2014年3月12日 第20回社会保障審議会年金部会議事録

年金局

 

○日時

平成26年3月12日(水)14:00~16:00

 

○場所

全国都市会館2階 大ホール

(東京都千代田区平河町2-4-2)

 

○出席者

神 野 直 彦 (部会長)

植 田 和 男 (部会長代理)

小 塩 隆 士 (委員)

柿 木 厚 司 (委員(代理出席))

菊 池 馨 実 (委員)

小 山 文 子 (委員)

佐 藤 博 樹 (委員)

武 田 洋 子 (委員)

出 口 治 明 (委員)

花 井 圭 子 (委員)

原 佳 奈 子 (委員)

藤 沢 久 美 (委員)

宮 本 礼 一 (委員)

諸 星 裕 美 (委員)

山 口 修 (委員)

山 本 たい 人 (委員(代理出席))

吉 野 直 行 (委員)

米 澤 康 博 (委員)

○議題

(1)今回の財政検証の基本的枠組み

(2)年金財政における経済前提と積立金運用のあり方について(報告)

○議事

○神野部会長

 それでは、定刻でございますので、ただいまから第20回を数えましたけれども、年金部会を開催させていただきます。

 ようやく春めいてまいりましたけれど、皆様には年度末の大変お忙しい中を御参集いただきまして、本当にありがとうございます。心より御礼を申し上げる次第でございます。

本日の委員の出欠状況でございますが、柿木委員、駒村委員、小室委員、森戸委員、山本委員から御欠席との御連絡を頂戴しております。また、吉野委員からは少しおくれて御到着、というよりも、吉野委員から、議題の2番目について、専門委員会の委員長として御報告をいただくことになっているのですが、今、フィリピンから御帰国の途中で、成田には無事着かれたという話で、成田から急遽、今、駆けつけていただいている途中でございますので、このまま順調であれば、20分ごろお着きになるという御予定になっております。御報告をしていただく関係もございますので、無理して御出席を頂戴しているところでございます。

御欠席の委員にかわりまして、御出席をいただける方ということで、山本委員の代理として、日本商工会議所の大井川参考人、さらに柿木委員の代理として日本経済団体連合会から清家参考人に御出席いただけるということでございますので、大井川参考人、清家参考人の御出席につきまして、部会の御承認をいただければと思います。よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○神野部会長

 それでは、御承認いただいたということにさせていただきます。

本日の御出席状況で、委員の方が3分の1を超えてございますので、この会議は成立していることをまずもって御報告申し上げます。

また、事務局の皆様方の御出席でございますが、お手元に座席表をお配りしていると思います。座席表のとおりでございますので、これをもって御紹介にかえさせていただきます。それでは、議事に入ります前に資料の確認をさせていただきます。事務局からよろしくお願いいたします。

○八神総務課長

 それでは、お手元の資料について確認をさせていただきます。

お手元の資料ですが、

資料1   今回の財政検証の基本的枠組み

資料2   年金財政における経済前提と積立金運用のあり方について(検討結果の報告)

参考資料1 平成26年財政検証における経済前提の範囲について

〔経済前提設定にあたっての基礎資料〕

参考資料2 (参考)賃金上昇率を上回る運用利回りについて

以上を配付させていただいております。よろしく御確認をいただきたいと存じます。

○神野部会長

 それでは、お手元、御確認いただきまして問題ございませんでしょうか。ありがとうございます。

それでは、ここでカメラの方につきましては、大変恐縮でございますが、御退室をお願いいたします。御協力をよろしくお願いいたします。

 では、議事に入らせていただきます。お手元に議事次第が行っているかと思います。本日は2つの議事を準備してございまして、まず第1が、「今回の財政検証の基本的枠組み」、第2が、「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方について」でございます。

最初に、資料1について御説明をお願いいたしたいと思います。それでは事務局から御説明いただけますか。

○山崎数理課長

 数理課長でございます。資料1に関しまして御説明を申し上げます。

「今回の財政検証の基本的枠組み」という資料でございますが、財政検証を行うに当たりまして、まずは《社会・経済等の諸前提について》というものを設定する必要がありますが、最初にございます「人口の前提」、こちらについては、既に24年1月に国立社会保障・人口問題研究所から、「日本の将来推計人口」という5年に1回の推計が出ておりまして、これの低位・中位・高位というものを用いるということでございます。

続きまして「労働力の前提」については、本年2月、「労働力需給推計」が新たなものとして出ておりますので、この中の労働参加が進むケース・進まないケースをそれぞれ経済の状況に合わせまして使い分けるような形で前提として置かせていただくことを考えております。

次に「経済の前提」でございますが、これは本日、後半で御報告申し上げます「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会」の検討結果を踏まえました、長期の前提を置くということで、足下については、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」、平成26年1月20日に出たものですが、こちらを用いるということで、この試算を参考にしつつ、長期的な経済状況を見通す上で重要な全要素生産性(TFP)上昇率を軸とした幅の広い複数のケースを用いるということで、これは本日また御報告をさせていただきます。

「その他の制度の状況等に関する前提」でございますが、こちらについては、基本的に被保険者及び年金受給者等の実績データ等を基礎として設定するということでございます。ただし、国民年金保険料の納付率については、実績や今後の徴収強化等に向けての取組を踏まえまして、現状のままの納付率で推移した場合、今後の取組強化等により向上した納付率で推移した場合など複数の設定で試算を行わせていただきたいと考えております。

続きまして《制度改正の検討のためのオプションについて》ということでございますが、社会保障制度国民会議の報告書におきまして、財政検証に関して、単に財政の現況と見通しを示すだけでなく、報告書において提示された年金制度の課題の検討に資するような検証作業(オプション試算)を行うべきとされているところでございます。

この報告書を受けて、いわゆる「プログラム法」が成立しましたが、その中でも、こちらに掲げておりますようなマクロ経済スライドの仕組みの在り方、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、高齢期における就労と年金受給の在り方、高所得者の年金給付及び年金課税の在り方、など、報告書で提示された課題を検討課題として列挙しているところでございます。

この資料の3ページに【参考】ということで抜粋したものがございますので、御参照いただければと存じます。

このため、今回の財政検証に当たりましては、法律で要請されております現行制度に基づく検証に加えまして、これらの課題の検討に資するよう一定の制度改正を仮定したオプション試算を行う、ということでございまして、1ページおめくりいただき、昨年12月の第18回の部会におきまして、このオプション試算に関していろいろ御意見をいただいたところでございますが、このいただいた御意見を踏まえまして、今回の財政検証において行いますオプション試算について、ここにあるように(案)を私どもとして整理させていただいたところでございます。

具体的な内容でございますが、まず最初の「●」でございますが、物価・賃金が景気の波により変動する前提を設定した上で、物価・賃金の伸びが低い場合でも、マクロ経済スライドによる調整がフルに発動されるような仕組みとした場合。この場合の変動の具体的な設定については、後ほど経済前提に関する専門委員会の報告の中でも御提案ございますので、そちらをまた御参照いただければと存じます。

次に、2番目の「●」でございますが、被用者保険のさらなる適用拡大を行った場合ということで、昨年8月に成立いたしました年金機能強化法によりまして、28年10月より20時間以上の短時間労働者のうち、事業所規模が501人以上、賃金月額が8万8,000円以上などの要件を満たす推定で25万人ほどの方に適用拡大ということが既に法定されているわけでございますが、この法律の附則に、施行後3年以内に検討し、その結果に基づき必要な措置を講じる、ということが規定されているところでございまして、この適用拡大と申しますものは将来に向けての第一歩ということに位置づけられているところでございます。

それを踏まえまして、(1) 所定労働時間が週20時間以上である短時間労働者を全て適用対象とする場合ということで、これは具体的には事業所規模に関する501人以上という制限や賃金月額8万8,000円以上という制限を取り払った場合にどういう姿になるかということを検討するということでございます。昨年暮れの段階では、こちらの御提案を申し上げたところでございますが、その際、20時間以上というのも取り払い、およそ全ての被用者が厚生年金に適用されることになるというオプション試算も行ってはどうかという御提案がございまして、それに対応するものが(2)でございますが、ただし、全てのと申しましても、ある程度収入に関してはそれなりのすそ切りがないとデータの設定上、仕組みの上でも難しいだろうということで、(2)にございますように、一定の賃金収入がある場合には、所定労働時間にかかわらず、適用対象とする場合、というのを新たに考えさせていただいております。一定のと申します場合にどのぐらいが考え得るかというところでございますが、今のところ、健保の下限が月5万8,000円という数字がございますので、5~6万というあたりが1つのメルクマールになるのではないかと考えておるところでございます。

次に、18回の部会では、3号制度を廃止ないし縮小した場合のオプション試算ということでお求めもあったところでございますが、この3号制度を仮に廃止いたします場合に、それにかわってどのように現在3号の方の年金保障を行っていくかということに関して議論の方向性が必ずしも定まっていないという状況で、具体的な試算はなかなか難しいこともございまして、私どもとして、一方で短時間労働者に対する適用拡大の方向性は社会的なコンセンサスが得られているという状況のもとで、これによる3号対象者の縮小につきまして、影響を試算して整理してお示しするということにより、一定の検討材料は得られるのではないかということで、この被用者保険のさらなる適用拡大を行った場合の、下の「*」でございますが、その際、適用拡大によって、第3号被保険者の人数や平均的な第3号被保険者期間の推移などが、どう影響を受けるかなど分かり易く示すこととする、ということで代替させていただけないかと考えているところでございます。

また、次の「*」でございますが、適用拡大により、第1号被保険者の中で比較的滞納割合の高い、被用者なのに第1号被保険者になっている方々、パートの方などが中心ですが、こういう方々が新たに厚生年金(2号)の適用になるということで、残された国民年金1号被保険者の方々の納付率は、その反射作用で向上することが見込まれますので、その効果を織り込ませていただくということを考えております。

(吉野委員入室)

次に3番目の「●」でございますが、平均寿命の伸長、労働力人口の減少の中で経済成長に必要な労働力確保を図る上での高齢者就業の促進の必要性、年齢に関わりなく働き続けたいという国民の希望の増加などを踏まえ、保険料を拠出する期間と年金を受給する年齢について様々なバリエーションを設定した場合、ということで、幅広く試算をさせていただきたいと考えております。

18回の部会では、「保険料拠出期間の延長などを行った場合」という表現でございましたが、より的確な表現にここは改めさせていただきました。

下の「※」でございますが、上記のオプション試算を行う際には、法定の財政検証と比べて、マクロ経済スライドの調整期間がどう変わるか、受け取る年金水準(最終的な所得代替率)にどう影響が出るのか、が分かるように示すこととする、と考えております。

資料1の説明は以上でございます。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

それでは、御議論を頂戴したいと思いますが、ただいまは財政検証の基本的な枠組みとして、社会・経済等々の前提の置き方、それから、この部会でも御議論をいただきました意見を参考にしながら、制度を改正したと仮定した場合のオプション試算の内容について御説明を頂戴したところでございますが、委員の皆様方から御意見、御質問を頂戴いたします。佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員
 なかなか出席できなくてすみませんでした。

今回のオプション試算のところで、特に適用拡大のところはぜひやっていただきたいのですけれども、検証するときの推計の諸前提の労働力の需給推計は、雇用政策研究会に出された労働政策研究・研修機構だと思うのですけれども、これは特に短時間のところの適用拡大をやると労働力の需給のところも動きますね。つまり向こうを前提にすると言っているわけですけれども、これはもう一度、労働力需給の推計もその影響を踏まえてやることになるのでしょうか。つまり20時間まで適用拡大すると、供給サイドも雇用のほうも変わってきますので、それはどのようにやられるのかなのですけれども。

