07/03/06 社会保障審議会年金部会第3回

議事録

 

日  時:平成19年3月6日(火)16:00~17:30

場  所:全国都市会館第2会議室(3F)

出席委員:

稲上部会長、渡辺部会長代理、

稲垣委員、今井委員、岡本委員、

小島委員、権丈委員、杉山委員、

都村委員、中名生委員、西沢委員、

林委員、宮武委員、山口委員、山崎委員、

米澤委員

 

○岡田総務課長

    時間になりましたので、これより社会保障審議会年金部会を開催いたします。

     委員の皆様方には、本日大変ご多用のところをお集まりいただきまして誠にありがとうございます。

    最初に資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元に議事概要と座席表、名簿がございます。そのほかにワーキンググループの報告書の概要として資料1、資料2が報告書です。資料3は報告書の資料編、資料4がヒアリングの概要、資料5が被用者年金の一元化に関する法律の概要ということで、こういう横長の資料になっています。

    もし不足がありましたら、事務局の方にお声をかけていただければと思います。

    本日の出欠の状況をご報告いたします。江口委員と樋口委員がご欠席です。なおご発言に際しましてはマイクに近づいてご発言いただければと思います。以下の進行につきましては稲上部会長にお願いいたします。

○稲上部会長

   .それでは、議事に入りたいと思います。

    本日はパート労働者の厚生年金適用に関するワーキンググループ報告書についてご報告をいただき、委員の方々にご議論をお願いしたいと思っています。

    それでは、まずワーキンググループの座長の宮武委員から、これまでの検討経過と報告書の概要につきましてご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○宮武委員

    お手元の「パート労働者の厚生年金適用に関するワーキンググループ報告書(概要)」をご覧いただきながら、私の報告をお聞きいただけると助かります。

    最初は「検討の背景」です。前回の年金改正の施行後、非正規労働者と正規労働者との処遇格差が大きな社会的関心事項になり、また、フリーターになった若者たちがパート労働者のまま厚生年金の適用を受けられないという状態をこのままにしておきますと、老後の所得保障においての格差まで固定されることになるので、何とか早急な対策が必要ではないかということで、検討が始まりました。

    2番目は「適用拡大の意義」です。大別して4点挙げました。1番目は、パート労働者に被用者にふさわしい年金を保障することができること。2番目は、現在の内閣が取り組んでいる、パート労働者の均衡待遇や再チャレンジの推進に資するということです。

    3番目は、働き方や雇用形態の選択に中立的な制度にできるということです。4番目は、年金制度が事業主間の公正な競争を妨げないようにできるということです。パートタイマーを多く使う事業主は社会保障の保険料負担を免れ、正社員を主にして仕事をしている事業主との間の保険料負担の落差が生じているという意味合いです。

 「適用対象となる者の範囲」ですが、厚生年金適用にふさわしい「被用者」というのはどういう人たちなのかとういうことを考えた上で、老後は稼得手段を失う可能性が高い被用者については、できる限り被用者年金制度の対象としていくということをまず基本に捉えたいということです。具体的には、労働時間等の面で正社員に近いパート労働者に労使折半で負担を求めるという現行制度と同じ考えの下で、厚生年金の適用範囲を拡大すべきであるということでワーキンググループでは意見が一致しました。2番目の「労働時間について」です。現在は周知のように、「通常の就労者の所定労働時間の4分の3以上」という労働時間に関する要件を引き下げることが基本になると考えて参りました。ただし、平均的に見て労働時間が相当程度短い人については適用を除外することが考えられる。具体的な基準としては、当面ではありますが、雇用保険の取り扱いを考えて、それと同じ「週の所定労働時間が20時間以上の者」とすることが適当であるという、全員一致の考え方です。雇用保険は週の所定労働時間が20時間以上、1年間の雇用継続見込みということで適用されていますので、ハーフタイマーであれば適用に値するのではないかということです。新しく適用を受ける、20時間以上で現行の4分の3未満のパート労働者については、既適用者と比べまして働く時間は短くなるわけですので、労働時間要件以外に、他の判断要素となる要件も組み合わせて、総合的に厚生年金の適用対象にふさわしい「被用者」であるかどうかの判断をすることも考えられるということです。他の判断要素というのは、一つは賃金水準、もう一つは勤続期間ということで挙げました。

    「賃金水準について」ですが、国民年金の保険料と厚生年金の保険料の最低水準との均衡に留意をして、一定以上の賃金を得ていることをメルクマールにすることが考えられるという一つの条件を出しております。この4月から、国民年金の保険料は1万4,100円ですが、厚生年金の場合は非常に低い賃金の方に掛けた場合、今、保険料率が14.6%程度になりますと、国民年金の保険よりも4割減くらいの金額で、しかも基礎年金プラス報酬比例部分を受け取るということを考えますと、一定のバランスを図る必要はあるという意見が目立ちました。また、基礎年金を持っていて、所得再配分機能を持っている厚生年金制度において新しく適用を受けるパート労働者が、既に厚生年金の適用を受けているほかの労働者との間で連帯感を保てるかという観点からも、一定額以上の賃金を得ていることをメルクマールとすることも考えられると書いています。厚生年金という巨大な職域保険の中で共に助け合う共助の視点が成り立っているわけですので、助け合える仲間かどうかということも一つの判断基準になるのではないかという考え方です。

    パート労働者は当然ながら労働時間が短く、賃金も低い状態にありますので、これまで保険料の負担を求められていなかった者にとって、例えば産後被保険者の方にとってみると、負担感というものが現実問題としてはなかなか無視できない要素になるということも一方であります。労使折半負担の厚生年金の適用対象にふさわしい「被用者」を考える場合、事業主側から見ますと事業活動に一定以上の貢献をしている者を対象とするという切り口が考えられる。この場合、事業主が一定以上の賃金を支払っているということを、事業活動に対する貢献のメルクマールとすることも考えられるということです。

