第18回 社会保障審議会

企業年金・個人年金部会 議事録

日時

令和2年12月23日(水)10:00~12:10

場所

TKP新橋カンファレンスセンター 15階ホールD

出席者

神野部会長、森戸部会長代理、伊藤委員、井戸委員、臼杵委員[オンライン]、内田委員、大江委員、小川委員、金子委員、小林委員[オンライン]、白波瀬委員[オンライン]、藤澤委員、細田委員[オンライン]、渡邊委員[オンライン]

(オブザーバー)

鮫島企業年金連合会理事長、松下国民年金基金連合会理事長[オンライン]

議題

(1)企業年金のガバナンス等について

(2)DCの拠出限度額について

議事

議事内容

○神野部会長

 それでは、定刻でございますので、ただいまから第18回「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」を開催したいと存じます。

 本日は、ただでさえ年末でお忙しいところ、かつ、新型コロナウイルス感染症が勢いを増していて混乱している状況の下で、万障繰り合わせて御参集くださいましたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。

 本日の出席状況でございますが、そのような状況の下でも全員の委員の皆様方に御出席いただいております。

 臼杵委員、小林委員、白波瀬委員、細田委員、渡邊委員、松下オブザーバーにつきましては、オンラインにて御参加をいただいていることを御報告申し上げておきたいと思います。

 当然のことでございますが、出席をしていただいた委員の人数が3分の1を超えておりますので、会議は成立していることをまず御報告申し上げたいと思います。

 早速議事に入らせていただきますが、カメラの方はいらっしゃらないようでございますので、いらっしゃれば退室の御協力をお願いいたしたいと思います。

 まず、事務局の方から資料の確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 企業年金・個人年金課長です。本日もどうぞよろしくお願いします。

 資料の確認をさせていただきます。

 本日の資料ですが、資料1「企業年金のガバナンス等について」。

 資料2「令和3年度税制改正要望に係るこれまでの議論の整理」。

 資料3と4は外部有識者提出資料。

 参考資料として、「DCの拠出限度額の見直しについて」、「2020年改正の施行について」、委員名簿の3点を用意しています。

 事務局からは以上です。

 

○神野部会長

 ありがとうございました。

 お手元を御確認いただければと思います。よろしいでしょうか。

 それでは、議事に入らせていただきますが、議事次第を御確認いただければと思います。本日、議事として、2つの議題を準備させていただいております。一つは「企業年金のガバナンス等について」でございまして、これは2016年の改正法の施行後の状況が見えてきて、改善すべき課題・要望等々が何点か出ているということでございますので、取り上げております。

 もう一つは「DCの拠出限度額について」でございます。これはこの部会で本年の夏から議論を重ねてきたわけでございますが、これまでの議論につきまして整理をしていただいております。

 さらに、企業年金・個人年金の将来像について、前回に引き続いて諸外国の制度のヒアリングをさせていただいて、検討を進めていきたいと思っております。本日は、イギリスとアメリカにつきまして、大変お忙しい中、外部有識者として佐野様と野村様をお招きして御説明を頂戴することになっております。

 時間の関係もございますので、事務局から資料の説明をいただいた後、引き続き佐野様、野村様からプレゼンテーションをいただいて、その後、一括して御意見と御質問を頂戴することにしておりますので、御承知おきいただければと思います。

 それでは、事務局の方から、資料につきまして御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 それでは、説明させていただきます。まず、資料1をお開きください。「企業年金のガバナンス等」については昨年の部会でも御議論いただきましたが、先ほど部会長からありましたように、2016年改正の施行後の状況が見えてきています。この御紹介とともに、取扱いの改善を求める指摘が何点か寄せられていますので、御説明をいたします。

 1ページ、これまで企業年金部会等においては、主にDBのガバナンスについて議論がなされてきました。

 3ページからDBですが、4ページを御覧いただいて、企業年金部会でのDBのガバナンスに関し、制度全般を検証、継続的に検討を重ね、順次見直しが行われました。企業年金・個人年金部会での議論を経て、必要な法令改正が行われました。その内容はページの下半分の表のとおりで、DBの制度・仕組み全般に踏み込んだ見直しが行われました。

 5ページから8ページまでが各項目の改正の詳細になりますが、これまでの部会で御説明してきたことになりますので、説明は省略します。

 9ページからリスク分担型企業年金です。以下、リスク分担と省略して説明をします。

 10ページ、リスク分担は、事業主はあらかじめリスク対応掛金に相当する分を上乗せした固定の掛金を負担し、そのあらかじめ拠出するリスク対応掛金を考慮してもなお積立不足が発生した場合、給付水準を調整して財政均衡を図る仕組みです。

 11ページ、絵の部分を御覧いただいて、これまでは、左の絵、マル2の積立金とマル3の掛金収入現価が、マル1の給付現価の水準に一致する状態を財政均衡の状態と考えていたわけですが、ここから、右の絵、「将来発生するリスク」を算出し、その範囲内でリスク対応掛金を追加拠出することで、財政に幅を持てます。

 この「将来発生するリスク」の半分、赤点線の部分ですが、これを超えてリスク対応掛金を拠出するかどうかが、後に説明する給付減額手続とも関連します。

 そして一番右、リスク分担の場合は、その後、「オレンジ色のマル2とマル3の給付の原資の水準」が「将来発生するリスク」を超過した場合は、増額調整が行われ、緑色の給付現価を下回った場合は、給付減額が行われます。

 12ページ、リスク分担の「将来発生するリスク」は、「価格変動リスク」と「予定利率低下リスク」の合計により算出しますが、「価格変動リスク」は資産区分ごとに20年に一度発生する損失を想定して計算されます。

 13ページ、このようにリスク分担は、財政状況に応じて給付が調整される仕組みであることから、加入者が運用の意思決定に適切に参画する仕組みが重要となりますので、赤字部分、加入者の代表が参画する委員会を設置したり、14ページ、加入者や受給権者に対する周知内容を追加しています。

 15ページ、絵の部分を御覧いただいて、従来は、給付設計の変更により給付現価が減少することが給付減額でしたが、リスク分担では、給付現価が下がることに加えて、右の絵、掛金の変更で掛金収入現価が減少する場合も、財政バランスの変化を通じて減額調整が生じる可能性が高まるため、給付減額と判定しています。具体的には、「給付現価」に対する、「給付の原資」が「基準ライン」を超過する分の比率、以下「超過比率」とし、この絵の場合は超過分が15、割る給付現価100で、0.15になりますが、この超過比率が低下する場合に給付減額と判定しています。

 16ページ、リスク分担は従来のDBとは性質が大きく異なることから、制度の実施に当たっては、DBからリスク分担への移行や、リスク分担からDBへの移行は、給付減額として取り扱っています。

 17ページ、リスク分担の移行について、現行の省令においては、開始時と終了時の取扱いは規定され、「給付の原資の水準」が「基準ライン」を上回っている場合は、その後の資産の価格変動等を考慮すると、減額調整よりも増額調整が生じる可能性の方が高いため、給付減額の手続を区分し、加入者の個別同意等の代わりに加入者への十分な説明等を求めています。

 絵の部分を御覧ください。従来のDBが左の方にあります。「将来発生するリスク」を算出し、その範囲内でリスク対応掛金を拠出するわけですが、上の赤矢印の方、すなわち「将来発生するリスク」の2分の1を超えるリスク対応掛金相当を拠出する事業主の場合は、その後、減額調整よりは増額調整が生じる可能性の方が高いとして、加入者への十分な説明等を求めている一方で、個別の同意等は不要となっています。

 下の青の矢印の方、すなわち「将来発生するリスク」の2分の1を超えるリスク対応掛金相当を拠出しない事業主の場合は、その後、増額調整よりは減額調整が生じる可能性の方が高いとして、個別の同意等を含め、従来のDBにおける給付減額を行う場合と同様の手続となっています。

 赤矢印の先でも青矢印の先でも、緑色の給付現価をオレンジ色の原資が上回っていますので、いずれも財政均衡の状態ではあるのですが、拠出するリスク対応掛金相当の大きさによって、今後、増額調整か減額調整かどちらに向かっていきやすいかで手続が分かれています。

 18ページ、19ページは関係条文です。開始時と終了時だけが規定されているのが見てとれるかと思います。

 20ページ、リスク分担の移行について現行の省令においては、開始時と終了時の取扱いは規定されていますが、リスク分担の合併・分割、事業所追加・減少を含めて、受け手側・出し手側となるリスク分担について『給付減額』となるような規約変更が可能か、省令等の規定に不備があります。

 絵の部分を御覧ください。合併や事業所追加の場合、加わる側においては「リスク分担の開始変更」となりますが、一方で、受け手側となるリスク分担の取扱いに関する規定が現行なく、給付減額となるような規約変更がそもそも可能か、規定上、不明確となっています。

 右の絵の分割や事業所減少の場合も同様です。

 上の箱に戻っていただいて、また、リスク分担の『給付減額』については、給付現価が減少する場合に加えて、先ほど見ていただきましたが、掛金変更の場合を想定して、超過比率が低下する場合も給付減額と判定することとされていますが、財政状況が異なる企業年金同士が合併・分割する場合や事業所の追加・減少がある場合、給付や掛金に変更がない場合であっても、財政状況が良い方の企業年金では必ず超過比率は低下します。

 矢印の先ですが、超過比率が低下する、すなわち給付減額と判定されるリスク分担の合併・分割、事業所追加・減少の規約変更が認められるか。この点、私どもは、文理解釈上は困難であると考えています。

 21ページ、DBの合併・分割、事業所の追加・減少については、関係する労働組合等の同意が必要で、加えて、給付が見直され給付現価が減少する場合には給付減額となり加入者の個別同意等が必要となります。

 リスク分担についても、この点は同様です。加えて、先ほどの繰り返しになりますが、下線部分、掛金変更の場合を想定して、超過比率が低下する場合も給付減額と判定することとされていますが、給付や掛金に変更がない場合であっても、財政状況が良い方の企業年金では必ず超過比率は低下します。

 下記のケースでは、合併でAの加入者は、引き続き増額調整が生じる可能性の方が高いわけですが、Bと合併するケース1、Cと合併するケース2でも、超過比率が低下し、給付減額と判定される扱いになっています。

 22ページ、合併・分割、事業所追加・減少を含む、リスク分担の規約変更が可能となるよう、規定を整備する必要があると考えています。

 その際のリスク分担の給付減額判定の考え方と手続については、例えば、リスク分担においては、超過比率がその後の給付調整を左右するため、合併・分割、事業所の追加・減少の際にも、超過比率の低下を給付減額とした上で、リスク分担の制度趣旨・仕組みを踏まえ、リスク分担の開始時と同様に、「給付の原資の水準」と「基準ライン」の大小関係に応じて、給付減額の手続を区別することが考えられます。

 ※1ですが、この場合、先ほど見ていただいた21ページのケースでは、合併でAの加入者は、超過比率がケース1では0.15から0.125、ケース2では0.15から▲0.025と低下しますが、ケース1では引き続き増額調整が生じる可能性の方が高く加入者への十分な説明等を要し、ケース2では減額調整が生じる可能性の方が高くなることから新たに個別同意等を要することとなります。

 ※2ですが、従来のDBにおける分割の際は、出し手側、つまり残る企業年金の財政状況に影響を与えないよう、移換する積立金額を調整できますが、リスク分担の場合は、超過比率が低下しないような積立金の移換方法も含めて検討する必要があります。

