第13回 社会保障審議会

企業年金・個人年金部会 議事録

日時

令和2年8月20日(木)10:00~12:10

場所

TKP新橋カンファレンスセンター

16階ホールD

出席者

神野部会長  臼杵委員[オンライン]

小林委員[オンライン]

森戸部会長代理  大江委員

白波瀬委員[オンライン]

伊藤委員  小川委員  藤澤委員

井戸委員  金子委員

小林委員[オンライン]

 

(オブザーバー)

鮫島企業年金連合会理事長

松下国民年金基金連合会理事

 

議題

関係団体からのヒアリング

議事

議事内容

 

○神野部会長

 それでは、定刻でございますので、ただいまから第13回「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」を開催したいと存じます。

 皆様には、大変お忙しいところ、さらに付け加えて異常な高温の折を御参集くださいまして本当にありがとうございます。心から御礼を申し上げる次第でございます。

 本日の委員の出席状況ですが、内田委員、細田委員、渡邊委員から欠席との御連絡を頂戴いたしております。

 また、今回は、新型ウイルス感染症の状況を考慮して、臼杵委員、小林委員、白波瀬委員につきましては、オンラインで御参加していただくことになっております。よろしくお願いいたします。

 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、この会議は成立していることを、まず、御報告申し上げたいと存じます。

 それでは、議事に入らせていただきますので、見渡したところカメラの方はいらっしゃらないようですが、いらっしゃいましたら御退席をお願いしたいと思います。

 

(カメラ退出)

 

○神野部会長

 では、まず事務局の方から資料の確認をお願いいたします。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 年金局企業年金・個人年金課長の吉田です。本日もどうぞよろしくお願いいたします。資料の確認をさせていただきます。

 本日の資料ですが、資料1「本日のヒアリング出席者一覧」。

 資料2「全国銀行協会提出資料」。

 資料3「日本損害保険協会提出資料」。

 資料4「日本証券業協会・投資信託協会・全国証券取引所協議会提出資料」。

 参考資料1から3まで前回7月の部会資料を、参考資料4として委員名簿を用意しております。

 事務局からは、以上になります。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、議事に入らせていただきたいと思いますが、議事次第も御確認いただければと思いますけれども、本日は関係団体からのヒアリングを主な議題とさせていただきます。

 全国銀行協会、日本損害保険協会、日本証券業協会、投資信託協会、全国証券取引所協議会から御意見を頂戴することといたしております。

 また、日本証券業協会、投資信託協会、全国証券取引所協議会につきましては、3団体まとめて御発表を頂戴することになっております。恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

 本日の進め方でございますが、各団体の御意見をそれぞれ20分程度頂戴いたしまして、その後、5団体まとめて意見の交流をさせていただきたいと思っております。

 まず、全国銀行協会から御説明を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

○全国銀行協会

 全国銀行協会の石川と申します。本日は貴重な機会を賜りまして、誠にありがとうございます。

 早速ですが、当協会の資料は資料2になりますので、そちらを御覧いただけますでしょうか。表紙に「確定拠出年金制度の見直しに係る論点について」と題しました資料に沿って御説明させていただきます。

 それでは、表紙をめくっていただきまして、1ページ目を御覧ください。

 こちらのページは環境認識ということで、高齢社会における私的年金制度の在り方を記載したものになります。既に皆様御承知の内容ですので、詳細は割愛させていただきますけれども、資料の中段に赤字で記載しておりますとおり、昨年の政府の骨太方針において、特定の生き方や働き方が不利にならない、「選択を支える社会保障」等の考え方が盛り込まれました。さらに、下段になりますけれども、私的年金制度は個人の資産形成の「自助への入口」でございまして、「自助を促し継続させる」ということが重要であると考えております。

 当協会としては、ここにマル1からマル4として掲げておりますとおり、この4点がポイントであると考えておりまして、1つ目はインセンティブ、2つ目は公平性、3つ目は簡素で分かりやすい制度、4つ目として安定性、この4つがポイントであると認識しております。

 特に今般の制度の見直しに関しましては、4つ目の安定性、国民の誰もが継続的に利用できる安定的な制度であるというところが重要なポイントになると考えております。

 2ページ目は、前回のこの部会でお示しいただいた各論点に対する当協会の考え方を整理したものです。左側が論点、右側が考え方となります。

 一番上の1点目でございますが、企業型DCの拠出限度額、現行月額5.5万円についてどう考えるかというところにつきましては、当協会としては従前から御要望させていただいておりますとおり、拠出限度額は撤廃、少なくともさらなる引上げを行っていただきまして、制度設計の自由度を高めることが普及拡大に不可欠と考えております。

 2点目のDBを併せて実施する場合のDCの拠出限度額につきましては、まずDBの掛金額を控除するということにつきましては、現行の取扱いよりもDCの拠出額が広がる加入者が生まれるということで、その点は賛同いたします。ただ、拠出額が狭まってしまう加入者や、拠出そのものができなくなってしまう加入者が生じる懸念がありますので、御検討に当たり御配慮いただきたい事項がございます。この点は後ほど別のページで改めて御説明させていただきます。

 3点目、iDeCoの拠出限度額につきましても、従前から簡素化を要望させていただいておりまして、具体的には属性により異なる限度額を一律設定として、分かりやすい制度としていただくことを御検討いただきたいと考えております。

 最後、4点目でございます。iDeCo加入時の事業主証明等につきましては、転職等に伴う証明の届出が不要となるという見直しに賛同いたします。ただ、対応のためのインフラ整備に係るコストが加入者や事業主等の関係者にとって過度な負担とならないような御配慮をいただければと考えております。

 3ページ目を御覧ください。先ほどの2点目の論点、DBを併せて実施する場合のDCの拠出限度額に関してぜひ御配慮いただきたい点がございますので、このページで整理をさせていただいております。

 具体的には、四角囲みの中段以下、【要望】のところにございますとおり、一つとしてまずDC制度の安定性確保等の観点から、制度から排除されてしまう加入者がいなくなるような配慮をぜひ御検討いただきたいというところです。2点目として、事業主や加入者等にとって分かりやすい制度をぜひ御検討いただきたいと考えております。

 なお、「さらに」のところに書いてありますとおり、御検討いただくに当たっては、この部会の資料においてDB件数ベースで約9割がDB掛金額2万7500円以下というデータをお示しいただいておりますが、そういった割合ではなくて、具体的に影響を受ける加入者数など、その影響度合いを御認識いただいた上で御検討いただければと考えております。

 今申し上げた要望事項に関しては、次の4ページ目以降にもう少し詳しく記載しておりまして、本年度の当協会の業務委員長行でいらっしゃいますみずほ銀行のアセットマネジメント推進部、上田次長様から、現場の声も踏まえて御説明いただくこととしております。

 

○全国銀行協会

 みずほ銀行の上田でございます。私からは2点御提案事項を御説明させていただきます。

 4ページを御覧ください。まず、御提案の1つ目としましては、DC制度から排除される加入者がいなくなり、DC制度へ掛金拠出ができるような配慮について御検討いただきたいと考えております。

 DC制度の安定性を維持する観点から、DB仮想掛金額がDCの拠出限度額を上回る場合にも、DCの拠出が継続可能な仕組みとする必要があると考えております。

 これまで企業型DCでは、マッチング拠出制度導入により、加入者の自助努力をより促す仕組みを実現し、iDeCoでは2017年1月の加入者範囲拡大により、基本的には全ての国民が加入可能となりました。両制度において、生涯にわたって切れ目なく老後に向けたさらなる自助努力が可能な仕組みを実現してきております。

 これらの制度改正を前提として、我々金融機関としては制度の普及促進に取り組み、事業主や加入者の皆様にも制度を利用いただいております。

 加入者の自助努力の機会を維持することがDC制度の安定性を維持する観点からも大変重要であるため、DB仮想掛金額によらずDCの拠出が一定額可能な仕組みというものをぜひ御検討いただきたいと考えております。

 次に、こうしたDB仮想掛金額によらずDCへの拠出が継続可能な仕組みがもしも実現しない場合には、掛金拠出を行わずに当該企業型DC制度を存続可能な仕組みが必要だと考えます。これは現行制度では認められてございませんので、掛金拠出を行わずに企業型DC制度を存続する仕組みが可能になりますと、将来の法改正によってDC拠出限度額の撤廃、あるいは限度額の引上げ、DB仮想掛金額の変動等によって、再びDC制度へ拠出が可能となるということも想定されます。その場合に、DC制度の再利用に係る負担が大変低減できると考えてございます。

 また、企業型DCとDB制度を併せて実施する企業においても、一貫した人事制度の運用が可能となると考えております。DC制度を存続させることができなかった場合、例えば入社時期によって、ある時期の新入社員はDC制度の加入ができて、ある時期の新入社員はDC制度に加入できないということが起こり得ると考えてございます。

 このように、事業主による入社時のDC教育が異なることによって、一貫した人事制度の運営が困難になるということを避けるためにも、DCの掛金拠出を行わずに当該DC制度を存続可能な仕組みが必要だと考えてございます。

 5ページを御覧ください。次に御提案の2点目としまして、事業主や加入者等に分かりやすい制度設計を要望いたします。具体的には、DB仮想掛金額について簡素で分かりやすい仕組みを御検討いただきたいと思っております。

 DC制度の普及を促進する観点から、事業主、加入者にとってはもちろんのこと、制度説明を行う我々金融機関にとっても分かりやすい仕組みとする制度が必要であると考えます。企業型DC制度とDBを併せて実施する企業、当該企業の企業型DC加入者及びiDeCoの加入者に対しては、3つの点、つまり自社のDB仮想掛金額が幾らなのかということ、DB仮想掛金額に応じて企業型DCの拠出限度額が変動するということ、さらに、企業型DCの拠出額が変動することによってマッチング拠出の額やiDeCoの拠出額が変動することの3点をしっかり御認識いただく必要がございます。