○神野部会長

 ありがとうございます。これは事務局から。

○山崎数理課長

 確かに御指摘のように、制度を変えればそれに反応して対応が変わってということは当然考え得るわけでございますが、ただ、そういうことで労働力推計のほうも、これは私どもがやっているというよりも、専門のところがやっておりますので、それをまた依頼してということでやっておりますと、とても実用的な範囲内で結果が出てまいりませんので、恐縮ですが、ある程度、前提が変わることあり得べしということで、ある種第1次近似といたしまして、今、ある労働力推計のもとで、このように適用を変えたらどうなるかということを基本線としてまずはオプション試算やらせていただきたいと思っておりまして、何分にもいろいろとデータの制約のある中での粗いものにはなりますが、制度改正の検討に当たっての1つの参考材料ということで、ある程度の粗さは御容赦いただければと思っているところでございます、恐縮でございます。

○佐藤委員

 私、雇用政策研究会に入っていたのですが、正確には覚えてないのですけれども、労働政策研究・研修機構の推計のときも、多分これは適用拡大に組み込んでいるのだと思うのですね。確認していただきたいのですけれども、それを入れて推計して、それを動かしているわけですから、やや、そういうことをやれるのかどうか。その辺はなかなか難しい点はよくわかるのですけれども、ですから、この推計自体が、今、決まっている部分についての適用拡大、これも確認していただければ、組み込んでいると思うのですね。それもどう見ているかということを踏まえた上で御検討いただければと思います。

○山崎数理課長

 御指摘、まさにおっしゃるとおりでございますので、その辺のところはよく整理いたしまして、私どもとしてできる範囲内で整合性がとれるようなものということで考えていきたいと存じます。どうも御指摘ありがとうございました。

○神野部会長

 ほかにいかがでございましょうか、宮本委員、どうぞ。

○宮本委員

 ありがとうございます。2ページの「オプション試算の内容(案)」について御意見を申し上げたいと思います。

一般の被保険者の目線で見ると、オプション試算の内容について、全体としては、今後の年金制度改正の検討に資する試算としては、もう少し具体的な内容を示してほしいと思うわけであります。

あわせて、2つ目の「●」の「被用者保険のさらなる適用拡大を行った場合」、ここについても、(1)と(2)が記載されておりますけれども、(1)にしても(2)にしても、ぜひとも「社会保障制度改革国民会議」の報告書も踏まえた上で、積極的な適用拡大を進めてもらいたいと思います。

以上です。

○神野部会長

 今時点で何かコメント、度山課長。

○度山年金課長

 適用拡大につきましては、プログラム法にも課題として明記はされていて、その検討材料という位置づけでございます。そういう意味で、計算作業に入りまして、計算結果を御報告した後に、それを材料に適用拡大の議論をこの部会でもお願いをしなければいけないと思っておりますので、こちらからもまた積極的な御議論をお願いしたいと思っております。

○神野部会長

 よろしいですか、そういう手順で。

○宮本委員

 はい。

○神野部会長

 ほかにいかがでしょうか、武田委員。

○武田委員

 御説明いただきましてありがとうございました。第3号被保険者については適用拡大によって人数や期間の推移がどのように変わってくるかを今回わかりやすく示すということが「※」のところに書かれておりますが、試算は制度設計でなかなか難しいということは理解いたしました。ただし、成長戦略との兼ね合いで考えますと、検討していくべき要素ではあると思っておりますので、オプション試算に入れる、入れないは別として、現状、どういう姿なのか、金額も含めてもう少し数字の御提供をいただけたらと思います。

また、これは将来に向けての議論ということですが、制度設計としてどういうことが考えられるのか、短時間の労働者の適用拡大の話とは別に、制度設計の方向性について、ぜひ一度、セッションをいただけたらという点を意見として申し上げます。

 以上です。

○神野部会長

 これも作業を進めた後の課題として御要望の資料等々含めて対応ということでいいでしょうか。

○度山年金課長

 12月にお諮りをしたときに第3号被保険者の廃止ないし縮小というオプションを立てたらという御意見をいただいて、先ほど数理課長からも説明しましたけれども、我々として限られた時間の作業の中で何ができるかということを考えて、きょう御提案させていただいております。

 このように考えた趣旨ですけれども、実はこの問題は古くは2001年に2000年の改正が終わった後に「女性と年金の検討会」を設けまして、約1年、いろいろ議論し、2004年改革のときにもその議論を継続してやってきたという経過がございます。そういうことをきちんと一度レビューをした上で、今ここに至って、どういうオプションがあり得るのかということについて、先ほど御説明したとおり、適用拡大を進めたときの第3号被保険者像がどう変わるのかというデータを1つの材料にして、この部会でも御議論を賜ればと思っているところです。当然、御指摘ありましたように、女性の活躍の促進というのは、今、日本国政府の大きな課題になってございますし、それから、一体改革の絡みで申し上げますと、父子家庭への遺族基礎年金の拡大ということを政策としてやって、この4月から実行されるわけですけれども、そのときに第3号被保険者の取り扱いをどうするかということが1つ問題になって、最終的には1つの整理をいたしたのですが、そのときにあわせて遺族年金と第3号被保険者についてはあり方の見直しの検討が必要であって、それをプログラム法に書かれた課題とあわせて政府としては検討していきたいということをパブリックコメントの回答という形でお示しをしております。このような経緯もございますので、きちんと整理をした上で、またいろいろ御議論を賜ればと思っているところでございます。

○諸星委員

 先ほどから適用拡大の件で1~2点質問なのですが、先ほど、(1)週20時間以上で、多分第1段階として月8万8,000円、その年収というベースで考えているのだと思いますが、今回の(1)に関しては年収ベースは一切考えないで、あくまで20時間以上で立てられるのかということをまず1つお聞きしたいのですね。

それと(2)にあります一定賃金収入、先ほど健保の標準報酬の収入を挙げましたが、厚年は標準報酬が異なっています。、実は女性の就労の壁になっているのが、御存じのように103万と130万の壁、実は最低賃金も毎年上がっているということで、地域によって最低賃金が異なるので、同じ20時間をかけても賃金ベースが違ってきます。103万と130万で調べてみますと、実は東京の一番高い金額で、週23時間超えてしまうと大体103万を超えてしまうのですね。それと29.5時間だと130万を超えてしまう。つまり現況で言うと130万は社会保険の適用にもならない、103万で考えればもちろん今度は20時間では適用になる。

こういう問題もあるので、働く女性、収入を考えながらやっている方々は、そういうところを確認したいのですね。今、税法上で103万の壁をとりましょうという議論をこれからされるということなのですが、今の目安的に103万と130万の壁がありますから、一定の賃金収入というところを、健康保険でやるのか、現状を具体的にこの金額で見る現場に合わせた金額で出すのかということも含めて、どのようにお考えになられるのか、お示ししていただければと思います。

○度山年金課長

 先ほど数理課長から説明もさせていただきましたが、基本的には、特に被用者保険の場合には、能力に応じた負担ということをいただいているので、賃金比例で保険料を払っていただくという原則にできるだけ組み入れていくというのが基本的な考え方であります。

ただし、これはどこの国でもそうですけれども、例えば年間の収入が10万円ぐらいの方をその体系に組み入れるというふうに考えるかどうかというところでは、一定のすそ切りというのを考えなければいけないのではないかということでございます。日本国において、すそ切りはどれぐらいで考えればよいかということを思考実験してみますと、先ほど申し上げたように、健康保険の一番低い標準報酬が5.8万円で適用されている。あるいは給与所得控除の一番低い最低保障額が65万円というラインがございます。非課税ではありますけれども、65万円を超えると課税対象となる所得が発生する。このあたりを考慮いたしますと、大体月当たりで直すと5~6万がこの国のすそ切りラインとして考えられると思いますし、実際にお仕事される方もある程度の収入を得たいということで考えられる。このすそ切りラインを、ある程度低いラインまで持っていくということで、いわゆる就業調整問題、壁をつくるとどうしてもそこには発生するのですが、例えば月5万円あたりのところまで壁を引き下げて持ってくると、事実上解消ということになるのではないか、そういう頭の整理のもとに、先ほど御説明しましたとおり、5~6万あたりを1つのラインに考えてデータとしてははじいてみようと、こう考えているということでございます。

○神野部会長

 花井委員、どうぞ。

○花井委員

 2つあります。1つが、経済前提のところに出てまいります「全要素生産性(TFP)上昇率」についての質問です。この上昇率という数値につきましては、生産性の向上などが経済成長への原動力というか、経済成長に与える率とも言えるかと思うのですが、そうだとすれば、TFP上昇率の数値というのは産業ごとによって異なるのではないかと思うのですけれども、そのことを加味して前提として置いているのか。

それから、「オプション試算の内容(案)」について、マクロ経済スライドの問題です。以前にもお話したかと思うのですが、基礎年金につきましては、生活の基礎的部分を賄うとされているかと思います。その意味で基礎年金にマクロ経済スライドを掛けた場合、大変影響が大きいと思っております。ぜひ、このオプション試算に当たりましては、基礎年金を分けて試算することができないのかということです。基礎年金だけの1号被保険者もたくさんいらっしゃるわけですので、ぜひ、その試算ができないかということです。

○神野部会長

 最初の質問は次の議題のときにあわせて。

○山崎数理課長

 次の議題の関係でございますが、一言で答えさせていただきますと、産業別にTFPはもちろん違い得るのですが、この試算では、日本全体でということで計算しているというところだけ申し上げておきます。

○度山年金課長

 恐らく12月の年金部会でも同じ御意見いただいていて説明していると思うのですが、2004年の改革のフレームのもとでは、国民年金の保険料も固定をする。平成16年水準という1万6,900円という形でございますけれども、固定をしているので、基礎年金にもマクロ経済スライドを発動させないと年金財政としてはつり合わない状況になっているので、基礎年金のみを独立をさせて制度を考えるというのは、もちろん制度をどう変更するかという議論としては成立し得ると思いますけれども、計算上はそういう計算をすることになると思います。

 その上で、2009年の財政検証結果では、報酬比例年金と基礎年金について、基礎年金のほうがかなり長くスライド期間がかかると、そういうことになっていて、それ自体は、政策的には国民会議の報告にもあるように、解決を考えなければいけない問題と政策的には認識をされている。そのあたりを財政検証の結果も見ながら制度設計をどう考えていくかというところが、恐らくこれは制度設計上の問題として議論をしていく、そういう整理で議論をしていただけるとありがたいと考えております。

○花井委員
 そういう回答は前回も伺ったのですが、ただ、国民年金だけの方も相当数いらっしゃって、今、高齢者の貧困も社会問題化しているわけですし、そういう現象とは違うとおっしゃるのかもわかりませんけれども、相当影響が大きいのではないかということで発言させていただいております。回答は前回と同じなので、十分承知していますが、少し納得できない思いだという意見を述べておきたいと思います。

○度山年金課長

 すみません、一言だけ。その認識は私どもも共有していないわけではございません。ただ、今の制度に基づいてどうなるか、数字出してみた上で、それが政策的に望ましくないということであれば、それを解決するために、どういう制度変更が必要か、議論を組み立てていくことが必要なのではないかということで申し上げております。

