2016年2月2日 第36回社会保障審議会
年金部会
年金局
○日時 平成28年2月2日(火)16:00~19:00
○場所 東京都千代田区霞が関1-2-2
厚生労働省 18階「専用第22会議室」
○出席者
神 野 直 彦 (部会長)
植 田 和 男 (部会長代理)
小 塩 隆 士 (委員)
菊 池 馨 実 (委員)
駒 村 康 平 (委員)
出 口 治 明 (委員)
原 佳 奈 子 (委員)
平 川 則 男 (委員)
牧 原 晋 (委員)
宮 本 礼 一 (委員)
森 戸 英 幸 (委員)
山 口 修 (委員)
山 本 たい人(委員(代理出席))
米 澤 康 博 (委員)
○議事
○神野部会長
それでは、定刻でございますので、ただいまから第36回「年金部会」を開催したいと存じます。
委員の皆様方には大変お忙しいみぎりに、短期間のうちにたびたび御参集をいただきまして、多々多々恐縮をいたしております。本日も御足労いただきまして本当にありがとうございます。心より御礼を申し上げる次第でございます。
本日の委員の出欠状況でございますが、小室委員、佐藤委員、武田委員、藤沢委員、山本委員、諸星委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。
本日御欠席の山本委員の代理として、日本商工会議所の大井川参考人が御出席いただけるということでございますので、この件につきまして部会の御承認を頂戴したいと思います。よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○神野部会長
それでは、最初にですが、御出席をいただきました委員の方々が3分の1を超えておりますので、会議は成立していることをまず御報告申し上げたいと存じます。
議事に入ります前に、事務局から出席者の御紹介と資料の確認をさせていただきますので、事務局のほうよろしくお願いいたします。
○大臣官房審議官(資金運用担当)
それでは、事務局より出席者の確認をさせていただきます。事務局からの出席者に関しましては、お手元の座席図のとおりとなっておりますので、紹介にかえさせていただきたいと思います。
次に、お手元の資料について確認させていただければと思います。
本日は配付資料といたしまして、資料1として金融庁様からいただいている資料。
資料2「GPIF運用のあり方に関する現在までの議論」。
資料3「GPIF運用のあり方について(議論のためのメモ)」。
参考資料といたしまして「運用のあり方関係」という4つを用意しております。
あわせてお手元には駒村委員御提出の資料、そして平成28年度の年金額改定についてのプレスリリースを配付させていただいているところでございます。どうぞ御確認のほうよろしくお願いいたします。
○神野部会長
よろしいでしょうか。お手元の資料を御確認いただければと存じます。
それでは、大変恐縮でございますが、カメラの方につきましては、ここで御退室をお願いしたいと思います。御協力をお願いしたいと思います。
(カメラ退室)
○神野部会長
それでは、議事に入らせていただきますが、お手元の議事次第をごらんいただければと思いますけれども、本日は議事といたしまして「年金積立金の管理運用に係る法人の運用のあり方について」という議事を準備いたしております。
本日は御欠席でいらっしゃいますけれども、前々回の部会におきまして藤沢委員から、資金運用等に関して金融庁に御質問をしたいという御意見もございましたので、本日は大変お忙しいところを金融庁の油布参事官に御臨席いただいております。
金融庁からは、金融機関等々の現在の運営等についてお話を頂戴お願いしたいと考えております。国の機関たるGPIF固有の問題についてコメントすることについては大変難しいと推察いたしますので、一般論としてスチュワードシップ責任等には、金融機関等の運用をめぐる状況についてお話をお聞きできればと考えております。
それでは、まず金融庁から提出していただいております資料に基づきながら御説明を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○金融庁油布参事官
金融庁でございます。
資料1が金融庁資料となっているかと思います。私から手短に御説明を申し上げたいと思います。
今、お話がございましたけれども、金融庁はGPIFを所管しておりませんので、GPIFの運用のあり方などにつきまして、何らかの所見なりを申し上げる立場にはございません。今般、説明の御要請をいただきましたことから、信託銀行ですとか保険会社ですとか、投資一任業者、つまり運用会社とか、民間金融機関の監督などを私ども行っているということを踏まえまして、現在の運用などに関する一般的な点について、大きく3点ほど申し上げようと思います。
特に3点目のことにつきましては、お手元の資料1に、こちらは何か紙があったほうがおわかりいただきやすいかと思って配付しておりますけれども、まず1点目について申し上げます。これは運用者のフィデューシャリー・デューティーといったようなことについてでございます。
他人あるいは他者の資金の運用を担う主体。これを仮に運用者と呼ぶといたしますと、こういう主体はその運用を外部に委託する場合であれ、自家運用する場合であれ、その資金の出し手といいましょうか、もっと厳密に申し上げると実質的な最終的な受益者といった方々の利益を第一に考えて、その受益者のために、今、受益者と申し上げましたけれども、そういった受益者のために行動することが求められるのだろうと考えております。いわゆるフィデューシャリー・デューティーを適切に果たすということなのですけれども、この運用者はフィデューシャリー・デューティーを適切に果たすべきであるという点は、根本的に重要な理念なのだろうと考えております。ですからこうした観点からも、運用者には例えばまずもって自身のしっかりとしたガバナンスとかアカウンタビリティーを確立していただくことが求められるのだろうと思いますし、運用に関する専門的で実践的な知見を確保するとか、リスク管理ももちろんそうですけれども、適切な運用体制を整えることも欠かせないのだろうと考えております。これが1点目でございます。
2点目は、運用手法などについてということでございますが、これはGPIFの運用手法などについて我々で所見を申し述べるような立場にありませんので、運用等に関してごく一般に指摘されることが多いだろうと思われる点について、何点か申し上げさせていただきたいと思います。
まず運用に当たりましては、個々のいろいろなアセットクラスがあると思うのですけれども、個々の運用対象資産のリターンとかリスクとか、そういった点ばかりではなくて、それらを組み合わせた結果として資産運用のポートフォリオ全体のリスク、リターンがどうなるのかという点が、この運用の世界では重視されるということだろうと思います。
次の点になりますが、この運用資産全体のリスク、リターンというお話なのですけれども、これについてはできる限りリスクを小さくしながら、必要なリターンが確保できるようにということで、特定の資産に運用を集中させるというのではなくて、特性が異なりますような複数の資産に分散して投資が行われるということであります。もちろんこれはいろいろな例外がありまして、集中型の運用会社みたいなものも当然あるわけです。
その次でありますけれども、今、特性が異なる資産を組み合わせるという話を申し上げましたけれども、これはいろいろな異なるタイプの資産をより多様に組み合わせをすることで、分散投資の効果を高めることができる。このような考え方がとられるということで、その場合には運用対象になるような資産については、間口としてはなるべく選択肢を広くとった上で、その中から適切なものを選択するような検討が行われることが多いのだろうと思います。
また、少し視点が変わるかもしれませんけれども、金融技術の革新みたいな話がございまして、今後も多分さまざまな金融商品とか手法でありますとか、ヘッジ手段などが新たに登場してくることが想定されるわけであります。こういうものにつきましては、それが受益者の利益にかなうと判断されるのであれば、いわばおくれをとらないようにという意味からも、そういう新しい商品手法あるいはヘッジ手段を使っていくということには合理性があるのだろうと考えられます。
なお、年金さんなどから資産運用を委ねられております民間金融機関ですけれども、まず信託銀行につきましては、運用対象となります資産に特段の法令上の規制はございません。それから、保険会社、投資一任業者、つまり投資運用会社ですけれども、これについては対象となる資産も拡大が進んできております。こういった状況のもとで、こういう金融機関を我々金融庁はどのように監督しているのか。つまりアセットで縛るということを徐々に外してきておるということなのですけれども、その監督に当たりまして我々のほうでは、運用に関する体制などが十分なのかどうか、例えば運用ポートフォリオ全体のリスクを適切に把握できているかどうか。例えばそういったような点を着眼点にしております。
運用についての最後のポイントでございますが、運用に当たっては時間軸の観点も重視されることが通例だろうと思います。長期の運用であれば、例えば流動性の低いような資産も一定程度、ある程度は組み込んでいくといったようなことなども含めて、時間軸の長さを活かすような運用が検討されるということが通例であろうと見ております。
最後3点目ですが、スチュワードシップ活動の関係でございます。これはお手元にごく簡単な資料がありますが、これを細かく御説明するということではなくて、こちらにも目を落としながら私のお話を聞いていただければと思うのですが、GPIFの議決権の行使ですとか、民間活動に与える影響みたいなものについては、我々所見を申し述べるような立場にございませんので、機関投資家一般のスチュワードシップ活動、これには議決権に関連するものも当然含まれますけれども、それの意義などについてお話を申し上げます。
スチュワードシップ・コードでございますけれども、このコードの中でスチュワードシップ責任とは何か。これを引用いたしますとこのように書かれております。機関投資家が投資先企業やその事業環境などに関する深い理解に基づく建設的な目的を持った対話などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客、受益者、ここには最終受益者が入るわけですけれども、顧客、受益者の中長期的なリターンの拡大を図る。そういう責任を意味するというようにコードの中では整理がされております。その上でこのスチュワードシップ・コードは、機関投資家さんがそのようなスチュワードシップ責任を果たすに当たって有益、有用だと考えられる諸原則を幾つか記載しているわけです。
その際、このコードなのですけれども、いわゆるコンプライ・オア・エクスプレインと言われる手法などを使っております。柔軟なアプローチを採用しているということなのですけれども、コードの原則は7本ほどあるのですが、その中に機関投資家さんみずからの個別事情に照らして、実施することが適切でないと考える原則がある場合には、その理由を説明するということで、一部の原則を実施しないこともコード自身が想定をしております。
もとより、このコード自身は法的拘束力のある規範ではございません。それを受け入れるかどうかも機関投資家側の判断に委ねられているということなのですけれども、そういった上で機関投資家が、今、申し上げましたけれども、みずからの個別事情に適合するような形で顧客、受益者の利益のために適切にスチュワードシップ責任を果たしていく。こういったことは冒頭一番最初に申し上げました、いわゆるフィデューシャリー・デューティーといった観点からも重要なことなのだろうと私どもでは考えております。
若干抽象的な御説明でございますけれども、私からの御説明は以上でございます。
○神野部会長
どうもありがとうございます。金融庁からは極めて要領よく御説明いただきました。
それでは、御質問がございましたら、どなたからでも結構でございます。
米澤委員、どうぞ。
○米澤委員
早稲田大学の米澤です。
御説明どうもありがとうございました。私も違ったような方面から、とりわけこのスチュワードシップ・コード、ガバナンス・コードができた後というか、同時にフィデューシャリーということを改めて重視されるということを耳にしたことがあるので、それに関してはもっともだと僭越ながら思っているわけですが、そういう意味ではGPIFこそフィデューシャリーの責任を果たしていかなければいけないという感じがしているわけなのですが、一般論として幾つかの法律の縛りがあって、十分なリスク管理ができないという状況があるわけなのです。法律なのだからそれを守れば別にフィデューシャリー・デューティーに抵触することはないだろうと言われればそれまでなのですけれども、例えば前回なんかも出てきたのは、先物取引も形の上では使えるのですけれども、実際にはなかなか使いにくいであるとか、コールのマーケットにも参加できないということで、広い意味でのリスク管理、特に先物が使えないということは、私が一番、問題にしているのはヘッジということもありますけれども、流動性の確保のためにぜひ使えるようにしてほしい。これだけ大きなクジラが動くのですから、動くときには少しでも動きやすいように、流動性を確保するために、流動性がある先物のマーケットをより使うために使いやすくしていただきたいとお願いしているわけなのです。
要は質問になるとおかしいのですが、そういう点はあくまでもフィデューシャリー・デューティーというものが一番上位にあって、金融行政とか法律の体制もそれに準じて、特段それが問題がない限り、それに準じて行っていくという考え方でよろしいのでしょうか。何か不必要にそこのところの規制を高くして、結果としてフィデューシャリー・デューティーが十分にできないということもあり得るという点があるのだなということは、ことし入ってからこの部会で改めて感じさせられたわけですけれども、そのような理解でよろしいのかどうか、改めてお答えできるのであれば御感想をお願いしたい。
○神野部会長
よろしいでしょうか。コメントいただけるのであれば。
○金融庁油布参事官
大変申しわけございません。個別の論点で議論が交わされておられることだろうと思いますので、金融庁の立場からそれについて評価とか意見というのは差し控えるべきなのだろうと思います。申しわけございません。
○神野部会長
ほかはいかがでございましょうか。どうぞ。
○駒村委員
最後のほうの御発言で確認させていただきたいことがあったのですけれども、スチュワードシップ・コードはあくまでも機関投資家がみずから守るという宣言であって、法的拘束力はないということなのですけれども、理解としては、ではどうして、機関投資家はコードを守っていくのか。守っていくのかという動機づけというのは、それを守らないというのは不透明な機関投資家であるという評価で、マーケットからおのずと制約を受けるんだという理解で、自主的に守ればいいという理解でよろしいのでしょうか。
○金融庁油布参事官
スチュワードシップ・コードは、実際に我々できれば機関投資家さんには受け入れていただきたいともちろん思っているわけです。ただ、もちろん機関投資家のタイプによっては、ごく短期のアービトラージばかりやっているような人たちなんかは多分それはやらないだろうと思います。
こういった点について、どうやってより広くコードを受け入れていただけるかということについては、コードの受け入れに際して金融庁に御連絡いただくことになっておりまして、そのコードを受け入れていただいた方の一覧、リストを金融庁で公表しています。スチュワードシップの本家はイギリスなのですけれども、イギリスでも同じようなアプローチがとられておりまして、そういったことで広がるように1つのインセンティブにはしているということです。
○神野部会長
あとはよろしいですか。山口委員、どうぞ。
○山口委員
少しだけ教えていただきたいのですが、金融庁さんは民間の金融機関、信託銀行とか投資顧問会社などを監督されておられる立場でありますけれども、このスチュワードシップ・コードを出されるに当たって、そういう運用機関の規模といいますか、非常に株式市場での占率が大きいようなところも含めて、これは一律的にこういうことであろうといったことだったのでしょうか、つまり規模についての上限といいますか何といいますか、そういった視点というのはここの中にあったのでしょうか。
