2019年3月13日

第8回社会保障審議会年金部会

年金局

 

○日時 平成31年3月13日(水)10:00~12:00

 

○場所

東京都中央区八重洲2-7-12 ヒューリック京橋ビル

ビジョンセンター東京(八重洲南口)6階Vision Hall

○出席者

神 野 直 彦(部会長)

小 野 正 昭(委員)

菊 池 馨 実(委員)

権 丈 善 一(委員)

駒 村 康 平(委員)

小 室 淑 恵(委員)

高 木  朋 代(委員)

武 田 洋 子(委員)

出 口  治 明(委員)

永 井  幸 子(委員)

原 佳 奈 子(委員)

平 川 則 男(委員)

牧 原 晋(委員)

諸 星 裕 美(委員)

山 田 久(委員)

米 澤 康 博(委員)

小林参考人(山本委員代理)

○議事

○神野部会長 それでは、定刻でございますので、ただいまから第8回の年金部会を開催したいと存じます。

 年度末もいよいよ押し迫りまして、皆様方には大変御多用のところかと思いますが万障繰り合わせて御参集くださいましたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。

 本日の委員の出席状況でございますが、阿部委員、植田委員、藤沢委員、森戸委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。

 御出席いただきました委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議が成立しているということをまず御報告申し上げておきたいと思います。

 さらに、山本委員の代理として、本日、日本商工会議所より小林参考人にお越しいただいております。小林参考人の部会への御出席につきまして御承認をいただければと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○神野部会長 ありがとうございます。

 それでは、議事に入ります前に資料の確認をさせていただきますので、事務局からよろしくお願いいたします。

○総務課長 総務課長でございます。本日もペーパーレスで開催させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 傍聴の皆様には、厚生労働省ホームページで資料をダウンロードしてごらんいただきますようお願いいたします。

 議事次第は今、お手元のスクリーンに開いていると思いますが、下のほうに配付資料、資料1「2019年財政検証の基本的枠組み」、資料2「年金財政における経済前提について

(検討結果の報告)」、資料3「年金広報の現状と課題」、資料4「遺族年金制度について-諸外国の遺族年金制度とその改革動向-」、そして参考資料という5つの資料がございます。左上にあるプライベートファイルというところをクリックしていただきますと、これら5つの資料と、前回までの会議資料を格納しているということを御確認お願いしたいと思います。

 事務局からは以上でございます。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 それでは、大変恐縮でございますが、カメラの方にはこれにて御退室をお願いしたいと思います。御協力を頂戴できれば幸いでございます。

(カメラ退室)

○神野部会長 議事に入らせていただきますが、お手元の議事次第をごらんいただければと思いますけれども、本日は議事を4つ準備してございます。

 「2019年財政検証について」「年金財政における経済前提について」、これは報告事項でございます。「年金広報について」「遺族年金制度について」、以上の4つを準備させていただいております。

 初めの第1番目の議題と2番目の議題については関連してございますので、事務局から資料につきまして御説明を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○数理課長 数理課長でございます。

 それでは、まず、ファイル番号03、資料1について御説明を申し上げます。

 「2019年財政検証の基本的枠組み」という資料でございますが、財政検証を行うに当たりまして、まずは社会・経済等の諸前提について設定する必要があります。

 最初にございます人口の前提につきましては、既に2017年4月に国立社会保障・人口問題研究所から、日本の将来推計人口という5年に1回の推計が公表されておりまして、低位・中位・高位を用いるということでございます。

 続きまして、労働力の前提については、本年1月、新しい労働力需給推計が公表されておりますので、この中の労働参加が進むケース、一定程度進むケース、進まないケースをそれぞれ経済の状況に合わせて使い分けるような形で、前提として置かせていただくことを考えております。

 次に経済前提でございますが、これは本日、この後に御報告を申し上げます年金財政における経済前提に関する専門委員会の検討結果を踏まえて、長期の前提を置くということです。

 足下につきましては、内閣府の中長期の経済財政に関する試算。これは2019年1月30日に公表されたものですが、こちらを用いるということです。長期前提につきましても、その試算を参考にしつつ、長期的な経済状況を見通す上で重要な全要素生産性上昇率を基礎とした幅の広い複数のケースを用いるということですが、これは後ほど御報告させていただきます。

 4つ目がその他の制度の状況等に関する前提でございますが、こちらは基本的に被保険者及び年金受給者等の実績データ等を基礎として設定するということでございます。

 続きまして、制度改正の検討のためのオプションについてでございます。2014年財政検証、5年前の財政検証では、社会保障制度改革国民会議の報告書におきまして、財政検証に関して、単に現行制度の財政の現況と見通しを示すだけではなく、報告書において提示された年金制度の課題の検討に資するようなオプション試算を行うべきとされたところでございます。

 このオプション試算については、年金部会等で改革の必要性や効果についての共通認識を形成する上で非常に重要な役割を果たしたものと評価されておりますので、今回の財政検証に当たりましても、この年金部会での御議論を踏まえて、一定の制度改正を仮定したオプション試算を行うということでございます。

 1ページおめくりいただきまして、オプション試算の内容、メニューの案ということでございます。

 前回の年金部会におきまして、このオプション試算に関していろいろ御意見をいただいたところでございますが、これまでにいただいた御意見を踏まえまして、また、私どもの作業能力も念頭に置いて、ここにあるような案を整理させていただいたところでございます。

 具体的な内容について、まず「① 年金額改定ルールの見直し」についてです。

 ここでは平成28年に成立した年金改革法の賃金・物価スライドの見直しによる効果を測定できるよう、物価・賃金が景気の波により変動する場合等を想定した試算が、同改革法の附帯決議で求められております。

 なお、この場合の変動の具体的な設定については、後ほど経済前提に関する専門委員会からの御報告がありますので、そちらをまた御参照いただければと存じます。

 次に、②でございますが「被用者保険の更なる適用拡大」を行った場合です。

 これまでの年金部会における議論を踏まえて、まずは1点目のように、一定の賃金収入がある全ての被用者を被用者保険の適用対象とした場合の試算を行うということでございます。

 なお、前回の年金部会において、出口委員より一定の収入があるという前提を置かずに、まずは全ての被用者を適用対象とした上で、その中で細分化されたケースを見ていくべきという御意見もいただいたところです。

 前回の財政検証のオプション試算のメニューに関する年金部会の議論の際も、およそ全ての被用者が厚生年金に適用されることとなるというオプション試算を行ってはどうかという御提案がございまして、それに対応するものが、前回の1200万人ベースのオプション試算でございます。

 前回のオプション試算時は、全ての被用者ということについて、ある程度の収入に関してはそれなりの裾切りがないと、データの設定上、あるいは制度の仕組み上でも難しいであろうということで、月収5.8万円がある場合には所定労働時間にかかわらず、全てを適用対象とする場合を考えさせていただいたところです。

 すなわち、前回の適用拡大される1200万人という規模は、月収5.8万円に満たない300万人の方もいらっしゃるわけですけれども、そこも含めた全体の8割をカバーしておりますので、これが適用拡大のベースとなる全被用者だと理解しているというところでございます。

 なお、2点目の現行の賃金要件や企業規模要件等を見直した場合については、前回の年金部会の御議論において、幾つかの条件を設定して試算してほしいという意見がございましたので、対象ケースを追加させていただこうかと考えているところです。

 次に、③でございますが「保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択化」です。

 1点目は、5年前のオプション試算でも行いました現行20~60歳となっている保険料拠出期間を65歳まで延長することと、年金受給開始可能期間の拡大を行った場合の試算でございます。5年前のオプション試算では、受給開始可能期間は現行制度と同じ70歳まででありましたが、今回はそれ以降に拡大することを考えております。

 また、あわせて、現在70歳未満となっている厚生年金の加入年齢を引き上げた場合の試算を行うということを考えております。

 資料1の説明は以上でございます。

 続きまして、経済前提の検討結果の御報告です。経済前提に関する専門委員会におきましては、一昨年の7月以降、委員の皆様に、本年の財政検証に用いる経済前提に関する御議論を積み重ねていただきました。資料2が、その御議論を踏まえました最終報告書でございます。

 最終報告書のうち、経済前提のあり方や、設定の基本的な考え方等、骨格の部分については1月の年金部会で御報告しました報告書の内容と同じとなっております。

 それに加えて、年明けに公表されました内閣府の中長期試算や労働力需給推計、あるいはGDP統計を織り込んで設定したパラメータ等が記述の中に数値として織り込まれているということです。

 また、最終的に設定することとなる経済前提、つまり、物価上昇率、賃金上昇率、運用利回りが報告書の後半のほうに記載されているという構成になっておりますが、本日はポイントとなる部分を中心に御説明させていただきます。

 なお、本日は植田委員長が御欠席となっておりますが、最終報告書を取りまとめられたことを踏まえて、委員長からコメントをいただいておりますので、最後に御紹介させていただきたいと思います。

 まず、イメージをつかんでいただくために、参考資料集のポイントとなる資料だけ、26ページをごらんください。

 こちらは専門委員会のマクロ経済モデルに投入するTFP上昇率と労働投入量の前提の組み合わせを設定した、設定のイメージ図ということになります。

 足下の2028年度までの10年間は、内閣府の中長期試算に準拠して設定しております。

 2029年度以降は、そういう政府としての経済成長率等の見通しがありませんので、専門委員会において御議論いただき、設定しているということです。

 専門委員会では内閣府試算のTFP上昇率を基礎として、より低い方向に幅広く複数ケースを設定するのが基本的な考え方となっておりますので、今回、ケースⅠの1.3%から、ケースⅥの0.3%まで、幅の広い6ケースで設定することとなりました。

 また、その際の労働投入量の組み合わせについては、JILPTによる労働力需給推計を用いて、ここで右に括弧をつけて書いてあるところですけれども、ケースⅠからⅢには労働参加が進むケースを、ケースⅣ、Ⅴには労働参加が一定程度進むケースを、ケースⅥには労働参加が進まないケースを組み合わせることとなっておりますというのが概要でございます。

 参考資料の説明はこの1枚だけです。

 続きまして、本題のファイル04、資料2でございます。

 まず、2ページに「1.報告の趣旨」が記載されております。本年に行う公的年金の財政検証に用いる経済前提を設定するに当たり、その専門的、技術的な事項について検討する場として、一昨年の7月に専門委員会が設置され、以後10回の会合が積み重ねられてきた旨の記述でございます。

 次は「2.財政検証に用いる経済前提の基本的な考え方」です。

 (1)は平成16年改正の長期年金財政フレームのもとで、財政検証が長期年金財政の定期健康診断として行われていることが記述されています。

 また、(2)は財政検証について、少なくとも5年ごとに最新のデータを用いて諸前提を設定し直した上で、現実の軌道を出発点として新たな財政検証を行うことが法律で定められているというものでございます。

