2016年1月12日 第33回社会保障審議会年金部会議事録

年金局

 

○日時 平成28年1月12日(火)10:00~12:00

○場所 東京都千代田区霞が関1-2-2

厚生労働省 18階「専用第22会議室」

 

○出席者

神 野 直 彦 (部会長)

植 田 和 男 (部会長代理)

小 塩 隆 士 (委員)

菊 池 馨 実 (委員)

駒 村 康 平 (委員)

佐 藤 博 樹 (委員)

武 田 洋 子 (委員)

出 口 治 明 (委員)

原 佳 奈 子 (委員)

平 川 則 男 (委員)

藤 沢 久 美 (委員)

牧 原 晋 (委員(代理出席))

宮 本 礼 一 (委員(代理出席))

森 戸 英 幸 (委員)

諸 星 裕 美 (委員)

米 澤 康 博 (委員)

○議事

○神野部会長 それでは、定刻でございますので、ただいまから第33回「年金部会」を開催したいと存じます。

 第33回を数えておりますけれども、新しい年が明けてからは初めての開催でございますので、心より年頭の御挨拶を皆様方に差し上げたいと思います。

 年が明けて何かとお忙しいところ、万障繰り合わせて御参集いただきましたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。

 本日の委員の出欠状況でございますが、小室委員、牧原委員、宮本委員、山口委員、山本委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。また、駒村委員、諸星委員からは、ややおくれて御出席との御連絡を頂戴しております。

 本日欠席をされております牧原委員の代理として、日本経済団体連合会の阿部参考人。それから、宮本委員の代理としてJAMの古川参考人が御出席いただけるということでございますので、部会の御承認を頂戴できればと思います。よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○神野部会長

 ありがとうございます。それでは、御承認をいただいたということにさせていただきます。

 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、この会議は成立しているということを御報告申し上げたいと思います。

 それでは、議事に入ります前に事務局から出席者の御紹介と、資料の確認をさせていただきます。事務局よろしくお願いいたします。

○総務課長

 事務局からの出席者ですが、お手元の座席表のとおりとなっておりますので、紹介にかえさせていただきます。

 お手元の資料を確認させていただきます。本日はヒアリングでございますけれども、プレゼンテーションをしていただける方からそれぞれ資料の提出がございます。

 資料1、マッキンゼー・アンド・カンパニーの資料。

 資料2、慶應義塾大学小幡先生の資料。

 資料3、東京大学名誉教授の若杉先生の提出資料。

 資料4、GPIFからの資料となっております。

 参考資料1「GPIF関係」と題した事務局からの資料。

 参考資料2「企業年金連合会におけるインハウス運用の状況」というタイトルの資料がございます。

 このほかに資料番号はついてございませんが、本日のヒアリング対象者の名簿、それから、本日おくれて御出席と御連絡を受けておりますが、慶應義塾大学の駒村先生から提出された資料を準備させていただいております。

 あわせて委員の皆様の机上には、ヒアリング項目を記載した資料を配付させていただいております。漏れ等ございましたら事務局に申しつけください。

 以上です。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。お手元の資料を御確認いただければと思います。過不足ございませんでしょうか。よろしいですか。

 それでは、大変恐縮でございますが、カメラの方はこれにて御退室いただければと存じます。御協力いただければ幸いでございます。

(カメラ退室)

○神野部会長

 それでは、議事に入らせていただきますが、お手元に議事次第が行っているかと思います。御参照いただければと思いますけれども、本日は年金積立金の管理運用にかかわる法人の運用のあり方についてということで、関係機関、有識者の皆様方からヒアリングを頂戴することを議事といたしております。

 前回はガバナンスの強化について御議論を頂戴したわけでございますけれども、今回はもう一つのテーマでございます運用のあり方について御議論を頂戴できればと考えておりますが、それに先だって関係機関、有識者の皆様からヒアリングを頂戴したいと考えております。

 具体的な運営でございますけれども、初めの1時間程度で関係機関、有識者の皆様からヒアリングを頂戴して、残りの1時間程度で質疑応答をさせていただくという運営を考えておりますので、よろしく御協力方お願いを申し上げる次第でございます。

 本日はマッキンゼー・アンド・カンパニーより、トロント支社シニアパートナーのサーシャ・ガイ様、日本支社パートナーの香月史秋様、モントリオール支社準パートナーのアレクサンドル・シャトーヌフ様。

 さらに慶應義塾大学ビジネススクール准教授の小幡績様。

 東京大学名誉教授の若杉敬明様。

 年金積立管理運用独立行政法人の水野理事、大江理事に御臨席をいただいております。

 まず、ヒアリングに先立ちまして、事務局のほうで準備をしていただいております参考資料について事務局から補足して御説明いただければと思いますので、よろしくお願いします。

○大臣官房参事官(資金運用担当)

 参考資料1と2につきまして、私のほうから御説明をさせていただきます。

 これまでに委員の方々から御紹介のありました資料等を追加してお配りしておりますので、その点を中心に御説明させていただきます。

 参考資料1をおめくりいただきまして1ページ目でございますが、株式運用に関する過去の議論でございます。年金積立金の自主運用を開始した平成13年4月までの時点での議論、年金自主運用検討会報告書あるいはそれを受けた年金審議会の意見書の中で、株式運用に関しましては、有価証券市場への影響や株式投資による企業経営の影響が不適切なものにならないようにするといった指摘がなされてございました。

 また、2ページでございますけれども、平成12年12月に自主運用を開始した際、年金資金運用基金の運用の基本方針を議論いただきました検討会の中では、株式運用において個別銘柄の選択は、企業経営や他の投資家に与える影響を考慮し、基金が直接行うべきではない。あるいは公的機関である基金が直接議決権を行使する場合、国が民間企業の経営を支配する、あるいはこれに影響を与えようとしているといった懸念を生じさせるおそれがあるので、基金が直接行うのではなく、運用を委託した民間運用期間の判断に委ねるべきであるといった指摘が、あったということでございます。

 3ページは国会での議論を紹介しております。省略させていただきます。

 4ページでありますが、その後、年金積立金の自主運用が始まってからの時点で、平成15年の時点で年金資金運用分科会におきまして株式運用に関する議論が行われた際、本日御出席いただいております若杉東大名誉教授が座長を務められました分科会の中で、株式を含む分散投資の是非に関する意見がまとめられたところでございますが、この中でも年金積立金の運用と国民経済との関係につきまして指摘がなされているところでございます。

 5ページ、GPIFにおけるインハウス運用の対象・手法に関する現在の制限などについてでございます。これは一度お出しした資料でございますけれども、下右側に注書きを少し充実させており、例えばデリバティブ取引などにつきまして以下の取引について認められているということで、内容を少し詳しめに書いてございます。

 そのデリバティブ取引ですけれども、6ページでございます。デリバティブ取引の基本的な内容につきましての記載をしております。

 また、7ページに、デリバティブ取引自体はさまざまな商品が開発されてまいっておりますし、今後もさまざまな商品が開発される可能性があるということでありますけれども、現在ある主なデリバティブ取引につきまして、7ページの下のほうで一旦整理をしております。先物取引、オプション取引あるいはスワップ取引などが考えられますが、これらのうち下線のある取引につきましては、現在GPIFにおいてインハウスの運用が認められているという状況でございます。これら法令におきまして限定的に列挙しているという形でございます。

 8ページ、9ページは、既にこれまでの部会の中でお示しした資料でございます。

10ページは厚生年金基金及び確定給付企業年金のインハウス運用の状況でございます。厚生年金基金等におきましては右側のGPIFと異なる点としましては、体制が整ったところにつきまして国内株式のパッシブ運用が、インハウスでの運用が認められている。あるいはそれに伴いまして株式指数、先物等もリスクヘッジの目的に限って認められているという状況でございます。

 また、やや細かいところになりますけれども、短期資産の中でコール資金の貸付、手形の割引等も認められているという状況がございます。

11ページ、実際にそれでは厚生年金基金及び確定給付企業年金の中でインハウス運用を行っているところはどこになるのかということでございますが、まず企業年金連合会におきましては、後ほど御説明いたしますように自家運用での比率40%を超える程度を今、インハウスで行っておりまして、対象となる資産といたしましては国内債券、国内株式、外国債券を対象といたしております。現在、GPIFにおきましては後ほど説明があるかと思いますが、法令上は国内債券と外国債券がインハウス運用の対象と認められておりますが、実際に行っておりますのは国内債券のみでございます。

 確定給付企業年金基金の中では、現在、自家運用を行っているのは3基金、厚生年金基金におきましては1基金のみが自家運用を行っているという状況でございます。それぞれ比率は書かれているとおりでございます。

12ページ、13ページは、諸外国の運用機関との比較でございます。この後もヒアリングの中で説明があるかと思いますけれども、各国の年金積立金運用機関について整理をしたものでございます。

12ページはそれぞれの制度がどのようになっているのかということを含めて、カナダ、スウェーデン、韓国、米国、オランダの例を引いております。

13ページでございますが、御紹介のありました資料でございまして、公的年金運用機関がそれぞれ自国の株式市場に占める投資株式の保有割合がどれぐらいになっているのかという資料でございます。例えばOASDI、米国の社会保障信託基金におきましては、これは非市場性の米国債のみの保有になっておりますので、国内株式の運用割合はゼロでございますが、カルパースなどでは国内市場規模に対して0.4%、CPPIB(カナダ)で0.9%、お隣韓国のNPSでは12.5%、オランダの公務員年金ABPでは0.9%というところでございます。GPIFにつきましては、国内市場規模に対して国内株式の資産保有割合が7.6%でございます。

 なお、注意点といたしまして国内市場規模につきまして固定株を除いた浮動株等での市場規模になっておりますので、例えばGPIFの国内市場規模、東証の市場規模でいきますと500兆円を超えているわけですけれども、この中ではそういう固定株等を除いた浮動株等での市場規模ということで整理をしております。

14ページは従前お出しした資料でございます。

15ページはGPIFの運用の中でパッシブ運用、アクティブ運用の比率を示したものでございまして、左上にございますように現在、市場運用している資産の中でパッシブ運用の比率は約81%ということで、8割を超える資産をパッシブ運用で運用しているということでございます。

16ページ、17ページは関連してアクティブ運用に関する最近の指摘ということで、「公的・準公的資金の運用、リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」におきましては、アクティブ運用の比率を高めることについて御指摘がございましたし、また、当年金部会の専門委員会におきましては、このアクティブ運用につきまして収益最大化の努力が年金財政の強化に貢献するという考え方に立てば、確たる根拠のある場合にはより高い収益を求めてアクティブ運用を認めるという既存の方針を維持する。そのためのたゆまぬ検討を明示的に求めるという指摘がございます。

17ページはパッシブ、アクティブの超過収益率の状況でございます。

18ページ以下はLPSあるいはインフラ共同投資の状況、また、年金積立金の運用経緯等が20ページ以降からございますけれども、いずれも既にお出ししている資料ですので説明は省略させていただきます。

 あわせて参考資料2としてA4縦の資料をお配りしております。企業年金連合会からインハウス運用の状況につきまして資料をお出しいただいたところでございますので、簡単に触れさせていただきます。

 企業年金連合会におきましては、先ほど少し触れましたように、総運用資産12兆円のうち4割をインハウスで運用しているという状況でございます。その収益率の実績は国内株式、国内債券、外国債券それぞれ1ページから2ページ上段にかけて記載のあるとおりでございます。ベンチマークに対してややプラスという状況かと思います。

 2ページでございますが、企業年金連合会におけるインハウス運用導入の背景ということで整理をいただいておりますが、導入時期といたしましては国内債券が最も早く1990年、その後、2002年に国内株式。外国債券につきましては2008年からの運用を開始しております。

 企業年金連合会におきまして、インハウス運用の意義として運用コストの削減、機動的なリバランス対応、外部キャッシュフローの効率的な管理、効率的なトランジション・マネジメント、運用ノウハウの蓄積ということで5点を挙げておられます。

