2013年活動方針
1.最近の年金をめぐる特徴的な動向
(1)公的年金分野
1)「特例水準の解消」として年金額が今年10月分から1%、2014年4月1%、2015年4月0.5%と合計2.5%の年金引き下げが予定されており、その後は、さらにマクロ経済スライドの発動により、毎年0.9%以上の引き下げが25年間以上続くことになる。
2)共済年金関係では、「被用者年金一元化法」により職域加算部分が廃止され、恩給期間のある共済年金受給者は、追加費用削減のためと称して年金が減額される。また、農林年金では特例年金制度の改悪案が提案されている。(約72万人に影響)
3)社会保障制度改革国民会議に対する日本経団連をはじめとした経済団体の主張「経済界としては社会保険料のこれ以上の上昇は容認できない。現下の危機的状況を回避するためにも社会保障給付の一層の効率化・重点化と給付の財源である社会保険料と税の一体的な見直しを通じた自助、共助、公助の役割分担の明確化が急務だ」として、年金制度については、年金財政の持続可能性確保の観点から給付抑制策を着実に実施すべきとしたほか、支給開始年齢引き上げは「雇用と年金の接続の観点から慎重な検討が必要」と指摘している。
(2)企業年金分野
1)AIJ問題を契機に厚生年金基金の見直しの議論が進められ、社会保障審議会年金部会の下に設置された専門委員会が7回の審議結果のまとめを2月8日公表した。公表された内容は、①「代行割れ問題」への対応、②持続可能な企業年金のあり方、③「代行制度の在り方」の3つの論点に沿った審議結果であり、厚労省では、専門委員会の意見を踏まえて改正法案を作成し、今国会に提出する予定としている。ⅰ「代行割れ問題」への対応として、特例解散制度を改め、5年間という時限を設けて早期に解散させるとしており、該当する基金の加入者・受給者の立場からはきわめて不安な内容である。ⅱ「持続可能な企業年金の在り方」では、確定給付企業年金(DB)の一種類であるキャッシュバランスプラン(CB)の給付設計の弾力化として、掛け金の追加拠出リスクを抑えるためのCBに用いる指標等の規制緩和が要求されており、集団運用型DCが提案されている。ⅲ「代行制度の在り方」については、意見書では代行制度を段階的に縮小するとともに、財政状況が健全な基金は他の企業年金制度へ移行させつつ、10年間の移行期間を経て代行制度を廃止するとしている。
2)企業年金連合会は厚労大臣と専門委員会あてに次のような要望意見書を提出している。「厚生年金基金の一律廃止に反対、新基準により多くの基金が解散に追い込まれることになれば、企業年金の減額、または無くなる者が大量に発生し、国民の基本的権利である受給権の侵害について深刻な懸念を持つものである、また、基金の保有する約17兆円の資産の多くが売却され、金融市場に大きな影響を与えるおそれがある」
2.企業年金連絡会を企業年金受給者の受給権を守るセンターとして、自他ともに認知されるような運動を推進する。
① 正当な権利である企業年金受給権の法的基礎を明確にするとともに、企業年金受給権に関する論点整理を進め、例会で討議し、まとまったものをパンフレット、HPなどで普及を図る。② 企業年金財政の正確かつ十分な情報開示がなされているか否かの検証活動と年金基金の投機的運用への監視を強め、財政悪化には当該基金に早期に対応するよう要請するとともに、厚労省、金融庁等に指導強化を求める。
③ 法政大学「年金減額無効訴訟」、キヤノン電子労組の年金減額に伴う「不当解雇事件」「損害賠償請求事件」を支援し、AIJ事件など企業年金減額などの被害団体・個人へ連絡会への参加を呼びかける。
④ 連合、全労連、全日本年金者組合、国公労連等と情報・意見交換する回数や協力共同する場をふやす。
⑤ 企業年金の受給権保護と支払保証制度の法制化を、確給法制定当時の衆参両院の議事録などを武器に、政府、政党、国会議員などへの要請行動を強める。
⑥ 運動の活性化のために例会を重視する。例会では会員の経験と知見(例えば情報開示を求める活動など)に学ぶ機会を増やし、また会員の関心に応える学習会を計画する。
⑦ 企業年金問題に関する情報の発信、収集に努め、マスメディアに積極的にアプローチする。
⑧ 親しみやすく、分かりやすいHPへ、内容の充実に努める。