厚労省のパブリックコメントに連絡会として反対意見を提出致しました。

 

パブリックコメント

(給付減額の手続の明確化・簡素化の項目について)

我々「企業年金の受給権を守る連絡会」は、2005年創立以来、企業年金の受給権保護と支払保証制度の法制化を求めて運動を進めてきており、このたびの給付減額の手続の明確化・簡素化を含めた確定給付企業年金法施行規則及び関連通知並びに厚生年金基金関連通知等の見直し案には、絶対反対であることを強く訴えたい。反対理由は次のとおり。

 

1.AIJ問題発生の責任の一旦は厚労省にある。国民の高齢期における所得を確保するために必要な年金資金をハイリスク商品の運用まで認めた1997年の資産運用規制撤廃と、その後の基金に対する杜撰な監督指導がつづけられてきたことが、今回の事件の主要な背景であり、厚労省の責任は重大である。また、今回の有識者会議の報告書では、給付減額の手続の明確化・簡素化については求めていないものである。

 

2.このたびの確定給付企業年金法施行規則等の見直し案は、今回のAIJ問題に便乗して、厚生年金基金だけでなく確定給付企業年金の加入者・受給者の給付減額要件を緩和しようとするものであり、確定給付企業年金法第一条の目的「・・・国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」を踏みにじるものであり、国民の生活の安定より企業の負担軽減を図るためのものであるといわざるを得ない。

  NTT企業年金減額問題訴訟でも、受給者給付減額については厳しい判断が下され、受給権者の企業年金を減額することは生存権を侵し、既に発生している受給権者の財産権をも侵すことであるとして、受給権保護の重要性が強調された。

 

3.わが国の企業年金の多くが、退職金を年金原資として給付設計がされており、過去の労働に対する対価として受給しているものである。退職時に年金額で確定して約束された年金であり、これを退職後になって企業の都合で一方的な年金減額を押し付けることは、法治国家としてあってはならないことである。

  もみじ銀行役員退職慰労年金打ち切り訴訟の判例(最高裁平成22年3月16日)でも、「契約は守られるべき」「同意のない契約変更は認められない」と、きわめて当然の判断が示されている。

 

4.確定給付企業年金法の審議の際に、確定給付という名にふさわしく企業が万一のときは、支払保証制度で受給者の年金権を保護すべきという議論がされたが、条文に取り入れられず、衆・参両院の付帯決議とされた。このような歴史的経過がありそれから10年以上経過している。今回の見直しでこそ米国のエリサ法に倣って、企業年金の受給権保護と支払保証制度を実現すべきである。

 

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