。全体として見た場合、やはりGPIFはその構造の中で運用を担う部門として位置づけられ得るわけです。

 また、今回のガバナンス改革によって、一定程度、政治的介入に対するコントロールは図られ得る。そのために我々は議論しているわけですが、ただ、役員の任免等を通じた厚生労働大臣の関与を排除できないとすれば、やはりアクティブ運用による個別株式銘柄の選択売買や議決権の直接的行使など、政府の市場に対する介入ととられかねない手段を導入することについても、少なくとも現段階において慎重に対応すべきではないかと考えます。

 これに対して、現時点でのGPIFによる運用実務のさまざまな難点といったこともいろいろ御教示いただきました。そういった現在の実務を通じて強く改善が求められる事項につきましては、例えば先ほど私が述べたものとは抵触しない範囲での一定のインハウスの導入や、一定のデリバティブ等の規制緩和などについては、今回の改革の中で対応するという方向性も考え得るかもしれないと思います。

 以上、今回の改革、2つの大きな柱がありますけれども、私の現段階での意見といいますか、考えといたしましては、やはりガバナンス改革を主にして、その上で必要最小限での運用のあり方の改革をやっていくという方向性で現段階ではよろしいのではないかと考える次第です。

 以上です。

○神野部会長 ありがとうございます。

 では、後でよろしいですか。済みません。

 小塩委員、どうぞ。

○小塩委員 先ほど駒村委員が、私の申し上げたいことをかなりおっしゃってくださったので、あまりつけ加えることはありません。実は、私は今ではこういう商売をしておりますが、かつて金融機関で旧年福の運用委託関連の仕事もしておりましたので、この話は土地カンといいますか、感じがつかめます。金融機関にいた人間からしますと、いろいろな問題があっても、リスクとリターンで点数を上げればどんどんやっていいではないかというところがあるのです。いろいろな問題があっても、成績がよければいいかなと思っています。ただ、そうはいいましても、現時点でゴーサインを出すところまでは行かないのかなという気がいたします。

 前回はお話しする時間がなかったので申し上げなかったのですが、マッキンゼー・アンド・カンパニーの資料がありましたね。いろいろな基金のパフォーマンスを比べて、インハウス運用の比率が高いところほど収益率が高いという説明をされたのですが、よく見ますと、あの方々が紹介された図では相関がゼロです。それで私も気になったので、帰ってデータを見て相関係数をとったのですが、相関係数は0.166です。ですから、相関はほぼゼロということです。

 同じカナダでも、インハウスが高いところでいい成績を上げているところもありますが、悪いところもあるわけです。ですから、インハウスをやればよくなるというところまでは言えないという気がします。それが1つです。

 それから、きょうのお話にありましたけれども、仮にインハウスをやってもそんなに変わらないという議論はあると思うのです。では、そのインハウスをやるとして、パッシブかアクティブかという話があります。それで駒村先生が私の考え方を代弁していただいたのですが、私は、実はアクティブのほうがパフォーマンスはいいのかなと思っていたのです。それで、きょう配っていただいた参考資料1の20ページにパッシブとアクティブのいわゆる超過収益率を調べた表があります。

 これを見ますと、右側で直近5年、直近10年の数字を比較しているのですが、平均で見てもパッシブのほうがいいのです。それから、ざっと横を見ますと、変動も当然ながらパッシブのほうが小さい。そうなりますと、平均も変動もパッシブのほうがいいということになるので、アクティブをやれとは言えないのですよ。さらにアクティブにも、先ほどからいろいろな議論がありますし、非常に問題がある。クリアしないといけない問題がたくさんあると思います。

 ですから、仮にインハウスをやるとしても、私はパッシブでまずスタートして、いろいろな問題を抽出していく作業が要るのではないかと思います。

 もう一つの点ですが、これも先ほどから議論が出ていましたが、マーケットに対するインパクトというものをやはり考えないといけないと思います。私は金融の専門家ではないのですが、普通のポートフォリオ理論というものは、大きなプレーヤーが行動を変えたときにマーケットにどういう影響を及ぼして、それがマーケットメカニズムにどういう作用を及ぼすかというところまで議論が行っていないのではないかという気がするのです。