 運用コストの削減につきましては、外部運用機関に運用を委託する場合に比べまして、低コストの運用が可能であるということ。

 機動的なリバランスの対応につきましては、政策アセットミックスからの乖離を調整するリバランスの場面におきまして、インハウス運用を積極的に活用することでタイムリーで効率的なリバランスが行える。また、この際にはインハウス運用において株式、先物の売買を行うことによって、株式のエクスポージャー全体の調整を行っているという御指摘です。また、外貨建て資産の為替リスクの管理のために、インハウスの中で為替予約を活用しているという記載がございます。

 外部キャッシュフローの効率的な管理ということでは、各加盟の企業年金からの資産の移管や受給者への年金給付など、外部との資金の流出入が定期的に生じておりますので、この外部キャッシュフロー管理のためにインハウス運用を活用しているということでございます。

 4点目でございますが、効率的なトランジション・マネジメントといたしましては、運用を委託している外部運用機関の変更の際に、委託を変更する、変更元の運用機関の保有有価証券を売却する際に、インハウスを持っていない場合には保有有価証券を売却して現金化して、その現金を変更後の新しい運用機関に配分して一からポートフォリオを構築することが考えられますけれども、その場合には取引にかかる時間のロスや手数料等によるコストが発生することから、これを避けるために一時的にインハウスで現物のまま証券移管を受けまして、新しい運用機関に移す際に不要な銘柄を低コストで売却して、残った現物ポートフォリオと必要な現金を新しい運用機関に配分するというような効率化を図っているということでございます。こうした行為をトランジション・マネジメントといいまして、例えばGPIFではそのためにトランジション・マネージャーの採用等を行っているところでございますけれども、このようなトランジション・マネジメントに係るコスト等の削減ができるということでございます。また、運用ノウハウの蓄積も期待できるということでございます。

 運用コストにつきましては、3ページ下段にございますようなシステム関連経費、信託報酬等々の現状を記載いただいております。委託運用との比較といたしましては、基本的に委託運用する場合には運用資産残高に比例する変動費的性格のコストとなるということでありますが、インハウス運用に移した場合には、主なコストはシステム関連費と人件費ということで、資産残高に比例しない固定費的な性格のコストになる。したがいまして、資産規模が一定以上であれば委託運用よりもインハウス運用のほうがコスト的に有利になるという考え方で、インハウス運用を活用しているということでございます。

 最後、株主議決権の行使につきましての企業年金連合会の取り組みが4ページにございます。企業年金連合会では、2002年7月からインハウス運用開始後に株主議決権の行使を行っておりますけれども、2003年2月には株主議決権を行使するための判断基準として基準を策定しているということでございます。また、2011年4月からは行使指図に係る業務を日本投資環境研究所に一部委託して、業務の効率化を図っているということでございます。

 私からの説明は以上でございます。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 それでは、冒頭申し上げましたようにヒアリングに移りたいと思います。

 初めに、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社パートナーでいらっしゃいます香月史秋様から御発表いただければと思いますので、よろしくお願いします。

○サーシャ・ガイ氏

 おはようございます。マッキンゼー・アンド・カンパニーのサーシャ・ガイと申します。トロント支社のシニアパートナーを務めております。

 私の隣におりますのがアレクサンドル・シャトーヌフと申しまして、モントリオール支社の準パートナーをしております。その隣におりますのが香月史秋で、日本支社のパートナーを務めております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 私自身ですけれども、マッキンゼーにいて年金基金の担当をずっとしてまいりました。世界各国の北米、アジア、ヨーロッパといった年金基金を過去14年間担当し、さまざまな支援を行ってまいりました。本日は私の今までの活動を踏まえて皆様に知見を御共有できたらと思っています。

 本日ですけれども、今、世界の年金基金をめぐる環境について、そして、どういったトレンドがあるかということについて御説明をしていきたいと思います。私と香月でさまざまなデータを御紹介しながら、そのトレンドについて御紹介していきたいと思っております。

 トレンドですけれども、3つポイントがございます。

 1つは、世界の年金基金においてはインハウス運用をふやすというトレンドがあるということです。こういったトレンドは、特に過去10年ほど前から始まってまいりました。この点に関しましては、GPIFがそのトレンドと少し乖離があるのではないかと考えておりまして、この点について御説明をしたいと思っております。

 第2点目としては、世界の年金基金においてオルタナティブ投資をふやす傾向があるということです。アセットをオルタナティブ資産に振り向ける傾向があるということです。具体的にはプライベートエクイティ、インフラストラクチャー、不動産、ヘッジファンドといったオルタナティブ資産がございます。ここの点に関してもGPIFと世界のトレンドの間に乖離があると思いますので、ここについても述べさせていただきたいと思います。

 3点目といたしましては、こうした世界のトレンドをきちんと追っていくということは大切ですけれども、ただ、その世界のトレンドに追従するというだけではだめなわけです。そのトレンドに従う際に、このオルタナティブ資産やインハウス運用を行っていく際にそれをうまくやるにはどうすればいいのか、どういった戦略をとるべきなのか、そういったことをきちんと考えて、うまく実行していくことについて申したいと思います。

○香月氏

 改めまして、マッキンゼーの香月と申します。よろしくお願いいたします。

 ここから幾つかチャートを見ていただきながらお話を進めたいと思います。

 まずお手元の3ページを見ていただきたいのですけれども、先ほどサーシャがキーメッセージ、3つのうち2つ言っていたと思うのですが、まずインハウス比率、オルタナティ ブ投資に関する積極性なのですけれども、お手元にある年金基金さんは世界にあるトップ20の中で、かつ情報公開をしている企業が並んでおります。その中でインハウス運用比率を見ていただきますとGPIFが28%、その他の基金さんの数字を見比べていただくと一目瞭然かなと思っています。もちろんこれはスナップショットの話でありまして、ここまで来るのに5年、10年という時間をかけて変わってきているということは言うまでもないと思います。

 また、もちろんここには載っていませんけれども、大事なのはこの中身です。アセットクラスが何なのかというのも非常に大きな着眼点で、どこまで外国株式を取り入れているのかとか、そういった点も含めてインハウス比率は見ていく必要がありますが、一般論として見た場合に、GPIFのインハウス比率というのは低いというのは言えるかなと思います。

 次のオルタナティブ投資が占める割合、先ほどサーシャが言っていましたPEですとかインフラですとか不動産、ヘッジファンドの割合ですけれども、ここを見ていただいてもわかりますとおり、ほかのファンドが20~40%と高い比率のオルタナティブ投資をしているというのも事実としてございます。具体的な例が右にございますが、こういった実例がございます。後ほどケーススタディーでもお話できればと思っております。

 もう一つ、このチャートの中で着眼していただきたい点が、表の下のほうを見ていただくと、オルタナティブ投資が高いところと、5年間の正味収益率が高いところに関連性が見える点かと思います。これはもちろん高度な技術がなければできないことなのですが、このようにオルタナティブ投資をふやすことによって5年間の正味収益率を高めているという関連性について、着眼していただければと思っております。

 続きまして4ページなのですけれども、こちらは弊社でことし1月ぐらいにやったサーベイの結果です。これは2015年のサーベイで50ぐらいの年金基金さんのうち、26の年金基金さんに御参加いただいたものです。GPIFさんはこのサーベイには今回入られていないのですけれども、合計で6.3兆ドルということでかなり大部分のシェアを占める大手でございます。これらのファンドに今後5年以内にこういったオルタナティブなアセットに対して投資をどんどんするかどうかという質問をしたところ、どのアセットクラスを見ていただいても8割ぐらいの数字で高い、もしくは極めて高いということで、先ほど見ていただいた数字もありますけれども、今後オルタナティブ投資に対してどのような姿勢でいらっしゃるかということを見ると、今後もどんどん積極投資をしていくという方向性にあると考えられます。

 さらに幾つか例を見ていただくと、例えばケベックにあるCDPQというのが同じカナダのBombardierに30%投資をしているとか、2つ目のインフラの事例もそうですけれども、カナダの3つの年金基金さん、これはOMERSというオンタリオのGPIFさんも手を組まれているパートナーだと思いますけれども、合同で有料道路に投資をするといったような案件が出てきております。

 5ページは先ほどお話したオルタナティブ投資と同じようなお話で、リミテッドパートナーの世界でも同じようなことが言えるというものを示した表でございますので、細かい点は割愛させていただければと思います。

 私からもう一ページお話をさせてください。6ページになります。これは先ほど冒頭で見ていただいた20ぐらいのファンドで、数字がとれるところについてプロットをしたものなのですが、縦軸に5年間の年間収益率、横軸にインハウス比率をプロットしたものでございます。これを見ていただくと、まずわかることが、右上に多くのプレイヤーが集まっている。インハウス比率が高いところが結果として運用実績も高いところとつながっているということがまず1つあると思います。

 もう一つすごく重要なのは、インハウスをするプレイヤーが、ともすれば収益率が低いプレイヤーが多いのではないかというような考え方もあると思うのですが、そういったことは全くなくて、これは見ていただければわかるかなと思っています。こういった点がこのページからも見ていただけて御理解いただけるかなと思っています。

 ここから残り時間短いのですが、サーシャのほうで幾つか冒頭にお話した変遷、10年ぐらいかけてインハウスを強化していったという変遷について少しお話をしてもらいたいと思います。

○サーシャ・ガイ氏

 私のほうからはケーススタディーについて御紹介させていただきたいと思います。海外の年金基金はどのような変遷、変化をたどって、かつては外部委託が主だったのが自家運用を主とする体制に移行できたという、その過去の変遷についてお話をしていきたいと思います。

 まずこちらのケーススタディーですけれども、オンタリオ州職員退職年金基金(OTTP)の事例になります。こちらの年金基金は1990年に設立されました。その当初は100%外部委託をしていました。最初にはディベンチャーということで債券の投資を行っておりまして、当時の金額としては約180億ドルを投資していました。その後に1994年になって投資プログラムを開始いたしました。それまで持っていた債券を現金化して、株式と公社債の投資を開始したわけです。そのときに国内にオルタナティブ投資、プライベートエクイティ市場が存在しなかったために、独自に地場の銀行と組んでプライベートエクイティの投資を開始しました。それが直接投資になります。その後に1998年になりましてエクイティ及び債券運用についてもインハウスの運用を始めることとなります。それが1990年代後半となります。こうした経験を積んだことによってOTPPでは自信を深めることになりました。適切な人材を確保し、きちんとしたITシステムを構築してきたことで、インハウスの運用が十分にできるという自信を深めました。

 そして、株式や債券の運用についても自家運用ができるようになったということで、それが1990年代の後半です。

2000年になりますと、不動産の投資についてもインハウス運用を始めました。2000年の時点で100%ではありませんが、ほぼ全ての投資についてインハウス運用ができる体制になっていたということです。こうした経緯を見てもわかりますように、1990年に設立されて以来、約10年間かけてこのような形でインハウス運用をふやしてきました。

1990年以降、ふやした結果、年率換算で収益率は10.2%に達しています。現在、従業員は1,000人程度となっており、オフィスはトロント、ロンドン及び香港にございます。

 ここから読み取れる重要なメッセージが3点ございます。

 1つ目は、こうしたインハウス運用をふやす変遷というのは長期にわたるものだということです。1日にしてこれを達成できるということではなく、このOTPPのケースでも10年かけてこれがなされました。慎重かつ思慮深くどういったことをしなくてはいけないかということを考えて、インハウス運用をふやしていくことが重要です。

 2つ目は、やり方はさまざまな方法があるということです。OTPPの場合はまずオルタナティブ資産をインハウス運用し、その後、債券をインハウスという形でステップを踏んで行いました。

 別の例では、例えばノルウェーの石油基金の場合は逆のパターンをとっておりますけれども、いずれにしてもさまざまな方法がありますが、ステップを踏むことが重要です。

 そして3点目としては、ガバナンスが極めて重要だということです。適切なガバナンスを敷くことによって適切な人材を確保し、適切な形でインハウス運用の体制を構築することができると考えております。

