2014年10月15日 第26回社会保障審議会年金部会議事録

年金局

 

○日時

平成26年10月15日(水)15:00~18:00

 

○場所

東京都千代田区内幸町2-1-1

イイノホール&カンファレンスセンター Room B

 

○出席者

神 野 直 彦 (部会長)

植 田 和 男 (部会長代理)

小 塩 隆 士 (委員)

駒 村 康 平 (委員)

佐 藤 博 樹 (委員)

武 田 洋 子 (委員)

出 口 治 明 (委員)

花 井 圭 子 (委員)

原 佳 奈 子 (委員)

藤 沢 久 美 (委員)

宮 本 礼 一 (委員)

諸 星 裕 美 (委員)

山 口  修 (委員)

山 本 たい 人(委員)

米 澤 康 博(委員)

○議事

○神野部会長 それでは、定刻でございますので、ただいまより、第26回を数えましたが、年金部会を開催させていただきます。

   皆様には、大変お忙しいところを御参集いただきまして、心より御礼を申し上げる次第でございます。

   本日の委員の出欠状況でございますけれども、柿木委員、菊池委員、小室委員、小山委員、森戸委員、吉野委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。また、佐藤委員、竹田委員、出口委員、米澤委員がおくれて御出席との御連絡を頂戴いたしております。既に皆様のお手元に配付してございますが、御欠席の柿木委員と菊池委員から資料を提出していただいておりますので、御参照をお願いいたします。

   御出席いただきました委員の方が3分の1を超えて おりますので、会議は成立している旨をまず御報告申し上げたいと思います。

   さらに、本日は、衆議院の厚生労働委員会終了後に、塩崎厚生労働大臣から御臨席いただけるということでございます。17時ごろに御到着と伺っておりますので、その際には一旦休憩をとらさせていただきます。その旨、御承知おきいただければと思います。

   まず、議事に入ります前に、事務局から出席者の御紹介と資料の確認をさせていただきます。

   事務局から、よろしくお願いいたします。

○総務課長

   まず、事務局からの出席者ですが、お手元の座席図のとおりとなっておりますので、紹介にかえさせていただきます。

   次に、お手元の資料について確認をさせていただきます。

   本日は、配付資料といたしまして、

   資料1「年金額の改定(スライド)の在り方」。

   資料2「高所得者の年金給付の在り方、年金制度における世代内の再分配機能の強化」。

   資料3といたしまして「GPIFのガバナンス体制」。

   参考資料1「今後の検討の進め方」。

   参考資料2「GPIFのガバナンス体制(参考資料)」ということでございます。

   部会長から御紹介ございました柿木委員、菊池委員からの提出資料もあわせて配付をさせていただいております。

   御確認をいただいて、不備がございましたら事務局にお申しつけをください。

   よろしくお願いいたします。

○神野部会長 よろしいでしょうか。

   それでは、大変恐縮でございますが、カメラの皆様方にはここで御退室をいただければと思います。

   御協力をよろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

○神野部会長

   それでは、議事に入らせていただきますが、本日の部会の議事といたしまして、お手元に議事次第が行っているかと思います、御参照いただければと思いますが、3つ議事を用意いたしております。

 第1は「年金額の改定(スライド)の在り方について」。

 第2は「高所得者の年金給付の在り方、年金制度における世代内の再分配機能の強化について」。

 第3番目に「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のガバナンス体制について」と3つの議事を準備させていただいております。

   事務局から、冒頭御紹介がありました資料1、2について、続けて御説明をいただいて、その後、今御紹介申し上げました議題1と議題2について、分けて御議論を頂戴したいと思っております。

   それでは、まず初めに、事務局のほうから、資料1、2について続けて御紹介いただければと思います。

   よろしくお願いいたします。

○年金課長

   年金課長の度山です。

   それでは、資料1と2、順次御説明をさせていただきます。

   まず、最初の資料1「年金額の改定(スライド)の在り方」ということでございます。

   最初に、2ページ目になりますけれども、現在の年金額の改定の枠組み、2004年の改正以降の状況についてファクトの確認をしたいと思います。

   3ページ目「年金額の改定(スライド)の基本的な 考え方」ですが、公的年金は若いころに保険料を納め、高齢期になって所得がなくなったときに年金を受け取る仕組みですが、そこにはかなりの時間差がございますので、あらかじめ予期できない長期間の経済社会の変化に対応する中で、実質的な価値を維持した年金を保障するという要請がある中で制度を運営してきているということでございます。

   経済成長の果実というのは、基本的には稼働する現役世代の賃金水準に反映されるということ、また、年金給付の財源である保険料収入というのは厚生年金を念頭に置けば、賃金比例でいただいておりますので、賃金水準に連動するといったことから、年金の給付水準というのは、基本的には賃金の水準の動向というものをパラメーターとして改定するということを原則に置いて運営をしてきたということでございます。

   ただ、この原則だけですと、急速に少子高齢化が進んでいく中で将来世代の負担が過重になるということで、この改定のルールに一定の調整の措置を講じてきているということでございます。

   4ページ目、年金額の改定のルールがどのように変遷したかということを簡単にまとめました。

   俗に言う賃金スライド、賃金再評価、物価スライド制というものが福祉元年と呼ばれた昭和48年の年金の改正で導入をされました。それ以降は財政再計算時に賃金再評価や政策改定をする。その間の年に関しましては物価スライド、これも後に自動物価スライドという形になりましたけれども、原則5年置きに賃金再評価なり政策改定をするという形で、年金の実質的な価値を担保してきたということでございます。

   このルールに大きな変更を加えましたのは2000年、平成12年の改正で、裁定後の年金額の改定は基本的には物価変動率のみ、物価スライドのみとすると。既裁物スラと呼ばれましたけれども、そういうルールを導入いたしました。

   ただ、当時は5年ごとにこれをやるということでしたので、この改定ルール自体は法律に直接規定をされないで、例えば基礎年金額の規定あるいは厚生年金の再評価率の改定という形で、具体的には規定をされていたということでございます。

   さらに、2004年になりますと、将来の保険料率を固定して、その範囲の中で給付水準を調整するという仕組みをつくりましたので、毎年の改定のルールを明確に法定化するという必要が生じましたものですから、新規裁定までは賃金変動率で、既裁定年金は物価変動率で改定するという原則なり、それぞれの算定方式というものを法律に明確にルールで定めたということでございます。その上で長期的な給付と負担の均衡を図るために、この賃金変動率ないし物価変動率に対しまして、一定の調整を講じる仕組みということで、いわゆるマクロ経済スライドを導入したということでございます。

   次のページに行っていただきますと「現行の年金額の改定(スライド)のルール」がどうなっているかということで、新規の裁定までは賃金上昇をベース、裁定をされた後は物価上昇ベースに改定するというのが原則ではございますけれども、要は、物価上昇よりも賃金上昇が大きい、実質賃金上昇があるという世界を念頭に置いた説明の仕方ということになります。

   物価上昇が賃金上昇を上回る、両方ともプラスでも実質賃金上昇がマイナスという場合には、新規裁定、既裁定ともに低いほうの賃金上昇をベースに改定をするというふうにルールとしては定めてございます。

   冒頭御説明しましたように、基本的には年金の主たる財源である保険料の収入というのは賃金の水準に連動するということですが、それを上回る物価上昇率分まで給付を保障すると、長期的な均衡が保てなくなるということから、このようなルールを内生化したわけでございます。

   上昇局面だけだと、これがわかりやすいのですが、6ページ目にまいりまして、実際には賃金と物価がそれぞれプラス・マイナスのケースもあるということで、実際にはどのように調整をしているかというと、今申し上げたルールをベースにしながらも、改定率がマイナスになる場合には物価変動のマイナス分まで、いわゆる物価が下落した分までしか新規裁定、既裁定とも下げないということをルール上盛り込んでございます。

   これは、例えば右下にありますように物価は上がっている、賃金は下がっているというときに、名目額を割り込んでまで既裁定者の改定率を新規裁定者に合わせると、あるいは新規裁定者と既裁定者の水準が逆転してしまうみたいなことを防ぐために、物価が下がった分までは下げるけれども、それ以降は調整しないというルールを内在化した形で設定したというのが現状のルールになってございます。

   次のページをめくっていただきますと、2000年に既裁定の年金は物価スライドのみとしたということで御説明を申し上げましたけれども、そうは言いながらも賃金変動で改定される新規裁定者との年金額に余り大きな乖離が生じるということは適切ではなかろうということで、その差が2割以上乖離した場合には賃金変動率による改定を行うという前提で財政再計算並びに財政検証を行っていると。

   ただ、このルールは法定化はされておりませんのと、まだこのルールが発動するまでの乖離というものは現実化していないということで、これまでの財政検証や財政再計算はこういうルールのもとで実施したということにとどまっているところでございます。

   8ページ目でございますけれども、この原則的なルールをベースにした上で、その改定率である賃金とか物価の変動率に対しまして、被保険者の減少率や平均余命の伸びを考慮したマクロ経済スライドの調整をかけるということの説明でございます。

   ただ、これは昨年来、御説明してきておりますように名目値を下限にする、すなわちこの調整によって、マイナスになる改定は行わないということになっておりますので、8ページの下のほうに書いてございますが、例えば、賃金や物価の伸びが小さい場合には調整率フルの発動はできないで部分的な調整にとどまる。あるいは賃金や物価がマイナスに推移した場合には調整措置そのものが行われない。このような形でルール化されておるということです。

   もう一つ、9ページ目、実際に物価だ、賃金だというふうに申しますけれども、どういう数値を使っておるかということでございますが、物価の改定に関しましては、暦年の前年の消費者物価指数の変動率、1月~12月分までの平均を翌年度の物価の改定率として使うという形になっています。

   賃金に関しましては、前年度の賃金の変動率がこの年金額の改定時にはわからないものですから、前々年度からの過去3年度の実質賃金変動率の平均に前年の消費者物価指数の変動率を乗じる形で、人為的に賃金変動率を算出するということをやっております。3年度の平均をとることにいたしましたのは、平成15年より賞与も含めた総報酬制が導入されておりますので、年によって、業績によって賞与というのは結構変動があることから、それを平準化したほうがよいだろうということで、この3年の移動平均を使うルールになっているということでございます。

   10ページ、ここ1、2年の特殊要因といたしまして、特例水準の解消をやっておるということで、平成25年10月にまず第1段階、平成26年4月に第2段階ということで、残り0.5%で残っているものが来年4月に解消されるということになってございます。

   11ページ、来年度のマクロ経済スライド調整ということに関しまして、どのようになるかということでございますけれども、ある程度物価が上がるということを前提に考えますと、まず、0.5%分の特例水準分が相殺される形で解消するということになります。その0.5%を上回る分に関しまして、マクロ経済スライドが発動するということでございます。

   大体、消費者物価指数の推移が2ないし3%くらいの前年度比プラスで推移しておりますので、おそらく、来年度の年金額改定において、マクロ経済スライドが発動するということはかなり可能性としては高いものと考えております。

   12ページ、ここまでご説明したルールのもとでやってきておるわけですけれども、このルールを導入した2004年改正以降、物価や賃金がどのように推移をしてきたかということでございますが、先ほど御説明した物価や賃金の改定ルールに沿って指数をそれぞれ算出してみますと、実は何が起きていたかというと、物価も賃金も結構マイナスに推移していた年が多かったということと、物価と賃金の丈比べで言うと、物価のほうが賃金の改定率を上回るというケースが多かった、すなわち実質賃金がマイナスで推移をしてきたということが多かったと言えようかと思います。

   その影響がどういう形で出たかというのが13ページでございますけれども、2004年の財政再計算、2009年の財政検証、ことしの財政検証でそれぞれいわゆるモデルの所得代替率を計測に使っているところの年金の給付水準を並べてみますと、賃金がベースとして落ちてきて、年金額も減っているということですが、賃金が落ちたほどには年金額は落ちていないということで、結果的に割り算をした所得代替率というのはこの2回の財政検証で一貫して上がる、実質賃金の低下ということがモデル年金の所得代替率の上昇という形であらわれているということが言えようかと思います。

   その帰結として、14ページですけれども、本当はマクロ経済スライド調整が働いて所得代替率は少しずつ下がっていくべきところが、このように意図せざる所得代替率の上昇というものがあった結果、調整期間が長期化をするという形になったということでございます。

   15ページ、16ページは模式図的に、実際にはこういうふうに直線的には下がらないのですけれども、2004年の財政再計算、2009年の財政検証、2014年の財政検証、それぞれ調整の始点と終点というものをプロットして、矢印で結んでおります。

   16ページを見ていただければわかると思いますけれども、基礎年金と報酬比例の年金のほうを比べますと、基礎年金のほうが足元の所得代替率が上昇し、その結果として、調整期間が長期化するという形になってあらわれてきているということでございます。

   次の17ページにまいりまして、「マクロ経済スライドをめぐるこれまでの議論」ということでございます、

   18ページ、社会保障・税一体改革の議論の中では「物価スライド特例分の解消」ということと、マクロ経済スライドのルールをどうするかという、この2つのテーマについて議論が行われ「物価スライドの特例分の解消」ということに関しましては法案を提出し、成立し、実際に解消が図られている。一方で、マクロ経済スライドのかけ方ということに関しましては、引き続き検討ということで措置が行われないまま来ているということでございます。

   一体改革の後に行われた、昨年の社会保障制度改革国民会議の報告書ではこの問題について、どのように整理をされたかということでございますけれども、2つ視点がございます。

    1つは、前ページを見ていただきますと、一体改革大綱ではデフレ下でどうするかという問題だったのですけれども、デフレからの脱却を進めるということで各種の経済対策を展開しておりますが、実際の物価や賃金の変動度合いによっては、スライド調整が十分機能しないということにどう対応をするかというふうに、問題の捉え方が変わってきているということです。

   もう一つは、将来の保険料負担水準を固定した以上、早期に年金水準の調整を進めたほうが、将来の受給者の給付水準を相対的に高く維持することができるという形が確認をされたところでございます。

   それを、具体的な計算でやってみせたのが20ページ、財政検証のオプション1ということでございます。

   詳しい説明は省略をいたしますけれども、ケースCやE、かなり高い経済成長を見込んだケースにおいても、実際にはある程度景気の循環というものを考えますと、フルにスライド調整が行えないという年が出てくるということでございますが、それをフルに調整をかけるという形にしますと、その分だけ調整が早く進み、所得代替率が高い水準で均衡に至るということが確認できます。ケースGやHのように経済成長、物価や賃金の上昇が余り高くないケースにおいてこの措置を講ずるということは、かなり大幅な所得代替率の改善に結びつくということが確認をされています。

   ちょっとページが飛びますけれども、22ページ、今説明した事象がどういう原理で起きるかということについて、簡単にポンチ絵でまとめてみましたので御参照いただきたいと思います。

   23ページには、この問題に関しまして、これまでの年金部会で先生方からいただいた意見のピックアップをしてございます。24ページに、以上のことを踏まえた「年金額の改定(スライド)の在り方に係る論点」というものを整理してみました。

   これまでこの問題については、マクロ経済スライドの発動の仕方ということで議論されることが多かったわけですけれども、その前段に、物価や賃金の変動に対する年金額改定のルールのあり方というものをどう考えるか。特に実質賃金低下が生じたときに物価が下がった分までしか年金額の改定をしないという今のルールで、賃金・物価両方下がるということが生じますと、結果的に所得代替率が上昇するという帰結になったということを踏まえて、どのような対応を講じるべきかということがまず1点です。