 ※3ですが、このほか、法令解釈通知における最低積立基準額等の規定についても十分な手当てができておらず、全体的に規定の整備が必要となっています。

 併せて、ガバナンスの確保の観点から、リスク分担においては、超過比率を加入者の代表が参画する委員会においてモニタリングするとともに、業務概況において受給権者を含めて周知することも重要であると考えられます。

 矢印の先の部分ですが、具体的な規定内容を検討し、必要な調整・パブリックコメントを経て、省令・法令解釈通知を改正したいと思います。

 23ページから企業型DCですが、24ページ、企業年金のガバナンスの確保は、DBのみならず、企業型DCにも求められることは昨年の部会でも御説明したとおりです。

 25ページ、2016年改正の内容です。企業型DC制度を健全に運営し、加入者等が適切に資産運用を行うことができるようにする観点から、様々な環境整備を行ったのは、御案内のとおりです。

 昨年の部会で御議論いただいた後、更新した数字などを御確認いただきたいと思います。

 少々飛びまして、31ページ、継続投資教育の実施率は、向上しつつあります。

 32ページは継続投資教育の手法・内容、33ページはその効果ですが、昨年度の結果とほぼ同様の状況です。

 35ページ、2018年度決算では、運管の評価等の実施率は23.2%で、昨年度と比較して、10.4ポイント上昇しました。ただし、昨年度同様、評価等を行っていない事業主のうち約7割が、今後の実施については「未定(わからない)」と回答しています。

 36ページ、昨年度より、運用商品のモニタリングを実施している規約の割合が8.9ポイント上昇しました。

 37ページ、運用商品をより選択しやすい環境を整備するため、2016年改正において、運用商品提供数について上限を設けることで商品の厳選を促すとともに、上限規制の実効性を確保する観点から商品除外要件を商品選択者の3分の2以上の同意に緩和を図りました。

 ※2の部分ですが、施行日である2018年5月1日前の掛金に係る商品除外については、経過措置があり、引き続き全員の同意が必要です。

 39ページ、商品除外に当たっては、過去分の現金化を伴うものとして取り扱っています。

 このため、2016年改正によって、商品選択者の3分の2以上の同意を得ると、経過措置と相まって、改正法施行日以後の掛金に係る部分については除外(現金化)、改正法施行日前の掛金に係る部分については運用継続可能となります。

 「改正法施行日に遡って現金化」する現行の取扱いについては、意図しない売却を伴う、保険商品では解約金が発生、仕組みが分かりにくい等、様々な指摘があります。

 40ページ、過去分の現金化を伴う現行の取扱いは、例えば、手数料などで除外対象の商品が同種の他の商品よりも劣っている場合には、望ましくない商品を保有し続けることを避けるという点では、適当な方法であると言えます。

 他方で、例えば、労使の協議を踏まえて商品構成を見直し、保険商品の本数を減らして代わりにリスク・リターン特性の異なる運用商品を追加する場合等は、必ずしも過去分の現金化を伴わない方法が適当な場合も考えられます。

 こうした点を踏まえ、商品除外の方法を改善し、必ずしも過去分の現金化を伴わない将来分のみを除外することもできるよう、すなわち過去分の現金化を伴わない「閉鎖型」とすることもできるよう、対応の選択肢を追加することが考えられます。

 矢印の先の部分ですが、具体的な規定内容を検討し、必要な調整・パブリックコメントを経て、41ページの法令解釈通知を改正したいと思います。

 42ページ、関係団体から、今、説明したような改善を求める要望をいただいています。

 43ページ、運用の方法に係る契約の相手方が欠けた場合などについては、商品除外の同意取得手続が不要となっており、具体的には、ここに記載の4つの場合が認められています。

 このうち、マル4の投資信託の受益証券が繰上償還される場合については、運管自身の判断によることなく、当該運用商品の提供を停止せざるを得ないため、商品選択者の同意なしに運用商品から除外することを可能としたものです。

 年金投資基金信託、これは下の※の部分ですが、投資信託と類似した性質の信託会社が販売する運用商品ですが、これについても投資信託と同様、運管自身の判断によることなく、当該運用商品の提供を停止せざるを得ないため、省令の規定を整備する必要があります。

 矢印の先の部分ですが、具体的な規定内容を検討し、必要な調整・パブリックコメントを経て、省令を改正したいと思います。

 44ページ、関係団体から、今、御説明したような改善を求める要望をいただいています。

 45ページ、昨年度と比べて、指定運用方法を設定している割合は上昇していますが、元本確保型が選ばれている割合が上昇し、投資信託が選ばれている割合は減少しています。

 46ページ、企業型DCの運営状況について、全ての実施事業主に対し、「基本情報」と、努力義務とされた継続投資教育、運管評価の実施状況を中心に、地方厚生局において確認を行い、実施を促していきます。

 47ページ、48ページは企業年金連合会の取組内容です。

 続きまして、資料2をお開きください。

 令和3年度税制改正に向けて、本年夏以降、御議論いただいてきました。その議論を整理したものになります。委員の皆様には事前に御確認をいただいていますが、これまでの部会で示してきたもの、そして御了承いただいてきたものをベースに記載しています。追記している点を中心に御説明します。

 4ページの中段辺りから「企業年金制度の検討課題」ですが、5ページの上から3つ目のマル、「企業年金の普及策」が検討課題であることを明記しています。

 9ページ、10月の部会で伊藤委員からいただいた御指摘を踏まえての記載です。

 13ページの一番下、個人型DC資産のDBへの移換について、11月部会での指摘を踏まえての記載です。

 21ページの「5.制度改正の施行時期等」です。

 1つ目のマルにあるように、様々な意見をいただきました。

 2つ目のマル、制度改正の施行時期については、こうした意見にも十分留意しつつ、DBの掛金相当額(仮想掛金額)の算定方法をはじめとする制度改正の周知やシステム改修に必要となる期間等を踏まえて設定する必要がある。また、今回の制度改正後の動向についてもフォローアップする必要がある、としています。

 22ページ、「6.企業年金・個人年金制度の将来像の検討」です。

 2つ目のマルの後半部分、厚生労働省においては税制改正要望を行ってきたが、確定拠出年金法施行令の改正を前提に要望が認められた。

 3つ目のマル、今回の改正によって、これまで一律評価となっていたDBについて個別評価が可能となり、更にきめ細かな対応に向けて検討が可能となることから、今回の改正にとどまらず、引き続き、公平で分かりやすい制度の実現に向けて議論を深めていく必要がある。

 4つ目のマル、今回の議論の中でも、今回の改正は第一段階であって、老後の所得確保に向けた自助に対する支援の拡大や企業年金・個人年金の普及拡大に向けて、特別法人税の撤廃やDCの拠出限度額の引上げといった次のステップにつなげていくことが重要であるといった意見のほか、企業年金のない第2号被保険者への支援の充実を求める意見、第1号被保険者・第3号被保険者を含めて議論の発展を期待するといった意見等さまざまな意見があった。

 23ページ、我が国でも「穴埋め型」と言われる提案がなされてきた。

 3つ目のマル、こうした提案に対しては、企業年金と個人型DCを同じ拠出限度額で管理することは、退職給付と自助努力の性格を曖昧にするとともに、労働組合と企業が交渉を積み重ねて獲得してきた退職給付が自助努力に置き換えられかねないことから、

・個人型DCの拠出限度額は、すべての人が自助努力への支援を公平に受けられるよう、高所得者優遇とならないよう考慮しつつ、企業年金とは別の税制優遇枠として位置づけるべく検討すべきである

・自助努力の活用が格差拡大にならないよう、併せて公的年金・税制を通じた所得再分配機能の在り方についても検討を行うべきである

・企業年金は退職金としての性格が強いため、引き続き労使自治の尊重を前提にした検討が必要である。特にDBは退職金としての性格がより強いことから拠出限度額や年齢到達前の中途引き出しなどの制限がない一方で、DCには貯蓄との違いを考慮した制限があり、両制度の違いに十分留意する必要がある

といった意見があった。

 24ページ、3つ目・4つ目のマル、こうした提案・意見や諸外国の例も参考にしつつ、働き方や勤め先の企業によって有利・不利が生じない制度となるよう、議論を具体化していく必要がある。また、拠出段階のみならず、拠出・運用・給付の各段階を通じた適正かつ公平な税負担の在り方についても検討していく必要がある。

 さらに、「企業年金・個人年金制度を安定的に運営するための体制整備」についても積み残った課題の一つであるが、制度の在り方と制度運営の体制の在り方は一体不可分であり、併せて検討していく必要がある、と纏めさせていただいています。

 前回の部会では、藤澤委員、渡邊委員から、それぞれカナダ、ドイツの制度体系についてプレゼンいただきました。部会長から冒頭にありましたように、本日は、イギリス、アメリカについて外部有識者をお招きしてヒアリングを行いますが、将来像については今後も議論を継続していきたいと考えております。

 長くなりましたが、私からは以上です。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続いて、ただいまも事務局の方から御紹介がありましたように、佐野様からイギリスの年金制度につきまして御発表いただきます。よろしくお願いいたします。

 

○佐野邦明氏(外部有識者)

 年金綜合研究所の佐野でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 イギリスの年金制度について税制上の取扱いを中心に御報告をさせていただきます。まず、資料の1ページをお開きいただければと思います。

 1ページは本日お話しさせていただく内容のまとめでございますが、お時間の関係もありますので、ポイントを絞って、特にDB・DC共通の非課税枠を中心に御報告をさせていただきたいと思います。

 2ページにお進みいただければと思います。このページを資料としてつけさせていただいた理由は、イギリスの年金制度の複雑さを御理解いただくためです。イギリスの年金制度は非常に歴史が古く、公的年金は1601年、関ヶ原の戦いの翌年に、エリザベス救貧法によって非拠出の公的年金が創設されました。

 右側の矢印は、公的年金と職域年金の年代ごとの状況を概観したものでございます。公的年金は当初、定額の1階建てでした。19世紀半ば頃から国家公務員や軍人、警察官といった公的部門で職域年金が発展しました。その後、1950年代には民間部門でもかなり職域年金、日本でいえば企業年金が発展してきました。

 一方、公的年金は1950年代前半までは、救貧を目的とした定額年金でしたが、被用者の中でも職域年金に加入できない人たちに対して、報酬比例年金を創設して公的年金の充実を図ったのが1980年代の後半頃までの時期ということになります。

 本日のお話のメインテーマのDB・DC共通の非課税枠が設定された時期は、1989年以降の自助努力重視に舵を切った時期で、公的年金の守備範囲を縮小して、自助努力の割合を高めていきました。

 3ページはイギリスの被用者年金の体系でございます。

 2015年4月6日以降、公的年金の報酬比例部分を廃止して、その代わり定額部分の給付を充実させて定額制の国家年金にするという改正が行われました。1階建ての国家年金の上に職域年金、個人年金が上乗せされるという体系になっています。

 ちなみに、2020年の国家年金の水準ですけれども、週175.2ポンドで、1ポンドを150円で換算しますと、年額は大体136万円という金額になります。

 ただ、ここでお断りしておかなければいけないのが、イギリスは公的年金にしても私的年金にしても、発生済みの受給権が厳格に保護されるという点です。公的年金が1階建てになりましたとお話ししましたが、2015年4月5日までに報酬比例部分の公的年金を受け取っている方は、旧制度の報酬比例年金と定額年金とが給付されます。ただし、旧制度の年金額と新制度の年金額と丈比べして、いずれか大きい額を支給するという経過措置があります。

