第29回 社会保障審議会企業年金・個人年金部会 議事録

日時

令和5年11月13日(月)9:59~11:51

場所

全国都市会館 3F 第1会議室

出席者

森戸部会長

渡邊部会長代理(オンライン)

岩城委員   大江委員   金子委員   小林(由)委員   小林(洋)委員   島村委員   谷内委員   冨樫委員   原田委員   藤澤委員   松田委員

(オブザーバー)

鮫島企業年金連合会理事長

松下国民年金基金連合会理事長

議題

1.加入者にとっての見える化について

2.資産運用立国について

議事

議事内容

○森戸部会長

 皆さん、おはようございます。

 ちょっとだけ早いのですが、皆さんおそろいなので、開始したいと思います。

 ただいまより第29回「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」を開催いたします。

 皆様、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。

 本日ですが、渡邊部会長代理については、オンラインにて御参加いただいております。

 また、山口委員から御欠席との連絡をいただいております。

 それから、参考資料4に名簿がございますが、前回まで委員でいらっしゃいました小林司委員が退任されました。

 後任として、新たに委員に御就任いただいた方について御紹介いたします。

 日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局局長でいらっしゃいます、松田陽作委員です。

○松田委員

 松田です。

 よろしくお願いします。

○森戸部会長

 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えていますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。

 また、前回部会の中で、企業年金連合会から提出予定とありました資料については、第28回「企業年金・個人年金部会」の参考資料2に追加して、ホームページに掲載しております。

 なお、部会への提出資料につきましては、原則として会の前までに御提出いただくようお願いいたします。

 それでは、議事に入らせていただきたいと思いますが、まずは事務局から資料の確認をお願いいたします。

○海老企業年金・個人年金課長

 資料の確認をさせていただきます。

 本日の資料といたしましては、資料1「加入者のための企業年金の見える化」、資料2「資産運用立国について」となります。

 参考資料は1~4まで御用意しておりまして、参考資料1は「企業年金連合会提出資料」です。

 参考資料2~3に関しては、従来出させていただいているものでございます。

 御確認ください。

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 それでは、議題に入りたいと思います。

 カメラの方、いらっしゃいましたら、ここで退室をお願いいたします。

 本日は、議題1「加入者のための企業年金の見える化について」、議題2「資産運用立国について」を議題といたします。

 まずは、事務局から説明をお願いいたします。

○海老企業年金・個人年金課長

 まず、今回の部会では、議題に沿って資料1「企業年金の見える化」、資料2「資産運用立国について」の2種類の資料を御用意させていただいております。

 前回の部会でも御議論いただきました資産運用立国については、前回、10月17日の企業年金・個人年金部会での御議論の後、10月27日に資産運用立国分科会が開催されており、まず、こちらの状況について御紹介させていただければと思います。

 資料2を御覧ください。

 10月27日の第2回「資産運用立国分科会」は、テーマがアセットオーナーシップ改革の方向性ということで議論がなされております。

 厚生労働省からは、橋本年金局長が前回の部会でもお示しした論点を基に御説明するとともに、部会での御議論も資料として御紹介させていただいております。

 資料につきましては、内閣官房のホームページにおいて公開されておりますが、当日の議論については、ホームページで議事要旨が公開されるまでは非公開という扱いになっておりますので、本日は、厚生労働省からの御説明に関する資料についての御紹介とさせていただければと思っております。

 資料2をおめくりいただき、「資料1」と書いてあるページを御覧ください。

 資料の説明に際しまして、橋本年金局長からは、企業年金を含む私的年金制度は、公的年金の上乗せの給付を保障する制度であり、高齢期により豊かな生活を送るための制度として重要な役割を果たしていること。

 こうした役割を最大限に発揮し、企業年金の加入者等の利益を最大化するために、企業年金の運用力の向上等の取組を検討していきたいということ。

 厚生労働省において、企業年金・個人年金部会で、次期制度改正に向けた議論と併せて、資産運用立国に向けた施策の検討が進められていること。

 施策の実施に当たって、企業年金は退職給付の一つであり、その内容について、労使ごとに合意され、決定されるものであること。

 DBごとに成熟度、リスク許容度、人的リソース等が異なりまして、目指すべき運用も異なること。

 DBの運用目標を引き上げた結果、給付の減額など、加入者の不利益につながる事態につながらないように、運用環境悪化のリスクも踏まえて検討する必要があること。

 こういったことを併せて御説明させていただいた上で、こちらの資料の御説明をさせていただいている次第でございます。

 3ページを御覧ください。

 3ページにまとめているのは、DBの「企業年金の改革の方向性」という資料でございます。

 こちらについて、上の枠にありますとおり、老後に向けた家計の資産形成を促進していく上で、アセットオーナーの一つであるDBの役割は重要です。

 一方で、リソース等の不足の課題も指摘されているということで、加入者に対する受託者責任を果たすため、DBについて、以下の取組について検討するということで、柱としては3つ挙げさせていただいております。

 こちらについては、先日の部会でも柱項目立てとして御紹介させていただいているものと内容は同じになりますが、1つ目として「運用力の向上」、2つ目として「共同運用の選択肢の拡大」、3つ目として「加入者のための運用の見える化の充実」ということで、柱を3つ掲げております。

 1つ目の「運用力の向上」に関しましては、考えられる施策の例といたしまして、右側にマル1とありますが、受益者の最善の利益を達成するという観点に立って、規模・特性に応じた運用受託機関の適切な選択や定期的な点検・見直し、より適切な運用に向けた専門性の向上のための取組を施策の例として挙げさせていただいております。

 2つ目の「共同運用の選択肢の拡大」についてですが、マル2にありますとおり、企業年金連合会が実施する共同運用事業の発展や、総合型基金の利用促進による高度化といったものを挙げさせていただいております。

 3つ目の「加入者のための運用の見える化の充実」というところで、右側ですが、マル3、海外の例も参考にしながら、加入者が他社と比較できるよう、資産運用状況に関する情報開示を行うことについて、考えられる施策として挙げさせていただいております。

 4ページは、DCに関してでございます。

 DCに関しては、DCを活用する企業が増加する中で、適切な商品選択が重要だということで、柱を2つ挙げさせていただいております。

 1つ目は「適切な商品選択に向けた制度改善」ということで、右側にありますが、マル1、運営管理機関・DC実施企業・加入者本人の各段階における適切な運用の方法の選択を支援するための取組です。ここで「特に元本確保型商品のみの運用のままとなっている場合など」ということで、例示として挙げさせていただいております。

 2つ目「加入者のための運用の見える化の充実」というところで、マル2になりますが、運営管理機関やDC実施企業が選定した運用方法のラインナップも含めた加入者の資産形成促進に向けた開示の促進について挙げさせていただいております。

 3つ目ですが、5ページになります。

 その他「私的年金の更なる普及促進に向けた取組」ということで、私的年金のさらなる普及促進のために、働きかけが重要だということで、マル1として、関係省庁と連携し、私的年金の広報を推進していくということで、こちらは金融経済教育推進機構が設立される見込みですので、こちらとも協力しながら進めていくことを御説明させていただいております。

 また、マル2として、私的年金の拠出限度額の拡充や手続の簡素化については、昨年の資産所得倍増プラン等を踏まえて、2024年の公的年金の財政検証に合わせて検討を進めていくことを御説明させていただいている次第です。

 6ページから、右方に「資料4」と書いてあるものになりますが、こちらは、前回の企業年金・個人年金部会での主な委員の意見ということで、事務局でまとめさせていただいている資料です。

 こちらについても、資料として提出しております。

 めくっていただいて、7~9ページのそれぞれの柱ごとに、皆様からいただいた御意見についてまとめさせていただいております。

 めくっていただいて「資料3」の10ページ以降に関しては、内閣官房で取りまとめたアセットオーナー関係の基礎資料ということですので、御参考にお目通しいただければと思います。

 また、これらを踏まえて、29ページにありますように、主な論点が事務局から提示されております。

 提示されている内容に関しては、厚生労働省から御説明している論点と同じものになりますが、こちらについて提示されて、それを踏まえて御議論が行われているということです。

 先ほども申し上げましたとおり、内閣官房のホームページに資料が掲載されておりますが、本分科会の委員でもある企業年金連合会の中村理事から資料が提出されておりまして、こちらに関しては、本日の参考資料1として、企業年金連合会様の提出資料ということでつけさせていただいております。

 このほか、各委員からの資料に関しては、ホームページで御確認いただくことが可能となっておりますので、御参照いただければと思います。

 続きまして、これを踏まえまして、資料1について御説明させていただければと思います。

 資料1を御覧ください。

 2ページを見ていただきまして、今回の部会におきまして、資産運用立国とも関連する論点のうち、本日は、加入者にとっての見える化の論点について御議論いただきたく、資料を準備しております。

 DB及びDCの見える化に関しましては、受給者の最善の利益と加入者のために開示を進めていくという観点に立って、これまでの議論とも重複する部分はございますが、加入時から加入期間、退職/受給時といった一連の流れの中で、制度として見える化に位置づけられている点について改善すべき点はないか。

 あるいは、運用上、加入者にとってより分かりやすくという点で見直すべき点はないか。

 あるいは、情報の開示とか提供、周知といった点において気をつけなければいけない点は何か。

 こういった点を踏まえつつ、御議論いただければありがたいと考えております。

 マル2は、先ほどの資産運用立国分科会の資料の中で、見える化に関する議論ということで挙げさせていただいているものになります。

 めくっていただいて、3ページは、前回の部会の見える化の中で、DB・DCそれぞれに皆様から御意見をいただいたものについてまとめさせていただいているものでございます。

 「DBの運用の見える化」に関しては、加入者・受給者のために行うべきものであるといったこと。

 また、見える化を考える上では、誰のためにやるのかといったところを考えることが重要だといったお話。

 あとは、開示する際に、運用という話だけではなくて、財政状況全体も踏まえて判断するべきではないかといったお話。

 あとは、そもそも加入者のためということであれば、将来の受取額の見える化なども踏まえて検討していくべきではないかといったお話。

 こういったことを御意見としていただいていたことかと思います。

 また「DCの見える化」に関しては、制度上、いろいろとビルトインされている部分はございますが、運営管理機関の運用の方法の一覧が公開されているものの、こちらについては、現状では活用がなかなか難しいところで、まだ課題があるのではないかといったお話があったと承知しております。

