2019年1月30日
第7回社会保障審議会年金部会
年金局
○日時 平成31年1月30日(水)15:30~17:30
○場所
東京都千代田区平川町2-4-1
都市センターホテル(3階 コスモスホールⅠ)
○出席者
神 野 直 彦(部会長)
小 野 正 昭(委員)
菊 池 馨 実(委員)
権 丈 善 一(委員)
駒 村 康 平(委員)
高 木 朋 代(委員)
武 田 洋 子(委員)
出 口 治 明(委員)
永 井 幸 子(委員)
原 佳 奈 子(委員)
平 川 則 男(委員)
牧 原 晋(委員)
諸 星 裕 美(委員)
山 田 久(委員)
米 澤 康 博(委員)
小林参考人(山本委員代理)
○議事
○神野部会長 それでは、定刻少々前でございますけれども、ただいまから、第7回を数えますけれども、「社会保障審議会年金部会」を開催したいと存じます。
月末の大変お忙しいところを万障を繰り合わせて御参集いただきましたことに、深く感謝を申し上げる次第でございます。
本日の委員の出席状況ですが、阿部委員、小室委員、武田委員、永井委員、山本委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。
また、菊池委員、権丈委員、藤沢委員におかれましては、御所用のため、途中で退席される予定とお伺いいたしております。
少々複雑な事情がございまして、御承知おきいただければと思いますが、駒村委員、米澤委員におかれましては、昨日付で、それぞれ、社会保障審議会委員、さらには社会保障審議会臨時委員として再任されていらっしゃるのですけれども、社会保障審議会の会長による所属部会の指名が2月1日の予定とお伺いいたしております。そのため、形式的に申しますと、本日、所属指名前ということになるのですけれども、両名の委員の方にはこれまでどおり当部会での議論に御参加していただくということにさせていただきますので、御承知おきいただければと思います。
今の駒村委員、米澤委員を除いたといたしましても、御出席いただいている委員が3分の1を超えておりますので、この会議は成立していることをまずもって御報告させていただきたいと思います。
さらに、山本委員の代理として、本日は、日本商工会議所から小林参考人にお越しいただいております。小林参考人の当部会への御出席につき、御承認を頂戴したいと思っておりますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○神野部会長 ありがとうございました。
そのようにさせていただきます。
議事に入ります前に、資料の確認をさせていただきたいと存じますので、事務局からお願いいたします。
○総務課長 年金局総務課長でございます。
本部会は、本来、ペーパーレスで開催することになってございまして、その予定だったのですけれども、本日は急遽タブレットの数が足りないという事務的な都合がございまして、資料の配付によって会議をさせていただきます。行ったり来たりで御迷惑をおかけしました。申しわけございません。
お手元に資料をお配りしておりますけれども、資料がたくさんあります。
議事次第。
委員名簿。
座席図。
資料1、横置きの資料で「『医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案(仮称)』における国民年金法の改正について」。
資料2-1「年金財政における経済前提のあり方について(専門委員会における議論の経過報告)」。
資料2-2、その参考資料集、ちょっと厚めの資料がついてございます。
資料2-3「第78回社会保障審議会年金数理部会(2018年11月30日)における議論について」という資料がございます。
資料2-4「今後の財政検証の進め方について」という資料がございます。
資料3、カラーの1枚ぺらの資料ですけれども、「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会の開催について」という資料がございます。
資料4「私的年金に関する検討について」という資料がございます。
参考資料1、最後に分厚い資料ですけれども、内閣府政府広報室の世論調査の資料がございます。
以上でございますが、不足等はございませんでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
以上でございます。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
それでは、大変恐縮でございますが、カメラの方々につきましては、ここにて御退室をいただければと思いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○神野部会長 それでは、ただいまから議事に入らせていただきますが、お手元に議事次第が配付されているかと思います。ごらんいただければと思いますが、本日は、「その他」を含めて5つの議事を準備させていただいております。
まず、第1に「『医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案(仮称)』における国民年金法の改正について」、第2番目の議題として「今後の財政検証の進め方について」、第3の議題と第4の議題は報告事項になりますが、第3番目の議題として「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会の開催について」、第4番目の議題として「私的年金に関する検討について(社会保障審議会企業年金・個人年金部会の開催)」になります。それ以外に、5番目に「その他」と、「その他」を含めて5つの議題を準備させていただいております。
まず、最初の第1の議題につきまして、事務局から資料に基づいて御説明を頂戴できればと思いますので、よろしくお願いいたします。
○年金課長 年金課長でございます。
それでは、資料1を1枚おめくりいただきます。
1ページ、近年、我が国を訪れます外国人の方は増加の一途をたどっております。来日外国人旅行者数は、平成30年に初めて3000万人を超えておりまして、我が国に在留されます外国人の方も平成30年6月末時点で264万人と過去最多を記録しております。加えまして、昨年、入国管理法が改正され、新たな在留資格であります特定技能1号と特定技能2号が創設されることとなっております。このように、今後、ますます在留外国人の方の増加が見込まれる中にありまして、外国人材の受け入れ・共生のための取り組みをより強力かつ包括的に推進していく観点から、昨年末に、ごらんいただいております関係閣僚会議において「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が取りまとめられております。この総合的対応策の中で、医療保険・公的年金につきましても、こういった対応策の一環として定められております。1つ目は、外国人の方に対する社会保険への加入促進の取り組みを重点的に推進すること。2つ目に、新たな在留資格による外国人の方につきましては、入管当局から外国人材に関する情報を提供していただくなどによりまして、年金制度の加入の促進を図ることとされています。
2ページ、こちらでは、健康保険の被扶養者、また、国民年金の第3号被保険者の認定において、原則として国内に居住しているという要件を導入すること。ただし、留学生や海外赴任に同行する御家族など、一時的に国外に居住し、国内に生活の本拠がないとまでは言えないケースなど、一定の例外につきましては適用するという形にすること。いわゆる「医療滞在ビザ」で来日して国内に居住する方については、国民健康保険と同様に、健康保険の対象にしないことといったことが盛り込まれてございます。
3ページ、この総合的対応策を踏まえまして、健康保険法等の改正案の中で、こちらの「改正の概要」の5番目のところで、健康保険法、国民健康保険法と並んで国民年金法と書いてございますけれども、ここの部分におきまして、先ほど御紹介申し上げました総合的対応策に従った法案化の作業を進めているところでございます。
4ページ、先日、17日の医療保険部会に出された資料でございますけれども、「対応」の①、1つ目の○のところをごらんいただきたいと思います。我が国に居住する外国人の方に対して、自国民、つまり日本国民と同じように社会保障を適用するということは、難民条約などによりまして、国際的にも要請されております。したがいまして、我が国の年金制度の適用につきましても、こちらで整理されております医療保険制度の適用と同じように、日本人であるか外国人であるかによっての差異は設けられておりませんので、年金法は外国人にも等しく適用しておりまして、仮にこの法律改正事項をやった後も、その原則は維持する予定とされております。こうした中で、今回、ここには健康保険の被扶養者のケースで書かれておりますけれども、同様の仕組みで適用しております国民年金の第3号被保険者についても国内居住要件を導入したいと考えております。その判断は、ここに書かれておりますものと同様に、国内に生活の本拠があるかどうかによって判断するような法律改正を予定しております。したがいまして、日本人であるか外国人であるかによって適用に差異を設けるという考え方には当たっておりませんので、内外人無差別原則には反しないような改正事項を考えています。また、次の欄でございますけれども、留学生や海外赴任に同行する御家族など、年金の場合には御家族と申し上げましても被扶養配偶者ということで配偶者だけが対象になりますけれども、一時的に国外に居住し、国内に生活の本拠がないとまでは言えないケースなどにつきましては、一定の例外を設けることとしております。この例外の場合につきましても、日本人であるか外国人であるかといった形での適用の差異を設けないこととしておりまして、こちらも内外人無差別の原則に反しない形の改正を予定しております。このように予定されております改革内容は、20歳から60歳まで海外に居住している被扶養配偶者につきまして、第3号被保険者としては原則認定しないという、いわば被保険者の認定に関する要件に関するものでございまして、今、海外に居住されている、あるいは将来居住することを考えていらっしゃる年金受給者の方に関しては、何の影響も与えない。受給者の方が海外に住むようなケースについては、もちろんしっかり年金をお支払いするという扱いに変更はないということでございます。下のポツでございますけれども、「医療滞在ビザ」での滞在者の方々は、日本の社会保障制度による保障が適用されないということを前提といたしまして、自力で日本の医療を受けに来られる方、それのみを目的にして来日されるという方でございますので、そういった観点を踏まえますと、医療、年金という社会保険を適用すべき、つまり、強制適用をすべき対象からは一体として除外することには、一定の合理性があるのではないかと私どもは整理させていただいております。
5ページ、今まで、保険局の資料、医療保険の扱いをベースにした御説明をしてまいりましたが、こちらが医療保険と公的年金との適用関係を整理したものでございます。左にございますように、医療保険では配偶者を含む被扶養者に国内居住要件を一定の例外のもとで導入いたしますし、国民健康保険では既に「医療滞在ビザ」の滞在者などは既に適用除外とされておりますので、これと同様の改革を医療保険法で行う形になっております。同様に、右にございます公的年金も、健康保険の被保険者と厚生年金の被保険者は一体適用してございますし、被扶養配偶者の認定と国民年金第3号被保険者の認定も一体として行われておりますので、同様の国内居住要件の導入あるいは「医療滞在ビザ」の滞在者等を対象外とすることも行いたいと思っております。国内居住要件で第3号から適用除外した方が「医療滞在ビザ」で国内に来られるような場合に、放っておきますと形式的には国民年金第1号被保険者になってしまいますので、そういったことがないようにしなければなりませんし、国民健康保険とのバランスからいっても、国民年金からも、医療滞在ビザの滞在者などを除外したいと考えております、こういった内容の法案を先ほど御説明しました医療保険法の一括法の中で一緒に改正することを目指して、今、鋭意作業を進めているところでございます。
