2018年4月4日

第1回社会保障審議会年金部会

年金局

 

○日時

平成30年4月4日(水)10:00~12:00

 

○場所

東京都千代田区平河町2-4-2

全国都市会館2階 「大ホール」

 

○出席者

神 野 直 彦(部会長)

植 田 和 男(部会長代理)

阿 部 正 浩(委員)

小 野 正 昭(委員)

菊 池 馨 実(委員)

権 丈 善 一(委員)

駒 村 康 平(委員)

小 室 淑 恵(委員)

武 田 洋 子(委員)

出 口 治 明(委員)

永 井 幸 子(委員)

原 佳 奈 子(委員)

平 川 則 男(委員)

牧 原   晋(委員)

森 戸 英 幸(委員)

諸 星 裕 美(委員)

山 本 𣳾 人(委員)

米 澤 康 博(委員)

○議事

○神野部会長

 それでは、御出席の御予定の方が全員そろいましたので、予定時刻よりも1~2分早いのですが、「社会保障審議会年金部会」の第1回の会合を開催させていただきます。慣例に従って、財政検証等の制度の切れ目ごとに回を数えているようですので、今回が第1回目の会合ということになります。

 委員の皆様方には、年度初めでございまして、大変お忙しい中を万障お繰り合わせて御参集いただきましたことに、深く感謝を申し上げる次第でございます。

 本日は、この部会の会合としては、平成28年7月以来の開催ということになりますので、この間、委員の異動がございました。その点につきまして、御報告をさせていただきたいと思います。

 本日までに小塩委員、佐藤委員、宮本委員、山口委員が御退任されていらっしゃいます。御退任されると同時に、新たに委員の方々に御就任していただいて、お迎えをいたしております。阿部委員、小野委員、権丈委員、永井委員、山田委員、以上の方々に御就任をいただいております。詳細につきましては、配付してございます名簿を御参照いただければ幸いに存じます。

 委員の皆様には、引き続き、部会の運営等々につきまして、至りませんけれども、御協力を頂戴できればとお願いを申し上げておきたいと思います。

 本日の委員の出欠状況でございますけれども、藤沢委員、山田委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。

 御出席いただきました委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、この会議は成立しているということを御報告させていただきたいと思います。

 事務局の出席者でございますけれども、前回の開催以降、人事異動があったと伺っておりますので、まず初めに、開会に先立って、局長の御挨拶を頂戴した上で、他の方々について御紹介をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○年金局長

 皆さん、おはようございます。

 昨年の7月に年金局長に就任いたしました、木下と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、新しい年度も始まったばかりで、大学の先生ですとか、非常にお忙しいかと思います。本日こうして御出席いただきまして、本当にありがとうございます。

 直近の年金部会が28年の7月でございますので、1年9カ月ぐらい経過をしております。この間に、御承知のように短時間労働者に対します被用者保険の適用拡大が28年の10月に施行されまして、当初25万人程度の予定でしたけれども、37万人程度が今、被用者保険のグループに入っておられます。

 また、昨年の4月から、任意でございますけれども、500人以下の方々の被用者保険に入られる方というのが3,000人ぐらいおられます。

 さらに、25年から10年の受給資格期間の短縮、これも昨年の8月に施行されまして、既に50万人ぐらいの方々が受給権に結びついたところでございます。

 また、28年の秋、臨時国会で成立されました年金制度の改革、それも順次施行を迎えているところでございます。

 今回の年金部会、いよいよ来年に平成16年にスタートしたマクロ経済スライドを中心とする新しい年金財政のフレームが実施をされて、今度3回目の財政検証の年に当たります。そうした中で、昨年7月から年金部会のもとに、御出席の植田委員を座長とされます、年金財政における経済前提に関する専門委員会を開催して、早速経済前提のあり方についての議論を開始いただいているところでございます。

 一方で、政府のさまざまな会議体におきまして、年金制度に関する提言もいただいておりまして、本日、後ほど御紹介をさせていただきますけれども、年金受給開始年齢のあり方ですとか、あるいは、在職老齢年金のあり方ですとか、そういったものについて、特に働き方改革とも関連する事項についての項目が取り上げられてきております。

 今後、この部会におきましては、財政検証の準備状況などを報告させていただき、御意見をいただきながら、次期年金制度改正に向けまして、社会保障改革プログラム法で検討事項とされましたマクロ経済スライドのあり方ですとか、短時間労働者に対するさらなる適用拡大、あるいは高齢期における就労の多様性に応じた年金受給のあり方、あるいは高所得者の年金給付のあり方、年金課税のあり方等々につきまして、そういったことも含めて、特に人生100年時代を控えまして、それにふさわしい多面的な御意見、幅広い御意見をいただければと思っております。

 来年の財政検証を踏まえまして、次期改正につきましては、おおむね来年の秋ぐらい、非常に審議は長丁場になりますけれども、ぜひともよろしくお願いしたいと思っております。

 ありがとうございます。

○神野部会長

  どうもありがとうございます。

 では、引き続き、よろしくお願いいたします。

○総務課長

 それでは、局長のほかにも人事異動がありましたので、紹介させていただきます。

 私もそのうちの一人となりますが、年金局の総務課長を拝命いたしました、岩井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 その他の事務局の異動についてです。

 年金管理審議官の高橋でございます。

 年金課長の伊澤でございます。

 資金運用課長の宮崎でございます。

 事業企画課長の宮本でございます。

 事業管理課長の竹林でございます。

 以上でございます。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 続いて、お手元に配付してございます資料につきまして、確認をさせていただきたいと存じます。

 事務局からお願いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。

○総務課長

 本日、お手元に配付いたしました資料につきまして、確認させていただきます。

 資料1「年金部会における当面の議論の進め方」。

 資料2-1「年金制度を巡るこれまでの経緯等について」。

 資料2-2「「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」(事業所調査)及び「社会保険の適用拡大に伴う働き方の変化等に関する調査」(短時間労働者調査)結果のポイント」。

 資料2-3、資料2-2でポイントをまとめました調査結果そのものでございます。

 資料2-4「GPIF関連の動きについて」、報告でございます。

 また、参考資料として「年金事業部門の最近の諸案件の概要」。

 以上をお配りしておりますので、御確認ください。

○神野部会長

 ありがとうございました。

 それでは、大変恐縮でございますけれども、カメラの方にはここで御退室をお願いしたいと存じますので、御協力いただければ幸甚に存じます。

(報道関係者退室)

○神野部会長

 それでは、これより議事に入らせていただきたいと思いますが、お手元に配付してございます議事次第を確認していただければと思いますが、本日は議事として大きく2つ準備をしてございます。一つは「年金部会における議論の進め方について」、もう一つは「これまでの制度改正のレビュー」ということでございます。

 この2つの議事につきましては、いずれも内容が関連をいたしますので、資料については、事務局からまとめて御説明を頂戴できればと思っております。よろしくお願いいたします。

○総務課長

 それでは、資料1につきまして、私から御説明申し上げます。資料1「年金部会における当面の議論の進め方」について、ごらんください。

 今年度、来年の財政検証に向けました間の、当部会におけます議論の進め方についてまとめたものでございます。来年、平成31年に財政検証を行う予定でございます。これを念頭に置きながら、年金制度のあり方に関する議論を当部会におきまして、スタートしていただくことになります。

 年金部会におきましては、本日より当面の間、年金制度のあり方に関する議論の前提といたしまして、「年金部会」という欄にございますが、この後、年金課長から御説明申し上げます、これまでの制度改正のレビュー、財政検証の役割・スケジュール等、諸外国の年金制度の改革動向、また、年金の財政状況を分析・評価していただいております年金数理部会において、去る3月16日に取りまとめていただきました「公的年金財政状況報告(平成28年度)」について御説明いただきまして、これについて御議論いただきたいと考えております。

 一方、資料の中段「年金財政における経済前提に関する専門委員会」というところに書いておりますけれども、当部会のもとには、先日委員の皆様にお諮りいたしまして、財政検証に当たっての経済前提について、専門的見地から検討いただくため、年金財政における経済前提に関する専門委員会が設置されております。現在、議論が進められておりまして、同委員会における議論について整理した上で、当部会に報告させていただきたいと考えております。

 その上で、本年の秋以降と考えておりますが、さきの社会保障改革プログラム法におきまして、検討事項とされている項目につきまして、フリーディスカッションしていただきまして、議論を深めていただきたいと考えております。

 また、年金財政における経済前提に関する専門委員会におきましては、本年秋以降、検討作業班を設けまして、財政検証に用いるパラメーターの設定などについて検討が進められる予定でございます。その検討作業班の報告を踏まえまして、同委員会の基本的な考え方を取りまとめていただき、当部会に御報告していただく予定としてはいかがかと考えております。

 また、この間、財政検証を行うに当たって必要となります社会経済に関する基礎データが公表される見込みでございます。具体的には「その他の予定」の欄にあります、労働政策研究・研修機構、JILPTにおけます労働力需給推計、また、内閣府におけます中長期試算などが公表される予定でございます。これらを踏まえまして、年金財政における経済前提に関する専門委員会の議論が取りまとめられ、来年春を目途に当部会に報告される予定と考えております。

 あわせまして、年金局におきましては、同委員会の報告を踏まえまして、検証作業を進めまして、財政検証報告を取りまとめる予定でございます。この報告につきましても、当部会に御報告する予定でございます。

 以上が、来年の財政検証の報告の取りまとめまでの間の当部会におけます議論の進め方の案でございます。

 以上でございます。

○神野部会長

 どうもありがとうございます。

 引き続いて、お願いいたします。

○年金課長

 引き続きまして、年金課長の伊澤でございますけれども、私から資料2-1の御説明をしたいと思います。

 「年金制度を巡るこれまでの経緯等について」でございますけれども、お時間の都合もありますので、できるだけ簡潔に御説明したいと思っております。

 2ページ、主な年金制度改正を取り上げたものです。特に昭和60年改正で国民年金を再編いたしまして、国民年金、被用者年金に共通の基礎年金を導入しております。

 その後、平成6年改正で厚生年金の定額部分の支給開始年齢の引き上げを決定しております。次に、平成12年改正で、報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げを決定しております。両改正による支給開始年齢の引き上げは、まだその途上でございまして、後ほどごらんいただきます32ページにその施行状況をまとめてございます。

 平成16年の改正が、直近では最も大きな改正でありまして、それ以前に行われていました給付水準を決めて保険料水準を決める方式から180度転換させ、保険料水準を固定し、給付水準を自動的に調整する方式に抜本的に改革されております。その概要は、後ほど4ページでごらんいただきます。

 3ページ、社会保障・税一体改革関連法が設立した平成24年までの改革の経緯をまとめたものでございます。左端の欄にありますとおり、平成24年2月の段階では、基礎年金国庫負担2分の1の恒久化、年金額の特例水準の解消、低所得者等への加算の創設、受給資格期間の短縮、短時間労働者への厚生年金の適用拡大、被用者年金の一元化などが法案提出事項とされました。

 一方、引き続きの検討事項として、第3号被保険者制度の見直し、マクロ経済スライドの検討、在職老齢年金の見直し、標準報酬上限の見直し、支給開始年齢の引き上げが掲げられておりました。

