07/02/26 企業年金研究会 第6回議事録

 

        日時 平成19年2月26日(月)

                15:00~17:00

          場所 厚生労働省専用第21会議室(17階)

 

 

 

○森戸座長

 時間になりましたので、ただいまより「第6回企業年金研究会」を開催いたします。本日は加子委員及び小島委員が所用により欠席ですが、加子委員の代理として日本経団連経済第三本部の遠藤副本部長、小島委員の代理として連合生活福祉局の伊藤部長が出席されております。渡邉年金局長は所用により途中退席することとなっておりますので、ご了承ください。それでは議事次第に沿って会議を進めてまいります。まず事務局から資料の確認をお願いいたします。

 

○簑原課長補佐

 資料1は前回提出した企業年金共通の課題について、資料2は確定拠出年金・確定給付企業年金創設時における税制改正の経緯、資料3は個別制度の課題についてです。落丁等はございませんでしょうか。

 

○森戸座長

 今回は前回の議論の続きということになりますが、資料1の「企業年金共通の課題について」の議論を進めていきたいと思います。前回は宿題をいただいておりましたので、その事項に関して事務局から説明をお願いいたします。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長

 資料2の「確定拠出年金・確定給付企業年金創設時における税制改正の経緯」について説明いたします。前回、当時の税制改正の経緯がどのようなものであったかという宿題をいただきましたが、確定拠出年金については平成12年度税制改正で要望をしております。上の箱にあるように、拠出時については所得控除あるいは損金算入、運用時は特別法人税非課税、給付時に公的年金等控除等の適用といった要望をしております。税務当局と議論の結果、平成12年度税制改正大綱では拠出時、給付時については要望どおり、運用時については特別法人税等を課税するという結果になっております。

 2頁は確定給付企業年金の税制改正要望の経緯です。平成13年度の税制改正要望は、要望時にはまだ制度がなかったので、企業年金の受給権の保護を図る制度の創設(確定給付企業年金)に伴う税制上の所要の措置等として要望しております。要望の内容は、受給権保護を図る制度の創設に伴う所要の税制上の措置で、いわば袋詰め的な要望です。

ただ、その中には確定拠出年金に係る特別法人税の非課税措置を再度要望しております。

特別法人税については、超低金利の状況等にかんがみ、引き続き当面の措置として凍結ということを要望しております。その後税務当局等とさまざまな議論をした結果ですが、確定給付企業年金については拠出・給付段階においては確定拠出年金と同様の措置、運用段階においても同様に、特別法人税等を課税するという結論でした。ただし、特法税については課税停止措置が2年延長されたというのが経緯です。

 資料は用意しておりませんが、前回国家公務員の退職年金の水準について、なぜ6割程度かという議論がありましたので、口頭でご報告いたします。昭和63年の望ましい水準の制定当初の水準は代行部分の2.7倍で、この水準そのものは昭和45年に税法において同様の水準が定められており、結果としてはこの水準を踏襲したということです。

昭和45年の特別法人税の2.7倍という非課税ラインは、国家公務員の退職年金の水準を勘案しているものです。当時の国家公務員の退職年金の水準は、最大で退職前3年平均の報酬の7割で、これを退職直前報酬に換算すると、おおむねその6割です。最高限度7割については、組合員期間40年の方に相当するものですが、解説書等を見ると、「老後の生活の安定を図る見地、当時の諸年金制度との調和や保険経済の枠等から定めた」という説明がなされております。このように、当時の国家公務員の退職年金の水準はかっちりとしたものではなく、諸要素を総合的に勘案して設定したものと言えます。

 

○森戸座長

 ただいまの宿題の資料説明に関しては、そのような経緯だということでよろしいですね。それでは本日の議論に入っていきたいと思います。前回の議論で残したところは、資料1の8頁の確定拠出年金及び確定給付企業年金の性格ですが、(2)の(2)の下にあるように、確定拠出年金及び確定給付企業年金の目的に関して、公的年金と切り離した目的が考えられるかどうかという点が1つあります。同じく資料1の18頁で、2つ目として企業年金の水準のあり方ということで、企業年金の水準について、厚生年金基金と同様、他の企業年金においても望ましい水準を設定するということがあり得るかという議論です。3つ目として、断片的には意見をいただきましたが、企業年金の税制のあり方といった辺りの議論が大きく残っているかと思います。

 先ほど事務局から説明があった事項とも関連しますので、最初の2つ、即ち資料1の8頁の確定拠出年金及び確定給付企業年金の目的、18頁の企業年金の水準に関して議論したいと思います。この点について、皆様からのご意見、ご質問をお願いいたします。

 

○藤井委員

 8頁の点について、少しだけ思うことを述べると、税制等の関係で公的年金を補完するものかどうかという点で、そのようなことを目的とする前提で税制の措置を考えるのか、それとは別枠で考えるのかということと、結局はつながるのだろうと思います。確定拠出年金と確定給付企業年金の目的の定義をよくよく見てみると、例えば確定拠出年金では、「国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって」と書いてあるので、「相まう」という言葉をどう見るかだと思います。相まうより前に、そもそも「自主的な努力を支援し」と書いてありますから、これは両方書いてあるのではないかという感じがします。

 要するに、企業年金そのものを自発的な努力として評価し、それを支援した上で、結果としてそれが公的年金と相まって生活、福祉の向上に寄与すると言っているので、特別に国の年金を補完するという意味づけを頭に持ってきているわけではないから、企業年金の本質をうまく言い表しているのではないかという感じがします。それでも国の年金に全面的に頼るということではなくて、自発的な努力を促して、それについて国としては支援する姿勢を持っているということではないかと思いますから、それはそれでいいのではないかという感じがいたします。

 

○森戸座長

 確かに、書き方の順番としてはおっしゃるとおりです。先に高齢期の所得確保という大きな目的があって、当然それは結果的に公的年金と相まってということになるでしょうし、条文上もそのような書き方だと思います。いちばん上の四角に挙がっているのは、高齢期の所得保障からもう少し外れたというか、企業の福利厚生の充実を通じた従業員の福祉の増進、つまり、退職時の所得保障については公的年金と切り離したということではないかもしれませんが、2番目は従来の退職金というか、従業員の福利厚生の一部であるといった辺りがどのぐらい強調し得るのか、すべきかという話だと思います。退職時の所得保障は現行法上も公的年金と切り離したということではないといった整理ができると思います。

 

○伊藤部長(小島委員代理)

 確定拠出年金法と確定給付企業年金法の法目的を改めて読んでみて、どのように理解すべきかと思ったのですが、両方に共通するのは国民の生活の安定と福祉の向上が大目的になっていることと併せて、前から出ている公的年金との補完関係ということを言っております。しかも、大目的が、特に確定給付企業年金法では従業員の生活とは言っていなくて、国民の生活とまで言っていることを考えると、やはり公的年金の補完関係を念頭に置いていると読むのが自然ではないかと考えまして、公的年金と切り離した目的とすることはあまり想定していないのではないかと読んだところです。

 

○駒村委員

 「相まって」の所ですが、この法律は平成16年の年金改正以前にできているわけですから、そのときは給付水準が先決め方式ですから、そこを前提にしてという話だったと思うのです。平成16年改正は給付水準を抑えていくわけですから、そことの関係での「相まって」となってくると意味が変わってくるのではないかと思います。

税制上、確定拠出年金も確定給付企業年金もともに積立金に対する優遇や拠出金に対する優遇が出てくるわけですから、そこを考えていかないと、この時点での「相まって」の解釈と、いまこの性格を改めて考えたときの「相まって」の意味は少し違ってくるのではないかと思います。

 

○森戸委員

 要するに、両方の法律ができたときの公的年金と相まってという公的年金というのは、もう少し確固とした形であったのが、これからはそちらの相まっての部分のほうが減っていってしまうということをどう考えるかということですね。確かに、ご指摘のとおりだと思いますから、公的年金の枠組みが変わった中で、この辺りの目的規定をどのように考えていくか。なお公的年金改正後も基本的には同じようなものか、それとも異なる枠組みを考えるべきかといったところが議論になると思います。他にいかがでしょうか。18頁も併せてお願いいたします。こちらは水準の話ですが、関連すると思います。

 

○遠藤副本部長(加子委員代理)

 8頁に関して、基本的スタンスを少し述べたいと思います。企業年金の性格づけについては、共通課題の前のほうで既に説明があったように、やはり一時金との関係と切り離せないということでした。私どもも基本的にはその性格は引き続き持っているという認識で、従業員の人事政策、福利施策との関係は切っても切り離せないと考えています。確定拠出年金、確定給付企業年金の目的規定は、確かに法律に書いてあるとおりで、従業員の生活の安定、福祉といったことも含む、いわば両方の性格づけを持っていると考えます。企業年金は、従業員の退職後の生活、老後の生活に資する上乗せ年金という認識で、私的なものである位置づけに変わりはないと思っております。ただ、企業によっては従業員の生活の安定、福祉の向上に努力し得る範囲というのは相当広いと認識していただき、企業も体力的には大きな差がありますので、その辺の多様な仕組みというのも、この枠の中に入れ込んでいただいているという認識を持っております。

 