 4ページからは、私的年金、職域年金の話になります。4ページを見ていただくと、年次別のDBとDCの加入者、受給者、年金を待期している人数の一覧表があります。グラフを見ていただければ明らかなのですが、2013年以降急激にDCの加入者数が増えているという状況にあります。DCの加入者数が急激に増えているのは、職域年金制度への自動加入措置が導入され、その影響を受けてDCが増えているからです。

 5ページは、制度数ベースでDBがどのような状態にあるのかをまとめた資料でございます。これを見ていただきますと、新規加入者は受け入れないけれども、既にいる社員に対してはDBを適用するという制度が41%ございますし、未だに新規加入者を受け入れている制度も11%あります。このデータを見る限り、イギリスにおいてはDBがいまだに主流だということが言えるだろうと思います。

 6ページ、7ページはDBの加入者数ベースの資料でございますので、説明を省略させていただきたいと思います。

 ここからは、私的年金制度に関する税制について御報告いたします。

 登録年金制度の対象者に対する現在の課税原則はEETでございまして、拠出段階は非課税、運用収益は非課税、給付段階では課税です。ただし、年金原資の25%相当額は非課税で受給することが可能であるということでございます。

 次のスライド以降は、本日のメインテーマでございます非課税限度額がどのように導入されたかということの御説明に関する資料です。

 9ページにお進みいただければと思います。2004年金融法の施行によって、DB・DC共通の非課税限度額が導入されたわけでございますけれども、それ以前は、資料にございますように、職域年金では加入時期によって給付算定給与の上限や掛金算定給与の上限が違っていました。

 個人年金につきましても、掛金算定給与の上限や年間に拠出できる掛金率の上限も違っていました。つまり、制度へ加入した時点の税制上の取扱が適用され続けるという、想像するだけで非常に複雑な体系になっていたということでございます。

 2004年金融法施行前の税制の概要は参考資料マル1に記載がございますので、そちらを参照していただければと思います。

 10ページにお進みいただきたいと思います。そういう複雑な税制であったということでしたので、加入者にとって、自分は一体どれだけの非課税限度額があるのか、どの分が課税でどの分が非課税であるのかが非常に分かりにくかったということであります。

 事業主にとっては、制度に加入した時期ごとに適用される税制が違いますから、加入時期に応じて個別に適用する税制を把握して管理しなければいけないという状態だったわけで、非常に複雑でコストもかかる制度管理を行わなければならなかったということでございます。

 このような複雑な状態を改善するために、年間非課税限度額と生涯非課税限度額が導入されて、拠出段階と給付段階における税制の簡素化・統一化が図られたということでございます。

 ただし、既に加入して受給権が発生している人がいたわけでございますので、そういう人たちの受給権を守るという意味合いもあって、資料の10ページマル4にございますように、税制改正による国民への影響を最小限度とするため、非常に寛大な経過措置が導入されたということでございます。

 次に11ページにお進みいただきたいと思います。ここから年間非課税限度額についての話をさせていただきたいと思います。

 2020課税年度の年間非課税限度額は年間4万ポンドで、日本円に直しますと大体600万円になります。この4万ポンドの年間非課税枠をどのようにチェックするのかですが、DCの場合は掛金拠出額で判定します。DBの場合は年間の年金原資の増加額、具体的に言いますと、年間の年金増加額に16を掛けたもので判定をいたします。この判定対象とする額は、DB・DCの両方とも、年間に発生した受給権であると整理をしています。

 次の12ページはDBの年間非課税限度額判定の計算例でございますので、御説明は省略させていただきます。

 13ページでございますが、高所得者に対しては、収入に応じて年間非課税枠が減額されるということの御説明でございます。

 14ページにお進みいただきたいと思います。生涯の非課税限度額でございますが、2020課税年度ですと生涯非課税限度額が100万ポンドを超える金額で、日本円で1億6000万円ぐらいで設定されています。DCの場合は、支払い開始時点における個人勘定の残高で超過しているか否かチェックします。DBの場合は支給開始時の年金額の20倍でチェックをするということになってございます。20倍の意味ですが、これは支給開始時点の年金原資ということで整理をしています。

 次の15ページは、生涯非課税限度額を超過した場合にペナルティが課されるという点ですが、詳しい御説明は省略をさせていただきたいと思います。

 16ページは、複数制度の加入履歴がある方の生涯非課税限度額の管理の例ですが、これも御説明は省略をさせていただきます。

 17ページはまとめということで、個人的な感想も含めて申し上げます。イギリスの非課税限度額の存在は、DB・DCに関わらず、取り消し不能な発生済受給権の金額を基準として非課税限度額を判定すると整理をしているということです。イギリスの登録年金制度においては、一度発生した受給権は取消不能だということでございます。この、取り消し不能の受給権の存在があって、年金税制も非常に複雑化したので、それを分かりやすく簡素化するために、年間非課税限度額や生涯非課税限度額を導入しました。しかし、簡素化した後も、取り消し不能の受給権を前提としているということです。

 この観点から、イギリスと日本の違いを考えてみたいと思います。

 日本の場合、例えば退職金制度は退職時の事由で給付額が違っているのが一般的です。確定給付企業年金制度の場合でも、退職時の事由によって給付額が異なりますし、既存の加入者や受給者においてでさえも、要件を満たせば、過去に遡って給付減額ができます。この点はイギリスとはかなり状況が違います。イギリスの登録年金制度では、一度発生した受給権は取消不能で、受給権は必ず保護されます。日本では、DCでは本人の口座に払い込まれた掛金は事業主には返還されないので、イギリスと同じように受給権は保護されているということになりますが、DBの場合は必ずしも受給権がイギリスほど厳格に守られてはいないということだろうと思います。今後、企業年金・個人年金部会でも穴埋め型等々いろいろな議論があるようでございますが、DB・DC共通の非課税枠の導入を考える際には、イギリスの考え方は参考にはなると思います。しかし、日本にそのまま適用できるかというとかなり状況に違いがあるという点を御認識いただいた上で御検討をお願いしたいと思います。

 長引いてしまって申し訳ございませんが、御報告は以上でございます。

 御清聴どうもありがとうございました。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、野村様にアメリカに関しまして御発表いただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

○野村亜紀子氏(外部有識者)

 野村資本市場研究所の野村でございます。よろしくお願いいたします。

 私の方は「米国の私的年金税制について」ということで、なるべくコンパクトに、私的年金税制にフォーカスしたものをお持ちしたつもりでおります。

 まず、1ページ目を御覧いただければと思います。そうはいっても米国の年金制度の全体像をまずはお示しせねばと思って作った概略図でございます。

 米国の年金制度で、いわゆる公的年金に相当するのがソーシャル・セキュリティと呼ばれる制度です。それに加えて、職場経由の職域年金、そして個人が加入する個人退職勘定(IRA)などから成ります。このIRAが、日本の個人型確定拠出年金、iDeCoに相当すると言ってよいかと思います。ソーシャル・セキュリティは強制加入ですし、職域年金及びIRAは任意加入の制度です。

 こちらの絵のグレーの部分は、任意加入の制度で、かつ利用可能であるという意味で描いております。あまり絵心がないのですが、そういう趣旨でございます。

 あと、職域年金の中の確定拠出型年金(DC)に、いわゆる401(k)プランも含まれるということになります。

 2ページを御覧いただけますでしょうか。こちらでは、確定拠出型年金(DC)が米国では過去30年余りの間に拡大していったということを、資産残高を用いて図示したものでございます。

 IRAにつきましては、1980年代に制度改正が行われた等のことがあり、広く普及したとされております。

 また、近年は職域DCからのいわゆるロールオーバー、資産移換ということもございまして、IRAの資産残高が増大し、職域DCをもしのぐ規模感になっているという状況です。

 3ページを御覧ください。民間職域年金の中で見ますと、DBからDCへのシフトは、特に現役加入者の数の推移を見ていただくとよく表れているかなと思います。このグラフで濃い赤がDCの現役加入者、濃い青がDBの現役加入者になります。かなり開いてきていることが見てとれるかと思います。

 言うなれば、これがDB・DCも含めた米国の年金制度の全体像となるのですが、4ページから私的年金税制について少しお話をしたいと思います。

 こちらは全体像、概要なのですけれども、端的に申しますと米国の私的年金税制は、拠出時非課税(E)、運用時非課税(E)、給付時課税(T)が主流ということになろうかと思います。職域DB、職域DC(401(k)プラン)、伝統的IRA、Roth IRA。IRAにはこの2種類がございまして、Roth IRAの方は後から追加されたものですが、これがいわゆるTEE、拠出時の所得控除がないというパターンです。また、小規模企業向けのDCとしてSIMPLEプランというものも下に追記しております。Roth IRAを除いて、いずれの制度においてもEETが行われるということです。

 給付時のTにつきましては、いわゆる通常の所得課税がなされるのに加えまして、後ほど御説明する最低引出義務というものもございます。米国では通常の所得課税は累進課税です。したがいまして、一気に一時金で引き出すと税率が非常に高くなります。そういう形で、一時金引出は抑制する方向なのかなと理解しておるところです。

 次の5ページが、401(k)プランの制度の概要、税制の概要です。一言で特徴を示せと言われましたら、高い拠出限度額であろうと思います。拠出のところのボックスを見ていただきますと、加入者のみの所得控除が年間1.95万ドル、企業の拠出と合わせますと年間5.7万ドル、これが、その口座に入ってくる加入者1人当たりの税制枠となります。

 また、50歳以上の加入者拠出につきましては、年間6,500ドルが追加されます。いわゆるキャッチアップ拠出です。ちなみにこの金額は2020年のものでございまして、いわゆる生計費調整が行われるということもございます。

 次のページが伝統的IRA、EETの方のIRAの税制の概要でございます。

 やや特徴的なのが、これは誰でも入れる制度でございますけれども、職域年金加入者につきましては、一定以上の所得になると拠出の所得控除可能額が減らされるという特徴がございます。拠出は年間6,000ドルまでということですけれども、ここでもキャッチアップ拠出がございまして、50歳以上は年間1,000ドルが追加されるわけです。ただし、職域年金に加入している場合は一定以上の所得を得ている人につきましては、所得控除可能額が減らされるということになっております。

 今、申しました所得控除可能額が減りますという内容について、7ページの方に概要をお示ししております。日本のiDeCoもそうでしたけれども、米国のIRAも、もともとは職域年金プランがない従業員及び自営業者等が対象という制度として、1974年に始まりました。

 それに対して、1981年の制度改正で加入対象が大幅に拡大されまして、基本的に誰でも利用できる、企業年金加入者も含めて利用できる形に拡大したわけでございます。ただ、その後、1986年に、所得控除に対する一定の制限、すなわち一定以上の職域年金の恩恵を受けている方たちについては、IRA拠出の所得控除可能額は減らされるという措置が入ったというわけでございます。

 次のページはRoth IRAの上限についてでございますので、割愛したいと存じます。

 9ページを御覧ください。これがキャッチアップ拠出の概要でございます。50歳以上の資産形成の後押しということが趣旨と理解しております。

 左側に概要がございますが、401(k)プランなどですと6,500ドル、IRAですと1,000ドルといった追加が50歳以上の加入者については可能になるということです。

