2014年11月19日 第28回社会保障審議会年金部会議事録
年金局
○神野部会長
それでは、定刻でございますので、ただいまから、第28回の年金部会を開催したいと存じます。
毎毎でございますけれども、委員の皆様方には、お忙しいところを御参集いただきまして、本当にありがとうございます。心より御礼を申し上げる次第でございます。
本日の委員の皆様方の出席状況でございますが、植田委員、森戸委員、小室委員、藤沢委員、小山委員、吉野委員、佐藤委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。
なお、御欠席をされる委員にかわりまして御出席いただけるということで、柿木委員の代理として日本経済団体連合会より清家参考人が御出席いただけるということでございますので、清家参考人の御出席につき、部会の御了承を賜れればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○神野部会長
それでは、御了承いただいたということにさせていただきます。ありがとうございました。
また、後ほど議題を御紹介申し上げますが、本日、第2番目の議題といたしまして、「基本ポートフォリオの見直しについて」という議題を設定しております。このテーマにつきまして、GPIFの清水調査室長に御出席をいただいて、清水室長から御説明をいただくことにしたいと思いますが、この運営につき、御異議がなければそのようにさせていただきます。
(「異議なし」と声あり)
○神野部会長
どうもありがとうございました。
それでは、そのように計らわせていただきます。
開会に先立ちまして、御出席いただきました委員の方々が3分の1を超えております。このことをまず、御報告申し上げたいと思っております。
それでは、議事に入ります前に、事務局から出席者の御紹介と資料の確認をさせていただきたいと思います。
事務局から、よろしくお願いいたします。
○総務課長
まず、事務局からの出席者ですが、お手元の座席図のとおりとなっておりますので、紹介にかえさせていただきます。
次に、お手元の資料について確認をさせていただきたいと存じます。
本日は、配付資料といたしまして、資料1「これまでの議論の整理」。
資料2「基本ポートフォリオの変更について」。
参考資料1といたしまして「今後の検討の進め方」。
参考資料2、3、4として「社会保障審議会年金部会年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班」の1回目、2回目、3回目の資料を配付させていただいております。
なお、議事次第には載せておりませんけれども「年金の日フォーラム」のチラシも配付させていただいております。これにつきましては、本日の部会の最後に紹介をさせていただきます。
よろしく御確認をいただきたいと思います。何か不備がございましたら、事務局までお申しつけください。
○神野部会長
よろしいでしょうか。
それでは、大変恐縮でございますが、カメラの皆様方にはこれにて御退室をお願いしたいと思います。
運営につき、御協力をいただければ幸いでございます。
(報道関係者退室)
○神野部会長
それでは、議事に入らせていただきます。お手元に議事次第が行っているかと思います。ごらんいただければと思いますが、本日は2つの議題を用意しております。
第1の議題は「これまでの議論の整理」、第2の議題は「基本ポートフォリオの変更について」でございます。
第1番目の議題につきましては、8月以来この部会で整理して、検討してきた課題について議論が一巡いたしました。そこで、前回お伝え申し上げたと思いますけれども、本日の部会では、これまでの議論を振り返りながら、議論全体を眺め渡して、それぞれの検討課題について共通している要素、課題ごとの関連性等々に着目しながら、横断的な視点からこれについて御議論をしていただければとお願いしておりましたが、本日、第1番目の議題でそれを取り上げたいと思います。
それでは、議題1「これまでの議論の整理」に入りたいと思いますので、事務局から御説明いただければと思います。
よろしくお願いいたします。
○年金課長
年金課長の度山です。
資料1「これまでの議論の整理」ということで準備させていただきましたが、その前に、前回、遺族年金について御議論をいただいたときに、若干こちら側の準備不足もあって、適切にお答えできていない部分があったので、ちょっとこの場をお借りいたしまして補足、訂正の説明をさせていただきたいと思います。
2点ございまして、1つは、企業年金の遺族給付の話で御質問があって、十分にお答えできなかったのですけれども、まず、企業年金においては遺族給付の存在は必須ではありませんが、設計上は可能になっているという状況がございます。
ただ、公的年金と違って、企業年金の場合は賃金の後払いの性格もあるということもあって、実際にはどのようになっているかというと、公的年金のような終身給付としての遺族給付の設計の採用は余り多くないというか、ほとんど見られない。
一方、10年とか15年とか、確定期間の給付設計を採用している企業年金も多いわけですが、給付期間の途中に受給者が亡くなられた場合に、残りの期間の分が残された配偶者に給付される例というのは非常に多いという現状でございますので、まず、その点、御報告をさせていただきます。
それから、2点目に、いろいろ議論を重ねる中で、両親が亡くなった場合の子どもに対する遺族年金の説明をさせていただきました。
制度的には、両親それぞれが死亡したということで、遺族年金の受給権はそれぞれ発生するということになってございます。ただ、現行の仕組みの中では、複数の年金受給権がある場合に、1つの年金を選択して受給するという、一年金選択ということになっていまして、この場合もそういうことで当てはまるので、どちらかを選択して受給していただくというのが現行制度上の整理になっているということでございます。
ただ、この点も前回議論がありましたように、共働き標準で何を保障するかという考え方の中では議論をすべき課題かもしれないということで、補足の説明をさせていただきたいと思います。
補足の説明は以上で、資料1の「これまでの議論の整理」に移ります。
4回にわたりまして、事務局からさまざまなファクトですとか、あるいはテーマに沿って考慮すべき現状などを御説明させていただいた上で、それぞれ検討に当たっての論点をお示しして、御議論いただいてきたところでございます。
1ページ、それぞれのテーマについて、まず、議論の整理ということでまとめさせていただきました。最初に検討に当たっての論点、それから、それらの論点について部会で先生方からいただいた意見という形で、それぞれのテーマについてまとめてございます。順次御説明をさせていただきます。
まず、最初の会で議論をいただきました「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大について」です。平成28年10月に適用拡大をスタートすることになってございますけれども、その後、さらにどのように適用拡大を進めていくか、その際の要件のあり方はどうか。あるいは、その枠組みを前提としながら、今の時点でこの問題をさらに進める方策ということで、論点を提示し、御議論をいただきました。
まず、大きく言うと、適用拡大を進めていくという必要性については、御発言いただいた全ての先生から御異論がなく、進めていくべき課題であるということは確認できたかと思います。
その上で、いろいろ雇用情勢が変わってきたということもあり、スピードは早く、あるいは今がチャンスという御意見があった一方で、急激に拡大を進めた際の副作用にも目配りをして進めていかなければいけないという2つの御意見があったと思います。
当座できることとしてどのようなことが考えられるかという点では、28年10月に一定のカテゴリーの範囲に当てはまる方について強制適用ということになるのですが、それをいろんな意味で前倒しをする。例えば28年10月前に前倒しをして加入できるようにするとか、あるいは、対象にならない方について、事業所ごとに前倒しをして加入ができるようにするとか、そのような知恵があるのではないかという御発言をいただきました。
最後に、適用拡大からは外れますけれども、これとあわせて、厚生年金の適正な適用、すなわち本来適用されるべき人の適用が漏れているということについてもきちんと進めていかなければいけない。あるいは、さらに一歩進んで、財政検証の際のオプション試算の2番目にやりましたように、給与所得者全体に広げていくということを最終的なゴールとしては視野に置くべきだという御意見があったということで整理をさせていただいてございます。
2ページ目、適用拡大の各論のほうでございまして、5つの要件についてそれぞれの意見をまとめさせていただいています。
20時間以上という要件に関しては、これが適切ではないかという意見と、時間にかかわりなく成果で評価をするという新しい考え方も出てきている中で、時間で押さえるということが今後どういう意味を持つか検討すべきであるという、2つの観点からの御意見があったと思います。
賃金8.8万円の要件に関しては、もう少し低いところまで適用拡大を進めていくべきだという意見が大勢であったと理解しております。
勤務期間1年以上ということに関しては、主に事務手続上の考慮から、ある程度期間については決めておくことが必要だという御意見と、原則、厚生年金は2カ月以上となっているものを短縮する理由はないのではないかと、2つの考え方が示されたと思います。
学生を適用対象外とすることに関しては、雇用保険の扱いと並べるのが合理的だという御意見があった一方で、学生といってもかなり多様化しているということを捉えると、学生を一律に適用除外にするということは、むしろ余りふさわしくないのではないかという御意見をいただいたと理解しております。
最後の規模501人以上の企業に関しては、基本的には企業規模を要件にすることは適切ではなく、基本的には経過期間という形で処理をすべきだと。ただ、現実に適用を進めていく上では滞納が生じないようにとか、いろんなことを考えなければいけないという御意見であったかと理解してございます。
ページをおめくりいただきまして3ページ、2回目に議論をいたしました「高齢期の就労と年金受給の在り方について」でございます。検討に当たってお示しをした論点については、1つは特に65歳までの継続雇用ということが法定化されている中で、65歳まで働くことを標準とした年金の制度設計のあり方、あるいは65歳以上の考え方について御議論をいただきました。
全般的に働く期間が延びる、それに伴って保険料拠出期間を延ばして制度を考えるということでいうと、総論的には大筋そういう考え方は御理解をいただいたのかなと思いますし、65歳といわず、むしろ70歳と考えるべきではないかという御意見もあったと理解しております。
ただ、年金の制度設計上の問題といたしましては、基礎年金の財源の半分が国庫負担ということもあり、保険料のほうは働いた期間、拠出が増えるということで整理をしたとして、国庫負担が増えるということについてどのように考えるかということに関しては、いろんな観点からの御議論があったということ。
それから、就労環境が変化をしているという中では、ずっとフルに働き続けるということでもなくなってきているという観点からの御意見もあったと理解をしてございます。
ページをおめくりいただきまして、4ページ目、特に年金を受給し始める年齢について、考え方としては、強制的に何歳からということではなく、多様な働き方とあわせながら、個々人で選択をするという考え方についての御意見がある一方で、わかりやすく言うと支給開始年齢の引き上げというか、一律に高齢期の年金の支給をスタートする年齢について、ある程度検討することが必要ではないかという観点からの御意見もあった。
それから、実際に働くことと、年金受給の多様化と論点を立てたわけでございますけれども、現実に繰り下げ受給をしている人は余り多くない、ほとんどいらっしゃらないということもあって、この辺のメリットというものももう少しきちんと伝える必要があるのではないか。こういう観点から御議論があったと受けとめてございます。
在職老齢年金制度に関しては、これも選択肢の拡大という観点から検討していくということはよいのではないかという観点からの御意見があったと理解をしてございます。
次に、3回目に議論をいたしました「年金額の改定(スライド)の在り方について」ということでございます。
これに関しましては、プログラム法でも議論になりましたマクロ経済スライドの調整のかけ方に加えまして、特に物価と賃金の関係で、実質賃金が低下した場合に賃金に連動して改定するルールを徹底することについてという論点も加えて御議論をいただいたところでございます。
大きく言うと、一部慎重な意見もございましたけれども、マクロ経済スライドをきちんと発動して、年金水準の調整を進めていくことの必要性については、大方御理解をいただいていると思います。ただ、一方で、財政検証でも明らかになったとおり、基礎年金のほうの水準の低下という問題がございますので、それとあわせて考えることが必要ではないかという考え方。
それから、どうしても年金額の改定というのは、今の年金の水準を調整するということですが、同時に、若い世代の方が実際に受給年齢になったときに給付できる給付水準を確保するという観点もあるというところがどうしても抜け落ちてしまいがちなので、そういうことをきちんと伝えていく必要性について、言及があったと受けとめております。
あわせまして、次の6ページ「高所得者の年金給付の在り方、年金制度における世代内の再分配機能の強化について」ということでございます。
これに関しましては、事務局のほうからは、高齢期の高所得者に関しては、税制や社会保障全体の中で適正な負担を求めることで対応するということと、年金制度における再分配の強化策ということで、論点を提示したところでございます。
特に、実際に三党協議で削除されました高所得者の年金給付を一部削減するという案については、そういうことではなくて、税やさまざまな社会保障制度全体の中で調整をするという考え方を支持する意見もあった一方で、高所得者の年金給付の減額ということを考えて、これを例えばマクロ経済スライドの終了時期を早める原資であるとか、再分配を強化する原資であるとか、そういうことで使うことも考えてもいいのではないかと、2つの考え方が示されていると受けとめたところでございます。
あるいは、再分配の強化という観点から、保険料の上限の問題などなど、御議論をさせていただきましたけれども、こういうことについても言及がございました。
最後、4回目に御議論をいただきました「働き方に中立的な社会保障制度について」という観点で、俗に言う130万円の壁の問題、あるいは第3号被保険者の問題ということで、御議論をいただいたところでございます。
特に第3号被保険者に関しては、いろんな属性の方がいらっしゃって、一くくりに論ずることはなかなかできないということと、それぞれの属性に応じた対応が必要である。その第一歩としては、適用拡大が重要であるということに関しては、御発言いただいた先生方の御意見の共通項を抽出するとこういうことになるのではないかと思います。
意見が分かれたところというのは、手順といいますか、順番といいますか、第3号被保険者制度をなくしていくという前提で議論をスタートすべきという御議論があったのと、逆に、最後に残った3号がどういう方であるかということを見て、最後、3号制度を考えればよいのではないかと、このように手順のほうではちょっと意見が分かれたところがありましたけれども、何をしなければいけないかというところで言うと、先ほど申し上げたような形が共通項かなということで理解をいたしました。
9ページ目になりますが「第1号被保険者の産前産後期間の保険料の取扱いについて」ということでございます。
これは、1号被保険者に関しても産前産後期間に着目をして、保険料納付義務を免除することと、その場合の給付をどのように考えるかということで論点を提示して、御意見を賜りました。
まず、これは次世代育成の観点から行う措置であるということを前提にすれば、保険料を免除するということにとどまらず、その期間の給付をきちんと補償すべきであるという御意見では、皆さん共通しておったかと思います。
ただ、そのための財源をどう考えるかということに関しては、きちんと国民年金の中で手当をすべきだという意見もございましたし、ある程度制度全体で、あるいは厚生年金のほうからもという御意見もございましたし、そういうことも含めて最後は政治判断に属する問題ではないかという御意見をいただいたところでございます。