私からの説明は、以上となります。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
ただいま御説明いただきました国民年金法の改正につきまして、御質問あるいは御意見でも結構でございますが、ございましたら、どうぞ。
○牧原委員 企業のビジネスがグローバル化するのに伴い、従業員の家族の方が一時的に海外に行ったり、子供が留学したり、さまざまなケースがあります。省令でそれについては対応するという話なのですけれども、いろいろなケースがありますので、不都合が生じないように、ぜひ実態を把握して、きちんと反映していただきたいと思います。
その際、事業主としての企業、健保、基金が手続をすることになると思うのですけれども、手続面の負荷が多くなったり、煩雑にならないように、ぜひ御配慮をお願いしたいと思います。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
何かコメントはございますか。
どうぞ。
○年金課長 御指摘の点は、私どもも医療保険のサイドも重々受けとめておりますので、そういったさまざまな現実に直面している方の御意見をしっかりとお聞きしながら、しっかりと対応していく予定にしておりますので、また御指導等をよろしくお願いいたします。
○神野部会長 どうぞ、菊池委員。
○菊池委員 ありがとうございます。
私からは、聞きたいことが1点、あとはコメントでございます。
いわゆる外国人の医療保険加入問題は、約1年前からマスコミなどでクローズアップをされておりまして、私も、医療現場などの取材を行って、現実に問題があるらしいということは実感してきました。
一つ、先ほど御説明がございましたが、今回、国内居住要件を設けることで、我が国が批准してきた難民条約などの条約との関連が全く気にならないわけではないのですけれども、他方、被扶養者に国内居住要件を課すことが諸外国においても比較的一般的であるとも聞いておりまして、そうだとすれば、今までの我が国の取り扱いが比較法的には例外的であったということなのかもしれません。もし、この点につきまして、外国の取り扱いにつきまして、事務局で何か把握している情報がございましたら、お教えいただきたいということが、1点、お願いでございます。
医療保険部会で発言するべきことなのかもしれないのですけれども、国保について市町村における調査対象の明確化を図るという方向性には賛成です。昨年、通知レベルで在留外国人の国保適用の不適正事案に関する通知制度を設けまししたけれども、法的な仕組みとしては弱いと感じていましたので、このような仕組みを設けることは大変よろしいのではないかと思います。
ただ、本来であれば問題視されていた協会けんぽの被扶養者認定も厳格化されたと聞いていますし、また、国保適用の不適正の実態についても十分な調査の上での検討であるべきであって、本当に法律改正が必要とされる立法事実が存在するのかどうか、本来であれば十分な検証の上で少し時間をかけて行うべきであったのではないかと私は考えています。
しかし、今回、外国人材の受け入れにかかわる新たな在留資格の設置の議論といわば合体することで、ややなし崩し的な改正という印象を与えてしまったことは、やや残念ではございましたが、反対というわけではありません。
最後に、これは本件に関してというか、一般的に感じることなのですが、4ページの資料にもございますが、制度改正について、我々法律家の立場から言うと、法律なのか、政省令なのか、行政規則なのか、どのレベルでやろうとしているのかということが法的には極めて重要です。特に政省令以下のレベルで定めることになると、国会での審議にかからないという意味で、民主的なチェックが入る余地がないわけです。その意味では、ここの審議会の段階である程度明確にその内容を示して議論の対象にすることは、非常に重要ではないかと考えます。
この点、労働部局ですと、比較的その議論の仕方が丁寧なように思います。省令改正でも、省令案要綱を出して、それをもとに議論されている。労災保険、雇用保険などでもそのようなやり方だと思います。これは、旧労働、旧厚生の伝統なのかもしれませんが、同じ社会保険という点から言えば、共通です。
そういうことで、最近はいわゆる判断過程審査といわれる手法で、裁判所の判断にも、どういう制度改正のプロセスをたどったかというのは、裁判所でもチェックをされるようになってきていますので、その点、本件に限らないのですけれども、考慮をいただければというお願いであります。
以上です。
○神野部会長 1番目の海外の事情は、今、御説明できますか。
2番目の問題も、コメントをいただいておいたほうがありがたいかと思います。
よろしくお願いします。
○年金課長 ありがとうございます。
まず、1点目、菊池委員からも少し御紹介がございましたけれども、医療保険では、ヨーロッパの幾つかの国を中心に、こういった国内居住要件を設けるほうがむしろ一つのスタンダードに近いという説明がされていると思います。その上で、資料がなくて恐縮ですけれども、当年金部会でも諸外国の年金制度を昨年のラウンドのときに一度御紹介したことがございますが、無業の方はむしろ年金に強制加入させていないほうが諸外国では通例でございます。日本の第3号被保険者のような制度がそもそも年金制度にはないほうが諸外国では一般ということでございます。保険のアナロジーとは少しずれるのですけれども、委員の御質問に照らして御紹介申し上げれば、第3号被保険者の海外適用は日本の独自性の部分になりますので、例外的に日本の制度が今までは海外にまで出て行っている側面があったという御理解のもとで、委員に御整理いただいたような頭の整理で十分に説明がつくのではないかと私どもも受けとめています。これが1点目でございます。
2点目の立法事実といったことに関しましては、お話は保険サイドのことが非常に多かったと思いますけれども、私どもといたしましては、社会保障というのは、居住地での各国の適用がまずは本来的であって、むしろ国内に居住がないにもかかわらずその実態面から見て適用するというほうが、例外的ということからすると、今回の取り扱いは年金制度の中でも十分に合理性があるだろうと受けとめております。いわゆる医療の不正使用みたいな実態云々のところは保険局にもそういう御意見があったということをしっかり伝えておきたいと思います。
3点目につきましては、確かにおっしゃるとおりでございまして、省令事項として、医療保険・年金共通で、きょう、4ページでお示ししたようなケース、先ほど牧原委員からもこういったケースもあるよというお話もございましたけれども、仮に法律が立法化されたときには、この省令事項は当然パブリックコメントなどもかけまして、その上でしっかりしたものとしてやる形になると思います。その上で部会長と御相談ですけれども、当年金部会におきましても、開催のタイミングがあって、しっかり御説明する機会があれば省令事項であってもしっかり御説明したいと思います。また、これから私どもは財政検証後に年金改革をするかどうかも含めて議論をしていくわけでございますけれども、そのときに、省令などの下位法令事項があれば、できるだけそのことも含めて委員の先生方に御議論いただくように、今のお言葉をしっかり受けとめて、私ども自身、年金部会の事務局として運営に心がけてまいりたいと思います。
○神野部会長 ありがとうございます。
どうぞ。
○高木委員 これに関連することなのですけれども、当然、日本に居住する被扶養者を対象とするということは、感覚的にもわかりますし、海外のスタンダードであるということで説明がつくということだったのですけれども、なぜこの時期に改正するのかということがあるわけです。
それは明確で、海外の人材の受け入れがふえるということでこの時期にこのような改正がされるということだと思うのですけれども、しかし、外国人労働者を受け入れるのは我が国の都合によって多く受け入れるということになるわけです。それとあわせて、御本人様とその御家族にとってはある種の締めつけでもあるわけですよね。これまで、日本では、海外にいても、あるいは日本に居住があっても、被扶養者であれば対象とするということがなされてきていた。それをこの時期で改正するということに関しては、もう一歩、きちんとした説明といったものがもう少し丁寧に必要となるのではないかと考えています。
それとともに、少し知りたいのは、今回、この資料に全くデータがないのですけれども、これまで海外に居住していた被扶養者に支出されてきた医療費がどのくらいあったのか。そういったデータを示すといった必要性は感じないのだろうかと、少し疑問に思っているところです。
以上です。
○神野部会長 今、大丈夫ですかね。もしもあれでしたら、今後も法案の経過をこの部会に御説明いただくことになるかと思いますので、そのときでも構いませんが、いいですか。
○年金課長 ありがとうございます。今、お答えできる範囲の中でお答えしたいと思います。
タイミング自体についても、委員が御指摘のとおり、これから人数が急速にふえることが予見される中で、菊池委員からも御指摘がありましたように、例外的に取り扱っていたものをそのまま恒常的なものとしていいかどうかということを考える非常に重要な局面に来たということが、一つのタイミングの理由ではないかと受けとめております。
その上で、少し御説明が足りなかったと思うのですけれども、いわゆる期待権的なものとの関係で申し上げれば、今まで既に適用されて被保険者期間を積み重ねてきた方々は、既にその権利が積み重なっておりますので、そういったものを過去にさかのぼって消すということはもちろんございません。
ですので、既に第3号被保険者期間で10年を超えていた方が仮にいらっしゃれば基礎年金をお支払いする形になりますし、今後、その期間を持っている方が何らかの理由で日本国内に来られることがありまして、保険料を払っていただいて、期間がふえて、10年を超えればもちろん年金を支払うという形になります。他方、新しく来られる方々あるいは継続しておられる方々の被扶養配偶者、法律改正後まで、そういう意味での合理的な期待権があるかどうかということですけれども、そこはまさに立法府も含めてきっちり御審議いただいて結論を出していただくということではないかと思います。今までの積み重ねた保険料に応じた期待権を保護する形はしっかりとりたいと思っております。
データ関係でございます。御質問いただいた医療費関係のデータは、保険局に聞いた上で、公表されたものがあれば委員にも後日お伝えしたいと思いますけれども、私どもが承知している範囲で申し上げますと、第3号被保険者のような方は、残念ながら、第3号被保険者としての外国での住所地みたいなものを私どものデータとして持っておりませんので、何人ぐらい、どのぐらいの総期間といったデータがシステム上はとれないことになっております。データとして提示できないことについてはおわび申し上げますが、今までそれほど大きく話題になってこなかったということは、過度に多くはないのではないかという想定はしております。
以上でございます。
○神野部会長 どうぞ。
○諸星委員 ありがとうございます。
今までの流れとも関連しますが、健康保険の被扶養者認定に国内要件を入れるのは理解ができます。ですが、実際の現場の中でも、外国人の方で、通常の就労資格があり、勤務している方の家族を被扶養者としていらっしゃいます。資料を見ますと、適用といいますか、この法律で国内要件を入れるのが、来年、1年後ということで間違いはないですかね。