 その後、中ほどの欄にございますように、数次にわたる法案の提出、国会での修正などを経まして、右端にありますように、平成24年中にかなりの部分が実現いたしましたけれども、なお、短時間労働者の厚生年金の適用拡大のように、一部分の実施にとどまったものや、さきに述べました引き続きの検討事項として残された課題となったものがございます。

 ここで、4ページの資料を使いまして、平成16年改正以降の年金財政のフレームを改めて御確認いただきたいと存じます。図の上にありますてんびんのマル1にございますように、平成16年以来、厚生年金の保険料は毎年徐々に引き上げさせていただいてきましたけれども、昨年の9月をもって18.3%に予定どおり固定されました。

 マル2の国庫負担につきましては、消費税が5%から8%に引き上げられた際に、基礎年金の2分の1というルールが恒久化されました。

 マル3の積立金については、今後も運用しつつ、将来にわたって計画的に取り崩していくことが予定されております。

 このようにして、将来にわたる公的年金保険制度の総収入が、いわば決まっている中で、社会経済状況に応じて、マル4の給付調整がマクロ経済スライドによってされていきます。その状況を5年に一度の公的年金保険制度の健康診断と言える財政検証によって検証していく、その結果を踏まえて、必要ならば制度改革を行っていくと、このような形になって今日に至っております。

 5ページ、さて、平成16年改正の次に行われました平成21年財政検証と平成24年までの制度改革を踏まえまして行われました社会保障制度改革国民会議の報告書では、公的年金保険制度について、このように課題が整理されております。

 第1に、マクロ経済スライドの見直しです。ポイントは、下線等を引いておりますが、物価や賃金がマイナスのような状況では、マクロ経済スライドによる調整が十分に機能しない点について、対応が必要とされたことです。この点につきましては、後ほど御説明いたします未調整分を繰り越す制度の導入によりまして、一定の改善が図られているところでございます。

 また、基礎年金と報酬比例のバランスが崩れてきているということを踏まえ、そのバランスをどう考えるかという点が残された課題となっております。その際、給付水準という観点からは、私的年金をどう活用するかも検討課題となっております。

 第2に、短時間労働者に対する被用者保険のさらなる適用拡大が課題となっております。

 第3に、高齢期の就労と年金受給のあり方をどう考えるかが課題となっております。就労期間を延ばし、より長く保険料を拠出してもらうことを通じて年金水準の確保を図る改革が、多くの先進国で実施されているとの指摘がなされております。

 他方で、いわゆる支給開始年齢につきましては、年金財政上の観点というよりは、一人一人の人生や社会全体の就労と非就労(引退)のバランスの問題として検討されるべきと整理され、高齢者の働き方と年金受給との組み合わせについて議論を進めていく、支給開始年齢引き上げの検討そのものというよりは、もう少し幅広く、高齢者の働き方の進展に合わせて、年金制度のほうでそれをどう受けとめていくかといった観点から検討を進めるとの整理がなされているところでございます。

 第4に、世代内の再分配機能を強化する検討、こちらは世代間ではなく世代内でございます。強化する検討内容については、年金制度だけではなく税制での対応、各種社会保障制度における保険料負担、自己負担や標準報酬上限のあり方など、さまざまな方法を検討すべき、また、年金課税のあり方についても見直しを行っていくべきと、年金に限らず他の社会保障制度や税制も一体的に見て議論をしていくべき課題と整理されております。

 こうした課題設定はそのまま法定化されておりまして、6ページにございますように、いわゆる社会保障制度改革プログラム法の附則第6条第2項に掲げられております。この検討規定は、現在でも有効な法律の条文という形になってございます。

 7ページ、こちらは前回の財政検証である平成26年財政検証の結果でございます。経済前提を複数置いて検証しておりますけれども、労働市場への参加が進み、経済が持続的に成長するケースでは、所得代替率50%が確保されることが確認されております。

 他方で、8ページをごらんください。これは経済前提のケースEについてお示ししたものでございますけれども、他のケースもほぼ同様の傾向と我々は承知しておりますが、マクロ経済スライドの調整は、基礎年金については2043年度まで、厚生年金については2020年度までとなっておりまして、両者の終了年次がかなり広がってきてしまっていることが明らかになっております。

 9ページ、10ページを同時にごらんください。平成26年の財政検証では、社会保障制度改革国民会議の報告書やプログラム法において提示された先ほど御説明しました課題の検討に資するため、一定の制度改正を仮定した場合のオプション試算を実施しておりまして、それぞれオプションIでは、マクロ経済スライドについて、名目下限を撤廃いたしまして、物価・賃金の伸びが低い場合でも、マクロ経済スライドをフル適用した場合の効果を、オプションIIでは、被用者保険のさらなる適用拡大をした場合の効果を、マル1の220万人ケースとマル2の1,200万人拡大ベースの二通りで、オプションIIIでは、保険料の拠出期間を40年から45年に延長した場合の効果を試算しておりまして、いずれの場合でも、所得代替率に有意のプラス効果がもたらされることが判明しております。

 このような、平成26年財政検証結果につきましては、11ページでございますけれども、総括的にまとめたものがございますので、こちらについては後ほどごらんいただければと思っております。

 さて、このように社会保障制度改革国民会議の報告書やプログラム法で示された課題と、平成26年の財政検証結果を踏まえて行われたさきの年金部会におきます改革議論を経て実施されました、平成28年年金改革法とその施行状況についての御報告をしたいと思います。

13ページ、平成28年の改革法、公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律の概要でございます。

 1といたしまして、短時間労働者への被用者保険の適用拡大につきまして、500人以下の企業にも、労使の合意に基づきまして、企業単位で短時間労働者への適用拡大をできるように道を開いております。1年前、昨年の4月より施行がされております。

 2といたしまして、国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除を行う改正を行っております。来年4月からの施行となっております。これに伴いまして、必要な財源を賄うために、来年4月から国民年金の保険料を月額100円程度引き上げる予定としております。

 3といたしまして、年金額の改定ルールについて見直しを行っております。1つ目は、マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らないという措置は維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で前年度までの未調整分を含めて調整する新たな年金額改定のルールを創設いたしまして、この4月1日から適用しております。

 少しページを飛んでいただいて恐縮ですが、18ページをごらんいただきたいと思います。上段の図でございますけれども、こちらが新しい改定ルールの説明図になります。

 さらに、19ページと20ページを一緒にごらんください。今年度、平成30年度、去る4月1日からの年金額改定につきまきしては、19ページの左側のラインにございますとおり、平成29年の物価はプラス0.5%となっておりますけれども、右のラインにございますとおり、賃金改定率がマイナス0.4%でありましたため、20ページのマル5の象限をごらんいただきたいのですが、こちらに該当いたしまして、年金額の改定率は0.0%という形、据え置きとなっております。この結果、19ページに戻っていただいて、最下段の部分ですけれども、(2)にございますとおり、マクロ経済スライドは発動しなかったわけでございますが、その分のスライド調整率、マイナス0.3%が繰り越されまして、今後、後の年度において調整可能なときに調整されていくという形になっております。前回の年金部会で改革いただき、御議論いただきました、いわゆるキャリーオーバー制度と称されているものが、早速今年度から発動されたという状況になってございます。

13ページに一度お戻りいただきまして、3の(2)賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底するという改革でございますけれども、年金額改定でルール化しております。こちらは平成33年度からということで、未施行になっております。あちこちに行っていただいて恐縮ですが、こちらの概念図は18ページに記してございますけれども、この下段のマル2のような形のものでございます。さらに具体で申し上げますと、20ページ、今年度はマル5に当たっているわけですけれども、マル4やマル5のような象限におきましても、平成33年度からは、点線の矢印の分だけ賃金に合わせてマイナススライドの改定が行われるようになるという改革でございます。

 恐縮ですが、また13ページにお戻りいただきまして、4の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織見直しの状況でございます。こちらにつきましては、後ほど資料2-4で担当課長から御説明いたします。また、5の日本年金機構の国庫納付規定の整備は、既に平成28年12月27日から施行されておりまして、機構が保有する不要財産に関する国庫納付が順次行われていると承知しております。

14ページから、短時間労働者への被用者保険の適用拡大の現状についての御報告をいたします。適用拡大に関しましては、平成28年10月からの501人以上の企業で働く短時間労働者に対する強制適用と、さきに少し御説明いたしました500人以下の企業で働く短時間労働者に対する任意適用を順次施行しております。両者とも強制適用か労使合意による任意適用かという点を除きますれば、週労働時間20時間以上、月額賃金8.8万以上、勤務期間1年以上の見込み、学生を適用除外するという適用のルールは共通となっております。

 さて、その実績でございますけれども、局長の挨拶でも少し触れましたが、15ページをごらんください。501人以上の企業に関しましては、平成29年11月の実績で、適用されました事業所数が2万9,995事業所、被保険者数が36万7,794人となっております。一方で、500人以下の任意適用の企業につきましては、2,037事業所、被保険者数が2,976人という状況になっております。

16ページ、次に、被保険者の年齢の内訳でございます。男子と女子でその特徴に大きな違いが見られます。女子の場合、平均年齢が48.1歳で、最頻値の年齢が45歳から49歳と、40代を中心に比較的幅広く分布しております。他方で、男子の場合には60代が圧倒的に多く、全体の58%を占めております。このような、特に男子の傾向が生じた理由といたしましては、従前、厚生年金の適用基準となっておりました週30時間勤務はしていなかったものの、今回下がりました週20時間を超えて働いている60代の男性の方がそれなりにいらっしゃったのだろうと、我々としては分析しております。

17ページ、こちらは、適用しました短時間被保険者の標準報酬月額の分布の動向を示したものになります。青が平成28年11月のものでして、赤が1年後の平成29年11月のものです。全体的に右側の高いラインにシフトしておりまして、最頻値が9.8万円から11.8万円へと移っております。

 こうした変化が生じている理由といたしましては、この間、毎年9月に行われます標準報酬の定時決定を挟んでおりますので、資格取得時と比較しまして、次の定時決定時では、標準報酬の決定方法がやや異なっていますことの影響もございましょうが、短時間被保険者の働き方が変化し、労働時間をふやす動きも生じているのかなと私どもとしては考えております。これは被保険者の年金の充実という観点から見ますと、御本人、企業の負担をお願いする度合いが増しているというのも事実でございますが、御本人の将来の年金も高いものになるという傾向でございますので、この点は評価に値するのではないかという気がしております。

 少し既に御説明した資料が続きますので、飛んでいただきまして、21ページをごらんください。最近の賃金と物価の動向をまとめた総括表でございます。残念ながら、賃金変動率が物価変動率を上回ったのは平成17年度が最後となっておりまして、こういった傾向がここまでのところ続いております。

22ページ、冒頭に御説明いたしました平成24年までの改革に行われたものでございまして、法律は成立しておりましたが、施行が行われておりませんでした、受給資格期間の短縮を施行するための法律でございます。これによりまして、平成29年8月1日から期間短縮が行われております。

23ページ、こちらがこの期間短縮によります年金受給の状況でございます。日本年金機構でデータ的に対象となる方として持っていた、想定された、左端上段にございます67.6万人のうち、既に障害年金や遺族年金の受給権を持っていらっしゃった方、7.8万人を除きますと59.8万人となりますが、この方々のうち、既にもう手続をとられている方が47万人となっておりまして、この割合でいきますと8割近くの方が無年金から年金を受給される状態になったとなっております。

