07/04/26 社会保障審議会年金部会第4回
議事録
日 時:平成19年4月26日(木)10:00~11:30
場 所:はあといん乃木坂地下1階「フルール」
出席委員:稲上部会長、渡辺部会長代理、
江口委員、岡本委員、小島委員、
都村委員、中名生委員、西沢委員、
林委員、宮武委員、山口委員、
米澤委員
○岡田総務課長
おはようございます。それでは、第4回の「社会保障審議会年金部会」を開催させていただきたいと思います。
本日は、御多用のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
最初に、委員の御出欠の状況を御報告いたします。稲垣委員、今井委員、権丈委員、杉山委員、山崎委員が御欠席でございます。樋口委員は、御出席の予定でございますが、現在遅れておられます。なお、岡本委員は欠席でございますが、代理として日本経団連経済第三本部副本部長の遠藤寿行さんに御出席をいただいております。
それでは、お手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。最初に議事次第、座席表、委員名簿がそれぞれ1枚ずつございます。
それから、資料といたしまして、横の「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案の概要」が資料1。
それから、資料2として、これはA4縦でございますが、「パート労働者に対する厚生年金適用の拡大について」。
それから参考資料でございますが、被用者年金の一元化に関します閣議決定などをまとめた参考資料1。
参考資料2でございますが、被用者年金一元化法案の参考資料。
それから、A4横の資料でございますが、「パート労働者に関する厚生年金の適用拡大について」の参考資料3でございます。
それから、お手元に参考資料4として、横書きの資料でございますが、「厚生年金の標準的な年金額の見通し」という資料を配付させていただいております。これは、第2回の年金部会におきまして権丈委員からお求めのありましたものでございまして、生まれた年度別に見た標準世帯における年金額、それから所得代替率の見通しをお示しした資料でございます。次の2枚目は暫定試算の資料。それから、最後の2枚が年金支給を開始した後の見通しの額などを示したものでございます。
以上がお配りさせていただいている資料でございます。不足等がありましたらお申し出いただければと思います。
それでは、部会長、よろしくお願いします。
○稲上部会長
それでは、議事に入りたいと思います。
本日は、昨年の12月の第1回部会におきまして御議論いただきました被用者年金一元化及び本年3月の、前回でございますが、第3回部会において御議論いただきましたパート労働者への厚生年金の適用拡大、その2つを盛り込んでおります被用者年金一元化法案がお手元にございますが、この4月13日に閣議決定されまして国会に提出されております。そこで、その概要につきまして、事務局から御報告をいただきまして、委員の皆様から御意見などをお伺いさせていただけたらありがたいというふうに考えております。
それでは、事務局から御説明をお願いしたいと思います。
○高倉年金課長
それでは、被用者年金一元化法案につきまして、内容を御説明させていただきます。本日は、法律案自体は御覧のような大変分厚いものになってしまいましたので、後日お目通しいただければということにさせていただきまして、概要あるいは参考資料の方で御説明させていただきます。座って御説明させていただきます。
まず、資料1に入ります前に、全体の今回の位置づけに関連いたしまして、参考資料2、縦長の分厚いものをおめくりいただきながら御説明させていただきたいと思います。
まず、基本でございますけれども、2ぺージ、基礎資料というもので年金制度の体系図をお示しさせていただいております。今回の被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険等一部改正法案というものは、この体系図で申しますと、いわゆる2階部分、白抜きで示しております厚生年金保険、共済年金、実際には共済年金は右端にございますように更に3つに分かれておるわけでございますけれども、この厚生年金保険という民間サラリーマンからなります被用者年金の一番大宗を占める制度を拡大いたしまして、右側の共済年金のグループの方々も厚生年金保険に入って一本化をするということ。 そしてまた、左側の1号、3号の方々の中に、正社員に近い働き方をしているパート労働者の方々がおられますけれども、その方々についても、いわば2階の厚生年金保険の絵が少し左に広がるようなイメージで拡大をしていく。こういった厚生年金保険の体系を広げていくというものであるというのが全体像でございます。