そうなると、仮に今被扶養者として加入して既に恩恵を受けている方々、あるいはことし4月から該当する新たな就労資格の外国人の方が1年後にはその恩恵が受けられなくなる。いわゆる不利益変更みたいな形になるのではないかということをすごく危惧しておりまして、これを正確にお伝えするのであれば、事前に来年からは加入対象とはなりませんよとか、あるいは加入時に1年限りですよとか、先ほど牧原委員からもお話がありましたけれども、そういった実際の手続業務を行う事業主側が、周知といいますか、徹底して理解して、説明をしないと、後で絶対に聞いていなかったとか、それは全く理解していなかったということで、以前、社保審査会にいたときの不服申請でも、ほとんどが聞いていない、説明してくれなかったということでのトラブルが増えることにもなりますので、ぜひこのあたりは1年間限りですよとか、あるいは、先ほど適用について非常に厳格になさるということであれば、そのあたりをきちん周知徹底するということをしていただきたいと思います。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございました。
事務局、何かコメントはございますか。いいですか。
○年金課長 受けとめさせていただいて、実際は、日本年金機構とか、健康保険組合、あるいは事業主を通じてということになると思いますけれども、そういう御指摘をしっかり受けとめさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
○神野部会長 平川委員、手が挙がりましたね。どうぞ。
○平川委員 ありがとうございます。
4ページの要件のところであります。これは牧原委員と同じでありますけれども、生活の基礎が日本にあると認められるというところの要件については省令で規定するとありますが、それをどう証明するかとか、又は蓋然性とは何かなどがまだ不明確です。連合に加盟している組合員の中には海外赴任の方は大変多くおりますので、相当気になるところであります。その辺は実態に合った形で、引き続き検討をお願いしたいと思っているところであります。
次に、別の観点から発言させていただきます。1ページの閣議決定においては、外国人労働者の受け入れ機関については、過去にその納付すべき社会保険料を一定程度滞納するなどした受け入れ機関は認めないということで、これは当然のことではないかと思います。しかし、こう書いてあっても、制度でそうなっていても、適用逃れが起きかねないという懸念がありますので、ぜひとも法務省と厚労省との情報提供のあり方についてもしっかりと行っていくべきではないかと思っているところです。
そういった中で、1つ質問ですが、例えば、外国人も、在留資格を更新する際には、社会保険の加入状況とか、国民年金保険料の納付状況を示す証明書が必要になるという理解でいいのかどうなのか、1つ、質問しておきたいと思います。実務上どうなっていくのかということで問い合わせがあったものですから、そういうことで質問をしておきたいと思います。
以上であります。
○神野部会長 今の御質問は、よろしいですか。
○年金課長 まず、省令の関係に関しましては、御指摘をしっかり受けとめて、パブリックコメントなども含めてやらせていただこうと思っています。
○事業管理課長 事業管理課長でございます。
厚年とか国年の収納証明書につきましては、各年金事務所で発行されるという体制になっているところでございます。
○神野部会長 よろしいですか。
ほか、いかがでございましょうか。
どうぞ、出口先生。
○出口委員 これでいいと思うのですけれども、1つ、御説明されるときに、社会保険と私保険はお互いに相互補完関係にありますよね。私も保険業法や保険契約法を全世界でチェックしたわけではないのですけれども、私保険の世界も国内居住が原則ですよね。だから、そういう意味では、これから、日本の社会保険制度は、あくまで保険の枠組みを基本に使っていると思いますので、私保険との関係の面での整合性もちゃんととれているのだよということを説明されれば、さらに説得性が強い話になるような気がしました。その点、気がつきましたので。
○神野部会長 ありがとうございます。
よろしいですか。
ほか、いかがですか。
それでは、この辺でこの課題については切り上げさせていただきますが、先ほども申し上げましたけれども、この法案の今後の経過につきましては、適宜私どものこの部会に、御説明、御報告を頂戴できればと思いますので、そのようにお取り計らいいただければと思います。
引き続いて、第2番目の議題に移りたいと思います。「今後の財政検証の進め方について」でございますが、資料2-1~2-4までを事務局と年金財政における経済前提に関する専門委員会の委員長でいらっしゃいます植田委員長から御説明を頂戴いたしますので、その2つの御説明を頂戴した後、まとめて質疑応答をさせていただければと思いますので、御協力いただければと思います。
まず、事務局からお願いできますか。
○数理課長 数理課長です。
本日の資料のうち、経済前提に関する専門委員会関係の資料は2種類ございますけれども、まず、資料2-2の参考資料集を用いて、先に私から御説明申し上げます。こちらの資料は、基本的にこれまでの専門委員会の議論で用いた資料を抜粋したものでございます。
専門委員会では、財政検証に用いる経済前提の設定の考え方、つまり、経済・金融に関する専門的な事項が議論されておりますが、本日はいきなりそこから説明に入るのではなくて、財政検証や経済前提に関する基本的な考え方からスタートをしたいと思います。
3ページ、現行の年金制度の長期的な年金財政フレームワークは、平成16年改正による枠組み、つまり、保険料を固定し、年金給付水準をマクロ経済スライドにより自動調整する仕組みがベースとなっております。
4ページ、そのフレームワークのもとで、少なくとも5年ごとに人口や経済の動向の変化を踏まえて、長期的な年金財政の健全性を検証する仕組みである財政検証が実施されております。対賃金比で見た給付水準の指標である所得代替率は、前回の財政検証時の足元値は、ここに書いてありますように、62.7%という水準でございましたが、マクロ経済スライドにより徐々に低下していく見通しを、幅の広いケースに応じて確認しているところでございます。
5ページ、財政検証の前提は、ここに書いてありますとおり、大別すると4種類がございます。上から、人口の前提、労働力の前提、経済の前提、その他の制度の状況等に関する前提がございます。経済前提につきましては、御案内のとおり、足元10年程度の値につきましては、内閣府が行う経済財政に関する中長期試算に準拠することを基本としておりますが、その10年以降、おおむね100年後まで用いられる長期の経済前提を専門委員会で御議論いただいているところでございます。前回財政検証時は、ここの表にありますように、幅の広い、8ケースが設定されているという状況でございます。また、財政検証の経済前提の中には、具体的に、ここにありますように3つ、物価上昇率、賃金上昇率、運用利回りという3つになりますが、その中で大事な要素は、スプレッドと実質賃金上昇率であることを次の6ページで確認したいと思います。
6ページ、つまり、公的年金は、基本的には、収入、支出ともに、賃金水準の変化に応じて変動することになりますので、賃金上昇率に連動しない部分である賃金上昇率を上回る運用利回りでありますスプレッドと、あとは賃金上昇率と物価上昇率の差でございます実質賃金上昇率が重要なファクターになります。
7ページ、財政検証で前提としているおおむね100年間を平均すれば、給付の約9割が保険料と国庫負担で賄われていることになります。このような状況下で、専門委員会では、次期財政検証で用いる経済前提設定に関する議論が行われております。
10ページ、専門委員会の長期経済前提設定に用いる経済モデルの概念図がございます。財政検証で直接入力する経済前提は、先ほども申し上げたとおりですが、この図で☆印が書いてある部分、左側に賃金上昇率がございます。右側に運用利回りがございます。あと、注の※印のところに書いてありますように、外生で物価上昇率が与えられることになります。この長期の実質ベースでの賃金上昇率と運用利回りを設定するために、基本的には、一番上の点線で囲まれた部分にございますコブ・ダグラス型生産関数に基づいて推計が行われております。実質経済成長率は、労働の寄与の部分、資本の寄与の部分、さらにその残差としての技術進歩等で説明されます全要素生産性上昇率に分解されるということでございます。この概念図の色をつけた部分が外生入力で与えられることになります。例えば、真ん中あたりに労働投入量というところがございますけれども、これは人口推計や労働力需給推計に基づいて外生で与えられることになりますし、その他、色がついたパラメータについては、過去の実績をベースとして幅を持った設定をされていることになります。この推計の中で、賃金上昇率につきましては、関連する部分に線が引っ張ってありますけれども、労働投入量当たりの実質経済成長率をベースとして設定されております。また、運用利回りについては、GDPのうち、資本への分配分である利潤が運用収益の源泉であるという考え方で、資本ストック当たりの利潤率が運用利回りのベースになるという考え方で設定されております。専門委員会では、一昨年の7月以降、従来の専門委員会モデルであるこの経済モデルの建て方を確認されて、具体的なパラメータ設定についてもおさらいされ、議論を進めてこられたというところですけれども、基本的には、ただいま御説明したこのモデルがスタンダードなモデルで、これをベースに考えていくということでいいのではないかということ、あるいは、前回同様、幅の広い前提を設定するということでよいのではないかという御議論がございました。ただ、周辺状況の変化に応じて修正や対応が必要な点が3点ほどございました。
12ページ、まず、1点目でございますが、SNAの基準改定への対応です。パラメータ設定の基礎となる国民経済計算が、前回の財政検証時の2005年基準から2011年基準に改定されております。それによる名目GDP水準への影響の資料がこれになります。基準改定にはいろいろな複数の項目の見直しがあったということになりますが、この表の上から3行目に、研究開発、R&Dの資本化という項目がございますけれども、これによる影響が大きくなっていることがこの表からわかります。
14ページ、これらに伴いまして、例えば、経済モデルにおいて用いる資本ストックを従来の有形固定資産から固定資産ベースに変更したということがございました。
17ページ、新しい2011年基準では、経済モデルの設定のために用いるデータのうち、一部の古いデータについて公表された値がございませんので、これは従来の5年前の専門委員会でも同様なのですけれども、専門委員会において遡及推計した結果がここに書かれておりまして、この図で言うと、水色の点線部分がそれに当たるということでございます。
22ページ、2点目、運用利回りの前提の設定において必要な修正・改善を行った部分です。表が2つあって、従来の方法が上の表、今回の修正案が下の表になります。専門委員会の議論は、長期の前提設定に関することが中心となりますので、従来は、上の表の2つ目の箱の「長期の前提」の部分にありますように、まず、過去の実質長期金利に利潤率の過去と将来の倍率を乗じることによって、将来の実質長期金利の長期間の平均値を推定する。ここに②と書いてある部分があって、それに加えて、④の部分ですけれども、内外の株式等による分散投資効果を上積みするという考え方で設定されていたところです。ところが、近年、長期金利につきましては、中央銀行の政策の影響も大きく受けるなど、マクロ経済に関する試算の中での位置づけがわかりにくくなっているという議論があり、さらに、年金積立金の市場運用を開始した2001年から17年以上が経過し、GPIFの運用実績を活用する環境が整ってきたことなどから修正が行われました。つまり、下の表の長期の前提の通常ケースの箱にありますように、今回からは長期金利と分散投資による効果を分離するのではなく、過去のGPIFの実績にダイレクトに利潤率の変化倍率を乗ずることによって、求める方法が適切と考えられたところです。
