2019年10月18日
第12回社会保障審議会年金部会
年金局
○日時 令和元年10月18日(金)
10:00~12:00
○場所 東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビ ルディング
TKP新橋カンファレンスセンター 16階(ホール16E)
○出席者
神 野 直 彦(部会長)
植 田 和 男(委員)
小 野 正 昭(委員)
権 丈 善 一(委員)
駒 村 康 平(委員)
武 田 洋 子(委員)
出 口 治 明(委員)
永 井 幸 子(委員)
原 佳 奈 子(委員)
平 川 則 男(委員)
牧 原 晋(委員)
諸 星 裕 美(委員)
山 田 久(委員)
米 澤 康 博(委員)
○議事
○神野部会長 それでは、定刻でございますので、ただいまから、第12回「年金部会」を開催したいと存じます。
大きな自然災害に見舞われて、被災された皆様方にお見舞い申し上げるとともに、そうした中で万障を繰り合わせて御参集くださいました委員の皆様方に深く感謝を申し上げる次第でございます。
本日の委員の出欠状況でございますが、阿部委員、菊池委員、小室委員、高木委員、平川委員、藤沢委員、細田委員から御欠席との御連絡を頂戴しております。
植田委員につかれましては、いずれおくれて御参集いただけるということでございます。
まず、皆様方に、御出席いただきました委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立していることを御報告申し上げたいと存じます。
また、平川委員につきましては、日本労働組合総連合会から、平川委員の代理として佐保参考人に御出席いただけるということでございますので、佐保参考人の部会への御出席につきまして、皆様方の御承認を頂戴したいと思いますが、いかがでございますか。よろしいですか。
(委員首肯)
○神野部会長 そのようにさせていただきます。
それでは、議事に入りますが、その前に事務局から資料の確認をお願いいたします。
○総務課長 厚生労働省年金局総務課長でございます。
毎回御案内しておりますけれども、厚生労働省におきましては、審議会等のペーパーレス化を推進しております。本日の部会におきましても、ペーパーレスで実施させていただいております。傍聴される方には、あらかじめ厚生労働省ホームページでお知らせしておりますとおり、御自身のタブレット等の携帯端末を使用して、厚生労働省ホームページから資料をダウンロードしてごらんいただくこととしております。
なお、けさにつきましては、ホームページへの掲載に一部不行き届きがございました。傍聴される方には、御迷惑をおかけしましたことを、この場をおかりしておわび申し上げます。
本日は、資料といたしまして、資料1「繰下げ制度の柔軟化」、資料2「在職定時改定の導入」、参考資料といたしまして「繰下げ制度の柔軟化 関係資料集」というものを使用しております。また、本日御欠席の菊池委員からも資料をいただいておりますので、あわせて用意をしております。
それぞれ御用意しております皆様のタブレットで御確認をお願いいたします。もし不備等がございましたら、事務局にお申しつけください。
事務局からは、以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
それでは、大変恐縮でございますけれども、カメラの方々にはこれにて御退室を頂戴できればと思います。御協力のほどお願いいたします。
(カメラ退室)
○神野部会長 本日の議事でございます。お手元の議事次第をお目通しいただければと思いますが、本日は「高齢者の就労と年金受給の在り方について」を議題とさせていただいておりますが、これは前回と同様の議題になっております。前回は、在職老齢年金制度の見直しと被保険者期間のあり方について御議論を頂戴したわけでございますけれども、本日は、この同じテーマ、つまり、「高齢者の就労と年金受給の在り方について」をテーマにして、繰り下げ制度の柔軟化と在職定時改定の導入について御議論を頂戴したいと思っております。
この2つの論点につきまして、まず、事務局から資料について御説明いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○年金課長 年金課長でございます。
まず、資料1「繰下げ制度の柔軟化」についてお開きいただければと存じます。
1ページ目でございます。現行の繰り下げ制度あるいは繰り上げ制度につきまして、公的年金の受給開始時期は原則として個人が60歳から70歳の間で自由に選ぶことができることとなってございます。65歳より早く受給開始をした場合、いわゆる繰り上げ受給の場合には、年金は1カ月当たり0.5%、5年間は60カ月になりますので最大30%の減額で受給ができます。他方、65歳より後に受給を開始した場合、いわゆる繰り下げ受給の場合には、1カ月当たり0.7%、最大42%の増額した年金を受け取れます。見直しの意義でございますけれども、高齢期の就労が拡大しておりますことなどを踏まえますと、高齢者が自身の就労状況等に合わせまして、年金の受給の方法を選択できる幅を広げられるように繰り下げ制度についてもより柔軟で使いやすいものとするための見直しをしてみてはどうかということでございます。見直しの方向性でございます。現行は70歳までとなっております繰り下げ受給の上限年齢を75歳に引き上げることを検討してみていただいてはどうかということでございます。すなわち、60歳から75歳の間で選択を可能とするということでございまして、見直す場合には改正法の施行時点で70歳未満の方から順次適用していくことにしてはどうかと考えております。それぞれ、60歳の場合、75歳の場合の期間内におきまして、数理的に年金財政上中立を基本として、増額率、減額率を設定してはどうかと考えておりまして、この場合、繰り上げ減額率は1カ月当たり0.4%減、最大24%減、繰り下げの増額率は1カ月当たり0.7%増、最大84%増であるという形で御検討いただいたらどうかと思っております。また、こうして特に70歳から75歳にした場合に、繰り下げ制度の周りで少し影響を受けて、改正したほうがいいのではないかという項目がございます。1つ目は、75歳を超えてしまって繰り下げの申し出が行われた場合に、75歳に繰り下げの申し出があったものとして年金を支給するような形にすることを検討していただいたらどうかと考えております。また、70歳以降の請求で、請求時点の増額された繰り下げの年金の選択ではなく、年金額の算定に当たっては、5年前に繰り下げの申し出があったものとして年金を支給することを可能にするような形の検討をしてみていただいたらどうかと考えてございます。
2ページでございます。こちらが70歳から75歳にした場合にどうなるかというイメージ図でございますけれども、上段にありますように、今は70歳から最大42%増での受給ということでございますけれども、75歳で最大84%増の受給を可能にするということを御検討いただいてはどうかと思っております。
3ページでございます。現在の増額率・減額率は、平成7年の完全生命表と平成11年の財政再計算で用いました経済前提をベースに計算しておりまして、0.5%の減額、0.7%の増額という形になってございます。こうした減額率あるいは増額率は、受給者の生活設計の安定のために頻繁に変えるような性質のものではないと考えておりますけれども、20年もたっておりますし、今般、受給開始時期の選択肢の拡大が議論されている中で、一つの見直しのタイミングではないかと考えております。具体は、平成27年の最新の完全生命表と今回の令和元年の財政検証のケースI~ケースVIの経済前提をベースにいたしまして、従来の考え方と同様に、選択された受給開始時期にかかわらず数理的に年金財政上中立になることを基本として設定してみたらどうかということでございまして、下に青字と赤字で書いてございますけれども、繰り上げの受給に関しましては、この間、20年の間に平均余命が延びたことに伴いまして、現行より引き下げて、1カ月当たり0.4%の減額、繰り下げに関しましては、平均余命も延びておりますけれども、75歳まで今回は繰り下げ増額期間の拡大もいたしましたので、その2つの要素を勘案いたしまして、1カ月当たり0.7%の増額、結果として現行の0.7%と同じ増額率にしたらどうかというものでございます。
4ページが、この中立的に計算するとはどういうことかというものを示している式と図でございますけれども、1つの年金受給者の集団、コホートが、65歳から受給を開始された場合ですと、だんだん亡くなっていく方が生じます。一方で、年金は改定されてふえてまいります。そういった要素を両方掛け算いたしまして、そのコホートの最後のお1人がお亡くなりになるまで総受給額がどのぐらいになるのかということを計算しまして、いろいろな要素が入っていますのでそれだけですと比較できませんので、65歳まで一定の割り引きで戻しまして、一時金換算いたします。そうしますと、65歳から受給した場合には、総年金額としてどのぐらいになるかということが計算できます。同様に、例えば、75歳から皆さんが一斉に受給されたという仮定のもとで同じような計算をいたしますれば、75歳から受給を開始した場合にはどのぐらいの総受給額になるかということがわかります。一般的には、お亡くなりになる方が出てまいりますので、遅い段階で計算を始めたほうが少ない総額になるわけですけれども、この両方を比較いたしますとどのぐらいの倍率になるかというものが出てまいりますので、それをベースにして計算しているという形になります。
5ページでございますけれども、先ほど申し上げましたように、それぞれ経済前提に応じて年齢ごとに計算したものをプロットしていった結果がこの曲線になります。この曲線に対しまして、毎月一定の同じ率で着地するという考え方で計算した場合に、最も数理的に中立的な率が0.7%ではないかというものでございます。
6ページでございますけれども、先ほど申し上げましたように、一度設定いたしますとそれなりの期間使うことが想定されますので、例えば、約20年後の完全生命表との関係ではどうか。あるいは、45年後に近い2065年の生命表との関係ではどうか。ごらんいただきますように、平均余命は延びていくわけですけれども、それを同じような手法でプロットをしてみたものが下の図でございまして、そういった将来の寿命の延びを勘案しても増減額率にそれほど大きな差はないことを確認させていただいているところでございます。
7ページをお開きください。上が現行の制度でございますけれども、70歳を超えてしまいますと、いわゆる繰り下げ待機で増額できる期間を超えてからの申し出という形になりますが、この場合、現行法ですと、このような繰り下げの申し出があった場合には、70歳時点で申し出があったものとみなしまして、70歳での増額率を適用してお支払いすると法律上は構成されております。これが、今後、75歳に仮に引き上げた場合には、75歳以降の場合に同様の措置をとらなければならなくなりますので、繰り下げられる期間を5年間延ばす場合には、同様に70歳というのも5年間ずらして75歳にしたらいかがかというものでございます。