 これらを踏まえまして、4ページからが論点としてまとめているものになります。

 加入者のための企業年金の見える化ということで、1つ目、資産運用立国に向けた議論も踏まえて、加入者のための見える化の意義とはどういうものか。

 また、企業年金、DB・DCどちらもですが、加入時、加入期間中、退職時/受給時の各フェーズに応じて、情報提供や周知はどういったことを考えていくべきなのか。

 あわせまして、いわゆる選択制のDC・選択制のDBと言われるものに関して、加入時の周知の在り方を考えていく必要があるのではないかということで、こちらについても併せて御議論いただきたいという形で整理しております。

 4ページの下の表は、DB・DCそれぞれに加入時、加入期間時、退職時、現状でやっていること、考えられる論点について少し整理させていただいているものになります。

 5ページ以降が、論点ということでまとめているものになりますが、まず、5ページは、DBの見える化に関する論点ということでまとめているものです。

 1つ目「加入時」に関してですが、加入時は現在、DBの制度としての周知義務はありませんが、加入時に周知を義務づけるべき事項があるかどうか。

 また、いわゆる選択制のDBについて、選択加入時の周知の在り方をどのように考えていくのかといったこと。

 こういったことが論点になるかと考えています。

 また、5ページの真ん中「加入期間中」について、制度上は加入者に業務概況等の周知は義務づけられておりますが、さらに周知・開示するべき事項があるかどうか。

 あるいは、分かりやすさの観点から、どういったことに取り組むべきか。

 また、各DBの形態、給付設計などに応じて、どのような取組をそれぞれ求めていくべきなのかといったこと。

 あとは、運用状況等の開示に関してですが、加入者にとってより適切な運用方法、あるいは運用受託機関が選択されるために、情報の開示を行っていくべき事項は何か。

 情報開示の対象事項はどういうものを考えるべきなのか。

 あと、加入者が他社と比較することの意義とか効果はどういうものか。

 あとは、他社との比較という観点も踏まえて、情報開示の主体はどうあるべきで、手法は何によるべきかといったこと。

 この辺りが論点になってこようかと思います。

 5ページの一番下「退職時/受給時」に関してですが、退職時/受給時において周知すべき事項、実施すべき事項といった取組はどういったものが考えられるか。

 この辺り全体がDBの論点ということで整理させていただいているものです。

 めくっていただいて、6ページは、企業型DCの見える化に関してです。

 企業型DCの見える化に関しては、加入時について、DBと少し異なり、DCにおいては、加入時の制度理解と商品選択は事業主、あるいは運管においてやらなければいけないということで、制度上ビルトインされている部分でありますが、情報の開示、情報の提供、あるいは投資教育についてさらに行っていくべきこと、あるいはさらに取り組んでいくべきことはどういったことが考えられるかといったことが論点として挙げられるかと考えております。

 また、いわゆる選択制のDCについても、制度加入時の周知の在り方をどのように考えていくのか。

 こういったところも論点になってくるかと考えております。

 また、6ページの真ん中「加入期間中」ですが、DCに関しては、RKによって個人型の管理資産額について個人別に通知するルールが年に1回ありますが、こちらについて、通知すべき事項とか通知の在り方、さらに取り組むべきことがないかといったこと。

 あとは、加入者が適切に商品を選んでいくといった観点から、周知するべきことはどういったものがあるか。

 あと、将来の受給額の推計とか加入者への周知の取組はどのように進めていくべきなのかといったことが論点としてあろうかと思います。

 一番下の「退職時/受給時」に関してです。

 退職時/受給時、DCに関しては、転職時の移換手続を適切に行うために、きちんと事業主が周知しなければいけないということで、ルール化されている部分はありますが、さらに周知すべき事項、実施すべき取組は何があるのか。

 あとは、受給時、裁定時に、きちんと受給期間中の運用等について周知すべき事項、実施すべき取組はどういうものがあるのかといったことが論点になってこようかと考えております。

 ここまでが論点について整理させていただいているもので、7ページ以降に関しては、それぞれの論点に関わる資料を整理させていただいているものです。

 まず、めくっていただいて8ページ、DBに関してです。

 DBの見える化に関する加入時の周知ということで、DBは、法律上は制度加入時の周知義務は位置づけられておりません。

 一方で、加入後は、少なくとも年に1回、事業概況の周知が行われることになっております。

 また、労働条件に該当するということであれば、そこは労働者に明示する必要があるというルールになっております。

 令和6年4月からのモデル労働条件通知書においては、企業年金の有無も「その他」の欄に記載されるというルールになってくるということでございます。

 また、9ページになりますが、事業主は、DBの業務概況を加入者に周知しなければいけないとされています。

 周知のやり方としては、多くの事業主さんが、各受託機関が作られた周知事項も網羅したひな形を活用しながら周知されている。

 こちらについては、10ページ以降に参考で挙げておりますが、図表を用いた資料とか、補足説明を加えるなど、様々な工夫が見られますというところです。

 周知の方法に関しては、9ページの下にもあるように、個別の周知が義務づけられているものではないので、DB制度の業務概況について、各実施事業所のイントラネットに掲載したり、事業所内の掲示板に掲示する方法等で実施されていると承知しております。

 10ページ目以降は、受託機関のひな形の例で、10ページは、給付種類ごとにこんな感じで見せていますということになります。

 11ページに関しては、加入者の数とか給付の種類、受給権者の数といったものについての整理の表です。

 12ページは、積立金とか責任準備金の比較、積立金の概況の資料となります。

 13ページですが、積立金の運用収益とか運用損失、資産構成割合の概況に関して、例えば「例1」にあるように、グラフを使って解説していたり、あるいは「例2」にあるように、個別の機関ごとに資産残高などを公開しているような例もあると承知しております。

 14ページになりますが、運用の基本方針の概要とか、その他必要な事項について、簡潔にまとめて業務報告、周知をされているということでございます。

 めくっていただいて、15ページになりますが、資産運用ガイドラインの中でも、加入者利益に立った企業運営がなされるために、ガイドラインも改訂いたしまして、加入者のDB制度への関心・理解を高める観点から、図表等を用いて分かりやすく開示していくこと。

 あと、一番下に下線を引いてございますが、下から2つ目「加入者の関心・理解を深めるため、必要に応じて図表を用いる等加入者へわかりやすく開示するための工夫を講ずることが望ましい」とされています。

 また、積立水準等について、ほかのDBと比較することなども考えられるといったこと。

 こういったことも含めて、現在、運用ガイドラインの中に盛り込まれているところでございます。

 実際に図表を使って、どんな感じで工夫されているのかというのが16ページの例になります。

 どうしても制度自体が分かりにくい部分もありますが、一応、皆様棒グラフを使ってみたり、図式化されたりしながら解説を加えていただいている例があると承知しております。

 そのほかというところで、17ページになりますが、所定の周知事項以外にも、DBにおける将来の給付額について、退職金とかその他の企業年金も含めて見える化を行い、個人別に通知されている例もあると承知しております。

 18ページに関しては、DBの事業報告ということで、こちらは、厚生労働省に対して事業報告として年に1回提出される事項となりまして、こちらについては、前回も資料としてお出ししていますが、一般に公表することを想定されている項目ではなく、現状は我々に提出いただいているものになります。

 19ページ、20ページになりますが、DBの制度を見る上で、運用に当たる全体像が少し分かりにくいところもありますので、資料として追加させていただいております。

 企業年金、DBに関しては基金型、規約型があるということと、実際に信託会社、生命保険会社などに委託しながら運用いただき、受給権者に給付する仕組みになっているということ。

 また、20ページにありますが、年金のこの仕組みの中で、実際に複数の金融機関を取りまとめて、拠出金の受入れとか配分、給付の支払い、取りまとめを行う会社として総幹事会社がありますということ。

 あと、21ページにありますように、総幹事会社については、現状、事業報告の中で報告いただく形の様式になっているということでございます。

 22ページになりますが「企業年金の運用に係る情報開示の日米比較」というところで、情報開示の論点が出る際に、海外での開示について話題になるかと思います。

 参考に、米国のルールと比較させていただいています。

 米国では、ERISA法に基づいて、企業年金の運用状況を含む年次報告書が労働省のウェブサイトで公開されることになっております。

 表の左側は米国になりますが、見ていただきますと分かるとおり、ホームページ上で公開される形になっていて、加入者が100人未満の場合は、極めて簡素な内容で可ということで、人数に応じて少し義務が異なる形になっているところです。

 また、開示の内容についても、左側を見ていただきますと、当該年度の運用利回りとか資産構成の内容、実効金利・積立水準といったものが開示の内容となっておりますが、資産構成割合に関しては、加入者が1,000人以上の場合のみということで、こちらについても加入者条件に応じて報告が少し簡素化されているルールになっているところでございます。

 右側は日本のものになりますが、日本に関しては、報告されている内容はそこまで大きく相違はないかと思うのですが、情報公開が前提になっていないのが今のルールでございます。

 23ページを見ていただきまして、退職時になりますが、退職時に関する加入者の情報提供となりますが、こちらについては、脱退一時金の移換の申出の期限などについて説明しなさいということが義務づけられている状況です。

 24ページを見ていただきますと、やり方についてはDBさんごとに異なると思うのですが、こういう形でチェックボックスを使って受け取り方法を選択しながら案内を進めていくような例があると承知しております。

 ここまでがDBに関する資料になります。

 これ以降の資料がDCに関するものになります。

 DCの見える化というところで、26ページを見ていただきますと、DCの場合は、加入者自身で運用の指図をしていただく必要がございますので、まず、事業主は、資産の運用に関する基礎的な資料とか、その他必要な措置を継続的に講じなければならないということで、加入時から継続時に関して、事業者にかかる責務が制度上位置づけられているところでございます。

 27ページで、運営管理機関に関しても、必要な情報をきちんと加入者に提供しなさいということ。

 また、運営管理機関が選定した運用の方法に関しては、インターネットで公表するルールになっているのが今の制度上の立てつけでございます。

 28ページを見ていただきますと、これも前回の資料でお出ししているものと同じですが、運営管理機関ごとに運用の方法の一覧などが異なっているところでございます。

 29ページからは、加入期間中、受給期間中の見える化です。

 DC法においても、DBと同じように、厚生労働省に対する各年度の報告書の義務づけが存在しております。

 また、加入者に対して、運用の指図に必要な情報を提供しなければならないというルールになっております。

 30ページを見ていただきまして、企業型のRK、記録関連の運営管理機関は、少なくとも毎年1回、個人宛てに資産額を通知しなければいけないということで、項目としては、1~13にも挙がっているとおり、これらの項目について、加入者に通知するというルールになっているところです。