    少し補足いたしますと、労働時間のみを要件とした場合には、例えば20時間未満ということになりますと、ある事業所で20時間未満働いて、また別の所で20時間未満働くという形で、実質的にはフルタイマーと同じ形の就労も考え得るわけで、現在の制度ではすぐにこういう方たちを補足するということはなかなか難しいという現実的な課題もございます。この部分は本文に書いていますので、後ほどお読みください。4番目の「勤続期間について」ですが、パート労働者は流動性が高く、頻繁に入離職を行う者については、事業主側の事務手続きが非常に過大になるということも考慮していかなければならないということです。そういう点から考えますと、現在適用されている臨時雇用者の適用条件が2ヶ月ですので、それよりもある程度長い、一定以上の勤務期間を要件として設定することも考えられます。具体的な期間については触れておりませんけれども、例えば6ヶ月や1年が選択肢としてあり得るのだろうと思います。その基準を設ける場合には、いわば期限の中で社会保険の負担を免れるために契約期間を短縮するとか、負担が生じる直前に「雇止め」にするとか、あるいは同じ法人で別の事業所に配置転換をするといった形の対応も考えられるわけですので、その点に留意をして制度設計をしてほしいという注文です。5番目の「その他の論点について」は、20歳以上の「学生」、あるいは「主婦」つまり産後被保険者、あるいは年齢が高い人、低い人という形で、その属性とか業種などで適用対象から外したり入れたりすると、労働市場や企業間の公正な競争に歪みをもたらすので「基本的には採るべきではない」という考え方を示しております。

    4番目は、「就業調整・企業への影響」です。「就業調整の可能性」については、保険料負担を避けるために就業調整をするのではないかということは常に付きまとうわけですが、手取り収入の大幅減を伴う労働時間の短縮を行うパートタイマーが多くなるとは考えにくく、むしろ手取り減を補うために労働時間の延長を希望する者が多いのではないか、もう少し長く働くという対応の方が現実ではないのかと考えます。事業主側の方も1人当たりの労働時間が細切れになってきて労働者数を大幅に増やすことで対応しようとすると、労務管理が複雑になって、かえってコストがかかるのではないか。このような面から「就業調整には必ずしもつながらない面があるのではないか」と考えました。「企業経営への影響」ですが、適用拡大によって、短期的には、確かに事業主の保険料負担分のコスト増が生じるわけですが、逆に言いますと、就業調整のための時間管理のコスト等の減少という面もあるかと思います。中長期的には、パート労働者の人材育成や処遇改善を妨げている社会保険の適用水準を引き下げることで、能力開発も促進され、生産性も上昇するなど、事業主にとって大きなプラスの影響も期待できると考えられます。こういう形で考えていきますと、事業主に新たに生じる保険料負担のコストは、中期的・長期的には十分調整可能ではないか。ただし、現実に一時的にコストが増大することは確実ですので、その激変緩和のための配慮措置が必要ではないかということで、「施行までに十分な期間を設けることが考えられる」としています。さらには、一定規模未満の中小企業については、一定期間適用を猶予する措置を設けることが考えられます。ただし、本当に猶予期間が延びないようにしておくことも必要だろうという委員の意見でした。

    「適用の徹底」ですが、適用拡大については、十分な周知広報を行って、適用逃れが生じないように、監視・指導を協力に行うことが必要です。また、既に適用対象になっている者に対する適用を徹底していくことも当然だと思います。

    「その他の課題」ですが、女性が自ら本人名義の年金を充実することが強く求められていますので、「女性に関する年金制度に係るその他の諸課題についても、引き続き検討を行っていくことが必要」だという指摘が多く出ました。具体的に言いますと、本文に書いていますが、被扶養配偶者の収入要件は現在賃金だけでなくその他の収入も含めて年収で130万円ですが、この要件は現状のままでよいのか。つまりは、第3号被保険者制度というもののあり方をさらに考えていく必要があるということです。年金制度そのものについて、パート労働者自身の理解が進んでいないということも大きな問題で、例えばパートタイマーは勤続期間が非常に短いので厚生年金に入っても掛け捨てになるとか、払い損になるという誤解があるわけです。厚生年金はご存知のように1ヶ月単位で保険料を払いますと、それが将来の年金額に反映され上積みされていきますが、この仕組みがまだ理解されていないということです。そういうことも含め、適用拡大に当たって内容や意義について理解を持ってもらうことが大変大事ですし、従業員への説明についても事業主に責任を果たしていただきたいという要望が多く出ました。適用が拡大された後も、労働時間が相対的に短いパート労働者は国民年金に残ることになるわけですが、被用者として第1号被保険者という形の方の老後の所得保障については、事業主の方も一定の責任を持っているのではないか。そういう意味で保険料徴収についても事業主の更なる協力を得られないか検討すべきという声が出ました。また、医療保険・介護保険は以前から厚生年金と同じ基準で一体的に適用されてきましたので、適用を分離した場合事務手続きが煩瑣になるという実務的な問題があり、できる限り同一の基準で適用拡大することが基本ではないかということです。もちろん事業主側には、それに伴うコスト増について反発がありました。逆に、出産手当金や傷病手当金というものが受けることができるというメリットがあるということで、特に労働組合側は同時適用というものを主張していました。

    最後に、私どものこの検討結果を具体的な制度設計に十分参考にしていただきたいと思います。また適用対象範囲の考え方については、今後の社会経済情勢の変化に合わせて迅速に見直していくことが望ましい。さらに企業の規模によって適用を一定期間除外とする措置はあくまでも例外的な措置であり、できる限り早期に適用することが望ましいというのが、ワーキンググループ一同の共通の認識でした。大変簡単ですけれども、本文は長いので概要にてご報告申し上げました。資料については関連する重要な資料がありますので、年金課長から補足説明をお願いしたいと思います。

○稲上部会長

    それではお願いします。

○高倉年金課長

    それでは、資料3の資料編につきまして、宮武委員からご指示がありました今回のこの報告書のいろいろな論点にかかわる、特に高い係数等についてご紹介させていただきます。具体的には、この厚い資料編の中の19~27ページをご説明いたします。

    19ページをご覧ください。これはパート労働者への厚生年金適用拡大の基本イメージを模式化したものです。この資料では、今回の報告書案で出された20時間と考えた場合に、現状4分の3で概ね30時間ということで簡略化して書いていますが、縦の点線が左側の方にある「週労働時間20時間以上」というところまで拡大するとした場合に、その間にどれくらいの方がおられるかということで、合計約310万人の方がおられるという推計の資料です。

    次の20ページですが、これはその310万人全体に適用拡大するという仮定の下で、適用拡大による厚生年金の財政への影響を大まかに示したものです。保険料賦課基準とする総報酬月額の平均額を6万円、8万円、10万円と3つの幅を持って計算していますが、例えば真ん中の8万円で見ますと、「(1)厚生年金財政の保険料収入増分」労使合計で5,400億円、(2)の支出増分は5,600億円、収支差がマイナス200億円となり、パート労働者に対する適用拡大は年金財政にとっては基本的に中立的であるということが示されています。