○金融庁油布参事官
おっしゃるように規模ですとか、いろいろそれぞれの機関投資家さんのスタイルなどによって、当然アプローチとかやり方、考え方は違ってくるだろうと思います。でありますからこそコンプライ・オア・エクスプレインということで、自分の運用とかそういったものに合わないところは必ずしも実施しなくていい。自分の実情に合わせてやっていい。規模についても当然そうした視点の中に入ってまいりますし、特に今おっしゃられた規模の点については、スチュワードシップ・コードの前文にも確認的にということなのですけれども、例えば機関投資家の規模や運用方針などによって、さまざまに異なり得るのですということが念のために記載をされております。
○神野部会長
植田部会長代理、どうぞ。
○植田部会長代理
きょうお話いただいたこととは直接関係ないのですけれども、私どもが議論してきた中で金融庁さんに関係ありそうなこととして、GPIFはインハウスで株式の運用をした場合に、その情報が何らかの形で外に漏れて、ほかの投資家の追随的な行動を誘発して価格形成にゆがみが発生するリスクをどう考えるかというような議論があったかと思うのですけれども、これは私どもの中で議論がありましたように5%以内に保有割合を制限するという制限を課した場合に、情報が漏れるということは物理的にはあり得るかと思うのですけれども、漏れた場合には当然の処罰が加えられるという体制になっていると思いますから、普通はこれは余り心配する必要がないリスクではないかと思うのですが、そのあたりいかがでしょうか。
○金融庁油布参事官
自家運用で運用されるということであれば、恐らく関係者はブローカレッジの証券会社、信託銀行とかが関係者になってくるのだろうなと思います。違っているかもしれません。ただ、一般的に例えばどのような銘柄をどの投資家が、誰がどのような銘柄をどのように売買しているか、どれだけ持っているかといいますのは、先ほど5%とおっしゃいましたけれども、大量保有報告書で一般に開示されるような場合はありますけれども、それを除けば基本的には運用者の極めて重要な秘密であります。ですからそれを業務上、知り得る立場にあるような民間金融機関については、当然そうした秘密は忠実義務、善管注意義務の観点からも秘匿する義務がかかるということでございまして、それが仮に守られなかったような場合には、概念的には何らかの行政処分なり何なりの対象には、形態にもよりますけれども、いろいろケース・バイ・ケースだと思いますけれども、対象になり得るのだろうと思います。
○神野部会長
どうぞ。
○出口委員
今、植田先生のおっしゃった点なのですが、ということは仮にGPIFに限らず、大きい機関投資家に1銘柄当たり5%以下という制限を課しておけば、法治国家であれば一般には投資情報が流れて、ほかの投資家がそのまねをするとか、そのようなことはないと理解してよろしいわけですか。
○金融庁油布参事官
枠組みとしては、確かに秘密を漏らしてはいけないという義務がかかっていて、私どもも監督の観点から、当然そういうところは情報の管理の仕方、ファイヤーウォールといいますか、そういった情報が関係のない機関投資家や金融機関の中でほかの部門に行かないようになっているかといったような情報管理体制も含めて、そこは私どもも重視している監督上の着眼点の1つではございます。
ただ、煮え切らない表現で申しわけないのですけれども、現にそういうものが本当に起こり得ないのかということについては、何人もそれは保証はできないのだろうと思います。ただ、そういった点は非常に一般的に監督の観点からも、業者側も顧客も極めて重要な秘密ですから、それは大切に扱われてしかるべきでありまして、そうされているのだろうと一般的に推測はいたします。
○出口委員
わかりました。ありがとうございます。
○神野部会長
森戸委員、どうぞ。
○森戸委員
金融庁資料の2ページ目のスチュワードシップ・コード、1ページ目にも書いてあるのですが、原則5の議決権行使方針の公表と行使結果の公表。これはちゃんと方針を公表しろ、結果を公表しろですが、※印があって、原則5についても企業の持続的成長を促すことが重要である旨を強調。この意味を教えていただきたいのです。つまり議決権をちゃんと行使しなさい、企業が成長するような議決権行使をちゃんとしなさいということだと思いますが、これはいろいろな事情があって積極的にしませんとか、それでも別にいいのかという変な質問ですけれども、その辺を教えていただきたい。
○金融庁油布参事官
これは投資先企業の持続的成長に資するものになるよう工夫すべきであるといったような形で、コードの中で何カ所かこのような表現が使われております。これはもちろん書かれている以上、その文字に尽きるわけですけれども、背景といたしましては、例えば極めてショートターミズム的な株主もいらっしゃって、相手先企業の先々の成長なんか余り考えずに、例えば巨額の臨時配当をぼんと要求するとか、それが決して市場規律の上で許されないということではないとは思うのですが、ただ、このコードではそういったことをせよと言っているのではなくて、どういう対話、どういう形式、どういう議決権の行使をするにせよ、投資先企業の持続的な成長を視野に入れて判断してくださいということを言っているわけです。ごく簡単に申し上げますと、投資家のショートターミズムに対して、コードの考え方はそうではありませんよということを示している。そのような理解を私はしております。
○神野部会長
駒村委員
、どうぞ。
○駒村委員
先ほどの大量株主保有の問題の5%の話なのですけれども、仮に5%未満であっても、民間の銀行のホームページからですけれども、これはそのようなことを調べるサービスがあるとされていますが、それを考えると別に5%未満であっても、誰にもわからないということはないのではないでしょうか。
○金融庁油布参事官
おっしゃっているのは、むしろ発行会社側が自分の実際の株主を知りたいということで調べるサービスのことだろうと思います。一般的に思いつくのはそれなものですから。その場合は発行会社には、そもそも調査会社が調べ切れるかどうかというのもあるのですけれども、その情報は多分依頼した発行会社に行くのだろうと思います。
○神野部会長
山口委員、どうぞ。
○山口委員
先ほどの話とも関連するのですが、投資に関する情報ということではなくて、議決権行使に関する情報という観点なのですけれども、一般論なのですが、ある会社が委託して運用していると同時に、みずからも運用しているといったような場合、つまりインハウスもやっているし委託運用もしている。その場合に議決権を行使するときに、各運用会社はそれぞれ独立して判断をするということではあるのでしょうけれども、もともと委託元の意向が非常にはっきりしているような場合は、運用会社はみずから独立して委託元と異なる判断をするというよりは、委託元と同じように判断して議決権を行使するのがむしろ自然ではないかと思うのです。それゆえ、このコードの中では、どのような場合にでも独立して議決権行使をするべきで、委託元と同一の議決権行使をするべきではないのだといったことまで規定されているわけではないと理解してよろしいのでしょうか。つまり委託元の意向がはっきりしておれば、各運用会社がそれに従った形で議決権行使をするということになるというのは、別に不思議でもないことと理解してよろしいのでしょうか。
○金融庁油布参事官
御質問の趣旨が正確に理解できたかどうかわかりませんけれども、基本的にそのように方針なり何なりが示されている場合には、委託を受けました運用会社さんは、それを踏まえた判断をなされるということがコードの中では想定されていると思います。
○神野部会長
それでは、よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。油布参事官については大変お忙しい中を御無理を申し上げまして恐縮でございます。油布参事官はこれにて御退席になります。どうもありがとうございました。
(油布参事官退室)
○神野部会長
それでは、前回に引き続いてGPIFの運用のあり方の議論に移りたいと存じます。
前回もこの運用のあり方については3つ論点がございまして、オルタナティブ資産への直接投資、デリバティブ、コールなどの運用方法の追加をめぐる規制、それから、前回集中的に御議論が出た株式のインハウス運用の改革の進め方という3つの論点がありますが、前回時間が足りなかったこともあって、3つの論点を分けて議論したかったのですけれども、一緒に議論をしてしまいました。
それで意見の出方等々を考慮いたしまして、先ほど順番を変えて申し上げたのですけれども、本日はまず初めにオルタナティブ資産への直接投資。それから、デリバティブやコールなどの運用方法の追加をめぐる規制のあり方。そして最後に株式のインハウス運用や改革の進め方という順番で議論を頂戴できればと思っております。もちろん行ったり来たりすることは妨げないわけでございますけれども、そのように御協力していただければと思います。
かつ、本日も3時間という長丁場の会議を準備させていただいておりますので、途中、18時ごろに5分ほどの休憩を入れさせていただきたいという議事運営をさせていただきたいと思いますので、御協力方よろしくお願いを申し上げる次第でございます。
まず事務局から資料の説明をお願いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。
○大臣官房参事官(資金運用担当)
それでは、事務局よりお手元にお配りしております資料の内容につきまして御説明をさせていただきます。資料2、資料3でございます。
資料2は、運用のあり方に関するこれまでの議論を各大きな論点ごとにまとめたもので、本日お配りしている資料の中で下線部を引いているものは、前回の年金部会の中で各委員より出た意見を事務局で整理して追記したものでございます。下線部のないものにつきましては、前回同じような形式で出させていただいた資料と同じ内容で載っているところでございます。
1ページ目から6ページ目までが、株式のインハウス運用をめぐる御議論につきまして、これまで出てきた意見を記載しております。
7ページには、本日この後、順次御議論いただく予定としております、オルタナティブ資産への直接投資の関係について。
8ページには、規制のあり方について。
9ページには、改革の進め方についてということで、それぞれの論点ごとに御意見を記載しているところでございます。
あわせて資料3をごらんいただければと存じます。資料3も前回の年金部会におきまして同様の資料をお配りさせていただいたところでございますが、前回の御議論を踏まえまして、考慮要素につきまして追記を行ったり、一部内容を充実しております。
1ページ目。株式のインハウス運用に関する論点について、これまで出た意見を簡単に整理いたしますと、考慮要素といたしましてはここに掲げられているようなものがあったのではないかと思います。下線部を引いてあるところですが、人材育成上のメリットがあるのではないか。逆にそのようなメリットについて考えることはいかがなものかというような御意見等があったかと思います。個別銘柄の選択による市場や企業への影響につきましては、国の機関としての性格、公的年金制度の中に位置づけられる国の機関という性格づけについての御指摘があったかと思います。また、投資割合の制限による市場、企業経営の影響回避の可能性等も触れられておりましたので、追加をしております。
1ページの下でございます。株式のインハウス運用についてこれまでに提起された考え方の中で、前回アプローチとして3通りあるのではないかという整理をしておりました。株式のインハウス運用を認めるべきではないという立場の御意見の中では、公的年金制度の中に位置づけられる国の機関としてのGPIFの性格を考えた上で、そのような御指摘があった、あるいは株式のインハウス運用により市場における価格形成、投資行動にゆがみが生じる可能性や、民間企業の経営への介入に対する懸念や課題に対してインハウス運用により得られるとされるメリットとの比較考慮、こうした観点を踏まえて御意見が出ていたと承知をしております。
た、2つ目の立場として、最大限認めるとしてもパッシブ運用までではないかという御意見の中には、パッシブ運用とアクティブ運用との相違につきまして、パッシブ運用の場合には個別銘柄の選択というものについては基本的に行わない。また、議決権行使の外部委任による企業経営への影響回避の可能性。導入のために必要な体制が異なるのではないか。このような観点から、パッシブ運用までは認める余地があるのではないかという御意見が出ていたかと思います。
最後に、法令上はアクティブ運用まで含めて認めるべきではないかというアプローチもございました。この中では法律で運用のあり方を厳しく制限することの是非あるいは同一企業発行銘柄による投資割合の制限ですとか、議決権行使の外部委任によって市場や民間企業への影響の回避可能性があるのではないか。あるいは実施の可否等に関しては、監督者たる厚生労働大臣あるいは新たに設置される合議制機関の判断によって判断することが可能ではないかという御意見もあったかと承知しております。
本日この後、御議論いただくオルタナティブ資産への直接投資に関しましては、この2ページの下段以降でございますが、考慮要素としてオルタナティブ資産運用に関する評価、現行ルールにおける非効率性あるいは投資先の経営に関与する形とした場合に生じるリスク等についての観点から御議論も出ております。
改革との関係を含めて運用改革を具体的にどう進めていくのかという大きな論点でございます。考慮要素といたしましてはガバナンス改革との関係として、これまでのGPIFのガバナンス、あるいは今般のガバナンス改革をどのように評価して、今般の運用改革をどのように位置づけるのか。国民の意識の観点からどのように考えるのか。GPIFの体制整備の進め方についてどのように考えるのかといった観点から、御意見が出ていたかと存じます。
このような議論のためのメモも参考にしながら、御議論いただければと思っております。
続きまして参考資料でお配りいたしました運用のあり方関係につきまして、追加している資料を中心に御説明をさせていただければと存じます。
1ページ目がオルタナティブ投資に関する資料でございます。こちらは既に一度お出ししている資料ではございますけれども、現在、GPIFにおきましては、オルタナティブ投資としてインフラストラクチャーに対する共同投資に取り組んでいるところでございます。具体的なスキームにつきましては1ページの図ですが、右側にございますように、共同投資の中では白い四角の中の上段、そこに主体があります。一番左側がOMERS、オンタリオ州の公務員年金でございます。また、真ん中がGPIF、右側がDBJということで日本政策投資銀行でございますけれども、こうした海外の機関投資家OMERSと、国内の機関投資家DBJとの共同の投資協定というものを結び、投資を行っております。その際、カナダオンタリオ州の公的年金でありますOMERSは、インフラストラクチャー案件に対しまして左の矢印でありますように、直接にインフラ事業を行う企業の株式等への投資を行っているところでございますが、一方でGPIF、DBJにつきましては、インフラストラクチャーへの投資に際しまして、白い四角の中の中ほどにありますように投資信託という仕組みを活用して、インフラストラクチャー投資を行っているところでございます。
こうした取り組みを通じてのみ、このようなオルタナティブ投資というものが可能になっているということでございまして、この現状をどのように考えるのかということでございます。現在オルタナティブ投資への比率というのは、9月末時点で積立金全体の0.05%ということでございますので、全体としての割合としては低いものでございますけれども、今後それが少しずつふえていくことも考えられようかと思っています。
2ページ目はLPS(Limited Partnership)でございます。これは政令上、今後措置をすることを予定しているものでございまして、説明は省略をさせていただきます。
3ページ目、本日、大きな議題の中の2番目の議題の中で、規制のあり方としてデリバティブ取引についても御議論があろうかということで、デリバティブ取引に関する資料を改めて整理させていただいております。