 31ページに関しては、定期的な報告の例ということで、項目としてはかなり多いので、文字の文量とか紙面は少し多いものになっています。他にも、ホームページなどでも見られるのですが、なかなかアクセスしにくいケースもあると承知しております。

 また、制度改正に関連してですが、32ページになります。

 2022年10月から、企業年金に入られている方に関しても、原則的にiDeCoに加入することが可能になっておりますが、iDeCoの拠出可能見込額に関しては、ここに出ているように、各RKの加入者専用サイトでそれぞれ見ることができる仕組みになっています。

 33ページ以降は、継続投資教育の資料になります。

 こちらは、前回も御説明しておりますので、割愛させていただきます。

 飛んでいただいて、37ページになりますが、退職時の資格喪失者の加入者への情報提供ということで、こちらについては、必ず以下について説明しなさいというルールになっております。

 特に38ページにありますとおり、6か月を経過しますと自動移換になってしまうところもありますので、こちらについてきちんと説明するというルールになっています。

 めくっていただいて、40ページになりますが、企業年金連合会さんのほうで、ウェブサイトでポータビリティーの全体像とか選択肢、あるいは資格喪失時の内容についていろいろと御説明いただいていると承知しております。

 また、41ページになりますが、定年退職者に対しても、老齢給付金の請求手続について十分に説明を行いましょうと位置づけられていて、42ページになりますが、実際に給付に当たっては、裁定手続が必要になってくるということで、いろいろと書類を出していただいて、給付決定を受けていただく必要があるルールになっています。

 ここまでがDCに関するものです。

 43ページ以降は、いわゆる選択制のDBとDCに関してですが、44ページに記載のある、いわゆる選択制のDB・DCは、従業員が加入するかどうか選択できるような仕組みとなっています。

 加入することを選択した方に関しては、企業年金の事業主掛金が拠出される。

 加入しないことを選択した方に関しては、その分の相当額が給与として支払われるルールになっているところです。

 パターンとしては大きく2つあると承知していて、既存の給与を原資に手当を創設する形、あるいは既存の給与ではなくて、新しく原資を持ってきて創設するパターンです。

 これ自体は「いわゆる」とつけているとおり、厚生労働省として何らか制度として位置づけているものではございませんので、実際の現場の運用上、給与と事業主掛金との選択が行われるようなものが存在しているものでございます。

 課題といたしましては、45ページの一番上にあるとおり、事業主掛金は社会保険料の対象とならないところになりますので、実際にどちらを選ばれるかによって社会保険料の算定の対象額とかが変わってくることになり、将来の公的年金の給付額が下がる影響があるといったことについても留意が必要であるということになります。

 一方で、企業型DCのマッチング、あるいはiDeCoに関しては、給与として支給されたものから加入者掛金を出すという仕組みになりますので、掛金相当額についても社会保険料の算定対象となるということで、そこは扱いが違うということになります。

 46ページにありますが、こちらに関しては、前回の制度改正の際にも、ガバナンスの確保という観点で議論になっています。

 特にこのときは選択型、あるいは選択制と言われていたDCについてというところで、メリットのみが強調されて、制度が十分に理解されていないのではないかといったところが論点として挙げられていたところでございます。

 こちらについて、その際の御議論も踏まえて、47ページになりますが、従業員への説明事項ということで、いわゆる選択制DBについて、DCに関しては、法令解釈通知で事業主が従業員に対して社会保険・雇用保険等の給付額に影響があるといったことも説明しなさいということがルール化されています。

 一方でDBに関しては、明文化されているものがないのが現状でございます。

 最後に、見える化についてということで、御参考ですが「諸外国における『見える化』の動向」ということで、49ページは、アメリカの企業年金の情報開示についての資料をもう少し詳しくまとめさせていただいているものでございます。

 上にありますとおり、年に1回、必ずForm5500の報告義務を事業主は負っていることになります。

 下の枠にありますとおり、情報開示の政策的意図というところで、米国労働省にヒアリングをさせていただいたところ、この内容は一般に公開されています。

 その趣旨は、アメリカという国が秘匿すべき内容以外は公表することを基本とするという文化的背景によるものだということです。

 米国労働省が確認しているのは、あくまでもDB等の財政の健全性の確認のために報告を受けているといった趣旨で受け取っているところでございました。

 公表されている情報に関しては、真ん中のポツにもありますとおり、民間の活動として分析とか年金プランの格付、研究者の分析などが行われており、この辺りも踏まえつつ、一番下になりますが、米国は訴訟社会というところもありますので、受託機関の選定とかDCの商品の選択に関して、企業に対して訴訟が頻繁に提起されている状況と聞いております。

 結果的に、訴訟が行われることで、間接的に企業が受託者責任に基づく運用を行うことへの緊張感を生んでいることがあるのではないかと米国の大手資産運用会社のヒアリングで言っていたところでございます。こちらについても、御参考にしていただければと思います。

 資料の説明については、以上でございます。

 ありがとうございます。

○森戸部会長

 ありがとうございました。

 それでは、議題1、議題2について議論に入ります。

 本日の議題について、御議論いただきたい点は事務局資料の中でも示されておりましたが、議題2は主に報告事項になりますので、議題1に沿って全体をまとめて御議論いただきたいと思います。

 それでは、委員の皆様から御質問、御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 では、谷内委員、お願いします。

○谷内委員

 谷内です。

 私からは、議題1の加入者のための運用の見える化につきまして、DB、DC、全体の3点につきコメントします。

 まず、1点目のDBの運用の見える化についてですが、資料1の9~18ページで示されたとおり、DBについては、情報開示すべき事項として必要なものはほぼ網羅されていると私は認識しております。

 また、資料1の22ページにもあるとおり、開示事項は米国と比較しても遜色ないものだと考えております。この件は、前回の部会でも述べております。

 さらに、資料1の3ページにもあるとおり、企業・基金から加入者・受給者に対する情報開示は既になされております。よって、DBの資産運用に問題があるから情報開示を進めるのではなく、現行の取組の延長線上で情報開示を進めるのは、やぶさかではないと考えております。

 それでは、具体的にどうやって情報開示を進めるかですが、DBの場合、例えば企業年金を実施している企業、特に上場企業等に対して財務諸表に企業年金に関する情報の開示を義務づけるという方法もあります。また、DBの決算報告書や事業報告書の提出を受け付けている厚生労働省なりが米国の仕組みに倣って集計・開示するという方法もあるかと考えます。

 あわせて、DBでは専門的な用語も多く分かりにくい面がありますので、今後設立される予定の金融経済教育推進機構が、DBの開示情報の見方みたいなものを補足的に周知・広報するというやり方があると考えます。とりわけ、DBでは予定利率の高低だけを比較しても全く意味がないという点も含めてきちんと説明すべきと考えます。

 2点目は、DCの運用の見える化です。私自身は、DCについても、必要な情報開示は概ね手当てされていると考えております。

 ただし、DCの場合、情報開示の対象が個人、消費者ですので、DBに比べると分かりやすさや見やすさの工夫がより必要と考えます。

 また、DCで情報開示というと、ともすると資産運用に偏っていますが、これ以外にも、退職時の手続きや受給時に関する情報開示も今後充実させる必要があると考えます。DCというと、資産運用は自己責任というところばかり取り上げられますが、実は退職時や受給時も自己責任が求められるのがDC制度の本質です。資産運用は、自己責任で意思決定を行う必要があるがゆえに投資教育による加入者のサポートが要請されていますが、同様のサポートを退職時や受給時の情報開示でも行う必要があると考えます。

 そして、退職時や受給時の加入者への情報提供についても、金融経済教育推進機構の仕組みを活用することが考えられます。

 最後に、見える化全体の話です。今回、資料1の議題で用いられている「見える化」」は、これはどちらかというと「情報開示」ではないかと私は考えます。

 一方で、年金をめぐる近年の議論で使用されている「見える化」とは、公的年金シミュレーターのように、受給時の意思決定を支援するための仕組みのことを意味すると思います。公的年金だけでなく私的年金の分野でも、例えばイギリスでは年金ダッシュボードの開発が進められていますが、中長期的には、日本においても公的年金や私的年金などあらゆる老後資産形成手段を網羅した年金ダッシュボードに類した仕組みの構築が中長期的には必要だと考えます。

 私からは、以上3点です。

○森戸部会長

 ありがとうございました。

 3点、DBとDCと全体と全部網羅していただいて、おっしゃったように、項目的には一応開示されているのではないかということでした。ただ、この先、どのように、どこに広げていくかという問題があるとの御意見でした。

 それから、イギリスのダッシュボードなども参考になるのではないかということです。

 既に前にも伺ったことがありますが、貴重な御意見だったと思います。

 ありがとうございました。

 大江委員、お願いします。

○大江委員

 ありがとうございます。

 私からは、確定拠出年金を中心にコメントさせていただきます。

 確定拠出年金についての見える化は、先ほど谷内委員のお話もありましたが、加入者が運用し、年金資産をつくって受け取っていくところまでを達成することが目的です。開示は、見えるための工夫をし、それによって個人が十分に見えることになって、個人が分かって、行動を取るという段階があるのだと思っています。

 ですから、開示は情報提供した、という事実がゴールではなくて、事業主に行っていただくにしても、加入者に届いて、その情報が活用されるように十分に工夫されていなければ、見える化されたとは言えないのではないかと考えます。

 そういった観点から、まず、加入者向けについて3点申し述べます。

 1つ目は、資料2の23ページで御紹介されている、日立グループさんの加入者にとって分かりやすい、選択しやすい商品の絞り込み。これは、私は見える化の好事例だと思います。 商品数を絞ったことによって、商品を選択するために、個人が知っておくべきことがシンプルになって、シンプルになったからこそ、加入者の方に分かるように届けることができるということかと思います。結果、事業主として教育の責任が果たせて、加入者は商品選択という運用行動を取ることができるということかと思います。

 2つ目は、逆に加入期間中の教育として、制度とか商品に関する情報をや動画でイントラとかネット上に掲載しただけでは、関心の高い方以外は見ませんので、見える化されたとは言えないと思います。継続教育について、事業主には、関心の低い方にも届いているのかというあたりを意識して、届くように取組していく必要があろうかと思います。