    次に21ページをご覧ください。これは、適用拡大した場合の影響の目安ということで、主として人数と事業主の負担増という点につきまして、試算の幅を持って示したものです。時間を軸にした上で賃金や勤務期間を組み合わせたらどのような対象者数になるのかという目安を大まかに示したもので、先ほど申し上げました310万人というのは、この資料の右から3つ目の列で、週労働時間は20時間以上、そして賃金水準については特に下限を設けない、また勤務時間の制限もないということにしますとこの310万人ということになるわけです。この場合の事業主の年金保険料負担増は2,200億円と試算されます。そのほかの7万8,000円、8万8,000円、9万8,000円、また1年以上という要件を設けるか設けないか、それぞれの組み合わせに応じてどのような対象人員あるいは保険料負担増になるかという参考資料です。

    次に、22ページをご覧ください。これは報告書の論点の説明にもありましたが、国民年金の保険料との均衡を考える際の基礎的な参考資料です。右端に国民年金保険料が現在1万3,860円で、4月からは先ほどのお話の通り1万4,100円です。そして将来は1万6,900円で固定になりますけれども、それと比べ左側の中ほどにある現在の厚生年金標準報酬月額の下限が9万8,000円ですので、現在より将来にわたって国民年金保険料より高い保険料になっています。仮にこれが5万8,000円の標準報酬月額で左端になりますと、ご覧のような小さな数字になるという関係を示したものです。

    次の23ページをご覧ください。これは、週20時間台の労働に関して、月収6万円、8万円、10万円と単純化し、仮置きして逆算した場合にそれぞれ時給がいくらであれば20時間働いてその月収になるかという、時給に翻訳するときの早見表のような参考資料です。

    次に24ページです。これは適用拡大に伴う給付と負担の変化のイメージに関して、中ほどにありますように、報酬が10万円、加入期間が短くて1年あるいは2年の場合において、本人負担での保険料負担の変化と、その方が平均寿命までご存命であった場合に受け取る年金の合計額との対比を示したものです。ご覧の通り1年の加入でもその分年金給付が増え、例えば、特に負担が増える方で申しますと、下の3号から2号で1年加入して1年間9万円の負担増だった場合、平均寿命までの受け取り合計額は16万円増になるといった負担と給付の関係が示されている資料です。

    次に25ページです。これは、私どもの報告書の中にありました所得再分配という論点に関係する資料で、世帯一人当たりの所得別の年金月額とそれに対して年金が何%に当たるか、いわゆる所得代替率の表です。現役時の所得水準と年金月額の関係から見ますと、例えば左側の月収8万円あるいは月収10万円といったように賃金額が低かった場合で機械的に当てはめて計算すると年金の方が高くなるということで、所得再分配効果が見て取れる資料です。

    26ページはヒアリングの中に出てきた諸外国の事例です。

    説明の最後、27ページですが、「社会保険適用と就業調整について」ということで、先ほどの報告書の中にありました就業調整の影響をどう見るかという点についての参考資料です。下の表をご覧いただきますと、適用になるとご本人の手取り収入が12%減になりますが、一方で20時間基準で考えた場合、保険料負担を回避するためには19時間まで下げなければいけない。そうすると賃金収入の目減りの方が大きいということになります。右端にありますのが逆に12%の保険料本人負担による手取り収入減を補うためには、あと何時間働けばプラスになるかという機械的な計算です。以上が参考資料編の中で特に本題にかかわる補足説明です。以上です。

○稲上部会長

 どうもありがとうございました。それではただ今の宮武座長および高倉年金課長からのご説明につきまして、ご質問・ご意見をお伺いしたいと思います。どなたからでもお願いします。はいどうぞ。

○岡本委員

    宮武座長以下のご報告を読ませていただきました。ありがとうございました。終わりというところで十分参考にして検討いただけたということで、貴重な報告書だと思います。労を多としたいと思います。せっかくに機会ですので、今日いくつか網羅的に感想を含めて意見をよろしいでしょうか。

    今回の問題は格差是正あるいは再チャレンジというところに国の政策の重点が置かれていると理解していますので、そういう視点に特化して今後議論していかなければならない。年金制度全体にわたる議論をしていきますと時間の問題もありますので、そういった意味で論点を絞って、これからの適用条件をどうするかという方向で議論を進めていくべきだろうと思っています。ただ、格差是正あるいは再チャレンジの視点からいきますと、最近随分報道されていますが、景気が好転して非正規社員の社員化をしていって、厚生年金の適用が増えていくというのが一番国として望ましく、本来はそういう方向で議論していくのが望ましいと思っているのですが、しかしながら当面の問題として、ある条件を設定して短期労働者についても厚生年金の適用者を作っていくという議論そのものは否定すべきでないと思っています。そのためには事業主の皆さま方の協力や理解、納得が当然必要ですし、また協力があって初めて非社員の社員化という議論も有意になるわけで、そういう視点を尊重した議論を今後ともしていきたいと思っています。

    第2点目ですが、激変緩和についても触れていますが、事業主の皆さま方からも聞いてもらったと思いますが、ぜひとも十分なご配慮を頂戴したい。特に今、大企業はバブル崩壊後のいわゆる過剰雇用、過剰債務、過剰設備については何とかこの十数年来の努力で解消してきたということで、財務的には随分と好転しているのは事実です。かつ近隣諸国の輸出が増えているということで、それが景気を優位にしている、業績を良くしているという状況だと思うのですが、中小企業についてはバブル後の企業状況というか経済状況、それとバブルから立ち直ってきた今日の状況はそれほど変わっていないのではないかと考えています。そういう意味で中小企業に対しては、今後の景気の推移も見ながら的確に判断していくということになると、せっかくここまで景気が持ち直してきているのに足を引っ張ることになるといけないので、激変緩和については十分考慮していく必要があるだろうと思っています。

    3点目は、パートの多い業種の取り扱いですが、業種の属性によって物事を考えるべきではないということで、これについては賛成ですが、現実問題としてパートの労働に依存しながら日常の仕事をやっているという業種が現にあるわけです。理念的・観念的には業種によってどうだという議論をすべきでないということはわかりますが、現実の経営の中にはそういう労働市場に依存して経営しているところもあるという実態を無視することはできませんので、それについても十分な配慮をしながら議論していくべきではないだろうかと思っています。

