06/11/06 企業年金研究会第2回議事録
日時 平成18年11月6日(月)
10:00~12:00
場所 厚生労働省専用第21会議室
○森戸座長
ただ今より第2回企業年金研究会を始めます。本日は、小野委員が所用によりご欠席されております。
議事次第に沿って会議を進めます。前回、皆様にご賛同いただきましたとおり、本日は関係者の方々からのヒアリングを行いたいと思います。信託協会の五十嵐様、生命保険協会の手島様、企業年金連絡協議会の瀧沢様・相島様にお越しいただいております。さらに、国民年金基金連合会の日原部長にもご説明いただく予定です。
まず、事務局から資料の確認をお願いします。
○簑原課長補佐
配付資料として、資料1は、第1回企業年金研究会でご質問等がありました関係の資料です。資料1-1は確定拠出年金の掛金算定方法の種類別規約数等、資料1-2は401(K)プランにおける差別禁止テストについて、資料1-3はドイツにおける企業年金について、を配付しております。資料2は、本日お越しいただいております信託協会様のご説明資料です。資料2-1は企業年金に関する改善要望について、資料2-2は平成18年度もみじ月間規制改革要望、資料2-3は平成19年度税制改正に関する要望です。資料3は、生命保険協会様のご説明資料です。資料3-1は企業年金にかかる要望事項について、資料3-2は平成19年度税制改正に関する要望、資料3-3は平成18年度規制改革要望(10月もみじ月間)です。資料4は、企業年金連絡協議会様のご説明資料です。資料4-1は確定拠出年金税制改正要望について、資料4-2は確定給付企業年金改正要望の骨子と要望事項です。資料5は、国民年金基金連合会様のご説明資料です。資料6は、今後の進め方(案)について、を配付しております。
委員の方々とオブザーバーの方々には、議事要旨をお配りしております。前回の第1回企業年金研究会の議事に関して、要旨として事務局でまとめたものですので、1週間程度ぐらいでお目通しいただきまして、何か変更点等がありましたら事務局までご連絡いただくようにお願いします。以上です。
○森戸座長
次に、前回の研究会において各委員からご発言がありました事項に関する資料について、事務局より説明をお願いします。
○濱谷企業年金国民年金基金課長
資料1-1、資料1-2、資料1-3です。資料1-1は、掛金の算定方法の種類別規約数等です。前回、掛金について定率的に取っているのか、定額なのか、というご質問がありましたので、事務局で調べたものです。結論は、左側に算定方法とありますが「定額」が12.2%「定率」が86.8%ということで、定率が9割近くを占めている状況です。そのほかに「ポイント」「併用」「任意選択」とありますが、ポイントについては(注)にある、在職中の勤続年数や職能による評価を累積して算出する方法、あるいは、一番下に任意選択とある、あらかじめ設定された掛金額の中から従業員が給与か掛金かを選択する形式のもの、あるいは、そのようなものを併用する形式というのが合わせて1%程度ある状況です。
2頁についてですが、個人型確定拠出年金の加入者における企業型からの移行者数です。一段目は、加入者及び運用指図者数で、加入者が6万3,000人、掛金を積んでいない運用指図者が3万6,000人、計10万人程度いらっしゃいます。
その中で企業型から移行した方々は、加入者については約1割の6,811人です。また、運用指図者については91.5%の3万3,087人です。運用指図者の中には、いわゆる第3号等そもそも掛金の積み増しができない方と、積み増しはできるけれども、していない方の双方が入っていますが、いずれにしても掛金の積み増しをしていない方が、移行した9割を占めている状況です。
資料1-2です。前回アメリカにおいて、高所得者の優遇にならないような差別禁止テスト、あるいは非差別テストというものがあるのではないかというご質問がありましたので、事務局で調べたものです。趣旨は、掛金の負担能力のある高賃金労働者を優遇するものでないことがアメリカの401(K)プランの要件になっていまして、それをチェックするためのものです。具体的な内容は、従業員の区分として高賃金労働者の定義ですが、1つは会社株式の5%以上を所有する労働者、もう1つは前年度報酬が10万ドル超の従業員ということです。
このような区分に従いまして、高賃金労働者とそれ以外の非高賃金労働者のグループの平均拠出率を算出しまして、それに応じて(3)以下の2つのテストにパスする必要があるということです。1つは、高賃金労働者グループの平均拠出率が、それ以外の方々の平均拠出率の1.25倍を上回らないこと。もう1つは、高賃金労働者グループの平均拠出率が、それ以外の方々の平均拠出率の2倍を上回らず、かつ、その差が2ポイント以内ということです。
2頁です。その差別禁止テストをパスすることが401(K)の要件ですので、パスできない場合は、高賃金労働者グループの超過拠出金の10%相当額のペナルティー課税が第1のペナルティーで、さらに超過状態が解消されない場合は、税制適格プランとしてそもそも認められなくなるということです。このような差別禁止テストに引っかかった場合、記載してありますが、実際は各企業において、1つは超過拠出分を高賃金労働者に返還する、あるいは高賃金労働者が超過拠出分については課税分を拠出とする、あるいは非高賃金グループに対して企業が追加拠出するという形の対応をするというのが一般的だということです。
資料1-3は、ドイツにおける企業年金についてです。前回、駒村先生からリースター年金という話がありましたので、ドイツの企業年金について調べた資料です。まず、ドイツの公的年金ですが、歴史的には被用者年金制度が先行し、自営業者は年金制度加入職種ごとに制度を発足することで参加しているため、職業別階層別に分離をしている状況です。その中で一般被用者については、昨年1月からホワイトカラーとブルーカラーの年金保険が統合した一般年金保険ができまして、それに加入する状況になっています。企業年金ですが、一般被用者はこのような公的保険のほかに、企業年金に加入するのが一般的ですが、2001年の年金改革により賃金転換制度が導入され、これは被用者が自らの賃金を原資に企業年金を設定することを使用者に求める権利を保障する制度ですが、このような制度が導入された結果、一昨年の1月時点で賃金転換制度を活用できることとなった被用者は約2,000万人と、労働協約を結んでいる全被用者の8割に達したと言われています。
2頁です。ドイツの企業年金の種類は5種類あります。2頁に書いてある(1)から(3)が、比較的規制が厳しい年金です。(1)は年金基金で全体の約2割にあたり、法的に独立した基金を労使の拠出により創設する制度ということで外部積立型です。給付建て、拠出建ての両方の提供が可能ですが、保険監督局の監督対象であり、厳しい運用規制下に置かれるということです。(2)は全体の1割にあたる直接保険です。生命保険により企業年金を提供する制度ということで、これも外部積立型です。拠出建て、給付建ての両方があり、給付リスクは生命保険会社が負うということです。保険監督局の監督対象であり、厳しい運用規制は(1)の年金基金と同様です。(3)は2002年に制度が創設され、まだあまり普及していませんが、ペンションファンドです。これも、外部積立型で独立した基金を創設する制度ということで、保険監督局の対象ですが、年金基金と比較して運用規制が緩やかであることが特徴であると聞いています。
3頁(4)は、比較的に規制が緩い、引当金制度です。ドイツでは、これが全体の6割と一般的な自社年金内部留保型で、給付形態としては給付建てのみで、監督局の対象外、運用規制等もほとんどないということです。最後に共済型の基金がありまして、7%程度です。これは外部積立型ですが、保険監督局の対象外で運用規制はないということです。
4頁です。このような企業年金に対する公的な助成は2種類あり、事業主が選択するということです。所得控除と、前回議論になったリースター年金の2種類です。まずは所得控除、税・社会保険料の減免です。企業年金に係る本人掛金について、所得税・社会保険料の算定対象となる賃金から掛金を控除する仕組みで、年額65万程度が上限です。事業主が源泉徴収の際に控除の手続を行うというもので、これが一般的であり、すべての企業年金プランが対象です。
5頁は、リースター年金です。これは新しい仕組みで、2001年の年金改革により、公的年金額のネット所得代替率が引き下げられた際の代替措置として、主に中小企業の被用者など年金がない方に、年金を普及させる目的として導入されたものです。
基本的な仕組みとしては、企業年金と個人年金が対象となり、その本人掛金について、助成金の支給、これは低所得者が対象ですが、または所得控除(中高所得層対象)を行う制度ということです。上限としては賃金の4%です。助成金、所得控除の具体的な中身ですが、助成金は、基礎特別手当、年間約2万円程度ですが、主に配偶者等が対象になっていると思われます。それと、児童特別手当、子供が対象の手当の2種類があるということです。中所得者は減税、所得控除がされるということで、控除額は年間約30万円程度です。手続としては、個人が確定申告を行う際にこのような手続をするわけですが、助成金、所得控除のいずれを選択するかは税務署が判断する仕組みとなっております。
最後に年金プランの要件ですが、リースター年金は企業年金のほか、個人年金も対象となっております。要件としては、日本の401(K)と非常に似ていますが、拠出建てであること、元本保証であること、原則60歳にならない限り支給されないこと、原則終身年金、退職時に一時金として最大積立金の20%を支給するということです。ちなみに企業年金プランについては、外部積立あるいは保険監督局の監督対象が要件になっていまして、ドイツで一般的に企業年金として普及している引当金や共済基金制度は対象外ということです。以上です。
○森戸座長
ありがとうございました。ただ今のご説明について、皆様からご質問、ご意見等は何かありますか。よろしいですか。
特にないようでしたら、早速今日のメインのヒアリングにまいりたいと思います。信託協会の五十嵐様、生命保険協会の手島様、それぞれからご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○五十嵐様(信託協会)
