国債暴落の予想よりも暴落のない

政策実現を!

徒然亭閑居生 (12.5.12.)

 フランス、ギリシアの二つの選挙で緊縮政策ノーの民意が示されたことは私たちにとっても励まされる面があります。これを契機・要因にして株価が先行き不安から下がったために、「企業年金の運用益が減るのでは?」といった心配の声も出ています。しかし、企業年金の原資は高リスクの株式などに運用しないで、堅実な債券や公的融資に回すべきでは無いでしょうか。利回りが低い分、原資を増やして退職金の延払い債務を真面目に支払って貰いたいものです。

引き続く国債暴落の予想

 こんなときもう一つ看過できないのは日本の国債暴落の可能性が取り沙汰され続けていることです。

三菱東京UFJ銀行は昨年四月に暴落の可能性を発表、これ以降も色々な観測が出ており、昨年12月にIMFも報告書で公表しました。目新しいことではないのですが「三菱東京UFJ銀行が国債の暴落に備えた危機管理計画を初めて作った」(朝日新聞2/2)とか、同銀行の新頭取は就任インタビューで「(国債が)一夜にして崩れることはなく、急激な金利上昇(価格下落)は起こらないと見ている。ただしシミュレーションは絶えずやり、想定外の事態にも対応できるように運営することが大事だ」との発言が報道されたこともあります。(4/4毎日新聞)。

著名なジム・オニール等ヘッジファンドのトップ達も予測していることが経済雑誌等に掲載され続けています。

根拠としては▼少子高齢化のもと、貯蓄率低下と共に国債買い支えの構造が変化していく、▼財政のプライマリーバランス(基礎的財政収支)がこのままでは、悪化の一途を辿っていくetc.など指摘されています。時期は2016年頃という観測もされています。

暴落はないとの見方も勿論ありますし、投機家の心理と行動は予測不能です。

しかし、厳然たる客観事実は、上記▼の点、日本の財政矛盾は深刻、ここを国民本位に打開する政治状況にないこと、国債買い支えの構造が高齢化進行と共に変化すること、海外の投機筋がターゲットにしつつある兆候が出ていること、など色々あります。

 

利益も吹っ飛ぶ国債暴落

三菱東京UFJ銀行の受給者の間では「銀行はしっかり儲けているから心配ない」という意見が少なからずあります。同銀行の場合、昨年の中間決算で純利益が3,259億円、フィナンシャルグループとしては6,960億円と巨額です。

しかし、★経団連が規制改革の要求をし続け、エスカレートさせていること、★国際競争力の強化を強調し続けている銀行としては企業年金が負担であることは事実であること、★昨年、同銀行は労働組合に対して退職者の年金削減を検討したと言明したこと、★厚労省が減額の条件を引下げる方向で検討していること、★現在の収益力は高いが様々なリスクも抱えており、特に国債の暴落は大きく重いリスクであること、などをよく考えたいものです。

これは他の銀行にも共通することです。

 三菱東京UFJ銀行は40兆円超の国債を保有(何と!融資総額より多い)していますが、暴落したらデカイ評価損が発生します。仮に平均5%下落しても2兆円の損失で、6,7年分の純利益が吹っ飛ぶことになります。

リスク対策としては色々あるようですが一段と経費削減を進め、更なる人件費削減→人減らしや給与押さえ込み、退職者の企業年金削減などへと向かう可能性があります。

多くの企業で現役の企業年金はキャッシュバランス制度に転換して身軽になり、国債暴落=金利上昇で現役の場合は給付が増える可能性はありましょうが、上限が設定されており単純に喜べません。一つの銀行が受給者の減額や制度改悪などやると信用に傷がつきますから他の銀行と示し合わせてやる可能性があるし、大銀行がやれば他の業界だって、経団連主導のもと大手企業が揃って踏み切る可能性も考えられませんか。

国債暴落・金利上昇・資産目減りとなれば、日本経済も国民も大混乱となり、特に退職者は市場金利上昇→インフレで生活費急増の上に、企業年金はインフレスライドがなく、年金減額となれば正に往復ビンタとなります。

銀行・大企業のとるべき道は?
 そもそも、大銀行が中小企業への融資を押さえ込んで巨額の国債を保有していること自体、いいことなんでしょうか。不況の長期化・深刻化のなかで資金繰りに苦しむ企業は数多く、世の中全体として貸し渋り・貸し剥しは後を絶たず、体力のある大銀行の融資姿勢が問われています。銀行法は、貸付が本来業務であって、国債など有価証券の売買は付随業務と位置づけています。しかし、現実には逆転しているのです。
  銀行法は「銀行の公共性にかんがみ…、金融の円滑を図る…、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする」と定めています。銀行は内閣総理大臣が定めた一定基準を満たして免許が与えられるという厳格さがあります。
  銀行は、国債暴落を予測・懸念して自己の損失防止策を練るよりも、公共性を自覚して国民全体のことを考えて暴落防止には何が必要か、国民経済の健全発展のために今どんな金融・経済政策が必要か、などをよく練り、政府に提言し、そして自らの経営姿勢と具体的施策を転換することが求められているのではないでしょうか。

 確定給付制度の企業、特に大企業も、経団連の反国民的な政策、身勝手な規制改革要求が国民の購買力を減退させ日本経済と財政の矛盾を激化させていることを自覚して経団連の姿勢を変えさせ、今の政治のあり方を変えさせるように転換すべきではないでしょうか。

ただ、待っていてもそんな保障はありませんから、やはり草の根から政治を正す世論の盛り上がり、企業年金の受給権を守る運動の広がりが求められていると思います。