    それから4番目ですが、女性の問題について触れていましたが、この問題はなかなか簡単に結論が出るわけではありませんので、第1回目で渡邉局長も中長期的なものとして議論していくべきとおっしゃっておられましたし、私も中長期的な議論で今後検討していき、今回は再チャレンジ、格差是正ということで問題をクリアにして議論ができるのでいいのではないかと思います。

    5点目に、主婦については何回も申し上げているのですが、40代、50代あるいはもっと高齢の主婦のパートというのは、バブルでご主人の収入が減ったとか、将来不安が増えたとか、学費やローンの返済とか、将来の年金あるいは老後の生活がどうというよりも、家計を支えるという意味で必死に働いている方が随分いるというのが現実です。そういう主婦層についての配慮というか、現実の主婦の感覚というのは尊重しておかないと、国民の消費を湿らせたりあるいは景気の足を引っ張ることになりかねないと思いますので、ここは十分配慮していく必要があるだろうと思っています。

    それから本文でも触れている負担感ですが、払っている間に負担感が自然に減少していくのではないかという分析があるのですが、私はこれはいかがなものかと思います。

    現役の皆さん方の負担感も相当なものがあり、まして家計の補填のために働いている高齢の主婦の方の負担感は非常に大きいわけですから、一旦適用して、払っている間に自然に負担感がなくなってくるだろうという本文の表現には違和感があるということを申し上げておきたいと思います。

    最後に、高倉課長の方からご説明があった財政のところですが、今回は格差是正、再チャレンジということで諸施策がありますので、支援のための諸施策にいろいろ予算を付けていく、国のお金を使うということは大いに幅広く議論をしたらいいと思うのですが、年金というのは、年金制度がきちんとあって負担者いてそれを運用していくことで財政を堅持していくということですから、財政がマイナスになるような結果をもたらす条件設定はよほど慎重にしていくことが大事ではないかと思っています。

    報告書を見ながら感じた感想、あるいは意見は以上ですが、とりあえず非常にいい報告をまとめてもらったと思いますので、御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

○今井委員

    ただ今のご報告は、細かく分析されて私としては嬉しかったのですが、今日はこの報告を聞く前に私が発言したくて準備してきたものと重複してしまいましたので、そのまま読ませていただきます。

    私は農業者なので、農業従事者の意見ということでお話しさせていただきます。夫婦で農業に従事している場合は、当然1号被保険者になりますし、所得に関係なく定額負担ということになります。妻に収入がなくても妻は保険料として1万3,860円を支払わなければならないのが現状です。農林水産省の平成17年度の統計では、農作業に従事し給与や報酬をもらっていない女性が半分以上という結果が出ています。報酬をもらっていても、月10万円以下という人が約6割、5万~10万円程度が43.7%ということで、ほとんどが低所得ということがおわかりかと思います。厚生年金の最も低い報酬月額が9万8,000円と表に出ていましたが、1万4,349円のうち本人負担が半分の7,174円ということで、今ほどの報告にもありましたが、1号保険者の場合は収入がなくても1万3,860円を払っていることになります。

    我が家はつい最近法人化したのですが、経営的には本当に零細で最低の経営状況なので、本当は法人化する必要なないのですが、将来を考えて思い切って法人化しました。

    夫が社長で私が専務というレベルの法人化ですが、保険料を計算してみて初めてわかったのが、経営主が負担していますが、結局懐は一緒という状況で、農業を経営している方はそういうパターンの方が多いのが現状です。我が家のような零細経営をやっているものは、こういう保険料を計算して払うという形を取っていますと、加入できない零細企業が多いのかなと実感しました。支え手を増やすという意味でも、零細企業が払いやすいように税額表をもっと緩やかな数字に変えられないのかという気がしました。当然加入の1号のように個人単位の年金制度にしていただきたいし、貧困層に優しい掛け金の税額表にお願いしたいと思います。以上です。

○稲上部会長

    ありがとうございました。

○小島委員

    ワーキンググループの委員の皆さんには、10回にわたって熱心なご検討をいただいて報告書をまとめていただきました。まずは敬意を表します。パート労働者に対応する厚生年金の適用問題についてはいくつか論点が整理されていると思います。それを今回の報告書の中できちんと整理されたということで、本当にご苦労さまでした。

    この間のワーキンググループの中でも2回ほど労使からのヒアリングがありました。連合からも出席させていただいて、2度目は連合の高木会長自ら出席しパート労働者に対する厚生年金の適用を拡大すべきだと発言しています。ワーキンググループ方では連合の思いや主張を十分していますが、年金部会としては多分この問題について今日が一つの区切りということですので、報告書について総括的なことを発言させていただきます。

    報告書の概要のところですが、今回の適用拡大の意義として四つほど整理されていますが、まさにそういうことだと思います。

    もう一つ私ども連合としては、今の厚生年金あるいは社会保険が、雇用形態の多様化に十分対応していないというところに最大の問題意識があります。雇用形態に十分対応した社会保険、特に被用者年金なり被用者健保の適用ということを今きちんと見直すべきだということが根底にあるということです。

   そういう観点から今回の報告書を見ますと、概要1ページの「3.適用対象となる者の範囲」ということですが、(1)の厚生年金適用にふさわしい「被用者」という表現がこれでいいのか、逆にふさわしくない被用者もいるのかとういう話になります。本文の方は確か被用者にふさわしい年金保障が行われていないという表現でしたので、「被用者にふさわしい厚生年金の適用のあり方」、その方が表現上はふさわしいと思います。

    また、1ページの下の箱内の二つ目の段落で、労働時間等の面で正社員に近いパート労働者に適用するという現行の考え方を基に拡大をするとあります。これは現実的にはそうだと思いますが、私どもの問題意識からすると必ずしも正社員に近い・近くないということではなく、雇用労働者、被用者に対する厚生年金の原則適用を考えるべきだということです。私どもは基本的には雇用労働者に原則社会保険を適用すべきだという考え方であり、正社員か非正社員であるかは問わず、そういう人に対しては原則適用すべきだという教え方です。今回は捉え方、アプローチの仕方の違いかなと思います。