ただ今ご紹介いただきました信託協会年金専門委員長の五十嵐です。よろしくお願いします。本日は、ヒアリングの場を設けていただきましてありがとうございます。
私ども信託銀行は、企業年金の資産運用や制度設計・制度管理の担い手として、企業年金制度の普及・発展に尽力をしてまいりました。当協会としては基金、事業主、従業員それぞれの皆様にとって一層の利便性が高く、将来にわたって安定した企業年金制度を構築することができるよう、制度の改善をお願いしたいと考えています。
先ほどご説明をいただいたとおり、本日ご用意させていただいた資料は3つあります。資料2-1は、当協会が現在早急に対応が必要と考えている課題等をご説明させていただく資料です。資料2-2、資料2-3は、それぞれ規制改革要望、税制改正要望です。
早速、本日のご説明は資料2-1に沿ってしますので、まずこちらをご覧ください。資料の冒頭は現状認識です。平成18年3月末現在での適格退職年金ですが、未だに約4万5,000件が残っている状況です。この表は人数別に分けて記載してありますが、100名未満のところと100名以上のところの合計が約4万5,000件という状況です。今後、この適格退職年金は平成24年3月末まで約5年半ありますが、この間に他の制度の確定給付企業年金や確定拠出年金等に移行する、あるいは解約をすることになるわけです。1頁の冒頭は、人数別の適格退職年金の実施件数の推移を表わした表を付けており、この資料からも読み取りいただけるかと思いますが、平成13年度末と比較しますと100名未満の適格退職年金は4割程度件数が減少している状況ですが、100名以上の適格退職年金は約2割5分程度しか減少していない状況で、この部分も未だに1万2,000件程度が、適格退職年金として残っています。このような制度を中心に、他の年金制度への移行を現在検討しておられる、あるいは今後検討していかれるケー
スが多いと考えられまして、今後このような企業を中心とした制度移行への対応が大きな問題となってくると考えています。
こうした現状認識の下で、適格退職年金から他制度への移行を円滑に進めていくために必要と考えている具体的な改善要望を5つの項目にまとめていますので、ご説明します。1つ目は、資料1頁の中ほどです。「確定給付企業年金・確定拠出年金における承認・認可手続きの簡素化について」です。現状ですが、制度移行あるいは移行後の制度運営等におきまして、各企業に対していろいろなサポートをさせていただいていますが、その際に規約承認及び認可手続の簡素化といったことを強く希望されている事業主等の意見を耳にするケースが多いです。確定給付企業年金制度の件数は、平成18年9月1日現在で既に1,670件です。中ほど少し下のグラフにもありますとおり、確定給付企業年金だけでもピーク時の厚生年金基金の基金数の1,800件を超えようとしています。また、確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金の3つの合計の件数で見ますと、既に現時点で4,000件程度に達しています。今後、平成24年3月末までに適格退職年金が他制度へ移行していくことに伴いまして、確定給付企業年金及び確定拠出年金の申請件数はさらに大幅に増加すると考えられまして、移行の期限の間際に集中することも予想されるわけで、今後このような多数に上る制度移行をスムーズに行うためには、規約承認及び認可手続の見直し、簡素化といったことが不可欠であると考えています。また、今後設立件数の増加に比例しまして、制度発足後の規約変更の申請件数も増加していくと考えられることから、承認・認可手続の簡素化は移行までの短期的な課題ではなく、長期的な視点で見ても見直しが必要であると考えています。
このような中で改善要望ですが、確定給付企業年金における承認及び認可手続は、大きく分けますと新規設立、受給権に影響を与える制度変更、受給権に何ら影響を与えない軽微な変更といったところに大別できると思います。このうち、受給権に影響を与える制度変更で、かつ加入者、受給者の不利益に当たる場合を除いて承認・認可とせずに届出制にするといった、手続の簡素化が可能ではないかと考えています。この場合、不利益に当たるかどうかという判定がポイントになると考えられますが、具体的な解決策として承認・認可基準を明確にして、かつ知識あるいは見識のある審査主体がその判定を行うといった方法が考えられると思います。つまり、これは基金型のように法人設立に係る認可は別としまして、それ以外の新規設立の場合や受給権に影響を与える制度変更であっても、加入者には利益となる場合、例えば、一律に給付額を引き上げるといった場合や、数理計算の結果、加入者等の利益になることが明確なケースといったものについては、届出制にすることが可能ではないかということです。
これに加えまして、規約申請時の提出書類も整理が必要ではないかと考えています。例えば、確認事項が重複しているものがないだろうか、あるいは、申請内容によって不要と考えられるものがないかどうかといった観点で削減が行われますと、より効率的になると考えています。同様に、確定拠出年金制度についても、規約変更手続の簡素化、提出書類の簡素化といったことについて要望しています。
2頁は2つ目の項目として、「適格退職年金の積立不足への対応」を挙げています。適格退職年金は、年金資産の積立水準にかかる検証制度が、確定給付企業年金ほどは厳しくないことから、積立水準が確定給付企業年金に比べて低い制度も少なからず存在している状況です。参考として資料に簡単な表を付けています。ここをご覧いただきますと、約5割の適格退職年金においては、本来必要な額に対する年金資産の割合が0.7未満という状況です。これはご参考として、ご覧いただければと思います。
一方で、確定給付企業年金では毎年の決算で財政検証を行うことが義務づけられていまして、適格退職年金に比べ、積立義務が強化されている状況です。
しかし、このことが適格退職年金の移行の観点では足枷となっていることも事実かと思います。さらに、平成19年4月以降、財政検証に関する経過措置の一部が終了することとなっていまして、適格退職年金から確定給付企業年金への移行を、より一層抑制する点が懸念されるところです。冒頭に申し上げましたとおり、適格退職年金から確定給付企業年金への移行はまだそれほど進捗していない状況ですので、そのような状況下で経過措置を終了することで、財政検証のハードルが上がるのは時期尚早ではないかと考えています。ここの改善要望の(1)のとおり、この経過措置を当分の間延長していただきたいということが要望の1つ目です。
財政検証に関する経過措置を延長していただく一方で、積立水準が低いままでは受給権が侵害される可能性もありますので、現状よりも柔軟な掛金拠出の仕組みを導入する必要があると考えています。と申しますのは、厚生年金基金と比べますと確定給付企業年金のほうが、実施主体の人数は少人数となるケースも多いと思われまして、事業主によっては計画的な資金拠出を行いにくいようなケースも考えられると思います。このような事業主については、許容範囲内で掛金を低めに設定することになりますと、結果として積立水準の回復が遅延する可能性があるということです。このようなことを避けるためにも、一定のルールの下で資金に余裕があるときに、機動的に掛金の拠出ができる仕組みを創設することによりまして、積立水準を引き上げて、受給権保護のための資産充実を図ることが求められています。このため、要望事項の2つ目には、厚生年金基金と同様に、年度ごとに発生すると見込まれる不足に対しての特例掛金の拠出を行うことを認めていただきたいという要望を出させていただいています。
3つ目は、2頁の下段「労使合意に基づかない給付増額の発生懸念」です。確定給付企業年金においては年金の支給開始を60歳とするケースが多く、60歳より前に加入資格を喪失した場合は、資格喪失日の年金原資を60歳まで利息を付けて増やす制度が一般的で、この利率のことを据置利率と呼んでいますが、現状はこの金利水準が低いために、据置利率を低く設定している制度が多数あります。このような中で、今後金利が上昇して一定水準を超えてまいりますと、法令上の制約から制度実施時点で労使合意した据置利率とは関係なく、据置利率が引上げとなり、年金給付を増額しなければならない状況になる可能性があります。このようなことから、労使の自主性を尊重する確定給付企業年金法の趣旨にもそぐわないものと思われますので、改善要望として労使の意向と関係なく、制度変更を余儀無くされることのないように、選択一時金の支給上限にかかる制限緩和を要望しています。
3頁は、「閉鎖型確定給付企業年金の残余財産の取扱いの明確化」です。まず参考の図をご覧いただくと、例えば適格退職年金を確定拠出年金に移行する場合、加入者は確定拠出年金に移行するということですが、受給者は確定拠出年金に移行できませんので、その給付を行うために年金資産を適格退職年金に残しておいて運営することになります。これを閉鎖型適格退職年金と呼んでいますが、現状、信託銀行における閉鎖型適格退職年金は約200件程度あります。
今後、確定拠出年金の普及とともに閉鎖型適格退職年金がさらに増加することも見込まれます。この閉鎖型の年金については、こちらも適格退職年金ですので、平成24年3月末に適格退職年金制度が廃止されることから、閉鎖型の確定給付企業年金に移行することが必要となるわけです。したがいまして、今後閉鎖型の確定給付企業年金も増加する可能性があるわけで、この閉鎖型の確定給付企業年金については受給者の全員の給付を行って制度を終了させるということですので、制度終了時に年金資産を残すことになるわけです。
この残余財産をどのようにすればよいのかについて、取扱いが不明確なままですと、閉鎖型の適格退職年金を確定給付企業年金に移行する際の懸念材料の1つともなりますので、受給者がゼロとなった場合の残余財産の取扱いは適格退職年金と同様に、事業主に帰属させる形を明示していただければという要望を出しています。