○神野部会長

 ほか、いかがでございましょうか。菊池委員、お願いします。

○菊池委員

ありがとうございます。第3号被保険者について、私からもですが、2002年に女性のライフスタイルの変化と年金の在り方に関する検討会報告書が出て、幾つかのオプションは示されているのですね。加えて、一昨年のこの部会での議論でも御当局から年金分割にかかわる案が提示されていました。ということで、大変難しい問題ですけれども、幾つかの改革案は示されているわけでして、その中で適用拡大というのも先の検討会報告書のオプションの1つではあるのですね。あれは130万円から65万へという案だったと思いますが、月5~6万ということになりますと、ちょうど65万ぐらいになるかなと。そうすると(2)のプランに近いかという感じもいたしますが、見方によっては3号の問題を適用拡大によって事実上解決していこうと、そういうメッセージととられかねないのではないか。3号の問題について、近い将来、きちんと議論していくということであれば、その際の議論の前提条件というか、議論の基盤を広くとるためにも、もう少し幾つか出ているオプションについてもやったほうがいいのではないかというのが私の意見です。これでいきますと、これまでに示されたある特定のプランについて調べますというようにも受け取られかねないのではないかという印象があります。

以上です。

○神野部会長

 事務局からコメントがございましたら。

○度山年金課長

 そこで議論をとめようということではなくて、ただ、今でも第3号被保険者は減ったとはいえ、900万人ぐらいいるのですが、要は適用拡大を進めますと、ある程度人数は絞られてくるだろう。あるいは適用拡大をすると、今はいろいろな方が第3号被保険者の中にまじっているわけですけれども、どういう方が最後の最後、第3号として残るかということが、ある程度明確になれば、それをベースにしてこういう方についてはこのように扱ってもいいのではないかとか、少し先に進める議論ができるのではないかという問題意識のもと、適用拡大とあわせて、適用拡大を進めたときの第3号被保険者像がどう変わるかということを材料に議論をしていこうという趣旨で申し上げているので、もちろん合意形成の難しい問題でございますし、答えにどこまでたどり着けるかというのは、今までもいろいろ議論重ねてきておりましたが、なかなえ答えの見つからない問題ではあるのですが、観点としてはそういうことを考えているということを、改めて御説明させていただきますし、御議論もいただきたいと思っているところです。

○神野部会長

 よろしいですか。

○菊池委員

 はい。

○神野部会長

 小塩委員、藤沢委員、大井川参考人、こういうことでいいですか。

○小塩委員

 質問2つとコメント2つ、申し上げます。まず、質問の1番目ですが、今回、経済前提でいろいろなケースを後でお見せすることになります。ここでオプションを幾つか提示していただいたのですが、そのオプションの試算結果というのは、いろいろなケースの選択とは独立して議論できるものなのでしょうか。ベンチマークが変わると結果が大きく変わるということだとあまり意味がないので、それを確認したいです。ケースの選択とオプションの結果がどういう関係にあるのかという、テクニカルな質問です。

 2番目は、答えにくい質問になるかもしれないのですが、オプションの3番目についてです。非常に慎重な言い回しをされているのですが、私は、今回の改革の大きなテーマとして、支給開始年齢の引き上げをどう考えるかがあると思います。ここでは、そのように読めるような気はするのですけれども、読めないような気もします。非常に微妙なところなのですが、現時点のお考えを可能であればお聞きしたいと思います。

私は個人的には明示的に議論すべきだと思います。ただ、支給開始年齢を上げたとき、上げた年齢までは全然年金をお支払いしませんというのではなくて、多様な受給の仕方があると思うのです。繰り上げもあるし、いろんな仕方があると思います。そういう支給開始年齢の引き上げを明示的に議論する考えがおありなのかお聞きします。

1つ目のコメントは、先ほど花井委員もおっしゃったことと関連するのですが、今回のオプションの評価の仕方についてです。1つの評価は、サスティナビリティーです。年金財政にどういう影響を及ぼすかという点、これも重要と思いますが、もう一つ、十分性の視点も必要だと思います。これは国民会議でも提示されています。先ほど花井委員がおっしゃったマクロ経済スライドは、もちろん持続可能性にも影響しますが、十分性にも響く話ですね。2番目に適用拡大がありますが、これはあまり年金財政に影響はないと思うのですが、十分性のほうには大きな影響があると思います。ということですので、オプションの評価についてはサスティナビリティーだけではなくて、十分性の視点もぜひ考えていただきたい。

もう一つは、最後に所得代替率についてです。過去の政策とどのように違いが出てくるのか評価する場合、所得代替率は重要だと思います。今まで使ってきた尺度で政策を評価するのは重要ですが、生涯未婚率が将来、女性でも男性でも2割を超えるという話があります。さらに、結婚した人の3人に1人が離婚するという状況にもなっているわけでしょう。そういうときに、第3号被保険者の話などを、今の普通のモデル年金で計算される所得代替率で議論してもほとんど意味がないと思います。私は個人的には、所得代替率は個人単位で計算すべきだと思うのですが、そこまでいかなくてもいろんなバリエーションを使って議論していただきたいと思います。伝統的な所得代替率では議論しきれないテーマがいっぱい出てくると思いますので、ぜひ注意していただきたいと思います。

以上です。

○神野部会長

 質問2つとコメント2つございますが、よろしいですか。

○山崎数理課長

 まず最初の質問に関しまして私からお答えさせていただきますが、経済前提、後ほど御報告ございますが、8通りぐらいの幅広いケースでということで考えているところでございますが、それとオプションとの関係ということで、特定のケースについてだけオプションをやると、ほかのケースのときに様相が変わるということであると、それだけで考えていては不十分ではないかという御趣旨のお尋ねだと思います。

一番端的にわかりますのが、一番上の「●」の物価、賃金の伸びが低い場合でもマクロ経済スライドによる調整がフルに発動されるような仕組みということで、これは経済前提のかなり高いほうのものですと、これは事実上ほとんど効きがないわけですし、低いところのものは非常に大きい効きが考えられるということで、まさに経済前提のありようによってオプションの効きぐあいが違うものに関しましては、それぞれのケースごとにそのオプションがどう効くかというものがわかるようなものをお示ししないとこれは意味がありませんので当然そうやっていくと。もちろん物によりましては、ケースが違ってもそれほど大きな影響はないものはあり得ると思いますので、そういうものにつきまして8通り全部お示しするのかということですと、ある程度ポイントポイントをお示しするというようなことも考えられますし、全体として、幅の広い経済前提というものとオプション試算が合目的的に検討に資するようにという形。一方で余りに煩雑で似たようなものが並んでいるということではかえって見づらいという部分もございますので、その辺のバランスを考えつつ適切に対処させていただきたいと存じております。

○神野部会長

 残りの支給開始年齢の話は。

○度山年金課長

 残りの問題について考え方を少し御説明させていただきます。まず、質問の2番目、支給開始年齢の引き上げという問題ですが、この表現の中に年金を受給する年齢についてのバリエーションという形で書かせていただきました。2025年あるいは女性のことを考えると、2030年以降は、どんな年金でも65歳ということになりますので、そこからさらにバリエーションということになると、より高い年齢で年金を受給し始めるというバリエーションの設定は考えなければいけないと思っています。

ただ、人の一生ということを考えますと、結局は働く期間と年金を受給して生活をする期間のバランス、組み合わせという議論になると思いますので、単純に支給開始年齢だけが動くという問題設定ではないのではないかと考えますので、こういう表現をさせていただいているということについては御理解を頂戴できればと思います。

それから、最初のコメントで評価ということで、サスティナビリティーと十分性というお話をいただきました。2ページ目の資料の「※」のところですけれども、マクロ経済スライドの調整期間と、受け取る年金水準の影響ということを書いているのは、ある意味ではこの点を両にらみで考えていくということの意思表明と御理解いただければと思います。

最後のコメントでございますけれども、これもさかのぼりますと、2001年に「女性と年金の検討会」をやったときに、モデル年金のあり方ということについても、実はいろいろ議論をいたしました。ただ、最終的にはこういうモデル年金に変更すべきだという結論には至りませんで、いろんなパターンでお示しをするということで、2004年改革のときでもいろいろな設定を置いた上で、例えば女性の平均賃金を用いるとどうなるかとか、そういう計算はお示しをさせていただいていたと思います。ただ、2004年改革のときの経緯で申しますと、基礎年金を創設して以来、基礎年金と2つと、平均標準報酬での報酬比例年金を、ある意味では定点観測的に年金の水準として議論をしてきたという経緯があるので、そういう意味では定点観測の1つとしてとっていると、モデル年金については理解をいただければと思います。世の中の実態からだんだんかけ離れてきているのではないかということに関しては、私もそのように認識をしております。

法律上、実は2004年の改革の中で、何をもって50%と判断するかというときには定義をしっかり書き込んでおりますので、法定の財政検証としてはそういう形でお示しをするということにはなりますけれども、世の中に対する説明ということで言うと、従来からやってきたように、いろんなパターンでいう、あるいは所得階層によっても違いますので、そのあたりはまた別途お示しをしていくことを考えなければいけないと思います。

○神野部会長

 それでは、藤沢委員、お待たせいたしました。

○藤沢委員

 ありがとうございます。大きく2つ、申し上げたいと思います。1つ目は、今、小塩先生もおっしゃっていたのですけれども、個人単位での所得代替率を検討して試算するというのはぜひ検討していただきたい。といいますのも、社会保障制度というのは国民の生活行動であるとか、就労選択、それを規定するものになると思うので、国民が自分たちがこれからどう生きていくかということを考える材料出しの上でも、こういう個人単位というのは一度検討していただけたら大変ありがたいと思います。

 2つ目は、今、アベノミクスということでいろいろな施策が走っているわけで、これとの整合性をオプション試算の中でも取り入れていくべきだと思います。そういう意味では、アベノミクスの中では、国民の参加ということは強く訴えられていますし、女性、若者、高齢者の社会参画も強く訴えられていると考えると、ここに書いてあるオプション試算の3つの「●」は確実にやっていただきたいと思います。

その上で、1つ目のマクロ経済スライドの物価・賃金の伸びが低い場合というのは、本当にここで実質的な運用リターンでこの2つの減り分をカバーできるのかというのもよく見えませんし、もしカバーできなかったときに、そのマイナス分をどのくらいの時間をかけないと取り戻せないのかというようなことも含めて数値を出していただけたら大変ありがたい。ただ、このとき、出しますよ、出しませんよではなくて、減った分の回復にかかるパワーみたいなものをきちんと出していただきたい。

適用拡大のところは全て先生がおっしゃっているのでぜひ進めていただきたい。

3つ目の「●」は、ここの部分も、先ほど小塩先生にも重なるところなのですけれども、ぜひ保険料の拠出する期間のバリエーションを幅広く試算に入れていただきたい。参考資料を見ていても、65歳から69歳の男性の就業率も5割ぐらいあるわけで、そう考えると、義務にする必要はないと思いますが、働いている限り拠出し続けるという選択肢もあってもいいのではないか。こういった試算があった上で、そういった人より長く拠出した場合に、もしかしたら、さらなる逆の恩恵があるようなことも議論できるのではないかと思いますので、単純に受給年齢をどうこうというよりも、拠出のオプションみたいなものもぜひ試算に入れていただけたらありがたいと思います。

以上です。

○山崎数理課長

 いただきました御意見、よく踏まえまして、前向きに検討させていただきたいと存じます。

○神野部会長

 大井川参考人。

○大井川参考人

 2つだけ質問させていただきたいのですが、まず適用拡大についてですが、20時間未満働いている全ての方々に適用した場合ですが、当然20時間以上であればかなりの部分、恒常的に働いている方と想定できると思うのですけれども、そうでない場合は仕事をやめたり、やめなかったりといった不安定な部分の保険料収入はどういう考え方で算定なさるのかというのがまず1点です。