○森戸座長

 水準について、何かあればお願いいたします。企業年金に関しても、望ましい水準というものを考えることがあり得るか、必要かどうかといった議論にもなると思いますが、厚生年金基金のほうは説明が何度もあったように、一応そのようなラインがあるわけです。遡っていくと、先ほどの公務員の退職年金の話になるということでしたが、その点に関していかがでしょうか。事務局が言われた、なぜ6割かという話は、当時の計算が退職前3年間の平均の7割だから、退職前だと6割ぐらいだろうと、そことのつながりはいかがですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長

 おっしゃるとおりで、退職前3年間の平均の7割が最高限度です。計算上、最高限度は勤務期間40年で達するということです。退職前3年間の平均というのは、大体直前の9掛け程度だろうということで、結果的に直前の6割程度となります。ただ、それは計算式を申し上げているだけの話で、なぜ、そのような計算式になっているのかについてはある意味定性的です。老後の所得保障の見地、あるいは恩給といった他の諸年金との均衡を総合的に勘案して設定したと、当時の文献を見るとそのようなことになっております。

 

○森戸座長

 わざわざ確認させていただいたのは、要するに、いま望ましい水準とされているものも、結局元はそのような感じで決まっているのだということを少し確認しておきたかったのです。

 

○駒村委員

 座長が言われるように、過去の制度に依存しているだけのことですから、改めて望ましい水準というのを議論するときには、誰が望ましいと考えるかという話になると思います。ここで議論するのは、政府が公共政策上望ましい水準ということになってくるわけですから、当然公的年金の水準を考慮した上での「望ましい」というロジックが出てくると思います。何を考慮するかと言うと、公で議論するならば、当然公的水準を考慮した上での望ましさということになってくると思います。

 

○森戸座長

 そうですね。ここでの議論は、確かに現行法上厚生年金基金なり、さらに公務員の年金などにも遡って望ましい水準というものがあるわけですが、もし議論をきちんとするのであれば、そもそも6割が本当にいま国民の老後の所得保障の水準として望ましいかどうかといったところも議論しなければならないし、その中に入っているはずの公的年金の制度が変わったということも議論しなくてはいけないのです。仮に、いま厚生年金基金に適用されているとすれば、それに他の企業年金を合わせるべきかどうかといったこともあるから、議論としては2段階ぐらいの話が入っていると思います。

 

○小野委員
 アメリカと比較してという話になりますが、企業年金に関しては、アメリカも日本と同じように任意設立です。強制されていないという意味では、ここで言う前段の「自主的な努力を支援し」といったところが、任意設立ということを踏まえた上で、ある程度の税制上の恩典を与えましょうという意味があるならば、それを前提で考え、次に選択して企業年金を設立した場合は、全く制限なく税制上の恩典を与えるのはおかしいだろうという話になってくると思うのです。

 昔アメリカのことを勉強したときには、引退したとき、基本的には従前の職業生活を送っていたときと同じような生活水準を維持するためにはどの程度の所得が必要か、といったところからアプローチするのがスタンダードなやり方でした。いろいろな経費などを考えると、名目金額が給料と全く同じということでもないということを考えると、7割とかといったところが1つの目安だったと思います。そのようなイメージで日本に引き直して考えると、前回も述べましたが確定給付企業年金のほうで、昔で言う厚生年金基金の課税厚生年金基金に相当するような給付水準のものがそれほどないとすれば、基本的にはいま上限はないわけですが、実質的にはそれほど逸脱しているものではないと思います。同じような観点で確定拠出年金のほうにも当てはめるとすれば、やはり国公水準というところからきた今の望ましい水準と、こういった議論になるという整理をしております。

 

○森戸座長

 いま整理していただいたとおりですし、そもそも望ましい水準は何かという話から始めると議論が大変になります。6割か7割かだけでも実際上は大問題ですが、いずれにしても老後は現役時代よりもお金がかからなくなるのは確かだろうと。その辺りが望ましいとすると、税制優遇をするとしても、無制限に自主的に制度をつくったら何でも税制優遇というわけではない。どこまで優遇するかと言うと、国民の老後所得として望ましい水準の制度をつくれるところまでは優遇しようと、非常にシンプルに考えればそのような制度枠組みになっているという説明ができればよいということは言えるかと思います。この2点について、他に何かあればお願いいたします。

 

○藤井委員

 後の税制の問題に直結する話だと思うのですが、「優遇」と「上限」という2つのキーワードが出てきたと思います。優遇という言葉については前回何回か述べたのですが、よく考えてみると、優遇するつもりはなくても見ようによっては優遇と感じられる人もいるかもしれないので、言葉遣いはなかなか難しいわけです。意図的に優遇するかどうかという点をもって優遇を考えるとしたら、優遇あるところに限界ありだと思うのです。そのような点を考えると、後の議論につながると思いますが、いまの確定給付企業年金には限度がない、あるいは確定拠出年金には限度があるといった辺りと、税の取扱いの整合性という点がキーワードになってくるのではないかという気がします。

 

○森戸座長
 確定給付企業年金には限度がないと言う場合の限度とは、掛金の限度ということでしょうか。

 

○藤井委員

 掛金、給付のいずれも制度を発足、存続させるための要件として、限度がないということだと思います。

 

○森戸座長

 要するに、損金に入れたいだけ入れられるということでしょうか。

 

○藤井委員

 入れたいだけというか、給付設計に見合う掛金ということでは限度があるわけですが、そもそも給付設計には制限がないので、その結果出てくる掛金についても、そのような意味では限度がないということだと思います。

 

○森戸座長

 なるほど。遠藤副本部長、お願いいたします。

 

○遠藤副本部長

 企業側の意見ということで、特別法人税の設計などとも関係すると思いますが、確定拠出年金の掛金について、第1回のときに、平成19年度の税制改正要望という趣旨で拠出限度額の設計についてお話しましたが、今回は基本論に戻って認識を新たにしております。税制の取扱いについては基本的に給付時課税ということで整理した場合には、時期的な問題はありますが、一生涯を通じて公平を保てればいいと考えております。その場合、企業側の拠出については、制限を設けないということも成り立ち得るのではないかと思っております。その辺を見たときに望ましい給付水準がどのようになるかということと拠出限度の設計の話というのは、ある程度区別して考えることもできるのではないかと思っています。

 

○森戸座長
 確かに、望ましい水準が掛金なり、税制のところだけの話ではないというのはおっしゃるとおりだと思いますが、税制の話は出てくるかと思います。結局、1点目、2点目も税制の話と絡んできますので、ご意見はまだあるかもしれませんが、最初に述べた企業年金の税制のあり方という3つ目の点、すべて税制のあり方の議論だと言えばそうですが、これに関して議論していきたいと思います。

 まだ議論できていない点もたくさんあるので、資料1で具体的に指摘すると、24頁になります。これについてはより具体的な議論にしていきたいと思うのですが、特別法人税の話です。特別法人税の税率の設定の考え方が24頁で説明してあります。どのような趣旨でできた制度か、どういった計算をしているかという資料ですが、当然創設当時から状況の変化はあるわけです。いまは凍結ですが、法律上と言いますか、確定給付企業年金、確定拠出年金ともに立て前上は特別法人税課税の制度となっています。凍結が解除になって、仮に課税ということになった場合にあり方をどう考えるか。つまり、このような考え方が現状でも妥当し得るのかどうかという話です。すべて関連してきますが、2点目は25頁の企業年金についての課税のあり方ということです。いま遠藤副本部長からもありましたが、仮に給付時課税を原則とした場合の公的年金等控除、退職所得控除の適用のあり方、公的年金に準じたものについては公的年金に準じて取り扱う考え方についてどのように考えるか、(2)(3)の議論も残っております。

 29頁、先ほど述べたように特別法人税はいま凍結中ですが、平成19年度末ということでもうすぐ期限がくるわけです。凍結したときの論理というか理由というものがあったわけですが、凍結判断の根拠となった金利状況、企業年金の財政状況が大きな理由として挙がっていたわけで、仮に特別法人税が存続する場合、凍結決定時の状況と比較して現在どうなのか、どのように分析できるのかといったことをどう考えるかという話です。また、32頁は企業年金において年金払いか、一時金払いかという点に関して、税制上の均衡の問題をどう考えるかということです。

 以上、24頁、25頁、29頁、32頁と4点ほど挙げましたが、この辺りは非常に重要な点ですのでご意見をいただきたいと思っております。いかがでしょうか。

 

○野村委員

 24頁について1つ質問があります。利子税率のところで、上の囲みの中の(2)ですが、税金の延納等の場合は通常の国税に合わせて納付しなければならないものであるとなっていますが、この文言を見ると、税金の考え方はややペナルティ的な色彩があるかと思います。本来納めるべきタイミングに納めないで置いておくので税を掛けるといったニュアンスが窺えるのですが、特別法人税にはそもそもそのような性格があったのでしょうか。

 もう1つは25、32頁にも関わるのですが、アメリカの税金の掛け方を見ていると、ペナルティ課税をします、それを受けたくなければ、59.5歳という年齢まで引き出さずに、リタイアメントのための資産としてきちんと置いておきなさい、それまで置いておいたら税制優遇をさし上げますといった10%のペナルティ課税が中心的に組み立てられていると理解しております。我が国ではこのような形でのロジックにはなっていないことを承知しておりますが、そのような考え方も入れる余地があるのかどうか、議論に引用する余地があるかどうかについて教えていただきたいと思います。

 