   2点目でございますけれども、現在の高齢者の生活の安定というのは非常に重要なテーマでございますが、同時に将来の高齢者の年金給付水準の確保というものも非常に重要なテーマである。そのことを考慮したマクロ経済スライドにおける、名目下限措置のあり方についてどう考えるか。このような形で、整理ができるのではないかということでございます。

   この2つのテーマを整理した上で、若干の資料を準備させていただいておりますので、説明を申し上げます。

   26ページ、先ほど意図せざる所得代替率の上昇がこの10年あったということですが、仮に実質賃金が低下して、しかも両方とも、物価も賃金もマイナスだったという局面において、物価下落率までしか引き下げないというふうにしないで、賃金低下の分までは下げるとしていればということで仮にそう考えてみますと、実は、所得代替率の上昇は起こらずに、賃金が下がった分だけ現役世代の賃金も年金額も下がるということになりますので、おそらく所得代替率は維持されたであろうということでございます。

   マクロ経済スライドの名目下限措置ということでございますけれども、2004年の改正で導入されましたが、それまでは実は年金額がマイナスになるという経験がほとんどなくて、2004年改革の前年の2003年に3年連続で物価が下がったものですから、さすがにこれは下げないといけないよねということで下げたのが初めてだった。そのような状況の中で、将来のスライド調整のあり方をどういうふうに考えるかという問題だったということなので、そのような経緯から名目額を下限とするという形で、整理をしたということでございますが、28ページにございますように、先ほど御説明したようにある程度高い成長を見込むケースにおいても、経済変動というものを考えると、マクロ経済スライドが十分にかからないということは、起こり得ることを考えておかなければいけないだろうということです。

   28ページにはそのグラフ化したものを、29ページには実際の数字を書いているところでございます。

   30ページ「人口構造の変化とマクロ経済スライド調整」という、グラフを準備いたしました。

   上に労働力人口の推移、下に65歳以上人口の推移を書いてございます。労働力人口は既にマイナスになってきていますけれども、労働市場への参加が進むということで、ある程度の人数をキープしようということで一生懸命やっておる。一方で、65歳以上は2040年ぐらいにかけてずっとこのピークに向けて登っていくという状況でございます。年金制度の1つの課題といたしましては、この高齢者人口がピークに達するまでの間に、いかに労働力率を高めて制度の支え手を確保するかということと、一方で今申し上げたマクロ経済スライド調整を進めて、できるだけ早く早期に均衡水準に至るということが年金財政を健全化する上では必要なことではないかと考えておりますので、このマクロ経済スライド調整は余り悠長に考えていてもいけないということが言えようかと思います。

   31ページ、我が国で言うところのマクロ経済スライドのような、自動的に財政均衡を図る仕組みというのは、昨年の年金部会でも御説明いたしましたように諸外国にも存在をいたします。名目額を割り込むところまで調整をするかどうかということに関しましては、そういう調整をする国、しない国というのがございます。

   スウェーデンの「自動財政均衡メカニズム」は、マイナスにするということもあり得るというルールになっておりますし、現実に2010年、2011年、2014年にマイナスの改定を実施しているということでございます。

   一方で、ドイツも「持続可能性係数」というものをスライド上で加味して、年金額を考えるということになっていますが、同時に「保護条項」という条項を入れて、名目額を割り込んだ減額改定はしないということを定めてございます。ただ、そのままですと均衡いたしませんので、将来改定率がプラスになったときには、改定率を半分にとどめて埋め合わせをするというルール、我が国の特例水準と似ておりますけれども、そういうルールを実際にやっておられまして、2010年には算定式どおりですとマイナスにするという計算になったのですが、「保護条項」が発動して改定なしという形になり、その後、その埋め合わせをその後数年間かけて行っている。このようなことをやっているということでございます。

   以上を踏まえまして「検討に当たっての論点」を最後のページにまとめてございますけれども、1点目の「物価、賃金の変動に対する年金額改定(スライド)のルールの在り方について」ということに関しましては、デフレ下における実質賃金の低下によって、現在の受給者世代の所得代替率が結果的に上昇する、特に基礎年金部分でマクロ経済スライドの調整期間が長期化する要因になったことを踏まえて、実質賃金低下の場合に賃金に連動して改定するというルールを徹底するということについて、どう考えるかという問題です。

   2つ目「現在の高齢者の生活の安定だけでなく、将来の高齢者の年金給付水準の確保も考慮したマクロ経済スライドにおける、名目下限措置の在り方について」ということですが、名目下限措置をそのまま残しますと、マクロ経済スライド調整の効果が限定的になるという場合が出てくる、その場合には調整期間が長期化するということで、将来の世代の給付水準が低下するということになります。これを見直して物価や賃金の伸びの低い場合でも、マクロ経済スライドによる調整をフルに発動するということについて、どのように考えるかということが、論点になろうかということでまとめさせていただきました。

   続きまして、資料2「高所得者の年金給付の在り方、年金制度における世代内の再分配機能の強化」ということについて、御説明をいたします。

   まず、ページをおめくりいただきまして「高所得者の年金給付の在り方をめぐるこれまでの議論」ということについて、ファクトを確認したいと思います。

   これも、一体改革のときの検討、大綱ではどのように整理されていたかということになりますと、簡単に申しますと高所得者の年金給付に関しまして、国庫負担相当分を調整するということを、「最低保障機能の強化」「低所得者への加算」とあわせて実施をする。そのような形で政府案をつくったというところでございます。

   もう一つは「標準報酬上限の見直し」ということが課題になってございましたが、これは引き続き検討という形で整理をされたということです。

   ところが、4ページ目になりまして「政府提出の年金機能強化法案」に関しましては、この低所得者の年金額の加算と、高所得者の年金額の調整をセットで行う。もちろん財源的にはつり合っておりませんので、これに消費税の増収分を加えて実施をするということになってございましたけれども、国会の審議の過程で三党協議が行われ、高所得者の年金額の調整規定に関しましては削除された。低所得者の年金額の加算に関しましては、年金額の加算という方法ではなく、年金制度の外側の福祉的な給付という形で消費税の増収財源をベースに実施されることになった。このような形になってございます。

   高所得者の年金をカットするということに関しましては、どのような議論があったかということでございますけれども、一定の給付を前提に保険料を納めていただくという仕組みになっているということなので、それが実際にその段になってから給付をしないということは、要は、約束違いになるのではないかということもありますし、高齢になっても比較的高額の所得を見込めるような方にとっては、高所得の場合に給付されないという措置は、保険料納付のインセンティブに悪影響を与えるのではないか。このような議論があったということでございます。

   6ページ目には、年金生活者支援給付金の支給に関する概要を載せてございます。

   7ページ目は、削除されたいわゆる「高所得者に対する年金額の調整」のどのような措置を考えていたかということをまとめてございます。

   さて、一体改革後の昨年行われました国民会議の報告ではこの問題をどのように扱ったかということですが、8ページ目になりますけれども、ここも若干問題の捉え方をこれまでよりも広く捉える形で整理してございます。

   「高所得者の年金給付の見直し」という項目のところの記述をピックアップしておりますが、、後ほど御説明いたしますが、年金制度は基本的に世代から世代に向けて所得移転を行うということをやっているわけでございますけれども、いわゆる世代間の給付と負担のバランスというものを考えていかなければいけないという状況の中では、同一の世代の中での再分配機能を強化していくということも必要ではなかろうか。このような捉え方がされています。

   そういう観点から、どういうことを検討するかということに関しましては、検討規定に移りました高所得者に対する年金額の調整ということ以外にも、例えばきちんと税負担をいただく、あるいは社会保障制度における、例えば医療や介護の保険料負担や自己負担をいただく、さらには引き続き検討となった標準報酬上限のあり方など、さまざまな方法を検討すべき、このような形で整理がされているというところでございます。

   こういった経緯を踏まえると、この問題というのは次のページにまいりますが、高所得高齢者に対する年金給付のあり方をどうするかという狭い中で考えているのではなくて、年金制度における世代内の再分配機能をどのような形で強化していくかという問題を捉え直した上で、考えていくことが必要ではないか。

   その場合の論点は、以下のように整理できるのでは ないかということで、1点目は年金給付も含めた所得全体について、税や社会保障において適正な負担を求めることで対応するということ。

   2つ目は、事前の備えとしての年金制度の内部において、再分配機能を強化することの是非、あるいはその具体的な対応策ということが論点になろうかということでございます。

 「世代間の再分配と世代内の再分配」について、ちょっと話がややこしいので資料を準備しております。

   11ページには、去年の年金部会でも御紹介した「ジニ係数」や「貧困率」の推移をまとめて、社会全体の高齢化が進む中で、年金制度は一定の再分配効果という機能を発揮しているということを説明させていただきました。ただ、そのときにも議論があったことなのですが、12ページに書いてあるように、実は、この効果のほとんどは世代を超えて再分配をすることで実現をされているということです。

   13ページに、今の年金制度にも、定額の基礎年金の給付をサラリーマンに関しましては、報酬比例の保険料負担でファイナンスしているということがあるので、一定の同一世代の中での再分配機能も働く仕組みにはなってございますが、14ページにいろいろな先生方の研究から引用しておりますけれども、前者の効果と後者の効果を比べると、後者の効果というのは極めて限定的だというのが現在の評価ではなかろうか、このように考えているところでございます。

   15ページ、まず最初の論点「高齢期の高所得者に対して税制や社会保障において適切な負担を求める対応」ということでございますけれども、社会保障・税一体改革でさまざまな措置がとられた中で医療保険や介護保険について、例えば保険料の賦課限度額を上げるということですとか、あるいは一定の自己負担限度を高めるといった措置は着実にとられているということが言えようかと思います。

   17ページ、18ページ、今度は税制のほうを見てまいりますと、公的年金等控除の税制の仕組みですけれども、2004年に年金の大きな改正とともにこの公的年金等控除も見直されまして、基本的には給与所得控除のラインに合わせるような形で改正を行うということをやってございます。これとともに、いわゆる老年者控除50万円というものを廃止したということがございまして、この増収がおおよそ平年度ベースで1,000億ちょっとございまして、これを当座基礎年金の国庫負担の引き上げに使ったという経緯がございます。

   ただ、現状のこの公的年金等控除の仕組みにも、いろいろ議論がないわけではありませんで、18ページに書いてございますようにこれまでの税制調査会での議論、あるいは社会保障・税一体改革の議論の中でも、例えば年金を受給しながら働いている人もふえてきている、そういう人は年金以外にもかなり高額な給与を得ているようなケースもある。そのような方についてはもう少し適正な税負担を求めていてもいいのではないか。あるいは、年金受給者は給与所得者に比べて、課税最低限が高いということもどういうふうに考えるかと。給与所得控除に関しましては頭打ちの措置がとられましたけれども、年金収入がふえると控除額が増加していくという今の公的年金等控除のあり方もいいのかどうかと。そういうことが論点になっていると承知をしてございます。

   20ページに男性の高齢者の賃金の分布というものを実際にグラフに落としてみました。

   確かに、低い所得で就労する方も多いわけですけれども、右のほうを見ていただけると、結構高い収入で就労している方も多いということで、いわゆる散らばり、分散が高齢期になると大変大きくなるということは言えようかと思います。こういった現状に即してどういう負担のあり方を考えていくかということが論点になろうかと思います。

   21ページ、今度は「年金制度内部における再分配機能の強化」というところでございます。

   先ほど、厚生年金に関しましては、一定の再分配機能が内在しているのだということを御説明いたしましたけれども、22ページにもう一方で国民年金に関しましては、基本的に定額の保険料負担、定額の年金給付ということでございますので、いわゆる垂直的な再分配の機能というのは、半分を国庫負担で賄われている分のみの、極めて限定的だということが言えようかと思います。

   23ページ、2つ前の会で議論をいたしました、例えば短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大というのは、今1号被保険者になって国民年金の世界にいる方を厚生年金の応能負担のほうに組み込もうということでございますので、こういう改正というのはそういう意味で言うと、年金制度全体としては世代内の所得再分配を高める効果を有していると。このように考えられるということでございます。

   24ページには、年金の場合にはどうしても報酬比例の給付ということを設計する以上、医療や介護のように保険料の賦課だけではこの議論が完結しませんで、給付のあり方ということと合わせて考えなければいけない1つの制約が入っているということでございます。

   25ページ、それがゆえに現行の標準報酬月額の上限に関しましては、おおよそ被保険者全体の標準報酬月額のおおむね2倍ぐらいになるように設定しているということで、今の62万円というのが設定されているということです。これより高い負担をいただいて高い給付をするということになりますと、かなり高額の年金が出てしまうということもある程度防止をするということで、このような決めになっているということでございます。

   26ページに書いてございますように、実は、健康保険の制度においてはもう少し上限が高くなっていまして、このようなことから年金制度においてもどういうふうに考えるか。ちなみに上限の62万円のカテゴリーにいる方が、大体全体の6%ぐらいいらっしゃるということもどういうふうに考えるかという問題がございます。

   それから、今のグラフと次の27ページのグラフを比べていただきますと、第1号被保険者に関しましては、確かに高所得の方がいらっしゃるのはいらっしゃいますけれども、グラフということでいうと、なだらかに右へ下がっていくような分布になっている。ただ、ベースがどうしても1号被保険者の場合は経費控除後の総所得金額ということになりますので、比較の対象が違うのでございますが、こういう状況にございます。

   ただし、世帯所得で見ていただいても、1,500万円以上という方が2.7%いらっしゃるということですので、この部分はどう考えるかということはあろうかと思います。

   28ページ、どの国でも年金の給付に関しましては、余り多額の年金の給付というわけにはいかないので、一定の上限を設けていることが一般的だろうと思います。ただ、保険料の賦課に関しましては、我が国と同様に上限を設けてやっているのがアメリカとですが、イギリスやフランス、スウェーデンに関しましては保険料賦課に関しては上限が設定されていない、青天井で保険料をいただく、このような形になっているということなので、保険料賦課に上限があるというのは、必ずしもそうでなければいけないというものではない。国際的に見るとそういうことが言えようかと思います。

   それから、制度の中で再分配機能を高めるということになりますと、給付のほうである程度調整をするという手法も国際的にはございます。よく知られておりますように、アメリカの公的年金制度においては、日本の制度でいうところのいわゆる給付乗率に相当するもので生涯所得の平均が低いときには高く、高いときには低くなるという形で、限られた財源を低所得の方に傾斜配分するような仕組みが内在されているということになってございます。

   30ページ、イギリスの年金制度でございますけれども、現在の制度の図をこの「概念図」に書かせていただいておりますが、ことしの5月に成立をした年金法ではこの2階建ての給付を1階建ての給付に再編をする。一方で、保険料は報酬比例でいただくという仕組みになっておりますので、かなりドラスティックな再分配効果を高めた制度に再編するということが、イギリスでは予定されているということでございます。

   31ページには、法律では削除されましたけれども、1つの参考モデルになった「カナダのクローバックの仕組み」というものをまとめてございます。ただ、カナダの場合には1階の老齢保障年金に関しましては、全額税財源で賄われているということが特徴でございます。

   こういう制度をどう考えるかということに関しましては32ページ、これは前回のこの部会で説明をさせていただきましたけれども、年金受給中に在職をしているときに年金額を減らすかどうかということに関しましては、国際的にはむしろ減らさないという動きになってきている。就労インセンティブの関係でそういうことになっておりますが、そういうものとの関係もあわせて考える必要があろうかと思います。