 そのためには、DB仮想掛金額を分かりやすい設定とすることも重要であると考えます。例えば1万円単位などの幅を設けて、DBの再計算等による小さな変動ではDB仮想掛金額があまり変動しない仕組みとすることなどは、DB仮想掛金額を分かりやすい設定とする仕組みになるものと考えます。

 また,金融機関がiDeCo加入を検討されるお客様へ説明を行う際には、お客様がiDeCoに加入すると幾ら拠出できるのかを検討する際の目線などもあれば、制度のさらなる普及促進に有益であると考えます。

 さらに、簡素で分かりやすい仕組みにすることで、企業型DC制度に係るレコードキーパーの現行システムや、当該システムと連携する金融機関のシステムへの影響縮小化につながりますので、制度全体のコスト抑制につながるものと考えます。

 以上が前回、第12回会合における4つの論点に対する全銀協の考え方でございます。

 DC制度自体も、現在運用されております人生100年時代の到来とともに安定的な資産形成の必要性はより一層高まっております。また、多様な人材が多様な働き方をする時代において、特定の働き方が不利にならない、選択を支える社会保障としてDC制度の役割は一層高まっております。

 制度の安定的な運営のために、金融機関も継続的なシステム対応を行ってきております。制度変更によって大きなシステム対応を余儀なくされますと、利用者へも影響が出ることとなりますので、事務負荷、コスト負担が最小限となりますよう十分御留意いただき、丁寧な審議をお願いしたいと思ってございます。

 御清聴ありがとうございます。以上でございます。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 引き続きまして、日本損害保険協会の皆様方から御説明を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

○日本損害保険協会

 おはようございます。日本損害保険協会からお話をさせていただきます。私は、あいおいニッセイ同和損害保険の沢田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 お手元の資料3に沿ってお話をさせていただきます。

 冒頭にございますように、私どもでは、制度内容が複雑化し、結果的に使い勝手が悪くならないような、そんな制度をお願いしたいなと思っております。

 最初に1番、先般の厚生労働省からの提案に関しまして、企業型DCの拠出限度額の水準に関してお話をさせていただきます。まず、現在の5万5000円という水準に関しましては、特段の意見はございません。現時点においてこれを上げてほしいというような、優先順位という部分で言いますと、そこまでの優先順位はないと判断しております。ただ、お付き合いさせていただいている会社の中からは、やはり限度額を上げてほしいという声があるというのも事実でございます。これを付記させていただきます。

 次に、DBを併せて実施する場合の企業型DCの拠出限度額に関してというところです。DBごとの掛金額の実態を反映し、企業型DCの限度額を月額5万5000円からDBの掛金額を控除した額とする方式に関しては、企業型DCに関してより柔軟な制度設計が可能になると判断しております。

 しかしながら、先ほどもお話がありましたように、既にDBの評価額が2万7500円を超えた場合、既にDCを実施されている企業さんにとってはDCの拠出額の縮小ということになりますので、ここに関しての配慮が必要であると考えております。特にDBの評価額が5万5000円となった場合は、新たな掛金を拠出することができなくなりますので、そこに関しては、冒頭に拠出限度額は5万5000円に関して特段の意見はないとお話をしたのですが、もしこの制度を実施するのであれば、拠出限度額の5万5000円という部分に関しても、それを引き上げる方向での検討が必要ではないかと考えております。

 加えて、DBの掛金額を把握する仕組みの構築に当たっては、企業やRK、その他関係各機関の負担がないような形でこれを実施できるようなところをお願いしたいと思っております。

 続きまして3番目、個人型DCの拠出限度額に関してです。ここに関しては2つの視点でお話をしたいと思います。

 1つ目は、「企業年金の加入者の拠出限度額の在り方」と書いてありますが、やはり分かりやすい仕組みにしてほしいなというところです。拠出限度額を統一するということに関しては賛成であります。しかしながら、拠出限度額を、今回の提案では引き続き拠出限度額を2万円という部分と、企業型年金に加入されていないところにお勤めの2号被保険者は2万3000円ということで、ここが統一されていないところがありますので、ここを2万3000円に統一するというところを希望いたします。そうしますと、1号被保険者6万8000円、2号被保険者は2万3000円ということで、より分かりやすい仕組みになりますので、普及促進に有益であると判断しております。

 もう一つの視点ですけれども、拠出限度額2万3000円を仮に40年間、利回り2.0%で運用していったとしたときに、40年後には1680万円の一時金換算額になります。これは、ある意味、20代前半からずっと2万3000円の限度額を掛け続けていってでき上がる金額になります。ただ、現実問題を考えますと、本当に20代前半から拠出限度額を目いっぱいに掛ける人がどれくらいいるかというところです。30代、40代になってから始められる方がいらっしゃるわけですね。そうしたときに、果たしてこの2万3000円という額が妥当な額なのかどうかというところです。少しライフステージ的にゆとりがあるときにはもう少したくさん掛けられるような、柔軟な掛金額の設定も必要なのではないかというところをここで述べさせていただいております。

 そして、4つ目です。2号被保険者の個人型DC加入時の事業主証明書に関しましては、この証明書及び現況確認の完全廃止を希望いたします。この2つの書面がやはり普及促進の阻害要因になっているというところは認識しておりますので、この廃止を希望いたします。ただし、繰り返しになりますが、そのためのシステム構築等に過度な負担がかからないような配慮をお願いしたいというところでございます。

 そして、前回の部会の提案に関する意見以外に、損害保険協会の方から2点ばかり要望をこの機会にお話しさせていただければというところでございます。

 まず、「資格喪失年齢引上げ時の企業型DCの60歳超における引出し要件の緩和」と書かせていただいております。数年前に、資格喪失年齢を60歳から65歳に引上げということになりました。制度としてはより充実した制度ということになっているのですが、そこにおいての現状の問題点がありますので、ここを何とか改善につなげられないというお話をしたいと思います。

 現在、企業型DCで加入者であると、その間は受け取りができないということになります。例えば、もともと資格喪失年齢が60歳の会社が、では65歳に引上げをしようかということになったときに、それまでも受給可能年齢に関する要件は満たして、私は60歳から受け取りができるな、ということでお勤めされている加入者の方がいらっしゃった場合に、会社の方で資格喪失年齢を65歳に引き上げますよ、ということになると、その方は60歳から受け取る権利をお持ちなのですけれども、会社の方で65歳まで資格喪失年齢を引き上げたことによって60歳からの受け取りができなくなるのです。もちろん60以降に会社を辞めた場合は受け取りができるのですが、会社に勤めている間は受け取りができないということになりますので、会社としてはそういう人の意見が強いと、65歳まで引上げをしようとしてもなかなか引上げができないということになります。

 2022年にはこの資格喪失年齢を引き上げて、さらに70歳までということを予定されているのですけれども、現状のような形が変わらないと、今申し上げたような理由で、なかなか70歳まで引上げに関して躊躇される企業さんも出てくると思っております。したがいまして、60歳超に関しては受給可能年齢の要件を満たしているのであれば、受け取りが自由にできるような形にならないかなということをまず一つ要望させていただきたいと思います。

 2つ目は、いろいろな申請関連に関するペーパーレス化、あるいは押印の省略化でございます。特に、対象事項ということで2つ挙げさせていただいております。「確定拠出年金運営管理機関登録変更の届出」に添付する役員履歴書・誓約書と書いております。現状は、運営管理機関の役員などの変更があったとき、届出書に会社印を押して、なおかつそれに附属する紙類に全部同じ会社印を押すことになっております。こういったところを省略化できないかなというところです。

 もう一つが、規約の申請に関しまして、労使合意の書類を今添付するようになっているのですが、この労使合意の書類も一つ一つ従業員代表の同意の個人印が必要となるところがあります。現在、リモートワークで、なかなか従業員が会社に来ないという中で、こういった従業員代表の同意の個人印を求めるというところを何とか省略できないかなと。一方で、従業員代表の同意の個人印を取るということは、労働者の保護の観点からもある部分で必要なところであります。したがって、この企業型DC以外でそういった議論があったときには、ぜひこの企業型DCの労使合意の書類に関しても俎上にのせていただいて、今後議論していただければというところを要望したいと思っております。

 日本損害保険協会からは以上でございます。ありがとうございました。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 引き続きまして、日本証券業協会、投資信託協会、全国証券取引所協議会から御説明を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

○日本証券業協会

 日本証券業協会の島村と申します。

 本日は、私ども日証協のほかに、投信協会からは杉江副会長専務理事、日本証券取引所グループの松尾企画統括役にも御一緒いただいておりまして、証券三団体としての意見を申し述べさせていただきます。このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 当部会におきまして御検討されております確定拠出年金制度に関しましては、私ども日本証券業協会でもその制度の普及に向けて、「個人の自助努力による資産形成に関するワーキング・グループ」を設置いたしまして検討しているところでございます。

 本日は、そのワーキング・グループの主査を務めていただいている野村證券の山川執行役員から、証券三団体としての意見、要望等を御説明させていただきます。

 

○日本証券業協会

 野村證券の山川でございます。本日は貴重な機会を賜りまして、大変ありがとうございます。

 本日は、わたくしどもの御提出している資料のボリュームが大きくなっておりますので、なるべく分かりやすくコンパクトに御説明さしあげたいと思っております。

 早速ですが、お手元の資料に沿いまして、より公平なDC拠出限度額設定の検討に関しまして、先日の当部会で示された「議論いただきたい点」を中心に御説明させていただきたいと思います。資料は、日本証券業協会、投資信託協会、全国証券取引所協議会の提出資料ということで 資料4となっていますので、お手元に開いていただければと思います。

 まず1ページ目を御覧ください。iDeCoでございますけれども、国民年金第1号被保険者及び企業年金の第2号被保険者のための制度として2001年にスタートしましたが、2016年の法改正により企業年金とiDeCoの組合せが可能になり、このため、iDeCoは全ての現役世代が利用可能なユニバーサルな制度になりました。