 では、今のケーススタディーの後にノルウェーの事例を載せていますけれども、こちらは時間の関係上、割愛させていただきます。

 9ページ目でインハウス運用した場合のメリットと課題についてまとめておりますので、そちらをごらんください。

 まずメリットですけれども、既に別の方が言及されている点もありますが、まず最初にメリットとして申し上げたいのはコスト削減ができるということです。インハウス運用をした場合は外部委託をした場合に比べて非常にコスト効率的。費用も少なくて済むケースが多いということです。

 2つ目に関しては、より柔軟性が高まる、また、機動力もふえるということです。

 3点目としては、インハウス運用をすることによってさまざまなノウハウが蓄積されるということ。リスク管理能力の高まり、また、セクターに関する知見も深められるということが挙げられます。

 一方、課題としましてはさまざまなものがございますけれども、それぞれに相関していると考えております。関連があると考えます。まず何よりも大切なのは、そうしたインハウス運用をするための強いケーパビリティー、しっかりとしたケーパビリティーが必要だということです。具体的にケーパビリティーというのは投資の専門家、そういった優秀な人材が確保できるということ。そしてリスク管理がきちんとなされるようになるということ。そして3つ目にはミドルオフィス、バックオフィスといったシステムについてもしっかりとしたものが構築されているということです。こうしたものをきちんと基金の中に確保するためには、強い長期にわたるコミットメントが必要です。コミットメントはスポンサーや理事会の方々、そのほか監督者あるいはそのほかのステークホルダー、全ての人から長期にわたるコミットメントがなくてはいけません。しかし、こうしたことを乗り越えて実現することができれば、GPIFの価値、効率性が格段に高まると考えます。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーからは、年金基金のインハウス運用の国際的状況について御説明をいただきました。

 引き続いて、慶應義塾大学ビジネススクール准教授の小幡績様から御発表を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○小幡氏

 慶應大学の小幡です。よろしくお願いします。座ったままで失礼します。

 ヒアリング項目が机上配付されていると思いますが、ヒアリングされるまでもないというか、答えるまでもないと思っております。全体でインハウスのメリットは何か。今の資料にもございましたように、世界各国、先進国ではインハウス運用をしてリターンを上げている。日本だけもたもたしている。何をやっているんだということでございます。

 ヒアリング項目として、インハウス運用に関する細かい項目について、規模、選択、議決権と、そしてインハウス以外の話として,オルタナティブ投資やデリバティブの問題が書かれておりますけれども、これらも自由にやったほうが効率よく運用できますので、運用のリターンを確保するという意味では制限をかけないのが明らかに理想的ですので、これは答えるまでもないといいますか、一切制約をかけないほうがいいということになります。ただ、そうしますと年金部会としても厚生労働省としても無駄にヒアリングをしているのかという話になるのですけれども、やはり懸念する理由はそれなりにあるわけで、それについて私の資料が一番無駄な資料かもしれませんが、資料2で少しだけお話したいと思います。

 めくっていただきますとガバナンスの話から入っておりまして、運用に制約をかけるということは、ある種のガバナンスをかけるということでございます。ここではガバナンスとは、ある主体が別の主体の行動に「たが」をはめるということです。コーポレートガバナンスにおけるガバナンスというのは日本語訳が割と困るわけですが、経済的に言うと企業統治という言葉や規律づけをするという言い方と二つあります。法律的にはコンプライアンスということですが、この3つの種類のガバナンスがございます。

 次めくっていただきますと、経済主体にインセンティブを与えるという規律づけですね。インセンティバイズということですけれども、これはちゃんと怠けないように頑張れ、努力しろという量の話。ただ、量にはもう一つ、方向がありまして、リスクをどの程度とるか。リスク量についてもそのリスクをとにかくやみくもにとってリターンを上げるのではなく、リスクの程度をどの程度にするかというインセンティブについても量のコントロールが必要で、それは外からのガバナンス、制度上のガバナンスということになります。

 方向づけに関しては、企業の場合は、経営者が株主のためか自分のためか、あるいは従業員のために行動するのかという話になりますが、一般的にはファイナンスの世界では投資家のためにちゃんと働きなさいということです。コンプライアンスは悪いことをするなということですから、きょうは余り関係ないと思います。

 1枚めくっていただくと、ガバナンスは別の切り口で言うとモニタリング、経済学的にはモニタリングという側面がございまして、これは3つのモニタリングがございます。ex ante、interim、expostということで、事前、やっている途中、事後ということですが、普通というか先ほどの話は2番目です。やっている最中にどうやってインセンティブを与えるかとか、どうやってチェックしてコントロールするかという話でございます。

 4ページ、ただ、この途中のモニタリングはなかなかうまくいかなくて、実際にうまくいく方法は、はっきり言って、ないのではないかと思います。株主は経営を自分でできないので経営者を雇って委ねているわけですから、そこで外から口出ししても基本的にはうまくいかない。その代わり、事前の人選はちゃんとやるか、変なことをしたらちゃんと首にして取締役をとりかえて、社長をとりかえるかという、事前と事後ということをしっかりやるのです。ですから、途中でいろいろ縛りをかけるというのは経営上、コストでしかなく、運用においても同じです。運用のほうが経営よりもさらに難しいということは後で申します。

 5ページ、事前事後の話をもう一度すると、事前は人選であり、誰に任せるか。運用の世界もこれに尽きます。事後というのは運用がいまいちだったときにどう取りかえるか。これは実はインハウスと外部委託とで問題なのですけれども、実は運用者を交代させるのがインハウスはすごく難しいという問題がございまして、外部委託のほうがやりやすいという面があるので、リソースが限られている場合は外部委託のメリットがあるという点がありますが、それは細かい点なのでまた後ほどお話します。

 6ページ、運用というのは経営よりも難しい。これは途中であっても、運用成績が今いいかどうかわかってしまう。時価評価できるので今もうかっているとか、すごい損を出しているとか、昨今メディアもがたがたいろいろ言っていますけれども、そういう状況が見えてしまうという問題点がございます。それにもかかわらず、その運用がいいか悪いか、その時点で判断できないということ。しかも外部の素人が口を出しやすい環境にあるという意味で、普通の経営よりもはるかに運用のほうが難しい状況にガバナンスという点ではあると思います。

 もう一枚めくっていただくと、運用は難しいのですけれども、GPIFというのはさらに困難に直面している。要はライバルと比べてうまくやっていれば、例えばリーマンショックのときでもほかのファンドも全部だめなので、ほかのものよりは結構頑張っているねと言えばオーケーなわけですが、GPIFは比べる対象がなかなかありませんので、ベンチマークがないということがあります。絶対的な運用利回り水準を目標とするといっても、制度を変えるという選択肢もあり、目標水準も固定的ではないので、実は非常に難しくて、普通の運用を超えた難しさがあると思います。

 1枚めくっていただきますと、ガバナンスの本質は何かというと「信頼」です。オーナーと任せた相手との信頼関係です。これは、だからいい相手を選ぶということがすべてと思われがちですが、実は重要なのはオーナーの肝が据わっているかという問題で、一旦任せたら、後からがたがた言うなということでございます。

 1枚めくっていただくと、GPIFというのは非常に難しいことにオーナーは国民全体であり、完全な素人であり、しかも多数の人々の集合体であり、コンセンサスを得るのは極めて難しい。その中で政治という最も厄介な要素も絡んでくるので、非常に難しい状況にあるということです。その中で説明責任や透明性を確保するということは、ガバナンスにとって最も難しい運用ガバナンスで、最もコストのかかるガバナンス構造にあるということです。

 1枚めくっていただくと、理想的な運用はよい運用者が自由にクリエイティブにやるのがいい。制約条件は少ないほうがいいので、ですからきょうのヒアリング項目に挙げられている、いわば運用への制約項目に関するいろいろな危惧は、本当は信頼して、すべて取り払うのが一番いいということでございます。

 ただ、うまくいかない危険性とは、私が最も懸念しているのは、1枚めくっていただくと、政治的な介入ということでございます。先進国でインハウスが多い、運用がうまくいっている、あるいは積極運用という方向に進んでいる、ということですから、本来はそれが良いのです。ですから私も積極運用派で、理論的にはインハウスでよいのですが、ただ、日本の社会の状況を見てみますと運用に関しては最も未成熟な国であり、社会であると考えております。これは運用だけではなく金融に関しても、例えば中央銀行の金融政策に関してさまざまな政治的なプレイヤーがいろいろなことを言うということは、アメリカでは考えられませんし、もちろん欧州でも考えられない。そのもともとの常識というか、状況が全く違っていますので、運用に関しても理論上、完全に任せて一旦任せたら外部から口出ししないという状況が理想であるとしても、それが実現することに関しては私は非常に危惧を持っておりまして、そういう環境の中におきましては理論上、美しいやり方で行うのがいいとは限らないと思います。

 1枚めくっていただくと、人選が一番重要なのですが、結局最終的にそれを担保して誰を雇って誰を首にするかというと、部分的に、間接的にせよ、何らかの政治的な関与は当然必要でございます。そうなってくると先ほどの政治的な介入という懸念があるということでございます。人選以上に個々の運用に関しても介入の懸念があるということですけれども、1枚めくっていただくと、細かい点について言えば、もう一つの問題は非常に運用人材が限られているという状況がございまして、現状ではアウトソースして外部の運用者をうまく使うということのほうが、目利きをするのが一番難しいので、それもまた実は難しいとは思いますけれども、現状ではやむを得ない状況であるということがございます。

 インハウスの個別のことに関して申し上げますと、今、申し上げたようにリソースの圧倒的な不足がございますので、現実にはなかなか難しい。先ほどマッキンゼーのほうからコスト削減というメリットがありましたが、日本の場合は外部委託のコストが非常にまれに見る低コスト構造でございまして、そのメリットは余りない。むしろ組織に活力を与えるとか、知識を蓄積するとか、企業風土というか運用風土にガッツを与えるとか、さまざまな別の要因があると思いますけれども、ただ、先ほどの政治的なもの、運用に関する社会的な成熟度合いなどを鑑みますと、理論的にはとにかく自由にやるのがいいと思いますが、現状では非常に部分的に慎重に少しずつ進めていくのがいいのではないか。否定しているわけではございません。そういうことでございます。

 以上です。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。運用にかかわる論点につきまして、簡潔に指摘をしていただきました。

 それでは、引き続いてでございますが、東京大学名誉教授の若杉敬明様から御発表を頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。

○若杉氏 若杉でございます。

 私は公的年金の自主運用が始まったときに、その運用枠組みを決める検討会の座長をさせていただきました。そういう意味でGPIFの行動には常に関心を持っているとともに、責任を感じております。きょうは現在の私の意見を述べさせていただく機会をいただき感謝しております。本日のヒアリング項目ということで事前にたくさんの質問をいただきましたので、そのすべてに答えて皆様のお手元に資料として配布していただきました。全部説明しておりますと時間が足りなくなりますので、ポイントだけ幾つかお話をしたいと思います。まずGPIFのインハウス運用について考えを述べます

 その前に最初にガバナンスの概念を明確にしておきたいと思います。小幡先生は経済学的な観点からガバナンスを説明なさいましたけれども、私はもう少し企業経営よりの観点から考えております。企業を経営するのはいわゆる経営者なわけですけれども、その経営者から良質の経営を引き出す活動をガバナンスという考え方です。制度的つまり会社法の観点から言いますと、ガバナンスとは取締役会が経営者をどうやって監督するかという話です。株式会社制度とは、株主が出資した財産を、株主に選任された取締役が運用する仕組みです。株主は自らの利害を取締役に託しています。したがって、株主は取締役を支配する権利を有しています。これが株主のガバナンスです。ただし、株式会社制度とは不特定かつ多数の投資家が株主になれる制度です。したがって、多数の株主の意向に左右される制度です。しかし、株主が株式を保有する基本的な目的は共通であり、それは自らの財産を増やすことです。

