2019 年活動方針

Ⅰ.最近の年金をめぐる特徴的な動向

 安倍政権は、2012年12月から景気拡大が戦後最長になった可能性を強調していたが、最近発表された「景気動向指数」の基調判断は、1月も2月もすでに景気後退の局面に入った可能性が高いことを示す「下方への局面変化」だと報じられている。

 今、個人消費が2014年消費税8%増税以来冷え込んでいるといわれており、個人消費が増税前と比べて水面下にあることを安倍首相も認めている。

 このようなもとで、今年10月からの消費税増税はやめるべきだという声が与党内からもあったり、海外メディア(米有力経済紙)からも今年10月に予定されてる日本の消費税増税は日本経済の足枷となるどころか「自傷行為に近い」との厳しい指摘がなされている。

 年金分野では社会保障制度改革について検討する自民党の作業チームが、改革案を発表し「人生100年時代」に対応した公的年金制度への転換に向け、高齢者が喜んで働けるよう在職老齢年金を廃止することや、70歳以降も繰り下げを選択できるようにすることなど、政府が6月に決定する「骨太の方針」に盛り込む準備をしている。

 企業年金分野では、経団連が前々から企業年金の改悪を厚労省に要求し実現させてきた。2001年の年金二法成立以降、厚労省は確定給付企業年金(DB)確定拠出年金(DC)ともに次々改定し、17年1月には、リスク分担型企業年金の厚労省令を施行した。これらの主な問題点はアベノミクス「日本再興戦略」の一環として「金融市場の活性化」の名目で金融機関の収益源拡大の他方で、元本保証のないDCで庶民が老後資金の確保が困難になる危険や、リスク分担型で不安定不確定な給付になる危険があることだ。

 特にリスク分担型は次のような特徴と問題点がある。

▲企業年金は企業の責任でコストとリスクを担って実施するものなのに、加入者(現役)・受給者にもリスクを分担させる。▲現役加入者の労働組合と企業の合意のみで現行の確定給付年金からリスク分担型へ移行可能とする。▲この移行は17年1月厚労省令施行前の受給者をも対象とすることが可、として不遡及の原則に反する。▲この移行時に減額が無い設計なら、受給者の同意を求める必要はなく「説明」するのみで可。などと受給権の侵害が可能となっている。

 こうして、リスク分担型は4月1日現在で、①「掛金制度のみ導入」は206件、②減額もある「柔軟な給付制度」の全面実施は9件となっている

 

 財界・厚労省の新たな画策

 安倍内閣は昨年2月発表の「高齢社会対策大綱」の中の「資産形成等の支援」の項で「リスク分担型企業年金制度等の周知等を行うことにより、私的年金制度の普及・充実を図る」としている。本来は労使間で決める退職年金であるのに、公的年金の「補完」と位置づけ社会保障審議会の中で新たな画策を進めている。

 その場は、企業年金部会を改組した「企業年金・個人年金部会」で今年2月から既に4回開催している。その特徴点は、公的年金は先行き「調整」(削減)見込みなので高齢化進行の中で自助努力が重要として、DCの規制緩和・普及とともにDBの改定・普及も進めるものであり、審議の中で経団連はDCへの移行に伴うDBの閉鎖、その場合の給付の選択肢の拡大、例示として英国における閉鎖型DBのバイアウト(=社外移転)などのように、年金の支給義務を社外に移転させる仕組みなど、企業として制度設計の柔軟性を高める要求を述べたことは重大だ。そして公法人たる企業年金連合会がリスク分担型と異なるリスク共有型や企業年金のバイアウト、規制緩和などを提起しているのは経団連に

呼応しての、新たな受給権侵害に繋がる策動であり、警戒が必要だ。

 

 年金引下げ違憲訴訟の状況

 2015年から続いている全日本年金者組合の「年金引下げ違憲訴訟」は全国44都道府県、39地裁で5279名の原告となり、かってない規模の歴史的な集団訴訟となっており、社会保障改悪を許さない運動にも発展しているが、4月26日札幌地裁で原告の陳述もさせないで、原告の訴えを棄却するという不当判決を出した。原告団は直ちに控訴を決定した。

 1.公的年金分野

1)2019年度の年金額は、物価上昇率がプラス1.0%だったのにマクロ経済スライドによりスライド調整され、さらにスライド調整のキャリーオーバー制が初めて発動されたことにより、プラス0.1%しか改定されず、実質年金額は0.9%目減りしたことになる。