 現在、iDeCoの加入者は160万人まで増加しておりまして、公的年金を補完して高齢期の所得を確保するための自助努力を支援していくためには、iDeCoの加入者を公的年金の制度の加入者全体をカバーするくらいに増やしていくことが重要な課題であると私どもは考えております。

 加えて、人生100年時代を迎えまして、働き方、生き方の多様化が見込まれる中、自助努力の機会の公平性が確保されるように目指すべき方向性に向けて、引き続き税制改革も必要と考えております。

 こうした問題意識を念頭に、先日の当部会で示されました「議論いただきたい点」について証券界としての考え方をお示しさせていただき、加えて、私的年金制度が国民により広く受け入れられ、利用していただける制度になるような要望をさせていただきたいと思っております。

 資料の2ページ目を御覧ください。順序が若干逆になりますが、「議論いただきたい点(I)」につきましては後ほど御説明させていただきます。まず、「議論いただきたい点(Ⅱ及びⅢ)」について合わせて御説明させていただきたいと思います。

 3ページ、4ページの方は、前回の部会にてお示しいただいた論点を記載しておりますが、「議論いただきたい点(Ⅱ)」の「DBを併せて実施する場合の企業型DCの拠出限度額」に関してですが、現行、DBの掛金を一律2万7500円と評価しまして、企業型DCの上限が2万7500円となっております。これをDBごとの掛金の実態を反映し、企業型DCの拠出限度額を月額5万5000円からDBごとの掛金を控除した額とする御提案でございます。

 4ページ目の3点目でございますけれども、「個人型DCの拠出限度額」につきまして、現行のDBの加入の有無等により個人型DCの拠出限度額の現状は異なっておりますが、これを2万円に統一するものという御提案です。

 これらの御提案は、5ページ目にお示ししておりますが、法改正の際に議員修正によって必要な措置を講ずべしと指摘された経緯に基づくものと理解をしております。

 6ページ目を御覧ください。先ほどの議論いただきたい点ⅡとⅢに対する証券界の意見を記載しております。

 こちらに関して、まず「議論いただきたい点(I)」とも関連するのですけれども、証券界では企業型DC、DB、iDeCoの制度をトータルに考えて、拠出限度額の引上げを含め、諸施策を検討していただきたいと既に要望させていただいております。このⅡとⅢは証券界の要望の実現に一歩近づくものですから賛成させていただきます。

 ただし、この見直しによって、現行制度下において企業年金やiDeCoを利用している加入者の方々への影響が生じる部分につきましては、経過的な措置など、柔軟な対応が必要であると考えます。

 あわせて、6ページの下の方に記載させていただいておりますとおり、「見直しの一例」を実施する際に、企業年金制度の変更や転職等により企業型DC・DBの掛金が変更となる場合、iDeCoの掛金限度額を変更することになりますので、現状では年1回しか認められていない掛金額変更の回数制限を廃止していただければと思います。

 続けて、7ページ目を御覧ください。先ほど「議論いただきたい点(Ⅱ及びⅢ)」に関しまして、証券界の要望として実現に一歩近づく形として賛成すると申し上げました。ただし、見直し案におきましても、iDeCoの拠出限度額が月額2万円となりますために、企業型DC・DBの拠出額が3万5000円未満の場合にはこの5万5000円の枠を使い切れないという加入者様が出てくることとなります。この点につきまして、さらなる公平性を確保するために、できるだけ早期に、拠出限度額から事業主が拠出した掛金額を引いた金額を個人のiDeCoへの拠出可能な金額とすべきと考えております。7ページ目の右の赤枠で囲んであるイメージ図を御覧いただければと思います。

 なお、この提案の実施に関しましては、企業型DC・DB及びiDeCo拠出限度額の情報を一元管理し、その情報を加入者様、事業主様、そして受託関連機関等が利用できる仕組みを構築することを前提とするよう、併せて要望させていただきます。

 続きまして、8ページ目からは「議論いただきたい点(IV)」の「第2号被保険者の個人型DC加入時の事業主証明書等」について、でございます。

 9ページ、10ページ、こちらも先日の部会の資料を引用しておりますが、iDeCoの拠出限度額を管理するためには、その実施主体である国基連が企業型DC・DBの加入に関する情報を確認する必要がございまして、現在は従業員の個人型DCの加入時における企業型DC・DBの加入状況の事業主証明の発行と年1回の現況確認によってこれが行われております。これが事業主様の御負担となっていることもあり、加入者様にとっても申込み対して会社の印鑑をもらう等、色々とハードルとなっていますし、また、昨今のテレワークの環境等で支障がますます生じているものと思われます。

 この点に関しては、企業型DCを実施している場合には、記録関連運営管理機関にDCの情報が集積されておりますし、これが2022年10月から記録関連運営管理機関と国基連との情報連携が図られるとされていますことから、この情報連携の仕組みにDB加入者様の全体の情報も入れて構築することで、事業主証明の発行と年1回の状況確認、現況確認を廃止してはいかがかという御提案でございます。この提案に関しましては、意見は11ページの方に記載してございます。

 今回の御提案に関しましては、加入者、事業者双方にとってiDeCoの事務手続を簡素化することに資すると考えられていることから賛成させていただきます。

 つきましては、2022年10月をめどに予定されております記録関連運営管理機関と国基連との情報連携の枠組みに、早期にDB加入者の情報も含めていただければと思う次第でございます。

 なお、その枠組みの構築に当たりましては、企業型DC・DB及びiDeCoの拠出額等の情報を一元管理し、その情報を加入者、事業主、そして受託関連機関等が利用できるような仕組みを構築することを前提とするよう要望させていただきます。

 12ページ目を御覧ください。証券界ではかねてより、年金基礎番号に代えましてマイナンバーの活用によりiDeCoの事務手続の簡素化について要望させていただいているところでございまして、マイナンバーを通じた情報の一元管理の方策についても併せて御検討いただければと思う次第でございます。

 13ページ目からは、「議論いただきたい点(I)」にお示しいただいている企業型DCの拠出限度額の水準について、でございます。

 14ページ目を御覧ください。繰り返しになりますけれども、証券界では企業型DC及びiDeCoの確定拠出年金制度については、個人の自助努力による老後の資産形成を後押しするとともに、公的年金を補完し、老後の生活を保障するための制度として一層の発展・改善が望まれることから、拠出限度額の引上げについてはこれまでも要望しているところでございます。このため、企業型DCの拠出限度額の水準の検討に当たりましては、マッチングの取扱いも含めた企業型DC・DB及びiDeCoの制度をトータルに考えていただき、拠出限度額の引上げを含め御検討いただければと思います。

 15ページを御覧ください。特にマッチング拠出について、でございますけれども、加入者掛金は現状事業主拠出を超えられないとされておりますために、事業主拠出が少額にとどまる加入者の場合、拠出枠の使い残しが生じることになります。そのために、事業主拠出と合計で拠出限度額を拠出できるようにマッチングを可能としていただきたいと考えております。

 また、こちらにはキャッチアップ拠出ということを示させていただいておりますけれども、米国においては50代以降の退職準備世代に対しまして、例えば年6,500ドルの追加の拠出、こちらをキャッチアップ拠出と呼んでおりますが、その枠が設けられております。我が国におきましても、自助努力による十分な老後の資金の確保のために、こうしたキャッチアップ拠出を設けることも御検討いただければと思います。

 さらに、16ページは、より長期的に考えまして、私的年金がどうあるべきかを整理して、記載させていただいております。

 前提として、第1番目に、少子高齢化の進展を考えますと、豊かな高齢者が増加し、一定の税や社会保険料の負担をしてもらうことが我が国の経済や社会保障制度の持続にとって避けられないこと。第2番目に、ライフコースの多様化の中にあって、従来型のいわゆるサラリーマン的なライフプランだけを前提とすべきではないという認識がございます。また、団塊ジュニア世代が高齢期を迎える前に、こうした抜本的な制度改革を実現することが肝要ではないかと考えております。

 こうした考え方の下で、制度改善のポイントを16ページの下の方にお示しさせていただいております。

 まず1番目に、運用時におきましては、特別法人税は完全に廃止していただきい。2番目、拠出時については、具体的に生涯枠の設定というのをお考えいただきたい。そして、その1割程度の年間の上限額をつくるという提案をしております。例えば生涯枠を3000万円とし、この3000万円は現在の5万5000円の拠出の上限を20歳から65歳までフル活用した金額がほぼ3000万円に当たるわけですけれども、こちらを生涯枠とし、そして年間の拠出上限をその10分の1を300万としてはどうかというものです。高収入な時期が人生のどこかに集中する、そういったケースへの対応が可能になります。また、50代になりまして、住宅や教育への負担がなくなってから老後に集中的に備える、そうしたことも可能になるのではないかと思います。

 ただ、その際に税体系も世界標準とも言えるEET型に移行させ、給付時に年金所得や一時金について適正な課税と社会保障料も負担する形にすることを御提案申し上げます。

 人生100年時代を見据えますと、どの程度の資産形成で十分かという議論は恐らく尽きないものがあるかと存じますが、給付時に適正な課税という負担があるのであれば、税制等でニュートラルと言えるのではないかということで、拠出枠を増やす議論も受け入れられやすくなるのではないかと思います。そして、何よりも、誰にとっても簡素で分かりやすい制度にすることが重要と考えます。

 17ページは、今申し上げました考え方を図に表したものです。公的年金が老後に備えるための柱であることは今後も変わらないようお願いしたいのですが、一方で、高齢者が人口の3分の1を占める、そんな将来を考えますと、世代間の支え合いだけでは不十分であり、豊かな高齢者層が支え手になることで、世代内の支え合いも可能な仕組みを構築することが必要ではないかと考えます。

 さて、18ページ目からは証券業界からその他の要望を載せておりまして、そちらについても、こういった機会ですのでお時間をいただいて御説明させていただければと思います。