 これは2001年の税制改正により導入された制度なのですけれども、当時議論された考え方を右側に引用させていただいております。本来的には、自分で考えて、前もって若いうちからきちんと備えるということが適当であるものの、家族のために離職を余儀なくされる人もいるであろうし、そうするとその間、退職資産形成が行えないということもあるでしょうし、また退職間近な時期に貯蓄力が増加するということもあり得るので、年金制度の方でそれを後押しする。要はいろいろなライフコースがあるということも加味しながら、一定の年齢以上に対しての追加枠を入れたということではないかと思います。

 10ページが最低引出義務(RMD)についてです。これは、年金制度を通じてためてきたものは一定の年齢以上になったら年金としてきちんと受給してくださいという制度でございます。72歳以降は、ずっと運用時非課税の年金口座に入れっ放しではなくて、一旦その年金口座からは引き出してくださいとなります。

 引出義務の額は、前の年の年末の口座残高割る引出期間で、引出期間は、言うなればその年齢の余命のようなものが定められているというやり方です。実際やるのは面倒だという指摘もあるようですけれども、心としては、きちんと税制措置を付与して、貯めたものは年金という目的できちんと使ってくださいということではないかと理解しております。

 次のページは歴史的変遷ということで、いろいろと歴史的に制度を手直ししてきたということをお示ししたものですので、よろしければ後で御覧になっていただければと思います。

 最後のページで、米国の私的年金税制の日本への示唆を少し考えてみたところがございますので、述べさせていただければと思います。

 先ほど申しましたとおり、拠出時の限度額、特に職域DCの限度額は年間5.7万ドルなど、非常に高水準でございます。それとは別にIRAの拠出限度額が設定されているということになります。ここはイギリスのやり方などとはちょっと違うということになります。

 他方、職域年金加入者については、一定の年収を超えますと、IRA拠出の所得控除可能額が縮小されるということになりますので、その辺りでの調整のようなものは存在すると言ってよろしいかと思います。

 このように、職域年金とIRAの拠出限度額を別個に設定するという方法は、共通の拠出枠を設定する方法に比べますと、いわゆる機会均等の観点では若干の制約というか限界があるのかなと思います。

 一方で、十分に高い限度額が設定されているということが前提にはなりますけれども、その前提の下で、管理のシンプルさはもしかすると長所と言えるのではないかと思います。

 また、キャッチアップ拠出により、退職間近な世代による退職資産形成の機会を拡大するということをやっております。若年期の拠出枠の使い残しを繰り越していくという考え方もDCなどでは時々議論されると思います。これは50代以上に対しキャッチアップ拠出の枠を追加で設けることによって、一定程度取り戻すことも可能になるとも言えるかと存じます。

 生涯拠出枠を設定する方法に比べますと、ライフコースの多様化に対する対応力は限界があると思います。30代、40代でたくさん拠出したい人も理屈の上ではいらっしゃるはずですから、それに対する対応力は生涯拠出枠の方が高い場合もあろうかと思います。ただ、ここでもキャッチアップ拠出は50歳以上、年間何千ドルと非常にシンプルです。このシンプルさは長所と言えるかと思いますし、日本の文脈に置き換えますと、今、団塊ジュニア世代の方たちが40代後半かと存じますので、この方たちを強烈に後押しするというメッセージも含めて、そういう意味でもこういうキャッチアップ拠出的な考え方には有効な可能性もあるのかなと思っておるところです。

 運用時につきましては、いずれの制度においても、運用時非課税は共通でございます。私的年金の運用時非課税は所与であるということかと思いまして、日本の特別法人税は廃止すべきだとも思いました。

 給付時につきましては、最低引出義務というのがございまして、年金制度の目的である老齢期の所得確保という制度の趣旨を維持しているということではないかと理解しております。

 また、給付時課税、そして最低引出義務ということで、給付段階での一定の税収増を見込むこともできると思いますので、結果的に非常に高い拠出限度額を設定することも可能になっているのではないかと理解している点でございます。

 大変駆け足になりましたけれども、私からは以上でございます。

 どうもありがとうございます。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、御発表いただきました事柄につきまして、一括で御議論を頂戴したいと思いますが、大分多岐にわたり、議題1、議題2、さらに国際比較までの御報告をいただいたのを一括で御質問、御意見を頂戴することになりますので、その点を御考慮いただいた上で御発言いただければ幸いでございます。いかがでございましょうか。

 それでは、まず井戸委員、お願いいたします。

 

○井戸委員

 井戸でございます。ありがとうございます。

 佐野様、野村様、短い時間で税制中心にコンパクトで非常に分かりやすく勉強になりました。ありがとうございます。

 私からは、感想と要望を5点ほどさせていただきたいと思います。

 まず、議論の整理を御説明いただきましたが、特に問題はありませんでした。施行に向けて制度の周知をしっかり図っていただきたいという要望でございます。

 また、今後とも企業年金のない方への支援は必要です。充実と、穴埋め型の実現ということに対して引き続き検討していくことが大事だと改めて思いました。

 ガバナンスにつきましては、提案のあった現行の仕組みの改善については賛成いたします。

 特に本数が多過ぎると、退職後資金の積立てにはふさわしくない商品も入ってくると思います。そのようなファンドを選ばせないというためにも、本数を絞ることは必要です。その意味でも、閉鎖型の改善ということは必要だと思います。

 あと、給与切り出し型の選択型DC、あるいはDBの実施企業がとても多くなっています。新たに実施する企業が増えているようです。10月1日、確定拠出年金の法令解釈通知で、事業主は従業員に正確な説明を行う必要があるとしていただいていますけれども、具体的にどのような説明をすべきか、ここは追加していただきたいです。

 選択制DCは問題点がとても多いです。税金や社会保険料の負担が軽減されるということに焦点を置いています。公的年金も含めて、社会保険がどのくらい変わるのか、具体的な数字で示すことも大事ですし、選択制を選んだときには、従業員の方は御理解されているとは思うのですけれども、実際に失業などで貧困に陥ったとき、給料が下がっていることで困ることが考えられます。これでは社会保険としての機能が劣ると思います。ですから、社会保険料の算定はDCの掛金控除前を用いる改正を望みます。現在、途中でもやめられませんので、iDeCo+を強くお勧めしたいです。

 また、法令解釈の通知の見直しはDCだけでしたけれども、今は選択制のDBも増えてきていますので、同様の対応が必要だと思っております。よろしくお願いします。

 

○神野部会長

 事務局の方からコメントをいただければと思います。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 企業年金のない方への支援の充実を含めまして、将来像の検討は議論の整理にも盛り込んだところであり、引き続き当部会でもしっかり検討していくべき課題であると認識しています。

 給与切り出し型の選択制DC・DBの御質問・御意見をいただきました。御指摘いただいたとおり、昨年の部会での御議論を踏まえて、DCの法令解釈通知を改正しました。また、事業主がどのような説明をすべきかにつきましては、井戸委員がおっしゃるように、とかくメリットのみが強調されますが、厚生年金保険・健康保険の標準報酬、失業時の雇用保険の基本手当日額が引き下がり、給付が減額する可能性があることを、具体的な事例を用いて説明することが望ましいということは、指導レベルにはなるのですが、お示しさせていただいています。

 また、この点、規約の審査を行っています地方厚生局において、事業主がどのような資料を用いてどのような労使協議を行ったのか、協議の過程を明らかにする書類に記載をさせまして、それを審査の段階で確認することも、規約の審査事項に明記させていただきました。

 加えて、今日は説明を端折らせていただきましたが、資料1の46ページに企業型DCの運営状況について、今後、全ての実施事業主に対して、「基本情報」と努力義務とされた継続投資教育等の実施状況について、地方厚生局において事業主のヒアリングを実施することとしていますが、この「基本情報」の中で、選択制導入の有無を確認することとしています。私どもとしても、選択制がどこまで広がっているのか実態が分かりかねる部分があるので、実態把握から始めていきたいと思っています。

 また、選択制のDBもあるので、法令解釈通知の改正はDCだけでは足りないのではないかという御指摘をいただきました。我々も、DCの法令解釈通知の改正をした後、そういう声を様々聞きます。選択制DBも広がりが見られるという話も聞こえてきますので、DBの法令解釈通知においても、選択制DC同様、事業主の説明、また地方厚生局による確認を求めるということはやっていかなければならないので、検討していきたいと思っています。

 以上です。

 

○神野部会長

 内田委員、お願いできますか。

 

○内田委員

 御説明ありがとうございます。労働側の内田です。

 私からは、資料1について質問と要望がございます。

 まず、スライドの22にございますが、リスク分担型企業年金の合併・分割、事業所追加・減少について規定を整備していくということですが、どのように取り扱うのが合理的と考えられているのか、教えていただければと思います。

 また、給付減額の手続を合併・分割時等も開始時と同じ考え方を当てはめるということのようですが、それぞれの状況を想定した場合、規約変更後の各企業年金への実際の影響などについても変わらないという前提なのかをお伺いしたいです。

 また、スライドの28になりますが、企業型DCにおける年金委員会等について、34%が設置していると記載されており、スライド29では、運用の実態に関するレポートの情報共有先として、加入者や労働組合の割合などが示されております。これらはいずれも分母が限られているため、全体で見れば実施率は低くなると思われます。これらの点について、企業型DC全体の現状についての実態把握が必要ではないかと考えますが、スライド46に示された確認内容にこれらは含まれているのかをお伺いしたいです。

 企業型DCのガバナンスを強化するためには、定期的な情報共有と加入者、労働組合の定期的な意見反映の機会の確保や体制整備がまさに要だと考えております。労働組合としても取り組んでまいりますのが、厚労省をはじめ関係機関全体からのサポートが欠かせないと思っております。ぜひともガバナンス強化の取組への支援を充実いただきたいと思います。

 スライド36になります。運用商品のモニタリングの実施率は上昇しているということですが、商品のラインナップの見直しは進んでいないように見えます。労働組合もしっかり取り組む必要がありますが、信託報酬の低下が続く一方で、手数料が高い運用商品が見直されないまま残され、運用コストを負担する加入者の利益にそぐわないままとなっている企業型DCも少なくないのではないでしょうか。商品ラインナップの一覧表の公表も一定程度改善され、スライド46の確認内容にも含めていただきましたが、事業主が専ら加入者等の利益のみを考慮するという忠実義務を十分に果たすことができるよう、取組を強化いただきたいと思います。

 スライド33、継続投資教育の効果があった項目として、投資信託等の比率が増えたというものがございますが、積極的に元本確保型を選択している可能性もある中で、効果を測定する項目として適切かどうか、少し疑問がございます。もし金融リテラシーを把握する確立された方法があれば、教えていただきたいと思います。

 確立された方法がなければ、継続投資教育に対する効果測定方法の引き続きの検討とともに、元本確保型商品が積極的な理由で選択されているか、消極的な理由なのかを峻別できるような調査や分析も行っていただきたいと思います。

 最後になります。老後2000万円問題の報告書やコロナ禍などを契機として、老後資金への不安が高まる中で、加入者側の投資等に関する情報感度が高まってきている可能性もあります。この機会を捉えて、本当の意味で効果が高まるよう、継続投資教育の内容の充実や開催頻度を高めていく取組が重要だと考えております。また、関係団体におかれましては、このような取組に対する積極的な後押しをお願いしたいと思います。