 このような前提の下で最初にGPIFのインハウス運用について意見を述べます。GPIFのインハウス運用に関して出てくるのが、GPIFが銘柄選択をするのはけしからんという意見です。投資家が自らにとって望ましい銘柄を選択することを銘柄選択といいます。GPIFの銘柄選択は、GPIFが個別の企業を評価したり選択したりすることになるわけで、国のお金で企業を選別するのはけしからんという主張です。同じ根から出る意見ですが、国の機関であるGPIFが議決権行使をすることは、国が企業経営に口出しすることを意味するので好ましくないという見解です。

まず、GPIFのお金が国のお金だというのはおかしいと思います。これは加入者、受給者自身が出したお金と企業が出したお金です。そして、受給者・加入者が受け取るお金ですから、もはや国のお金でも企業のお金でもありません。国は、制度の運営者として、それを預かって運用しているだけです。

 投資家としては、株式投資から高いパフォーマンスを得るためには、良い企業を選別することが重要です。投資家が企業を選別して投資するのは当然のことです。多くの投資家から将来性がないと見られる企業の株式は、売られるので株価が下がります。そういう状態が長く続くと企業は存続が難しくなります。経営者は良い事業をおこなうために経営を改善せざるを得ません。逆に良い企業と評価されればその株を買う投資家が増え株価は上がります。経営者はそれに励まされてますます良い経営をしようと努力します。株式市場では、投資家の企業評価に基づいて株の売買が行われ株価が決まります。それを一つの指標として経営者は事業の向上に努力することになります。このように企業評価に基づく株式投資原則をアメリカではウォール・ストリート・ルールと呼んでいます。

要するに、見込みがあるということで投資家が選んで投資し、あるいはこれはだめだということで売ったりすれば、つまり株主が移動すれば、企業は変わらざるを得ない。それを受けて企業は良い事業をするようになる。そうすれば企業が生み出す利益も付加価値もふえる。企業が生み出す付加価値がふえれば国のGDPがふえるわけで、国の経済に貢献するということになります。したがって、投資家が銘柄を選択することによって株主も、国民全体も恩恵を受けるということです。これは、本来、株式会社制度に期待されているメカニズムであり、機関投資家が株式の選別を行うことは、その他の投資家から資金を預かっている者の受託者責任であり、社会的責任でもあります。現在のGPIFは株式の自家運用ができないので、委託先の機関投資家が企業の評価や選別を行っています。結局はGPIFも選別をおこなっているわけです。問題は、選別が良いか悪いかではなく、GPIFにその能力があるか、あるいはそれを行うメリットがあるかです。

 同様の論理でインハウス運用を行う限りは議決権行使を認めるべきです。ただし、GPIFに自主運用を認める場合には、資金量の大きな投資家ですから、一社についての保有量に制限を設けることは不可欠と考えます。株式制度では持ち株数に応じて株主権が大きくなります。株主の権利の一つであるガバナンスも大きくなります。それだけ経営に対する影響も出てきます。したがって、企業経営に影響を与えるような株式保有を認めるべきではありません。そのような仕組みになっていれば、GPIFも、多数の投資家の中でone of themとして影響を与えるのであって、経営に直接影響を与えることはできません。ですから銘柄選択をもってインハウス運用はけしからんというのは、間違った議論だと私は考えております。

 インハウス運用に伴う議決権行使についても同様に考えます。日本の会社法によりますと企業の目的は営利ということになっています。営利とは事業を行うことによって利益を上げて、それを出資者に分配することを言います。資本主義では、さきに述べましたように、所有に基づき出資者が会社を支配します。ここで支配とは、会社を経営することあるいは、株主の代わりに経営をする人を選んでその人を通して会社を経営することを言います。日本の会社法は、規模の小さい合名会社、合資会社、合同会社などの持ち分会社は出資者が自ら経営者になることを求めています。ところが、株式会社の場合には多数の株主がいて、極端に言えば世界中に広がっているわけですから、株主が経営者として経営に携わることができませんから、株主は自分では経営をせず、株主総会で取締役を選任して経営を委ねるという仕組みになっています。それが株式会社制度の本質なわけです。取締役は株主であることを要しないので、株主はいわば赤の他人に会社を委ねることになります。そこで株主は自分の代わりに良い経営を実現してくれる取締役を選ぼうとします。これが株主総会における議決権行使です。これを株主のガバナンスの最重要課題です。

 株主総会の後、監査役会設置会社では、選任された取締役は取締役会を開いて代表取締役などの業務執行者を選んで経営を委ねるわけです。多くの場合、そのほかの取締役も業務執行者になり、代表取締役の部下になります。業務執行者がいわゆる経営者ということになります。そして、取締役会は、営利という業務に向けて個々の取締役の業務執行を監督します。これを取締役会のガバナンスと呼んでいます。これはいわば株主のガバナンスの代行という意味を持っているわけです。

GPIFも株主である以上、議決権を行使するのは受託者責任の1つとして当然だと思います。しかし、経営の素人であるGPIFが個別企業の経営内容に影響を与えることは望ましくないわけです。ですからGPIFがある1つの会社の大株主になり、取締役の選任に大きな影響力を持つことは好ましいことではありません。したがって、1つの会社について何%までということで保有制限を設けておくことが重要だと思います。しかし、受給者・加入者の年金原資を預かり運用するGPIFが、議決権行使をしなかったら受託者責任を果たせません。株式保有を認めて議決権行使を許さないということでは、株主として社会的責任を果たせません。議決権行使が間違った方向に向かわないように、保有制限を設けるとか、あるいは議決権行使に対して、運用委員会のようなGPIF自身のガバナンス機関がきちんとガバナンスを効かせることこそが重要です。

 2番目は、GPIFがインハウス運用を行うべきか否かという問題についてです。これはインハウス運用の目的によります。「委託運用を行うためには、運用の実務や時々刻々変わる株式市場の状況を正しくつかんでいる必要がある、そのためにはインハウス運用を行う必要がある」という学習目的の場合には、インハウス運用を行うことはむしろ望ましいと言える。ただし、パフォーマンスは期待できない可能性が大きいので運用の規模は必要最小限にとどめるべきである。しかし、パッシブ運用を超えるプラスαを求めるアクティブ運用などが目的である場合には、マッキンゼーの方が最後に指摘したことと全く同じことを言わなければなりません。GPIFが株式の自主運用を行う以上、そのほかの運用会社や、あるいはほかのファンドのマネージャーと直接運用競争をするわけです。したがって、競争力のある優秀なファンドマネージャーを有すがることが大事です。ファンドマネージャーが自分だけで銘柄を選んだりできるわけではありませんから、優秀なスタッフがいることも重要です。そういう意味でファンドマネージャーとそのスタッフがチームで運用するわけです。それと同時に現代では優秀なソフトや運用システムを持つことも必要になるわけです。そういうことでマッキンゼーの方が言われた人材とITという資源が重要なわけでして、優秀な資源を持たなければ自主運用をする意味がないわけです。それには相当な投資や費用が必要です。民間のファンドマネージャーは優秀な人ほど高額な報酬をとるわけですから、GPIFがそれに対応できるかどうかということが大きな問題になるわけです。これをクリアできない限りインハウス運用を行うことは現実的ではないということです。

ただし、委託運用のために運用の実務や現在の株式市場を学習するということが目的のインハウス運用ということであれば、これらは問題になりません。

 しかし、だからと言ってインハウス運用に厳しい制限を制度的に設ける必要はないと私は考えています。その理由はこういうことです。投資といってもさまざまなスタイルがあります。先ほどもアクティブとかパッシブとか出ましたし、そのほかにもグロースとかバリューとかいろいろなスタイルがあるのですけれども、どれが絶対的に正しいというスタイルはないわけです。しかもGPIFは世界で一番大きい資金を持っているわけですから、当然、全額を1人のファンドマネージャーが運用することはできません。さまざまなスタイルのファンドマネージャーを擁して、その人たちに資金を配分することが大事だと思います。

 つまりそういう意味で言いますと、ファンドマネージャーのポートフォリオ運用ということが大事になり、それを監督する機関つまりガバナンスが必要だということになります。これまでの年金部会での議論を聞いていますと、経営委員会というアイデアがあるようですけれども、恐らくそれが会社で言えば取締役会に相当するのだと思いますけれども、その経営委員会がきちんとファンドマネージャーのポートフォリオを管理する必要があるということです。これもマッキンゼーの方がおっしゃったことです。

 まず経営委員会自体が優秀な専門家で構成されていることが前提です。その経営委員会が、GPIFが現在抱えているファンドマネージャーでもってどのような運用をするのが適切かということを判断します。そのときに現状の人材ストックではインハウス運用をすることは適切ではないと判断すればやらなければいいわけです。つまり制度で決めなくても、良い経営委員会を組織することができれば、そこの判断でもって好ましい運用を行うことができるということです。

 小幡先生が、本当にそのような人選ができるかということが大きな問題だという趣旨の発言をされたと思いますが、私もそれは容易ではないと考えています。要するに、インハウス運用をするには、それだけの運用能力を持った人材、付加価値を生み出せるITなどのシステム、そしてそれらを適切に監督できるガバナンス機関が不可欠で、それらを完備できない限り株式のインハウス運用には慎重であるべきだと考えます。

ただし、委託運用を行うための学習目的のインハウス運用であるならば、厳しい規制はまったく不要であると考えます。なお、どちらの目的のインハウス運用をするかを適切に判断できる経営委員会などのガバナンス機関を構成できるならば、規制は必要ないと考えます。

 以上です。

○神野部会長
 どうもありがとうございました。論点について丁寧に御説明をいただきました。

 それでは、最後でございますけれども、年金積立金管理運用独立行政法人、水野理事と大江理事から御発表を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○水野氏

 ありがとうございます。GPIF理事の水野と申します。

 本日はこのような時間をいただきまして、心から感謝申し上げます。

 まず私どもの運用に関する実務的な意見を申し上げる前に、年金部会にお礼を申し上げたいと思っております。このたびこのようなガバナンスに関してかなり深まった議論をしていただきまして、その結果かなり高度な、世界的にも通用するガバナンスが構築されようとしているということだと思っております。

 このような新しいガバナンス改革がなされることによって、通常の運用の行為が正しく評価されるような状況になっていくのではないかと思っておりますので、その点に関しまして部会の皆様にまずはお礼を申し上げたいと思っております。

 本日はまず最初にGPIFの現状。これも世間一般からかなり誤解されていると思っております。国内からは一般的に過小評価。海外の方からは過大評価を受けております。私どものところには、世界中の年金基金のCIOが日常的に訪れるわけですけれども、そのときにGPIFはどういう運用をしているのだということで、我々全て外部委託で、国外債券のパッシブだけインハウスでありますと言った瞬間の皆さんのあきれ顔というものを嫌と言うほど見てまいりました。そういう意味に関しては、海外の投資家から見るとGPIFの運用というのは相当マッキンゼーさんは控えめに言っていただきましたけれども、ビハインドカーブというレベルのものではないのではないかというように思っております。

 一方で国内の方からは大変信頼を受けておりませんので、その点についてGPIFの現状についてお話したいと思います。その後、今回の議題となっておりますインハウスの問題とデリバティブのリスクヘッジの活用、そしてオルタナの共同投資、直接投資について話をさせていただきまして、最後にこのような運用についての議論はどのような形でやるべきだと執行の立場から思っているかということをお話させていただこうと思っております。

 まず5ページを見ていただきたいのですが、これが我々の今、運用のチームの組織図と人数でございます。先日、残念ながら日曜日にTV番組を見ておりましたが、出演者が「GPIFには1人も専門家はいない。全員ど素人と厚生労働省からの出向者が運用されている」とおっしゃっていましたけれども、さすがにそれはとんでもない誤解だと思っております。