デリバティブ取引に関しましては、伝統的な金融取引、実物商品、債券取引の相場の変動によるリスクを回避するために開発された取引でございます。金融派生商品とも言われます。基本的なものとしては先物取引、オプション取引、スワップ取引といったものが代表的なものとして挙げられますが、これらを組み合わせた多種多様な取引が存在しているところでございます。
もう一枚開いていただいて4ページでございます。手法としては大きくは3通りあるということですけれども、あわせてデリバティブの取引が行われております場所によりまして、大きく分けると2つの種類がございます。市場デリバティブということで金融商品市場で取引される取引、それと店頭デリバティブ取引ということで、金融商品市場を介さずに当事者同士が相対で行う取引の2種類があるということでございます。
主なデリバティブ取引につきまして、4ページの下のほうに先物、オプション、スワップそれぞれに例えば債券、為替、株、金利、商品等、種別に応じましてこのような金融商品の取引が考えられるということでございます。
GPIFにおきましては、既に現行でもインハウスでのデリバティブ運用というものが認められております。中ほどで太い点線で囲ってあるものでございますけれども、債券先物取引、為替先物取引、債券オプション、通貨オプション、こうしたデリバティブ取引につきましては、既に現在もGPIFにおいてインハウス運用が認められているということでございます。
ただ、※1として注書きがございます。為替の先物取引と通貨オプションにつきましては、市場デリバティブを除くとされておりまして、これは市場デリバティブ取引が差金決済が可能ということで、少額の手持ち資金で多額の取引が可能という仕組みがあることから、これまでは市場デリバティブ取引そのものを対象外とするという取り扱いでございました。したがいまして、為替先物取引と通貨オプションに関しましては、4ページの上にある2種類の取引のうち1つ、店頭デリバティブ取引のみが認められてきているという状況でございます。
5ページ、一般的に年金資金の運用におきまして、デリバティブ取引はどのように活用されているのかということを簡単にまとめたものでございます。大きな目的は一番上に書いてありますように、デリバティブの対象となります原資産の価格の変動が非常に激しいときに、リスクのヘッジというものが可能になるのではないかという観点から活用されております。重要なリスク管理ツールとして、デリバティブ取引が活用されているということでございます。
また、もう一つの観点といたしましては、迅速、低コストでの取引執行ということで、例えば現物の株式資産を大量に売買するということになりますと、市場への影響というものが大きく、例えば大量に売るということになりますと、マーケット自体が動いて、徐々に価格が下がっていくという効果があるわけでございます。この際に流動性の高いデリバティブ取引を行うことによりまして、売買を早目に確定をして、その後に現物の資産を徐々に売買することで、市場への影響をできるだけ避けながら、迅速かつ低コストでの取引の執行が可能になるという観点から利用している例もございます。
例えば1月12日に企業年金連合会から提出を受けて、この部会でも報告をさせていただいたところでございますけれども、企業年金連合会では機動的リバランスの対応ということで、株式指数先物の売買による全体の調整を行っておりますし、あるいは外貨建ての資産の為替リスクの管理のために為替予約、デリバティブの一種でございますけれども、それを部分的に活用しているという事例がございます。
リスクヘッジ以外の利用というものは、一般的に年金資金での運用では限定的でございまして、デリバティブ取引自体はリスクヘッジ以外にも長期的な取引等による利用も可能ではございますけれども、年金資金のような長期的資金では、このような利用というものは限定的にとり行われているということでございます。
6ページ、7ページでございますけれども、もう少し具体的にどのようなことが考えられるのかということで、具体例を例として挙げております。
6ページは為替の先物取引でございます。リスク管理をする対象としては、為替が変動することに伴いまして主に外国債券の価格変動、このリスクを減らしたいという観点から行われるものでございます。これはGPIFの資産について申し上げますと、GPIFは外国債券につきましても一定割合の投資を行っているわけでございますけれども、これら実際にGPIFとして資産評価する場合には、円ベースでの資産でカウントいたしますけれども、実際に運用している運用会社、例えばヨーロッパにある会社であれば、そこはユーロ建ての資産をユーロ建てで運用しているということでございます。それをGPIFに持ってきて評価する場合には、円ベースで価格を出すということでございます。したがいまして、ユーロに対しまして円高が進行した場合には保有する外国債券、債券自体は変わらなくても、円ベースでの資産価格は下落するというリスクを抱えているということでございます。
参考として、平成26年度外国債券の為替による損益ということで、プラス2.81%というものを掲げておりますが、これは逆に平成26年度、これはドル円で円安が進んだことによりまして円ベースでの価格が上昇したことで、為替の影響によるプラスが出たということでございます。このように外国の資産に関しましては、為替の変化によるプラスあるいはマイナスが出るということが考えられます。
現状では店頭デリバティブのみが可能ということで2つの方式のうちの1つ、市場デリバティブは禁止をされております。これに伴う課題といたしましては、1つしか使えないことによる機会損失が考えられる。具体的に言いますと、市場デリバティブの場合ですと取引上、カウンターパーティーリスク、取引先相手の倒産リスクなどを負わなくて済む、あるいは取引の匿名性が高いという特徴を有しております。こうした特徴を有する市場デリバティブを使えないことによりまして、いわば店頭デリバティブのみということでございますが、相対の取引ですので、為替先の取引、GPIFと契約をしてくれる相手方は、相手がGPIFだということをよくわかって契約を結んでいるということでございます。それが市場デリバティブになりますと、相手はGPIFが頼んだのかどうかがわからないままで商品を買っているという仕組みになります。したがって、例えばGPIFの為替に対する見方ですとか、マーケットに対するインパクトというものをある程度抑えながら市場デリバティブを使うことで、匿名性をある程度保ったままで取引を行うことが可能だというメリットが考えられるということです。もちろん、一方で店頭取引の場合には相対での取引ということになりますので、より柔軟な条件の設定ですとかさまざまなことが考えられます。それぞれにメリット・デメリットがあるというわけでございますが、使い方として片方の手段が禁じられていることによる制約がありうるというのが現状でございます。
6ページの下のほうには、為替先物取引の利用による外国産の価格変動リスクをヘッジするイメージを図示しているところでございます。御参考までに掲げているところでございます。
7ページでございますけれども、もう一つの例として株価指数先物の取引を挙げております。これはヘッジをする対象といたしましては、株価の変動による株式資産の価格変動リスクということでございますが、株価が下落すれば当然保有する株式価格が下落しますし、株価が上昇する局面では、今後購入する株式の価格が上昇していく。そういう中で価格変動リスクというものを一定程度抑えることが可能なのかどうかという観点でございます。現状では株価指数の先物取引が禁止されています。
例えば7ページで掲げておりますのは、実際に企業年金連合会などでも行っている取引ですけれども、リバランス等のためにパッシブ運用における委託先の配分額を減らす。この場合は委託先の例として挙げていますが、例えば現物株式の流動性が低い場合に、現物のみの売却に頼った方式では価格の下落、売却を行っていくことによって徐々にマーケットでの価格が落ちていく。それによって想定外の損失を被るおそれもございます。その際に流動性の高い株価指数先物というものを先に売り建てをいたしまして、現物につきましては時間をかけて、マーケットのタイミングを見ながら売却していくことによって、価格の下落を一定程度抑制できる可能性があるということでございます。
こうしたリバランス等のために、委託先の配分額を減らすような場合あるいは逆にふやすような場合などにおきまして、市場への影響を少し抑え、そして、それによって生じる可能性のある損失を抑えるために、株価指数先物取引というものが活用できるのではないかということでございます。
8ページでございますけれども、こうしたデリバティブ取引につきましては、当然リスク管理の目的のために行われているものでございますけれども、デリバティブ取引自身は投機的な目的にも使うことが可能な方式でございますので、どのようにこのデリバティブ取引を管理していくのかということが課題になろうかと思います。
現在、GPIFにおきましては、既に御紹介いたしましたようにデリバティブ自身は一部の手法において認められているところでございます。こうしたデリバティブに関してGPIFでは利用基準を設けておりまして、利用目的を制限し、また、利用額も制限を行うという形で制限をかけております。また、企業年金、厚生年金基金ですとか確定給付企業年金のインハウス運用におきましても、同様にこの場合ですと厚生労働省令で目的制限をかけている形で法令上、デリバティブ取引をリスク管理の目的のために使うということで制限をかけているところでございます。
今後の議論の中でGPIF、現在、利用制限をかけております為替の先物取引の市場デリバティブ部分ですとか、あるいは例として挙げました株式指数先物を導入するような場合には、これまでの利用目的の制限として、リスク管理を目的として行う取引に限定することを法令上に明確に位置づけたり、あるいは利用額の制限ということで現行の取り扱いに加えて、先ほど御紹介いたしましたようなリバランスの際に株価指数先物を利用するような場合には、予定している現物の配分額の変更の範囲内で利用するといったようなルールをしっかりつくることで、利用目的に沿った利用が行われるようなルールをつくることが可能ではないかと考えております。また、リスク量の測定・管理につきましては、各資産ごとにリスク量について常時測定をし、適切に管理していくような仕組みを入れていくことも必要だろうと考えております。
最後に9ページでございます。同様に法令で現在、認められていない投資手法の中で議論になっているものの1つとして、コール市場の利用というものがございます。これは前回、GPIFから利用の仕組みについて説明があったところでございますが、短期資産の利用の1形態として、3点目にありますようにコール市場での運用、コール資金の貸し付け、貸し付ける側としてコール資金を活用することが可能となれば、短期資金の安定的、効率的な運用が可能となるのではないかと考えているところでございます。
追加で用意いたしました資料は以上でございます。10ページ以下はこれまでの資料を用意したものでございますので、説明は省略をさせていただきます。
以上でございます。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
それでは、ただいま御説明いただいた内容等々を念頭に置きながら、御意見を頂戴したいと思います。
初めに申し上げましたように、主要な3つの論点のうち、まず初めにオルタナティブ資産への直接投資に焦点を絞って御議論を頂戴できればと思います。
○出口委員
事務局に対して質問をさせていただきたいのですが、この1ページの表を今、拝見していたのですが、これは左に書いてあるようにいろいろ、例えば平成24年度に調査研究をされて、これは今のGPIFの運用委員会でいろいろ検討された上で、平成26年2月から右の範囲内で実行されている、既にやっていらっしゃるという理解でいいわけですね。
○大臣官房参事官(資金運用)
そのとおりです。
○出口委員
ということは、OMERSというのはカナダの公的年金ですね。そうすると、この絵を見た限りではOMERSは直接投資ができるのに、GPIFは直接投資ができないので間に投資信託、ニッセイアセットとマーサーをかまさなければいけない。そうすると私ども例えば年金を拠出する立場からすれば、このような規制があるがゆえに余計なお金を投資信託会社に払っているという理解で間違いがないですか。
この絵を見たら、普通はカナダと同じようにやれたら、投資信託にお金を払ったり、ややこしいことをする必要がなくなるから、効率的になるのではないか。普通はそう思うのですが、そのような理解でよろしいのでしょうか。
○大臣官房参事官(資金運用)
まず、直接やるのに比べて追加的な手数料負担が生じているのは、そのとおりでございます。そして、そのスキームの中で申しますと目利きの部分で投資信託が行っているものがありますので、それをどう評価するのか。したがって、それが余計だと考えるのか、必要なコストだと考えるかというのは、それをどう評価するかによりますけれども、追加的なコストがかかっているということ、そして投資信託の中では専門性を持って判断しているという部分があるということでございます。
○出口委員
そうすれば米澤先生にお聞きしたいのですが、今の運用委員会の実情としては、もちろん将来は直接投資ができるかもしれませんが、そういう目利きの力がないから投資信託を入れたほうが、制度上は今はできないらしいのですけれども、制度上できたとしても投資信託を入れたほうがいいという状況なのでしょうか。その点1点だけお聞きできれば。
○米澤委員
運用委員長ですけれども、個人的な考えですが、もしこれをかませる必要がなければ、よりスピード感を持って人を採用します。言い方をかえますと、この制度がありますと、入り口でまずこれをつくらないと話が進まないよなという状況に今なっています。というので微妙ですけれども、ではすぐこれが外れたらば中で適切にやるかといったときに、私もまだ全部調べているわけではないですけれども、それは人を採ればいいだけの話であって、今、余裕がありますので、ニッセイアセットさんとマーサーさんは優秀だと思いますけれども、それに準じる方を採ればいいだけの話ですので、もっといろいろなことがスムーズに話が進むという可能性のほうが大だと思っています。
○出口委員
ありがとうございました。よくわかりました。
○神野部会長
ほかいかがでございましょうか。宮本委員、どうぞ。
○宮本委員
2つ疑問がありお聞きしたいと思います。今までの御説明では、オルタナティブ資産への投資というのは未上場株への投資であるとか、インフラ投資等が例示として挙げられているのですが、インフラ投資について、例えばカナダのOMERSのような直接投資は、現在GPIFはできませんが、できるとした場合、例えばGPIFが直接投資をした発電所とかパイプライン、天然ガスのようなインフラに大事故が起きたり、環境問題が発生した場合、GPIFはいかなる責任をとるのでしょうか。公的資金を扱っているGPIFとしての社会的責任、要するにコンプライアンスのような問題がどうなのかということについてお聞きをしたいと思います。
もう一つは、未上場株の投資には、バイアウト投資であるとか企業再生投資というものがありますが、筋のいいファンドでは、例えば企業破綻をきたしているが、てこ入れすればうまく再生できるところにはしっかりと雇用を守りながら再生をしていく、あるいは企業価値を高めていく、そして後で売却ということもあるかもしれません。しかし、私も何度もこれまで交渉してきたのですが、筋の悪いファンドには、雇用を犠牲にしても企業最優先にしていくというようなところもあります。その企業の従業員も拠出者ですから、そういう人たちを犠牲にしてまで企業価値を高めて売っていくという筋の悪いファンドにGPIFが絡むことについては、それは問題だと思うのです。そこをどう考えるか。
繰り返しになりますが、年金積立金の運用というのは年金財政上、必要な運用利回りを確保するということが目的であり、年金積立金が毀損した場合、結局は被保険者、受給者が被害をこうむることになるので、国民の大多数が理解できない手法にますます拡大していく、あるいは拡大してまでリターンをとることについて、国民全体がどう理解をしているのかということをしっかり考えてもらいたいと思います。
以上です。
○神野部会長
御意見として賜っておきますが、事務局からコメントはありますか。
○米澤委員
