2018年9月14日
第4回社会保障審議会年金部会
年金局
○日時 平成30年9月14日(金)15:00~17:00
○場所 東京都千代田区平河町2-4-
都市センターホテル(3階 コスモスホールⅡ)
○出席者
神 野 直 彦(部会長)
植 田 和 男(部会長代理)
阿 部 正 浩(委員)
小 野 正 昭(委員)
権 丈 善 一(委員)
駒 村 康 平(委員)
高 木 朋 代(委員)
武 田 洋 子(委員)
永 井 幸 子(委員)
原 佳 奈 子(委員)
平 川 則 男(委員)
牧 原 晋(委員)
諸 星 裕 美(委員)
小林参考人(山本委員代理)
○議事
○神野部会長
それでは、定刻が過ぎておりますが、ただいまから第4回「年金部会」を開催したいと存じます。
皆様方には大変御多用中のところ、万障繰り合わせて御参集いただきましてありがとうございます。
本日の委員の皆様方の出欠状況でございますが、菊池委員、小室委員、出口委員、藤沢委員、森戸委員、山田委員、山本委員、米澤委員から御欠席との御連絡を頂戴しております。
御欠席の委員にかわりまして御出席をいただけるということで、山本委員の代理として本日、日本商工会議所から小林参考人に御出席をいただけるということですので、小林参考人の御出席につきまして、部会の皆様方の御承認を頂戴できればと思っております。いかがでございましょうか。よろしいですか。
(「異議なし」と声あり)
○神野部会長
ありがとうございました。そのようにさせていただきます。
本日の部会でございますが、御出席をいただいております委員が3分の1を超えてございますので、会議がまず成立しているということを御報告申し上げたいと思います。
さらに、前回開催いたしました部会以降、事務局に人事異動があったと伺っておりますので、その点につきまして御紹介を頂戴できればと思います。
それでは、総務課長、よろしくお願いいたします。
○総務課長
事務局から人事異動の御紹介をさせていただきます。
私はこのたび総務課長を拝命いたしました大西でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、私のほうから読み上げていきたいと思います。
大臣官房審議官の度山でございます。
○大臣官房審議官
前回改正の際には大変お世話になりまして、また戻ってまいりましたので、ぜひよろしくお願いいたします。
○総務課長
首席年金数理官の山本でございます。
資金運用課長の石川でございます。
企業年金・個人年金課長の吉田でございます。
大臣官房参事官の駒木でございます。
事業管理課長の巽でございます。
以上でございます。
○神野部会長
ありがとうございました。
議事に入ります前に、資料の確認をさせていただきたいと思いますので、これも事務局からお願いできますでしょうか。
○総務課長
かしこまりました。お手元に配付した資料の確認をお願いいたします。
本日は配付資料といたしまして、議事次第、名簿のほかに資料1「被用者保険の適用拡大について」。
資料2-1「社会保障審議会年金部会『年金財政における経済前提に関する専門委員会』について」。
資料2-2「専門委員会での経済前提の設定に関する主な意見の整理」ということでお配りさせていただいております。御不足ありましたらお知らせくださいませ。よろしゅうございましょうか。
○神野部会長
それでは、大変恐縮でございますけれども、カメラの方にはここにて御退室をお願いできればと思いますので、御協力を頂戴できればと思います。
(報道関係者退室)
○神野部会長
それでは、ただいまから議事に入らせていただきますが、お手元の資料の最初に議事次第が入っているかと思います。本日は、個別テーマについて共通認識と御議論を頂戴できればと思っておりますので、議事のところを見ていただければおわかりいただきますように、まず「被用者保険の適用拡大について」、2番目に「年金財政における経済前提に関する専門委員会について(中間報告)」「その他」という議題を準備させていただいております。
まず、最初の議事でございます「被用者保険の適用拡大について」につきまして、事務局から資料の御説明を頂戴できればと思いますので、よろしくお願いいたします。
○年金課長
年金課長でございます。
資料1に関しまして、私から御説明をしたいと思います。
本日の会より数回にわたりまして経済・社会の動向と、その中で変化していく就労の形、そして年金制度がこれらの変化をどのように受けとめて対応していくべきかについて御議論いただければと思っております。その柱の1つといたしまして、本日は被用者保険の適用拡大を御議論いただければと思います。
本日の資料の構成、1ページ目でございますけれども、本日は冒頭、被用者保険の適用拡大を含めまして、今後の年金制度を考えていく上で重要になると考えられる経済・社会の変化について御説明をした上で、適用拡大のこれまでの議論を御紹介したいと思います。その上で、適用拡大の意義や進めていく上での留意点などについて説明させていただければと思います。
2ページをお願いいたします。ことし6月に閣議決定されました「経済財政運営と改革の基本方針2018」においても認識が示されておりますとおり、左側でございますが、現下の日本経済は回復軌道にあり、雇用情勢も確実に改善されているところでございますけれども、生産年齢人口の急速な減少が加速化することは、今後の日本経済社会の大きな課題となっております。また、高齢者となってから人生を終えるまでの期間が伸長する人生100年時代を見据えまして、人々の多様な人生の設計を実現するためにも、性別や年齢にかかわらず、一人一人の人材の質を高める人づくり革命や、成長戦略の核となります生産性革命などにより、成長率のさらなる引き上げを目指す方向性が打ち出されております。
右のほうをごらんください。他方、個々人のライフスタイルの変化に影響を与えている要素といたしまして、平均寿命、健康寿命の延伸やワーク・ライフ・バランスの進展、子育て支援の充実等が挙げられます。これらを受けまして女性の就業率は向上し、30代前後で労働力が落ち込むM字カーブは改善傾向にあり、また、雇用形態別に見ますと非正規のみならず、フルタイムの正規も拡大しております。また、高齢者の就業率の向上やテレワークや兼業・副業など柔軟で多様な働き方への意識の高まり、老後期間の長期化による資産形成の意識の高まりといった変化が見られるところでございます。
これを踏まえまして中央でございますが、年金制度がこれらの変化をどのように受けとめて対応していくかという点ですけれども、働き方の柔軟化、多様化への対応、高齢者の働く意欲の高まりに対応した被保険者期間や受給開始年齢のあり方、私的年金のあり方、あるいは年金広報やリテラシーの充実・向上といった項目が挙げられます。こうした年金制度における対応も含めまして、本人の希望に応じた働き方での労働市場への積極的な参加と、それに見合った社会保障制度での対応を実現していくことが重要ではないかと私ども考えてございます。
これらを踏まえまして一番下でございますが、生産年齢の人口の急減の中でも労働力の確保と生産性の向上によりまして、経済・社会の活力を維持し、人生100年時代における長寿化、健康寿命の延伸を踏まえ、高齢期の就労と年金制度におる柔軟な対応を図ることにより、長期化する高齢期の経済基盤の確保を図ることを目指していってはどうかと考えております。
3ページ、これは2ページの今、お示ししました全体像をもとにいたしまして、経済・社会の課題や変化を踏まえた年金制度の対応の方向性のイメージを具体的に記載したものとなっております。左側でございますけれども、まず就労の変化に関する部分を改めてまとめております。人口動態の基調変化と働き手・働き方の変化の部分です。高齢者の急増から生産年齢人口の急減という人口構造の変化を受けまして、これまでは時間的な制約などによりまして労働市場への参加が難しかった人々の就労が急速に進み、また、これを可能とするためにフルタイム就労だけではない、多様で柔軟な働き方の受け皿づくりが必要となっているのではないかと思います。
老後期間の長期化とその経済基盤に関する部分をまとめたものが下のほうになります。長寿化により高齢者となってから人生を終えるまでの期間が伸長し、現役期に備えた貯蓄資産をより長く活用しなければならなくなる一方で、年金の給付水準はマクロ経済スライドによる調整で徐々に低下していくことになります。健康寿命の延伸や生産年齢人口の急減とそれに伴う人手不足の中で、より長い期間、働くことがマクロ経済での労働力の確保の面からも、長寿化する個々人の高齢期の経済基盤の充実の面からも重要となってくると思います。
これを踏まえまして右側でございますけれども、年金制度の対応の方向性のイメージを示してございます。まず年金制度の担い手としての被保険者範囲の拡大といたしまして、短時間労働者や高齢者が本人の希望に応じて意欲や能力を生かして就労していくという中で、年金制度の担い手になっていただくことにより、老後の所得保障を確保する仕組みにしていってはどうかと考えております。具体的な対応としては、本日の議題でございますけれども、短時間労働者の適用拡大が挙げられると思います。
次に、高齢期の就労拡大への対応といたしまして、健康寿命の延伸や雇用環境の整備により高齢期の就労が拡大しつつある中で、年金制度を就労インセンティブを阻害しない仕組みにしていくとともに、就労の長期化や老後に備えた資産形成など、個々人における人生の長期化への備えをより一層支援する仕組みにしていってはどうかと考えております。
具体的な対応方法といたしましては、年金受給開始年齢の柔軟化、在職老齢年金制度の見直し、私的年金の充実等が挙げられます。また、このような年金制度の対応の方向性は、全世代型の社会保障への転換、働き方改革、医療・介護サービスの効率的な提供といった、他の社会保障改革の対応の方向性にも沿ったものではなかろうかと、このように考えております。
それでは、適用拡大に関してでございます。5ページをごらんください。短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大の概要をまとめたものでございます。被用者保険の適用範囲につきましては、平成28年に501人以上の企業において週労働時間20時間以上、月収8.8万円以上などの要件を満たす短時間労働者に拡大されまして、昨年4月からは500人以下の企業においても労使の合意があれば適用拡大が可能となっております。また、法律の規定によりまして、来年9月末までにさらなる適用拡大について検討を行うことが求められております。
6ページ、これまでの適用拡大の実績のデータとなります。人数ベースでございます左のグラフをごらんいただきますと、2016年の制度施行後、増加を続けまして、直近では39万人となっております。また、事業所ベースでございます右のグラフをごらんいただきますと、義務的な適用拡大の範囲である501人以上企業分、青の部分でございますが、これにつきましては約3万事業所で安定しております。任意の適用拡大による500人以下企業、上の赤でございますけれども、こちらは昨年4月の制度施行後に徐々に増加しておりまして、直近では約3,000事業所となっております。