 ところがGPIFは、私が昔いた金融機関での経験から言いましても、図体が大き過ぎるのです。ですから、どんな小さな行動でもやはり気になります。そういう大きなプレーヤーの行動の影響については、前例を見ても判断し切れないところがあるのではないかと思います。

 アメリカにカルパースがあるではないかとおっしゃるのですが、カルパースではなくて、注目すべきなのはOASDIです。政府の公的年金に注目しないといけない。あそこはマーケットに及ぼす影響を皆無にしてしまおうと思って、市場性のない連邦債に運用先を限定しているわけでしょう。そうなりますと、やはり非常に慎重に事を進めないと、何か突拍子もないことが起こってしまうのではと思います。

 私は基本的に臆病な人間なのですが、できるだけ慎重に進めるべきだと思います。ですから、結論を言えば、インハウスをやってもいいとは思うのですが、やる場合はパッシブ1本ということでしょう。株式の場合はそうすべきだと思います。

 以上です。

○神野部会長 牧原委員、どうぞ。

○牧原委員 私も、株式のインハウス運用については慎重であるべきだと思います。先ほどの臼杵先生の話にもありましたけれども、アクティブの運用についてはこのぐらいの規模になると運用が難しいということと、仮にパッシブをするにしても、ここにコメントで数億円、要は自分で購入しなければいけないわけですから、それの体制というものをつくらなければいけませんし、あと、株主権のガイドラインを制定するとか、株主活動専門スタッフを5人ぐらいは少なくとも雇わなければいけない。これだけでも多分5,000万円から7,000万円ぐらいの人件費がかかると思うのですけれども、そういうコストを考えますと、本当にパッシブといえども効率的といいますか、できるのかどうかということが非常に疑問だと思います。

 もともと根本的な議論として、GPIFを民間ファンドと同一にして、これが運用という局面だけを見て結論を急ぐのは非常に違和感を覚えざるを得ません。先ほどの議論もありますけれども、これはあくまでも年金制度の一部であって、GPIFが幾らガバナンスが改革されたとしても、これは国の機関であるということの事実は避けられないといいますか、あると思います。

 あと、主要国でも例を見ない30兆円に上る資金を国内の株で運用しておるわけで、これは生命保険会社42社の合計の運用規模は22兆円ぐらいだそうなのですけれども、GPIFではるかにこれが上回った運用をしているということがあると、GPIFがインハウス運用によって直接的な株主になるということは極めて重たい話だと思います。巨大な国の機関というものがマーケットのプレーヤーになることの意味合い、それから、投資家の立場と企業との関係というものをどういうふうに、要は議決権の行使の話ですけれども、そこについてどういうふうに整理をするのかということをきちんと考えないと非常に重たい問題であって、GPIFの運用能力の向上であったり、あるいはコスト削減といった、そういう資金運用だけの理屈でこれを見てもいいのか。そう見るべき問題ではないのではないかなと思います。

 それで、先ほど紹介しましたけれども、資金の規模は非常に大きいわけで、国内株式市場における価格形成であったり、投資行動にゆがみが生じないかということも十分リスクとして考えるべきですし、政府が推進している公的部門の産業化といいますか、民営化といいますか、そういう流れがある中で、これはどういう位置づけで考えるべきなのかということについても疑問があります。これがインハウス運用をすることによる株主議決権の行使とか、あるいはアクティブを運用することになりますと、個別銘柄の選択を通じて民間企業の経営に対して直接影響力を行使することになるわけで、政府がGPIFを活用して民間企業の経営に介入できる余地が生まれることは否定できないと思います。したがいまして、従来の方針どおり、株式のインハウス運用は認めるべきではないと考えます。

○神野部会長 ありがとうございます。

 平川委員、どうぞ。

○平川委員 ありがとうございます。

 私の言いたいことについては、ほとんど他の委員の方がかなり発言されましたので、ちょっとダブりますが、また改めて考え方を述べさせていただきたいと思います。

 先ほど、積立金の性格について縷々御指摘がありました。先ほど意見がありましたとおり、これは国が管理している積立金ということとともに、この積立金の原資である保険料についても、基本的には強制徴収など租税と類似する性格を持っているという判例から見ても、これは公的な資金であるというふうに考えざるを得ないのではないかなと思っているところであります。多分、いろいろな国際会議で、もしGPIFの方が参加するという形になれば、その分類は政府ということになる。