そういう御懸念は幾らでもあると思います。各案件が違ってくるわけですから、リスクは幾らでもありますが、では危ないから全部やめてしまおうというのも1つの考えではありますね。考えではありますけれども、片や金融技術も発展しているのだから、そこのところで入り口でストップさせてしまうのではなくて、それはまず認めましょう。その後で今、言った幾つかの問題のところは避けましょうということで、そのもとで規制も必要かもしれませんし、工夫も必要かもしれませんし、一番大前提としてはガバナンスもきちんとやらなければいけない。それが大前提ですので、そこのところを寛容に認めていただかない限り、おぼれるからプールをつくってはいけないということと同じ話になってしまうので、そこは入り口でストップしてしまうのではないかと思っているのです。
リスクは多々あります。でもチャンスもたくさんあるので、あとはですから教科書的な言葉ですけれども、リスク管理をきちんとやっていくということでもって、そこのところは公的ですからより慎重にやっていくということで進めていくのが多分、模範的な答えではないかという感じがしております。
○大臣官房参事官(資金運用)
補足して説明させていただきますと、例えばここの共同投資の例でいいますと、OMERSという海外公的年金が出ていますけれども、当然、海外の公的年金基金もGPIFと同様に、それぞれの被保険者に対しての説明責任等を負っておりますので、何か大きな問題が起こることを避けたいという点はGPIFであれOMERSであれ、ほかの海外公的年金であれ、いずれも一緒でございます。したがって、こういうスキームをつくるときには、そこをどうやって慎重に回避するかということでいろいろな契約ですとか、契約の中で経済的な損失はどこまでに抑えるとかいうことを慎重にみた上でやっているということでございますので、いずれも公的年金がかかわっているようなスキームというのは、当然リスクがないとは申し上げませんけれども、何か危ない投資を行っているということでは一切ないということでございます。 専門性ということに関して申しますと、例えば海外の公的年金基金が2つ、ここの年金部会でも説明のありましたマッキンゼーさんからの説明の中でも、いろいろな共同投資の事例が紹介されていたかと思いますけれども、その場合には複数の公的年金が共同した形で、そこにオペレーターとして専門性のある会社が入る。きちんと専門性を持ったところが入り、リスクを抑えながらやるというスキームと考えているということでございます。そういう前提のもとで新しい投資をしようというのをどのように考えていくのかということがテーマなのかなと思っております。
○出口委員
もう一点、質問よろしいですか。1ページの左のほうの検討過程を見たら、普通の市民がこれを読んだら物すごく慎重に、丁寧にゆっくりとやられているなというのが分かる、24年にこのような研究をされて、26年までいろいろ検討されて、運用委員会で議論されて、石橋を2回ぐらいたたいて丁寧にやっていらっしゃるなという印象を受けるのだと思うのです。だからむしろ事務局にお聞きしたかったことは、宮本委員の言われた中で、ではこのインフラ投資を行っていろいろな事故が起こったときに、これは国の機関が関与していることで、どのような説明責任などが生じるのかという点は結構重要だと思うのですけれども、そこにつきましてはOMERSを初め海外の公的年金が既にやっているということであれば、海外のそういう公的年金は、そういうリスクに対してどのようなリスク回避の方法をとっているのかということを、次回でもいいですが教えていただければ我々の理解もよく深まるのではないかと思います。
○神野部会長
今、直ちにお答えが可能であれば。
○大臣官房参事官(資金運用)
一番わかりやすいもので言いますと、2ページの現在、政令で措置することを検討していますリミテッド・パートナーシップを例に御説明をさせていただきますと、右側にリミテッド・パートナーシップというものの仕組みが書いてあります。上側、運用者(無限責任組合員)と投資家(有限責任組合員)と2種類ございます。有限責任組合員というのは責任範囲は出資の範囲のみということになりますし、投資対象に対して何か口出しをすることはありません。具体的に責任を負うのは運用者、いわゆるGPと言われているような方々が役割として投資判断をし、あるいは責任を負う。一番真正面に立つということであります。ですので、例えばこのような形式であれば多くの投資家、公的年金などはリミテッド・パートナー、右側の有限責任組合員という形で入ることで責任の限定をし、一方で運用の果実を得るということを目指しているということだろうと思います。
そして、さらに進んで直接投資ということになりますと、有限責任組合員にとどまらず無限責任組合員のような立場までやるのかどうかというところが、一番の議論なのかなと思います。そこまで踏み込むことになりますと、個別の判断、運用をどうするか。投資対象に対しての関与がより強まりますので、その場合に責任をどう考えるのかということが議論の対象になるのかと思っています。
○出口委員
海外の公的年金で、そこまで踏み込んでいる例というのはたくさんあるのですか。
○大臣官房参事官(資金運用)
それほどないと思っております。そして、リミテッド・パートナーシップのような仕組みの中でGPの役割を年金自身がやるというのは、数は限定的だと思います。例えば関連の会社をつくってGPをやるということはございますけれども、直接やるというのは限定的なものだと思っております。
○出口委員
なるほど。そのような技術がちゃんとあるのであれば、ある意味では宮本委員の御懸念もなくなるという理解でいいわけですね。よくわかりました。
○神野部会長
山口委員、どうぞ。
○山口委員
オルタナティブですけれども、これについてはリスク特性の異なるアセットクラスを組み合わせてリスク低減を図るという観点では、基本的にこういったものを入れていくというのが望ましい方向だと思うのですけれども、トラディショナルな資産よりもオルタナティブというわけですから、従来からの伝統的投資資産より相当難しいものばかりだと思います。ここではオルタナティブ投資を直接投資するということが書いてあったり、インフラ投資のことが詳しく書いてあったりするのですが、オルタナティブの中にもいっぱい投資対象があってインフラへの投資とか、未上場株だとか、あるいは不動産だとかいろいろあるわけです。
私が疑問に思うのは、このような非常に高度で専門性の高い知識を必要とする投資対象に投資をやっていくとすれば、当然ながら米澤先生も言われたように、それにふさわしい人材が必要だということになってくるわけです。しかし、この前から言われている話は、一方で伝統的資産についても実はまだ十分な人材がおりません。それでマーケットに触れていないとよくわからないと言っていて、伝統的資産ですら十分な体制でない状態の中で、一足飛びに飛び越えてオルタナティブ資産についても人材が必要と言われているわけです。私は多分体制整備の優先順位というものがあって、計画的にやっていく、そうすると体制が完成した時の規模というのも相当大きくなる、私は別にそれがよくないとは言いませんけれども、かなり大きな運用部隊になっていくのかなと思うのと、何から手をつけていくのかという順番をきっちりしなければいけない。運用の大宗を占めているのは伝統的な資産ですから、そこでの体制をまずきっちりするというのが私は優先順位が高いのだろうと思っています。ですからオルタナティブをやることは別に反対ではないのですけれども、それをマネージできる人材をきちんと確保しながら優先順位を考えてやっていくということではないかと思っています。
あわせて前回申し上げたのですが、私は不動産の直接投資については慎重でなければいけないと思っています。不動産は御案内のとおり非常に個別性が強く、流動性も低いという資産でありますけれども、これまでもさまざまな失敗をしてまいりました。その中で政治家の介入などがあったとも伝えられておりましたが、個別の取引内容の開示については、これまでもおそらくこれからもGPIFは市場に影響を与えるといった理由でこれを開示することはないと思います。したがって、こういった不動産の投資については非常に不透明な取引であったとしても、その内容が開示されることはないわけです。だとすれば、過去のような失敗の事例からして、問題が起こりそうな懸念が高いアセットクラスについては、これはやはり私はやるべきではない。ですから、この場ではオルタナティブ全部について一括して議論されていますけれども、中身は違っていて、私は不動産についてはより慎重であるべきだろうと思っています。
○神野部会長
ありがとうございます。承っておきますが、事務局からコメントはありますか。いいですか。
それでは、平川委員、どうぞ。
○平川委員
質問ですが、有限責任、無限責任の関係で言いますと、先ほど宮本委員から指摘をされた、例えば不当労働行為についての問題、それから、さまざまなリスクに対しての問題に対して、直接投資をしているGPIFの責任が逃れられるのかどうなのか。それをお聞きしたいと思います。
また、政策投資銀行も投資信託に委託をして投資をしているという図になっていますが、これはなぜなのか教えていただければと思います。
そもそもOMERSというのは公的年金なのかどうなのか。OMERSの年金基金の性格をもう一回確認したいと思います。
以上です。
○神野部会長
いいですか。第1点と政投銀の話と。
○大臣官房参事官(資金運用)
まず御質問の後ろのほうから言いますと、OMERSといいますのはオンタリオ州公務員年金基金で公務員の年金です。カルパースなどと同じでございます。公的年金という概念については若干いろいろ議論があるかもしれませんけれども、パブリックペンションという英語の中の範疇には常に入ってきている年金であります。ですので、ここでは海外の公的年金の1つとして扱っております。
DBJにつきましては、ニッセイアセットが運用を行っております投資信託を購入する、同じ投資信託に対して共同で証券の購入という形で出資をする協力関係を持っています。 先ほどの有限責任、無限責任の関係で申し上げますと、先ほど山口委員からも御指摘がございましたように、オルタナティブ投資の直接投資ということで非常に幅広い対象になっていますので、申し上げたかったのは、その中でも一定の制約を設けたスキームであれば、有限責任という形で責任関係が限定されるという仕組みもありますし、無限責任のような形でかなり責任が広がるものもある。そこは対象もありますが、やり方もいろいろあるということでございます。
有限責任組合員の場合には、契約上で言いますと例えば投資対象におきまして、何かデフォルトが起きたですとか何かあったときであっても、責任としては出資分のみが責任範囲となります。そして、投資対象自体を選んだ、例えばリミテッド・パートナーシップという仕組みだけに関して言いますと、不動産ですとかプライベートエクイティー、インフラストラクチャーといった投資対象をそれぞれ選ぶ立場にはないので、そこを選んだ責任というのは無限責任組合員、左側の運用者のみが負っているということだと思っております。有限責任組合員たる投資家が、なぜそこに投資をしたんだということを問われるかというと、無限責任組合員と比べるとかなり関与の程度は低いのだろうと思っています。もちろん、GPIFが関与していることについての法的な責任ですとか、経済的な責任ではありませんけれども、そこをどう捉えるのかという御議論はあろうかと思いますが、公的あるいは経済的な責任というのは非常に限られているということでございます。
○平川委員
今、お答えいただきましたが、やはりリスクについては懸念が大きいと思わざるを得ないと思います。これも以前、そんなに心配することはないということで常々、いろいろな方から言われますけれども、そういう資金的、投資に対してのリスクもそうですし、加えて政治的なリスクということもあるのではないかと思っています。やはり、直接投資というのは基本的には行うべきではないと思います。
以上です。
○神野部会長
植田部会長代理、どうぞ。
○植田部会長代理
このオルタナティブ投資の周辺については、それこそ資料の1ページ目にあります平成24年の当時、GPIFは調査研究をしたときに私も運用委員会におりましたので、そのときのことを思い出して2、3コメントさせていただきたいと思います。
もちろん皆さんおっしゃったようなリスクはある程度あるということだと思いますが、その上でここに書いてあるような分散投資による効率性向上の効果はどれくらいあるかということを、ここにあります調査研究である程度詳細に分析した記憶がございます。結果は記憶違いがあるかもしれませんが、オルタナティブの中の資産クラスによってかなり違いがあるという結果でございました。つまりインフラとか不動産あるいはそこまでやったかどうかあれですが、物価連動債のようなものは、通常の伝統的な資産とリスクリターン特性がかなり違う。したがって、加えることに意味があるという判断が単純には出てまいります。それもあってインフラへの共同スキームを先行させたり、物価連動債への投資もかなり早い段階からやり始めたということでございます。
ちなみに1つつけ加えますと、先ほど御質問があったインフラ共同投資の中のDBJでありますが、これは私も少し関係していますので若干あれですが、恐らく1つの理由は、少なくとも国内ではDBJがインフラ周りについて多少強い銀行である。海外に行った場合にどうかという疑問は残りますが、そういうところから多少プラスの効果は見込めるのではないかという判断もあったかなと聞いております。
それから、先ほどの話に戻りまして、残る資産でプライベートエクイティーのところですが、これは単純にデータを見ますと上場株とリスクリターン特性が非常に似通っている。だから単純につけ加えたのでは大した分散投資効果が見込めないという結論がこの研究では出ていたような記憶がございます。ただし、その後この辺の専門家にいろいろ聞いてみますと、それはそのとおりなのだけれども、平均のプライベートエクイティーのパフォーマンスを見るとそうであって、それこそ上位の3分の1、下位の3分の1というようなところには明らかに大きな差があって、上位の3分の1の関連の業者は、割と継続的によいパフォーマンスを上げている。そういうところはよく発掘する能力を持った上で選んで投資をするということであれば、意味が認められるというのが多くの方の結論でございました。
それもあって恐らくGPIFも徐々にという形でプライベートエクイティーのほうへ進んでいるのだと思いますし、一段とということであれば、同時にGPIF内部の目利き能力も高めていくという体制の中で行うことが必要なのかなと思いました。
以上です。
○神野部会長
どうも適切なコメントをいただきまして感謝申し上げます。
出口委員、どうぞ。
○出口委員
今までのお話を伺っていますと、私も山口委員の言われたことは大変大事であると思って、むしろこの議論はオルタナティブを認める、無条件に何でもいい、むしろ全部直接投資を認めるということに主眼があるのではなくて、この1ページの評価を見る限りでは、現にやっているわけでリスクもふえるわけではないですし、多分想像によりますけれども、きっと投資総額は大きい金額でしょうから、この手数料も億を超えるのではないか。よくわかりませんけれども、本当に貴重なお金をこういう規制があるために、そのように使うというのは国民経済的に私は無駄が大きいと思いますので、むしろオルタナティブの直接投資が何でもいいという議論ではなくて、このように慎重に検討されたものは、むしろ直接投資はダメという制限を外して、少しでもお金を大切に使うということをやっていくということが基本であると思います。何でも、自由になったからといって、では不動産でどんどんビルをつくるとか、そういうことに私はならないと思いますし、むしろ大事なことは、オルタナティブ投資をふやしていくときは、左にあるようにちゃんと調査研究をして、中で体制整備をして、運用委員会できちんと議論をしていただいて、その上でやるという、こういう要するにプロセスをきちんと踏んでくださいということを、むしろ年金部会としては言うべきではないか。それが一番大事なことではないかと私は思います。丁寧に御説明していただいたので、これでリスクがふえるわけでもないし、むしろ危険がふえるわけでもなく、いろいろな知恵を使いながらやっているわけで、新しいリスクが高いことを始めるわけではありませんから、既にやっているものの無駄を省くということは、物すごく大事なことであると申し上げたいと思います。