 私からは以上です。

 

○神野部会長

 これも事務局からお願いいたします。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 たくさんいただいたので、全て答えられるかはありますが、まず、リスク分担につきましては、大前提として、この仕組みですが、オランダに集団型DC、CDCと言われているものがあるのですが、これを真似た制度で、オランダ同様、法令上は、確定給付制度と位置づけられていますが、確定給付とは性質が大きく異なっていて、掛金水準は維持されて財政状況に応じて給付が調整され得る仕組みで、企業会計上は確定拠出制度として取り扱われています。

 こうしたDC制度のような性格を併せ持つリスク分担ですが、DB法令を適用し、様々なDB法令の規定を一部適用したり、また一部は特例・例外を規定上に置いていたりするため、木で竹を接ぐような形になってしまっています。その中で、規定の不備が散見されるという状況で、改善を図らなければいけないと思っています。

 改善方法ですが、22ページに盛り込ませていただいています。まずは、規定の不備でリスク分担の開始・終了に限られている給付減額を伴う規約変更について、合併・分割、事業所の追加・減少、いろいろな事象がありますが、こういう事象でも、つまり開始・終了時以外でも可能であるようにしないといけないわけで、現行省令上、開始・終了だけが明記されているにとどまっているので、この部分は整備が必要だと思っています。

 そして、規約変更を可能とした場合、給付減額の判定基準をどう考えるのか、またその手続をどうするかが論点になるのだと思っています。この給付減額の判定については、資料の22ページの上から2つ目のマルで、「例えば」と書かせていただき、1つの案を提示させていただきましたが、リスク分担において、超過比率、これは給付現価に対する基準ライン超過分の比率のことですが、これがその後の給付調整を左右するので、合併・分割、事業所の追加・減少等の際にも、この率の変動は重要な要素として、この率の低下自体は給付減額とした上で、リスク分担では合併等があった際、給付の原資の基準がこの基準ラインを上回っていれば、引き続き増額調整が生じる可能性が高く、17ページの開始時と同様に、このような状況にある限りは合併等の際にも加入者への十分な説明の手続でどうかと考えています。

 これはリスク分担の制度趣旨・仕組みを考えれば、事業主としては財政均衡の状態から「将来発生するリスク」の半分以上の掛金拠出を継続して行っている状況であるということが維持できているので、制度開始時同様、増額調整が生じる可能性の方が高い2分の1を超えているので、どちらに向かいやすいかと考えれば、引き続き増額調整の可能性が高い状況にあると考えて、手続は加入者への十分な説明でいいのではないかと思っている次第です。

 ただし、幾つか課題がありまして、先ほど言いましたように、法令上、木で竹を接ぐような形になっていて、特例規定を置いたり、置かなかったりしている関係上、分割時の手続に不備が見られています。これは22ページの※2で書かせていただいているのですが、分割によって出し手側、つまり残る企業年金の財政状況に悪影響が出ないようにしないといけません。悪影響が出ないようにできるような仕組みを用意しておくというのが非常に重要な視点で、つまり、積立金の分割割合、すなわち出て行く側に移換する積立金額が重要になるわけです。

 従来型のDBについては、このようなことに備えて手当てがなされています。具体的には、分割に当たって、積立金を数理債務や最低積立基準額などに応じた按分が選択可能となっていて、継続基準や非継続基準に悪影響が出ないような資産分割が可能となっています。そして、分割の協議の中でそれを選択し、決定します。その分割の規約変更には当然のように労働組合等の合意も必要になります。

 こういう状況であるのですが、リスク分担については従来型のDBと異なって、超過比率が重要な要素になっているのであれば、この超過比率が分割のときに低下しないように手当てをしておかなければいけない、すなわち、そういう積立金の按分が可能になるように手当てをしなければいけないのですが、従来型のDBと同様の扱いしか認めていない、つまり規定上の特例を置き忘れており、このような不備が生じています。

 DB法令を、これは適用する、これは例外を置くということを、頭から全部、一気通貫で見ないといけないのですが、それに一部欠けている部分があって、日本年金数理人会や既に制度を導入している企業からの指摘で不備が分かってきているので、この際、直していきたいと思っています。

 ただ、その際に、関係団体の皆様、日本年金数理人会を含めてですが、規定内容をもう一回精査をし、御調整をさせていただくのは当然のことだと思っています。

 モニタリングはやっているのですが、ラインナップの見直しにまだ直結していないという話であったり、手数料が割高な運用商品が残ってしまっているのではないかという御指摘をいただきました。事業主の皆様は加入者のためにという忠実義務を果たしていただかなければいけませんので、この忠実義務の履行状況を資料の46ページの地方厚生局のヒアリングで確認させていただきます。ただ、これが事業主の皆様の過度な事務負担になってはいけないので、簡素なやり方で、かつ対面でやらなくても済むような、チェック方式でオンラインでもやれるような簡単なやり方でまず現状を把握しながらやっていきたいと思っています。

 年金委員会の設置状況等は忠実義務には書いてありませんので、そこまではまずは調査対象にすることは考えておりません。御指摘のとおり、28ページ・29ページにある企年連の調査というのは、分母が限られ、いわば大企業が多くバイアスがかかっていると我々は認識しているのですが、ただ、毎年調査をしていただいていますので、経年の変化は見られるという意味で非常に重要な指標だと思っています。

 確定拠出年金教育協会も調査をしていて、そちらは中小企業も含めて調査され、大幅に低い数字が見えていますので、我々としては、中小企業を中心に継続投資教育、運管評価、商品のモニタリングについて、まだまだ不十分な状況であるという認識を持っています。そういう認識を持っているからこそ、地方厚生局による先ほどの支援を行ったり、企年連にはハンドブックによる側面支援などを期待したいと思っています。

 継続投資教育の効果をどう測っていくかというのは非常に難しい課題でして、効果があった項目として、例えば資料にあるようなIDの照会やパスワードの再発行依頼が増えたというのが本当に適切な評価軸なのかと言われたら、そうではないような気がしています。この部分、どのように効果を測定していけるかというのは、今後よく勉強していきたいと思いますし、部会でも議論いただきたいと思っています。

 いただいた質問は以上でいいですか。

 

○神野部会長

 よろしいですか。

 それでは、小川委員。

 

○小川委員

 日本年金数理人会の小川です。

 佐野様、野村様、分かりやすい説明をどうもありがとうございました。

 改めて見ますと参考となる点が多々ありましたので、今後一層勉強したいと思います。どうもありがとうございました。

 私からは、資料1、2でそれぞれ1点ずつコメントさせていただきます。

 資料1では、先ほども出ました22ページのリスク分担型企業年金の合併・分割、事業所追加・減少時の取扱いです。そもそもリスク分担型企業年金は、DB・DC双方のよさを併せ持った制度として創設されましたが、残念ながら一部に事業主の使い勝手の悪さがあったこともあって、導入が逡巡されるケースがありました。そのため、昨年3月の第2回部会で、この点について当会より提言をいたしておりましたので、今後、速やかに改正に向けた検討を進めていただくよう、希望いたします。

 次に資料2では、22ページの「6.企業年金・個人年金制度の将来像の検討」に関してです。まず、税制改正要望が認められたとのこと、どうもありがとうございました。

 さて、資料に記載がありますが、改正の次のステップではDC拠出限度額の引上げを含むより踏み込んだ内容となることが見込まれます。前回の部会でも述べられているとおり、今回は当会の意見は採択されませんでしたが、改めて仮想掛金額の算定方式も議論することとされていますので、当会の知見を最大限に生かして、引き続き貢献したいと思います。

 また、特にDBについては、23,24ページのとおり、これまで厚生労働省さんを中心とした先人の方々の不断の努力による過去からの積み重ねがあるため、一律の議論に偏ることがないよう、慎重に議論を進めていくことが肝要であると考えております。

 以上でございます。

 

○神野部会長

 それでは、これもコメントいただければと思います。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 将来像につきましては、議論の整理に示していただいた方針に従って議論を具体化していきたいと思っています。

 日本年金数理人会とは、まずは今回の改正の施行に向けて、DBの仮想掛金額の算定方法の詳細について、精力的に調整をさせていただきたいと思います。リスク分担の見直しにつきましては、御指摘のとおり、この部会がスタートした直後、日本年金数理人会からも改善を提言いただいていた事項です。現場から様々な御指摘をいただいていますので、整理をして、必要な規定を整備したいと思っていますし、繰り返しになりますが、具体的な規定内容については、日本年金数理人会をはじめとする関係者と引き続きしっかり調整をさせていただきたいと思います。

 以上です。

 

○神野部会長

 それでは、押しつけるような形になりましてすみません。大江委員、お願いいたします。

 

○大江委員

 佐野委員、野村委員、大変勉強になりました。ありがとうございました。

 私の方からは2点の意見と2点のお願いがございます。

 まず、意見の方ですけれども、給与内枠の選択制については井戸委員の御指摘のとおり、私の方も心配をしておりまして、吉田課長が御説明された地方厚生局による確認、内田委員からお話があった組合も参画したモニタリングが大変大切になってくるかと思います。

 2つ目なのですけれども、今回、運営に携わっている現場の声に耳を傾けていただいたということで、リスク分担型の企業年金、商品除外について取り上げていただいたかと思います。やはり制度の普及や健全な制度拡大という上で、とても大切なことかと思います。

 商品除外の閉鎖型の対応につきましては、企業型、個人型いずれでも、運営側では要望の強い事項ですので、実現をしていただきたいと思います。

 あと、ガバナンスのことで2点お願いがあるのですけれども、私どもNPOの立場で非常に微力ながら尽力しているところではあるのですけれども、企業年金連合会様、国民年金基金連合会様にお願いがございます。

 企業型DCのガバナンスというのは、先ほど内田委員からの御指摘もありましたが、まだ途上というか始まったという段階で、特に人員の問題からも、規模の小さな事業主様ほど実行が難しいと感じております。先ほど課長からもお話があったのですが、企業年金連合会で既に発行されているDCの制度運営ハンドブック、こちらは御改訂の予定もあると聞き及んでおりまして、その中でぜひ中小企業でも実行できるような手順をお示しいただきたいと思っております。

 それから、個人型、iDeCoのガバナンスということになりますと、国民年金基金連合会様が、委託先の運営管理機関に対して、制度運営主体として加入者目線のモニタリングをしっかりやっていただくということが必要かと思います。具体的には、法定業務の商品選定であるとか、クレームやトラブルに近い不満の声、その内容や件数の把握、そしてその改善状況をモニタリングしていただくということなどをイメージしておりまして、対応を御検討いただければと思います。

 こちらはいずれもお願いベースですので、回答は特に必要ではありません。

 ありがとうございます。

 

○神野部会長

 何かあればいただきます。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 昨年12月の部会でも、大江委員に対しては、現場が感じている制度の矛盾点、また改善すべき点があればしっかり吸い上げていきたいとお答え申し上げました。今もその姿勢には変わりはないので、遠慮なく問題点を言っていただければと思います。