そして、4ぺージを御覧いただきたいと存じます。これは今回の法律案自体の中身に入ります前に、公的年金の一元化に関するこれまでの経緯につきまして簡単に御説明させていただきたいということで御用意させていただきました。と申しますのは、当然のことでございますけれども、各制度はそれぞれの歴史を経て今日に至っておりまして、一元化と申しましても、白紙に絵をかくわけではございませんで、時間の流れの中で、歴史の中で行っているものでございます。今回の法案がそのような全体の時間の流れの中でどのような位置にあるのか、これを確認することが重要と考えまして御用意させていただきました。
この4ぺージの一番上にございますのが昭和59年の閣議決定でございます。ポイントだけ抜き刷りしてございますけれども、要は、1階部分につきまして全国共通の基礎年金制度を創設するということ。その上で、残る課題につきましては、2つ目の丸にございます昭和70年、1995年になりますけれども、それを目途に公的年金制度全体の一元化を完了させる。これがいわば入口でございます。
公的年金制度全体の一元化の完了という意味合いにつきましては、その右の方に59年3月の予算委員会の当時の厚生大臣の答弁を抜粋してございますけれども、中ほどにございますように、厚生年金と共済年金の一元化というものを指しておりまして、それを2階部分のそういった一元化を行うことをもって、1階の基礎年金、そして2階の被用者年金の一元化を行うことにより全体の一元化が完了する、そういう頭の整理で当時スタートしております。
その後さまざまな経緯を経まして、1995年のその次の年になりますが、96年(平成8年)の閣議決定に至りました。これは、その前段階でさまざまな、とりわけ旧国鉄共済の処理等をめぐりまして、長い時間をかけていろいろな調整をしてきた結果、この8年の閣議決定でJR等3共済の厚生年金への統合というものを決めたわけでございますけれども、その際、併せて残る部分についてどうするかということにつきまして、御覧のような言葉遣いで「被用者年金制度の再編成を進める」と。それで、末尾にございます「統一的な枠組みの形成を目指す」、こういった表現でございます。右下に当時の厚生大臣の答弁でございますが、この締切り時期につきましては、「最終的な日限を明確に切っているわけではありません」ということで、59年のときの目標年次自体は、この時点で置き換えて漸進的にやっていかざるを得ないのではないか、こういう整理になってございます。
おめくりいただきまして、さらにその5年後、平成13年にまた閣議決定で、この時点で農林共済の厚生年金への統合を決めましたり、あるいはまた、国家公務員共済と地方公務員共済の財政単位の一元化を決めたりしてございますけれども、残る課題の部分をここで抜粋しております。御覧のように、代表例示としては「財政単位の一元化も含め」ということで、ややいわゆる制度分立・財政調整的なイメージが代表例示になっておりますけれども、さらに財政単位の拡大と費用負担の平準化を図る方策につきまして、21世紀初頭の間に結論が得られるよう検討を急ぐと、必ずしも期限は明確ではございませんでした。
その後、平成16年改正の際に、御記憶の方も多いいろいろな国会での御議論がございまして、その結果、これは衆議院の16年改正法案の審議のいわゆる出口の近くで、自民党、公明党、民主党の3党の合意によって、附則の第3条の1項、2項という検討規定が挿入されたわけでございますけれども、この中で特に画期的な部分としては、2項で「公的年金制度の一元化を展望し、体系の在り方について検討を行うものとする」と、こういった規定が盛り込まれるに至っております。この時点での議論の背景といたしましては、国民年金、いわゆる1号の被保険者の部分を含む全体の一元化という問題提起が片方に強いものがございまして、そしてまた、従前からの被用者年金の一元化という課題も残っている、そういった中でのこのような検討規定でございました。