もう一つは、最後の4つ目、高所得者の年金給付についてなのですけれども、これは一体改革のときにいろいろ議論されて、ある程度(案)的なものが幾つか出たかと思うのですが、そういう仮定を置いてなさるのか、今現状、どういう仮定なのかを教えていただければと思います。

○山崎数理課長

 第1点の御質問でございまして、20時間未満の全ての者を対象としてというケースの場合に、御質問の趣旨はかなり不安定な雇用の方もおられるので、実態としてそういう方から安定的に保険料を徴収するのは難しいのではないかということで、その辺を試算の中でどう織り込んで考えるか、こういう御質問かと存じます。

私どもそういう形での現実に実施に移しますときの問題点はかなりあるのは重々承知しているわけでございますが、今回のオプション試算は、ある種オプション試算である由縁として、前回の出口委員の御発言をかりますならば、極端なものということで考えたらどうかということで、ある種、ユニバーサルな統計でおよそ雇用者の方と、それでもある程度賃金の下限は置くわけですけれども、そういう雇用の不安定とか、そういうところはあえて捨象してベースになる賃金がこれぐらいあるのに対して、こういう保険料を掛ければ、こういう収入が得られて、こういう給付になるということで、それを現実に実施に移していく場合にいろいろ実務上の問題点があることはもちろん将来の課題としてあるわけでございますけれども、試算上はあえてそこを乗り越えて保険料を取れたとした場合、どういう姿になるかということでお示しすることを考えているところでございます。

○度山年金課長

 2点目について御説明をしますが、高所得者の年金給付や年金課税の問題については、このオプション試算としては立てておりません。その経過を少し御説明させていただきたいのですが、この年金部会でも御議論をいただいた上で、これは以前の一体改革のときですが、法案としては高所得者の年金給付を抑えてという案を国会に提出をして、それが三党協議でその部分が削除されたという経過がございます。

財政的にはどういう処理をしたかというと、いわゆる低年金者に対する福祉的給付というものを大体満額6,000円で考えていたと思いますが、それを5,000円といを形でおさめるということで、両者のバランスをとったという経過がございまして、そういう意味で言うと、具体的な計算をもとに一度案として結実をしたものがあるということと、国庫負担分の調整ということでございますので、そういう意味で言うと、長期的な年金財政とはまた別の問題であるということ。

それから、国民会議での議論がどちらかというと、年金給付の調整というよりは、課税ですとか、他の保険料負担や自己負担のあり方と総合的に考えるべしと、こういったニュアンスの報告が出ております。そういうことを考えますと、長期的な年金財政上の試算ということと切り離して制度設計の議論として考えるべきかということで、特別オプション試算としては立てておりませんが、当然のことながら、プログラム法に規定された課題でございますので、制度改正の御議論は、また別途いただくという形に整理させていただければと思っております。

○神野部会長

 ほか、よろしいでしょうか、どうぞ。

○原委員

 今までオプション試算のことについていろいろと委員の皆様からお話があったので、そのようにぜひお願いしたいと思います。また、後で出てくる財政検証等もそうだと思うのですが、こういったオプション試算やシミュレーション等検証していく中でいろいろな数字が出てくると思うのですけれども、その伝わり方として、どうしても数字はひとり歩きしてしまうことが多いと思います。ぜひ「こういう前提でシミュレーションした結果です」というような背景とか根拠が一般の方々にも正しく伝わるように、情報の場の提供といいますか、情報の発信をきちんとしていただき、こうなりますということだけではなく、これから検討の議題に上げていくという段階を経て行っていることもぜひきちんと発していただきながら、誤解のないような形で伝わればよいかなと思っておりますので、そのあたりの情報発信の方もよろしくお願いいたします。

○神野部会長
 これは事務局に心していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。ほか、いかがでございましょうか。よろしいですか。

 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、議題(2)に移りたいと思います。「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方について」という議題でございますが、次期の財政検証については、この部会でも議論をしていただいているわけですけれども、先ほど来、お話にも出ておりますが、財政検証における経済前提のあり方については、これは長いのですが、「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会」で議論をしていただいております。その結果について、本部会に報告を賜ることになっております。今般、専門委員会で検討結果がまとめられたということでございます。

冒頭に申し上げましたけれども、成田にお着きになった後、すぐに万障繰り合わせてお越しいただきました専門委員会の委員長でいらっしゃる吉野委員から御報告を賜ればと思いますので、よろしくお願いします。

○吉野委員

 どうもありがとうございます。専門委員会の先生方、ここにもたくさんおられますが、2011年の10月から、この専門委員会が設置されまして、今週の月曜日まで17回の会合を開催いたしまして、それで前提に関する議論をさせていただきました。

まず最初に、事務局から、その概要を説明していただいて、あと、少し加えさせていただきたいと思います。お願いいたします。

○山崎数理課長

 お手元の資料2が検討結果の報告でございまして、経済前提の関係で、参考資料1という〔経済前提設定にあたっての基礎資料〕という資料もございますので、必要に応じまして、こちらの図表等を参照しながらということで聞いていただきたいと存じますが、おめくりいただきまして、1ページ、「報告の主旨」のところ、こちらは、今、吉野委員長から経緯を大体御説明差し上げたようなことでございまして、めくっていただきまして、2ページでございますが、第1部が「平成26年財政検証における経済前提の範囲について」ということでございまして、その1ということで、「財政検証に用いる経済前提の基本的な考え方」でございますが、このページの一番下のパラグラフを見ていただきまして、財政検証の結果は、そもそも人口や経済を含めた将来の状況を正確に見通す予測(forecast)というよりも、人口や経済等に関して現時点で得られるデータの将来の年金財政への投影(projection)という性格のものであるということで、複数のケースの前提を設定し、その結果についても幅を持って解釈する必要があるものである、と整理されておるところでございます。

3ページにまいりまして、(3)でございますが、平成21年の財政検証、16年財政再計算において長期の経済前提を設定する際に用いられてきた方法は、諸外国と比べても工夫されたものになっているということで、今回も基本的には同様の手法を用いるということで整理されたところですが、可能な限りの改善手法をとるということで、具体的には、(1)需要側の要素を考慮するという論点、(2)海外経済との関係を考慮するという論点に関して改善を図ったところでございます。

(4)にございますように、マクロ経済に関する試算は、具体的には、コブ・ダグラス型生産関数を用いて設定するということでございまして、ページをおめくりいただきまして4ページに式が書いてございますが、恐縮ですが、参考資料をお開きいただきまして、1ページは式が書いてございますが、2ページのところに概念図、フローチャートがございまして、コブ・ダグラス型生産関数、このような形で幾つかのパラメータを外生で与えまして、労働投入量と資本投入量によって労働成長、資本成長がなされ、一番上の枠囲いの右、全要素生産性(TFP)上昇、これがいわゆる技術進歩や労働者の能力向上という部分でございまして、こちらを外生で置くことによって将来の実質経済成長がはじかれる。それに基づきまして、将来の賃金上昇率や利潤率の推移、これが整合的に出てくる。この利潤率から将来の実質長期金利をはじく、このような構造になっているところでございます。

報告書に戻っていただきまして、4ページの(2)でございますけれども、平成21年財政検証においては、このTFP上昇率について3通りの設定を行い、それで幅を持たせた経済前提の設定が行われたということですが、不確実性という点で考えますと、このTFP上昇率だけでなく、その他のパラメータについても不確実性はあるということで、それぞれごとにある程度幅を持った設定を考えるというのが今回の財政検証で新たに導入されたことですが、その際には、背景となるシナリオがそれぞれ整合的な組み合わせに限るということで考えられているところでございます。

続きまして、報告書の5ページでございますが、このTFP上昇率、先ほど花井委員から御質問ございまして、確かに産業ごとにTFPの上昇率は違っておりまして、一般的にはサービス産業が上昇率が低いというようなことを言われておりますが、この試算そのものは日本経済全体をいわばひとまとまりにとらえて推計を行うということで、産業分野別の推計はいたしておりませんので、ここでのTFP上昇率と申しますのは、日本経済全体ということでございます。5ページの上から3行目にございますように、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」、こちらでもTFPを置いて、足下2023年度までの試算が行われていますが、こちらの全要素生産性(TFP)上昇率も全産業押しなべての日本経済全体のものということで設定されていると理解しておりまして、この経済再生ケースでは、2020年代初頭にかけて1.8%程度まで上昇、(参考ケース)では、これが1.0%程度まで上昇という前提が置かれています。

今回の検討では、これらを踏まえつつ、この試算のみにとらわれない幅広い設定を考えるということで、参考資料の5ページを御参照いただきますと、こちらに概念図が出てまいりますが、内閣府の経済再生ケース、足下0.5%から、2023年に1.8%まで高まる。この後の長期の数字として、そのまま1.8%で推移するものを(ケースA)、以下0.2%ずつ下に刻んでまいりまして、参考ケースと同じ1.0%で2024年度以降推移してまいるものを(ケースE)、その下の内閣府試算参考ケース1.0%まで高まって、そのまま1.0%で推移するものを(ケースF)、1.0%まで一たん高まったものが0.7%まで下がるケース(ケースG)、最後に1.0%まで高まったものが足下の0.5%に逆戻りしてずっと推移する、これを(ケースH)ということでこのような8通りケースをTFPとして考えるというところでございます。

5ページの(4)が、その他のパラメータということで、資本分配率、資本減耗率でございますが、お手元の参考資料で見ていただきますと、7ページに資本分配率の推移のグラフがございまして、これを見ていただきますと、右側の太い点線で、過去10年平均という数字がございまして、過去10年ですと、過去の長期平均よりも資本分配率が少し高くなっている。真ん中の細い線が過去30年平均、こういう水準ということでございます。

それから、参考資料の8ページに資本減耗率がございまして、こちらは比較的資本分配率ほど変動は大きくないのですが、長期的には緩やかな低下傾向で、過去10年平均が点線で示してございますが、それに比べると、過去30年平均のほうが少し高い、こんなような感じの数字になっています。

5ページにございますように、今回は、従来それぞれ直近の過去10年一通りで見ていたのですが、過去30年平均というものも考え合わせようということで、今回使用しているところでございます。

続きまして、報告書の6ページでございますが、総投資率の設定ということで、参考資料で申しますと、10ページにグラフが出ていますが、従来は総投資率につきまして、10ページのグラフの黒い太線、こちらが過去の実績で、これを外挿するという形で今回下のほうの実線、こういうものが従来の設定方法ということですが、今回これの上に総貯蓄率の実績、細い実線で出ておりますが、これはほぼ両者パラレルに動いておりまして、この差が経常収支の対GDP比をおおよそあらわすという関係にあるわけでございまして、そういう意味で海外とのやりとりを考えるということで、今回こちらの総貯蓄率につきましても、将来に向けて外挿するという線を引きまして、パラメータの幅として、従来型の実線のほう、これをケースとして(投-ベータ)と書いてございますが、それとこちらの総貯蓄率のほうにさや寄せる一点鎖線の線、こちらを(投-α)ということで、この2つのケースで幅を考える。これは経常収支の黒字幅、最近、月次で赤字が続いているということが話題になっておりますが、長期的には黒字が続いてきたものですが、この黒字幅がある程度保たれるという見方がある意味、下の実線でございまして、この黒字幅が縮小していって0に近づいていくという見方に立つものがこの一点鎖線で、この両者を幅を持って考えるということで総投資率の設定にも幅を持たせたということが報告書の6ページに書いているところでございます。