28ページ、3点目でございます。平成28年年金改革法の附帯決議への対応でもございます経済変動を仮定するケースの設定を行ったということです。ここにありますとおり、平成28年年金改革法の附帯決議によりまして、賃金・物価スライドの見直しの影響を評価することが宿題となっております。
30ページ、その内容ですけれども、その影響を評価するために、経済変動を仮定するケースの設定に関する具体例がここでは記述されているということでございます。平成26年財政検証時のオプション試算でも、経済変動を仮定したところでありましたが、それよりも経済変動の周期と振幅の幅を大きくする必要があるという議論がなされて、例えば、10年周期とする必要があるなどの議論が行われたところでございます。
主なポイントのみの説明となりましたが、私からは以上でございます。
○神野部会長 ありがとうございました。
引き続いて、植田委員長、お願いできますか。
○植田部会長代理 今、事務局から非常に詳しい御説明がありましたので、それを言葉でまとめたものが資料2-1「年金財政における経済前提のあり方について(専門委員会における議論の経過報告)」になります。これを繰り返してもあれですので、この資料2-1あるいは今の事務局の話のポイントだけ、私から、ごく簡単に再度要約させていただきたいと思います。
既にお話がありましたように、専門委員会で2017年夏から昨年の暮れまでに8回の会合を開催してきたところであります。
その会合での議論の経過でございますが、主な点といたしましては、1つは「2 財政検証に用いる経済前提の基本的な考え方」の中の幾つかの点でございますが、将来の見通し、経済の見通しでございますが、これは申し上げるまでもなく非常に不確定でピンポイントで予測をすることには限界があるということですので、これまでも、そして、今後も複数のシナリオを幅広く設定して、結果について幅を持って解釈するという姿勢でいきたいということでございます。同じ節ですが、財政検証における手法でございますが、これも先ほど説明があった点ですが、コブ・ダグラスの生産関数を用いまして、これをベースにいろいろ外生的に置いた変数の動きを使って将来の運用利回りあるいは実質賃金上昇率を推計するという手法は、過去と基本的に同じものを持ち、必要な点で改善が可能であるところは改善をするという姿勢で臨むということでございます。
出てくるあるいは作業の過程で過去のやり方とやや大きく違う点は、これも2点、今、事務局からの御説明にございましたが、1つは、「4 運用利回りの設定について」のところでございます。これはまた繰り返しになって恐縮ですが、モデルから将来の利潤率の予測、推計のようなものが複数のケースについて出てまいりますが、それと過去の利潤率を比べて、この比率を、これまでは長期金利の過去の値に適用することによって将来の長期金利を推計し、それに分散効果を上乗せして運用利回りを推計するということをやっておったのですが、既にありましたように、金融政策の影響を受けて長期金利の動きがわかりにくくなっているということと、現実の運用利回りのデータがある程度の期間は得られるということになりましたので、長期金利を通じて運用利回りを推計するというプロセスを省略しまして、過去のGPIFの運用利回りに、モデルから出てくる将来の利潤率の動きを当てはめまして、将来の運用利回りを推計するという方法でいきたいということでございます。
2番目に、「5 経済変動を仮定するケースの設定について」というところで、平成28年度改正の附帯決議の新たな改定ルールが発動されるように、景気循環の周期や名目賃金上昇率の幅をやや調整してシミュレーションを行ってみるという方向でいきたいということでございます。
なお、最後に1つだけお断りですが、専門委員会におきまして、さまざまな参考となる分析を行っております。その中に、1つ、実質経済成長率と実質賃金上昇率の比較の分析がございました。成長率に比べて賃金の上昇率が低い要因は何かという分析でございました。ただ、この分析ですが、毎月勤労統計を用いてやったという分析でありましたため、今般生じましたことに鑑みまして、今回の報告からは記述を削除しております。昨年の12月の専門委員会に提出されました、そして、議論されました経過報告案にはこの部分が入っておりましたが、先ほど申し上げたような事情で今回は削除しております。ただ、経済前提設定のための直接入力に使う分析ではございません。そうではありますが、今後、次の専門委員会におきまして、この分析をどう扱うかということは改めて検討して、また御報告させていただきたいと思います。
そういうことを経まして、全体ですが、6番のところになります。パラメータの具体的な設定につきましては、外から入れますように、労働需給の推計や、内閣府の試算等を踏まえまして、改めて専門委員会において議論をしまして、推計結果をまとめまして、この部会にまた報告をさせていただきたいと思います。
私からは以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
それでは、資料2-3につきまして、山本首席年金数理官、お願いできますか。
○首席年金数理官 首席年金数理官でございます。
私からは、公的年金の財政検証に関連いたしまして、年金数理部会での議論を御紹介申し上げます。
資料2-3をごらんください。
1ページ、こちらは年金数理部会の役割でございますけれども、年金数理部会は、社会保障審議会のもとに設けられた部会でございまして、年金制度の安定性の確保の観点から、財政検証の結果でございますとか、各年度の決算につきまして報告を求めて審議を行っているという部会でございます。このスライドの左下にございますけれども、財政検証の結果、審議も検証するということで、そのことを「ピアレビュー」と呼んでいるということでございます。
2ページ、昨年11月に第78回社会保障審議会年金数理部会を開催いたしまして、この財政検証についてピアレビューをする際の着眼点について、意見交換を行ってございます。この回では、事前に外部講師の方から国際アクチュアリー会がまとめた社会保障の数理に関する実務基準などにお話を伺いまして、それを受けて意見交換を行うという構成になっていたということでございます。
3ページ、この日に委員から出された意見をまとめてございます。事務局の責任で、内容ごとに分類をさせていただきまして、同一委員の意見はまとめて記載し、便宜上、委員ごとにABCのアルファベットを振っているということでございます。まず、3ページからごらんいただきたいと思います。3ページから4ページにかけて、財政検証の前提条件のあり方に関する御意見でございます。前提条件につきましては、国際アクチュアリー会の実務基準では過大推計にも過少推計にもならない中立的なものとされておりまして、この中立的という点に関連した意見が幾つかございました。順に御紹介いたしますと、Aの1つ目のポツに赤字で書いてございますが、財政検証の前提条件は、計画や目標と整合的というよりは、現実的実現性が高いと考えられるものを設定すべきといった意見があったのと、Bの2つ目のポツにございますけれども、例えば、賃金上昇率について、近年の労働分配率の低下や非正規雇用の増加といった傾向が、この方向で100年継続するような設定は妥当ではないといったことをおっしゃっておりまして、このような考え方のもとで中立的ということを議論すべきという御意見がございました。Cは、足元の経済前提に関する意見でございますけれども、政府の経済見通しは、目標としての色彩が濃く、楽観的なバイアスがかかりがちなので、財政検証の前提は現実的なものとすべきといった御意見です。
4ページ、Dですが、黒い字のところにありますけれども、男性の壮年期の労働力率の低下などによって厚生年金の納付者が減少する危険性を例に挙げつつ、赤字で書いていますけれども、前提については、過度に楽観的な数字が使われていないか、大事な変化を見落としていないか、慎重にチェックすることが大事と、そのような御意見があったということでございます。3ページのAの2つ目のポツにも「全体としてリスクと不確実性をどのように織り込むかに留意することが重要」という指摘があったのですけれども、このリスクや不確実性に関連して、4ページのEとFに御意見がございまして、まず、Eですけれども、複数のシナリオでシミュレーションを行わないとリスクがわからないといったこと、それから、ブレーキをかけたようなシナリオも検討し、経済・人口の前提条件の中でできることとできないことを客観的に見ないといけないといった御指摘。Fですけれども、足元経済前提に関しますけれども、国民は、前回の財政検証の経済前提のシナリオHよりももっと悪い状況を想定していることをおっしゃっておりまして、内閣府の中長期試算よりも低いシナリオを考えてはどうかといった御意見もあったということでございます。
5ページ、リスク、不確実性とも関係があることでございますが、複数の前提条件を置くことに関する御意見でございます。Gにございますように、経済の前提はボラティリティーが大きいので、複数のシナリオを用いることが現実的だということで、足元についてもより実現性の高い複数のシナリオという意見がございました。次のHとIは、複数のシナリオの取り扱いに関する意見でございますが、このHの御意見は、複数のシナリオを置くときに、それぞれに濃淡をつけずに並列的に示すことが重要とおっしゃっていますが、それに対しまして、Iでは、並列的にすると給付水準の調整終了時期が見えにくくなるといった御指摘があったということでございます。このスライドの5ページの下半分は、基礎となるデータに関する御意見でございます。Jにございますけれども、データの精度や信頼性につきましては、これは年金数理部会でということですが、さらなる検証が必要だということをおっしゃっております。データにつきましては、厚生労働省や共済組合でも管理をしているわけでして、それに基づいて財政検証が行われますので、横串を刺して確認をする必要がある旨も指摘されていらっしゃいます。これに関連して、Kの方は、データの正確性は実施機関がしっかりした内部統制をつくって、その運用を年金数理部会で確認するという御意見でございます。
6ページ、確率論的シミュレーションに関する御意見です。この確率論的シミュレーションと申しますのは、シミュレーションの手法の一つなのですけれども、将来の前提としている要素が一定の確率分布に従って変動するという仮定を置いた上で、そのシミュレーションの結果を確率的に表現するという手法でございます。年金数理部会のこれまでのピアレビューでこの確率論的シミュレーションの実施を提言したという経緯があって、このような意見が出てくるということでございますけれども、L~O、4名の方に御意見をいただいておりまして、詳細には申しませんが、いずれも確率論的シミュレーションには課題があるという御認識はお持ちではあったのですけれども、ただ、このM~Oの3名の方は、それでも確率論的シミュレーションにはすぐれた点もあるといった御意見があったということでございます。例えば、Mにございますけれども、経済前提、8つのシナリオの意味づけのようなことをするときに、それぞれのシナリオがどのくらいの確率のところに入っているのかを目安として出すという補助的な使い方ができるのではないかといった意見があったということでございます。
7ページ、8ページ、御紹介申し上げます。7ページから8ページは、財政検証における情報提供のあり方に関する御意見でございます。Pの方は、現状でもかなり情報提供があると評価しておりまして、ただ、その上でシナリオの起こりやすさを数値か言葉で示す必要があるといった御意見がありました。このPの方の4番目のポツにございますけれども、開示内容が現実的には一般の方にはぴんとこなくて自分事として捉えられないという御意見をおっしゃっております。これと同趣旨の御意見は、R、S、Tにもございます。かいつまんで御説明をいたしますと、例えば、Rの3つ目のポツにございますけれども、年金水準の将来見通しを、モデル世帯だけではなく、自分に近い世帯でどうなっているのかを見せて、自助に向けた準備をしてもらわないとといった御意見もございました。