 まず、現在91名の役職員のうち、運用専門職員と呼ばれるプロ職員、これは有期で採用しております。こちらが4名。金融機関等出身者が35名、証券アナリストが36名、MBAが14名、日本と米国の弁護士資格を持つ弁護士が1名、不動産鑑定士1名という組織で運用をしております。ちなみに厚生労働省の出向の方についても一言申し上げますと、出向者5名のうち2名は年金のアクチュアリー、3名が証券アナリストということですので、一般に思われているような出向者であるので、年金あるいは運用についての知識が全くないということは、はっきり言って誤解だとここで申し上げたいと思っています。

 サイズを申し上げましても、なかなか運用業界に詳しい方以外イメージが湧かないと思いますが、このサイズはGPIFが現在、国内債券のアクティブを委託しております三菱UFJグループの100%子会社のMU投資顧問株式会社の総人数が平成25年度末で87名、そのうち証券アナリストが39名ということですから、大体それと同じサイズ、同じような陣容だと思っていただいて結構でございます。

 ただ、ここで私どもとしては今、組織の最終形とは全く思っておりませんで、今後135名から150名ぐらいまで人材を拡大するということで、今後も採用を続けております。もちろん人材採用計画になりますので、新しいガバナンス体制になれば経営委員会において我々の人材計画は承認されていくということだと思っておりますが、現在のGPIFの姿をもって今後どのような運用を認めていくかということを議論していただくと、多少誤解を呼ぶのではないかと思っています。

 続きまして、10ページのほうで今回の議案となっております株式等のインハウス及びデリバティブによるリスクヘッジというところで少々お話をさせていただきます。

 私がGPIFのCIOに就任いたしまして、最初にGPIFの運用上のリスクあるいはオペレーション上のリスクと思ったことが3つございました。1つ目はBCPでございます。今までのオフィスの環境等では、正直言ってこれだけの資金を預かっている運用機関のBCPとしては極めて不十分だということで、これは皆様のおかげで最近日本でも有数の耐震性能とBCP機能を有する新しいビルに移ることができました。

 続きまして2つ目にリスクだと感じましたのが、株のインハウス運用のなさでございます。私が株のインハウス運用を認めてもらう必要があると申しますと、必ず収益性の向上等々を言われるわけですけれども、正直、私はこれのなさはGPIFにとってリスクだと感じております。それは国内債券について我々は今、インハウス機能を有しているわけですけれども、例えば国内の債券を500億円売却する、あるいは1,000億円新たに買うということを行いますと、その日のうちにマーケットでどのような反応が出たのか。イールドカーブが我々の売却に伴ってどう動いたか、全て瞬時にフィードバックを受けて、それでマーケットに影響がないことを確認しながら運用を進めております。

 一方で株式に関しましては、例えばきょう新たに1,000億買うことを決定したとしても、あした以降、運用機関が執行するわけで、しかも執行の内容等について細かく口を挟むことが禁止されておりますので、実態どのようなマーケットの影響が起きたのかさっぱりわからないという状況で、我々は運用を行うということを現在強いられております。残念ながらしばしばメディアにはGPIFが日本株の運用について午前の終値が幾ら以下だと午後にGPIFのPKO出動だという記事がよくマスコミに踊っておりますけれども、私どもには今、そのようなケーパビリティーは全くございません。

 そういうことで、株に関しましては情報のなさに起因するリスクを考えながら運用しているという実態を皆さんにぜひ御理解いただきたいと思っております。

 続きましてデリバティブですが、これが3つ目のリスクファクターと私が直ちに認識したものですけれども、現在運用のリスクヘッジにデリバティブを活用するということは、どのような運用機関にとっても当たり前のことになっているわけですが、GPIFでは法令上、デリバティブの利用が一部の取引に限られておりまして、全く機能しておりません。かつ、短期の資金が余った場合もコール市場の活用等も禁じられておりますので、このあたりの最後のところでのリスクヘッジやキャッシュマネジメントに使えるツールが極めて限定されているということも、運用を任されているGPIFとしては正直、極めて不安な、残念な状況であると思っているということをぜひ御理解いただきたいと思っております。

11ページに、今回株式のインハウスということの議論が始まったと同時に、さまざまな御質問、御批判をいただいておりますので、ぜひここで、できる限り回答させていただきたいと思います。

 まず質問1ですが、これによって株式の投資割合が増えるのではないかという御質問も受けておりますが、これは完全な誤解でございまして、株式への投資割合は基本ポートフォリオで決まっておりますので、インハウスの実施の有無とは一切関係がございません。

 質問2、外部委託に比べリスクが高まるのではないか。これもリスク量は基本ポートフォリオで決まっておりますので、外部委託でもインハウスでも変わりません。ただ、変わることがあるとしますと、パッシブについてはリスクもリターンも当然同じになるわけでありますが、アクティブに関しましてはGPIFのインハウスチームと今、2人の先生方からも御指摘がありましたけれども、GPIFのインハウスチームが外部の運用機関に比べて運用能力が劣る場合、リターンが下がるあるいはマイナスになるということが出てまいりますが、もう一度繰り返しますけれども、リスク量が高まるということは技術的にございません。

 3つ目は、GPIFには株式のインハウスを行う能力があるのかということですが、今、法律上認められていないものですから、今、持っていたらそれはそれで問題だろうと思いますけれども、今後どうかということでお答えいたしますと、これは申しわけないのですが、余り運用に詳しくない方々にはちょっとわかりにくいかもしれませんが、債券と株式で言った場合に債券のほうが安全であるので、パッシブ運用も容易だという誤解があるようですけれども、パッシブの運用ということだけに関して申し上げますと、株のパッシブ運用のほうが圧倒的に容易でございます。

 というのは、少しこのあたりに親しんでおられない方のために少し突っ込んでお話しますと、株の場合はTOPIXでもしょせん2,000銘柄以下しかございませんが、債券の場合は7,000銘柄近くございます。そのため株のパッシブは特にGPIFのサイズをもってすれば、完全法と言われる全ての株を全て時価どおりに買うという最も確実なパッシブ運用が可能でございます。

 一方で債券についてはさすがに7,000も買えませんし、流動性の低いものもございますので、現在も最適化法や層化抽出法を使ってスタティスティカルにコピーをしていくというやり方をしておりますので、技術的には明らかに債券のパッシブのほうが難しいということになります。そういう意味で申し上げますと、GPIFの今までの債券のパッシブの運用の実績と経験から言って、株のパッシブができないということは全く想定しておりません。

 また、その後のアクティブ運用に関しましては、今まで先生方もおっしゃいましたけれども、全部いきなりアクティブ運用を始めるということはあり得ないわけでありまして、外部委託も一緒にやっていって、そこと比較したり、そこのノウハウを吸収してまいりますし、また、繰り返しになりますけれども、アクティブを始めるというときになれば当然アナリストも含めたくさん人材採用が必要になりますので、そのときのガバナンス、経営委員会ということにこの間の案ではなっておりましたが、当然その人員計画も含めてアクティブの開始を認めていただくことになるのではないかと思いますので、法令上、認めたからといっていきなりアクティブをGPIFがやるということは、当たり前ですけれどもないということをはっきりと申し上げたいと思います。

 次に4番目の質問ですが、外部委託なら成績が悪いときに契約解除できるが、インハウスではできないのではないか。これはたしか山口委員が前回質問をされたと思うのですけれども、これは特に私の立場からいたしますと、インハウスのチームというのは外部委託先の運用機関と全く同じでございまして、同様に総合評価を行っております。もし評価が低い、あるいは運用成績が悪いようであれば、資金回収や担当者の異動、交代を行います。ここについてつけ加えさせていただきますと、今後GPIFの運用部門については、主要メンバーは少なくとも内外からの応募を問わず、有期契約のプロ職員としていく方針です。先ほど申し上げたように、既にプロ職員の採用は始まっております。つまり今後GPIFでインハウス等の運用の中心になっていく人物は、終身雇用ではなく有期のプロ契約で行っていただきますので、そういう意味では日本の金融機関、通常、終身雇用が保証されていると思われる日本の金融機関と比べましても厳しい環境で、GPIFのインハウスの職員には運用していってもらうつもりです。

 ちなみに繰り返しになりますが、GPIFのインハウスの運用の今までの成績はどうかということですけれども、右にBPI総合の実績が書いてありますが、日本を代表するみずほ信託、三井住友信託と比べてもGPIFのインハウスの運用は、運用成績に遜色はございません。というか実際は上回っております。この結果を受けまして、現在、約70%を国内の債券に関しましてはインハウスのほうで行っているということですので、このようにきちんと運用成績を見ながらアロケーションを行っていくということでございます。

 最後になりますが、今、若杉先生からも御指摘があったポイントだと思うのですけれども、政治的な圧力によって特定企業の株式の売買や議決権の行使をすることがないかということですが、これはそもそも専ら被保険者の利益のために執行するというGPIFに求められているルール上、まずはあり得ないということが答えかと思うのですけれども、ただ、それに加えまして今回、皆さんが御検討いただいた新しいガバナンスにおいては、前回たしか小室委員からの質問に年金局もお答えになっておりましたけれども、政治的介入のリスクは明確に下がるということですので、当然ここにおいても政治的な影響を考慮することは必要なくなるはずでございまして、逆にそれを引き続き懸念しなければいけないということでありましたら、ガバナンス改革はうまくいっていないということではないかと私は思っております。

 続きまして12ページですが、これも一部の委員の方からのコスト計算をせよという御質問でしたので、一応私どもでコスト計算をしてみたものであります。小幡先生御指摘のとおり、日本の信託銀行等は、GPIFに対して特にパッシブにつきましてはほとんどマーケットでは考えられないレベルのフィーを提示しております。なので、それを使いますとフィーの削減効果は少ないと言えるのですが、ただ、一方で現在スチュワードシップコード等、コーポレートガバナンスコードの導入によりまして、我々はパッシブの運用機関にもっと積極的にエンゲージメント等を行えという指示を出していることは、皆さん御存じだと思います。その中で信託銀行等が今のレベルのフィー水準を維持してくれるのかということについては、私は余り楽観的には思っておりません。そういう意味ではパッシブのコストも上がる可能性もございます。

 一方で今後を考えました場合、何よりもコスト削減効果があるのはアクティブなのですけれども、これは先ほども申し上げましたように、その時々の経営委員会で人員計画、コスト削減計画も含めて議論していただくべき話でございますので、一応これはイラストレーションとして計算いたしましたが、あと人数がどのぐらい要るかというイメージはマッキンゼーさんのほうにも確認していただいたり、我々が採用しておりますコンサルティングの会社とも確認しまして、このぐらいでできるだろうという意味でしかございませんので、余り数字を細かく見ていただいてもしようがないと思いますが、一応こういう形で徐々にインハウスとアクティブを拡大することによって、コスト削減効果を拡大すると考えております。

 続きまして13ページ、海外年金基金との共同投資、これがまさにオルタナのところでございます。今回我々はこのガバナンスの運用改革の議論をするということが海外のメディアでも報道された途端に、カルパース、あのあたりのCIOからみんな私のところにメールが来ましておめでとうと。ガバナンスがきちんとして、こういうディールが一緒にやれるようになるねという話が来ているわけですけれども、今、海外の年金に関するカンファレンスに出席した場合、ほぼ3分の2はオルタナのことしか誰も議論をしておりません。今、海外の年金のCIOにとって重要なのは、伝統的資産の運用はかなりソフィスティケーションが進んでおりまして、なかなかマーケットや他の運用機関を上回る成績が出せないという中で、CIOの興味はこちらのオルタナティブに移っております。