 また、機構では10年以上というデータを持っていなかった方ですけれども、これを機会に年金事務所などに御相談にお越しになりまして、合算対象期間、私どもは通称カラ期間と呼んでおりますけれども、資格期間には入れて年金の実額はつかない期間をお持ちの方が結構いらっしゃったということで、10年の期間短縮を満たすに至って、受給者となった方が9.5万人いらっしゃったということでございます。こういった形で、期間短縮の効果、10年以上25年未満という形でお支払いを受けた方々についての年金額の諸情報は、下の点線の囲みにあるとおりでございますので、ごらんいただければと思います。

 以上を踏まえまして、今後の検討課題をまとめさせていただいております。25ページをごらんください。5ページ、6ページでも御説明いたしましたように、社会保障制度改革国民会議の報告書で掲げられた公的年金保険制度の課題につきましては、社会保障制度改革プログラム法で法定の検討課題として位置づけられております。これは平成28年改革法の附則2条においても引き続きの検討事項とされているところでございます。

 その中でも、特に一番下でございますけれども、短時間労働者の厚生年金保険のさらなる適用拡大につきましては、来年、平成31年9月30日までに検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるというように、具体の検討の日付が法律に書かれているような状況になっております。

26ページ、このような年金改革の課題につきまして、経済財政諮問会議で工程表として落とし込んで目標設定とされているものでございますし、27ページにつきましては、平成28年や29年に政府で決定されたプランや計画の中で、同様の課題設定が引き続きされていることを御説明するためにつけたものでございます。

 直近の政府決定という意味で28ページをごらんいただきたいのですけれども、去る2月16日に閣議決定されました、高齢社会対策大綱でございます。この中では、これまでのさまざまな決定より一歩具体的に踏み込んだ記述がなされておりまして、(2)イの記述をごらんいただきたいのですけれども、「年金の受給開始時期は、現在、60歳から70歳までの間で個人が自由に選べる仕組みとなっている。このうち65歳より後に受給を開始する繰下げ制度について、積極的に制度の周知に取り組むとともに、70歳以降の受給開始を選択可能とするなど、年金受給者にとってより柔軟で使いやすいものとなるよう制度の改善に向けた検討を行う」とされております。この検討を行う場は、年金部会をおいてほかにはないということでございますので、今後、財政検証の結果を踏まえながら、この繰り下げ制度の柔軟化について、部会において、その他の残された課題とともに御議論いただきたいと考えております。

29ページ、こちらは繰上げ・繰下げ制度について、概念図を説明したものでございます。

30ページ、繰下げの現在の実績でございまして、おおむね1%の方が御利用されているという状況になっております。

31ページ、こちらは残された検討課題の一つでございます在職老齢年金制度についての説明でございます。在職老齢年金制度は大きく60歳から65歳の間の制度と、65歳以降の制度の2つに分かれております。このうち、比較的年金額の調整が厳しいのは60歳から65歳の制度です。対象となる方が100万人程度いらっしゃいますが、他方で、年金財政に対する貢献も足元値で7,000億円程度ございまして、決して無視できない貢献を年金制度に対していただいているところでございます。ただ、この60歳から65歳の在職老齢年金制度といいますものは、時限的に残されている制度とも言えます。

32ページ、こちらの図は支給開始年齢の引き上げスケジュールを説明する図でございます。一番下の欄をごらんいただきますと、男性について、完全に65歳支給開始になりますのが2025年度と、非常に長かった経過措置も今から7年後に終わると、ようやく終わりに近づいてきております。このように、いずれなくなることが見込まれている60歳代前半の在職老齢年金制度についてどう考えるかという点について、いずれ部会で御議論いただくことになろうかと思います。

 なお、女性につきましては、男性の5年おくれのスケジュールということになっておりますので、女性については、あと12年残ることになりますので、この点も御検討の際には考慮に入れていただくことになろうかと思います。

31ページの図にお戻りいただきまして、65歳以上の方に対する在職老齢年金制度は、今のものと違いまして、続くことになります。この制度は調整を始める基準額が46万円と比較的高い水準でございますので、この結果、年金の支給調整を受けている方は30万人弱、年金財政に対する貢献は3,000億円といった状況になっております。今後も高齢者の就労を促進していきたいという大きな方向性を踏まえつつも、この60歳代後半以降の在職老齢年金については、比較的年金も賃金も高い方だけを対象にしているということでありますとか、低賃金でも保険料を負担している現役世代とのバランスをどうするかなどを考慮に入れまして、どのようにこの制度のあり方を考えていくのか、部会でいずれ御検討いただければと思っております。

 こちらの資料の説明は最後になりますが、33ページと34ページに、年金生活者支援給付金の概要をつけております。この制度につきましては、消費税が10%に引き上がる際に、その増収を活用して制度を創設することとされておりまして、今のところでは、来年10月のスタートを想定しております。低年金者対策という意味では、この制度、年金制度外の制度でございますけれども、こちらの制度がスタートいたしますと、新しい制度体系が検討の視野に入ってくるということで御紹介させていただいております。なお、この制度は全額国費で賄われることになっておりまして、保険料財源は使われておりません。

 長くなりましたが、資料2-1の説明は以上でございます。

 引き続きまして、資料2-2と2-3についても説明させていただきます。資料2-3は短時間労働者への厚生年金の適用拡大を踏まえまして、私どもとは独立した調査機関であります独立行政法人労働政策研究・研修機構、あるいはJILPTという名前も通っておりますけれども、こちらにお願いいたしまして、適用拡大による使用者や短時間労働者の受けた影響等について調査をしていただいた結果について、JILPTが公表したものになっております。

 本日は御時間の都合がありますので、資料2-3については、後ほどごらんいただくといたしまして、事務局で資料2-3から数字や文意は変えないように留意しつつ、一般的に関心が高かった就業調整の状況について抜き出したサマリーをつくりましたので、こちらで御説明したいと思います。

 資料2-2の1.マル1をごらんください。こちらは事業所に対する調査結果です。適用拡大を契機として、雇用管理上の「見直しを行った」との回答は33%となっております。「見直しを行った」と回答した事業所のうち、複数回答の結果といたしまして、所定労働時間を延長する見直しを行ったとするのが63.2%、所定労働時間を短縮する見直しを行ったとするのが69.5%でございまして、両方を実施したというのは47.9%になるという結果となっております。

 この結果から、所定労働時間を延長する、短縮するのいずれとも事業所がリードしてというよりは、短時間労働者の意向に沿って、どちらの方向にも事業主として柔軟に対応したのではなかろうかと事務局では考えております。

 次のページのマル2をごらんください。こちらは事業所に対してさらに適用拡大が行われた場合には、どのような対応を想定しているかを聞いたものになります。「適用拡大の内容や時期等にも依るが、基本的には短時間労働者の希望に基づき、出来るだけ加入してもらう」が43.1%、「短時間労働者の希望も踏まえつつ、会社側の事情も交えて加入可否を判断する」が20.1%といった結果になっております。こちらの結果からも、短時間労働者の意向に沿って対応を考えていこうという事業所の考えが垣間見えるように思えます。

 最後に、下の2をごらんください。短時間労働者のうち、適用拡大により働き方を変化させたと答えた方について、その方向が所定労働時間を延長したものなのか、短縮したものなのかを尋ねた結果でございます。全体としては54.9%と、過半数を超える方が延長したと回答しております。他方、短縮したと回答したのは32.7%となっております。

 内訳を見ますと、適用前に第1号被保険者だった方は67.3%が延長し、短縮は15.9%となっております。第3号被保険者だった方は51.7%が延長し、短縮は36.9%でした。トータルとして見ますと、一定の就業調整、短縮する形での就業調整は見られましたが、それと同等以上に延長する形での就業調整もなされまして、施行前に強く懸念されていました短縮方向での就業調整による大きな労働力不足という状況は、余り生まれなかったと評価してもいいのかなと考えております。

 ただし、こちらの結果については、業種や個々の事業所によって状況は全く異なりますので、あくまでマクロ的な全体の動向ということでごらんいただければと思っております。

 御説明が長くなりましたが、私からの説明は以上となります。

○神野部会長

 それでは、よろしくお願いいたします。

○資金運用課長

 続きまして、私からは資料2-4「GPIF関連の動きについて」に沿いまして、御報告させていただければと存じます。

 今、年金課長から年金制度改革についての説明がございましたけれども、年金制度改革の中には、GPIFのガバナンス改革が含まれてございました。このガバナンス改革につきましては、当年金部会において御議論いただいた結果でございますが、それ以降の動きにつきまして、簡単に1ページにまとめておりますので、報告させていただければと思います。

GPIFのガバナンス改革につきましては、平成26年の11月から28年の2月にかけまして、当年金部会で御議論いただきまして、28年2月の議論の整理に基づいて法案を作成し、国会に提出をし、28年の12月にこの法案が成立をしたところでございます。

29年の3月には、その年金改革法の中に含まれておりました短期資産の運用方法を追加するという改正が施行されましたけれども、あわせて3月の末に、このGPIF関連の制度改正等について議論をする新しい部会として、資金運用部会というものを当社会保障審議会の中に設立をいたしました。これは年金部会の28年2月の議論の整理の中でも、新たな部会を設けるべきだという御提言をいただきましたので、この方向に沿って部会を設置したところでございます。

 資金運用部会、昨年3月に成立しまして以降、4月から10月にかけて、6回にわたって開催をされております。例えば5月のGPIFの役員の任命基準の策定ですとか、あるいは、法改正に伴います政省令等の中身について御議論いただき、8月には法人評価ということで、GPIFに対する独立行政法人評価の一環を担っていただいたこところです。

 また、9月にはGPIF改革の施行等に伴う政省令の公布も行いましたが、この中では、当年金部会におきまして、28年の夏に御議論いただきましたリミテッドパートナーシップ、オルタナティブ投資を行うに当たっての集団投資スキームの一つでございますが、このリミテッドパートナーシップに関連する法令の公布も行ったところでございます。

 昨年10月には、法改正の本丸でございますGPIFのガバナンス改革が施行されまして、新たに経営委員会というものが設置をされ、そこがGPIFの重要な方針の決定を行うという仕組みのもとで動いているところです。関連の資料は4ページ以降に添えておりますので、また、必要に応じて見ていただければと思います。

 あわせて、2ページでございますが、直近のGPIFの運用成績をつけております。直近は昨年12月末段階で、29年度第3・四半期までの結果が出ております。第3・四半期につきましては収益率3.9%、累積の運用収益等はごらんのとおりでございます。本日朝の一部新聞紙上におきまして、GPIFの昨年度の運用収益が10兆円規模だという民間の試算も出てございました。あくまで試みの試算でありますので、私としてはそれに何かコメントする必要はないのですけれども、GPIFの運用は、御案内のとおり、基本的には長期保有を前提として、市場の動向を反映する形になりますので、そのようなものだということで御理解いただければと思います。