最後に、10ページ「遺族年金制度の在り方について」ということでございます。
遺族厚生年金に残る男女差の問題あるいは遺族基礎年金を父子拡大した際の第3号被保険者の扱いについて、制度的に御説明をした上で、共働きが一般化することを前提とした場合に、遺族年金のあり方はどうなるかという御意見をいただきました。
共働きが一般化した前提で制度を見直していくことに関しては、そういう必要があるのではないかという御意見をいただきましたが、同時に、かなり影響の大きな制度設計の変更になるということですとか、あるいはそこに第3号被保険者制度をどのように考えるか、特に、賃金分割の方向で考えると、この考え方が遺族年金のほうにも及んでくるというような問題もあって、少し時間をかけて議論をすることが必要ではないかという御意見だったと理解をしてございます。
以上、各論点についての議論の状況を今まで御説明申し上げましたようにまとめさせていただきましたが、11ページ以降「各検討項目を貫いて今後の制度改革の基本に置くべき考え方の抽出・整理」ということで、事務局のほうで整理を試みたところでございます。
御意見の中でもいただいておりましたが、幹と枝葉というような表現だったと思いますけれども、幹に当たる、特に皆さんにこれまで御議論いただきました中で、共通項的なものを抽出するとどういうことが言えるかということで整理を試みたところでございます。
5点ぐらい基本に置くべき考え方があるかということで、抽出をしてみました。
(1)が「労働参加の促進とそれを通じた年金水準の確保」という点。
(2)が「将来の世代の給付水準の確保への配慮」という点。
(3)、より多くの人を被用者年金に組み込んで、国民年金1号被保険者を少なくしていくというか、本来想定し、制度設計した自営業者の方々にできるだけ純化をしていくという論点。
(4)は、(1)~(3)を通じて、財政検証で明らかになりました基礎年金の水準低下問題にどのように対応していくかという論点。
最後は(5)「国民合意の形成とスピード感を持った 制度改革の実施」という点でございます。
それぞれについて簡単に文章を書いてみましたのが12ページ以下ということになります。
まず「(1) 労働参加の促進とそれを通じた年金水準の確保」ということでございますが、これも財政検証結果から明らかになるように、労働力人口が減少する、あるいは平均寿命が伸びていく中で、経済社会の持続的な発展あるいは経済社会の中で国民一人一人が健康で安定した生活を営むことの中では、年齢や性別にかかわりなく就労できる機会の拡大が重要であるということと、年金制度もそれを反映した形で改革をしていく。これが安心できる給付水準の確保につながるという観点である。
こういう観点からは就労インセンティブを阻害しないであるとか、働き方の選択に中立的な制度設計、あるいはより長く働いたことが年金給付に適確に反映される制度設計を考えていくべきだということになるかなということで、まとめてみました。
「(2) 将来の世代の給付水準の確保への配慮」ということでございます。
保険料負担水準を固定した制度設計のもとで、少子高齢化が進む将来の世代の給付水準を確保することになりますと、必要な年金水準の調整を早期に確実に進めていく、あるいは、パイを大きくするという意味でいうと、年金制度を支える生産活動とその支え手をふやす方法しかおそらくないだろうと。
この観点から言うと、(1)とも重なりますけれども、それに加えて、スライドルールの見直しによって年金水準の調整を極力先送りしないような配慮が必要であるということでございます。
「(3) より多くの人を被用者年金に組み込み、国民年金第1号被保険者の対象を本来想定した自営業者に純化」していくということでございます。
もともと国民年金は被用者年金の適用対象にならない自営業者をカバーする制度として昭和36年にスタートしているということですが、現在、1号被保険者の中で、いわゆる自営業者の方、あるいはその家族従事者の方が被保険者全体に占める割合は2割ぐらいになってきているということでございまして、被用者年金の適用を受けない給与所得者のほうがむしろ多いという現状になってきているということです
この問題はずっと一体改革の局面では、被用者には被用者にふさわしい保障を確保するという観点から論じられてきたと思いますけれども、財政検証あるいはそれをめぐるいろんな検討の結果ということで言いますと、これが将来の年金水準の確保であるとか、働き方に中立的な制度設計、あるいは同一世代内の再分配機能の強化と、いろんな観点からこういう対策を進めていくことが有効であり、必要であるということが再認識されたと感じております。
「(4) (1)~(3)を通じた基礎年金の水準低下問題への対応」ということでございますけれども、もともと所得代替率50%というのは厚生年金の標準的な年金額の1つの指標となっているということでございますが、ただ、トータルで50%だからいいとか悪いとかということと別に、就労形態を問わず全国民に共通して保障される仕組みである。あるいは、報酬の高い方にも低い方にも共通して、再分配機能が働くという基礎年金の特性を踏まえると、基礎年金のスライド調整期間が長期化をし、その水準が相対的に大きく低下するという問題は、放置できない問題であると認識できる。
財政検証に際しては、行ったオプション試算からいうと、今まで御説明をしてきた(1)(2)(3)の措置というのは基礎年金の水準低下幅の拡大を防止する、あるいは水準回復につながる効果が期待できるということで、こういうことを進めていく必要性が再認識されたということで、まとめてみたところでございます。
最後に「(5) 国民合意の形成とスピード感を持った制度改革の実施」ということでございます。
ライフコースの多様化と書きましたけれども、特に制度改革をいろいろ考えたときに、その効果や影響がそれぞれの人に与える影響はかなり異なるということなので、どういう変更をしていくかということについて、丁寧な説明で国民合意を図っていく。特に、利害が対立するような問題もありますので、そういうことについての言及があったということでございますし、制度変更によるいろんな副作用についても目配りが必要だということでございます。
ただ、そうやっていると、別の形でコストを払うことになるという御意見もいただいたところでございます。特に、我が国の経済社会の変化のスピードは非常に急速であるということになると、見えない形でのコスト負担も念頭に置いて、最後は「できることから機を逸せず不断に改革を進めていくことが求められる」のではないかというところでまとめてみた次第でございます。
本来、制度横断的な議論ということになりますと、こういう考え方を幹に置いた上で、それぞれの項目とか課題のつながりとか、あるいは具体的にどのように考えていくかというところまで踏み込んで、いろいろ準備をしなければならなかったのでございますが、事務局のほうの準備不足がございまして、そういうところは次回以降の課題とさせていただきまして、今回はこういう総論的なところでの意見を抽出してみたというところで、御議論を頂戴できればと思います。
以上でございます。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
それでは、ただいま御説明いただきましたのは、この部会が4回にわたって議論してまいりましたことについて整理をし、まとめていただいたわけですが、こうしたまとめ方、あるいは方向性等々で御議論をいただいても構いませんし、抜けている論点等々があれば御指摘いただいても構いません。御意見頂戴できればと思います。
いかがございましょうか。
出口委員。
○出口委員
今、説明を伺っていて、これまで議論させていただいた点を、恣意的な点もなく、非常に客観的にまとめていただいて、すごく問題点がクリアになった感じを受けています。
各論についての御意見のまとめに加えて、今後の制度改革の基本に置くべき考え方の抽出整理というのも非常に納得感があって、皆さんの御意見をよく反映していただいたように私は感じました。
やはり、年金はサスティナブルな制度であるべきだと思いますので、将来の世代のこともちゃんと考えて、これはいつも個人的に思っているのですけれども、洋の東西を問わず、沈む船から救命ボートをおろすときは、まず子供で、その次が女性で、その次が男性で、最後が高齢者というのが共通しています、そうでないとその民族は滅んでしまいますので、そういう観点をきちんと根本に置いて、これからの議論を進めていただければすごくありがたいと思います。
ちょっと希望を申し上げれば、細かい点ですが、最後の「国民合意の形成とスピード感を持った制度改革の実施」というのは、このとおりだと思うのですけれども、国民によくわかってもらうためにはシンプルでわかりやすい制度にしていくことがすごく大事だと思いますので、私も今の年金制度をちょっと勉強させていただいて、これはなかなかシンプルにはならないなとは思ったのですが、ただ、目指すところはシンプルであるべきですので、国民合意の形成を図りつつ改革を進めていく必要があるし、国民合意の形成を図るためにもできるだけシンプルな制度設計を志向していくべきであろうみたいな形で、シンプルさとかわかりやすさという点にコメントしていただければ大変ありがたいなと思います。
本当に幹がよくわかったので、この5つの幹でこれからの審議が進んでいけばすごくいい方向に進むのではないかという感想を持ちました。
以上です。
○神野部会長
ありがとうございます。
ほか、いかがでございますか。
花井委員、どうぞ。
○花井委員
私もおおむねこのまとめでよろしいのではないかと思いました。
ただ、少しつけ加えていただきたいのは、2ページの短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大の関係ですが、前の部会で意見を述べたかと思いますが、賃金が月額8.8万円というのがございます。これと、20時間ということをあわせての話ですが、最賃で見ると、東京が888円で、沖縄が677円と、200円以上も差があるわけです。同じ労働時間を働いても、東京で最賃ということはあまりあり得ないかとは思いますが、地方に行くと、最賃に張りついているパートの時給というのがありまして、そうすると、同じ時間働いても106万に到達しないということが出てくると思います。
自分で計算した限りでは、月額5万8,000円になると、大体クリアできるのではないかと思います。ここに記載してございますが、改めて最賃との関係も見たときに、8万8,000円ではなくて5万8,000円であるべきだということで、最賃という言葉がどこかに入らないかという要望です。
それから、1ページに、まず適用されなければいけない人が適用されていないという項目があったかと思います。それも記載してあるのでそのとおりだと思うのですが、改めて、適用拡大の前に本来適用されるべき人について適用を進めていくことを強調いただけたらと思います。
最後の横断的な整理のところですが、今ほど出口先生がおっしゃったことはそのとおりだと思って伺っていたのですが、もう一つ、ぜひともお願いしたい点があります。国民の合意形成を図るというのはとても大切な視点ですが、丁寧な説明とかわかりやすさというのもあるかと思います。やはり制度設計にかかわる政府の方たちの国民に対する丁寧な説明という観点もぜひ取り上げていただけたらと思います。
以上です。
○神野部会長
どうもありがとうございます。
菊池委員、どうぞ。
○菊池委員
おまとめありがとうございます。
私は、今までペーパーも含めて意見を述べさせていただきましたが、かなり反映していただき、ありがとうございます。
この中身については特にございませんが、今後に向けて1点、希望を述べさせていただきたきます。要するに、企業年金との関係ですけれども、将来の給付水準をどうしていくかと、おまとめのところにありますが、国民の目から見ると、老後の所得保障をどう図っていけばいいのかという視点が重要ですので、そうしますと、公的年金のみならず、企業年金、私的年金も含めた制度設計というのが関心の的になってくる、また、重要になってくるということだろうと思います。
私は、企業年金の今の改正論議は、報道の範囲でしかわからないのですが、例えばDBの中で所得比例的な要素が入ってくるとか。あるいは、被用者以外にも加入の道が広げられるとか、そういうことを報道の範囲では拝見するのですが、要するに、全体として企業年金と公的年金の制度のあり方はどうなっていくかというセットで議論することで見えてくるものもあると思うので、当初、11月あたりに必要に応じて合同会議を開催というペーパーがあったのですが、多分11月はないと思うのですが、どこかの段階でできればそういった機会があれば、ということを、希望として述べさせていただきたいということであります。
○神野部会長
何か事務局のほうから、今の企業年金との関連等々でコメントがあれば。
○年金局長
企業年金の部会も今、並行で議論しています。きのうも開催しているのですが、あちらのほうも大分議論が整理されてきましたので、あしたあさってぐらいに大きいイベントがあるようですので、日程があれですが、できればある程度の段階で、企業年金部会の取りまとめをある程度こちらに御報告いただくという形でフィードバックしていただいて、合同でやれるかどうか、委員の先生の日程とかもあるのですが、何らかの形で両方でそれぞれの間でどういう議論があるか、あるいは今、お話があったように、全体として企業年金も組み込んだ形で年金制度をどう考えるかというのを少し議論できる場を設けたいと思っております。
○神野部会長
何か事務局のほうから、今の企業年金との関連等々でコメントがあれば。
○年金局長
企業年金の部会も今、並行で議論しています。きのうも開催しているのですが、あちらのほうも大分議論が整理されてきましたので、あしたあさってぐらいに大きいイベントがあるようですので、日程があれですが、できればある程度の段階で、企業年金部会の取りまとめをある程度こちらに御報告いただくという形でフィードバックしていただいて、合同でやれるかどうか、委員の先生の日程とかもあるのですが、何らかの形で両方でそれぞれの間でどういう議論があるか、あるいは今、お話があったように、全体として企業年金も組み込んだ形で年金制度をどう考えるかというのを少し議論できる場を設けたいと思っております。
○神野部会長
ありがとうございます。
では、原委員、どうぞ。
○原委員
資料を横断的に、また、細かくまとめていただきまして、ありがとうございます。
私のほうから2点だけコメントさせていただきます。
最後の横断的にまとめていただいた「各検討項目を貫いて今後の制度改革の基本に置くべき考え方の抽出・整理」というところの1番目のところなのですが、前回、欠席させていただいた関係で「働き方の選択に中立的な制度設計」ということで、1つコメントさせていただきたいと思います。
各委員の皆様の意見の中にもありましたけれども「働き方の選択に中立的な制度設計」については、働く側にも、事業主の側にも、ある程度の意識変革が必要な部分があるように思います。
例えば就業調整の問題ですとか、事業主の社会保険料の負担回避行動などの実態を踏まえますと、被用者年金の適用拡大を進めたときに、実際にどう動くかというような、そういった懸念もあると思われます。
これは御意見もあったかと思うのですが、まず、短時間で働く人への社会保障制度ですとか、年金制度への正しい理解を促すということとともに、自身のキャリアアップという視点をより持ってもらうこともこれからは大事になってくると思います。
事業主側には、正社員、短時間労働者といった区分なく雇い入れ時ですとか年代ごとに必要な、社会保険などの研修あるいは人材育成のためのキャリア教育など、そういったものもより一層必要になるのではないかと思っております。
それから、第3号被保険者のあり方の検討ということでも、前回、御議論があったということで拝見させていただきました。個人的にはさまざまな属性、年齢層の人が混在している状況ということを踏まえまして、まずは、皆さんの総論の1つにあったとおり、被用者年金の適用拡大の理解を進めながら進めて、出産育児期間については、女性についてはM字型カーブというものを改善すべく、継続就労ですとか、職場復帰支援といったことを進めることで、おのずと第3号被保険者の数が減っていくだろうと思われます。
その上で、私の個人的意見としては、残った第3号被保険者の属性、年齢層について明らかにしていき、そのあり方を検討していくといった、段階を踏んで、時間をかけて行っていくことが現実的になるのではないかと思います。これは前回欠席させていただいたので、加えさせていただきます。