その後、国会におきましては、両院の合同の協議会を超党派で行うという大変大がかりな御議論の場も行われて、さまざまな議論が重ねられてまいりましたけれども、その上で、平成17年の秋の時点で、当時の小泉総理の方から、この一元化の問題につきましては、まずは被用者年金の一元化について処理方針の策定を急ぐよう指示したという答弁がございまして、この全体の一元化はいろいろな議論がございますけれども、従来からの懸案でございました被用者年金の一元化という部分をまず急いで行うという方針になったわけでございます。それ以降、政府、そして与党、また政府と与党の間のさまざまな協議の場、そういったものを経て、昨年の4月の閣議決定、そして12月の残された課題についての政府・与党合意、こういった流れの中で行われてきたということで御紹介させていただきました。
それでは、資料1、今回の法律案の概要に戻らせていただきます。
この「法律案の趣旨」のところに記載させていただいておりますけれども、今申し上げました歴史の中で行われてきた18年4月の閣議決定及び12月の政府・与党合意、これに基づきまして行う。具体的には、制度の安定性・公平性を確保し、公的年金全体に対する信頼を高めるためにということで、共済年金制度を厚生年金に合わせる方向を基本とする。これによりまして、民間被用者、公務員及び私学教職員を通じて、同一保険料、同一給付を実現する。先ほどの閣議決定の流れにもございましたように、要は、公的年金につきまして、やはり同じ報酬であれば、同じ保険料、同じ給付という制度の整理をきちんとしていくということによって、公平性を確保し、信頼を高めるというところが今回の法律案の趣旨の一番重要な部分と考えております。
具体的な法律案の構成でございますけれども、2の(1)の(1)、これは制度体系の整理でございます。冒頭でも少し述べましたけれども、被用者年金の大宗を占める厚生年金に公務員及び私学教職員も加入する。具体の法律上の整理といたしましては、現行の厚生年金保険法では、公務員、私学教職員について適用除外という規定がございます。基本は、適用事業所に使用される者は厚生年金保険の被保険者とすると書いてございますが、これらのグループ、共済組合については適用除外となっております。その適用除外規定を削除するということによりまして、法律的にはそれらの方々も皆、厚生年金保険制度の適用を受けるということになります。勿論、パラレルな形で各共済法の方の年金に関する規定の削除を行っておるところでございます。
(2)の関係が、今度は制度的な差異というものにつきまして、基本的に厚生年金ですべて解消するというものでございます。制度を厚生年金一本に入っていただきますので、当然ながら、それまでの制度的差異というものはなくすことになりますけれども、その際に、どちらの形に合わせるかということについて、基本的には厚生年金の従来からのルールに合わせるとか、一部例外がございますけれども、そういった形でそろえようとしておるわけでございまして、1ぺージの一番下にございますように、過去も御報告をさせていただきましたが、共済年金にだけございました遺族年金の転給制度は廃止。また、地方共済法の方にございました地方公共団体の長の加算特例。3期12年務めると加算がつく、こういったような特例は廃止するということにしております。
おめくりいただきまして、2ぺージでございますけれども、いろいろな制度的差異がございますが、直接受給する年金の額を算定する重要な事項としまして、在職中の賃金との調整で支給減額・停止をしていく、この仕組みがございます。老齢年金及び障害年金につきまして、これを厚生年金のこれまでの取り扱いに統一という整理としております。年金額と賃金の合計額が一定額を超える場合に減額していくということでございますけれども、現行の取り扱いの中で、特に顕著に違っております部分の1つが、公務員OBなどの方々が60歳代前半、民間企業に在職中という場合につきまして、現行では支給停止調整額が月額48万円になっております。しかし一方、厚生年金におきましては、60代前半の在職の支給停止調整額が28万円という、より厳しい停止方法になっています。これを28万円にそろえるということでございます。この点につきましては、言葉でだけ申しましてもあれですので、恐縮ですが、参考資料2の28ぺージを御覧いただきたいと存じます。図示させていただいておりますけれども、これは横軸が賃金、縦軸が賃金プラス年金の合計額でございまして、年金月額10万円の方の場合の例で示してございます。