   33ページには、これまでこの論点に関しての先生方からの御意見をまとめてみました。

   最後に34ページ「検討に当たっての論点」ということになりますけれども、まずは年金制度の外側でということにはなりますが、高齢期の高所得者に対しては年金給付も含めた所得全体で、税や社会保障において適正な負担を求めることで対応していくという問題。

   2つ目は、年金制度内部における再分配の強化ということでございますけれども、世代内の再分配機能も乏しい国民年金の対象を限定をして、一定の再分配機能を有する厚生年金体系に全体として組み込んでいくということは、このテーマからも重要性の確認ができるかと思います。そうした上で、高所得の被保険者に対する給付と負担の設計というものをどういうふうに考えるか。このあたりが論点になろうかと思います。

   説明は、以上でございます。

○神野部会長

   どうもありがとうございました。

   資料1と2について、要領よく御説明いただきましたので議題1、議題2について御議論を頂戴したいと思います。

   それぞれ、35分程度をめどにしながら御議論頂戴できればと思っておりますので、運営に御協力いただければと思います。

   なお、冒頭申し上げましたけれども、柿木委員、菊池委員から御提出の資料をお手元に配付していると思いますので、あわせて御参照いただければと思います。

   それでは、まず議題1、資料1で御説明をいただいた上で、論点2つ御指摘をいただいております。こうした2つの論点を念頭に置きながら、御質問を含めて御意見を頂戴できればと思います。いかがでございましょうか。

   年金額の改定、いわゆるスライドのあり方についてでございます。いかがでございましょうか。

   いいですよ、武田委員、どうぞ御遠慮なく。

○武田委員

   マクロ経済スライドと、高所得者の年金給付のあり方などについて、意見を述べさせていただきたいと思います。

○神野部会長

   とりあえず、分けてマクロスライドのほうに、済みません、私が舌足らずだったかもしれません。

   申しわけありません。

○武田委員

   申しわけございません、私が勘違いいたしました。

   では、マクロ経済スライドについて、2点意見を申し上げます。

   第1に、スライドの発動については、私は必要だと考えており、進めるべきだと思います。これはできるだけ速やかに行っていただきたいと思います。

   また、運用のルールについてですが、過去に特例水準の見直しについてこの部会でも議論いたしましたけれども、運用の先送りが引いてはその後の調整の必要度をさらに増し、調整の終了時点の先送りにつながったと思います。したがって、スライドの発動を進めることと、実際の運用についても、しっかり徹底していただくことが必要ではないかと考えます。

   第2に、賃金に連動して改定するルールについて、基本的には賛成でございます。現在の受給者の所得代替率が高く、一方で将来世代の所得代替率が低いという現実は、マクロ経済スライドの調整期間が非常に長いことが1つの理由だと思います。

   御説明いただきました資料のうち15ページのグラフは、本当にやるべきことを先送りしてきた1つの証ではないかと思います。このグラフの2004年の財政再計算の標準ケースを見ますと、スライドの調整が大体2023年に終了する数字になっておりました。ところが、2014年の財政検証では大体2043年が終了時点になっております。つまり、20年も先送りされたことを意味します。本来、高齢化を見据えてマクロ経済スライドの制度をつくっていたはずですが、発動がおくれたがゆえにこうした結果を招いたことを我々は十分踏まえなければいけないと思います。

   政策の遅延による、現役世代への負担は年々重くなっております。また、このように申し上げると若い世代の話と受けとめられがちなのですが、そもそも社会保障の持続性が危ぶまれれば、恐らく一番困るのは年金で生活されている高齢者の方々ということになります。本来高齢化に備えて出来ていた制度をうまく機能、活用させていくということが重要だと考えます。

   私からは以上です。

○神野部会長

   どうもありがとうございました。

   ほかはいかがですか、どうぞ。

○山口委員

   この年金額の改定の問題でありますが、以前申し上げましたとおり、基礎年金部分の代替率低下にどんどん拍車がかかっていくということがないように、早く調整期間を終了させるという観点から、マクロ経済スライドを着実に実施していくということについては私も賛成であります。

   しかし、それだけでは不十分でありまして、報酬比例部分と基礎年金部分の調整期間は2004年の改定時には、同時に終了するということだったと思いますので、やはりその終了時点が一致しているということが望ましいと思っております。

   そのためには、基礎年金部分に対して、調整期間短縮のための財政的な支援が必要になると思うわけですけれども、これはマクロ経済スライドという年金制度内での負担と給付の調整問題でありますから、年金制度間で支援していくといった観点から何らかの工夫ができないものかと思っておるところでございます。

   例えば、現在被用者年金と国民年金、それぞれ同じ1人当たりの基礎年金拠出金ということになっておりますけれども、これに格差を設けて被用者年金からの拠出金をふやして、基礎年金勘定の中に調整期間短縮のためのバッファーを設けていくといったことができないものか。これはあくまでも例示でありますけれども、そういった方法はとれないものか、ぜひ御検討をいただきたいと考えております。

   一方、年金額改定のルールでありますけれども、これは実は調整期間だけの問題ではなくて、調整期間終了後も続く基本的なルールでありますので、調整期間の問題とは切り離して考える必要があると思っております。

   そうしますと、そもそも何のためのスライドであったかという原点に戻って考えるということになると思うのですけれども、やはり年金の実質購買力の維持という観点が大事だと思いますので、この基本ルールまで変更するということについては、私はもっと慎重に考えたほうがいいのではないかと思っておるところでございます。

   以上です。

○神野部会長

   ありがとうございました。

   ほか、いかがでございますか、駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 2004年の財政検証以降のデフレによって、実質水準がかえって上昇するということがマクロ経済スライドが基礎年金に厳しく効くことになってしまっているわけですから、やはりこれは論点1、2ともにデフレ期においても、きちんとマクロ経済スライドが効くようにすべきだと思います。

   そうしないと、結局これはゼロサムゲームで特定世代の実質年金水準が高い状況を受けてしまうと、未来世代がそれを調整しなければいけないということになり、結局、デフレが発生するリスクを未来世代が受け取るということになってしまいますので、それは避けなければいけないと思います。

   ただ、ちょっと難しいのは、これは他制度との対応があると思いますので、基礎年金みたいなものを下げる場合は、生活保護の水準をデフレ期でどう考えるかとか、あるいは低所得者に対する税制もしくは保険料負担等々の配慮をしなければいけない。

   実際に、これはスウェーデンの例が資料1の31ページ、この理解でいいかどうかですけれども、スウェーデンは減額改定をやるのですが、一方では、年金受給者への減税が書いてあるということは何らかの代替措置を行っている。だから、それを年金の外のほうで、特に低所得者については、配慮するようなことを同時に考えないといけないのではないかなと思いました。

   以上です。

○神野部会長

   どうもありがとうございました。

   ほか、いかがでございますか。

   出口委員、もしもあれでしたら、どうぞ。

○出口委員

   2点申し上げます。1点目は、どこかで読んだのですけれども、あらゆるスライド条項は例外を設けたら必ずややこしくなりますね。そういうことを読んだことがあるのですが、ある特定の局面ではこういう例外を設けることが物すごく役に立つように見えても、長い目で見たら一国の制度とか大きいものは、あらゆるスライド条項については例外を設けないで、シンプルに設計することがやはり一番いいのだというのが多分世界の共通認識のような気がします。そういうふうに考えたら、私はいつも年金制度というのは、基本的にはシンプルであるべきだと思っていますので、この論点のどちらについても、平たい言葉で言えばフルスライドで、例外は設けないという考え方で整理をしていくということが基本であると思います。

   恐らく、そういうときに例えば、マクロ経済スライドであれば、基礎年金の部分とか弱者の問題というのは必ず出てくるのですけれども、それを年金制度の中で全部解決するのか、それは別途ほかの方法で解決するのかということを考えたときには、多分制度自体はシンプルにしておいて、そこからどうしてもこぼれ落ちる人はほかのルール、手段があるではないかと考えたほうが多分私は正しいと思います。

   単純に申し上げれば、あらゆるスライド条項は全部フルスライドにすべきであって、シンプルな制度をつくるべきだということと、そこからどうしてもこぼれ落ちるような人がもしあれば、そこは別途対策ができるので、それを全部年金制度の中に入れてしまうと制度が複雑になり、後で予期せぬ誤謬が起こるのではないかと考えていますので、この論点の2つともについてフルスライドを絶対にすべきであると思っております。

   以上です。

○神野部会長

   ありがとうございます。

   ほかは、いかかでしょうか。

   どうぞ、花井委員。

○花井委員

   私は、今回の論点につきまして、2004年改正のフレームで保険料が固定化されたことで、その範囲内で給付が行われる仕組みになっているために、一定期間給付抑制を行うことにつきましては、結果的に将来世代の年金額を確保することにつながるため、やむを得ないだろうと考えます。ただし、現実的に今受給されている方への影響というものを全く無視して考えていいのかという大きな疑問があります。やはりマクロ経済スライドというのは物価・賃金の伸びの範囲内にとどめるべきだろうと考えます。財政検証で基礎年金への影響が大きいという結果も出ているわけですから、別途対応するかどうかはあるとは思いますが、やはり、基礎年金部分はマクロ経済スライドの対象から外すべきと考えます。

   今回、出された資料の中で、「物価の改定率が賃金の改定率を上回ってきた」とあり、そして、デフレ下での実質賃金低下に伴って、「現役世代の手取り収入の減少に比して、基礎年金水準が低下しなかったことによる、基礎年金部分の所得代替率の上昇の影響が大きい」というふうに表題及び文章が書かれており、だから基礎年金部分にマクロ経済スライドを発動してもよいのだというふうに読めてしまうわけです。

   受給している方たちの金額を考えたときに、やはり慎重に検討すべきだということを改めて述べておきたいと思います。

   以上です。

 

○神野部会長

   どうもありがとうございました。

   ほかは、あとでまいりますので、小塩委員、お先に。

○小塩委員

   私も、基本的にはマクロ経済スライドはしっかりと徹底してやるべきだと思います。それから、早目に発動すべきだと思うのですが、2階部分と1階部分を一緒に同じ仕組みで処理していいかという点については、やはり議論する必要があるのではないかと思うのです。

   マクロ経済スライドというのは、要するに、若い人の体力に応じて、高齢者の所得給付を自動的に調整していくという、非常に理にかなった仕組みです。しかし、基礎年金部分には最低所得保障という役割がありますから、単に人口が減少していくから、それに応じて減らしていくというわけにはいかない面があるかもしれないのです。

   そこで、ちょっとお聞きしたいのですが、1階と2階を別に扱うというのは技術的に無理なのですか。マクロ経済スライドは1階、2階を一緒にしないとどうしてもいかないのか、その理由がもしあればお聞きしたいのです、それが1つです。

   もう一つは、菊池先生がメモでちょっと指摘なさっているのですけれども、名目が下限になっているということにつきまして、我々経済学者は実質的に年金額が保障されていたら、別に問題ないのではないかという割り切り方をするのですが、どうも法学の世界では財産権の保障という問題があるようです、これは、どう考えたらよろしいのですか。現時点の事務局のお考えをお聞きしたいと思います。

   以上、2点です。

○神野部会長

   第1の1階と2階を分離して、スライドさせることを技術的にということでいいのでしょうかね。

   コメントがありましたら、事務局のほうから。

○年金課長

   では、今の御質問にお答えをさせていただきます。

   まず、それぞれスライドですので、別々のスライドのルールをつくるということは決めの問題ではあろうかと思います。

   ただ、何度かこの議論が出て、御説明させていただいたと思いますけれども、実は、厚生年金の18.3%の保険料とは別に、国民年金の保険料も平成16年度価格1万6,900円という形で固定をしてしまっていますので、マクロスライドを全くかけないということになりますと、国民年金の財政のほうが結局パンクしてしまうという帰結になるので、そこもあわせて調整をしないと、実は今の財政の仕組み上は財政均衡しないようになっております。

   仮に、18.3%は固定してあったけれども、1万6,900円という固定がかかっていない場合には、1、2階の厚生年金の分配の調整でできたかもしれないのですが、1万6,900円という国民年金のほうも上限をつけたということで、そこがもう一つのたがになってしまうという構造になっていることは御理解をいただきたいと思います。

   それから、名目下限になっていることの法律的な問題ということですが、何度かこの問題では国会のほうから文書による質問、俗に言う質問主意書をいただいておりまして、そこで政府等の見解をまとめておりますけれども、裁定された年金の給付というのは、憲法が保障する財産権ということで整理はされてございます。ただ、財産権も公共の福祉には制約を受けるということなので、年金制度の場合には公的な制度で世代間の所得移転をやっているということですから、そのバランスというものを考慮された一定の制約というのは認容され得るというのが今の整理であります。

   なので、実際に例えば、物価が下がったときには下げるという形で、名目額もマイナスにするということは、もともとの法律上も予定されてきたということでございますし、一旦裁定されたからには全く減らしてはいけないということではないということですが、ただ、一方では先ほどドイツの例を説明いたしましたけれども、ドイツ人は、そこは非常に厳格に考えていて、保護条項のようなものを置いたということもあるので、国によってこういうものをどういうふうに評価をするかということもありますが、、財産権の制約から全く許されないということではないと理解をするべきだと思います。

○神野部会長

   よろしいですかね。

   森戸先生もいらっしゃらないので、今のお答えで法律上の問題についてはということにさせていただきまして、山本委員。

○山本委員

   このマクロ経済スライドのことでございますけれども、これについては、将来世代の人たちへの原資を維持していくということですので、やはりこの方向へ向けて進めていくということだろうと思います。

   しかしながら、そのシステム、仕組みを維持するために、このスライドを発動させていくことによって、受給を受けている高齢者の方々の年金が減っていった場合に、それがそういう将来世代につけを回さないということに繋がっていることへの理解が行き届くような、十分な説明をあわせて行っていかないと、ひたすら年金財政が厳しいから削られているよねということばかりが先行してしまいます。非常に上段から言えば、将来の世代を支えるために我々がやっていくのだということの国民的な合意を形成した上に進んでいかないと、それを甘受する方々も納得できなくなっていくという危険もあろうかと思います。

   将来原資を確保していくために、入りと出をイーブンに持っていくという考え方を最優先にするが余りに、それによって、実際の所得水準が一定のレベルをさらに割り込んでも良いのかという判断が必要になることもあるのではないかという気もします。その判断をどうしていくのか、あるいはそういうときには国庫からの支出というものがバッファー的に行われる可能性があるのかということについて、その水準をどこで見るかということは大変難しい課題だとは思いますけれども、仕組みだけでものが動くことによって、給付水準と生活水準や生活実感との間に差が出てきたときに、その辺をどのようにリカバーできるかということも、考えの中には入れておいたほうが良いという気がします。

  以上です。

○神野部会長

   どうもありがとうございます。

   ほか、いかがでございましょうか。

   いいですか、諸星委員、御遠慮なさらずにどうぞ。

○諸星委員

   ありがとうございます。

   前提としては、私はやはり将来のことを考えたら、このマクロ経済スライドは発動すべきだと思います。

   ただ、先ほど山本委員がおっしゃったように国民の方々で今もらっている方々から、実は特例水準で額が下がったことに対しても不服申請がかなり殺到したという現実があります。社会保険の審査会レベルで10万件ぐらいあったという話も聞いていますし、それに対して社会保険審査会のほうにもかなりの数が来ているということです。