それから、もう一点ですが、抽出整理の5番目の、先ほどから意見が出ております「国民合意の形成とスピード感を持った制度改革の実施」についてなのですが、相反することのようにも思われますけれども、両方とも同時に進めていかなければならないだろうと思われます。そのとき、前回もありましたが、マクロ経済スライドという用語ですとか、再分配機能とか、働き方に中立的な制度といった言葉が、そのままでは正確に伝わらないような部分もあるのではないかと思います。難しい用語や内容をいかにわかりやすい言葉で丁寧に説明できるかが大事だということだと思うのですが、それが一番難しいようにも思います。ただ、それをやらないと国民合意の形成があいまいなものになってしまって、改革だけ進めてしまうと不信感が残ってしまうおそれがございますので、情報発信の重要性はますます高まっていくと思われますし、積極的に行っていくべきと思われます。
また、一方で、公的年金制度、企業年金制度もそうですけれども、現状や課題、それに対して改革の方向性が示された場合は、その方向性について、いろいろな立場からきちんと説明できる人材も増やしていかなければならないのではないかと思っております。
以上でございます。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
それでは、山口委員。後で宮本委員に行きます。
○山口委員
ありがとうございます。
全体として非常に適切にまとめていただきました。この方向でよろしいのではないかと思っております。
また、(4)につきましても、ぜひもう少しいろいろ議論を深めていくような機会が設けられるということを非常に期待しております。
この資料の中にもありましたように、(4)の問題につきましては、(1)~(3)の措置が基礎年金の水準低下幅の拡大防止をするということは事実だと思うのですが、今回の財政検証では相当、報酬比例年金と基礎年金の調整期間終了までの年数の幅がありまして、おそらく(1)~(3)が実際に効果を発揮する時期には、報酬比例年金の調整が、これは6年後に終わるということで、E案でもそうなっていましたから、調整修了になっている。そうすると、ほとんど基礎年金だけの調整が長く続くといった事態が避けられないのではないかということを危惧しております。
今回、書いてございますように、政策的に(1)~(3)というのが効果があるといったことでありますから、そういった、ある意味効果を先取りするといったイメージで、第1号被保険者が自営業者に純化していくという計画が、仮に直ちになだらかに進むと仮定した場合に、減少していく第1号被保険者の数を、計算上先取りして、基礎年金の1人当たりの負担額とか、あるいは国民年金からの拠出額を算定していくといった、これは仮想の姿を先取りするといったことですが、何か工夫の余地があるのではないかと考えております。
もともと工業化等による産業構造の変化の中で、産業別の従事人口が大きく変わっていって、年金の受け取り手と支え手の比率が非常にアンバランスになっていったというところから、縦割りの制度のままでは持続性の面でなかなか解決できない難しい問題が生じてきたため、国民全体で支えるという発想から、基礎年金ができてきたのだと私は理解しております。
そうだとすれば、このマクロ経済スライドといった公的年金全体にわたる財政調整の仕組みの適用につきましても、あるいは、前回、出ていました産前産後の保険料免除につきましても、余り縦割り制度の枠組みにこだわる必要はないのではないか、これは国民全体の問題として考えていくべきテーマではないかと思っておりますので、いずれにしても、こういう基礎年金の水準低下については、給付の十分性が確保されないレベルまで下がってしまうといった状態は避けるべきだと思っておりますので、特別の配慮をしていくための議論を今後していく機会が設けられることを大いに期待しておりますので、よろしくお願いいたします。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
それでは、宮本委員、どうぞ。
○宮本委員
ありがとうございます。
私はこの審議会に参加してまだ日が浅いわけですが「これまでの議論の整理」を読ませていただいて、私のような者でもわかりやすく、感謝を申し上げたいとまず思います。
その上で1つ御質問があるのですが、年金額の改定(スライド)の在り方についてということで、資料1の5ページにもありますけれども、マクロ経済スライドを発動した場合、年金額が少ない受給者、要するに低受給者の方々、特に年金のみで生活をされている受給者にとっては、基礎年金にもマクロ経済スライドをかけるとなると、さらに生活水準を下げなければならないことになるわけです。老後の生活を保障する役割を担うのが基礎年金であると理解をしておりまして、そのため、マクロ経済スライドの対象から基礎年金部分を外すとか、このような低受給者の救済策を何か検討すべきではないのかということを感想として持っております。
その上でお聞きしたいのですけれども、資料1の1ページの、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大に関する主な意見のところにもあるのですが「低所得・低年金者の年金額の引上げにつながるので、世代内公平の観点からも適用拡大の方向性には賛成」という意見が記載されております。このことについては、私も含めて多くの委員の皆さん方が賛同されているところであると思いますが、他方で、これまた多くの委員の皆さん方から、基礎年金にもマクロ経済スライドをフルにかけるのはやむなしという意見も実はあったように思います。
この両方の意見は相反するようなところもありますし、両方の意見をお互いそれぞれ尊重していこうとすると、どのよう整合性をとっていったらいいのか、そこのところを少し事務局にお聞きしたいと思っております。
以上です。
○神野部会長
これは事務局のほうで、何かコメントがあれば伺っておきます。つまり、二律背反的なことになってしまうのではないかという意見が出ているのではないか。それをいかに和解させるのかということで。
○年金課長
幾つかのディメンションの問題があるので、御説明させていただきますけれども、何度か御説明していると思いますが、国民年金と厚生年金両方の保険料を固定するという制度設計になっていて、そういう意味で言うと、基礎年金も含めて今の水準の給付を続けると、将来的にはバランスしないということになっていますので、これは両方の年金についてスライド調整をかけるということは、まず、一定期間きちんと給付と負担の均衡をとるという観点から必要になってくるという問題だと思います。
その上で、ただ、先ほど山口先生からもお話がありましたとおり、基礎年金の給付の調整期間のほうだけがかなり長くなっているということは、これはちょっと制度上手当をしなければいけない問題だという認識は我々のほうにもあるので、そういう形で論点整理をさせていただいています。
その一方で、これは別に基礎年金ということに限らないのですけれども、いずれにしても、いわゆる現役時代の所得と比べた年金の相対的な水準というのは、所得代替率という言葉で表現されますが、ダウンをしていくことは避けられないので、それをどのようにリカバーするかということが、そういう意味でいうと老後生活の安定という観点からは必要になるということです。
先ほど、これに関しては多分いろんな処方箋があって、公的年金の外側でいろいろ考えるということもあると思いますし、公的年金の中でも、例えば期間を延ばす、できるだけ2回の給付があるような期間を延ばすとか、いろんな形でのリカバリーを打てるような制度設計を考えていくということが課題になっていると捉えていただければよいのではないかと感じます。
最後に、資料の1ページ目の一番上の「低所得・低年金者の年金額の引上げにつながるので、世代内公平の観点から」ということに関しては、前々回でしたか、御説明させていただきましたが、いわゆる厚生年金の世界に低い所得で入ることになりますと、報酬比例の保険料ですから、保険料は比較的低くなる。一方で、給付のほうは、報酬比例給付というものも保障されますので、年金額の引き上げにつながる。そういう意味でいうと、負担の面でも給付の面でも、再分配が効く仕組みのほうに移っていただくということでいうと、個々人にとってもそうですし、制度設計全体にとっても再分配機能の強化につながると、そういう理解のもとにこのページの資料は記述させていただいております。
以上です。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
山本委員、どうぞ。
○山本委員
ありがとうございます。
詳細あるいは細部のところについてはまだいろいろと議論が残るでしょうけれども、大筋の方向性としては、非常によく理解できるまとめのように思います。
(1)から(5)まで拝見した中で感ずるところを申し述べたいと存じます。
1番のところの就労インセンティブを阻害しない制度設計が必要であるということについて、働き方がこれから変わってくること、例えば女性がもっと労働市場に参加していかなくてはいけないという方向性は、これは所得代替率との関係を鑑みても必要なことと思います。
それから、高齢者も、これからの国力を上げていくために、命ある限りと言ったら語弊があるかもしれませんが、貢献していく必要がある。そういう日本の国家的な使命を担う必要が高齢者にもある。このようなことが語られたと思います。
これらのことを考えますと、3号被保険者については、私はちょっとよく理解ができずに悩んだ点でございますが、なぜ3号被保険者という位置づけがあるのか考えますと、家庭内従事の労働というものは極めて重要な価値を持っているのだということが、全ての国民の了解のもとにあったからだと思いました。一方、財政検証では女性の労働参加が非常に重要であるということもわかり、そこに、保育所が足りないなど、いろんな社会的な不備があると考えますと、いわゆる女性がこれからどうあるべきかということの関係において、自分の頭の中でこれを整理できないところがあったように思います。
男女雇用均等法に基づく今日、今どきそんなことを言っているのかとも言われる点ではありますが、一挙に3号被保険者をもっと個人として自立した形にしていこうという議論が非常にしづらい。
子供を育てて次世代を養うということの価値の大きさも十分わかります。何を言いたいかと申しますと、結論が出るには結構時間がかかるし、社会の趨勢を見ていかないとおそらく結論が出ないだろうと思います。そうしたなだらかな変化に沿ってこの制度の改変をやっていかないと、現実との乖離が生じるのではないかという気がします。
それから、もう一つは消費税2%が先送りになって、18カ月後になりましたけれども、このことが年金財政に影響を与えてくることを考えますと、マクロ経済スライドの名目下限ルールの問題ですとか、先送りせずに早急にやる必要があります。
もう一点、最後でございますけれども、国民の合意形成についてでございますが、若い人たちが今、自分たちの消費に対するアクションについて、かなり消極的であるように思います。将来安定して生活が保たれる、あるいは自分もこのようにすることによって将来のビジョンが描けるというイメージができないから、消費にも非常に臆病ですし、いろいろな弊害が出ているようなことも感じます。
そうした意味でも、ビジョン形成というのは非常に重要です。女性は家の中に居ればよろしいというのが1つの価値観としてあって、今の60歳以上の人たちの頭の中は大体そういうことででき上がっている状態です。また、これまでは大体65歳から70歳になると人生終わりという感じでしたが、今、寿命も延びて、女性も今まで以上に社会参加をするという時代になり、将来の自分の人生のイメージがどうなるかということを、年金の問題を1つの契機にして、それを考え、若い人たちに希望を与えていくことが、具体的な制度改正を進めることと共に重要なであると私は思います。そんなことを強く感じましたので、意見として申し上げます。
以上です。
○神野部会長
ありがとうございます。
では、小塩委員、駒村委員でいいですか。
○小塩委員
非常に論点をきれいに整理していただきまして、ありがとうございます。
質問が1つ、コメントが若干あります。まず質問なのですが、財政検証の8つのケースを出していただきましたね。それぞれ所得代替率はどうなるかとか、いろんな計算を示していただいたわけです。それの後で3つのオプションについて、我々は今まで議論してきたわけですが、このオプションを改革に反映させると、ロジックとしては、財政検証の数字は変化するのではないかと思うのです。特に可能性が高いのは、オプションの2の(2)です。厚生年金の適用範囲を大きく拡大すると、がらっと数字が変わるのではないかと思うのですが、その議論はこれからするのかどうか。それをまずお聞きしたいと思います。
それから、コメントなのですが、私も今回の御報告のまとめ方は大変結構だと思うのです。少子高齢化が日本のようなペースで進みますと、今の年金をそのまま維持するのは大変難しくなると思います。そのため、老後の最低の生活保障をする仕掛けである基礎年金を強固にするということに政策のウエートを置くという方針は非常に重要なことだろうと思います。ですから、この方向でまとめていただいたらいいと思うのですが、一般の国民の方にも、「私たちが守るのは老後の生活保障です、これを最低限国が責任を持って守ります」というメッセージをできるだけ打ち出したらいいと思うのです。同時に、「そのためには余裕のある人にはちょっと我慢していただきましょう」と言わざるを得ないということだと思います。それが1つ目です。
2つ目は、支給開始年齢についてです。私は、何度も申し上げていますけれども、引き上げないといけないと思っておりますが、反対があるのも十分承知しております。ただ、機械的に、例えば67歳とか68歳に一律に引き上げろということを別に申し上げているわけではなくて、その人が年金を受給してから死亡するまでの年金総額が少なくなれば別に構わないわけです。ですから、働くこととの中立性を維持することも考えますと、別に支給開始年齢などはいつからでもいいと思うのです。いつからもらっても、死ぬまでにもらう年金総額が変わらなければよろしい。ただ、その年金総額はちょっと減らし、全体として制度が維持可能になるようにすればいいと思います。
最後は、そのように年金改革を進めていきますと、所得代替率ベースで見ると、先ほど年金課長がおっしゃったように、非常にさびしくなるという点です。OECDが年金の所得代替率の国際比較をして、日本がたしか30%後半でしたね。ほかの国に比べて低いという数字を出しました。それに対して厚労省の方々は反論をホームページでされています。これは制度が完成した段階の比較であって、今はもうちょっと高いよという反論なのです。これは非常に正直な反論で、制度が完成したら非常にシャビーになるということを認めたわけですから、やはりこれは問題だと思います。かといって、現行の賦課方式でやる限り、スリムにせざるを得ないわけですから、別の仕掛けを考えておかないといけないと思います。スウェーデンでもドイツでも上乗せの年金を別途用意して、ようやく所得代替率を維持しているという工夫をしているわけです。日本でも将来世代の給付の水準を維持するということを考えると、今までなかったような仕組みになるかもしれませんが、あまり次の世代に負担をかけないような、追加的な年金の仕組みを用意しておく必要があるのではないかと思います。
以上です。
○神野部会長
とりわけ、最初の3つのオプションの検証と。
○年金課長
まず、確かにそれぞれのオプションというのは、政策を通じて人々の行動が変わるということは予想されますので、そうなったときにどうなるかというのは、今、出している数字と違う動きをするという可能性はあると思います。
ただ、特に適用拡大に関しては、どういう影響が出るかということについて予測するようなモデルが現在、ありませんので、、25万人の適用拡大をやって、様子も見た上で、その先のやり方を考えていきましょうと、こういうことになっている1つの理由はそういうところにあるのだろうと思います。
これは財政検証のときにも御説明したかもしれませんが、前提に置いた条件が変わらないで、制度変更したときの影響を客観的に見るという形でオプション試算をやったので、それはそういうものとして受け取っていただくということが必要かなと思います。したがって、こうやるとこう世の中が変わるというよりは、こういう制度変更がほかの条件が一定だった場合にどういう影響が出るかということの試算であると、そこはそういう意味である程度制約的に結果を受けとめるということは必要なのかなと思っています。