 そういった意味で、しっかりと積立金の性格を押さえていくとともに、先ほど臼杵先生がおっしゃいましたが、やはりリスクとリターンについては、もうかった、もうからないということだけではなくて、社会保険制度における一つの制度の枠組みでありますので、やはり年金制度にどういう影響を与えていくのかということまでしっかりと考えていく必要はあると思っています。

 前回のポートフォリオの見直しのときも、どういうリターンがあって、どういうリスクがあるのかということに関しては十分な説明があったかといいますと、率直に言って疑問を持たざるを得ないと思っています。私の前任の委員である花井委員が当時、どれだけのリスクがあるのか何回か聞いたのですけれども、結局、最後まで明確な答弁がなかったように記憶しております。何か衛星が地球に激突するとか、そんな話でごまかされていたわけでありますが、そのような中で、それをリスクであると言われても、逆にどういうガバナンスなのですかということも問われてしまうのではないかと思っています。

 改めて積立金の性格について、しっかりと押さえていく。その上に立って、では、インハウス運用をするとどういう影響があるのかというのは、今まで意見があったとおり、個別の民間企業に対する大きな影響を与えていくということや、証券市場に対しての不自然な影響が出てくるというのは当然あると考えております。特に株式の個別銘柄の選択売買については、大きな影響があると考えられます。

 オルタナティブ資産への直接投資でありますけれども、この議論のペーパーの4ページに、直接投資をすることによって予期せぬ大事故、労働問題や環境問題との関係についても、ある意味、国の責任が問われる、外交問題にもなり得る懸念もここから読み取れると思います。そういった意味でも、このオルタナティブ資産への直接投資については本当に慎重であるべきと考えます。

 また、デリバティブの関係ですが、確かにリスク管理をしていくという手法でこのデリバティブを使う考え方もあると聞いておりますが、その手法を使ってハイリスク・ハイリターンの運用に突き進んでいく可能性もありますので、これもまた慎重に対応すべきと考えます。

 いずれにしましても、年金基金の性格の問題、そして株式市場においての影響の問題を含めて考えると、やはりインハウス運用というものは行うべきではないと考えます。

 以上です。

○神野部会長 ほかはいかがでございましょうか。

 では、諸星委員。

○諸星委員 質問時間がぎりぎりで申しわけありません。

 前回の審議とかヒアリングの結果を受けて、私は全然専門家ではないので、運用のプロの方々がそれぞれ自分たちに自信を持って伝えるということは非常にわかったのですけれども、それはやはり運用のプロの目線であって、一般の国民の目線から言いますと本当にどうなのかということが一番の不安です。先ほど各委員からお話がありましたように、やはりそういった説明をするのに当たってはいろいろな工夫はされる必要があるのかなと思います。先ほど私、小塩委員が説明してくださったことが一番すうっと入ったのです。ですから、小塩先生がおっしゃったようなものを何かやられたほうがいいのかなと意見として思いました。

 それと、前回と今回も、先ほど臼杵先生が帰られるときに聞けなかったのですが、人材の発見、採用、つなぎとめも容易ではないということがレポートに記載されていて、要はインハウスを運用したときにそういった人材が重要ですと。前回でも、運用の専用プロが必要であり、高度な人材が必要でと何度もお聞きしました。でも、今、インハウスをやっていないGPIFさんが、たしか有期で雇用しているというお話がありましたけれども、有期雇用であったとしても、その専門性の中でそれだけの結果が出なければいけないが、育てなければいけない。一方で、そういう専門性のある人たちの成果がなければ変えていき、運用の結果が出ればいいのだと、いうのもちょっとどうなのかなと普通に、単純にですが疑問に思いました。、やはり何人もの方が、人材は大切です、インハウスをやるのであればそういった方々が必要だということをおっしゃっていますので、その点も加味していろいろと検討していただければなと本当に素直に思い、意見として述べさせていただきます。

 ありがとうございました。

○神野部会長 ありがとうございます。

 大井川参考人、どうぞ。

○大井川参考人(山本委員代理) ありがとうございます。

 いささか、そもそも論に立ち戻ってしまって恐縮なのですけれども、まずはGPIFの運用方法をどう変えていくかという議論の前に、そもそも法改正をして、その運用方法を変えていくにはそれなりの理由が求められますので、当然、それは長期的にGPIFの性格を変えていくということに結局つながっていくのではないかと思っています。