7ページ、適用拡大のこれまでの経過をまとめたものになっております。適用拡大につきましては、まず平成16年改正に向けて議論が行われましたけれども、最終的には検討規定が置かれることになりました。また、平成19年改正法には具体的な案が盛り込まれましたけれども、衆議院解散により廃案となっております。その後、平成24年改正と平成28年改正におきまして、それぞれ先ほど御説明いたしました501人以上企業を対象とした義務的な適用と、500人以下企業を対象とした任意の適用拡大が導入されているところでございます。
8ページ、9ページは、当部会で平成27年1月にまとめた議論の整理に適用拡大に関する内容がございましたので、そちらをまとめたものになっております。
まず適用拡大の方向性につきましては、その必要性については異論がございませんで、適用拡大が低所得、低年金者の年金額の引き上げ、また、基礎年金水準の確保にもプラスの効果があるとの整理がなされております。他方で、適用拡大を進めるに当たっては短時間労働者の比率の高い業種や中小企業の負担、医療保険財政に対する影響も考慮すべきとの意見もございました。また、一番最後の箱の部分でございますけれども、適用拡大とあわせて適用漏れ対策を徹底すべきとされております。この問題につきましては、その後の取り組みについて後ほど御説明させていただきたいと思います。
9ページ、第3号被保険者制度につきましては、部会の委員の中でもさまざまな御意見があったところでございますけれども、最終的に縮小していく方向性については共有されております。その上で、まずは適用拡大を進め、被用者性の高い方について厚生年金を適用しつつ、制度の縮小・見直しに向けたステップを踏んでいくことが必要との整理がなされております。
10ページ、現行の適用要件の考え方と各要件に対する年金部会における指摘をまとめたものでございます。
まず週の所定労働時間が20時間以上という時間要件につきましては、短時間労働者が被用者保険の適用対象にふさわしい被用者としての実態を備えているかどうかを判断する基準として、雇用保険法の適用基準の例も参考に設定されているものでございます。賃金が月額8.8万円以上という賃金要件につきましては、平成24年改正の際には当初の政府案では月額7.8万円以上とされていたところでございますけれども、いわゆる3党合意を踏まえて月額8.8万円以上に修正されたという経緯でございます。
この修正理由でございますけれども、月額7.8万円以上という要件では、定額の国民年金保険料よりも低い負担で基礎年金に加えて報酬比例部分の年金が受けられるような者が出てくるために、不公平ではないかという指摘がなされた結果でございます。賃金要件の検討に当たっては、このような立法経緯を踏まえた議論が必要になろうかと思っております。
11ページ、勤務時間が1年以上見込みという勤務時間要件と、学生を適用対象外としていることにつきましては、いずれも出入りの激しい短時間労働者を適用対象とした場合の事業主の事務負担を考慮して設定されたものとなっております。
12ページ、最後に501人以上となっている企業規模要件につきましては、中小企業への負担を考慮して激変緩和の観点から設定されたものとなっております。このため本要件につきましては、法律の本則に規定されたその他の要件とは異なりまして、改正法の附則に当分の間の措置として規定されているところでございます。この規模要件につきましては、企業間の競争条件をゆがめている側面もございますし、今、申し上げたような本要件の位置づけを踏まえて、そのあり方について御議論いただく必要があろうかと考えております。
13ページ、適用拡大に関する検討規定をまとめたものになっております。先ほどさらなる適用拡大の法律上の検討期限が来年9月末であると申し上げましたけれども、その規定が一番上の箱にございます平成24年年金改正法の附則の規定となっております。
14ページ、適用拡大についての最近の政府の方針を取りまとめたものです。働き方実行計画におきましては、就業調整をしなくても済む仕組みの構築の観点から、また、真ん中の高齢社会対策大綱におきましては、短時間労働者に対する年金などの保障を厚くする観点から、さらなる適用拡大を図る方針が打ち出されております。
また、最後の部分ですが、ことしの骨太の方針におきましては、勤労者が広く被用者保険でカバーされる勤労社会保険制度の実現を目指して検討を行う。その際、これまでの被用者保険の適用拡大及びそれが労働者の就業行動に与えた影響についての効果検証を行うとされてございます。
15ページ、これまでの年金部会におきます議論や最近の政府の方針を踏まえつつ、適用拡大を進めることの意義を私どものほうで整理させていただいたものになります。
まず、被用者でありながら国民年金加入となっている方との関係では、こうした方々を被用者による支え合いの仕組みである厚生年金保険の仕組みに包摂していくことで、被用者にふさわしい保障を確保するという意義があるのではないかと思っております。
2つ目でございますけれども、第3号被保険者や企業を含めた問題といたしまして、社会保険制度が働き方や雇用の選択をできるだけゆがめないようにしていくという視点も重要かと考えております。
3つ目ですけれども、適用拡大は結果として将来の基礎年金の水準を確保し、年金制度としての再分配機能を維持することにもつながるということも1つのポイントかと思っております。
最後でございますが、経済・社会の構造的な変化を受けて女性や高齢者の労働参加が進んでいくことが期待される中で、こうした方々の短時間就労を年金制度の体系に取り込んでいくことの意義も考えていく必要があるのではないかと考えております。
ここから各論に入ってまいりたいと思います。17ページ、まず被用者保険にふさわしい保障の実現という観点についてでございます。ここでは国民年金第1号被保険者の就業状況をお示ししております。グラフをごらんいただきますと、赤色で示している被用者的な働き方をしている方が、第1号被保険者の約4割を占めるに至っております。裏を返しますと、こうした方は雇用者でありながら、厚生年金に加入できていないということにもなります。
18ページ、被用者保険に適用となることによりまして、個人レベルの給付と負担の主な変化をまとめております。大きなメリットは、将来、基礎年金に加えて報酬比例の老齢厚生年金を受給できるということでございまして、これによりまして老後の生活保障を充実させることが可能となります。加えまして下の箱でございますけれども、保険料負担につきましては原則定額の国民年金とは異なりまして、本人の報酬に応じた保険料となり、かつ、保険料は労使折半となります。また、老齢給付だけではなく、障害・遺族給付も手厚くなるほか、病気やけが、出産により働けない場合の所得保障である健康保険の傷病手当金ですとか出産手当金を受け取ることも可能になり、より安心して働けるようになるメリットがあると考えております。
19ページ、短時間被保険者の適用拡大前の公的年金の加入状況等について、日本年金機構が持っているデータでサンプル調査した結果をお示ししております。左のグラフをごらんいただきますと、適用拡大によりまして厚生年金加入となった者のうち4割が第1号被保険者であったという結果となっております。また、これを展開しました右側のグラフですけれども、その約半数が保険料の免除または未納の状態であったことを示しておりますが、これは適用拡大が将来の低年金、無年金の問題の解決に一定の効果をもたらしたとも評価できるのではないかと考えております。
20ページ、こちらは労働政策研修・研究機構(JILPT)による適用拡大の影響に関する実態調査の結果から、適用拡大によって厚生年金適用となった者のうち、元第1号被保険者の特徴を御紹介したものとなっております。左上の円グラフをごらんいただきますと、属性といたしましては世帯主の妻、未婚者、離婚・死別の女性が多く含まれております。なお、このうち世帯主の妻ですけれども、夫が厚生年金の被保険者であれば、原則として第3号被保険者となりますので、ここにあるデータで出ていらっしゃる方は、夫が個人事業主や無職であるために女性といいますか、配偶者のほうは被用者ですけれども、適用要件を満たさない第1号として働いているという形になっていると思います。
また、右の図では世帯主の分布をお示ししておりますけれども、離婚・死別の女性や未婚者を中心に、低い年収帯に多く分布されていることがわかります。
22ページ、続きまして働き方や雇用の選択をゆがめない制度の構築という観点でございます。こちらの図にございますように、短時間労働者の社会保険制度上の適用区分は個人の働き方、すなわち労働時間と収入によって異なっております。具体的には第3号被保険者にとどまることのできる上限年収である被扶養認定基準、この紫のラインや厚生年金の適用基準、図で言うと赤のラインを超えるか否かで給付と負担の内容に大きな差が生じている。それがまた500人以下企業と501人以上企業のどちらで働いているかで変わってくるということを示した図となっております。
23ページ、この前のページで御説明した大きな2つの基準につきましては、しばしば混同されて同じように議論されるわけでございますけれども、その性質は大きく異なりますので、ここで御確認させていただければと思います。
左の図のほうが被扶養者認定の基準で130万円の基準でございますけれども、こちらはこの基準を超えますと扶養を外れることになりまして、自分自身で国民年金の定額保険料と国民健康保険料を負担することになります一方、それに伴う給付の充実というのは基本ございません。他方で右の図でございますけれども、被用者保険の適用基準を超える場合に負担することになります厚生年金保険料と健康保険料は、報酬に応じたものになっておりますし、かつ、労使折半で負担するものでありますので、このためこの基準を超えることにより生ずる本人の保険料負担は、左の場合よりかなり低い、大きく下回るような状況になっております。加えまして、この場合には給付面でも基礎年金に加えまして報酬比例の厚生年金が保障されるなどのメリットもあるということになりますので、大きく両者は異なるということになります。
24ページ、パート労働者の年収分布と就業調整の状況等をあわせて見たグラフをお示ししています。これによりますと就業調整の結果といたしまして年収100万円前後と120万円台に山ができているということが確認できます。
25ページ、こちらではパート労働者がどういった理由で就業調整しているのかをお示ししております。こちらをごらんいただきますと、自身の所得税負担や夫の配偶者控除といった税制上の理由と並んで、被扶養認定基準などの社会保険適用上の理由や企業の配偶者手当が理由として挙げられてございます。
26ページは、先ほどお示しした図に対して短時間労働者が特に多く分布するゾーンをプロットしてみたものになります。今後、適用拡大の御議論をいただくに当たりましては、被扶養認定基準や厚生年金の適用基準の手前のゾーンにこういった形で多くの短時間労働者が分布しているということも御留意いただきながら御議論いただくのかなと思っております。