8ページ、Tの方の2つ目のポツをごらんいただきますと、公的年金の年金額の分布などの情報の提供を考えるべきだということで、個々人の生活に近づけた情報提供をすることに意味があるといった御意見があったということでございます。
説明は以上ですが、本日紹介したもののほかにも年金数理部会のあり方に関する意見もあったのですが、この場では財政検証のあり方に関連する意見のみを取り上げて紹介させていただきました。
資料2-3の説明は、以上でございます。
○神野部会長 それでは、最後、2-4、武藤数理課長、お願いします。
○数理課長 続きまして、2-4「今後の財政検証の進め方について」です。
2ページ、まずはスケジュールを御説明申し上げたいと思います。本日の第7回年金部会におきまして、昨年12月末の専門委員会でおまとめいただいた経済前提の報告の①が先ほど行われたところでございます。今後は、労働力需給推計や内閣府の中長期試算を織り込んで経済前提設定の作業を行い、専門委員会での経済前提の取りまとめをいただいた後に、改めて年金部会に経済前提の報告の②をいただく予定となっております。その後、検証作業のためのお時間をいただきまして、作業終了後に財政検証結果の報告を行う予定です。さらに、財政検証結果を踏まえたその後の議論につながっていくという流れでございます。
1ページ、経済前提については確認したとおりですが、第2パラグラフ以降が、制度改正の検討のためのオプション試算に関することでございます。前回の財政検証では、平成25年社会保障制度改革国民会議の報告書やプログラム法に掲げられました検討課題を踏まえ、法定の財政検証とあわせて大胆な制度改正を仮定したオプション試算が行われたことは、御案内のとおりでございます。今回の財政検証においても、これまでの年金部会での議論等を踏まえて、オプション試算は実施したいと考えております。
なお、11ページ、法律の検討規定が掲げられておりますとおりなのですが、前回の財政検証を踏まえて実施された、平成28年改正の改正法において速やかにプログラム法に掲げる事項について検討を行うことが規定されております。よって、基本的にはこれまでの年金部会の議論もプログラム法の検討課題の柱に沿った形で議論が進められておりますし、オプション試算も1ページ目にあるとおりですけれども、それに沿った形となっておりまして、具体的なメニューが、下の点線の枠内のとおりで、①から③の内容で考えているというところでございます。
基本は以上なのですけれども、3ページ目以降は参考資料ですので、逐一の御説明は省略したいと思いますが、1枚だけ、最後の12ページをおめくりいただきたいと思います。
12ページ、先ほど昨年11月の年金数理部会における議論について御紹介がありました。年金数理等の専門家である各委員からの貴重な御意見として受けとめ、今後の財政検証の参考にしたいと考えているところですけれども、具体的に4点ほど考えたことをコメントさせていただきたいと思います。まず、ここの1のうち、最初の2つのポツでしょうか。財政検証における経済前提の設定のあり方や複数の前提を置くことに関する御意見についてです。先ほど御説明を聞いたところで、各委員によって多少温度差を感じましたけれども、基本的には、未来は予測不可能だという立場の中で、過度に楽観的でも悲観的でもなく、幅の広い複数シナリオで現実的に前提を設定すべきであるということだったかと思いますけれども、経済前提の専門委員会においても基本的にはその流れであったのかなと思っています。また、基礎となるデータの信頼性の確保の話がございました。これは、各実施機関とのデータのやりとりも含めて信頼性の確保が必要である点は、大変重要な視点だと考えておりますので、しっかり頭に入れて対応していきたいと思っています。年金財政の確率的シミュレーションや、あるいは年金額の分布推計の対応についての御意見がございましたが、この辺につきましては、その優先度とか、あるいはそのシミュレーションで信頼に足る試算が可能かどうかということなどを検討しながら対応していきたいと考えているところです。最後に、財政検証における情報提供のあり方に関する御意見について、前回の財政検証でもかなりの量の情報提供があるという御意見はありましたものの、今後も、専門家向けに加えて、あるいは一般国民向けの情報提供の伝え方を工夫しながら取り組んでいくべきという御意見が多かったと感じました。特に後者の一般国民向けの情報提供に、より努力が必要かなと感じたところでございます。
私からの説明は、以上です。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
財政検証にかかわる資料2-1~2-4まで一括して御説明を頂戴したわけでございますが、それでは、委員の皆様方から御質問を。
出口委員、どうぞ。
○出口委員 この年金部会が始まる最初にたしか申し上げた気がするのですが、まず、前提については、本当によく御検討いただいて、そのとおりだと思うのですけれども、これは数理部会でも一般国民にわかりにくいという御意見がたしかたくさん出ていたと思いますが、諸外国と比べて、前回の財政検証のときに、日本ほど精緻な前提を置いている国はないという御説明をいただいたことを記憶しています。未来がわからないのであれば、確かにこれだけ精緻にやられたことは本当にこの作業の信頼性を高めるものであるとは思うのですけれども、諸外国に比べて異常に細かい前提を置いているということが本当に妥当なのかどうか。これからはグローバルの時代ですから、これはもちろん精緻に計算をした上で、国民にちゃんと周知徹底するときの技術論の問題かもしれませんが、前提条件においては、グローバルスタンダードに合わせるという視点がないことは少し残念な気がします。もっと世界と合わせてほしい。
2点目ですが、これは修正動議を出したいと思うのですけれども、オプション試算については適用拡大をやっていくという方向であれば、この2番のオプションの所定労働時間が週20時間以上とか、一定の賃金収入があるとかという前提を置くこと自体がおかしいのであって、本来のオプション試算の基本は、適用拡大については被用者全体を全て適用対象とした場合のオプションをまずはやった上で、その中の細分として、仮に週20時間とか一定の賃金がある人はどうかということをやるべきであって、適用拡大という大きい理念や方向があるのであれば、条件をつけたオプションをやるというのは根本的に間違っている気がするのです。ですから、ぜひ、今回の適用拡大については、全被用者を適用拡大するということを基本において、その中のケースとして一定の労働時間や一定の賃金収入をやるということを示していただきたいと思います。
○神野部会長 課長に御答弁いただいていいですか。
○数理課長 まず、1点目の実績に準拠して経済前提を設定すべしというお話について、この年金部会でそういった御意見をいただきまして、専門委員会でも年金部会からの御意見ということで紹介させていただきまして議論を進めさせていただいたところです。運用利回りの前提の設定のところで、実績を踏まえながらやるという点で、生かされている側面はある一方、これまでやってきたモデルも大事にしながらやったほうがいいという御意見もございまして、基本的には今までやってきたモデルをこれ以上複雑にはしないということで、この御意見は生かされてきたのかなと自分としては理解しているところなのですけれども、いずれにしても、今後、きょうの貴重な御意見も踏まえて考えていきたいと思います。
○出口委員 もう少しシンプルにしていただきたいという気がするのですけれども、そこは結構です。
○数理課長 オプション試算につきましては、きょう、これからまたいろいろな御意見も出てくると思いますので、それも踏まえて後半にお答えさせていただければと思います。
○神野部会長 植田委員長、補足して何かございましたら。
○植田部会長代理 1点目につきまして、出口委員からかなり早い段階でさっきのような御意見をいただいたのは覚えておるわけですけれども、結果的には、私どもとしては、出口委員がおっしゃった中で、このプロセスに対する外からの信頼性を重視して、特に一部に年金の持続可能性についての懸念があるとか、あるいは、マクロ経済スライドのような厳しいこともやっていかないといけないという中では、ある程度、できる限り、完全には見通せない中でも、将来を見通したいという作業をやっているのだというところはしておきたいなという気持ちで進めたということだと思います。
○出口委員 よくわかりました。
○神野部会長 よろしいですか。
どうぞ、米澤委員。
○米澤委員 今のところは随分テーマが多いのですけれども、順番からすると後のほうになるのですけれども、年金数理部会に関してお尋ねします。私は経済前提のほうに入っているのですけれども、そもそも年金数理部会のミッションというか、そこが何なのかを教えていただけないかと思っております。私は、例えば、今、武藤さんから説明があった12ページがまとまっているので、財政検証における情報提供のあり方ということで、5年に一度行いますので、その5年間は情報があまりないわけなので、その間をつなぐ現在の年金財政はどうなっているのか、今、走っているモデルというのでしょうか、そこのところでどのような状況にあるのかを発信していくのが一番のミッションかなと思っております。それは極めて重要なので、しかもいいアウトプットを出されているのですけれども、毎回言っているのですが、どうも国民にうまく伝わっていない。年金というと必ず不安だとか、年金で安心というのはあまりないのでしょうけれども、仮にここのアウトプットがリリースをされたときに、何かそれが大きくテーマになるぐらい重要な内容を持っているので、それをうまく国民に今の状況はこうなのですよということを年に一度報告されることに徹して御尽力いただけないかなと思っているわけです。
もう一点のほうは、特にきょうの前半、数理部会から経済前提のモデルに対するいろいろな注文があったかと思うのです。このモデルは予測ではなくてprojectionということを限ったとしても、打たれ弱いというか、たたかれ弱いことは百も承知で、でも、これ以上何かいいものはないのではないだろうかということでやっているわけなのですけれども、ここに対する数理部会からの批判は幾らでもあると思うのですけれども、もしその場合には、今後は、うまくそれらが経済前提の作業を行う年にうまくそれが融合されるような格好で生かされていくと非常に効果的かと思っているのですが、残念ながら、私は今まで数理部会からのこのような意見を作業するときに正面から聞いた、反映した、という印象は余りなかったので、ある意味では残念だったということなのですね。
そういうことで、改めてもう一度数理部会のミッションで、両方あったとしても、今、言った2点でもって注文を言いたいなということで意見を言わせていただきました。
以上です。
○神野部会長 数理官、いいですか。
○首席年金数理官 年金数理部会のミッションということでございますが、資料2-3の1ページにもまとめているとおりでございますけれども、制度の安定性のところの観点から検証するのですが、毎年の決算の結果をヒアリングする年に一回のチェックのほかに、5年に1回の財政検証を検証するという2つのことをやってございます。これは基本的にはセットなのだろうと思いますけれども、それで財政の制度の安定性の確保を見てきているということでございます。
情報提供のあり方に関する意見が今回は出てきておりますけれども、どちらかというと、これは数理レポートといいますか、財政検証のレポートに関して、もちろん専門的なことが書いてあるというのは大事だとは思いますけれども、正確に、かつ、わかりやすく書いてあるということも大事かということで、そういう観点で検証していくということでございまして、そういう意味で意見が幾つかあったということでございます。