 簡単に言えば、GPIFにどこまでの目標を持たせるのかということをまず決めませんと、運用方法については、それぞれメリット・デメリットがあるわけですから、決めづらいのではないかという気がします。要は、議論の順番として、そもそも今は期待収益率を上回っていて、年金財政上求められる運用利回りを既に達成しているにもかかわらず、さらに、もっと儲けるように、リターンを拡大するように積極運用していくということであれば、それはGPIFが決めるというよりも、拠出者代表の意思が尊重されるべきではないかという気がしています。

 長期的に利益の極大化を求めることによって、GPIFの性格を変えていくということであれば、当然、潜在的なリスクも高まるはずです。だからこそ、その高まる潜在リスクをガバナンスの強化によって極小化するという話だと思いますが、では、ガバナンスを強化して、果たして本当に潜在リスクを極小化できるのか、あるいは、今以上のリターンを本当に期待できるのかということが国民にはわかりづらい。もし、運用方法を実際に変えていく、積極運用を行っていくということであれば、やはりそれは国民に対して、リスクがどう変化するのかということは丁寧に説明していかないと国民の納得は得られないのではないかなと思っています。

 もう一点は、各論になってしまって恐縮なのですが、仮にインハウスに運用を変えたとした場合に、パッシブ運用ならいいのではないかという話もありますが、これは牧原委員からもありましたように、当然、企業の議決権を持つということに変わりはないので、そもそも、この年金部会の議論だけで完結して良いのかという疑問があります。当然、他のいろいろなお座敷でも議論しなければならないことになると思いますが、この問題を、GPIFの運用の仕方ということだけで議論しているのは少し疑問に思います。

 それから、これは市場全体への影響ということなのですが、株式の直接保有について、5%以上を保有するのかしないのかという問題も確かにあると思います。これは何らかの縛りをつけて、保有割合を5%未満に制限して、いわゆる大量保有しないようにすることも当然できるとは思うのですけれども、もしそうするのであれば、やはりこれは法改正時に法律内に条文化するなど、何らかの担保が必要ではないかなと私は思っております。

 最後に、先ほど政府介入のお話が出ましたが、これは別に政府が意図してどうするという話以前に、やはり市場関係者の行動として政府の動きを見ながら投資する方はいると思うのです。そうなりますと、市場関係者というものは政策動向を見て動くことで、GPIFなり政府が全く意図していなくても、結果として市場の投資行動というものをゆがめていくことになるのではないのかなと思っています。ですから、やはり結果論としてこれを見ていかないと、国が保有する巨額なお金ですので、議決権や株の保有割合に何らかの縛りをつければ大丈夫という話ではないと思っております。

 以上でございます。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 ちょっと待ってください。藤沢委員が先に挙がっていますので。

○藤沢委員 済みません。ありがとうございます。

 この運用の話になってから、これだけたくさんの方が前置きで、プロではないのでとか、素人なのでというお話になって、やはり私もすごくお気持ちがわかって、投資というものを経験もしたことがなければ、御自身がそういうもので資産を運用したことがないという方にとっては本当に怖いと思うのです。

 それはある意味、車の運転をしたことがない人たちが運転をする人たちのために交通ルールをつくりましょうと言っているような感じで、あんなものにひかれたら怖いからそもそも走らない道をつくったほうがいいのではないかという議論になりがちで、例えばアクティブも危ないとか、そういう話があるのですけれども、運用の世界で議論していれば、パッシブとアクティブで比較すると、短期的にはパッシブよりパフォーマンスが上がるアクティブがあって、長期的にはほぼ9割のアクティブが負けるというレポートは20年間ぐらい世界中で出されている話なので、そのプロがまさかアクティブをやれるからといって、パフォーマンスを上げるためにはどんとアクティブをやるというのは絶対的にあり得ないというふうに思ったりするのです。