報告書の7ページ、(6)で労働投入量ということで、参考資料ですと、11ページにございますが、平成21年財政検証で雇用の非正規化が進むということで、人数だけではなくて、総労働時間で労働投入量は考えるべきだということで、マンアワーベースという推計ということで、16年の財政再計算のときに比べ改良をしたわけですが、その改良の考え方を踏襲して、今回新たな労働力推計に基づいて試算しました。生産年齢人口自体が減ってまいりますので、労働市場への参加が進むケースにおきましても、2012年から2030年にかけて総労働時間は年平均0.3%の減少ということになりますし、労働市場への参加が進まないケースでは、生産年齢人口の減少がそのままあらわれてまいりまして、年平均0.8%の減少、こんな状況になるというところでございます。

報告書の(7)ということで、パラメータの組み合わせをどう考えるかというところでございますが、資本分配率と資本減耗率は、TFP上昇率を高く設定する場合、景気がよくなるケースということでございますが、このときには比較的資本分配率は現状よりも低くなるのではないか、また企業の設備投資が活発化して新陳代謝が高まるということですと、資本減耗率は高くなるのではないかということで、この両者とも10年平均、30年平均ということで見ますと、30年平均のケースに当たるのではないかということで、TFP上昇率を1.0%以上と設定する場合には、(資-ア)と書いております30年平均のケース、1.0%より低い0.7%とか、0.5%のケースは、これはむしろ現状が継続するようなケースですので、10年平均に当たる(資-イ)と書いてあるこのケースを組み合わせる、こういう考え方で組み合わせをするということでございます。

総投資率につきましては、経常収支の先行きにさまざまな見方があることを踏まえまして、(投-α)と(投-ベータ)の両方のケースを用い、その両方の結果を幅で示すということで考えております。

労働投入量については、内閣府試算がそもそも経済再生ケースでは労働参加が進むということ、参考ケースでは進まない、現状のままということを置いておりますので、それぞれ接続するものに合わせて将来については組み合わせる、こういうことで考えてはどうかというところでございます。

8ページでございますが、(8)需要側の要素を考慮するという論点について、基本的にはコブ・ダグラス型のモデルは供給型のモデルではあるのですが、足下のGDPですが、こちらを景気循環の中で平均的な稼働率で生産要素を使用したときに達成できる潜在GDPというものに置き換えることで、稼働率の要素を間接的に組み込むことによりまして、ある意味、需要側の要素を考慮することを供給型モデルの中で考えるということにしています。

報告書の9ページでございますが、「経済前提の設定に係る他の論点について」ということで、運用利回りの設定については、基本的には従来の考え方に沿ってということで、まずは(1)の一番下のところにございますが、長期間の平均としての国内債券の運用利回りに分散投資による効果を上積みすることで考えていくということでございまして、参考資料の17ページを御参照いただきたいと存じますが、実質長期金利については、従来利潤率と経済学的に関係が深いということで、その長期間にわたる平均値の相関関係を用いて将来の利潤率はマクロ経済に関するコブ・ダグラスの試算から推計されて出てくるものですが、その利潤率のもとでどのぐらいの実質長期金利が見込めるかということにつきまして、過去の長期間の利潤率と実質長期金利の相関関係に基づいて将来を推計するという手法をとってきたところでございます。

しかし、参考資料の17ページの右下の相関係数のところを見ていただきますと、前回平成21年の財政検証のときに、過去25年、20年、15年ということで見ておりまして、25年、20年のところはそれなりの相関係数が得られていたわけですが、15年のところは相当相関係数が低い。今回その上のグラフで見ていただければわかりますように、バブル崩壊の前後で大分様相が変わっておりまして、相関係数をしっかり見るためにはバブル崩壊前の期間まで足のかかったような期間でないとなかなか相関係数、高いものが得られないということで、今回はその辺を踏まえまして、過去30年、25年、20年、前回よりもより長い期間をとって相関を見るということで、これはいろいろ先生方に慎重に御検討いただいた上で、こういう整理にすることにしたところでございます。

こちらが報告書の9ページの(ア)の最初のパラグラフでございますが、その後、「ただし」ということでございまして、TFPの上昇率を1.0%よりも低く設定するケース、これにつきましては、長期金利については、低成長経済のもとで利潤率と実質長期金利の相関関係が著しく低くなっている。そういう状況を脱却しきらないケースということですので、今回利潤率との相関関係で設定する方法はとらないということで、(イ)に書いてございますように、これらのケースについては実際の金融市場では長期的な動向がどう予測されているかといった情報を参考に設定する。これは今回の財政検証で新たに採用することにした方法でございまして、具体的には参考資料の18ページでございますが、「市場におけるイールドカーブから導出される10年国債フォワードレート」ということで、10年後のところまでは内閣府の試算を用いますので、この10年後から30年後のところ、20年間、ここのところでの10年国債のフォワードレートの動き、これも時点により違いますので、2012年12月以降のある意味マキシマムのところとミニマムのところをそれぞれケースGとケースHのほうに充てるということで設定するということでございます。

続きまして、報告書の10ページでございますが、国債利回りに上積みされる分散投資効果ということでございます。参考資料は22ページ、23ページに考え方の図表が書いてありますが、今回は運用利回りの考え方として、年金財政の観点から考えて、名目賃金上昇率をどれだけ上回るかということが年金財政上の運用利回りの効力を示すものということでございますので、この分散投資効果の推計に当たりましても、それと整合性のとれたベースでリスク・リターンを算定して、分散投資効果を算出するということで行いまして、この結果が概ね0.4%前後の数字ということで、参考資料の24ページに算出結果がありますが、この一番右の欄が分散投資効果ということで、ほぼ、どのケースでも0.3~0.5%、真ん中をとると0.4%ぐらい、そういう感じの算出結果になっています。

報告書の10ページに戻っていただきまして、(2)物価上昇率の設定ですが、こちらに関しましては、日本銀行の物価安定の目標の数値2%、内閣府試算では経済再生ケースで2%、参考ケースで1.2%。さらに内閣府試算より下にTFPを設定するケースもございますので、これとの関係で見ますと、過去30年間の実績の平均値で0.6%、こういうものも考慮いたしまして、内閣府の設定した数値とバランスがとれるように設定するという考え方で設定いたしております。

(3)にございますが、足下の経済前提については、基本的に内閣府試算に準拠して再生ケースと参考ケースの2通りを設定しております。

最後、(4)でございますが、変動を織り込む場合の経済前提、先ほどのオプション試算のところで入ったものを具体的な数値として、まず変動の周期については景気循環の平均的な長さを考慮して4年周期、また変動の幅に関しては過去30年間の標準偏差ということで1.2%を用いる整理としているところでございます。

これら全て反映いたしまして、数値でございますが、11ページ、「具体的な経済前提の設定について」ということで、内閣府の経済再生ケースに準拠する経済前提が上の段、参考ケースに準拠する経済前提が下の段で、2023年のところを見ていただきますと、経済再生ケースの物価上昇率2.0%、実質賃金上昇率が2.1%、実質運用利回りが2.9%という数字になっています。参考ケースはそれに比べて低い数字でございます。

次に12ページでございますが、こちらが各ケースの物価上昇率、実質賃金上昇率、実質運用利回りということで幅を持った形で試算した結果が出ていますが、物価上昇率は見ていただいたとおり2.0%~0.6%まで上から順に並んでおります。実質賃金上昇率はTFPが高いほど高くなるという状況になっているところでございまして、実質運用利回りも基本的にTFPが高ければ高くなるのですが、よく見ていただきますと、実質賃金上昇率ほど変化が大きくないという状況がございまして、これは何と申しますか、生産性が上がればそれはそのまま賃金に反映して生産性のいかんで賃金上昇率は動くわけですが、運用利回りはそのベースになる利潤率を考えますときに、生産性が上がれば当然利潤も上がっていくわけですが、一方でそこから投資されることによりまして、資本ストックも大きくなるという面がございますので、資本ストックがどれだけあるか、そこでリスクプレミアム分を落として実質的な長期利回りになるということでございますが、その辺の相関まで考慮いたしますと、実質賃金上昇率よりもTFPに対する感応度が小さくなるということで、TFPが上がってまいりましたときに、実質賃金上昇率ほど実質運用利回りは上がらないということで、その両者の差であります「実質的な運用利回り」と書いております利回り-賃金上昇率でございますが、これについては、経済再生ケース同士で見ますと、EからD、C、B、AというふうにTFPが高くなるにつれまして、これはだんだん間差が縮小する、スプレッドと呼んでおりますが、縮小する、こういう状況になっているところでございます。

一番右側に実質経済成長率が出ておりますが、これで見ていただきますと、将来、労働力投入が少なくなることがございますので、ケースGやケースHなどは実質マイナス成長になっていてかなり将来厳しい状況になると見込まれるケースになります。

13ページからの3ページほどは、(参考)として、内閣府の試算の概要等をつけております。

第1部の御説明は以上でございます。

○森大臣官房参事官

 引き続き、16ページ、「第2部 年金積立金運用のあり方について」、御説明いたします。

「運用利回りの示し方等について」ですが、1つ目の「○」でございますが、年金積立金の運用は、年金財政の安定化を目的としておりまして、年金給付費は、名目賃金上昇率に連動して増加いたしますので、運用利回りについては、従前どおり、名目賃金上昇率+αで設定ということでございます。

先ほども少し御議論出ましたが、前回の財政検証のときに名目値による運用利回り4.1%がひとり歩きして混乱生じめいたという話もございますので、今回につきましては、名目賃金上昇率を上回る運用利回り(α)のみを数値で設定して示すということにしております。

4つ目の「○」の後半でございますが、内閣官房の有識者会議におきまして、年金財政におきましても、収益最大化の努力を図るという話、これは年金財政の強化に貢献するものでございますが、そういう考え方がございますので、確たる根拠のある場合におきましては、より高い収益を求め、アクティブ運用を認め、そのたゆまぬ検討を明示的に求める、としております。

17ページでございますが、今回の財政検証においては、幅広い複数の前提ということでございまして、2つ目の「○」は、具体的には労働市場への参加が進むケースとして、TFP上昇率が1.8%のケースAからTFP上昇率が1.0%のケースEについては、実質的な運用利回り(α)が、中央値が見ますと1.1%から1.7%となっており、また労働市場への参加が進まないケースの場合、TFP上昇率が1.0%のケースFからTFP上昇率が0.5のケースHにつきまして、実質的な運用利回りが中央値でございますが、1.5%から0.9%と推移しておりますので、TFPは事前にはどうなるかわかりませんので、これらの全てのケースに対応できる利回り1.7%が示されるという形で取りまとめいただいたところでございます。ただ、実質運用利回り(α)1.7%で運用した場合におきまして、これはTFP上昇率が高くなる場合もございますけれども、その場合には年金財政にプラスに寄与することになりますし、そのような場合については、より慎重なリスク管理が必要と考えられるとお示しいただいています。

なお、これは専門委員会でも御議論出ましたが、あくまでこれはGPIFに与えられる目標でございまして、財政検証上はそれぞれのケースAからケースHに対応する運用利回りで財政検証の見通しが作成されることになります。