現状では、60代前半の公務員OBなどが企業に勤めた場合には、赤線で調整しております賃金38万円以上になったときに48万円を超えるということで、超えた分の半分を止めていくという赤線でございますけれども、これを施行後は緑色の今の厚生年金のルールであります合計で28万円を超えたら停止を開始していくという方式に改めるものでございます。
この結果、この10万円の年金額の方の例で御覧いただきますと、例えば賃金38万円のところで、結果としてこれは年金が10万円全額支給停止になるという形になりまして、現状では賃金と年金を合わせて48万円受け取っておられる方が、10万円カットになるということになります。
横長の薄い方の2ぺージ目にお戻りいただきたいと思いますが、今申しました厳しいルールの方にそろえるということにつきまして、従来このような厳しい改正を行います際には、既裁定、既に年金受給権が発生していて従来ルールでもらっている方については触れないというのが慣行でございましたけれども、今回は官民格差の早期是正という政策要請を踏まえまして、2ぺージの上にある※でございますが、施行時に既に年金を受給している60歳代前半の公務員OB等についても、財産権ということで一定の配慮措置は講じますけれども、この新しい厳しいルールを適用するということとしております。
この制度につきましては、既裁定といいましても、施行時点で60歳の方が65歳に達すればなくなりますので、平成27年の前までの時限的な配慮措置ということにはなるわけでございますけれども、その具体的な内容は(注)に書かせていただいておりますが、先ほどの折れ線グラフで言いますと、例えば賃金38万円の方が年金額と賃金の合計額48万円のうち10万円というカットは2割を超えるカットになりますけれども、それは激変ということになりますので、合計額の10%を減額上限とする。また、このグラフの中に絵をはめてみますと、実はそういった10%配慮措置は賃金が低い方の方には届かないという問題がありましたので、配慮措置の対象をそういった方にも広げ、10%配慮措置の対象とならない総収入を下回る減額はしないこととしました。結果的に、これは月額35万円ラインになっておりますけれども、そういった配慮措置を含めてございます。
その次の※でございますが、これはある意味類似の話でございますが、平成16年改正により、今年の4月1日に施行されておりますが、70歳以上の厚生年金あるいは共済年金の受給者の方で、民間企業に70歳以上の時点でなお就職をしておられるという場合につきまして、これを従来はなかった賃金との調整を導入しております。これは、48万円を超える場合に調整する。仕組みでありますけれども、16年改正の際には、19年4月、新制度を施行する時点で既に70歳以上で、賃金と合わせて年金の全額を受け取っておられる方々は既裁定ということで、新しいルールを適用しないという経過措置を講じていたところでございますけれども、先ほど申し上げました上の方の※の新しい整理との均衡を考慮いたしまして、この方々についても一定の10%を超えないという配慮措置は講じるわけでございますけれども、この後輩の方々に適用されている厳しいルールを適用することにするという旨を法案に盛り込んでおります。
その次のポツ、これは共済各法の中で、実は厚生年金保険法よりも現状やや厳しいルールでございまして、国会議員、地方議会議員の歳費など、これはいわゆる給与そのものではございませんので、共済年金にも厚生年金にもこれらの方々はその資格では入っていないということになっておりますけれども、税法上は見なし給与所得という扱いをしているということを踏まえて、共済各法ではそこを賃金と捉えて在職支給停止をしております。今回統一するに際しまして、この点については厳しい方の共済のルールに合わせるということで、民間の厚生年金の老齢年金を受給しておられる国会議員、地方議会議員の方々につきまして、歳費等との調整を開始するという内容を盛り込んでいるところでございます。