 その中で1つ大きな問題が出てきておりまして、それはフィーの高さでございます。オルタナの場合、通常2、20と呼ばれていまして、年間のフィーが約2%、成功報酬が約20%というのが一般的だとされているのですが、私どもは今5%基本ポートフォリオで認められている。例えば全額をオルタナティブで運用したとしますと、年間のフィーだけで1,400億はかかるという単純計算でそういうことになります。これは先ほどマッキンゼーの方もおっしゃいましたが、オルタナティブインベストメントのメリットについては、今、世界では誰もいまどき議論をしている人はいないわけですけれども、一方でこのフィーの高さというのは大変大きな問題だとなっておりまして、それに対する1つの年金運用側あるいはアセットオーナー側からのアプローチとして出てきたのが、年金同士で共同投資をしてフィーを払わずに運用しようということでございます。これが今や共同投資として1つのトレンドになっていることで、これはもしよろしければ後ほどマッキンゼーの方にでも聞いていただければいいのですけれども、GPIFに対する海外の年金等からの最大の期待はこちらでございます。

 これはある意味、相思相愛でございまして、相思相愛というのは私どもと海外年金とも相思相愛なのですが、例えばロンドンの空港ですとか、オーストラリアの高速道路みたいな非常に優良なインフラの案件をやる場合、インフラストラクチャーの運用側としてもファンドマネージャー、例えばインフラのファンドですと10年、15年で期限が決まっておりますが、年金は20年、30年も持ち続けてくれるということなので、彼ら側としても年金と直接関係を結びたいと思っておりますので、そういう意味でも相思相愛でありまして、ただ、これが今のところは我々参加できないということですので、こちらも参加してGPIFの強みを生かしていくべきだと思っております。

 最後になりますけれども、いろいろな懸念がございますし、徐々にやっていくということでは、私ども今まで御説明をいただいた先生方と全く意見は一致しているわけですけれども、これをいわゆる法律のベースで縛ることについては、私は現実的ではないし、逆にリスクがあると思っています。

 その具体的な例が先ほどお話したデリバティブとコールの話なのですけれども、私が就任したときにリスクヘッジの方法をいろいろ検討しましたところ、デリバティブでできるとまず返事が来たわけなのですが、いろいろ調べて見ると、何とGPIFはデリバティブは認められているが、差金決済が認められていない。これは法令上、差金決済を認めると書いていないので認められていないわけですけれども、金融に詳しい方はすぐおわかりになると思いますが、私どもの規模で差金決済せずにデリバティブを使うというのは極めて非現実的でございまして、そういうことは実際はデリバティブは使えないと言われているのと同じであります。

 ただ、これはいろいろ調べてみますと当時デリバティブを認めるという話になったときに、米相場とかそういう危ないものもやるのではないかという方々もいらっしゃったので、差金決済をしなければレバレッジをかけられないだろうということで認められないことになったと聞いておりますが、要するに金融商品そのものがどんどん進化していっている中で、何年かに一度しか変えられない法令で制限を設けるとそういう不都合が出てくる。コールも同じでございます。コール市場もGPIF法ができたときには金融機関しか参加しておりませんでしたが、今や私どもの委託先の全ての運用機関がコール市場で短期の運用をしておりますが、GPIFはこれも認められていない。これも法案をつくってからということでありますので、そのあたりの運用の具体的なところはぜひ経営委員会で決めていただけるようにお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

○神野部会長 それでは、質疑に移らせていただきたいと思いますが、経団連の阿部参考人が既に退室をしなければいけないような時間かと思いますので、御発言をいただければと思います。

○阿部参考人(牧原委員代理)

 牧原委員の代理でございます。

 きょう若杉先生、小幡先生のお話を伺って非常に腑に落ちましたのは、やはり私どもが考えておりましたのは、GPIFが株式のインハウス運用をやることのメリット・デメリットの前に、できるのかという正直な疑問だったかなと思うわけであります。正直に今の体制で株式のインハウスができるともわかりませんし、自身まだできないとおっしゃったと思いますが、いかにしてリスクを回避しながらコストを少なくして、最大限のメリットを受ける。やはりこれはガバナンスの仕組みがはっきりしないうちにはできないことかと思うのです。GPIFのガバナンスの仕組みは一昨年以来、ある意味多少混乱した状況で議論を続けてきたわけでありますが、まずガバナンスの仕組みをしっかりと構築して、その上でさらに実績を積んでからでないと、次のステップには進めないのではないかと思っております。

 デリバティブにしろ、オルタナティブにしろやらなければいけないことはわかっていますけれども、今の仕組みでできるのかということについては非常に疑問がございます。そういう意味ではまずガバナンスの議論を先に決着させていただいた上で、少しその中での実績を見てみたいと思います。

 以上です。

○神野部会長

 よろしいですか。

 それでは、出口委員、どうぞ。

○出口委員

 今おっしゃったご意見がちょっと理解できなかったのですが、この前、武田委員がお話されたことは、実際には運用委員会を中心に今のGPIFはかなり実態的には合議制に近い運用ができている。それを法律面で今回きちんと裏づけて、さらにいいものにすることが今回の法改正の目的だというご意見だったと私は理解しています。今の御意見は、今、要するにガバナンスがないからというような御意見で少し理解できなかったのですが、それは御意見に対する私の意見ですので、2点お聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか。

○神野部会長

 お聞きしたいというのは事務局にですか。

○出口委員

 いえ、今の説明に対して。

○神野部会長

 ちょっと待ってください。もし阿部参考人からコメントがあれば。

○阿部参考人(牧原委員代理)

 今、議論されている方向に反対したわけではありません。この議論をきちんと決着させて、新しい仕事を整えてというのが前提かなと思っています。

○神野部会長

 どうぞ。

○出口委員

 まず2点質問があるのですが、1点はコールが使えないということは、私は正直びっくりしたのですけれども、単純な質問ですが、これは法律なのですか。あるいは法律以下のレベルの問題なのですか。この事実関係を教えていただいてよろしいでしょうか。

○大臣官房参事官(資金運用担当)
 今は法律です。法律に規定がありません。

○出口委員

 なるほど。ちょうど私は昔、生命保険会社で保険業法改正前の運用規制の問題を担当していたのですけれども、80年代、金融制度改革が行われたときの議論なのですが、そのときに生命保険会社の運用は法律に書いていないものしかできない。いわば限定列挙主義で規制されていたのです。当時私がどのような仕事をやっていたかといえば、金融マーケットはどんどん変わっていきますから、法律で書いてあったら市場からどんどんおくれていって、実際の運用ができませんから物すごいリスクになってしまう。ですから法律のレベルで紙に書いてしまったらマーケットにおくれるわけですから、そこは法律ではなるべく包括的に見てもらって、それで実際の運用は会社の判断でできるようにする。そのような話を80年代に一所懸命やっていて、それで金融制度改革の中で保険業法を改正して、それが認められたのが95年ですから、今の法律でコールができないということはある意味私は驚愕したのです。運用マーケットと運用手段という問題は、法律からは外してこれからはガバナンスがしっかりできるわけですから、ガバナンスで実態に応じて判断しながらやっていくことがどう考えても正しいのではないかと思いました。これが第1点です。

 第2点は小幡先生にお聞きしたいのですが、目利き能力のさらなるアップに集中するべきというのが14ページにあって、これは私も同感ですが、ではどうやったら目利き能力のさらなるアップができるのかという点について、先生の御意見をお聞きしたいのです。私も少し運用をやっていた経験があり、自分でやらない限り目利き能力はつくはずがないと考えていますので、きょうGPIFの方から御説明いただいて、実際に運用チームの中にこれだけプロの方がいらっしゃって、ちゃんと運用をやられていることを初めて知って、むしろ驚いたのですけれども、実際問題インハウスで、自分でやらなくてどうやって目利き能力がアップできるのかというのは少し理解ができないのですけれども、ここは先生はどうお考えですか。

○小幡氏

 考えは違わないと思います。ですから目利き能力を上げるための投資としても、インハウス運用をしたらいいと思います。ただ、目利き能力のほうがより難しい能力ですし、全体に及んでいるものですし、要はインハウスでしても目利きをしている人がどのレベルかでいるわけですから、インハウス運用よりもむしろ難しいことを今やっているのだから、インハウスぐらいでがたがた言うなということはもちろんあるのですけれども、人員も限られている中で大規模な運用をしている中で、とにかくインハウスという議論をするのは余り意味がなくて、もっと根本的に目利き能力を高めることに対して人材も投資をすべきではないかという意味です。

○出口委員

 そういうお考えならよくわかりました。ありがとうございます。

○大臣官房参事官(資金運用担当)

 1点、先ほど法令の関係で御質問がありましたので、現在の法律で規定している趣旨を御説明いたしますと、具体的にはGPIF法の第21条で規定しておりますが、この21条につきましては年金積立金の運用方法は、年金積立金が国から寄託された公的な資金であることに着目をして、国会の議決を経て認められるべきであるという考えに基づいて、法律で個々に運用法を規定しているということで、例えば預貯金、信託その他個別の列記をしております。

 ただ、一方で法律だけで全てを書き切っているわけではありませんで、例えば有価証券の売買に関して有価証券の中身については政令で委任するとか、そのような法律と政令で役割分担をして規定をしているという仕組みです。一応、過去のどういう考えでこういう形になっているかということを紹介させていただきます。

○神野部会長

 どうもありがとうございました。

 ほかいかがでございましょうか。どうぞ。

○森戸委員

 きょういろいろな立場からお話いただいたのですけれども、結局は大体同じようなことをおっしゃっているのかなと思いまして、つまり理論上はインハウスが望ましいが、しかし、結局ちゃんとしたガバナンスのもとで、優秀な人をそろえられるかが大事だ。もう少し言えば日本全体の運用レベル向上の話だというようにも伺いました。それで運用の素人としての私の感覚というか直感的な感じとも合ったお話だったのですが、それでまた先ほどの出口委員と同じような感じになりますが、小幡先生に確認したいのですけれども、小幡先生の資料の14ページに運用の現実ということで、結局、結論としては先生は極めて限定的にするほうが現実的だろうということで、将来的にも人材が集まる可能性がないと書かれていて、つまりほかの方のお話は、どちらかというとこれからいい人材が集まるような形に運用をより徐々にインハウスを拡大していけばいいんだというお話だったかなと思うのですけれども、小幡先生として、つまり将来的にも余り拡大していけるような人材が集まらないのではないかという、その理由はどういう趣旨で書かれたのかお伺いしたい。

○小幡氏

 まず人材が日本には非常に運用業界全体で非常に不足していると思います。それでもちろんGPIFは世界からということですが、現状を考えますと現実的にはなかなか難しいのではないか。国内にもすぐれた運用者はいると思いますけれども、今までの制約条件や政治状況を考えますと、自分で自由にやりたいと普通、運用者は思うと思いますので、あえてGPIFに来るというのはなかなか難しい。よほどボランティアか愛国心に基づかないと来ないので、そういう人もいらっしゃると思いますが、非常に限られていると思います。

 例えばマッキンゼーの方の資料で言えばティーチャーズカナダのケーススタディーがあったと思いますが、規模は1,000人です。運用規模はGPIFと比べものにならないぐらい小さい規模で、先ほどの話ですとGPIFは100人ですから、1,000人どこから持ってくるんだという、簡単に言うとそういうことです。そこまで大げさでないにしても、非常に難しい。ただ、やらないべきとは言っていなくて、やったほうがいいと思いますけれども、限られた状況で余り期待せずに、将来への投資としてインハウスをやるべきだと思っています。

○神野部会長

 植田部会代理、お願いします。

○植田部会長代理

 話を伺った印象あるいは確認のために発言させていただきますが、マッキンゼーのガイさんとGPIFの水野さんのお話にクリアに出ていたと思うのですが、グローバルなインハウス化のトレンド、特に最近10年前後を見た場合に、結局話を伺っていて思ったのは、一番大事なのはPEとかインフラのようなオルタナティブのマーケットで年金が進出する動きと軌を一にしているということではないかと理解いたしました。

 といいますのも、単純に考えればインハウスの運用がふえるということは逆に外部の運用が非効率的だということを意味せざるを得ないわけで、これが伝統的な資産の分野でそんなに深刻だとはなかなか考えにくいわけであります。したがって、何らかのそういう議論に正当性があるとしますと、オルタナティブ、PEやインフラの分野、特にそういうところで例えば最初最適な投資規模がかなり大きくて、民間のファンドが十分手を出せないとか、やや新しいマーケットである。そのようなことがあって非効率性がいまだに見られて、したがって、外部に発注するとフィーが高い。だから体制をつくってインハウスでやりたいというような理解でよろしいのかどうかというのが1つ質問です。