○森戸座長

 1点目について、事務局からお願いいたします。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 ペナルティかどうかというのは価値判断に関わると思いますが、事実関係から申し上げると、いずれにしても本来は所得税として掛金の段階から給与所得と見なし、給与所得課税すべきものであるのが、その段階で納めていないので、そのような意味では遅れているということで、通常所得税等を遅れて納付する場合の利子税率を掛けているということです。

 

○森戸座長 1点目は24頁に税金の延納等の場合とあるが、延滞したわけではなくて、分割払いのときの税率といったような意味ですね。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 そうです。

 

○森戸座長 価値判断と言われましたが、簡単に言うと、本当に税金を払い忘れたときの税率ではないということですよね。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 そうです。

 

○森戸座長 もちろん、遅れて払う分多く払えということになっているのは確かで、基本的には、払う時点から遅れた分だけはきちんと取ろうという制度設計になっているのだろうと思います。

 2点目はどこに関わってくるか、要するにアメリカのように、例えば60歳なら60歳まで下ろさなければ税制優遇するが、途中で下ろしてしまうとペナルティタックスを掛けるという考え方の可能性ということになるでしょうか。

 

○野村委員 26頁の図を見ると、アメリカはおそらく真ん中の拠出時非課税、運用時非課税、給付時課税に相当すると思います。そうであっても、いま述べたように、やや逃げ道的な部分もペナルティ課税といった形であると言えばあるわけです。仮に日本でもこのやり方という議論になった場合、そのような考え方も追加して入れるようなことがあり得るのかという意味合いです。

 

○藤井委員 余計なことかもしれませんが、26頁で考えることがあります。優遇、優遇でないという主観を含む議論になってしまうところですが、いちばん上の列といちばん下の列は随分違いがあるような感じがします。しかし、真ん中の列についてよくよく考えてみると、これが本当に優遇かどうかは何とも言えないところがあると思うのです。

私が多少読んだところでは、米国の場合でもこれを指して優遇しているという施策が意図的にあるかどうかというのはあまり知らないところで、ただ現実的に効果としてよく言われることは、累進課税がある関係上、現役の間の相対的に高い年間所得を一部控除して、全体的に所得水準が下がったところで取り崩していき課税すると。結局、その点で実質的に税的優遇効果が得られるということを意図しているとすれば、ある意味優遇はしていますが、それは累進課税と時の経過によって得られることです。

 逆に言うと、その点を除くと意図的に優遇しているかどうかということは、どうとも言えないのではないかと思うのです。特に、運用時非課税と言ってみても、運用益をそのときそのとき取り出してはいないし、税の川の向こう側でやっていることなわけですから、そこでぐるぐる回しても出所はないわけです。結局出るときには元本であれ、運用益であれ、そのとき課税するので、真ん中の列についても必ずしも優遇しているとは言えないといった仕切りではないかという気がいたします。

 

○森戸座長 野村委員の先ほどの話に少しだけ戻りますが、野村委員の意見は、税金の話はもちろん重要だが、途中で引き出すような可能性をもう少し認めるかどうかということとセットではありますね。

 

○野村委員 そうですね。

 

○森戸座長 個別の課題は後ほど資料で説明していただくことになっていますが、中途引出しといった議論もあるのですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 あります。

 

○森戸座長 それではそこでもまた議論させていただきます。優遇かどうかという藤井委員の意見ですが、いまの委員のお話は、運用益が非課税だから得だという見方はできるが、逆に、運用益と言っても別に自分が使えるお金が増えたわけではないし、利益が生じたから税金を払えという話でもないのだから、出るときにまとめて課税するということであっても、税制上特に優遇してはいないという考え方もあり得るということですか。

 

○藤井委員 おっしゃるとおりです。見方の問題、価値観の問題もあるかもしれませんが、そうとも取れるのではないかということです。似て非なる例ですが、かつて貸付信託のビッグ、長銀のワイドなどいろいろあったのですが、当時はマル優の非課税枠というのがあって、5年間利息が払われても、それを受け取ることなく元本に追加して再び運用することをもって、5年後に全額受け取ると考える税制というのがあったと思うのです。逆に言うと、引き出したらペナルティがあるのかもしれないのですが、引き出さない限りは、計算上の問題であって利得ではないのだと思うのです。結局、受け取るときに課税すればよろしいということが考えられるから、1つの考え方としては必ずしもこれを指して優遇しているとまでは言えません。ただ、優遇的色彩はあることはあるから、その点をどのように考えて税を含めた制度設計をしていくかという点はあるにしても、これをもって直ちに優遇しているとまでは言えないのではないかと思います。

 

○森戸座長 藤井委員は税制優遇が意図的か、そうでないかということと、税制優遇的な色彩があるかどうかといろいろな概念を出されましたが、言っていることは全部わかります。要するに、何をもって優遇とするかというのは結構微妙な問題だということですね。企業年金だから簡単に税制優遇と言ってしまいますが、以前島崎委員が言われたでしょうか、何と比べるかにもよるでしょうし、給料として払うよりはという意味か、利益としてとっておくよりはという意味か、また、触ることができないのだから、税金を取らないのは当然ではないかという見方もできるでしょう。何が優遇かという話をする場ではないのですが、いずれにしてもどのような考え方に基づき、何と対比したらどうかということを忘れないように、きちんと議論しなければならないということが言えると思います。

 

○駒村委員 24、25、26頁のところで、運用時課税をやめて給付時課税に統一するという話ですが、24頁にあるように、運用時課税の税率は平均的な上積税率が根拠になっており、平均的な人間がいれば、あとはタイミングの問題になってくるわけですが、給付時になると退職後の所得が違うので、直面する限界税率が変わってきますから、ミクロの話とマクロの税を掛けるという話は効果が違ってきてしまいます。シミュレーションをやってみる必要があるかどうかわかりませんが、その辺を考慮しておかないとおかしなことになると思います。

 

○森戸座長 24、25、29、32頁の辺りでご意見があればお願いいたします。

 

○藤井委員 32頁で、公的年金等控除と退職所得控除の関係、あるいはその全体の水準等に関する点で、あまりよく覚えていないのですが、公的年金等控除に関しては数年前に相当縮小が行われたような記憶があります。その結果、割合に課税されるケースが多くなっているのではないかという気がいたします。一方、退職一時金に関してはさほどではないという経緯があると思いますので、均衡という観点からどうかという点と、公的年金等控除をいま削減している状態にあることを考えると、先ほどの望ましい水準との関係で、税の恩典というか、優遇というのは微妙な言葉になったわけですが、その辺りとの整合性を見たとき、果たして現在の水準が妥当かどうかという議論はあるのではないかと思います。

 

○森戸座長 公的年金等控除の水準ということですか。

 

○藤井委員 そうです。望ましい年金の水準を置くという前提に立つと、それによって特別法人税の運用時に着目しがちですが、さらに言えば、受取り時に関する本人に対する措置との整合性は十分だろうかといった感じを持つということです。

 

○森戸座長 一時金の場合は、それなりの枠があってもたくさんもらう人がいるでしょうが、公的年金等控除は公的年金をもらって、その上に余りがあれば企業年金ということになります。それでいくと、企業年金をもらう人は公的年金もそれなりにもらうだろうと考えられるから、そんなに枠はないかもしれないです。その辺りの均衡をどう考えるかということも意識する必要があると思います。24頁については一応ご意見をいただいたと思います。

 29頁の特別法人税の凍結時の論理についてですが、金利と企業年金の財政状況だけを理由にするのであれば、結構良くなったのではないかと言える可能性はあるわけですから、そこで考えるのか。それとは別に、そもそも企業年金のあり方として特別法人税を見直すべきといった議論を他の頁でしておりますが、凍結に関して何かあればお願いいたします。ここに限らず、他の頁でも結構です。

 

○小野委員 前回、支出課税や包括的所得課税といった話をいたしましたが、少し話が錯綜していた面があったと思います。企業が負担するにしろ、個人が所得税として支払うにしろ、それなりのコストにはなるわけで、仮にそのコストがいま支払って、いま使ってしまうことに比べて、年金のほうが不利という結論、それは支出課税、包括的所得課税のどちらでもいいのですが、年金のほうが不利という評価になってしまうと、任意設立という前提があるので、職域の年金などはやらないという話になりかねないです。

それから考えると、現行の特別法人税の設定基準は理屈としてはわからないわけではないですが、運用時の限界税率と比べると、かなり高いものを取っているのではないかという気がします。

 支出課税からすると、当然撤廃すべきだという話になるし、包括的所得課税だとしても、やはり著しく不利といった評価が成り立ち得るのではないかという気がいたします。

 

○森戸座長 ヒアリングでもずっとそうでしたし、ここにいらっしゃる方も、特別法人税に関しては廃止したほうがいいという意見が多いと思いますが、言わないと議事録に残りませんので何かあればお願いいたします。何か言えということではなく、みんなそう思っているだろうでは議事録に載りませんから、いまのような感じで意見を出していただければと思います。

 