最後の項目のポツにつきましては、これはいわゆる制度の谷間に落ちていたような部分につきまして、結果的に救済することになる措置を講じるということでございます。加給年金、あるいは中高齢寡婦加算、老齢年金を受給権発生時において、配偶者あるいは小さな子どもさんを養育しておられる、そういった場合に付与される加給年金ですとか遺族年金の中高齢寡婦加算、こういった加算的な部分につきましては、従来は分かれております被用者年金制度それぞれ20年以上やったときに初めてつくとなっておりましたけれども、それは今回、制度を一本化いたしますので、通算して20年以上あれば加算されるというふうに谷間の問題をなくすという改正でございます。
以上が支給要件の関係でございますけれども、次の(3)が年金給付の財源であります保険料、あるいはストックであります積立金、この関係の整理でございます。
まず1点目が1・2階の保険料の方でございますけれども、共済年金の1・2階部分の保険料を引き上げて、厚生年金の保険料率に統一する。2ぺージの一番下に2行書いてございますが、これも厚い資料の方の40ぺージを御覧いただけますでしょうか。このあたりは昨年の4の閣議決定で決定された事項でございますので時間がたっておりますが、改めて確認のために御覧いただきたいと思います。この厚生年金の保険料と、公務員共済、41ぺージが私学共済でございますけれども、この保険料を合わせていくというものでございます。40ぺージの表で御覧いただきますと、黄色の線が厚生年金の保険料率でございます。厚生年金は、この保険料率で1・2階の給付を賄っておるわけでございます。
一方、緑の濃い線、これが地方公務員共済の階段で、平成21年には国共済の点線の緑で書いてございます料率もそれにそろえるというのが16年に決まっております。それで、22年以降については、緑の料率が公務員共済グループの一本化保険料率として書いてありますけれども、この緑の保険料率で、共済組合としては1階から3階までの給付をずっと見ていこうという計画でおったわけでございます。そうしますと、その内訳として、1・2階部分に充当予定である保険料率はどうなるのかということになりますけれども、そこにつきまして、年金数理部会で一定の前提を提示して、各共済組合側に計算していただきましたものが青い折れ線でございまして、これが公務員共済の現行の1・2階保険料率でございます。平成22年のところを御覧いただきますと、14.1%ということで、厚生年金よりかなり低い数字でございまして、共済年金が仮に厚生年金の一元化をしない、分かれたままでいきました場合には、この青い実線の濃い線の保険料率でずっとやっていって、100年程度、1・2階保険料としてはこの範囲で安定的に賄っていける、こういう財政試算になっておったものでございます。
しかしながら、今回、厚生年金に入っていただいて、みんな1・2階の保険料率をそろえることにするということで、さまざまな選択肢の検討・議論を経まして、この結論として閣議決定されましたのは、青い線でいっていたものを、平成22年から厚生年金保険料率への統一を開始する。その開始初年度において、14.1%を上の15.508%にまず一旦引き上げて、その後は、厚生年金と同じ引上げ幅、0.354ずつ上がっていき、結果的に厚生年金よりは1年遅れますけれども、平成30年には18.3という厚生年金と同じ料率まで引き上げていく、こういった改正にしようということになったものでございます。
この考え方といたしましては、他方で後述いたしますけれども、公務員共済、私学共済のいわゆる3階職域部分の年金につきまして、従来、賦課方式で公的年金として運営されておりましたけれども、公的年金としての職域部分を廃止するということを片方で決めておりますので、緑と青の隙間の部分につきましては、公的年金の保険料率として今後上昇することはいけない、先輩の3階部分を賄うために後輩のフローの保険料を取っていくことはいけないという整理になりましたので、この部分の緑と青の隙間というものはもうそちらに振り向けてはいけない。しかしながら、もともと共済年金としては労使合計で公的年金としてはそういった緑の線の拠出を予定していたではないかという考え方から、この切り替え時点におきまして、そういった従来3階までに充てようとしていたものをすべて1・2階に充てるという整理に切り替えていただいて上げていく、こういうことに一応なりました。
私学共済につきましては、41ぺージ、足元が厚生年金よりかなり低いラインでありますので、結果といたしまして、18.3%になる年次が平成39年でございますけれども、こういった考え方に基づいて、統一的なルールのもとに18.3%にそろえていく、こういうような整理になったところでございます。