 そのような中で、個人型DCの運営につきまして、制度所管の立場から御回答したい部分があります。説明を省略してしまったのですが、資料1の26ページに、企業型DCにおいて事業主が果たすべき役割・責任の資料を入れてあります。この点、個人型DCにおいてはその実施主体である国民年金基金連合会が果たすべき役割・責任に置き換えられます。その旨、表の欄外、注1に書かせていただいておりまして、法律上、国民年金基金連合会には義務が課せられています。この中のマル6、先ほど内田委員からも御指摘がありました忠実義務として、企業年金は事業主が忠実義務を負いますが、個人型は国民年金基金連合会が負うという形になっています。国民年金基金連合会は個人型DC加入者等のために忠実に業務を遂行する必要があって、その忠実義務の内容は27ページにあるように、マル2の運営管理業務の委託に係る忠実義務のほか、照会・苦情処理体制の整備というものがありまして、大江委員がおっしゃった項目も忠実義務の内容になっています。

 国民年金基金連合会は個人型DCの実施主体として、企業型の事業主同様、責任が課せされているところでして、御指摘を踏まえて、どう改善を図っていくべきか、国民年金基金連合会とも意見交換をさせていただきたいと思っています。

 以上です。

 

○神野部会長

 それでは、鮫島オブザーバー、どうぞ。

 

○鮫島企業年金連合会理事長(オブザーバー)

 大江委員から御要望をいただきましたが、私どもも企業型DCのガバナンスということにつきましては、改善の方向にはあると思っておりますけれども、まだまだ取組が必要だと考えております。私どもでは、これまでも企業型DC制度運営ハンドブックを提供して、事業主さんへのサポートを行っておりますが、御指摘のとおり人員の問題等々がありまして、小規模の事業主ほど対応が難しいという面はあると思います。今後、中小企業による活用もできるだけ意識しながら、改めてDCガバナンスハンドブックといったものを作成して、具体的な事例あるいは手順など、実践的な材料を提供していきたいと考えております。

 

○神野部会長

 オンライン参加の細田委員、お願いできますか。

 

○細田委員

 御説明ありがとうございました。

 最初の資料1についてなのですけれども、過去にわたっていろいろ御説明をいただきまして、ありがとうございました。私が就任する前の議論も入っておりまして、その中でも随分といろいろなことがされていたのだなと感心しておりました。

 私から2点申し上げます。まず、40ページの企業型DCにおける「商品除外方法の改善」について、これは加入者の選択肢を増やし、利便性が高まる話ですので、事務局が提案された内容で今後も進めていただければと思っております。

 続いて、46ページの「地方厚生局による運営状況の確認と支援」についてですが、企業年金は中小企業にはなかなか普及していないというのが実態だと思うのですけれども、今後、導入を推進していくという中で、商工会議所の会員である中小企業、私も商工会議所の会員なのですけれども、そういったところからは、手間が非常にかかるということを聞いています。現状、地方厚生局への報告書は、紙ベースでの提出が義務づけられていると聞いていますので、メールでの提出も認めていただいて、事業者の負担をぜひ減らしていただきたいなと考えております。これはiDeCoのときにも同じような話が出ていたと思います。

 あわせて言えば、47ページの教育の部分もかなり負担がかかってくるのではないかと思いますので、こういったところもぜひ見直していただきたいと思っております。

 なお、日本商工会議所では、本年11月に「2020年度規制・制度改革に関する意見」をとりまとめ、政府に提出しております。この中で、「現状の行政手続には、メールを認めずファックスのみの受付とする手続も多く、事業者の負担となっており、手続方法についても迅速に見直しが必要である」ということで、地方厚生局への報告書についても指摘しております。菅総理に代わられてから、行政改革をさらに進めるという話も出ておりますので、手続簡素化という観点から、企業年金の普及にもつながる取組を進めていっていただきたいと思います。

 以上、意見でございます。

 

○神野部会長

 事務局の方でコメントをお願いします。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 46ページにある地方厚生局による運営状況の確認ですが、これは先ほど御説明したように、DC実施事業主には一定の責務はありますので、その責務の履行状況は確認させていただきたいと思います。税制優遇もある制度ですので、御理解いただきつつ、当然、事務負担にならないよう十分配慮して取り組みます。このヒアリングについては、紙ベースは考えていません。簡単にアンケート形式で答えられる、そして、それを対面でやらずに、メール・オンラインでも回答できるようにしたいと思っています。

 以上です。

 

○神野部会長

 ありがとうございました。

 それでは、金子委員、お願いします。

 

○金子委員

 ありがとうございます。

 私からは最初に意見と、幾つか質問をさせていただきたいのですが、まず、議論の整理については異論ございません。施行に向けてシステム面も含めて、万全の準備をお願いしたいと思っております。また、制度の将来像についても引き続き精力的に議論していくべきだと思っております。

 2点目なのですけれども、リスク分担型企業年金あたりの議論についてなのですが、基本的に制度について最初から100点ということはなかなか難しいなと思いますので、制度設計に当たって見落としている点が後から見ると出てくるというのはしようがないということも思っております。したがいまして、適宜改善を図るという姿勢が大事だと思っております。

 3点目がDCの提供商品数の上限についてなのですけれども、これを決めた当時の専門委員会で議論された際に、35本を超えると不指図者が増えるという調査結果に基づいて設けられたと認識しております。仮にそうだとすれば、選べる商品数を35本以内とするだけで十分で、35本から外れた商品を保有し続けること自体を不可とする必要はないのではないかと思っております。

 4つ目になるのですけれども、専門委員会で示された調査が、個人型の規約などを対象に行われていなかったのではないかということも少し気になっておりまして、例えば個人型で提供される商品数の非常に多い運管がありましたけれども、当事者である運管からすると、利用者によいサービスと評価されようと思って行っているわけであって、その運管を選択した加入者も、商品数が多いことを評価していることが多いのではないかと思います。実際、不指図者も少ないのではないかと思いますので、ちょっと企業型と違うという視点も含めて、個人型については少し考えていく必要があるのではないかと思っております。

 佐野さんと野村さんへの質問なのですが、事前に資料を拝見させていただいて疑問に思ったのですけれども、よくよく考えてみると、お二人が最後に日本への示唆ということで挙げておられたことと観点が全然違っているので、すごくつまらないことを聞くような気がするのですけれども、気になってしようがないので教えていただきたいと思います。

 例えば英国の私的年金だとか、米国の401kや伝統的なIRAは、所得控除を受けられる年間拠出額を超えても拠出できるような感じに聞こえるのですけれども、その際、超えてしまった部分が戻ってこないというか、要するにそのまま受け付けてもらえるような感じに見えるのですが、その理解で正しいかということと、超えた部分を例えば翌年以降の拠出で調整されるとかという感じになるのか、あるいはそのままそれは認めてくれるのかということです。

 超過額が、そのまま運用を続けられるということであれば、その部分に対して課税はどうなっているのか。もちろん拠出時は超えていますので、そこは課税されるのが分かるのですけれども、その後、所得控除を受けた部分と税制が違くなってくるのかどうかということなのですが、すごく細かいことかもしれないので、分かる範囲で構いませんので教えていただけたらなと思っております。

 もう一つ佐野さんに、これもすごく細かいので、こういうことを聞くとばかではないかと思われるのでどうしようかなと思ったのですけれども、気になってしようがないので教えていただきたいのですが、イギリスの場合、私的年金の生涯非課税拠出額の管理は、あくまで個人がやるような感じに聞こえたのです。そうすると、あと幾ら残っているかみたいなことはどうやって把握するのかなというか、なかなか把握ができなくなってくると思うので、何か通知する仕組みみたいなものがあるのでしょうか。その点について。

 佐野さんについては2問になりますけれども、教えていただければと思います。

 

○神野部会長

 では、佐野さんにお答えいただいて、野村さんにお答えいただければと思います。

 

○佐野邦明氏(外部有識者)

 どうもありがとうございます。

 かなり技術的な部分がありますけれども、簡単にポイントだけお答えしたいと思います。

 まず1点目、非課税枠を超過して拠出ができるか。これは可能です。ただし、超過した分は該当者本人の収入とみなして所得税が課税されます。

 では、超過部分に対応する運用収益についてですが、登録年金制度の運用収益は、本人の収入とはみなされず非課税なので、拠出時に限度額を超過して課税対象であったとしても、その部分から発生する運用収益も課税されないということです。また実態としてとは、年間非課税限度額の使い残しの額は3年間繰り越し可能です。なおかつもともとの拠出限度額の上限が、その時々の加入者の掛金算定給与の上限などを勘案して、加入者が困らないように、抵触しないように、高額に設定してあります。参考資料マル3の方に過去の限度額ヒストリーを載せてありますので、そこを御覧いただければと思います。年間非課税限度額は年金制度の拠出の上限が抵触しないように設定されているので、実態としてはほとんど抵触することはないのではないかと推測します。

 2点目、生涯非課税限度額の管理なのですが、チェックする時期は原則として支給開始時です。それぞれの制度で支給開始時期になったときに、年金制度のプロバイダーあるいは年金基金がその人の生涯非課税限度額をチェックします。

 では、国としてどう統一的に判断されるのかということなのですが、国民保険番号という、日本のマイナンバーのようなものですが、それで最終的に税務署が把握する仕組みです。ただ、生涯非課税限度額を超過しているかどうかのチェックの責任は年金プロバイダーにあります。

 よろしいでしょうか。

 

○金子委員

 ありがとうございます。

 

○神野部会長

 それでは、野村様、お願いできますか。

 

○野村亜紀子氏(外部有識者)

 御質問どうもありがとうございます。

 伝統的IRAにつきましては、先ほど申しましたとおり、一定の所得を超えた方については所得控除ができなくなりますが、一方で、拠出すること自体は可能です。したがって、それは税引後所得からの拠出というカウントで、その旨の記録をつけ続けるということになり、私自身は、個人的には大変そうだなと思ったところはございます。

 だからというわけではないとは思うのですけれども、Roth IRAの方は最初から所得控除ができない。その代わり給付時課税がないわけでございますので、そういう選択肢もございまして、金融機関、あるいはアドバイザーの人たちは、個人の置かれた状況に基づいて、どちらの方が合理的かということのガイダンス、サポート提供も行っているとは聞いております。

 それ以外のものにつきましては、私も具体的な細かいところは自信がないのですが、基本的には、出し過ぎてしまったら一定の期限までに回収するといった規定が置かれていたように思いますので、基本は、この非常に高い限度額の範囲内でやってくださいということではないかと思いますけれども、税引後拠出という言葉も見ないわけではございませんので、あまり定かなお答えは難しいかなというのが正直なところです。

 以上です。

 

○金子委員

 ありがとうございます。

 

○神野部会長

 事務局の方からコメントはありますか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 施行に向けたシステム整備につきましては、これまでも私どもとRK、またDBの受託の団体、国基連、企年連との間で検討を開始してはいましたが、税制改正要望が正式に認められましたので、システム整備を含めて検討を加速化したいと思います。

 商品除外のお話をいただきましたが、商品の特徴、また商品を除外しようとする理由によって、将来分に係る除外の方が適当な場合もあれば、過去分を含めた除外の方が適当な場合もあろうかと思いますので、除外の方法については、労使でよく御相談いただく、その選択肢を広げることが適当ではないかという御提案です。

 御指摘の運用商品の上限35本については、説明は省略させていただきましたが、資料の38ページに入れさせていただいています。非常にいろいろな御意見があった中、35本と決まったわけですが、実際の企業型年金加入者における運用商品提供数と不指図率の相関関係の中で35本というものが設定されたわけです。この38ページにもありますが、個人型年金における商品除外の考え方も、金子委員がおっしゃるような御主張もあった中で、加入者が提示された運用商品の中から自身で運用商品を選択するという意味では企業年金と同じではないかということで、多すぎると加入者の行動が変わるというロジックで個人型年金についても上限35本としたわけですが、御指摘のとおり、個人型については自ら進んで加入していますから、不指図率は当然低いはずなので、このロジックが本当に良かったかは論点だと思っています。