○神野部会長
どうぞ。
○大臣官房審議官
今、出口先生が言われたことが、この議論を提起している事務局側の問題意識なのですけれども、我々から論点をもう少し正確にお示ししたほうがよかったなと反省しております。
申し上げたかったのは、まず1ページを見ていただきまして、1ページは直接投資ではなくて、投資信託を交えた間接投資です。今、我々が検討しておりますのは、LPSという仕組みでして、有限責任として出資しますけれども、この2ページの表の左の下のところにありますように、金融商品取引法上の有価証券となります。ですから一種の有価証券を買っているという仕組みなのです。そういう意味で言えば現行のGPIF法では認められていない株式とは違って、法律改正が必要なく、政令の範囲内で判断できるということです。
今回、問題提起をしておりますのは、LPSのLPとしての出資を超えて、例えばGPIFが無限責任組合員になるとか、あるいはインフラとか不動産会社の株をGPIFが直接保有して、いわゆる経営までタッチすることを認めるのかどうか。こういう点について御議論をいただきたいと思っております。特に先ほど御懸念がありましたように、もし仮に経営の一部まで参画する。例えば株式を持ってとなると、場合によっては労働問題とか環境問題とか、経済的損害だけではなくて、違うリスクまであるのではないかという点が懸念されています。このように直接投資にも現行法の枠内で整理されることと、そうではなくて一種、株式と同じように法律改正を要すべきところと、そのように2段に話が分かれていると御理解いただきたいと思います。
○神野部会長
整理していただいた御指摘を念頭に御議論を頂戴したいと思います。
○米澤委員
私個人的にはLPS、有限責任のところまでやるべき。そこまでやるのが一番効率的かなと思っております。
いろいろな意味で無限責任というのは、ある意味でやらなくてはいけないという状況もあるらしいのです。直接ガバナンスまでかかわるとか、ハンズオンしなければいけないということがあるらしいのですけれども、とてもそこまでの人材もいませんので、LPS、有限責任のところでそこまでにするということでもって、先ほどの改めて投資信託というものを外すということでもってお願いしたいというのが一番合理的かなと思っています。現にここでこのスキームであれば、広い意味での税金を使ったほかの箇所でもファンドでLPSで運用していますので、そういう前例があるからいいというわけではないのですけれども、そこでもって運用しておりますので、特段GPIFがそこの一線を越えるということでもないと思いますので、それが1つ考え方かなと思っています。
以上です。
○神野部会長
ありがとうございました。
駒村委員、お待たせいたしました。
○駒村委員
先ほどの事務局の御説明と、先ほどの事務局のお話にも絡む話なのですけれども、先ほど事務局からOMERSの性格についての説明があったのですが、これを公的年金と呼んでよいのか。幾ら名称にパブリックが入っているからといって、実質的には公務員の職域年金を公的年金と呼んでいいのかどうなのか。公務員にしろ職業を選ぶ自由もあるわけですから、国による強制加入の公的年金とちょっと違うのではないかと思うのです。資料では、職域年金を公務員の年金だから公的年金と呼んでいます。
やはり日本の国民が強制的に選択の余地がない年金であるのと、それを公的年金と呼ぶならわかるのですけれども、言葉の使いを丁寧にやっていただかないと、ここで議論している間はいいのですけれども、外に出たときに、ほかの公的年金はみんなやっていますみたいな話になってしまいますので、公的年金の定義というのはきちんとやらなければいけない。これは後の議論にもかかわると思うのです。つまり、GPIFは政府と表裏の関係にあるわけですから、政策的な権限を政府は持っているというところの課題が後で出てくると思います。今のところの非常に金融の議論、収益の議論とは違う政治の議論として出てくると思いますので、公的年金の名前を使うときには丁寧にやっていただいて、例に出ているカナダの公的年金は職域年金、企業年金に近いものであるということを明確にしていただく。
それから、先ほど宮本委員の御懸念を聞いていたりしていると、財産的な責任を超えた日本政府としての国の信頼にかかわるようなことも起きるのではないかという御懸念を言っているわけであって、いわゆる民間年金の有限化、無限化というレベルを超えた心配をされているということは、これはGPIFは一方では強制加入の公的年金で日本人の年金であるというところは違うメッセージを与えてしまいますので、公的年金の名前の使い方は気をつけていただきたいと思います。
以上です。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
平川委員、どうぞ。
○平川委員
有限か無限かというところについて、これでは一般国民の方々、拠出者はよくわからないと思うのです。説明、解説が全くない中で、良いか悪いかという判断を迫るということ自体、私は疑問に思いますし、先ほど言いましたOMERSの問題もそうですし、かなり議論の判断材料としては検討材料が余りにも少な過ぎるということについても、さらにつけ加えて指摘をさせていただきたいと思います。
以上です。
○神野部会長
小塩委員、どうぞ。
○小塩委員
私は、オルタナティブはポートフォリオを組む基本的に入れてもいいのではないかと思っています。初めから排除する必要は必ずしもないと思うのですが、事務局の方に質問です。いわゆる基本ポートフォリオというものがありますね。それとオルタナティブというのはどのような関係にあるのでしょうか。本来だったらオルタナティブも全部含めた上で、ポートフォリオをどう組むかという議論がしかるべきだと思うのですが、基本的なところを押さえておきたいと思いますので、御説明いただきたいと思います。
○神野部会長
ポートフォリオとの構成の関係はどうなるか。
○大臣官房参事官(資金運用)
現在のポートフォリオそのものは、100%国内外の株式と国内外の債券の4資産で割って、それぞれの比率を定める形で行っておりますけれども、その中でオルタナティブ資産につきましては、全体として上限5%まで認めるという条件づけをしております。ですから逆に0%でもいいのですけれども、0%から5%の範囲内で体制等の整備状況を見ながらオルタナティブ投資を組み入れていくという記述を基本ポートフォリオの中ではしております。そして、現在の積立金全体での比率は、先ほど申し上げましたように0.05%にとどまっているという状況でございます。
○神野部会長
牧原委員、どうぞ。
○牧原委員
オルタナティブ投資で有限責任から始める話だと思うのですが、有限責任とはいえ、結局出資した範囲の金については、投資がゼロになる可能性は有限責任であっても負わなければいけないということを考えれば、投資したプロジェクトの成功ということ、どうやって利益を上げていくかということを確保しなければいけません。そうなってくるとGPIFにそれなりのリソースというかスキルというか、そのような人がいない限りにおいては、難しい面があるのではないかということと、実際に運用者というところまで踏み込まないと、成功の可能性は高まらないと思います。
インフラ事業の場合、例えば土地の買収であったり、環境問題であったり、大きな社会問題が起きたりするのですけれども、そこの部分については有限責任だから何の問題もないということはなくて、国としての信用問題であったり、GPIFとしての社会的な信用といいますか、それはひいては日本の国に対する信用というところにかかわってくると思うのですけれども、そこの部分については払拭できない部分ではないかと思います。
そういう意味では、基本ポートフォリオを組むときに個々の内容ごとに考えて慎重に対応すべきだと思うし、全体としては今の時点では時期尚早かなという感じを受けます。
○神野部会長
ありがとうございます。
森戸委員、どうぞ。
○森戸委員
この論点、議論のためのメモによれば、オルタナティブ資産への直接投資についてというタイトルですが、イコールサブタイトルなのかどうかわかりませんが、海外の年金運用機関との共同投資の手法の拡大についてどう考えるかという論点設定なのです。これは先ほど駒村委員がおっしゃったことと結局同じなのですけれども、考慮要素として◎のところに幾つか挙がっていますが、イコール海外の年金運用機関との共同投資の手法の拡大が論点なのだから、海外の年金運用機関とGPIFの異同というか、共通点と違う点、それは公という意味がどの程度違うかということも、先ほど駒村委員がおっしゃったことも含めて、つまり同じような性格を持っているから一緒に組んでやりましょうということだと思いますが、同じ点もあるでしょうけれども、先ほどから出ているように資産規模も公的な性格も違うかもしれないので、考慮要素の中に海外の年金運用機関との異同とか違いをどう考えるか。でも、この投資においては無視していいものなのかということも、議論というか考慮要素に入れるべきではないかと思いました。
以上です。
○神野部会長
菊池委員、どうぞ。
○菊池委員
森戸委員と同じことなのですけれども、何と比べるかという点では非常に慎重にやる必要がある。公的年金としての公的な性格というものを考える必要がある。その意味では私自身は、直接投資ということにはやや慎重な立場です。
現在行っている形で、多少そこで手数料がかかるのでしょうけれども、ただ、そういう数字だけの話ではないと思います。投資する中身をきちんと選別すべきだという議論もありましたけれども、そうするとこれはほかの議論にも波及してきますが、それは法律で限定するのか、そうではなくて、これは経営委員会の判断に委ねてやっていくのですかということにもなってくると思うので、この議論をするのであれば、そこもセットでする必要があるのかなと思った次第です。
以上です。
○神野部会長
原委員、どうぞ。
○原委員
皆様の意見もお聞きしたのですが、オルタナティブ資産への直接投資についてという論点については、慎重な意見でございます。
なぜ今これを始めるのかというところだと思うのですけれども、いろいろ理由はあるかもしれませんが、なぜ今必要なのかという部分がもう少し説明が必要かと思います。あとは資産運用に関しては前も出ましたけれども、必ずしも積極的とは言えない日本社会の意識を鑑みても、直接的に投資するということにはまだ慎重にしていかなければいけないと思っております。
以上です。
○大臣官房参事官(資金運用)
1点補足させていただきますと、先ほど審議官が申し上げましたように、この中で有価証券の購入を通じた投資の手法と直接投資というものがございまして、有価証券の購入を通した手法として現在ここで認めておりますのが投資信託のみになっております。そして、今後の議論としてリミテッド・パートナーシップという出資の仕組み、有価証券の1つですけれども、この仕組みを政令上、規定することを検討しております。これらはいずれも現行の仕組みの中では有価証券の購入という仕組みでございますので、認められている仕組みでございますし、先ほど基本ポートフォリオに関しての御質問がございましたように、上限5%までということで基本ポートフォリオの中で認められている仕組みでございます。
そして、そういう有価証券を通じた投資としてのリミテッド・パートナーシップに関して有限、無限の組合員の責任に関して少し御質問がありましたけれども、例えばこのリミテッド・パートナーシップで言いますと、無限責任組合員がいろいろな目利きをしたり、経営の判断などをするという形で入っております。投資信託の場合は、そこを投資信託の会社がやっていくという仕組みがございます。ですので出資者はいわばそこの目利き人を信用して証券を買う、あるいは出資をするという仕組みでございます。そして、そういった仕組みを通した投資に関しては現在も進めておりますし、そのためのスタッフとしてオルタナティブ専門の担当課をつくったり、専門職員の充実というのは今、年々やっておりまして、大変優秀なスタッフがGPIFの中では育ってきているところでございます。
一方で今、原委員がおっしゃったような直接投資というのは、そういう有価証券を介さずにやるということで、例えばプライベートエクイティー会社を設立して、そこの非上場株式を直接買って経営にかかわるですとか、あるいは山口委員が御懸念を示されたような不動産を直接所有するというような形態について、今の制度では認めていない部分をどう考えるのかということが御議論になっているということだと思っております。
○神野部会長
海外の年金運用機関の性格について何かコメントがあれば。
○大臣官房参事官(資金運用)
大変失礼しました。よくそこは整理して御説明させていただきたいと思います。
○大臣官房審議官
それに関して議論を整理させていただきますと、従来から株式のインハウス運用でこれを認めるべきか認めるべきでないかという議論で大きな問題だったのは、例えば日本国内の企業とか市場への影響をどうするか。例えばもしGPIFが株を保有したら、株を売ったり買ったりすることによって、株価が影響するのではないかという議論だったり、あるいは議決権を行使すると、その会社の経営に大きな影響を与えてしまうのではないかという議論だったと思います。
それに対して今回のオルタナティブ資産への直接投資の場合は、国内の企業に投資するとすれば同じ議論だと思いますけれども、海外の場合にはそのような議決権の行使であるとか、あるいは市場への影響というのは基本的には考える必要がない。考えるべきことはライアビリティーといいますか、もし何かあったときに単に投資したことが無駄になってしまうのではないかといった問題のほかに、労働問題や環境問題といったリスクがあるのではないか。そういう別の考慮要素を議論すべきことではないかということです。
先ほど先生から、OMERSというのは職域年金ではないかというお話がございましたけれども、確かに定義において我々のほうで不徹底であるというのはそのとおりだと思いますが、これが職域年金であるか公的年金であるかは、海外の議論をしている限りは余り本質的な問題ではなくて、むしろ御議論いただきたい点は、そういう投資をすることによってリスクが高まったり、その辺を懸念する必要があるかないか。この辺を議論していただくことが大事なことではないかと思います。
○神野部会長
ほかはいかがでしょうか。出口委員、どうぞ。
○出口委員
私はここが大事だと思うのですけれども、本当にこういう人が判断して、このようなことを実行できる人がいるかどうかという御意見があったのですが、逆に言えば1ページにありますように、これは別に単に高額な手数料という問題はあるのですけれども、左で見た限り、24年度実施のオルタナティブ投資スキームについての調査研究については、手数料云々よりも、こういうことをやることが分散投資による効率性の向上とか、こういういろいろなことを研究されて、ではその中でできることは何だろうというようにプロセスを踏んでやられているわけです。そのように考えると、人がいないからこのような判断ができるのかという議論がよくあるのですけれども、よく考えてみたら、これは今でも既にこういう1ページのようなちゃんとした議論のプロセスを踏まえてやられているということは、私自身は植田先生からこのような議論もしましたという御説明もいただきましたけれども、それは運用委員会がきちんとワークしている。だから国民にはこういうプロセスを丁寧に説明すれば、国民への説明は運用の詳細なスキームよりもその投資手続がちゃんと踏まれて、慎重な検討が行われているかどうかということがむしろ大事な気がするのです。
そうであれば今度は運用委員会をさらに法的に強固なものにするわけですから、むしろ大事なことはそういう枠組みの中で、このようなプロセスを丁寧に踏んでいくということが何よりも大事であって、そこのところが議論の焦点になるのではないかということと、それとこれは審議官にお聞きしたいのですけれども、有価証券だったらできるのだけれども、有価証券の形をとっていないものはできないということであれば、それは内容としては同じようなものだけれども、有価証券の形をとっていないものはできない。それだったら機会損失になるから有価証券の形をとっていないものについても、同じような投資案件であればできるようにしたいという理解でいいのですか。
○大臣官房審議官