以上が保険料、フローの関係でございますけれども、今度はストックの関係、積立金でございます。資料1の方で言いますと、3ぺージの上に書かせていただいておりますが、共済組合等が保有している部分については、厚生年金保険の積立金の水準に見合った額を仕分けて共通財源に供することとする。具体的には、※にございますように、保険料で賄われる1・2階の支出に対して何年分の積立金を保有しているか。いわゆる「積立比率」という術語で呼んでおりますけれども、それにより仕分けるというものでございます。この点につきましては、前回12月の年金部会でも御質問いただいて説明させていただいたところでございますけれども、念のため、厚い資料の44ぺージを御覧いただきたいと存じます。
今の論理で整理をするということは、具体的にはどのようなイメージかというものでございます。44ぺージの縦の図の上の方に書いてあるのが今口頭で申し上げたことでございますけれども、具体に当てはめますと、下のイメージというような図になります。この係数自体は、ここの(注)に書いてございますように、18年度末の見込み数値に基づいた機械的な計算でございまして、法律案では、施行時期を22年4月としておりますので、21年度末積立金と22年度の支出に基づいて仕分けるということにしておりますが、年数とか金額につきましては、実際の施行時には違うことになるということを申し上げておきたいと思いますけれども、考え方の大枠はこのとおりということでイメージとして表示してございます。厚生年金が18年度末見込み数値としては、いわゆる厚生年金基金の代行部分を含めた厚生年金の積立金、時価ベースでありますが、161兆円、これを厚生年金の保険料で賄う1・2階の当該年度の支出の総額で割りますと5.5年分ということになりますので、同じ分は切り分けていただこうということでございます。公務員共済も私学共済も、それそれ1・2階部分の保険料で賄うべき支出の額というのがありますので、それに5.5年を掛けた金額、結果的に公務員共済では26兆円、私学共済では1.6兆円というのがこの見込み数値ベースでの係数になりますけれども、それを共通財源に仕分けるというものでございます。
その上の方に共通財源以外の積立金ということで書いております。これが共通財源に拠出するものではなく、それぞれの公務員共済の従来から所有しているその額のうち、拠出するもの以外の残りということになります。この部分の使途につきましては、昨年の4月の閣議決定の中で規定されております。時間の関係で一々文言をおめくりいただいての説明は省略いたしますけれども、用途といたしまして閣議決定されておりますものは、簡単に申しますと、まず1つは、3階部分につきまして過去期間の債務を支払う分ということでございます。既裁定になっておりますものについては全額、未裁定の過去期間につきましては、最終的に新3階年金をどうするかということで見えた時点で整理をしていくということで、若干減額の可能性もあるということになっておりますけれども、そういった過去債務の分の支払いに充てるというのをまず書いてございます。その上で、残額がある場合につきましては、1つには、先ほど御覧いただきました1・2階の保険料率を青い線から緑の線に上げていくという、その負担の激変を緩和するために充てることも考えてよろしいということになっておりますし、また更に、新3階年金を創設する場合の原資として活用することもあるというふうに整理をされているものでございます。
以上が積立金の仕分けの関係でございます。
横長の薄い紙の3ページでございますけれども、(4)に移っていただきます。事務組織等についてでございますけれども、効率的な事務処理を行う観点から、共済組合や私学事業団を活用する。また、制度全体の給付負担状況は、国の会計に取りまとめて計上するというものでございます。