27ページでは近年の短時間労働者の時給単価と労働時間をお示ししていますけれども、両者の間には強い負の相関関係が見てとれます。この原因といたしましては、従来より労働時間が短い人が新たに短時間労働市場に参入してきていることが考えられる一方で、先ほども御説明した就業調整が一定程度影響している可能性も考えられるところでございます。いずれにいたしましても、人手不足が深刻な課題になっていることも踏まえますと、就業調整が労働供給の制約要因になっている可能性については、十分に考慮していく必要があるだろうと思います。
28ページのデータは、そういった現状認識の中で適用拡大を受けて短時間労働者がどのような働き方をしたか、変化を迎えたかということをJILPTの実態調査の一部から取ってきたものでございます。こちらによりますと適用拡大によって働き方を変えたと回答した者のうち、所定労働時間を延長している者が短縮している者を上回る結果となっております。もちろん個々の企業や業界によって状況が異なることも考えられます。しかしながら、少なくともこういうマクロで見た場合には適用拡大に伴って、第3号被保険者が適用回避の方向で一斉に動いたというわけではなく、むしろこの機会に働く時間を延ばそうとした動きも少なからずあったと評価してもよいのではないかと思っております。
29ページ、適用拡大に伴いまして第3号被保険者の動きについて、もう少し細かく分析してみたものでございます。こちらもJILPTのデータでございます。労働時間を延長したり維持して厚生年金適用になった方には、年齢別に見ますと40代の方が多く、また、社会保険加入について魅力的だと捉えている傾向がございます。一方、第3号被保険者にとどまる選択をされた方には50代が多く、社会保険加入の魅力度について特段の意見を持っていない傾向がございました。一番右側でございますけれども、適用を回避した方と比べまして適用を受容した方には、世帯年収が少ない方が多く含まれる結果となっております。
30ページ、こちらは4月の年金部会でも御紹介した資料でございますけれども、施行直後とその1年後の短時間被保険者の標準報酬月額別の分布となっております。全体としましては、より報酬が高い方向にシフトする傾向が見られますが、この要因といたしましては、この間の賃金の上昇、標準報酬決定上の技術的理由ももちろんございますけれども、働く時間を延ばす動きも反映している可能性があるのではないかと考えてございます。
31ページ、本年から実施されております配偶者控除、配偶者特別控除の税制改正の見直しの概要でございます。こちらによりまして平成30年分の所得税から所得控除額38万円の対象となる配偶者の給与収入の上限が103万円から150万円に引き上がっております。今後の適用拡大の議論におきましては、こうした税制改正や、それが短時間労働者の働き方に与える影響についても留意してまいりたいと思っております。
32ページ、こちらは企業の配偶者手当の動向についてでございますけれども、公務員については既に見直されておりますが、民間におきましても働き方改革の中で一部企業においては見直しに向けた動きがあるものと承知しております。他方で右端を見ていただきますと、まだ見直す予定がないというところも少なからずあるという状況が見てとれます。
続きまして34ページをお願いいたします。社会保障の機能強化という観点でございますが、ここでは適用拡大がマクロ経済スライドによる調整終了後の年金給付水準にどのような影響を与えるかについて、イメージの形でお示ししてございます。適用拡大に伴いまして、その対象者には報酬比例の年金額が保障されることになりまして、それをこの図では小さな黄色い三角形で示しておりまして、必ずしも高さはそろっているわけではございませんので、イメージ図として見ていただきたいと思いますけれども、これに加えまして現行の仕組みのもとでは基礎年金の水準が底上げされるという効果がございまして、これによって年金制度としての再分配機能を維持することにもつながるというのを図式的に示しております。基礎年金の水準の増加は国庫負担の増加も伴いますので、この点には私ども留意が必要であるかなと考えております。
続きまして35ページでございます。こちらは平成26年の財政検証オプション試算の結果を示したものです。この試算でございますように220万人ベースと1200万人ベースの2つのケース、下の図でございますけれども、適用拡大にはマクロ経済スライドによる基礎年金水準の調整期間を短縮する効果があることが確認されておりまして、これにより基礎年金水準が上がるというメカニズムになっております。
36ページは、適用拡大を通じて基礎年金水準が変化する仕組み、積立金を通じてということでございますけれども、これは以前、部会でも御報告した内容の再確認でございます。
38ページ、人生100年時代、一億総活躍社会、働き方改革への対応いう観点でございます。まず雇用の大きな状況を確認してまいりますと、生産年齢人口が減少を続けている中でも雇用者数が左にございますように増加傾向でございます。その背景といたしまして、最近の好調な経済情勢を反映して、右にありますように正規職員の増加の寄与度も大きいわけでございますけれども、より長いスパンで見ますと上の赤い棒グラフである短時間労働であるパート・アルバイトの増加が効いているということも見てとれると思います。
39ページ、パート・アルバイト数の変化を性別・年齢階級別に分解したものでございます。これを見ますとパート・アルバイトの増加の多くは、労働時間などにしばしば制約を持っていると考えられます女性や高齢者の層によるものだということが見てとれます。これは40ページのほうで違う形で確認してみたいと思いますけれども、性別・年齢階級別の就業率の変化と今後の見通しでございますが、こちらを見ましても女性と高齢者といった時間などに制約を持つ層の就業参加が伸展しておりまして、将来推計においてもこうした層の労働参加がさらに一層伸展することが見込まれてございます。
41ページ、これと関連いたしますけれども、特に高齢者について見てみますと、近年、高齢者就労が伸展する中でも、その形態としては左にございますように短時間就労が多くございますし、右のグラフですが、本人の希望としても短時間就労を希望する方が多いということが確認できます。
42ページは短時間被保険者の性別・年齢階級別、適用された方の図でございますけれども、こちらを見ても女性の中高年の方と高齢者が非常に多いということが見られます。これらを言いかえますと、適用拡大は労働参加が今、進んでいます、女性の短時間就労層と高齢者の短時間就労層でございますが、これらを厚生年金の支え手に加えていくという効果を持っていると評価できるのではないかと思います。
43ページ、ここでは女性や高齢者の短時間就労者を厚生年金の対象とすることが、個々の家計においても今後より重要になっていくことを御説明するためのものでございます。生年別に65歳時点の所得代替率と平均余命を示しております。今後65歳の平均余命はグラフにございますように延びてまいりまして、より長い老後に備える必要が出てくる一方で、年金の給付水準はマクロ経済スライドによって調整されていくことが見込まれております。
この図におけるポイントでございますが、ここでお示ししている所得代替率というものは、夫婦のうち夫のみが60歳まで厚生年金に加入した場合のものでありまして、60歳以後の就労は考慮されていないということでございます。したがいまして、たとえ短時間でも、60歳以降も働いている場合や奥様のほうが働いて厚生年金に加入している場合には、これに加えて厚生年金が厚くなってまいりますので、より多くの老後の保障を確保できるようになるのではないかと私ども考えてございます。
45ページ、さらなる適用拡大を議論する上での留意点ということでございます。業種別の短時間労働者の雇用状況をお示ししております。左のグラフをごらんいただきますと、短時間労働者は卸売業、小売業、宿泊業、飲食サービス業、医療、福祉といった一部の業種に偏在しておりまして、また、右のグラフを見ますと、こういった業種は従業員に占めます短時間労働者の比率も高いということがわかります。適用拡大の議論を進めるに当たりましては、適用拡大がこのような特定の業種の企業に対して大きなインパクトを与えるということも念頭に置く必要があるかと考えております。
46ページも前のページと同じ趣旨を別の角度で見たものですけれども、これまで適用拡大いたしました実績値といたしまして、短時間被保険者の業種別分布を見た場合にも、やはり卸売小売業などに集中する結果となっております。
47ページをごらんください。この短時間労働者を取り巻く雇用の環境についてでございますけれども、好調な経済環境を反映いたしまして、近年はパートタイムの有効求人倍率は年々上昇しておりまして、長期的に見ても非常に高い水準にございます。また、企業における雇用の過不足を示す指標であります雇用人員判断DIを見ますと、全体として企業における人手不足感が高まる中で、特に短時間労働者を多く雇用する企業におきまして、その傾向が顕著となっているところでございます。
48ページ、賃金の動向でございます。最低賃金につきまして政府は年率3%程度を目途として引き上げていくということで、全国加重平均が1,000円となることを目指す方針を掲げておりまして、こうした中、近年、毎年3%前後の引き上げが行われているところでございます。
49ページ、実勢賃金を見ましても労働市場における需給の逼迫や最低賃金引上げの影響を受けまして上昇ペースが上がってきております。このことは労働者側から見ますと処遇改善となろうかと思いますけれども、企業サイドに立ってみますと、人件費増の圧力が強まっているということでもございます。
50ページ、都道府県別に賃金の状況を見ますと、大都市圏と地方では賃金水準に差があることが確認できます。こうした状況のもとで同じ時間就労した場合でありましても、就労する地域の賃金水準次第によりまして、被用者保険が適用されたりされなかったりという状況が生じておりまして、賃金要件について考える上では、こういった同じ労働時間でありながら賃金要件によって変わってくるということをどう考えるかというのも、1つの論点になるのではないかと考えております。
51ページは今までと違った話になってまいりますけれども、ここでは2以上事業所で被用者保険の適用要件を満たす方について、厚生年金の適用事務がどうなっているか御紹介しております。1つの事業所のみで適用要件を満たす場合には、その事業所と年金機構のやりとりで適用事務が完結しておりますが、2つ以上の事業所それぞれ判断いたしまして、どちらでも基準を満たしまして適用となります場合には、各事業所からの報酬を合算して対象者の標準報酬月額をまず決め、それにより決定される保険料を案分して各事業所が納付すべき保険料を決めているという形になっております。
従来の厚生年金の適用基準ですと、こうした手続が必要になるのは複数の企業で役員を兼務しているような方、比較的時間数が短い方に限られておりましたけれども、今後、適用拡大が進みますと、20時間以上を2つ以上掛け持ちするようなケースがございますと、こういった形の適用もふえていくのではないかと考えております。
52ページと53ページ、2ページにわたりまして企業向けの助成金制度としてのキャリアアップ助成金の概要と、その利用状況についてまとめさせていただいておりますので、こちらは御参考として適宜御参照いただければと思います。