 また、次のページの(3)ですが、財政検証の結果は人口や経済を含めた将来の状況を正確に見通す予測(forecast)というよりも、人口や経済等に関して現時点で得られるデータを一定のシナリオに基づき将来の年金財政へ投影(projection)するものという性格に留意が必要であること。また、財政検証に当たっては、長期的に妥当と考えられる複数のシナリオを幅広く設定した上で、長期の平均的な姿として複数ケースの前提を設定し、その結果についても幅をもって解釈する必要があるものであること。また、長期的な前提の幅を設定するに当たっては、財政検証がおおむね100年間にわたる超長期の推計であることを踏まえ、足下の一時的な変動にとらわれず、超長期の視点に立ち、妥当と考えられる範囲において設定する必要があるものでございます。

 (4)は公的年金が収入、支出ともに、長期的には賃金上昇率に従って変動する仕組みであり、年金財政にとっては、賃金上昇率や運用利回りの名目値でなく、物価上昇率を上回る実質賃金上昇率と、賃金上昇率を上回る実質的な運用利回り(スプレッド)が重要であることに留意が必要であるというものです。

 なお、この点につきましては、当方の広報力不足などもあると思うのですけれども、時折名目値により取り上げられる記述が散見されますので、修正されていくようにさらに努力を続けてまいりたいと存じます。

 続けて、「3.経済モデルの建て方」についてです。

 (1)と(2)において、従来より用いられてきたコブ・ダグラス型生産関数を骨格にして、同様の手法をとりながら改善を加えていくべきという考え方が記載されております。

 次は飛びまして「4.経済モデルのパラメータの設定について」に行きたいと思います。

 (1)は前回の財政検証と同様に、TFP上昇率を基礎に幅広く複数ケースを設定することや、その他のパラメータについても必要に応じて幅を設定しつつ、背景となるシナリオを踏まえて整合的な組み合わせとする旨の記述でございます。

 (2)はTFP上昇率の前提の設定値についての記述でございます。先ほど参考資料集でも確認したところですが、幅の広い6ケースの設定値でございます。

 あるいは、次のページの(3)は、TFP上昇率の分布を確認したものでございまして、これはいろいろなケースで書かれておりますけれども、例えばケースⅢで見てみますと、TFP上昇率が0.9%ということですが、実績の上から約6割、63%をカバーするものでありますとか、ケースⅤの0.6%は実績の上から約8割、83%をカバーするものなどでございます。最も低いケースⅥの0.3%は、過去の実績のうち、最も低い水準で設定したものということで、100%をカバーすることとなります。

 飛んで、(6)ですが、労働投入量の設定はJILPTの労働力需給推計による旨の記述でございます。

 次は(7)と(8)です。次のページになります。GDP統計を用いたパラメータの設定、具体的には資本分配率、資本減耗率、総投資率の設定あるいはGDP統計の訴遡及推計、設定方法の改善についての記述でございます。

 次のページの(10)でございますが、物価上昇率の設定方法に関する記述で、日銀の目標や内閣府の中長期試算の推計値、過去の実績などを参考に数値を設定したことが記述されております。

 続けて、「5.運用利回りの設定について」です。

 (1)が長期の運用利回りの設定についてです。今回の運用利回りの設定に当たっては、GPIFの運用実績を活用することとした点についての記述でございます。

 次のページの(ウ)は、2月の専門委員会の御議論を踏まえて、ベースとなる実績は、市場運用を開始した2001年以降の17年間の平均値より低めに設定して、ケースI~IIIは過去10年の移動平均の下から30パーセンタイル値。ケースIV、Vは過去10年移動平均の下から20パーセンタイル値を用いることとした旨の記述がございます。

 また、(2)がケースVIについて、イールドカーブを用いる方法としたことについての記述で、さらに10ページの(3)が、足下の経済前提について、内閣府の中長期試算の長期金利を基礎としつつ、内外の株式等の分散投資による効果も加えて設定することとした記述でございます。いずれにしても、2月の専門委員会での御議論を踏まえて、具体的な基礎数値が織り込まれております。

 続きまして、「6.経済変動を仮定するケースの設定について」でございます。

 具体的には(4)にございますように、10年周期で物価上昇率の変動幅が1.1%。名目賃金上昇率の変動幅が2.9%と設定されたところでございます。

 12ページと13ページが、以上の検討を踏まえた具体的な設定数値でございます。

 12ページの(1)は、2028年度までの足下の経済前提ですが、内閣府の中長期試算に準拠して、上の表の成長実現ケース、下の表のベースラインケース、それぞれ物価上昇率、賃金上昇率、運用利回りの設定値は表のとおりでございます。

 13ページの(2)が、2029年度以降に用いる長期の経済前提で、これが専門委員会のマクロ経済モデルによる試算を踏まえて設定されたものでございます。

 前回の財政検証時の8ケースから、今回は6ケースに、ケースの数が減っておりますが、大まかに捉えるとすると、前回のケースAが最も成長率が高いケースで、そのときのTFP上昇率の設定値は1.8%。次いで高いケースのBというのが1.6%でしたが、この2ケースに相当する分がなくなって6ケースとなっているような感じの変更となっております。

 つまり、前回よりは全体的にTFP上昇率の設定が低くなっておりますし、あわせて賃金上昇率や運用利回りもやや低くなっている状況ということです。

 資料説明は以上ですが、最後に、先ほど申し上げました植田委員長のコメントを御紹介させていただきます。以下、コメントです。

 先週の3月7日に年金部会のもとに設けられた年金財政における経済前提に関する専門委員会の最終報告書を取りまとめましたので、若干のコメントをいたします。

 本専門委員会は、本年の財政検証に用いられる経済前提の専門的、技術的な事項について検討を行うため、平成29年7月に設置されて以後、約1年9カ月にわたり、鋭意検討を重ねてまいりました。

 年金部会の委員の中でも、小野委員、権丈委員、駒村委員、武田委員、米澤委員が専門委員会の委員でいらっしゃいますが、その他の委員の方々と私も含め、総勢12名で皆様のお力をおかりしながら、充実した議論を重ねることができました。

 財政検証は長期的な年金財政の定期健康診断として5年ごとに行われているもので、現時点で得られる人口や経済等に関するデータを将来の年金財政へ投影する作業です。

 もとより、将来の社会経済の動向は不確実なものであり、最善の努力を払いながらの経済前提の設定作業でありますが、率直に申し上げて、長期的な見通しには限界もあります。

 公的年金を取り巻く近年の社会経済情勢の変化は大きく、例えば、過去20年間、経済成長の果実が賃金にうまく分配されていない時代もありましたが、今後は生産年齢人口が減少して、労働力需要が高まるかもしれない中での賃金設定を考えることとなり、大変難しい問題であります。

 専門委員会での具体の技術的な問題を思い出してみても、GDP統計の基準改定への対応の問題、中央銀行の金融政策が変化していく中での運用利回りの設定方法の修正の問題、国会の宿題となっております経済変動する前提設定の問題、内閣府の中長期試算が下方シフトする中でのTFP上昇率設定の問題など、一つ一つが難しい問題ですが、一つ一つをこなしていくことで対応してまいりました。

 また、今回の全体的な議論の中では、経済要素は名目の値ではなく、実質の値で語ることが重要であることを確認したり、さらには前提を保守的に設定するほうがよいという御意見が多かったことが印象に残っております。

 もちろん、今後ずっとこのままの設定方法でよいというわけでもありませんが、現段階では最善を尽くした内容だと思っています。

 以上、簡単ではございますが、私からのコメントです。

 以上が植田委員長コメントですが、私からの説明も以上でございます。

○神野部会長 ありがとうございました。

 議題の1、つまり2019年の財政検証について、資料に基づいて御説明いただいた上で、専門委員会からの報告を御説明いただきました。ここにもいらっしゃいますが、専門委員会の皆様方には、その御努力に深い敬意を表する次第でございます。

 きょうは植田委員長は御欠席でございましたので、コメントについては代読をさせていただきましたが、植田委員長にも感謝を申し上げる次第でございます。

 それでは、議題1、2につきまして、一括して御質問、御意見を頂戴したいと思います。

 平川委員はちょっとお待ちください。

○牧原委員 財政検証のオプション試算について、コメントを申し上げたいと思います。まず1点目は、オプション試算の①にある年金額改定ルールの見直しについて、平成28年の年金改革法で、マクロ経済スライドのキャリーオーバーや、賃金変動が物価変動を下回る場合の対応についての改定が行われて、それを検証するというのはそのとおり行う必要があると思います。併せて、マクロ経済スライドをフル発動した場合にどのようになるかということも、今後のオプションを検討する上では試算をすべきではないかと考えています。

 2点目は、現行20歳から60歳の保険料拠出期間の延長の話がございますけれども、基本的に、60歳以降の雇用の実態もきちんと踏まえた上で、今後のことを検討すべきだと考えています。60歳以降の雇用が一律に一般的になるということは、現実には非常に難しい話です。それは本人の状況や、企業サイドの雇用機会の提供の問題、社会の受け入れ状況を踏まえて変化していくのだと考えます。オプション試算に当たっては、現状をきちんと反映できるよう、シナリオを設定するときに対応していただきたいと考えています。

 3点目は、目標とする運用利回りについて、「賃金上昇率+α」と分かりやすく考えたとき、「+α」の部分が一番の関心事だと思います。これが妥当かどうかを考えるときに、そのリスクと実現可能性や、どのぐらいリターンがあるかといったことを、もう少し分かりやすくできないかということを考えております。国民から見ても十分に納得性があるような設定方法について、引き続き考えていただければと思います。

○神野部会長 ありがとうございます。

 とりわけ、御指摘いただいた第1、第2の点について、何か現時点でコメントがあれば事務局でいただけますか。

○数理課長 オプション試算についてなのですけれども、個々のオプション試算はそれぞれそうなっているという感じなのですが、かなり大胆な前提を置いているということについて御了解をいただければと思います。

 つまり、大胆な前提を置いた上で、最終的な所得代替率の影響を見てみて、この試算を踏まえて、実際の制度改正を議論されていく素材となるものという理解をしております。今後私どもで具体の細かい作業に入っていくわけですけれども、私どもの作業能力等もありますので、そこも頭に入れながら対応していきたいと思います。

○神野部会長 ありがとうございます。

 平川委員、どうぞ。

○平川委員 最初にオプション試算の関係です。③の保険料拠出期間の延長のところですが、マクロ経済スライドで給付水準が将来的に低下するという中で、基礎年金の給付水準の引き上げというのは大きな課題で、その中で保険料拠出期間の延長は、一つの方法であり得ると思います。そこで、前回の財政検証と同様に40年納付に対する給付水準は維持した上で、更に増額される仕組みを前提とした試算ということになっていくのかどうかを一つ質問させていただきたいと思います。

 更に質問ですが、年金財政における経済前提の検討結果の報告のところで、一つは6ページなのですけれども、(5)でTFP上昇率の高齢化の影響について議論があったと書いてありまして、結構いろいろな意見があったような印象を受けるような文章になっていると思います。この辺はどういう議論があったのかというのを詳しく教えていただければと思います。