 それから、3つ目として、資料1の32ページに画面見本がある、iDeCoの拠出可能見込額の表示ですが、これは、加入者サイトに入ってから何クリックもしないと届かない画面だと認識しております。したがって、表示はされているけれども、見える化はされていないと思います。

 iDeCoの普及の促進の観点から言えば、ねんきん定期便とかマイナポータルの年金ページ、先ほどの谷内委員のお話に通じますが、年金ダッシュボードと言われるような、公的年金の情報と一緒に、かつ、ユニバーサルな形で見える化することが必要ではないかと思います。そうすれば、個人をサポートするファイナンシャルプランナーとか運営管理機関のコールセンターも、同じ書面の同じ場所に加入手続きに必要な情報が載っているので、これを案内できるという利点もあろうかと思います。今後の取組として、ぜひ前向きに検討いただきたいと思います。

 すみません。3点と言ったのですが、もう一つ、受け取りに関して述べさせていただきます。

 先ほどの資料1の37ページの確定拠出年金法施行令に書いてあったと思ったのですが、脱退一時金という選択について、あまり徹底されていないのではないかと思います。自動移換を防ぎ、0円での移換というようなことを防ぐためにも、この辺りは必要かと思いますし、60歳到達のときには、受け取りの方法、その選択肢、手続といった情報を事業主から徹底していただく必要はあろうかと思います。

 次に、事業主向けの見える化について、2点申し上げたいと思います。

 事業主によい制度運営をしていただきたいということで、弱小ながらエクセレントカンパニーという表彰活動を行っております。微力でして、全国津々浦々の事業主さんに好事例として知っていただき活用いただくことにはなかなか至っておりません。

 現在、厚生労働省さんとか企業年金連合会さんには後援という形でお力添えをいただいてはいるのですが、もう少し現場に近い地方厚生局さんとか商工会議所さん、今後創設される金融経済教育推進機構とも連携して、できれば継続教育実施の参考として、本当に届く形の取組にしていければと思います。さらに、人的資本向上の流れの中で、開示の動きにもつなげていく、それから、採用というところで、いい取組だと評価していただけるように持っていくということで、よい取組を広げていくことができればと思っております。

 最後に、これは事務局への質問になるのですが、昨年からDCの制度運営について、5年に1回のヒアリングを開始されているかと思います。

 この結果については、まだ現時点では開示されていないと思うのですが、これについて、1年間で把握された情報を今後、どのように開示して、施策として生かそうとされているのか、何かお考えがあれば、お聞かせいただければと思います。

 最後に、選択制についてです。新たに気になっている点は、見える化以前に、拠出限度額がないDBにおいて、オーナーの節税対策として、オーナーだけが非常に高い掛金という使われ方をしている例があると聞き及んでおります。脱税の片棒を担ぐような変な使われ方は適切ではないと思いますので、こちらは何らかの対策を講じるべきかと思います。

 長くなりましたが、以上です。

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 また全般的にいろいろと御指摘いただいたかと思います。

 特にDCの開示の在り方はどうあるべきかということで、非常に現場に即した御意見をいただけたかと思います。

 最後のDBの選択制の話も、アメリカの規制は、ERISA法というか、企業年金法の規制は、もともと不当な税逃れを防ぐためという趣旨もあったと思っていて、日本はあまりそういうものを考えなくていいですねみたいな話をしていたのですが、もしかしたらそういう話も少し関わってくるのかなと思いました。

 事務局に1点質問がありましたので、事務局、お願いいたします。

○海老企業年金・個人年金課長

 御質問ありがとうございます。

 DCに関しては、少し段階を分けてというか、何回かに分けて我々のほうで今ヒアリングを進めているところですが、いろいろとデータとかがたまってきたところで、我々で内容を分析して、皆様に必要な情報をお届けできればと思っております。

 現状では、こういうタイミングでというのはまだお約束できるものはないのですが、きちんと検討して開示せよというお話かとは思いますので、その辺りも含めて検討したいと思います。

○大江委員

 結果が集まってみて、聞く項目はこれでよかったのか、と気づく点もあろうかと思いまして申し上げました。進めながら改善し、いい形にできるといいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

○海老企業年金・個人年金課長

 ありがとうございます。

○森戸部会長

 事務局にも情報開示を迫る御意見ということですね。

 ありがとうございました。

 では、小林由紀子委員、お願いします。

○小林(由)委員

 御説明ありがとうございました。

 私からは、初めに、見える化を考える際の基本スタンスについて少し申し上げたいと思います。

 今後の検討に当たっては、改めて誰のための何を目的とした見える化なのかをきちんと押さえた上で議論する必要があると考えております。

 前回の部会でも申し上げましたが、企業年金の見える化は、加入者、受給権者のために行うものであり、今回の検討も、資料のタイトルのとおり、加入者のための見える化であると承知しております。その軸がぶれないように、いま一度認識をそろえた上で論点をクリアにし、対応いただきたいと思います。

 その上で、以下、DB・DCそれぞれの見える化について、気になる点と意見を幾つか申し上げます。

 まず、DBの見える化についてです。

 加入者のための運用の見える化の充実ということで、加入者が他社と比較できるよう、資産運用状況に関する情報を開示するという御提案の趣旨ですが、これについては、正直、いま一つ腑に落ちないところがございます。

 DB年金の給付の在り方や積立計画は、各企業の人事・報酬戦略を踏まえて、各社労使の合意に基づいて決定されるものです。それぞれの制度の前提や運営方針、状況も異なる中で、加入者にとって真に必要、有益な情報は何なのか、他社との比較を行う目的は何なのかを適切に整理した上で、開示の是非と要否を検討する必要があると考えます。

 具体的には、例えば年金資産の積立状況など、給付を賄うための財源が十分かどうかという情報は、相対的に他社比較も容易で、加入者にとっても有益で分かりやすいと思われます。一方で、その財源を準備する方法、すなわち掛金拠出や資産の運用に関しては、比較可能性の問題に加えて、加入者にとっての必要性、有用性、さらには適正な理解の可否といった観点で、他社比較を行うこと自体に違和感を覚えざるを得ません。

 なお、仮に各制度の財政状況について見える化を行うとした場合でも、個別制度ごとの情報開示ではなく、例えば厚生労働省さんにおいて適切に統計処理をされるなど、配慮が必要と考えておりますので、併せて申し上げておきたいと思います。

 もう一点、DBの見える化についてですが、資料1の4ページに記載があります将来の給付の見える化については、一律的な義務づけ等は行うべきではないと考えます。

 将来の給付の見える化を実現するためには、数理計算等の追加対応コスト、工数の発生が不可避であり、実務面での課題も多いと認識しております。実施事業主に過度な負担増を求めることは、制度の普及・拡大を阻害するばかりでなく、足元で既に起きているDB年金離れをさらに加速させることにもつながりかねないことを踏まえた上で検討すべきと考えます。

 最後に、DCの見える化についてです。

 運用商品の他社比較や見直しの必要性に関しては、当部会でもしばしば問題提起されており、DCの運用商品の比較可能性を高めることは、制度の実施事業主である企業にとっても重要な課題と認識しています。

 他社比較については、情報を持ち合わせていない実施事業主が個別に対応を行うのではなくて、運用商品の選定責任を負っている運営管理機関が主体となって対応すべきものと考えております。

 ちなみに、本年4月に金融庁から発出された「資産運用業高度化プログレスレポート2023」においても、運営管理機関の評価と比較可能性の向上という文脈で、運営管理機関各社が自主的に開示を行うことが望ましい旨が記載されています。そうした指摘も踏まえて、今後の議論を進めていただきたいと思います。

 私からは以上です。

○森戸部会長

 ありがとうございました。

 見える化の話は、まさに結局、事業主、企業年金の側に一定の負担になる話ですから、当然、小林委員もおっしゃったように、そんな面倒くさいことがあるのだったら企業年金などやめてしまう、となっては困るわけです。ですから、現場の御意見といいますか、事業主サイドがどのように思うかというのは非常に重要だと思います。

 そういう中で、今も加入者、受給者のためという軸をぶらさずやっていくにはどうしたらいいかということで、非常に貴重な御指摘をいただいたと思います。

 まさに各社の人事戦略とか報酬戦略、労働条件を開示させるような話なのだから、それは慎重にいかなくてはいけない。

 ただ、その中でも、こういう項目なら考えられるが、こういうのはちょっとと、かなり具体的に御指摘をいただいたので、今後の政策を考える上で、非常に貴重な御意見だったと思います。

 どうもありがとうございました。

 では、金子委員、お願いします。

○金子委員

 金子でございます。

 私からは4点で、ちょっと長くなるのですが、意見を申し上げたいと思います。

 必ずしも資料1の4~6ページ目の「本日の論点」に記載されているような求めに沿った発言でないものも含むのですが、お許しいただきたいと思います。

 まず、DBについての意見を述べます。

 資産運用立国分科会から問いかけられているのは、加入者にとって適切な運用方法や運用受託機関が選択されるためには、どうすべきかということだと思っております。

 私は、この問題設定自身がおかしいと思っておりまして、ましてや運用の見える化や情報開示に解を求めてもあまり意味がないのではないのかなと感じています。

 なぜならば、仮に加入者にとって必ずしも適切な運用方法や運用受託機関が選択されていないDBがあったとしても、加入者から見れば、DBが適切な運用方法を選択している分だけ、多くの負担を事業者が負っているだけで、加入者が不利益を被るわけではないからです。

 そういう問題設定ではなく、DBの将来の給付を増やしていくためにはどうすべきかというものだったら、問題設定としては理解できます。

 その場合、企業によっては、掛金拠出を増やすことによって対応しようとするところもあるかもしれませんし、あるいは別の企業では、運用の効率化によって解決を図ろうとするところもあるかもしれません。

 資産運用立国を目指す立場からすると、運用の効率化によって将来の給付を増やそうという企業の参考となるように、例えばグッドプラクティスを紹介するなどの取組を考えようとするなど、発想の切替えができるのではないのかなと思っております。

 次に、DCについてなのですが、これも資産運用立国分科会から問いかけられているのは、DCの運用において、加入者による適切な商品選択がなされるような改善はできないかということだと思います。