55ページ、現在の被用者保険の適用事業所の範囲を模式図的に示したものでございます。法人につきましては、業種や雇用している従業員数にかかわらず強制適用対象となっております。他方で右の欄にあります個人事業主につきましては、常時、5人以上か5人未満かでまず分かれまして、常時5人以上使用している場合は法定されています16の業種、Bの欄でございますけれども、こちらの場合は適用事業所となります。他方で、それ以外のいわゆる非適用業種、16業種以外ですと、具体的には第一次産業ですとか宿泊、飲食業、税理士、弁理士といった法務業務関係などにつきましては、強制適用対象外となっております。また、常時使用している労働者が5人未満の場合は強制適用対象外となっております。こういった方々、強制適用対象外の事業所につきましては任意包括適用という手挙げ制度によりまして、労使の合意により任意に適用事業所となることができる制度となっております。
56ページが被用者保険の強制適用事業所の変遷を今回まとめてみたものです。業種につきまして当初、いわゆるブルーワーカーと言われる業種が中心となっていたものが徐々に拡大されてまいりましたが、昭和28年の改正を最後に適用業種の範囲自体は変更されてきておりません。他方、昭和60年改正において法人については全事業所を適用対象としたために、いわゆる非適用業種でも法人形態の場合には強制適用となる状況になるのは、先ほど御説明したとおりでございます。
57ページでは、任意包括適用制度を利用して入っていらっしゃる事業所を業種別に適用事業所数の形でお示ししておりますので、こちらは御参照いただければと思います。
最後でございます。59ページ、60ページは最近、注目されております雇用類似の働き方や副業・兼業について、働き方改革における位置づけと労働政策審議会などにおけます議論の状況を御紹介申し上げたいと思います。
まず働き方改革実行計画におきましては、雇用類似の働き方について社会保険について明示的な言及はございませんでしたけれども、法的保護の必要性を中長期的課題として議論することとされておりますので、この範囲の中で包含されると考えられます。一方で副業・兼業につきましては、雇用保険とあわせまして社会保険についても公平な制度のあり方について検討を進めるというふうに明示的になっております。
60ページ、その後、厚生労働省が設置しました検討会における2つの議論を踏まえまして、先般、労働政策審議会の労働政策基本部会において、ここに参考抜粋させていただいておりますけれども、報告書が取りまとめられております。この報告書を踏まえまして、今後引き続き労政審等で検討を進めていくことを求める内容となっておりますので、私どもとしても労働政策のほうの議論をしっかり推移を注視して、今後の年金制度のほうも考えてまいりたいと考えております。
済みません、長くなりましたが、私のほうから以上でございます。
○事業管理課長
引き続きまして、事業管理課長の巽でございます。
62ページ、厚生年金保険の適用促進に係る取り組みについてでございます。先ほどの説明にもございましたように、当部会におきましては平成27年度に短時間労働者の適用拡大とあわせまして、適用漏れ対策のさらなる徹底を図るべきということで整理されたところでございます。厚生年金の適用促進につきましては、従来から重要な課題として優先的に取り組んでおりまして、未適用事業所への取り組み、それと適用事業所における未適用従業員への取り組みを並行して実施しているところでございます。
まず資料の上段にございます未適用事業者に対する適用促進につきましては、平成14年度から雇用保険適用事業所情報、24年度から法人登記簿情報の活用をしているところでございまして、特に平成27年度からは国税庁の協力を得まして法人事業所情報の提供を受け、厚生年金の適用の可能性のある事業所を把握し、加入指導をしているところでございます。国税庁からの情報の活用によりまして、アンダーラインを引いてありますが、平成27年度以降、加入指導により適用した事業所数が年間約10万人と大幅に増加しているところでございます。また、平成29年度以降は加入すべき被保険者数に応じまして加入指導による適用の目標期限を定めまして、契約的に取り組んでいるところでございます。
続きまして、資料下段の適用事業所に対する事業所調査につきましては、被保険者の資格や標準報酬の詳細な確認等を行う総合調査を強化することによりまして、未適用事業所の適用を進めているところでございます。
以上でございます。
○神野部会長
ありがとうございました。
適用拡大につきまして、これまでの議論を含めて私どもが共有しておくべき事柄につきまして、適切に御説明を頂戴したところでございます。
それでは、ただいま御説明いただきました事柄を中心に御議論、御質問を頂戴したいと思いますが、平川委員が16時に御退室ということですので。
○平川委員
被用者保険の適用拡大について詳細に説明をいただきまして、ありがとうございました。
最初に経済・社会の変化と年金制度の対応のところで、この方向性は本当にそうだなと思います。私的年金の役割についても記載がされておりまして、これからは私的年金の役割も重要であると考えているところであります。一方、私的年金の実態を見ますと中小企業においては退職給付がなかったり、企業年金を持っているところも少なくなってしまっているということがありますので、私的年金のあり方についてはまた別途議論をし、重要性はわかるのですけれども、基本的な公的年金制度における給付水準の維持や改善というのが重要ではないかというのを最初に言っておきたいと思います。
その上で8ページ以降に適用拡大に関する年金部会の議論の整理というものがありまして、この方向に応じてさらに引き続き議論を進めていくということについては、いいのではないかと思っているところであります。
今後の課題ですが、これまでの年金部会における主な意見というのが10枚目以降に整理されていると思います。適用基準が書いてありまして、10ページ目には労働時間でありますし、それ以降、年収要件とかありますけれども、いずれも週20時間以上の労働、本来は働けばそれに伴って社会保険の保険料の適用になるというのが大原則であるのですが、当面はこの労働時間や賃金、年収要件をさらに引き下げて、さらに該当者を多くしていくという考え方に基づいて進めていくことが重要ではないかと思っています。
11枚目のスライドでありますが、新たに適用拡大となった被保険者は、1年以上という勤務期間の要件があったと思いますが、これについては基本的には2カ月以上の雇用期間を要件にすべきです。現在も労働時間が通常の労働時間の4分の3以上の者については、2カ月以上の雇用期間により適用されているということもありますので、それをそろえていくべきだと思います。
④の学生の問題でありますけれども、これは少し悩ましい問題もいろいろあるかと思いますが、人生100年時代構想会議の中で人づくり革命とか、リカレント教育というものが一方で強調されて、そのリカレント教育の大きな役割の中に大学も位置づけられる中、リカレント教育の中に組み込まれている場合は、学生だからといって一律に適用除外にする、対象外にするという考え方については修正をしていく必要があるのではないかと思っています。
12ページの企業規模要件でありますけれども、これはあくまでも暫定的なものであるということでありますので、これも当然引き下げていくことが重要ではないかと思っているところであります。
いずれにしましても、適用拡大によって将来の被保険者にとってみれば年金の確保と年金財政全体についてもプラスに働きますので、ぜひとも前向きに検討していくべきだと思っています。
以上です。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
それでは、牧原委員、どうぞ。
○牧原委員
経済・社会の変化と年金制度の対応ということで2ページ、3ページにわたってまとめてあります。課題の認識としてはそのとおりだと考えておりますけれども、対応の方向性について1点コメントをさせていただきたいと思っております。
高齢期の就労拡大への対応の関係で、高齢期の就労インセンティブを阻害しないという視点は重要だと思います。ただ、在職老齢年金の見直しについて言えば、年金制度として真に必要な人への給付の重点化を図る観点や年金財政への影響についても考慮することが大事です。制度の基本的な枠組みは維持すべきだと現時点では考えておりますので、慎重な検討が必要だというテーマであると考えております。
その上で適用拡大についてでございますけれども、働き方や家族のあり方が大きく変化をして、働きたい人が就労調整を行うことを意識しないで働くという環境を整えていくことについては必要なことだと考えております。適用拡大についてさらに検討を進めることについては重要だと考えます。ただ、短時間労働者の就労調整や雇用の動向、影響を受ける企業の収益のインパクト、そういうものを適切に把握し、検証していくことが必要であると考えています。
また、この資料の中にもございましたけれども、年金だけではなくて医療保険制度に対する影響についても十分考慮し、精査をしていかなくてはいけないと考えております。
このような検証を通じて影響を確認することが前提になりますが、適用拡大につきましては、まずは500人以下の企業規模要件を撤廃するということについては考えられる選択肢だと考えております。
資料の55ページ以降でも整理いただいておりますけれども、フルタイム労働者であるにもかかわらず、被用者保険の適用が任意になっているような状況の一部の業種もございます。あるいは5人未満の従業員が働いている個人事業所についても、同様に適用を検討していくことが必要なテーマだと考えております。
以上です。
○神野部会長
ありがとうございました。
どうぞ。
○小林参考人
2点お願いしたいと思います。
まず1つ目は、今後の適用拡大のあり方を検討する上で、これまでの適用拡大の検証が極めて大事かと思います。本日は、さまざまな資料、詳細な資料を御用意いただきましたけれども、これに加えまして今から申し上げる数字も明らかにしていただきたいと思います。
まず、今回の適用拡大により、1号保険者から2号に移行した人数、3号保険者から2号に移行した人数、あるいは無年金の方が新たに2号となった人数をそれぞれ明らかにしていただきたいと思います。
加えて、今回の適用拡大により、新たに発生した事業主負担の総額、年金財政や医療保険財政への影響額、あるいは各保険者への影響額、こういうものを概算で結構でございますので、明らかにした上で議論を進めていただきたいと思います。
今後、適用拡大を検討する際、幾つかのケースを設定して検討することもあろうかと思います。そういう際にも今、申し上げたように、特に負担の部分を試算で結構でございますので、お示しいただいた上で議論をお願いしたいと思います。
そして2つ目でございますけれども、現在、中小企業は深刻な人材不足に見舞われております。人件費が上がっている中で社会保険料がさらに上がることは厳しいという声が出ている状況でございます。適用拡大を検討する際は、このような中小企業の現状を十分に勘案していただきたいと思います。
さらに、短時間労働者を多数雇用している卸売、小売業等の特定の業種には、特に大きな影響が出ることが予想されます。関係者からヒアリングを行うなど丁寧な議論を進めていただきたいと思います。これが2つ目のお願いでございます。