 それから、もう一つ質問ですけれども、12ページと13ページなのですが、12ページで成長実現ケースに接続するケース、ベースラインケースに接続するケースの2つの表がありますが、そのスプレッドを見てみますと、成長実現ケースに接続するケースはマイナス0.3%で、ベースラインケースでもスプレッドは2028年は0.1%になっていますけれども、それに接続するものとして、次の13ページのものがあるのですが、これは2029年以降の経済前提ですけれども、例えば成長実現ケースだとマイナス0.3%だったのが、この運用利回りのスプレッドを見ますと、何となくやや高めに数字が置かれているような気もしますし、ベースラインケースも、2028年は0.1%ということで想定しております。0.1%は一番下に入っているのですが、接続というところで言うと、どうも感覚的にうまく接続できるのかということもありますので、この接続の意味合いとか、数字の差はどういうことなのかということを、少し説明をお願いしたいと思います。

○神野部会長 事務局のほうで一括でいいですか。

○数理課長 まず、1点目のオプション試算の保険料拠出期間の延長についてなのですけれども、これは基礎年金のための保険料拠出期間を40年から45年に延長するということで、それに伴うマクロ試算も行っておりますので、それによってマクロ経済スライドの調整期間がずれるという効果と、あとは40年から45年に延ばすことによって、給付が40分の45倍になる要素と2つありまして、その両方を入れた計算になっているということでございます。

 TFP上昇率の設定について、資料2の6ページ(5)のあたりを先ほど引用されたかと思います。この辺で、TFP上昇率の低下について、専門委員会でどういう議論があったかということについてなのですが、まさにこの(5)に書いてありますとおり、高齢化によってTFP上昇率に影響があるのではないか、それが低下するのではないかという御議論がありました。ただ基本的には、将来は不確実であって、財政検証が投影という性格のものであることを考慮すべきという話でありますとか、実績の範囲内で見たときに、実績の全てのTFP上昇率をカバーしているのが下限の0.3%ということになりますので、それで設定したらいいではないかという御議論がありました。

 ただ、そういうことで、将来、高齢化をして、低下の可能性を指摘する意見もありましたので、足下の低下傾向にも留意しつつ、今後の推移を注視していく必要があるという御議論がございました。

 最後、足下の前提と長期の前提の接続が悪くて、どちらかというと足下のほうが低くなっているのではないかということかと思いましたけれども、2028年度までの足下の前提は、内閣府の中長期試算に準拠していて、運用利回りにつきましては、中長期試算における長期金利に内外の株式等による分散投資の効果を加味して設定しているということです。

 足下の分散投資効果については、GPIFの国内債券を上回る運用利回りの実績をもとに保守的に設定されておりまして、実質運用利回りはGPIFの平均値よりも低く設定されているということになります。

 また、長期につきましても、GPIFの実績を用いて保守的に設定されているところですけれども、これもGPIFの実績と比較しても、前提が高過ぎるということはないと考えているところです。

 以上です。

○神野部会長 よろしいですか。

 ほかの委員の皆様方はいかがでございましょうか。

 どうぞ。

○小林参考人 今回のオプション試算につきまして、お礼とお願いをしたいと思います。

 資料1の3ページのとおり、今回は被用者保険のさらなる適用拡大につきまして、賃金要件や、企業規模要件を見直した場合の試算をしていだたくことにしていただきまして、ありがとうございました。

 この件に関しましてお願いでございますけれども、試算をされる際に、社会保険料の企業負担、労働者負担がどの程度増えるかについて、可能であれば試算ごとに御教示いただければと思います。加えて、在職老齢年金制度を縮小あるいは廃止した場合の影響につきましても、可能であれば試算をお願いしたいと思います。

 以上でございます。

○神野部会長 ここについても、事務局のほうからコメントはございますか。いいですか。

○数理課長 オプション試算について、この後もいろいろ意見が出てくるかもしれませんので、全ての意見を含めて、頭に入れて考えていきたいと思います。

○神野部会長 ほかにいかがでございますか。

 権丈委員、どうぞ。

○権丈委員 数理課長の御説明の中で、私の印象に残ったのが、「当方の広報力不足などもあると思う」という言葉ですけれども、本当にそうなのか。スプレッドで見なければいけないとか、名目値で見てはだめとかいうことは、もう何年間も言い続けているわけです。そして、記事を書く人たちは当然、そうした年金を語る上での文法を勉強した上で書いてもらってしかるべきものだと思うんですよね。

 なのに、わざわざスプレッドと実質賃金とかいろいろなものを足し合わせて、名目を計算して出していくような記事がいまだに出てくる。年金というのは明確に誤報というのがありますので、できましたら、間違えているというページをつくってもらいたいと思います。

 授業でそれを使うとか、フェイスブックとかツイッターで、このように間違えている記事があるということを紹介できるような、ポータルサイトとは言いませんけれども、そういうページがあれば非常に便利です。

人というのは、何も年金を知らなかったら名目で議論したがるんですね。そして、何も知らなかったら、財政検証を予測として理解したがるのです。そうではない、予測ではないということは繰り返し言い続けていかなければいけないところで、当然記事を書く人たちは、そこら辺はクリアした人たちだと思いたいので、もし万が一、何か誤報が出てくると、それを指摘していただくような姿勢でいてもらいたいと思います。決して当方の広報力不足というような弱気の姿勢でやっていただくのではなく、それだとちょっと困るかと思っております。

○神野部会長 お含みいただければと思いますが、何かコメントはありますか。

 ほかはいかがでございましょうか。よろしいですか。

 どうぞ。

○米澤委員 先ほど決めた運用利回りがどの程度のリスクがあって、どの程度実現可能性があるのかという御質問があったと思いますけれども、それに関して答えるのは極めて難しいのですけれども、幸いなことに今回は、これは参考資料の43ページに、少なくとも過去のGPIFで運用の結果として、今回のケース1からケース6は、そこのうちのどこに対応しているかという数字というか図が出ておりますので、これが一番わかりやすいのではないかと思っております。

 これでもってどう理解するかというのは、いろいろ議論の余地があるかと思いますけれども、これを見ますと、少なくとも過去の実績から見ると、そう無理のない設定がされているのではないかと思います。

 以上です。

○神野部会長 どうもありがとうございました。これも承らせていただきたいと思います。

 ほかはいかがでございましょうか。

 それでは、どうもさまざまな観点からの御議論を頂戴したことを深く感謝申し上げますが、初めの、つまり議題1のところで御説明いただきました資料に基づいて、財政検証の経済前提、さらにはオプション試算、これもまとめてあるかと思いますが、この最初の資料で御説明いただいたような方向で進めさせていただきたいと思います。これについては御承知おきいただいたということにさせていただいてよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○神野部会長 それでは、そのように進めさせていただきます。

 次の第3の議題に入りたいと思いますが、これはこれまでも御議論を頂戴しました年金にかかわる広報についてでございますが、資料につきまして、事務局のほうから御説明をいだければと思います。

 よろしくお願いいたします。

○総務課長 総務課長でございます。

 資料3をお開きいただきたいと思います。

 「年金広報の現状と課題」というタイトルがございまして、3ページ目にまず、年金制度の周知広報に関する現状の主な取り組みを、全体的に総括した資料を1枚入れております。

 年金広報につきましては、インターネットやパンフレットを通じた周知広報。これは制度を幅広く国民の皆様に御理解いただくための取り組みということですが、加えて、2の年金セミナーの開催ということで、年金機構を中心に個別に大学や高校などで年金の説明などをするという機会も設けております。

 3ですが、ここではiDeCoに関する周知広報がありますけれども、それぞれ制度の実施主体であるさまざまな関係機関におきましても、さまざまな広報に取り組んでいるというのが全体像ということでございます。

 次のページは年金広報の実施の方法になっていますが、たくさんの方々に知らせる場合と、一人一人に知らせる場合と、それぞれ年金広報ではあるのだということを示しております。

 スライドの5枚目ですが、以下は個別にどのような広報をしているかというものの御紹介になっております。

 5ページ目は「いっしょに検証!公的年金」という、財政検証の具体的な中身について、わかりやすく漫画を使ってリーフレットをつくっているということです。ホームページにも掲載しております。

 6ページ目は年金機構のホームページで、手続の御案内ですとか、制度の説明ですとか、そういうことについて掲載しています。

 スライドの7枚目ですが、年金情報アプリということで、年金制度についてアプリをスマートフォンにダウンロードして見ていただけるような取り組みということでございます。

 8ページ目は年金局で、主に市町村での国民年金業務の支援として、市町村の窓口で置いていただくことを念頭に、さまざまなパンフレットをつくっているいという御紹介でございます。

 9ページ目は年金機構でつくっているパンフレットということで、事業主向けですとか、被保険者向けですとか、受給者向けですとか、さまざまなパンフレットを用意しているということでございます。

 10ページ目ですが、年金セミナーです。先ほど御紹介したものと、下の②のほうは年金月間ということで、毎年11月の年金月間にさまざまな普及啓発活動を行っているということと、日本年金機構でも「わたしと年金エッセイ」というのを応募しておりまして、お若い方から年金受給世代の方々まで広くすぐれた作品を御応募いただきまして、大臣賞等を差し上げているという取り組みも行っております。

 11ページ目は国民年金基金におきまして、普及のための広報を行っているということです。

 12ページ目はiDeCoに関する広報ということで、シンポジウム等の開催ですとか、公式サイトの展開、パンフレット等の作成という取り組みの御紹介でございます。

 13ページ目はGPIFのほうで、年金積立金の運用に関する透明性や説明責任の観点から、ホームページ等を用いまして、さまざまな情報開示、説明等を行っているという御紹介でございます。

 14枚目がねんきんネットの概要であります。ねんきんネットは御自身の年金加入記録をインターネットで確認できるようにするという取り組みで運用しておりまして、ユーザーID発行件数は565万件まで達しているというものでございます。

 15枚目は年金機構から、被保険者の方々、受給者の方々、事業主さんにさまざまな通知などを行っておりまして、最大のものはねんきん定期便で年1回ですけれども、6万3062万件の送付件数があるということであります。非常に多くの通知類を日本年金機構から国民の皆様にお送りしているということの御紹介でございます。

 そういうものに関しまして、16ページ目から17ページ目にかけまして、改善をしているということで、16ページ目は先ほど御紹介しましたねんきん定期便の改善例ですけれども、左側に改善前、右側に改善後ですが、文字数の削減あるいは図を入れるということをして、わかりやすくするという改善の取り組みも行っております。

 17ページ目は国民年金の保険料の未納の方への納付勧奨の通知ですが、同様にわかりやすく改善するという工夫を行っております。

 18ページ目は年金受給者の方々にお送りする請求書に同封するリーフレットでございますけれども、繰り下げ制度についてのわかりやすい説明資料を同封して御案内するということも行っているということであります。

 19ページ目は日本年金機構で行っております年金相談、コールセンターの取り組みということであります。年金事務所、年金相談センター等で直接受給者、被保険者の方に接して、御相談に応じるということのほか、コールセンターを設けまして、電話相談なども行っているということであります。