それから、最後の所得代替率の関係でいいますと、実は反論をしたのではなくて、あの数字をどのように理解していただくべきなのかということを、正しく理解をいただくために必要なインフォメーションを我々としては載せたということなので、反論をしたわけではないということだけ御理解いただきたいと思います。先生がおっしゃられたとおり、我々もあの数字はおそらく妥当な計算だと思っていますので、そういう現実を受けとめた上でどう考えるかということを考えていかなければいけないと思いますし、あの数字自体も年金部会の資料の中で何回か載せて御報告をさせていただいたところでございます。
○神野部会長
駒村委員、どうぞ。
○駒村委員
ありがとうございます。
「検討項目を貫いて今後の制度改革の基本に置くべき考え方の抽出・整理」、必要最小限のことがまとめられていると思います。ただ、14ページについては、個人的にはもう少し強く書いていただければと思ってはいましたが「できることから機を逸せず不断に改革を進めていくこと」というところですけれども、本当は改革すべきときに改革をしないということ自体が年金制度のリスクを高めていくところなのだということを、もうちょっと明確にできないかなと思います。もう少し強く書いてもいいのではないかと思います。
改革の必要性をあまり強く世間に認識していただけない理由の1つには、いい対案があるかどうかという話になるわけですけれども、2004年のルールで、代替率50%を5年以内に下回らなければ改革する必要はないいう考え方があるのではないかと思います。
このときには、厚生年金と基礎年金がパラレルに低下していくという前提でしたから、そういう考え方もあるのかなと思いましたが、今回、明らかに基礎年金のほうが急速に落ちていくという危機感が弱まる。また5年以内に50を切るような状態になるとかなりまずい状態になり、選択肢が少なくなると思うのです。この条項自体が改革を先送りしてしまうような性格を持っているのではないか思っています。何か代替案があるのかとも言えませんが、もう少しマクロ経済スライドで基礎年金が落ちてくることに関する危機感を国民と共有したほうがいいのではないかと思います。
以上です。
○神野部会長
どうもありがとうございます。
諸星委員、早目に御退出と伺っています。どうぞ。
○諸星委員
皆様、各委員の方がおっしゃった全般的な資料というのは非常によかったと思っております。
私からは2点ほどあります。
まず、5ページのマクロ経済スライドのところと賃金ルールの部分なのですが、本当に前回、多分駒村先生がおっしゃった言い方の、一番下の「マクロ経済スライドはそもそも」のところですが「若年層の賃金が落ちているから仕送りを減らしてほしい」という構造にあるということをすごくわかりやすくおっしゃっていただいて、まさにこの部分を周知するべきではないかと思いました。
あとは、賃金スライドの部分なのですが、これについて一番心配なのは、今、非常に経済の状況とか人手不足があって、正社員化が進んでいるということは確かなのですが、実際、この十何年を見ていくと、非正規雇用者の割合が著しく増加しているという実態があると思います。最低賃金は確かに先ほどありましたように年々上がっているのですが、個々の賃金は極端に上がらないのです。やはり低賃金になりがちな非正規雇用者がこれからもふえることになるとすれば、賃金スライドの改定ルールを導入したときには、1人当たりの平均賃金は下がることになるので、賃金スライド自体は必然的に下がっていくとなります。その実態がある賃金ルールのままで果たして本当にいいのかということの議論がこれから必要になるかなと思いました。
2点目は、14ページに、先ほどから皆様おっしゃっているように、丁寧な説明とスピード感は、本当に先ほど原委員がおっしゃったように、相反することではないかと時間軸では考えた場合に思うのですが、実は今までの年金部会の中で、委員の方々がすごくいいことをいろいろおっしゃっているのです。本日もいろいろな意見があった中で、これは今すぐにでもできるではないかということがあったかと思います。ですから、そのスピード感と丁寧な説明というのは、各委員からいただいた意見の中で、これが実践できるということをやればいいのかなと思っています。
では今までもやっていないのかなと思ったら、実は現場に行くと結構やっていらっしゃっていて、この間発言したことをきちんと現場で年金機構がやっているんですね。厚労省はその点が謙虚なのか、実際動いていることをこの部会の場でおっしゃらないので、逆に、現場でこういうことが今、進んでいますよ、意見を反映させていますよということを、情報として開示していただければ、やはりスピード感を持ってきちんとやってくださるっているんだなということがわかりますので、ぜひともそれを今後も続けていただきたいということです。
以上でございます。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
武田委員。
○武田委員
ありがとうございます。
大変丁寧な御説明をどうもありがとうございます。
幹の整理については皆様と同様、大変わかりやすいと感じましたし、基本的に(1)~(5)について賛成でございます。
その上で、意見を2点申し上げます。
1つ目は、こちらにあります(1)~(5)を軸に、これまで、きょうも幾つかこれはほぼ合意されていますというお話があった項目があると思いますので、この部会で合意された内容については早速改革を進めていくということが望ましいのではないかと思います。
幾つかプロセスについは、意見が分かれた部分があると思いますが、私は原則論を打ち出すことが非常に大事だと思っています。
先ほど山本委員から、社会の今までの考え方の議論がございまして、それは私も大変よくわかるわけでございますが、むしろ、そういった考え方であるとか、マインドセットという言い方もできるかもしれませんが、これからの社会がどう変化していくか考えたとき、おそらく原則論がないとなかなか変わっていかないのではないか、それがこの20年間の結果ではなかったかと思います。したがって、プロセスはプロセスで考えなければいけないのですが、向かうべき方向感、つまり、原則論をまず先に提示して、その上で今から何を進めていくかというアプローチのほうが、私は先ほど山本委員がおっしゃられていた点を踏まえるがゆえ、必要なのではないかと思いました。
つまり、制度改革の原則論を打ち出すことによって、社会の考え方や人々のマインドセット、ひいては就労行動を変えていく。特に大事なのは、おそらくこれから社会に出る若い方の考え方が変わっていくことが非常に重要で、繰り返しになりますが、原則論を打ち出す。今回はそれが非常に重要ではないかと思います。
2点目でございますが、こちらの項目の(1)~(5)は実は相互に影響していると思いますけれども、この中で(5)が特に(1)~(4)全てに関係しているわけですが、スピード感は非常に重要だと思います。
今回の年金財政の結果で、これは何度も申し上げてきましたが、一番重要なことは労働参加が進むことでございます。前回も申し上げたとおり、人手不足の影響は既にマクロ経済に影響が出ております。前回、御紹介した日銀の短観では、製造業、非製造業、それから、大企業だけではなくて中小企業、中堅企業にもその影響が出ております。また、私が地方に講演などで伺いまして、地元の方とお話をしても、この1~2年で、この点を指摘される方が非常に増えているという状況がございます。
したがって、ここのまとめに挙がっている点で、就労インセンティブにつながる部分については、特にスピード感を持って対応しなければ、経済にも悪影響を及ぼすと思います。持続的な成長を実現する、それが年金財政の持続性にもつながるには、ここが頑張りどきではないかと思います。
皆様もおっしゃられていたとおり、確かに丁寧な説明というのは非常に重要ですけれども、スピード感を持って改革を進めつつ、その内容を丁寧に説明していけばよいわけで、そこは両立すると考えております。
2022年に団塊世代の方が75歳以上に入り出しますので、正直、あと7年しかございません。これに間に合わせるには、今からスピード感を持って改革の方向性を打ち出し、その間、時間をかけてプロセスを進めていくということではないかと思います。
以上です。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
米澤委員、何かございますか。
○米澤委員
特に結構でございます。
○神野部会長
ほかにあればどうぞ。
○出口委員
すごくいい意見を皆さん、言っておられて、これは本当に枝葉の話なのですけれども、スピード感を持ってやっていくということであれば、例えば多分これが終わったら、プレスの方へのレクがあるのだと思いますが、そのときに事務局から、この5つの方針は決まりましたとか、これにそってやっていくとか、スピード感ある説明をしていただいて、それはメディアの方も含めて、このような今の状況でこういう思いに収束したのだということを頑張って書いていただければ、大変ありがたいと思います。
もちろん、時間がかかることはわかっていますが、例えば花井委員からも5.8万円が絶対だとか、あるいは、ほかの委員の方からも、2の(2)が基本なのでという意見が多く寄せられたので、被用者保険の適用拡大については2の(2)を目指しますと、そこまで言い切っていただくぐらいのスピード感を持って進めていただけたらすごくうれしいなと思いました。
枝葉の話ですけれども、以上です。
○神野部会長
ありがとうございます。
山本委員、どうぞ。
○山本委員
時間をかけずに。ちょっと1つだけ言い忘れたことがございましたのは、これらの改革が進んだ場合の運用コストの問題について、背番号制が一時はかなり喧伝されたわけですが、ここのところに来て、あまり話題に出ないような気もいたします。こうやって年金の適用対象が広がったり、網の目が広がれば広がるほど制度が複雑化し、運用コストは大きくなることをちょっと懸念いたしましたので、その辺の配慮もしていただければ良いかなという意見でございます。
○神野部会長
何かコメントありますか。
○年金局長
今、日本年金機構がシステムの最適化の作業に入っています。実は、日本年金機構のコンピューターシステムは日本最大のシステムです。都市銀行間のATMの総合乗り入れのシステムがありますが、あれよりもはるかに大きいシステム。というのは、向こうはお金の出し入れしかしませんが、我が方は被保険者の適用管理、徴収、給付、お金をもらう、出すだけではなくて管理も全部しますので、非常に大きなシステムです。大きいだけに、動かすのにすごく時間がかかります。システム変更は非常に大変です。
その意味で言いますと、先ほどからありますように、制度がシンプルであることは、国民にとってもそうなのですが、オペレーションする側にとっても非常に重要で、例えば遺族年金とか、障害年金とか、非常に細かい基準をつくって、非常に細かいケース分けできめの細かい給付設計をするようにどうしても制度はつくるのですが、これは非常に現場には負荷がかかっているということがあって、その意味でいうと、本当はシンプルな制度のほうがいいことはいいということが1つあります。
ただ、一方で、年金は最後は一人一人の方の給付の額が問題になりますので、この人が10万で、この人が12万で、何で2万違うのという話が常にありますもので、その意味では非常に個別に状況を見ながら給付設計をする。基本の幾ら保険料を払って幾らもらうという設計は同じなのですが、個別の条件によって、例えば年金分割などもそうなのですが、あれはシステム的には分割するのはものすごく大変なのです。それは1つあります。
もう一つは、先ほどの話に関係するのですが、一度ある方向でものを考えて制度設計をつくった場合に、後で手戻しになる。あるいは、後で考え方を変える。例えば基本的には一人一人で管理をする、世帯単位から個人単位へという設計をして、システムを組んだ後で、もう一度世帯単位の設計で給付をしろとなると、ものすごく制度に負荷がかかります。その意味で言うと、きょうも御議論ありましたように、大きな方針をきちんと決めて、この方向で動いていくという形で、制度の考え方が整理されることは、システム設計や事務コストにも当然反映するということになります。
年金は常にそういう大きいシステムを背中にしょっているということを我々は考えながら議論させていただいていまして、事務方の話なのであまり申し上げないのですが、実は、年金というのはシンプルなのですが、すごく大きなシステムで動いているということでございます。
○神野部会長
あと、よろしいですか。
ほかに御意見がなければ、どうもありがとうございました。大変生産的な御議論を頂戴いたしまして、少なくともこのおまとめいただいたこれまでの議論の整理に基づいて、次のステップの作業を進めるということについては、御了解をいただいたと思っております。
これで第1番目の議題を終了させていただいて、次の第2番目の議題「基本ポートフォリオの変更について」に入りたいと思います。
冒頭、御了解いただきましたように、本日はGPIFの清水室長に御出席いただいておりますので、清水室長のほうから御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
今、御紹介いただきました、年金積立金管理運用独立行政法人調査室の清水でございます。
ただいまから、私のほうから資料2に基づきまして、私どもの基本ポートフォリオの変更について御説明したいと思います。
この資料でございますけれども、10月31日に私どもが厚生労働省に認可をいただきまして、同日付で変更したということでございますが、これは、そのときにあわせて公表した資料ということで御理解いただければということでございます。
早速御説明に入らせていただきます。
1ページ、2ページ目が概要となっております。
まず、1ページ目「概要(1)」でございますけれども、私どもは、昨年来、平成27年度、つまり来年4月からの第3期中期計画に向けて、基本ポートフォリオの検討を始めてきていたということでございます。その後、本年6月、年金財政検証、新たな財政検証が公表されたということで、それを受けた形で本格的な作業を進めてきたということでございます。
一方、その間、日本経済につきましては長年続いたデフレからの転換といった節目にあるということでございますし、また、厚生労働省のほうからも基本ポートフォリオについて前倒しという御要請もいただいたということに照らしまして、長期的な経済環境の変化に速やかに対応する、こういう観点から来年の4月を待たず、この第2期の中期計画における基本ポートフォリオを変更したということでございます。
具体的な検討でございますけれども、私どもの、厚生労働大臣が任命する金融・経済の専門家で構成される運用委員会におきまして、本委員会といたしましては6月以降7回、その下に設けさせていただきました検討作業班では6回、計13回にわたる審議を受けまして、最後、議決をいただきまして、理事長から大臣宛てに認可申請を行って、10月末付で認可を受けて、同日施行したということでございます。
なお、今回の変更にあわせて、運用委員会から理事長に対しまして、1ページ目の下に書いてございますようなガバナンス体制の強化について建議があったということでございまして、1つは「内部統制の強化」ということで、運用委員会のもとにガバナンス会議を設置いたしまして、そのもとでいわゆる投資原則、行動規範を策定する。策定後はその遵守状況を監視するということ、また、内部的にもコンプライアンス・オフィサーを任命するということでございます。
また「リスク管理体制の強化」といたしまして、マクロ経済分析あるいは市場予測に関する体制の強化、さらには運用資産と年金給付の両面を一体的に分析するシステムの導入、あとはポートフォリオ全体のリスク量など、複線的に行う基本ポートフォリオのリスク管理の強化、さらには専門人材の強化といった内容でございます。
なお、私どもはポートを変えたわけでございますけれども、当然、マクロ経済や市場の動向を今後も引き続き注視しつつ、今回設定した長期的な前提に変化があるかないか、これを注視するということでございまして、必要に応じて見直しを検討するといった内容でございます。