8ページをごらんください。70歳以降になってから請求を行って、請求時点における繰り下げ受給、つまり、増額された受給を選択しない場合、現行の仕組みのままでございますと、繰り下げ増額がない、いわゆる本来額、65歳からの年金額が受給権発生時から支給されることになりますけれども、例えば、上の図の72歳でそのようなことをしたという仮定をした場合ですと、65歳から67歳の2年間は5年を超えておりますので、時効消滅することになります。そうしますと、なかなか安心して70歳以上の繰り下げを選択できない方も出てくる可能性がございますので、70歳以降に請求し、請求時点における繰り下げ受給、つまり、増額した受給、今回のケースですと72歳からの増額の受給を選択しない場合には、年金額の算定に当たっては、法律上、請求の5年前に繰り下げ申し出があったものとみなして年金の支給をする形にしてみてはいかがかということでございます。こうすることによりまして、時効消滅を避けることができるのではないかということでございます。
9ページが、現行の場合、どうなっているかという整理でございまして、左上に赤がございますように、今は65歳から70歳の5年間の繰り下げが可能ということでございまして、マル1、68歳の方のケースですと、68歳からそのまま増額したものを受け取っていただくこともできますし、65歳からの受給に変えて、請求時点における繰り下げを選択しないで、65歳から68歳までの年金は一括して受給し、68歳から65歳時点の増額をしていない年金を受け取るという2つの選択がございます。下の図のように、70歳以降に請求を行った場合には、先ほど申しましたみなし規定によりまして、72歳の場合でも70歳に繰り下げの申請をしたものとみなして増額した年金を受け取るという形もございますし、こういう選択が本当にあるのかわかりませんけれども、65歳まで戻して、65歳から67歳の分はなくなってもいいので、そのままもらいたいというものも選択できる形にはなっております。
次の10ページが、今回申し上げているようなものを仮に改正としてやった場合のイメージでございますけれども、今度は赤の線の部分が75歳までぐっと伸びておりまして、70歳から75歳の間、例えば、72歳になった場合に、請求をその年齢でもらう場合には増額したものをもらうというマル1は同様でございますけれども、マル2のケースですと、これを5年前のものとして受給するような選択も認めて、この2つの選択肢を用意したらどうかということでございます。75歳までしか繰り下げ増額はないわけでございますけれども、それを超えて、例えば、77歳になって初めて年金をもらいたいと思ったようなケースに関しましては、先ほど御説明しました、70歳見直しを5年ずらすことによって75歳の時点からもらうというマル1の選択と、5年前に請求したという形も認めるというマル2のケースで72歳からの形でもらうという2つの選択を認めてはどうかというものでございます。
11ページは、以前から御説明申し上げています現行の制度の説明です。
12ページも、以前からお示ししているデータでございますけれども、現行の繰り下げの利用状況でございます。
13ページは、これからの就労の進展はどの層で特に顕著に見られるかということで、男性の場合も女性の場合も高齢層での就業率の向上がこれから予見されているということでございます。
14ページは、以前の年金部会で委員の御意見なども踏まえながら整理して出させていただいたものに手を加えたものでございますけれども、今、繰り下げ受給がそれほど進んでいない要因として、3つぐらいあるだろうということでございます。一番上は、現実には男性でもまだ65歳前に老齢厚生年金の報酬比例部分を特別支給の老齢厚生年金として受け取っている方もいらっしゃいますので、そういった方々にとって65歳からの繰り下げという選択がまだなかなか視野に入ってこないという現状があると思われます。こちらは、支給開始年齢が引き上がれば、本格的に65歳からの受給の方々がふえるということでございまして、そうなってくるとまた状況が変わってくるのではないかと考えております。マル2で、厚生年金を繰り下げてしまうと加給年金がつかなくなりますとか、女性が多いのですけれども、基礎年金を繰り下げると振替加算がつかなくなりますとか、そういった指摘もございます。これは次のスライドで少し御説明したいと思います。3番目は、前回の年金部会でも御議論いただきましたけれども、在職老齢年金が適用されて、支給停止部分がございますと、その支給停止部分は繰り下げ増額の対象にしておりませんので、支給停止がかかっているような方々にとっては、少し繰り下げのインセンティブが削がれているのではないかという指摘がございます。これに関しましては、在職老齢年金の見直しで対応すべき課題ですので、在職老齢年金の議論に委ねられることになります。
この資料の最後、15ページでございますけれども、加給年金・振替加算は、左のように、昔の世代ですので、典型的に夫と妻のケースで書かせていただいておりますけれども、夫が20年以上厚生年金に入っておりますと、年下の奥様がいらっしゃる場合には、その奥様が65歳になるまでは加給年金がつくことになります。65歳に奥様がなられますと、加給年金はなくなりまして、今度は振替加算という形で奥様の基礎年金につくという形になっております。御案内の不十分もあるのですが、余り知られていないこともありますけれども、厚生年金と基礎年金はそれぞれ別の法律に基づく別の権利に基づく給付になりますので、それぞれ繰り下げ選択ができます。ですので、上のケースでしたら、厚生年金は受給したまま基礎年金だけを繰り下げるといった選択も可能でございますし、下のケースでいえば、基礎年金は受給したまま厚生年金だけ繰り下げることも可能でございますので、加給年金・振替加算に関しましては、そういった世帯の中でうまく工夫しながらやっていけば十分に繰り下げ選択もできるような状況になっているということでございます。
続きまして、資料2の在職定時改定について御説明申し上げます。
1枚目でございます。今、65歳以降は、支給開始年齢後ですので、原則、年金受給者になっているという前提でございますけれども、就労が拡大している中で引き続き厚生年金事業所で働いて被保険者として保険料を払っていただいている方もふえてきているわけでございます。現行制度は、こうした受給権を取得した後の就労に関しましては、退職あるいは被保険者の資格を完全に失う70歳到達によりまして、資格がなくなったときに初めてその間の保険料の拠出分も踏まえた老齢厚生年金の額の改定をしております。これを我々はいわゆる「退職改定」と呼んでおりますけれども、前回の年金部会でもちょっと御説明しましたように、昔は「退職年金」といいまして退職して初めて年金を払うような構成になっておりましたので、その時代の整理がまだ残っている形のものでございます。見直しの意義ですけれども、高齢期の就労が拡大してまいりますと、就労を継続される方はふえてくると考えられます。就労の継続をして保険料を払っていただいたことの効果を退職するまでお待たせするのがいいのか、それともそこまでお待たせせずに早期に年金額に反映させていくことで、年金を受給しながら働く受給者の経済基盤の充実をどんどん図るという考え方もあるのではないかというものでございます。見直しの方向性といたしましては、65歳以上の方については、在職して働いて保険料を払っていただいている期間であっても、年金額の改定を、例えば、年に1回は行っていくという形にしてはどうかということでございます。現行は、上にございますように、何年間働いていただいても、おやめになるとき、これは70歳まで継続して働かれて最大5年間お待ちいただいて改定するというイメージ図でございますけれども、これを下の図のように、毎年1回、定期的に、その分、1年間なら1年間を払っていただいた保険料の分を年金に上乗せしていったらどうかという案でございます。従いまして、この赤字で書いた増額分だけ、年金の給付改善、支給増ということになります。
次の2ページをごらんいただきますと、今、65歳以上の在職の年金受給者がどのような標準報酬を得ながら働いていらっしゃるかという分布図でございますけれども、この分布図を見ていただきますと、最頻値が18万円台にございまして、20万円ぐらいを境としまして前後に集中しているというのが見てとれます。下に書かせていただいておりますけれども、例えば、月額20万円の標準報酬で、1年間、保険料を拠出していただいた分を翌年に年金に反映したといたしますと、年1万3000円程度の老齢厚生年金の改正になります。これは月に換算しますと大体1,100円ぐらいということになります。こういったことを仮にした場合に、必要となる年間当たりの財政影響が、右上にございますように、800億円で、推計ですと150万人に対する給付改正という形になります。なお、右端のほうの方は、いわゆる在職老齢年金にかかっている方も多いと考えられます。改定しますと、その分、年金額は増額にはなりますけれども、在老でとまっている方は、改善して一部出る方もいらっしゃるかもしれませんけれども、基本はその分とまるという形になりますので、その分の財政影響は加味してございません。それで800億円ということでございます。
例えば、1,100円というものをどのくらいのものと評価するかということでございますけれども、次の3ページをごらんいただきますと、65歳以上の方につきまして、標準報酬が、例えば、10万円の方、10~20万円の方、20~30万円の方、30万円以上の方と4区分ぐらいつくりまして、それぞれ2階部分の報酬比例年金だけで、基礎年金は除きますけれども、どのぐらいの受給の分布かというものをお示ししたものでございまして、10万円あるいは10~20万円の方を見ていただきますと、2万円ぐらいの方が非常に多くございまして、10万円より低い方で見ますと、あるいは20~30万円の方を見ても8割ぐらいの水準になっていますので、こういった特に年金が低い方々に関して見ますと、1,100円の改善効果も決して低いものではないことが御理解いただけると思います。
駆け足になって恐縮ですけれども、最後に、関係資料集だけ少し確認させていただきたいと思います。
1ページ目は、財政検証でお示しした図でございます。
2ページも、財政検証から抜粋してきた資料でございます。
3ページも、同様でございます。
4ページ、5ページが、先ほどちょっと口頭で申し上げたような計算をした場合に、財政検証の前提と年齢に応じてどのような倍率になるかというものを示した一覧表になってございます。
7ページは、財政検証の参考資料の中でお示しした図でございます。今の20歳の方が今の65歳の方と同じぐらいの水準をもらうとしたらどのぐらい働いて繰り下げればいいかというものを示したものでございます。
8ページと9ページは、昨年の年金部会で、前の財政検証ベースで似たような図を出しましたけれども、最新のものにしてほしいという要望が複数ございましたので、それをおつけしたものでございます。
私からの説明は、以上となります。よろしくお願いいたします。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
本日御議論を頂戴します2つのテーマについて資料を御説明いただいたわけでございますが、それに基づきまして、御質問、御意見をどうぞ。
諸星委員。
○諸星委員 それでは、繰り下げ制度の柔軟化について少しだけ意見を申し述べさせていただきます。
繰り下げ制度自体、今まであまり選択されなかったのは、本日の資料の14ページでまとめられているとおりであると思いますし、今後、周知をしたとしても、正直なところ、急激な増加にまではつながらないと感じています。ただし、70歳までの繰り下げを75歳までに延長すること自体は、年金の受給年齢の選択肢をふやすということであれば、それ自体に反対する理由は、私はないと思っています。ただ、先ほど菊池委員の意見書を拝見しましたけれども、優遇措置をそこまで手厚くやるのかということについては、また一つ、今後の議論の対象になるのかなということは感じました。