最後は、「確定拠出年金における中途引出要件の緩和」です。現状では、個人別管理資産額が1万5,000円以下の場合に限りまして、企業型の一時金として支給を受けることが可能になっていますが、この要件に該当する対象者は限定的となっています。年金制度とはいえ、実質的には企業の退職金の一部を担う制度となっているところもありますし、適格退職年金からの移行を考えた場合は、この点が確定拠出年金への移行を妨げる1つの要因となっているのではないかと考えています。このため、1万5,000円以下の場合に限られている企業型年金における脱退一時金の支給要件を緩和することを要望しています。適格退職年金の廃止に伴う対応にかかる要望は以上です。
このほかに、資料2-2は、内閣府に提出をしている規制改革要望です。全体の説明は省略させていただきますが、例えば1頁の一番下の3は、高年齢者雇用安定法への対応として、定年延長等を行った場合の柔軟な制度設計、4頁の15は、確定拠出年金における拠出限度額の引上げといった点を要望させていただいています。また、資料2-3は税制改正ですが、こちらは3頁の主要な要望項目として特別法人税の撤廃を挙げています。このように多岐にわたる要望を提出させていただいていますが、これらについてご検討をいただきますようよろしくお願いします。当方からの説明は以上です。どうもありがとうございました。
○森戸座長
ありがとうございます。続いて手島様、よろしくお願いします。
○手島様(生命保険協会)
生命保険協会の企業保険第一部会の部会長を務めています日本生命の手島です。
初めに、当方の資料の確認です。資料は3-1から3-3まであります。3-1の企業年金にかかる要望事項については、以下の2つの補助資料をまとめています。本日は、こちらの資料に沿ってご説明をします。2つ目は、生命保険協会の税制改正に関する要望のうち、企業年金に関連する部分等を抜粋した平成19年度税制改正に関する要望<一部抜粋>です。3つ目は、生命保険協会の規制改革要望のうち、企業年金に関連する部分を抜粋した生命保険協会平成18年度規制改革要望の企業年金関係です。
資料3-1に沿いましてご説明します。1頁は、企業年金における生命保険会社の位置づけです。当頁は、企業年金マーケットにおける生命保険業界の位置づけをお示しするものです。具体的には円グラフを用いて、厚生年金基金、適格退職年金、確定給付企業年金、企業型の確定拠出年金の各制度の受託件数を、平成14年度3月末時点と平成18年度3月末時点の2つで比較したものです。
円グラフ全体が各制度全体の受託件数を表わしており、グラフの中で一部網かけされている部分が生命保険会社の受託件数を表わしています。また大まかではありますが、円グラフの大きさで受託件数をイメージしています。
これを見ますと、各企業年金制度の平成18年3月末時点における生命保険会社のシェアは、厚生年金基金が25%、適格退職年金が84%、確定給付企業年金が39%、企業型の確定拠出年金が23%になっており、生命保険会社は企業年金受託機関として重要な役割を担っています。その中でも、とりわけ適格退職年金では84%と高いシェアとなっており、適格退職年金マーケットにおいて大きな位置づけを占めています。また、適格退職年金の平成18年3月末時点の全業界計の受託件数は4万5,090件となっており、未だ4万件以上が適格退職年金のまま存続しています。適格退職年金から他の制度へ移行等については、平成24年3月の廃止に向けて着実に進んでいますが、今後も確定給付企業年金や企業型の確定拠出年金への移行が相当数、見込まれるものと考えています。
2頁は、企業年金にかかる要望事項として生命保険協会の意見表明の骨子について記載しています。確定拠出年金法、確定給付企業年金法のいわゆる企業年金二法が施行から5年を経過し、新しい企業年金のフレームワークが一定定着を見ている現在、生命保険協会としては、主として(1)から(4)の4つの要望事項についてご説明します。詳細は、次の頁以降です。
1つ目の要望です。順番が前後しますが、先に4頁の両制度の規約申請件数の推計をご覧ください。当頁では、確定給付企業年金及び確定拠出年金に関する規約申請件数の現在までの状況と今後の推計を示しています。左上の「現在まで」とあります四角囲みの中の(1)の直近の実施件数は、各制度の直近の実施件数を記載しており、確定給付企業年金が1,670件、企業型の確定拠出年金が1,993件、適格退職年金が4万5,090件となっています。(2)の現在までの規約申請件数は、法施行以後現在までの規約申請件数を年平均に換算して記載しています。「新設」とあるのは制度新設に伴う規約の申請件数、「変更」とあるのは制度変更に伴う規約の申請件数をそれぞれ表わしています。
制度変更に伴う規約の申請件数は、実際に採取可能なデータがないため、弊社幹事契約における制度変更に伴う申請実績に基づいて推計を行っています。
その結果、確定給付企業年金においては新設及び変更はそれぞれ年間約370件なされており、また企業型の確定拠出年金においては新設が年間約410件、変更が500件なされていると考えられます。
今後の規約の申請件数についての推計をしてみたものが、右上の四角囲みです。網かけが見づらくて恐縮ですが、ここでは適格退職年金の廃止までの6年間の規約申請件数について推計しており、(1)の適格退職年金からの移行件数の推計値については、弊社幹事契約における法施行以後、現在までの適格退職年金から両制度への人数規模別の移行率を基に推計を行っており、今後6年間で確定給付企業年金は2,400件程度、企業型の確定拠出年金は約4,300件程度の移行が行われるものと考えられます。(2)の規約申請件数は、先ほどと同様の方法で規約の新設・変更の今後の申請件数を推計しています。今後、確定給付企業年金においては新設が年間約410件、変更が年間約1,500件なされると考えられます。また、企業型の確定拠出年金においては新設が年間約720件、変更が約2,400件なされると考えられます。以上の推計の結果を踏まえますと、規約の申請件数は今後増加することが見込まれ、とりわけ制度変更に伴う規約の申請件数は大幅に増加することが見込まれるものと考えられます。
なお、頁下半分の両制度の実施件数の推移と将来推計は、推計結果を視覚的に表したものです。網かけ分が新設です。実施件数の平均値を点線で記載していますが、平成14年度から平成17年度の期間に比べまして、平成18年度から平成23年度の期間の点線が大きく上昇しており、制度変更に伴う規約の申請件数の今後の大幅な増加を示唆していると考えられます。
3頁では要望の1つ目、確定給付企業年金における規約の承認・認可申請手続の簡素化及び確定拠出年金の規約変更手続の簡素化の具体的な内容及び要望理由を記載しています。確定給付企業年金における規約の承認・認可手続の簡素化については、規約の承認・認可手続において、届出で足りる(若しくは届出不要の)規約変更内容の範囲を拡大するとともに、申請書類の簡素化を図っていただきたいこと、さらに、一定要件を充たす場合は、規約の制定に当たっても届出制を導入していただきたいことを要望しています。要望理由は先程ご説明しましたとおり、確定給付企業年金の実施件数の増加に伴い、制度変更も含めた規約の申請件数の増加が見込まれ、行政サイドのキャパシティーとの関係で申請手続の簡素化が必要であると考えるからです。
また、ここに記載している届出の範囲の拡大などのほかにも、規約申請、認可手続の簡素化が可能と考えられる事例としては、レディーメイドの簡易型確定給付企業年金に関する規約承認手続があります。弊社を含めて、いくつかの生命保険会社の主体的な取組みとしまして、適格退職年金からの移行を念頭に置いて、確定給付企業年金の導入負荷を極力軽減し、中小企業への制度普及を図る観点から予定脱退率等を用いないいわゆる簡易な基準による、簡易型確定給付企業年金を積極的に提案している事例があります。この簡易型確定給付企業年金の規約は、一部を除いてレディーメイドの画一的な内容としており、例えばモデル規約を予めご確認いただく仕組みを導入することにより、承認手続の簡素化を図ることができるのではないかと考えています。
確定拠出年金の規約変更手続の簡素化についてですが、例えば、関係法令の改正が生じた場合には、画一的な規約変更であっても承認が必要ですが、今後確定拠出年金の実施件数が飛躍的に増加することも踏まえまして、軽微な変更と考えられるものについては届出による変更が可能となるよう、簡素化をご検討いただきたいと考えています。
5頁では、2つ目の要望の確定拠出年金制度における支給要件の緩和について記載しています。具体的な要望内容は3つあります。1つ目の要望内容は、企業型における退職時の脱退一時金について、年齢到達要件及び資産額の多寡に関わらず支給可能とすべく、支給要件を緩和することです。当要望の理由は、特に退職金規程からの全面移行ニーズが強い中小企業等への更なる制度普及を促進するためにも、支給要件の緩和は非常に有効であると考えられること、また、厚生年金基金、確定給付企業年金等の企業年金制度では中途脱退に伴う給付が認められており、企業型においてはこれら制度との整合性の欠如から、円滑な制度間移行及び制度普及の障害となっていることです。
2つ目及び3つ目の要望内容は、1つ目の要望内容が実現しない場合の要望として挙げています。2つ目は、企業型から個人型に移行したものであって、第3号被保険者等個人型に拠出できないものについて、中途脱退の要件である資産にかかる基準を現行の50万円以下から少なくとも100万円以下に引き上げていただくこと。3つ目は、退職時の企業型での中途脱退の要件である資産にかかる基準を、現在の1.5万円以下から少なくとも100万円以下に引き上げていただくことです。
下に、中小企業庁による「確定拠出年金導入企業の従業員に対する、制度導入時の問題点に関するアンケート」を記載しています。このアンケート結果によりますと、制度導入時の問題点として認識しているものの中で、最も高い項目が上から2番目にある「60歳までの中途払い出しが不可」となっており、8割近くの従業員が問題点として認識している状況です。このことは、中途脱退の要件緩和に対するニーズが極めて高いことを裏付けるものと考えられます。