 この点に関しても、見える化や情報開示に限定して解を求めても、資産運用立国分科会が期待しているような効果は恐らく得られないのではないかと思っております。

 効果的な解を例えば今年5月と6月に行った関係団体からのヒアリングで挙げられている意見の中から求めるとすれば、指定運用方法について、原則として元本確保型以外の資産を基本とすることや、運営管理機関が加入者に対して個別の投資アドバイスを行うようにすること、あるいは受け取った老齢給付金を運用し、または年金として受け取りながら資産運用を継続することの重要性が理解されるような投資教育を実施すること等が有力な案になるのではないかと思っています。

 3つ目は、選択制のDBとDCについての意見です。

 資料1の44ページ目で説明されているように、既存の給与等を原資に手当を新設するケースなど、労働条件の不利益変更に当たる場合などでは、事業主に丁寧な説明を求めるべきであり、当局としては、このようなケースを牽制すべきであると思っております。

 ただし、このケースを我々が労働条件の不利益変更と断言するのは、社会保険とか雇用保険に高い信頼性を認めているからだと思っております。

 昨今のように、公的年金の信頼性に対して懐疑的な風潮もあることを考えますと、事業主が丁寧に説明したところで、従業員自身が不利益変更とは受け止めない可能性もあるのではないかと思っております。事業主に丁寧な説明を求める一方で、公的年金の信頼性を高めるという視点も非常に重要だと指摘しておきたいと思います。

 4つ目は「本日の論点」に記載されている求めに沿ったような発言なのですが、年金の見える化について議論する際に使われる「周知」という言葉の意味をよくよく考える必要があるのではないかと思っております。

 例えば今回の資料1も「周知」という言葉が非常に多く登場しております。

 数えてみたのですが「本日の論点」が説明されている4~6ページ目のたった3ページだけで18回登場しておりました。

 資料全体ではどれぐらいだと思いますか。49回「周知」が登場しています。

 「周知」という言葉は、日常用語としては、人の間に広く知られている状態にすることだと思うのですが、法令等では、人が知ろうと思えば知り得る状態にすることを指す場合もあるのかなと思っております。どちらの「周知」なのか、意識的に区別して考える必要があると思っております。

 例えば加入者のためのDBの見える化についてですが、加入者個々人にとっては、重要度の高い情報は将来の給付額であって、これに関しては、職場で広く知れ渡る状態にする必要があるのではないかと感じております。モデルケースの給付だけではなくて、加入者個々人の将来の給付額が本当であれば求められるのかなと思っておりますので、業務概況で示されているようなモデルケースを超えた個人のケースの情報提供が望まれるのだろうと思っております。

 これ以外のDBの情報開示については、周知といっても、加入者が知ろうと思えば知り得る程度の状態にすることで十分なものが多いのではないかと思っています。

 ただ、もっとも、これは運用に関して事業主がリスクを負ってくれ、加入者がリスクを負わない最も一般的なDBのケースで当てはまるのであって、DBの中でも、形態によっては職場で広く知れ渡る状態になるべく近づけるようなことが求められるものもあるのではないかと思います。そのような場合においては、職場で資料を開示するにとどまらず、加入者にその内容がどれだけ知れ渡っているかにも目配せする必要があるのではないかと感じていました。

 以上でございます。

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 非常に貴重な御意見をいただきました。

 最初の2点は、確かに分科会の問いかけに答えるのは、見える化だけではないというか、むしろ例えばデフォルトファンドの話とか、ほかの解があり得るし、それは既に実はこの部会でも議論したり、意見が出ていることではないかという御指摘は非常にもっともだと思いました。

 確かに、別に見える化だけで答えなくてはいけないわけではないでしょうし、もちろん、ほかのこともやらないということではないと思いますので、併せて議論していければと思います。

 周知の話は、おっしゃるとおり、私の専門にも関わるのですが、就業規則などは周知しろということになっていますが、要は、全労働者がそれを読んで理解していなければいけないという意味ではなくて、まさに見たければ見たい状態にすればいいので、実際に見なくても法的な責任は問われないわけです。

 だから、先ほど大江さんが言ったような見える化とか、本当にちゃんと開示しろというのは、そういう周知レベルでは足りないのではないかという話だと思いますので、金子委員がおっしゃったこともまさにそのとおりだと思っています。いわゆる法令的にいう周知でいい話なのか、そうではなくて、もっと違う形での見える化というか、開示が求められているのかということも考えて議論しなくてはいけないと思いました。

 ありがとうございました。

 49回の「周知」は、どうせならもう一個使っておけば切りがよかったのですけれどもね。

島村委員、お願いします。

○島村委員

 御説明ありがとうございます。

 これまでの委員の方の御発言と繰り返しになる部分があるかもしれず、恐縮なのですが、私から幾つか言わせていただければと思います。

 まず、DB、確定給付年金について、ほかの企業の情報を開示して、制度比較をできるようにすることの意義については、私も疑問を持ちました。約束してもらった給付さえ将来支給されれば加入者としてはよいわけで、他社の状況を知らせることの意義はどこにあるのかと思いました。

 将来、ちゃんと支払われるように、日頃から運用担当者がちゃんと運用していることを定期的に加入者に知らせて、加入者の側もそれをチェックするというか、監視できるような仕組みを整えることは意味があると思うのですが、他社との制度の比較にはもう少し慎重になる必要があるかと思います。

 事業主の側が開示しなくてはいけない情報を変に増やすことになり過ぎると、そんな迷惑な制度だったらやめようという事業主も出てきかねませんので、その点も考慮した上で、慎重に議論する必要があるのではないかと思いました。

 次に、確定給付年金でも、確定拠出年金でも受け取りの局面、資産取崩しの面についての情報開示は大事かと思いますので、税制に関する情報も含めて、周知の強化が必要かと思います。

 最後に、選択制DCとか選択制DBについての議論についてですが、企業年金を選ぶのか、給与を選ぶのかによって、社会保険料や税金の算定基礎に入るかどうかとか、将来の給付で何が増えるのかが随分変わります。何がプラスで、何がマイナスかも含めて議論し得るのだとは思いますが、しっかりと説明を受けて、正確に制度を理解した上で、各労働者が選択できているのか、疑問に思いました。

 現状では、DCの法令解釈通知にしか説明に関する記載はないようですが、DBについても規定して、各労働者がしっかりと理解できるように環境を整える必要があるかと思います。

 また、この問題は、刑罰規定によって担保されている労働基準法第15条の適用の範囲の問題にも関わるものであり、賃金か、企業年金かでどのような違いが生じるのか、事業主側からしっかりと説明される必要があるかと思います。

 この問題に関連して、選択制の仕組みを導入する企業は増えている様子ではあるけれども、その企業数とかをデータとして把握できていない現状については問題なのではないかと思っております。

 選択制は複雑な仕組みで、労働者にとっては分かりづらいので、ちゃんと正確な知識を得た上で選択できる環境の整備が大事かと思うのですが、そもそもどの職場で選択制が取られているかを把握できていないとすると、行政としても選択環境をよりよく整備するために、どの企業に対して働きかけや後押しとかをするかというのもそもそも分からないというところにもつながりかねないので、改善できるとよいのではないかと考えました。

 以上です。

 ありがとうございます。

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 DB・DCの話もありましたし、受け取りの面での情報開示なりの重要性、特に選択制についていろいろと御意見をいただきました。

 選択制とは何を指すかということがそもそも法令上、別に明確でないというのはありますが、そのデータというのですか、どのぐらい利用されているのかということも少し把握できたらいいではないかということだったと思います。

 それから、少なくとも、おっしゃるように、DCの選択制について、あれは通知ですか。

○海老企業年金・個人年金課長

 法令解釈通知です。

○森戸部会長

 法令解釈通知に書いてあるわけだから、それはDBでもあるのだったら、恐らく書かなくてはいけないのだろうという気はいたします。

 それから、労働条件としての開示の範囲は、労働法の話にも関わるので、微妙なところです。

 つまり、企業年金は、賃金か、労働条件か、待遇か、いろいろと法解釈上ややこしい話はあるのですが、先ほどの資料によると、モデル労働条件通知書に企業年金を書けということになるので、とにかくそういう広い意味で労働条件的な位置づけと労働法サイドでも考えているということなのかなと思って伺っていました。その辺はまた詰めなくてはいけないと思います。

 ありがとうございました。

 小林洋一委員、お願いします。

○小林(洋)委員

 御説明、ありがとうございました。

 私からは、2点、意見を申し述べさせていただきます。

 1点目は、加入者のための企業年金の見える化についてです。

 加入者、受給者のために見える化を進めるという事務局の方針に賛同させていただきます。

 企業年金制度は、老後生活の安定に向けた従業員の取組を事業者が支援できる重要な制度だと思います。

 情報開示が不十分である場合、従業員が老後のライフプランを描くことが難しくなるおそれがあります。加入者、受給者の不安を取り除くためにも、運用状況等の情報開示を進めていくことが必要と考えます。

 他方で、見える化を進めるに当たっては、新たな作業負担の発生が予想されます。

 中小企業では、企業年金制度の運用に専任で従事する人員の確保は困難であり、作業量の増加は非常に大きな負担となります。制度設計時、企業に過重な負担がかからないよう、御配慮いただけますと幸いです。

 加えて、開示された情報を基にした従業員への投資教育に取り組む企業への支援も、セットで御検討いただきますよう、お願い申し上げます。

 2点目は、本日の論点と少しそれますが、意見させていただきます。

 今回の議題では、様々な論点が掲げられましたが、既に制度を利用している人の利便性の向上を図ることが主眼に置かれており、制度の利用者を新たに増やすという視点が少ないと感じました。これまで繰り返し申し上げてきたとおり、私的年金の普及・拡大のためには、未だ制度を活用していない層への拡大という観点での議論が重要と考えております。

 本部会において、今後も様々なテーマに基づいて議論が行われるものと思いますが、その際、各テーマについて、既存の制度利用者の利便性の向上のみならず、制度未利用者の理解促進という観点からも検討を加えていただき、その結果を資料に反映していただくよう、改めてお願いしたいと思います。

 以上です。

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 新規拡大というか、加入者により普及をという話は、今日の資料にも少しはあったと思いますが、もう少し正面から取り上げるべきではないかということで、それは非常に大事な視点なので、もちろん、そのようにしていきたいと思います。

 それから、小林委員のところにもと言ったら変ですが、開示なり、見える化の話は、事業主サイドにとって一定の負担になる話ですし、それをどう考えていくかというのは、ぜひこれからも御意見をいただかなければいけないと思います。