めくっていただきまして、ページの18ページ「リスクの示し方」でございますが、リスクの示し方については、運用目標等からの下振れリスクが重要ではないかというお考えが出されております。運用目標、先ほど申しましたように、名目賃金上昇率が基準になるわけでございますが、いわゆるタンス預金ですと、通常の経済ですと必ず名目賃金上昇率には達しませんし、他方、非常にリスクが高い運用でございますと、下振れリスクはまた高まるわけでございます。全額国内債券運用の下振れリスクがございますので、GPIFのポートフォリオにつきましても、この下振れリスクを超えないような形でつくっていただくということでお取りまとめいただいております。

また、一番最後の「○」でございますが、フォワードルッキングなリスク分析、これは有識者会議から示されていますが、その一層の充実を図るという形にしております。

19ページ、「基本ポートフォリオの設定期間等について」ということで、年金でございますので、基本ポートフォリオは長期的な観点から設定することでございますが、市場の構造変化に対応して機動的に見直す。

また、昨今の経済環境や市場環境の変化が激しい中では、乖離許容幅の中で、これは投機的なものであってはいけませんが、機動的な運用ができるよう明確にしております。

めくっていただいて、20ページ、「運用手法等の具体的な検討の在り方について」でございますが、強制的に徴収された年金保険料が原資でございますので、運用目的、目標に沿ったことが重要でございますが、それに沿った具体的な運用手法については、資金運用についての一般に認められた知見に基づき、基本的には、運用の専門家であるGPIFに委ねるのが適当であるという考え方がございます。

ただ、今申し上げましたように、年金の運用は、この専門委員会ができた趣旨もそうなのですが、年金財政・制度とも密接に関係することから、今後とも、財政検証の際必要に応じて、専門委員会や労使代表も参画する年金部会のような場で審議されることが適当であるという御意見をいただいております。

21ページは「全額国債運用・国内債券中心の運用について」でございますが、一番下にございますけれども、従前のデフレ下では、「国内債券中心の運用」が、安全かつ効率的な運用でございましたが、デフレ脱却を図り、適度なインフレ環境に移行しつつある我が国の経済の環境においては、あらかじめ「国内債券中心」を示す必要はないのではないかという御指摘でございます。

22ページにおきましても「運用対象資産の多様化等について」は、資金運用についての一般に認められた知見に基づき、基本的にGPIFにおいて検討すべきである。

ただ、これは運用側の能力向上のみではなかなか対応できないところがございますので、市場環境の整備を十分踏まえた対応が必要である。

23ページは「アクティブ運用等について」も、2つ目の「○」でございますが、具体的なアクティブ運用の在り方については、一般に認められた知見に基づき、GPIFにおいて検討してもらう。

ただ、これも前提といたしましては、超過収益率が獲得できる新たな手法や優れたアクティブマネージャーがたくさん出てきていただくと運用環境の整備が図れることが重要であると御指摘をいただいております。

24ページでございますが、「成長分野投資、社会投資(ECG投資を含む。)について」でございまして、年金の積立金につきましては、日本経済に貢献するよう運用したらいいのではないかという御議論ございますが、法律規定にも、専ら被保険者の利益のために運用する、受託者責任原則がございますので、専ら被保険者のために運用することにより、結果として、日本経済に貢献するというウインウインの「好循環」を目指すべきであるということが示されております。

25ページにつきましては、「年金積立金の運用に関する法律上の主な規定」。

26ページから33ページは、専門委員会以前にございましたGPIFの運用の在り方に関する検討、もしくは有識者会議(内閣官房)の提言と本専門委員会に出た主な意見について対照しております。

34ページにつきましては、「GPIFの組織・ガバナンスの議論について」。

35ページは、委員の名簿。

36ページは開催状況でございます。

次に参考資料2表題「(参考)賃金上昇率を上回る運用利回りについて」でございますが、今、申し上げましたことについて、わかりやすくポンチ絵風に3枚つけてございます。1ページでございますが、「年金給付費は賃金上昇率に連動して増加」するということでございまして、新規裁定者の年金額が賃金上昇率により上昇していくことによりまして、年金給付費全体につきましても、賃金上昇率に連動して増加していくポンチ絵がついております。

2ページ目は、運用利回りの関係でございまして、これはケースAからケースHまで実質的な運用利回りの平均値がどうであるか、「●」で示しております。ちなみに右側のほうに黒い線がございますが、これが自主運用開始から平成24年までのGPIFにおきまして、どの程度名目賃金上昇率を上回ったかという数字でございまして、2.8%。ちなみに平成23年度までですと、2.2%でございまして、そこから見ますと今回の1.7%というのは保守的な数字にはなっております。

3ページ目でございまして、山崎数理課長が先ほど申しましたが、TFP上昇率が増加していくと、賃金上昇率を上回る運用利回りは減少していくことにつきまして、説明がございます。

以上でございます。

○神野部会長

 何かコメントございましたら。

○吉野委員

 私から1つだけ追加ですけれども、参考資料1をごらんいただきたいと思いますが、今、山崎数理課長と森参事官から御説明ありましたが、それの2ページのところがこの推計の全体の概念図になっておりまして、ごらんいただきますと、先ほど御質問があった全要素生産性(TFP)はマクロで見ていきまして、これも幅を持たせまして、一番上の右のところにありますけれども、0.5%から1.8%、そういう形で内閣府の試算を外生的に与えるということであります。

それから、左のほうに行っていただきますと、経済成長率を出すときには、労働と資本と全要素生産性(TFP)でありますけれども、左側の労働成長率、これには先ほどの労働の投入量、労働の参加はどうなるかということを考えながらやっております。

真ん中の資本、ここのところでは資本投入のストックがどうなるか。そこのところで考えるときに稼働率という要因を入れていきまして、これを需要の要因として考えて、需要と供給両方考えるモデルと解釈しております。

その下の真ん中の右のところを見ていただきたいのですが、専門委員会で最後にいろいろ議論したときに、利潤率と長期の国債の金利が最近は相関が非常になくなってきております。この理由としましては、安全資産である国債に対するニーズがすごく多くなっていまして、昔と比べると相関が少なくなっております。そこで少し長期をとりまして、先ほどの説明のように、30年、25年、20年、こういう長期をとって利潤率と長期の金利の相関を出してきたというところが特色であります。

それから、真ん中のこの図を見ていただきますと、貯蓄と投資というのがありますが、総貯蓄と総投資、これのギャップがありまして、それがちょうど左側に書いてある海外要因である経常収支の赤字につながるという形で、外国部門と国内部門を結びつけるという形で推計をしております。

先ほど説明していただきましたように、すごく幅広いケースを考えまして、最終的には資料2の16ページ、17ページをごらんいただきますと、先ほど説明していただきましたように、16ページですけれども、今回は名目成長率+α、名目成長率が目標の運用利回りがどれだけ上回るか、その数値を出すということでありまして、その数値が17ページの真ん中の「○」の一番下の行に出ておりまして、全てのケースに対応できる実質的な運用利回り(α)として1.7%が示される。これはGPIFの目標である。ただし、これは経済前提という数字ではなくて、GPIFがこの数値をαとして運用に頑張っていただきたい、こういうところであります。

以上が追加です。

○神野部会長

 ありがとうございました。

 一昨年末から短い間に専門委員会におかれては17回の会合を開いていただきまして、精力的に活動をされ、まとめていただきました。委員の皆様方には御努力に敬意を表する次第でございます。

この部会からも専門委員会に参加していただいている委員として、吉野委員を始めとして、植田委員、小塩委員、武田委員、米澤委員に御参加いただいているわけでございますが、それぞれの委員の皆様方から補足してコメントしていただく点があれば頂戴できればと思っております。植田委員、何か、いいですか。

○植田委員

 はい。

○神野部会長

 小塩委員、何かございますか。

○小塩委員

 私もこの委員会に入っておりましたので、現時点で批判するというのはフェアでないので、それは控えますが、ほかの部会のメンバーの方に少し理解が難しいかなという点だけ1つ指摘させていただきたいと思います。今までTFPが高過ぎるとか、非現実的でないとかという話をしてきたわけですが、今回は、TFPは低くても先ほどの言葉でいうとα値、つまり、実質的な運用利回りが高くなるという御指摘がありました。「ああ、なるほどな」と思うところもあるのですが、TFPが高いのがいいのか、低いのがいいのか、理解しにくいところがあるかもしれません。普通に考えると、TFPが高いほうがいいのではという気がするのですが、試算結果を見ると、低いほうが運用利回りは結構稼げるということになります。結局どちらがいいのか私自身混乱しているのですが、どのように考えたらいいのか、メンバーの一人として情けないのですが説明していただければ非常にありがたいです。

○山崎数理課長

 今の点に関してでございますが、確かにおっしゃるように、この試算結果を見ますと、TFPが高いと実質的な運用利回り、賃金が上がるほどには運用利回りが上がらないので間差が縮小して、ある意味で運用による利得の程度が小さくなるということはあるわけでございますか、その場合、何が起こるかと申しますと、場合によって所得代替率というようなことで見られる将来の給付水準は、場合によってはTFPが高いほうが低いという現象は起こってきうるわけですけれども、その場合、ただ、年金額はどうかといいますと、そもそもTFPが高ければ賃金が高いわけですので、それの一定割合の給付も絶対値としては高いわけですね。まさに物価で割り引いた実質値として見てということでございます。

ということで、年金受給者の方とか我々が将来年金受給者になったときに、何が自分にとっていいのかというときに、実質的な年金額が高いことがいいのか、それとも現役の人の賃金対比で率が高いほうがいいのか、どちらがよりいい目標なのかということがあるのだと思いまして、ある意味、現役の方の賃金が高くて、それに対する対比では多少低くても、自分の生活がどのぐらいの生活ができるかという実質的な年金額、そちらが高いというのはそもそも非常に国民の福利という面ではいいのではないかと思うので、TFPを高めることが、逆に何かマイナスになるというようなことはないのではないかと私は認識しております。

○神野部会長

 ありがとうございます。武田委員、何か、よろしいですか。

○武田委員

 はい。

○神野部会長

 ありがとうございます。あとは、米澤委員、何かございましたら。

○米澤委員

 特にありません。

○神野部会長

 わかりました。

 それでは、ただいまの御説明いただきました専門委員会のほうの検討結果の報告について、山口委員、どうぞ。

○山口委員

 どうもありがとうございました。前回の検証に比べまして非常にきめ細かい改良をされておられまして、より精緻に将来像の投影ができるというベースが整備されておりまして、17回もやっていただいたということで、専門委員会の御尽力に敬意を表したいと思います。

ただ、一方で、精緻化をしました関係で、場合の数というのは非常に増えていることだと思います。前回2009年の検証のときには、経済前提が3通りと出生率が3通りで、3×3の9通りのパターンで将来の所得代替率を計算したわけですが、単純に今回8×3で考えますと、24通りということになるわけで、このあたり、専門委員会で認識、測定していただいた情報をこの年金部会でどのように評価していくかということが非常に大きな問題になるのではないかと思います。今回いろいろ導出いただいた各ケースは、理屈の上では多分それぞれそれが発生する確率というものがその裏にあって、それを計算するのは非常に難しいとは思うのですけれども、そういうものが背景にあった上で出てきている。したがって、12ページに出ている各ケースを同じ重みで見るというのは余り正しくないのだろうと見るわけです。

そういうときに、イメージでいえば、中心に近いようなケースが高い確率がついていると見られるとするならば、この年金部会でこの結果をどのように見ていくかということについては、例えば中央値を中心に考えていくといったような考え方もあるでしょうし、あるいは財政均衡する時点の所得代替率の水準が50%を下回らない場合の数が幾らであるかという評価もあると思います。例えば24通りあって、24分の13通りが50%下回らなかったといったような判断にするとか、そういったことをある程度これから計算する前の段階で、部会としての1つの共通認識を持っておくことが投影結果を評価していく上では必要ではないかと思うところでございます。