    次に2ページの「労働時間について」ということで、ふさわしい「被用者」という観点からすると、今の適用要件である労働時間要件が4分の3以上という、その時間要件を引き下げることが基本ということですが、これが基本なのでしょうか。私どもとしては原則適用が基本で、現実的に適用を図っていくには今の労働時間4分の3を引き下げる、それが現実的な対応方法だという認識でいるのです。この辺も表現の違い、アプローチの仕方の違いから出てくる差だと思っています。

    結論的には、当面所定労働時間20時間以上の者に適用するということですが、現実的な対応として20時間以上ということではやむを得ないと思いますが、原則適用ということをはっきりさせた上で当面時間要件20時間以上ということで考えるべきだというのが私ども連合の考え方です。

    それから三つ目の○にあるように、既に適用されている者との比較の中で、当該事業所以外で過ごす時間が長くなっているということが、20時間以下で働くという意味でここに出ているのだと思います。労働時間要件と他の要件も加味して総合的に判断する理由として、事業所で過ごしている時間と、それ以外の時間との関係ということだと思いますが、必ずしも事業所にいる時間より事業所以外にいる時間の方が長いということを加味する必要は、特段ないのではないかと思っています。

    総合的な時間要件以外の判断として、一つは賃金水準だと(3)で一定以上の賃金を得ているという要件が説明されています。ここでは先ほど説明がありました国民年金の保険料1万3,580円と、厚生年金の保険料との比較で勘案すべきということですが、そもそも本来は国民年金の対象者と厚生年金の対象者は違うと思います。厚生年金は雇用労働者を対象にしており、国民年金の本来の姿は自営業者あるいは農業従事者だったのですが、現実的には国民年金の第1号被保険者の3割程度しかいなくなっているという現実があります。そもそも国民年金と厚生年金の対象者を保険料を基準として仕分けする、あるいはそこを勘案するということ自体が少し違うのではないかという思いがあります。

    その下のところで、労働者間の連帯感の問題が指摘されていますが、これは私どもが考えている労働者内の連帯感とは違う価値観だと思っています。すべての非正規労働者・パート労働者を含めて原則適用にすべきというのが私どもの考え方で、それこそが労働者間の連帯感を強めると思っています。賃金が低いパートの皆さんが厚生年金に入ることにより連帯感が薄まるということにはならないと私どもは思っており、あまり賃金要件を厳しく見る必要はないと思っています。

    次の3ページで、事業活動への一定以上の貢献という説明では、逆に賃金が低いあるいは短時間の労働者は事業活動への貢献度が低いということになります。事業活動への貢献度を賃金の多い・少ない、あるいは勤務時間の多い・少ないで比較するのもいかがなものかと思います。短時間パート労働者も貢献する思いで仕事・活動に従事しているということは、ワーキンググループでのヒアリングでもそういう発言をしていますので、そこは十分配慮してもらいたいと思います。

    次の(4)の勤続期間も、雇用保険の例を参考にということで、雇用保険は年収要件はありませんが、時間要件20時間以上、そして1年以上の就労が見込まれる場合ということになっています。確かに雇用保険の方は休業補填ということもあり、一定要件というのは持っていると思います。厚生年金の場合には、今でも1ヶ月でも加入期間があればそれが老齢年金の算定期間に参入されるということですので、勤続期間要件を長くすべきではなく、現行の適用要件をベースに考えるべきだと思います。

    4ページの企業経営の影響について、ここは激減変緩和あるいは猶予期間に配慮するということで、ここについては私どもも当然一定の経過期間なり激減緩和は必要だと思います。これも基本は原則適用をはっきりさせた上で、当面の間あるいは一定期間という形での激減緩和、経過措置という形で考えるべきだと思っています。

    最後のその他のところで、課題という形で女性に関する年金の課題について指摘されています。本文では第3号被保険者の問題という形で明記されていますので、その問題については、年金部会でどうあるべきかという検討が必要だろうと思います。それについては前回の年金部会でも発言しています。長くなりましたが以上が総括的な意見です。

    最後に一つ質問です。先ほど説明いただいた参考資料の20ページの財政影響のところです。短時間労働者に適用した場合の年金財政への影響で、310万人程度の適用拡大を仮定した場合、総報酬月額が6万円、8万円、10万円という収支差が出ています。この前提は新しく2号被保険者、厚生年金が適用になるということですが、その際に3号被保険者が減るということがある。その3号の対象者が2号に移れば、3号の基礎年金拠出相当分は、厚生年金からの持ち出し分としてはその分は減るわけです。そのことも勘案した上での収支決算になっているのかなというのが質問です。

○稲上部会長

    はい。質問のところだけお願いします。

○高倉年金課長

    私の方からは20ページの質問について、ご指摘のような基礎年金拠出金との関係の変化も織り込んで計算しています。ただ3号が2号になるというのは、結局2号は厚生年金の範囲ですので、基礎年金拠出金のカウントの数は変わらないということはありますが、そういったことを織り込んで計算しています。

○宮武委員

    一応ワーキングループとしてお答えしなければいけないこともあると思いますが、それは個々の委員で意見も異なりますので発言いただければ幸いです。ただ私から申し上げたいのは、岡本委員は主に経営側の立場で大変さまざまな懸念を持ってご注文があり、小島委員は労働組合側から注文されて、今井委員は1号被保険者の立場でご発言なさっていて、私どももその集中砲火を浴びる中で最大公約数をまとめたということをご理解いただきたいと思います。

○稲上部会長

    ありがとうございます。他の方ご意見・ご質問ありましたら。

○岡本委員

 小島委員が何回も「私ども」という言葉を使われましたが、「私ども」とは何ですか。

○小島委員

    労働組合という立場です。特に労働組合の連合という立場です。

○西沢委員

    意見と申しますかお願いも含めて発言します。私もワーキンググループにはヒアリングの中で何度か参加させていただきました。平成12年の改正時に比べますと、非常に丹念なプロセスが積み重ねられていたのは私自身もこの目で見ていまして、良いことだと思っていました。パートの方の適用拡大についても総じて良いことだと思っています。そこでお願いと申しますか、きわめて重要なのは5番に書かれている執行の問題だと思います。今回の報告書では給与基準要件の引き下げですとか、女性の年金の問題の検討などといった次のステップを展望していると思いますが、今回の案がきちんと適正に執行されていないと、なかなか次のステップにいくこともできないわけですので、適正な執行をより重視した形でやっていただければというのがお願いです。執行に関してもう一つ、納税者、保険料を納める側も納税協力費用というか、事務コストが発生してしまいます。徴収を強化すればするほど、その監査や検査への立会いや日々の労務時間の管理や報告などが発生します。ヒアリングの中でも事業者の方が事務コストは極力事業主の方に発生しないような仕組を、公の場でディスカッションする必要はありませんので、事業主の方と当局とで話し合いながら作っていくことが今後重要かと思っております。