6頁では、3つ目の要望の特別法人税の撤廃について記載しています。企業年金並びに確定拠出年金といった年金制度においては、約1.2%の定率で特別法人税が課されることとなっていますが、昨今の厳しい運用環境の下では1.2%の負担は極めて大きく、企業年金制度の持続性や受給権の保全にも支障を来たすことになります。当頁の下に記載していますとおり、運用利回りを2.5%と想定し、毎年1万円を25年間積み立てて、10年間年金を受け取ると仮定した場合の試算によりますと、仮に特別法人税が復活となった場合、25年間の積立で年金給付水準は20%削減されることになります。したがいまして、より豊かで安定した老後生活を確保するため、また公的年金を補完する企業年金制度の健全な発展のために適用凍結ではなく、特別法人税の撤廃を要望させていただきます。
7頁では、4つ目の要望の確定拠出年金保険契約の預け替えや資産移転による保険料について、法人事業税の課税対象から除外することについて記載しています。ご承知のとおり、確定拠出年金制度の大きな特徴は、各加入者が自己責任で資産の運用先を指図できること及び、転職等の場合に転職先の制度に資産を移転できることであり、そのため預け替えや資産移転に伴う資金の流れが発生することになりました。一方、生命保険会社に対する法人事業税は、一般事業会社と異なり収入保険料を課税標準としていますが、確定拠出年金制度の預け替えや資産移転により、資産を受け入れる保険会社ではこれが収入保険料として計上されるため、法人事業税の対象になっています。確定拠出年金制度は、資産移転を前提とした制度であるにもかかわらず、資産移転の都度同一の資産に対し、繰り返し課税されることは、まさに二重課税であり、また生命保険会社の負担増となるものです。今後、確定拠出年金制度の普及をさらに推進していくため、確定拠出年金保険契約の預け替えや資産移転による収入保険料を課税標準から除外する措置を要望します。
8頁と9頁では、これまでご説明してきた4つの要望以外で生命保険協会が要望している項目について列挙しています。最初の要望は、確定給付企業年金制度における老齢給付金の支給要件等の緩和で、具体的に4つあります。1つ目は65歳超で定年年齢が設定されている場合、65歳超の規約で定める年齢に到達した時点で年金の受給開始を可能としていただくこと。2つ目は60歳から65歳までの到達日以外の、例えば退職日などの規約に定める到達日から年金の支給開始を可能としていただくこと。3つ目は50歳未満で退職した者についても、50歳以上60歳未満の規約に定める年齢に到達した時点で、年金の受給開始を可能としていただくこと。4つ目は老齢給付金の支給年齢要件以外の要件を満たす者に支給する脱退一時金の額について、老齢給付金の受給権者となったときに支給する給付の現価相当額と支給開始時点で比較する取扱いを認めていただくことを要望しています。
次の要望は、中小企業退職金共済制度からの確定給付企業年金への移行の弾力適用で、具体的には中小企業者が確定給付企業年金制度を実施する場合にも、中小企業退職金共済制度の解約手当金を被共済者に返還せず、確定給付企業年金の掛金に充当することを認めていただきたいと考えています。
次の要望は、適格退職年金廃止に伴う他制度への移行に関する規制緩和です。
具体的には、既に中小企業退職金共済を実施している団体の適格退職年金についても、中小企業退職金共済への移行を容認いただきたいと考えています。
9頁です。まず、確定拠出年金制度の加入者資格喪失年齢の引上げですが、具体的には確定拠出年金の加入者資格喪失年齢については、労使合意に基づく柔軟な設定を認め、現行の資格喪失年齢(60歳)からの引上げが可能となるようにしていただきたいと考えています。
次の要望は、確定拠出年金制度の企業型における掛金の納付期限の弾力化です。具体的には、毎月の掛金は翌月末日までに納付することとされている確定拠出年金制度の企業型における掛金の納付期限について、システムトラブルや制度運営者の万が一の事務疎漏等により納付期限までに納付できなかった場合に、次回の納付時に2、3カ月分の納付を認める等の納付期限の弾力化を図っていただきたいと考えています。
最後は、確定拠出年金制度の企業型における掛金の払込方法の弾力化です。具体的には、確定拠出年金制度における掛金については、月間の拠出限度額の範囲内で毎月掛金を払い込むこととされていますが、収納事務の効率化による運営コスト削減の観点から、企業型における掛金に関し、確定給付企業年金と同様、年1回以上を定期的に払い込むことが可能となるよう、払込方法の弾力化を図っていただきたいと考えています。生命保険協会からの説明は以上です。
○森戸座長
ありがとうございました。ただ今のお2人のご説明について、皆様からご意見、ご質問等は何かありますか。
○藤井委員
信託協会あるいは生命保険協会から、いずれも適格退職年金の確定給付企業年金、確定拠出年金への移行に関する懸念と、それに関する改善要望が提出されていますが、両協会の資料を拝見しますと、今後の見通しに関して若干の違いが認められるのではないかと考えられます。信託協会のほうを拝見しますと、100人以上の適格退職年金を中心とした議論がなされていまして、これに関してこれまではあまり移行をしていなかったが、今後は適格退職年金の廃止期限が近付くことを念頭に置いて、さらに移行が加速する、つまり非常に移行件数があるのではないかと言っておられるように思います。
一方、生命保険のほうに関しては、資料の4頁を拝見しますと、正確にはよくわからなかったのですが、従来の調子を継続して今後に関しても、ある程度の移行があるのではないかという見方をされているのではないかと思われますが、両協会の今後の見方について改めてご発言いただければと思います。
○五十嵐様
まず、資料の冒頭の表から今のようなご指摘であろうかと思いますが、ここでは100名以上の所は移行が進んでいないということですが、実際に移行をしているところは確定給付企業年金や確定拠出年金といった、何らかの制度移行をしておられるということです。これまでは件数があまり進んでいないというのは、例えばキャッシュバランスプランを導入するといったことを目指して移行しておられるとか、企業グループ全体の制度の見直しといったことを踏まえての移行と思いますが、今後については、今はそのようなご検討の途上であったり、実際に今後検討していかれるところが大変多いと感じています。ですから、これからの期限に向けて、そういう意味ではさらに件数としては加速をしていく部分があるかと見ています。
○手島様
生命保険協会の資料について、4頁の補足説明をします。私どもは適格退職年金廃止に向けての6年間での移行件数の推計というものを行っています。右上です。この際に当然ながら、100名未満と100名以上の所では、人数規模別の直近の実績をそれぞれ見た形で試算をしています。実際には小規模の適格退職年金については、確かに解約や中小企業退職金共済へ移行する選択率が多数を占めるのが実態です。弊社の実績からみても、確定給付企業年金への移行割合は100名未満ですと0.4%程度ですが、100名以上になると12.25%といった実績もありますので、当然ながら現行の中では信託協会さんの資料にもありましたとおり、100名未満については一定程度減ってきている実態がありますが、100名以上はまだまだ残っている。簡単に申し上げますと、100名未満の中小企業と大企業は、ある程度行っているということですが、その中間の企業が残っているという実態がありますので、そのあたりも含めて人数規模別の移行率を勘案して出しています。
ただご指摘のとおり、ここから今までの移行率よりもさらに加速することも考えられるかと思いますので、今回は資料としては直近の実績だけに基づいていますが、そこについては人数規模別の要素も入れて一定程度、今後も出てくることを想定しています。
○森戸座長
藤井委員、よろしいですか。もちろん先のことですから、ある程度分からない部分もあるとは思いますが、全く同じではないでしょうけれども、一応適格退職年金からの移行の問題があるのは共通していたことかと思います。
ご質問、ご意見等、ほかにいかがですか。
○小島委員
今の藤井委員の質問と関連しますが、適格退職年金で信託協会から出されている資料の中でも、100人未満と100人以上の規模によって、これまでの移行の割合が異なるということで、1つは信託協会からは、100人以上のところはキャッシュバランス等への移行を検討されていることがあって、若干移行の数が少ないのではないかという指摘だったように聞こえました。そこは、100人未満と100人以上のところでの差というか、これまでに移行したところの分析などで把握されていることがありましたらお願いしたいです。
信託協会の要望の中で、3頁(ロ)の要望に出されている適格退職年金の積立不足への対応ということで、経過措置の延長と特別掛金の拠出を認めるべきだといったような要望が出されていますが、具体的に今適格退職年金を実施されている企業の皆さんから、そういう実際の声は強く出されているのかどうかというところなのです。
○五十嵐様
まず、最初のこれまでの移行の傾向ですが、具体的な数値までは今日はお示しできないのですが、大雑把な傾向で申し上げますと、100名以上のところは確定給付企業年金、確定拠出年金といった他制度への移行をするケースが比較的多い状況だと思います。100人未満のところは、それに比べると解約の要素も入っている状況にあります。特に、人数の規模が大きくなっていくと、確定給付企業年金を相当に念頭に置かれているところが多いという状況だと思います。
先程キャッシュバランスと申し上げたのは、これまでに移行している中で言いますと、例えばキャッシュバランスプランを導入することを目指して、早期に適格退職年金から確定給付企業年金に移行している動きも見られます。このような趣旨で申し上げました。
2点目の積立不足ですが、実際に適格退職年金から移向を検討されているとき、結局掛金の負担がどのように変わるのかが1つのポイントになるかと思います。
そういうことで言うと、移行するに当たって、そこはスムーズに移行した上で、例えば、今基金制度等でとられているような弾力的な給付ができることについては、ニーズが多いと理解しています。
○森戸座長
ご質問は現場の企業から具体的な要望があるのか、というものだったと思うのですが。