 20ページ目のスライドは、社会保障審議等における議論を御紹介していますが、当部会におきましても広報というのは非常に大事なので、しっかりやってほしいという御指摘をいただいていると思っておりますし、企業年金部会では加入者の投資、知識等の向上が必要であるということ、あるいはGPIFの中期計画の中でも透明性の向上という観点から、広報活動をしっかりやっていこうということが書かれております。

 以上が広報の現状というところですが、21ページ目からは先般、内閣府のほうで実施していただきました世論調査の結果で、特に広報に関する部分をピックアップしてまとめた資料になっております。

 22ページ目のスライドですが、年金制度について何を知りたいかということに関しまして、給付額、給付水準の見通しということが一番多くなっているというデータの御紹介でございます。

 次が年金制度に関心を持った時期ということで、それぞれの世代ごとにデータが出ておりますけれども、最終的な実績という意味で申しますと、70歳以上の方が大体いつごろ関心を持ったかということを見ますと、50歳以降ぐらいからが年金について関心を持った時期が多いということがわかる。早い方だと40代ぐらいからそろそろ年金について関心を持ち始めるという感じかと受け取っております。

 関心内容につきましては、先ほどもありましたけれども、24枚目のスライドですが、自分の年金がどれくらいか、いつから受け取れるのかといったことに関心が高いということであります。

 25枚目は理解を広げるための方策です。年金制度の広報についてどのようなものが必要かということで、テレビ、ラジオによる周知広告が1番です。それから、学校においてちゃんと授業を充実してほしいというのが2番です。それから、ホームページ等の周知をしてほしいといったものが続いております。

 26枚目以降は総務省の統計をもとに、少し媒体というものが変わってきているということの御紹介でありまして、27ページ目のスライドは、スマートフォンとかインターネットの接続状況を世代ごとに見ていますが、世代ごとに特色があるということが伺われるということであります。

 28枚目は、SNSの利用状況というのも、世代によって違ってきているということかと思います。

 29枚目は、どのようなメディアを使っていますか。テレビが若い世代では少ない。年をとると多くなるという傾向です。

 30ページ目は、最も利用するメディアとしてどのようなものが、信頼できるメディアとしてはどのようなものがあるかということに関する統計であります。

 31ページ目は、調べ物に役立つ情報ということで、これはインターネットがどの世代でもかなり利用されている状況になってきているということです。

 32ページ目のメディアの情報源としての重要度と、33ページ目の信頼度、それぞれテレビ、新聞、インターネット、雑誌ということで、世代によって少し違いがあるということが見てとれるかと思います。

 34ページ目は、我々広報の課題として、どう論点を整理するかということで、世代ごとにそれぞれ関心のある事項、知りたい事項が違ってきているだろうということで、そういったライフコースに応じた情報発信をしていかなければいけないのではないかということ。

 35ページ目のスライドになりますが、多様な退職後の資産形成というものが、手段が多様になってきているということを踏まえた広報というのを考えていかなければいけないということであります。

 36ページ目と37ページ目は、以前の年金部会で御紹介した資料ですけれども、高齢期の過ごし方というのも、年金の利用の仕方というのも多様になってきている。自分で選択ができるようになってきているということがあるので、それを踏まえていかなければならないだろうということであります。

 38ページ目ですが、実施主体。年金制度にかかわる関係機関というのも、民間金融機関もございますし、地方公共団体、年金あるいは教育機関、社会保険労務士さんや年金数理人のようなプロフェッショナルの方々との連携も重要になってきているということであります。

 39ページ目は社会保障教育ということで、世論調査の中でも、学校でちゃんと教えてほしいという御意見がかなりありました。私ども厚生労働省でも社会保障教育の教材などを整備して取り組んでいるということでございます。

 40ページ目が環境変化のまとめになりますが、広報媒体の多様化の問題、多様なライフコースという問題、それから私的年金等との組み合わせの問題があるということでございます。

 最後に41枚目以降が、年金局の職員をスウェーデン、イギリス、フランス、ドイツに派遣いたしまして、外国の広報の状況について調査した結果を簡単に整理しております。

 42ページ目が全体の総括表になっていまして、それぞれの国ごとに関係する機関があって、いろいろなことに取り組んでいるという一覧表になっています。

 特に重要なことというか、大事かなというか、示唆しているかということを43ページ目以降のスライドで御紹介しています。スウェーデンの年金広報におきましては、ニーズや、どういうことを伝えるかということに応じてセグメント化をして、セグメントに応じた広報展開というものを特に意識しているということを、スウェーデンの当局の方はおっしゃっていたということと、44枚目にありますけれども、マイペンションというウエブサイトを展開して、個人の方が公的年金だけではなくて、企業年金と個人年金をあわせたトータルの年金額を確認できるような仕組みを設けているという工夫がなされているということであります。

 イギリスでございますけれども、イギリスでは年金だけではなくて、その他の金融資産についての個別ガイダンスを非常に重要視しているということをおっしゃっておられたということなのですが、そういう観点から、従来は3つの関係機関がそれぞれ助言等を行っていた組織があったのですけれども、それらをことしの1月に統合して、Single Financial Guidance Bodyという一つの組織で総合的なガイダンスができるような体制を整備されているということでございます。

 47ページ目はフランスにおける年金広報ということでございますが、国民への情報提供や年金相談、記録をお示しすることですとか、年金額の試算などにつきましては、国民の権利として法定化するということがなされたというのが、フランスの状況ということでございます。

 ドイツですが、48ページ目のスライドになりますけれども、年金情報提供に関する法令の規定というのが整備されて、若者向けのポータルですとか、中高年齢向けのパンフレットという、世代に応じた取り組みをなされているということであります。

 49ページ目以降が、現在の私どもの取り組みについて簡単に紹介しておりますけれども、50枚目に今、年金局のほうに「年金広報検討会」というのを設けまして、年金広報のあり方についていろいろアドバイスをいただくことにしております。

 51ページ目ですけれども、今年度の事業としまして、「年金ポータル」という、各関連機関のそれぞれのウエブサイトが、それぞれ分かれていますのでアクセスしにくいということがございますので、トータルでわかりやすい入り口をつくるということで「年金ポータル」というものを設置する取り組みを、今月中に行いたいということでやっております。

 52ページ目ですが、年金広報コンテストということで、若い方々を中心に、動画ですとか、パンフレットですとか、広報コンテンツを作成いただいて、それについて表彰などを行っていく。これは来年度の事業として取り組んでいく予定でございます。

 私からの説明は以上でございます。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 この年金の広報活動は、喫緊の課題である財政検証と必ずしも結びついているわけではございませんけれども、年金の安定的な運営にとっては重要な要素となっておりますので、本日の御議論でも広報活動の問題が御指摘されましたし、これまでもさまざまな観点から広報が問題化されておりますので、事務局のほうからまとめて状況を御説明いただいたところでございます。

 これにつきまして、何かございますか。

 出口委員、どうぞ。

○出口委員 とても勉強になりましたので、お礼を申し上げたいと思いますが、3つぐらいお話ししたいことがあります。

 時々、中学校とか高校生に話をする機会があるのですけれども、そのときに、用語の問題というのは結構大きいと思っていて、今、公的年金と一般には言われていますけれども、もとは社会保険ですから、私はできるだけ公的年金保険だと。これは社会保険の大きい仕組みなのだという、保険という言葉を言ったほうが刺さりやすい感じがしています。

 ただ、いろいろな文書で公的年金という言葉で使われているので、一遍に変えることは難しい気がするのですが、特にメディアに対する発信とか、プレス等については、公的年金と言うよりは、字がふえますけれども、公的年金保険と言ったほうが誤解がないのではないかというのが1点目です。

 2点目は、ページ数で言えば43ページです。スウェーデンの年金広報の特徴を拝見していて、すごくいいなと思ったのですが、伝えるべきことは何だろうかと。これは一番に、可能な限り働き続けること。それから、納税という、本当に市民として当たり前のことがきちんと書かれている。

 私自身は、日本は世界で一番高齢化が進んでいる国ですよね。高齢化が進んでいるというのは、前にも申し上げましたけれども始皇帝の夢であって、人類の理想だと思っているのです。ですから、日本は世界で一番人類の理想に近づいている。

 でも、それは寝たきりであってはいけないので、これは中央公論新社から『欧米に寝たきり老人はいない』という本も出ていましたけれども、元気で過ごすことが人間の理想なので、そのためには可能な限り働き続けることが理想なのだと。

 これは何も労働力が不足しているから高齢者に働けとか言っているのではなくて、本当にすばらしい社会をつくるためには、可能な限り働き続けること。それから、社会はみんなで支えるものなので、オール・サポーティング・オールなので、ちゃんと納税すること。せっかく厚生労働省という一つの省になったわけですから、年金広報についても、このスウェーデンのように、何を伝えるべきかということをもう一度洗い替えて、確かにニーズを聞けば、年金広報といえば、市民のニーズは、幾らもらえるのだ、いつからかと。それはよくわかるのですけれども、そのニーズを踏まえた上で何を伝えたいかということを、せっかくこのスウェーデンで調べてこられたわけですから、ぜひもう一度ホームページ等にのせる時にきちんと考えてほしいというのが2点目です。

 3点目は、権丈委員が先ほどおっしゃった、間違いページをつくれというお話で、すごくおもしろいと思ったのですけれども、もう一つ大事なことは、つまらないことかもしれませんが、間違った報道が出れば、その都度それはきちんと、これは間違いですということを、面倒くさいかもしれませんが、ちゃんとリリースの形で出していくことがすごく大事なことだと思います。広報はすごく大事なのですが、以上3点、気がついたことを要望として申し上げたいと思います。御検討いただければ幸いです。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 ほかいかがでございましょうか。原委員、諸星委員、どうぞ。

○原委員 ありがとうございます。私からも年金広報について、少し大きな視点でお話させていただきます。

 いろいろ今、前のページのほうにもありましたけれども、さまざまなところで、取り組みがなされています。そういったさまざまに行われていることを、これからはきちんと戦略的に、計画的にやっていく必要がある時期なのかなと思います。

 いろいろな調査の結果も拝見させていただきますと、例えば22ページにあったような公的年金制度について知りたいことを見ても、多岐な分野にわたることがわかります。運用のことから、給付のことから、内容のことから。そして、そういったこともありまして、40ページにまとめてくださった「年金広報」をめぐる環境の変化ということで、まさにそのとおりだなと思うのですけれども、1から14の項目をまとめてありますが、広報をめぐる環境の変化については、広報媒体の多様化と広報の利用者の変化ということで、まずはすごく情報の伝達が速いです。SNS等の発達により誤った情報も正しい情報も、以前よりも非常に速いスピードで拡散されてしまいます。誤った情報もいつの間にか事実として受けとめられてしまうおそれがあるので、そういったときには誤りであるということも言っていただきたいと思います。