 19ページ、iDeCoの拠出可能額の通知の仕組みでございます。御案内のとおり、現在のiDeCoはほぼ全ての現役世代の方が利用可能なユニバーサルな制度になっております。そこで重要なのが、昨年12月に当部会で取りまとめられました議論の整理にもございますが、iDeCoへの拠出可能額が幾らかを自ら把握することであり、これが容易にできるようになれば、iDeCo制度の利用促進に資するとともに、自助努力の老後資産の形成にますます役立つと思いますので、このような取組をぜひ進めていただければと思います。

 例えばとして記載させていただいておりますが、2022年10月以降、記録関連運営機関と国基連の連携が予定されておりますが、こうした仕組みを前提として現役世代へ通知したり、あるいは公的年金との連携により「ねんきん定期便」にそれぞれ自分の拠出可能額を記載したりするということも可能になるのではないかと考えます。

 20ページは、2018年5月より開始されましたDCの中の指定運用方法について、でございます。現在、設定は任意でございまして、企業型DC、個人型DCともに、元本確保型の選択割合はいまだ50%を超える高い水準で安定的な運用手法に結果として偏っている傾向も見てとれます。一方で、アメリカは、こちらも皆様よく御存じかと思いますが、401kプラン加入者の資産配分においては、全体の7割を超える割合が株式に投資する投資信託等になっておりまして、結果としまして米国における確定拠出年金は経済成長の恩恵を享受しているのに対し、我が国では今申し上げた理由により、経済成長の果実の取り込みが不十分な状況ともなっております。

 米国等の海外における年金制度の普及が投資商品を通じた資産の増大が欠かせない要素であったことを鑑みますと、我が国におきましても分散投資を促す仕組みの導入として、指定運用方法の設定をさらに促進し、そしてそれを活用し、運用期間に応じてリスク等を調整していく機能を有するターゲットイヤー型の投資信託や、加入者自身がリスク等の種類を把握しやすいように、リスク目標や資産配分の比率を明示するバランス型ファンド、こういったものに限定してデフォルトに設定し、確定拠出年金の本源的な目的である加入者の資産形成を広く実現できるのではないかと考えております。

 21ページは、加入者への支援策でございます。確定拠出年金制度におきまして、加入者への運用支援として継続投資教育の努力義務等々が導入されているところでございます。iDeCoへの加入を検討されているお客様から、ライフプランに応じた全体的な資産運用に関する個別相談を営業職員が受けた場合、具体的な投資アドバイスを求めるニーズは根強いと考えます。また、iDeCoのさらなる普及拡大には、運用経験が少ない方々への充実した運用支援も不可欠と考えております。

 つきましては、iDeCoの加入を検討しているお客様からの全体的な資産運用に関する個別相談に対応するために、有価証券に関する一定の資格要件を満たす者からの投資アドバイスや、投資一任による資産運用支援を可能とする施策というのを改めて御検討いただければと思います。

 22ページ、老齢給付金の受給について、でございます。現在、約9割の受給者の方々は一時金を選択していらっしゃいまして、年金を選択する受給者の方はまだまだ限定的でございます。高齢期の受給環境を整えることによりまして、十分な老後資産を計画的に確保することが可能となりますよう、年金形式での給付の利便性を高める必要があると考えます。

 また、ライフコースの多様化を踏まえまして受給の考え方は様々であり得るということからも、老齢給付金支給期間につきましては、終身も含めて規定に定めた期間というふうにしていただければと思います。

 23ページ、最後のページになりますが、年金型給付専用商品の採用について、でございます。人生100年時代に対応した給付方法、特に年金による給付を促進するための施策が求められるものと想定されますが、現状の老後資産の形成を目的とした運用商品だけではなく、高齢期の取り崩しにも対応できる、山を登って山を下る、この下りの取り崩しにも対応できるような年金型給付専用商品の検討も重要な課題ではないかと考えております。

 なお、これらの商品につきましては、給付時指定運用方法としての設定や給付時の運用商品の事前選択を可能とすること、また、運用商品の上限の35本の対象外とするといった観点も含めた検討が必要ではないかと思っております。

 なお、24ページ目以降でございますが、確定拠出年金制度の拡充に関しまして、日本証券業協会、投資信託協会、全国証券取引所協議会の令和3年度の税制改正要望(案)となっております。あくまで現段階では案ということで説明は割愛しますが、御参考まで添付をさせていただきます。

 以上でございます。

 

○日本証券業協会

 以上が日本証券業協会の要望を含めた説明となります。御清聴いただきましてありがとうございます。

 今回、部会に提示させていただいております見直し案につきましては、私的年金制度のさらなる発展・拡充のための一歩と捉え、日本証券業協会といたしましては賛成させていただきます。

 引き続き、投信協会、JPX様からも御説明をお願いできればと存じます。

 

○投資信託協会

 投資信託協会の副会長をしております杉江と申します。本日は貴重な機会をいただきましてありがとうございました。

 本部会で取り上げております論点につきましては、今、山川様から御説明をしていただきましたが、私どもも業界の要望に一歩でも近づくということで賛成をさせていただきたいと考えております。

 投資信託協会として一言申し上げますと、私ども投資信託業界では老後の資産形成のための商品をたくさん開発しておりまして、例えば先ほども御説明がございましたが、若いときはリスクが高くて、だんだん老後に近づくにつれてリスクを下げていくようなファンド、商品でございますが、これをターゲットイヤーファンドと言っておりますが、こういうような国民の老後の資産形成にとって大変有益であるような商品も開発しておりまして、そういうものをDCの中に取り入れていくことによって加入者の資産形成が図られることが大事ではないかと。それによって、我が国あるいは世界の経済成長の利益が老後の資産形成のために利用されることが可能になってくるのではないかと思っております。

 しかしながら、現状を見ますと、まだ50%以上が元本確保型の商品に偏っているというのが個人年金DCの内容になっておりますので、指定運用方法の活用によりまして、できるだけ加入者のニーズに合うような商品がこのDCの構成資産として採用されていくように努力をしていきたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

 

○全国証券取引所協議会

 全国証券取引所協議会の事務局をしております日本証券取引所グループの松尾でございます。本日はこのような場を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私どもの全国証券取引所協議会も、今回、御提案いただいているDBを併せて実施する場合の企業型DCの拠出限度額をDBの掛金額を控除する方式とすることとか、企業年金加入者の拠出限度額、個人型DCの限度額を統一するという方向については、自助努力による老後資産形成により柔軟に対応できるということとか、やはり制度のシンプル化ということから、私どもも賛成させていただいております。

 その上で、月額の5.5万円を超えるような場合につきましては、ファクトファインディングとか一定の何らかの調査をした上で、経過措置のようなものを講じるという形で対応できればなと考えております。

 以上でございます。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 御発表いただきました5団体の皆様方には、大変貴重な時間を割いていただいただけではなく、極めて御丁寧に、かつ要領よく御説明を頂戴しましたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。

 それでは、委員の皆様方との意見交換に移りたいと思いますので、今、5団体から御発表いただきました内容につきまして、御質問、御意見があれば頂戴したいと思います。

 どうぞ、大江委員。

 

○大江委員

 各団体の皆様には、限られた時間の中で分かりやすい御説明をいただきましてありがとうございました。

 前回、私の部会での発言が少し誤解を招いたかもしれませんけれども、私自身は今回の厚生労働省の出された見直し案には賛成の立場です。

 DCの拠出可能額の設定に当たってDBをどう評価するかということですけれども、1万を超えるDBについて一律の評価となっているものをDBごとの掛金の実態を反映していこうというものであって、これによってiDeCoの限度額も公平で、資格区分が簡素化されることになろうかと思います。

 ただ、今回の見直しによって拠出枠が広がるところが多いわけですけれども、逆にDBの給付水準である掛金水準が高くて、さらに企業型DCもやっていたとすると、企業型DCの拠出枠は縮小、消滅するということもあろうかと思います。正確な対象者数とか人数を把握したいところでありますけれども、この場合、労働条件の変更ですし、既に積み上がった資産の取扱いということなどはいろいろ考えるべき点はあると考えております。今回、皆様のプレゼンテーションをお聞きしていても、ほぼ同じ考えなのではないかと感じました。

 それで、各団体の方にお伺いしたいのですが、税の恩典がある制度である以上、公平性の観点はやはり避けられず、既に施行されているところを温存するというのは採用しにくいのではないか。一方で、労使合意をしてつくってきた制度なので、変更となりますと、例えば5年といったような時間的な猶予を設けるといったことはあるのではないかと私は思っているのですけれども、この辺りを各団体の皆様はどう思われているか、お聞きできればと思います。

 

○神野部会長

 それでは、申し訳ありません。5団体ですが、御発表いただいた3つのグループごとでよろしいですかね。全銀協の皆様方から簡単に答えていただければと思います。

 

○全国銀行協会

 みずほ銀行の上田でございます。

 経過措置のところの御意見だと思いますけれども、労使合意にはそれなりに大事なプロセスを経て合意形成をしていくということがございますので、一定期間の時間的な猶予は必要な場合もあると考えてございます。

ただ、制度運営の立場からいきますと、経過措置をむやみにくっつけますと制度が大変複雑になるということもございまして、悩ましいところではございます。

 

○神野部会長

 では、損保協会。

 

○日本損害保険協会

 特に明確にこれといった対案というのは実はありませんので、先ほど申し上げましたとおり、拠出限度額を上げて、企業型DCの拠出枠が縮小、消滅する会社を救済するような形というのはできないのかなと。既存の企業で現行の拠出が今後できなくなるところに限って対応するということにはなろうかと思う、新規の企業に関しては考えなくてよくて、既存のところで不利益を被るところに関しては、拠出限度額の見直しで対応できないかなと思っております。

 以上です。

 

○神野部会長

 それでは、日本証券業協会。

 

○日本証券業協会

 野村證券の山川です。証券業界を代表してお答えさせていただきます。

 大江委員のおっしゃるとおり、一定の移行措置、それから経過期間の設定というのは必要だと考えております。その期間が5年なのか、10年なのか、非常に難しいところではございますが、既存のそういったものを持っている方、そういったものが積み上がった方に対して、その次にアクションを移せる期間、そして労使合意できちっと見直しの話ができる期間、付け加えまして、事業主様にとっては人事制度、福利厚生制度全般に関わるものですから、そこの全般を見直す期間と議論の期間が必要かと思いますので、一定期間の猶予を設けることが肝要かと思っております。