○藤井委員 前回の宿題ということで、事務局から改正経緯を出していただきましたが、これを見ながら一部推定を含めて考えると、当時特別法人税が凍結されていたが故に、特別法人税をどうするかということと制度の仕組みをどうするかという議論が、たぶん途中で止まってしまった状態で、そうは言っても特別法人税は掛からないのだからいいではないかということで、船をこぎ出したのではないかという気がするところです。したがって、少なくともいまの制度設計を変えないまま、特別法人税が復活することはあり得ないだろうと思うのです。それは当時本当に特別法人税があると考えた上で、凍結されていないという前提の下で、それに対してどうするかという議論がぎりぎりのところまでは行われていないのではないかという印象を持つからです。

 今般、いずれにしてもその議論は十分しなければならないのではないかと思います。

それではどのようにするかという点は、反論する方がいるといけませんが、細かい点は別として、特別法人税を適用しないとする場合、全く制限なく青天井で、単に特別法人税そのものをなくすという形が果たして妥当かどうかという感じを私自身は持っておりますし、何らかの限度などといったことが出てくるのではないかという感じがします。

逆に言うと、そのような限度を設けた上で限度内については適用しないというのが、全体としては妥当性があるのではないかという気がします。というのは、年金の適格性の要件を付加するといった議論になってしまうと、制約をさらに多くするようなことになりかねないです。中身については後で議論に出ると思いますが、そうではなく金額的な限度を設けることで少し自由度を増すといった方向性の議論も必要だと思うところもあるので、限度額といったような議論が正当ではないかという感じがいたします。

 

○森戸座長 なるほど。お金のことだけ見ると全部廃止になってしまえばいいのかもしれませんが、理論的にそれは老後の所得保障のためだから特別法人税も掛けないということになると、老後の所得保障に合わせた制度設計をということになり、規制を強くしろということとセットになり得るかもしれないが、特別法人税もここまでは掛からないということにすれば、先ほどの自主的に任意に制度をつくり、労使、企業に自主的に制度をつくってもらおうという目的に、うまく叶った形で規制できるのではないかというお考えですね。

 

○藤井委員 そのような感じです。

 

○森戸座長 なるほど。非常に貴重な意見だったと思います。特別法人税に関してはまだいろいろあると思いますので、特別法人税だけではなく、いまの4点ほどで何かご意見があればお願いいたします。

 

○伊藤部長 素人臭いのですが、私どもとしては、公的年金等控除については公的年金の補完関係にあるものを法律上求めているのではないかという考え方をしたわけですが、25頁の(3)にもあるように、公的年金に準じたものの税制についてはそれに準じた扱いをするという考え方があり得るのではないかと思います。そこでいま水準の問題があるのでしょうし、公的年金は基本的に終身ですし、終身であるということを厚生年金基金や特例適格退職年金などはメルクマールにしています。支払保証、確定拠出年金であれば、投資教育といったようなものは全く加入者の責に帰することで補完できるのかと思います。公的年金に準じたものとしての、ある程度の条件を備えたものについての税制上の取扱いということではないかと考えております。

 

○森戸座長 まさにそのような辺りを25頁で指摘しているところです。

 

○遠藤副本部長 繰り返しになりますが、ある程度の自由度といったものを損なうような形にしてしまうと、企業年金の普及の阻害になってしまうといった側面も十分考慮していただきたいと思います。

 

○森戸座長 わかりました。まだご意見もあると思いますが、この研究会でどのように結論をまとめていくかこれから考えていくところですから、意見をいただく機会はまだあると思いますので、取りあえずここは一旦切らせていただきます。次に、資料3の「個別制度の課題について」の議論に入りたいと思います。この資料は事務局にご尽力いただき、詳細なものを作っていただきました。まず事務局に資料の説明をお願いいたしますが、時間の関係で全部説明していただくとそれだけで終わってしまいますので、まず確定拠出年金の部分を説明していただき、残りの時間で議論していきたいと思います。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 資料3は「個別制度の課題について」です。目次をご覧いただくと、確定拠出年金と確定給付企業年金と2つありますが、本日はいま座長から指示があった確定拠出年金について説明いたします。確定拠出年金は大きく分けて制度共通の加入要件の問題、企業型、個人型とそれぞれ課題があろうかと思います。これまでの議論を踏まえて、目次のように整理いたしました。

 次頁は加入要件についてです。加入要件の中でもいくつか課題がありますが、まず第3号被保険者です。現行の制度では、第3号被保険者は個人型の加入対象とされておりません。これは制度創設当時の整理、議論ですが、第3号被保険者は税制優遇措置、いわゆる所得控除の対象となる所得がないので、確定拠出年金への加入のメリットがないのではないかというのが1点目です。2点目は極めて制度論で、公的年金制度においては第3号被保険者について自身の保険料負担がないわけですが、公的年金制度においても、当時も第3号被保険者について総合的な検討が行われている状況であったことから、公的年金における検討結果を踏まえ、確定拠出年金における取扱いを検討することとされております。このような経緯を踏まえて、第3号被保険者を確定拠出年金の対象とすることについて、どのように考えるかという論点があろうかと思います。

 (3)は多少技術的なことになりますが、仮に第3号被保険者を加入対象とする場合ということで、企業型の拠出限度額は厚生年金基金の望ましい水準である退職直前所得の6割を確保することを勘案して設定されているわけですが、その算出においては夫婦の基礎年金額を前提としていることから、企業型の拠出限度額のあり方についてどのように考えるかということです。いまの(3)の点は4頁にありますが、退職直前給与の6割というのは、夫婦2人の基礎年金をベースに、夫の厚生年金とその不足分を望ましい上乗せ水準で確保するということです。いわば夫婦2人世帯をモデルに望ましい水準が設定されているわけです。したがって、個人型の第3号被保険者は、純粋に上乗せと言った場合は望ましい水準の、いわば上乗せ的な水準になるという議論がありまして、そこは公的年金における第3号被保険者のあり方とも絡むわけですが、限度額についてもそのような議論があり得るということです。

 5頁ですが、2点目の加入要件で大きなものとしては公務員の議論があります。制度創設時において公務員については、まず企業型ですが、公務員の事業主は当然のことながら国または地方公共団体ですので、事業主拠出となると、いわば公務員の処遇に関する事項ということになります。こういった企業型を採用するかどうかについては、通常の公務員の処遇と同様、民間の動向等を踏まえながら、例えば人事院勧告等を経て検討すべきものと整理された経緯があります。一方、個人型については現行制度である事業主からの企業年金に係る支援が全くない者、いわば3階の企業年金が全くない方についてのみ加入の道を開くということでしたが、公務員については職域加算があるので、均衡上認められないことになっております。公務員については別途被用者年金一元化に伴い、現行の公的年金としての職域部分、3階部分を廃止し、これに代わる新たな公務員制度としての仕組みが現在検討されているところですが、公務員に対する確定拠出年金のあり方についてどのように考えるかという論点はあろうかと思います。

 以上の2点に比べると、6頁はやや小ぶりな問題点ですが、他の企業年金があるサラリーマンの取扱いについてです。現在、個人型に加入できる企業の従業員は、他の企業年金制度がない者に限定されているわけですが、これは制度創設当時、公平性の観点から、いわば谷間の方についても自助努力による老後の備えを行うことが適切であるという考え方で、例外的に個人型加入者になることができるということです。基本は自営業者であったわけですが、企業の支援を受けられない他の企業年金がないサラリーマンについても、例外的に個人型加入者になるといった整理がなされているわけです。

 一方、他の企業年金がある企業であっても、企業型単独実施の場合は月額4万6,000円の拠出限度額ですが、この半額を限度として企業型確定拠出年金を実施することは可能だということです。資料4の下の箱で言うと、真ん中の企業型DCの右側ですが、仮に確定給付企業年金があっても、企業型の確定拠出年金を月額2万3,000円まで実施することが可能ということです。そうすると、確定給付企業年金と企業型確定拠出年金の双方を実施している企業のサラリーマンと、図で言うと右端の確定給付企業年金のみ実施している企業のサラリーマンとの老後の所得保障という観点からの均衡について、どのように考えるかといった論点があろうかと思います。以上が加入要件の議論です。

 7頁からは拠出限度額の議論です。先ほど来、撤廃論といったこともありましたが、まず拠出限度額のあり方です。現在、確定拠出年金制度においては厚生年金基金や確定給付企業年金とは異なり、企業拠出及び個人拠出について、拠出限度額が設定されております。これについて当時の議論をひもとくと、1つは確定拠出年金について、貯蓄と区別するための方策の一環であるという説明がなされております。もう1つは具体的な限度額の設定ということで、確定拠出年金制度は税制上の措置と密接不可分であり、掛金額を税制上の措置が講じられる範囲と一致させるために設けられたということです。

このような確定拠出年金の拠出限度額の設定についてどのように考えるかということです。拠出限度額が必要か否かということも含めてです。また、仮に拠出限度額を是とした場合ですが、拠出限度額が厚生年金基金の望ましい水準を勘案して設定されているので、特別法人税の非課税ラインと一致しているわけですが、一方で特別法人税が課税となっているということをどのように考えるかということです。冒頭で申し上げましたが、平成12年度の厚生省としての税制改正要望としては、運用時において、特別法人税は非課税という要望をしている経緯があります。

 8頁は、拠出限度額の具体的な設定の考え方についてです。これは他の企業年金がない場合の月額4万6,000円の純粋な基本となる拠出限度額です。これまでご説明しているとおり、退職直前給与の6割確保という考え方で設定されていますが、この設定の考え方についてどのように考えるかということです。先ほど企業年金の水準についてもご議論いただいておりますのでかなり関連しますが、こういった考え方についてどのように考えるかということです。