○五十嵐様
実際には、そのような掛金拠出の変動をなるべく大きくしないような形で移行されながら、その後の積立てをどう進めていきたいのか、このように考えておられる企業がそれなりに多いと思っています。
○島崎座長代理
2つあります。まず1つは、信託協会と生命保険協会の双方にお伺いしたい。確定給付企業年金の支払保証制度について言及がなかったように思うのですが、その点について特段のコメントがあればおっしゃっていただきたいと思います。
○五十嵐様
信託協会は、支払保証制度については、このような要望、意見を出させていただくことはしていません。そういう意味では、この場ではコメントは特段にないということになります。
○手島様
生命保険協会も同様で、特段コメントはありません。
○島崎座長代理
両協会とも「公的年金の補完としての企業年金」というワーディングを使っておられたと思うのですが、その一方で、例えば中途引出しといったようなことも、認めるべきであるという要望を、「運用の弾力化」の中身として出されておられます。その点について、考え方の整理はどのようにされていらっしゃるのかお伺いしたい。
つまり、私も中途引出しを一切認めるべきではないと頑ななことを申し上げることはありません。現実にサラリーマンが働いている間に資金需要があって、借金をして却って老後の生活が苦しくなることもあるでしょうし、退職時までにいろいろな事情が重なり、中途引出しが必要になるだろうということもわかるのです。ただし、一方では、企業年金は貯蓄ではなく老後の所得保障ということに鑑み、いろいろな税制上の優遇措置も講じられているというのも事実だろうと思います。それが「公的年金の補完的な役割」ということだろうと思うのですが、その点について現場サイドとしてもお悩みになっているかもしれませんが、そのバランスについて、どのような整理をされていらっしゃるのか。
お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
○五十嵐様
企業年金はそのような公的年金の補完というか、一定の年金額を確保するために必要な仕組みということだと思いますが、一方で企業年金の原資について考えますと、退職金を原資として制度が導入されてきているケースも多くあるというのは事実だと思います。
そういう中で申し上げますと、退職金的な色彩を考えますと、退職時にある程度受け取れると言いますか、こういうことに対するニーズも一方であろうかと思っていまして、そういう意味では、老後の年金ということと、退職時の受給ということが、ある程度、両にらみという考え方になるのかなと思っています。
○手島様
生命保険協会のほうでも、これは確定拠出年金だけではなく企業年金についても、公的年金を補完するものだという位置づけ、補完なのか上乗せなのかというのは非常に微妙な話ではありますが、そのような位置づけで考えています。
確定拠出年金制度が、事実上退職金からも移行しているところが多くなっていることを考えると、私どもとしては、退職時の脱退一時金について、退職前に払い出すことは求めていませんが、退職時については、そのようなこれまでの慣行等を勘案する中では、一定程度要件を緩めていただいてもいいのではないかという位置づけで要望させていただいています。今日もお示ししていますが、現場からこちらの要望が非常に強く上がってきているのも事実ですので、そのような形で要望しています。
○加子委員
今の点ですが、我々も関連会社を抱えている関係がありまして、今後適格退職年金をどうしていくかは非常に大きな課題です。そういう中で、先ほど100人以上、100人未満の話がありましたが、私どもの実感としても、ご説明のとおりかと思っているところです。
中途引出しの件ですが、先程のご説明にもあったとおり、我々としては確定拠出年金も基本的に退職金から持っていったということがありまして、退職金と同じ扱いにしていただきたい、退職金でできたことを単純に確定拠出年金でもできるようにしていただきたい、というのが卒直な要望です。尚、企業年金の位置づけの議論については、我々としては補完というよりは上乗せをするものだと考えております。
○野村委員
信託協会の資料の積立水準のデータを見て、こういうものに接する機会がなかったので、積立不足のところが結構おありなのだと改めて思いました。こういう積立不足の状況が確定給付企業年金への移行もさることながら、企業の中にも、制度の設計そのものは確定拠出年金のほうに将来的に移行したいと考えておられるところがあって、ただ積立不足が足元にあるので、確定拠出年金への移行の1つのハードルになっているということはお耳になさったことはありますでしょうか。
○五十嵐様
これは企業によっていろいろというところはあると思います。例えば、確定拠出年金に移行する場合でも、適格退職年金から移行する場合と、そうではなくて制度設計する場合と、いろいろなケースはあるかと思います。
そういう中で、例えば移行するときに、退職金、確定拠出年金あるいは別の年金制度を含めてお考えになっているケースとしては、それぞれの割合というものもあると思います。1対1で移行されるようなケースですと、不足部分はどうするのかというのはあるかと思います。例えば、適格退職年金に移行していない退職金の部分もあろうかと思います。そういう設計あるいは移行の仕方の中で解決をしていっているというのが、多いと思います。絶対に移行できないかというと、そこまでのことはないのではないかと思います。
○手島様
積立てが非常に不足している場合は、実際には減額して移行ということにならざるを得ないと思います。確定給付にしても、確定拠出にしても、移行時に減額という手続きがどうしても入ってくるところは、積立不足になっているということで、従業員へのご説明等ではある程度ハードルはあるかと思います。ただ、このこと自身が確定拠出年金の導入を阻害しているかというと、先程言ったきちんとしたご説明をする中で移行しているというのが、実態ではないかと考えています。
○森戸座長
よろしいでしょうか。先程の、退職金なのか企業年金なのかという辺りは、この会の重要なテーマだと思いますが、今日はまだヒアリングがありますので、次に企業年金連絡協議会の瀧沢様、相島様、国民年金基金連合会の日原部長から説明をお願いします。
○相島様(企業年金連絡協議会)
企業年金連絡協議会の説明をさせていただきます。私は企業年金連絡協議会の副会長をしているヤマトグループ企業年金基金の相島でございます、よろしくお願いします。私どもは、正会員約500、加入者、受給者を合わせて400万人をカバーする、企業年金の常務理事、規約型の責任者、そのような実務者を中心とした任意団体でございます。本日はその実務者の立場から、要望の点についてお話をさせていただきます。
法改正については、私どもは約1年間かけて会員のアンケート等を採りまして、意見の集約をしてきました。いま信託協会、生命保険協会からの要望もありましたが、専門家にもご意見をいただいて、いろいろとりまとめをしている最中です。確定給付企業年金についてはとりまとめの途中ですので、資料4-2で、私どもの全体的なとりまとめの考え方、とりまとめの途中の確定給付企業年金のポイントについては、私が触れさせていただいて、確定拠出年金については具体的に要望を出しているので、担当の瀧沢さんからご説明させていただきます。
資料4-2ですが、まだまとめ途中で、いろいろと会員から出てきたものを整理している資料です。そのような意味では、いろいろと混み合っているような書き方をしているので、全体の骨子についてだけ私のほうからお話をさせていただきます。
まず、改正要望の骨子という考え方の中で、企業年金制度の改正の目的とは何かということで、ただ今も年金なのか一時金なのかという問題もありますが、一番基本になるのは、制度の安定がなければ、加入者、受給者にとってはリスクが大きいということです。
その意味で法改正の目的は、基本的には制度の安定だと思います。代行返上などを経て、まだ3、4年ぐらいしか経っていないという中で、非常に大きなテーマではないかと思います。
もう1つは、要望の理由の中にも入っていますが、企業年金が多様化しています。確定拠出年金、確定給付企業年金、確定給付企業年金の中でもキャッシュバランスもあります。最近では、確定拠出年金と確定給付企業年金を組み合わせるといった複合化の動きも出ています。そのような意味では、制度ごとにバランスが取れていないと、何かの制度が破綻するという形があるのではないかと思います。その中では、それぞれの制度が継続発展するような形が求められるのではないかということです。
こうした中で、要望の理由としては3つありますが、1点目は、今申しましたとおり、個別化が非常に進行しているということです。確定拠出年金、確定給付企業年金、キャッシュバランス、適格退職年金の統合といったものも含めて、非常に多様化しています。確定給付企業年金についても、予定利率・給付利率に幅があるので、制度ごとに違う部分がかなり出ているのではないかと思います。そのような意味では、支払保証だとか、そのような一律的な制度が基本的にはなじまない部分があるのではないかと思います。
2点目は、企業年金制度は退職給付制度という観点のほうが基本的には強いことです。企業としては企業年金制度は退職給付債務の一環ということで、退職給付制度として一体的な見方があるのではないか。その中で、確定給付企業年金と確定拠出年金それぞれの制度の立て付けの違いの問題、今までもいろいろと要望が出ていましたが、適格退職年金からの移行を含め、制度間全体の基軸になるような一体的な整理をしていく必要があるのではないか。
3点目は、制度環境が大きく変わってきているということです。まず、経営形態が非常に多様化してきています。会社法の改正等がありまして、いろいろな形での企業の形が出てきていますので、単一の制度ではなかなか難しいのではないかということです。それから、高齢者雇用延長や雇用の流動化等、ポータビリティの問題も含めて企業年金制度としてどう対応するのか整理が必要です。
それから、賃金制度が基となっている退職金制度が、かなり大きく変化しています。年功序列型から成果型に移ってきているので、そのような中で年金という部分だけが従来の考え方でもつのかどうか。そのような部分も含めて意見があります。