   皆さんがほぼ一律不服申請で書いてあるのはすごく今生活が苦しいのに、何で老人の人たちだけいじめるのだなど、いろいろ切々と書いてきています。現在私も私学共済審査会の委員もやっていますけれども、私学共済に対しても同様にそのような不服が今まではなかったぐらいの件数が来ている現実です。

   ですから、例えばここの審議会とか部会などに出れば、資料があるので皆さんすごくわかっています。確かに将来的なこともよくわかるのですけれども、一般の国民の皆様から見たら非常にわかりにくい内容です。マクロ経済スライドとは一体何のこと?みたいな形になりますので、そこをやはりきちんと説明をして頂く、先ほどどなたかがおっしゃっていたように、民間レベルできちんと正しいことを伝えて、このままでは将来若い人はこうなってしまうのですよと。今回、手元にあるように非常にわかりやすいデータをつくってくださっているのですから、これは厚労省のホームページにありますよ、見てくださいということではなくて、それを例えば、年金受給者が通うような場所などに赴き、わかりやすい図面にして、御説明をしてできるだけ納得していただくというのを、もし検討できれば考えていただきたいと思います。

   それから今までの議論でいうと、マクロ経済スライドが私は中心なのかなと思っていたたら、今回の中で急に賃金スライドが出てきて、正直なぜ今のタイミングなのかということでちょっと驚きました。

   菊池先生が提出なされた資料に書いてありますように、両方あわせてやる場合について、そういった受給者世代のこと、将来の世代にそれぞれ及ぼすインパクトなど、そういうものをあわせて考えていただきたいということなので、こちらはやはり厚労省側できちんと考えていただければと思います。

   これは、あくまでも意見です。

   ありがとうございました。

○神野部会長

   どうもありがとうございました。

   御発言のない委員の皆様方で、ほかにいかがですか。

   よろしいですか、どうぞ、原委員。

○原委員

   原でございます。

   私も基本的には、マクロ経済スライドについては将来世代の所得代替率というものが上昇する鍵になるというものでございますし、保険料の上限を固定するという現行の制度を前提として、年金制度の持続性といったものを確保するためには、また、将来世代の給付減を少しでも回復するというためには速やかに発動といいますか、マクロ経済スライドというのは必要なのかなと思います。

   ただ、幾つかあるとは思うのですけれども、受給者の方への部分の説明もあると思いますし、先ほど他の委員からも御発言があったような基礎年金、厚生年金といった部分を何か、別々にできないかなといいますか、内容的に基礎年金だけの受給者の方にとってはかなり厳しいものになるかと思いますので、慎重に検討すべきところはもう少し慎重にしたほうがいいのかなというところはあります。

   あとは、受給者世代への説明とともに、やはり若年層の方、現役世代の方にもこういうことをきちんとやりますというような説明は必要かと思います。マクロ経済スライドという言葉自体、企業の年金担当者の方とか、金融機関の担当者の方も御存じないという状況を目の当たりにしておりますので、それがいよいよ来年4月からということになってきますと、かなり時間も迫ってきていますので、ぜひそういった情報発信というか、こういうことのためにこういう調整をしていきますということを受給者世代はもちろんですけれども、将来世代についても不信というものを回復するためにも、ぜひそのようなことをしていただきたいなと思います。仕組みのほうでは何かテクニカル的なことで、基礎年金と厚生年金といった2つの制度があるという日本の年金制度の中で、いろいろな御指摘があったようなことで、少しでもうまくできることがないか、方法をもう少し探るということもあってもいいのかなとも思っております。

   以上です。

○神野部会長

   どうもありがとうございました。

   ほかは、よろしいですか。

○駒村委員

   今、御発言があったように、本当にマクロ経済スライドはそもそも多くの方に理解されていない傾向があるわけですよね。これは誰が説明すれば一番いいのか、やはり行政あるいは政治のお方のほうでわかりやすく説明していただきたいと思う。

   高齢者の方と議論していると、要するにどういうことなのかというと、仕送りしている若い世代の賃金が落ちているから仕送りを少しずつ減らしてくれ、若いほうもも生活が苦しいのだという話なのです。

   ただ、上の世代もそれ以上になったら苦しいということになれば、別途の手当を考えてもらいたいと説明していただいて、とにかくマクロ経済スライドはまず理解していただく。この構造というのが大事かなと思うのです。

○神野部会長

   ありがとうございました。

   どうぞ。

○米澤委員

   思いつきで余談の1つですけれども、言葉を直していただきたいと思うのです。

   マクロ経済スライドということで、もう理解しようとしない方が多々いらっしゃるかと。我々はようやくイメージをつかめるので、もっとわかりやすい、今駒村委員が言ったことをうまくあらわすようなことであとは広報の問題だと思いますので、私は基本的にぜひ必要だということの理解の前提で、言葉がよくなくてそこで思考停止になってしまう方が多々いらっしゃるのではないかと思います。

   以上です。

○神野部会長

   ありがとうございます。

   事務局から、何かコメントはありますか。

○年金課長

   幾つか先生方の御意見を聞いていて、ちょっと補足の説明をさせていただきたいと思います。

   まず、例えば何らかの代替措置ということですとか、あるいはほかの制度とあわせて解決を図るというお話がございましたので、資料2のほうになりますけれども、先ほど簡単にふれましたが、6ページに「年金生活者支援給付金の支給に関する法律」の概要を載せてございます。

   これは、消費税が10%に上がるタイミングで実施されるということで、基礎年金満額の480月納付の場合には5,000円足し増しをするという仕掛けでございますけれども、これもある意味では、消費税を財源にした1つの代替措置と考えられると思いますし、実はこれだけではございませんで、例えば高齢者医療の保険料、国民健康保険の保険料、介護保険の保険料も低所得者に対する軽減を、消費税財源を使って強化するということも一体改革ではあわせたプログラムになってございますので、そういう全体から見ますと、いろいろな意味で低所得者に対する措置というのは一体改革の中では配慮が講じられていると思います。

   ただ、今後マクロ経済スライドがまた数十年にかけてかかっていくということの中で、こういうことをどういうふうに考えるかということについては、よく見て考えていきたいというのがまず1点です。

   それから、マクロ経済スライドの下限の措置と、もう一つ今回提起をさせていただいた賃金・物価の関係のところで補足をいたしますと、確かにこの問題は今まで余り議論されてこなかったので、今回資料もまとめてこういう問題があるのだよということを提起させていただきましたが、やはり契機としては2回の財政検証で足元の所得代替率が上がってしまったということを、我々はどのように受けとめるかということを考えると、これは避けられない課題ではないのかという認識がございます。

   それで、年金の実質的な価値をどういうふうに担保するかという考え方は、購買力を維持するといういわゆる物価上昇分を保障するという考え方もあると思いますけれども、現役世代の生活との対比である一定の水準を保障するという考え方、いわゆる所得代替率というのはそういう考え方になっているということでございますと、例えば実質賃金低下があると、賃金上昇を上回る物価上昇があるということですから、若い世代の生活水準も実質的にはダウンしているというときに、高齢者に物価スライド分を保障するということになりますと、高齢者はその実質的な生活水準のダウンから免れるという話になってしまう。

   それを一定程度避けるように、2004年のときにも考えたは考えたのですけれども、多少下がったときのケースについては甘く措置をしてしまったがために、それが10年間で現実化してしまったということをどう考えるか。そういう問題として、御理解をいただければと思います。

○神野部会長

   どうもありがとうございました。

   よろしいでしょうか。

   それでは、第2番目の議題の高所得者の年金給付と世代内の再分配問題についてですが、これも2点論点を指摘していただいておりますので、それを念頭にしながら御意見頂戴できればと思います。

   武田委員、まず口火を切っていただければ。

○武田委員

   では、意見を申し上げたいと思います。

   基本的にこちらの資料にございますとおり、高所得者の年金給付についての減額措置はやむを得ないのではないかと考えております。

   私はこの点は悩んでおりました。理想的には年金で所得再配分を考えるよりは、税も含めて全体で所得再配分を考えたほうがよいのではないかという点と、先ほどもお話がございましたとおり、制度はシンプルなほうがよいという点、その2点を理由に、シンプルなマクロ経済スライドは発動するけれども、その他は保険料率等を踏まえた年金支給のほうがシンプルで望ましい。真に困った方々には別の手段で補うほうがよいのではないかと考えていたわけでございます。

   しかし、2つ理由により今回は減額に賛成いたします。

   1つ目の理由は、先ほど課長から御説明いただいたとおり、低所得者の加算は行われていることがございます。つまり、既に低所得者に厚くするという手段は講じられているということが1点。

   2つ目の理由は、理想として望ましい姿を議論していると、それは本来追及すべきだとは思いますけれども、結果的に先ほどの20年の先送りの図のとおり、将来世代の所得代替率の低下につながっているという面がございます。皆様御存じのとおり、基礎年金の半分は国庫負担でありまして、現役世代の税金が使われていることもポイントではないかと思います。繰り返しになりますが、国庫負担で現役世代が負担している上に、今の高齢者に比べ、将来世代の所得代替率は下がるということが財政検証の結果として示されています。

   したがって、少なくとも国庫負担分は現役世代の負担、要するに税金が使われているわけですからその分は減額をし、それを所得代替率の世代間の格差を和らげるためにマクロ経済スライドの終了時期を早める原資になるような形で活用できないかと考えます。

   また、先ほどからお話が出ている国民の理解という観点も非常に重要だと思います。マクロ経済スライドがわかりづらいという点も同意いたしますけれども、恐らくこの問題を議論しますと、自分が働いて保険料を納めてきたのに高所得者だと減額されてしまうということに対し、抵抗があるのではないかと思います。

   ただ、それは多くの方が国民の税金が投入されているという事実を御存じないことがございます。したがって、基礎年金の半分は国庫負担、つまり税金が投入されているということへの理解も、この見直しを行う上でのポイントではないかと思います。先ほどのマクロ経済スライドとあわせ、説明の仕方や周知の方法は重要と思います。以上でございます。

○神野部会長 」

   それでは、佐藤委員、早目に御退席と聞いております。

○佐藤委員

   そうです、ちょっといいです。

○神野部会長

   いいですか。

○佐藤委員

   はい。

○神野部会長

   ほか、いかがでございましょうか。

   出口委員、どうぞ。

○出口委員

   議論するときには、いろいろな視点があると思うのですけれども、これは皆さんによって違うかもしれませんが、私は例えば、将来世代と現役世代のどちらを優先するのかと。社会が永遠に続いてサステイナビリティ―のある制度をつくっていくというのであれば、もちろん全員がウイン・ウインの関係というのはないので、検討の視点というのは将来世代と現役世代を考えれば、やはり将来世代に価値を置くべきではないかとか、あるいは複雑な制度よりはシンプルな制度のほうがいいのではないかとか、議論をしていくときに、あるいは応能原則という大事な理念がありますねと。そういう原理原則というか、価値の序列みたいなものを全員で共有することができれば、議論がもっと前向きに進むような気がちょっとしました。

   もう一つ、大事なことは時間もすごく大事で、例えば、マクロ経済スライドについてはできるだけ早くということもありましたけれども、これも結局ソフトランディングとか、よく考えてということは時間をコストとして払っているわけですから、ある程度時間を無駄にしているということの判断もいるような気がしますので、そういう価値の序列みたいなものをいつもみんなで議論しているときに、自分自身も含めて気をつけていったらいいなと思いました。また最後に取りまとめていただくときに、そういう将来のこの年金制度を考える視点みたいなものをきちんと整理していただいたら、我々も議論がしやすいのかなと思いました。

   2つ目は、言葉を見直すというのも、米澤委員が言われたこともそう簡単にはできないような気がするのですけれども、例えば1号保険者、2号保険者、3号保険者というのがあるのですが、どう考えてもわが国の制度は2号が中心ですね。人数も多いですし、これからの核になると。

   でも、人間というのは不思議なもので1、2、3と言われたら1から議論する。こういう錯覚が今でもあるので、もし見直すのだったらやはり日本の年金というのはこの2号保険者を核にして議論をするのだと。そういうところも言葉の見直しの中で、同じような言葉の問題では基礎年金という表現になれば、基礎年金が絶対的にというふうにも捉えますけれども、この1階、2階も確かに国の税金が入っているかどうかの違いがありますが、機能としてはやはり2号保険者を核としてつくっていく制度なので、そういう幹のところをしっかりとお互いに確認したほうがいいのかなと思いました。

   それで、具体的にこの高所得者の問題ですけれども、これについても事前の備えとしての年金制度内部において再分配機能を強化する対応策、この論点ですが、これはどこから考えても厚生年金を、要するに、もともとの名前が被用者保険ですから、使われている人、それは時間に関係なく誰かに使われている人は、例えば5.8万円でもいいのですけれども、一定の所得がある人は全部被用者保険に組み込んでいくということが、いろいろなこのデータを見ても一番合理的な解であるように思えますから、この2つ目のテーマについてのコアはやはり厚生年金を拡大していくという方向を揺るぎないものにして、早く実行するということに尽きるような気がします。

   それから、高所得者の問題はややシンプル原則に反するのですけれども、武田委員の言われたこともすごく利があるように思いますが、もう一つ、保険料の上限についてですけれども、税とか社会保険料は同じ公共財、公共サービスの財源と考えたら、上限があるということは本当に必要なのだろうかと。やはり応能原則を考えれば、これは社会に対する貢献ですからそういうふうに考えれば、諸外国でも上限のない国があるのですから上限は外してもいいのではないか。税と同じように考えてもいいのではないかと思います。

   以上です。

○神野部会長

   ありがとうございます。

   ほか、いかがでございますか、山口委員、どうぞ。

○山口委員

   今、標準報酬の話が出ましたのでそれについて少し申し上げますと、標準報酬の上限の考え方というのは、実は一貫した考え方ではなくて、以前は健康保険と同じような標準報酬で運営していた時代もあったと思います。

   ですから、私は給付にはね返るということもあるのですけれども、標準報酬についてはやはり基本的には健康保険と同じように増していく。それから給付の反映についてはこの資料にも出ておりますように、アメリカのベンドポイント方式などを参考にして、給付乗率をある一定の給与からは下げるといった形で適用していくような考え方を入れてはどうかと思っております。

   それから、高所得者の年金給付の削減については、基本的にはそういう方向でいいのかなと思うのですが、ただ、これは年金制度の中でやるということになった場合に、果たして公平性を維持する形でできるのかどうかというあたりが非常に心配をしておりまして、例えば、この資料では企業年金を年金収入の中で加えるということになっていますけれども、皆さんよく御承知のとおり、企業年金の場合には年金でとるか、一時金でとるか選択できるようになっているわけです。したがって、フローの年金所得にするのか、まとまって一時金でもらってそれをあと自由に使っていくという選択は可能なわけですから、年金の形でとったときだけに国庫負担が削られるということになる可能性もあるわけですので、それはどうかと思います。

   そういう考え方を延長していけば、非常に大きな財産を持っているけれどもフローの所得がないという人を、ここでいう経済力のない人と同列に扱って果たしていいものだろうかといった問題も出てくるわけであります。また、現状では所得把握自体が不十分であるということもありますし、さまざまな問題がありますので、年金制度の中でうまく機能してやっていけるのだろうかということをすごく心配しております。

   どちらかといえば、税と一体改革ということでありますから、所得の把握の精度を向上させていただくと同時に、税のクローバック方式で対応していくといった方法のほうがむしろよいのではないかと思います。方向としては賛成ですけれども、具体的な方法論についてはちょっと検討していく必要があるかなと思っております。