よろしいでしょうか。
○神野部会長 いいですか。
どうぞ。
○小林参考人 資料2-4の2ページに、今後の財政検証の進め方のスケジュールがございます。この中で、検証作業を実際に何月に行うのか、予定が明記されておりません。もし現段階で検証作業を何月ごろに実施する予定か決まっているようでしたら、ご教示いただきたいと思います。まだ調整中ということであれば、今後、検証結果を踏まえた議論が十分にできるように、スケジュールの調整を行っていただきたいと思います。それが1点目でございます。
もう一つ、オプション試算の内容について、この資料の1ページに記載がございますけれども、これに加えて、例えば、在職老齢年金制度を縮小あるいは廃止した場合の影響や、年金の受給開始可能期間を70歳以降に拡大した場合の影響等も、可能であればオプション試算に加えていただきたいと思います。そして、被用者保険のさらなる適用拡大につきましては、先ほどの出口委員の意見に加えて、幾つか条件を加えた試算をしていただければと思います。週20時間という労働時間の要件や、月収8.8万円という賃金収入の要件、企業の従業員数501人以上といった要件等々、現状の適用要件を可変させた試算をしていただければと思っております。
最後に、マクロ経済スライドによる調整がフルに発動した場合の試算も、もし可能であればお願いしたいと思います。
以上でございます。
○神野部会長 現時点でお答えできるところで結構でございますので、いろいろ状況は変わると思いますので、お答えできるところをお答えいただければ。
○数理課長 本日、これからいろいろ出てくるかもしれませんので、現時点でお答えできる範囲ですけれども、1つ、ご発言が出ました在職老齢年金の件につきましては、前回の財政検証のオプション3では、在職老齢年金の制度を廃止したということを前提としてやっていたわけですけれども、オプション試算でやるかどうかということも含めて検討していきたいと思っております。
○神野部会長 検証作業の見通し等々、大まかで結構でございますので、何かあれば。
○数理課長 スケジュールにつきましては、この資料の2ページ目のとおりなのですけれども、本日、経済前提の報告①をいただいたところで、今後、内閣府の中長期試算や労働力需給推計を入力して専門委員会において具体的な作業をしていただくことになっております。その後、年金部会において報告し、一定のお時間をいただいた上で実際の検証作業を行うということですけれども、作業は、やってみないと、思ったよりも時間がかかってしまうような項目もあるかもしれませんし、逆に、予定よりも早くはかどったりとかということもありますので、そこについては、作業が終わり次第、公表するということで考えさせていただきたいと思います。
○神野部会長 権丈委員、どうぞ。
○権丈委員 この財政検証の話なのですけれども、財政検証は不幸な歴史なのですね。諸般のいろいろな状況がある中で、政治的な理由の中でも不幸な歴史がありますし、その中で、テクニカルなところで残念なことがあって、結構不幸なことがあったわけですけれども、資料2-1の2ページにありますように、この2番目にありますように、将来は不確実だから予測はできない。だから、投影をして、PDCAサイクルだったらCのところで財政検証を行って、それで将来に何らかのことが起こり得るのであれば、それに対応していこうということをやるために、この財政検証があるわけなのですけれども、これがしっかりと投影であるということ、forecastではなくて投影であることの数理部会の中でのBさんも同じことを言っているわけですけれども、まずはそれを認識しないことには始まらないと同時に、これまでの不幸を繰り返していくことになるということですね。
投影であるとすると、複数のシナリオに基づいて、データを一定のシナリオに基づいて将来を投影するわけですけれども、そうなると、「オプション試算」という名前が後につきましたけれども、あれは当然あってしかるべきものなのですね。だから、これからやっていきますよという、この資料2-4の中にありますように、国民会議の報告書の中で、財政の見通しを示すだけでなく、上記に示した課題の検討に資するような検証作業を行い、その結果を踏まえて遅滞なくその後の制度改正につなげていくということとセットになって初めてこのPDCAサイクルが完成していくようなものですので、これから先、このオプション試算をしっかりとやっていただくと同時に、それは投影であると。
その投影をしていく上で極めて重要なのは、実質賃金上昇率と運用利回りというスプレッド、この2つが、先ほどもちょっと話しましたように、技術的にみんなが理解していなかったから大きな不幸が起こっていくわけですけれども、この部分を、資料2-1の2ページの(3)と(4)というところはしっかりと理解した上でこの議論に参加していただきたいと同時に、資料2-2をごらんになっていただきたいのですけれども、6ページと7ページのところで、賃金が上がれば給付が上がる、賃金が下がれば給付が下がるという、自動調整メカニズムを持っているところでは何が大切かということがしっかりと6のところに書いてあって、7ページのところだったらば、積立金から得られる財源は向こう100年ぐらいを見ると大体9%ぐらいのところなんだよというところをしっかりと押さえてもらわないことには、またこの利回りのところばかりをみんなで議論して、何をやっとるんだという形で、本当にやらなければいけない改革は、先ほど出口委員からも出ておりましたような適用拡大であるとか、やらなければいけないことは本当にあるのですけれども、そういうところに社会のエネルギーが集中できるように、しっかりと慎重に年金局では情報を発信していっていただきたいと思うと同時に、過去2回ぐらいのあのとんちんかんな騒動が起こらないような形で、しっかりと課題に焦点を当てた形で、この年金の議論を、ここ1年、また2年ぐらいかけて、しっかりやっていただく準備をしていただければと思っております。
○神野部会長 どうもありがとうございました。
菊池委員と藤沢委員も早目に御退席されるということでしたので、何かありましたら、どうぞ。
○菊池委員 年金数理部会における議論につきまして、紹介していただいたことにつきまして、非常にふがいないまとめ役なのですけれども、その立場から御礼申し上げたいと思います。
前回、ここまで数理部会の議論を取り上げていただいていたかなと、記憶にないのですが、数理部会でもそういった、我々がやっていることは一体何なのだという議論をしながらやっておりますので、その中で、今回、きちんとこの年金部会に受けとめていただいて、さらに数理課長からそれを踏まえた考え方までお示しいただいたということは、大変感謝申し上げます。
先ほど、この数理部会の役割は何なのだという米澤委員からの御質問がございましたけれども、2-3の1ページ、左下に書いてありますけれども、今後の財政検証の提言というところまで含まれておりまして、そういった認識のもとで検討させていただいたということで、ただ、先ほどお話がございましたが、その作業と経済前提との行き来というか、情報提供というか、そういったことはどうなんだという御発言がございましたが、そのあたり、今後の課題なのかもしれないなと思った次第でございます。
中身ではございませんが、以上、私から終わります。
○神野部会長 ありがとうございます。
さらに何かあれば。
○藤沢委員 私も失礼しなくては。
私は、今の権丈委員の御意見に強く賛同するところでございますので、まさに皆さんの御意見に対して真摯にお答えいただければと思います。
以上です。
○神野部会長 どうぞ、高木委員。
○高木委員 きょう見させていただいた財政検証の方法論とそのシミュレーションなど、そういったものがさまざまに示されていたのですけれども、最後の説明では、これは専門家だけではなくて、一般国民向けにどのように伝えて情報提供していくべきなのかというお話があったのですけれども、きょうお話しされたような内容を、全ての人が理解することはまず不可能ですし、ここに座っている委員の方々も全員がどれほどわかっているのかというくらいのお話なわけです。私が思いますのは、こういった財政検証や経済前提の設定が、きちんと信頼できる専門家が理解されたうえで、正しい検討がなされているということであれば、私はそれで間違いないと思うのですね。
国民に伝えるべきことは、ここに示されたことのわかりやすい概略と、具体的モデルと、そのモデルが非常に信頼できるものであることとともに、社会保障制度の意義をきちんと理解していただければよいとむしろ考えています。
それとともに、先ほど、日本だけではなく他国の財政検証の話も少し出ていたかと思うのですけれども、日本のきょう見てきたこの財政検証が、他国にないほど精緻にできているというお話があったのですが、例えば、私もそうですし、多くの方がそうだと思うのですけれども、他国の社会保障制度の仕組み、年金の仕組みは、改正法があって、新しい制度、新しい施策がどうなったのか、その目に見える形の部分しか我々に伝わってこないし、そこしか見ないわけですね。どういう精緻な経済前提設定や財政検証が行われた結果としてこれが出たのかという、そのプロセスをいかほど皆さんは知っているのだろうかと思うわけです。むしろ、例えば、今、この委員の方々の中で、そういった海外がどうやってそれを推計したりシミュレーションをしたりしたのかとか、そういうことをわかっている人がいれば、むしろそういったことを取りまとめて教えていただきたいと私は思っています。
言いたいことは、日本がこれだけ頑張って財政検証をしている。では、他国はどうなのか。日本がとても精緻なのか。それは、今、私は情報がなくてわからないのです。そのあたりをむしろ教えていただきたいと考えています。
以上です。
○神野部会長 ここまでで、まとめて何か事務局でコメントをいただけるところがあれば。
○数理課長 私から、今、わかる範囲でお答えしたいと思います。
本日、経済前提設定の話と財政検証そのものの話と2つございますけれども、出口委員からお話があった諸外国並みに簡素化した方法でいいのではないかということは、経済前提の設定のほうに関することでございます。日本は、先ほど植田委員長からも御発言がありましたが、対外的な説明を重視して、つまりしっかりやっているという説明を重要視して、専門委員会で経済・金融に関するモデルをつくってやっているということですけれども、諸外国においては割と実績とかを踏まえて経済前提を設定しているケースが多いということを専門委員会でも確認させていただいたところで、そういう状況になっているということです。
財政検証のシミュレーション自体については、特段日本が進んでいるということでもなくて、諸外国とも割と同じようなシミュレーションのレベルでやっているのではないかと感じておりますが、いずれにしても、今後、わかったこともありましたら、先生にお伝えしたいと思います。
○神野部会長 どうぞ。
○年金課長 年金課長でございます。
2点、御報告したいと思います。
1点目は、小林参考人からお話がありました改革の議論との関係につきましては、財政検証自身は、数理課長が御説明しましたように、最善の努力をもって行うことになりますけれども、その後の議論につきましては、もちろんスケジュール設定とか、いろいろ議論や日程の立て方は、部会長と御相談しながら、十分に御議論いただけるような形でやるということになろうかと思いますので、財政検証自身は最善の努力でということで御理解いただければと思います。