改正要望の骨子ですが、いろいろと要望事項がありますが、それぞれ会員の中で出てきているものを集約すると、大きくは5つです。まず、(1)はルールの弾力化です。これは確定給付企業年金、確定拠出年金を通してですが、基本的にそれぞれの制度が個々ある中での立て付けが違う、先程の確定拠出年金の脱退一時金の問題もありますが、加入者、受給者、特に加入者の目から見ると、制度ごとに全く立て付けが違うというのは、かなり理解が難しいし、受給権の確保(ポータビリティ)では障害になります。少なくともそれぞれの税制等の問題があるなど、それぞれ要件はあると思いますが、形は1つ共通したものが求められるのではないかということです。
雇用の変化、会社法等への対応の問題もあります。それから、制度の複合化もあります。それぞれの制度でお互いにカバーし合うというような部分では、特に確定給付企業年金の問題ですが、いろいろなルールについては弾力化が求められるのかと思います。適格退職年金からの統合の問題も含めて改正する必要があります。ここは、これから具体的な要望として整理する途中のものを書いています。
(2)は、これは確定給付企業年金の問題ですが、一部確定拠出年金に関わりますが、計算基準が問題ということです。継続基準は基本的には問題はないと思います。非継続基準は、確定給付企業年金の部分、確定拠出年金、適格退職年金からの統合の部分を含めて、基となるお金の算出が、基本的には厚生年金基金からきていますので、年金ありきの考え方ということで、年金の保全が非継続基準の中の第一義になっています。逆の意味で、一時金からきている考え方から言えば、まだ年金資格のない部分も含めて、一時金、選択一時金、給付原価、そのときの時価でどうなのかという考え方です。むしろ、そのほうがなじむということも含めて、整理が必要という意見がありました。
先程の選択一時金の支給上限に関わる制限緩和等も、同じような考え方だと思いますが、その辺りの整理が必要だということだと思います。
次に、企業責任の明確化と負担軽減ということで、ここでは2つです。(3)は、ただ今の計算基準の見直しに関連し、確定給付企業年金の財政運営という部分では、積立ての水準がいろいろあります。このような中で、強弱があって然るべきという、意見がかなり出ています。企業のガバナンスの中で行う部分ですので、企業責任の中で、何を積み立てるべきなのかということも基本的にありますが、それに対して積み立てるやり方については、かなり弾力的な扱いが必要かと思います。
特に適格退職年金からの統合等も含めて、かなり幅の広い部分があるので、財政的にかなり健全というところと、そうでない部分もかなり幅があります。
そうした意味では、いろいろなレベルに合わせた弾力化も必要なのではないかということです。
(4)は、これは会員の一番強い要望ですが、事務の簡素化の問題です。大きくは2つあります。1つは認可、届出に関する部分です。いろいろと申しましたように、企業年金の制度はいろいろな形がありまして、多様化が進む中で、基本的に法定にかかわるのは受給権保護に関連する部分です。これ以外の事項については、基本的には簡素化を望むということです。
特に、最近の許認可、届出の中で、前の厚生年金基金のやり方をかなり踏蹴していますので、様式審査のような部分がかなりあります。そのようなものと、本質的なものと、分けていただかないと適格退職年金からの移行も含めて進まないのではないかということです。様式的なもので何回もはね返されるところもあります。そのようなものも含めて、簡素化を求めているということです。
それと、最近では複合化の中で、確定給付企業年金と確定拠出年金とか、退職一時金を組み合わせている部分がありますので、認可のスピードが違うと経営に影響してくる問題があります。そのようなものも含めて、簡素化を求めたいということがあります。
もう1点は、確定拠出年金等のポータビリティ等の部分です。個人型に移すとか、他の年金制度に移すとか、これからいろいろな形が出てくると思いますが、今ポータビリティのネックになっている部分というのは、事務の部分ではないかということです。相当な部分で緩和をお願いしたいということです。
最後に、確定給付企業年金、確定拠出年金を通して税制の問題ということです。いずれにしても税制については、退職給付という観点から、一体的な見直しをお願いしたいということです。控除の問題等を含めて、統合していただきたいということです。
もう1つは水準の問題です。私ども、会員合わせて約20兆円の年金資産がありますが、税制が動くということでは相当影響がありますので、企業年金制度は、税制の支援がない限り、もたないという部分がありますので、会員の共通、一致する部分として、要望が強い部分です。
以上を基本として、確定給付企業年金は今要望をまとめている途中です。確定拠出年金については具体的な要望を提出していますので、瀧沢さんのほうからお願いします。
○瀧沢様(企業年金連絡協議会)
お手元の資料4-1に沿ってご説明します。先程来の信託協会、生命保険協会の話の中で出ていることがありますので、そのようなものは割愛させていただきます。
1つは特別法人税です。これが今復活すると年金制度が潰れてしまうようなものですから、これは廃止の方向でお願いしたいということです。凍結を続けていくよりも、廃止をすることによって、解散などに行くのではなくて適格退職年金も年金制度に持ってくるのではないか、そういう方向があるのではないかと考えています。
脱退一時金の支給要件の緩和ですが、この制度として、退職給付の一環として企業が設立していますので、他の制度との整合性、例えば厚生年金基金の加算部分なども、脱退一時金の選択一時金の制度があるわけです。確定拠出年金だけないということですので、そのようなことも考えますと、退職給付の一環と位置づけると、退職時における一時金ということで、選択肢に入れていただきたいということです。
限度額の引上げですが、そもそも青天井にしても企業自身はいくらも出せるわけではないので、今の上限を引き上げていただいて、将来の年金の資産の確保にするものにしていただきたいと思います。第2号加入者の確定拠出年金についても、引上げをお願いしたいということです。
マッチング拠出の容認ということですが、年金資産を形成していく上で、本人の自分が出したお金があると、増やそうという意欲が働くのですが、今は事業主しか出していないのです。人が出したお金ですから、どこかに置いておけばそのうち貯まるだろうという感覚ではないかということで、自分がいくらかでも出す、出したお金を自分で増やす方向に持っていきたいということで、マッチング拠出の容認をいただきたいということです。
加入上限年齢の引上げで、これは定年年齢が上がったということですが、各規約において任意に定める方向で整理させていただきたいと思っております。
第3号被保険者の個人型加入も、今は制限されていますが、退職した後、サラリーマンの奥さんといえども自分の年金を作っていく道があってもいいのではないかということで、これも認めていただけたらということです。
次はポータビリティの拡充です。国民年金基金連合会の話で出てくると思うのですが、企業年金連合会に通算企業年金という制度があって、そちらは確定給付型ですので、脱退一時金制度の中に入るのですが、実際問題としては、企業年金連合会の通算企業年金においては脱退一時金というのはありませんので、こちらへの移換も認めていただく、個人が選択できるような選択肢を作っていただければと思います。国民年金基金連合会の個人型へいくと手数料が結構かかるので、移換したお金が減っていくことになってしまうということの解消にもつながるのではないかと考えています。
中小企業退職金共済から確定拠出年金への移換ですが、これは300人という要件があって、人数が増えたら分配するとなっているのですが、折角積み上げた原資を分配するということでなく、確定拠出年金への移換ができるようにしていただければ、将来の年金の原資になるということです。
ここに書いていないのですが、もう1つは運用商品の除外は、今実際問題できていません。これは加入員が1人でもいたら同意を取れということになっています。ただ、現実には制度運営をしている側は、誰がその商品を購入しているかわからないというものですから、何とも言いようがないので、機能しないものです。これは一定の要件の下に除外できるような変更をお願いしたいということです。以上です。
○森戸座長
日原部長、続けてお願いします。
○日原部長(国民年金基金連合会)
前回は制度の実施状況についてお話をしましたが、今回は資料5に基づいて、「個人型確定拠出年金に係る制度改善要望」ということで、ご説明させていただきます。これは確定拠出年金の枠組みの中で改善をお願いしたい事項を取りまとめたものです。
全体が大きな2つの柱からなっていて、第1の柱は2頁にあり、より多くの加入者にとって魅力ある個人型の制度とするためにという観点から、(1)から(3)までの3点を要望しています。
まず第1点目は、第2号加入者に係る掛金拠出限度額の引上げです。2号加入者については、一昨年に1万5,000円から1万8,000円ということで、限度額の引上げが行われましたが、本年3月末の状況を見ると、前回お話をしましたように、すでに約半数の48%の方が、1万5,000円から1万8,000円の掛金を選択し、25%の方は1万8,000円の限度額まで拠出しておられます。
ご案内のとおり、第2号加入者については、企業年金の加入対象とならない層ということで、個人型確定拠出年金の果たす役割は、大変大きなものがあると思っています。一方、限度額を見ると、この制度の中では最も低い状況にありますので、第2号加入者の限度額について、企業型の場合と遜色のない水準まで引上げをお願いします。
第2点目ですが、加入対象年齢についてです。個人型についても、企業型と同じよう60歳に到達すると加入して掛金を拠出することは出来なくなる仕組みになっていますが、これまでも要望や発言があったように、高年齢者雇用安定法が改正されて、定年延長等が進んでいくことも考えられますし、公的年金の上乗せということで言いますと、個人型の確定拠出年金の中でも、第2号加入者はもとより、第1号加入者についても、国民年金の任意加入といった形で、