   以上です。

○神野部会長

   ありがとうございます。

   ほか、いかがでございますか。

   どうぞ、諸星委員。

○諸星委員

   まず、標準報酬の話が出ましたけれども、ここに資料がありますが、これは所得に応じた負担に差を設けることが可能な医療保険とは異なっていて、年金制度はやはり負担と給付がセットとなっており、確か実際平均標準報酬月額の2倍に当たる額が基準となっていますので、それはそれなりの理由があると思います。その標準報酬を高くするということは、将来受け取る年金が上がってしまいます。また、事業主の保険料の負担も引き上がりますので、これについては、引き上げは慎重にすべきではないかなと思っています。

   それと、もし高所得者の方々が年金をもらうときに一定の調整をかけると言う点は、多分、在職老齢年金と同じである支給停止という手を使うのかなと思うのですけれども、今ですら在職老齢年金の制度は非常に難しいのです。非常に細かくてわかりづらい。しかも、それをまた高所得者の方々にも同じような支給停止を入れてしまったらどうなるのか、先ほどシンプルというお話がありましたが、専門家でさえ、今の年金制度というのはすごく複雑なのです。また一つ一つの事例についても違いますし、制度を作ることはさらに現場に混乱を来すのではないかなということです。

   また、将来保険料に応じた年金額をもらえないとなり、それがわかっていることになれば、高所得者の方々が事前に高齢期の報酬額を調整するということがないとは限らないのです。これは実際、実務的にはそういうことをやろうとすれば、できないことはないということです。よほど調査なり、そういった現場での監査なりが厳しく確認できればできますけれども、例えば今、健康保険で直前の報酬額を上げることに対する傷病手当金制度の見直しがされていますが、そういった同様の問題が出てくる可能性が否めないかなと思っています。

   それから、高所得者であるから年金をもらわず、世代間に再分配をしてほしいという要請は、よほどの深い理解が得られない限り、一般庶民的な感覚で言えば、やはり年金は頂けるものである限りは収入に関わらずいただきたいとおっしゃる方が多いのです。65歳になっていれば、これから繰り下げができますよ、もうちょっともらえますよといったとしても、今は元気だけれどもこれからどうなるかわからないから、もらいたいものはもらいたいという方がほとんどで、そうおっしゃいます。

   そうであれば、控除なども含め税制上の還元がありますよとか、負担すべきことは負担してくださいというやり方にしないと、ちょっと難しいのかなと私は思っています。つまり、年金制度の中で、高所得者に対しての支給停止を行うこと自体はちょっとそぐわないのかなと考えています。

   以上です。

○神野部会長

   ありがとうございます。

   ほか、いかがでございますか。

   どうぞ、山本委員。

○山本委員

   高齢期の高所得者に対する年金給付額の減額をしていくことによって、全体的な原資の補助に使っていくという考えだろうと思います。これは将来世代を救うことにもなれば、また高齢者同士の横軸での低所得者を救っていくということにもつながる。両面で価値のあることですから、ベクトルはこれでよろしいかと私は理解をいたします。

   しかしながら、今のお話もございましたが、結局、ある意味では既得権なのですね。ですから、今の給付水準が正しいのか、正しくないのかということは別としても、既得権であるので、これが減額されていくということに対して、先ほどの話と同じになりますが、なぜそうなるのかということへの根本的な理解がないと、ただ減らされるということだけに対するアレルギーが非常に出てくるということにならないような仕組みが必要です。要するに、先ほどのマクロ経済スライドは将来世代のためにするということと同じで、やろうとしていることが審議会レベルでは十分皆さん理解していらっしゃるから、よかろうということになるのだろうと思いますが、世間一般にこの話が広がった場合に、単純に既得権が失われていくのだというふうにだけとられないようにすべきで、施策の実行とあわせて理解の促進が必要になるのではないかと思います。

○神野部会長

   ありがとうございます。

   佐藤委員、どうぞ。

   後で、花井委員に来ますので。

○佐藤委員

   私も、基本的には年金内で調整するか、税制でやるかということはあると思うのですけれども、ここは府省が対応したほうがいいと思うのですが、ただ7ページのところの現状で、この前の議論で550万円以上は1%ぐらいなのですけれども、この人たちはどういう人たちなのか。

   つまり、65歳以上で働いているのですよ、雇用者ですよね。これはどういう人たちなのだろうかというのがあって、普通に考えると普通の企業は65歳までです。だけれども、60歳を超えてかなりの収入があるというと、どういう人たちなのかを精査したほうがいいかなということで、多分この収入も年金の部分とそうでない雇用者としての収入があってこの金額だと思う。

   年金ですごく多い人もいれば、年金が少なくて働いている部分があるかもわからないので、その辺を一律にカット、この所得だけでやるのがいいのかどうかということもあるので、つまり、この人たちがどういう人たちなのかというのを少し議論したほうがいいかなとちょっと伺っていて思いました。

○神野部会長

   ありがとうございます。

   では、花井委員、どうぞ。

○花井委員

   私も同じようなことを思います。先ほどの7ページの資料ですが、所得550万円(年収850万円相当)、そして、年収1,300万円相当とありますが、一体改革の議論経過でクローバックが法律の中から落ちたというのは承知しておりますが、まだ検討規定として残っていますので、ぜひこれも検討していただきたいと思います。

   といいますのは、この方たちがどういう方たちかというのも大きな疑問なのです。同時に、今現役の若い人たちの賃金は低く、その倍ぐらいの、これだけ所得のある人たちに国庫負担2分の1を投入する理屈は何なのだろうということを思います。ここでの国庫負担を削減していくという話と、1人平均5.5万円という基礎年金しかもらえていない人たちの下がり方というのは全然違う話だと思います。

   ぜひとも、この人たちがどういう人たちかということと、ここに国庫負担を入れる理屈についてお考えがあれば、お聞かせいただきたいと思います。

○神野部会長

   事務局のほうから、何かコメントはありますか。

○年金課長

   議論を整理するために、幾つか申し上げたいと思うのですが、まず高齢期になって所得が高い方というのはどういう方かと。実はいわゆる正式にプロファイルするためにはパネル調査みたいなものがあれば一番いいのですが、ワンポイントで所得を押さえた調査でこれは計算していますのでよくわからないのですけれども、資料の中でも資料2の20ページに、いわゆる賃金を得ている方についての分布というのを出しています。

   右のほうを見ていただくと、例えば100万円を超える、120万円を超えるという方々は年齢を経るにしたがって高くなっているので、これはおそらくイメージ的に言うと、会社の役員のような形で残っていらっしゃる方が該当するかなと思われます。

   それから、27ページに今度は第1号被保険者の所得の分布を書いています。これは第1号被保険者なので基本的には60歳で終わっていますので、65歳以上の方の所得ではないのですけれども、これも前回御説明したように第1号被保険者の方は年齢で即引退というわけではございませんので、ある程度高い所得の方はそれをキープする可能性もあるだろう。いわゆる自営業が引退をせずに続いているという方で、かなり高所得の方というのがイメージ的には該当できるだろうと思います。

   それで、1つ、第1の論点と第2の論点で実はちょっと考えておかなければいけないことがございまして、それは高齢期に高所得であるということと、現役期に高所得であったということをどういうふうに考えるかということだと思います。

   最初の論点である、高齢期に年金収入以外に高い所得がある方ということを想定して、7ページにあるようなこのクローバックの議論というものがなされたわけですけれども、年金の制度の中で再分配を強化するというふうに視点を移しますと、資料で言うと29ページ「アメリカのベンドポイントの仕組み」と載せていますが、この横軸は高齢期の所得ではなくて、現役期の所得の蓄積された年金記録の累積がどうかということで、コントロールしているということになります。年金制度の中で事が完結をするときには、基本的には年金の保険料は現役期に納めていただくということになりますので、現役期に高所得であった低所得であった、それぞれについて負担と給付というのをどういうふうに設計をするかという問題になってくる。

 一方で、高齢期の高所得者の年金をどう考えるかというふうに論点を立てますと、この年金制度の外側で高齢期になっても、まだ所得のある方についての年金の給付をどういうふうに考えるか。こういうふうにちょっとディメンションが変わってくる問題になるということだと思います。

   話としては、国民会議の議論というのは先ほども御紹介をいたしましたけれども、高齢期に高所得であるということに関しましては、年金給付も含めて、総合的にほかの税や社会保障とあわせて考えていくべきではなかろうかという意見が実際強かったように感じられます。

   一方で、制度の中でいわゆる同一コーホートの中で再分配を高めるということになりますと、今の現役世代、例えば40代とか50代という方の中にも高所得の方、低所得の方がいらっしゃいますので、その世代が世代の中でどういうふうに保険料を納め、給付をするという形で支え合うかという問題として整理がされるかなと思いますので、ちょっとその点、議論の整理のために申し上げました。

○神野部会長

   これはあれですよね。

   山口委員が御指摘になった、ストックのデータというのはないですよね。ストックというのは大分違ってくる、つまり、どの程度資産を持っているか。

   無理ですよね。

○年金課長

   ストックのデータは、いろいろな統計があるにはあるのですけれども、実際問題は世帯単位で捉えられていることが多いので、実際に高齢者個人がどのくらい持っているかというデータは、なかなか捉えにくいというのが実際であるということだと思います。

○神野部会長

   あと、いかがでございましょうか。

   何か、いいですか、ほかにいかがでございますか。

   原委員、どうぞ。

○原委員

   今、御説明いただきありがとうございました。

   その整理をした上で、きょうのところなのですけれども、高齢期に高所得者の方については、現在の公的年金等控除の見直し等も挙がっていますけれども、やはり税制、他の社会保障、その他の部分とあわせて検討していくのがよいのかと思っております。 もう一方の40代、50代を含めた現役期に高所得の人、おそらくは標準報酬の上限の見直し等の話になるのかなと思いますが、こちらについて私はどちらかというと、先ほど諸星委員からもお話がありましたけれども、年金の負担と給付というものの考え方がほかの社会保険とちょっと性質が違うという部分もありますので、そこの上限を上げていってという部分は、今の現役の方に理解を得られるような形がとれるのかなという部分で、ちょっとそこは慎重にすべきなのではないかなと思っております。

   以上でございます。

○神野部会長

   どうもありがとうございました。

   ほか、いかがでございましょうか、どうぞ。

○出口委員

    今の点で、もしわかっていたら教えていただきたいのですけれども、社会保険という大きい枠組みの中で、例えば医療保険とか介護保険とかと年金が本当に、本質的に違うのかどうかというところがすごく疑問があって、確かに法律上は一応財産権という整理ができているのですが、これは法律を変えれば幾らでもできる話ですから、本当に年金というのは保険料に給付が必ず見合わなければならないものなのだろうか。社会保険という大きい制度の中では医療保険であっても、年金保険であってもそれは同じような性格のほうがむしろ強いのではないだろうか。

   私は、保険会社を経営していますので、保険というのは基本的に実は原理が全部掛け捨てなのですよね。生存保険であっても保険という制度は全部掛け捨てなので、そのことを考えれば本当に本質論として、我々はアプリオリに年金は保険料と給付が見合わなければいけないというところも、サステイナブルな制度をつくる上ではもう一回見直すべきではないのだろうかと。

   個人的に考えても、年金も介護保険も医療も全部同じように大事ですよね。年金だけが払ったものに見合うという、でもこれはやはり制度をきちんとつくり直せば、やがて国民の意識も変わっていくと思うので、今すぐお答えということはないのですけれども、本当に本質的に違うのかどうかというのは、私自身は民間の保険は全部掛け捨てが大原則という意識を持っていますので、本当に医療保険と年金保険は違うのかどうかということも100年の制度をつくる上では見直したらいいのではないか、あるいは議論すべき価値があるのかなとちょっと思いましたので、いつか論点を整理していただければ、もし可能であればありがたいと思いました。

○神野部会長

   いいですか、今植田委員のほうからちょっとお話があります。

○植田部会長代理

   その点ですけれども、保険というふうに年金を考えれば、何に対する保険かといえば、年金は思った以上に長生きしてしまうことに対する保険ですよね。

   ですから、早目に死んでしまえば明らかに掛け捨てになってしまうわけです。そういう意味では保険だと思うのですよね。

   したがって、長生きしたときに保険料、給付をもらえるということなのですが、やや拡張解釈すれば、高齢期になって高所得があるというのは、そこで保険料をもらわなくていい状態へ予想外に幸運にもなってしまったと考えられますよね。早く死んでしまったに近い状態ですけれども、だから、そこについて給付を若干カットするというのは保険という枠内でも余り不自然なことではないように思います。

○出口委員

   それも本当にそう思っていまして、保険事故の定義が今の公的年金は年齢だけです。

   でも、先生の御指摘があったように、保険事故の定義を例えば、制度は若干複雑になるのですけれども、ある年齢以上になって資産もしくは所得がないことを保険事故と定義すれば、そこは全く問題ないと思っていますので、だから本来保険の原理というのは、私自身は掛け捨てだと思っていますので、必ず保険料と給付がひもつきということをアプリオリに前提して議論しなくてもいいのではないかと思った次第です。

○神野部会長

   事務局のほうから、コメントがあれば、どうぞ。

   では、米澤委員。

○米澤委員

   今の点に関しましては、出口委員に、釈迦に説法なのかとも思いますけれども、民間でも掛け捨ての保険というのは特に日本では売れないと聞いています。だからそこに貯蓄性を入れて、多分買った人はかえって損だと思うのですが、それでもって何とか売るというのが、日本の保険に対する認識だというのを私なんかは昔習ったので、ですので、本来の意味での掛け捨ての保険というのは国民にとっては非常に人気のないということなので、どうしてもそうしますと誤解して、これだけ払ったのに、これだけしか返ってこないという話になってしまうと思うので、かなりそこのところには国民性を含めて、保険を本当に理解してもらうには相当難しいなという感じは、私は個人的に思っております。

○出口委員

   そのとおりですけれども、実は現在の国民性というのは、戦後の貯蓄をかきき集めようという政策がそういう意識を生み出したという解釈もできるので、実は損保が代表的ですが、保険は掛け捨てというのがグローバルには多数だと思います。

  多分、現在の国民性は日本の1940年体制が産み出した結果だと思っています。

○神野部会長

   では、事務局のほうで。

○年金課長

   若干、ちょっと今の点で御説明いたしますが、かなり根源的な議論になっていると思いますが、まずは特に年金の給付が報酬比例でなければいけないかどうかという点ですが、私の知る限り、幾つかの国は報酬比例でコントリビューションをいただいた上で定額の給付を返すという仕組みがございます。デンマークの年金がたしかそうだったと思いますし、今回イギリスもそういう決断をされたということでございます。

   ただ、年金の1つの目的、確かに長生きのリスクを分散させるということもあるのですけれども、要は現役期から引退期への移行をスムーズにする、消費平準化というのが1つの年金の要請であると考えますと、現役期の生活は人それぞれ所得水準によってあるので、円滑に高齢期に移行するための水準というのも、ある程度人それぞれあるだろうということで、そこを国によっては完全に報酬比例のドイツのように年金という形で設計をしたり、あるいはアメリカのようにある程度再分配を効かせたような形で、我が国も厚生年金だけを考えれば定額の部分を持っておりますので、ある程度再分配を効かせた形で設計をしているということだと理解をします。