 そうだとした場合に、仮にGPIFの問題にいたしまして、そこを少し置いておいて、そこへの進出はまだ先であるというように仮に考えた場合に、それでも伝統資産の分野でもっとインハウス運用を高めていくということの意味がどれぐらいあるかという点でございますが、これは水野さんおっしゃっていたと思うのですが、例として株のインハウス運用がないと何か売りに出したときのマーケットインパクトを自分で把握することができないということをおっしゃっていたと思うのですが、この重要性を含めてどれくらいなのか。例えば私もGPIFにいたときに、平均的なマーケットのリクイリティーは割と頻繁にウオッチしていたと思うのですが、それで恐らくおっしゃっていることは株の運用比率を上げていったり下げていったりするときに、どれくらいのスピードで調整していいのかもう一つ実感がないとか、そういうことだと思うのですが、それが全体のパフォーマンスにとってどれくらいの深刻な問題なのかというあたり、ちょっとお話を伺えるとと思ったのですが。

○神野部会長

 第1点の理解の確認についてガイさん、それから、水野さんに順にお答えいただいて、2点目については水野さん中心にお答えいただければと思います。

○サーシャ・ガイ氏

 今の第1点目に関してですけれども、インハウスと外部の委託に関してですけれども、まず海外の洗練されている年金基金の場合ですが、インハウス運用というのは長期間かけて構築してきたスキルです。ただ、そうは言っても100%インハウスでやるというわけではなくて、外部の委託のほうも活用しつつ、インハウス運用を同時に行うという方向で進んでいます。

 具体的に申し上げますと、インハウス運用をすると効率的に投資、運用ができるということはございますけれども、例えばインハウスでやるよりも外部を使ったほうがより効果的、あるいはインハウスではそういった人材を確保できないというケースがございます。具体的には例えば北米の年金基金がアジア地域における投資を考えている場合には、その部分における知見がインハウスでは十分確保できないと判断される場合は、外部委託をするという選択をします。あるいはセクターや特定のアセットクラスに関して投資をする場合、製薬のロイヤルティーに投資をするといった場合には、そういった特殊なスキルを持った人材をインハウスに持つことが難しい、むしろ外部でやったほうが効率的だと考えた場合は、外部委託を続けるという選択を行います。ですので、今後年金基金の将来のモデルということを考えますと、恐らくハイブリッド型になっていくのではないかと考えております。社内でやったほうがより効率的、効果的だと思われる部分に関しては、自家運用をふやしていくと思われますが、やはり外部の特殊なスキルを必要とする場合あるいは特殊なアセットクラスや地域に投資をしなくてはいけないという場合には、恐らく外部委託を続けるというモデルになってくると考えています。

○香月氏

 1点だけ補足させていただきたいのですけれども、伝統的資産もオルタナティブも両方ともインハウスでやったほうがいいというのも我々の考え方です。オルタナティブのみということではないということだけ追加させてください。

○神野部会長

 オルタナティブの点、動向等々の理解について。

○水野氏

 できるだけお答えします。

 まず植田先生の御質問で、伝統資産でやることによるインハウスのメリットという質問だと思うのですけれども、私が先ほど申し上げましたのは、やはりパフォーマンスでアウトパフォーマンスできると必ずしも思っているわけではございません。一番簡単なアルファの上げ方は、効率性の低いところでより効率的な運用をするということですので、それに関しては伝統資産はかなり難しいレベルになっていると思いますが、一方で私はこの情報のなさは運用上のリスクだと考えております。それは先ほどの売ったときの日中のマーケットの動きだけではなくて、例えば今、私どもがマーケットの状況とか、どういうプレイヤーがどのようなことをしているのかと聞く相手は現在、運用会社、我々が委託をしてフィーを払っている相手に聞くしかないという状況でございまして、これは当然、タイムラグだけではなくてバイアス等も想定して情報として処理しなければいけないということで、そのあたりのマーケットごとの情報のアシメトリーを非常に強く感じるものですから、ここはリスクをいかに防ぐかという観点から、インハウスを必要だと思っているということでございます。

 あと、結局この議論になると最後は人材の話になるかと思うのですが、1つ申し上げたいのですけれども、今回の運用専門職員の給与体系に関しましては、ほぼ日本の金融機関と同等の給与レベルまで持ってきております。当然、外資で1億円プレイヤーみたいな人がとれるかといったら、そういうことはできないのですけれども、それで日本の金融機関の方がとれないかというと、とれるわけですので、そこにどれだけのプロがいるかという議論になるとほとんど国民的な論争になってしまうかもしれませんが、民間の日本の企業からは十分とれる水準ですし、あと、我々は200人近く面接して思いますのは、お金が安いと断ってくるよりも、これだけ運用制限があるところに入って運用のプロとして楽しいのかというところが正直あると思いますので、そういう観点でも今の状況は人材を採用することにおいても、かなり不利に働いているということはぜひ申し上げたいと思います。

○神野部会長

 藤沢先生、どうぞ。

○藤沢委員

 ありがとうございます。

 きょうは私ももともとは運用会社にいて、自分で投資信託の評価会社をしていた人間として、ずっと尊敬していた先生お二人からお話を伺うことができて、かつ、小幡先生も若杉先生もインハウス、オルタナティブどちらも自由であるべきだという御発言があって、非常に私は安心をしたというか、やはりそうであるべきなんだということを確認させていただいて、ただ、お二人とも共通でおっしゃったのが、優秀な人をそろえられるかというところをおっしゃったわけです。こちらに関しては運用の人材と、そもそもの経営委員会の人材、この両者についてきちんとそろえられるか。

 ここに関してマッキンゼーさんがお話されていた過去のケースを見ても、こういった人材の育成ということは非常にロングジャーニーであり、長期的なコミットメントをもとに人を育てていかなくてはいけないというお話がありました。であるならば、私たちの年金というものをこういったインハウス、オルタナティブは本来自由であるべきであれば、そういった体制にこれから整えていくスタートを切るのか切らないのかということが非常に今、重要なところに来ていて、そのためにはガバナンスと運用の話を同時に今、議論することというのが非常にもっともであるなということを改めてきょう確認させていただくと同時に、この目標に向かっていくためのガバナンスと運用体制を今、私たちはどう決めるのかというのを、やはりきちんと議論したいと改めて思いました。

 その上で人材に関して確かに少ないと言えば少ないのかもしれませんが、私自身、国内の運用会社、海外の運用会社で働き、かつ、運用会社の評価をするという仕事をしていたわけですけれども、それほど言われるほどひどい水準なのかというのは私は非常に疑問を感じます。私が運用会社にいたのは十数年前ですけれども、そのときから比べて日本が非常にレベルが低いというのはなぜ言い切れるのかというのは、少し疑問を感じるところであります。

 低い理由というのは2つ私はあると思っていて、運用のリスクにもつながることですけれども、コストの問題と情報というものが運用の足を引っ張る大きな2つのリスクであると私は考えています。そういう意味ではまず情報リスクということを考えると、マッキンゼーのお話の中からもマーケットのアクセスというものがありましたけれども、自分で資産をしっかり持って、自分で運用している人のところには大変多くの情報が来るのですけれども、お金を持っていない人のところには情報は来ないわけです。そういう意味ではインハウスの運用を少しでも始めることによって、GPIFに入ってくる情報量というのは私は格段に変わってくるのだろうと思います。

 また、人を育てていくという観点では、最後に他国の年金との共同投資という話がありましたが、まさにもし日本より海外の年金運用のほうが進んでいるのであれば、そういった共同投資をすることによってGPIFの人の育成というものにも、これを通じて寄与していくことができるのではないかということで、これも積極的に検討していくべき1つのものではないかと思いました。

 最後に、インハウス、オルタナとも自由であるべきということであれば、やはりコールの話であるとか、差金決済のものであるとか、まず自由に使える道具を調えることを今やらないと、今後本当にインハウスに向かって我々がもし取り組んでいくと決めるのであれば、道具立てを調えるという意味でもこういうものについても見直しを今、考えるべきときかなと思いました。

 以上です。

○神野部会長

 御意見として承っておけばいいのか、それともお二人の先生にお聞きしますか。

○藤沢委員

 意見です。

○神野部会長

 いいですか。では、米澤委員、どうぞ。

○米澤委員

 私はこちらに座っておりますけれども、半分はGPIFのほうで運用をしているので、どちらの立場で言っていいかわからないのですが、せっかくですのでGPIFの経験を踏まえて簡単にお話をさせていただきます。

 きょう退席されてしまいましたけれども、まずはガバナンスの改革が最重要だといったわけですが、今、出口委員からお話がありましたように、運用委員会、法律のたてつけこそないですけれども、ガバナンス改革をしたつもりで運用しております。それまではほとんどいろいろなことでできない、できないということで伝統的に4資産のポートフォリオで甘んじていたのに対していろいろなことをやり始めています。具体的にはちょっと違うかもしれませんが投資原則をつくったりとかやっていますし、まさにオルタナに関してもこれはポートフォリオで認められたこともありましたので、ではやりましょう、積極的にやりましょうと議論を進めております。この辺が全く今までと違ったところです。

 ところが、やり始めた途端にLPSの問題が出てきてしまってどうしたものかということで非常に制約的にしかできないということで、我々せっかく運用委員会で建議書で発議できるということだったので、そこまで持っていくかということを議論したのですけれども、何とかその前にうまく法律改正できそうだ、政令で改正できそうだという意見を伺ったので、そこまでは持っていっていませんけれども、要するに絶対にそれはクリアしてほしいということまでも進んでおります。

 というので非常にイノベーティブなことに進んでおります。そのときに第1は今も出て着たようにコールの話。コールの話が出てきているわけではないのですけれども、そういうものも含めてできない、できない、できないとなりますと、無理だなということが先に出てきてしまうので、このリスク、イノベーションを妨げるようなことだけは今後たてつけとしてしないでほしい、やっていただかないでほしいと思います。

 繰り返しますけれども、まずはガバナンスがちゃんとしてからだというのは、ガバナンスは発足しています。ですので今回ここで考えられているのは、それを法律に明文化すると同時に、もちろんすぐにいろいろなことができるというわけではないですけれども、そこのお手並みを拝見してからというのは少し違うのではないかということなので、同時にうまい仕組みをつくってスタートしていただきたい。それがシーケンスの問題よりもちょうど今いい状況に、順番としてもいい状況になるのかなということが内部の人間として、感想として言わせていただきたいと思っています。

 以上です。

○神野部会長

 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員

 ちょっとおくれて来ましたので全てのお話を聞けなくて残念だったのですけれども、ちょうど最後に水野さんの資料の11ページ目の9番目の不安事項です。これは私も個人的に一番心配を持っているところであります。

 厚生労働省の資料の13ページ目あるいは私も似たような資料を出しているのですけれども、日本の積立金は大変世界的にも大きい金額があって、日本の国内マーケットに与える影響も大きい。これは平均的には7.6%の株式保有の可能性がある。これをインハウスでアクティブにやれば、もう少し大きくぶれる可能性も出てくるだろうと思います。そうするとかなりの議決権をGPIFが持つ可能性があると思います。この辺はほかの国、これはほかの国、この程度の、大体データが少な過ぎるような気がして本当に0.9%、0.4%、取るに足りないので、日本の状況と1桁違います。これだけ大きい株の保有率、それで議決権を持ったときに本当にQ5のような影響がないのかどうか、これが心配なところです。