60歳を過ぎてからも保険料を納める場合はありますので、こうした方については65歳まで加入して、拠出できるよう、加入対象年齢の引上げの検討をお願いしたいと思っています。
その場合、就業状況など、個人型の場合、各人の状況はさまざまですので、あくまで一律の引上げということではなく、加入者の各個人の選択に応じて、加入年齢が延長できるように、実務面の対応も含めてご検討をお願いしたいと思っています。
第3点目は、加入要件に関する検討です。確定拠出年金全体で見ると、第3号被保険者は加入できませんし、企業年金のあるサラリーマンについても、勤務先で企業型に加入できない場合であっても個人型には加入できないということで、過去の勤め先などで拠出した個人別管理資産があっても、運用指図しかできない。継続して資産を積み増し、資産形成を続けていくことができないということになっています。
ですので、勤め先の企業で確定拠出年金に加入できない場合であっても、個人型において拠出や運用を継続できる機会ができることは、老後の資産形成という点で大変大きな意味があると考えています。
もちろん、私どもはこれらの点について大きな論点があることは理解しておりまして、企業年金のあるサラリーマンの加入という論点については、今の加入対象となっている方との均衡の問題をどうするかという点があります。特に第3号の方については、確定拠出年金が公的年金制度の上乗せであるという点から、その整合性をどうするかという根本的な議論が必要になることは承知しておりますので、一足飛びに簡単に結論を出せることではないかもしれませんが、これらの論点の検討と併せて、加入要件の拡大に向けた検討、議論を進めていただきたいと考えています。
.3頁にいきまして、もう1つの柱は、自動移換者の急増への対応です。この点については、転退職によって企業型確定拠出年金の資格を喪失される際に、移換手続きについて十分な説明をしていただくことが重要と考えています。この手続きの周知が一層徹底されるように、引続き指導など、対策に力を入れていただくことをお願いしたいと思っています。
先ほど言いました加入要件の拡大に関する検討も、継続して拠出できる枠を広げることで、この問題の対応にも資すると考えますので、そういう点からも検討をお願いしたいと思っていますが、併せて制度面で、以下の2つについてお願いしたいと思います。
1つ目は、転退職の方に関する脱退要件の緩和です。現在の脱退一時金は、資産額が1万5,000円までの方であれば、企業型確定拠出年金の資格を喪失された際、移換手続きを取られる前であれば、その際の状況を問わずに脱退一時金を受給することができるわけですが、この額を超えると、個人型確定拠出年金に加入資格のある方は脱退することができない仕組みになっています。これは、個人型に加入資格のある方は継続してご自身で拠出できる、積み増しできるという考え方に基づくもののようですが、一方では、企業型に加入されていた方であっても個人型への加入は任意ですし、個人型への追加拠出を選択されない場合も、一律にこの制度の枠内で運用を求めるということになりますと、資産が少額の場合には運用指図に伴う手数料のほうが運用益を上回って、資産が減っていってしまう状況になり、これが自動移換の一因であると考えています。
つきましては、この企業型からの直接脱退の1.5万円の要件について、実態に合った緩和をお願いしたいと思っております。
最後ですが、(2)の自動移換制度のあり方に関する検討です。我が国の現在の自動移換制度は、これほど多くの方が対象となることを前提としたものではなくて、むしろ企業型の資格喪失後に所在が不明になるなど、例外的な場合を想定された制度だと伺っています。ただ、実際には施行後5年を経て、昨年度末では自動移換者が約4万7,000人という状況で、制度創設後に大きく状況が変わってきていると思いますので、実態に合った自動移換制度のあり方について検討をお願いしたいと思っています。以上です。
○森戸座長
ただ今のご説明について、ご質問、ご意見はございますか。
○駒村委員
2点ほどあります。1つは企業年金連絡協議会のほうにで、もう1つは国民年金基金連合会と企業年金連絡協議会の両方に対してです。
企業年金連絡協議会のほうにですが、マッチング拠出についての考え方です。
マッチング拠出を認めていくというのは、企業年金タイプの年金の性格が変わっていくのではないかと思うのですが、マッチング拠出の根拠は、本人の自覚ということだけなのか、他に考えられないのかというのが第1点です。
第2点ですが、これはご両者に関係するところですが、第3号に対する個人型加入の容認のところです。第3号を見送っているというのは、第3号自身が公的年金の保険料を払っていないというのがあって、その払わないという根拠は、所得がないからという整理もあれば、第3号分割制度で整理されたような、2人で作った財産にかかっているのだから、それで間接的に払っているのだという考え方もあるのだと思うのですが、企業年金連絡協議会のほうは後者の考え方もあるのではないかと。ただ、これは公的年金にかかわるだけの部分で整理されているわけですから、この考え方が企業年金のほうまで広がると、企業年金についても分割という議論につながってくるのではないかと思うので、他にこういうことを容認できる根拠があるのか、それについて教えていただきたいと思います。
同様の議論ですが、国民年金基金連合会のほうについてです。2頁の「公的年金制度における整理等」のところの解説をいただけたらと思います。以上です。
○瀧沢様
まずマッチングのところですが、考え方としては当然退職後の年金の受給を多くできるようにするというのがベースで、それに付随して、個人の自覚によって運用等がなされるのではないかと考えます。
ちなみに申しますと、私どもの運営している規約の中では42%の人が定期預金、8%の人が生命保険ということで、元本確保型の商品への投資が半分です。
また、1年間に0%か1%しか資産が増えない、具体的には定期預金しかやっていない人が35%ぐらいいるというのが実態で、私どもは割引率という概念は持っていないので、構わないと言えば構わないのですが、もともと自分で投資をして増やしましょうという概念がベースにあったと思うのですが、実態としてはそうなっていない状況があります。よって、自分でお金を出して、お金があれば運用も考えるのではないかというのを付け加えているというのが、この考え方です。
第3号加入者の容認についてですが、これは全員が専業主婦ではないだろうということです。自分が働いていた期間、確定拠出年金に加入していた期間のある人もたくさん出てくるのではないかという想定が前提にあって、そのような人たちが第3号になった途端に資産形成ができなくなってしまうことが、これから先よく起こりうると認識しています。
全く専業主婦で、旦那の収入で離婚分割のときのようにやればいいではないかと考えたのかというと、そういうことを想定しているのではないのですが、そういうことがあっても、それはそれで構わないかもしれません。想定の前提としては、働く女性がどんどん増えていく、その人が退職して第3号被保険者になった途端に、今まで資産形成していた道が閉ざされてしまうという現状に対して、たとえ本人に収入がなくても、第3号の人の名前が付いた年金を作っていく道があってもいいのではないかという趣旨で考えています。
○日原部長
ご質問の点ですが、ご指摘いただいた要望書の箇所、特に公的年金制度のこの部分とか、この扱いということを前提として書いたわけではありません。この点については公的年金のほうでも今後いろいろな議論があると思いますので、その状況を見ながら、個人型の加入要件の拡大についても検討をお願いしたいという趣旨です。
○藤井委員
企業年金連合会からの話も含めて、信託、生命保険協会からもそうだったのですが、事務の簡素化について、いろいろな意見が出されていたという感想ですが、改めて強調されていたことを理解しました。
質問としては、税制に関しては相当幅広い議論とか、整合性を持った主張をしなければ、却って得たいことも得られないこともあるかと思うわけです。その場合、企業年金連絡協議会のペーパーの中に、給付時課税ということが記されています。幅広い議論は必要なのですが、ここで幅広いことを言っても時間も限られていますから、質問としては、給付時課税とおっしゃっている中身ですが、どのような状態を想定して、給付時課税と言っておられるのでしょうか。
○相島様
税制の問題ですが、基本的にそれぞれの年金の制度ではありますが、一体的な形が加入者、受給者としてはわかりやすいのではないかと思います。
もう1つ「税制全体で退職給付のバランスをとってほしい」と要望していますが、給付時課税というのは、最終のところで退職金課税なのか、所得課税なのか、年金課税なのか、そこで清算を決めれば、形は一緒にできるという考え方で、一体化という書き方をしています。
○藤井委員
給付時課税とするという言葉の意味としては、例えば一時金で取る場合には、退職所得控除をすることを含めて、これを指して課税しているという意味でしょうか。
○相島様
現実に、今確定給付企業年金は脱退一時金があります。脱退一時金については、退職所得扱いということで、所得課税がそのような形になっています。確定拠出年金については、脱退一時金はない形で違う形になっています。
確定拠出年金の問題も含めて、その辺で整理できれば同じような形になるのではないかという考え方をしています。
○野村委員
国民年金基金連合会に質問ですが、最後におっしゃっていた、「自動移換制度の在り方に係る検討」というところで、アメリカの例も参考にしつつとお書きになっていますが、ごく簡単にどういった内容なのかをお話しいただければと思います。
○日原部長
米国では、確定拠出年金の引出しの要件がかなり緩いと聞いていますが、若年の方や資産の少ない方が、中途で引き出してしまうという問題の対応のために、一定の範囲の資産の方が移換手続きを取られない場合については、企業型からの移換の際に、あらかじめ401(K)に入っていた際に決めてあるIRAの口座に資産を自動的に移すという仕組みが導入されたと伺っています。