 ちなみに、これは前回もご説明しましたが、資料6の図ですが、給付ベースで見て退職直前給与の6割を確保するということで、給付ベースの右側の箱ですが、現在は基金の代行部分の2.23倍が企業年金で確保すべき水準ですが、確定拠出年金の限度額についてはこれを掛金ベースに置き換えるということで、免除保険料率、掛金ベースの真ん中に3.2%とありますが、これがその当時の推計で基金の代行部分に相当する保険料、それから、その上乗せ部分が2.23倍ですので、掛け合わせると約7%程度ですが、これにサラリーマンの給与の大多数のカバー水準ということで65万円を掛け合わせ、現在、月額4万6,000円という水準になっています。

 9頁は、少し応用問題です。他の企業年金ありの場合は現在、他の企業年金なしの場合の半額になっていますが、その考え方です。企業型の拠出限度額については、厚生年金基金あるいは確定給付企業年金に加入している方と加入していない方との間で不公平が生じないように、企業型の拠出限度額から他の企業年金に拠出する掛金相当額を控除することが適切であるというのが基本的な考え方です。しかしながら、現実には、企業年金の掛金には積立不足分の掛金も含まれているので、他の企業年金の掛金を個人ごとに明確に区分することは困難であるということで、制度創設当時の厚生年金基金の上乗せ部分の給付水準が、望ましい水準のおおむね「半分」であることを考慮し、一律に「他の企業年金なし」の場合の半額ということで整理した経緯があります。このような限度額の考え方についてどのように考えるかということがあります。

 また、要望等でもいだいておりますが、例えば企業ごとに確定給付型の企業年金の掛金と確定拠出年金の掛金とを合算した拠出限度額を設ける、こういったご要望があるわけですが、どのように考えるかということです。「また、その場合、制度創設時における議論をどのように考えるか」と書いてありますが、実務上なかなか難しいという点もありますので、そういった点をどのように考えるかということです。以上が拠出限度額の関係です。

 10頁からは、企業型における個人拠出、いわゆるマッチング拠出についての議論です。

マッチング拠出については、アメリカでは従業員拠出について企業が支援するというものであり、マッチング拠出の定義が必ずしもはっきりしないという議論もありますが、これまでの日本における議論を踏まえ、ここでは、企業型における個人拠出ということをマッチング拠出と定義して議論を進めるという前提で資料を作成しております。企業型における個人拠出、いわゆるマッチング拠出については、制度創設当時の国会等での議論ですが、個人による老後の所得保障を支援するという考え方はあり得るということですが、従業員本人の拠出を任意とし、しかも運用方法まで自ら選択するという仕組みでは貯蓄と変わらないのではないか、このようなご意見もあり、今後の検討課題とされたという経緯があります。

 他方、個人型については、このような仕組みで本人拠出が認められているわけです。

これは、従業員拠出を認めなければいわゆる3階部分を全く利用できないこととなりますので、こうした方に限り、加入者拠出を事業主の拠出とみなして加入の道を開いたものとされています。このような制度創設時のいわゆるマッチング拠出の考え方について、どのように考えるかということです。突き詰めて言いますと、企業型における個人拠出と個人型における個人拠出について区別して考える必要があるかどうか、このようなご議論かと思います。また、マッチング拠出については、目的ですが、老後の所得保障の支援が確定拠出年金法の本来の目的ですので、それがベースになろうかと思いますが、以前この研究会でもご議論がありましたが、加えて本人の投資意欲の促進などの、他の目的も考えられるのかどうか、こういった点が論点かと存じます。

 11頁以降は、仮にマッチング拠出を導入した場合の制度設計の具体的なあり方について、ということでいくつか事務方で論点としてたたき台を提示させていただくものです。

仮に企業型における個人拠出を導入する場合ということですが、その拠出限度額についてどのように考えるか。

 具体的に申しますと、現行の拠出限度額月額4万6,000円または2万3,000円の枠内とするのか、枠外とするのかという議論です。仮にその枠内、枠外とする場合には、各々、どのような哲学、考え方に基づいて設定するのかということです。

 それから、これはもう少し細部の話になりますが、仮に認める場合、厚生年金基金、確定給付企業年金においては個人拠出が認められているわけですが、企業拠出を上回らないことという要件があります。いわば、加入者に負担させるのは労使折半までという要件があります。仮に企業型における個人拠出を導入する場合に、企業拠出と個人拠出のこういった関係についてどのように考えるかというご議論があろうかと思います。

 12頁です。いま「労使折半まで」と申し上げましたが、確定給付企業年金法施行令で、下のほうの箱ですが、第35条第1号にこういった要件が課されています。13頁では厚生年金基金についても政令を提示しており、書き振りは違いますが、結果としては同じような要件が課されているということです。

 14頁です。企業型における個人拠出の掛金額の設定方法、設定のあり方についてどのように考えるかということです。具体的に申しますと、本人拠出を出すかどうか、その額をどうするかということについて、個人の選択についてどのように考えるかということです。裏から申しますと、もともと企業型の導入自体が労使合意マターですが、労使合意された場合にはその企業単位で本人拠出を強制することがあるのかどうか、そのようなことについてどのように考えるのかという論点です。ただ、仮に強制を認める場合、確定給付企業年金においては、本人拠出については本人同意が必要となっているという現在の仕組みがあります。一方で確定拠出年金においても、個人型については個人が掛金額を決定するということになっていますので、仮に強制とする場合にはこういったものとの均衡論があろうかと思っております。

 (2)です。前回ご指摘がありましたので、マッチング拠出についてもあえて論点として加えさせていただいておりますが、企業型における個人拠出の掛金額については、特定の者に不当な差別とならないようにすべきと考えるが、どうかということです。

 参考資料です。14頁の確定給付企業年金における本人掛金負担については、資料10の確定給付企業年金法施行令第35条第2号ですが、加入者の同意が要るということです。

 16頁です。確定拠出年金においては、もともとその加入者とすることについても規約で一定の資格を定めることができる、一定の資格の方に限定することができるということが法律上定められていますが、基本的には特定のものについて不当に差別的なものでないことということで、一定の職種、一定の勤続期間、一定の年齢、または希望する者と、この4つの要件のいずれかに該当する場合に限るというのが基本的な考え方です。

 18頁です。いちばん最初の研究会、あるいは2回目の研究会だったと思いますが、マッチング拠出の場合に政策論としていちばん議論になるのが高所得者優遇になるのではないか、このようなご指摘があったかと思います。企業型における個人拠出の拠出限度額について、仮に現行の拠出限度額の枠外とした場合には高所得者優遇となるのではないか、というご指摘についてどのような考え方になるのか、というのが1点あります。

また、仮にその枠内とした場合にも、高所得者優遇となるのではないかというご指摘があろうかと思っております。

 ただ、その枠内の場合ですが、これは考え方がいくつかあろうかと思います。1つは、現行の掛金拠出のルールの大半が定率ということです。その下の資料12にありますが、規約数、加入者数で見て、約9割が定率ですので、一般的に給与が高い方には企業による拠出が多いという実態があります。逆から言いますと、高所得者は、個人拠出の枠が少ないということがあります。ですので、必ずしも高所得者優遇とはならないとも考えられるのではないかと。これは1つの考え方ですが、そういった考え方もあるのではないかということで論点として挙げております。

 19頁は、他の制度との関係についてです。これは個人年金保険等との関係です。これはもともと個人型の創設当時も同じ議論だったかと思いますが、企業型で個人拠出を認める場合にも同じような議論があろうかということで挙げております。現行の個人年金保険等とのバランスについてどのように考えるかということです。高所得者優遇論とも関連しますが、通常は控除が5万円程度までしか認められていないわけですが、確定拠出年金の企業型において個人拠出を認めた場合にもそういった高所得者優遇論、あるいは生命保険との関係ということが出てこようかと思います。以上がマッチング拠出の関係です。

 続きまして投資教育の関係です。確定拠出年金制度は企業または個人が将来の年金のために拠出、積立てをして、加入者が自己責任において運用を行い、年金として受け取るという仕組みです。自己責任ではありますが、加入者の運用が円滑に実施されるように事業主が労働者に対して投資教育、情報開示等の体制を整備すべきではないか。このような考え方に基づき、現在、事業主に対し、投資教育等の努力義務が課されています。

しかしながら、確定拠出年金においては、このような自己責任原則が基本ではあるものの、我が国においては投資が活発ではなかったこと、あるいは確定拠出年金においては加入者の運用如何によって老齢給付額が変動することから、確定拠出年金における投資教育が重要なものであるということで努力義務がかかっているわけですが、現在の運用では事業主が行うべき投資教育の範囲が不明確である、というご指摘があります。このようなご指摘を踏まえて事業主が行う投資教育、特に継続教育について、例えば具体的な教育内容を明らかにするなど、事業主が取り組みやすい環境づくりについて、どのように考えるかという論点があろうかと思います。

 さらに、次からはいわば制度論ですが、特に事業主サイドからということですが、例えば投資教育として具体的な行為を列挙した基準を作成し、基準にある行為を行った場合には、事業主が免責されるという仕組みのご要望もあるわけですが、こういったことについてどのように考えるかという論点があります。