いずれにしましても、適用拡大につきましてさまざまなメリットがあることにつきましては、本日、御説明をいただきましたけれども、一方で負担をこうむる事業主等がいることを忘れずに議論を進めていただきたいと思います。
以上でございます。
○神野部会長
ありがとうございます。
資料は準備可能であれば、議事の運営の中で適切な時期に出したいと思いますが、ヒアリング等々については私のほうでも事務局と相談しながら運営を考えて、可能であればそのような方向も考えていきたいと思っております。
○年金課長
今の御指摘や御意見、また、部会長に今後の方向性をお出しいただきましたけれども、適用拡大の今後の検討についてでございますが、御指摘のように医療保険とあわせて検討を行わなければいけないということがございまして、そのようなことが可能な形で、かつ、今、御指摘、御要望いただきました業界団体といいますか、インパクトを受ける方々からもヒアリングを丁寧に行ってということになりますと、これまでの適用拡大の検討でどういう体制でやってきたかという過去の例をよく踏まえつつ、年金部会ですと医療もというわけにもまいりませんので、いずれ年金部会で御議論いただくのは当然の前提といたしまして、少し丁寧にじっくりデータを出して検証していくという、時間のかかる作業をするという意味では、別途の検討の場を設けるということも検討の対象にして部会長と御相談させていただければと存じます。
○神野部会長
運営の中で、そのような方向を含めて考慮させていただきたいと思っております。
諸星委員、どうぞ。
○諸星委員
本日は大変丁寧なまとめをしていただいて、まず感謝したいと思います。
改めてこの資料を拝見させていただいたのですが、以前から年金部会では事業主が就業調整をしているのではないかという声をよく聞くことがありましたが、P24、25のデータが示すように、働く側の就業調整も強いということを改めて感じましたし、現場でもそれを感じております。
それと税制についての資料をいただいているのですけれども、直接年金とは関係ないのですが、ことし配偶者特別控除が103万以下から150万以下に変わったということで、31ページにございます。ただ、正直なところ、私が色々な現場で働く女性の方々のヒアリングをすると、150万に変わったことをほとんど知らない。103万か130万、どちらかこの2つの選択しかないということで、この2つの壁は今後もほぼ変わらないのではないかという思いは感じております。
先ほど今後の働き方が変われば影響があるとおっしゃっていましたが、この2つ年収についてはなかなか外せないのではないかということは思います。ただ、一方で18ページにまとめていただいたように日本の年金制度や医療の保障は非常にすばらしいのです。現在、働く上でも大変大切であるという事実について、実は女性の働き方を支援する中で伝えると、この正しい知識を知らないという方が非常に多いのです。これを正しく知ることによって就業調整をしている方がもっとより長く、多く、そして年金を負担できるような働き方をするということを、この適用拡大を進める上では事業主だけではなく、働く側に伝えることも必要ではないかと思っております。
年金制度の公平性と持続性の観点から、適用拡大を進めることについては基本、私は賛成なのですが、先ほどもお話がありましたように、これからの適用拡大は保険料の負担が非常に大きいと感じる特に中小企業が中心になります。そうなれば私が以前から伝えていますように滞納事業所、つまり保険料納付責任者は事業主ですから、それが増えてくることが想定されます。滞納したくてするわけではない納付義務者である中小事業主の増加が非常に懸念されますので、先ほどの委員のお話もありましたように、中小企業では本当に今の相談といえば、人がいない、定着しないという相談が圧倒的に多くなります。その場合、採用にかかるコストや毎年引き上げられている最低賃金への対応など、さまざまな負担が急激に来ております。そのため、現場では滞納している多くの事業所が、分割払いをしながら保険料を納めているのが現実です。今後適用拡大の議論を進めるうえでは、滞納事業所数、その事業所規模、分割払いの場合、実際に回収できない保険料額とか、分割納付で実際に納めている事業者数など、参考になるデータを私はどうしても欲しいなということを考えております。
最後に、前回の部会で、厚生年金の収納率に関して99%という回答があったような気がするのですが、実際の現場で私が見る限りは、それはあり得ないだろうと思っています。まるで数字のマジックという印象を実は持っています。というのは現場の年金事務所の徴収部門では収納率を上げるために滞納事業主からの厳しい声を聞きながら地道に丁寧な説明をして、時には多分つらい思いをしているとも思えます。そうやっていかに収納率を上げるために日々努力をされているかということを知っているので、急激な適用拡大を進めた場合には、現場の混乱をさらに引き起こすということも側面としてあるということを、ぜひ検討の中に入れていただきたいと思います。
もう一つ、先ほど2事業所の話の報告があったと思うのですが、現場で501人以上の適用が進んだところでは、確かに2事業所の申請がふえています。それは実感しています。それも今後、事務手続上はふえてくるのだろうかなと思います。
以上、ありがとうございました。
○神野部会長
収納率等々、何かコメントがあれば、どうぞ。
○事業管理課長
まず99%の話でございます。これは厚年の保険料の収納率で額の割合でございます。一方、滞納事業者数につきましては、平成29年度の場合は13万5,000事業所でございまして、適用事業所全体の約6%程度と事業所単位ではやはり少し滞納の事業所数という割合が多くなるという状況でございます。滞納事業所の割合につきましては、適用拡大前の27年度は6.9%であったところでございますけれども、適用拡大後は29年度の場合ですが、6.1%ということで、徐々には滞納事業所の割合は減ってきているという状況でございます。
○神野部会長
それでは、いかがでございますか。どうぞ。
○高木委員
短時間労働者の適用拡大の件ですが、現状では、501人以上の企業で働く場合が対象となり、500人以下に関しては労使の合意ということになっております。これは企業側の論理からすると、当然、保険料負担ということがありますので、それが余り圧力になると企業側が厳しくなるということの御判断で、適用拡大に関してその企業の範囲を急速に拡大することが厳しいのではないかというお話だと思います。しかしながら、労働者側の観点に立って考えますと、私はむしろ実は反対の意見を持っていまして、例えば大企業と中小企業では、正社員の場合、給与の格差が決して小さくないということがございます。私は厚生労働省の財形貯蓄の委員会にも入っているのですけれども、そこで財形貯蓄に入っていただいて、将来の経済生活に備えていただくということで、特に加入を呼びかけているのは、若者と中小企業の従業員の方たちなのです。なぜかというと、給与水準が低いと将来が不安定なものになりやすく、場合によっては、年金を受け取る前に社会保障を受ける側に転落していったり、あるいは、年金を受給する年齢になっても生活が困窮するような状況に接近しやすいということがあるからです。
今、正社員のお話なのですけれども、実は、特定の中小企業で固定的に短時間で働いているパートや契約社員といった人たちも、もしかしたら大企業よりも時間給とかそういったものが低い可能性もありますし、安定的に働くということを考えると、中小企業で働いている従業員の人たちのほうが雇用の不安定性もあるかもしれないのです。賃金にも雇用にも不安定性があるということになると、将来不安というのは、もしかしたら中小企業の正社員の人たちと同じように、中小企業の短時間労働者も非常に強いかもしれないと思うわけです。そう考えると中小企業で働いている短時間労働者の人たちの将来的な経済生活の不安を解消する、あるいは軽減することを考えると、実は本来的には中小企業にこそ適用を拡大していかなければいけない可能性もあると考えるわけです。当然、事業所側の論理で言うと保険料の負担が非常に圧力になるわけですが、労働者側の観点に立って考えますと、そういった実態があるかもしれないということを考慮に入れて検討したほうがよいと考えます。
もう一つ、高年齢層の件なのですが、これはデータ的なことでお伺いしたいのですけれども、41ページで高年齢層の人たちも御自身がパート就労を望んでいることを示すデータが記されているのですが、これは60歳以降ということで非常にざっくりとしているわけなのですけれども、例えば公務員の方たち、そこには国家公務員も地方公務員の方たちも含まれるのですが、御自身も短時間を望むのかどうかわかりませんが、実態として60歳以降は短時間勤務が多いわけです。しかし、私が知る限りでは、民間では60歳前半層というのは、むしろ企業側も生産性を考えるとフルタイムを望んでいるし、御本人もフルタイムを望む比率のほうが高いというふうに私は実態として見ています。ですので60歳以降というのは刻みが大き過ぎるので、もう少し年齢別でその傾向を刻んで見ていく必要があるかもしれないと考えています。
以上です。
○神野部会長
事務局から何かコメントございますか。
○年金課長
今、御指摘いただきました41ページのものは、内閣府の調査ですので原典をもう少し当たってみて、細かく分析できないかどうかはしっかりやってみたいと思います。
それから、企業側にとって大変だということは、負担があるというのは前提にしつつ、今回お示ししたデータでも新規につくった資料になるわけですけれども、19ページ、20ページ、特に19ページが新規なのですが、この辺をお出しさせていただいた意図から申し上げますと、今、高木委員から御指摘いただいたような内容も短時間労働者といいましてもまず高齢者か高齢者以外かでも大分、議論が異なってくると思いますし、高齢者でない現役層の中でも置かれている環境によりまして第1号であったり、第3号であったり、高所得層であったり、低所得層であったりとかいろいろございます。そういったこともあるので少し丁寧に御議論いただけるようにするために、19ページの分析図を出したわけですが、ここで見ると国民年金の全額免除の方は国民年金法上において、所得が低いので、保険料を払わなくても国庫負担分だけはつけますというルールのもとで年金制度に加入している方なのですけれども、そういう方は、適用拡大で、可処分所得がちょっと減って大変だと思うのですが、厚生年金の保険料をお支払いいただいて厚生年金も手厚く入るような立場の方に変わっていただけるということなので、恐らく高木委員がおっしゃっているような側面を少し裏づけるようなデータになっているのではないかという気がいたします。
もちろん国民年金制度のもとで免除は権利として行使していただきたいと私どもは思っているのですが、他方で将来の備えという観点から言うと、少し心もとないのも事実でございます。先ほど来、中小企業はなかなか企業年金がなかったりというお話もございましたけれども、そういう観点まで含めて考えますと、適用拡大というのは我々が今まで思っていた以上に高木委員もおっしゃっているような層の方々に対して、保険料負担という形で少し御苦労もかけますが、将来を考えていただければ相当年金を手厚くできるような方向に動かせる力もあるのではないかと私ども分析しながらこういった資料を出させていただきました。