制度全体の立て方が違うので、それをすぐにそのまま引き移せると考えたわけではありませんが、手続きを取られない方に対する制度の立て方についても、制度創設時と状況はかなり変わっているので、再度実態に合ったものの検討をお願いしたいと思っております。
○森戸座長
他にございますか、よろしいですか。ではご3人、ありがとうざいました。
今日はヒアリングが盛りだくさんで、この後にフリーディスカッションになっているのですが10分もありませんので、あまり時間が取れなくて恐縮なのですが、今日5人の方に報告していただいた内容も含めて、ご自由にご質問、ご意見等をいただければと思います。いかがでしょうか。
○藤井委員
先程税の関係についてコメントをいただいたのですが、検討の進め方としては、退職金と企業年金は当然の如く同じものだと考えて、議論を進めていくことは果たしていいことかどうかという点もあろうかと思っています。
これはここで議論することかどうかはわかりませんが、税務当局との関係もあると考えられますし、退職金と年金を大きく分けた形で現在置かれていることを考えると、そういう中において、本来どういう形がいいのかということもあると思いますが、それと並んで、税の理屈をうまく用いる必要があるのではないかという感じがするので、全体として整合性を保ちながら、理屈も整えつつ、本来やるべきことを進めていくという観点からの検討が重要ではないかと思います。
○森戸座長
確定給付企業年金法、確定拠出年金法と法律があって別になっているわけですので、それは当然のことです。ただ、おそらく今日出たご意見の趣旨は、単に税制だけの話だけではありませんが、企業年金と言いつつ元が退職金制度であって、退職金の性格をかなり引きずっている、実際そのように使われているところもあるのが、年金という形に整理されていることで使い勝手が悪くなっているという声もあるということだと思うのです。そうすると、確定給付企業年金法と確定拠出年金法のバランスなど、そういうこともあるのかと思って伺っていました。もちろん、税制のことは藤井委員がおっしゃったとおりだと思います。その辺りも、またこれから議論していきたいと思います。他にいかがでしょうか。
○小島委員
今日のヒアリングで各団体から、確定拠出年金についての脱退一時金の支給要件の緩和についての要望が寄せられています。それから、マッチング拠出についての要望が出されていますが、確定拠出年金の性格との関係でその辺は少し整理する必要があると思います。
また、退職時、脱退時の一時金の支給要件の緩和という要望があります。これは日本の確定拠出年金が退職給付から移行したということで、それとの整合性ということでの要望が出されているのですが、そうすると退職一時金に自ら従業員がまた拠出するということは考えられないので、そこは同じ論理で議論できないと思いますので、そこは整理する必要があると思います。そういう意味で、これからの議論においてそのようなところは整理していくべきではないかと思っています。
○森戸座長
なかなか1つの性格に、これはこういう性格で他のものは受け付けませんという制度はないでしょうし、そのような言い訳はできないでしょうけれども、ただ、そもそもの趣旨があると思うので、そこは整理をしながら、整合性のない議論にならないようには気をつけたいと思います。
○島崎座長代理
議論に入っていながら、質問も含めてということになってしまいますが、この4、5年、もしくはもう少し10年ぐらいのタームでもよいのですが、企業年金全体がどのような環境の中に置かれるかを考えたときに、資産運用の問題や会計基準の問題などもあろうかと思います。異論があるのかもしれませんが、それは少し措くとして、他の要素で考慮しておかなければいけないものとして、適格退職年金の移行問題は重要な問題として認識しておかなければいけないと思います。
質問の1つは、企業年金連絡協議会にお伺いしたいのですが、いわゆる賃金カーブの見直しの動きが、特に退職給付会計が導入された前後にいろいろありましたね。企業も本格的に見直しを進めたと思うのですが、そこはほぼ一段落したと考えてよろしいのか、そうではなくて、企業の合併・再編が進む中でまだいろいろ残っている問題が数多くあると考えるべきなのか。そこは確定給付企業年金なり確定拠出年金なりの給付の話と関係すると思うので、その点についてお伺いしたいと思います。会社の大小や業種などの違いはあると思うのですが、全体状況をどのように押さえていけばいいのかということでご質問したいと思います。
もう1つは、信託協会と生命保険協会にお伺いしたい。個社のお立場と協会のお立場というデリケートな問題はあるかもしれませんが、特に確定拠出年金が導入されるときにインフラの整備が大変だという話があったと思うのですが、その状況はほぼ一段落したと考えてよいのか。あるいは例えば適格退職年金への移行の問題とか、今日出されているいろいろな問題や制度・運用の変更があったときに、それは相当なシステム変更なり、インフラの整備を要することになると考えるべきなのか。感覚的なもので結構なのですが、特段のコメントがあれば教えていただきたいと思います。
また、これは企業年金に直接的にどの程度大きなインパクトを与えるかどうかわかりませんが、特に団塊の世代が退職の時期を迎えるとなると、企業年金のキャッシュフローが変わってきます。その辺の問題はどのように考えておけばいいのか、特にコメントがあればお聞かせいただきたいと思います。
○相島様
企業年金の現状ということで、実務をやっている立場からお話をしますが、まだ一段落はしていないのではないかと思います。企業年金法ができて、確定拠出年金で5年、確定給付企業年金で4年です。代行返上を経て、企業の制度として、それほど早く求めるものにいきなり行けるかというと、まだ途中という考え方が多いのではないかと思います。
今ご指摘があったように、団塊の世代の問題もありますが、2つ抱えているのかと思っています。1つは雇用情勢等もありまして要員構成が変わります。団塊の世代が2007年以降は受給者になっていきます。基本的には確定給付企業年金がなぜ残っているかというと、現状は団塊の世代はまだ50代後半です。給付を目の前にしてそれほどドラスティックにやれるかというのがあります。確定給付企業年金については、特に後半の受給権が一番大きな目玉の制度ですので、そこに急激には手をつけられません。その辺がキャッシュバランスという部分が導入された一番大きな背景だと思っています。今後、その辺りを含めて、まだキャッシュバランス化が加速すると見ています。
確定拠出年金についてですが、確定拠出年金は若年でないと機能しないと思います。積立期間が短いとリスクは取れない部分があるので、これは若い方、キャッシュバランスのその先ということで確定拠出年金制度があるのではないかと思っています。
企業年金間のバランスが取れないと申しましたが、本質的には企業リスクから言えば、確定拠出年金の脱退一時金だとか、そのような部分が要件的に整備されると、むしろそちらに加速する可能性もありますし、その辺の加入員の構成と受給者の問題、負担と給付のバランスの問題があります。確定給付企業年金は全体でお互いに負担し合う制度ですから、そこのバランスが崩れると確定拠出年金化が加速するのだと見ています。まだ一段落はしていないと考えています。
○五十嵐様
まず1つはインフラ、これはいろいろなシステム整備も含めた部分だと思いますが、まず当初のところ、対応はおおむね終了していると思います。
設立当初のシステム装備が大きい状況ではあったわけですので、今後どのような形で負担、コストを見ていくのかはあるかと思います。
今後については、確定給付企業年金にせよ確定拠出年金にせよ、法改正に伴う一定の手当は出てくると思うので、このような中でなるべく早く対応していくことは我々に必要なことだと思っています。
キャッシュフローに関しては、運用のところが個々の制度によって、どのように考えていったらいいか、ある程度個別性の中でご相談しながらということになるのではないかと思います。
○手島様
確定拠出年金のインフラについては、負荷も大きいということで、当初はかなり投資も増えていたのですが、一定程度インフラも整って、現在は一段落している状況だと思っています。今後は加入者がさらに増えてくるという状況下でのシステムの増強というのはありますが、あるとすれば例えばマッチング拠出等が認められるというように、制度がさらにバージョンアップしていったときに、課税後拠出をどうしていくのか、そうしたところをさらに管理していくとなると、もう一段のインフラ整備が必要になってくると考えています。
現状の中で進めていく中では、今のインフラの中での一部変更等については、ある程度は対応できると考えています。
団塊の世代の退職の話ですが、これは確定拠出年金にかかわらず、私どもは昔から企業年金を受託していますので、このようなキャッシュアウトの問題は当然見据えて考えています。ただ、確定拠出年金については、その部分でのキャッシュフローはまだ積み立てていませんので、大きくはないと思いますが、将来的にはその辺りのキャッシュフローを見据えた運用の選択肢のようなもの、あるいはその後どのように運用していくかということについては、しっかり考えていかなければならないと認識しています。
○森戸座長
他にご意見、ご質問はいかがでしょうか、よろしいですか。ディスカッションにあまり時間を取れなくて申し訳なかったのですが、今日は充実したヒアリングができたかと思います。本日はこれで終了いたしますので、事務局から研究会の今後の進め方についてご説明をお願いします。
○濱谷企業年金国民年金基金課長
それでは資料6の今後の進め方についてです。次回は引き続きヒアリングをしてはどうかと考えております。対象はレコード・キーパーの大手2社、NPO法人確定拠出年金教育協会、在日米国商工会議所です。委員のプレゼンテーションということで、確定給付企業年金を中心に小野委員、確定拠出年金を中心に野村委員に、主に諸外国の制度についてプレゼンテーションしていただけたらと思います。
○森戸座長
では本日はこれで終了いたします、ありがとうございました。
(照会先)
厚生労働省 年金局 企業年金国民年金基金課 企画係
(代表)03-5253-1111(内線3320)