 

○神野部会長

 ありがとうございました。

 それでは、小川委員。

 

○小川委員

 日本年金数理人会の小川と申します。よろしくお願いします。

 本日は、分かりやすいプレゼンテーションをどうもありがとうございました。

 日本年金数理人会では、前回までのこの部会での議論を受けまして、DBを併せて実施する場合の企業型DCの拠出限度額、論点で言うと2番になると思いますけれども、こちらについて厚生労働省さんとまさに鋭意検討をしている途中でございますので、それに関して代表して全国銀行協会さんの方に2点質問させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 私自身の考えとしては、これまでの部会でも発言しておりますとおり、国の年金の所得代替率が下がっていくと見込まれているということ、それから、企業年金制度の普及というのも公平と同じぐらい考えていかなければいけないという観点から、まさにいろいろ悩ましいなと思って発言をしてきております。

 そこで、資料で言うと4ページですけれども、ここに書いていただいていることは、まず前提としては、上の矢印にありますように、拠出限度額を上回る場合の話をまずされていると思うのですけれども、中ほどの「DB仮想掛金額によらずに」というところは、どういったものを想定されているのか。現状5.5万円という限度額があるのですけれども、それとは別にということなのか。どういった理屈づけでのお考えなのかというのがここで1つ目のところです。もう一つは、先ほど確認させていただいたように、拠出限度額を上回る場合となっていますが、一方、今、2.75万円という一律評価をしておりますので、上回りはしないのだけれども、2.75万円から5.5万円未満のところの団体について、この中ほどにございます「よらずに」ということをどのようにお考えかというのを聞かせていただきたいというのが1点目です。

 2点目、最後ですけれども、次の5ページに、しっかりと仮想掛金額について認識をしていただかなければいけないということを書いていただいていて、さらにその下に、例えば1万円単位で設定ということを書かれています。こちらにつきまして、私としては分かりやすいという観点のほかに、この金額自体が企業型DCの制度設計そのものに大きな影響を与える部分ですので、現状では、計算手法にもよりますけれども、見直しが発生する可能性はあるわけでございます。そうした場合に、一つの考えとしては単位を大きくしておくということもありますし、あるいは数理的に計算すると変動は一定程度あるけれども、許容するというような考え方もあるのではないかと思いつつ、いろいろ考えているのですけれども、その辺が今回の御提案の中で議論になったかどうか。

 この2点をお聞かせ願えますでしょうか。よろしくお願いします。

 

○神野部会長

 それでは、全銀協様、よろしいですかね。2点ございました。

 

○全国銀行協会

 みずほ銀行の上田でございます。

 今の御質問につきまして、まず、我々もスタンスとしましては、DBの想定掛金額を今一律2万7500円と評価しているものを正しい評価額にしていこうということによって、DBの評価額が2万7500円未満の方につきましてはDCの掛金額が増えていくだろうと、この今回のアイデアに対しては賛同してございます。

 ただ、今御指摘のあった、DBの評価額が2万7500円を超えた場合にDCの掛金額が縮小するケース、これが2万7500円から5万5000円の間のという御質問だと思いますし、あとはDCの加入者から排除されるケース、これがDBの仮想掛金が5万5000円以上ということだと思いますけれども、このケースについて一定の配慮をいただきたいという御提案でございます。

 その中で、まず2万7500円から5万5000円の間の方につきましては、今回のコンセプトからすると一定程度やむを得ない部分があるものだと考えてございます。これはDBの掛金額を評価していこうということだと思っています。

 ただ、考えてございますのは、5万5000円を超えたことによって排除されてしまうケースです。ここを例えば、4ページ目でいきますと、継続できるような、拠出を一定額可能な仕組みにできないだろうかというところを一つ要望としては挙げさせていただいております。

 表現の仕方がいろいろあろうかと思いますけれども、例えばDCの最低掛金みたいなものがもし認められるのであれば、今までDCを続けてきた人も続けることが可能でございますし、今後、DCに新たな加入者になる人たちにとっても一定程度の安定性を保証できるものではないかという考えでございます。

 この水準につきましては、幾らが妥当かというところまではまだ我々はちゃんとした意見を持ってございませんけれども、考えられるものとしましては、例えば今回、2号被保険者のiDeCoの掛金を一律2万円にしていこうというところがございますので、例えば2万円という範囲、あるいは今iDeCoの最低の掛金が5,000円でございますので、5,000円のところ。あるいは、もっと小さくいきますと、今、厚生局との間で、DCの掛金が一番小さいものだと1,000円以上ぐらいのものを行政指導として求められているようなこともありますので、例えば1,000円とか、そんなものが可能かどうかというところを慎重に御検討いただけたらなというのがございます。

 次に、DB仮想掛金額の分かりやすい仕組みでございます。今、小川委員の御指摘のとおり、単位を大きくすること、あるいは重要性の原則のように、一定程度ぶれなければ今のままでいいよといった仕組み、我々もそういった分かりやすい仕組みにしていただけたらなと思ってございます。

 その中で、例えば1万円単位のような単位を大きくすることで分かりやすさというのは、今回書かせていただきましたのは、DBの仮想掛金額の計算の過程、これから詳細を詰めていくということだと思いますけれども、加入者の皆様に計算の仕組みまでお伝えするのはなかなか難しいなと考えてございます。その中で、単位を大きくする方がより分かりやすいのでないかと、そんな趣旨でございます。

 以上でございます。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 では、金子委員、お願いします。

 

○金子委員

 金子でございます。

 私の方から、質問3つと、感想を申し上げさせていただきたいのですが、まず質問から。

 1つ目の質問は全銀協さんへの質問で、小川さんからの質問と重なって、小川さんも多分これを質問されたと思うのですけれども、お答えになられなかったような部分があるのではないかと思うのです。それは、全銀協さんの資料の4ページ目の中段以降に、要は拠出を一定額認めてくれない場合のところの部分で、「少なくともDCの掛金拠出を行わずに当該企業型DC制度を存続可能な仕組み」と書いてあるのですが、これの具体的なイメージをもう少し教えていただけたらなと思いました。それが1つ目です。

 質問の2つ目と3つ目は、これは証券三団体がお話しされた資料ですけれども、たしか16ページ目に「拠出枠の利用が一定以下の場合を除き、給付時は所得課税」と書いてあって、括弧して「退職所得課税、公的年金課税等との関係に留意しつつ」と書いてあるのですけれども、この関係に留意しつつというのは例えばどういうことを言っているのかなということを伺いたいと思います。

 それから、これは同じページにすごく具体的に書いてあったのが気になって、ちょっと興味本位の質問ではあるのですが、同じく16ページ目に、「生涯拠出枠と自由度の高い年間拠出限度額」で、括弧して「例えば生涯枠の10分の1」と、やたらと具体的な数字なので、何かその根拠みたいなものがあるのかということでございます。

 質問はこの3つですけれども、ちょっと感想を続けて1つ、2つお話しさせていただきます。

 損保協会さんを含めてほかの協会さんも、損保協会さんの資料の表現ですと、DBの掛金相当額が2.75万円を超える企業のDC加入者には配慮というようなことを、各団体さんはいろいろおっしゃられて、これは制度的な配慮みたいなことを意図されているのだと思うのですが、私は今回、この場で議論している企業年金、個人年金に限らず、企業でしたら職場みんなで資産形成を行うことを推奨するような雰囲気を醸成していこうということも配慮の一つかなと思っておりまして、そういう点では、ここでお話しいただいた金融機関の方々の御努力に期待したいところだと思っております。

 もう一つ、これは証券三団体さんの資料の19ページのその他の要望で、「企業型DC・DB加入者本人へのiDeCo掛金の拠出可能額の通知の仕組み」と書いてございました。これは、前の部会のときにも私は言ったのですけれども、企業年金に入っている方の通知は全く同感なのですけれども、それ以上に実は企業年金のない職場にお勤めいただている方へのiDeCoの枠の通知の方がより重要だと思っています。そういう意味では、例えば具体的な感じで、ねんきん定期便なんかを利用してというところであれば、あれは一応企業年金があるなしにかかわらず送られることになっているので、そういうことができるのであれば、とてもいい制度かなと思った次第でございます。

 最後、感想が2つなのですけれども、質問は3つでございます。

 

○神野部会長

 それでは、まず全銀協さんからお答えを。申し訳ありません。

 

○全国銀行協会

 大変失礼しました。御質問、4ページの後段でございます。「こうした仕組みが実現しない場合には」「DCの掛金拠出を行わずに当該企業型DC制度を存続可能な仕組みとする必要がある」というところでございますけれども、現行、DC制度におきましては、iDeCoでは任意に掛金を停止する仕組みがございます。ですので、例えば家計の状況に応じて、DCの掛金拠出ができない場合には止めることが可能でございます。企業型DCは、任意の拠出中断というのが現行は認められておりません。認められておりますのは、無給の休職のみでございます。無給の休職の加入者に対しては事業主掛金を停止していいですよというルールがあるだけでございます。

 今回、我々が危惧しましたのは、この仕組みが取り入られることによって、5万5000円以上だから企業型DCの掛金が拠出できないとなりますと、企業型DCの加入資格を失いまして、例えばポータビリティーの仕組みによってiDeCoに持ち込むとか、そういった事務が発生するのではないかということを危惧してございます。

 ですので、ここで申し上げたのは、これは任意の企業拠出中断ではございませんので、引き続き掛金がゼロ円だとしても企業型DCを続けられる仕組みとする必要があるのではないかという主張でございます。

 

○神野部会長

 それでは、あとの御質問や御指摘については証券業協会様の方からお願いいたします。

 