   もう一つ、28ページの資料を見ていただきたいのですが、どこの国にも実は青天井で保険料をとっているからといって、年金給付も青天井だというわけではなくて、年金の給付にはさすがに一定の限度はあるということです。その前提としつつ、負担のほうは応能負担を徹底しているという設計が実際に国によってあるということなので、給付に連動するので保険料は上限をということが、必ずしもそればかりの世界ではないということは御理解をいただければと思います。

   それから、もう一つ、高齢期の所得の話で言いますと、これもちょっと根源的な議論になるのですが、日本の厚生年金もかつてそうだったのですが、基本的に考え方としては退職年金という形でどこの国もスタートしていると思います。ただ、自営業の場合には退職というか、リタイアする年代をある程度自分で判断できるという要素があるのと、前回議論になったように退職を要件にしますと、例えば高齢期に低所得で働いているのに退職していないので年金が出ないとか、あるいは退職すれば年金が出るのだけれども、退職しなければ年金が出ないということで、退職年金という構成は非常に高齢期の就労にとってディスインセンティブになるという認識のもと、世界中どこでもそうなのですが、基本的に老齢年金という形に変わってきている。そこにはいわゆる就労インセンティブを強化するという観点があるのだということを前回御説明させていただきましたので、きょうの資料にもつけておりますけれども、この問題を考えるときにはその視点も念頭に置く必要があるかと思います。

   以上です。

○神野部会長

   ほか、いかがですか。

   駒村委員、何かありますか。

   本質論に入っているのだけれども、いいですかね。

○駒村委員

   大丈夫です。

○神野部会長

   それでは、特に御発言がこの議題についてなければ、第2の議題についてそろそろ終了させていただいて、お手元の議事次第で第3番目の議題で「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のガバナンス体制について」。

   それでは、区切りもいいときにちょうど大臣があと10分程度で御到着という連絡が入りましたので、とりあえずここで、冒頭申し上げましたように一旦休憩を入れさせていただいて、第3の議題に入らせていただきます。

 

(休  憩)

 

○神野部会長

   それでは、お待たせいたしました。議事を再開させていただきます。

   冒頭申し上げましたように、大変お忙しい中を大臣が御臨席いただけるということになりました。大臣のほうから一言御挨拶いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○塩崎厚生労働大臣

   大変おくれて参りましたことを、まずもっておわびを申し上げたいと思います。厚生労働大臣の塩崎恭久でございます。

   年金部会の先生方には、日ごろから年金制度のために御尽力をいただきまして、また、本日はお忙しい中御出席を賜り、きょうも既にもう大分議論を重ねていただいているようでございます。改めて、御礼を申し上げたいと思います。

   昨年の10月以降、精力的に御検討をいただいて、この8月には公的年金についての検討課題を整理していただきました。前回までに短時間労働者の被用者保険の適用拡大、高齢期の就労と年金受給のあり方について御議論いただき、これに引き続いて、今回は年金額の改定のあり方、高所得者の年金給付のあり方等について御議論をいただいていると承知をしております。

   制度の持続可能性を高めるとともに、セーフティーネット機能を強化する視点から年末に向けて議論を進めていただきたいと考えております。

   年金積立金運用を担うGPIFの改革につきましては、本年1月のダボス会議において、安倍総理よりフォワードルッキングな改革を行うとの国際発信も行われた、アベノミクスの最重要改革の1つでございます。そして、運用改革とガバナンス改革は一体不離のもので、いわば車の両輪でございます。

   本日から御議論を賜りますガバナンス体制につきましては、安倍内閣として閣議決定をいたしました本年6月の「『日本再興戦略』改訂2014」におきまして「有識者会議の提言を踏まえ、厚生労働省において、当該資金の規模・性格に即して、長期的な健全性の確保に留意しつつ、主たる事務所の所在に関することに加え、年金制度、法人の組織論等の観点から今後の法改正の必要性を含めた検討を行うなど必要な施策の取組を加速すべく所要の対応を行う」とされております。皆様方にはぜひとも精力的な御議論を賜りたいと思っております。

   年金積立金の運用につきましては、公的年金の保険 者である厚生労働大臣がGPIFに運用を委託し、GPIFが受託者として責任を負うという関係にございます。有識者会議、これは閣議決定で設置されたものでございますけれども、その提言につきましては、資金運用の観点からなされたものとして公的年金制度の観点を踏まえていないのではないかとの御意見があるとも伺っていますが、委託者と受託者責任との関係というのは、公的年金でも私的年金でも全く同じでございます。

   OECDでは、年金運用に係るガイドラインがございますけれども、これも私的年金のみならず、公的年金にも当てはまることが前提との趣旨の明確な記述がOECDのペーパーにはございます。これを踏まえ、有識者会議の提言では、権限・責任が理事長に集中している独任制のもとでは、真の受託者責任が十分に機能しないため、その法人形態を固有の根拠法に基づき設立される法人に変更した上で、合議制による体制が望ましいとされていることも念頭に置きつつ、御検討をお願いをいたしたいと思います。

   特に、年金積立金の運用に関しましては、短期的な運用のパフォーマンスではなく、長期的に判断するという仕組みが重要となります。例えばリーマンショックのような場合に、市場価格が下落して評価損失を計上した場合、危ないので株を売却すべきといった意見が政治やマスコミ等において強くなることが考えられますが、長期的な年金資産運用の観点からはむしろそのような場合には買い増すことが望ましいといったことも考え得るわけでございます。

   そうした意味からも、かかる短期的な物の見方や圧力に振り回されないよう、専門家の集団であるGPIFが政府から一定の独立性を確保することが重要になります。

   また、その反面、専門家の集団であるGPIFは、あくまでも国民益の最大化こそ使命であるとの基本認識のもとで、ベストな運用を目指していることを絶えず国民に説明する責任を果たすことも強く求められます。

   なお、各国の公的年金基金のガバナンスにつきましては、OECDのペーパーでは、カナダ、フランス、アイルランド、ニュージーランド、スウェーデンでは政府からの独立性が確保されているとされております。

   我が国のGPIFにつきましては、さきの有識者会議の提言では、専門性を重視して適切な情報開示を前提に、高い自主性、独立性を認めるべきものと考えられるとしております。いずれにしましても、我が国の公的年金資金の運用につきましては、PKOや株価操作をしているのではないかというあらぬ誤解を国際社会からも受けることがないような、そして、何よりも国民からお預かりした年金資金を確固たるリスク管理のもとで、安全かつ効率的に運用できる強固なガバナンスの仕組みを確立することが重要だと考えております。

   国民の皆様方に安心していただける年金制度の構築のため、皆様方からの忌憚のない御意見を今後、頂戴できれば大変ありがたいと思っております。どうぞ、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。

   ありがとうございました。

○神野部会長

   どうもありがとうございました。

   大臣からお言葉を頂戴いたしましたが、ここで、大変恐縮でございますけれども、カメラの皆様方には御退室をお願いしたいと思います。御協力いただければと思います。よろしくお願いします。

(報道関係者退室)

○神野部会長

   それでは、大臣のお話にもございましたが、議題3の「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のガバナンス体制について」という議題に入りたいと存じます。

   まず、事務局のほうから資料について御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

○大臣官房参事官(資金運用担当)

   運用担当の参事官、森でございます。

   資料3「GPIFのガバナンス体制」をよろしくお願いします。

   「GPIFのガバナンス体制についての検討課題」でございます。

   まず、時系列的に2ページから見ていただきたいのですけれども、自民党の日本経済再生本部、実は大臣はこの本部長代理でございまして、平成25年5月10日にGPIFと公的年金、独立行政法人、国立大学法人等、公的法人につきまして、リスク管理の高度化、運用等の高度化を図ることが必要ということでございまして、政府に有識者会議を設置し、検討を行うという御提言をいただいて、「日本再興戦略」、平成25年6月14日でございますが、ここで運用リスク管理等のガバナンス、株式への長期投資におけるリターン向上のための方策等につきまして御提言ということでございまして、これが平成25年の11月に取りまとめまして、年金部会でも御紹介したところでございます。

   戻っていただきまして、1ページ目でございますけれども、平成26年の5月でございますが、党の日本経済再生本部のほうから日本再生ビジョンということで「GPIFの運用方針、ガバナンス体制の一体改革」ということでございまして、現在、取り組んでいるガバナンス体制の見直しを進めるとともに、法改正の必要性を含めた検討を加え、有識者会議の提言を踏まえて、その取り組みの加速を要請するということでございます。

   それに基づきまして、先ほど大臣からお話のございました「日本再興戦略」ということでございまして、その下の箱にございます「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」に基づきまして、繰り返しになりますが、資金運用の観点から行われた有識者会議の提言を踏まえて、厚生労働省において年金制度、法人の組織論等の観点から今後の法改正の必要性も含めて検討を行うという形で問題提起がされております。

   3ページ目以降、年金積立金の管理運用に関しまして、どのような議論がされたか、かいつまんで御紹介させていただきたいと思います。

   まず、年金積立金につきましては、以前、郵貯とか簡保のお金と一緒に財投で一体運用されておりましたけれども、これは財投改革ということでございまして、年金も自主運用ということで、機運が盛り上がった。その際に、ではどう自主運用をするかということで、当時、労使のトップも含めまして年金自主運用検討会というものが設けられまして、そこで年金運用のガバナンス等につきましても、その当時の考え方というものが出ております。

   まず、箱でございますけれども、年金積立金の運用 の基本方針というのは、保険者である厚生労働大臣が運用委員会の意見に基づき、政策的資産構成割合、これはポートフォリオでございますが、ポートフォリオを含めて策定する。

   運用委員会というのは何かといいますと、これは保険料拠出者の代表等からなるということでございまして、年金積立金の運用、これは将来の保険料水準に影響を与え、保険料拠出者の利害に直結するということでございますので、これは保険料拠出者や金融・経済の専門家の意見を反映させなければいけないということでございまして、この運用委員会の意見につきまして、保険者がこれを尊重しなければならないという建て付けになっております。

   他方、運用管理を行う実際の組織につきましては「専門性の確保」とか「民間活力の活用」、「責任体制の明確化」等ございまして、4ページになりますけれども、組織の性格としましては、これは国が直接運用するというのは行政の肥大化等の話がある。内部組織につきましては、これは専門性ということでございまして、運用管理機関に数名の専門家からなる「投資委員会」というものを設置したほうがよろしいだろうという御提言をいただいた。

   右側の図でございますが、これは平成13年に特殊法人として設置された年金資金運用基金の運用体制でございまして、厚生労働大臣のところで、そこの左下のほうに「年金資金運用分科会」とございますが、ここは先ほど申しました運用委員会に相当しまして、労使代表もしくは金融・経済の専門家が入って、基本ポートフォリオについて諮問、答申をする。

   また、下の「年金資金運用基金」ということで、これは理事会に投資専門委員が入りまして、いわばこの理事と投資専門委員で「投資委員会」ということで、具体的な運用を決めていく。そういう体制になったところでございます。

   5ページ目でございますが、自主運用は平成13年から始まったのですが、ちょうど平成13年、14年というのが非常に日本株の運用成績が悪うございまして、株式運用につきまして、かなりの国民の方々の御心配をいただいたときでございます。

   そうしたときに、年金積立金の運用につきまして、御議論がございまして、これは党のほうでございますけれども、自民党の年金制度調査会と厚労部会、行革のほうの独立行政法人化委員会の合同会議でございますが「年金積立金の運用及び運用体制の在り方」につきましては、新法人の業務実績は厳正に評価し、適切に責任を問う仕組みとする。年金積立金の運用、専門性の徹底と責任の明確化を図るということで、独立行政法人が行うということで、そのときは、国内債券中心とパッシブ運用ということでございましたので、効率的な運用体制にするということでお話がありまして、それで現在のGPIFがあるわけでございます。

   右側でございますけれども、今は独立行政法人でございますので、厚生労働大臣が中期目標を示しまして、中期計画をGPIFが策定する。また、責任の明確化ということがございまして、理事長が法人の業務について最終責任を負う。

   そして、専門性ということでございまして、厚生労働大臣の任命により、金融・経済の専門家からなる運用委員会の議を経てポートフォリオ等を作成するということでございまして、現在、運用委員会につきましては、運用受託機関の選定等、割と幅広く業務を行っている。

   また、そこの左側の図でございますけれども、GPIFにおきましては、今は基本ポートフォリオ等に係る意思決定と執行を一体的に実施するという形の組織になったところでございます。

   次に「現状のGPIFのガバナンス体制について-(2)運用委員会について-」ということで、この委員会に年金部会にも御参画いただいている先生はいらっしゃいますけれども、今は米澤先生が運用委員会の座長ということ、あとは労使の代表の方も入っていただいて、基本ポートフォリオ等の作成、もしくは必要と認める事項について理事長に建議、あとは管理・運用業務につきまして、実施状況の監視ということで業務を行っているところでございます。

   この間、GPIFのガバナンスにつきましてどのような議論がありましたかにつきまして、8ページ以降でございますけれども、GPIFのガバナンス、これは平成22年、ちょうど平成21年の財政検証が出たときの話でございますが、GPIFにつきましては、そのときはエマージング運用とかいろいろ話題になりましたので、積極的にすべきだという御意見、もしくは慎重にすべきだという御意見がございまして、植田先生が座長だったのですけれども、総務省の参画もいただきまして、GPIFの運営のあり方に対する検討会というものを開いたところでございます。

   先にめくっていただいて、9ページでございますが、大臣からございましたOECDの年金基金のガバナンスにつきましても、当時、議論の素材になりまして、下のほうに書いてございますが、山崎養世先生はこのOECD事務局に働きかけまして、GPIFがどのような形で評価されるか、OECDガイドラインを満たしていない事項があるということでございまして、戻っていただきまして、そういうお話もいただきまして、このGPIFのガバナンスのあり方につきましては、検討会報告書がまとめられたところでございます。

 「見直しの方向性」でございますけれども、意思決定過程におきまして、複数の専門家により、より多面的な検討を行うことが必要である。

   そして、年金積立金の管理・運用の基本方針等を定める意思決定機関と、この基本方針に基づきまして、一定の裁量の範囲で管理・運用業務を執行する業務執行機関との役割分担の明確化というのが非常に重要だ。

   あとは、高度な専門性を持った質の高い人材の確保とか、GPIFは委託運用中心でございますので、受託機関を選定・管理・監督できる能力・経験のある人材の確保。あと、経済情勢等の調査・分析等を行うような常勤の専門家等につきまして、透明性、客観性の担保等につきまして、御答申をいただいたところでございます。

   10ページが、先ほどお話のございました有識者会議の提言でございまして、これにつきましては、運用機関につきましては、自主性、創意工夫の十分な発揮。公的年金につきましては、保険料拠出者である労使の意思が働くガバナンス体制、そして、規模の大きな資金運用専業機関につきましては、先ほど大臣からお話がございましたように、その法人形態を固有の根拠法に基づき設立される法人に変更した上で、合議制機関である理事会に重要な方針の決定を行わせるとともに、自主性・独立性を認めるべき。

   もしくは、理事会の長である理事長とは別に業務執行の責任者を置き、監督機能と業務執行機能を分離すること等の御提言をいただいたところでございます。

   めくっていただきますと「GPIFのガバナンスに関する最近の議論-(3)有識者会議提言-」で、有識者会議につけられました工程表、運用の見直しということで、分散投資の促進をより進めていくと、ガバナンス体制につきましてもより進めていく必要がある。