次のページが具体的なポートフォリオの変更でございまして「変更前」は上に書いてございますとおり、国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%、短期資産5%といったポートフォリオを、この下の「変更後」で35%、25%、15%、25%と言う形のポートフォリオに変更したということでございまして、あわせて、乖離許容幅はこの幅を超えた場合にはリバランスをしなければいけないというルールの部分でございますけれども、これについてもごらんいただいたような形で変更したということでございます。
なお、上と下を見比べていただきますと、短期資産、従来は5%と書いてございます。この5%でございますが、そもそも運用効率という観点から、短期資産というのは利回りが低いわけでございますのでなるべく持たないほうがいいという観点から、今回のポートフォリオにおきましては、短期資産はあえてここには記載せずに、具体的にはこの4資産の乖離許容幅の範囲内で実際に運用管理をするといった趣旨でございます。
なお、注に書いてございますけれども、1つはオルタナティブ資産の扱いにつきまして、今回、明記させていただいたということでございまして、このオルタナティブ資産につきましては、運用体制の整備に伴い管理運用するということにしておりまして、例えばインフラ投資につきましては、この2月末でございますが、カナダの公的年金との共同投資という形で着手したということでございますけれども、その他、プライベートエクイティあるいは不動産、その他運用委員会の議を経て決定するものにつきまして、その上限として全資産の5%といった形で明記をさせていただいてございます。
また、私どもはこの基本ポートフォリオにつきましては、これまで中心線をなるべく維持するような運用を基本に考えてきたということでございますけれども、昨今の経済環境や市場環境の変化が激しい状況を踏まえると、市場環境の適切な見通しを踏まえて、若干そこから離れた運用をすることも、運用の効率性の観点から意味があるということで、それができる旨を明記させていただいたところでございまして、ただ、そのときには、そういった見通しについて確信度が高い場合に限るということをあわせて書いてございます。
次の3ページからは詳細の御説明となります。
3ページ目につきましては、私どものポートの前提となっています、まさに年金の財政検証の概要を簡単に書いてあるということでございまして、特に右下の図でございますが、今回の財政検証におきましては、足元で2つのシナリオ、それ以降も含めますとケースAからケースHの8つのシナリオが示されている。こういうものに照らして我々はどういうポートフォリオをつくるかということを、運用委員会も含めて議論をしてきたということございます。
そういう中で、4ページ目以降でございまして、私どもは独法ということでございますので、まずは、厚生労働大臣のほうから中期目標をいただきまして、それに沿う形でポートフォリオをつくり、それを中期計画の中に記載するという形で認可をいただくことになっておるわけでございます。
4ページ目が中期目標ということでございまして、 3つ書いてございます。
1つは、保険給付に必要な流動性を確保しつつ、必要となる実質的な運用利回り、これは運用利回りから名目賃金上昇率を引き算したものでございますが、これについて1.7%。この1.7%につきましては、3ページ目のシナリオに照らしますと、ちょうど真ん中のケースEの見通しが想定している運用利回りと理解しておるわけでございますが、1.7%を最低限のリスクで確保すること、これがまず1点目の目標、要請と理解しております。
2番目でございます。これにつきましては、専門的な知見や内外の経済動向を考慮して、フォワードルッキングなリスク分析を踏まえて長期的な観点から設定する。特に、フォワードルッキングなリスク分析につきましては、今回、新たに私どもに与えられたマンデートの1つと理解しているところでございます。
また、3番目がリスクに関係することでございまして、1つは名目賃金上昇率からの下振れリスクが全額国内債券運用の場合を超えない。ここにつきましても、私どもとしては新たに1つのリスクの考え方として示されたと理解しているわけでございますけれども、そのほかにも、株式等が想定よりも下振れ確率が大きい、あるいは予定された積立金額を下回る可能性の大きさを適切に評価し、リスクシナリオ等による検証について、複数のシナリオで実施するなどの充実を行う。
大まかにこの3点の部分を私どもは運用目標としていただいたということでございます。
今回、それに対しまして、私どもの対応といたしましてまとめさせていただきましたのは、5ページでございます。
まず、1点目、長期的な観点、従来も私どもは長期的な観点から基本ポートフォリオを策定してきたわけでございますけれども、従来は長期均衡状態のみを前提としてきた。これは具体的にはどういうことかと申しますと、国内債券の期待リターンにつきましては、例えば長期均衡ですから、財政検証のシナリオで申しますと、当面は内閣府のシナリオ、従来の低金利からだんだん金利が上がっていくというシナリオを想定しているわけでございますが、それ以降の長期均衡状態の金利に着目してきたということでございます。
今回、先ほどのフォワードルッキングなリスク分析を踏まえといった趣旨に照らして、財政検証と整合性をとって、足元から向こう10年間の金利上昇シナリオを、国内債券のリターンに反映させたということでございます。
2点目が、リスクの部分でございまして、これは与えられた目標どおり、全額国内債券運用の場合に積立金の実質的な価値を維持することができなくなる確率、すなわち賃金上昇率からの下振れリスク、全額国内債券運用の場合の下振れリスクを超えないかどうか、こういう意味におけるいわゆるリスク許容度でして、新たなポートフォリオがリスク許容度を満たしているかどうかというチェックを行ったということでございますし、さらに、賃金上昇率を下回った場合の平均的な不足額も考慮したということでございます。
3点目につきましては、先ほどごらんいただいた計8つの財政検証のシナリオのうち、我々は何を踏まえるかということでございまして、今回、私どもは8つ全部ではかなり複雑になるということもございますので、3ページ目に戻っていただきますと、ケースE、8つのシナリオのうちのちょうど真ん中とケースG、この2つのシナリオを念頭に、両方のシナリオで成り立ち得るようなポートフォリオをつくることを考えたということでございます。
ちなみに、ケースEが想定している長期均衡状態の長期金利の水準が3.9%、また、ケースGがこの場合は2.8%となってございます。
次は、そういった中で、実際にどういう計算を行っていったとかということが6ページ以降でございます。
まず「想定運用期間」でございますけれども、右上の図でございますが、これは今後100年間の積立金の推移のイメージ図でございます。これを見ていただくと、現在、私どもはキャッシュアウトステージということで、実際に資産を売ってキャッシュ化して、制度のほうにお渡しするということを続けてきているわけでございますが、そういう中で、当面は積立金の水準は下がる。ただ、10年間ぐらいたちますとまたキャッシュインのステージに入って、大体2040年ぐらいにピークアウトするという形になります。その後はずっと最後100年後に大体積立金の水準が給付費1年分と、それが想定されている財政見通しと理解しているところでございます。
そういう中で、私どもの今回の運用の想定運用期間を設定するに当たっては、やはりピークアウトした後、これは常にキャッシュアウトが出てくると、こういったときの運用と、それまで積み立て段階であるときの運用というのはちょっと違うだろうと、こういうことから、今回、ピークアウトするまでの25年間を想定運用期間にしたということでございます。
ただ、一方で、当面のキャッシュアウトにつきましては、まさに年金給付に支障が出ないようにする必要があるわけでございますので、(2)の部分につきましては、国内債券の中のある特定のファンド、キャッシュアウト等対応ファンドという形、あるいは財投債もございますが、こういったものの持ち切り運用の利金と償還金で、ほぼ当面のキャッシュアウトは賄えるような形で、これの積み増しを行うという形で対応させていただくということでございます。
次の7ページ以降が具体的な「リターンの設定」でございます。
先ほど申し上げたとおり、ケースEに該当する「経済中位ケース」では、実質長期金利で2.7%、名目ベースで3.9%。「市場基準ケース」、これは名目長期金利の2.8%という水準がちょうど現行のマーケットのいわゆるフォワード・レート・ベースで見た、将来10年後、20年後の10年金利の水準に大体相当するということで「市場基準ケース」というネーミングをさせていただいているわけでございますけれども、この2つを想定する中で、先ほど申し上げたとおり、フォワードルッキングなリスク分析という観点から、金利上昇に伴うキャピタルロスの部分を、今後25年間の国内債券のリターンに反映させたということでございます。
こういった結果、ごらんいただきたいのは下の2つの箱がございます。まず、一番下の箱がこういった形で今回、設定させていただいた期待リターンでございます。これを見ていただきますと、国内債券のリターンでございますけれども、経済中位ケース、市場基準ケースで2.6%、2.0%という数字になっているわけでございますが、長期の均衡金利がそれぞれ3.9%、2.8%に対して足元10年間のキャピタルロスを反映させると、こういった水準まで落ちると御理解いただければということでございます。
一方で、財政検証上想定されています賃金上昇率、25年平均が一番右でございますけれども2.8%、2.1%でございまして、こういったものに加えて、国内株、外債、外国株式、それぞれごらんいただくような形でのリターンを設定させていただいている。
それに対しますと、こういう中で、私どもは賃金に対して1.7%アウトパフォームするポートフォリオをつくる。これが我々のマンデートになるわけでございますが、そこで、この上の箱に示す期待リターンは、それぞれの資産が賃金上昇率に対してどれだけアルファをとれるのか。アウトパフォームするのか。このスプレッドの部分を示したものでございます。
見ていただきますと、国内債券につきましては、例えば経済中位ケースだと2.6%に対して、賃金上昇率2.8%ございますので、国内債券では賃金上昇率をカバーできない。結果的にはマイナス0.2%がスプレッドという形になります。また、市場基準ケースではマイナス0.1%。
一方で、リスク性資産と言われています国内株式、外国債券、外国株式につきましては、ごらんのような形でそれぞれアウトパフォームする。
我々は、これらの組み合わせの中で賃金プラス1.7%を確保するようなポートフォリオをつくらなければいけないというのが基本的な考え方になるわけでございますので、そういたしますと、どうしても従来よりは国内債券の割合を下げて、その分リスク性資産の割合を上げることが必要になってくる。これが先ほどごらんいただいたようなポートフォリオ、結構大きな変更になるわけでございましたが、こういった変更の基本的なロジックであると御理解いただければということでございます。
次の8ページ、実際の最適化に当たっては、ここにお示ししたような形でリスクなり、あるいは相関係数を設定するということでございます。これは我々は従来までは過去40年間のデータを使っていたわけでございますけれども、もはやバブル崩壊後、崩壊前と崩壊後ではかなり構造も違うだろうということで、今回はバブル崩壊後ということで、過去20年という形で統一させていただいているということでございます。
そういう中で、9ページ目、必要な積立金を確保しつつ、下振れリスクを最小化する観点から、いわゆる賃金プラス1.7%を満たして、かつ、最もリスクの小さいポートフォリオを選定したということでございます。
この場合、注に書いてございますけれども、運用目標自体は1.7%なわけでございますが、そもそも短期資産については、基本ポートフォリオ上には実際には載せなかった。ただ、例えばキャッシュアウトをするに当たって摩擦的にある程度のキャッシュは当然必要になってくる。大体推計で2%ぐらい必要だろうということがわかりましたので、2%のキャッシュを保有することによるリターンの減少分を1.7%にプラスする形で実際の最適化を行っているところでございます。
こういう中で、先ほどごらんいただいたリスク・リターン特性に基づいて、まずは先ほどの条件、つまり、1.7%をクリアして、かつ、リスクが最小になる、こういう意味での最適化を5%刻みで行ったということでございます。この際、従来我々は、幾つか制約条件を設けておりました。特に、ホームカントリーバイアスと言われている、国内株式を外国株式以上に持つといった制約条件が従来はあったわけでございますが、今回は効率性を追求するという観点から、これについては撤廃するということでございます。
ただし、外国投資におきまして、従来設定してきました外国株式を外国債券以上に持つ、この制約条件につきましては、外への投資については基本的に外の国の経済成長をとるという趣旨であれば株式投資のほうがいいだろうという観点で引き続き維持をしたということでございます。
そういう中で、実際に5%刻みのポートフォリオとして最もリスクの小さい、このリスクについては、先ほどごらんいただいた部分でございますけれども、条件付平均不足率の部分をリスクの尺度にして最小化を図ったところ、先ほどの5%刻みのポートが出てきたということでございますが、その後、さらに1%刻みのポート、つまり、35%をベースとしてプラスマイナス1%のポートも検討したのですが、結果的には5%刻みのポートが一番ベストだという結論で、先ほどのような形になったということでございます。
新ポートについて、先ほどのリスクの観点から整理したのが9ページの下の表でございます。このうち「下方確率」と表側に書いてございます部分が、賃金に対して負ける確率といいますか、下方確率になるわけでございますが、参考に、下の段でございますが、全額国内債券ポートの場合と書いてございますが、この場合は経済中位ケース、市場基準ケースとも賃金上昇率に対する下振れリスクは51.7%、50.8%という形になってございますが、今回の新ポートフォリオにつきましては、それが44%程度におさまっているということでございます。
ただ、一方で、条件付平均不足率あるいは標準偏差を見ていただきますと、全額国内債券ポートフォリオよりは数字としては上がっているということになるわけでございますけれども、一方、全額国内債券ポートフォリオでは実質的なリターンということで見ていただきますとマイナスでございますので、これは運用目標にはるか届かないということ。一方で、今回の新ポートにつきましては、上のような形で運用目標をクリアする、こういったポートになっていると御理解いただければということでございます。
10ページ目が、これまで2つのリスク概念、1つは賃金上昇率を下回る確率、もう一つは条件付平均不足率と申し上げましたけれども、この概念図を示したということでございます。
11ページ目以降、そういう中で、今回、新ポートにつきまして、リスクの検証ということで、基本ポートフォリオで長期間運用した場合に、年金財政が予定している積立金を確保できないリスクがどの程度あるのか。これも中期目標に明示されているわけでございますので、これの検証を行ったということでございます。これを先ほどの経済中位ケースと市場基準ケースの2つのケースで実際にシミュレーションを行った結果が次の12ページでございます。
これがそのグラフになっているわけでございます。特に上の段の経済中位ケースでございますけれども、真ん中の太線が財政検証上の予定積立金額、私どもは今回、25年ということでございますので、ちょうど後ろが最後の2039年度末、特にここに着目していただきますと、財政計画上の予定積立金額180兆に対しまして、これはシミュレーションでございますので、ばらつきで、上から、いいところから4分の1、これが75%タイル。中央値がちょうど真ん中のシナリオ、25%タイルが下から、悪いところから4分の1の部分でございますが、今回の新ポートでございますと、大体財政計画上の予定積立金額以下になる確率は大体40%ぐらいで、中央値で言えばそこを上回っているということでございますし、また、市場基準ケースでございますと、そこが先ほど申し上げた数字が25%という形でございます。
一方で、赤のラインが全額国内債券並みの部分でございますけれども、上下両方とも予定積立金額には明らかに足りないという結果となったということでございます。
13ページ目以降が今回のポートフォリオの見直しに付随して、幾つか改善を行った点を書いてございます。