 最終的な運用の成績結果につきましては、本来、これはプラスマイナスが重要というよりは、被保険者の皆さんから預かった資産をどのような形で運用して、それが今、どうなっているのかということを詳細に丁寧に御説明するのが大事だと考えております。GPIFのほうでは7月6日、昨年度の運用成績を最終的に各資産ごとにどのようなものに投資をして、どのような結果だったのか、あるいはリスク管理の状況はどうだったのかということで、詳細な説明を付した上で発表させていただく予定になっておりまして、また数字も決算等を経た上で正確な数字を出す予定にしておりますので、御紹介させていただきます。

 私からの報告は以上でございます。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、御議論を頂戴したいと思いますが、今、事務局からは、年金部会の運営の進め方について、まず、御報告を頂戴いたしました。当然のことでございますが、平成31年に予定されている財政検証、これが予定されておりますので、この検証の枠組みについて、私どものほうで検討していくわけでございますが、その日程について、専門委員会の御報告を受けながら検討していく日程を軸に御説明を頂戴いたしました。さらにもう一つ、社会保障制度改革プログラム法で検討事項が4つございますので、これらについても日程表では秋あたりから御議論を頂戴するということになっております。

 そういたしますと、当面こうした2つの課題を念頭に置きながら、まず、委員の皆様方の間でもって、問題の所在について少しすり合わせをし、共通認識を持っていきたいと思っておりますが、本日はそういう問題意識を共有する意味で、これまでの改正についてのレビューを頂戴したところでございます。

 ただいま事務局からいただいた御説明について、御質問なり御意見なりがあれば、頂戴したいと思いますので、御遠慮なくお願いいたします。

 もしもあれでしたら、山本委員が御都合で早目に御退席せざるを得ないということでございますので、口火を切っていただければと思います。

○山本委員

 御指名いただきまして、ありがとうございます。時間の都合で早目に退席いたしますので、先に発言をさせていただきます。

 これまでの流れの詳細な説明がございまして、非常にわかりやすく御説明いただきまして、ありがとうございます。私が一番感じますところは、前回の財政検証の時から、わずか数年の間に、人生100年時代という話が突然出てくるほど、健康に対するいろいろなことの改善、改革が進んだということです。これを年金制度にどう取り込むか、高齢者を含め、若い人たちがそのことをどう見るかという視点もあわせた長期的なビジョンを示して、この改善改革案を審議していくというのが極めて重要ではないかと、このように感じました。

 業種・業態による差異はいろいろあると思いますが、先ほどの適用拡大されたことによって就労時間が増えたというレポートがあったかと思います。就労時間が増えるということは、自助努力で仕事をしていくことによって、収入を得ていく道が強化されたと理解します。今回の改正が、結果的には人々の労働意欲をむしろ前向きに引き出すことができたと思えるので、結果論だけで見れば、一つの成果であったのではないかと、このような気がいたしました。

 そのようなことで、これからの時代、年金である程度自分が保全できる部分、自分が元気に働いていくという日本人らしい感性を引き出す必要がありますし。その為には就労環境の整備などによって、より一層高齢者についても働く場が増えてくるような施策もあわせて考えながらこの問題が進んでいく必要があります。また、更には企業年金充実の課題もあり、これらの諸制度が有機的につながることが重要だという気がいたしました。

 冒頭に所見として申し上げます。

 以上です。

○神野部会長

 ありがとうございました。

 ほか、いかがでございましょうか。どうぞ御遠慮なく。

 どうぞ。

○駒村委員

 議論の進め方ということなのですが、確認させてもらいたいのは、前回の年金部会でGPIFの組織ガバナンスの話をこの部会で取り上げた。その後、運用部会ができている。社保審には年金関連の部会がこれで、年金部会、年金数理部会、企業年金部会年金事業管理部会、運用部会の5つになったのでしょうか。この年金部会では、先ほどGPIF関連の報告というものがあったのですけれども、運用の話はGPIFのガバナンスに関する、あるいは、資料2-4の4ページに施行後3年後の見直し云々という記述も書いてあるのですけれども、前回までの年金部会から、この運用とGPIFのガバナンスに関する部分は、運用部会に委ねた、この部会では議論しない、運用部会で専ら議論するという整理でいいのか、それとも、引き続きオーバーラッピング的に議論するのか。各部会の守備範囲を教えてもらいたいと思いました。

○神野部会長

 差し当たりは、具体的には、資金運用部会とこの部会との。

○駒村委員

 そうですね。年金部会は前回まではGPIFのガバナンスや運用の話も含めてやっていた。その後、年金部会の答申で運用部会ができたということになると、GPIFの話に関することや運用に関することは、この部会では議論しなくていいのかということです。役割分担したということの理解でいいかと。

○神野部会長

 総務課長、

 いいですか。

○総務課長

 ただいま駒村先生からお話がありましたとおり、GPIFのガバナンス、あるいは運用に関しては、資金運用部会において御議論いただくというように整理いたしておりまして、年金部会におきましては、それについては基本的には資金運用部会に委ねるといいますか、分けておりますので、御議論いただく必要はないということになると思います。

○神野部会長

 ほか、いかがでございますか。

 どうぞ。

○牧原委員

 先ほど、山本委員から100歳時代をにらんでの年金のあり方、あるいは自助、公助とのバランスを考えた年金のありようというものを含めて議論を進めたいというお話がありました。もう一つ、重要な観点としては、年金の財政というものをどう考えていくかということがポイントかと思います。

 今、説明がありましたけれども、基礎年金の国庫負担についての2分の1が確保されて、保険料率は上限に達して、負担面の対応というのは先行実現をしてきました。マクロ経済スライドについては導入されましたけれども、給付水準の適正化を着実に進めていくということが必要だと思っています。前回、キャリーオーバーという仕組みは入りましたけれども、名目年金の下限というものはまだ除外されていないわけで、この調整を早く進めると、結果としては、将来世代の給付水準の確保もできるという御説明もありました。今後の検討課題について、各制度のあり方を議論する際に、年金財政への影響がどうなるか、きちんとのそのデータを確認できるように、事務方のほうでは御用意いただければと思っております。我々経済界としては、現行フレームのもとで、保険料率の上限というものを維持しながら、それを大前提にして、制度のあり方を考えていくべきだというスタンスであります。

 以上です。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 ほか、いかがでございましょうか。

 どうぞ。

○諸星委員

 先ほどの御説明の中で3点ほど確認といいますか、質問と、あとは現場で起きている部分についての補足をさせていただければと思います。

 まず1点目なのですが、先ほど適用拡大のところで、実際501人以上と、昨年からの500人以下のところで、それぞれ人数の増加を確認したところ、500人以下のところは平均1.5人、事業所数は多いのですけれども、適用した人数自体は平均的には少ないかなという印象がありました。

 この中身についてなのですが、ほとんど実際は適用はしていなかったけれども、パートさんがいたので、その人たちを入れるために適用した新規なのか、あるいは適用されていたが、短時間の皆さんの定着を進めるため、他の方とのバランスを考えるために人数的には少ない短時間の方々を適用した人数なのかということが、もしお分かりになればで結構です。それが1点。

2点目は3号の被保険者の推移について、これから適用拡大を議論するについて、多分、3号が減るという前提があったかと思います。多様な働き方が進んでいて、実は3号が減っているというデータはあるのですけれども、今後適用拡大を進める上では、実際の数字ですね。適用拡大をした後の数字として第3号が本当に減るのかどうかというのが、今後議論の中でデータとしていただきたいので、その点のデータを補足して頂けるかどうかを確認したいと思います。

 もう1つが、資料の先ほどの大きな説明のところで、14ページになりますが、実は今回適用を進めるためにキャリアアップ助成金のことを触れてます。かなり前の部会でもおっしゃっていたのですけれども、私の印象では一時的な支援ですが、どれほど制度として利用されているのかどうか。多分年金部会とは直接には違うと思いますけれども、そのあたりのデータもわかればお聞きしたいです。今、わからなければ、また今後の部会の中のところでいただければと思っております。

 以上、3点です。

 もう一つ、私の感じたところとして、先ほど適用拡大するのに、最初に比べたら賃金が上がっている、働き方がふえたのではないかというご説明がありましたが、当初の適用した時点はおそらく今までの予算金額で出して、適用後の次の算定時で実態に合った額が出てきたのも裏にあるのかなと感じました。

 もう一つ、29ページに、60歳から70歳まで自由に年金をもらう選択がありますよということがありますけれども、現実には60歳、65歳で年金の裁定請求書が来ますので、この時点でもらわなければいけないのかなということを考えると思います。実際、65歳以降の繰下げですが、それについて、果たしてここに記載されているように自由にそれができますよという認識があるかどうかは別問題だと思います。ですから、ここに書かれてはいますけれども、現実問題は65歳になったらもらうものだよねという認識が強いため、もし今後繰下げに関して検討するのであれば、そのあたりの広報です。そういったことも含めて検討していただいたほうがいいのかなということをちょっと感じました。

 以上です。

○神野部会長

 3点いいですか。最初の適用拡大の中身の問題と、3号被保険者、まず、1点、2点をお願いできますか。

○年金課長

 まず、適用された方というか、適用されるに至った事業所のプロファイルみたいなお話だったかと思いますけれども、データのある501人以上の適用状況の動向で恐縮ですが、基本は正社員といいますか、普通に適用されている方で501人とカウントしていますので、まずはそもそも厚生年金として適用されている事業所であったということが前提になってございます。その中で、例えば我々もヒアリングした中では、製造業などはそんなに短時間の人は多くはないという状況もお聞きし、業界・業種ごとに適用数にばらつきがあります。それを圧縮して平均化すると、今、委員の御指摘のような数字になっているということで、これはかなり業種ごとに人数のばらつきがあります。今日は関連のデータは持ち込んでおりませんけれども、必要があれば、また御議論の際に御提供申し上げたいと思います。平均値だということで御理解いただければと思います。

 2点目につきましては、3号だけを抜いた数字というのは、技術的な問題もあって、悉皆値としてはなかなか難しいとは直観的に思いますが、御議論の際に必要であるということであれば、3号に関する動向のデータみたいなものがとれないかというのは、努力してみたいと思います。

 キャリアアップ助成金については、御指摘のとおり、別部局がやっておりまして、そこの部局に頼めば実績値はありますけれども、今日はお時間と資料の数との関係で持ち込んでいないということですので、これはいずれかの機会にでも、御指摘、御指示に応じて、資料として御提供申し上げたいと思います。

 繰下げの問題につきましても、先ほど御紹介申し上げました高齢社会対策大綱の中でも全く同じ指摘を受けておりまして、周知広報もしっかりすべしという話もまず1点としてございます。この点ももちろん必要があれば部会で御議論いただくことも範疇に入ってくると思います。もう少し制度的な対応として、現行制度にあるディスインセンティブ、あるいは今後何らかの形で設けていくインセンティブ、どちらの方向もあると思いますけれども、何か制度的な対応を行う必要があれば、単に70歳から先をどうするかというお話だけではなくて、年金部会でございますので、例えば法律改正を伴うような制度的対応についても、必要があればもちろん御議論いただいて、どうすれば繰下げという選択もライフプランの中の選択肢の一つとして積極的に受けとめていただけるようなるのか、位置づけられるようになるのかということは御議論いただくべき対象だろうと私どもは考えております。