   もしくは、12ページの表でございまして「目指すべ  きガバナンスの仕組み」ということで、パターン2は割と日本の委員会設置型会社に近いようなガバナンス、パターン1につきましては、監査役会設置型会社に近いようなガバナンスということで、意思決定と執行を分離したような形でガバナンスを仕組んではどうかという御提言をいただいております。

   私どもでつくった表でございますが、13ページ「年金積立金運用のあり方と専門性」というものがどのようなイメージになるかということでつくってみました。

   あえて言えば、左下の丸というのが今のGPIFの立ち位置でございますけれども、一番下、ポートフォリオの関係でございまして、運用実績の9割は基本ポートフォリオによって説明されるといっていますが、この戦略的ポートフォリオ、これはそのポートフォリオの割合というのを機械的にある程度ずっと維持していく。それよりももっと乖離許容幅等を利用しまして、柔軟にポートフォリオを動かしていくという形ですと、よりポートフォリオ管理の専門性が高まる。

   もしくは「運用対象・手法に関する専門性」、斜めでございますけれども、市場に応じてパッシブ運用を行うよりは、市場の動向を見つつアクティブ運用をやっていくとするとより専門性が高まる。もしくは市場性のある資産からなかなか売り買いしにくい流動性の低い資産という形で運用対象を変えていくとなると、それなりの専門性が必要、また、GPIFは委託運用が中心と先ほど申しましたが、自家運用に変えていくということになりますと、やはりファンドマネジャーとかという形で、運用方式に適した専門性が必要になるということで整理してみました。

   先ほど、大臣からございましたように、諸外国の主な公的年金基金のガバナンスということでございまして、米国カルパース、カナダのCPPIB、韓国、スウェーデンということで挙げさせていただいています。

   米国につきましては、真ん中でございますけれども、運用の基本事項等の決定、これは企業年金みたいなものでございますので、年金制度を運営するカルパースが理事会で決定ということで、基本事項につきましては、非常勤ですが、雇用者代表等の方々が決めている。

   日常執行業務につきましては、こういう非常勤の理事会とは別にきちんとCEO、CIOが置かれて、執行している。

   カナダにつきましても、先ほど御紹介がございましたように、ここは政府からかなり独立性がございまして、基本事項につきましては、これはカナダの制度は連邦と州の合同の制度ということもございまして、カナダのさまざまな地域からの代表となるよう、そして、さらに金融なりの能力を持つ者が十分確保されるような形の非常勤の理事会がございまして、その下に日常執行業務を行うCEO等が任命されて、運用を実施する。

   韓国は実は昔の日本の年金資金運用基金と似たような仕組みでございまして、保健福祉部長官のところに20人ぐらいの拠出者を中心としたボードがございまして、そこで基本ポートフォリオということを決めて実際の運用は国民年金サービスが行っている。

   スウェーデンは行政庁でAP基金というものがあるのですけれども、そこにやはり理事会が設けられて運用している、そういう仕組みでございます。

   15ページにございますが、先ほど大臣から御紹介ありましたOECDのフィオナ・スチュワートさんとフアン・イエルモさんがつくった、いわゆる運用実施機関と統治機関の表。若干、韓国なりアイルランドなり、制度が変わっているところもございますが、カナダなり、ニュージーランドなり、政府からかなり独立性が高いような統治機関を持っているところが見てとれるかと存じます。

   一番最後でございます。

   大臣がこの間、GPIFのガバナンス体制につきまして予算委員会で御答弁されました。

   先ほどございましたように、ガバナンスの大原則は、この運用は大事な年金の掛金を運用するわけで、厚生労働大臣の下で責任を持って運用することは不動のものであるけれども、PKOや株価操作をしているのではないかというあらぬ誤解を招いているところもあるので、有識者会議で出てきた昨年11月の提言によると、高い自主性・独立性がなければならないとある。そういうことを含めてこの年金部会で議論を深めていきたいということで御答弁いただいております。

   事務局からの説明は以上でございます。

○神野部会長

   どうもありがとうございました。

   これまでの経緯、国際比較等々を御説明いただいたわけでございますが、今の御説明を念頭に置きながら御意見を頂戴したいと思います。いかがでございましょうか。

   駒村委員、どうぞ。

○駒村委員

   一番で発言をさせていただきます。

   確認なのですけれども、このGPIFの議論というのは、今後どのくらいの頻度で行われていくのかというのをちょっと知りたいと思います。それをお聞きしないと、きょうどのくらい突っ込んだ議論ができるのかというのを知っておきたいと思うのです。まず、それが1つ目であります。ちょっとここからお願いできますか。

○神野部会長

   いずれにしても、議論の進みぐあい等々で深めていきたいと思っています。

○駒村委員

   最初のキックオフのテーマ、取っかかりということでいいですね。何回か議論ができる。

○神野部会長

   はい。

○駒村委員

   わかりました。

   財政検証でも明らかになったように、今後は賃金上昇局面を想定しなければいけなくなってきましたので、積極運用しなければいけないという状態になってきたのは確かにそのとおりで、そういう意味では、ガバナンス体制の強化、監理部門や運用部門をきちんと設立するというのは、そういう方向が正しいのではないかと思います。

   それから、長期運用、長期的な視点で運用をするというのも1つの見方だとは思いますので、正しい主張なのだと思います。政府がPKOとかいわれるような形で運用にかかわっているような疑りを持たれるというのは、大変まずいことだと思います。

   一方で、きょうの資料を見せていただいて気になった点もありまして、年金部会との関係はちょっとよくわからない。この議論を行う際に、年金部会はそもそもどういう位置づけに置かれていくのか。ページを見ていきますと、4ページ、6ページ、この辺は被保険者と事業主が保険者と保険料を払っているステークホルダーあるいは年金積立金のオーナー、プリンシパルであることが明確になっている。しかし、次のページになっていくと、だんだん不明確になる。例えば12ページになってくると、これは年金積立金そのものを限定していないので、こういう書き方になっているような気もしますが、いわゆる拠出者の位置づけがよくわからなくなってくると思います。

   公的年金と私的年金の違いも意識しておかなければいけなくて、公的年金の場合は賦課方式であると。それから、すでに起きたように数十兆円のキャッシュアウトが一時的に発生している。キャッシュアウトの場合、金融市場の制約条件を留意しなければいけなくなるわけですので、それのハンドリングが難しくなってくるのではないか。

   それから、全国民の強制加入の仕組みであると。こういう特性をどうこの議論の中で考慮していくのか。きょう、OECDのレポートが出ていますけれども、ISSAのほうから、社会保障たる基金をより重視した「Investment of social security」というレポートが出ているはずなのです。それを紹介していただかないといけない。

   また例えば、14ページを見て比較しますと、米国のカルパースは、果たしてここのグループとして我々の賦課方式の公的年金と同じグループにいていいのかどうなのかというのも気になっております。

   申し上げたいことは、公的年金という性格を考えて、年金部会がどうかかわっていくのか。労使がステークホルダーとして、あるいはプリンシパルとして運用をお願いしているエージェントであるGPIFとどう関係をとっていくのか、年金部会の位置づけ、労使の参画、この辺を議論する必要があるのかと思います。

   それから、賦課方式である以上、5年に一度の財政検証というのがあるわけです。したがって、長期に運用するのは正しいと思うのですけれども、ただ、その間に、つまり運用が非常に低迷している間にたまたま財政検証が来てしまったらどうなるか。そして、50%代替割れなり1年積立金保有が難しいということになった場合には、そのときに大改革を行うことになってしまうのかどうかという、運用のタームと財政検証のタームがずれてしまった場合どうするのかというのも議論していかなければいけない。

   それから、積立金の運用の成績については、これは 制度全体に責任を持つ年金部会が最終的には国民に説明しなければいけないと思いますので、GPIFの説明をまず年金部会が受けて、年金部会はこの運用成績によって、年金制度をどう変えなければいけないのか、年金水準はどう変わるのかということを国民に説明しなければいけないという段階構造になっているのかと思っております。

   最後の部分は、今までも余り十分ではなかったかと感じておりますけれども、とりあえず1回目ということですので、しかも最初に当てられてしまったので、意見ということで申し上げたいと思います。

○神野部会長

   先ほど舌足らずでしたが、後ほど私から提案させていただきますけれども、生産的に効率的に議論を進める上で、年金制度そのものについての議論というのは、当面、私どもの年金部会としてこなしていかなければいけませんので、それをやりつつ、この問題も検討をしていこうとすると、どうしても作業部会等々をつくらざるを得ないかと思っております。それは後で提案をしようと思っておりましたから、そのようにさせていただいておりますが、事務局のほうは何かありますか。

○年金局長

   一通り御議論をいただいた後、幾つか整理をして発言をしたいと思います。

○神野部会長

   では、山口委員、どうぞ。

○山口委員

   ありがとうございます。

   GPIFの運用体制でありますとか、ガバナンス体制をより一層強化していくという方向については、私も基本的にそのように思うのですが、ただし、この「GPIFの独立性」という言葉がこの中に出てくるのですが、それについては、いささか私は疑問を持っております。

   企業年金などでもそうなのですが、年金で運用の方針とかリスクをどのぐらいとるかといったことを決めるのは、最終的にリスクを負担する者が決めるというのが本来の姿です。ですから、企業年金の場合は、運用に失敗して不足が発生すれば、掛金が上がる、その掛金を負担しなければいけない事業主が運用方針を決めるということになっているわけです。

   今回、我々は財政検証で、賃金上昇率を1.7%程度上回る運用成績が必要だということになったわけですけれども、仮に、これが長期にわたってなかなかそう得られないという状況が続きますと、どうなるかというと、最終的には、新規裁定時の所得代替率50%確保が難しくなるということになりまして、さらなる給付水準の引き下げという局面が出てくるかもしれないという意味において、運用リスクは最終的に年金受給者が負担するという構造になっているわけであります。

   そうだとすれば、私はできる限り少ないリスクテイクによって、財政検証で求められた運用パフォーマンスをいかに実現できるかということを議論の出発点とすべきではないかと考えておりまして、そういう考え方で、保険者たる厚生労働大臣が加入者、受給者の付託を受けて、最終的な責任を負う者としてGPIFに対して中期目標を与え、それに基づく中期計画の範囲内で運用業務をGPIFに再委託して、GPIFも受託者責任の重要な役割を担ってきたのだと理解しておるところでございます。

   今回の議論で、先ほど申し上げましたように「GPIFの独立性」という言葉が出てまいりますけれども、私はどうもこれは運用の専門家が自主的・独立的に判断するので任せてくれと言っている、運用プレーヤーの側面からだけの主張ではないかと感じておりまして、年金財政の責任を分担する制度受託者としての考え方とはちょっと違うのではないかと感じております。

   年金受給者等に対する責任は厚生労働大臣が負って いて、その一部をGPIFが分担しているわけですから、例えば、そのGPIFがリスク性資産の増大といったことを独立的に判断してもいいのだということを主張できる正当性、根拠というのは一体どこにあるのだろうかということを、私は大変疑問に思っているところであります。

   もう一つ、疑問に思っておりますことを申し上げますと、本日の資料の中にもありますけれども、フォワードルッキングなリスク分析といったような表現があるのですが、この意味は一体何でしょうか。

   一定の将来シナリオを用いて、それが実現するという前提で、リターンやリスクを設定して、運用計画やリスク分析を行うということかもしれませんけれども、市場は確率的に変動するものでありまして、なかなかシナリオどおりに推移はしないというのが、これまでのポートフォリオ投資の長い経験の中で十分わかっていることではないかと思います。

   仮に、従来のオーソドックスな運用計画やリスク分析の手法にかえて、この方式を採用するということであれば、どのような状況になればこの変則的な方式をやめるのかということを事前に決めておく必要があろうかと思っております。

   要は、作戦を展開する上で、アクセルだけではなく、ブレーキも必要だということであります。

   一昨年の会計検査院の報告書が、過去のGPIFの資金運用事業において、3兆円弱の損失が発生した件に触れまして、このように述べております。

 「損失が一定規模に達した場合にはその拡大を防ぐために事業自体を中止するなどの仕組みがあれば損失の増大を抑制できたと思料される」と報告されているわけであります。

   今回の変則的な方法も、これと符号するものだと思っておりまして、過去の失敗の反省をどのように将来の事業運営に生かしていくかという視点が、極めて重要ではないかと思っております。

   流れに反するようなことを申し上げて恐縮なのですけれども、私は基本的にはGPIFの体制を、専門的人材の数とか情報システムなどを含めて強化していくということにつきましては、全く同感でありまして、そういった充実を早期に図るということに関しては、いささかも異存はないということを重ねて申し上げておきたいと思います。

   以上です。

○神野部会長

   ありがとうございました。

   米澤委員、どうぞ。

○米澤委員

   先ほど紹介もありましたけれども、GPIFで今、運用委員をしておりますので、ここでは個人という立場でいろいろお話をさせていただきます。

   最初はそんなに難しい話ではなくて、今、山口委員がおっしゃられたいろいろなことはもっともなことは多々あるのですけれども、多分、ここで問われているのはGPIF自体の全体の構図をどう変える必要があるのか、変える必要がないのか。変えるとすればどういう格好で変えたらいいのだろうか。そのときには、今のいろいろな山口委員の心配事も含めて、どのようなガバナンスの体制にしたらいいのかということだと思います。

   言いたいのは、この年金部会のこのメンバーでこれを議論していただくというのは、私は一番適切だと思います。

 1つは、労使の方が入っていらっしゃるということと、少なからず、武田委員とか私とか植田委員とか、内部のことをわかっている方もいらっしゃるし、年金制度のことがわかっている方もいらっしゃるので、議論をすれば、この場がまさに適当だと思います。

   その議論するというのは、変えるか変えないかという議論はこれからしていただきますが、もし変えるとすれば、もう100年安心ではないですけれども、100年ぐらい持つような組織としてきちんと変えていく。そのぐらいのつもりで変える必要があるのか、変える必要がないのかということを最初から議論していただきたいと思います。

   GPIFの日常のことを議論する場ではないので、こういうことが今後あるかどうかは、非常に少ないかと思いますけれども、たまたま今、ゼロベースで見直すというように私は理解しておりますが、そういうことにおいては、この年金部会というのは非常に適切だと思いますので、いろいろなところから議論をしていって後で恥ずかしくないような組織をつくっていただきたいというのが私からの感想です。

○神野部会長

   ありがとうございます。

   ほか、いかがでございましょうか。

○宮本委員

   ありがとうございます。

   先ほど、山口委員が前段におっしゃった意見と同じようなイメージを持っておりまして、この資料3を見て感じたことを意見として述べたいと思います。

   国民年金、厚生年金の積立金というのは、被保険者が拠出した年金資産ですので、当然、厚生労働大臣がこの資産を将来にわたって、国民が期待するような年金制度に資するよう運営する責任を負っていると思っています。

   加えて、厚生労働大臣は保険者の立場もあるわけですから、そのようなことからも厚生労働大臣が最終責任を負う、これは当然と言えば当然だと思っています。そのような意味で、厚生労働省が今後もGPIFのガバナンス体制について関与していく、これは当然のことであると思います。

   そうは言いながらも、法的に厚生労働大臣が最終責任者であったとしても、実際に年金積立金が毀損した場合に誰が責任をとるのかというと、厚生労働大臣やGPIFではなくて、結局は給付の引下げですとか、あるいは支給開始年齢の引上げですとか、あるいは保険料の引上げ、こういう形で最終的には被保険者・受給者である国民が負担するということになりかねない。