 あとは2つめ、3つめについてみても、一人一人の就労の環境の変化とかライフコースの多様化、私的年金の普及、あわせて老後の高齢期の所得保障手段がさまざまなものがある中で、退職後の生活設計に対する情報のニーズが高まっていて、生活設計に応じても、例えば公的年金は幾ら受けられるのかなど、そういう情報をもとにいつから受給するか、いつまで働くか、公的年金を含めて就労とか私的年金を組み合わせた退職後の所得確保をどうしていくのかなどといった、さまざまな選択を一人一人がしていかなければいけなくなる時代がまさにやってきています。そのためには情報というものが必要で、正しい情報ニーズというものが高まっているものと思われます。

 例えば1つ例を挙げるとねんきん定期便ですが、いろいろ工夫していただいておりますが、初めは年金記録の確認から始まったものが、今はやはり「給付」に注目がシフトしているようで、幾ら受けられるのかというところを最初に見るように思います。50歳以上の人であれば今、見込み額が出ていますし、50歳未満の方でもねんきんネットのほうでシミュレーション等ができるようになっているので、そういった形で実際に私が携わっている企業の研修でも、従業員の方へのセミナーではねんきん定期便は御自身のものを活用して見てもらって金額を確認していただき、老後の所得確保をどうするかということを考えてもらっているわけですが、個人の給付額などの情報は重要かと思います。

 そして、そういったことも含めて42ページにまとめてくださっていますが、諸外国を見るときちんと組織だっているなというのがわかりますし、きちんと組織として例えば広報戦略部門みたいなものを設置して、予算も外国の例ですとつけていますので、そういうきちんとした体制をとって、マス広報から個別、デジタル広報、そして効果測定というところまでやっていることがわかります。42ページにあるようにフランスとかドイツなどの諸外国で行われています。

このような中で日本においても60歳以降あるいは退職後のプランといったものを立てるときに、年金の給付についての情報や年金全体の情報というのが重要になっていく中で、また、60歳以降、長く働く人も増えていく中で、年金を活用したプランを立てるためにも、年金の情報を知ることというのは本人にもプラスになるものと考えます。

 反対に、そのような情報で正しい情報が得られないと、本人が自分に合った選択ができないわけで、後で気づいても遅いということになってしまうわけです。なので60歳ぎりぎりとか65歳ぎりぎりに知って、もっと早く聞きたかったという声も現場では聞かれます。早い時期からきちんとその年代に合わせた広報をしっかり、どうやっていくかも含めて、また広報内容も含めて戦略的にやっていくということは必要だと思います。しそういう戦略部隊や広報組織をきちんと整えていって、人員体制も整えていくことは、被保険者にとって有益なことにもなると思うわけです。 被保険者のためになるものでありますので、もちろんPDCAサイクルをとりながら外部のチェック、検討会等のチェックを受けながらだと思いますけれども、そういったことには保険料などのお金を使って行っていくことも考えられるのではないかと考えます。ぜひこの辺りについては外部のチェック等も含めて、こういった広報を戦略的に行っていくことについて、検討を進めていただければと思っております。

 以上でございます。

○神野部会長 ありがとうございます。

 諸星委員、どうぞ。

○諸星委員 今回諸外国の広報も調べていただいて、大変非常によく検討されていると思いますし、年金広報検討会を立ち上げていただいたので、基本的にはそこの中で具体的に検討されることをお任せしたいのですが、1つだけ、これだけいろいろ調べていただいたわけですから、周知するための方法が従来どおりの枠の中でいいのかということを一番主眼に置いて検討していただきたいと思います。

 それから、こちらに情報がないのですけれども、先ほど社会保険労務士のことが出ましたが、私は社労士なので、全国組織である社会保険労務士の連合会において、社会貢献事業の一環として学校教育を行っています。その中に働く上での知識が今、基本的には多いのですが、その中でも年金制度の重要性を非常に伝えています。

 それから、私が所属する東京会では、年に1回小学生向けですが、もちろん小学生に年金はどうなのかというお話はあるのですが、実は小学生のほうが素直に聞いてくれるため、小学生に対して夏休みにこども年金教室というのを、日本年金機構や年金事務所の支援を受けて開催しております。その他、個別に公立や私立の高校あるいは中学に行って働き方の中で年金制度のお話をちゃんと伝えています。日本の年金制度、先ほど出口委員がおっしゃっていましたけれども、公的年金保険、本当にそこの部分を周知できるということをアンケートをとってみるとわかります。そういった授業の形を通して伝えているということですでに実践はしていることを御報告させていただきたいと思います。

 もう一点、女性向けの支援セミナーを私はすることが多いのですが、アンケートをとると、先ほど40~50代の方々が特に興味があるという中に、確かに額のことも大事なのですが、そもそも日本の年金制度ってどんななの?と。今までそういった教育を受けていない方々が、基本的な1階建て、2階建て年金の話をすると、なるほどそういう意味があったのか、しかも20歳から60歳までの40年間でフルペンションで改めて満額の基礎年金がもらえるんですよということもお話しすると、基礎年金の文字は見たことはあったけれども、送られてくるねんきん定期便や広報パンフレットを読んでもわかりづらかったとよく言われました。やはり行政側の広報としては全てのことを書かないと、伝えることが漏れていてはだめではないかという視点があるのは理解できますが、先ほどお伝えしたことを主眼に置いて、今後企画をされていかれるといいのかなと思います。

  実は40~50代の方々が今、就労支援、全国で行われている女性のセミナーに出てきた際に、就職の仕方あるいは経歴書の書き方だけではなくて、年金とか健康保険、一緒に加入をしてこれから入ることによって皆様の将来の年金が安定しますよということを伝えると、セミナー後のアンケートの中で、改めてこれからの働き方を見直したいという意見が出ますので、ぜひ学校教育や企業だけではなくて、そういった女性支援のセミナーの中で年金制度の広報を入れ込むことも、一つの手ではないかなと思います。

 それから、iDeCoに関しては、公務員の方々の加入率が非常に高いのですけれども、実はセミナーの中で女性の方々にiDeCoの話をすると、やはり宣伝は見ているけど、詳しくは知らない、ちょっと調べてみたい、あるいは知りたいということが声として多くあったということも、この場で御報告させていただきたいと思います。

 以上です。

○神野部会長 ありがとうございました。

 では、武田委員から順番にお願いいたします。

○武田委員 今回、このように資料を海外調査も含めてまとめていただきましたことを、まずは御礼申し上げたいと思います。取り組みを前向きにされていることがよくわかりました。

 幾つか既に出ている論点もありますけれども、3点、申し上げたいと思います。

 1点目は、今も話にございましたとおり、教育の重要性は私も常々感じておりまして、年金だけではないと思います。社会保障制度全体あるいは財政まで絡めて、国あるいは国民にとって非常に重要な基礎知識、制度の仕組みに関する基礎知識を体系的に教わる機会が、この国にはあまりにも少ないのではないかという問題意識を持っています。

 私も以前に財政のほうで公聴会を、これは財務省が主催したことがありまして、そこに出たのですけれども、そこで一番驚いたのが、一番前席に制服を着た中学生か高校生の女性の方々が座っていたのですが、私どもからプレゼンした後に、ぱっと手を挙げて、解決策がわかっているのに、なぜそれが実行されないんですかという素朴な質問をされたました。恐らくそういうことなのではないかと。つまり、今の若い方、できれば小学校、中学校、遅くとも高校の段階で、財政や年金も含めた社会保障制度全般について体系的に、細かいところは捨象しながらも、仕組みとしてどうなっているのかということを学ぶ機会を、国として考えられないかという問題提起です。恐らくこの年金部会を超えた議論だと思いますが、我が国にとっては非常に重要な点ではないかと思います。

 2点目は、今回、通知書等の改善事例を見ても、それを意識していただけているなとか思いましたが、ナッジの視点をもう少し活用していくことも大事だと思っています。ちょっとした工夫で人々の行動が変わっていくということは、経済学でも議論されていますので、今後さらなる改善余地があるかどうかは常に御検討いただければと思います。

 3点目は、国民が年金で知りたい情報の中には非常に複雑なものと、案外単純なものがあるかもしれません。技術が進化している中、もう少しテクノロジーを使って、それが解決できる部分と、人間がやりとりを丁寧にやっていかなければならない部分を少し棚卸しされてもいいかもしれません。

 例えば、地方自治体もさまざまな問い合わせ業務を受けており、問い合わせでとられる時間が1日当たり非常に多い。それを解決するために住民から来る質問に対して、チャットボット機能を使って回答する動きが最近始まっています。使われた住民の方に対してのアンケートをみると、非常によかったという答えが90%以上を占めています。もちろん地方自治体の質問と年金の質問が一緒だと申し上げているわけではないのですが、人手不足が進む一方で、年金に対する質問がふえている状況を考えますと、もう少しテクノロジーを活用していくことも御検討いただいたらいいのではないかと思います。

 以上です。

○神野部会長 高木委員、どうぞ。

○高木委員 これまでの委員会でも発言させていただいたり、また、きょうも他の委員からも御意見が出ているのですけれども、伝えるべきことは3つあるように思っています。その3つそれぞれに、広報のあり方であるとか考え方、やり方を変えていく必要がもしかしたらあるのかもしれないと考えています。

 1つには、アンケート調査の結果にもあったように、御本人が加入の状況、保険料の支払い状況と受給額を知りたいと考えていて、その場合には、リーフレットで一人一人に通知をしたり、そういう御努力もしていますし、必要に応じて御本人がネットにアクセスしたり、調べるということをすると思うのです。それに応じるためのさまざまな施策も講じていらっしゃると思うわけです。

 2番目が、年金の仕組みと意義について伝えるということは皆さんおっしゃっているのですが、これは必要に応じて自分から積極的にリーフリットを手に取ったり、ネットにアクセスしたり、そうやってみずからその情報を手に取りに行くということをすると思うのです。それに応じるためのさまざまな施策も、これまで講じてきたということかと思います。

 3つ目は、大きな社会保障システムの中に年金制度を位置づけて、それを理解していただくことが必要かと思っています。年金とか社会保障システムの制度の一つ一つの具体的な、個別的な制度がどうなっているのかというお話だけではなくて、もっと社会システムを俯瞰した状況から見つめて、相互扶助によってこの社会が成り立っているということを、[A1] 高校生からでは遅くて、もしかしたら小学校、中学ぐらいから伝えていく必要があると思うのですが、これは自分から積極的に情報を取りに行くことはないと思うのです。だからこちらから積極的に歩み寄って伝えていくという努力をする必要があって、興味を持ってくれた学校だけではなくて、これは小学校や中学ぐらいからほとんど義務に近いぐらいの形でそれを伝えに行くということを学校教育の中でしていく必要があると考えています。ですから、この仕事はおそらく厚生労働省だけではなくて、文部科学省との連携が必要になってくると思うのですけれども、積極的に出向いて、若年期にこういった教育をしていくことが、長期的に見ると社会保障システムを堅実に整えていくことにつながっていくのではないかと考えています。

 きょう見せていただいて、さまざまこういった御努力をしていて、にもかかわらず、もしもきちんと伝わっていなかったり、年金についての理解が深まっていないとしたら非常に残念に思いますが、諸外国の例があったのですが、それに比べて日本がおくれているのかは定かではありません。しかし、日本の広報の見せ方ということに問題があるのではないかと思っています。例えば若者に伝えたいからゆるキャラを使うとか、アニメを使うとか、行き過ぎたそういったものの多用というのは、むしろマイナスの印象を持たれかねないのではないかと思っています。