 35本については、専門委員会の報告書の中でも、見直しの検討規定と言いますか、今後の施行状況を見ながら、データに基づいてしっかり考え直そうという報告書の内容になっていますので、今は経過期間中ですが、これが終わった後、また数字を見ながら御議論をいただきたい点だと思っています。

 以上です。

 

○神野部会長

 ありがとうございます。

 それでは、オンラインの臼杵委員、御発言いただければと思います。

 

○臼杵委員

 ありがとうございます。

 今日は佐野さん、野村さん、どうもありがとうございました。簡潔な説明でよく分かりました。

 私の方からは3点コメントを申し上げたいと思います。

 せっかくお二人の話がありましたので、まず、それに関連して将来像ということで申し上げますと、どういう形がいいかは分からないのですが、今、企業年金のない人の非課税枠というのはiDeCoしかなくて、それは2万3000円ということだと思います。

 これはある意味で不公平で、私も実は今の仕事の前は企業年金のない会社に勤めていたわけで、そのときは最初、1万5000円からでしたか。だんだん増えてはきましたけれども、これはやはり不公平があると思います。

 仮にこれを企業型と同じ5万5000円にするとして、企業年金のある人は2つ合計で11万円出せるようにするかといえば、やはり不公平のままですし、11万円というのは大きすぎて無理でしょうし、さらに企業年金のある人は恐らく所得が相対的には高い人が多いということでいくと、2つを別枠にするというのはある意味で金持ち優遇にもなるわけでありますので、今回、前回伺った海外の状況等を踏まえると、何らかの調整のようなものは、穴埋め型がいいのかどうかはまたこれからの議論だと思うのですが、将来的にはそういう形で調整をしながら、公平を図っていく必要があるような気がしております。それが1つ目でございます。

 2つ目は補足なのですが、投資教育の効果をどう測るかというのは、テストをするのが一番簡単です。テストといってもオンラインかなにかで4問ぐらいのもの。例えば今、確定拠出年金に限らず、研究者の間で非常にホットなトピックになっていますのは、金融リテラシーと投資行動にどういう関係があるかということであり、いろいろなところ、世界中で論文が出ている。1年間に1,000本ぐらい出ているのではないかと思うぐらいの勢いで出ているのです。そこで大抵やられているリテラシーの質問というのがあって、例えば投資信託に投資するのと個別の株式に投資するのとでは、投資信託の方がリスクが低いか、とか、その程度の質問でありますので、そういうことで例えば運管とかで協力しながらやってみるということも一つのアイデアかなと思います。これが2点目でございます。

 3点目は、DCにおけるガバナンスも、内田委員ほかから御発言があったところでありますが、特に中小企業さんも含めて、これをどう改善していくかということかと思います。

 DCの場合は、運管さんの方がプロで、事業主はどちらかというとプロではないということ。さらに、取引関係があるということで、なかなか運管さんをチェックするということが難しいと思うのです。ですから、その辺りは、先ほど大江委員からも御指摘がありましたけれども、企年連さんとも協力していきながら、例えば簡単なチェックリストをつくるとか、想定問答のようなもの、お医者さんに対して患者さんが聞けるような、例えば運用商品でいけば、この商品は本当に10年もちますかとか、あなたが加入者として、この商品に10年投資できますかとか、そのぐらいの分かりやすい質問を想定問答のような形で用意するとか、これからそういうこともぜひお願いしたいと思います。

 例えば商品数35本が上限というのは、35本がベストということではなくて、35本よりもっと少なくできると思いますので、その辺りも含めて、今後、検討していただければと思います。

 以上です。

 

○神野部会長

 事務局の方からコメントはございますか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 将来像につきましては御指摘のとおりで、今、企業年金のない方々への支援をどう充実を図っていくか。そして、拡充しようとしたときに、企業年金のある人との公平をどういうふうに図るか。共通枠という考え方もあろうかと思いますし、そうではなくて、企業年金加入者の拠出枠は所得に応じて調整するというアメリカ型もあるかもしれない。こういう大きな流れを議論の整理にも書かせていただいていますので、今後よく考えていきたいと思います。

 運管評価につきましては、先ほど鮫島理事長からもありましたが、企業年金のハンドブックの中で、どう効果的なものを盛り込み、事業主の皆様の指針にできるか、これをしっかり一緒に考えていきたいと思っています。

 以上です。

 

○神野部会長

 藤澤委員、お待たせしました。その後、森戸委員、お願いします。

 

○藤澤委員

 藤澤です。

 資料2の議論の整理については、違和感のない内容になっていると思います。

 今回の改正で終わることなく、将来像の検討にも記載の様々な課題について継続して検討いただき、次のステップにつなげていただきたいと考えています。

 資料1のガバナンスについて、説明は省略されていましたが、OECDのガイドラインから資料がスタートしている点が少し気になっています。例えばカナダでは、年金基金が自発的にリスクガバナンスを強化することを推奨しながら、その体制を監督当局がモニタリングするというリスクベースの規制が導入されています。

 一方、日本の企業年金の場合は、法令遵守だけを行っていれば、ガバナンスの対応は十分であると受け止められているのではないかという点を気にしております。

 法令遵守ももちろん重要ですが、ガバナンスの強化を自発的に行うようなことがあってもよいのではないかと考えています。ガバナンスのような、何がベストなのか分からないような分野では、色んなものを参考にした方がいいと思いますので、OECDのガイドライン以外も参考にしながら、一層のガバナンスの強化を図っていただきたいと考えています。

 また、リスク分担型企業年金についてですが、実施している企業や加入者が困ることがないよう、手続等の整備は進めていただきたいと思います。その際には、財政状況によって給付が調整される仕組みでもございますので、加入者が正確な情報を知るということが重要であって、ガバナンスの視点も忘れずに、関係者とよく調整いただきたいと思います。

 以上です。

 

○神野部会長

 コメントをどうぞ。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 将来像につきましては、繰り返しになりますが、議論の整理に示された方針に従って、議論をしっかり具体化していきたいと思います。

 ガバナンスについて御意見をいただきましたが、私ども日本もOECD加盟国でして、今月も毎年恒例のOECDの担当者会議を今年はウェブで開催しました。加盟国であり、どうしてもOECDガイドラインに沿って議論をしてしまうわけですが、このガイドラインは御指摘のとおり、法令・規約の遵守といったところが出発点になっているかと思います。

 御指摘のとおり、ガバナンスにも段階があるのだろうと思っていまして、最低限の取組が法令の遵守になるかと思います。臼杵委員も医療分野の話を少しされましたが、医療保険や介護保険の分野では、保険者機能という言葉があって、情報の非対称性のある医療介護分野ですので、保険者は被保険者のために、ある意味、エージェント機能を果たすということが求められています。

 企業年金の分野でも、もう一段、自律的な年金ファンドに脱皮するという意味で、どのような仕組みや運用があるかというのは、御指摘を踏まえてよく勉強したいと思います。

 リスク分担の見直しは、ガバナンスの観点から十分な手当てを検討したいと思います。

 以上です。

 

○神野部会長

 それでは、森戸部会長代理、お願いします。

 

○森戸部会長代理

 まず、事務局には、御丁寧な説明をありがとうございました。

 全体に質問はありません。コメントです。

 ガバナンスのところで、今日は割と時間を割いて御説明になったリスク分担型の話です。内容については、どなたかがおっしゃったように、いろいろ不備を埋めていかなければいけない話だと思いますので何も異論はありませんが、伺っていて、リスク分担型の話は非常にややこしい、複雑で難しいので、今、藤澤委員がおっしゃったことにもつながるのですけれども、結局、労使合意なり説明をしている話だと思うので、実際どうやっているのかとか、こう言ってはなんですけれども、本当に従業員の人はみんな分かっているのかとか、そういうのは素朴に気になるところでございます。

 そのうち、実際どのように説明しているのかとか、微妙な話もあるかもしれませんが、実例みたいなものを伺えたらためになるかなと思いました。それは本当に感想です。

 それから、議論の整理に関して、調整してまとめてありますので、特に言うことがないというのも変ですけれども、ありがとうございます。

 佐野さん、野村さん、今日はありがとうございました。お二人とも時間をきちんと守るという、大学人にあまりないマインドでやっていただいて、非常にコンパクトにまとめていただきました。かつ、勉強になりました。

 もちろん外国の話は、適当に自分のいいように解釈してはいけないわけですけれども、ただ、日本の実情なり制度に合わせつつ、しかしいろいろ参考になる点があったなと思いました。

 佐野さんのお話では、最後、示唆でおっしゃいましたけれども、イギリスは受給権の概念がある意味ガチガチというか、固まっている前提での共通枠の話だというのは、非常に重要な御指摘で、既にこの部会での資料にもそういうことは反映しているのですけれども、日本の場合は、DBの場合の給付減額なんかも含めて、受給権というのをある意味柔軟に考えています。それはそれでいいと思うのですが、ただ、そういう中で共通枠というのを考えると、枠をはめたのに後でなくなったみたいな話もあり得るわけで、そういうことをどう考えるかというのはちゃんと法的な意味も含めて考えなければいけないなというのを、改めて今日、佐野さんの御発表で思いました。

 野村さんの方も、いろいろ示唆的なところがあって、キャッチアップ拠出とかRMDという辺りも非常に参考になるかと思いました。

 特にRMDの方です。枠を与えて、そんなにいっぱい税制優遇するのかというふうにも見えるけれども、後でちゃんとしっかり出させるのですよ、使わせるのですよ、そのときに税金をかけますよと。つまり、別に遺産として残させるわけではありませんというのは、そちらの発想も併せて考えるということは日本でも大事なのではないかと思いました。

 最後に全体のコメントで、これは毎回同じようなことを言っているのですが、結局、外国の話も伺って、今日のまとめにも全部つながりますが、これは伊藤委員なんかもよくおっしゃいますし、今回、議論の整理の中にも入りましたが、企業年金というのが退職金から出発していて、まだ退職金という面がある。それは労働条件であり、労使交渉の中で、ある意味、労働側が勝ち取ったものというところはありますので、それは否定できない事実として、いっぱい勝ち取った方がいいのだと思うのですが、それをどのような税制の対象にするかとかというのは、政策として国として考えなければいけないことなので、そこでは企業年金なり退職金がない人という観点も入れての制度としての公平さを考えなければいけない。そういうフェーズに来ているということが、今、議論をしていることだと思います。

 結局は、企業年金の将来像というのは退職金制度、退職金の実務をどうしていくかということを雇用の面も含めて考えなければいけないということなのだろうと。そういう問題が突きつけられているのだろうと思います。ですから、退職金制度なり、企業年金の実務の動向というのはもちろん踏まえつつ、変に実務を乱すようなことはしてはいけないと思いますが、他方で制度全体としての公平さ、どういう切り口で公平と言うかというのは難しいけれども、そういう観点で全体を考えていかなければいけないのかなということを改めて思いました。

 以上です。

 

○神野部会長

 よろしいですか。

 それでは、オンラインで参加の小林委員、お願いいたします。

 