○日本証券業協会

 回答させていただきます。

 16ページのまず質問の1ポイント目で、「拠出枠の利用が一定以下の場合を除き、給付時は所得課税」と申し上げていまして、これは今回議論されています上限5万5000円というところを、そこを超えて、さらに拠出限度枠の引上げというものを私ども希望しているわけです。その際には税制もそれに合った形で変えていき、先ほどのお話の中で申しましたが、給付時にそれなりの所得がおありの方に関しては、EETという形で課税を所得税、それから社会保険料の支払い等々をしていただくことがいいのではないかという大きな流れの中で申し上げております。

 この際にEETということで課税というお話を申し上げますと、給付時の課税の在り方につきましては利害が複雑に絡むので、こちらは非常に慎重な検討が必要だということは認識しております。

 一方で、私どもの私見では、少なくとも企業年金に関しましては、一時金で受け取る場合と年金で受け取る場合において、税負担や社会保険料の負担においてそこで損得がないようにすべきであると考えていること。そして、企業年金は公的年金のほかも含めて養老目的でありますので、DBに関してもDC同様に受給年齢の制限などを設けて、老後資金がなくなる事態を避ける、こういったことも必要ではないかと考えております。

 一方で、従来の中途の退職時の生活を支えるという意味での目的の退職一時金の支給というものにつきましては、年金というものとは分けて、年金としての税制優遇の対象外とした上で、別枠の制度を設けるべきではないかなと考えております。

 こちらは、ライフコースの多様化が進む中で、中途退職時の一時金制度の重要性が高まってくる可能性もあります。一方で、ただ年金とは趣旨と目的が違いますので、私的年金制度との議論を分けていく必要があるという話でございます。

 拠出機会を十分に活用できた場合には受給時の負担をすべきであると考えておりますが、そこについては非常に慎重な議論が必要ではないかと思っています。

 退職金、年金の中では、一般の受給者の方々の中では退職時にもらえるお金というような認識で、年金なのか、それが退職の一時的なものなのかというところを分けて考えていらっしゃる方がまだまだ少ないことも事実でございまして、生活設計の中にその部分のフローも組み入れて既に考えていらっしゃる方も多いと思います。

 そういった意味では、そういった論点をしっかりと整理をした上で、移行の際には不利益を大きく被ることがないように段階的な移行措置も必要と考えております。

 拠出が一定額以下の場合の税制優遇は継続であるとか、拠出機会を与えられた年代から受給時の負担を段階的に強化していく、こういった移行措置も考えられるのではないかと考えております。それがこちらに示しております内容でございます。

 最後の御質問の年間拠出限度額の限度枠を10分の1としているということですが、先ほど、5.5万円を20歳から65歳までフルに享受できた場合には3000万円ぐらいになると申し上げました。一方で、個人のライフプランに応じて自由に活用できることが望ましいので、年間の拠出額を例えば3000万円とした場合に、さすがに1年で全部拠出を認めてしまうということは、半ば脱税的な行為に利用されるという危惧もございます。一方で、プロスポーツ選手や最近のIT起業家のように、ある一定の機会にどんと稼いでというような方々もいらっしゃるので、そういった意味では、この3000万円の中の10分1ぐらいであれば、例えば10年間は高い収入を得る期間がある、そういった方々に使っていただくことも可能ですし、または、50代半ばを過ぎてこれから老後に向けて本当にお金をためていくぞといったときに、集中してこの枠を使っていくということも可能であるのではないかと思います。

 この論点は、特にここから団塊ジュニアが徐々に老齢化していくわけですけれども、子育てや住宅ローンが一段落した50代で集中的に資産形成ができる、そういったときにこういった制度があれば、より社会全体にとって有益になるのではないかと考える次第でございます。

 以上でございます。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、井戸委員、お待たせいたしました。

 

○井戸委員

 分かりやすい御説明をありがとうございました。井戸です。よろしくお願いいたします。

 全体的に皆様の主張の方向性は、ほぼ一致していると感じました。4つ整理させていただこうと思うのですが、企業型DCやiDeCoの拠出限度額について、DBごとの掛金額を反映することについては、公平になるとともに、多くの企業、個人にとって拠出枠が広がることから賛同されていると思いました。

 2つ目ですけれども、その一方で、DCの拠出枠が縮小したり、場合によっては消滅するところへの配慮が必要になるということです。

 3つ目ですが、iDeCoの加入に当たって必要となる事業主証明の廃止は賛同。

 4つ目、見直しに当たってはシステム整備を必要としますけれども、そのコストや実務運用に負担がかからないようにするべきといったところではなかったかと思われます。

 DCの拠出枠が縮小したり消滅する事業主への配慮につきましては、公平性の議論なので、全国銀行協会様の御提案のように、既に施行しているところは温存するというのは採用しにくいのではないかと思っています。

 一方で、労使合意してきた制度なので、その変更に、大江委員がおっしゃっていましたけれども、例えば5年というような形で時間の猶予を設けるのが必要ではないかということは私も同感しております。

 ただ、時間的猶予を設けると、今回の改正の完成にさらに、だいぶ時間がかかってしまうというところがありますので、こちらの方は早急に改革を取り組むべきだと考えています。

 最後に、日本証券業協会さんに御質問ですけれども、目指すべきゴールというのは、この資料の7ページにありますように、穴埋め型だと思うのですね。そうすると、穴埋め型を実現しようとするときに、DBをやっている場合のDBの掛金額をどう評価するのか、一律半額でいいのかといった問題に直面します。今回、解決しておかないといけないことだと思っています。日本証券業協会さん、投資信託協会さん、全国証券取引所協議会さんも、そのような思いでいいのかどうかというお考えをお教えいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 

○神野部会長

 それでは、証券業協会さん。

 

○日本証券業協会

 御質問、どうもありがとうございます。

 DBの掛金額の評価も含めまして、今回御提示いただいている案は、私的年金制度の拡充に向けた第一歩ということで高く評価しているものでございまして、平均余命は延びておりますので、DBであれ、DCであれ、私的年金の果たす役割は非常に増大していますので、ここで改革を止めてはならないので、先ほど目指すべき方向性の第一歩としてまずDBごとに評価していくということは重要だと思っております。

 DBの仮想掛金の算定に関しましては、とにかく加入者にとって分かりやすいということが重要でございまして、一方で、過度な不公平がないような算定方法を採用いただくことが肝要かと思っておりますし、先ほど井戸委員もおっしゃってくださった、過度なコストが発生しない、そしてこの便益を得る人たちに跳ね返らない、そういった配慮も必要だなと考えております。そういった意味では、厚生労働省様の案は簡素で分かりやすい算定基準となっている点を評価しております。

 本日もいろいろ議論が出ておりますけれども、現行制度への影響がある場合については経過的な措置等々、ここは議論をした上で併せてやっていくというところだと思います。

 また、繰り返しになりますけれども、それを実施していくに当たり、DC、iDeCo、そしてDB、これを加入者もしくは事業主、運用管理関係機関が、この一個人は今一体どういう状況にあるのだということを本当に把握しやすいことの構築が必要ですので、そのためにもDBの仮想掛金が一社ごと非常に分かりやすく設定され、提示されているところが肝要かと思いますので、この点に関しては賛同するものでございます。

 

○神野部会長

 他団体からはコメントはよろしいですか。

 では、伊藤委員、お願いできますか。

 

○伊藤委員

 連合の伊藤です。

 今回、三団体にはヒアリング事項をあらかじめ示してあったのでやむを得ないとは思うのですが、本日は自助努力の促進という観点でそれぞれ御説明をいただき、おおむねそういう観点からはいいのではないかという御意見だったのかと思います。私どもは企業年金というものが退職給付であり、それは労働条件であるという観点から、自助努力の促進とのバランスをいかにとるか、労働条件が損なわれないかといつも心配しながら議論に臨んでいます。

 本日、仮想掛金額が高くて、DCの掛金拠出ができなくなった場合の配慮という御指摘もあったわけですけれども、そうなると税の公平性の問題が出てくることについては、私どもとしても悩ましいとずっと思っているところです。そこで、全国銀行協会さんと証券業協会など三団体のところに、自助努力の促進という観点でいいというのは分かるのですが、一方で企業年金の観点からどういう御認識なのかということを伺っておきたいと思います。

 例えば、総合型DBの場合企業をまたがっていて、こういう仮想掛金額の設定がすごく難しいのではないかとも思っています。労使協議をして合意していくという手続きが大変重要だと思っているので、その辺の御認識をお聞きしたいと思っております。

 あと、三団体それぞれですけれども、iDeCoの2万円でそろえるとか、あわよくば2.3万円にしたらありがたいというようなお話は分かるのですけれども、その理屈として、それが簡素で分かりやすいという辺りが理由なのかなとは思いますけれども、それ以外に理屈があれば教えていただきたいと思います。

 最後に、損保協会さんですけれども、3ページの上の方の60歳超の引出し要件の緩和という点です。これは私どもも必要ではないかと思っているところではあるのですけれども、それをどういう考えで認められるのかというところが悩みどころであるわけです。

 まず60歳代での中途引出しが必要となる資金ニーズについて、損保協会さんの方で把握されていることがあれば教えていただきたいと思います。それから、最後のところに、受給後の継続拠出も認めるようにすると書いてありますが、加入者にとってのメリットを御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

 

○神野部会長

 それでは、全銀協様にお答えいただいた後、証券業協会様、最後に損保協会様にお答えいただくという形にさせていただければと思います。

 では、まず全銀協からお願いできますか。

 

○全国銀行協会

 みずほ銀行の上田でございます。

 企業年金の観点からというところで申し上げますと、これは今後この改正がなされまして、例えばDBの仮想掛金額が2万7500円より多くなったことによってDCの限度額が小さくなってまいりますと、今、お話にあった労使合意で決めた金額をDCに拠出できないということが生じます。それについてまた新たに、法改正に伴って労使の合意を形成していくということになろうかと思います。