 以上です。

○神野部会長

 原委員、どうぞ。

○原委員

 今、適用拡大についての話が出ましたので、関連いたしまして、私からもコメントをさせていただきたいと思います。特にこちらの資料2-1の15ページについてですね。実施状況を見たところからなのですけれども、平成29年4月から500人以下の企業において労使合意に基づき任意適用ということが始まったわけですが、資料2-2と2-3は、拝見はさせていただきました。この500人以下という任意特定適用事業所に対しては、「人材確保・定着を図りたいから」ということで適用申請したところが多く、「短時間労働者自身が希望しているから」ということで適用申請したところと、一方で、適用申請しなかった理由としては、「労働者自身が希望していないから」が多く、その他「任意だから」というのがありました。

 なお、同様の調査につきましては、別途お声をかけていただき、私が全国の社労士向けに「公的年金制度とその周辺知識に関する研修」のプロジェクトリーダーをさせていただいている関係で全国社会保険労務士会連合会でも、去年の7月にさせていただきましたので、少しご紹介させていただきたいと思います。このアンケート調査は、一旦社労士を通して、顧問先の事業主への調査を行いました。こちらについても同様の結果にはなったわけですけれども、社労士は顧問先が中小企業が多いですので、短時間労働者の処遇改善ということで、人材確保ということから実施しましたという所と、従業員さんからは将来の年金を増やせるということで、よかったという声があったようです。

 ただ、一方で、全国社労士会で調査したときには、適用申請しないという理由として、総人件費の増加ですとか労働者自身が希望していないということに加えて、事業主さんからは「任意だから」という理由が多かったということも同様の結果として出ていました。つまり、この点については、今後考えていかなければいけないなということあります。しかし、まずは中小企業は人手不足の所が多く、人材確保とその定着という課題が大きいので、社会保険適用や福利厚生はしっかりしておきたいという企業もあるのですが、その一方で、まだ認識不足で、説明しないと知らなかったという企業も多かったので、そういった意味では、事業主のメリット、従業員のメリット、そして、導入事例なども入れながら、もちろん周知徹底していくことが、この数を見ても必要かなと思いました。

 一方で、ステップとしては時間がかかるかもしれませんが、任意であるというところは、推進力がどうなのかなということがあります。企業規模によって今分かれているところをどうするのかということが、今後議論が必要なのではないかと、適用拡大を進めていく上では思います。

 さらにつけ加えさせていただいてよろしいのであれば、そもそも強制適用事業所になってないところですね。大きく言うと個人事業所です。法定16種で5人未満の個人事業所や、法定16種以外の個人事業所というところで、資料2-3の中にも少し触れられていますが、業種などが今多様化する中で、強制適用事業所の線引きが今のままでいいのか。働く場所や事業所によって、フルタイムであっても非適用ということでいいのかということは、考えていかなければいけないのではないかと、思っています。

 さらにもう一つ、ついでに言わせていただくと、雇用類似の働き方というのが別の検討会であったと思いますけれども、非常に雇用に近いような働き方、実態として雇用に近いけれども、委託契約で働いているような方、個人請負事業者と言われるような方々の社会保険、福利厚生ということについてどうするかということも必要だと思います。これらについても、高齢社会対策大綱の中に、働き方に中立的な年金制度の構築というものが挙げられていましたけれども、「中立的な」ということをどう捉えるかというのはあるのですが、まずは短時間労働者の扱いが議論の中心になると思いますが、それ以外にも少し視野を広げて適用拡大の問題は考え検討していくことも必要かと思います。

 以上でございます。

○神野部会長

 どうもありがとうございます。

 事務局から何かコメントはありますか。よろしいですか。

 お待たせいたしました。出口委員、どうぞ。

○出口委員

 3点ぐらい思ったことがあるのですが、まず第1点は、山本委員も御指摘されていましたが、人生100年とは本当だろうかという気はするのですけれども、仮に人生100年ということを考えれば、社会保障や年金に対する考え方や理念をもう一度、見直さなければいけないような気がしています。

 本当に人生100年を展望するのであれば、荒っぽく言えば、今までの考え方はヤング・サポーティング・オールドだったと思うのですけれども、若い人が高齢者を支えるという考え方がベースだったと思うのですけれども、本当に100年になるのであれば、オール・サポーティング・オールしかないと思うのです。年齢を考えないで、社会で生きている人全てが社会を支え、困っている人に給付を集中する。こういう考え方に理念を転換しなければ、今までの制度の改正とか継ぎはぎだけで、本当に人生100年時代がカバーできるのだろうかという疑問を持っています。

 私はこの4月に70になるので、年金保険料を払わなくてよくなるのですけれども、こんなことを言ってしまうと、自分も払わなければいけないということで、個人的にはアホなことを言っているなと思うのですけれども、でも、そういうことを離れて、全員が社会を支えていくという社会をつくらなければ、今後の日本はもたないと思っているので、技術論やどうやったらソフトランディングできるかというプロセス論も大事ですけれども、原理原則をきちんと次の財政検証を踏まえて議論できたらいいなと個人的には思います。

 第2点は、この前の財政検証のときに一番びっくりしたことは、諸外国のお話を聞いている中で、いろいろな前提を置いているわけですが、この前提については、ちょっとここの点が甘いのではありませんかとか、詰めが足らないのではという議論がいろいろな委員から出たのですけれども、事務局の御説明では、先進国でこれだけ細かい前提を置いてやっているところはどこもありませんというファクトが説明されて、すごく心に残ったのですが、考えてみたら、かなり先のことなど誰もわからないわけですから、たくさん前提を置いて、精緻にそれを詰めていくことが本当に生産的な政策決定のあり方かという気持ちをすごく持ちましたので、今回のプロセスの中でも、諸外国の年金制度の改革動向等の御説明をしていただくと書かれているのですけれども、今まで精緻にやってきたから、これからも精緻にということではなく、諸外国が前提についてはこの程度でやっているのであれば、日本もそれで十分だと思うのです。

 問題はそうではなくて、どういう制度をつくっていくかですから、前提やケースの設定については諸外国並みに普通の詰め方で十分ではないかと思いますので、これからの議論については、必ずしも過去にとらわれることなく、諸外国の事例をよく見ながら、議論を進めていければいいなと思いました。

 第3点は適用拡大ですが、適用拡大については非常に難しい問題がたくさんあると思うのですけれども、適用拡大の原理原則は何かといえば、基本的に国民年金と厚生年金の二本立てになっているわけですが、国民年金は自営業者の年金であり、厚生年金保険は被用者の年金であるというのが、基本的な大前提であるような気がします。間違っているかもしれませんが。

 そうであれば、適用拡大についても、原理原則を大事にし、被用者は全員、適用拡大するんだと、そして、こういうタイムスケジュールでやるのだという強い決意のもとに、どういう段階を踏んでいったら、より摩擦が少なくやっているのかという議論をやるべきだと思っていて、原理原則を忘れて、やれ企業の状況がどうだとか、やれ事業所がどうだとかいう議論から入っていくのでは、いい制度はできないと思うので、そこの原理原則論をきっちりやるべきだと思います。この前の財政検証では、月額5.8万円以上の人1,200万人の試算をやっていただいたのですけれども、当然、原理原則から考えたら、少しでも働いている被用者全員をカバーして試算を行う、これはオプション試算というよりもむしろ本格試算できちんとやるぐらいのことをやっていただければありがたいなと思います。

 以上3点、感じたことを申し上げました。

○神野部会長

 ありがとうございます。

 これから徐々に論点を絞っていきますので、最初は大き目に出していただいて構いませんので、前半のところでは、なるべくさまざまな諸問題を提起していただいて、認識し合う段階にして、その後、考えていくような段階に進めていきたいと思っておりますので、大変ありがとうございました。

 菊池委員、どうぞ。

○菊池委員

 今回の部会での議論の進め方、枠組みについては理解いたしました。

 その上でですが、第1回ということもあり、また、少し時間的余裕もありそうな感じで、これしか議論してはいけないということでもないと思いますので、可能であれば議論の対象にしていただきたいということをお話しさせていただきたいのですが、どうしてもこの部会では老齢年金に焦点が当たりますけれども、公的年金制度はほかにも障害、遺族年金という3つの仕組みから成り立っているわけであります。

 とりわけ障害年金、遺族年金についても、この社会経済状況の変化に合わせた見直しを、定期的に行っていく必要があるのではないかと感じているところです。

 例えば障害年金でありますと、障害認定のあり方について、いろいろな検討がなされていることは承知していますが、私の関心としては、最近、とりわけ精神の障害の方の申請などがひょっとして増えているのではないかという問題意識があります。そういう中で、ちょっと大きな話になりますけれども、障害年金における保険事故というのは、日常生活能力の低下なのか、稼働能力の低下なのか、日本の制度の中でも変遷があるわけです。今でも障害厚生年金は両方入っています。その障害の考え方をもう一回整理するということをどこかでやっておく必要があるのではないかと思っています。

 障害の中身に変化があるのであれば、なおさらその必要があるのではないかということです。

 それと関連して、例えばいったん障害認定した後の定時の見直しのあり方についても、ひょっとして見直す必要があるのかもしれないと思います。

 あるいは、私は障害者部会のほうの委員をさせていただいていて、そちらでも申し上げるのですが、障害者の方の生活をどう支えていくかという部分で、年金だけではなく手当、就労、そして福祉サービスの自己負担のあり方、それらを合わせて障害者の方の生活をどう支えていくかという視点がどこかで必要なのですが、審議会で、それらをまとめて議論する場がないというのがなかなか難しいところだと思っているのですけれども、そういった視点も持っておく必要があるのだろうと思うのです。

 とりわけ、先ほど御説明がありましたように、今回、マクロ経済スライドで特に障害基礎年金も入っていますので、ずっとこの障害基礎年金が下がり続けていくという事態、これは老齢と同じように考えていいのか。障害者の方々の所得保障全体のあり方の議論ともかかわってくるので、これは決して障害年金単体ではなくて、今回の年金部会の議論の枠組みにも十分入ってくる問題ですので、少しそういう視点を持って、できれば議論する回を設けていただきたいというところであります。

 遺族年金につきましても、第3号被保険者問題はいつも議論していながら、すっきりした結論はなかなか難しいですけれども、家族や雇用のあり方が変わってきている中で、男女差の見直しということで、遺族基礎年金については最近の改正で、「妻」ではなく「配偶者」という形で文言が改正されましたけれども、ほかにもまだ幾つも残っています。これをどうするのか。やはり定期的に議論する必要があるのではないかと思います。

 生計維持要件についても、年収850万という、これもこの部会で何年か前に議論したところですけれども、こういうものも、社会のあり方、雇用のあり方が変わってきている中で、定期的に見直しの議論をしていただきたいところであります。

 最後に、資料1の一番左上の○の上から3つ目で「年金数理部会『公的年金財政状況報告(平成28年度)』」と書いてあって、事前に事務局にお願い申し上げればよかったなと思ったのですが、先ほど駒村委員がおっしゃったように、同じ年金制度を議論するのに4つ部会があって、企業年金を入れると5つですけれども、一つの制度をそれぞれ個別に議論している。お互いに何を議論しているのかをどこまで共有しているのだろうかということが、年金数理部会でもよく議論になるのです。