1つ目のポツにございますけれども、年金の事務処理、事務組織の仕事として極めて大事なものとして、まず被保険者の記録管理というものがございます。その前提として、標準報酬を決定・改定して保険料を徴収した、その納付記録を管理しておいて、保険給付の裁定等につなげていく。その途中で、積立金についても適切に管理・運用して原資としていく。こういった一連の事務がございますけれども、そこにつきまして、どのように扱うかということで、いろいろと検討した結果、共済組合におきましては、引き続き医療保険の事業、あるいは福祉の事業というものは継続していくことになっておりまして、そういった事業の方でも、こういった標準報酬の決定・改定、保険料徴収と記録管理といった一連の事務をどのみち継続して行う必要があるということで、仮にそういった共済組合等から厚生年金の事務を取り外して、もともとの厚生年金の事務機関のほうに一本化をしたとしましても、共済組合側の事務量は減らない。つまり、トータルとして見た事務量はそれほど減らないということで、ある一方でそういった移行を行うということになりますと、過去のデータの移換等々でシステム開発等の相当なコストもかかるというような分析でございまして、そういったむだなことをするのはやめて、効率的な事務処理を行う観点から、これらの既存の事務主体を引き続き活用するという結論といたしております。
一方で、2つ目のポツでございますけれども、制度全体の給付と負担の状況を取りまとめて、透明性をもって国民に開示するということでございます。
そのお金の流れ、3つ目のポツでございますけれども、それぞれの担当しております被保険者グループから厚生年金保険料を徴収してくる。そしてまた、積立金も分散管理をするということで、切り分けた1・2階につきまして、それぞれの実施機関で管理・運用いたしますけれども、それらに応じて共通勘定である厚生年金勘定に拠出金を納付して費用を分担する。また、給付につきましては、この勘定から交付金として交付するということにしています。これも、流れ図で49ぺージを御覧いただきたいと思います。
49ぺージの模式図でございますけれども、この図で御覧いただきますと、右端にございますが、今後、今回の法律案の中では4つの実施機関が発生するということで、従来の厚生年金グループにつきましては、厚生労働大臣が実施機関に当たりまして、具体的なさまざまな事務は日本年金機構において行うということになっております。
一方、今の国共済組合員、地共済組合員、私学共済組合員につきましては、それぞれの共済組合等が実施機関となります。したがって、どの実施機関で事務処理を行う厚生年金被保険者であるかというのを法律上区別する必要があることから、法律の条文の中でそれぞれ第2号がこういう人、第3号がこういう人ということで規定してあるので、その法律上の略称を右側に書いてございますけれども、そういったそれぞれのグループから厚生年金保険料を徴収する。そして、それを一定のルールで按分して拠出していくということになります。基礎年金の1階部分の拠出金につきましては、今回ルール変更を行う必要性が全くないことから、従来どおりで基礎年金勘定に拠出するということにしております。
被用者年金の厚生年金勘定に対する拠出につきましては、技術的な詳細は時間の関係で省きますけれども、右下にいろいろ書いてございますが、要は、集めてきたフローである保険料、そして、そのストックとして管理・運用している積立金、この多寡に応じて按分するというのが基本でございます。ただ、いきなりそうしますと、従来と比べて激変になってしまうということから、一定期間の激変緩和措置を入れているところでございます。
以上が全体のお金の流れでございます。
薄い方の3ぺージに戻らせていただきまして、以上の流れで今後整理していく制度の財政運営につきましては、4つ目のポツで制度全体を通じた財政検証を定期的に実施してまいります。また、次のポツでございますけれども、複数の機関、それぞれ所管大臣が違うわけでございますけれども、そこを全体を束ねていくということで、厚生労働大臣が所管大臣を経由して報告を求めるほか、各所管大臣に対して命令、あるいは監査の実施を求めることができるといった規定の整備もしております。
残る2つは、分散管理をする積立金についてでございますけれども、運用の基本的な趣旨につきましては統一をしたものでやっていくということで、厚生労働大臣が案を作成して、各大臣と協力の上、策定いたします。また、その運用状況については公表していく。また、基本指針に照らしてどうなのかといった評価を行っていくわけでありますけれども、それについては5年ごとの財政検証ではなく、毎年度きちんと整理して公表していくということにしております。