 真面目な内容を伝えるためには、見せ方もあると思うのです。幾ら最初の取りかかりが若者の目を引くためとしたとしても、諸外国がそのような見せ方をしているのか。そのような幼い伝え方をしているのだろうかと思います。まともな内容を伝えるときには、まともな見せ方というのがあるのではないかと考えています。

 それと、最後のほうに年金ポータルというものが仮称であったのですが、1つにまとめてわかりやすくするというのは非常にすばらしい取り組みで、他国もやっていることだと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。

 なお、きょうのプレゼンシートの見せ方なのですけれども、国際比較の表が出ていたと思うのですが、今回だけではなくて国際比較を載せるときに、考えて頂きたいのですが、もちろん日本の状況を説明してから国際比較の説明をするので、他国の比較表を載せているのだと思うのですが、ここに日本も入れて比較できるように、日本の欄もつくって見せるということをしたほうが、より伝わりやすいのではないかと考えています。

 以上です。

○神野部会長 小室委員、どうぞ。

○小室委員 広報について、かなり多方面から御努力されていることがよく伝わりました。とにかく現状を見える化しないと、それに対する意識が上がらないというので非常に広報は大事だと思っております。

 すごく細かいところからなのですけれども、16ページに以前よりも改善された通知のはがきのぺらっと開くやつの改善例があって、以前より随分見やすくなったと思うのですけれども、高齢の方の相談に乗ったりするときにすごく基本的なことで聞かれるのが、もらえる額は年額か、月額かと聞かれるのです。年金だから年額じゃない?と答えるのですけれども、年の金額で言われると生活がどのぐらいそれで成り立つかということが非常にイメージしづらいそうで、月で表示されたほうが自分は今までどれぐらい、自分の生活を支えられるような払い込みができて、どこまで来たのかということがわかりやすいというので、単純にこれを月にするだけで随分違うのではないかなということと、そして、これは何年何月からもらえるんだいというのがよく言われるので、今のところあなたの何も繰り上げ、繰り下げしなかった場合のもらえる日は、何年何月から、月額お幾らというふうに、左上あたりの一番まず自分がぱっと開いたところで、そこから見せてあげると来るのが楽しみになると言ったらあれですが、たまたまではないですが、そういう形で自分の見える化ということをぱっと伝えてあげることによって、意識がぐっとまた上がるという効果があるかなと思っています。

 それから、これがかなり高齢の方にとってははがきという形が一番いいとは思うのですが、今や50代はプレゼン資料にもございましたように7割がスマホを使いますので、もうそろそろアプリというところに本格的に力を入れなければいけないのではないかと思います。

 今回、7ページにアプリがこういうふうにやっていますというのがあったのですが、これは完全にアプリの使い方を間違えていると思うのです。何もできないアプリですよね。ここから情報が見られるよというやつですよね。アプリはそこで計算ができたりだとか、自分にフィットした情報が見られて初めてアプリですので、これはパンフレットをアプリの上に置いたよというものなので、お金の無駄遣いだと思いました。

 できればアプリの中に、あなたの今月の納付が無事に済みましたみたいな、そういうものがちゃんと毎月そこで星がぽっと、アプリは大抵、何か通知があると上に数字で1とか2とかつくと思うのですが、高齢の方もみんな自分に家族からLINEが来ていないかというので、丸が1とか2とかついていればちゃんと読むというふうになっているので、そういうところを読んだら私ちゃんと今月も納付できたとか、今月払い込まれたというのがわかるという、アプリはリアルタイムで何かが更新されていかないと意味がないので、それをつくっていかれるのが正しいお金の使い道かなと思いました。

 スウェーデンなんかも今、確定申告は全部アプリでできますので、恐らく今回、御紹介いただいたページがホームページのイメージ図ばかりになっていたのですが、多分ちゃんと調べたらスウェーデンはアプリでもやっているはずだと思います。ホームページももちろんやっているし、でもPCに向かってというよりは、1人1台でという時代だと思うので、アプリ化というところで日本も、今回、統合していくというのはすごくいいのですが、それを早いところアプリのほうに対応していったほうがいいかなと思いました。

 51ページのところに、御自身の年金を試算できる、ログインをちゃんとすれば自分の金額がわかるというものが載っていました。日本年金機構さんのページです。ここが唯一、自分の額がちゃんとわかる。でもいろいろ郵送でパスワードが送られたりとかしてすごく大変ではありますが、でもそれをクリアしたりすれば自分の額がちゃんと見えるというものは現在あるわけですので、これをアプリ化していけば、最初だけ自分の個人情報をきちんと入れていただいて、手続を経てというセキュリティー面はちゃんとした上で、自分のアプリの中でどれぐらい、できれば40代とかぐらいから早い段階からそれを使っていただいて、まずは自分が毎月納付したことがちょっとずつ山に登っていくような形で表示されていくと、いつ条件が満たせるのか。自分はあとちょっとでこの期間が満たされて、山がまず1つ目旗が立つみたいな、これで一応、あなたはもらえる状態まで来ました。次はもっと高い山を目指しましょうではないですけれども、そういう感じであなたが年金をもらえるにはある一定の条件を満たさなくてはならず、今あなたはどこまで来ているんだというようなことがゲーム的要素というか、きちんと可視化できるような状態にするのがすごくアプリの得意な部分ですので、そういうものをつくっていかれるといいのかなと。今はそんなにお金かからずに、このぐらいの今、話したような内容でしたらできますので、そこまでぜひ進んでいただきたいなと。

 きょうプレゼンの中にも一般的なことではなく、今や年金は非常に多様化しているというのがありましたので、多様化しているからこそ一般的なパンフレットをどんなに読んでも制度が知りたいわけではなくて、自分のことが知りたいというのが一番のニーズですので、個別にそれが重要かなと思いました。

 質問として知りたいことは、今までかなりホームページのほうでだけやられているなというので、アプリを本格的に使っていないのは何か具体的な障壁があるのであれば、ここで言っていただいて、委員から例えばそのぐらいの障壁であれば越えるべきとか、それについてもっとこういう議論をするべきというところまでもう一歩、進められたほうがいいのではないかと思いました。

 以上です。

○神野部会長 ありがとうございます。

 駒村委員、時間が押しておりますので議事運営に御協力いただければと。

○駒村委員 資料の40ページと42ページの部分について、1つコメントとお願いをしたいと思います。

 3ポツの部分ですが、所得保障手段の多様化というところで、これから若い世代、まだ年金をもらう前の世代はどういう状況になっていくかというと、長寿リスクとマクロ経済スライドが効き切ったところで、団塊ジュニアあたり以降の世代は退職していく。それに対する老後の準備を早目にしなければいけないということで、例えば今、年金収入が主で65歳以上で無職の方がもらっている収入は19万円ぐらい。平均的には24万円ぐらい支出が出ているので、5万円ぐらいを毎月取り崩して生活されている。これが将来的には19万円の年金収入が16万円あるいは15万円ぐらいまでマクロ経済スライドが効けば落ちてくるだろう。そして、リタイヤした後の期間が今の65から80歳の期間よりもさらに延びて、65から85、あるいは90まで延びていく。

 つまり、総計で取り崩す金額が大きくなり、期間も長くなるということに対して今からどう準備していただくのかという意味で、この選択というのが非常に重要になってくる。その選択を誘導するためにはどうわかりやすく伝えていくのかというところで、先ほども武田さんがナッジの話をされましたが、各国とも42ページの下段2つを見ると、1つは公私年金のあり方は国によって違いますけれども、日本もいずれ諸外国同様に公私年金をパッケージで情報を伝えていく考え方をしなければいけないし、場合によっては引退タイミングのことも意識させた情報を通知しなければいけない。一番下の部分は、幾つかの国では行動経済学の知見を使っている。今回、説明資料のパンフレットも説明を変えている。このことによって、こちらの狙いどおりに国民の行動が変わったのかどうなのか。

 行動経済学の知見の使い方は非常に難しい部分もあるわけですけれども、既にEUではこの政策を使い始めていますし、日本でも消費者庁がこの知見を使い始めていますので、ぜひとも行動経済学の知見を借りながら対応する必要がある。、言ったようにどうしても人は長期の不確実な問題は苦手ですので、差し迫った問題ではないとしても、今から準備していただくような情報の伝え方を工夫していただきたい。そして、情報の伝え方が果たして目的どおりの効果があったかどうかも検証してもらいたいと思います。

 以上です。

○神野部会長 権丈委員、どうぞ。

○権丈委員 時間が押しているのはわかっておりますので、手短にいきます。

 まず最初に、これは非常に年金局のやる気を感じまして、ありがたいと思っております。10年前の、全く新しい制度にするのだからという形で予算がゼロ査定されるような時代から、よくここまで来たなというのがあります。けれどもそれと同時に、これまでこの年金広報の話というのは、ずっと単発的に出てくるわけですが、しっかりと制度化してもらいたい。どこが誰をどういう形でやっていく、そして後継はこういう形で制度としてやっていく、予算をつけてやっていくということをやっていかないと、政策統括官室でやりました、年金局でやりましたとか、そこら辺のところでやる気のある人が登場すればいいけれども、高校の先生たちから見ると、これは誰にアプローチすればいいかよくわからない。これまではある部署が協力してくれたのに、今は全く放られているというようなことがずっとこの10年間続いてきていますので、ぜひとも予算をつけて制度化して、しっかりしたものに年金局のほうで育てていただきたいと思っております。

 第2番目が、昨年10月に日本年金学会でシンポジウムを行いまして、国民年金法を国民年金保険法に名前を変えてもらおうということを、これはシンポジウムのみんな参加している総意としてまとめられています。かつては健康保険と厚生年金ししかなかったときには、厚生省には保険局しかありませんでした。これが皆年金、要するにみんなを対象とした年金をやりますよというときに、保険局から独立して年金局というものが生まれてきて、そこで皆年金という名前がつくわけですが、現実には、皆保険しかこの国にはないんですね。それを50年間、皆年金という名前をつけてしまっているから、みんな年金が保険であることをすっかり忘れてしまっています。我々の広報作業のまずスタート地点の3割ぐらいは、これが保険であることを教えることにかけなければならない。この作業、時間を節約できると随分と効率的に情報を伝達できるなかなというのがあります。1961年当時は福祉年金というのが相当数あったから、国民年金保険と呼ぶのは少しちゅうちょしたみたいですけれども、今や福祉年金はほぼ消えてきていますので、国民年金保険法というふうに名前を変えていただきたいというのがあります。

 3点目というのは、18歳から29歳層の人たちが、給付水準の見通しが大事だというふうに答えてはいるのだけれども、占いのニーズは昔からあります、古代からあるのですけれども、18歳から29歳層の人たちの給付水準の通しを名目値で答えることはなかなかできません。あなたの給付水準は幾らになりますよというようなことは。そういうことを考えていくときに、民間はそれをやっていけばいいのだけれども、公の仕事としてそれをやっていくかというところで、しっかりとした教育というようなことも視野に入れてもらいたい。