 今回も数理部会でまとめたのですが、これをほかの関係者の方にどれだけ共有していただけているのだろうかという議論が出されました。ここに挙げていただいているので、28年度ですけれども、足元の年金制度を支えるさまざまなデータが入っていて、これは年金改革をめぐる議論をするに当たっても参考にしていただけると思いますので、何らかの形で当部会の委員の皆様にも御提示いただければ、場合によっては、内容について御説明いただくような機会を持っていただけたらと思う次第でございます。

 以上でございます。

○神野部会長

 私のほうでも、分業の不利益が働かないように注意をして、事務局と調整していきたいと思っています。

 事務局のほうは、特にコメントはいいですか。

 それでは、お待たせいたしました。小室委員、お願いいたします。

○小室委員

 ありがとうございます。

 これまでの振り返りから丁寧にしていただいて、ありがとうございました。

 その中で、先ほど皆様も触れていらっしゃった資料2-1の15ページでぜひ発信していただきたいなと思ったのが、25万人と見込んでいたのが、実際は36万人適用となったという数字は、とてもキャッチーというか、社会に出していただきたい、発信していただきたい情報だと思います。

 働き手の潜在労働力にとって、非常に参画意欲を高める情報で、とても価値がある情報なので、こういういい情報も発信していただきたいなというところで、客観的に見てとても価値のある情報だなと思いました。

 適用拡大の話を議論していたころは、こういうことをするとむしろ時間短縮のほうのパワーが働くのではないかという懸念の議論がたくさんあったと思うのですけれども、そのときに、人材不足になるわけだから、中小企業にとってはこれはむしろ獲得とか定着のチャンスとして使っていただけるはずだというようないろいろな議論があって、結果としては、社会が予想以上というか予想できたはずなのですけれども、思っていた以上の人材不足感というところで、これはむしろいい形で使われたということがきちんとJILPTの検証などもあってわかっているということは、非常に振り返りとしてすばらしい内容だなと思いました。

 私の仕事のコンサルの現場でも、自信を取り戻して、少しずつ労働市場に参画してくる女性が非常にふえたなということを、実際の現場でも多数、目にしていますし、シニアの男性の雇用延長というところにも、実際に活躍されつつある、その方たちのノウハウが職場でも非常に貴重になってきているという実感があるところなので、それを数字で裏づけているテーマとしてすばらしいなと思っています。

 これを間に合うタイミングでというか、施行できたことに非常に価値がある。働き方改革ということが、社会としてぐっと進んだタイミングのときに、これがまだ検討中だったら、非常にもったいなかったと思いますので、結構、改正としてはスピーディーだった。議論の段階では遅い遅いと言っていたと思いますが、結果としてはスピーディーだったほうではないかと思っていまして、その施行が間に合って、実際に働き手がより適用されてという相乗効果が生まれたようなタイミングが非常に重要だなと思っていますので、間に合っていると言えるかわからないのですけれども、時期というところが大事だったと思っています。

 さらに、これからますます多様な人材の活躍をしなくてはならない状況なので、さらなる適用拡大ということに関しては、スピーディーに議論をしなくてはならないかなと思っています。

 もし、今の時点で少し見えていればというところですけれども、今後、どのようなスピード感で議論されるのかなというところ。全体のは先ほど拝見したのですけれども、この適用拡大についてはどのようなスピード感、タイミングでというところと、できれば、どのような変化を見込んで、それに間に合うようにこういうタイミングでやるつもりというところが、今回ではなくても構わないのですけれども、お知らせいただけるといいのかなと思いました。

 以上です。

○神野部会長

 ありがとうございました。

 事務局、何かコメントはありますか。

 どうぞ。

○年金課長

 今の委員の御質問の最後の部分にお答え申し上げたいと思います。

 適用拡大につきましては、14ページの図を改めてごらんいただければということですけれども、正直、大きな論点は、今、小室委員からも御指摘があったとおり、大体整理されつくされておりまして、何人かの委員からも御発言がございましたけれども、企業規模要件をどう考えるか。その際の企業規模要件を考える視点としては、今のスキームで申し上げれば、原委員のほうからも、社労士連合会の生の現場の感覚も御紹介がございましたけれども、強制適用と任意適用だと、正直、大分現場の感覚も違うということで、ここをどうするか。

 それから、8.8万円という国民年金とのバランスで決まっている要件がございますが、例えば最賃の動向なども見ながら、これを将来どう考えていくのかといった、大きく言うと2つの適用拡大の軸がございますので、そこを出口委員からも、将来もちゃんと見越した形で、原理原則論も踏まえながら、どう考えていくのかという議論をすべきだという重要な御指摘もいただきましたが、それをスピーディーにどう整理していくのかというのが我々に課されているミッションだと受けとめていまして、それ自身は、まさにスピーディーにやらなければいけない課題でして、何遍か御紹介申し上げたように、来年の9月30日までには1回、少なくとも検討し方向性までを結論は出さなければいけないことになっていますので、さまざまなステークホルダーの方がいて、特に企業の費用負担の関係もございますので、どうなるかというのはこれから御議論をさせていただかなければならないのですが、スピード感でいえば、来年の9月30日までには何かしら方向性を出して、それは当然のことながら、この部会でも最後、御議論いただく形になりますので、来年のどこかの時点ではその関係についても皆様方委員に御議論いただくというような大きなスケジュール感は持っております。

 ただ、詳細は、まだ我々事務局も詰め切れておりませんので、きょうは御報告申し上げられませんが、いずれこの部会でも何らかの形で、そういう大枠と、どういう形で適用拡大を考えていくのかを御審議いただくつもりであることを御報告したいと思います。

○神野部会長

 ありがとうございました。

 どうぞ。

○小野委員

 簡単な確認だけさせていただきます。資料1に本年秋ごろからということで、4項目のフリーディスカッションをされるということが書かれておりますけれども、一方で、資料2-1の26ページ、これは経済財政諮問会議の資料ですけれども、マクロ経済スライドのあり方に関しては、横に引っ張ってくる箱がないといいますか、何となくこれを見ると、一段落という感じを受けてしまうような雰囲気があります。前回の財政検証では、マクロ経済スライドのフル適用をした場合としない場合という効果は確認したのですけれども、たしか経済前提、賃金と物価がパラレルに動くという感じだったので、今回の年金スライドの改定に関しては、オプション試算のメニューの中に入っていなかったと思います。いろいろな意味で、こういったフリーディスカッションをしていくうちに、対策が必要となれば、それは対策を立てていくという理解でよろしいのかという点だけ質問させていただきたいと思います。

○神野部会長

 どうぞ。

○年金課長

 まず、原則論に関しましては、委員御指摘のとおりでして、フル適用の問題が検討課題から抜けたという認識はございません。

 先ほどの社会保障制度改革国民会議の設定の中には、当然それは含まれているわけでございます。オプション試算も出しているわけでございます。

 他方で、委員御慧眼のとおりに、こういう図になっておりますのは、年金部会の委員の方々は歴史にお詳しいので、きょうは詳細を割愛してしまいましたが、キャリーオーバー制度も今年度、早速スタートしておりますが、御案内のように、キャリーオーバー制度自体は前回の検証の段階では入らない形の検証になっております。次回に関しましては、当然それを入れたような検証になりますので、委員の御指摘のように、それも見ながらの御議論も必要になってまいりますでしょうし、賃金の徹底に関しましては、33年度という形でございますので、正直、来年の財政検証を踏まえて、何らかの改革議論が必要ならばして、何かアクションを起こしてというサイクルから行くと、33年度はぎりぎりレンジに入ってこないぐらいになってしまいますので、そういった諸事情からしますと、フル適用そのものを主要課題として議論するには時期尚早かなという感覚は持ちつつも、短期か中期かになるかはわかりませんけれども、おっしゃったように数字を見ながらの議論は引き続き必要だという認識を私どもとしても持っております。

 さまざま残された課題がある中で、どのぐらいそこに焦点と時間を当てて御議論の対象にしていただくかは、どちらかというと小野委員の御指摘のとおり、数字を見たり、いろいろ世の中の動向を見たりして、委員の中での御議論も踏まえて、そういう形で徐々に決められていく性質のものだと私どもとしては今、整理させていただいております。

○神野部会長

 待っていてください。関係しているわけではない。

○駒村委員

 関係していません。

○神野部会長

 それでは、永井委員、平川委員、駒村委員と行きます。

 永井委員、どうぞ。

○永井委員

 ありがとうございます。

 私のほうも、適用拡大について申し上げたいと思います。

 資料2-2でJILPTの調査結果をお示しいただきました。

 私は、産業別労働組合の所属でございまして、現在、170万を超える組合員がおるのですが、そのうちの過半数以上がパートタイム労働者、派遣労働者、有期契約の労働者でございます。そういう組織といたしまして、いわゆる非正規雇用と言われる処遇の課題については、当事者として取り組む責任と役割があると考えております。

 このJILPTの調査は、実に興味深いなと思って拝見をさせていただきました。先ほどの、短時間労働者の意向で働き方、労働時間を選んだという御説明がございました。3ページ目のブルーのところになると思うのですが、これは働き方の変化の有無ということで聞いておりますので、変わったと答えられた方が15.8%いる中で、労働時間を延ばした方が56%ちょっと、短くした方が32%ちょっとという数字になっておりまして、実は特に変わっていない、今後変える予定もないといった方々が6割という結果になってございます。

 この中には、20時間以上働いていて、適用拡大になっている方々も含まれていると認識をしております。どうしてそのようになっているのかということを現場感覚で考えてみますと、我々も労使で適用拡大の周知等については努力をしてきたつもりですが、当事者のパートタイム労働者の皆さん等々にはまだ伝わっていない部分もあったのかなと思うのと同時に、短時間労働者の働き方も多様化しておりまして、今まで言ったような主婦パートという方々だけではない、いろいろな方々がおられる中で、もう少し掘り下げて考えていかなければいけないのかなと思っているところでございます。

 そういった上で、本来、社会保険のあり方として、個人が加入の有無を選択できるような制度は望ましいものではないのではないかとも考えておるところでございます。今後、短時間労働者の適用拡大について議論をされることになりますが、年金制度の財政面だけではなくて、対象となる方の将来にわたる年金の受給額が増加するという観点もありますので、適用拡大を推進していかなければならないと考えております。

 現在のように、企業規模の大小に取り扱いの差が生まれている状況や、適用となるための賃金要件のあり方など、見直すべき課題も多いと考えておりますので、引き続き、労働者の働き方などを注意していただきながら、さまざまな場面で議論をさせていただければと思っております。

 以上です。

○神野部会長

 ありがとうございます。

 米澤委員、ちょっと待っていただけますか。駒村委員の後に行きます。

 平川委員、どうぞ。

○平川委員

 今回の年金の制度改革を議論するに当たって、少し課題みたいなことをお話しさせていただきたいと思います。

 3ページを見ていただくと、平成24年、2012年に一体改革大綱が出て以降、本当に地道に制度改革が行われてきました。年金制度を維持するための努力がここにあらわれているのかなと思っています。