○神野部会長
植田部会長代理、どうぞ。
○植田部会長代理
適用拡大をすると年金財政が少し楽になるという点の意味ですが、非常にざっくり考えてみますと、今まで年金制度に入っていなかった人が入ってくるので、人口がふえたような効果があって、人口成長率で決まるような賦課方式的な年金の財政あるいは収益率が増加するという効果があるというのはわかるのですが、本当に人口がふえるわけではないので、そういう効果は適用拡大が続いている間だけ発生する一時的な効果のように考えるのは正しいように思うのですけれども、マクロ経済スライドが早目に終わって、基礎年金の所得代替率が高いところでマクロ経済スライドが終わってそのまま行けるというようなところを見ると、長期的によい効果が続くようにも見えなくもないので、その辺をどう理解したらいいのか御説明いただけるとと思ったのですが。
○数理課長
それでは、本日の資料の35ページあるいは36ページあたりで御説明したいと思います。
35ページに平成26年の財政検証とあわせて行いました適用拡大を仮定したオプション試算IIの結果がございます。オプション試算IIの内容で大別すると2つに分かれておりますが、35ページの真ん中あたりに適用拡大の①が220万人ベース。これは現在の適用事業所のパート労働者の方に対して適用するというケースでございますけれども、あと一つ、適用拡大の②、1200万ベースと書いておりますが、これは現在の適用事業所となっていない5人未満の小さい個人事業所みたいなところに働かれている被用者を拾いに行くというケースで、かなり大胆な適用拡大になっておりますが、その結果、下に書いてありますとおり、35ページの下のグラフですが、ここは所得代替率の内訳として報酬比例部分と基礎年金附帯分と分けてありますけれども、すごくわかりやすいほうでいくという意味ですと、適用拡大②の1200万人ベースの緑色の結果で見ていただいたほうがわかりやすいと思うのですが、現行制度が青い矢印でありますけれども、適用拡大の結果、緑色の矢印になるということで、一目でわかりますように基礎年金のマクロ経済スライド調整期間が短くなって水準が上がるということになりますので、植田部会長代理がおっしゃったとおり基礎年金の水準が上がって、これが永続することによって持続的なプラスの効果があるということです。
その構造なのですが、36ページに資料がありますけれども、適用拡大によって何で基礎年金水準が上がるかということなのですが、従来、1号被保険者グループにいらっしゃった短時間労働者の被用者の方が2号被保険者となることで、国民年金財政が改善するということなります。具体的には1号被保険者一人当たりの積立金が増加するということになりまして、下の絵でも緑色のグラフが真ん中あたりに書かれていますが、現行制度が緑色の実線で、オプションIIの①、220万人ベースのほうですけれども、国民年金の積み立て度合いの見通しが適用拡大によって上昇することになりまして、このことを通じて下に結果が書いてありますが、基礎年金の内訳水準のほうが上がるということになっております。
以上です。
○神野部会長
どうぞ。
○小野委員
一応この部会、新任ですので、雑駁ですが、私の考えをコメントさせていただきたいと思います。
まず被用者保険の適用拡大につきましては、事務対応力を考慮しつつ、可能な限り拡大していただきたいと考えております。これは隣にいらっしゃいます権丈委員の請け売りですけれども、一例として働く第3号被保険者を考えてみると、自身の収入が被用者保険の賦課対象にならないということがありますので、さまざまなゆがみの原因になっているのではないかということを考えております。共働き世帯が感じる不公平感というのもさることながら、国年や国保の保険料の負担義務がある単身者とかシングルマザー等の就労条件に影響を与えていることも考えられます。また、こういった方々が就業する企業のコンペティターとなる業種の自営業者との競争条件が不公正になる懸念があります。自営業者の皆さんは1号被保険者ということですので、そういったことになると思います。
このような、社会的な公正という観点からいきますと、社会保険が企業や就労者本人に裁定機会を提供することは、決して好ましいことではないと思っております。この点、特に単身者やシングルマザー等の所得分布などは、きょうの資料の20ページの右側を見ますとつくづく感じてしまうわけでございます。これが1点です。
2点目ですけれども、後半で御指摘いただきました多様な働き方に関してです。ちょっと前にイギリスでUberというのは旅客運送業者なのか、サービス仲介業者なのかという議論があったと承知してございます。この結果によりましてUberのドライバーというのは、雇用法制の保護下にあるかどうかということで判断が分かれることになると思います。アメリカでもいわゆるギグワーカーに対する社会保障の適用について問題が指摘されているようです。日本においても先ほど御紹介いただいた検討会の中では、例えば労災保険については保険給付額が労災が発生した就業先の賃金分のみを算定基礎としているといった点が問題点とされています。いわゆる雇用的自営と言われる人たちを含めまして、まずは労働法制における整理が必要かとは思いますけれども、年金保険につきましても、せっかく適用拡大しても、この分野に流れていくということがあると目的が達成できないと思いますので、十分に御留意いただきたいと考えています。
以上です。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
駒村委員、お願いします。
○駒村委員
きょうの適用拡大の資料は非常に新しい重要な資料がたくさん入っていて、非常に参考になると思いました。
きょうの議論をお聞きして、諸外国の年金制度やこれまでの年金にかかわる議論を見ると、社会保険全般の議論を考えると、やはり社会保険料というのは基本的には支払い能力、応能負担が基本であろうと思います。それは分配面でも、就業構造等に与える影響もニュートラルになっていくのではないかと思います。
その上で、その時代、その時代の行政能力、徴収能力、家族のあり方や産業構造によって報酬比例から外れた人たちが出てきている。それは所得や時間、企業規模、事業種あるいは配偶関係等で現実に対応するようなさまざまな例えば国民年金の1号とか3号といった制度が出てきたというふうに思います。
ただ、時代、時代で変わっていくものに対して、この所得比例の保険料の適用除外に相当するような要件を既得権と考えてしまってはいけないのではないかと思います。今回、資料を拝見すると、明らかに適用拡大は未納を減少させて、本人の年金水準を引き上げて、社会保障財政を安定させることによって年金水準を引き上げて、そして働き方にもニュートラルな影響を与えることが確認されているわけです。ですから政策方針としては2号をふやして1号、3号を減少させるというのが正しいと思うのです。
ただ、今まで適用されなかった人たちが既得権みたいになってしまうと、これは非常に問題だということになりますので、もしこれを見直すのに反対ということがあるならば、なぜそれが積極的な意味があるのかが問われることになる。単に今まで守られていて、経済利益があったから守るべきであるというような話ではだめだと思います。もちろんそういう適用においては、そのプロセスにおいて今の議論のように別の逃げ方をされてしまう問題とか、短期的に産業に与える、企業に与える影響ももちろん留意しなければいけないと思いますけれども、やはり原則はあるべき社会保険の姿に従って1号、3号を減らしていくというのが、先ほど申し上げたように4つの点で非常に効果があるということが確認できたのではないかと思います。
もう一つは55ページのいわゆる非適用業種と言われているものを、これも昭和28年に想定されて設定されたものでありますので、やはり現在の目から見てこれを引き続き非適用と考えるのかどうかは、これも既得権にしてはいけないと思いますので、徹底的に議論し直す必要があるのではないかと思います。
以上です。
○神野部会長
ありがとうございます。
原委員、どうぞ。
○原委員
ほとんど委員の皆様から御意見が出たことと同じ、或は重なることがあるかと思いますが、適用拡大について多岐にわたる資料ありがとうございました。気になった点についてコメントをさせていただければと思います。
重なりますけれども、大きく3つの点なのですが、15ページにまとめられているように、適用拡大を考えるに当たっての視点の中で1と2についてですが、被用者にふさわしい保障の実現ということと、働き方や雇用の選択をゆがめない制度の構築というのは特に重要ではないかと考えます。その中で、各論の中に御説明がありましたとおり、重複するかもしれませんが、17ページにあるように雇用者でありながら第1号という方々が4割を占めているということ。この中には臨時とかパートタイマーというような方で労働時間数によってそうなっている方と、常用雇用とか週30時間以上という方も入っています。こういう方々については事業所側の事情、例えば事業所自体が適用事業所でないなど、適用事業所かどうかによるものがあるかと思いますので、この辺りの区別を明確に分けての議論も必要かと思います。
あと、第3号のことでかなり資料がありますが、23ページのところですが、保険料の負担の変化という部分も注目すべきかと思うのですが、23ページの下に書かれています。給付面の変化ももっと強調すべきかと思います。3号から2号に行くという部分では給付面も変化があります。基礎年金に加えて報酬比例の厚生年金―老齢、障害、遺族といったものがつくということと、傷病手当金ですとか出産手当金というような給付の面もぜひもっと知ってもらうべきではないかと思っております。
関連して29ページの調査のところですが、以前の議論の中で第3号というのはさまざまな属性の方がいて、まずは適用拡大をしっかり行って、第3号を縮小していくということになっているかと思うのですが、この調査結果を見ると、年齢分布で言うと40代以下の人というのは3号から2号へと移っていった人が多いことがわかりますし、そうすると今後この層が増えていくことがわかります。また、社会保険の加入の魅力度、真ん中のところですが、これももう少し今のような給付面をアピールすれば、この辺りも魅力的だと答えてくれる層も増えていくのではないかと思います。
おそらく今後考えなければいけないのは、一番右側の世帯年収の分布のところだと思います。今後この辺りの分布が変わるのかどうかわからない部分ではあるわけなのですけれども、全体的な不公平感を生じさせないようにするためにも適用拡大を進めて、第3号を縮小していくという中で、その後についても時期を見て徐々に早めに議論を進めていくということも必要ではないかと、この調査結果を見て感じております。