 ただ、その中で、一般論としてでしょうが、基本的に見える化の方向については賛同したいという御意見でしたので、それはどのような形で可能かというのをこれから一緒にぜひ御協力、御意見をいただければと思います。

 ありがとうございました。

 岩城委員、お願いします。

○岩城委員

 ありがとうございます。

 少々長くなりますが、御容赦ください。

 3点申し上げます。

 まず、DBについてなのですが、現在は厚生労働省に提出のみで、情報公開は義務づけられていないということで、事業年度ごとのDBに係る事業及び決算に関する報告書は、厚生労働省のサイトで一般に公表すべきだと思います。

 資料1の22ページ、49ページに、米国の企業年金の情報開示についてまとめていただいています。御覧ください。

 米国のForm5500につきまして、厚生労働省の方に御確認いただきましたが、100人以上の企業については、運用受託機関やコンサルタント会社、日本でいう総幹事会社へ払っている費用についても報告項目として挙げられていて、公開されているということでございました。

 日本でも、DBの財政的な健全性の確認のためには、現在の事業主・基金から加入者に通知または周知されている内容に加えて、当該年度の運用利回り、運用受託機関やコンサルタント会社、総幹事会社等へ支払っている費用の報告も義務化することを要望いたします。

 なお、運用利回りについては、前回の部会で複数の委員の方から、また、本日もございましたが、「企業年金の目的は、資産の極大化ではなく、債務の履行である」という御意見を伺いました。

 申し上げたいのは、いたずらに極限化を求めるための開示要請ということではありません。これまで真摯に向かい合ってこられた受託者責任についてのさらなる要望と捉えていただければと存じます。つまり、運用受託機関やコンサルタント会社、総幹事会社へ支払った業務や運用委託のフィーの結果、こういう成果が得られているということを見える化すべきであると申し上げています。一般に公表することによって、比較が可能になりますから、改善すべき点も見えてくるでしょうし、よりよい競争も生まれてくるのではないかと期待します。

 前回の部会で、藤澤委員からカナダの事例を御紹介いただきましたが、当該年度の運用利回りを相対比較できるようなデータがあれば、加入者にも非常に分かりやすいと思います。

 また、「運用リターンに対して、運用手数料が適切なのかを見て、もっと合理的な運用にしていこう」と考えることは、積極的にリスクを取ることで高いリターンを目指していこうというのとは意味が違うと思うのです。まずは、手数料が高いために実質リターンが低下している状況はないか、あるならばそれを改善していこうということです。より合理的なポートフォリオで運用することこそが、「運用力の向上」につながると思います。

 また、資料2で示されたように、多くの基金は積立水準を維持できているのかもしれませんが、中には、非継続基準が所定の基準に満たないために、事業主が特例掛金を拠出しなければならない基金もあります。事業状況として、追加の掛金拠出が困難である場合等には、給付の減額となり得るわけですから、加入者にとっては容認し難いことだと思います。

 現状、企業年金側も、金融の専門知識がないにもかかわらず、基金の責任者になってしまったために、結果、運用管理機関へ運用を丸投げして、運営の透明性を欠いてきた面もあると思います。どこにどれだけ費用を使って、結果こうなったということを公表することで、他社比較を通じて、最善の利益をもたらしてくれる運用受託機関やコンサルタント会社などの選択、資産運用力の向上への取組につながるのではないでしょうか。

 一方で、専門人材の活用や見える化(情報開示)を求め過ぎると、DBから撤退する企業が続出しかねないという懸念があるという御意見について、前回も、今回も複数の委員の方から伺いました。

 しかし、大切なのは、「加入者のための企業年金の見える化」であり、また、企業にとっても支払っている費用の対効果が適切なのかどうかも分かるわけですので、比較検討ができることはかえって企業にとってもよいことなのではないでしょうか。

 次に、DCについてですが、各企業年金の運用商品のラインナップと信託報酬も厚生労働省のサイトで一般に公開すべきだと思います。

 同じマーケットで効率的な運用を考えたとき、アセットアロケーションは重要ですが、将来のリターンは分かりません。

 しかし、手数料は確実なマイナスとなるわけです。同じ商品でも、手数料に差がありますので、合理的な資産運用ができる適切な商品ラインナップが求められます。

 公表によって他社比較をすることが可能になることで、自社のラインナップの改善点が見えやすくなります。

 また、同じリターンでも、手数料の違いによって将来の資産残高にどのぐらいの差が生じるのかというようなシミュレーションは簡単につくれますので、そういった一目で分かるグラフなども示すと、加入者には分かりやすいと思います。

 最後に、いわゆる選択制DB・選択制DCについても、今回資料を作っていただきまして、ありがとうございます。

 こちらは、資料に示していただいているとおりです。

 DBについても、法令解釈通知に社会保険・雇用保険等の給付額への影響等を説明することを明文化する必要があると存じますし、運管は、従業員が受け取る可能性のあるデメリットについても、導入企業ごとの具体的な掛金を用いて、分かりやすい資料を作成し、説明し、従業員の方に配付すべきです。

 最後に、今、公的年金制度はいろいろな歴史的経緯をたどって、ねんきん定期便や公的年金シミュレーターで将来の受給見込額などを開示しています。それによって、老後の生活設計がとてもしやすくなったと思っております。

 企業年金も公的年金を補完する役割であるという社会保障の一環であるという認識があるならば、加入時、加入期間中、受給時の一体的な情報開示、見える化が必要ではないかと考えます。

 以上です。

○森戸部会長

 ありがとうございました。

 基本的に情報開示完全積極派。委員をマッピングすると、一番右が岩城委員、一番左が島村さんですか。

 分かりませんが、とにかく左側の皆さんに聞いただけでも、情報開示なり、見える化についていろいろな意見があって、かつ、項目なり、やり方についてもいろいろと御意見があって、これをどのようにまとめていくか、非常にこれから大変だなと伺っていました。

 ありがとうございました。

 では、ほかの委員の方、いかがでしょうか。

 松田委員、お願いします。

○松田委員

 ありがとうございます。

 まず、資料2の資産運用立国について、1点質問です。

 2019年12月の議論の整理では、見える化について、「個々人の現在の状況と将来の見通しを全体として見える化していくことも重要」と書かれていました。

 議論の整理に示された論点に沿って、次期制度改正に向けて議論を進めるべきだと考えておりますが、資産運用立国分科会での議論の取扱いや、本部会の進め方への影響について、補足の説明をいただきたいと思います。

 続いて、本日の論点について意見を申し上げます。

 DBについては、加入者等の意思を尊重した運営がなされることが重要ですので、労働組合や加入者の関与を強化すべきと考えます。

 労働者がDBに関する情報を知るために、標準的な給付の額や給付設計、積立金の運用の概況や基本方針などを制度加入時の周知義務とすることを検討いただきたいと思います。

 また、資料の15ページの下から2つ目の○に書かれておりますが、DBのガイドラインでは、分かりやすく開示するための工夫を講じることが望ましいとされています。企業でどのような工夫が行われているかについて実態を調査した上で、加入者にとっての見える化について議論をお願いしたいと思います。

 最後に、このガイドラインでは受給者への周知が努力義務になっています。

 しかし、基金からの文書郵送が廃止されたり、理事会などの議事録がホームページに掲載されていないなど、必要な情報にアクセスしにくいとの声を聞きます。

 可能な限り実態を調査した上で、先ほどもありましたが、自ら知ろうと情報にアクセスできればよいとするのではなく、受給者にとって見える化も具体的に進めていただきたいと思います。

 以上です。

○森戸部会長

 ありがとうございました。

 1点目の質問はこれからお答えいただきますが、それと別にということではないのですが、見える化なり、情報開示なり、労働者サイドというか、加入者サイドというか、労働組合サイドはいろいろな意味で非常に重要なプレーヤーだと思いますので、こういう開示についてどのように考えるかというのも大事だし、労働者一人一人ではなく、実際上、労働組合を通じて、現在の企業年金法も労使合意なりを通じて制度を動かしていく仕組みを取っているので、情報開示の局面でも、見える化の局面でも、労働組合の関与とか、そういうものが恐らく大事になってくるかと思いますので、これからもいろいろと現場からの御意見をいただければと思います。

 では、1点目の御質問について、事務局、よろしいでしょうか。

○海老企業年金・個人年金課長

 御質問ありがとうございます。

 今まで部会でいろいろと御議論いただいてきたお話と、資産運用立国のほうでの今の議論の状況、政策プランとの関係というお話と受け止めておりますが、そちらについては、前回も少し御説明させていただきましたとおり、政策プラン自体は年末にかけて決定されていくものだということでございます。

 一方で、こちらの部会においては、次期制度改正に向けてということで御議論いただいてきているところでございます。

 本日、御議論にもありましたとおり、見える化の情報開示の部分は、まさにDB・DC、企業年金制度全体の中でのごく一部を切り出しているのではないかといったお話もあるかと思います。

 その辺りを踏まえて、全体の改正に関しては、本日も含めて、これまでも御議論いただいてきたことを踏まえて、まさにこれから、来年度に向けて御議論を深めていくものだと理解しております。

 一方で、政策プランに関しては、その中の特にというところで、本日の御議論も踏まえて、いろいろと論点に上がってきていることについて、ある程度年末にかけて、政府の方針として決定されていくものだというところでございます。

 取りあえず、現状としてお答えできるのはここまでなのですが、以上でございます。

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 では、藤澤委員、お願いします。

○藤澤委員

 ありがとうございます。

 DBの加入者のための運用の見える化の充実というところで、海外の例も参考にしつつ、加入者が他社と比較できる部分について、コメントというか、お願いしたいことがございます。

 本日の資料の中で、アメリカとの比較はございましたが、アメリカ以外の海外の事例も参考にして、検討していただきたいと思っています。

 日本では、DBの事業状況等を厚生労働省が取りまとめて、毎年公表していると理解してございます。

 これは、各DBが作った事業及び決算に関する報告書を集計したもので、例えば加入者の人数の合計だったり、積立水準だったり、資産構成だったり、運用の利回り等が記載されているものとなってございます。

 加入者が他社と比較するという観点からすると、全体と比較する、平均的な姿と比較するようなことは、現状、日本でできるようになっていると理解しています。

 一方、カナダの話になるのですが、オンタリオ州だと、毎年60ページぐらいの資料を公表しています。これも、各DB制度が提出したものを監督当局が取りまとめて作っている資料となっています。