御質問にお答えしてよろしいですか。まず私どもの理解としましては、今の1ページの投資信託の枠組みと、2ページのLPSの有限責任組合員の位置づけは、基本的には変わらないだろうと思っています。なぜならば、1ページの投資信託のニッセイアセットとかマーサーがやっている行為を実は無限責任組合員の運用者がやっていますので、有限責任組合員というのは今回で言えば1ページのGPIFと同じような位置づけであろうと思います。
ただ、これが仮に株式の取得だとなりますと、今度は単なる債券ではなくて、そこで議決権など経営に参画する権利が発生いたします。それを認めるとなると、例えば持つ量が多かったりすると、このような大きな投資の場合には数%ではなくて2割とか3割を持つ可能性もあるわけです。そうなってくると、もし何か事故があったときに単なる株式を失っただけではなくて、ライアビリティーが生じる可能性があるのではないかという意味で、通常の有価証券と株式の保有では大きく違うのではないか。
我々が議論していただきたいと思っていたのは、実は前者の有価証券については大体整理ができているのではないかと思っておりまして、むしろ議決権まで持って直接投資することはいかがなものでしょうかということを提起したつもりなのです。ただ、きょうの議論はオルタナティブ投資、直接投資はみんな危ないんだみたいな話になってしまっているので、やや我々の説明の仕方が下手だったなと思っているのですけれども、特に御議論をいただきたいのはそういうところなのです。
○出口委員
そこで1点お聞きしたいのですけれども、株式形態であっても有限責任限定のような契約形態は可能なのですか。例えば有価証券の形態ではないのだけれども、個々の契約によってある程度責任を限定するとか、そのような手法があるのかないのか教えていただければもっとよくわかる気がします。
○大臣官房参事官(資金運用)
株式の場合であっても、これは海外の事例などでもさまざまな形式の株式発行がされていますので、例えば議決権を伴わないような株式であれば経営にタッチすることはなくて、出資分に基づいた収益を得るための有価証券ということで、債券と似たような性格だと思います。いろいろなものが考えられると思います。
○出口委員
そうであれば、そのようなものに限ってやるということであれば、責任は限定されているという理解でいいわけですね。無限責任にならないようなものに限ってやるという理解でいいわけですね。
○大臣官房審議官
議論としてはあり得ると思います。ただ、国内と海外で本当に峻別できるかという話がありましてオルタナティブ投資の場合、海外だけではなくて国内でも投資し得る。議決権なき株式であれば最近も発行されたものがありますけれども、それ自体は市場に流通します。国内でやる場合は今度は前から議論になっていますインハウス運用の問題で、市場への影響といった話があります。正直申し上げて、理論的には先ほど申し上げた議決権なき株主は経営権とは切断できますけれども、国内市場となりますと別の問題が発生する可能性があります。
○出口委員
わかりました。
○植田部会長代理
今のあれで皆さん何が論点かというのは多少混乱しているのだと思いますけれども、繰り返しになってしまうかもしれませんが、1ページ目にある現在行われている投資信託の形態での投資、2ページ目で定義されているLPSの形態での投資。しかし、これは依然として有価証券としての投資という整理だと思うのですが、その中で有限責任のものなのか、無限責任までいくのか。その外に括弧つきで直接投資というカテゴリがあるということだと思うのですが、その辺もう一回整理していただいて、特にどの辺のところをせめぎ合うというか議論するべきなのかというのは、多少皆さんの間で混乱しているような気がいたしますという感想を持ちました。
○神野部会長
ありがとうございます。
米澤委員、どうぞ。
○米澤委員
私も若干細かいところまでの知識が十分でなかったというのもあるのですけれども、これはもともと運用委員会から出たお願いなのです。そのときの一番の趣旨は、かからなくてもよいコストはなるべく節約しましょうという、それだけなのです。そこに関して特にもしかしたら投資信託をあえて組む必要はなくて、であればそこのコストは節約できますねということで、そうした場合の受け皿としては、今のLPSの有限責任というものがあり得るという話だったので、それだったらそれを検討してみてくださいという話でしたので、議決権がそこのところにどうひっかかってくるかという悩ましい問題があるというのは改めて今、認識した次第なのですが、モチベーションとしてはコストなのです。これは本当にフィデューシャリーの観点から同じ効果があるのであれば、コストが少ないほうがいいですねということが趣旨です。
○植田部会長代理
それは先ほどの審議官の御説明では、LPSにしても有限責任にとどまるのであれば、無限責任組合員のところがかなり目利きのところの結局はフィーをとってしまうので、現在の投資信託と大差はないのではないかという御説明だったように聞こえたのですが。
○大臣官房審議官
やる仕事としてはそうですけれども、実際はコストを考えると投資信託とは違って、それほどかからないとGPIF側からは聞いています。実際に今は海外の年金がこういうオルタナティブ投資とする場合は、わざわざ投資信託なんか組まずにLPSという手法でやることが多いと伺っております。ですからそういう意味でコストはLPSのほうが低いと理解しております。
○神野部会長
よろしいですか。それでは、また戻っていただくこともあり得べしということにさせていただいて、次のデリバティブやコールなどの運用方法の追加をめぐる規制のあり方について御意見を頂戴できればと思います。いかがでございましょうか。
○平川委員
デリバティブの関係ですが、ハイリスク、ハイリターンの運用を推進していく懸念というのはどうしてもつきまとうというのは前回、発言をさせていただいているところです。投機目的での範囲のあり方とか、合議機関のリスク管理等示されているのですが、本当にこれらのやり方で確実に投機目的の利用が排除されるのかどうかについては懸念があります。
規制のあり方について、原則自由にするということについては、問題があると思っていますので、本当に先ほど言ったハイリスク、ハイリターンの運用とがどれだけ抑えられるのかというところについては、まだまだ説明が不足していることを指摘させていただきます。
以上です。
○米澤委員
私はそろそろ出なくてはいけないので、事務局にお聞きしたいのですけれども、極めてプリミティブな質問なのですが、株価指数先物取引に関してです。
現行でアセットマネジメント等の会社に委託する場合に指図する場合に、株価指数先物マーケットを使ってはいけないという格好でもって指図しているのでしょうか。そこの点をお聞きしたい。運用を委託するときに先物のマーケットを使ってはいけないということ。
○大臣官房参事官(資金運用)
いえ、委託先で行うことは禁じてはおりません。委託先がやることは可能です。
○米澤委員
委託先がマーケットを使うことに関しては、問題ないということですか。
○大臣官房参事官(資金運用)
問題ありません。
○神野部会長
よろしいですか。
森戸委員、どうぞ。
○森戸委員
挙げかかったのですけれども、休憩するかなと思っていたのです。
○神野部会長
では出口委員、どうぞ。
○出口委員
4ページのほうで差金決済ができないから市場デリバティブを除いて、実は今は店頭取引のみをやっているという御説明があったのですが、これはたしか駒村委員でしたか、株式のインハウス運用のときにきょうの資料にも出されていますけれども、GPIFの行動を推測し、マーケットに影響を与えることはよくないという御意見がインハウスのときにあったように記憶しているのですが、マーケットはすごく大きいので、マーケットの取引であれば匿名性は維持できますけれども、店頭しかできないということはまさに駒村委員が指摘されたように、GPIFの行動がわかってしまうわけで、これはやはりマーケットをゆがめるというように考えるのが多分自然だと思いますので、デリバティブを使う中で市場を使えないということは、むしろデリバティブのよさを減殺してしまうものなので、これは誰が考えてもおかしい規制だなと感じます。これが第1点。
それから、ちょうどデリバティブが起こったころに80年代ですか、生命保険業界もデリバティブを使わせてほしいということで、当時の大蔵省と規制緩和の交渉を行った経験があるのですけれども、そのときに言われたことは、デリバティブの危険性はレバレッジです。少ないお金でたくさん動かせるから、投機と言ってもいいのですけれども、そのリスクはどうするのだと言われて、それは平たく言えばリスク管理に限定します、と。でもリスク管理に限定するというだけでは、何がリスク管理かわからないので、そこは上限を求めて例えば売りの場合は現物を持っている範囲内。そのように限定を設ければ、要するにレバレッジが効かないようにしてしまえば、これはもう投機のしようがありませんので、そのように考えて認めていただいた経緯がありました。80年代の金融制度改革のときの議論を思い出したのですけれども、そのように考えればデリバティブについてはできるだけ店頭ということではなくて、マーケットを使ったほうがまさに余計な影響を与えるのが少ないからマーケットを使えるようにしよう。それから、リスク管理目的のみならず、そういう範囲を、現物資産の範囲内とか、買いであれば余裕資金の範囲内とか、そのようにきっちり決めればレバレッジが効かないわけですから、あとは運用委員会の御判断に任せていいと考えます。
以上、2点です。これは意見です。
○神野部会長
審議官、どうぞ。
○大臣官房審議官
きょうはいろいろしゃべらせていただいて済みませんけれども、8ページをごらんいただきたいと思うのですが、デリバティブの問題は、今まで議論してきた株式のインハウス運用の問題と違って、市場に影響を与えるかどうかというのとは全く別の問題で、このような運用手法を持つことが私たちの年金積立金にとっていいかどうかという問題だと思います。
そういうときに8ページの真ん中の厚生年金基金とか確定給付企業年金、特に厚生年金基金は公的年金なのですけれども、デリバティブ取引が認められております。それに対してGPIFの場合は直接やることは認められていない。ただ、先ほど米澤委員からお話があったように、委託運用の場合はデリバティブは認められているわけです。そういう意味で、そういう手法が必要ではないかということで、必要の例は前のページで御説明させていだたきました。
一番心配なのは、平川委員からお話になられたみたいに、投機的に使われるのではないかということだと思います。それについては8ページの上のところで、現在のGPIFでデリバティブの利用基準というものがありますけれども、きょうお出しさせていただいているのは、その下に、これに加えてまず利用目的の制限としてリスク管理を目的として行う取引に制限するということを法令上、明記する。それから、利用額の制限についても、実際の現物の配分額の変更の範囲内で利用する。これは先ほど出口先生が言われた話と重複していると思いますけれども、そういう制限を設ける。さらに全体のリスク量について各資産ごとに管理する。このようなことを上乗せで設けることによって、今の厚生年金基金でも認められているデリバティブ取引をGPIFでも選択肢として広げることは許されないか。こういう提案です。なので、GPIFが新しく大きなことを市場でやりましょうという議論とは全然違いまして、むしろほかの公的年金でもやれていることをGPIFでもやらせていただくことはいかがかという御議論ですので、その辺ぜひ御判断いただきたいと思っております。
○神野部会長
原委員、どうぞ。
○原委員
8ページの下の部分は非常にわかりやすく書いていただきましたので、前から何回かお話していますけれども、こういった利用目的の制限とか、リスク管理を目的としたということを法令上に明確化するとか、あとは利用額の制限、リスク量の測定、管理といったことをきちんとルールを決めた上で、プラス、ガバナンスといったところできちんとそれを強化していくということであれば、私はこの部分というのは柔軟にリスク管理、リスクヘッジをするという目的で行っていってもいいのではないかと思っております。
以上です。
○神野部会長
どうもありがとうございます。
山口委員、どうぞ。
○山口委員
これは確認でもあるのですが、ここで言うデリバティブ取引というのは、指数の先物とかオプションといったものであって、個別銘柄の先物とかオプションといったものを想定していないということですね。ですからアクティブなインハウスが今、次の議論になると思いますけれども、それを先取りするようなものを先物でやってしまおうという話ではないですね。これは確認だけです。
○神野部会長
事務局いかがですか。
○大臣官房参事官(資金運用)
違います。
○神野部会長
ありがとうございます。
ほかいかがでしょうか。どうぞ。
○森戸委員
済みません、やはりしゃべることにします。
8ページのような資料を出していただくと、リスク管理に限定するのであれば問題ないだろうと普通は思うのだろうと思うので、私も基本はそう思いますが、確認なのですけれども、これはまさに素人質問ですが、リスク管理を目的として行う取引というのは明らかなのか。つまり、これはリスク管理を目的とした取引ですね。これは投機ですねというのはおのずとわかるということなのか、それとも後にわかるのかもしれませんけれども、今回の矢印で8ページで書いてあるように、マル1が法令上その目的なのだが、マル2のような額の制限なり現物の範囲ということがセットで実質マル1の目的を超えることはないということが担保されるというような趣旨で理解していいのかというのをお伺いしたい。
○神野部会長
これはどうですか。
○大臣官房参事官(資金運用)
そこはセットで理解すべきものだと思っております。リスク管理を目的としてということで法令上、明確化すれば、当然実際のときには法令に基づいてやるということでありますけれども、具体的な制限としてはここに書いてありますような利用額の制限あるいはレバレッジを効かせないとか、そのようなことによって担保されていくものだと思っています。
○神野部会長
ほかいかがですか。意見が途絶えているのであれば、とりあえず予定どおりといいましょうか、休憩を一旦入れさせていただいて、また再開させていただくことにさせていただければと思います。
一応5分程度、15分からスタートとさせていただければと思います。
○大臣官房参事官(資金運用)
6時15分再開ということでよろしくお願いします。
(休 憩)
○神野部会長
それでは、お約束の時間でございますので、議論を再開させていただきます。
主要な論点のうち、これまで御議論いただきました2つの論点について、また戻っていただくこともあり得べしとさせていただいた上で、ここからは株式のインハウス運用、さらにまた、これまでのお話を踏まえた上で、改革の進め方についても御意見を頂戴できればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。いかがでございましょうか。
○駒村委員
意見書を紙で出したので、紙に基づいて私の意見を、この2つにかかわるのではないか、一遍になるかもしれませんけれども、一応申し上げたいと思います。
今までの御議論をお聞きして、私としても原理主義的にというか、全くこちらは絶対にいけないという物の考え方は全然持っていなくて、意見に基づいて2つほど整理しています。1つはインハウス運用の必要性というのは非常によくわかっておりまして、1つは迅速な投資行動あるいはこれまでないようなリスク、リターンの関係の資産を組み込むことによって、より効率的な運用ができるようになるというメリットがある。それから、市場の情報の取得がより容易になってくることと、目利き機能、組織として成長するという3点を金融取引上、大変重要なメリットであると思います。