それから、2点目としては、6のさらなる適用拡大を議論する上での留意点という、45ページから始まるところです。やはり業種によって短時間労働者が多いところ、人手不足もイコールで多いということもありましたけれども、業種によってなかなか厳しいところもあるようで、これは短時間労働者の適用拡大を行っていくうえで留意すべきかと思います。また、適用拡大を議論するときはどうしても短時間労働者に議論が集まると思うのですけれども、これは労働政策審議会で議論されている部分かと思うのですが、先ほど、小野委員からもお話がありましたが、58ページぐらいからのところにある多様な働き方をしている人が増えていますので、雇用類似の働き方について、労働者性の範囲とか、社会保障等の保護内容などについても、適用拡大の議論の中において、みていくことは必要なのではないかと考えます。
最後に、今、駒村先生からもお話がありましたけれども、7の被用者保険の適用事業所の範囲についてです。やはり昭和28年の改正から止まっているということもありますし、44年の規定などもありますが、現在いろいろな業種、業態があり状況も変わっておりますので、線引きについて改めてこれでいいのかどうかというところを、今この時期に精査すべきときなのではないかと思います。56ページ、57ページのあたりです。やはりそういったところでは働き方とか雇用の選択をゆがめない制度の構築にも関連するところかと思いますので、どこで働くかとか、どういう事業所で働くかによって社会保険制度の取り扱いとか給付の内容が変わってしまうようなことがないよう、適用事業所の範囲といった、そもそもの部分についても今この時期に考えるということも必要なのではないかと思っております。
以上でございます。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
どうぞ。
○権丈委員
この適用拡大の話というのは、これまで何度もチャレンジして、何度も挫折してきた話であるわけでして、先ほどもいろいろ話がありましたように、働く人のサイド、生活者のサイドから見ると、世の中なかなか絶対という言葉を使えないのですけれども、適用拡大は絶対正義なところがあるわけです。それに反対する働く人、生活者がいるというのも、それは知識の問題だろうというところで、資料1のスライド18のように、加入がどれだけ効果があるのか。皆さんの老後の生活にどれだけの効果があるのかとか、あるいは年金保険というのはどういう役割を果たすのかなどを、どんどん情報発信していった効果は、今日報告のあった調査で自ら進んで適用を望んだ人が多くいたということで、今回相当観察できたのではないかと思います。
これまで何度もチャレンジしてうまくいかなかったのですけれども、今回は少し今までと状況が変わっているなというのを3点ほど話しておきたいと思います。
スライド47の有効求人倍率とか雇用人員判断DIのところを見ていきますと、2004年のときの適用拡大で挫折し、2007年はどんなに頑張ってもできないかもしれないなという状況でした。民主党政権下は有効求人倍率がボトムのところでして、この状況下でよく少しでも動かしたよなというところがあります。そして今は、次の適用拡大を前にして、有効求人倍率と雇用人員判断DIが大幅に改善していて、今、賃金の競り上げが起こっております。賃金がどれほどこの適用の問題に影響するのかというのはスライド26にあるのですけれども、この賃金、労働条件の競り上げというところが今、随分起こってきておりまして、このあたりのところがかつてとは違う条件1というところでしょうか。だから随分と状況が変わってきていると同時に、この労働市場の逼迫というところが、次回の適用拡大に相当アシストしてくれるのではないのかというふうに私は少し思っております。
もう一つ、条件2としてあげたいのは、スライド34のところで先ほども説明があったのですが、2009年の財政検証以降、基礎年金をどうするかというのがこの国の公的年金保険の一番と言っていいぐらいの大きな課題だったわけです。その課題に対して適用拡大をすることによって基礎年金の給付水準を上げることができるんだという、10年ほど前にはなかった大きな視点が今、入ってきております。基礎年金の給付水準を重点的に上げていくという、日本の年金が抱えている一番大きな課題にこの適用拡大が寄与していくことを多くの人が理解していけば、以前よりはいい風向きになるのではないかと思っております。
適用拡大の問題には、賃金の水準が影響してくるのですが、最終的に適用拡大をしていくと賃金率が上がっていって、企業側の負担がふえていくという形になります。けれども、スライド2に書いてありますように生産性革命を政府がやると言っているんですね。基本的にサービス産業が短時間労働者を雇用しているわけですけれども、サービス産業ですと、生産性という形で測っているものは基本的には付加価値になります。付加価値には賃金が入っております。この賃金が上がらないことには生産性革命はできません。そういう意味で、適用拡大は正しい意味での成長戦略であり、生産性革命に寄与するわけです。この生産性革命を政府が唱えているというところが今あるわけです。これは、過去にはなかった条件3としてあげることができるかと思います。
今回は幾つかの条件が過去と違うので、私は非常に前向きに考えていいのではないかと期待しております。
そして、適用範囲に関してはスライド22に示されているように、最低賃金が影響していくところもあるのですが、適用拡大すると基礎年金の給付水準が上がっていきますよという、基礎年金を上げていくための最大の手段として今ここは出てきているわけですけれども、この適用拡大では3号という問題も大きなところがあります。この第3号被保険者というのが昔は適用拡大をしていく上での大きな数の障害でした。私の記憶では昔、2004年、平成16年とか2007年、平成19年には、1100万とかそういう水準だったのですけれども、これがだんだん小さくなってきていると思うのですが、そのあたりのところのデータがございましたら教えていただければと思います。
○年金課長
データとして今、手元にあるもので御報告いたします。今、権丈委員からお話がございました第3号被保険者の数の変遷でございます。口頭で恐縮です。
第3号被保険者ですが、手元のデータですと平成6年が1つのピークの人数になっておりまして、このときが1220万人ということでございます。平成6年に向けてはまだ逓増していましてピークで1220万人。足元値の28年ですと889万人になっております。特にこの10年ぐらいは毎年度逓減しておりまして、例えば平成27年度は915万人ですので、27年度から28年度の1年度の間でも26万人、第3号被保険者は減少したということでございますし、この10年ぐらい平均すると大体毎年度15万人強ぐらいは減ってきている傾向にございます。ですので、全被保険者に占める割合も減ってきておりまして、これはピークが平成元年になっておりますけれども、17.9%、国民年金全体に占める第3号被保険者がおりましたが、今は13.2%に減ってきております。10%を超えていますので決して少ない数ではございませんけれども、ボリューム感が減ってきているというのは委員の御指摘のとおりでございます。
○神野部会長
ありがとうございます。
ほかございますか。
○永井委員
資料58ページからの働き方の多様化と被用者保険の適用のあり方の中で、今、御議論もあったところですけれども、副業・兼業のことで少し発言させていただければと思います。
御説明がありましたように、59ページで働き方改革実行計画が記載されておりますが、副業・兼業を普及促進させる観点というところから雇用保険及び社会保険の公正な制度のあり方、労働時間管理及び健康のあり方、労災保険給付のあり方について検討を進めるとされております。既に先ほどもお話がありましたが、労働政策審議会の部会及び有権者による検討会等では、労働時間の管理、雇用保険、労災保険の給付のあり方については検討が始まっていると聞いております。特に雇用保険については適用の必要性、給付のあり方等の論点が示され、また、関係者からのヒアリング等も行われると聞いております。
特に短時間と短時間で複数の就労を重ねている方々については、今、社会保険は労働時間の通算はされないことになっておりますし、そのほかの課題についても法的に未解決な課題がある中で、副業・兼業を積極的に推進するというものではないと考えておりますけれども、実際に収入をふやしたい、また、長時間では働けないといった理由で現在も複数の事業所で働いておる方々は一定程度いらっしゃいますし、また今後もふえることは想定されるという中で、この社会保険の適用に当たりましても事業所ごとに判断とされている要件などについては、今後見直しの検討が必要となるのではないかと思っております。
また、これも議論が出ましたけれども、雇用関係によらない働き方についても拡大されるということが想定され、既に労政審も含めて大きな議論になっていると聞いておりますが、こちらの雇用類似の方々についても社会保険の適用となり、十分な給付が受けられるような枠組みのあり方についても検討すべきではないかと考えております。
以上です。
○神野部会長
ほかいかがでしょうか。どうぞ。
○武田委員
ありがとうございます。本日は、大変詳しい資料の御説明をいただきましてありがとうございます。大変わかりやすかったです。
私も適用拡大には賛成の立場で、それについては他の委員がおっしゃられた幾つかのポジティブな効果が期待されるということが背景にあります。ただ、もう少し広目に議論させていただくと、冒頭に御説明いただいたとおり、経済社会が大きなトレンドとしても変わっていく。これはほぼわかっていることですので、就業行動をゆがめる慣行や慣習や制度というものは見直していくべきだと思っています。
今回の資料として入れていただいておりましたけれども、例えば24ページや25ページを見ますと、依然として人数は減っているとはいえ、就業調整に税制であるとか年金制度だとか、あるいは会社の配偶者手当などが影響を及ぼしています。就業を調整させるほうで企業は負担をしていらっしゃるわけです。今後の社会構造を踏まえて年金を議論する部会だということは重々承知しておるわけでございますが、日本全体としては税制、社会保障制度、それから、企業のさまざまな手当なども含めて一体で見直す方向性が必要になるのではないかと考えております。
その上で本部会に関しては9ページも書かれておりますように、以前から、「まずは被保険の適用拡大を進めつつ、第3号被保険者制度の縮小、見直しに向けたステップを踏んでいくことが重要」という記載がございますが、これは引き続き本部会で必要なメッセージではないかと考えております。
以上です。
○神野部会長
ほかに御発言ないでしょうか。どうぞ。
○高木委員
きょう初めてなものですから、少しだけ多く発言することをお許しください。
申し上げたいのは、それこそ御説明いただいた最初のところに書いてある「本人の希望に応じた働き方」という点についてです。多様な働き方を御本人様が希望していて、それを選択するということで、それに即して社会保障制度を強めることは当然いいことだと思います。ここで私が想定しているのは、短時間で働いている高年齢者ではなくて短時間、そして非正規で働いている方たち、この場合女性の方が相対的に多いので、その方たちを前提にお話しするのですが、本人がそれを本当に望んで短時間、非正規という形を選択したのかということで、その根本的な前提となっているところに疑問を持っております。例えば大学なり高校なりを出たときには正社員として務めていて、結婚と出産で一旦退職し、子育てが一段落したのでまた労働市場に戻ってくる場合が多いわけですが、例えばこの時に短時間という働き方をしてしまうと、御自身のキャリアというものをほぼ諦めるという形で、ただ家計を支えるとか、社会とつながっていたい、そういったことを理由とする働き方になっていくわけです。