お話を伺っていまして、高木委員からもお話がございましたけれども、きょうは財政検証の話ということで財政検証に情報提供の話も集約化されてお話が出ているように思いますけれども、鑑みますと、財政検証そのものとしての情報提供の必要性と、財政検証も踏まえながらの国民向けの情報提供の仕方は、必ずしも財政検証のときに全てを一体のものとして出さなければならなく、それで終わりということではございませんので、今後の御議論も受けとめながら、例えば、財政検証そのものや数理レポートは、こういう性格・性質のものなので、こういった形で提供する、しかし、そこから出てくるさまざまなアウトプットは、例えば、違う形違うチャンネルでしっかりお伝えするとか、そういうことも含めて私どもは受けとめさせていただき考えていきたいと、御議論をお聞きしながら思った次第でございます。
○神野部会長 ありがとうございます。
小野委員、どうぞ。
○小野委員 ありがとうございます。
資料2-4の最後のページで確率論的シミュレーションというものが出てまいりました。これに関連して、私も年金数理部会の委員の一人でもございますので、資料2-3の年金数理部会の資料についてコメントをさせていただきます。
これをごらんいただくと、委員の中にはさまざまな御見解があるということがおわかりいただけるのではないかと思います。その点が端的にあらわれているものが確率論的シミュレーションの部分でありまして、これは、既に御指摘のとおりで、不確実性に対する捉え方の違いがあらわれているのではないかと思っております。確率モデルを用いるということは一つの確率過程を想定することでありまして、そのモデルに含意されております期待値を意識させるとともに、分布という形で表現されたリスクのみを意識されるということになろうかと思いますが、不確実性に関して本当にそれでよいのかどうかというあたりは考えなければいけないところかなと思ってございます。
オプション試算について2点ほどコメントをさせていただきますと、まず、年金額改定ルールの見直しに関しましては、第1回の部会では、平成28年改正との関係で、マクロ経済スライドのフル適用は時期尚早である一方で、議論そのものが必要という御説明をいただいているところでございます。政策効果を計測するという意味でも、平成28年改正からさらに踏み込んで試算をいただきたいということが1点でございます。
3つ目の保険料拠出期間の延長に関して、私は第2回の部会で過去のオプション試算をベースにしながらいろいろ工夫をしていただきたいと申し上げたところでございます。例えば、労働力調査によりますと、国民年金の第1号被保険者として想定されていると思われる自営業主とか家族従業者という方々のうち、60歳以上の方が半分を超えている状況でございます。これらの方を支え手から外すという現行の仕組みは、私は非常にもったいないと思っておりまして、延長部分に対する国庫負担の問題等々はあろうかと思いますけれども、依然として工夫をした上で試算をお願いしたいと思っております。
以上でございます。
○神野部会長 ありがとうございます。
原委員、どうぞ。
○原委員 話が前後してしまうかもしれませんが、私からは、今後の財政検証の進め方についての中で、情報提供のあり方というところで、先ほど事務局からもあったのですけれども、もちろん財政検証のときだけではなく、常に、公的年金や私的年金、そして、老後の生活設計ということを含めて、今後、考えていかなければいけないと思っています。
本日、参考資料1として配付されている「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」をざっくり見させていただいたのですが、財政検証ということで見ると、この中に、非常に興味深いというか、一般の方々のこれまでとは異なる意識が見受けられた項目があったので少し触れたいと思います。今日はおそらく見る時間がないと思うのですけれども、「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」の中で、例えば、「2 公的年金制度への関心および広報について」というところで、33ページあたりだったと思うのですけれども、「ア 公的年金制度に対する関心の内容」というところを見ると、自分がいくら受け取れるかの次に、少子化・高齢化が進んでいく中でこの将来の公的年金制度全体の姿はどのようなものになるのかというものがきているのですね。そしてその次に、自分は年金をいつから受け取れるのかとなっています。回答としては定番の「いつからいくら」という項目を挟んで、その間に、公的年金制度の全体像というか、将来どうなるのかということが関心の内容としてきているのが非常に興味深いと思って見ておりました。
さらには、その後ろのほうの47ページあたりにあったのですけれども、「(4)公的年金制度に関して知りたいこと」という中にも、トップのところで「給付額・給付水準の見通し」というものが出てきているので、財政検証の年ということもあるのかもしれませんが、一般の方の公的年金に対する関心の変化もうかがわれて、非常に興味深いところでありました。
さらには、この中でも、44ページなどに、どこから情報をとってくるかという情報源についてきいてますが、テレビという回答が最も多かったのですけれども、新聞・雑誌なども並んでいまして、その一方で、厚生労働省や日本年金機構などの国のホームページなどの広報が4番目にきているのですね。だから、ここはもっと積極的にメッセージを発信していっていいのかなと思っております。
今、いろいろな媒体からさまざまな方が情報を発信できる時代なので、どういうところやどういう人が発信しているか、なかなか一般の方には区別がつかないというところもあって、与えられた情報をうのみにしてしまうような可能性も危惧しているところでございます。財政検証の年ということにもなりますので、そういった意味では、ぜひ進捗状況などを含めて正確に伝えていかなければいけないのではと思っております。また、先ほど全体を理解するのは非常に難しいという御発言もありましたけれども、知っていただきたいことをできるだけわかりやすい発信の仕方で、用語についてもそうかと思いますが、手段、方法、資料2-3にあったような個々人の方の生活にもう少し近づけて情報を提供するなど、どうしたらよいかということを考えなければいけないと思います。そういう情報発信の手段・方法は財政検証についてだけではないことだと思いますので、この機会、この年に改めて、より積極的に考えて、変えていくべきところは変えていくという、より進んだ情報発信の仕方を考えていかなければいけないのではないかと思っております。
以上でございます。
○神野部会長 ありがとうございます。
山田委員が初めてなので、では、山田委員。
○山田委員 1つ質問と、1つ意見というか、コメントをさせていただきたいのですけれども、質問のほうはややテクニカルになるのですけれども、資料でいいますと、2-2の経済前提のところで、22ページに、今回の運用利回りのやり方を変えられたということで、理由は、御説明があったように、足元の長期金利が、金融政策で、ある意味、異次元の緩和をやっているわけで、なかなか合理性がなくなっているのではないかという話と、実績がGPIFのデータの実績が揃ってきたからということなのですが、一方で、ちょっと気になったのが、24ページを見ると、運用実績はかなり年によって大きく振れていますので、平均をとるにしても、具体的にどういう期間をとっていくかによって数字がかなり変わってしまうのではないかと、少しこれが気になるのですね。
それと、最終的には、延ばすときに、利潤率でやるということだと思うのですけれども、利潤率との相関関係がどうなっているかとかということもある。それはこれからもう一回検証されていくということだと思うのですけれども、そのあたり、妥当な形で設定していくことが重要だと思うのですけれども、今、そこに対して、実績のところをどういう数字を使うか、平均の数字ですね。実績のGPIFの数字をどの辺で使うかということがあれば、ちょっと教えていただけないかという話です。
○神野部会長 ありがとうございます。
どうぞ。
○牧原委員 私も同じポイントで御質問したいと思います。GPIFというのは、厚生労働大臣の設定する中期目標に基づいて、積立金の運用の基本ポートフォリオをつくって、それで運用をしていくものであると理解しています。今回の財政検証は、その中期目標設定の基礎になると思うのですけれども、GPIFの実績に基づいて目標が設定される恐れがないか、つまり運用成績が芳しくなかった場合は低い目標になるのか、良かったら高い目標になるのか、そもそもガバナンスという観点で、正直、これはこのままでいいのかなという疑問はあります。
もう一つ、過去の運用状況を見てみると、10年前はちょうどリーマンショックが起きたところで、それ以降は株式の運用としては非常にラッキーな状況だったと思います。今は50%が内外株というポートフォリオで運用されていると思うのですが、ある意味、ラッキーな状況での実績をベースに、今後の運用利回りの前提を置くということになると、今後、それに基づいてGPIFの基本ポートフォリオを組むということになり、かなりリスクをとった運用をしないといけないのではないかという懸念も少々感じるところがあります。以上の点から、従来は実質長期金利+分散投資というやり方で運用利回りを設定していた通常ケースの場合において、GPIFの実質運用利回りの実績を用いて運用利回りを設定するという今回のやり方について、少々疑問を感じるところがあり、見解をお伺いしたいと思います。
○神野部会長 関連してですか。どうぞ。
○平川委員 私も牧原委員と似たような意見を持っていまして、確かに長期金利をもとに見通しをするというのはなかなか難しいというのは理解しつつも、この間の経済状況に応じたGPIFの運用は、たまたま現在の経済状況だった中での結果に対してのものであるという一歩深い検討が必要なのではないかと思います。その一方で、債券については、資料2-1の6ページのところに書いてあるのですが、債券についても、将来の運用利回りを利潤率から推計する方法が適当と考えられるとなっているのですが、現実的にGPIFにおける債券の運用ということで言うと、国内債券については相当厳しい状況にあるのではないかと思いますので、この債券も含めたということが本当に適切なのかどうかということをもう少し慎重に検討してもいいのではないかと感じたところであります。
関連しての質問は、以上です。
○神野部会長 武藤課長、お願いします。
○数理課長 ただいまの質問ですけれども、GPIFの運用というのは、債券・株に分散投資をしておりますので、単年度の実績で見てみると変動があるということで、山田委員から御紹介があった実績のページでも変動しているところです。このあたりの議論は、きょうの資料2-1の6ページに関連する記述がございまして、まさに(ウ)の部分ですけれども、GPIFの運用実績はGPIFの運用目標や基本ポートフォリオの設定に依存する一方、GPIFの運用目標は財政検証の経済前提に基づき設定されていることがあります。このことを踏まえて、運用利回りの実績を活用するに当たっては、年金積立金の市場運用17年の平均値、これは必ずしも悪い結果となっておりませんので、それのみを活用するのではなくて、実績の変動の幅を踏まえる方法等により保守的な設定とすることが望ましいという議論があったところでございます。具体的な変動の幅を踏まえるに当たっては、一定の長期間の平均をとる必要があるものの、例えばということで、過去10年間の移動平均の幅を踏まえる方法が考えられる。それで保守的に設定していったらどうかという議論がございました。
あと、債券の運用が、今、難しくなっているのではないかという平川委員の最後のご発言からしますと、もともとの設定方法が長期金利、つまり国内債券の利回り+分散投資による効果となっていたものが、全体の運用実績に対してそれの利潤率倍率を掛けるという方法になりましたので、どちらかというと、債券のウエートは新しい方法のほうが薄まっているのかなと感じているところです。
専門委員会の先生方からも何か今の御質問について補足等がございましたら、よろしくお願いいたします。
○神野部会長 ございますか。
どうぞ、委員長。