それから、第2部でありますけれども、ここで改めて申し上げる必要はないのですけれども、年金運用の収益率の変動というのは、年金の給付水準の引き下げでありますとか、保険料の引き上げといったようなことにつながるわけでありまして、そういう意味で運用リスクというのは全て最終的には受給者であるとか、あるいは加入者が負担する仕組みになっているわけでございます。したがって、積立金の運用の考え方というのは、今回の財政検証と整合する形で必要とされる運用収益をできるだけ少ないリスクで達成するといったようなポートフォリオを選択することが重要でありまして、今回この報告の中に出ておりますような国内債券並みのリスクの維持という考え方につきまして、私も基本的に賛成でございます。

ただ、この中にフォワードルッキングなシナリオアプローチについて言及されている部分がありまして、これにつきましては、一たん始めた後で、どこで次のシナリオに変更するのか、的確にマクロ経済を予測することが非常に難しい局面が多いわけでありますし、これまでも年金運用の世界ではタクティカルなアセットアロケーションというものについては必ずしも成功しておらないといったようなことを考えますと、この報告書の中に「確度の高いものであるべき」とあるのですけれども、一体どのような方法によってその確度を図ることができるのか。現実の運営ということで考えました場合に、非常にこれは難しいのではないかと私は思っております。

これに関連して、GPIFの前身時代には、旧資金運用部から長期借入れを行って、市場運用をするという資金運用事業がございました。これについては、平成22年度に約3兆円の損失が発生した形で手終っております。これについて、平成24年に会計検査院が出しました報告の中では、以下のように記載されておりまして、「損失が一定規模に達した場合には、その拡大を防ぐために事業自体を中止するなどの仕組みがあれば、損失の増大を抑制することができた」と指摘されております。アクセルには必ずブレーキが必要である、といった苦い経験だと思いますが、そういったことを肝に銘じて、この際、十分にこれを活かすという知恵が必要ではないかと思っておるところでございます。

以上です。

○神野部会長

 ありがとうございます。前半の問題、ケースが非常に多いので、これは作業に入る前に絞ってしまえということでしょうか。これについては、まず事務局なり、委員長なりが御見識あれば伺っておきますが。

○山崎数理課長

 経済前提はかなり幅広くということで8通りありまして、一方で人口推計は基本は3通りあると。私ども計算を行いますこと自体は、別に3×8で24通りでもできるわけでございまして、それなりの作業時間かかりますが、ただ、そのとき、確かにお示しするときに、それでは見づらいということはあろうかと思いますので、基本的には人口推計などは中位が一番メーンと考えられますので、そこで8通りはもちろんやった上で、そのほかの低位や高位につきましてやったものに、単純にその8通り全部をお示しする必要があるかどうかにつきましては、一応出てきた結果も見まして、隣接する2つのケースがありますと、2つのケースの間になるケースは結果もその間だろうとか、ある程度予測つく部分もございますので、出てきたものを見まして、必要に応じて間引いて、できるだけ国民の皆様に理解しやすいようにお示しするというお示しの仕方は工夫させていただければと存じまして、事前に何か決めてしまうということではなくて、出たものを見て判断するということでやらせていただいてもよろしいのではないかと考えているところでございます。

○神野部会長

 1番目の話については作業を進めながらというか、作業の結果などを一たん出してみた後で検討したいということでよろしいですか。

○山口委員

 でしたら、そのときにまた議論すればいいと思いますね。

○神野部会長

 そうですね。それはもちろん当然のことですが、2番目、よろしくお願いします。

○森大臣官房参事官

 ページでいいますと、28ページをごらんいただきたいのですけれども、山口先生おっしゃったとおり、ポートフォリオの設定期間に関する主な意見としまして、専門委員会の中でも、まず有識者会議におきましては、フォワードルッキングな見方で見るべきではないかとございました。他方、専門委員会の中でも、経済見通しに関してはシナリオを立てて議論すべきではないかという御議論もございましたが、他方、外れることも想定する必要があり、1本のシナリオで将来を描くことは難しい、という御指摘もございました。なので、本文中の記載としましては、複数のシナリオでリスクをいろいろ検証するという形で書いておるところでございます。

先生おっしゃったとおり、年金財政と積立金の運用につきましては非常に密接に関係いたしますので、運用手法の具体的な検討のあり方、これは有識者会議のときから、GPIFにつきましてはより自主性なり柔軟性を求める見解も出ておりますが、他方、財政検証の際、必要に応じて本専門委員会や拠出する立場から労使代表も参画するような年金部会の上で審議するということでございまして、適切に見ていただければと存じます。

○神野部会長

 ほかにいかがでございましょうか、出口委員、どうぞ。

○出口委員

 この御報告を聞いて、本当に細かくよく詰められていて、すごく勉強になったと思って感心させていただいたのですが、今までこの部会でいろいろ議論をさせていただいて、こういった報告をきちんと読ませていただいて何とか私自身もようやく、こんなことなのだということがわかったのですが、これが例えば普通の市民にどういうふうに伝わるのだろうかということがすごく心配です。恐らくコブ・ダグラス型生産関数ということを知っている市民の方はほとんどいないと思うのですね。そうすると、今回もちろんこういう前提で計算を進めることはすごくいいと思いますし、この前提で出てきた財政検証をベースにこれからの年金制度を考えていけばいいのですけれども、これでやりますよということがメディアで報道されると思うのですね。そのときに普通の市民が、こういう枠組みでやるのだな、なるほどよくわかっていて、むちゃなことをやっているのではないのだね、そういうPRの仕方を事務局にはぜひ考えていただきたいと思うのですね。

本当に無知からくる誤解だと思いますけれども、一般の市民の方の中には、財政検証とかいえば、市民をごまかすために難しいことを言っているのではないかと疑っている人も実際はいるような気がするのですね。私自身はこの議論に入らせていただいて、本当にフェアで、いろんなことをきちんと考えられていて、合理的で妥当だと思っていますので、ただ、正しい議論をやって、正しいことをやっているということと、そのやった結果が、普通の市民がそのように理解するということは私は全く別の問題だと思っています。後者のほうも前者と同じぐらい年金制度のような市民の生活に密着した問題を考えていく上では物すごく大事なことだと思います。ここに傾注された努力を、ぜひわかりやすく市民の方々にわかっていただく方法を考えるためにも払っていただければ大変ありがたい、これは要望ですけれども、そう申し上げたいと思います。

○神野部会長

 ありがとうございました。関連してですか、米澤委員、どうぞ。

○米澤委員

 私も今の御意見、もっともだと思いますけれども、結論から先に言うと、これを一般市民に納得していただくのは無理だと思いますので、それはメディアのほうのお手並みの拝見はありますけれども、無理だと思うので、何をすべきか、前にも少し言ったかと思うのですけれども、財政検証を5年に一遍ありますけれども、毎年、年金数理部会で、部分的なデータになるかと思いますけれども、見直しが行われていると聞いていますし、その資料も送っていただいています。ですから、そこのところで予定どおり、ないし予定の範囲内で進んでいるかどうかというのをわかりやすく説明していただくというのは1つの工夫かなと思っています。

ただ、そのときに非常に誤解を、それも誤解を与えるのですけれども、例えば運用のほうに関しましては、毎年毎年数字は結果として出てくるわけですけれども、これが平均的に想定の外にあるのか、内にあるのかというのは、その判断は非常に難しいものがあるので、我々もよく5年平均ぐらいで見てくれよという言い方をするわけなので、そういうところはあるかとは思いますけれども、そこのところで、そういうふうに見てくださいというもとで、何かもう少しわかりやすい格好で一般の方たちに示していくというのは1つの方法かなと思いますし、先ほど少し山口委員がどこかでストップという言い方でしたか、何かチェックする必要があると言ったのも、そこのところを少し工夫してやっていけば、何らかの解決にはなるのではないかと思っています。

○吉野委員

 米澤先生と少し違うのですが、せっかく生産関数できちんとやっていますから、国民の方々に理解していただけるように、私も一生懸命努力して、事務局と何とか普通の方がわかるような説明をさせていただきたいと思います。その際には、出口先生にもいろいろ御相談することがあると思いますけれども、よろしくお願いいたします。

○神野部会長

 可能な限り咀嚼して、コブ・ダグラス何なりを、いろんな選択肢があるのだけれども、なぜ、これを選び、どんなことをやったのかというようなことを咀嚼してもらえればよろしいかと思います。

ほかにいかがでございますか。小塩委員、先ほど御発言があったので、花井委員、先にお願いします。

○花井委員

 すみません、私はわからないことがあって質問したいのですが、12ページのところで、先ほど質問しましたTFP上昇率なのですが、これは2024年度から何年度までの値をとったものなのかということです。一番上にあります1.8%というのは、多分2023年度まで内閣府が出した数字ではないかと思うのですが、2024年度以降何年かの平均として、ずっとこの数字があるのかということを教えていただきたいと思います。

といいますのは、これから人口が減少していくわけですし、労働力も減っていく。多分女性がこれから労働市場に働きに出てくる。さらに男性も含めて多様な働き方、あるいは短時間の働き方が増えていくとすると、1人当たりの労働時間や、1人当たりの賃金が下がっていくのではないかと思うのです。そうした場合、このTFPというのが上昇し続けるのか。それがなかなか理解できないものですから、先ほど言いましたように、何年かにわたっての平均なのかということを教えていただきたいと思います。私は非常に高過ぎる数字ではないかと思っております。もちろん専門委員会で専門家の先生たちが検討されたので、疑うわけでもないのですけれども、それにしても、これからの社会のあり方、経済のあり方を考えたら、本当にこの数字でいいのかという疑問があるということが1つです。

それから、運用のことにも少し触れさせていただきたいと思います。18ページに、先ほども出ていました「フォワードルッキング」という表現があるわけですが、何をもってフォワードルッキングと言っているのか、そこがなかなかわからないというのがもう1つです。内閣官房の有識者会議でも、委員全員の認識が細部にわたって完全に一致したというふうには聞いていないわけですが、その上でフォワードルッキングなリスク分析、あるいは運用対象の多様化も、例の有識者会議の報告書はガバナンス体制、あるいはリスク管理体制の見直しもセットで行われるべきと指摘しているわけです。このガバナンス体制ですとか、リスク管理体制につきましては、どのようなスケジュールで今後見直しを進めていくのかということをぜひとも教えていただきたいと思います。

とりあえず2点について。

○神野部会長

 第1点も咀嚼して説明していただきたい。

○山崎数理課長

 第1点でございますが、この12ページのところ、一番右に実質経済成長率というのが(参考)で出ておりまして、この下、(対物価上昇率、一国経済、2024年度以降20~30年)と書いてございまして、この計算自体は2024年以降30年間をやって、20年間の平均、25年間の平均、30年間の平均をとりまして、こちらの幅を示しているということでございますので、期間といたしましては、2024年以降30年くらいを見ているということでございます。