年金の受給ができる年齢になったにもかかわらず裁定請求をしないまま、高齢になって請求するという事例は結構あります。5年の時効にぶつかる問題については、今回提案された申出の見なし制度を導入することで改善をされることになり、受給者にできるだけ有利になるよう配慮されていることは評価できるのかなと思います。
ここで一つ、後ほどの回答で結構なのですが、請求しないまま受給者が亡くなられたときの未支給年金に関しても、同様の見なしを採用して支給するということでいいのかどうかを確認したいと思いました。
75歳以降の申し出みなしに対しては、対象人数自体がそれほど多くないと思いますが、今やエイジレス時代であるということなので、これはさらに丁寧な周知をされることが必要ではないかと感じました。繰り下げ制度自体、今、改善をされているのですが、かつては繰り下げ請求の翌月からの請求・支給ということで、以前は社保審査会などへ集団で不服申請があったこともありました。その理由として最も多かったものが、制度を知らない、詳細な説明がなかったと。多分今は裁定請求時にきちんと説明を現場でされていると思うのですが、年金をまずはいただけることにどうしても関心が向いてしまうことが非常に影響されているではないかと感じています。今回、いずれの制度についても、丁寧な説明、それも増額されるだけのメリットの面だけではなく、デメリットとなる加給年金等や在老の支給停止部分への影響面も正確に伝える方法を考えて、繰り下げの選択をしていただくことが必要かと思います。
ちなみに、15ページにいろいろデメリットをできるだけ回避する方法を挙げていただいていますけれども、これ自体を見ても、多分高齢者など一般の方には大変わかりにくいことが改めて認識できたのかなと私は思っています。
今は共働きがふえていますし、より適用拡大を進めていけば、厚生年金加入がおのずとふえるので、逆に加給年金の対象者は減少するのではないかと思いますし、理解が広がれば加給年金の対象となるために、みずからの厚生年金期間を20年に満たないように調整するようなことも少なくなると思いますので、何度も同じことで申しわけないのですが、この機会に繰り下げ制度の御理解と周知方法に関して、一番現場を預かる日本年金機構などの現場の声を確認しつつ進めていただければと考えています。
もう一点、在職定時改定については、短い意見なので、この場で話しますけれども、素直な印象としては、毎年1回の改定は、その事務の手間やシステムの改良にかかる費用と財政の影響から見ても、果たして本当に必要かどうかということは、正直、大いに疑問に私は思っております。2ページにもありますように、毎年改定した後の増額となる金額を見ても、かえって目立ってしまって、受給権者の方は1年間の保険料の負担額のほうが高額に感じられてしまうのかなという印象があります。実務的にも従来どおりの退職改定のみでよいと私は思っています。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
御質問いただいた事項は後でというお話でしたが。
○年金課長 まず、未支給年金をどうするかですけれども、事務局としては、未支給年金に関しましては本来の65歳のままで増額なしで支給したらどうかと。一身専属権の年金の中で、御本人の意思による選択に係らしめられている部分とそうではない部分は厳密に分けて、意思に係らしめられていない部分は原則どおりではどうかと考えていることが1点でございます。
○諸星委員 そうしますと、後でよくあることが、本人からその意思が明確にあったと言われる場合があるのですね。そういったことに関しても、それは法律どおりこうですよという形になりますか。
○年金課長 例えば、委員はよく御案内のように、それは今でも遺族厚生年金についても全く同じ構成にしておりますので、そことの均衡を考えても、その部分は増額対象にしないことがよろしいのではないかというのが事務局の考えでございます。
実務のほうは、私が承知している限りでは、近年は非常に丁寧な、委員が御指摘のシートをつくりまして、逆に、受給者からすると少し面倒くさいと言われるのかもしれませんけれども、最後、わかりましたという確認のサインまでしていただいて、しっかり現場でも保管するようにしております。先ほどの進まない理由ともちょっと関係してまいりますけれども、これから本格的に65歳受給という形になりますと、年金事務所でフェース・ツー・フェースでお話しする機会もふえてくるかと思います。今、特別支給の老齢厚生年金を先にもらっていますと、簡易な手続きとするためにお手紙だけで意思確認をするような形になっていまして、お手紙の中には丁寧な説明を入れているつもりではございますけれども、さすがに委員がおっしゃっているようなレベルでは、フェース・ツー・フェースでいちいち指さし確認をしながらというところまではやり切れていない部分もあるかもしれませんけれども、そういった支給開始年齢の引き上げとともに、そういったしっかりした手続はよりやらせていただけることが期待できるのではないかと思っておるところでございます。
○神野部会長 実務にかかわって、重ねて事務局から御説明がありますか。いいですか。
○総務課長 担当課長がおりませんので。今、年金課長がおっしゃったとおりになっています。
○神野部会長 わかりました。
山田委員、原委員でいいですか。
○山田委員 質問なのですけれども、最初の繰り上げ制度柔軟化の3ページのところで、繰り上げ受給に関しては、前回の減額率が0.5%だったものが今回は0.4%に、減額の幅自体を小さくするということなのですけれども、ちょっとわかりにくかったのは、基本的には平均余命が延びていっているわけなので、そうすると平均的には給付期間が延びますので、単純に考えると減額率自体をむしろ大きくしないと中立的にならないように思うのですけれども、ちょっと違うロジックなのかなと思うのですが、そこの部分をわかりやすく説明していただきたいという質問です。
○神野部会長 年金課長と数理課長ですか。
○数理課長 繰り上げ受給というか、イメージ図が描いてあるとおり、年金の受給期間×年金額が等しくなるような、面積が等しくなるようなことなので、寿命が延びると60歳まで5年間繰り上げた分の5年分の影響の度合いが相対的に小さくなると考えれば、減額幅を少し小さくしてもよいという考え方です。
○年金課長 少し文系的にいいですか。これはすごく文系的な説明なので、そう聞いていただきたいのですけれども、数理課長がおっしゃったのは、例えば、65歳から平均余命が仮に5年だといたしますと、60歳から70歳までが10年に対し、60歳から65歳が5年ですので、10分の5となり、60歳から65歳の間は半分の価値がある。例えば、それがさらに5年延びて10年になりますと、15分の5で60歳から65歳の5年分が3分の1の価値しかないので、そうすると少し多目に払ってあげても中立的にぴったりとなる。つまり、平均余命が延びていきますと、5年の価値が相対的に下がっていくということを数理的におっしゃったのだと思います。
○山田委員 私も文系なのですけれども、多分疑問が出てくるので、少しそういうことを丁寧に説明していただくようにしていただければと思います。
○神野部会長 よろしいですか。
原委員、お待たせしました。
○原委員 ちょっと長くなってしまうかもしれないのですが。
まず、繰り下げ制度の柔軟化については、基本、70歳から75歳と選択肢を広げるということなので、そういった意味では、70歳から75歳まで繰り下げるということを選択する人がいるということかもしれませんけれども、これは選択肢なので、あくまでも選択肢を広げるというところでいえば、別にいいのかと思います。
ただ、まず、7ページのところについては、これは繰り下げの申し出をしたということで、現行の制度なので、現行は70歳までしか選択がないので、75歳で申し出をしたときに70歳時点で繰り下げ申し出があったものとするというものを、今度、75歳になったときには、もし80歳で繰り下げの申し出をした場合には75歳時点で繰り下げの申し出があったものとする。今の制度を引き継ぐ形なので、これでいいのではないかと思います。
ただ、一方で、8ページの下と10ページのところなのですけれども、なかなか難しい話だと思うのですが、繰り下げを特に10ページのほうでいうと、72歳時点と77歳時点の事例が出ているのですけれども、それぞれ①は繰り下げ受給を選択するという場合なので、これは、今までどおり、将来に向かっての年金額が増額をされている。72歳は選択肢の範囲内なのでそうですけれども、77歳の場合も75歳までで、先ほど言ったところですね。75歳を過ぎているので、そのままでは一括してというのは、さっきの8ページと同じかと思うのです。②のほうなのですけれども、どちらにおいても、時効の話の部分でみなしの規定と先ほどおっしゃっていたのですが、5年、要は、72歳であっても、これは選択肢の幅の範囲内ですし、75歳以降の77歳というものは、75歳から外れている、過ぎてしまったという人なのですけれども、そこで繰り下げの申し出をしなかった人に対しては、今までは、それまでの5年分を本来の受給額で一括して支給しているということなのですが、繰り下げをしないという選択をした人で、65歳から75歳の間に請求を行った場合と書いてありますけれども、その場合に5年前に繰り下げの申し出をしたとみなして、過去分も、将来の分も同じ増額率で、同じというか、もちろん増額率には違いがあるかもしれませんが、5年前の増額率で増額するというような新しいものにしていると解釈しています。
これはどうなのかなと思っていて、現行のままでも、要は、繰り下げをしないという申し出というか、繰り下げの申し出を選択していない人なので、そこに対して安心して繰り下げを選択していただきたいという意向があるのかもしれないですけれども、本当に繰り下げをする人との差ということもありますし、過去分はさておき、将来の分まで増額するということはどうかという論点なのかなと思います。あとは75歳までという選択肢の範囲内の方人がそれをすることと、75歳以降、過ぎてしまった人が行うのとでは違うと思いますので、その辺りは、現状、今まで色々な方に説明している中で、途中で繰り下げをやめることもできますみたいなことを言っていますが、それは普通に過去の5年分をそのときの当時の金額で一括して受け取りますという話をしてきた中で、特に65歳以降の方に適用するのかと思うのですが、72歳とか77歳とかという人に、みなしの規定はこれから議論をもう少ししたほうがいいかと思いました。
そういうことと、あとはもう一つの議論の在職定時改定について、これも結論から言えば現場が対応できるかどうかというところだと思います。現場の年金事務所あるいは事業所が回るかどうか。私は、この1年ずつ改定していくと。今までだと、60歳と65歳と70歳、退職時ということで、そこまでは年金が変わらなかったのですね。働いたことにより、もちろん厚生年金の保険料を払って働いているわけですから、負担が給付に返ってくるというものが待たないといけなかった部分が、今度は1年ずつ実感として働いた分は年金額が増えるというかたちで返ってくるということで、すごく働く意欲にもなりますし、厚生年金の保険料を払っていただくわけですから、そういった意味では1年ずつできるのであれば、働く立場からすると、これはいいことなのではないかと思います。