一方、懸念を持っている点も幾つかありまして、2つほど大きく分けられるのですけれども、1つは経営委員会の人選も含めて、結局は政府の手の中にあるというのが外見上はある。仮に、外見上も実質上もそうなっている場合どうなるか。つまり独立性が達成されない場合、政府の公益追求の目的とGPIFの株主としての利益最大化の間で、いわゆるインセンティブ・コンパティブルという問題、矛盾が発生する可能性がある。あるいは実際の運用情報が漏れるか漏れないかに関係なく、市場関係者がGPIFの行動から、あるいは逆に政府の行動からGPIFの行動なり政府の行動を推測するという問題。それから、国民がGPIFが株主になることの評価を正しくしてくれない場合、運用目的最大化とは違う視点から特定企業に公益に関連するリクエストを求めるようなことが起きるのではないか。これは経済財政諮問会議なんかでも賃金を上げた企業を投資対象にすべきだという話が出てくると、そういう危険性が全くないとは言えないのではないかと思います。こういう政府とGPIFが違う行動をとったときに、年金制度に対する信頼が損なわれる危険性があるのではないか。この問題は今までの議論を幾ら尽くしても、依然としてまだ心配はある。
ただ、この問題は本当に起きるのかどうなのかと言われてしまえば、これはわからないわけです。新ガバナンスはこれを防止するために検討しているわけであって、新ガバナンスがちゃんと機能するかどうかは、しばらく試し運転をさせないといけないのではないかと思っていますので、このインハウスを主張される方に1番のような問題がないことを証明してくださいという野暮なことは言いませんけれども、ないことが証明できるかどうか新ガバナンスを先に確立して、まず走らせてみるというのが大事ではないかと思います。
もう一個の問題としては、仮に独立性が達成できた場合です。それでもGPIFが市場に与える影響としては大量の損失をしても顧客も失わないし、倒産もしないような市場の規律を受けないようなGPIFが非常に大きな影響を与えることについてどうなのか。過去の資料を読んでいると、以前の経済財政諮問会議の報告書の中にもSWFをイメージさせるような議論も中にありますので、完全に私の危惧というか夢のような心配事ではないと思いますので、この辺が1つ課題としてある。
それから、同じような話ですけれども、大株主として民間企業に巨大な影響を与えることについて、どう評価するかということが懸念としてあります。
その上で、政府からの独立性の確認のソリューションとしては先ほど試し運転をさせるということと、2番目の経営に対する影響というのは、幾つかの規制や株主議決権についての取り扱いを慎重にしなければいけないという解が出てくるのではないかと思います。
私はAのメリットとBの懸念事項を比べると、質的にかなり違うものですので、なかなか単純には比べられないのだと思いますけれども、Bの懸念事項が現実になった場合は、かなり深刻な問題を市場に影響を与えるのではないか。不可逆的で深刻な影響を与えるのではないかということですので、まず試運転ということ。ただ、今、議論がありましたように、また、出口先生がおっしゃったような議論もありましたように、デリバティブについてはリスクヘッジに関しては、これはいいのではないかと思います。
私は全面的なインハウスを認めてしまう前に、新ガバナンスの完成と運用を実証的に検証して、国民と市場の信認、評価を受けるのが先である。その後にどこまでインハウスが認め得るのかという次のステップに入ればいいのではないかと思います。
以上、意見書でございます。
○神野部会長
ありがとうございます。
宮本委員、どうぞ。
○宮本委員
株式のインハウス運用について、以前の本部会の中で出された資料に日銀の例があったと思います。日銀の例が一番近いということなのかもしれませんが、日銀の例とGPIFと本当に合致しているのか。ここがずっと違和感があるところでありまして、例えば株式保有の目的も、日銀の株式買入等基本要領を読むと、そもそも日銀が株式を買い入れした目的は、金融機関の不良債権処理が目的で緊急対策として導入したという趣旨のことが書かれております。一方、GPIFの積立金の運用は専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ効率的に行うものであり、そもそも目的が日銀とは違います。また、政府との関係も日銀は政府から独立した中央銀行ですが、GPIFは厚生労働大臣が最終責任を負うため、公的年金制度という観点から言えば政府と直結している機関なわけです。また、株式の売却時期の制限も、水野CIOのプレゼンテーションにあったように、GPIFは今般むしろ機動的な運用を認めるよう求めており、日銀とは少し違うように思われます。また、保有する株式そのものも、日銀の場合はBBB格相当以上の優良株と限定していますが、GPIFは国内株のベンチマークとしてTOPIXを仮に使うとすれば、TOPIXは全て優良株かどうなのか。
このように、いろいろな差が日銀とGPIFの間にあり、これらを考えると、「委託者兼受益者として信託銀行を受託者とする信託を行い、当該信託に係る信託財産として、買入対象先から株式を買い入れる方式」を採用している日銀の議決権行使の手法が本当にGPIFの参考になるのかどうなのか。こういったところは専門的な検討をする必要がありますし、一般国民にもわかるように検討していただきたいと思います。
以上です。
○神野部会長
今の件についてはコメントをもらったほうがいいかなと思います。
○大臣官房参事官(資金運用)
簡単に、日銀の保有株式の取り扱いにつきましては、きょうの資料の25、26ページに。また、御指摘のあったGPIFにおいて株主議決権の行使を委任する場合のイメージに関しては27ページにつけております。
日本銀行における株式の取り扱いは宮本委員御指摘のとおり、GPIFとはその性格等異なるものでございますけれども、ここで挙げておりますのは1つの国の機関としての参考例として、保有株式の議決権を外に委任している例として挙げているものでございます。実際に27ページに株主議決権行使の指図を委任する場合のイメージというものを、GPIFの場合において書いておりますけれども、これは日銀の委託の方式とは現実異なるものです。GPIFの現状に即して委任するとしたら、このようなことが考えられますということでつくっているものでございまして、全く同じということでつくっているものではございません。
以上でございます。
○神野部会長
山口委員、どうぞ。
○山口委員
ちょうど今27ページの御説明がありましたので、これをもう一度ごらんになっていただきたいのですが、今のGPIFでは、各運用受託機関がそれぞれ議決権行使の指図をしているという状況になっています。GPIFは、2014年10月に新しいポートフォリオに移行しましたので、既にGPIFは株式市場の中で日本株式を7%強保有している状態になっています。したがって、全ての銘柄について7%以上GPIFが持っているという状況に、平均すればなっているということです。ただ、ここの27ページの絵のように現在は外部に運用委託しておりますので、各運用委託されている運用機関がそれぞれ独立して、独自に議決権行使の判断をすることによって賛成とか反対とかが混在するいう状況になっていることを示す絵になっているわけです。
しかしながら、インハウス運用をいたしましてGPIFみずからが議決権行使を行うというようになった場合に、今、外部に委託している外部マネージャーたちの議決権行使がどうなるかということで、先ほど金融庁の参事官にも確認をしたわけでありますけれども、委託元のGPIFと異なる議決権行使を外部の運用者が行うというのは現実的には難しい。事実上、GPIF本体と同一の議決権行使が行われるように制約されていくという可能性が高いということだと思います。
そうなりますと、もとに戻って既に7%強保有しているということ。そして、このインハウスによって、もしかしてアクティブ運用が出来るようになり、かなり特定銘柄に傾斜した保有をすることになれば、現在以上の議決権の塊が、しかもそれらが一枚岩になるわけでありまして、企業経営に対するインパクトというのは非常に大きい。もちろんこれは企業価値を向上させる手段としてやるわけですけれども、それについては同調する株主なども数多く出てくると思われますので、恐らくは旧財閥グループで政策保有が非常にしっかり存在するという企業以外は、非常にこのGPIFのインハウス、とりわけアクティブマネジメントをやった場合には、大きな影響が出てくる可能性があるのではないかと思われるわけです。
つまり、我々は今まで5%でそれぞれ制限しているのである程度歯止めがかかっているというふうに感じていたわけですけれども、議決権に関しては、もとを正せばそれは全部GPIF名義の資金でありますから、各外部マネージャーはGPIFの意向と異なるような賛成反対の意思表示はしないということになる可能性が高いということであります。
言うまでもないのですが、株主権の濫用ということで企業価値がむしろ低下するようなケースもありまして、年金ファンドのマネージャーは企業経営のプロではありませんから、ある意味余計なくちばしを入れて企業価値を下げてしまうという例は幾らでもあるわけです。
有名な話では、岩井克人先生の『会社はこれからどうなるのか』という本に出ていましたけれども、英国の広告会社サーチ・アンド・サーチというところで、あれはカルパースだったと思いますけれども、積極的な株主行動をやって、結局優秀な人材がみんなやめてしまって違う会社をつくったという話が出ておりました。そして、もとの会社の価値がなくなってしまった。特に人的要素の強い企業では、企業の価値の中核は構成員たる従業員などの創造性にあって、機械や建物ということではない。株主が所有できるのは機械や建物というバランスシートに載っている財産であって、創造性の源である人を所有したり、支配することはできないのだというのが、岩井先生の話だったと思います。
GPIFは国と一体になっていると見られるということで駒村先生も心配されておられるわけですが、そういう中で運用益最大化といった本来の目的と異なる期待が持たれる危険性というのは、やはり私もあると懸念しております。具体的な話で申し上げますと、航空機産業でありますとか金融産業など、社会的影響が非常に大きい分野で破綻企業が出たような場合に、その企業を存続させるために国策としてやや強引な企業合併が企図されるといった例がこれまでもありましたけれども、そのようなケースで今後GPIFは企業価値向上ということを名目にして、政府と歩調を合わせて合併の旗振り役を行うといったことも、個別アクティブマネジメント、インハウスのマネジメントをやる中で、このようなことを心配したら心配し過ぎかもしれませんけれども、起こり得ないことではないということなのです。
特にこれは経営委員会の話ではなくて、マネジメントの話としてそのようなことが出てくる可能性があるということだと思います。これはひとえにGPIFの規模がこれまで前例がないほどに大きいということで、我々が今まで一般的な理屈の中で理解してきた議決権行使のイメージ以上のものが出てくる可能性がある。先般、小塩先生が1本目のルビコン川の渡河をしたけれども、もう一本ルビコン川があったというようにおっしゃいましたけれども、まさにそのとおりで、GPIFのインハウス、とりわけアクティブ運用によって、まだ我々が経験したことがない大規模議決権行使という未踏の領域に入っていくような感じがしておりまして、そういう意味ではこういう大事な問題をやや安易に決めてしまうのは、私としては責任感に欠けるようなことになるのではないかと思っていまして、これについては慎重に取り扱うべきではないかと思っています。
以上です。
○神野部会長
ありがとうございます。
出口委員、どうぞ。
○出口委員
今の山口委員のお話は、確かに一見そうだとは思うのですけれども、この議決権の行使というのは、年金の運用をやって一所懸命に収益を極大化しようと思っている人が、そのために議決権を行使するというケースだと思うのですけれども、GPIFは割と早くからスチュワードシップ・コードにもサインをしていますし、国連投資原則にもサインをしています。そうすると普通に考えればこれだけ巨大なお金ですから、国連投資原則やスチュワードシップ・コードのように、広く大きい機関投資家に求められた準則に従ってむしろ議決権を行使すると考えるのが普通であって、そうであればそれは世界中の機関投資家がそういうフェアな方向で議決権を行使しようとやっていることであるので、例えば執行部が政府と結託してそんなことをやるということは、およそたてつけ上はあり得ないのではないかと思いますし、むしろそういうフェアな投資原則に従って議決権を行使するほうが、日本のマーケットをよくするのではないかと考えるのが自然だと思います。このような株主権の行使は大事なことですから、国連投資原則とかスチュワードシップ・コードはいいのですけれども、多分実際に新しいガバナンスができたら、このような考え方でもし仮にインハウスが認められたとしますと、当然経営委員会にかかって、こういう考えで議決権行使をしてもいいですかということが諮られると私は思いますので、執行部の独断ということは今までやってきた議論からは考えにくいのではないかと思います。
もう一つ駒村委員がおっしゃったガバナンス、新しい経営委員会の立ち上がりを見てからという御意見。確かにそのとおりなのですけれども、たまたま米澤委員が席を立たれて、きょうはGPIFの方もいらっしゃらない。武田委員もいらっしゃらないので、現状を聞く相手がいないので、GPIFの方を出していただいたらと思うのですけれども、今のGPIFの運営委員会というものが立ち上がっていないのかどうかという認識がまずベースにあると思います。先ほどのオルタナティブでも、ちゃんと今の運用委員会はそれなりにワークしているので、立ち上がっているのではないか。だからその実態をよく我々は知らない中で議論をしているわけですけれども、かなりのことまでやられている。それを確か武田委員も法的に強固にするということであるのだという御意見だったように思いますけれども、私もきょうの米澤委員のお話などを聞いている限りでは、運用委員会はそれなりに確かにちゃんと立ち上がっているのではないか。それをさらに制度的に強固にし、よくしていくことが大事なのではないかという議論が前提のように私は思いましたので、前にも申し上げましたけれども、このような議論は必ずGPIFの実態を踏まえないとなかなか質問することもできませんので、私の希望としては、できるだけ運用委員会の委員もしくはGPIFの方にこの会議に出ていただいて、意見を言っていただく必要はありませんが、事実関係は確認できるようにしたほうが、議論が積極的に前に進むような感じがいたしますので、これは要望としてお願いいたします。
○神野部会長
駒村委員がもともとおっしゃっているのはガバナンス上、OECD等々で指摘された問題があるので、まずそれを改正した上で、動かした上でという意見でいいのですよね。
○駒村委員
今まで以上に経営委員会の運用に関連する権限は広がっていくと思いますので、そういった状態で試運転をさせてみて、なるほどと市場からも憶測されるような行動は起こさないし、市場も求めないし、国民も求めないし、1番目の問題というのは1回信認される状態、権限が広がった状態で信認される状態になった上で、その後、本当にフルのインハウスをしていいかどうかは考えるべきだというステップの話をしています。
○神野部会長
山口委員、どうぞ。
○山口委員
私はあえて極端なことを言っているわけですけれども、出口さんが言われるように、そんなにGPIFが変なことをやっているとは私も思っていません。ただ、いろいろなことを我々は考えなければいけない。それは考えてはいませんでしたと言うわけにはいかないわけですから、少し起こりにくいようなことも含めて、そんなことはないだろうと私も思っていますけれども、やはり想定し得るリスクというものは考えて、新しい枠組みの検討をやらないといけないように思います。
事実の話として、先ほど申し上げたサーチ・アンド・サーチ社の話はカルパースが実際に音頭をとって、経営者の首を切ったわけです。そういうアクティビズムというか、株主行動が現実にあったという話ですから、それは事実としてやはり認識しなければいけない。だから行き過ぎればそういう問題が出てくるのだということを念頭に置いて、確かに私は極端なことを言っている面はあるかも知れませんけれども、当審議会ではいろいろなことを想定して、考えて、判断していくというのが責任ある態度ではないでしょうか。私は、そのように思っています。
○出口委員
よくわかりました。
○神野部会長
大井川参考人、どうぞ。
.○大井川参考人(山本委員代理)
私も出口委員のおっしゃることは非常によくわかります。別にGPIFが影で政治的な思惑を持っていることを前提に話をしているわけではないのです。ただ、基本的には山口委員の先ほどのお話に私は非常に同感しておりますし、前回、前々回もご発言があったかと思いますが、駒村委員から出されている資料のように、どうしても被保険者の利益を最大化するという本来の立場と、政府機関として公益追求する立場との利益相反の可能性について、すっきりと納得できる説明を受けられていないと感じております。