 また、ある意味でその逆のベクトルですが、投資教育については、現行法においては事業主の努力義務とされていますが、投資教育の重要性にかんがみて義務化するということについてどのように考えるか、このような論点もあろうかと思います。ただ、その場合には、加入者の自己責任原則との関係をどのように考えるか、整理するかという議論があろうかと思っております。

 22頁です。このような論点を考えるに当たっての基礎資料ですが、これまでの資料を整理したものです。特に継続教育です。右側の円グラフですが、実際に実施しているのは約3割に過ぎず、残りの7割は実施していない、あるいは計画中ということです。したがって、継続教育については、実態としては、まだあまり十分に行われていないという状況があります。

 24頁です。一方、以前ヒアリングをさせていただいたNPO法人で行ったアンケート調査です。企業の担当者に聞いたところ、「継続教育の必要性を感じている」の項目で、「非常に感じている」が約4割、「やや感じている」が約4割ということで、8割近くの方が継続教育の必要性を感じているという状況です。

 25頁は、投資教育の具体論です。1つは個人情報の取扱いです。現在は、記録関連運営管理機関(RK)が個人情報、実際には事業主がいわゆるRKに委託しているのが一般的ですので、RKにおいて個人の投資情報を持つのが一般的です。したがって、事業主に対する個人情報、すなわち投資情報の提供は、本人同意が原則ということで制限がされています。一方で、事業主が個人ごとの投資教育をきめ細かに行うためには個人の投資情報を把握したいというご希望がありますが、こういったことについてどのように考えるか、いわば個人情報の保護の特例的な扱いをするのがよいのかどうかという議論があろうかと思います。仮に個人情報の提供が難しい、なかなかそうは踏み切れないといった場合には、その事業主からいわば呼びかけ方式で、手を挙げた方についてのみ個別の投資教育を行うという形になろうかと思います。いわば次善の策ですが、こういったやり方についてどのように考えるかということです。

 (2)は、在日米国商工会議所(ACCJ)の要望等で出てきたことです。加入者が投資教育を受けた上でもなおかつ専門家の意見を聞きたいという場合に、投資アドバイス・サービスを提供できるようにするということもあろうかと思います。このようなことについて議論あるいは問題点がないかどうかということです。

 (3)は、さらに一歩進めてということで、いわば制度論です。事業主が投資アドバイス・サービスをやるに止まらず、例えばオランダのコレクティブDCを参考として、加入者から運用の委任を一括で受けて事業主の判断で運用するといったやり方についてどのように考えるか、というのが制度的にはあるのではないかということです。ただ、その場合には、加入者の自己責任と事業主の運用責任、この責任関係の分担のあり方についてどのように考えるかという論点を避けては通れないのではないかということです。

 26頁は、運用商品の除外についてです。やや個別の課題ではありますが、現場のニーズは非常に高いと聞いておりますので、論点として挙げさせていただいております。

 運用の方法、その商品については、規約で定める事項とされており、運営管理機関等は、規約の定めるところに従い、専門的な知見に基づいて商品を選定し、加入者等に提示することとされています。また、その加入者は、提示された運用の方法から商品の選定を行い、運用の指図を行うこととなります。そういう意味では、入口では事業主あるいは運営管理機関のいわば判断で運用商品の選定がなされるわけですが、一旦提示された運用を行った後にその商品を除外する場合には、運営管理機関等は、その運用商品選択している加入者等全員の個別の同意が必要とされています。

 しかしながら、これはご要望ですが、確定拠出年金制度が定着して運用商品が充実する中で、手数料が安い、あるいは商品としてさらに良い商品が出来たというような観点から、新たな商品を追加する際に事実上既存の商品を除外しないと、システムの関係上運用商品の追加ができないということもあり、除外したいと思っても、事業主には加入者個人の運用商品の情報がないことから、運用商品の除外を行うことが困難となっているといった事情があります。このような事情を踏まえ、加入者の個別の同意がなくとも運用商品の除外が行えるようにすることについて、どのように考えるかという論点があります。また、その手続きを全くなくすと加入者保護の観点に欠けるのではないかという議論もありますので、労使合意など、個別同意に代わる手続きをとることについて、どのように考えるかという論点もあろうかと存じます。

 29頁は、中途脱退についてです。まず、企業型からの直接脱退です。企業型からの直接脱退については、制度創設時においては、確定拠出年金が老後の所得保障のための制度であるということで、中途脱退は基本的に一切認められていなかったわけです。しかし、平成16年の改正により、資産を個人型に移換した場合にその手数料等で年金資産が枯渇してしまう、全くゼロになってしまうという方、具体的には資産額が1.5万円以下の方については、直接脱退が認められた経緯があります。

 また、平成19年度の税制改正において、資産額が50万円以下の方などについては中途脱退を認めるよう厚生労働省から要望いたしました。議論の結果ですが、企業型からの直接脱退は認められずに、個人型移換後に資産額25万円以下の方などについて中途脱退を認める方向で検討することとされている経緯があります。これは経緯ですが、確定拠出年金の性格等に照らして中途脱退要件のあり方についてどのように考えるか、緩める方向で考えるのか、いわば年金性の担保の観点からはあまり緩めるべきではないのか、こういった議論があろうかということです。以上が企業型です。

 続きまして個人型の議論です。まず拠出限度額についてです。ここは企業年金の議論ですので、特に企業年金がないサラリーマンの議論ということです。個人型(企業年金がないサラリーマン)の拠出限度額については、現在、月額1万8,000円です。これは、企業年金の加入者が企業から受けている支援の実態を考慮するという考え方の下、制度創設当時、当時唯一の企業年金であった厚生年金基金の、現に掛けている掛金の状況を勘案して設定されたものです。まず、これは制度創設当時の考え方です。

 基本論です。(2)で「このため」ということで、個人型の拠出限度額は企業型の拠出限度額よりは非常に低い額となっているわけですが、サラリーマン全体の老後の所得保障を公平に確保するという観点から、個人型の拠出限度額が企業型より非常に低いことについてどのように考えるか、というのがまずは基本的な論点かと思います。

 (3)です。現行の基本的考え方、即ち企業年金の企業から受けている支援の実態、いわば企業年金の掛金の実態を考えるという基本的考え方を変えないとしましても、確定拠出年金制度の創設時とは異なり、現在は厚生年金基金の掛金のほかに確定給付企業年金及び企業型の確定拠出年金の掛金の実態もあるわけですが、こういったことをどのように考えるか。この3つをどのように考えるか。特定のどれかにするか、あるいはこの3つを総合勘案するかといろいろな考え方があろうかと思いますが、そういったことについてどのように考えるかということです。

 (4)です。仮にその企業型における個人拠出を導入することとした場合、企業型における個人拠出の限度額と個人型の限度額との均衡について、どのように考えるかということです。

 31頁は、マッチング拠出との関係についてです。これは何を示しているかと言いますと、左から2つ目の箱ですが、現在、企業型DCで事業主拠出が月額4万6,000円までできるわけです。ここで仮に本人拠出が枠内で導入されるとした場合に、例えば折半ですと2万3,000円までという本人拠出になるわけですが、それと比較しても個人型DCの本人拠出が低いため、このようなことについてどのように考えるかといった論点です。

 32頁は、厚生年金基金、企業型確定拠出年金、確定給付企業年金の掛金の状況についてです。左上が厚生年金基金です。平成16年度の決算ベースですが、この割合については、平均の掛金額がこの額に収まっている基金数の割合ということです。1万円以下の基金が8割、1~2万円の基金が93%程度ということです。現在の個人型の掛金額は月額1万8,000円ですが、この1~2万円の間でちょうど9割になっているといった状況を勘案して、現在、1万8,000円に設定しているということです。

 ちなみに、その下が企業型確定拠出年金の掛金額です。1万円以下が48%と半分以下、1~2万円が8割、2~3万円が93%程度ということで、約9割ということになると、2~3万円の間になります。

 また、その右上で、確定給付企業年金の掛金はそれよりも高い水準です。1万円以下で3割、2万円まででも7割、2~3万円でちょうど9割ぐらいに達するという水準です。

企業年金によっても相当程度、種類によって掛金の水準がばらついているという状況が

あります。

 33頁は、自動移換についてです。これまで、自動移換者は約5万人と説明してまいりましたが、直近の1月末現在の数字で言いますと、自動移換者は約8万人を超えているという状況です。ですが、自動移換者に係る年金資産は、現行制度では権利関係が不明確なままになっており、自動移換者が個人型への加入の意思を表示しない限り、受給権も発生しないという取扱いとなっています。権利関係が不明確な自動移換者に係る年金資産について、一定の年齢に達した者については受給権を発生させるという取扱いもあろうかと思いますが、こういった考え方についてどう考えるかということです。

 また、自動移換者の発生の未然防止には入口と出口の対策があろうかと思います。未然防止のためには、退職による企業型の資格を喪失する際に、企業から十分な情報提供をしていただくことが重要だと思いますが、事業主の情報提供のあり方についてどのように考えるかということです。

 さらに、これは第3回研究会でRKからのご要望を受けて議論があったわけですが、企業型の規約の中で企業の退職後に個人型への加入の意思を表示しなかった方について、個人型に移換した場合にはこのファンドに入ってくれとあらかじめ特定することにより、自動移換者を未然に防ぐという方法についてご提案があったわけですが、これについてどのように考えるかという論点があろうかと思います。