 例えば運用のところにフォーカスすると、運用の資産構成もDBの資産規模別に開示する形になっています。

 運用の利回りも、資産規模別の開示に加えまして、例えば上位10%とか25%、中央、下位10%、25%という分布が分かるような形で開示がなされています。

 運用利回りのところは、先ほどの岩城委員のコメントとも関連しますが、グロスの運用利回りと、インベストメントフィー、つまり運用の手数料を分けて開示することもやっています。つまり、他社と比較して運用手数料を多く払っているけれども、運用利回りが低いといったことが分かるような開示になっています。運用効率の改善に資するという意味で、こういった開示の仕方もあるのではないかと思っています。

 加入者のための運用の見える化といったときに、情報を開示することが目的となってしまいやすいと大江委員がおっしゃっていましたが、そこは同じ意見でございまして、情報を受け取った加入者を代表する人の意思決定に資することが大事なのではないかと思っています。

 その観点でいうと、オンタリオ州のレポートだと、インフォグラフィックという見た目の分かりやすい形で、例えば予定利率のトレンド等も開示してございます。情報の受け手である加入者に分かりやすく開示するような工夫も、監督当局のほうでなされています。

 もともと日本では、厚生労働省のほうで決算報告書等を取りまとめて開示しているということでございますので、海外の事例も参考にしながら必要な情報を抽出して、中立的な立場で、毎年公表しているレポートも拡充していくような方向も検討していただきたいと思ってございます。

 以上です。

○森戸部会長

 ありがとうございました。

 アメリカ以外の話も資料にという話でしたが、今回の資料1も、最後に「諸外国における『見える化』の動向」とあって、見たら、アメリカだけかという感じなのです。

 これは、事務局的にはお忙しいから間に合わないけれども、取りあえずアメリカは入れておこうとなったと思うので、多分、ほかの国もやっていると思いますので、出てくると思います。

 ありがとうございました。

 冨樫委員、お願いします。

○冨樫委員

 ありがとうございます。

 まず、38ページのDCの退職時の見える化についてです。

 自動移換における労働者のメリットはなく、その対策をさらに強化する必要があると考えます。

 資料にある通り、確かに法令解釈通知などに十分に説明することと記載されておりますが、この間、国基連様からの報告などで、自動移換者の総数が増加している現状を教示いただきました。

 やはり、退職前に当該労働者がしっかりと説明を受け、手続の必要性を理解し、退職しているのかについては疑問があります。

 以前の部会では、自動移換の管理手数料の引上げなども有効ではないかという御意見もありましたが、まずはなぜ手続漏れが発生するのか、運営管理機関などの情報を基に、加入者の行動などを分析し、投資教育や退職前の説明により、加入者本人の理解を促進することを検討すべきではないかと考えます。

 もう一つが、先ほど来お話が出ております選択制DB・DCについてです。

 44ページの「例1」の方法は、私どもとして、本来事業主が拠出すべき掛金を労働者に転嫁されていると受けとめており、これは労働条件の不利益変更に当たりかねないと捉えています。したがって、事業主による正確な説明の上で、労働者がしっかりとデメリットを理解した上で選択することがまずは大前提となります。

 こちらについて先ほども明文化の話がありましたが、私も明文化すべきであると思います。

 その上で質問ですが、選択制のDB・DCを導入する際に、規約変更を厚生局に届出すると思いますが、その際、労働者に正確に説明したかどうかは、どのようにして確認を取るのか、ご教示いただきたいと思います。

 要は、労働者や労働組合に対し事業主が説明したことを把握しているのか、実態を把握しているのあれば、そのデータを資料として御提示いただければと思います。こちらはお願いです。

 以上です。

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 では、事務局への質問で、選択制についての規約変更の現場での状況というのですか、分かる範囲で何かあれば、お願いいたします。

○海老企業年金・個人年金課長

 御質問ありがとうございます。

 規約変更に関しては、規約変更に関する手続の際に、労働組合さんとかの話合いをされた結果を併せて出していただいているので、そういった手続をきちんと経ていることの確認は、我々のほうでさせていただいております。

 その中で、どこまで個人の方に周知したのかというところに関しては、そこまで細かく取らなければいけないルールに現状ではなっていないので、そこは個社ごとの状況によって内容に差はあろうかと思っております。

 今いただいたお話に関しては、御意見を踏まえて、何ができるかといったことも含めて検討させていただきたいと思います。

 以上です。

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 恐らく、通常の規約変更の手続で労使合意があるかとか、もちろんそういうことはチェックしているのでしょうが、殊更に選択制だからどうだというのが必ずしもあるわけではないのかなと思いますが、そこをもうちょっと見直したほうがいいのではないかという御意見は今日も出ていましたので、その辺はまた検討いただきたいと思います。

 余計なことですが、先ほど松田委員のところで申し上げましたが、繰り返しになりますが、情報開示、見える化の話は、結局、情報を受け取る側の代表が実質労働組合になり得ると思いますので、ぜひこの問題について、御意見をこれからもいただければと思います。

 ありがとうございました。

 原田委員、お願いします。

○原田委員

 ありがとうございます。

 私は、見える化に関しては、どちらかというと抑え目な立場、島村委員寄りの立場なのですが、何が目的なのかというところは、加入者の利益のためということで異論はないと思うのですが、直接的な利益につながることか、それとも回り回って間接的な利益まで含めて考えるのかということは難しいと思っています。

 直接的な利益でということであれば、例えばDBについては、運用の結果とか予定利率の状況は、加入者、受給者にさえきちんと伝わっていればいいと思いますが、外に広く知らしめる必要は、まさにDBの給付のためのお金を、掛金で出すのか、運用で稼ぐのか、その区分けだけのはずなので、要らないと思います。

 ただ、一方で、本当に回り回ってというお話をすると、予定利率が低くて、お金をどんどん突っ込んで、運用では稼がない、いわゆるあまり効率的とはいえない運用をするようなケースで、お金を出し過ぎて会社が傾いて、企業年金制度もなくなってしまうというような事態まで考えると、保守的過ぎるのもどうなのかという気もしますので、バランスが大事だと思います。

 そこまで短絡的に運営されている会社はないと思うのですが、そういうことをふまえると、予定利率が世間的にはどうであるか、自分たちの会社はどうだという比較ができるようにすることは、ひとつ参考になることかなと思いまして、私は前回、株主に見せるべきではないみたいなことを言いましたが、そのような使われ方をするのではなく、加入者、受給者の最終的な利益につながるためには、どういうバランスでやるべきなのかというのが大事だと思いました。

 ただ、実際、何を見せるのかということに関して言いますと、何のために、何を知らせるべきなのかということだと思うのですが、知らせなければならない、知ってもらわないといけないことと、知ることができればいいことを、先ほど「周知」の定義の話も出てきましたが、そこを分けないと、整理はなかなか難しいと思います。ただ、分けることが非常に大変だということも分かっています。

 知らせなければならないことは、できればプッシュ型の情報として、言い方は悪いですが、加入者の方々に送りつけることが必要であって、どこに出ていますよというのは、自分の行動を考えても、ホームページに載っているのは知っているものの、見ないことが多く、手元に届くものであれば見るということもありますから、そのような対応は必要になってくると思います。

 ただ、プッシュ型も、加入者、受給者が多いケースですと、非常に負担になってくるので、加入者や受給者の方に興味を持ってもらうためにはどうしたらいいかということも並行して大事だと思います。

 今日の話でも出ましたが、私的年金制度の広報的なことは大事なことだと思っています。従業員の方に、公的年金に加えて、私的年金制度はこういうものがあって、自分の会社はどういうものがあるのかということに興味を持ってもらうことで、情報にアクセスする頻度も上がってくるのではないかと思います。そういったところの広報活動は、こういう見える化につなげるためにも重要ではないかと思いました。

 本当に役に立つ情報なのかということと、きちんと内容が伝わるのかどうかが重要だと思います。

 運用の実績について、私は保守的な意見で言いますが、実績利回りの開示は、先ほど運用の報酬とか、そういった内訳も含めて理解してもらうということであればまだいいと思うのですが、一方で、単に実績は何%でしたという結果だけが並べられると、誤解されるのではないかと思います。きちんと理解してもらえないのではないかと思いますので、何を理解してもらいたいのかというのを踏まえた上で検討していったほうがいいと感じた次第です。

 以上です。

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 勝手に島村委員を指標みたいにして、怒られそうですが、ありがとうございました。

 おっしゃるように、直接的な目標のためなのか、それとも回り回ってこうなるということを目指すのかは違うのだけれども、多分、微妙な、どっちとも言えるみたいなところもあるのだと思って伺っていました。

 それから、さっきのいわゆる予定利率が低くて、お金をがんがん入れてみたいな運用はしないだろうけれども、というお話でしたが、もしかしたらそこまで短絡的な運用はさせないための開示なのかもしれないですし、いろいろな考え方ができると思います。

 それから、今伺っていて思ったのですが、こういう何か情報を出せ、開示しろというときに、それが直接の当事者のためというのもあるし、世間に出すことで、一般人なり、世間なり、それこそ研究者なりが利用される、見られるかもしれないというプレッシャーの下にガバナンスを効かすみたいな、恐らくそういう手法もあるのだろうということで、その辺は、どういう目的で何をするのかということは考えなくてはいけないと思います。

 それから、DBの現場は、結局、数理人の方が一番見ていらっしゃると思うので、この情報開示の話も、結局、どういう話をどのぐらい出したら、どういう効果があって、どういう意味があるのかとか、多分、そういう御意見もまたいただかなくてはいけないと思うので、それはよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

 オブザーバーの方が手を挙げていらっしゃいます。

 では、企年連さん、お願いします。

○鮫島企業年金連合会理事長

 まず、先ほども御紹介がありましたが、私どもでは、中村運用執行理事が資産運用立国分科会の委員を務めておりますので、先ほど御説明があった10月27日の会合で資料を提出し、意見を述べております。その資料は、参考資料1として今回の資料になっておりますので、後ほど御高覧いただければと思います。

 私どもからは、その場で幾つか意見を申し上げておりますが、まず、企業年金は、母体企業の人事・財務戦略など、様々な要素を踏まえて設計・運営されており、資産運用だけを取り上げて考えるのは一面的であるということ。また、DBの資産運用の基本は、年金財政上必要となる利回りを最低限のリスクで確保する効率的な政策アセットミックスを策定することであり、多くの企業年金で対応できており、健全な財政状況を確保していること。それから、資産運用は、労使で合意した運用の基本方針に基づいて行うべきであり、規制は必要最小限にとどめ、労使の自治を尊重していただきたい。そういった意見を申し上げております。