今後、賃金変動への徹底とかで年金の額の改定も変わってきますと、そういった意味では、年金を増やすという言い方はいいかどうかわかりませんけれども、1年働くとその分年金が増えますよという部分ではいいのではないかと思いますし、年金額がわかりやすくなって繰り下げとかもそれこそ選択しやすくなるのかなと思っています。
本来の65歳以降の年金についてですよね。特老厚とかは関係がないですから、65歳以降の年金なので、そういった意味ではいいのではないかと思いますが、年金額は4月に1回改定して、誕生月か何かに変わるのだかわからないのですけれども、恐らく誕生月に変わって、現場では、これはまたちょっと違いますけれども、人事では定時決定という形で標準報酬月額の改定があって、それによってひょっとしたら高在老とかの部分は関係があったり、1年延びたことによって加算が発生する・しないという話もあって、これは現場が回るように体制をとっていただくのがよいかと思います。年金事務所とか、日本年金機構とかできちんとそういう幾つもの作業というか、事務が発生すると思いますので、そういった意味では、現場が回るかどうかという部分の問題で、大丈夫ということであればいいと思うのですけれども、そういうことでその辺は現状というか現場対応を少しお聞きしたいですし、そういったことを確認していけたらと思っております。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
コメントはありますか。どうぞ。
○年金課長 御指摘いただきましたとおり、なかなか現場の負担の問題も確かにございます。私どもも、きょうの御提案に至るまでの間、我が局の業務部門や日本年金機構とも何遍も話し合いや検討を重ねてまいりまして、一応一定はやれるというめどが立ったので、きょう、こうして御提案申し上げているということでございます。他方で、御指摘いただきましたような点はよく注意しなければなりませんので、仮にやる場合につきましては、引き続きよく現場サイドとも話をしまして、例えば、施行のタイミングとか、そういったこともあろうかと思いますので、その辺は委員の御指摘も踏まえて重々気をつけたいと思います。
1点、先ほどの私の説明で、少し言葉足らず、拙い部分がございましたので、少し補足させていただければと思うのですが、この在職改定の2ページ、800億円の説明をする際に、在職老齢年金で支給停止されている方についても、もしかしたら払われるかのような発言になっていたのではないかという指摘が事務局からもございました。在職老齢年金で支給停止されている方につきましては、今の制度のままであれば、増額改定をしてもその分は支給停止の対象になりますので、その部分は支給停止されたままという前提で計算するということでございますので、ちょっと言葉が足りなかったという指摘がございましたので、この場をかりて補足させていただきます。
○神野部会長 ありがとうございます。
権丈委員、どうぞ。
○権丈委員 本日の議題が「高齢期の就労と年金受給の在り方について」というところで、2013年8月の社会保障制度改革国民会議で書かれていたことがようやく6年たって議論されているところで、国の制度はそんなスピードになるのだろうなということを実感しております。
まず、繰り下げ制度の柔軟化なのですが、財政中立的になる割り増し率というものは、凸関数になることはみんなわかっていたわけで、どこかで割り切らないと線形割り増し率にはならない。それをどうするかということをプロが考えていくところだったわけですけれども、これも幾つかの資料を参考に出していただいて、0.7という形でやっていこうかという御提案だと思っております。
私は、これだけ繰り下げ受給というものを勧めていながらこの数字を使ったことがないのですね。70歳で1.42倍になるというのを使ったことがない。いずれここは議論せざるを得ないところになるからというところで、それを0.7にするということになってくると、直近の近い年齢だとプラスで、遠い年齢になるという形になってきて、例えば、資料の中で3ページ、繰り下げ受給が1カ月当たり0.7%増額とあるのですが、「平均余命の延伸と75歳までの繰り下げ増額期間の拡大」を勘案するなら0.7%でいいのではないかという言葉は、普通の人は余りわからないのではないかと思うのですけれども、ここを理解するように、これは凸関数であるものが財政的にはニュートラルなものであって、それを線形で決めていくのだからということをしっかりとみんなが理解する必要があると思っております。
だから、年金の2004年改革を批判したい人や認めたくない人はどうしてもこの点について文句を言って、今朝も新聞で自分の計算では0.6%台になったとかというものがあるのですけれども、それもどこかで割り切っているはずなんですね。どのような割り切りをしているのですかということを、絶えず、記者の方から、いろいろな方々から質問される必要がある側面だと思っております。まず、この形のこと、0.7%ということで私もいいのではないかと判断しております。
次の在職定時改定のところなのですが、800億円は、今、在老が存在するという形での800億円になるわけですね。在老を仮に改正していくとすると額がふえていくことになる。きょうは関連資料の中でいろいろとあって、モデル年金の計算で使われる平均賃金でずっと働き続けていくと在老にひっかかるとかという資料が選択されているわけで、在老はどこかで見直していかなければいけないだろう。
そうすると、この800億円もちょっと大きくなっていく可能性はある。大体この前から今までの試算を見ると、1000億で0.1ポイント所得代替率が上下するということがあるので、0.1ポイント弱下がってくる形になるのかな。在老が廃止されていくとここが少しまた上がってくることになるのかなということがあって、それの影響が大きくなっていくことがあるのかなということはあるのですが、資料にあるように、この制度が自分の年金が低いから働かないことにはやっていけませんという人のところに集中的にお金が回っていくのであれば、苦しい財政の中で回していく制度として、なかなか反対もできない。そういう制度になるのかなということがある。
同時に、右側の人たちを繰り下げ受給のほうに進めていくということはきっとそういうことなのではないかと思うのですね。そうすると、財政の影響はどうなっていくのかということもありますので、私がちょっと心配するのは、繰り下げを進めていくということの逆インセンティブになったりするようなことはないでしょうかということと、ちゃんとこの所得代替率0.1ポイント弱下げていくことを犠牲としながらやっていくことが、年金が少ないから働かざるを得ないという中低所得者のほうにお金が回っていくということが、ある程度見える形で出てくるのであれば、この制度はありかなということを感じております。
だから、この右側のほうの年金が高い人たちのところに在老をある程度緩和していって、給付が高いところ、この部分にあげていくということはなかなかきついものがある。同時に、今回の財政検証は、出生率の助けをかりたり、就業率の上昇という助けも少しかりているわけでして、そういうことがある中で、ケースⅢで50%ちょっとというところがあるので、次の財政検証はどうなるのだろうかということは、正直、私は考えているところがあります。
したがって、この前の在老を少し改善していきますよとか、あるいはこういう改定を新しくやっていきますよということになっていくと、所得代替率を上げていく政策は最大限にやって、次の本体試算の中に組み込むことができるようにしておかないことには、結構財政検証としてつらいものがあるだろうから、次回、かかわりたくないなということがあるわけです。
だから、最大限本体試算に適用拡大とかということを125万人に拡大するということを組み込んだ形で試算することができるように、所得代替率が下がっていくという側面の改革を行う場合には、完全にこの所得代替率を上げていくということを意識しながら、しっかりと取りかかってもらいたいと思っております。
前回話したことと同じになります。
○神野部会長 ありがとうございます。
事務局から特になければ、駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 ありがとうございます。
資料1、3ページの概念図、繰り下げ・繰り上げは財政的にニュートラルになる。これはそのとおりだと思うのですけれども、ただ、なぜ繰り上げ・繰り下げを選ぶかというと、個々人で考えてみれば、自分がどのぐらい長生きをするのか、早く死ぬのかという、ある種の想定を置いているわけですけれども、少なくとも数理部会の資料で見る限りだと、繰り上げ受給をして60歳ぐらいからもらっている方の死亡率、失権率は高い。つまり、自分の寿命が長くないと見ている人がどうも繰り上げているということで、繰り下げている方は自分の寿命が長いと思っている人が繰り下げているかどうかはわからない。1%しかいませんからわからないという状態ですけれども、非常に軽微な影響なのかもしれませんけれども、今後、繰り下げている人と繰り上げている人がランダムに、あるいは現在と同じような人ばかりがやっているわけではなくて、健康状態や寿命が違う人がやるようになったときに、リスク詮索が起きることになりますので、財政には必ずしも中立的な影響ではないこともあり得るわけですので、ふえてきたらちゃんとデータをとって、どういう方が繰り上げているのか、繰り下げているのかということをチェックしていただく必要が出てくるのではないかと。これは、繰り上げ、繰り下げがポピュラーになってきたときの問題かと思います。
2つ目ですけれども、6ページ、これは念のための文章表現なのですけれども、2040年、2065年の将来生命表でチェックをしても大丈夫ということでありますけれども、生命表の将来予測は、2040年になったらこの平均余命が23.9歳のままかというとそんなことはなくて、そのときになったらもっと延びていることが今までの前提ですから、ここに書いてあることは、2040年になっても2065年になってもこの数字は維持できますよということにコミットメントをするわけではなくて、現時点でチェックをしたら大丈夫ですよという意味なので、定期的に変えなければいけないのだけれども、現状の予測値の中では大丈夫ですねという説明だと思いますが、それは念のために確認ということです。
資料1の15ページですけれども、これは以前お願いしたように、今後検討していただきたいのですけれども、繰り下げについては、部分繰り下げみたいなものも考えていただける。これは非常に厄介な仕組みになるかもしれませんので、フィージビリティーがどうなのかということもあると思いますけれども、より自分自身でどの程度もらうかということをきめ細かく判断するためには、部分繰り下げみたいなものもあってもいいのではないかと思います。
資料2のほうですけれども、2ページの分布と影響ですけれども、これは800億円の前提としては、こういうことをやって、在職定時改定を行って、保険料を払ったものがちゃんと年金に反映されていることがそのときにわかるということをやることによって、特段労働意欲は変わらないという前提だと思いますけれども、もしかしたらそれで納得感があって、より働くように、より高い賃金を求めるようになるとすれば、この金額がもっと大きくなる可能性があるという理解をしていいのかどうか。これは、制度を変えることによって、労働者側の反応は、所与、変化しないという前提で計算しているものだと思いますけれども、その点を確認したいと思います。お願いします。
○神野部会長 2点ばかり、確認と。
事務局、どうぞ。