 ただ、このご提案自体、アメリカにおいて、IRAが複数ある中でそのIRAを特定した上で、そのIRAの商品も特定して企業型で定める。このようなアメリカの制度を参考にしたものかと思います。日本においては、国民年金基金連合会に移換するということがあらかじめ法律上定められていますので、アメリカとはその事情が若干異なるのではないかという点があるということと、既に退職した方について企業が規約で商品を特定するところまでやるのがいいのかどうか、こういった論点もあろうかと思います。

 なお、平成19年度の税制改正において自動移換者についても、資産額25万円以下の方については正規の加入手続きをとり、2年間運用指図者となった場合には、脱退できる方向で検討することとされているわけです。

 34頁は、いま申し上げました自動移換者の現状についての資料です。数字だけご説明します。真ん中の表のいちばん右側をご覧ください。企業からの移行者のうち、正規移換の方が約7万3,000人、自動移換の方が約8万5,000人という状況です。

 ちなみに、今回の税制改正でメルクマールにしております資産額25万円以下のラインを見ていただきますと、正規移換の方で累計構成比が28%、自動移換の方で77%、合計で54%となっており、全体で約5割の方、自動移換者に限りますと、資産要件についてのみ見ますと約8割の方が該当するという状況にあります。

 35頁は、中途脱退者に対する個人型DCへの移換説明の状況についてです。企業年金連合会のアンケート調査です。「特に何も説明がない」が約1割、「書類交付をする」が約7割、「退職時に口頭で説明する」が約3割です。これは複数回答ですが、逆に言いますと、書類交付のみで口頭で説明もないというのが4割ぐらいあるのかとも見えるかと思いますが、そのような状況であるということです。長くなりましたが、資料説明は以上です。

 

○森戸座長 ありがとうございました。本日、残りの時間は30分を切っており、限られているのですが、個別制度の課題としてまとめていただいた点については一つひとつ丁寧に議論することが重要だと思いますので、項目ごとに分けてご意見を伺っていきたいと思います。本日は、まず確定拠出年金について項目ごとにできるところまで議論して、時間の関係で全部は無理かと思いますので、残りは次回に回したいと思っております。それでは資料3の2頁、加入要件に関して皆様からご質問、ご意見をいただきたいと思います。

 

○駒村委員 第3号被保険者の取扱いのところですが、資料には「公的年金における検討結果を踏まえ」と書いてあります。平成16年改正で第3号被保険者の扱いのどこが変わったかと言うと、保険料を負担しないのは変わらないのですが、3号分割、年金分割が入ったということです。あれが入ってきたことで基礎年金の負担をしているかしていないかという議論が出てきたわけで、第3号被保険者は夫とともに基礎年金の保険料分の負担を潜在的にやっている。したがって、報酬比例部分ももらえる潜在的な権利が発生したと理解しているのですが、そこの検討結果はその理解でよろしいのでしょうか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 基本的にはご指摘のとおりです。

 

○森戸座長 ご指摘のとおりというのはどのように理解したらいいのですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 そのような議論も踏まえ、離婚時の分割の話が整理されたわけです。ただ、一方でその3号問題そのものについては、どのように整理するかということ自体は課題となっていますので、それ自体は今後の課題として引き続き公的年金においても課題として残っているものと理解しております。

 

○駒村委員 いまのご指摘のとおり、そこで潜在的に拠出しているということで、年金制度上は、基礎年金も厚生年金も夫婦2人で作ったものである。だから第3号被保険者は負担能力がないわけではなくて負担している。あるいは、逆に言うと、間接的に負担しているのだから第3号被保険者が確定拠出年金に入ってもいいではないか。このような整理をしていくか、あるいは、まだそこまで踏み込めないということで、第3号被保険者の基本的なところは、直接保険料を負担しているので、前回との議論と変わっていないと見て見送るか、どちらの解釈をするのかを確認したかったのです。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 そこでこちらで何か答えが出ているということは全くないのですが、先生のご指摘のとおり、1つの拠出限度額の中に奥さんの分も入っているという整理を徹底いたしますと、第1回目のときに確定拠出年金の給付そのものを分割するかどうかという議論、先生からそのようなものがあるのではないかというご指摘がありましたが、それも1つの整理だと思います。しかし、そもそも加入要件として負担するかどうかということ自体も議論になっていますので、そこだけではなく、そのようなことも含めての総合的な議論ではないかということです。

 

○森戸座長 公的年金の考え方が、もう全然負担していない、負担能力がないのだからと言って終わっていた時代とは変わりましたから、それを反映させろということも言えるし、公的年金とこれはまた別ですという括りもできるでしょう。いずれにしても、議論する上でその話を頭に置いてしなければいけないということは、いまのご指摘のとおりだと思います。加入要件のところでほかにいかがでしょうか。

 

○野村委員 私の理解違いでなければ、第3号被保険者については、そうは言っても保険料の部分で目に見える形では払っていないということがあり、確定拠出年金個人型の部分で、少し話が進まなくなってしまったのではなかったかと思います。多くの企業で前払制度との選択制を入れる際の1つの考慮として、あまり長い期間加入せずに第3号被保険者になる方が自分の会社には大勢いるという判断から、前払いとの選択制に至るということもよく耳にしますので、確定拠出年金の中で資産を継続的に積み上げていくという観点から、加入できる人は可能な限り幅広いほうがいいと個人的には思っております。然はさりながら、その保険料を公的な部分で負担していないという指摘もあろうかと思いまして、ここは結論が全然出ていないというところです。

 加入要件のところでもう1つあります。もちろんより幅広い議論も非常に重要ですが、現行の企業のサラリーマンの間でも、いただいた資料の6頁と31頁の図が何よりもよく表していると思うのですが、例えば6頁ですと、なぜDBのみの企業のサラリーマンについて自助努力という形での個人型の利用が認められないのか、この棒の長さが1つだけ低いのが気になるところではないかと思います。先ほどの確定拠出年金の目的のところに、自助努力を支援するという目的もあります。ですから、こういった企業が提供しない部分については自分で個人型でやりたいと考える人について、現行制度上オール・オア・ナッシング、全然入れないというのは、あまり望ましくないのではないかと思います。

 同様に、企業年金がない場合に個人型に特別加入できるということでした。そうは言ってもやはり水準が低いというのが31頁の図にありましたので、これも自助努力ということを重視するのであれば、なぜ低いのかということは、この機会にもう一度改めて考える必要があるのではないかと思います。

 

○森戸座長 前半は第3号被保険者のお話のまさにポイントで、後半は結局、6頁の図のへこんでいる所は明らかに、いままでここの議論で常に望ましい水準6割のラインを基にした話がたくさん出ていましたが、それから考えてもここは空白ではありますよね。

そこのご指摘だったと思います。

 

○伊藤部長 第3号被保険者については、いまちょうど社会保障審議会の年金部会でパート労働者の厚生年金の適用の議論が行われている中で、委員の中で改めて第3号被保険者の制度のあり方について、また議論が必要だということになっているところですので、この検討が行われていることは、さらに始まっているというようなことでの推移を見ていく必要があるのではないかと考えます。

 それに加えて、いままであまり議論になっていないことかと思う点ですが、加入要件に関して、企業年金がある事業所で企業型確定拠出年金があっても、加入者の範囲を特定することによりその加入者の対象に入っていないという従業員については、その人たちが自助努力をするためには個人型の確定拠出年金に入ることが可能なのかどうかについて聞きたいと思います。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 規約等で、例えばパート労働者等で企業型に入れない方については、個人型に入ることが可能です。

 

○伊藤部長 それは、事業所で特定しているのではないということですか。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 はい、個人単位で入ることが可能です。

 

○伊藤部長 そうですか。

 

○森戸座長 よろしいですか。前半の第3号被保険者の話については、いまその扱いは公的年金本体のほうで議論もあるでしょうから、その流れのことももちろん関係してくるというのはおっしゃるとおりかと思います。

 

○駒村委員 パートの話と第3号被保険者の話は、対象者によっては結果的には同じことになってくるわけですが、第3号被保険者については、前回の改正で、ある意味議論の整理ができていると思います。第3号被保険者が基礎年金の保険料を間接的に負担していると考えれば、先ほど野村委員の話にもありましたが、議論としては、そこで解釈が終わっていれば、第3号被保険者は、間接的には保険料を負担しているということが前提で話が進んでいくわけですよね。ところが、いまのお話では、第3号被保険者の扱いそのものの議論はまだやっているという理解でよいのですか。

 

○森戸座長 私が申し上げたのは、間接的に負担しているというのは、おそらくそう言っていいのでしょうけれども、問題は、間接的に負担しているから確定拠出年金も入れろと言えるかどうかです。直接に負担していなければ駄目ではないかということまで言うかどうかという議論があるという意味と、もちろん公的年金のほうでさらに何か話が変わればまたその影響も受けますねという、お二人がおっしゃったことを一応確認させていただいたつもりです。加入要件に関しては、ほかにいかがでしょうか。あとは公務員の話だと思いますが、よろしいでしょうか。

 

○島崎座長代理 加入要件の第3号被保険者について、2頁の(1)に「第3号被保険者は税制優遇措置の対象となる所得がなく」という文がありますね。仮に第3号被保険者も対象とする場合に、技術的に見てどのような形で税制上の優遇措置、優遇という言葉について議論があるかもしれませんが、その措置をするというイメージなのでしょうか。それが1つです。