それはそれとしても、多分、行き着くところは議決権を持つか持たないかということになると思いますが、GPIFの場合は、国の組織の一つであるという点で、ほかの機関投資家と性格が全く違っているものだと私は理解しています。ほかの機関投資家がスチュワードシップ・コードに基づいていろいろ物を言っていくことは、当然良いと思っているのですが、国の機関が直接企業経営に対して影響を与える議決権を持つことの是非について、これは制度上の問題というよりも、立法上の哲学の問題といいますか、根本を言えば資本主義経済にとってどのような意味を持つのかという理念上の問題とか、そのような問題にも発展しかねず、恐らく、これが与党の議論に回ったら当然そういった話になってくると思うのです。
理屈から言えば、確かにGPIFが株主として議決権を行使してというのは当然あり得る話だと思いますし、それが必ずしも悪いというものではないと思うのですけれども、その根本的な、理念的な部分の考え方がすっきりしない以上、ここですぐにインハウスもいいのではないかとは言いがたい部分があります。
一方で、GPIFの「スチュワードシップ・コードの受け入れについて」という資料では、「株主議決権の行使については運用受託機関の判断に委ねる」、これは「企業経営に影響を及ぼさないため」という記載があるわけです。これそのものが、そもそもGPIFがスチュワードシップ・コードを受け入れていることと矛盾しているのではないかと感じております。
全く別の話ですが1点だけ。もし可能であればGPIFの方か、もしくは、事務局の方でおわかりになればと思うのですけれども、例えば今は、外部委託で運用をしているため、損失が出た場合には、委託先を変えるということで損失に対する責任を明らかにしているわけなのです。しかし、これが自家運用で相当程度の損失を出してしまった場合、GPIFの水野CIOからは、ファンドマネージャーは有期雇用なので成績が悪ければこれを変えますよというニュアンスだったかと思うのですけれども、インハウスで成績が悪かったときの責任の訴求は、どこまで、どのような形で行うのか明確にすべきだと思います。損を出してしまっても、例えば、その個人のファンドマネージャーの成績に基づく報酬に相当反映させるだけなのか、どのような責任訴求のあり方を考えているのかお伺いしたいと思っています。今回ではなくていいのですけれども、お願いしたいと思います。
以上です。
○神野部会長
事務局からコメントいただければ。スチュワードシップ責任との関係も含めて。
○大臣官房参事官(資金運用)
スチュワードシップ責任に関しましては、GPIFのほうで、これは運用委員会での議論も踏まえて投資原則を定めている中で、被保険者のために中長期的な投資収益の拡大を図るということをきちんと述べていて、その一環としてスチュワードシップ責任というものを果たしていくということを述べております。
そしてGPIFの今の株式の投資のあり方としては、全てを外部委託する。そして投資判断はそれぞれ全部委任するという仕組みですから、その仕組みのもとでスチュワードシップ責任を、その制度を前提としてどのように果たすのかということで最良な仕組みを考えている。そして、受託している運用機関から、それぞれどのような取り組みを行っているかということを報告を求め、機関投資家としての必要な役割を果たしているということであります。
インハウス運用にした場合の具体的な報酬、成績をどうするかということについて、もちろんそれは実際にやる段階で具体的なことは決まっていくものだと思いますけれども、ただ、1つ言えますことは、当然そのプロ職員を雇っていくに当たっては、その成績を評価して、それを報酬等に関連づけるという取り組みを行っていくということがあります。一方で個々の運用結果につきましては、市場の動向というのはもともと読み切れないところがありますので、適正な手続をとって判断をしているものであれば、受託者責任という観点から言いますと、例えばそこで1億円の損を出したから1億円分について何か結果責任を負わせるというものではありませんで、単に市場とマーケットあるいはベンチマークとの比較で成績が悪いという場合に、プロ職員の評価として1つの項目としては入ってくるということになるのかなと思います。戻りますとインハウス運用実施時にどのようにそれを反映させるのかについては、当然まだ決まっているものは持ち合わせておりません。
○神野部会長
植田部会長代理、どうぞ。
○植田部会長代理
今の点は、結局は適切な規律づけをどのようにするのかという点に関して、最終的には経営委員会で判断するという形になるのだと思うのですけれども、それも含めましてインハウス運用の懸念点の議論がいろいろ出されまして、特に株主権の行使に関連して、公的機関であるということから来る政府の別の目的との混同あるいは利益相反的な動きが出てしまうという懸念を何人かの方がおっしゃったわけですが、それは可能性としてはもちろんゼロではないと思います。
ただ、そういうところで問題が起こるとしますと、恐らくもっと大きな根本的な問題、例えば基本ポートフォリオをどのように決定するかということについても、望ましい行動がとれないような組織になっている可能性が高いと考えざるを得ないのだと思うのです。我々はガバナンスに関する部会で議論をしてきたことは、そういうことが起こらないようにするにはどういうことを配慮して、ガバナンスの構造をつくり上げていったらいいかということをむしろ中心的に議論してきたわけでして、ですので、だからと言って100%大丈夫というわけではないですが、それでは数年間試運転をして、その様子を見てから決めようかというのは、やや情けないというか消極的過ぎるかなという感じもしないでもないという感想を一言だけ申し上げておきたいと思います。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
菊池委員、どうぞ。
○菊池委員
今の御意見にかかわるかもしれないのですが、ガバナンス改革の趣旨というのは、政治的介入から回避するには、どういうガバナンスの仕組みがよいのかということだったと思います。そこである程度議論を重ねてきたわけですが、ただ、経営委員会の委員の選出に当たっては、外に指名委員会みたいなものをつくって、そこが具体的に名前を挙げて指名するという形ではなくて、あくまで任命基準を作成して、具体的な任免は厚生労働大臣が行うということですので、やはりそこには一定の判断が介在する余地がどうしても残ってしまうわけで、この辺も考える必要がある。さらに既に議論されていますけれども、GPIFは事実上、政府の機関としてみなされるということからしますと、私は現時点でインハウスに絶対に反対という立場ではないのですけれども、少なくとも直接的な議決権行使というものからは遠ざけたほうがよいと現在でも思っているところであります。
以上です。
○神野部会長
牧原委員、どうぞ。
○牧原委員
そもそもこのガバナンスの改革の話が出てきたのは、基本ポートフォリオがどうあるべきかというところから始まったと理解しています。労働者と会社側が強制的に出している拠出金プラス運用がどのようにあって、年金を長期的にどのように維持すればいいか。その中での基本ポートフォリオはどうあるべきかということでガバナンス改革という議論がなされていると理解しています。ただ、株式のインハウス運用というものに関して言いますと、いろいろ御意見も出ていますけれども、メリットに比べて懸念される事項が余りにも大き過ぎるというものがありまして、株式のインハウス運用については、私たちとしては反対という立場をとらざるを得ないと思います。
GPIFはどのような措置をとったところで国の機関であることは否定できないわけで、企業経営が国の施策に引きずられることになりかねない。これをどのように対応すればいいか、民間の自立的な経営を阻害する懸念もぬぐえないということがあるかと思います。GPIFの規模というのは非常に巨額であります。GPIFの投資行動というか株主権の行使だけではなくて、エンゲージメントという形で各企業とのかかわりというものも、逆にインハウス運用であればむしろ求められると思うのです。そのようなことが注目される中で、外部の識者の中では政府の取り組みとして、GPIFが投資先企業を厳しく監視すべきであるという議論もあるやに聞いております。我々が抱く懸念というのは現実のものになりかねないということを危惧しております。
○神野部会長
ありがとうございました。
ほかいかがでございますか。平川委員、どうぞ。
○平川委員
ガバナンスの今回の見直しの目的というのは、専ら被保険者の利益のためにそぐわない目的で運用が行われるという懸念を払拭する。そして国民の信頼を得るというのが大きな目的です。逆に言えば、その懸念が現状あることに対して、どのようなガバナンスの体制をつくっていくのかということでありますので、その目的を改めて確認していく必要があると思っております。性善説という立場に本当は立ちたいのですが、実際はそうではないだろうという懸念というのは、しっかりと押さえておく必要があると思っています。
また、これも意見書を提出させていただいているところですが、国の機関による企業への介入や支配については、その懸念を払拭できていない。その懸念が払拭できていない中で、なぜこのインハウス運用をやるのかということに関しては、残念ながら明確な説明がされていなかったと思います。そういった意味で国民に対する説明責任という点では、問題設定が十分ではなかったと思っておりますので、引き続きインハウスの導入については反対ということを表明させていただきたいと思います。
以上です。
○神野部会長
小塩委員、どうぞ。
○小塩委員
私は、インハウスは是々非々で考えていいのではないかと思うのですが、ガバナンスの議論が十分ではないという印象を受けます。今まで私たちが議論してきたガバナンスでは、政治からの独立性が完全に担保できていないので、インハウス運用の全面展開にゴーサインを出すというのは、ちょっと早いのではないかという感じがします。
2番目なのですけれども、これは駒村委員に対する質問なのですが、よろしいでしょうか。簡単にお答えできればいいのですが、先ほどまとめていただいた議論は、私は非常に結構だと思うのです。私も賛成なのですが、この話はインハウス運用そのものよりも、パッシブかアクティブかの違いに関するもののような気がするのです。仮にインハウスであるとしても、パッシブだったら駒村委員の御懸念はかなり払拭できるのではないかと思うのですが、それについて御意見をお聞きしたいです。
3番目なのですけれども、たくさんお金を集めたら運用もうまくいくと我々は普通考えるのですが、非常に直感的な議論なのですけれども、1兆円を超えるような運用を平気で我々はできるのか。重みに耐えられるのかなと言われると非常に不安です。それだけメンタルヘルスが強いのかなと。そんなプレッシャーに耐えられるような人がいるのかなと思います。むしろいろいろなところに分散をしておいて、失敗をしても失敗のリスクをできるだけ小さくし、メンタルヘルスへの影響を小さくするという方法もあるのではないかと思います。生身の人間に運用させるわけですから、あまり大きなお金を持たせるというのは無理ではないかという気がします。それは直感的な話ですので、2番目の点について簡単に説明していただければと思います。
○駒村委員
全面的なインハウスには慎重であるべきだと書いているということは、部分的なインハウスはありかと読むわけなのですけれども、どの部分か。今も発言しましたし、先ほど山口委員の話にもあったのですけれども、アクティブはかなり危ない部分が強いのではないかということで、少なくともアクティブについてはまず見送るべきと思っています。ただ、パッシブについては同じ議決権が発生するということにおいては変わりはないのですけれども、そこについては仕組みによっては議論の余地はあるかもしれない。。その際に、どのような形で議決権を扱うかによっては、さらなる議論の余地があるというのが現時点での考えです。
○神野部会長
ありがとうございます。
平川委員、どうぞ。
○平川委員
今、パッシブのお話が出たので質問をさせていただきますが、パッシブ運用はインデックスへの連動や追随を目的とした投資手法ですが、どうようなインデックスを選択するにしても、GPIFが国内株式のパッシブファンドを組成することに変わりはないと思います。仮にインデックスそのものに政策的な内容が含まれているのであれば、実質的に行われていることはアクティブ運用と同様であり、パッシブにおいても、GPIFの恣意的な銘柄選定が可能なのか可能でないのか。その辺ちょっとよくわからないところがありますので、事務局のほうに質問をさせていただきたいと思います。
○大臣官房参事官(資金運用)
恣意的な銘柄の選択はないものと考えております。
○平川委員
そうであれば銘柄の選択はないということでありますけれども、売買のタイミングとか買うときの量、売上高、売買の量とか、タイミングも含めて、その辺をコントロールすることによってパッシブであってもGPIFの恣意的な意向、考え方というものが出てくるのではないかと思いますが、その辺はどうなのでしょうか。
○大臣官房参事官(資金運用)
パッシブ運用、例えばTOPIX配当込みというインデックスにのっとって今、運用を行っているファンドがございますけれども、それで言えばTOPIXの構成銘柄を完全法という形で購入して、最初にTOPIXの構成銘柄をコピーしたファンドを組成して、TOPIXの動きに合わせて売買を行っていくという仕組みであります。インデックスの動きに100%全くタイムラグなくついていくということは無理でございますので、若干の変動があること、あるいは執行コストとの兼ね合いで、若干それを100%コピーしないということがあり得ます。しかし、それらについて、何かそこで個別銘柄の選択について、GPIFの恣意性が働いているという評価を与えるのは余り適当ではないのではないかと思っています。
○神野部会長
原委員、どうぞ。
○原委員
私もいろいろと議論をお伺いさせていただいてありがとうございました。
株式のインハウス運用ということで何度か議論を重ねていっているわけですけれども、全面的な株式のインハウス運用ということには慎重にしていかなければいかないのかなと思いますし、特にアクティブについてはいろいろな問題、例えば、議決権行使の問題とか、市場に与える影響等もありますので、これは一気にそこまで進めるのは少しまだ早いのではないかと思っております。
駒村先生の紙にも最後にあったとおり、ガバナンス体制、新体制というものをきちんと行い、同時にもちろん運用等は議論していくべきですけれども、ガバナンスがうまく働くかということもきちんと検証しながら、国民の皆さんのいろいろな評価も受けながら、運用の改革というのは少しずつ進めていくというのがいいのではないかと思います。全くだめということではないと思うのですけれども、進むべき道の方向性はあるのかもしれませんが、一気にそこまで全て進めるというのは少しまだ早いのではないかと思います。
以上です。ありがとうございます。
○神野部会長
ほかよろしいでしょうか。
それでは、予定した時間でございますので、本日の審議につきましてはそろそろ終了させていただきます。
次回の審議でございますけれども、GPIF改革全体に関してこれまでの議論について、もちろん意見が分かれているところは分かれているという点を含めて、事務局で資料を整理してもらって、それに基づいて議論の整理をしていきたいと考えております。よろしく御協力お願いできればと思います。
次回の日程について事務局からお願いいたします。
○総務課長
2回続けて3時間の審議どうもありがとうございました。
次回の日程はまた追って御連絡させていただきますけれども、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
○神野部会長
それでは、これにて本日の審議を終了させていただきます。長い時間、本当に御苦労さまでございました。遅くまで熱心に御協力いただきましたことを感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
(了)