○数理課長 最初の資料、2040年と2065年のお話でございますけれども、御指摘のとおりでありまして、これは現在の社人研の将来推計人口における将来生命表で確認してみるとこうなるということですので、今後、これは当然変動し得るものでございます。念のため、現状得られるデータで確認してみるということでございます。
2つ目、資料2の2ページ目の件ですけれども、これも御指摘のとおりでございまして、基本的にこのような仕組みを導入することによる行動の変化というか、そういったことを織り込んではいないということでございます。
○神野部会長 課長、どうぞ。
○年金課長 委員に御指摘いただきました繰り下げを、例えば、今でも1階2階と別々にできるのですけれども、その中をさらに分割してみたらどうかということは、アイデアとしてはないわけではないと私どもも受けとめておるのですけれども、権丈委員もおっしゃっているように、今回の最終的な改革パッケージがどうなるかということが今後の御議論かと思いますけれども、この就労と年金の周りでも、今回もこのまま仮にやっていきますとそれなりのボリュームの改革になりますので、まずはそこをして、さらに繰り下げの動向を見て、繰り下げをされている方の意識や今後の要望といったものも踏まえながら、委員の御指摘を今後の検討課題として受けとめさせていただければと思います。
今、数理課長が申し上げた行動変容は入れていないという部分に関して少し補足でございますけれども、多分委員がおっしゃっている行動変容は、もう少し長く働いてみるとか、もう少し意欲的に、例えば、労働時間を延ばす形で賃金が多くシフトするという御指摘かと思いますけれども、その場合には、確かに給付増もございますけれども、働くことに伴う保険料増もございますので、これは保険料は既にいただいている方々に対してその前提でどう改善するかということですので、単純に一方的な給付増だけになりますけれども、委員がおっしゃっているような行動変容の場合には、入りと出の問題が出てくるので、もう少し複雑な話になるのかなと受けとめております。
○神野部会長 ありがとうございます。
牧原委員。
○牧原委員 繰り下げ制度の柔軟化については、年金財政の中立という観点を前提に制度が見直されており、また、本人にとっても選択肢が広がるという意味では、評価できる提案かと考えています。
ただ、2点ほど意見を申し上げたいと思います。先ほど他の委員から意見があった通り、減額率・増額率は、少し分かりにくい部分があり、また、受給者本人の生活設計に対するインパクトがあるので、頻繁に見直しをするという性質のものではないと理解しています。財政検証は5年に一度行われますけれども、例えば、5年もしくは10年スパンというように見直す期間を決めた上で、平均余命や経済前提に大きな変化があった場合には見直すといったルールを定めた上で考えていくべきではないかということが1点目です。
また、先ほど申し上げた通り、減額率・増額率の説明は少し分かりにくい部分があります。実際に適用にあたっては、分かりやすい説明を考えるべきではないかということが2点目です。
在職定時改定の導入の件については、就労のインセンティブを高めそうだという印象を受けますけれども、資料にある通り、新たな財政負担が800億円ありますし、仮に在老の廃止とセットになると、さらなるインパクトがあると感じました。オプション試算の中では提示されていませんがが、将来世代の年金受給に対してどのような効果があるのかということをきちんと見極めた上で、制度を検討していくことを考えるべきであると思います。
○神野部会長 ありがとうございました。
事務局、いいですか。
どうぞ、出口委員。
○出口委員 まず、最初の繰り下げ制度の柔軟化、75歳までの件ですけれども、何度も申し上げているように、僕は高齢者とは75歳以上からだと思っていますので、これは財政中立的でもあって、当然こういうふうにやっていただいていいのだろうと思います。
2つ目の在職定時改定ですけれども、御説明を聞いていると非常に精緻に考えられていて、よくわかるし、しかも実務上の負担はあるのだけれどもちゃんとマネージができるという年金課長の御説明もあったのですが、僕自身は2つ思うところがあって、1つは、制度というものは、できるだけシンプルに設計することがすごく大事だという気がするのですよね。そうすると、細かく考えていけばどんどん制度は複雑になっていくのですけれども、本当に皆さんは優秀な方ばかりなのでマネージは当然できると思いますけれども、制度としてこんなに細かく複雑にしていくことが本当にいいのだろうかと。制度はシンプルであるべきだという点が、少しひっかかる。
それから、在職受給権者の経済基盤の充実を図る。お話を聞いている限り、そのようにも思うのですけれども、これで本当に人々の行動がどう変わるのだろうか、日本経済にとって何がプラスになるのだろうかということがもう一つよくわからなくて、制度は中立的であるということはそのとおりですけれども、それだけではなくて、この社会がよくなるように、そういう方向に考えていくべきだと僕自身は思いますので、この800億円の財政負担がある中で、やってもいいようにも思うのですけれども、このシンプルさということや、本当に社会がいい方向に、高齢者が喜んで働くようになるのかという点の意義づけが少し弱いような感じがして、もし在職定時改定をやられるのであれば、その点の説明が少し足りないのかなという感じを受けました。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
どうぞ。
○永井委員 ありがとうございます。
私からは、働く者の立場を意識して、2点、質問になると思いますが、発言させていただきます。
まず、1つ目は繰り下げ制度の柔軟化について、これから高齢化がさらなる進展を迎えるという中で、この制度が導入され、繰り上げ制度が周知されていくという中で、70歳以降に裁定請求をするケースも増加すると考えられます。単純に思うわけなのですが、この見直し案の導入によって今後の財政への影響はどのように考えられているのか、できればわかりやすく教えていただきたいなと思います。
2つ目は、在職定時改定の導入ですけれども、今回、この改定については、65歳以降も働く人たちには、毎年改定されるということで、年金額の増額は目に見える形で確認できるようになると思いますし、先ほど来、働く意欲にも影響というお話もあったと思いますが、その働く意欲というか、就労を継続することについて、この制度が一定のモチベーションの向上につながるという研究や調査のようなものがもしあれば御紹介していただきたいと思いますし、ないということであれば、そういうこともぜひ今後必要だということを検討していただけないかということでございます。
以上です。
○神野部会長 2点御質問がありましたが、これは年金課長でいいですか。
○年金課長 出口委員、永井委員に共通した御質問に関しますが、在職改定のほうは社会実験的に一度やってという形ができない訳でございます。在職老齢年金は既にある制度ですので、前回お示ししたとおり、一定の研究データもございます。他方で、駒村委員も言っていますように、この辺になりますと、恐らく行動変容が起こるだろうという方と、そこまでいかないかもしれないという方と、正直、私どもも定量的に申し上げられないところがありまして、出口委員のお話も受けとめながら、やるのであればどういう説明をしていくのかということはもっとよく考えたいとは思っております。
ただ、制度論として見たときに、冒頭、ちょっと御説明したように、先般の在職老齢年金のことともかかわるのですが、退職しないと年金を払わないという制度設計の基本の考え方がまだ残っている部分がございますので、そうした中で、委員から何遍も御指摘いただいていますとおり、800億円という決して少なくない額との費用対効果といいますか、御本人様のほうの納得の問題と将来世代とのバランスは、年金部会の委員にもきょうはいろいろ御意見をいただいていますし、このほかも幅広く御意見いただきながら、我々が勝手に考えるのではなくて、世の中のコモンセンスも含めて、どういう御判断をされるのかということは、今後、慎重によく耳を傾けながら、また検討していきたいと思います。
財政関係は、よろしいですか。
○数理課長 委員のお尋ねをちゃんと理解した上での答えになっているかどうかあれなのですが、繰り下げ自体は財政的には中立という考え方で設計をしているということです。さまざまな見直し案はその枠の中での仕組みということになっていますので、基本的には財政的にはニュートラルということかと思います。
○神野部会長 よろしいですか。
どうぞ、佐保参考人。
○佐保参考人 私のほうからは、2点ほどお話をさせていただきたいと思います。
まず、1点目、繰り下げ制度の柔軟化について、3ページ目に書いてある率の見直しについて、数理的に年金財政上中立を基本として設定ということで書かれております。この点につきましては、ぜひとも堅持をしていただきたいと考えております。この見直しによって財政上の負担増となり将来世代まで影響が及ぶようなことがないよう、十分に御留意をお願いしたいと考えております。
2点目、在職定時改定の導入でございますが、前回議論された在職老齢年金の見直しによる効果につきましては高所得者層に限られており、その上、足元の財政影響は少なくないと考えております。将来世代の所得代替率の低下など、課題も多いと考えております。
その一方で、今回提案された在職定時改定につきましては、65歳以上で働く中低所得者層に一定の効果が見込まれていると考えております。800億円の財政の影響があるといったことや、先ほど原委員がおっしゃったような現場の事務の煩雑化といった課題はあると思いますが、公的年金の生活保障機能を強化する意味でも、前向きに検討をお願いしたいと考えております。
以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
小野委員、お待たせいたしました。
○小野委員 ありがとうございます。
今回の財政検証のテーマを私なりに理解させていただくと、1つは、オプションAやオプションBといういろいろな改革施策を推進することによって、将来世代の年金の給付水準の引き上げにつなげていくということだろうと思いますし、もう一つのテーマとしては、特に高齢期の就労の促進があるのではないかと考えております。その意味では、今回の御提案は、年金制度の中でできる施策ということで、このテーマに沿った御提案ということで、非常に肯定的に受け取っているということでございます。それが1点です。
それから、繰り下げ増額率、減額率もそうですが、死亡率の低下によって平均余命の伸長で数理的には低下するということを予想していた方が多いのではないかとは思います。ですが、今回の資料を拝見しますと、財政検証によって、実質利回りが平成12年の改正の際に2.5%だったものが、今回はケースI~IIIでは2.8~3.0%に上昇しておりますし、逆にケースIV~VIでは2.1~0.8%に低下しているということだと思います。ちょっと理科系的な言葉になってしまって恐縮なのですけれども、利率も死亡率も同様に将来の金額をディスカウントするファクターだと考えますと、ケースI~IIIでは死亡率と相殺するような方向で影響しているのではないかと思いますし、ケースIV~VIでは死亡率と同方向の効果が出たものだと理解しております。
今回は6つのケースを濃淡なくお示しいただくという方針ですので、直近の平成27年完全生命表に基づいて単純平均をした結果を、しかもリニアに適用することによって、過去との一貫性も確保していると私は受けとめさせていただきました。