 これはまさにおっしゃるとおり、だからこそちゃんとガバナンスをつくってくれということになってくると思います。我々の議論の進め方が先にガバナンスの話が走っていて、インハウスできるかできないか決めない前にガバナンスの話をしているのですけれども、これはインハウスをもし可能性があるということになれば、もう一回ガバナンスの話に戻ってかなり厳しいガバナンスの構造をもう一回チェックしないと、先ほどおっしゃっているようにリスクを、このリスクはかなりまずいリスクだと思いますので、かなり低めなければいけないと思います。これは諸外国で比較したときに、これだけ大きく保有を国内株式を持つというボリュームの問題というのはどう考えられているのか。もしよければ水野さんにお聞きしたい。

○水野氏

 先生ありがとうございます。

 まず1つ誤解があるといけないので御説明させていただきますと、例えば今、7%の日本の株式市場をGPIFが持っているということについては、インハウスの移行によっては変わることはございません。というのはそこは基本ポートフォリオで決まっておりますので、インハウスの有無によってそこは変わらないというのをまず最初に申し上げたいと思います。

 続きまして、では7%ということをどう考えるかという質問だと思うのですけれども、例えば現在、私どもが運用委託をしている民間の運用会社に対しては、それぞれの会社で5%以上は持たないようにしてくれという運用ガイドラインの指示を出しております。なので考え方としては5%にいろいろな意見があるかもしれませんけれども、それが例えばインハウスにも同じように適用されるという考え方も1つあるでしょうし、ガバナンス、今の提案は十分私は強固だと思いますけれども、いろいろな議論の中で民間の運用機関なら5%までだけれども、GPIFのインハウスは例えば3%ぐらいにするべきではないかみたいな議論は実務的にはあり得るのではないかと思っていまして、それはまさに若杉先生がおっしゃった、どうやって制限するかということは実務として方法はあるのではないかと思っています。

○駒村委員

 もし3とか5に何か、根拠があるかどうか。それはまた実務上の問題とか、もしあればお示し願えればと思います。

○水野氏

 また説明に上がります。

○神野部会長

 平川委員、どうぞ。

○平川委員

 まず、若杉先生にお聞きしたいのですけれども、GPIFの積立金、国のお金ではないので国による民間企業の支配につながるという考え方ではないと言われておりましたけれども、では1つはどういうお金の性格なのかというのをお聞きしたいと思います。民間のファンドとは全く違いますし、年金として給付される場合は、当然国の税金も入っておりますし、社会保険料ということで言えば皆保険制度でありますので強制徴収、差し押さえというお金の性格でもあります。

 あと、GPIFにつきましては聞きそびれてしまったのですけれども、株主としての発言ということに対していろいろ御発言されたと思いますが、もう一度その辺についてお考えを述べていただければと思います。

 また、代表して若杉先生にお聞きしたいのですが、優秀なファンドマネージャーということがよく言われておりますけれども、優秀なというのは常に定性的な話でしかなく、私のような素人は全くわかりません。どのような方が優秀なファンドマネージャーなのか。優秀な方というのはどの期間、優秀であり続けることができるのかということ。そして、日本にそのような方々はどのぐらいいるのか。そして報酬はどのくらいなのかということも含めて、小幡先生が言うように素人はリスクを要するとありますけれども、そのようにわかりやすく教えていただければと思います。

 あと、先ほど言ったように諸外国の運用機関では、相当な職員がいらっしゃって、カナダは1,157名というような状況になっています。これは直接インハウス運用しているからこれだけの人数がいるのではないかということが言われておりますけれども、最初にこのインハウス運用について10年かけて導入していったというお話がありましたけれども、日本の場合がもしこのインハウス運用をそれなりに大きく拡大していくという形になれば、どれくらいのGPIFの組織的な規模が必要なのかということについて、香月先生でもいいですし、お考えをお聞きしたいと考えます。

 最後に水野理事にお聞きしたいのですけれども、先ほど手数料の問題でいろいろございました。GPIFの資料の13ページでオルタナティブ投資における一般的な運用委託手数料、これだけ莫大な手数料がかかっているということが言われておりますけれども、この手数料というのは今後も固定化されていくのか、それとも時代によってこの手数料というのは大きく変動していくのかどうなのかということをお聞きしたいと思います。

 以上です。

○神野部会長

 まず若杉先生からお願いできますか。

○若杉氏

 誰のお金かというのは哲学的な問題になりがちですけれども、拠出者が誰にしても最終的には受給者、加入者がもらう年金の原資ですから、受給者・加入者のものではないでしょうか。株式会社の場合は出資者と受益者とが同じですから、出資者として株主がガバナンスを持つと考えることで簡単ですが、公的年金の場合は、一部は企業や国が出すので、複雑ですが最終的には受益者である受給者・加入者の資金と考えるべきだと思います。百歩譲って、仮に国のお金だと思っても、それは受給者、加入者に支給されるわけですから、GPIFはそのためにベストな運用とか銘柄選択、議決権行使をしなければいけないという受託者責任を負っていると考えるべきだと思います。

 2番目の質問が忘れてしまったのですが、3番目の優秀なマネージャーですけれども、要するにファンドマネージャーとして優秀なマネージャーというのはどういうものかということですが、まず運用する以上は、その人がどういう哲学を持っているかということです。そのマーケットについてどのように見ているかとか、あるいはどういう世界観を持っているかとか、そういうものが出発点になるわけですが、そういう中で自分がどういうスタイルで、どういうターゲットとリターンを求めて、あるいはどういうリスクのもとで運用するのかということをきちんと明確にすることが大事です。そして最終的に、自らなりガバナンスなりで定められた運用目標をきちんと達成できる人が、優秀なファンドマネージャーということになります。

 ただ、当然リスクがありますから、毎期目標を達成することはできないわけで。ただ、3年とか5年とかある程度の長期にわたって、目標のリスクとリターンを実現できる人が、優秀なファンドマネージャーだと私は考えております。

 2番目の質問が何だったか忘れてしまったので、後回しにしてください。

○神野部会長

 あと、どの程度の人員が必要になってくるかということについてあれば、どうぞ。

○アレクサンドル・シャトーヌフ氏

 従業員の数についての御質問ですけれども、それは資産規模そのものとは直接関係していないと考えております。資産規模そのものよりは、どういったアセットに投資するか、どういったサブアセットに投資するか、あるいはどういったセクターに投資するか、どの地域に投資をするのか、そういったことがニーズに関係してきます。先ほどのOTTPの例では1,000名となっておりましたけれども、失礼しました、もし複数のこうした複雑な形で投資をするのであれば、もしかしたら1,000人ぐらい必要なのかもしれない。それ以上かもしれません。ただし、債券や株式、伝統的な資産等に投資する、あるいは地域的にも国内やアジアに限定するということであれば、人数はもう少し限られても構わないかもしれません。

 もう一つ、人数そのものだけに注力するのではなくて、正味調整リターンがどれくらいかということも考慮すべきだと考えています。先ほどのOTTPの例では従業員は1,000名おりました。そして、その設立当初からリターンは10%程度でした。こういったことも視野に入れながら、人数がどれくらいかということを適切に判断するべきだと考えます。

○神野部会長

 手数料の問題、水野理事いいですか。

○水野氏

 2%、20%というのはあくまで業界の平均的な数字でございまして、今まで私どもが取り組んだオルタナを含めてGPIFのサイズと存在感をすれば、基本的にこのようなレベルにならないということはまず申し上げたいと思います。

 一方で、伝統資産のマネジメントフィーと違いまして、オルタナの場合、プライベートなパートナーシップになりますので、他の投資家の方々に我々のフィーレベルがわかってしまいます。それによってなかなか我々だけほかの投資家に比べて10分の1、20分の1というような、今、我々がパッシブ等でエンジョイしているような状況にはオルタナティブはならないだろうというように思っておりますので、これよりは少し少ないということだと思いますけれども、先ほどマッキンゼーの方もおっしゃいましたけれども、基本的にはコスト控除後でどういうリターンを出していくかということが重要でございまして、こういう手数料は我々の用語を使えば、最初からフィックスされたネガティブアルファということになりますので、ここは少しでも引き下げる必要はございますが、これだけ世界的にオルタナが一般化しているということは、要するにこのコスト控除後でも十分な超過リターンが出ているということでやっております。リターンが出なければそもそもフィーゼロ%でもやる意味はございませんし、そのあたりのバランス感を持って議論をしていく話かなと思います。

○神野部会長

 出口委員、時間オーバーしていますので簡潔にお願いします。

○出口委員

 質問ではなく意見だけ申し上げますが、ガバナンスと運用の多様性というのは理屈で考えたらちゃんとしたガバナンスができて、それで初めて運用ができるように考えがちなのですけれども、これは鶏と卵のように双方向だと思うのです。人間は、自らやっていないことについてはガバナンスもできないと考えますので、恐らくガバナンスを強化していくためには10年、5年かかるかどうかわかりませんが、運用の多様化を行っていくジャーニーも米澤先生がおっしゃったように、お互いに影響を与えながら前に進むものだと思うのです。

 そうであれば初めから制限をするのではなくて、これは小幡先生や若杉先生も言われたとおり、理屈では運用については基本的には何でもできるということが多分、理論的にも正しく、しかも世界の年金基金もほとんどそうやっているのであれば、そういうまずは原則自由という原則をしっかりと打ち立てて、その中で実際にガバナンスと運用がお互いに行ったり来たりをしながら、どちらも高度化していくというのが、これは米澤先生が先ほど言われたとおりですが、正しいあり方なのではないかと思います。ですから、そういう実態を踏まえたら先ずガバナンスありきという観念論というのは、おかしいのではないかと私自身は思います。きょうのGPIFの方の説明は大変勉強になりましたけれども、この議論の前提としてはGPIFの方や米澤先生や武田先生からいろいろ実際にやっていることを我々がよく理解し、よく聞いてこの議論を進めていくことが望ましいのではないかと考えました。

○神野部会長

 平川委員、どうぞ。

○平川委員

 最後に一言言わせていただきますが、基本的にこの積立金はどういう性格のお金なのかというのはもう一度再確認をしていく必要があると思いますし、いろいろな制限がイノベーションを妨げているという意見がありましたけれども、その制限は一体どういう理屈で、何のためにその制限がつくられてきたのかということもしっかりと再確認をしていかないと、公的年金の積立金のお金の性格があやふやなものになってしまうのではないかと思っているところであります。

 そういった意味で普通の民間基金であれば、このような制限というのは全くナンセンスだという意見もあるかもしれませんけれども、国民にとって安心して年金制度が信頼できるような積立金にしていかなければならないということからも、一つ一つその制限は一体どういう性格のものなのか、なぜ必要なのかということ。そして何よりもGPIFの役割というのは年金制度の中における制度でありますので、やみくもにリターンをとるという必要性も求められていないということも、しっかり考えていかなければならないと考えているところであります。

 きょうはさまざまな運用の話を素人ながらいろいろお聞きしましたが、改めてなぜこのように規制を取っ払っていかなければならないのかというところについては、なかなかよくまだわからないところがありました。GPIFの現在の運用がリスクを取らざるを得なく、そんなに危機的なものなのか。それはいろいろ考え方があるでしょうけれども、その辺を含めてこれから議論させていただければと思います。

 以上です。

○神野部会長

 時間をオーバーしておりまして、まだまだ御意見、御質問あるかもしれませんが、そろそろ打ち切らせていただいてよろしいでしょうか。私の不手際で時間をオーバーしてしまったことをおわびしつつ、次回は日程の都合によって本日お越しいただけなかった有識者の方からヒアリングをさらに行わせていただいた上でもって、事務局に論点の整理をしてもらって、運営のあり方について議論を深めていきたいと考えております。

 次回の日程等々につきまして、事務局から連絡をお願いできればと思います。

○総務課長

 次回の開催日程、追って連絡申し上げますけれども、精力的な議論ということでございますので、引き続きお時間を頂戴することになると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

○神野部会長

 それでは、重ねてでございますけれども、私の不手際でもって時間を大幅に超過してしまったことをおわびし、お昼時ですので昼食の時間がなくなるというような非人権的なことにならないことを願いながら、本日終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 

(了