 2つ目として、公務員年金のところについて、この検討会に何を期待されているのかよくわからないところが正直言ってあります。それぞれの職域年金制度においてそのあり方を考えるということが基本であり、何かここで議論して一定の結論を出すということよりも、それぞれの職域年金で考えるのが筋だと思います。ただし、その場合、当然民間の確定拠出年金における議論あるいはその水準等を考慮して給付設計を考えるというのが素直なものの考え方だと思うのですが、何かそれ以上に本研究会に期待されていることがあるのかということです。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 第3号被保険者の税制上の優遇措置については、何か特別に優遇措置を講ずるという議論ではなく、通常の第3号被保険者であれば控除のメリットがないので、税制上のシステムという意味ではメリットがないのではないかという議論が行われていたということです。そのような趣旨です。

 公務員については、最終的な整理としてはご指摘のとおりのところもあります。ただ、公務員制度として考える際にも民間の動向等を踏まえて、逆に、企業年金の動向等も踏まえてというのが公務員制度の設計の基本だと思いますので、そういった意味で関連があるのではないかということです。

 

○森戸座長 加入要件に関してはよろしいですか。では、ここはひとまず終わりにいたしまして、次に企業型の話です。資料3の7頁、企業型の拠出限度額についての議論です。7頁、8頁、9頁までの話ですが、ここでいかがでしょうか。

 

○企業年金連合会(西山部長) 私どもから、前に要望を提出させていただいた経緯について、ここは随分絡むところがありますので言わせていただきます。実は当方で確定拠出年金についての議論をいろいろしているときに、拠出限度額の話については要望がかなり強いという状況がありました。

 1つは、先ほどの資料にもありましたが、定率で掛けているということですから、どうしても拠出限度額で突き当たってしまう場合がかなり多いということです。その具体的なケースについては書いてはいないのですが、そういうことです。

 もう1つは、特にその中で議論が多かったのは、企業の中では、先ほど言ったように他の企業年金と一緒に導入している場合があります。そのときに、一律で言えば月額2万3,000円という形になってしまうと、その中には例えば企業年金の厚生年金基金の総合型のような場合に、もともとが低い水準であるものについても全部同じというのが非常に乱暴ではないかということです。こうした形での設定の話、全体としての設定の話、あるいは、いま言った他の企業年金と両方をやっている場合の設定の話についての要望と言いますか、それがかなり強い要望としてはありました。

 

○森戸座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 

○藤井委員 先ほど来申し上げているように、限度額を設ける以上は、それに見合う何らかの優遇と言いますか、何かの措置が特に税制面で必要なことではないかと思います。

また、それがあるからこそ、限度というものがあるのではないかと思います。

 加えて、8頁の上限の計算根拠についてです。細かい数字は別として、この考え方は国の年金が望ましい水準に満たない範囲を指しているということですが、この計算は、よく考えてみますと、この掛金を生涯にわたって拠出した場合の積み上がった金額が、この足りないところをカバーするということだと思います。ところが、現実には給与比例型の掛金としている場合が多いということで、生涯の前半部分では、おおむねその上限に達していないことが多いのではないかと思われます。その場合には、結果として望ましい水準には至らないということだと思うのです。したがって、そこについてどう考えるかという点と、ここで本人拠出の残枠活用という考えが出てくるのではないかと思います。

 

○森戸座長 いまの話は、次の企業型における個人拠出の話にも関連する話だと思います。ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

 

○小野委員 前々から、拠出限度額と言うと、上がつかえているから上げてくれというような感じで、あまり聞こえがよくないといったことは申し上げていたつもりです。趣旨は否定的ということではなく、私たちは、厚生年金基金の課税判定に絡めて考えてしまうわけです。厚生年金基金の課税判定は、たしか制度の通常掛金と言われる額と厚生年金基金の免除保険料の額を比較して、それが2.7倍なり3.23倍なりというような水準を超えれば課税厚生年金基金ですよといった判断をしており、それは、基本的には給付水準がかなり高いのだろうと思っているわけです。この確定拠出年金の拠出限度額を見ると、やはりかなり上限いっぱいに設定しているように思えるのです。それにもかかわらず超えてしまうというのは、確定拠出年金が給付水準として確定給付型年金よりも高いということなのかと言うと、何か不思議な感じがするのです。逆だと思うのです。

 そうなると、これはどのような理解をしなければいけないのかということを考えると、1つの規制のかけ方として、確定給付型年金が制度全体の免除保険料を前提として、それを制度全体の掛金に掛けているということです。それからすると、確定拠出年金も、いま生涯のアカウントの残枠というようなお話もありましたが、似たような効果を持つやり方として、制度ベースで考えての合計が人数×4万6,000円に達していなければ、それはそれなりに説得力があるのではないか、そのようなことを考えました。

 ただ、それをやりますと、これは個人ごとに掛金率が一定だということであれば、それはそれでいいのですが、ここにマッチング拠出などといろいろなものが入ってくると、この考え方は使いづらいのではないかというようなことを思っている次第です。

 

○森戸座長 総枠で4万6,000円×人数を枠にすると、それはそれで1ついい点もあるでしょう。先ほど差別してはいけないといった話もありましたが、その配分をどのような形で割り振るかという話、それから、いまおっしゃったように、マッチングや何かが出てきたらどうすればいいかというのは、少しややこしくはなります。ただ、考え方としては、いまおっしゃったように免除保険料率、つまりその代行部分の何倍という計算と、本当に平仄を合わせるのだったらそれが筋かもしれない、というご指摘ですよね。

 

○小野委員 そのとおりです。

 

○森戸座長 1人4.6万円とするから上がつかえる、他方で全然使わない人が出るというのは、確かにそうだとは思います。拠出限度額の点でほかにいかがでしょうか。7頁、8頁、9頁ですか。

 

○遠藤副本部長 冒頭で申し上げましたが、企業なりの自助努力を基とした制度であるという考え方からしたときに、見方はいろいろあると思うのですが、限度額を設けることが本当に望ましいのかどうかと私どもとしては疑問に思っております。これはそもそも特別法人税の設定の基準という考え方からきていますが、企業の労使がどのように選択するかといったことの制約にもなりかねないので、拠出限度額について、望ましいのは撤廃なのですが、できる限り引き上げていただきたいと、第1回目のときにも申し上げたと思うのですが、改めて申し上げておきたいと思います。

 

○森戸座長 承りました。ありがとうございました。拠出限度額についてはよろしいですか。

 

○島崎座長代理 第1回目のときにもお尋ねしたので、また同じことの繰り返しになってしまうかもしれませんが、遠藤さんにお尋ねします。物の考え方としては、先ほどの給付時課税かどうかということにも絡んでくるのですが、その点についてはどのようにお考えなのですか。要するに、課税の繰り延べをしているという現行の考え方を変えて、拠出時非課税、運用時非課税とするが、給付時については課税をする。そのような物の考え方をするということを前提にしておっしゃっているのですか。

 

○遠藤副本部長 はい、基本的にはそのような考え方です。

 

○島崎座長代理 ただし、退職金税制については本質的に今までと変わらない、という前提での考え方ですか。

 

○遠藤副本部長 検討することは必要だと考えますが、そこは年金だけの議論では閉じない議論なので、慎重に検討しなければならない問題だと思います。

 

○森戸座長 ほかによろしいでしょうか。次のテーマはマッチングの話ですが、10頁分ぐらいありますので、あとは次回にしたいと思います。ですので、時間がもう少しあります。拠出限度額の話に関して何かご意見等はありますか。7頁、8頁、9頁です。マッチングの話が少し絡むこともあるとは思うのですが。

 

○小野委員 拠出限度額を確定給付型年金と確定拠出年金との合算で考えるという場合、確定拠出年金は将来期間部分に相当する給付を積み上げるという話だろうと思うのですが、確定給付型年金には過去給付の償却のための掛金というのもありますので、そこはやはり意識しておかなければならないということがあります。

 それから、確定給付型年金と確定拠出年金を合計して給与の何パーセントというものを設定すると、その水準に合わせるように確定給付型年金の予定利率を少し高めにするようなことも考えられるため、そこは他の規制できっちり対応していただきたい、というようなことです。

 

○森戸座長 後半のほうは、確かにそのような考え方を導入すると、またいろいろなやり方も出てくると思います。前半の話はたしか資料のどこかにありましたよね。

 

○濱谷企業年金国民年金基金課長 資料の9頁の(2)です。

 

○森戸座長 そうですね、積立不足分の掛金も含まれているという趣旨だと思います。確定拠出年金の掛金とは少し違うであろう、ということは確かですね。拠出限度額の話に関してほかにいかがでしょうか。よろしいですか。

 少し座長の不手際もありまして、予定した議論ができなくて大変申し訳ありませんでした。もう1回また時間をとりますので、本日はここで切らせていただきたいと思います。

 次回は、本日積み残しの議論を行うとともに、企業年金共通の課題、個別制度の課題、全体を通した議論を行いたいと思っております。事務局から何かありますか。よろしいですか。では、本日はこれで終わりにいたします。どうもありがとうございました。

 

 

(照会先)

厚生労働省 年金局 企業年金国民年金基金課 企画係

(代表)03-5253-1111(内線3320)