「(1)オルタナティブ資産」については、先ほど御説明したとおりでございますので、割愛させていただきます。
「(2)資産横断的な運用」、これは先ほど見ていただいたとおり、国内株式と外国株式、国内債券と外国債券、これは別のカテゴリーで基本ポートフォリオ上は構成されているわけでございますけれども、今回、国内株をまとめて運用するグローバルマンデートみたいなものも考えようということが(2)でございます。
「(3)外国株式のベンチマークの変更」でございますが、私どもは従来は、外国株式のベンチマークについては「MSCIKOKUSAI」という先進国だけに投資をするインデックスを使ってございましたが、これをいわゆる新興国まで広げたということでございます。なお、広げることによって、オペレーションについては既に完了しているということを御報告させていただければと思います。
14ページ(1)(2)につきましては、先ほど御説明したとおりでございますし「(3)移行時の乖離許容幅の取扱い」につきましては、当然、今回、新ポートへの移行に伴いまして、一定限度は、乖離許容幅をはみ出す部分もございますので、これについては特例的に許容するという扱いをするということでございます。
15ページ目以降は「ガバナンス体制の強化」でございます。これにつきましては、おおよそ先ほどの概要のほうで御説明したとおりでございます。
その中で、16ページ、17ページでございますけれども、その中でも既に内部統制の強化につきましてはコンプライアンス・オフィサーの任命、あるいはリスク管理体制の強化については例えばマクロ経済に関するコンサルタントの採用、システムの導入、こういったものについては既に実施済みでございますし、専門人材等については現在、給与体系の見直しを進めておるということでございます。
以上、わたしからの説明とさせていただきます。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
清水室長から「基本ポートフォリオの変更について」の御説明をいただきました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見がございましたら頂戴したいと思います。いかがでございましょうか。
駒村委員、どうぞ。
○駒村委員
このセッションの議論はどういう切り口からか、幾つかあると思うので、一気にやるとたくさん出てしまうので、とりあえず清水さんの今の御説明に関係する部分だけ教えてもらいたいことがあるのですが、運用委員会の議事録というのは公表されているものなのでしょうか。あるいは、今後、公表する予定があるのでしょうか。
それは、おそらく、当然マーケットに影響を与えるものだろうと思いますので、オープンにはできない時期やタイミングもあるとは思いますが、どういう議論が行われたのか知ることはできるのかということ。
それから、骨部分、本当に数字が入っている部分は数ページで、あとは考え方が入ったメモになっていますけれども、いろいろ細かい、例えばシミュレーションでは乱数はどのように発生させたのか、細かいテクニカルな部分を第三者的にチェックするためには、もう少しテクニカルペーパーみたいなものもあったほうがいいような気がするのですが、そういうものは用意されていないのかということ。
それから、本当はもっとたくさんあるのですけれども、私ばかりいろいろ聞くのもあれなので、一番気になったところなのですが、GPIFの運用がどうなるかというのは、国民に対して大事なメッセージになると思うのです。ただ、運用が仮に大きく悪くなったからといって、年金制度が直ちに破綻するようなものではないというのは確認したい。積立金の運用と積立金の取り崩しで100年間に入ってくるお金はEケースで15~16%程度だろうと思いますので、それによって直ちに年金制度が破綻するようなことだと国民にとってもらってはいけないと思います。
一方で、国民の年金に対する信頼にも運用の成果は影響を与えてくると思いますので、GPIFとしてはどのぐらいの幅でリスクがあると見ているのかをもう少し丁寧に示したほうがいいのではないかと思います。
例えば12ページ、上下のケースで振れ幅25%のところ、50%を中心に25%のところしか示していませんが、もうちょっと上下幅を見せて、例えば90%、10%というような幅まで数字を示すことはできないのか。悪い場合だとどのぐらい落ちるのか。そのことは既に織り込み済みなのだということを示したほうがいいのではないかと思いまして、もうちょっと悪いケースやもっと良いケースの幅の大きなものも2019年から2039年、中位、基準ケースともに示すことできないか、その辺をお願いできればと思います。
○神野部会長
よろしいですか。
○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
それでは、今の御質問について答えさせていただきます。
まず、議事録関係でございますけれども、完全な議事録につきましては、ルールといたしましては7年後に完全公開という扱いになってございますので、そのように御理解いただければと思います。
あともう一つは別途議事要旨については、運用委員会終了後、少し経ってから公表するという形で従来やってきたのですけれども、今回、基本ポートフォリオの議論に入ると、要旨とはいえ、議論自体がかなり市場から憶測をされて、逆に言えば、市場に影響を与えるということがございますので、私どもの扱いとしましては、とりあえずポートフォリオが終了するまではとりあえず議事要旨は伏せておこうという形で、これは運用委員会も含めてそういう取り組みにさせていただきました。
現在、その準備をしているところでございまして、あともう少しでこの議事要旨につきましては、今、いつというのは申し上げられないのですが、そう遠くない将来、きちんとした形で公開させていただくことを考えております。
あと、ディテール、第三者ペーパーということでございまして、私ども、実は、カナダの年金でございますとか、オランダとか、いろいろなところで実際、彼らがどういう形でポートフォリオをつくっているのかについては、ピアな関係ということで、かなり深いところまでお互いに情報交換している部分はあるのですが、ただ、どこの年金も、ディテールについてはほとんど公開しているところはないです。多分、私どもの情報開示というのは世界の年金に照らしてもかなり進んでいるというか、四半期ごとの運用状況の報告含めてかなりディスクロは進んでいると理解しています。
ただ、今、御指摘いただいたとおり、先ほどの10%、90%をどうするかといったことについては、当然、被保険者、受給者の方々からすれば本当に重要な、重大な関心事だということもございますので、そういうことについて、米澤先生も武田委員もいらっしゃいますが、運用委員会のほうでそこらへんについては1回議論をするような機会を検討させていただきたいと思っております。
○神野部会長
あと、いかがでございましょうか。
では、花井委員、小塩委員と行きます。
花井委員。
○花井委員
私は幾つか質問があるのですが、厚労省なのかGPIFなのか、ちょっと自分でもわからないのですが、まず、確認したいのは、財政検証は5年ごとに行う年金財政の健康診断と言われておりますが、財政検証を踏まえて厚労大臣が中期目標をつくり、それをGPIFに対して「これに基づいて運用してほしい」ということで示して、それを達成するためにGPIFが基本ポートフォリオを含む中期計画を立てて実行していくということだと思います。今回、第2期目の途中で変更したと1ページ目の一番上にあるのですが、そうすると、第3期は来年の4月から始まると思うのですが、そのときに財政検証はよもやしないとは思いますが、位置づけがよくわかりません。
位置づけがわからないというのは、一番下で「年金財政も踏まえて定期的に検証を行い、必要に応じて見直しを検討します」と断言しているのですが、ポートフォリオの変更というのは、財政検証と全く関係なく定期的に検討を行って、GPIFが見直すことが可能なのかということが質問です。
とりあえずそこだけの質問でお願いします。
○神野部会長
森参事官。
○大臣官房参事官(資金運用担当)
制度のことですので、厚生労働省のほうから答えさせていただきます。
先生おっしゃるとおり、年金積立金の運用はまさに年金給付のために行っておるのでございまして、5年に1度、財政検証を踏まえまして、厚生労働大臣のほうで運用目標等を与えまして見直す。これが基本でございます。
ただ、年金の運用は市場で行っていますので、その間、経済なり金融の状況は変わり得るのでございます。
なので、例えば私どもは第2期におきましても、会計検査院のほうから定期的にポートフォリオにつきましては検証しまして、必要があれば見直すという形でお話しいただいていますし、今の中期目標の中でも、例えば経済環境等変わりましたら見直すという形になっておりますので、GPIFのほうにおきまして、運用の環境が長期的に見て変わっているということであれば、変えていただいたほうが被保険者のために適切な運用ということで考えております。
○花井委員
すぐ終わります。
今の回答なのですが、「経済環境の変化」と1つ目の○にもあるのですが、こういう大きな制度の変更は1つのルールに基づいて行われるべきだろうし、そのルールは大切にしなければいけないと私は考えています。そういうことが前提なのですが、3ページの真ん中のところに、「少なくとも5年ごとに」財政検証を行うと書いてあるわけです。財政再計算の時代から5年ごとに行われてきたと思っていまして、法律事項ではないとは伺っておりますが、そういうルールのもとでやってきたとすれば、「長期的な経済環境の変化」とは一体どういう場合を変化というのか、ということについてある程度合意しておく必要があるのではないかと思います。
れから、少なくとも5年ごとでやってきたわけですが、その間にも経済の変化があれば見直しを検討しますとあるわけですけれども、そうしますと、一体、財政検証はどういう位置づけになってくるのでしょうか。
今回、途中で見直して、来年の4月からまた第3期目の中期目標が出てくると思うのですが、そのときの対応というのは、今年行った財政検証をもとにして4月からの新しい中期計画を立てていくのか、それとも、改めて財政検証を行ってやっていくのか、あるいは大きな変化がないので今のままでいくのか、いろいろな選択肢があると思うのです。また、その変更に当たったときの環境の変化ですとか、そういったときの中身は何なのかということについて合意しておく必要があるのではないかと思います。したがいまして、経済環境の変化というのは一体どういう変化なのかということをわかる範囲で御説明いただければと思います。
○神野部会長
どうぞ。
○出口委員
今の御質問に対して関連質問ですけれども、私の理解が間違っていたら教えていただきたいのですが、今回、厚生労働省のほうから、4ページにございます「中期目標の変更」の中、これは私の理解では、今回の財政検証を踏まえて大臣が指示されたと理解していたのですが、まず、それでいいのかどうかということが1点。
もし、今回の大臣の指示が財政検証を踏まえてなされたものであれば、先ほどあった第3期中期計画というのは、私の理解では今回、設定した長期的な前提に変化がない、市場環境に余り変化がなければ5年後の財政検証まで大臣からは新しい指示が出ないと私は理解していたのです。ですから、大臣が5年ごとに大きい指示をなさる。ただ、運用はマーケットでやっているので、マーケットでいろんなことがあれば見直すこともありますよということで、そうであれば、第3期中期計画についてはマーケットの変更がなければこのとおりいくのではないかと私は理解していたのですが、その点もあわせて教えていただければ大変ありがたいと思います。
○神野部会長
これは局長、お願いします。
○年金局長
私のほうからお答えいたします。
釈迦に説法で恐縮ですけれども、まず、年金制度は、御案内のように、経済、人口、労働等、年金制度の基本的な要素について、特に人口が5年ごとに見直しされるということもありますので、少なくとも5年に1度財政検証を行うとなっているわけです。実は、少なくとも5年に1度なので、途中でやっていけないかというと、いけないことはないわけです。ただ、基本的な要素が5年ごとで変わっているので、その途中でやったことは、たしかないと思いますが、基本的に5年に1度となっています。
運用に関しても、運用目標を与えるわけですが、これは当然、財政検証の数字でセットされた経済前提と連動しますので、基本的にGPIFのポートフォリオの見直し、つまり、運用の基本的な見直しも財政検証を踏まえて5年ごとに行われる。こうなっているので、GPIFは独立行政法人として5年ごとの計画で事業を運用するという形になっています。そのとおりです。
ここで書いてあることは、それはそうですが、今、まさに出口先生がおっしゃったように、それもある意味では少なくとも5年に1度で、5年の中期計画の途中で市場環境の変化であるとか、あるいはGPIFが運用しているものとして、ポートフォリオの変更の必要があると考えれば、それは自らの中期計画の変更という形で、途中でポートフォリオを見直すことは妨げられないことになっています。
なので、GPIF側は必要があれば変更するという形になるということなので、基本は5年に1度ですが、その間に経済環境の変化やいろんな諸要素があれば、例えば途中で大きな経済変動があれば、ポートを維持していることはかえって年金財政にマイナスになることになりますから、そこは変更することになります。
さらに言うと、実はポートフォリオには乖離許容幅というものがついていて、これはその範囲内で日々日常の市場環境の変動でありますとか、そういうものに対しては市場の中で対応する。逆に言えば、それで対応できないような大きな変動があれば、ポート本体を見直すことになるという構造になります。
今回のポートフォリオの見直しは、非常に簡単に言うと、建て付けとしては第2期の中期計画の5年間の財政検証に基づいて行われるポートフォリオの見直しを前倒しした。本来、3月、4月で切りかえるものを4カ月ほど前倒ししたという建て付けになっています。基本的に、大臣の指示の仕方も、非常に経済変動が激しいので中期計画の終了を待たずに速やかな変更を検討しなさいという指示ですから、それを踏まえてGPIFは変更したということなので、その意味で言うと、4月のものを前倒ししていると、建て付けはそうなります。
したがって、基本的には今回のポートフォリオの変更は、4月に改めてもう一度変更するということは特段の事情がない限り、おそらく行われることはない。もちろん、先ほど申し上げたように、この間また大きな経済変動があれば、それは5年タームの変動とは別の随時の変動を行うことは当然あり得ますが、建て付けとしては前倒しをしてポートの見直しをしたというものだと思って理解してください。
○神野部会長
関連してというか、小塩委員とかも待っていらっしゃる委員もいるのですが。
どうぞ。
○花井委員
1つだけです。
経済的な変動というのは多分リーマンショックみたいに突然起こりますから、どの程度の経済的な変動のときにそれが可能なのかとか、あるいは全くGPIFの単独の判断でできるものなのか、そのあたりを教えていただきたいと思います。
○年金局長
それは抽象的に申し上げれば、現在のポートフォリオ及び乖離許容幅の中で対応できないようなことが起こるということを合理的に、もちろんGPIFの判断もありますし、私どものほうで、あるいは場合によってはこの審議会の中でそのようなことになるかもしれませんけれども、基本的には今、与えられているフレームワークの中で対応できないような変動があれば、それは中期計画のそのものの変更を考えるということになると思います。
○神野部会長
関連してですか。
どうぞ。
○米澤委員
今のことに関連しまして、私も3~4年間は離れていましたけれども、その前も運用委員長をやっていましたので、たまたまリーマンショックのときもやっておりました。
リーマンショックがない場合も、実は毎年経済環境が変わっているかどうかチェックさせていただいております。その結果、今まで動いていなかったというのは、動かすほどの変更ではないないということで処理させていただいたわけです。
さすがにリーマンショックのときは、相当中で議論させていただきました。結論としては、よくわからないという言葉を言っていいかわかりませんけれども、正直なところ、非常に早い段階でどちらにしたらいいかわからない状況もございました。ただ、相当議論して、その結果、動かさないということにさせていただいたということなので、こうなったら動かすというような明確なものはないのが正直なところですが、いろいろ運用委員会の人を全員集めて知恵を出していただいて、そういうときも変更すべきかどうか、比較的平時なときも変更すべきかどうかということは毎回チェックさせていただいて、その結果として今まで変更してこなかったというのが正直なところでございます。