TFPの上昇率でございますけれども、お尋ねは労働人口も減っていく中で、TFPというものがこんなに上がるものなのだろうかということかと存じますが、このTFP上昇率というのは、いわゆる技術進歩、労働で言いますと労働の質の向上に当たる部分でございますので、むしろ労働の投入量そのものが少なくなっていって、その状況のもとでもある程度の経済成長をやっていこうと思えば、まさに労働の質や効率を高めていかないとそれは維持できないというものでございまして、労働力が量として減っていけば、むしろこのTFPを高めていかないと国としての経済活力が保てないという性格のものかと思います。もちろんそれは何もしなくても高まるというものではなくて、当然そこは政策的努力によりまして、教育訓練ですとか、研究開発投資ですとか、そういう政策努力をやった上で1.8%というものになったとしたらどうなるかという数値ということでございまして、実際のところ、実質経済成長率の数字を見ていただきますと、TFPが1.8%の状態でも、1.3ないし1.5%の実質経済成長率ということでございますので、そういう意味では、この程度の成長を保とうと思うと、むしろこのくらいのTFP上昇率が生じるように教育や技術開発を推進していかないといけない、そういう関係になるというところでございます。

○神野部会長

 今のに関連してということですね。

○花井委員

 労働の質を高めるというのはそのとおりだと思いますが、例えば技術革新が起こった場合、製造業では逆に労働者の数が減っていくことも十分あり得るわけです。先ほどお聞きしましたとおり、産業ごとに相当違うのではないかと考えるわけでして、それを全国的に全産業で、というふうにおっしゃったわけですけれども、その辺をどう考えるかということがあろうかと思います。

それから、12ページの右側2024年度以降の20~30年の実質経済成長率の平均が1.3%~1.5%という意味なのですね。すみません、その確認なのですけれども、本当に30年先まで1.5%という数字があり得るのか。これは1つの試算なのですけれども、これで決め打ちしているというわけではないにしても、そういう前提が、本当にこの数字が現実的なのかが疑問ということを言いたかったわけです。

○山崎数理課長

 1.8%というのは、あくまで仮定ということですので、こう置いたらどうなるかということで、こう置いたときに、将来の経済成長率が幾らと推計されますかという、1.3%~1.5%がある意味で結論ということでございます。

あと、産業分野ごとに、確かにTFPの上昇率は違いますが、それ全体を押しなべて、日本全体として1.8%のTFP上昇があったとしたら、どうなるかということで計算をしているということで、そういう意味で1.8%は仮定値でございまして、それが実現されるかどうかというのは、まさに日本再興戦略に掲げているようなさまざまの施策が十分な効力を発揮するかどうかということにかかっていると考えているところでございます。

○花井委員

 そうすると、1.8%は仮定値ということですが、内閣府で試算した2023年度が1.8%との説明があったと思うのですけれども、2024年度からも1.8%と置いているということなのか。ただ、仮定値なのであれば、ある意味、どんな数字を置いてもいいという、そういう意味合いでおっしゃったのか。仮定値という言い方でしたが、その辺はどういうことなのか。

山崎数理課長

 すみません、資料を参照しようと思ったのですが、すぐに出てまいらないので口頭で申し上げますと、この1.8という数字は、1983~1993年までの期間、過去の経済が好調だった期間でございますが、そのときに実現していたTFPの値ということを根拠に内閣府で1.8というのを。失礼いたしました。参考資料1の4ページにその辺の記述がございます。真ん中のあたりの「※」でございますが、1.8%:景気循環の第10循環から第11循環(昭和58(1983)年2月から平成5(1993)年10月)の平均ということで、内閣府のほうでは、過去に実現した実績のある数値ということで、この1.8%を置かれているということでございまして、そういう意味で、置いた根拠はこちらと承っているところでございます。

○神野部会長

 時間も迫っていますが、フォワードルッキング。

○森大臣官房参事官
 フォワードルッキングにつきましては、過去のデータのみにとらわれないということでございますが、具体的に有識者会議で示されているのは、従前、日本は長期的なデフレでございましたけれども、デフレ脱却を図りまして、適度なインフレ環境に移行しつつあるという形でフェーズが変わっているということを、フォワードルッキングという言い方で御認識を示しているかと存じます。

あと、ガバナンスにつきましては、報告書の34ページでございます。GPIFにつきましては、今、独立行政法人という組織でございますが、独立行政法人につきましては、各方面で成果を上げている一方、さまざまな問題点も指摘されておりまして、3つ目の「○」でございますが、有識者会議におきましても、このままでは経費、職員数、給与水準の制約があるし、運用組織において合議制を導入するにも支障があるのではないかと御指摘を受けております。

 今、政府の独立行政法人につきましては、制度導入の本来の趣旨にのっとり、一律硬直的な運用を見直し、多種多様な各法人の特性を踏まえた制度を運用するなど改革を検討しているところでございまして、また、GPIFにつきましては、閣議決定のところの3つ目の「○」でございますが、高度で専門的な人材確保ができるよう、職員数や給与水準の弾力化~」等ということでございまして、特別な御決定をいただいているところでございまして、現在、外部のコンサルタント等をお願いしまして、給与体系の見直し等につきまして着手したところでございます。

以上でございます。

○神野部会長
 ほか、いかがでございましょうか。藤沢委員。

○藤沢委員

 すみません、今のガバナンス及び運用のあり方のところで、読ませていただくと、何かにつけて専門家であるGPIFに委ねる、GPIFで検討する、そして、中にはGPIFがインハウスの運用の活用も検討、というふうに書いてあって、そしてガバナンスの議論もしてあるということで、組織をコンサルタントに見ていただくということも書いてあるのですけれども、いろんな議論をやっているのを見ていて思うのは、実際に運用をやっていた人たちがその場にいないような気が大変するわけですね。実際に議論されて、若干運用経験がありますという方もパフォーマンスどうだったのかと思うような運用会社の方がいらっしゃって、できれば、このアドバイザリーボードでもいいのですけれども、きちんと過去の運用の成果を明示した上で、実績のあるプロの方に本当にこれで機能するのかというような意見を平場で聞ける場をつくっていただかないと、やったことない人たちが理想論を語っていても大変心配だなというのが私の感想でございます。

○森大臣官房参事官

 申しつけ加えますと、GPIFは今のところ、先ほども紹介しましたが、名目賃金上昇率+2.8%ということで、年金財政上はプラスの収益をとっている。あと3分の1は、運用経験があると、民間の方を今採っておるということでございまして、運用部長も米国の大学院を出て信託業務をした者です。給与は安いですが、国のためにという形で来ていただいているところもございますけれども、そういう形で人材を確保しておるところでございます。

○神野部会長

 ほか、いかがでしょうか。花井委員。

○花井委員

 すみません、短く、2点ほど要望したいと思います。1点目は、GPIFのポートフォリオの見直しですとか、運用をどうするかといった話は、今回の財政検証を待って行うべきではないか、そういうことだったのではないかと思うのですが、既にインフラ投資が開始されているとか、新聞には途上国への投資ということも出ていたり、それはまだだとは思うのですけれども、少し順番が違うのではないかという疑問を持っているということが1点です。

それから、ESG、国連責任投資原則の問題ですが、まだ厚労省として検討されていないのではないかと思うのですが、既に金融庁の金融審議会であるとか、環境省では検討に入っているやに聞いておりますので、ぜひとも今後、厚労省においても御検討をお願いしたいと思います。

以上です。

○神野部会長

 今の2点について何かコメントがあれば頂戴しますが。

○森大臣官房参事官

 まず最初の点でございますけれども、年金のポートフォリオの作成には最終的には予定年金積立金額とか、そういうものが必要でございますので、最終的にはそういう予見も踏まえてポートフォリオは作成するものだと考えております。

2点目でございますが、先ほどのとおり、年金積立金の運用というのは、専ら被保険者のためにということでございまして、エンバライメントなりソーシャナルなり、グロースに着目して、きちんと運用利益が取れるかどうか、これは国内成長に対するところの視点も同じでございますけれども、という観点から、GPIFにおいて御検討いただくようなことで考えてございます。

○原委員

 時間が押しているところすみません。先ほど少し前ですけれども、出口委員もおっしゃっていたのですが、コブ・ダグラス型生産関数という言葉ではないですけれども、今回はこのような積立金の運用という議題の中で、一般の方々には難しい言葉もいろいろ出てきましたが、まずは、公的年金制度というものをみたときに、世代間扶養の制度であり、社会的な支えの制度である賦課方式をとっているということを前提として、その中での積立金の意味や役割といったものを、ぜひ再度、一般の方々に理解していただけるような情報発信をお願いしたいと思います。積立方式ではありませんので、まずは賦課方式というものもきちんと理解していただいた上で、その中での積立金の意味、役割、そしてその運用といった一連の流れで説明していかないと、過度に不安な要素だけをまいてしまうようなことになる場合もあるかと思われますので、ぜひそのような形で、情報発信をお願いしたいと思います。

○神野部会長

 コメントがあればどうぞ、意見、どうぞ。

○小塩委員

 時間が過ぎてしまっているのに申し訳ないのですが、先ほど出口委員から、私たちの経済前提の作業について高く評価していただいて非常にありがたく思いました。確かに、経済前提は理論的に非常に精緻にできていまして、文句をつけるところはなかなかないのですけれども、ただ、理論的に正しいというところとは違うところで、癖みたいなところがあるのですね。コブ・ダグラス型で、超長期で、しかも閉鎖経済で計算しますと、貯蓄率に利潤率が結構左右されて、それに利子率が連動するところがありますが、貯蓄率が低下するのに伴って、利子率が少し高めに出るところがあると私は思います。それは理論的にそう出てくるのでしようがない、しようがないというのはおかしいですけれども、正しいと思うのですが、そういう癖は考えておいたほうがいいと思います。

私たちがやったことが常に正しくて、マーケットが間違っているというわけではないので、マーケットでどういう評価がされているかは見ておく必要があると思います。数字を出すときも、できるだけコンサバティブな数字を出す。後で、上に外れたら別にいいわけですから。そういう気がいたします。

○神野部会長

 ありがとうございます。

○出口委員

 GPIFについても、もしいろいろメディアの方に説明されるのだったら、GPIFの組織ですとか、固有名詞は要らないと思うのですけれども、どういう経験を積まれた方がやっていらっしゃるのかということを丁寧に説明されたほうが、そういう資料もつくられたほうがいいですね。今、首相がいろんなことを言われているので、GPIFもかなり人口に膾炙するようになってきたと思いますけれども、なかなか実態を知らない人が多いので、先ほど藤沢委員も言われましたけれど、どういう人がやっていて、どういうところに頼んでやっているのか、そういうポンチ絵みたいなものできちんと説明されたほうがいいように思います。これも要望ですけれども。

○神野部会長

 ありがとうございました。さまざまな観点から熱心に御議論を頂戴いたしましたが、差し当たってといいますか、議題(1)で御議論を頂戴いたしました基本的な枠組み、専門委員会で御検討いただきました経済前提等々、今、第2番目の議題にかかわるようなことで、これを踏まえながら、今、公表の仕方等々について御意見も頂戴しておりますので、本日の議論を念頭に置きながら、この2つの議題(1)、議題(2)でやった前提をもとに事務局に作業をしていただく。その結果をこの部会に御発表いただく。さまざまな発表の仕方についての御注意をいただいた点には、どの時点かでまた対応していくということを考えて、作業に移っていただくということでよろしいでしょうか、本日の部会につきましては。

(「はい」と声あり)

○神野部会長

 それでは、そのようにさせていただいて、本日の部会を閉じさせていただきたいと思っておりますが、事務局から連絡事項等がございましたら、お願いいたします。

○八神総務課長

 次回の開催日程につきましては、また追って連絡をさせていただきます。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。私の運営の不手際で予定時刻を大幅に上回ってしまったことをおわびしつつ、御熱心に最後まで御議論頂戴いたしましたことに深く感謝を申し上げます。

どうもありがとうございました。

 

(了)