    もう一つ、報告書の「その他の課題」は、私が先ほど次のステップと表現したことに該当するかもしれませんけれども、これはぜひ今後、当面の課題が終わりましたら引き続きしていただきたいと思います。その中では健康保険について、特に組合健康保険は、後期高齢者支援金や、前期高齢者納付金は一人当たりで計算するようになっていると思いますので、パートの適用拡大をするとこの支援金等の負担が多分膨らんでくると思います。従って組合健康保険でパートタイムの多い方は、パートの方が入ることによって支援金等の負担が増え健康保険料等の引き上げなども必要になってくるかもしれません。それをシミュレーションするには新しい人口推計の下で後期高齢者や前期高齢者の医療費などが出てこないとなかなか示しにくいと思いますので、健康保険と厚生年金の適用をなるべくそろえるということはシンプルで非常にいい方向だと思います。それをよりスムーズに進めていくためにも、前期高齢者・後期高齢者の医療費がどうなっていき、組合健康保険ごとに負担増、負担減がどうなっていくのかというのは、今後定量的に議論していくべきかと思っております。以上です。

○稲上部会長

    ありがとうございました。はい、どうぞ。

○林委員

    感想ならびに意見です。まずワーキンググループのヒアリングですが、事業主団体の大反対という中でやってきたわけですが、非常に印象深いのは20名ぐらいのヒアリングの辺りから、事業主側からも将来的にはパートと正社員の適用に差を付けることはなくしていくべきだというご発言もありました。少子高齢化、男女ともにですが労働力人口の減少、ワークライフバランスといったような観点から、将来的にはそういった方向であるべきだというようなご発言もいただきまして、パートの多い業界の方々でしたけれども、そのことは大変印象深く受け止めましたので、皆さんにもご紹介しておきたいと思います。

    それから「その他の課題」の、女性と年金の問題ですが、ヒアリングの過程で、現行の女性と年金の制度が子育てなどで会社を辞めることを余儀なくされた人たちの再チャレンジを阻んでいるのではないかという印象を受けました。産後もそうですし、遺族年金の水準や加給年金など、そういったものが被扶養者というところに押し込めてしまっているという印象を受けました。ですから再チャレンジという観点からも女性と年金の問題については、今後この部会で議論を重ねていっていただきたいと思っております。

    以上です。

○稲上部会長

    ありがとうございました。どうぞ。

○杉山委員

    私もワーキンググループに参加させていただいていたのですが、前回の年金部会のときにも、女性と年金の問題やパート労働の厚生年金適用の問題を議論して、厚生年金適用に関しては、適用されるのでないかと私たち委員も感じながら議論させてもらぅて、20時間でどうかとしていたのですが、結局そのときはできなかったといういきさつがありました。それはどうしてだったのかと考えますと、やはり事業主の方や労働者の方からのヒアリングを十分受けずに、いろいろな議論の中の一つということで進めてしまった部分でいろいろな誤解があったり反発があったりしたのかなという印象を持っています。あらためて今回議論できて本当に良かったと思っておりますし、ワーキンググループに参加させてもらうことによって、事業主の方たちが、パートに女性たち、働く人たちはかけがえのない働き手でこの人たちがいないと自分たちはやっていけないということもご発言されていて、そういう思いや考えも伺えたのは良かったと思っています。やはりそういった人たちが責任と誇りを持って働いていくためにも、ぜひこういった適用を進めていっていただけたらと思っています。そういう働き方をすることによって、夫側の働き方も長時間労働などが変わってくるだろうと思いますし、家庭責任という部分でも、パートナーの方が担うことができて少子高齢化の新しいライフスタイルが生まれてくるのではないかと思っています。勝ち組・負け組という言葉が出てきておりますけれども、やはり格差を解消するのはとても大事なことだろうと思っていますが、一つ心配だったのが、資料2のワーキンググループの報告書の7ページにもありますが、パート労働者自身が適用を望んでいないのではないかという話に対して、不信というよりはよくわからないと答えている人が多いということです。社会保障のことも含めて年金制度そのものを自分のことだと捉える機会がそんなにないのではないかと非常に心配です。納めていないけれども気が付いたら入っていたという事態も、そういったところからも来ているのかなという気もします。やはり個人で負担をして、自分の年金を受け取るという制度に向けて動いていくことが必要ではないかと思います。

    もう一点、少子化の観点から申し上げますと、男性にしても女性にしてもそうですが、非正規雇用で働いている人たち、特に若い方は結婚しない方が本当に多いのです。やはり仕事が安定していなしと結婚もできないという現状があります。そういう意味でも働き方はとても大事だと思いますので、最初の安倍総理の再チャレンジであったり、格差是正という部分の徹底をするためにも、この問題はここで真剣に議論していただけたらと思っています。以上です。

○稲上部会長

    ありがとうございました。はい、どうぞ。

○山崎委員

    報告書を読ませていただいて、パート労働者が1,200万人を超えている中で、それだけ被用者保険に加えていくかということを具体的に展開するときに、労働時間以外の所得要件や雇用期間要件を入れて考えていこうという方向は非常に現実的な方向だと思います。幾つかの暫定措置も考えていこうということで、やはり大きい制度変革ですから、緩やかにうまく適用させていくのが大事だと思いますし、そういう意味で今後これを具体的に法律にして、実施に移るときにはやはりそういうところを十分配慮して進めていただくことが大事だと思います。全般的には大変ご苦労いただいてまとめていただいたと読んでいて感じます。

    それから少し質問ですが、労働時間要件のところに「当面」週20時間以上という言葉が入っていたのですが、この「当面」というのはどのような意味があるのかと思いました。第一弾としては、くらいの意味なのかなと感じたのですが、それでよろしいのでしょうか。

    それからもう一つは、厚生労働省に方で示された資料の、310万人というところです。これは1,200万人強のうち既に300万人が保険に入っていて、それ以外の約900万人のうち310万人が週20時間以上の人たちで、これに要件を掛けていくと現実的には少なくなってきて、つまり上限としての310万人という理解でよろしいのかどうか少し教えていただきたいと思います。