○神野部会長
小塩委員、どうぞ。
○小塩委員
私はまったく専門外ですので、ぜひ教えていただきたい、テクニカルな質問がございますので、幾つか申し上げます。
1つは、9ページでいろいろな数字が書かれてありまして、これについてですが、経済中位ケース、市場基準ケースというのがございますね。スプレッドを1.7%で設定されていたと思うのですけれども、経済中位ケースは経済前提のケースEですので、それはわかるのですが、市場基準ケースはケースGですね。そこでは、スプレッド1.2%だったと思うのです。スプレッドはもちろん高ければ高いほどいいわけですが、経済前提のほうから言わせていただきますと、内生的に決まる数字ですので、ケースGの場合、つまり、市場基準ケースの場合は1.2を想定しないといけないのではないかと思います。それが1番目です。マイナーな質問です。
2番目は、この表そのものについてなのですが、下振れリスクという観点から見ると、基本ポートフォリオのほうが優秀だという御説明でした。確かに下方確率は基本ポートフォリオのほうが低いです。ただ、下振れしてしまったときの振れの大きさを、右のほうにある条件付平均不足率という値で見ると、全額債券にした場合に比べると大きいですね。
ですから、掛け算をやっていいのかどうかわからないですが、両方見ますと、下振れする確率は確かに基本ポートフォリオのほうが低いのですが、下振れしてしまったときの深刻さはむしろ基本ポートフォリオのほうが大きいのではないか。だから、リスクを全額債券にしたときに比べて本当によくなったのか私はわからないです。それを説明していただきたいです。
2つ目は、11ページのところで、2039年時点の目標積立金を下回る確率が経済中位ケースで40%、市場基準ケースで25%といなっています。市場基準ケースで25%と低いのはおそらくスプレッドを1.7%にしているからだと思うのですが、それはともかくとして、40%という数字をどのように評価していいのかわからないです。40%の確率で経済前提の数字が確保できないというのは、運用が悪いというのではないですよ。運用はちゃんと1.7%やっているわけですから。ということは、逆に言うと、経済前提の数字が甘いということを意味しているのかなと思うのです。40%という数字が高いのか低いのかという判断は、私は素人なのでわからないので、もし教えていただければありがたいです。
以上です。
○神野部会長
大きく2点、よろしいですか。
○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
それでは、まず、おっしゃるとおり、ケースGの場合には財政検証上は賃金プラス1.2%というものが想定されていると理解しています。
それに対しまして、私ども、厚生労働省からいただいた、いわゆる賃金プラスアルファのアルファにつきましては1.7%という、そこがスペシフィックに与えられているということでございまして、これは例のこのベースとなっています経済前提の積み立てのあり方の御報告書でございますけれども、そのときの考え方を、私が御説明するのもちょっとあれなのですが、一応ケースAからケースHと8つシナリオがある中で、1.7%の運用を確保すれば、どのケースでも一応クリアできるという考え方のもとに、一番高い1.7%というものを私どもとしてマンデートとしていただいたと、我々としては理解しているということでございます。
あと、下振れリスクの部分でございまして、おっしゃるとおり、9ページの条件付平均不足率の数字を見ていただくと、この数字は当然、全額国内債券の場合のほうが小さくなるのです。ただ、このときのちょうど実質的なリターンに着目していただくと、全額国内債券の場合では、そもそも必要なリターンは満たさない。ですから、これはまさに全額国内債券運用をした場合には、12ページで見ていただきますと、明らかに必要な予定積立金額をかなり下に行くということになるので、それは逆にとれない。
ですから、我々は、マンデートをクリアする、1.7%をクリアする中で、ここの部分に着目したリスクを最小化する、こういう形で最適化の結果、ごらんいただいたようなポートフォリオをつくったと御理解いただければと思います。
あと、40%、25%の評価の話なのですけれども、結局、当然、運用においては、いろんなものが結局確率的なものでございますので、何らかの不確実性は常に伴う。特に、遠い将来の部分についてはかなり伴うということでございます。
そういう中で、平均値の議論というのは、例えば今後の運用利回りの平均を仮に3%と設定して、我々が平均3%のポートフォリオを運用すると、長期的にも短期的にも見た場合には、逆に言えば50%の確率で3%を下回る確率もあるし、上回る確率もあるというのが、確率的に見た部分でございますので、そういう意味からすると、40%というのは中央値が若干上に行っている分だけ、通常の考え方に照らせば、まだ小さくはなっていると、このように捉えることもできるのかなとは思っております。
○神野部会長
清家参考人、手が挙がっていましたか。
○清家参考人(柿木委員代理)
ありがとうございます。
基本ポートの中身について特に申し上げませんが、2つあります。
この決定を踏まえて、GPIFの中で、ガバナンス体制ということで、ガバナンス会議が投資原則と行動規範をつくるということを書かれていらっしゃいますが、行動規範は情報管理の問題とか、利益相反の問題とか、いろいろ国民の皆さんが心配されていることが多々ありますので、早くつくっていただきたい。
他方で、投資原則ですが、これは運用の考え方をおそらく示されるのではないかと思います。この部会の下にあります専門委員会のほうでも、運用のあり方について3月に報告書をまとめられていますし、できれば取りまとめに当たって、年金部会の意見も聞いたほうがいいのではないかと思います。
要は、投資原則が、GPIFが仮に今後運用がうまくいかなかったときだったり、あるいはコストをかけて投資をした場合の言いわけとか自己弁護に使われるようなものであってはいけないと思いますので、そのあたりはぜひ御検討いただきたいのが1点です。
それから、もう一点は、今日まだ御説明いただいておりませんが、検討作業班の関係で御指摘させていただきます。
先ほど制度改革の議論で、皆さん、おおむね合意された5つの論点に絡んで、(2)に将来世代の給付水準の確保への配慮という点がありました。実は、この点に関して、検討作業班のほうで、将来世代の給付を確保するために、年金財政上の求めるリターンをさらに上回る、より積極的な運用を行うべきだと、そういう御指摘があると伺っております。これに関しては、本来は制度改正で対応すべきだということだと思いますので、この点について、検討作業班に参加されている先生方から、ぜひ年金部会のほうとして釘を刺すというか、そういう御指摘をいただいたほうがいいのではないかという点でございます。
以上です。
○神野部会長
森参事官。
○大臣官房参事官(資金運用担当)
まずはGPIFで検討されている投資原則についての考え方でございます。これにつきましては、基本ポートフォリオの公表とともに、GPIFのほうでより国民の皆様に安心したガバナンスでやっているという形で、利息管理なり内部統制の強化ということで発表されたもの取り組みの1つだと考えています。
これにつきましては、今、御指摘ございましたように、そもそも年金積立金については厚生年金保険法とか、中期目標、もしくはこの部会のもとにつくられました専門委員会の報告書と、いろいろ考え方はできていると思いますので、当然、それに基づきまして、ただ、国民の皆様方にどういう運用をしているのだろうということで、今、鋭意GPIFのほうで検討していただいているものだと考えておりますので、決してそれと不整合なものが出てくるということは考えておりませんが、必要に応じては報告させていただく。ここで議論するというのは性格が違うと思いますが、報告させていただくような内容だと思っております。
あと、検討作業班につきましては、この部会と並行的に議論しているものでございまして、鋭意またその結果につきましては、御報告があるかと存じております。
○神野部会長
ほか、いかがでございましょうか。
どうぞ。
○総務課長
今の参事官の補足であります。
検討作業班のほうですが、お手元の参考資料2、3、4が検討作業班の資料で、あと、机上に議事録もつけさせていただいております。委員の御了解をとれましたら、またその議事録を委員の方々にお見せをすることができますので、そういったこともいたしますので、会議はオープンでやっておりますし、またいずれ御報告をし、また御議論いただく場を設けたいと思っておりますので、よろしくお願いします
○神野部会長
よろしいですか。
山口委員、どうぞ。
○山口委員
ありがとうございます。
今、GPIFの清水さんのほうから淡々と御説明がありましたけれども、実は今回のポートフォリオは従来と相当程度違っていると言えると思います。特に、9ページに出ていますように、先ほど小塩先生の御指摘もありましたが、特に標準偏差などで見たら3倍近い大きなリスクをとるポートフォリオになっているわけですので、従来とは大きく変わっているという認識をすべきだと思います。
そういう中で、私、ちょっと気になりますのは、今後、このポートフォリオの管理運営をどうしていくかというところで、数字だけではなくて、質的な面でも少し変わりますよということが書いてあって、従来は乖離許容幅の中心線を意識して運営していたのを、機動的な運用を行いますということで、中心線から外して運営することもありですよということが出ているわけですね。「その際の見通しは決して投機的なものとならず、確度の高いもの」と書いてあるのですが、言葉ではこういうことなのですが、確度の高い見通しとは一体どのようなものかと。将来の見通しについての確率などというものがわかるということは、私はちょっと理解できないのですけれども、そういう厳密なものでないにしても、どういうことを意味しているのかといったことを、もし可能であれば教えていただきたいということ。
もう一つ「移行時の乖離許容幅の取扱い」というのも書いてありまして、きちんと決めている乖離許容幅ですら、移行時に関しては超過することも容認するということですから、せっかくルールがあっても、そのルールがあるようで実はルールがないという話にもなるわけで、もちろん、ルール無視でやるということではなくて、これはなだらかに新しいポートに移していくための1つの考え方だということは理解していますけれども、このあたり、きちっとした内部のルールとか、運営に当たって厳密にやっていかないと、糸の切れた凧みたいにならないようにしておくことが大事だと思っております。もちろん、あまり具体的に説明してくれと言うつもりはないのですが、何かルールがあって、内部的にはそれに基づいてやっているといったことで、ぜひ得心をしたいと思っておりますので、教えていただければと思います。
○神野部会長
何かコメントがありましたら。
森参事官。
○大臣官房参事官(資金運用担当)
前半の確度の高いものとするということは、社会保障審議会の年金部会の専門委員会のほうで出された文書そのままでございますので、私のほうから説明させていただきます。
そのときの議論でいいますと、経済環境とか市場環境の変化は激しいということでございまして、単純にポートフォリオの比率を維持していくということで本当に大丈夫なのか、むしろもっと機動的な運用を考えたほうがいいのではないかということで提案された。
ただし、やはり先生おっしゃるとおり、市場の見通しにつきまして、投機的なものであってはいけないということでございまして、それはある程度調査能力なりしっかりとした識見に基づいて、もし方向性を出すのだったら方向性を出すだろうということで、確度の高いものとされたということです。この報告書につきましては、GPIFにおきまして、調査能力の向上とか、より専門家ということを言われておりまして、先ほどのGPIFのほうで説明がありましたが、今回、基本ポートフォリオが出されたときの対応としまして、マクロ経済に関するところの調査機能の向上とかがあったのも、その考え方に基づくものだと考えております。
○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
あと、乖離許容幅の部分でございまして、今回、私どものポートフォリオを公表した後に一番多くいただく質問が、いつまでに移行するのだということでございまして、ただ、現実問題としてこの乖離許容幅を超えているところがあるのは事実でございます。
そういう中で、どういう形で移行していくかについては、我々内部ではきっちりした議論を実はしているのですけれども、何分投資行動自体が、要はマーケットにおいていろんな意味での影響が出るということでございますので、そこについては申し上げられるのは、きちんと内部で議論はしているということだけ御理解いただければということでございます。申しわけございません。
○神野部会長
米澤委員、どうぞ。後で山本委員に行きます。
○米澤委員
今、山口委員がおっしゃったことに関して、清水さんに1点補足だけさせていただきますと、調整が終わった後でも、乖離許容幅の中で必ずしも中心線に戻らない可能性もあるということを今、議論されていたわけですけれども、どういうときにそうやったらいいかというのは、釈迦に説法ですが、事前にはきわめて難しいわけです。
ただ、我々は事後的にはその成果をきちっと図る道具がありますので、複合ベンチマークで、そこでもってちゃんとはかられますので、その責任を持ってやっていくしかないと思います。正しく評価されます。どのぐらい動かして、結果的にどのぐらいよくなったかというのは事後的にはみんな評価されることでありますので、ゆめゆめ変なことはできない、変なことをやれば結果としてえらいことになるということは御理解いただきたい。それだけでございます。
○神野部会長
山本委員、どうぞ。
○山本委員
ありがとうございます。
1つは、公開性の問題でございますけれども、要するに、設定した目標とこれまでの運用との差については、今の米澤委員のように、大変難しい理論によって支えられているから大丈夫だというところを、一般の方々にもわかりやすくすることが大切です。将来を予測することは困難であると思いますが、逆に、進捗状況をチェックしていくことは可能だろうと思います。
また、機動的とおっしゃったのだけれども、5年に一遍ということについて、多分、一般の国民の人たちには、例えば1年ごとにはデータを公開して、今までの運用に比べたらこれだけよくなっている、目標に比べたら実はこれだけ下回ったというようなことの状況が明らかになるような指標の示し方をすべきだと思います。 ですので、今、GPIFのポートフォリオを変えたことが、どうなったら成功なのか、不成功なのかというところの基準を人々が理解しやすい明快な基準がないと、何か魑魅魍魎の中でどうもいろいろやっているらしいなというぐらいしか伝わらず、それ以上の理解が国民に届かないのではないかという気がします。その辺の進捗状況のチェックをもう少し小まめにやるということと、何をもってよしとするのかというところの判断基準を人々にわかるようにしてもらいたいという意見でございます。
○神野部会長 ありがとうございます。
今のについて、どうぞ。
○年金局長
まず、GPIFは毎年度、年金積立金運用報告書というのを出しております。その中で、財政検証で前提とされている毎年の運用利回り、例えば長期で1.7%といっていますが、財政検証をごらんになると、特に足元は毎年毎年の経済をきちんと数字を入れて運用利回りを設定していますので、その数字とどのぐらいずれているか。あるいはどこがどれだけずれているか。 例えば1.7%といっても、できあがった運用利回りが例えば2.0%でも、足元の賃金上昇率が幾つだったかということによって評価が違います。しかも、その足元も財政検証で置いた前提と実際の前提がどうだったか、それによってまた違うわけですが、そういうのは実は全部数字としてお出しをして、想定された、例えば年度末の積立金、財政検証ではこの金額だったけれども、実際には運用利回りはこうだったというのは、全て細かくお示しをしていますし、運用は年金制度全体の一部ということになりますから、年金数理部会のほうで毎年毎年、年金制度全体の財政検証と実際の年金の財政との関係がどうなっているかというのもお示しをしておりますので、ある意味毎年毎年前提に置いた財政検証の数字と現実がどうであったかというのを対比して評価をするという作業は、年金制度全体としてもやっていますし、もちろんGPIFの成果としてもやっているという構造になっております。