私が実際に考えますのは、本来的には自分のキャリアアップをもう一度目指して、普通に正社員という職を得たかったけれども、それがなかなか難しいから非正規、短時間というところに落ち着かざるを得なかったのではないかということです。しかしそれが例えばアンケートをとると、御自身が望んだ働き方ということにチェックを入れがちなのです。でも実態は、当初は正社員で働きたかったけれどもそれが叶わず、二次選択として短時間、非正規に落ち着いてしまったという方たちが一定量いるのではないかということなのです。つまり本人の御希望そのものではなかった可能性があるわけです。
私は何を言いたいかというと、産業界が強くなっていくためには、やはりフルタイムの正社員の比率がある程度確保されている必要があるのではないかということです。それが国際競争力を減じさせるとかそういった問題があると言うかもしれませんけれども、フルタイム正社員になることによってこそ、企業側にとっては、その人に対して育成投資をして、強い人材に育てていこうというインセンティブが生まれるものなのです。
それで私が申し上げたいのは、短時間で働いていたとしても、社会保障もある程度強められるし、生活は安定します。だから別に正社員にならなくてもいいですよね、といったものの考え方になると、これはなかなか賛成できかねることになる。例えば企業側は保険料を負担しなければいけないので、ではいっそのことフルタイムの正社員になってもらおうかというぐらいになるのであれば、話は別なのですが、短時間でもいいよね。それでちゃんとした生活ができますよね。じゃあここに落ち着いてもらいましょうということになってしまうと、それは産業界全体として本当にそれでいいのだろうかという疑問が少し出てしまうわけなのです。そういった動きになるかどうかわからないのですけれども、そこに少し懸念を持っています。
もう一つの懸念というのは、この仕組みがその人自身の生活を助ける仕組みであるということが、御本人様たちがきちんと理解していないとうまく稼働していかないと思うのですが、本当にそれを正しく知って頂きたいと思う人々に限って、そういった情報にアクセスしづらいということがあると思うのです。例えば幾らこれが御自身の生活を助けると言ったとしても、今、3号で奥さんになっているのに保険料を取られてしまうのは嫌だわと思ってしまったり、年金財政が厳しいから世の奥様方から保険料を取ろうとしていると考えられてしまう可能性も、正しく説明ができなかったらなきにしもあらずということになる。例えば英国で労働党政権のときにペンション・クレジットというものができたときに、これは支給額が低い人たちに対して補填をしようという仕組みだったのですが、どうやってこの制度の認知度を高めていったかというと、わざわざ一人一人に説明しに行くということを、野を分け、山を分けて奥地に住んでいる人々のところまで行って説明に行くという努力をしたと、実際に向こうの厚生労働省で働いている担当者たちから聞いております。そこまでしてそういった情報にアクセスしづらい、説明してもなかなか理解できないかもしれない人たちに丁寧に説明することをしているわけです。国民の総意を得るということでなければ、制度の意図が正しく理解されないまま、結果的に受け入れてもらえない可能性があるので、そこのあたりを懸念しているわけです。
済みません、長くなりました。以上です。
○神野部会長
ありがとうございます。
そろそろ次の議題に入る都合がございますので、御議論についてはこの辺で終わらせていただきたいと思います。
2番目の議事に入りますけれども、経済前提に関する専門委員会からの中間報告といたしまして、これは最初に植田委員長から御説明をいただいて、その後、事務局から説明をいただきます。それでは、委員長お願いします。
○植田部会長代理
資料2-1をごらんいただきたいと思いますが、次の財政検証が平成31年度までということで、それに関連して専門的、技術的な事項を検討するということで、この専門委員会を設置していただきました。そこにございますように、これまで6回の議論を重ねてまいりまして、主な内容としましては前回の財政検証をもう一度振り返ってみるという部分と、その後、足元までの経済動向、財政検証に関連する部分を確認するという作業。それから、関連のテーマについて有識者からヒアリングをするということを行ってまいりました。
そこで出ました主な意見を整理いたしましたので、御報告いたしたいと思いますが、この具体的な内容については事務局から御説明させていただきます。
○数理課長
私からは資料2-2「専門委員会での経済前提の設定に関する主な意見の整理」について御説明いたします。
これは先ほど委員長からもお話がありましたとおり、これまで6回開催されました経済前提に関する専門委員会において、委員の皆様からいただいた御意見を整理したものでございます。本日、専門委員会での議論の内容の一環として御報告させていただきます。
なお、専門委員会の議論はかなり技術的、専門的な内容となっておりますので、本日の説明でもなるべくかみ砕いてポイントをお話しするよう心掛けたいと思いますけれども、やや技術的な話が含まれている点、御容赦いただければと思います。
まず1ページ目ですが、経済モデルについてということで、(ア)が全般的な評価についてでございます。専門委員会の経済モデルの概要は、参考までこの資料の後半の参考資料に入れておきまして、それ自体の御説明は省略させていただきたいと思いますけれども、ここには3つの御発言が挙げられておりまして、いずれもスタンダードなモデルではないかという御評価でございました。
(イ)は最初の2つにつきましては、前回の財政検証で御案内のとおりの幅の広い複数の前提を設定した点についてでございます。今回も同様に取り入れるのがよいと思うという御意見でございました。また、残りの2つにつきましては、具体的なパラメーターの設定について工夫していくとした場合の御視点をいただいているところでございます。
2番が賃金上昇率の設定についてでございます。1つ目は、専門委員会の有識者ヒアリングの際にいただいたコメントです。人口一人当たりの生産性が多くの国では1%程度で収束していることから、長期で見たときには実質賃金が1%でふえていくことは、ベースシナリオとして妥当でないかというコメントをいただいております。
また、残りの3つにつきましては、雇用者の働き方と賃金上昇率の設定に関する留意点としての御意見を、このような意見をいただいているところです。
3が運用利回りの設定についてです。まず(ア)ですが、実質長期管理と金融政策や成長率との関係についてです。専門委員会におきましては、財政検証に用いる長期の運用利回りの前提の御議論をいただいているところですけれども、足元で講じられている金融政策との関係をどう考えるかという視点での御意見をいただいております。
(イ)は運用利回りの設定方法で、現在用いられている手法である長期金利と一国の利潤率とを関連させて推計する方法についてです。最初の2つは、現在の方法を仮に変更するとした場合の手法についての御意見となります。3つ目の御意見は、スタンダードなフレームワークでは、均衡状態では利潤率と成長率が1対1対応しているので、長期金利を利潤率からする現在の方法でよいのではないかという御意見がありました。
続きまして、(ウ)は前回の財政検証時の低成長のケースの運用利回りの設定に当たって、イールドカーブを用いた推計についての御意見でございます。最初の2つは長期の経済前提が足元の経済指標であるイールドカーブに引っ張られると、やや現実的ではない前提になるので工夫の余地があるのではないかという御意見でした。後半の2つは、前回の方法は市場がどのように先行きを見ているのかを織り込んで工夫をしており、今回も同様に考慮してはどうかという御意見でした。
(エ)その他は、運用利回りに関するその他の論点ということでございます。
次に4の物価上昇率の設定については、ここにありますような2点がございました。1つ目は、デフレーターの設定において現在の手法よりも精緻に設定できるのではないかという御意見です。2つ目は、19世紀のイギリスで起こっていたこと、つまり何十年もデフレは続くけれども、成長率が高いという状況もあったので正直、物価についてはよくわからないという側面があるという御意見がありました。
5番のその他です。(ア)経済変動を仮定するケースについてです。この点につきましては、前回の財政検証時のオプション試算におきましても、マクロ経済スライドによる調整がフルで効いた場合の給付水準への影響を評価するために、一定の経済変動を設けておりましたが、この点についてさらに工夫してはどうかという御意見があり、それが最初の2点となります。
また、後半のほうですが、平成28年の年金改革法で年金額の改定ルールが見直されて、賃金改定率がマイナスになったときでも賃金スライドが徹底されるというルールになったのは御案内のとおりです。この法案の附帯決議では、次期財政権検証においてその効果を示すことが求められておりまして、そのための経済前提設定のための議論が後半の2つです。
最後に(イ)その他ですが、ここは足元10年間で用いる内閣府の中長期試算と長期の前提との接続に関することなどの御意見がありました。また、最後から2つ目に【年金部会】と書いてあるところでの御意見につきましては、本年金部会で出た経済前提に関する御意見ですが、それも御紹介させていただきながら専門委員会で御議論をさせていただいている状況でございます。
なお、8ページ目以降は経済モデルの概要等を資料として準備させていただいているところですが、本日の御説明は省略させていただきたいと思います。
私からの報告は以上です。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
専門委員会から中間報告を御報告いただいたということにさせていただきたいと思いますが、その点で御承知おきいただければと思いますけれども、特にこの段階で御質問があれば承っておきますが、いかがでございましょうか。よろしいですか。
それでは、現在の経済前提に関する専門委員会から中間報告をいただきましたので、御承知おきいただければと思います。
予定をいたしました議事につきまして、ほぼ時間どおりに終了させていただきましたので、事務局から連絡事項がありましたらよろしくお願いいたします。
○総務課長
次回の議題及び開催日程につきましては、改めて御連絡したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
○神野部会長
そ
れでは、これにて第4回の年金部会を終了させていただきたいと思いますが、冒頭、私が遅参いたしましたことを深くおわびいたします。御寛容いただければと思いますが、最後まで熱心に生産的な御議論を頂戴いたしましたこと、深く感謝を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。