 次に、資産運用立国に関するこれまでの報道を踏まえ、あるいは今後の議論を展望して、DBの見える化について、私どもから3点申し上げようと思います。

 第一に、DBの見える化は、前回からずっと御議論がありますが、受託者責任の観点から、加入者、受給者に対する説明責任を果たすことが目的でありまして、その意味では、業務概況等により既に基本的に行われていると考えております。

 また、DB制度の役割が、約束した年金を将来にわたって確実に支払うことである点を踏まえますと、加入者に対する開示で最も重要な項目は、私どもは財政状況であると考えております。そして、その最も分かりやすい指標は、積立水準と思っております。

 第二に、運用状況の開示につきましては、予定利率や運用利回りの実績だけを取り出して、その高低を比較してみましても、DBの運用状況を正しく評価することにはなりません。なぜなら、そもそも、DBの制度設計が母体企業の人事戦略、財務の状況やリスク許容度によって異なりますほか、DBの財政状況や成熟度も様々でありますので、運用目標や政策アセットミックス自体がDBごとに異なるものになるからであります。

 もし予定利率や運用利回りの実績だけが公開されまして、その高低のみに注目が集まることになれば、結局はリスクの高い運用によるパフォーマンス競争に陥るおそれがあります。私どもは、その結果として、大切な老後の年金資産を不要なリスクにさらし、年金財政が損なわれたり、企業のDBからの撤退を加速することにならないか、強い懸念を持っております。

 第三に、先ほどから、開示の拡充をするのであれば、加入者への説明責任といった目的の議論が必要という議論が出ておりまして、私どもも全くそのとおりだと思っておりますが、仮に今後、何らかの目的で運用状況の開示を充実する場合には、次のような点に留意する必要があります。

 まず、内容につきましては、予定利率や運用利回りの実績のみではなくて、制度運営の状況や資産運用の方針に関連する一定の情報、例えば積立水準、成熟度、資産構成等を併せて提示しなければ、DBの制度設計や資産運用の考え方について、正しい理解を得ることは難しいだろうと思います。

 また、開示の拡充に当たっては、小規模なDBが大変多いことも踏まえまして、コスト負担にも十分な配慮が必要と考えます。そうした観点から考えますと、先ほどから御意見が出ておりますが、厚生労働省さんがDBからの事業報告書、決算報告書で実施状況について毎年報告を受けておられますので、その情報を活用して、必要な情報を開示するという方法があるのではないかと思っております。

 以上です。

○森戸部会長

 ありがとうございました。

 一般的に懸念があるとおっしゃりつつ、もし開示するのであれば、具体的にはこういう項目ではないかという建設的な御意見もいただいたかと思います。

 ありがとうございました。

 では、渡邊部会長代理、何かありますでしょうか。

○渡邊部会長代理

 ありがとうございました。

 私からは、大きく2点ほどコメントさせていただければと思います。

 既にほかの委員からも御指摘のあったところなのですが、加入者、受給者のための見える化といった視点からの情報開示という点からしますと、情報開示された後に、受給権の保護、自分の年金がきちんと保障されるのかどうか、そのためには、適切な運用がなされているのかどうかということを判断するために必要と考えられます。

 そうしますと、単に多くの情報が提供されるのは、逆に判断を難しくさせる面があるのではないかとも考えております。ですので、必要な情報を絞って、分かりやすく提供されることが必要なのではないかと思いました。

 そのためには、投資教育の在り方とセットで考えていくような視点が必要ではないかと。提供されました情報をどのように判断に結びつけていくのかというのは、投資教育と非常に関わる分野と思いますので、そこはセットで議論する必要があるのではないかと考えています。

 もちろん、そこで厳選された情報だけでいいのかといえば、さらに詳しい情報が必要だという求めに対して情報開示をするといった仕組みも併せて検討する必要があろうかと思っております。

 2点目といたしましては、適切な運用がなされているかどうか、各個人が判断しなさいというようなことを求めたということであれば、判断した後の意見をフィードバックする方法をどう考えるのか。そのような視点も必要なのではないかと思っております。

 加入者といった段階であれば、労働条件の交渉の場などで反映するといった方法が考えられますが、加入者と併せてセットにされております受給者といった立場になりますと、加入者とは違った状況が考えられるように思います。

 加入者の段階であれば、先ほど申し上げましたように、労働条件の交渉の場などで自分の意見を反映するような機会が確保されるかとは思いますが、受給者の段階ですと、どうなるのかといったところについても視野を広げて議論する必要があるのではないかと思いました。

 私からは以上です。

○森戸部会長

 ありがとうございます。

 2点目の御指摘も非常に重要だと思いましたが、1点目は、投資教育との関連も考えていくべきだという御指摘でした。

 それももっともだと思いましたが、突き詰めると、見える化の話は、見える化とか情報開示の話を今日はしているのだけれども、結局、ほかの制度なり、ほかの仕組みに全て関わってくるので、それも一緒に議論しなくてはいけないし、あまりここだけに絞って話しても、ピントがずれてしまう場合もありますので、それも注意しなくてはいけないと思いました。

 ありがとうございました。

 事務局は、今日は全然森戸にむちゃ振りされないと思って、安心していると思うので、1点聞きますが、資産運用立国分科会は非公開なのですね。

○海老企業年金・個人年金課長

 はい。

○森戸部会長

 非公開というのは、非公開と言えば非公開にできるのでしょうか。

 何で非公開なのかなと思っています。

○海老企業年金・個人年金課長

 議事を後で公開するという形で、ルール化してやっているからです。

○森戸部会長

 この会は、YouTubeで全国に顔をさらしてやっているのに。

 でも、向こうの議論は非常に重要なので、またその議事の内容も待ちたいと思います。

 最後に、私から一言だけ。

 まとめとして、今日の感想ではないのですが、非常に貴重な御意見を幅広くいただいて、非常に参考になる、今後の議論に非常に生きる御意見をいただけたと思います。

 もちろん、当事者、加入者、受給者のために情報開示なり、見える化をするのでしょうが、さっきも申し上げましたが、当事者個人、加入者個人にその情報が来ても、あまり意味がないというか、使えないかもしれないから、もっと広く開示して、世間に出すことで、そういう外部的なプレッシャーというのですか、そういうものの中で精度を良くしていこうという視点もあるのだろうと思います。それをどこまでやるのかという話かなと思って聞いていました。

 今日、アメリカのERISA法の話とかが出ていて、アメリカの話も結構出ていたのですが、私が昔勉強した範囲ですが、恐らく、アメリカの企業年金に関する情報開示は大きく2系統あって、ERISA法の情報開示の規制と受託者責任の判例法によって発達してきた実質的な情報開示のルールがあると思うのですが、ERISA法の方の情報開示は、恐らく、1958年法というさらに前の法律に遡る話で、それは皆さん御承知のとおり、要するに、アメリカの特に昔の複数使用者制度で労働組合がやっていたものは、不正とか運用が非常にひどかったというのがあって、そういうのではいかんというので、情報開示をちゃんとしろと規制が厳しくなったという歴史があるようです。だから、少なくとも資産運用立国とかで言っているような直接的に運用をよくしようとか、そういう話から始まった話ではないのだろうとは思います。

 ただ、他方で、もちろん参考にはなるので、参考にしなくてはいけませんし、今日出ていなかった話だと、渡邊代理もおっしゃいましたが、情報開示するにしても、分かりやすく出さなくてはいけないというのは、たしかERISA法のほうもsummary plan descriptionというのですか、いろいろと制度が複雑だから、簡単な形で分かりやすくサマリーで開示というか、分かりやすいものを出せという規制があったと思うのですが、アメリカでは、そういうものを出したら出したで、その情報が本来と違っているとかいって、また訴訟になったりしているのも見ています。そういうものも参考になるかと思います。

 今日の話は、他社との比較とか、そういう話は、もちろんいろいろと困難があると思ったのですが、小林由紀子委員がおっしゃったかな、まさにそれは人事戦略なり、報酬戦略を開示させることだからというのは、まさにそうなのです。

 ただ、まさに労働条件に関わる労働法のほうのトレンドでも、要は、労働法は、伝統的には基準を決めて、刑罰を科して、労基官が取り締まってという強行法的な規制を取っていたのですが、最近、次世代法とかそういうもので、皆さん御承知のとおり、男性が育休を取っているか情報開示しろとか、男女の賃金格差を開示しろとか、そういう流れで情報開示をいろいろとさせることで、言わば横並びにというのですか、比較して、全体に公的な目的を達成しようみたいなもののほうがいいのではないかみたいなトレンドもあります。

 例のくるみんマークとか、何でしたか。梅干しではなくて、えるぼしか。梅干しとか言ったら、怒られてしまいますね。

 えるぼしマークとか、そういう一定の基準を満たすと、そういうマークがつけられるとか、そのようにソフトに、しかし、横並びに政策を誘導していこう、目的を達成していこうみたいな動きもあって、企業年金の話も少しそれに似ているところがあるのかなとも思います。参考になることがあるかもしれません。

 またアメリカの話になりますが、アメリカは訴訟社会で、ある意味私人による法の実現みたいなものに重きを置いている。

 つまり、訴訟をして、それでもある程度お金になるから、それによって社会が変わるみたいなものに期待しているところがあると思うのです。集団訴訟もできるし。

 別に、日本もそうなれとは思いませんが、日本の場合、そういう感じよりも、むしろ横並び意識が強いから、情報が出てくることで、各企業横を見て、あそこがこうやっているのだったら、こうやらなければみたいな感じで、全体で動いていくみたいなほうが日本的なイメージに合うかなと思うので、そういうものも意識して情報開示を考えることはできるのかなと思いました。

 すみません。感想みたいな話ですが、今日は時間がありましたので、私からも少し御意見を申し上げました。

 ありがとうございます。

 では、予定の時間も早いですが、皆さんから非常に貴重な御意見をいただきましたので、本日の議事は以上で終了したいと思います。

 今後の予定等について、事務局からお願いいたします。

○海老企業年金・個人年金課長

 次回の議題や開催日程につきましては、追って御連絡させていただきます。

○森戸部会長

 ありがとうございました。

 それでは、第29回「企業年金・個人年金部会」を終了いたします。

 御多忙の折お集まりいただき、どうもありがとうございました。