ちょっと細かい点で1つだけ質問なのですけれども、資料1で、支給開始年齢以降に裁定請求した場合に、例えばの話ですけれども、デフォルトの選択を裁定請求時まで等の最大限繰り下げたとみなすということにするとか、そうすることによってできるだけ一括払いの額を減らすような対応があってもいいかと個人的には思ったのですけれども、そのあたりはどうお考えなのかということだけ質問させていただきたいと思います。
よろしくお願いします。
○神野部会長 年金課長でよろしいですか。
○年金課長 済みません。デフォルトというのは、法律上、何か一定の年齢を別途定めるというイメージでいらっしゃるのか、本人がここまで繰り下げるという、デフォルト化したような年齢をどこかの年齢で個人で決めて、例えば、機構に届け出てこれをデフォルト化するとか、イメージによってもちょっと変わってくるかと受けとめたのですけれども、その辺をもう少し教えていただければと思います。
○小野委員 済みません。社会保障制度の中でデフォルトというものはちょっとなじまないかもしれないので、言葉をかえて申し上げます。
現状では、例えば、70歳に裁定請求をしたときに、繰り下げをしたとみなす場合と65歳から本来の支給を受給したとみなして5年分をもらうという両方の対応ができるということなのだと理解しているのですけれども、私は、後者の対応、一時金をそのときに受け取るということが必ずしも良いことなのかということが疑問でした。きょうの御説明ではその仕組みを引き継いだような対応になっているので、そのあたりを御説明いただきたいということでございます。
○年金課長 済みません。理解いたしました。
御指摘の点は、今回の新しいものまで入れますと少しややこしくなるので、現行で頭の整理をさせていただきます。
65歳の時点で私はここから繰り下げますと一定の意思決定をして、ここから受けとりますということがはっきりしていれば、多分小野委員の言ったような整理もあるとは思うのですが、現行法は裁定請求をしないで、受給の時期をおくらせるという法律構成になっていますものですから、本人に繰り下げの意思がはっきりしていてそうしているのか、それとも単に請求忘れみたいなケースなのかということは、本人がここでもらいますという、つまり、繰り下げの申し出という意思表示をした瞬間にしかわからないような構成になってございまして、そのときに、自分は繰り下げをしたかったのではなくて、65歳でもらうつもりだったものの請求おくれでしかないとなりますと、65歳からという形になっております。恐らく、委員が「デフォルト」という言葉を使ったのも、御本人の意思がはっきりしている場合ということも含めての感じなのかなと思ったので、先ほど御質問させていただきました。
ただ、人間、私が言うのもなんですけれども、繰り下げをしながらも、事情変更とか、いろいろな変更もあって、何か考え方が変わる可能性もございますし、こちら側の技術的な問題でいうと、事前にあなたは何歳からもらうのですかということを全部書かせるということも現実的ではございませんし、今度は、変えるたびに私は64歳までのつもりでしたけれども72歳までにしますということをいちいちやる事務的やりとりがすごくふえることも、お互いにとってすごく大変なことであるので、そういったいろいろな人間の意思にかかわる部分ということがあって今はそういった取り扱いになっています。それを前提として今回は少し5歳延びることに伴う柔軟化を考えてみたらどうかという御検討の提案でございます。
○神野部会長 いいですか。
どうぞ、米澤委員。
○米澤委員 どうも丁寧な説明をありがとうございます。
複雑過ぎてよくわからないので、少し乱暴な言い方で質問させていただきたいのですけれども、いろいろな選択肢がふえたことは非常によくわかるわけですが、全て年金財政に関して中立的な範囲で行っているということが条件としてあるわけですね。先ほども具体的に計算するときには各コホートの中で中立になるようにというお話をしていたのですけれども、これは極論をすると、ちょっと乱暴な言い方をしますけれども、選択肢がふえたのだけれども、年金数理的な現在価値に直すと、もらえる年金はどのオプションを選んでも同じだという理解は余りにも乱暴過ぎますか。その場合には、この800億円の場合をちょっと除いておいて、それ以外のところに関しては、その選択肢を変えたところで、年金数理においての現在価値にする限りでは変わらないという理解は少し乱暴過ぎるでしょうか。
だから意味がないということを言っているわけではなくて、なるべく目に見える所得は自分で働いてもらう所得も含めてスムージングさせてくれたほうが非常に使い勝手がいいことはよくわかるのですけれども、仮にうるさいことを言って比較した場合には、神経質になって選択しなくても余り影響がないのだよと言うことは、少し乱暴過ぎるでしょうか。
そこのところを、質問も漠としているのですけれども、直感で答えていただけると少し理解できるのですけれども。
○神野部会長 数理課長。
○数理課長 どれぐらい答えられるかちょっとあれなのですけれども、まず、確認は、資料2で提案させていただいている在職定時改定のほうは、財政的には影響はあるということでございます。選択肢がふえて財政的にニュートラルという話は繰り下げのほうだということで、まず、お答えいたします。
増額率や減額率は中立にという話をしておりますけれども、これは年金財政から見て中立ということでございますので、実際にそれを受け取る受給者の方々がそれをどのように思うかということは、その使い方やその他の所得や生活の仕方とかの中で、どのように年金を活用されるかによって、個人によって意義はさまざまになるのではないかと思います。受け取って、年金財政と同じように運用してとかということであれば、年金財政から見たものと同じように中立的に見られるかもしれませんが、受け取ってその場で時々の生活に活用していかれるとか、そういったことであれば、また少し違ったものになるということであろうかと思います。
○神野部会長 植田委員、どうぞ。
○植田部会長代理 今の点の確認ですけれども、繰り下げの選択は、ある意味では年金の中で、自分は貯蓄を選択しているということですよね。その場合の貯蓄のリターンがどうなるかということが今の米澤先生の御質問で、その選択をする、繰り下げの選択をするかどうかという人の判断としては、その貯蓄のリターンと、今、数理課長がおっしゃったように、自分で貯蓄をしたときのリターンを比較してどっちが高いかということだと思うのですよね。非常に合理的に詰めていけば。
私はちょっと誤解しているかもしれませんが、所得代替率とかを見ても、こういう議論の場合はほとんど意味がないような気がするのですけれども、繰り下げをしてもらえる期間が短くなれば、1年あたりのもらえる金額が上がることは当然であるわけですから、むしろ、今出てきたようなリターンのほうが、合理的に考えた場合、どうかという話のポイントになるのだと思うのですけれども、誤解していたら訂正願いたいと思います。
○神野部会長 数理課長でよろしいですか。
○数理課長 後で御専門の先生に補足なり訂正なりをしていただけるという前提でお話しすると、マクロ経済スライドの話を横に置いておけば、年金額自体は裁定されて、裁定時までは賃金スライドでスライドしていくといったこととか、裁定後は物価スライドでスライドをしていくということがありまして、何をリターンと見るかという、そこのところはなかなかいろいろ難しいところはあるのではないかとは思います。
年金財政から中立ということで見ているという話は、年金財政にとって影響を及ぼさないということなので、繰り上げや繰り下げなどがあって、支給のタイミング、払うタイミングを年金財政にとってずらしているわけなので、その分の影響は積立金の運用を通じて出てくるということを考えると、運用利回りなどで中立化して増額率や減額率を決めているということが今の仕組みです。
そこを、何をもってリターン、年金に貯蓄していると思うかどうかということは、なかなか難しい問題があって、基本的に賦課方式で運営されているところがございますので、そのあたりを一体どのように考えるかということかと思います。
○神野部会長 どうぞ。
○大臣官房審議官(年金担当) この繰り上げ・下げを実際の受給者の方が選択されるときに、生涯にわたる受給額を最大にするという、ある意味で効用を考えて選択をすると考えるのかどうかという問題があるのかなと私は思っています。
年金は基本的には社会政策で、しかも所得を喪失した後の所得保障という考え方からすると、結局、年金を受け取り始めるタイミングは基本的には所得を喪失したタイミングになる。だから、それは繰り上げをしないことに越したことはないとは私も思いますが、62歳ぐらいで所得がなくなってしまって繰り上げせざるを得ないような方もいらっしゃると思いますし、逆に、かなりお歳になるまで働けて十分に生活できる人は、その時点では年金受給の必要性はないので、そこから後の受給でいいとか、いろいろな事情があるだろうと思います。先ほどお話の出た、例えば、どちらかというと、低所得の方は比較的短命で、高所得の方は長命みたいな話とか、いろいろな事情がある中で、御本人が選択をされるときの一つのルールをつくるとなると、いろいろな事情を考え始めますとわけがわからなくなりますので、年金制度の設計としては、基本的には年金財政上中立であるというところで一線を引いて、あとはどういう選択をとられるかということは、個々人の置かれた事情に委ねるという考え方で制度を設計するという考え方でやっているということで御理解いただけたらと思います。
確かに、個人が選ぶときに、それは当然、人間は損をしたくないので、一番損をしない方法を選びたいということはわかるのですけれども、ただ、集団としては大体平均的にはこれぐらいの確率でお亡くなりになっていくということはわかるのですけれども、個々人にとっては、あらかじめ自分の寿命を予測することは通常不可能ですので、個人が生涯受給額を最大になるように年齢を選ぶというのは、多分不可能なことなのではないかと考えます。むしろ逆に、先ほど申し上げたように、個々人の置かれた生活の状態、年金受給をどれだけ必要とするかというところが多分受給の年齢を決めることになるのではないかと考えるわけです。
その上で、いろいろ繰り下げの年齢に関しては、今でも1%しかいないのにさらに年齢の幅を広げるということがどうなのかという話もありますが、それは先日もお話ししたように、フォワードルッキング的な視点に立つと、きょうの資料の13ページにもありますように、これから70代前半でも働く人がかなり増えるという見込みを立てた上でこの問題を考えているので、このような今とは違う高齢者の就業の状況を考えると、こういう選択肢をつくっておくことに意味があるのではないかと提案をしているということで、整理をさせていただきたいと思います。
○神野部会長 権丈委員が先ですね。