 現在考えられる対応方法としましては、それを給与として支払うのか、あるいは退職一時金のような格好でプールするのか、あるいはDB制度で給付するのかみたいな選択肢があろうかと思いますが、当然これが当初労使で合意したものと変わってくることは事実でございます。ですので、御指摘のあった企業年金の観点から、労使合意という観点からはやはり慎重な労使での御議論が必要になってくるのだろうなと思っております。

 総合型DBとの兼ね合いでいきますと、総合型DBの加入自体もそもそも労使合意でございますので、総合型DBの掛金額をやはり同じように評価するというのは妥当性があるのなとは思ってございます。

 ただ、一般的には、これは私の感覚ですけれども、総合型DBで掛金額を評価すると、恐らく2万7500円を下回るようなケースが増えるのではないかと思っておりまして、総合型DBを活用されておる企業様におかれてはDCの掛金額の限度が増えるような傾向にあるのではないかと思ってございます。

 次にiDeCoの掛金のところでございますけれども、あるべき姿としましては、そもそも5万5000円の掛金限度額の非課税の枠がありますので、そこから企業型DCを除いたものをiDeCoで掛けられるという姿の方が望ましいのだろうなと思っております。ただ、そこまで一気に議論をするには、このDBの掛金額を評価していこうという方向性には理解を示してございまして、その中で今回2万円という案が出されてございますけれども、そもそもこの2万円という水準は、マッチングで自助努力として掛けている水準というところから出てきているものと認識してございますので、それが2万円なのか、2万3000円ぐらいまで伸ばしてもいいのではないかなというのがありまして、2万円と2万3000円とそれほど差がないので、分かりやすさを優先して2万3000円に合わせた方がより分かりやすさが目指せるのではないかというところで、一律みたいな表現をさせていただいてございます。

 以上でございます。

 

○神野部会長

 証券業協会様、お願いできますか。

 

○日本証券業協会

 先ほど御指摘の退職給付としての、もしくは労働条件としてのというところで、やはり企業年金はいろいろな意味で関わってくるわけですけれども、先ほど金子委員の御質問にもお答えしましたが、最終的にあるべき姿といたしましては、年金としてどうあるのかということと、退職金として、それは中途も含む退職一時金としてどうあるべきかというのは、将来的には分けて税の優遇の在り方も含めて議論すべきではないのかなと理想論としては思っているところでございます。

 一方で、足元でやはり様々な現状がございますので、そこは労使合意であるとか、現状を踏まえながら様々な移行措置等々を考えつつ進めていくのかなということでございまして、現状いろいろな形で会社様が制度を持っていることは私どもも認識しておりますので、あまり時間的な余裕はないかもしれないのですけれども、そこはしっかりと議論をしていかなければいけないという考えでございます。

 それから、iDeCoの掛金につきましては、私どもの資料の7ページに、今後ということで、今回の見直しの一例ということで、企業型DCがDBの掛金相当額を5万5000円から引いたものに加えまして、個人型iDeCoの方は月額2万円ということで統一されました。一方で、DB・DCをお持ちでない事業主様のところでは2万3000円継続というところですが、ここは合わせまして、7ページの右側赤枠の資料にございますが、企業型DCもしくはDBの掛金がどうあれ、全体での5万5000円の枠をどういうふうにでも使えていけるような形に移行していくことがまずは必要だと思っております。

 私の方からは以上でございます。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、損保協会様。

 

○日本損害保険協会

 最初の2つの御質問に関しましては、銀行協会さんと同じ見解ですので割愛させていただきます。

 損保協会の資料に関して頂戴しております御質問ですが、受給後の継続拠出も認めるようにすべきというところですが、伊藤委員の御指摘のとおり、受給後拠出した部分でいかほどの資産形成効果があるのかなというところは確かにそのとおりです。

 しかしながら、例えば早く受給してもらうこととした人は、その後毎月の掛金が出ていかないということにすると、一方でまだ受給してもらわなかった人は継続して掛金を出していることになるため公平性が取れないですよね。先に給付してもらった人はその後の掛金が止まってしまうと、もらわなかった人は相変わらず掛金が出ているのにもかかわらず、そこの公平感が保てないということになるので、前払い退職金みたいな形で出すのか、DCの掛金として出すのか、何かしら両方をイコールにする形の手当てが必要なのだろうなと、そういう意味での継続拠出を認めるようにしてほしいと書かせていただいております。

 

○伊藤委員

 ありがとうございました。

 労使合意のところですけれども、例えば穴埋め型にするのがいいという話もありましたが、こういうのも含めて、企業年金と個人年金というもの、自助努力と退職給付という全く違う性格、掛金の出どころが違うものを同じ限度額に当てはめるということの難しさに、この間、私はすごく悩んでいまして、そういう意味でいろいろな提案というか、論点の中で、労使合意ということがすごく重要にもかかわらず一緒くたにすることの課題について、何か御示唆があればと思ってお聞きしたところであります。

 以上です。

 

○神野部会長

 ありがとうございました。

 それでは、オンラインの方で、臼杵委員、手が挙がっているかと思いますので、よろしくお願いします。

 

○臼杵委員

 ありがとうございます。

 本日は御説明ありがとうございました。時間も押していますので、簡単に感想と1点だけ質問を申し上げます。

 感想としては、これまで出ていたように、今回の改革で2つ大きな論点があって、1つは拠出枠をトータルで5.5万円としたときにDCの拠出が減る、ないしはDCの拠出ができなくなるという問題についてどう対処するかということと、2点目は、計算及び計算結果について加入者と運管、国基連さん等、関係者の間でどのようにスピーディーに情報を共有するかという2点かと思います。また、その際にコスト等をできるだけ下げるかということかと思います。

 後者の方について先に申し上げると、理想は証券三団体様の方からお話のあったように、それを常に年金のサイトみたいなものがあって関係者で常に見るということができるようになる姿であろうかと。ただ、それについては相当な努力というか、コスト等も含めて考えていかなければいけない課題もあるのかなということでございます。

 前者については、一つ気になりますのは、実際にこれがどのぐらいの人にどのぐらいの金額で影響があるのかというようなことでございまして、いずれにしても、大江委員からもお話がありましたように、経過措置とかが必要でしょうし、労使合意、労働条件の問題にも関わってきますので、ある程度手続を適正に進めていかなければいけないのだろうなと思います。

 あと質問というのは、これは分かる範囲で結構で、なかなか数字というのは難しいのかもしれないのですけれども、JPXさんの方からも影響がどのぐらいあるかファクトファインディングというコメントがあったかと思いますが、前回の部会の資料では、DBの仮想掛金が5万円を超えるのが制度としては1~2%というようなデータ、DBの掛金5万円までで98.8%というようなデータがあったと思うのですが、DBが2.75を超えたとしても、必ずしもDCがどのぐらい出しているかによって掛金合計が5.5万円を超えるかどうかはよく分からないところもありますので、実際にDB掛金が5.5万円を超えてしまう制度がどのぐらいあって、それは加入者で見て、大企業が多いのか、中小企業が多いのか。あるいは、マックスでいけば、金額でいけばいまDCに2.75万円出せているのがゼロになるというような影響があるわけですけれども、金額でどのぐらいの影響があるのか。要するに、出せなくなる掛金がどのくらいあるのかというイメージでも構わないので、もちろんデータがあれば一番いいのですけれども、あればちょっとお教えいただければと思います。

 以上です。

 

○神野部会長

 これは今お答えいただける準備のあるところは。全銀協様はお答えいただけるのでしょうか。

 

○全国銀行協会

 すみません。まだ計算方法のところが具体的に明らかになっていないので、それが出たら検証しなければいけないなという問題意識を持っているところでございます。

 

○神野部会長

 ほかの団体の皆様もよろしいですかね。

 よろしいですか。

 

○臼杵委員

 分かりました。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 

○藤澤委員

 藤澤でございます。御説明の方、ありがとうございました。

 全国銀行協会の資料の5ページの記載を踏まえて、ほかの2団体に御意見をお伺いしたいのですが、先ほど小川委員から御質問のあったDBの仮想掛金を分かりやすい設定とするというところで、例示として1万円単位で設定するというところですが、この設定方法は分かりやすいという反面、一度閾値を超えるとDCの限度額の変動幅が大きくなる、インパクトが大きくなるという側面もあると思っています。

 全国銀行協会として分かりやすさを重視した方がいいのではないかという御意見だと認識していますが、ほかの2団体の方も同じように御認識されているのかという点について、御意見をお伺いしたいと思います。

 以上です。

 

○神野部会長

 それでは、今の御質問について損保協会様。

 

○日本損害保険協会

 今の話は全くそのとおりだと思いまして、分かりやすさというのは大事なのですけれども、ちょっと1万円というのは区分けとしては大きいかなと思います。これはあくまでも個人的な感覚的なところですけれども、1,000円単位ぐらいかなと思います。

 

○神野部会長

 証券業協会様。

 

○日本証券業協会

 証券業協会といたしましても、分かりやすさは本当に重要だと考えています。そのために1万円という単位が適切かどうかというのは現在は意見としては持ち合わせておらないので、私の個人的な感覚でいきますと1,000円単位ぐらいの方がフレキシブルかなと思います。

 重要なのは、これを関係する人もしくは団体が今自分はどうなっているのだということが時点時点で分かる仕組み、これは「ねんきん定期便」という紙媒体といいますか、そういったものでもよいですし、どこを見にいくとそれが見えるという形でもいいかと思うのですけれども、ぜひとも今後想定されています国基連とRKとの連携という中にDBの情報も入れることによって、それを万人に分かりやすく、そういった施策を取ることが肝要かなと思っております。

 

○神野部会長

 ありがとうございました。

 では、オンラインで白波瀬委員、お願いします。

 

○白波瀬委員

 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 今日はいろいろ分かりやすい御回答をありがとうございました。基本的に事務の簡素化とか情報共有というのは全ての協会さんのところで同意するというか、同じような意見だったと思うのですけれども、簡素化に伴って大切なところが落ちないように。あとは、情報共有は非常に重要なのですけれども、これについてはやはり慎重な情報共有というか、十分なお互いの立場の違うところの議論の中で、ぜひ情報はうまくどこかで取りまとめて効率的な運用をしていただきたいと思います。