○小林委員

 私からは、資料1と資料2について幾つか申し上げたいと思います。

 まず、資料1の企業年金ガバナンス等についてですが、22ページに記載いただいたリスク分担型の移行時に係る規定の整備について、今回、事務局から御提案いただいた内容は現行制度における不備に対処するためのものであり、望ましい対応と考えます。

 また、資料1の40ページに記載された企業型DCにおける運用商品の除外方法の改善についても、ぜひ進めていただくようにお願いいたします。

 今回御提案いただいた過去分の現金化を伴わない閉鎖型の選択肢が追加されることで、加入者への説明が容易になるとともに、除外手続に伴う実務の円滑化が図られると認識しています。

 加えて、43ページの商品除外の同意取得の手続が不要な商品の追加に関する御提案についても、商品ごとに手続が異なる状況が改善されるものであり、適切な対応と認識しています。

 次に資料2、令和3年度税制改正要望に係る議論の整理についてですが、まずはこれまで部会で議論された内容を丁寧に取りまとめていただいたことに感謝申し上げたいと思います。今年度議論されたDCの拠出限度額の見直しについては、拠出の自由度や柔軟性が増し、企業年金・個人年金のさらなる発展につながる見直しであると考えています。今後のスケジュールは未定とのことですが、課題を整理した上で、できるだけ早期の施行を目指していただきたいと考えます。

 一方、企業年金・個人年金の将来像に関しては、資料2の22ページに記載のとおり、今回のDB併用時のDC拠出限度額の見直しは、特別法人税の在り方やDCの拠出限度額の引上げに向けた議論の第一歩であり、今後さらに議論を深めていく必要があると認識しています。

 あわせて、今年度は事業主証明の廃止や事務負担の軽減に向けた検討も行われましたが、企業、加入者の双方がメリットを感じられるように、引き続き事務負荷の軽減やデジタル化の推進への取組をお願いしたいと思います。

 私からは以上です。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 伊藤委員、お願いします。

 

○伊藤委員

 時間がないところ、すみません。

 私の方から、まず、資料1についてはリスク分担の22ページのところですけれども、今日いろいろと御説明を聞いていて、合併時や分割時などについて規定の不備があるから、そこは手当てしないといけないというところは分かります。そして、移行時と同じような給付減額に当たっての判断基準を使うというアイデアの提案だと理解しました。その際、移行時や合併時、分割時などは、それぞれ事情が違うのではないか、もう少し丁寧に見ていかなくてはいけないのではないかということを申し上げたいと思います。

 移行時は、労働組合の同意と個別同意がさらに加重して必要かどうかという判断になるわけですけれども、移行時は、企業内あるいは企業グループ内という閉じた世界での労働組合の同意に基づいて導入されていると思います。基本的には、そのリスクの基準ラインは変わらないということがこの仕組みの建付けだと思います。それに対して企業再編の場合は、すぐれて企業の経営事項になってしまうところがありますので、労働組合の同意手続の意味合いが大分変わってきてしまうという実態があると思います。そう考えると、個別同意の重要性がまた出てくるとも考えます。

 また、企業再編でも様々な場合があって、新設分割よりも吸収分割とか新設合併の場合が一番退職給付制度を含む労働条件の変更が起きる可能性が高いということもあります。ですので、合併・分割、事業所の追加・減少というように、全部が一緒くたに同じルールでいいではないかということですけれども、そこは丁寧に見ていかないといけないのではないかと思います。

 労働契約の承継に当たっても、会社分割と事業譲渡・合併とは別の仕組みになっていて、会社分割については法律上の手当てを別途したということもあったわけですし、ここら辺は丁寧にやっていただきたいと思います。

 もう一つ、資料2の議論の整理です。こちらについてお願いですが、将来像の検討ということで、今も海外の事情のプレゼンテーションをしていただいているわけですけれども、ここでもよく分かってきているのは、公的年金との関係性が非常に重要だということです。再分配機能がどれぐらいあるかによって、私的年金側を設計しているという面があると思っておりますので、今後の検討に当たって工夫をお願いしたいと思います。

 時間がないかもしれないので、今日この場でなくても結構ですが、佐野様と野村様にお聞きしたいことだけ述べさせていただきます。

 いずれも私的年金の加入者が増加しているということがデータで出されたところですけれども、これの背景を教えていただきたいと思います。日本の場合は少子高齢化で公的年金の方が小さくなるから、私的年金の方も充実させていかなくてはいけないといって拠出限度額も見直されてきたという背景もありますけれども、各国の方は、どういう背景でここまで私的年金が増加しているのかというところ、非常に基本的な話ですけれども、教えていただきたい。

 それから、イギリスでいうところの年間非課税限度額とか生涯非課税限度額という仕組み、米国でいうとIRA、こういう中には、日本でいうところの生命保険料控除とか、財形年金とか、その他貯蓄投資制度や税制のようなものがほかにもあるのかどうかというところを教えていただきたいと思います。

 

○神野部会長

 今、傾向と制度上のお話の2点がありましたが、簡潔にお願いできますでしょうか。

 

○佐野邦明氏(外部有識者)

 では、簡潔にお答えしたいと思います。

 加入者が増えている原因なのですが、もともとイギリスの職域年金制度は、従業員は強制加入が前提でした。その後、自助努力を重視するサッチャー改革の一環として、1986年社会保障法で、強制加入を禁止したという経緯があります。つまり、社員全員が加入するのではなく、加入したい人だけ加入するという仕組みになりました。そうすると、給料の低い若年層を中心に加入率が低下してしまうという状況になって、公的年金のみに頼らざるを得ない、老後の備えが不十分な人が増加することが懸念される状況になりました。そのため、今度は自動加入という措置を2012年から導入して、何とか私的年金制度の普及による老後の備えの充実を図っているということです。

 それから、私的年金制度以外にいろいろな控除とかがあるのかということなのですけれども、イギリスの場合、所得控除できる個人貯蓄制度はほかにもあります。しかし、非課税枠としてはかなり小さい状況です。

 よろしいでしょうか。

 

○神野部会長

 野村様、お願いします。

 

○野村亜紀子氏(外部有識者)

 ありがとうございます。

 確かに人数でいくと、グラフにもお示ししたとおり増えているのですけれども、一方で、よく米国の年金制度をめぐる議論などを聞いておりますと、カバレッジあるいは加入率、特に民間セクターということになりますと、必ずしも十分カバレッジが伸びているわけではないという議論を耳にすることが非常に多いという理解でございます。

 要は人口が増えている、労働人口も増えているということで、人数が増えているという部分もあるのではないかと理解しておりまして、あちらでも、それこそ中堅・中小企業を中心に、いかに加入者を増やすかという議論はずっと行われているという理解でおります。

 あと、今日お話しした制度以外にも、私の限られた理解でも、いろいろな制度があるということは認識している状況でございます。ストレートに年金以外の目的のものも含めて資産形成全体を見れば非常に幅広く、ほかにも制度はあるという認識はしております。

 以上です。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 コメントがありますか。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 資料の21ページ、リスク分担の関係で、伊藤委員が御指摘のとおり、DBの合併・分割、事業所の追加・減少について、この資料の一番上ですが、従来型のDBは関係する労組の同意がもちろん必要で、加えて、企業再編のときに給付が見直されて、給付減額になる方がいらっしゃったら、その方々の個別同意もセットになっています。リスク分担もこの点は一緒ですが、掛金変更の場合を想定した超過比率の変動というのを指標にすると、合併等々、企業再編のときに数値が動いてしまうケースがあり得るというところです。

 合併とか分割とか様々なときに、超過比率が変わらないような仕組みを用意しておかなければいけないわけなのですが、このリスク分担には、超過比率を指標にするときに、分割時のところの手当てができていないので、そこはしっかり手当てを併せてやっていかなければいけないと思っています。

 伊藤委員がおっしゃるように、きめ細かく全体を見ていかなければいけませんので、また合併とか分割とか権利義務移転とか事業所の増減について整理をし、関係者と規定を調整させていただきたいと思っています。

 以上です。

 

○神野部会長

 よろしいでしょうか。

 申し訳ありません。予定の時間を過ぎておりますので、本日の審議につきましてはこの辺で終了させていただきます。

 本日は、第1の議題、企業年金のガバナンス等につきましては、多くの生産的な御意見を頂戴いたしました。深く感謝を申し上げる次第でございます。運用面で改善対応が可能なことにつきましては、事務局において適宜、検討、調整をお願いしたいと思います。

 その上で、制度改正につきましては、DB・DCが更により良い制度となるように求めながら、今後、議論を継続していきたいと考えております。

 第2番目の議題であるDCの拠出限度額の見直しにつきましては、事務局の方で御苦労いただいて、議論の整理としてまとめていただきました。これについては、私は特に異論はなかったという印象を受けておりますので、この部会で御了承いただいたというふうにさせていただければと思います。

 DCの拠出限度額の見直しに関しましては、税制改正については、事務局の御努力に深く敬意を表するわけでございますが、要望が認められたということでございますので、周知や準備の期間を確保していただいて、施行につきまして万全を期していただければと思います。

 さらに、本日は国際比較ということで、大変お忙しいところ貴重なお時間を頂戴して、佐野様と野村様に御発表いただきました。本当にありがとうございました。今後とも、諸外国の制度を参照基準にしながら、制度の将来像をここでも継続して検討していきたいと思っておりますので、重要な導きとさせていただければと思っております。

 もう年も押し迫り、新しき年を迎える時期になりましたので、その区切りとして、局長から御挨拶をいただけるということでございます。

 お願いいたします。

 

○高橋年金局長

 本日も大変濃密な御議論をありがとうございました。

 この部会は企業年金・個人年金部会という名称に改組して、第1回の会合が行われましたのが2019年2月でございました。それから18回も大変精力的な御議論をいただきまして、誠にありがとうございました。

 そして、昨年の年末には、幅広い論点につきまして、議論の整理をしていただきまして、それに基づきまして、公的年金・私的年金を合わせた改正法を国会に提出いたしまして、成立を見ることができました。今年の5月に成立いたしました。

 また、法案成立後も、直ちに議論を再開していただきまして、昨年の議論では結論の得られなかった拠出限度額を中心に、幅広く御議論もいただきまして、DCの拠出限度額の算定に当たりましては、DBを一律評価してきたという長年の課題につきまして、一つの考え方を整理していただきまして、それが今般の税制改正にも結びつくことができました。

 また、今日は今後の課題も含めて、議論の整理をまとめていただきました。本日で一応、一つの区切りでございまして、まずは、昨年、今年の法改正と税制をしっかりと万全に施行していかなければいけないと思っておりまして、それに全力を挙げていきたいと思っております。

 また、まだまだ残る課題はございますので、今後さらに公平な制度、充実した制度、そしてそのしっかりとした運営に向けて、引き続き検討、努力をしてまいりたいと思います。

 重ね重ね、部会長はじめ委員の皆様には御礼を申し上げます。

 今年1年、大変ありがとうございました。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、今後の予定等々、連絡事項につきまして、事務局からお願いいたします。

 

○吉田企業年金・個人年金課長

 次回の部会の開催時は、事務局からまた御案内いたしますので、その際はどうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。

 

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、これにて第18回の「企業年金・個人年金部会」を終了させていただきます。

 御多忙の折、御参集くださいましたことに深く感謝するとともに、静寂な内にも幸多い新年をお迎えいただくようにお祈り申し上げております。

 どうもありがとうございました。