○権丈委員 度山審議官がほとんど話をしてくれたわけですけれども、年金を貯蓄と考えていきながら利用することは自由にやってくださいと私は昔から言っているわけですけれども、長生きをしたらちょっときついよと。貯蓄と考えていく場合の自分の平均余命を計算してどうのこうのと言ったって余り意味がない。年金は繰下げで給付水準が将来は高くなりました、あれだけの給付水準があるから私の生活はこのぐらいの水準になるだろう、仮に長生きしたとしても終身その給付額を得ることができるというものであるから、FPの人や社労士の人たちにアドバイスをするときには、平均年齢でアドバイスをしたって何の意味もないから、人類史上、細胞が最大限長生きするという年齢で計算をしたほうがいいですよと言っているわけですけれども、今、経産省等がやっている医療政策とかだったら、人類は120幾つまで生きるとか言っていますから、大体そのぐらいを計算しておいたほうがいいかなというところになりますかねということで、公的年金は保険なのだからという、将来、これだけの給付水準があるということで、日々、年金を受給する前でも便益を受けている、将来への安心感が公的年金の最大の便益なのだということはずっと言い続けておりますので、度山審議官がおっしゃったように、これを平均余命どうのこうので計算をして貯金と同じようにやっていくというと、結構後悔する選択肢になるし、アドバイスとしては結構恨まれる選択肢になるということがありますので、気をつけたほうがいいということはずっと言っております。
財政的にニュートラルな割り増し率、増額率というところは、5ページのところを見てほしいのですけれども、ニュートラルといったって、これはさっきも言いましたように、増額率がニュートラルになるためには二次関数のような形で凸系になってしまうのですね。そこで、どこかで月に0.6%だったらこの水準、0.7%だったらこの水準、0.8%だったらこの水準と、どこかでこれを線形の関数に置きかえて、定数に置きかえて初めて考えていくべきものであって、完全にニュートラルというところはなかなか難しいけれども、0.7というところで、こういう形で押さえていくということがよろしいのではないでしょうかということを、どこかで我々も判断しなければいけないところだと思っております。
0.7ということで今回出された数字は、私はこの関数から見ていくとよろしいのではないかと。75歳まで延ばしたから余命の延びというところが相殺されていくというところが、この関数を見ないとよくわからないから、ちゃんとみんな理解しましょうねと。いろいろと口出しをしてきて批判する人とかが出てくる。年金というものはいつも多々あるわけですけれども、こういう関数をちゃんと承知した上での議論なのですかということは言っていったほうがいいと思っております。
先ほども在職定時のところで毎年の改定をやっていくというところで、将来的に所得代替率が下がっていくということを、大体先ほども言いましたように、私はオプションAとオプションBが分離していません。全部一緒です。オプションBの資料を出されても、オプションAで考えています。だから、ここでは0.1ポイント弱の所得代替率が将来的に下がるというのであれば、1000億で大体0.1の所得代替率が増減するわけですけれども、それなりの所得代替率を引き上げていく策というもの、先ほどは適用拡大のところを話しまして、大体125万だったら大体0.5ポイント上がるというところで、そうすると、在老の見直しと在職定時改定で足し合わせて、ちょうどニュートラルになっていく。
だけれども、先ほど小野委員が話をしていたように、幾つかの条件のもとで今回の財政検証の結果が出てきている。だから、5年後の次の財政検証のときには、本体試算に給付水準が上がっていく改革成果を組み込むことができるように、適用拡大とか、あるいは将来的には、20年後には、被保険者期間の延長はここまでできるということを組み込むことができるような改革案を出していただいて、5年に1回の年金改革をやり遂げていただきたいと思っております。
○神野部会長 出口委員、お待たせしました。
○出口委員 制度的には審議官のおっしゃったとおりでいいと思うのですけれども、僕はもうじき72歳になるので、僕の大学の同期はほとんど年金をもらっているのですが、この年金部会の委員になってから、みんながどういう気持ちで年金をもらっているのだろうかと思って、飲み会では大体みんなに意見を聞いているのですけれども、そんなにリテラシーが低い人間ばかりではないと思うのですが、大多数は将来どうなるかわからないからとりあえずもらえるうちにもらえるものはもらっておこうと。だから、とりあえずもらえるものはもらっておこうという考えで、そんなに利回りや生涯の年金の最大化ということは考えてはいないことが人情だなということを一言申し上げたいと思いますが、制度をつくる意味では審議官のおっしゃったとおりでいいと思います。
権丈先生が125万で0.5上がるからチャラだとおっしゃったのはちょっと寂しくて、チャラではいけないのであって、所得代替率がそこで0.5のプラスになって、いろいろなことをやってチャラになるというのでは、あまりに寂しい。チャラではいけないので、適用拡大はあくまで1053万人を目指す。現実の政治ではなかなか難しいことはわかっていますけれども、そこの線は権丈先生にはぜひ言い続けていただきたいという気がしますので、よろしくお願いします。
○権丈委員 ありがとうございます。
○神野部会長 植田委員、お待たせしました。
○植田部会長代理 今の議論に関連しまして、前言を翻すようで申しわけないのですが、私も2年ちょっと前に65歳の定年になりまして、これをどうするのかと事務の人に聞かれたのですけれども、年金部会の委員で恥ずかしながら、繰り下げというフォーマルな制度があることを知りませんでした。ただし、受給開始年齢を後ろのほうにすれば、1年あたりがふえて、それは大体年金財政中立的になるという想像はできたのですが、それを知らなかったということ。さらには、65歳からもらってしまって繰り下げということを明示的に言わないとどういうことになるかということについても全然情報がなくて、そういう中で、結局、とりあえず目先でお金が入ってくるほうがいいやということでもらってしまったのです。
結論としては、かなり難しい制度でありますので、皆さんがおっしゃっていますように、わかりやすく丁寧に御説明いただく努力を続けていただきたいということと、繰り下げの中でも選択肢がふえることは、わかりやすくという条件をつけた上で、よいことかと思います。
以上です。
○神野部会長 どうぞ。
○大臣官房審議官(年金担当) 近年注目を集めている、行動経済学の研究からは、人間は目先の確実な利益を得るということ、効用関数とは違う動きを選択するということがはっきりしていますので、恐らく、今、お話の出た選択を多くの人がされておられるということは、世の中の実態としてはそうだろうと私も理解しています。
その上で、この繰り下げに関しては、別に繰り下げを誘導するつもりはないのですけれども、ずっと申し上げておりますとおり、これから、要は、人口構成の変化に伴って、年金財政を持続可能なものにするために、マクロ経済スライドという仕組みで少しずつ給付水準を調整していくという局面の中で、これから高齢者になられる方ができるだけ長く働くという選択をとって、リカバリーができるようにと考えると、もう少しきちんと繰り上げ・繰り下げの仕組みを認知した上で、その選択をとる意味もしっかりお伝えすることは重要かと思っています。
これまでの話の中でも出ておりますように、今、実際のねんきん定期便のお知らせとか、実際に年金を受給するときのペーパーの様式を変更していまして、きちんと繰り下げの選択があることとか、これだけの増額になることとかをかなりしっかり明示するような方向でやっております。できるだけ人々が合理的な選択ができるようにサポートを考えていく必要はあるかと思っています。
○神野部会長 ありがとうございます。
出口委員、どうぞ。
○出口委員 一言だけですけれども、そういう行動経済学的なことも考えれば、重々おわかりだと思いますけれども、支給開始年齢を何歳にするかということが肝中の肝なので、これからの年金制度を考えていく上では、ことしは政治的には難しいかもしれませんが、物理的に具体的な健康寿命の延伸に比例して、65歳基準を、70歳、75歳と上げていくことが、年金を永続させる一番の肝だということは一言申し上げておきたい気がします。
○神野部会長 原委員、どうぞ。
○原委員 今、いろいろお伺いした中で、ちょっと意見みたいなことになってしまって申しわけないのですけれども、老後の期間が長くなるということに対して、いろいろな周知、いろいろなことで情報発信をしていかなければいけないということの中の一つの話なのですが、働く期間を長くしたりとかということ、私などは企業の50代の方や40代の方にライフプランセミナーを年金を含めてやっていく中で、年金を活用していくという意味の一つとして、繰り下げとか、任意加入とか、ほかにもあると思うのですけれども、そういう年金を活用する方法とかをお話しする際、従業員の方にねんきん定期便を持ってきていただくことが多いです。その際、わかりにくいとかという声も以前からあって、ことしの4月頃から様式が変わりまして、私のところにも来ましたけれども、文字が大きくなってわかりやすくなって、繰り下げの図も出てたりしています。ただ、その分、説明の文がどうしても削られてしまっています。
例えば、1日の研修の中で年金の話だけではなくて、他の社会保険などの話をしたり、ライフプランニングをしてもらったりなど、マネープランの話を含めて幅広くするのですが、一番多いのは公的年金の質問です。ねんきん定期便も含めて、その見方とか、どういうもらい方をするのかなど、夫婦でプランニングをしてもらうのですけれども、そういう意味で、年金を活用していただく方法はこういう方法があるという一つが繰り下げとかだと思います。
プラスして、将来、老後の所得を確保する上で、自分たちで、年金を含めて、ほかのお金回りも含めてプランニングをしていくということを、もちろん行政側からもそうですけれども、ぜひ企業さん側とかにも協力していただいて、従業員の方に、もっと早く聞きたいという声も非常に多いので、50代だけではなくて、40代、あとは新入社員の方にも少ししていただいたりなどしていますけれども、そういうことをしていく中で、そこに社会保障とかも含めて、もちろん介護とか医療とかも入っていきますけれども、そういうことも含めて、全体の中で年金を活用するという方法があるのだ、その一つにこの繰り下げとかということがあるのだということを、今後、民間でもやっていただけるようになって、そういういろいろなところから情報発信していくことはすごく必要だと思います。受講者の従業員の方の話を聞くと、もっと働かないとなとか、繰り下げをやってみようかなみたいなことは必ず出てくるので、言えば伝わるという部分はあるので、ぜひその辺は社会全体でそういう意識を持っていただいて、その中に繰り下げというものの周知も入れていくということが必要かと思います。
以上です。
○神野部会長 武田委員、お待たせしました。
武田委員が先に挙がっていましたので。
○武田委員 どうもありがとうございます。
根本的な話になりますけれども、私自身は、今回の改正で重要な点は、一つは人生100年時代、長寿命化・高齢化が進む中で、それにふさわしい社会保障制度のあり方へ見直すことと、次世代につけ回しをせずに、持続可能性をしっかり確保することの2点が重要と思っており、今回の改正の一つ一つについてこの観点から検討していくべきと考えております。
その上では、皆様がおっしゃられたように、繰り下げ制度の柔軟化は、年金財政において中立ということもありますし、多様な選択肢を認めるという観点で、私も賛成の立場であります。
ただし、先ほど権丈委員からありましたように、確かにぴったりというわけではないので、経済前提が5年に一度見直される際に、今後、どうしていくかということについて、牧原委員もおっしゃいましたけれども、将来的にこの数値を、制度の持続性の観点と年金財政の観点と両方の観点からしっかり御検討いただきたいと思います。