 それで、大ざっぱな質問になるかと思うのですけれども、今日の報告を聞いていて少し確認させていただきたいのは、各協会さんの方で、最初の全国銀行協会さんの方は今日はもう安定性について、公平性については言わないよということであったのですけれども、公平性に関することです。あとの損保協会あるいは証券協会さんのところで公平性のお話がありましたが、現時点で結構なので、各協会様の方でいろいろな基準、立場で公平性を見るというのはあると思うのですけれども、最も優先順位の高い公平性をどこに置いて検討されているのかを、お伺いすることはできますでしょうか。よろしくお願いします。

 

○神野部会長

 公平性について、全銀協様にもう一回確認しますか。いいですか。

 

○白波瀬委員

 できれば、御回答はされていないのですけれども、自助努力に対する公平性なのか、古い制度と新しい制度のところなのか、そういうようなお話ですけれども。

 

○神野部会長

 では、公平性について各団体でお願いできますか。全銀協様から。

 

○全国銀行協会

 全銀協の石川です。

 今日、当協会でプレゼンさせていただいた趣旨としては、機会の提供という意味での公平性、つまり拠出額が減ってしまう、あるいは拠出そのものができなくなってしまいDC利用の機会が奪われてしまう人がないようにという意味で、そういった観点の公平性をメインに主張させていただいております。

 

○白波瀬委員

 ありがとうございます。

 

○日本損害保険協会

 損保会社が取り扱っている企業DCというのは圧倒的に中小・零細企業が多いです。公平性という観点を金融リテラシーというところで言うと、同じ企業型DCを本当に一くくりにしていいのかなというところは感じております。やはり金融リテラシーをいかに公平性でもってそういう中小企業の人たちにも知らしめていくかというところが大事かなと思っております。まだまだ道半ばとは感じております。

 以上です。

 

○白波瀬委員

 ありがとうございます。

 

○日本証券業協会

 証券業協会からと、あとは幾分、私の個人的なものもあるかもしれないのですが、公平性という意味では大きく3つあるのかなと思っています。

 1つは、今回拠出限度額というお話が出ている中で、拠出時に税制優遇を伴ってどれだけ拠出できますかというところの拠出限度枠を皆がある一定程度をもって公平に拠出できるように分かりやすくしていきましょうということが一つの論点かなと思っておりまして、今回はこれを5.5万円の中で、いろいろなパターンで、それぞれのライフスタイルであるとか状況によって出せるようにしていくというところで、この点は大きく賛同するところでもございます。

 さらなる未来に向けてということで、ここを拠出時は出せるけれども、給付時はそれ相応の税を負担していくのだよというような将来像もお示ししたのは、そういった意味での公平性を考えているという意味でお示しさせていただきました。

 2つ目の公平性は、全銀協さんがおっしゃっていたように、そうは言いましても、現行のシステムの中で今までのものを何らかの形でふいに失ってしまうという方々に対する救済措置といいますか、ここをどう考えていくかという部分もございますので、こういった公平性の担保というのも一つ必要かなと。

 最後は、損保協会さんの方からもおっしゃった、リテラシーをどういうふうに持っていただくかというところです。企業型DCの場合にはそれぞれ事業の中で、企業の中でいろいろな形でリテラシーを高める機会が持てる可能性が高いと思いますし、そうした努力義務が施行されたことでそれぞれの会社さんはいろいろな御努力をされていると思います。

 ただ、iDeCoの方ではオンラインやテキストによる投資教育というものが本当に中心になっていきますので、この辺は我々業界としてもどういうふうにしっかりとサポートさせていただくかということは重要な論点だと思っております。あとは、その中でアドバイスが欲しいという方に対して、これが金融機関の利益によることなく加入者様のためにどういったアドバイスをしていく仕組みを提供、担保できるか、こういった公平性も重要ではないかなという意味で、3つの公平性について考えているということで締めたいと思います。ありがとうございます。

 

○白波瀬委員

 ありがとうございます。

 

○神野部会長

 部会長代理、どうぞ。

 

○森戸部会長代理

 今日は、御発表ありがとうございました。

 1点だけです。全銀協さんの4ページ、金子委員が質問されたことと同じところで、ここは今日一番人気のスライドですけれども、4ページの後半。いろいろ丁寧に考えていただいたので、いろいろこちらも聞きたくなるということですが、先ほどおっしゃった「こうした仕組みが実現しない場合には」のところです。「少なくともDCの掛金拠出を行わずに当該企業型DC制度を存続可能な仕組みとする」というのは、まさに具体的にどういう仕組みですかというのを私もお伺いしようと思っていて、お答えいただいて、例えば企業型DCの拠出をいわばゼロで制度を存続できるような形をイメージされているということで、それは分かったのですけれども、その理由としてその下にポツが2つありまして、1つ目は将来また限度額が上がるかもしれないからと。これはそんなことがあったらいいなと思ったのですが、なかなか厳しいかなというのもあって、少なくとも倍になったりはしないと思うのです。

 そうすると、次のポツのところが残るのですけれども、ここに事業主における一貫した人事制度の運用が可能になるということで、ここは繰り返しになるかもしれませんけれども、ちょっとぴんとこないところがあります。というのは、分からないですけれども、例えばDBはもう今までのところでやめて、新入社員はDCだけにするとか、そういうことになると、そういうときはDCがあった方がいいのだとか、そういう意味かなと思って読んだのですけれども、その時点でもう一貫していないじゃないかと。入るときによって制度が違っているのだから、制度がばらけているし、一貫した人事制度というのは、どういうふうに人事制度上メリットがあるという意味でおっしゃっているのか、ちょっとイメージがつかみづらくて、その点を確認したいというのが質問です。

 金子委員の御質問のときに、ここには書いていないのですけれども、お答えの中で、例えばこれができないと個人型DCに全部移るのだみたいな、その事務が発生するのが面倒くさいということをおっしゃって、それが本音かなと思って聞いたのですけれども、それはここには書いていないので、ここの「一貫した人事制度の運用が可能」というのは、拠出ゼロでもDCがあった方がどういう人事上メリットがあるのかというのをお伺いしたいというのが質問です。

 

○神野部会長

 全銀協さん、よろしいですか。

 

○全国銀行協会

 ありがとうございます。

 まず、4ページの後段の1つ目のポチのところですけれども、DCそのものの限度額のさらなる引上げは要望もしてございますので、決してここでないと言わないでいただければありがたいなというのがありますが、それ以外に、「引上げや、」の後でございますけれども、DB仮想掛金額の変動というのも想定してございます。

 つまり、今回、この法改正になりますと、労使の間でDBとDCのバランスの議論というのが出てくるのだろうなと思ってございます。法改正のときは、例えばDBの仮想掛金額が5万5000円を超えるような制度を持っているということになりますと、一定の経過措置みたいな話も出ておりましたけれども、考え方としましては、一旦DCの掛金ができなくなります。だけれども、その後、労使合意を経て、再び例えばDBの仮想掛金が小さくなってDCの掛金額が復活するような労使合意の在り方というのもあるのだろうなと思っております。

 そのときに、2つ目のポチでございますけれども、例えばある企業様でDBを退職給付の半分ぐらい、DCを退職給付の半分ぐらいみたいな制度を運営していたときの掛金のバランスで、DBとDCの掛金額のトータルが5万5000円を超えてしまうような場合ですと、DCの掛金額が減ったり、掛けられない方が出てまいります。そのときに、例えば想定しましたのは、うちの制度はDCがあるのだけれども、今は掛金ゼロなのですと。そういう方に投資教育、いわゆる加入者教育をしていくのが難しいのではなかろうか。だけれども、ある年の社員様はDBの掛金額の評価によって3,000円掛けられましたというようなことがあると、その方たちだけに教育をすればいいのか。そんなことが、DBの掛金額の変動によって加入者教育の在り方の安定的な運用ができないのではないか。そんなことを考えた次第でございます。

 先ほどのiDeCoへの移管の事務のところは、面倒くさいからではございませんで、一旦iDeCoに移りましたけれども、またDBの掛金額の変動によってDCができるようになりましたと。そうすると、また企業型DCに移管しますというような無駄なオペレーションが発生するのではないかなと。そんなふうに考えたということでございます。

 

○神野部会長

 それでは、小林委員、特に御発言はよろしいですか。

 

○小林委員

 ありがとうございます。

 ほかの委員の皆さんから出た意見で大体疑問点は解消しましたので、私からは特に質問はありませんが、先ほど臼杵委員からも話がありましたように、今回の仮想掛金がDCの拠出限度額を超える部分について検討する場合は、実態をもう少しよく見た方が良いと思います。今後、詳細を議論するにあたっては、制度の現状について明確にしていただくよう、事務局にお願い致します。

 以上です。

 

○神野部会長

 ありがとうございました。

 それでは、時間でもございますので、この辺で意見交換を締め切らせていただきたいと思います。

 重ねてではございますが、5団体の皆様方には御臨席賜りました上に、意見交換でも心を込めて御対応をいただきましたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。

 本日、頂戴いたしました御意見については、事務局において整理をしていただきたいと考えております。

 それでは、本日の議事につきましてはこれにて終了したいと思いますが、次回以降について、前回申し上げましたように、引き続き関係団体のヒアリングをさせていただければと思っています。

 次回の開催等々につきまして、事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 団体の皆様、ありがとうございました。

 先ほど、臼杵委員と小林委員からありました見直しの影響の度合い、また人数、これにつきましては厚労省の方で数字を出していきたいと思います。

 次回の部会の開催は8月26日水曜日、場所はここTKP新橋を予定しております。

 以上であります。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、これにて第13回の企業年金・個人年金部会を終了させていただきます。御多忙のところ、万障お繰り合わせて御参集くださいましてありがとうございました。また、最後まで御熱心に議論を頂戴いたしましたことを、重ねてでございますが、御礼を申し上げる次第でございます。

どうもありがとうございました。