○稲上部会長

    宮武委員の方から、まずお願いします。

○宮武委員

    所定の労働時間が20時間以上とすることを当面としておりますけれども、もちろん委員の中にはもっとより多くの、できる限り多くの人が厚生年金適用を受けられるようにということでもっと緩やかな基準という方もいらっしゃいました。しかし雇用保険の取り扱いや、前回改正時の提案も踏まえれば、ハーフタイマーのところで区切るのがやはり一番合意を得やすいのではないかということで、当面と名付けました。当面はいつなのかというと、最後に書いてありますけれども、「適用対象範囲の考え方については、今後の社会経済情勢の変化に合わせて、迅速に見直していくことが適当」というところに意味合いを込めまして、1年、2年という意味ではございません。

○稲上部会長

    高倉年金課長、お願いします。

○高倉年金課長

    2点目の310万人という数字の意味合いについてですが、基本的には山崎委員がおっしゃていた通りで、資料の20ページで20時間台のところに310万人とありますが、21ページの表がまさにその辺りのことです。20時間以上という時間要件に加えて、賃金の水準の要件を設けたりあるいは勤務期間の要件を重ねたりした場合には、対象者数は、表の右から3列目の310万人から、段々と要件によって該当する人数の見込みは減っていくという概算です。

○稲上部会長

    はい、どうぞ。

○都村委員

    ILOの1944年のフィラデルフィア宣言では、経済的保障はすべての国民の権利であるということが確認されています。1944年ですから、それから60年以上たっているわけですが、その権利が拒否されたままというグループもあるということが世界の国々で問題になっています。これは給付額決定の基本的な条件ではなく、受給資格の欠如ということに問題があるわけです。被用者の中に社会的保護の受給資格を持つことができないグループがあるということです。経済的保障を年金について見ますと、年金制度の給付構造に関する一般的な目的としては、一つはすべての国民に対する皆年金です。もう一つは国民に対する、高齢・障害、それから働き手の死亡などの要因に基づく貧困の防止です。それからもう一つは拠出者すべてに対して、退職後喪失した給与所得の代替として年金を提供するということがあります。特に高齢期における貧困防止という年金制度の初期の目的で、これは随分大きな役割を果たしてきたと思いますが、その初期の目的から除外されているグループがあることは問題だと思います。

    年金制度内で正規雇用以外の働きをしている者の不利益を取り除き、より平等な給付を保障することが大事なわけで、このための一つの方法は、現行制度を適用除外層にも拡大するということ、すなわちパートの厚生年金適用ということです。それと同時に雇用指向型のソーシャルポリシーを拡充する必要があるのではないかと思います。第2の方法は、若者や障害者、あるいは子育て中の女性など、そういった人たちの経済的自立を促進するということです。パートの正社員への転換を促進する、あるいは家族責任を持つ者が経済活動に同等に参加できるために不可欠ないろいろなソーシャルポリシー、例えば保育サービス、再就職のための職業訓練、あるいは育児介護休業の充実など、そういった雇用指向型のソーシャルポリシーを重視することによって、経済的自立が促進されます。北欧諸国などは後者の方法で成功している例だと思います。今回のパート労働者への厚年の適用というのは大変大きな意義を持つと思いますが、それと同時に今やはり多様な働き方をしている、あるいは働くことができないグループも、雇用に参加して経済的自立を促進できるようなソーシャルポリシーを拡充していくことが必要なのではないかと思います。以上です。

○稲上部会長

    ありがとうございました。他にございますか。

○岡本委員

    一点質問してよろしいですか。大した質問ではないのですが、座長を務められた宮武委員に伺いたいのですが、「その他の論点」の中に「『学生』『主婦』『年齢』など労働者の属性や」うんぬんとありますよね。学生について、これから少子化で10年、20年後には全員が大学を卒業されるのではないかと思いますけれども、大学4年間というのは大体皆さんアルバイトをするわけです。4年たって景気が良くてノーマルな社会状態になってくると、きちんとした職業人として就職をする。こうなってくると、学生はアルバイトして収入があるから被保険者だという考え方よりも、国民年金の制度があるのであれば、やはり国民年金できちんと卒業して、就職したときから本来の職業人として自覚を持って被用者年金とするという考え方もあるかと思いますが、今回はいろいろな議論がありましたけれども、その辺り皆さん方はどのように議論されたのでしょうか。

○宮武委員

    確かに学生がパートとして働いて、この適用拡大によって保険料を被用者並みに払うということになりますと、それでいいのかという議論もありましたし、逆に、学生は本来学業をやるべきで、アルバイトに大学に来ているようなことも多く見かけられるところから考えると、少しブレーキをかけた方がいいというご意見もありました。ですからそこのところは本来もう少し詰めて議論するべきだと思います。個人的には、これは少し今回のワーキンググループとは離れてますけれども、もともと20歳以上の学生に適用したこと自体が間違いだと思っていますので、そういう意味で岡本委員と全く同意見です。

○稲上部会長

    はい、どうぞ。

○稲垣委員

    先ほど働く側の意見ということで小島委員の方から総括的に言っていただいたので、少しだけ心配していることについて申し上げたいと思います。就業調整の問題ですが、すべての雇用労働者に対してという形で行われればなくなると思いますが、やはりそこで一定のラインを引くと、またその問題が起きると思います。ここでは当面20時間ということで皆さまの意見としてまとまったということですが、これにもう一つ収入要件と期間加わると、また新たな就業調整あるいは事業主による適用逃れの問題も生じてくる恐れがあると思いますので、この辺りは企業の社会的な責任という観点からも、そういうことのないようにというメッセージを強く入れていただきたいと思います。