また、駒村委員もおっしゃいましたけれども、今はデータがないので検証しようがないのですが、今回の繰り下げの柔軟化によって、皆がどのように行動変容していくか。私は、今の世代より次の世代にとって、今からそういう制度があることが周知されることの効果のほうが大きいと思っていますので、実際に効果発現は10年先を見据えてということだと思いますが、そうだとしても大きな意味があるということが私の意見です。調査研究の視点を中長期的に持っておいていただければと考えます。
2点目の在職定時改定については、財政負担が800億ということについて、私は将来世代とのバランス上、慎重であるべきというスタンスです。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございました。
権丈委員、どうぞ。
○権丈委員 このまま終わったら支給開始年齢がどうのこうのという話になるかもしれないのですけれども、恐らく出口委員がおっしゃっている支給開始年齢は、この国ではこのくらいで標準的に年金の受給が始まりますよという意味のところですよね。この国の支給開始年齢というと、給付水準とセットになった形での法律用語としてありますので、これを上げることは財政影響が出てくるという話で、恐らくそこら辺は意図されていないと思うのですね。
私も、今、65歳で所得代替率を見ますよという基準年齢は上げていきたいと考えておりまして、これを平均受給開始年齢と将来的には上げていくことができないだろうかと考えていますので、その在職定時改定というところは、それに対して少しブレーキをかけることにならないかなと。私も、もしもこれをやるとするのであれば、年金の給付水準が低いから働いていないと結構つらいのだよねという人たちにこの年金のお金が回っていくということがある程度目に見える形、あるいは、そういうふうにデータが出てきていますけれども、上の右側のほうのところは、繰り下げ受給を選択してもらえるような形にできないだろうかなと。そのためには、なるべく年金は保険であるということ。厚生年金保険法なのですけれども、国民年金法になっている。1961年に国民年金ができたときに、「皆年金」という名前をつけたから、皆保険と皆年金と言うのですね。本当は、この国は皆保険しかないのですね。皆保険のもとに年金と医療があるというだけの話で、これを「皆年金」と呼んだから、いつの間にか公的年金を貯金か生活保護かと勘違いしていく人たちが出てきているので、できましたら、去年の年金学会からも提案しておりますけれども、国民年金法というものを、福祉年金の人たちはほとんどおりませんので、国民年金保険法と変えていただきたい。予算が全然かからない形で情報発信できるのではないかと思いますので、そのあたりのところも御検討いただきたいというところがあります。
同時に、私は本当に残念なことで、125万人というところで非常に狭められたところで議論している自分が情けないのですけれども、ただ、501人以上、500人超というところの規模要件をなくそうというところがある中で、100人超で折り合いをつけようという強い動きも世の中にはありますので、そのあたりのところを牽制するためにも、せめて125万人、つまり、規模要件をなくすという気弱なことを言わなければいけないのですけれども、1,050万人の適用拡大、出口さんがおっしゃるように、もっと拡大した形と同時に、被保険者期間の延長という改革形で、所得代替率という1次元で見て、どうやって給付水準をあげていくかという議論、将来世代にどんな影響を与えるかという議論を、オプションA、オプションBを総合した形で議論していく必要があるということを繰り返しこれからも発言させていただきたいと思います。
○神野部会長 ありがとうございました。
ほか、いかがでございましょうか。
どうぞ、米澤委員。
○米澤委員 どうもありがとうございます。
いろいろな議論で少し私もわかりつつあるのですけれども、2点ですね。
繰り下げ制度はいろいろわかったのですが、もし私が先ほどちょっと言ったように年金財政上の割引率で見る限りは変わらない、選択肢があっても、合理的にやれば、どれを選んでも、その割引率で顕在化すれば、市場の利回りではなくて、同じですよということをやるとしますと、もしそれがアバウトでも正しいとしますと、そこからより高齢でも働きたいというインセンティブは出てこないのではないかと思うのですね。繰り下げ制度だけの話です。要するに、より働いて後ろに行ったほうがいいという話は出てこないのではないかと思っているのです。もう一つとしますと、マクロ的には、皆様方はより高齢まで働いていただくことが必要だと思っていますので、そこを少し援助するような割引の仕方も、次のステップとして考えたほうがいいのではないだろうかと。在老の改革は一部まさにそういうものが入っているのですけれども、労働供給をより高齢でもふやすような格好で繰り下げ制度の柔軟化というものも、そこのところに少しにじませておいてもいいような感じがするのです。それが1点目です。
第2点目は、私も何回か前のここの部会でよく理解していなくて怒られてしまったのです。繰り下げ制度は年金財政を肯定するためにやると思っていたのですけれども、それはとんでもないということで怒られて、中立的ですよと言うのです。先ほどちょっと権丈委員もどこかでそういうことに言及したと私も理解しているのですけれども、中長期的には年金財政が厳しくなっていくことはわかっているわけですので、そこを踏み込んだ格好で、我々は少し今から痛み分けをしておかなければいけないということで、その繰り下げのところもそういうことも加味して、要するに、年金財政に中立的ではなくて、そこのところも考慮していく必要もあるのではないだろうかと。
マクロ経済スライドで全部調整できればいいのでしょうけれども、そうでないところもありますし、調節しても50%を切るケースも出てくる。長期を見据えると、少し政策を踏まえた格好でもって制度を組み立てていく。要するに、それは我々にとっては厳しい、つらいことになるわけですけれども、そういうことをにじませておくことも、今後、考えておく必要があるのではないかと思っています。
一言目でも二言目でも「年金財政中立的」という言葉が入っているので、それでもって直感的に期待していることとは整合的ではないところがあるのではないだろうかということを言いたかったわけです。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
年金課長、コメントをどうぞ。
○年金課長 御指摘のように、もし皆さんが納得するような形で確かに就労インセンティブ的なものが年金制度の中でできればもちろんいいという考え方も一方ではあろうかと思いますけれども、逆に、全体を通じて年金部会で御議論いただいているのは、どちらかというと、このまま放置しておくと就労に対して中立的ではない、あるいは、年金によりディスインセンティブになりかねないようなものは、まず、どうにか直していかなければならないのではないか。ただ、その中でも、武田委員からも御指摘いただいたように、保険料固定とマクロ経済スライドの仕組みの中では、今の年金制度はどうしても将来世代の給付とのトレードオフ関係に立っておりますので、どこまでのトレードオフ関係の中で、そうはいっても給付改善も一定程度行いながら、より中立的な制度にできないか。その際は、権丈委員もおっしゃったように、パッケージで見るというやり方もあるのではないか。これが、この2回の年金部会の皆さんのおっしゃっていることの総意かなと受けとめております。
そうした中で、無理してインセンティブまで入れてというものまではまだ至っておりませんし、仮にインセンティブを入れてはどうかとなった場合であったとしても、年金制度をそういう形で使ってしまって本当にいいのかどうかということは、改めてしっかり議論しながら決めていかなければならないのではないかと感じております。
そういった意味では、審議官から途中に御説明申し上げたように、まずは中立で、そういうものに対しては、変なインセンティブもディスインセンティブも与えないようにして、一生懸命保険料を払っていただいたということに対する納得感、あるいは、今、年金は65歳でもらわなければいけないというものではなくて、今ですと60歳から70歳の間、あるいはこの制度改正をするのであれば75歳までの間で、御自身が、どういうライフプランと今の就労状況と御家庭の様子も踏まえて、どうやって納得した受給を選択をしていっていただくか。その中では、個人が自分で年金をふやすという選択もあるわけです。
それに当たって、できるだけ、日本年金機構、我々も丁寧な説明を心がけますが、ただ、我々は公的機関ですので、私的機関とは違いまして、あなたにとってはこれがベストの選択ですよみたいなことは申し上げられませんし、年金は保険ですので、そういう形でのアドバイスは恐らく民間でもなかなか難しいと思うわけです。
そうしますと、それは人それぞれの納得の問題ですので、その納得がリターンによる納得であったとしても、あるいはきょう御提案申し上げたわけですけれども、一定程度の繰り下げを選んでいったのだけれども、事情が変わったのでやはりやり直したいということも、形としては用意しながら、その中で就労は年金のためではなくて御自身のためにまずは就労をしていただいて、年金のほうがどう寄り添っていくかという方向で、できれば次期制度改革を一緒に考えさせていただければということが私どもの思いでございます。
○神野部会長 よろしいですか。
権丈委員、どうぞ。
○権丈委員 ワークロンガーという状況に対して、何もやっていないわけではなくて、高年齢者雇用安定法という方面でしっかりと取り組むこともやっておりますので。私は年金に余り負荷を与えて、これで人を働かせるとかということはやらないほうがいいと思います。ワークロンガーと言いながらも、就業、ボランティアを含めた社会参加ということが大切で、これは老年医学会もそういう表現をしていて、就労だけを求めるものでもないです。ワークロンガー社会をつくっていくというものは、この高年齢者雇用安定法という労働のほうで動いていくという形で進めていって、その中で、自分はボランティアを選んでいくとか、自分はこういう選択肢で生きていくというのでいいと思います。自分の健康のことを考えたら引退せざるをえないという人が、働くことが有利に設計されている年金を見て悔しさを感じないぐらいの制度、つまり、年金はニュートラルであるほうが私はいいのではないかと思うと同時に、余り年金に負荷を与えると、この年金という世界は本当にすぐいじめられる世界ですので、ニュートラルでいるほうがいいと思っております。
○神野部会長 ほか、いかがですか。
よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。極めて熱心に御議論を頂戴したことに深く感謝を申し上げます。
本日の議論を踏まえまして、今後、引き続いて皆様方から御議論を頂戴することになりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、やや余っておりますが、時間でもございますので、本日の議事はこれにて閉じさせていただきたいと思います。
今後の予定等につきまして、事務局から御連絡があればよろしくお願いいたします。
○総務課長 次回の議題や開催日程につきましては、追って御連絡を差し上げます。よろしくお願いいたします。
○神野部会長 それでは、最後まで熱心に御議論を頂戴したこと、重ねて感謝申し上げまして、第12回「年金部会」をこれにて閉会させていただきます。
どうもありがとうございました。