○植田部会長代理 過去の実績を利用する場合に、とりあえず近い過去は株式を中心に非常にいい時期に当たっていたということについての配慮、あるいはひょっとしたらGPIFが物すごく一生懸命やって、その結果、パフォーマンスがよかったかもしれない。これは、将来にそのまま延ばしてしまうのはリスクがあるのではないかという両方の点については、今、数理課長がおっしゃいましたように、十分な対応ではないかもしれないのですけれども、過去の利回りも変動幅を使って保守的にある程度設定するということで対応する方法を考えていますが、もうちょっと議論してみたいと思います。
それから、債券のところが使われるケースは、先ほどのモデルから将来を見通すという作業ではなくて、別のケースとしまして、マーケットが見ている将来の金利を基準に幾つかのケースをつくってみたらどうかというケースに対応している話かと思います。そうしますと、これは債券をベースに話を始めないといけないので、債券の利回り+分散効果という、前にやっていたようなアプローチに近いような手法に戻るわけですが、そのときに使う債券の利回りは、過去2~3年、債券利回りがよかった、悪かったということを直接用いるのではなくて、現在、マーケットを見ていると、例えば、10年先、15年先の金利がどういう状態であるかというデータを用いて、そこを出発点にするということでございます。モデルとしては、イールドカーブの情報を使ってというところになりますけれども。
○神野部会長 それでは、私の不手際で、既に終了の時間に近づいておりますので、この議論は、今回はここで引き上げさせていただきますけれども、大変貴重な御意見等々をたくさんいただきましたので、事務局と相談しながら今後の運用等々を考えながら、引き続きと。
どうぞ。
○平川委員 今のGPIFの関係については、よくわかりました。
ほかの点も質問があったので、教えてほしい。
○神野部会長 手短にお願いできませんか。5時半で迫っている方がたくさんいますので。
○平川委員 済みません。資料2-1の4ページのTFPの上昇率の表現なのですけれども、前回の最終的な経済前提の検討結果の報告の中では「基軸」と表現していました。今回、「基礎に幅広く複数ケースを設定することが適当」となっていまして、「基軸」だったものを「基礎」にした経過を教えてほしいということです。
とりあえずそれだけです。
○神野部会長 課長、どうぞ。
○数理課長 そこの言葉の使い方については、当方として、特段意識したわけではなく、原案を今回つくったときに自然に「基礎に」という記述にしたというだけで、特段他意はございません。
○神野部会長 手短に。
○牧原委員 簡潔に、オプション試算について2点だけ。
1点目は、マクロ経済スライドについて、景気循環を年金改定ルールの見直しの中で入れるという話でしたけれども、名目下限を入れているものに加え、マクロ経済スライドをフル発動した場合、景気循環は年金財政に対してどのようなインパクトがあるのかということも、オプション試算の中に入れていただきたいと思います。
2点目は、保険料拠出期間の延長についてです。今、60歳以上の被用者は厚生年金保険でカバーされているのですけれども、現状は、恐らく61歳や62歳でリタイアする例が大部分ではないでしょうか。仮に保険料拠出期間を65歳まで延長するとした時には、65歳までの雇用が相当の水準であるべきだと思います。65歳までの雇用については、本人の状況もあるし、企業サイドも雇用の環境を整えるという両面がそろうことが必要であり、ある程度、時間的な経過も必要だと思います。それゆえ、オプション試算をする際には、現実の雇用状況を前提にして、保険料拠出期間を65歳まで延長した場合にどういう課題が生じ得るのかということをきちんと把握した上で議論をするべきだと思いますので、オプション試算の中でぜひ検討していただきたいと思います。
以上です。
○神野部会長 ありがとうございます。
貴重な意見をたくさんいただきましたので、私と事務局と相談しながら、今後の財政検証に向けた議論を進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
済みません。時間が押してしまっているのですが、報告事項で、次の議題3~5をまとめて一括して事務局から御説明いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○年金課長 年金課長でございます。
私からは、資料3について御報告申し上げたいと思います。
昨年12月に設置いたしました「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」についてでございます。
お手元の資料にございますとおり、本懇談会は、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大に加えまして、年金部会でもそういった御意見が出たと承知しておりますけれども、その他の働き方の多様化を踏まえた社会保険としての対応をどうしていくかということも、議論を行う場として、年金局長と保険局長が招聘する懇談会という形で設けさせていただいてございます。
また、これも昨年9月のときの当部会での御議論の中で、年金だけではなく、医療保険への影響も踏まえた議論が必要であるとか、関係者からヒアリングを行うなど丁寧に議論を進める必要があるといった御意見を頂戴しております。
こういった御意見を踏まえまして、まず、構成員を右にごらんいただきますと、医療保険関係者も加わっておりますし、また、雇用の実態にお詳しい方を事務局として選定しているということでございます。
左端のスケジュールにございますように、今後、関係団体のヒアリングを丁寧に行いながら、第5回以降に意見交換あるいは論点整理を行いまして、その結果をまた年金部会に御報告して、秋になろうかとは思いますけれども、御審議いただくという大きなスケジュール感を持っているところでございます。
私からは、以上でございます。
○神野部会長 続いて、資料4。
○企業年金・個人年金課長 企業年金・個人年金課長です。
資料4をごらんください。私的年金に関する検討であります。
1ページ、企業年金・個人年金につきましては、2016年の制度改正におきまして、企業年金の普及・拡大や個人型確定拠出年金の拡大等を図ったところでございます。施行後5年の見直し検討規定が置かれております。さきの改正では、DCの加入可能年齢や受給開始可能年齢など、拠出時・給付時の仕組みにつきましては、引き続き議論が必要であり、今後の検討課題とされたところでございます。一方で、公的年金は、年金部会でも議論があるわけでありますが、高齢期の長期化と就労の拡大・多様化を受けた対応等が公的年金とともに私的年金でも必要になっております。また、税制面におかれましても、高齢期に備えた資産形成に関する包括的な議論が本格化することが見込まれておりまして、これらも念頭に置いて検討が必要になっております。
以上を踏まえまして、社会保障審議会企業年金・個人年金部会におきまして、企業年金・個人年金制度全般について議論を開始したいと思っております。
なお、企業年金部会から企業年金・個人年金部会への名称の変更、改組につきましては、既に社会保障審議会の了承が得られております。
主な検討項目につきましては、右側をごらんください。人生100年時代見据えた制度設計として、加入可能年齢や拠出限度額、受給開始可能年齢など、拠出時・給付時の仕組み、企業年金の普及・拡大、働き方・ライフコースの多様化への対応、資産運用、企業年金のガバナンスなどが考えられますが、部会で十分に御議論をいただきたいと思っております。
次ページ以降、参考資料をつけておりましたが、時間の関係で省略させていただきます。
以上です。
○総務課長 引き続き、参考資料1についてでございます。お手元の参考資料1をごらんください。
「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」で、内閣府政府広報室におきまして、平成30年11月に5,000人の標本数を対象に調査を行っていただきました。調査の概要は3ページ目にございます。また、調査項目につきましては、表紙の裏側の目次にあるような項目でして、老後の生活設計に関する質問や、公的年金制度の関心と広報について質問をして、意見をまとめたというところでございます。今後の審議で御参考にしていただければと考えております。
以上です。
○神野部会長 駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 一言だけになりますが、この私的年金の議論は、きょうは取ってつけたみたいに最後に出てきたのは非常に残念だと思います。
この資料4の1ページ、きょうの議論で、マクロ経済スライドがどう効いてくるのかということは、各世帯別、年齢別にきちんと見通しをつけないと、個人関係は準備ができないわけですので、この検討課題の中に、より明確に、公的年金・私的年金を一体的に考えなければいけない、もっと言うと、公私年金と雇用の延長は一体的に考えなくてはいけないと。その際に、こちらが連動して、受給のタイミング、公私年金、雇用の選択をより柔軟にできるように公的年金の受給タイミングの問題とかを考えていかなくてはいけないということなので、最後に取ってつけたように報告されましたけれども、より一体的に議論できる機会を持ってもらいたいと思いました。
基本的な動きとしては、公的年金の給付水準は、長寿の中で落ちていく。給付水準が下がっていくところを、中小企業も非正規もカバー率を上げていく。それから、拠出期間も拠出額も充実していくことが極めて正しい方向だと思いますけれども、金融庁などのワーキング・グループでも、今、顧客中心の金融機関のあり方、よりコストパフォーマンスのよい金融サービスの提供を議論されているわけですけれども、そちらは金融市場の整備ですけれども、個人年金、企業年金についても、こちらはフレームを提供するという部会だと思いますので、運用パフォーマンスを高めてあげないと、幾ら拠出期間を延ばしても足りないと思いますので、そういう意味では、公的年金の給付水準をある種意識した議論を私的年金でもお願いしたいと思います。
もうちょっとこの動きをこちらの部会と連動できる機会があればいいなと。きょうは時間がなくて、最後、この部分が足りなかったことは残念です。
以上です。
○神野部会長 心して運用していくようにいたします。どうもありがとうございました。
ほかはいかがでございましょうか。よろしいですか。
どうもありがとうございました。
大変貴重な意見をたくさんいただきましたので、今後の運用に反映させていただきたいということと、多くお出しいただいたのは、あらかじめ算定するという予測については、正確性が要求されるので、どうしても精緻にならざるを得ないと。しかし、他方で、それはあらゆる国民に理解していただくという、通俗と言っているわけですが、大正デモクラシーの時期に後藤新平や新渡戸稲造が展開した通俗運動、どうしても対立するような政策目的を和解させていくということがこういう年金問題の制度改革には重要かと思いますので、今後の運用に十分に反映させるような形で考えていければと思っております。
大変申しわけありません。予定時間をオーバーしてしまっておりますので、ここで本日の会議を終わらせていただきたいと思っておりますが、特に御発言がなければ、事務局から連絡事項をお願いしたいと思います。
では、事務局から今後の予定等々についての連絡事項をお願いいたします。
○総務課長 次回の開催日程については、改めて御連絡させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
以上です。
○神野部会長 それでは、どうも申しわけありません。私の不手際でもって、5時半から予定があるという方がたくさんいらっしゃったのですが、大幅にオーバーしてしまったことをおわびして、これにて閉会させていただきます。
どうもありがとうございました。