 やらなければいけないことは、今の学習指導要領とかには財政・税というのは理念とか制度を教えなさいとあるのに、社会保障に関しては課題を教えなさいとなっているんですね。だから高校の授業はみんな課題ばかりやっている。あれはまずいというのがあるので、社会保障は若い人たちに対してはしっかりと理念、歴史、制度そして課題というような手順を追った形で教育をしていく、情報を発信していくと同時に、指導要領がどういうふうになっているのかというチェックも、このあたりのところでしっかりとやっていただかないことには、なかなか年金というものが国民に根づいていくのは難しいのかもしれないなと思っております。

 年金広報の資料を拝見して、ここまでしっかりとやる気を感じるというのは、私、年金にかかわって人生初めてですので、大いに頑張ってもらいたいと思います。

○神野部会長 では、短くお願いします。

○菊池委員 私は日本年金機構の運営評議会の仕事をさせていただいていて最近感じるのですけれども、年金機構はいろいろな問題を抱えて、その処理に追われてきていますが、最近ようやく前向きな取り組みをする体制を整えつつあるように思います。広報もその一環となるかと思うのですが、年金事務所自身によるセミナーの開催といったこともありますし、社労士会と密接に協力しながらそういった活動を進めているという部分もあります。

 そうした中で38ページの図にもあるのですが、年金委員というものがあります。職域型、地域型とありますが、特に地域型です。これは日本年金機構法上、位置づけられた機関であります。この年金委員も広報の一翼を担っているのですが、一方ではなり手がいないですとか、高齢化が進んでいるといった問題があることは承知しております。ただ、やはり法律上、位置づけられた機関である以上、年金機構にも問題意識は持っていただきつつあるのですが、年金機構だけではなく、年金局として現状の把握あるいは活用の方法の検討をお考えいただけないかということです。

 いろいろな困難を抱えつつも、たとえば民生委員さんとか町会長さんといった方が年金委員を担っていただけると、地域である一定の役割を果たせるというような話も聞こえてきます。ただ、そうなってくるともう年金機構だけで対応できるような問題ではなくなるわけですね。政府が進めようとしている地域包括ケアあるいは地域共生社会といった、地域で暮らす高齢者あるいは障害者の方々の生活をどう支えていくかを考えるにあたって。年金というのは極めて重要なのです。生活を支える中心的な役割を果たしているわけですが、そういった中でも、要するに地域包括ケアのポンチ絵の中に年金事務所が出てこないのです。いまはまだそうした絵の中に描き込んでいくという位置づけがされていないのですけれども、38ページの右側の図に年金と書いてあって、これも一つの姿ですが、これとは別の次元で、地域で年金をどう展開していくか、地域で年金にかかわる諸機関、年金委員を含めて位置づけていくことが、広い意味での広報につながるのではないかと思っておりまして、年金局には地域で年金をどう展開するかという問題意識をぜひ持っていただければなと思っております。

 以上です。

○神野部会長 ありがとうございました。

 では、どうぞ。

○牧原委員 2点だけ。1点は費用対効果の話があって、基本的にはターゲットとする年代やセグメントに対してどういうことを目的として、それが本当にその効果があったのかないのか。ないものについては最小限にすべきだと思うし、あるところに重点的にやり続けることが必要なのではないかと思います。それが1点目。

 2点目は、最終的には個人が選択して行動するということが大事だと思います。38ページの絵の右側のほうに、真ん中に年金とありますが、本当はこれは国民個人ではないかと思います。そういう中で公的年金と私的年金をどういうふうに自分で考えて選択をして行動するかということにどういうかかわりをしていけばいいのか。それは企業、私どもありますし、金融機関も含めてどういうふうに個人にかかわっていけば、個人が具体的な選択をし、行動ができるのかという観点でも考えていくべき問題ではないかと思います。

 以上です。

○神野部会長 ありがとうございます。

 簡潔にお願いします。

○平川委員 先ほど菊池先生が言われたとおり、私も全く同意見でありまして、例えば公的年金等控除の手続に関しても、その手続ができないという認知症の方々がふえているとお聞きしていますし、そういう方々などに対してのさまざまな支援が必要です。介護の世界では地域包括ケアが強調されていますが、そういう高齢者の生活を支援していくという全体の位置づけの中で年金施策を考えていく必要があると思っています。

 そういった意味で、似たような課題はほかにもありまして、例えば障害年金に関して言えば、ある調査によると精神障害者の中で障害年金の制度を知らないという方々が一定数あるという調査結果もありますので、その辺は地方自治体含めてさまざまな全体の支援の中で、年金というものをしっかりと広報していくことが重要かと思います。

 あと、社会保険の適用拡大に関しても、就業調整をしてしまう方々が一定数いるという実態がありますが、多分、正確な情報が知らされないまま、足元の社会保険料が取られてしまうから就業調整してしまうという方も一定数いる可能性がありますので、その辺のきめ細かな情報提供や広報というのは重要かと思います。

 以上です。

○神野部会長 よろしいですかね。申しわけありません。私の不手際でかなり終わりの時間が近づいてしまいました。大変有益な御議論をたくさん頂戴いたしましたので、しかも応援する声が非常に強かったので、年金局におかれましては引き続き広報活動について、ただいまいただいた貴重な御議論を参照しながら推進していただければと思います。

 続いて、議題4に移りたいと思います。これにつきまして資料を事務局からお願いします。

○年金課長 資料4をお開きいただきたいと思います。

 遺族年金制度についてでございます。後ほど資料26ページでも御確認いただきますけれども、去る平成27年の年金部会の議論の整理におきまして、男女がともに就労することが一般化することが想定される中で、遺族年金についても社会の変化に合わせて制度を見直していくことが必要とされております。また、基本的な考え方の整理から行っていくのがよいのではないかとおまとめいただいております。

 このような議論の経緯を踏まえまして、平成29年5月でございますけれども、流通経済大学の百瀬准教授に研究代表者となっていただきまして、働き方の変化に対応した今後の遺族年金制度のあり方に関する調査研究といたしまして、諸外国におけます遺族年金制度の研究をしていただいたところでございます。本日の部会におきましては、我が国の遺族年金制度、それから、その取り巻く環境の変化を御説明いたしました後に、御紹介いたしました百瀬准教授による諸外国の遺族年金制度に関する研究内容の概要も御紹介させていただきまして、今後の遺族年金制度の基本的な考え方などについて委員の皆様に御議論いただければと考えております。

 それでは、3ページでございますが、こちらは遺族基礎年金の概要でございます。ポイントとなります点だけ申し上げます。国民年金の被保険者の方が死亡した場合に支払われるものでございますけれども、遺族基礎年金は子の養育に着目した給付となってございますので、死亡した者に生計されていた子のある配偶者と子が支給対象となっております。この生計維持要件におきましては、恒常的な収入が将来にわたって年収850万円以上にならない遺族という形で今、運用をされております。

 4ページが遺族厚生年金についてでございます。こちらは厚生年金の被保険者などが亡くなったときに支給される制度でございますけれども、遺族基礎年金と異なりまして子には着目しておりませんで、子のある妻または子、子のない妻、孫、55歳以上の夫、祖父母に対して支給される制度となっております。生計維持要件は先ほどの基礎年金と同様でございます。

 5ページ、最近の遺族年金制度の改正をまとめております。昭和60年に基礎年金制度を導入いたしましたので、遺族年金についても2階建てに変更になっております。繰り返しになりますが、子供を養育する遺族には遺族基礎年金を支給するという形になっておりますし、子に対する加算も遺族基礎年金に集中するという形で整理されております。

 他方、子供を養育しない遺族厚生年金の受給者には、基礎年金という形での定額相当が支給されなくなりましたので、かわりに中高齢者への特例といたしまして、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算をつくったという形でございます。

 平成6年改正では、遺族自身の老齢厚生年金も受給に結びつけていくという観点から、老齢年金と遺族年金の新たな併給の仕組みが導入されております。

 平成16年改正では、若齢期の妻に対する遺族厚生年金を見直しておりまして、夫の死亡時に30歳未満で子を養育しない妻に関しましては、遺族厚生年金が5年の有期給付という形になっております。また、遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給を見直すことといたしまして、まず御自身の老齢厚生年金を全額支給し、遺族厚生年金に関しましては改正前の額で計算いたしました上で、両方の額を比較いたしまして、老齢厚生年金の額が少ない場合には、差額を遺族厚生年金として支給するという制度に変更されております。

 平成24年の改正では、遺族基礎年金に関しまして従来の母子家庭から父子家庭にも拡大したところでございます。

 おおむねこのような形で、10年ぐらいのタームで何らか見直しが行われていると言えるのではないかと思います。

 6ページは、さまざま支給の関係の一覧表になっておりますので、必要に応じて御参照いただければと思います。

 7ページがざっくりしたものではございますけれども、遺族年金がどのように支給されるか、その保障のあり方を子のあるなしや、高齢ですとか若年期とか、そういった形で年齢に沿ってまとめてみたものとなります。

 現役期の遺族に対しては、遺族基礎年金と遺族厚生年金とございまして、高齢期に関しては主に遺族厚生年金と御自身の老齢基礎年金という形になってございます。現役期の中でも子を養育する世帯の場合に関しましては、養育する子がいる間は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方ということになります。この養育する子が18歳の年度末、高校卒業相当に到達した後は遺族基礎年金の支給は終わりまして、遺族厚生年金による保障という形になりますが、この養育する子が18歳の年度末に到達した時点で40歳を超えているケースの妻につきましては、基礎年金の代替として先ほど申しました中高齢寡婦加算が支給されるという形になっております。現役で子を養育しない世帯のケースですと、妻に対する遺族厚生年金は、30歳未満であれば5年の有期給付という形になっております。30歳を超えているケースでございますと、無期給付という形になっております。このケースで配偶者の死亡が40歳以上の場合であれば、同様に中高齢寡婦加算がつくという形になっております。

 夫の場合につきましては、死亡時55歳以上であれば60歳から遺族厚生年金が支給されるという形になってございます。

 このページの最後でございますが、右端のように御高齢になられてから遺族年金支給になるようなケースでございますと、御自身の老齢基礎年金を受け取った上で老齢厚生年金を受け取り、これが差額支給方式だというのは、先ほど御紹介したとおりでございます。

 8ページから、現在の受給状況について御説明申し上げます。

 まず9ページでございますけれども、制度別、性別で受給者数と構成をまとめております。制度別に見ますと、平成26年4月から遺族基礎年金の支給対象が父子家庭に拡大されたことを受けまして、遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方を受給されている男性の方が0.5%、遺族基礎年金のみの受給者のうち男性が11.6%と、合わせて12%相当の男性が受給されている。他方で女性のほう、遺族厚生年金についてはほぼ98%以上が女性という姿が見てとれます。