 この間の御説明を聞いていても、アクティブを使うというのはあくまでもパッシブの運用の中で、引き取るときにアクティブの手法を使ってコストを下げるという話だったように記憶しているのですが、その意味で、やはり私は経験のない人にとっては、この議論はとても不安で、そんな簡単にどうぞ、やってくださいと言えないのだろうなというのはすごくわかります。それが大半の国民の意見であろうということもすごく感じます。

 そういう意味では、そういった国民をいかにして保護して、この運用というものをこれから考えていくかというのは一番、金融庁さんが考えていて、今、金融機関の人たちも金融庁さんの厳しいルールの中で苦しんでいらっしゃる部分もあるので、ちょっとそういういろいろな面を見ていらっしゃって、数多くの運用を見ていらっしゃる金融庁さんから、こういった私たちの今の運用改正の議論、それからガバナンスの議論に関して、どう見えるのか。やはり年金であれば、そこは少し控えたほうがいいのか。それとも、私たちはそもそも考えていることがちょっと違うのかどうかというのは、ちょっと金融庁さんからヒアリングか意見を聞かせていただくか、何かそういう、省庁間でそういうことをしてはいけないのかもしれないのですけれども、ただ、国を代表する金融機関をそれこそガバナンスされている機関なので、一度伺う機会をつくっていただけないかなというのが提案でございます。

○神野部会長 出口委員、どうぞ。

○出口委員 御意見をお聞きしていて1つ思ったのですけれども、こういうふうに皆さんが心配されているのでしたら、本当に国内株を25%持っていいのかという話をもう一回やったほうがいいのかなという感じもしたにはしたのですが、多分、今回の趣旨は25%の国内株を持ってしまって、市場におけるウエートも非常に高い。

 そういう中で、リスク管理も含めて、どうやったらもっと上手にマネージできるかということが多分、議論のスタートだった気がしていまして、今までお聞きしていた中でも、インハウスをやってがんがんもうけたいというお話は余り聞いたことがないので、先ほどの繰り返しになるのですけれども、要するに基本ポートフォリオの25%を国内株に広げてしまったということを前提に、それだけ巨大な存在であるGPIFをどういうふうにマネージしたら相対的にリスクも少なく、オペレーションも上手に出来、しかも国民経済に与える影響も少ないかという観点で多分議論をしているので、もっともうけたいとか、こんなことをやってがんがんもうけますという議論は誰もされていないように思うのです。

 そうであれば、私も運用した経験があるのですけれども、こんなことをやってはいけないというのはかえってリスクを高めることになり、制限が多い今のままで運用をやっていると、この大きいボリュームのお金が変にマーケットに影響を与えるのではないかという側面を忘れてはならないというのが多分、この議論の基本であると思います。

 もう一点は、人を育成しなければいけないというのは本当にそのとおりだと思います。これだけ大きいお金を運用しているわけですから、本当にいい人をとっていかなければいけない。でも、人を育てるというのは、やっていないことについて人は育たないのですよ。5年後にインハウスをやるために今からジャーニーを始めますと言っても実際にインハウスを始められないのであれば、やはり人は育てられないので、これは実際に運用したらよくわかるのですけれども、先ずガバナンスがあって、体制が整ってから運用という理屈はそうなのですが、ガバナンスと運用というものは、前も申し上げましたけれども、鶏と卵で、お互いに影響を与えながら進化していくものなのです。

 ですから、私自身は皆さんの議論を聞いていると、本当に基本ポートフォリオはこれでいいのかという議論にむしろ近いのかなという感じもしたのですが、基本ポートフォリオがもう済んだことであるのであれば、どういうふうにやることが相対的に上手にコントロールできるのかという観点と、そのためには人が大事であるということは誰も異論がないわけですから、人を育成するためには、これもだめ、これもだめ、育成するまで何もやってはいけないということは現実にはあり得ないので、私はもちろん、法律の足かせを外したとしても、山口委員の御指摘にもありましたように、何でも全部やれなどということはあり得ないわけで、しかも実際にもできないことですから、5年とか10年のジャーニーの中でやっていくしかないのです。

 そこはもちろん、経営委員会に全部任せるのではなくて、例えば、もし法律で決めないのであればこういう場で、基準は幾つか決めたらいいと思いますし、それから、年間の計画できちんとそれをローテーションしていけばいいと思うのですけれども、やはりこんなことをやってめちゃくちゃもうけるという話をしているのではなくて、ここまで大きくなったGPIFをどうやったらうまくコントロールできるのかという点と、人を育てるためには、これもいけない、これもいけないでは育たないというところを、私は生命保険会社で運用部門に少しいた経験からは申し上げたいという気がしています。