 ただ、一体改革については、2025年までが賞味期限という形になっております。その2025年というともうあと7年ぐらいしかないという状況であります。

 今回の制度改革については、ここに沿った形になるということは承知をしておりますけれども、2025年以降どうしていくのか。これは年金だけではないのですけれども、社会保障全体にかかわって考えていかなければならないということがあると思います。

2012年からのこの6年間でも、平均寿命、特に健康寿命が延伸し、人生100年時代をどうするかという議論が、もう新たな議論として出てきておりますので、一方で地道に取り組むということも必要ですけれども、その先に、さらにどうしていくかということも頭の中に入れて考えていく必要もあるかと考えているところであります。

 そういった中で、足元をどうしていくかという課題について、一番大きな課題は、8ページにございますように、マクロ経済スライドによる調整期間が、特に基礎年金については長期間にわたるという想定をされているということがあります。所得代替率が大きく低下をしかねないという状況でありまして、これは深刻に捉えていく必要があるのではないかと思っています。

 基礎年金の生活保障機能が低下することで、一方で、生活保護のほうにそのしわ寄せが出てしまうという課題もあるのではないかと思います。

 この高齢期における低所得者をどうやって減らしていくかということは、中期的には雇用の改善とか、長く働き続ける環境づくりという雇用分野における対応も重要でありますけれども、一方で足元の年金の制度の中で何ができるかをしっかりと検討課題としていく必要があるのかなと思います。

 オプション試算にもありましたように、国民年金保険料の拠出期間のあり方の問題、もしくは高所得者に対するクローバック制度など、多方面からの議論が必要ではないかと考えているところであります。

 そうした中で、公的年金制度に対する信頼性は極めて重要でありまして、その信頼性を確保するということでいえば、年金に関する実務面も重要ではないかと思います。特に実務ということでいえば、事業所の適用促進が強く進められてきたと思います。それによる成果は本当に大きいのではないかと思います。

 制度の面と実務の面、両方をどう改善していくかが課題かと思いますが、今回、年金機構のほうで年金のデータの処理の関係において、委託業者との課題について大きな社会的な問題となっているところであります。その辺も含めて、この年金機構の課題については年金事業管理部会において議論されることになるかと思いますけれども、この年金部会においても、実務面において、こういった事案の発生などについてどのように考えていくのかということもしっかりと押さえておく必要があるのかなと思います。

 年金機構の全体の人員体制が本当に十分であるのか。もしくは、入札のあり方が安かろう悪かろうになっているのではないかということも含めて、少し検討していくべき課題もあるのではないかと考えているところであります。

 以上、課題について、意見として言わせていただきました。

○神野部会長

 ありがとうございました。

 駒村委員、お待たせしました。どうぞ。

○駒村委員

 4つほど、3つぐらいは事務局に資料をお願いしたいと思って、最後の一つは確認になります。

 1つ目は、原委員、出口委員、平川委員からも議論があったのですけれども、適用事業所の範囲に関する議論を一度、整理したほうがいいのではないかと思います。

 健康保険との一体性で、16業種に列挙して、適用しているということなのですが、これは工場法の名残を引き受けて、戦後間もない健康保険法改正のときに16業種になったということだと思いますが、適用について、例えば解説書を見ると、常時5人以上の従業員を使用する次の業態の事業所及び常時従業員を使用する国、地方公共団体法人の事業所は、厚生年金を含めての強制適用事業所になりますと列挙しているのです。

 実務においては、私は余りつまびらかではないのでわからないのですけれども、これに対して雇用保険のほうは、事業所の適用の説明がより網羅的というか、雇用保険の適用事業は業種規模の如何を問わず、労働者を雇用する全ての事業になります、暫定的に、以下の部分については任意適用としますと書いてあるのです。

 何で違うのかなという点です。実質的な意味はあるのか。片一方は包括的にやって、これは例外にしますよと。片一方は列挙していくということなのですけれども、もちろん保険の給付の性格の違いがあるとは思いますし、経緯が違うとは思うのですけれども、雇用保険のように、包括的な定義法制をすると何か問題があるのかどうかということを少し調べていただきたいなと思いました。これが1つ目です。

 2つ目ですけれども、短時間労働者の8.8万円の報酬の下限の部分でありますけれども、これは先ほどの説明で、国民年金とのバランスだという説明がありましたが、これは以前からの部会で、本当にこのバランスを考える必要があるのかどうなのかというのは議論があるところだと思います。これは財政構造上の問題も含めて、一度ちゃんと整理しなければいけない。表面的なバランス論でいいのかどうかということだと思います。

 3つ目になりますが、大綱で70歳以降の支給を選択できるようにということが書かれているのですけれども、現在の繰上げ、繰下げの減額、増額率はどういう数理的な根拠と、どのくらいの金利を想定して設定されていて、改定ルールはどのようになっているのか。これは生命表の変化によって変わってくると思いますので、この辺も整理していただきたいと思いました。

 4つ目なのですけれども、32ページの支給開始年齢の男性のところは、在老との関係の説明で、これはこれでいいと思うのですけれども、正確に言うと、女性は厚生年金の1号に限定しているのではないか。2号、3号、4号の女性の厚生年金加入者は、この引き上げスケジュールではないのではないかと思いますが、この辺は確認になります。

 以上です。

○神野部会長

 ほぼ宿題でいただいておこうと思っておりますが、最後のところとかで何かありましたら。

○年金課長

 簡潔に。

 まず、適用事業所の範囲の御指摘は、御指摘として受けとめます。その上で、60年改正のときに、法人事業所は原則加入にしましたので、16業種外でも法人化されていれば適用ということで、割とそれが進んできていたので、余り大きな議論にはならなかったというところも正直あるかと思います。

 特に近年は、法人化することが非常に容易になりましたので、法人事業所が増えていたというのも議論のトレンドとしてあったかと思いますが、この問題は、御指摘のように、中小企業で適用外のところが多いので、比較的短時間労働者の適用拡大の話と似た構造がございますので、議論の俎上としては同じライン中でのほうがよろしいのかなと思いながらお聞きしておりました。

 それから、8.8万円問題は言葉が足りておりませんでしたけれども、もともと部会で御議論いただいて、法案を提出したときは7.8万円になっておりましたのが、政治の場で法案審議のときにそういった御議論が出て、8.8万円になったということでございましたので、部会の御議論というよりは、国会の場での決着としての8.8万円ということでございますので、そういった経緯も踏まえながら、委員御指摘のような資料を御提供申し上げるとか、そういったことを意識していきたいと思います。

32ページの図は、全く御指摘のとおりでございまして、厚生年金いわゆる1号だけでございますので、2、3、4はまた違いますので、そういう図としてお読みいただければと思います。

 私のほうからは以上です。

○神野部会長

 ほかにありますか。

 どうぞ。

○数理課長

 繰下げ増額率の現行の率の設定についての御質問がございました。これは事実関係ですので、いつ設定されたかということなのですけれども、現行の繰下げ増額率、合わせて繰上げ減額制度というものもございますので、繰上げ減額率も合わせて設定されておりますけれども、平成12年改正、2000年の改正のときに政令で設定されたものでございます。

 そのとき、数理的に生涯受給額が等価になるようにということを基本として設定されているわけですけれども、使った率といたしましては、当時の直近の生命表及び経済前提ということになりますので、平成7年の完全生命表と平成11年の財政再計算時の経済前提をもとに設定したということでございます。

 以上です。

○神野部会長

 ありがとうございます。

 お待たせしました。米澤委員、どうぞ。

○米澤委員

 どうもありがとうございます。

 きょうは最初ですので、感想を含めたことで構わないということなので、2点ほど。

 7ページに前回の財政検証の結果が出ております。財政検証は、この部会でも最終的に議論するということなので、ここに関して感想を言わせていただきます。

 ここに書かれておりますように、AからHの各ケースまであって、実際どれかよくわからないという感じがしなくもないと思います。

 先ほど出口委員がおっしゃいましたように、不確実が多い中で、いろいろ細かなことを定めていくことの結果として、こういうことになったと私はいい方向で解釈しているのですけれども、とは言いながら、これをどう評価していったらいいか、一般の国民はなかなかわかりにくいので、できましたら、この中のどれが標準形なのかぐらいは政府として出してもいいのではないだろうか。

 我々の中で議論したものとしては、ケースEあたりがそれに近いようなことだと体感しておりますけれども、もう少しそこのところのメッセージみたいなところを伝えたほうが、要は年金が今の財政検証をして、いいのか悪いのかということの理解も含めて、そういうところの見せ方を、これしかないのかなということで、もう少し工夫してもいいのかなと思っております。

 私が知らないだけかもしれませんけれども、所得代替率の50%という数字なのですけれども、それがどのぐらいの意味があって、どのぐらい国民に確約されたものなのかどうか。もう少し言いますと、法律でどういうところで出てくるのか。少なくともマクロ経済スライドなどのところでは50という数字は出てくるのですけれども、50%というのが、どのぐらい守らなくてはいけない数字なのかどうかを教えていただきたいということなのです。

 というのは、裏で言うと、どうももうそろそろ100歳だとか少子高齢化だと、なかなかこれは難しいのではないだろうか。一つは、計算の仕方自体も、国際間で必ずしも共通ではないということもあると聞いておりますけれども、50というのがどのぐらい意味があって、仮に将来、なかなかこれを維持するのが難しいとしますと、50ありきではなくて、早目に、もう少し弾力的にアナウンスしていく必要があるのではないだろうかということです。

 そこのところが、まず一つ法律的にどうなっているのかをお聞きしたいということです。

 その2点でございます。

○神野部会長

 すぐに答えられるのであれば。

 どうぞ。

○数理課長

 ただいまの後半のほうの所得代替率についての御質問でございますけれども、所得代替率は、厚生年金の被保険者の男子の手取りの平均の賃金に対して、標準的な年金受給世帯の年金額が、夫婦世帯でどうなっているかという率として設定されておりまして、年金給付水準の現在から将来にわたる変化をはかる物差しとして、法律上、規定されているということでございます。足元で60%を超えるような所得代替率の水準となっているものが、財政検証の幅広い8ケースに応じてどうなるかをお示しさせていただいているということでございます。

 これが法律上、どう規定されているかということですが、財政検証は少なくとも5年ごとに定期的にやっていくということですけれども、次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合に、給付水準調整の終了、その他の措置を講じて、給付と負担のあり方について所要の検討措置を講じるということになっておりますので、財政検証をやった5年以内に50%を下回るときに具体的なアクションを起こすという規定に、規定上はなっているというところでございます。

○神野部会長

 ありがとうございました。

 どうぞ。

○武田委員

 本日は、これまでの経緯を含めて、大変詳しく御説明をいただきまして、どうもありがとうございます。

 私は、先ほど出口委員がおっしゃったように、原理原則をベースに、今後の改革の方向性を考えていくことは重要で、働ける方が全員で社会を支えて、本当に困っている人が困らない社会にしていくという考え方は賛成でございます。

 その上で、今後の検討課題として、きょうは初回ということもあるので、少し大きな視点で2つ意見を述べたいと思います。

1点目は、就労意欲を高めるということです。恐らくここの場にいる方、皆様その重要性では共通認識を持っていらっしゃると思います。

 その背景には、本人の生きがいという点もございますし、就労意欲が高まったほうがマクロでみて雇用者報酬がふえ、経済の安定にも資する。その結果として、年金財政の持続可能性をも高めるということを踏まえますと、多面的な理由から就労意欲を高める制度にしていくことが重要ではないかと思います。