2)今年は5年に一度の財政検証の年であり、年金制度改悪に要注意

3)消費税10%を条件とした年金生活者支援給付金の申込書を年金事務所で4月から受け付けている厚労省の発表では給付金の対象者は約970万人で、公的年金の総受給者約4010万人の約4分の1になる

4)マイナンバーによる情報連携の実施に向けて年金関係の各種届出の記載事項の変更を盛り込んだ国民年金法施行規則等の一部改正する省令が交付された。これにより各種届書等の記載事項欄に個人番号の追加記載が求められることが多くなる

 2.企業年金分野

1)厚生年金基金は今年3月1日現在12基金で、そのうち代行返上内諾基金は4基金で、残りは8基金となっており、2014年厚生年金基金健全化法施行後910基金が解散している。

2)2017年1月から確定給付企業年金の制度改定の政省令により、「リスク分担型企業年金」が施行された。

 受給者の同意なしで、現行確定給付型からリスク分担型に移行できるものであり、企業年金受給権が従来以上に不安定なものとなる。

3) 2017年1月から、個人型確定拠出年金「iDeCo」の加入対象者を専業主婦や公務員、企業年金加入者等に拡大し、盛んに加入促進を計ってきた結果、今年2月末時点での加入者数は次の通り

第1号加入者(自営業者等) 146,388人

第2号加入者(厚生年金加入等) 997,996人

第3号加入者(専業主婦) 36,281人

合 計 1,180,665人

 Ⅱ.活動方針

企業年金連絡会を企業年金受給者の受給権を守るセンターとして、自他ともに認知されるような運動を推進する。

1.組織の拡大強化を図る。

(1)「連絡会」活動の結節点として例会を重視する。

会員の減少傾向を食い止め、情勢にふさわしい会に成長させるため各界の団体・団体職員などに対して当会への参加を要請する。

個人会員を募り、この会員が複数集って自発的主体的に個別基金ごとに受給者の会を組織する方向を目指す。

(2)受給者の組織化、参加団体の拡大を進めるなかで世話人を増やし会の円滑な運営に一段と努力する。特に会員の高齢化のもとで60歳台の会員の加入を心がけよう。

2.学習活動を「会」の主活動に位置付ける

(1)会員学習

 ①企業年金受給権の法的基礎を明らかにするとともに、企業年金受給権に関する論点整理を進め例会で討議し理解を深める。

②政府の「経済政策・社会保障政策」財界の「戦略(社会保障・企業年金に係る政策)と狙い」などについて知見のある会員の報告を基に議論し理解を深める。

③企業年金部会や年金部会の議論を注視し、議事録、公表文書を分析し問題点について討議する。

④ 会員の関心に応え、企業会計と基金の関係、基金の財政報告、欧米の支払保証制度などの学習を進める。

2)広く呼びかける学習会

テーマを選び当会メンバーに限定せず広く参加者を募る学習会を計画する。学習会を会員拡大に繋げる。

3. 対外活動を積極的に行う。

(1)効果のある厚労省への質問状送付、その後のレクチャー、直接訪問(担当者との面談)などの活動を引き続き追求する。

(2)政党、国会議員、経団連などへの要請行動を強める。

厚労省の施策などの問題点について、政党経由の質問主意書で問い質す。

(3)連合、全労連との懇談、要請活動を強める。

(4)リスク分担型企業年金が施行された下で、各出身労組との交流を重視する

(5)広く年金問題について 全日本年金者組合との連携を図り強める。

4.個別の闘いを支援する。

 (1)厚年基金改廃に伴う被害者の相談に積極的に応える。

(2)個別の闘いの支援は、例会待ちにせず当事者の要請に添う迅速的な支援を図る。

5. 広報活動に取り組む

(1)ホームページ(HP)では、厚生年金基金廃止、解散の被害者、加入する基金で廃止・減額に直面し相談先を探している受給者を想定し、「会」の目的、活動の実績・現状を繰り返し広報する。

ホームページ掲示板を 積極的にPRする。

また、「厚労省の施策・方針そのもの」、「施策についての会の考え方」、「施策についての会の取り組み」などについても一早く知らせていく。

 (2)個別の闘いについては、可能な限り当事者の声をホームページに載せる。

 (3) HPでは「企業年金受給権の法的基礎」について、用語解説を含め分かり易く解説する。

 (4)わかりやすく、親しみやすいHPとなるよう表現の工夫とともに、内容の充実に努める。

 (5)全日本年金者組合の「年金者しんぶん」に私たちの声を載せる。具体的には「年金者何でも相談」「みんなのひろば」に投稿するまた、「企業年金連絡会」の広告を出す