 10ページでございますが、今度は年齢階級別に分けて見たものでございますけれども、幅広く分布はしておりますが、60歳以上がほぼ9割以上を占めております。遺族厚生年金、上のほうの図でございます。他方で遺族基礎年金は若い世代の方が中心と、現役世代中心でございまして、特に40~49歳が半数以上を占めているというような受給状況になっております。

 11ページをごらんください。支給対象者別の支給額の状況でございます。平均年金月額についてですが、特に遺族厚生年金では年金の加入の長さが年金額に反映されますので、妻に対するほうが高いという状況になってございます。

 12ページでございますけれども、こちらは年間の世帯収入、年間収入の主な収入源を分けたものでございます。遺族厚生年金のみという場合になりますと高齢の方ということもございまして、自分の年金だけという方が多くなっております。一方で現役期の受給が中心になります遺族基礎年金のみを見ますと、労働収入、自分の働いた収入もふえてまいりますし、労働収入と年金と両方を合わせながらというパーセンテージもふえております。

 13ページ、就業状況についてまとめたものでございます。右上にございますように、65歳未満の遺族年金の受給者につきましては、6割以上の方が何らか就業されておりますが、その就業状況、真ん中を見ますと50%以上が臨時ということで、そういったような就業形態になっております。また、本人の労働による年間収入、これは労働の年間収入でございますけれども、下にありますように200万円以下の方が非常に多くなっております。

 14ページ、そうした遺族年金を受給されている方で働いていない、働けない理由については、働く場がないという方は比較的少なく、病気ですとか高齢であるとか育児であるような非自発的な理由の方が非常に多くなっております。

 被保険者が死亡されたときにお仕事をされていたのか、していなかったのかに分けた表が下にございますけれども、お仕事をしていた方の場合、引き続き就労しているという方が多数を占めておりますけれども、右側のほうですが、その当時は働いていなかったという方のうち、若い世代ですと就職したという方もそこそこいらっしゃるわけですが、45歳を超えますと、なかなか無職で就労が難しいのかなという状況が見てとれます。

 16ページ以降が世の中の変化という部分でございます。16ページをごらんいただきますと、夫婦の就労状況の変化ですけれども、夫婦のみ世帯、夫婦と子からなる世帯ともに共働きが増加しておりまして、一方で夫のみ就労という世帯は減少傾向にあることが見てとれます。

 17ページでございます。女性の働き方の変化でございますけれども、労働力人口に占めます女性の割合は、昭和60年の39.7%から一貫して上昇を続けまして、平成30年では44.1%という状況になっております。

 18ページ、今度は生産年齢人口で見た就業率ですけれども、女性の左下のほうのオレンジのラインですが、女性の就業率は平成13年の57%から平成29年度67.4%、大きく上昇している様子がごらんになれます。

 19ページ、女性が職業を持ち続けることに対する意識の変化でございますけれども、平成4年から28年の変化を見ますと、子供ができてもずっと職業を続けるほうがよいという割合が、紫のラインですが、ふえておりまして、28年調査では男女とも既に5割を超えているという状況になっております。

 20ページ、こちらがいわゆるM字カーブの変化でございます。左側が全体の状況でM字カーブが徐々に解消してきているという状況が見られるわけでございますけれども、その要因を見ますと右にございますように、有配偶者の方で働く方がふえているというのが、このM字カーブがフラットに近づいているという大きな要因ではないかと思います。

 21ページ、平均の勤続年数を見たものでございます。女性の場合、男性に比べてまだ短いわけではございますけれども、縮小傾向に向かっているということが左の折れ線グラフと右の棒グラフから見てとれます。

 22ページが男女の賃金格差でございます。格差は引き続きある状況ではございますけれども、長期的には縮小していっている傾向が見てとれるわけでございます。

 続きまして、これまでの年金部会における議論の整理ということで24ページでございます。ポイントだけ読ませていただきますけれども、遺族年金制度は家計を支える者が死亡した場合に、残された遺族の所得保障を行うものというわけでございますが、現行の制度は、制度の成り立ちから依然として男性が主たる家計の担い手であるという考え方を内包した給付設計になっていると整理していただいています。

 男女がともに就労することが一般化していくことが想定されている中で、遺族年金についても社会の変化に合わせて制度を見直していくことが必要であるという御指摘をいただいた上で、時間をかけて基本的な考え方の整理からという整理をしていただいております。

 また、下のほうでは、男性への遺族基礎年金の拡大をした際に、第3号被保険者が死亡した場合の遺族基礎年金の取り扱いについてが課題になっておりまして、遺族基礎年金制度のあり方とも密接にかかわってくる問題であり、遺族年金全体の見直しの方向とともに検討すべき課題として整理するとされてございます。

 最後でございます。諸外国の遺族年金制度について、先ほど申し上げました百瀬准教授による研究結果を一部こちらのほうで概要をつくらせていただいていますので、御紹介させていただきます。

 26ページ、こちらが5カ国の遺族年金制度の概要をまとめたものでございます。この中では遺族の生活変化に対する一時的な支援や、特に若年、中年遺族に対する就労促進という観点から、遺族年金が有期給付化されてきている様子が見えます。例えばイギリスでは遺族支援手当として子がある場合は増額もありますけれども、基本、子の有無にかかわらず、18カ月の有期給付と一時金という形になっております。また、スウェーデンでは一般調整年金として1年の有期給付でありますし、ドイツは小寡婦、この場合は夫も入っておりますけれども、年金として2年の有期給付。フランスも寡婦手当として2年の有期給付となってございます。

 一方で子がいる場合や遺族が中高齢の場合は、中長期的な所得保障も行っているという国もございます。例えばスウェーデンでも一般調整年金の支給終了時点で18歳未満の子がある場合には12カ月の有期給付か、末子、一番下の子が12歳になるまでは給付は継続する形になっておりますし、ドイツでは子が18歳になるまでは小寡婦年金よりも給付水準が高い大寡婦年金といわれるものが支給される形になっております。また、遺族が45歳以上になった場合にも大寡婦年金が支給されるようになります。フランスでは、子の養育に関しては家族支援手当という家族給付制度が対応しております。遺族が55歳以上になりました場合には、振替年金という無期給付の遺族年金が支給されるようになります。アメリカですけれども、子が16歳になるまでは遺児を養育する親年金が支給されます。また、遺族が60歳以上の場合には、高齢の寡婦年金として無期の給付が支給されます。

 なお、遺族給付の対象者が一番下の欄ですが、老齢年金を受給されるようになった場合の対応はさまざまとなっております。イギリスとスウェーデンでは、支給開始年齢に到達して老齢年金受給になりますと、遺族年金の支給はないという形になっております。ドイツ、フランスでは遺族年金と自身の老齢年金の併給を可能とした上で額の調整を行うという取り扱いになっております。

 27ページ、これは百瀬准教授の研究で4つの性格に分類していただいているものでございますけれども、1つ目が遺族の生活変化に対する一時的支援の性格があるということでございます。その主な対象は、現役期の遺族になりまして、生活の立て直しを図るための準備期間に対するものという位置づけでございます。各国、有期給付がこの性格に該当いたします。

 2つ目が、現役期の遺族や遺児に対する中長期的な所得保障という性格です。遺族に子がいる場合は養育費がかかり、就労もなかなか難しいということを反映いたしまして、また、子がいない場合でも遺族が中高齢である場合には就労がやはり容易ではないということが考慮されているように思います。したがいまして、子が一定の年齢に達するまでや遺族が中高齢である場合には無期という形で、中長期的な給付が支給されます。

 他方で、こうした給付は就労所得などによりまして支給額が調整されることが多くなっております。

 3点目でございます。老齢年金の代替・補足的なものという位置づけで、高齢の遺族配偶者の所得保障となります。遺族配偶者が高齢の場合には、それまでの就労状況などを反映いたしまして、本人が老齢年金を受給できない、あるいは年金額が少ないということがございまして、特に女性においてその傾向が強いことが考慮されております。こうした場合には、自身の老齢年金額が優先ということになりますけれども、それに応じて遺族給付の支給額が調整されているという形になります。

 4点目は、死亡した者が獲得した年金受給権の遺族配偶者への継承といったものです。フランスの振替年金はこの性格がございまして、夫婦が共同で負担した保険財産の回収といった趣旨があると聞いております。

 28ページは、以上のことを踏まえまして、遺族年金が諸外国ではどのように見直されてきたかというものを簡単にまとめさせていただいたものです。

 1点目は、先ほども申し上げました一時的な支援の性格に関しまして、遺族年金の対象となる方も就労することを前提に、就労意欲を促進する観点から、お子さんのいない遺族配偶者の給付を有期化したり、一時的に支援したりということで、一時的支援が重視されてきております。

 次が中長期的な保障の観点で、中高齢の場合には無期給付もございますし、子がいる間は子の養育期間が終わるまでは支給するというものでございます。

 3番目には、主に高齢の女性に対する老齢年金の代替・補足というものでございまして、ただ、こちらは老齢年金の水準が向上してくることも踏まえまして、水準を見直したり、国によっては遺族年金が廃止されているという国もございます。

 最後はフランスのような例でございます。

 諸外国では1~4全ての遺族年金に関しまして、男女の差は既にないということでございます。それが今回の研究成果でございます。

 最後、29ページにOECDから出ている遺族年金の政策の概要がございまして、労働参加へのディスインセンティブを与えないという観点ですとか、一時的な受給といったようなことも考えてはどうかという提言もなされているわけでございます。

 済みません、駆け足になりましたけれども、私からの説明は以上でございます。

○神野部会長 どうもありがとうございました。

 私の議事運営の不手際で、第4番目の議題の資料について御説明いただいた時点で予定している終了時間を突破しております。この遺族年金の問題は、御案内のとおり年金が社会保険3法、19世紀の後半に重化学工業化とともに生まれ、そうした重化学工業とともに発展をしてまいりましたので、どうしても重化学工業の時代、つまり男性が主として稼いでいくという稼ぎ方と、それを前提にした家族像を制度的な前提として刻印されているという面がありますので、働き方や家族の状況が大きく変わってくる社会経済の変化の状況に合わせて改革していかなければならない重要な問題でございます。

 本日は御議論を頂戴した上で、次回以降もそもそも引き続いて御議論をしていただこうかと思っていた課題でございますので、本日は大変申しわけないのですが、皆様の次の御予定などを御準備されている方もいらっしゃいますし、また、食事を抜くという非人間的な議事運営もしたくないので、とりあえずここで打ち切らせていただきます。どうしてもという御発言があれば頂戴しておいて、そうでなければこの議題につきましては次回以降の年金部会の運営の中で議論の機会を設けますので、そのように御了解いただければと思います。よろしいでしょうか。

 それでは、そのようにさせていただきますので、本日の議事につきましてはこれをもって終了とさせていただきます。

 今後の予定につきまして事務局から御連絡いただければ。

○総務課長 特にございません。

○神野部会長 どうもありがとうございました。重ねてではございますが、私の議事運営で予定した議論が尽くせないまま終わってしまったことをおわびいたしますと同時に、もう既にそれでも終了時間を超えてしまったということをおわびして、この年金部会を閉会させていただきます。