 以上です。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 御熱心に御議論いただいておりますけれども、時間を大きくオーバーしておりますので、本日の議論についてはそろそろ終了させていただきたいと思います。

 それで、このGPIFの運用のあり方についての議論でございますけれども、昨年末の部会で大体、私のほうから御説明しましたように、2つの要素から成り立っていて、ガバナンスの強化と運用のあり方と、これは相互に深く関連し合う、あるいはお互いに拘束し合う課題であるということを前提にした上で、とりあえず2つの要素に分けて、後で統一的に議論しましょうというふうに申し上げたと思うのです。

 それで、ガバナンスの強化については昨年末に申し上げましたように、皆様方からいただいた意見を次回、とりあえず整理した資料を出していただいて、それに基づいて議論していきたい。

 もう一方、運用のあり方については、きょうも生産的にさまざまな御意見を出していただきましたけれども、次回、もう一回議論を継続していきたいと考えておりますので、そのように運用させて。

○植田部会長代理 済みません。3点だけ。次回は出席できないので。

○神野部会長 ごめんなさい。当然です。聞くのを失念いたしました。

○植田部会長代理 ごく簡単に3点だけです。

 この株式のインハウス運用のアクティブのところを、アルファを得るという理由で正当化するのは無理だと思うのですよ。ですので前回、私は水野理事にどういうメリットがあるのかということを伺ったわけですが、その答えは主に資料2の冒頭のところにまとめられていますので、そのあたりをどれくらいに我々として評価するかというポイントになるかなと思います。

 それから、議決権行使、株主権行使のところですが、ネガティブな意見がかなり出たわけですが、逆に見ますと、GPIFのような大きな投資家がそこは余りやらないということのデメリットといいますか、日本全体のマイナスみたいなものをどう評価するか。当然、GPIFが投資家として被保険者の経済上の利益を最優先するというふうに行動する前提でですが、そういうことも考えなくてはいけないかなと思いました。

 最後、3番目に、デリバティブの利用方法のところで、これもむしろ水野理事に前回御質問すべきだったのですが、次回、場合によっては武田委員や米澤委員からお答えいただいてもいいのですが、考え方としてはどういうふうにヘッジをお使いになるのかなという質問です。つまり、例えば外株とか外債を持っていた場合に、完全に保有期間に対応したヘッジをしてしまうと、これは基本ポートフォリオで考えているリスク・リターンと全く違ったリスク・リターンを持った商品になるわけで、その場合、もともとのところからもうちょっと考え直さないといけないという話になるかと思います。そういうお考えなのか。あるいはもう少し短期的に、例えば外株を持っていて、為替のところでは随分リターンが上がっているので、ここで固定してしまおう。そういう利用の仕方なのか。その辺をどこかの機会で御説明いただいたら、もう少しわかりやすいかなと思いました。

 以上です。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 私、失念いたしました。申しわけありません。

 それから、どうぞ。

○平川委員 どうぞ。いいです。

○神野部会長 いや、終わってしまいますから。

○平川委員 申しわけありません。

 可能であれば、次回に向けて意見書を出させていただきたいと思っています。

○神野部会長 もちろん、構いません。

 それと、藤沢委員の提案につきましては、植田部会長代理を含めて、事務局と検討させていただいて対処したいと思っております。

 年をとっているので言い忘れがあるかもしれませんが、当面、これにて終了させていただきます。最後まで大変生産的に、御熱心に御議論を頂戴したことを深く感謝する次第であります。

 次回の運営につきましては、先ほど御説明したとおり運営させていただくということにさせていただいて、開催日程等々について、事務局のほうから。

○総務課長 開催日程は、また追って御連絡させていただきますが、頻繁な開催になっておりますことをおわび申し上げますとともに、御協力をぜひよろしくお願いいたします。

○神野部会長 それでは、これにて本日の会議を終了させていただきます。

 大変遅くまで御熱心に討議をしたことを重ねて感謝申し上げる次第でございます。

 どうもありがとうございました。

 

(了)

 

団体