その意味で言いますと、評価の基準は私どもが与えたリスクの範囲内で運用ができているかどうか、あるいは、一定の経済条件の中で運用しますので、仕上がりの数字もそうですが、財政検証で出た経済前提と実際の経済との乖離も加味した上で、結果がどうであったかということを数字でお示しをするということはやっております。
もちろん、ホームページも公表していますけれども、なかなか皆さん関心が、今年はきっとみんな関心があると思いますが、今まではあまり新聞も扱ってくれませんでしたが、多分そういうことになろうかと思います。
○神野部会長
ありがとうございます。
宮本委員、どうぞ。
○宮本委員
ありがとうございました。
ほとんど時間がないと思いますので、2点だけ質問させてください。
まず、通常の株式運用とか、あるいは債券等の運用と異なって、オルタナティブ運用というのは非常に投資対象が幅広いと理解していますし、アクティブ運用などもファンドマネージャーの能力だとか、あるいは陣容といいますか、そういうことに非常に大きく依存しているということで、それなりのコストがかかると思うのですけれども、そのコストは一体何を源泉にしているのか。厚労省にお聞きしたいのですが、これが1点です。
もう一点は、資料の2の7ページの「リターンの設定」で、将来の実質長期金利は経済中位ケースで2.7%、市場基準ケースで1.9%、そして、この数字に物価上昇率を足した名目長期金利はそれぞれ3.9%と2.8%と想定しているとお聞きしました。
私の感覚が合っているのかわかりませんが、ことしの5月30日に財務省の財政制度等審議会の中の財政制度分科会が取りまとめた「財政健全化に向けた基本的考え方」という報告書がありますが、この中に、「例えば、名目長期金利が1%上昇した場合、必要な収支改善幅は3%程度増加することになる」ということで、いわゆる名目長期金利が上昇することが国家財政に影響するのだという、ある種警戒するような記載もあったと思います。
今回、高い名目長期金利を前提にリターンを求めるということと、一方で、債務返済をしなければならない国家財政という点で、両者の考え方に整合性がとれているのかどうなのかということも含めて、厚労省にお聞きしたいと思います。
この2点をよろしくお願いします。
○神野部会長
2点、森参事官でいいですか。
○大臣官房参事官(資金運用担当)
今の御質問でございますけれども、当然、運用につきましては、パッシブ運用についても手数料を払っておりますが、運用成果につきましては、基本は手数料控除後で、年金財政に貢献するような形で出さなければいけないと考えております。
当然、コストにつきましては、結果的に運用にプラスになっていることが前提なのですが、運用収入の中から出されているというものでございます。
あと、今、2番目の質問につきましては、財政審との整合性がございましたが、これにつきまして、GPIFの運用目標につきましては、長期の観点ということでございまして、年金財政における経済前提と積立金の運用の在り方に関する専門委員会で、マクロ的なモデルをつくって出していただいたということでございまして、前も一回説明させていただきましたが、その際に、名目で示すと誤解があるということでございまして、今回、スプレッドという形でプラス1.7%という形で目標設定を出させていただいたところでございます。
○神野部会長
どうぞ。
○年金局長
お答えします。
財政検証で前提で置いている長期金利は、足元、2023年まで10年間は基本的には政府の経済見通しで設定されている数字に基づいてつくっていますので、その意味では整合性はとれています。
一応政府の経済見通しも再生ケースでは、デフレから脱却をして緩やかなインフレ基調に移行するという前提で考えていますので、例えば2023年の名目長期金利は今の政府の経済見通しでも4.8%となっています。
今、お話のあった財政審の議論は、このまま財政健全化が進まないという状況になると、日本の経済、国債に対する信認が低下しますので、中長期的に長期金利が上がり始めるリスクがある。そのことは、国債の利回りの負担を大きくするので、財政再建をいわばさらに危うくするということなので、早く財政再建しないともっと長期金利が上がって負担が大きくなる。そのときにどれぐらい負荷がかかるかということを、そういう意味では国民にお示しするためにその記述は記載されたと承知しております。
○宮本委員
わかりました。
その上で、1点目の質問のところで、コストの問題についてはこれまで以上にコスト負担が大きくなることが予想されるわけでして、そのこともしっかりと被保険者にお伝えして、また、被保険者自身がそのことに対してしっかり意思確認するというか、そういうやりとり、キャッチボールも必要なのではないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
○神野部会長
花井委員、どうぞ。
○花井委員
短く言いたいと思います。
6ページの図なのですが、大体2040年からキャッシュアウトが続くとなっているわけですが、そもそも積立金は元本が確保されるべきものではないということは承知しています。ただ、前回も質問しましたが、今、何でこのようにもやもやしているのかというと、リスクがわからないのです。ガバナンス体制の強化ですとか、リスク管理とか、たくさんリスクという言葉が出てくるのですが、リスクが具体的にどの程度なのかがわかりません。
リーマンショックのときに9.3兆円の損失が出たということで、その後は回復するのですが、それよりも大きいのではないかという推測はできるのですが、単年度の最大損失がどのぐらいなのかということがあって、どのようなガバナンス体制であるべきか、リスク管理であるべきかということだと思うのですが、厚労省は前回、全然教えてくれませんでした。そこはやはり公表する必要があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○年金局長
後で多分GPIFから補足があると思うのですが、リスクという言葉をどのように理解するかということで、これは御専門の先生がいらっしゃるのでわかると思いますが、経済変動に対する、いわば価値の感応度といいますか、経済成長の振れに対して商品の価格がどのぐらい振れるか。例えば債券よりも株式のほうが感応度が高いので、いいときは高く振れますし、悪い時は低く振れる。
高い商品のことをあの業界の方は「リスク性が高い」と表現するので、この場合のリスクというのは、いいときはいいけれども、悪いとき悪い、この振れの大きさをいいます。
私ども年金の運用に関して、リスクというのは何かというと、最大のリスクは年金の運用で必要な運用利回りが確保できるかどうか。確保できないことがリスクですので、リスクが高いか低いかという表現で言えば、先ほどのGPIFの説明にありますように、全額債券で運用した場合には、必要な運用利回りはほぼ確保できないわけですから、今の意味でリスクを使えば、全額国債の運用というのは極めてリスクが高い運用ということになります。
なので、そういう意味で言えば、先ほどから1.7%という運用目標が確保できるかどうか、今、確保できる運用というのが年金の立場からすれば、年金財政的にはリスクが少ない運用ということになります。
その上で、先ほど言った、経済変動に対してどれだけ振れの小さい、リスクの小さいポートフォリオが組めるか。単品に依存すれば非常に振れが大きくなりますので、それを打ち消すような分散投資、組み合わせ、まさにそれがポートフォリオということですので、そういう意味で言いますと、リスクは何かということで言えば、先ほどお示しをした、清水室長から御説明いただいたあれが長期的な運用に対するリスクの判断基準、評価ということになろうかと思います。
○花井委員
もっと簡単な言葉で言います。
もちろん、運用上のリスクというのはそういうことだと理解できるのですが、リーマンショックで9.3兆円ですから、今回の単年度の最大の損失は幾らと見込んだのかということを聞いているということです。
例えばGPIFの中では問題にならなかったのかどうなのか、そのあたりが全然明確になっていないのではないかということです。国民にとってみたらリスクというのは年金受給額が減る可能性があるということです。いつでもそういうことはあり得るわけですから、そのことをもう少し明確に言うべきではないかということです。
○神野部会長
これは今時点で。
○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
私どもで御用意した資料で申し上げますと、多分、今、御指摘の部分というのは12ページの上の部分と下の部分とあるのですが、幅というか、国内債券の幅は少なくて、全額国内債券運用の場合には25%と75%の幅が少なくて、今回の基本ポートフォリオの場合は幅が大きい。これがある種単年度で見たぶれをあらわしているわけですから、そのような意味でリスクを捉えるのか。
今、局長がおっしゃったのは、そうではなくて、太い線の180兆を下回るのか、上回るのか、どのぐらい下回るのかというところで見るのが年金制度における年金運用のリスクであると、実際、私どもも理解しているということでございます。
実際に、確かにリーマンショックのときにそこそこの損失が出たわけでございますけれども、2008年度以降、旧ポートであったわけでございますが、その後、結局損失を全部カバーいたしまして、結果的には既に23兆円ぐらいの実際の黒字がそれ以降出ている。そういう意味で、年金運用というのは長期的に評価しなくてはいけないというところをはっきりとこの際認識していただく努力を我々としてもしていきたいと考えているところでございます。
○神野部会長
いいですか。
○花井委員
すみません、全然納得できなくて、長期で運用していくというのは当然そうです。リーマンショックという一時期で損した分はその後回復していったわけですから。ただ、そういう最悪のケースがあることを前提にさまざま組織改革とかをしていく必要があるのだろうと思うのです。私が聞いているのはあくまでも単年度の最大損失が幾らなのかということで、それを公表してほしいということを言っているわけです。この図については前回もこれで説明を受けたと思うのですが、これではよくわかりません。
○年金局長
単年度の最大損失が幾らになるかというのは、例えば変な話ですけれども、東京に隕石が落ちれば日本の経済は崩壊しますので、多分天文学的な損失が出ますので、全額毀損するかもしれません。それは債券を持っていようが、株式を持っていようがということになってしまうので、どういう経済前提なりどういう経済変動を想定するかということによって最大損失、逆に言えば最大収益というのが多分出るわけですね。すごくバブルになったら最大収益は幾らもうかるのだという議論になります。
その意味で言うと、前提を置けば、高いほうも低いほうも出ると思いますが、おそらく年金制度というのは中長期的に日本が5年、10年、20年、30年、どういう成長軌道を描くのかによって運用成績が基本的には決まる。株式もそうですが、ずっとデフレであれば株は低迷するわけですから、下がり続けるし、安定的に成長すれば株価はそれに見合って上がっていくということになります。
そういう意味で言うと、最大損失を何かというのはどういう前提の経済環境を想定するかということだと。逆に言えば、最大収益は幾らかという質問も多分同じだと思うのですが、それはそういう前提の置き方でいかようにも答えられることになるので、花井委員の御満足のいく回答を今、ここでするのは私の能力を超えるので、御勘弁いただければと思います。
○山本委員 ○米澤委員
よろしいですか。
ちょっと話を戻しますけれども、今、その数字等を使えば、多少の計算をすれば最大どのぐらい損失するかというのはそんなに難しい計算ではないので、今、私は持っていないので答えられませんが、その数字を根拠にすれば推測はつく。そういう数字は全部ディスクローズしているわけです。
今、いろいろ説明がありましたが、それは上にもあるわけですね。下のほうだけ、悪いほうだけと言うのもあれかもしれませんが、上下にあるのが標準偏差でございますので、それなりに変動はしますというのは正直なところでございますし、標準偏差で見れば、先ほど3倍といいましたが、2倍強になるというのはこの数字で出しているわけですので、その範囲の中で御理解いただければ全くそのとおりだということでございます。
○山本委員
○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
なかなか難しい御質問になってきているのですが、これも我々、特に株式についてはいわゆる中心回帰性というか、例えば短期的には上がるけれども下がる、下がるけれども上がると、上がり下がりを繰り返しながら長期的には一定の成長率で上がっていくという仮定を考えてございます。
そういう意味で申し上げますと、例えばリーマンショックのときに、確かに結果的には9兆円強のマイナスが出たわけでございますが、その時期に一方で、我々7兆円程度のキャッシュインを、逆に下がった株式を中心に配分してございます。その結果、企業年金ではいろんな議論があって、リスクが大きくなったのだから、逆に株式に追加配分するのは危険だということで、企業年金の中にはそこで債券に逃げたところもあります。一方で、我々は当然長期のポートフォリオを組んでいたわけでございますので、その7兆円の大部分を下がった株式に投資しました。
その結果、翌年、結局戻ったわけですが、前の行動、債券に逃げた場合と比べると1.5兆円プラスになっているのです。そういう意味で、投資というのは単年度も大切なのですが、変動の中でどういう形で運用していくかというほうがよほど重要だというところで、我々としては大きな変動の中で適切にポートフォリオを管理するという考え方で、先ほどごらんいただいたような数字もシミュレーションもしていると御理解いただければということでございます。
○神野部会長
そろそろこの議題について打ち切らせていただいてよろしいですか。
また作業班等々のことについては正式に進捗状況を御説明いただく機会を設けたいと思いますので、この議論はこの辺で打ち切らせていただければと思っております。
本日は、公的年金制度のあり方について御議論を頂戴いたしまして、これまでの議論を整理したもの、さらにそれに横断的な整理、あるいはあり方というか、最後のおまとめいただいている言葉で言えば、基本に置くべき考え方等々を5つまとめていただいております。いろいろ御議論いただきましたが、基本的にこうした考え方に基づきながら、次にステップしていくということについて御了解いただいたと考えておりますので、次回以降、そのような方向で運営をしていきたいと思っております。
それでは、次回の年金部会の進め方について、事務局から何かございましたら、お話をお願いいたします。
○総務課長
次回の日時、議題等につきまして、また改めて御連絡させていただきます。
最後に1点、紹介をさせていただきたいと思います。本日の配付資料の一番下に「年金の日フォーラム」というチラシをつけさせていただいております。厚生労働省におきましては、11月30日を年金の日といたしまして、国民お一人お一人が年金ネット等を活用しながら高齢期の生活設計に思いを巡らせていただくという日として、本年より11月30日を年金の日とさせていただきました。
当日は、13時より丸の内にあります東商ホールにおきまして「年金の日フォーラム」を開催いたします。年金のシンポジウムですかとか「わたしと年金」エッセイの厚生労働大臣表彰、「年金落語」などの催しもございます。年金シンポジウムでは、こちらをごらんいただきますと、神野先生、原委員にも御出席、御参加をいただきまして、年金制度の現状ですとか課題について御議論をいただくという機会でございます。
まだ席にも余裕がございますので、ぜひ皆様におかれましても、お誘い合わせの上、御参加をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
それでは、この辺で審議を終了させていただきます。皆様には積極的に御議論いただいたのですが、私の運営の不手際で30分遅れてしまいました。申し訳ありません。伏しておわび申し上げまして、閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
(了)