○権丈委員

    一通り意見が出そろったかというところで。今は春休みで私は授業をやっていないので、学生に資料を配って説明することはできないのですが、もし私が今授業をやっていて学生に今日の話の説明をしようとすると、やはりこの配付資料の資料3における21ページを配ると思います。資料21ページの「パート労働者へ適用拡大した場合の影響の目安」を配って、そして恐らく学生に対して、資料2「パート労働者の厚生年金適用に関するワーキンググループ」の報告書を読みこなして、例えば自分で適用対象人数を40万人、70万人と設定し、それを正当化する理由を書くようにという問題を出すと思うのです。そうするとどこの適用人数のところでも答案はできるのです。しかし私にはこの学生がA、この学生がBと採点できない。ただ労働組合や事業主側から見ればA、B、Cを付けることができる。どうもそういう問題のようなのです。だから我々はワーキンググループで、労使双方の話を聞いて最大公約数的に資料2をまとめました。その資料を使って310万人に設定し、これを使って正当化する理論を作れ、40万人だった場合に正当化する論理を作れ、となるけど、どれが本当に正しいのかという答えがないという報告書になっています。恐らくこれから先数週間は、そういう作業がずっと行われるのではないかという気がしないでもないのですが、ただ先ほども言いましたように、他の次元だったら決まるのです。連合の人たちであればそれが決まっていく。だからこれを読んで私たちがいろいろ考えている中で、どこが正しいかというのを自分で判断するしか答えがないというのが、我々ワーキンググループとしてずっと相談しながら意見を聞いてまとめていった過程です。そして各人がこれを読んで、私はここが正しいと思う、それは連合が言うことと似ているかもしれない、あるいは事業主側が言うことと似ているかもしれないというような答えの出し方しかないのかなと、私たちは受け止めています。

    私が言いたいのは、例えば社会の弱者についてウエートを高めた社会的厚生関数を設定していくと、こういう適用人数になっていくなど、いろいろな形の解答があると思います。あるいは経済界と労働者という対立だったら、要するに今この環境の中でどちらの言い分が正しいというふうに見ていくのがいいのかなど、いろいろなポジション、価値判断が入ってこないと答えが出ないのです。そういう価値判断というのは報告書として出すものではないと私も一応考えていますので、こういう報告書になっているわけです。

    これからいろいろな読みがなされていき、資料21ページの「パート労働者へ適用拡した場合の影響の目安」の中でどこに決めていこうかという議論がなされると思います。

    そこで、いろいろと皆さんが読まれた中で、自分が正しいと思うことをしっかりと考えていただきたい。私は政策は結局力が作るのであって、正しさが作るのではない、力が正しさを決めていくのだと思っています。勝てば官軍などと教科書などにずっと書いている人間ですが、ただ時間がたてば正しさに力を与えることはできると思っています。

    しかしパート労働者への厚生年金適用の問題は2~3週間、1ヶ月ぐらいで決めなければならない話なので、我々研究者はなにもできません。だから皆さんにこれを読んでいただいて、自分が正しいと思うことを考えていただきたい。私が常々言っていることが、自分が正しいと思っていることをやってくれる政治家を選挙で勝たせてあげないと話にならない、民主主義とはそういうものなのだということです。ただ今回、私たち研究者は時間がかかってしまうような仕事しかできないものですから、当面は何もできないけれども、私は厚生経済学を一生懸命に勉強するよりもマキャベリを読んだ方がよほどいいという人間で、マキャベリの言葉に「武器を持たない予言者は敗れていくのだ」というのがあります。民主主義社会の中では武器というのは票です。だから支持者がいないような正論を言っても、これはどうせ負けていくに決まっているというのがありますので、武器を持たない予言者という形の報告書にならないように、私も短期間で何かできればいいなというのはありますけれども、どうしても正しいことをやってくれる政治家を勝たせてあげなくてはいけないと思います。しかしその正しさというのは、この報告書を読んでも決まるものではなく、各人が判断していただくしかないのかなと思っています。そういう気持ちでこの報告書を、ワーキンググループで一つにまとめて出させていただいたということをご理解いただければと思います。

○稲上部会長

    どうもありがとうございました。他の委員の方でご発言がありますか。

    よろしいでしょうか。

    私から少しまとめにかかわるお話をさせていただきたいと思います。パートタイム労働者に対する厚生年金の拡大適用については、先ほど来お話にありましたように、平成16年の制度改正の折にも議論されていることで、年金部会として週の所定労働時間20時間以上の方々に適用すべきであるという提言を行っています。しかし当時の政府与党での検討の結果、改正法の附則に検討規定がおかれ、その附則に示された配慮事項を踏まえて平成21年までに検討を行うこととされました。その後、安倍内閣において再チャレンジ支援が重要な施策とされ、総理から今国会に一元化法案が提出された際も、併せてパートタイム労働者に対する厚生年金の適用の拡大について、その実現についての言及あるいは指示がありました。そうした動きを受け、年金部会としては平成21年を待つことなく改正法の附則を踏まえて短時間の内に精力的な検討を行うことにしました。

    そして昨年12月、本部会の初会合において、パートタイム労働者の厚生年金適用に関するワーキンググループを設置させていただきました。

    本日ご報告いただいたワーキンググループの報告書は、平成16年改正時における本部会の提言を踏まえながら、週1回以上という大変密度の高いスケジュールで関係者からのヒアリングを行っていただき、後半は関係者の生の声に基づいて策定されたものと理解しています。大変お忙しい中、そして2ヶ月という限られた時間の中で、精力的にヒアリングを行っていただいた委員の方、またヒアリングにご参加くださいました関係者の方々に対し、まず心から御礼の言葉を申し上げたいと思います。その上でこうしたご協力をお願いしたい張本人としまして、平成16年改正の際の本部会の提言に加え、本日いろいろとご議論いただきましたご意見、とりわけ最後に権丈委員からお話しいただいたような、私個人的には大変適切なコメントであったと思っていますが、種々のご意見も含め、今回のワーキンググループ報告書に示された考え方が今後政府与党にて行われるであろう制度改正に向けた検討の中で十分生かされるよう切に望んでいます。

    なお次回以降の年金部会では、政府与党における検討結果について事務局からご報告いただきたいと考えています。また先ほど来、ご議論が幾つか出ておりますが、この問題を検討していく中で、重要性があらためて浮き彫りになった制度体系にかかわるさまざまな検討課題が浮かび上がっていくかと思います。それらを中長期的な課題として、本部会においてこれから検討していきたいと考えています。以上、私の考え方を申し上げました。

    多少時間がありますが、何かご発言がありましたらお願いします。よろしいでしょうか。

    それではおよそ時間になっておりますので、本日の審議をこれで終わらせていただきたいと思います。次回の日程については追って事務局からご連絡させていただきます。

    本日はどうもありがとうございました。

 

(照会先)

 厚生労働省年金局総務課企画係

 03-5253-1111(内線3316)