   つまり、国の責任を年金加入者が背負うということ になるわけでありまして、そのことがまさに加入者が恐れているリスクだと思うわけです。

   ガバナンスを追求すればするほど透明性を要求することにもなりますし、先ほど他の委員もおっしゃったように、説明責任もついて回るということになります。リスク性資産割合が多くなった場合に、金融の専門家からは年金加入者が求めるような情報が提供されるのか。こう問われるのだと私は思うわけで、先ほども大臣がおっしゃったような9ページのOECDの年金基金のガバナンスに関するガイドラインにもありますように、正確な情報伝達のための報告チャネルですとか、ステークホルダーに対する明瞭、正確、適時な情報開示という、これらを担保しなければならないと思います。それが1つあるということです。

   それと、13ページに「GPIFガバナンス強化の視点-年金積立金運用のあり方と専門性(イメージ)-」とありますけれども、この資料とは別に11ページの有識者会議提言の工程表でも、「運用の見直しとリスク管理を含むガバナンス体制の見直しはセットで行う必要」があると、こう書かれているわけであります。

   現在、GPIFでは2013年12月に閣議決定された「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」というものを踏まえて、高度で専門的な人材確保の視点から、給与水準だとか、あるいは業務経費、人員については弾力化が進められているようではありますけれども、ガバナンス体制の抜本的な強化には至っていないと思っております。

   にもかかわらず、GPIF運用委員会の議事要旨を読む限りでは、田村前厚生労働大臣からの要請を受けて、今期中の前倒し適用も視野に入れて、運用対象を多様化する、リスク性資産割合を高める方向で次期基本ポートフォリオの議論が進められていると思っています。

   より専門性が必要な運用にシフトするのであれば、ガバナンス体制をより強化し、そのもとで積立金運用のあり方を議論するということが本来の姿だと思っております。

   以上、意見を申し上げます。

○神野部会長

   いかがでございましょうか。

   花井委員、どうぞ。

○花井委員

   ありがとうございます。

   年金積立金の運用の目的をもう一回おさらい的に調べてきました。厚生年金保険法第79条の2のところにとても丁寧に書いてありまして、「専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたつて、厚生年金保険事業の運営の安定に資することを目的として行うものとする」と規定されております。

   同様の規定は、国民年金法にも規定されているということで、このことについて私は大変重く受けとめております。

   その上で、現在、GPIFには運用委員会が設置されているわけですが、7ページのところに経団連もしくは連合による推薦委員も入っているという記載があります。今までこのような定義づけはされたことがなくて、運用委員はあくまでも「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験を有する者」という位置づけであるわけです。そのような意味でいうと、現在の運用委員会では明確に労使の代表という形では位置づけられていないと理解しております。

   したがいまして、GPIFの今後の改革を考えたときには、保険料を拠出しております労使を含めたステークホルダー、このことを明確に位置づけて、きちんと拠出者の意思が反映できる運営が行われるような組織に改革すべきであろうと考えております。

   以上です。

○神野部会長

   ほか、いかがでございますか。御発言ありますか。

   藤沢委員、どうぞ。

○藤沢委員

   すみません。きょう一度も発言していないので、何か言っておかなくてはいけないかと思いましたけれども、GPIFのガバナンス体制について、今の皆さんの御意見もあったように、そもそも年金ですので、払っている方々、年金受給者が何を求めているかということで、運用の基本ですが、運用を頼む人が何を求めているか。

   それに対して、それをいかにして実現するかという方法において、運用の方法と運用を管理する組織のガバナンスと2つあって、この2つが今まで目的というか、受給者の希望にあったことができていたのですかということを多分、見直しましょうということをおっしゃっていると思うのです。

   そういう意味では、ここの年金部会のメンバーの中で、こういった運用手法についての知見がどれくらいあるのかとか、ガバナンスについては、皆様は組織を運営されているのでお持ちだと思いますが、そういった運用手法に関して、どのくらい知見があるのかということを踏まえて、先ほど先生もちょっとおっしゃったけれども、ワーキングなどをつくって、ここに対してそういった運用手法についても客観的に御説明いただけるような仕組みをつくって、ここに議題を上げていただくということを、ぜひやっていただけたらありがたいと思います。

   それと同時に、これは私もずっと運用の世界にいて実感していることですが、いかに説明責任をきちんと果たしても、やはり説明を受ける人たちの金融リテラシーが低いと理解していただけないというのはすごくありまして、それはきょうの前半の議論も同じだと思うのですけれども、そういう意味では、この見直しをやるのであれば、国民全体の金融リテラシーの向上の部分もセットでぜひ考えていただくのは、大臣もいらっしゃるので、あわせてお願いをしておきたいと思いました。

   以上です。

○神野部会長

   ありがとうございました。

   ほか、よろしいですか。

   原委員、どうぞ。

○原委員

   原でございます。

   この公的年金の運用、ガバナンス体制の強化ということでの議題なのですけれども、やはり、皆さんおっしゃるとおり、このガバナンス体制を強化していくということではもちろん賛成でございますし、そうしていただきたいと思っております。

   また、情報発信をしているという立場、企業を中心に確定拠出年金を含めた年金関連の研修等をしている立場から申し上げさせていただきますと、公的年金制度は賦課方式ですので、財政的には保険料収入というのが主な財源であるかと思います。

   したがいまして、保険料を払っている国民が信頼できる年金制度を維持していくということがまずは重要かと思いますので、国民との間に信頼関係を構築し、維持する、そのためのガバナンス体制の強化ということで、念頭に置いていただければと思っております。

   それから、長期的な運用とはいえ、やはりその時々のリスクということに対する国民の心情ですとか、あとは短期的な運用変動に対する国民の心情、投資になれていないと言われる日本の国民の理解というものを得られる範囲内でいろいろなことを検討していただければと思っております。

   そのためには、説明責任等もきちんと今以上にしていただきながら、信頼関係を構築し、それが公的年金への信頼にもつながるのではないかと思っておりますので、ぜひ、よろしくお願いいたします。

   以上でございます。

○神野部会長

   ありがとうございました。

   植田部会長代理、何かありますか。

○植田部会長代理

   この部会では何度か発言させていただいたポイントなのですが、全体的にガバナンスをどうやっていくか。あるいはGPIFの運用をどう考えるかというのは、結局、年金制度全体としては年金財政との関係を、どう厚労省、GPIFの間で制度として担保するかというところと密接に関係してくると思うのです。

   運用のほうで言えば、例えば国債だけを持っていればいいという状況であれば、難しい運用ではないですし、ガバナンスどうのこうのというのは余り大した問題ではないということだと思います。

   これに対して、もうちょっといろいろなリスク資産を工夫して拾ってきて、なるべく高いリターンを低いリスクでとりなさいということになればなるほど、運用は難しいですし、専門家は必要ですし、若干の独立性も必要だし、そして、説明責任も求められるということかと思います。

   では、どれくらいのリスクをGPIFの運用でとっていくのかという話ですが、そこについては、恐らく極めて単純化して言えば、これまでのやり方というのは次のようなものであって、厚労省で財政検証という中で将来の年金財政を見た場合に、どれくらいのリターンで運用が回れば年金財政が持つかということを計算して、目標の示し方はいろいろありますが、こういう利回りを平均的に上げてくださいということを計算し、GPIFに目標として示すわけです。

   GPIFはそれを達成するように努力するわけですが、ファイナンスのポイントとして、要求利回りが高ければリスクをたくさんとらないと達成できないですし、要求利回りが低ければ、国債に近い運用で達成できるということになるわけです。

   したがって、要求利回りが厚労省のほうから示され ますと、大体GPIFはどれくらいのリスクをとったらいいかというのは、大まかには決まってしまっているということになるのだと思うのです。

   そうは言っても、それは何十年間で平均で達成すればいいということですので、毎年の運用はいろいろな工夫の余地があり、そこに十分な工夫がこれまであったのかという問題はあるでしょうし、工夫をしていくということであれば若干自由度がありますから、それに応じたガバナンスのあり方というものを、もう少し考えていくという余地が一つ、あるように思います。ですから、そこを議論したらどうなるかという問題があるかと思います。

   もっと積極的にGPIFに自由にやらせるというのであれば、要求利回りまでGPIF、したがって、どれくらいのリスクをとるのかということまでGPIFが決めるというモデルもあり得ると思いますが、その場合は、そう決めた場合に年金財政との関係をどう担保したのか。どういう前提、どういう計算でこれで回ると思ったのかという説明責任がGPIF側にどんと回ってくるということだと思います。

   こちらもあり得ないモデルではないですが、今すぐそちらに移れるかどうかはなかなか難しいと思いますが、そういう姿も考え得るということで、その辺をどの辺で線を引くかということによって、ガバナンスのあり方等もいろいろ考え得るという気がいたします。

○神野部会長

   どうもありがとうございました。

   駒村委員、どうぞ。

○駒村委員

   今後の議論の進め方で、先ほど米澤先生がご指摘したようにこの年金部会には利害的にも相反する人もいないわけですし、むしろステークホルダーもそろっているし、年金財政に詳しい人がそろっているということで、1つのいい場だとおっしゃったわけです。

   ただ、藤沢委員からこの金融のリテラシーに詳しい方ということで、その人がこの中にいるかどうかという話になると思いますけれども、必要な話はガバナンスの話で金融リテラシーに詳しい方がどれだけ必要なのかというか、リテラシー、細かいポートフォリオの話をする人が必要である理由は私はよく理解はできていません。

   ただ、先ほど部会長がおっしゃったように、集中的に議論をされるということであれば、採用するチームというか、何というのでしょうか。それの権限とか人選とか議論の内容、これは完全に透明性を高めていただいた形でやっていただいて、そして、もう一度この部会で議論すべきです。130兆円のリスクを負うのは最終的には全国民ですから、それは年金制度にかかわる話になりますので、十分に徹底した議論を年金部会で確保していただきたいと思っております。

○神野部会長

   ありがとうございます。

   私が早とちりをして提案を申し上げましたけれども、今、御議論いただいたように、この問題は多くの論点を抱えておりますし、しかも時間も多くかけなければならない問題だとは思いますが、タイムプレッシャーの中で私どもはやらなければならないし、この年金部会としても制度的に検討すべき事項を非常に多く抱えておりますので、効率的及び生産的にこの部会を運営していくという観点から、作業班をつくらせていただいて、そこで検討していただいたものをまた私どもで検討させていただくという形をとりたいと思っておりますが、この点はよろしいでしょうか。

   それで、作業班に所属していただく委員の方々はここにいるのかいないのかという議論もありましたが、この年金部会の委員以外の委員も含めて検討して、大臣とも御意向を伺いながら私のほうで相談させていただき、事務局とも相談し、もちろん皆様方にすぐに御報告を申し上げますけれども、私の責任で、人選については一任させていただければと思っております。いかがでございましょうか。

(「異議なし」と声あり)

○神野部会長

   それでよろしければ、作業班を設けさせていただいて、人選については私の一任のもとに事務局及び大臣の御意向を御相談申し上げながら進めさせていただきたいと考えております。

   米澤委員、どうぞ。

○米澤委員

   微妙なことなのですけれども、確認させていただきたいのですが、今の進め方は私も非常にいいと思いますが、それはすぐに来週とか再来週に結論が出る話ではないですね。検討するにしても、少し時間がかかる話ですね。

   かたや、GPIFでは、基本ポートフォリオの策定が予定されています。べき論だとしますと、両者一体となって改革を行うというのが、皆様方に聞こえはいいのでしょうが、どうもポートフォリオ策定のほうが先に進んでいるような実態でございますので、そこのところをどこまでリジットに一緒に発表するのか。さもなければ、少しそこのところを切り離して基本ポートフォリオのほうはガバナンスのところを待つ必要なくできるのかどうか。非常に微妙な問題なのですけれども、そこのところが少し、我々にサジェスチョンをいただけると、GPIF側で担当している者としても少し見通しがよくなると思いますので、もし御意見をいただければありがたいと思っております。

○神野部会長

   局長、いかがですか。

○年金局長

   もし補足があれば大臣からいただきたいと思いますけれども、このGPIFのガバナンス体制の議論は、きょうお話がありましたように、運用とガバナンスの関係、あるいは年金制度との関係、それから、先ほどずっと森参事官のほうから過去の経緯もお話ししましたように、自主運用開始以来、運用の責任をどういう形で誰が担うか、あるいは実際の市場で運用することになりますから、市場で大きな資金を運用するという意味で、運用機関にそれなりの独立性と専門性が要求される。そういうさまざまな議論の中で制度も動きながらここまできたということもありますので、ある意味、先ほど御説明があった安倍政権になってからのさまざまな議論を踏まえた運用改革の過程でも実はGPIF内部で一定のガバナンス改革が行われてきております。

   例えば、運用委員会の体制とか権限の強化も行いましたし、閣議決定で体制の強化についても一定の方向性も出していただいていますので、ある意味、ガバナンス改革についても全く今ゼロで何もしていないという状態ではない。一定のGPIFの今の形の中でできることをやりながら、そのことを前提に運用委員会で御議論をいただいている。

   他方、これは市場との関係というよりはGPIF自身がこういう運用関係の変化の中で機動的な運用の見直しを行うということで、これまで内部で議論を積み重ねてきたという経緯もありますので、いわば、それぞれがオンゴーイングで動いているものでありますので、その意味では、最終的な着地点でゴールで一緒になっていくという性格のものではないかと思います。

   運用の話は、これは米澤先生を前にしてあれですが、今、基本ポートの見直しの議論をしているわけですが、もちろん、そのこと以外にもさまざまな運用改革をめぐる議論を今、運用委員会ではされておられる。内容はもちろん我々もつまびらかには存じ上げませんけれども、されておられますし、実際はポートを見直した後、具体的にどういう形でGPIFが現実の運用を動かしていくかということも、言ってみれば、その後もまだ運用の話というのは続くわけですので、その意味では、ここで議論されていることで、GPIFの側で動いていることについて何か制約がかかるということで恐らくなくて、GPIFは文字どおり独立して、運用について責任を持って、今まさに既にもう何か月、半年以上議論されてきて一定のステージまで到達しておられると思いますので、そこはそう理解していただいてよろしいのではないかと。

   大臣、何か補足があればお願いいたします。

○塩崎厚生労働大臣

   そのとおりで結構です。

○神野部会長

   それでは、私に御一任いただくことは御了解いただいたということにさせていただきまして、予定の時間を過ぎておりますので、本日の会合はこの辺にて打ち切りたいと思います。遅くまで御熱心に討議いただいたことを感謝する次第でございます。

   また、重ねて申し上げるわけではありませんが、テーマは一旦、一巡させていただきますので、次回も設定いたしましたテーマを一巡議論した後、きょうのテーマを含めて整理の会合を開いていきたいと考えております。

   事務局のほうからなければ、大臣には本当に遅くまでおつき合いいただいて、ありがとうございます。

○総務課長

   次回の開催日時につきましては、また追って連絡をさせていただきます。

   それから、まことに恐縮ですが、大臣、先に退室をさせていただきますので、しばらく席でお待ちをいただければと思います。

○塩崎厚生労働大臣

   ありがとうございました。どうぞ皆様、よろしくお願いいたします。

(塩崎厚生労働大臣退室)

○神野部会長

   それでは、重ねてでございますが、遅くまで御熱心に御討議いただきましたことを感謝申し上げる次第でございます。

  どうもありがとうございました。

 

 

(了)