 その点で、本日のアンケート調査の結果を見ますと、労働時間を抑制する方向に効いる割合が高いのが、第3号被保険者です。このアンケート結果では差が明確に出ているため、そうした視点の制度改革も含めて検討に入れていく。そういう時期に来ているのではないかとの印象を持ちました。

 2点目ですが、私は将来世代への責任は非常に重要だと思っています。制度の持続可能性について、誰もが確信を持てるような制度改革に向けて、残された課題は何なのか。その点はこのクールで、ぜひしっかり考えていきたい。特に、最初の原理原則に立ち返れば、果たして高所得者の老齢基礎年金の支給のあり方は、今の形でいいのかということ、また年金の果たす役割は十分検討には入れる必要がありますが、マクロ経済スライドのあり方についても、さらに一歩進める方向で考えていく必要があると思います。私は昨年のキャリーオーバー制度も大きな前進だともちろん考えておりますけれども、将来に責任を持つため、さらにどうしていくのがよいかという点は、これからも考えていかなければいけないと考えています。

 以上です。

○神野部会長

 ほかになければ。いいですか。

 どうぞ。

○阿部委員

 時間がもう過ぎそうなところで済みません。

 私はきょう初めてこの部会に出席をしましたけれども、年金制度が非常に複雑だということはよくわかりました。拠出の部分でも複雑ですし、給付のほうはそうでもないとしても、財政のところも結構複雑だなという理解をしているところでございます。

 私はもともと労働市場の研究を長年やっていますので、今後の労働市場の変化にどのようにこの年金制度が対応していくのかという点では、非常に関心を持っているところです。

 特に一億総活躍で議論されているように、高齢者だけではなくて、障害者等も活躍を求められているところで、どのように年金との接続を図っていくのか、年金への拠出をどのようにシンプルにしていくのかというのは課題感としてはかなり大きいかなと思います。

 先ほど、委員の何人かから、雇用類似の働き方の議論がありましたが、もう一つあるのは、マルチジョブホルダーについて、どのように年金制度が対応していくのかという点はあるのかなと思っています。

 最近では、副業というのがキーワードになりつつあるようですけれども、副業をした場合、主たる給与のところで年金をとるというのは一つの考え方ですが、例えばそれが半分半分で働いて、一つの生計をなしているという場合に、どのように年金を拠出していただくのかとか、いろいろ論点はあるのかなと思っております。

 ただ、そんなことを言っていると、いろいろな例外があり、拠出の部分でも複雑になってしまうということがあるので、そのようにしていくのか、それともシンプルに所得が1円でもあれば、年金に拠出してもらうという制度にしていくのかとか、そういったところもぜひ議論していただければと思っているところです。

 ありがとうございました。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 申しわけありません。私の不手際で時間が押しておりますので、次回以降も時間がございますので、議論のほうはこの辺で打ち切らせていただきたいと思います。

 大体の方向性については、事務局のほうで提案していただいた当面の議論の進め方ということで、御承知おきいただいたと考えておりますので、きょう多くの委員の方々からお伺いした御意見を参照しながら、次回以降、どういう論点を取り上げていくのかということについては、事務局と相談しながら設定してまいりたいと思いますので、その点も御了解いただければと思います。

 予定している議事はこれまでなのですけれども、実はきょうはほかにございますので、もう少しお残りいただかなければいけません。事務局のほうから御発言をお願いします。よろしくお願いします。

○事業管理課長

 事業管理課長でございます。

 先ほど、平川委員からの御指摘もございました年金制度の事業運営につきましては、年金部会とは別に事業管理部会で審議をされておりますけれども、最近の諸案件につきまして、きょう参考資料という形で用意させていただいております。

 もう時間を押していて恐縮ですが、少しだけお時間をいただきまして、私のほうから概要を簡単に御報告させていただきたいと思います。もうしばらくお時間をいただきたいと思います。

 参考資料をごらんいただきたいと思いますが、表題が3つございまして、昨年9月に公表いたしました振替加算の総点検とその対応の関係、2点目に、昨年12月に公表いたしました事務処理誤り等の総点検の関係、3点目に、最近いろいろ世間を騒がせております委託業者の入力漏れ等によりまして源泉徴収税額を正しく反映できなかった事例等について、この3つについて、簡単に御報告させていただきます。

 1ページでございますが、この資料は昨年9月の事業管理部会に出した資料に少し追記をしたものでございますけれども、一番上の四角の枠囲みがございます。御案内のとおり、振替加算は昭和60年の年金制度改正で基礎年金を創設した際の経過措置でございますけれども、御夫婦のうち扶養している側、ここは「(夫)」と便宜的に書いてございますが、この夫の老齢厚生年金に加給年金が加算されている場合に、御夫婦のうち扶養されている側、ここは便宜的に「(妻)」と書いておりますけれども、その妻が65歳に達して、基礎年金が受給資格ができるときに、夫の加給年金を妻の老齢基礎年金に振り替えて加算する制度でございまして、生年月日に応じて額が決まっておりまして、月額1万9,000円から、最近の受給者であれば6,000円程度ということになっております。

 従来から支給漏れが散見されて、個別に対応してまいりましたが、近年その件数が増加しているということで、平成27年10月の被用者年金一元化に伴いまして、日本年金機構が共済情報連携システムを使って、共済の年金情報を見ることができるようになったということもございまして、今回、支給漏れ事案の総点検を行って、対策を講じることとしたものでございます。

 真ん中にいろいろな絵が書いてございますけれども、この振替加算を正しくつけるためには、夫の年金情報と妻の年金情報をしっかり連携させる必要がございますが、夫婦の片一方が共済の加入者であるような場合に、特にこの連携がうまく行かず、支給漏れが多発していたということでございまして、一番下の3行でございますけれども、公表時に支給漏れが判明した方は約10.6万人、額にして600億円でございます。その95%は、夫婦の片一方が共済年金の方でございました。

 こういった対象者の方には、お知らせを送付した上で、大半の方には29年11月に未払いになっていた額のお支払いが済んでおります。現状、直近のデータでは、残り1,377人となっておりまして、まだお支払いができていない方は、御本人が亡くなり、かつ御遺族の方も亡くなっていたりして、戸籍の公用請求等によって誰にお支払いをしたらいいかを今、探している方や、障害年金との併給になっていて、どちらを選択されるか御本人の意向を確認中の方、こういった方が1,377人残っております。

 今後につきましては、妻が65歳時点で夫に加給がついているのに妻に振替加算がつかないようなことをシステムがはじき出してきたものを、全て確認をして、事務処理を改善する、再発防止をするということになっております。

 2ページでございますが、このページは昨年12月の年金事業管理部会に提出した資料でございますけれども、上の枠囲いでございますが、振替加算で判明したような何か構造的な問題があって、こういう支給漏れなどが起きている事案がほかにないのかどうかということにつきまして、その下の段でございますけれども、事務処理誤りの総点検、「お客様の声」の総点検、リストの総点検の3つのアプローチから総点検を実施した結果を発表しております。

 もう詳しく申し上げませんけれども、左の欄でございますと、事務処理誤りにつきましては、機構発足以来の全ての事務処理誤り1万件余りを全部点検いたしまして、10件以上の同種の事案があるものが33種類ございましたが、振替加算のような構造的問題はないという結果になっております。

 今後の対応の2つ目のポツでございますけれども、再発防止策を講じた上で、過去の同種の事案でまだ判明していないもの、これはシステムで特定できるような事象が24ございますので、こういった24の事象につきましては、今後順次プログラムを開発して、早いものは本年4月、今月です。遅いものでも30年度中には対象者の方に個別連絡の上、対応していくということを予定しております。

 3ページでございます。これが昨今いろいろ報道等もありまして、皆様にいろいろ御迷惑をかけている案件でございますけれども、上の枠囲みのところでございますが、1つ目の○でございますけれども、日本年金機構では、所得税法の規定に基づきまして、所得税の源泉徴収をしております。その際、年金受給者から扶養親族等申告書を提出していただく必要がございます。税法におきまして、申告書の提出がない場合は例えば税率が10.2%に対しまして、提出があった場合には、さまざまな控除を差し引いた後、税率が5%という形で、申告書がある場合とない場合で源泉徴収税額がかなり変わることになっています。

29年度の税制改正等に伴いまして、申請書の記載項目が大幅にふえ、様式も変更したということで、今年は例年に比べて、皆様からの申告書の提出状況が大幅に遅れておりまして、2月の最初の支払い時に、こういう申告書を反映した源泉徴収税額が間に合わない方が増加しております。

 これに加えまして、申告書の入力業務を委託いたしました委託業者の入力漏れ、入力誤りによりまして、源泉徴収税額を正しく反映できなかった事例が生じております。

 詳細につきましては、その下に書いてございますけれども、特に期限までに提出いただいたにもかかわらず、2月に間に合わなかった方が多数生じたことにつきましては、大変遺憾に思っておりまして、(1)にありますように、委託業者の入力漏れによりまして7.9万人の方が2月に正しい額が反映できていない。それから、委託業者の入力誤りによりまして約7万人の方が源泉徴収税額に影響がございました。

 これらの方々につきましては、一部、3月の支払い時で対応した方もいらっしゃいますが、それ以外の方は4月13日の支払い時に調整をさせていただくとともに、今後改めて文書によりおわびを申し上げたいと思っております。

 この委託業者につきましては、次の枠囲みですが、さまざまな契約違反がございましたので、(2)でございますように、3年間の入札参加資格の停止等の措置をとることにしております。

 その上でございますけれども、一部報道で、中国の関連事業者に再委託をしたということが言われておりまして、いろいろな調査の結果、申告書の中の氏名部分のみを取り出した画像データを送っていたということがわかっておりますが、日本年金機構と、情報セキュリティーの関係の契約を結んでおります日本IBMの実地監査などによりまして、個人情報の取り扱い、情報セキュリティーの関係では、特に問題はないということは確認しております。

 (3)にございますように、先ほど平川委員からも御指摘がありましたが、今回このような問題が起きましたそもそもの検証、原因究明などをしっかりいたしまして、今後の対策を図るということで、日本年金機構のほうに、外部の専門家による調査委員会を立ち上げて、しっかりと原因究明や今後の対策の検討をしていきたいと思っております。

 また、最後の四角でございますが、今の時点でもまだ申告書を提出されていない方がいらっしゃいますので、4月下旬に再度のお知らせと、あと申告書の様式そのものをわかりやすいもの、記入しやすいものに見直しまして、それをお送りし、申告書の提出をお願いする予定でございます。

 長くなりましたけれども、私のほうからは以上、報告させていただきます。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 事務局のほうから、今後の予定等々について連絡事項がございましたらよろしくお願いいたします。

○総務課長

 次回の議題や開催日程につきましては、追って御連絡さしあげます。

○神野部会長

 それでは、桜さんざめく中、御参集いただきまして、最後まで熱心に御議論を頂戴したことに深く感謝を申し上げるとともに、私の不手際で時間がオーバーしてしまったことをおわび申し上げて、本日はこれにて散会したいと思います。

 どうもありがとうございました。

(了)