次の4ぺージでございますけれども、職域部分は廃止ということでございます。その際、今後どうするかということにつきましては、4月の閣議決定におきまして、廃止以降について新しい3階の年金を設けるということが規定されておりますけれども、最終的に、これは後ほど御説明できればと存じますが、参考資料1にいろいろ政府・与党で決めた文章がございますが、今年の3月20日、参考資料1の9ぺージ目でございますけれども、新3階年金につきまてしは、これは今回の法案には盛り込まずに、平成19年中に検討を行い、結果に基づいて別に法律で創設し、職域の廃止と同時に実施するという趣旨を附則に盛り込むという方針が決められて、これを条文に盛り込んでいるところでございます。
次の(6)は追加費用削減のお話でございます。ここにつきましては、恩給期間に係る給付について27%引き下げるとともに、一定の配慮措置を講じているところでございます。
この内容につきまてしは、昨年12月27日の年金部会におきまして御質問を受けて詳述させていただきましたので、今回は省略させていただきます。
最後の5ぺージでございますけれども、その他の欄で、パート労働者の厚生年金受給額、これにつきましては後ほど少し補足をさせていただきますけれども、それを盛り込んでいるということでございます。
企業年金に係る規定の整備、これにつきましては、基本的には用語の整理というものでございます。施行時期でございますけれども、全体の一元化の実施時期は平成22年4月を原則とするということで規定しております。ただし、システム開発等で準備の期間を相当要するものにつきまして、平成23年4月1日からの1年と更にお時間をいただくということにしております。また、後ほど申しますパート労働者の部分につきましては、23年9月からの実施としております。一方、追加費用及び文官恩給の減額につきましては、平成20年4月1日からの実施としてございます。
続きまして、今度は資料2。今、後述とさせていただきましたパート労働者の適用拡大の部分を抜き刷りしたもので御説明させていただきたいと存じます。
パート労働者に対する厚生年金適用の拡大につきましては、昨年12月27日の年金部会で立ち上げて以降、度重なるワーキンググループのヒアリング等を組ませていただきまして、3月6日に、そのワーキンググループの報告書をこの場で年金部会に御報告をさせていただいたというところでございます。その後の議論の御報告等をさせていただきます。
恐縮でございますが、分厚い方の参考資料3の14ページを御覧いただきます。年金部会の3月6日のワーキンググループで報告をさせていただいた際に、この見取り図の中で、今後どのようなところに調整していくか、横に賃金の基準ですとか、縦に勤務時間の基準を設けているものでございますけれども、例えば何ら条件を設けずに、1時間でも就労している方を含めて適用となります右端にある900万人と、相当な金額の事業主負担増になるというところから、一方で、厚生年金の正社員として現在適用されている方々の賃金の標準報酬の額である9万8,000円以上とし、1年以上とした場合には左上にある40万人になる、こういった見取り図の中で、今後は政府が与党と政治過程で調整していくものであるというような御請求をいただいたものでございます。
これを踏まえまして、厚生労働省案、これは1月付で、一々申しませんけれども、この分厚い参考集の後ろの方につけてございますが、厚生労働省案を与党に報告をいたしたところでございます。これは、基本的には縦長、資料2の一枚紙が厚生労働省案の骨格でございますけれども、それをお示しした上で、与党で御議論いただいて、最終的に3月の下旬になりましたけれども、自民党、公明党からそれぞれのグループの確認ということで、参考資料1の4.、5.につけてあります確認事項というものになりまして、それを織り込みまして法案としたわけでございます。その織り込んだ結果が資料2の一枚紙ということで、新たな適用基準として、具体的な数値については法律で明記するということを前提とした上で、(1)労働時間は20時間以上、(2)賃金につきましては月額9万8,000円以上。なお、この際、通勤手当、残業手当等は含まない額で切り分けて判断するということ。(3)勤務期間は1年以上であること。(4)、これは厚労省案にはなかったもので与党調整で入ったものでございますが、学生は適用対象外とする。具体的な範囲としましては、現在の国民年金の学生納付特例の対象者であります※で書いてあるような方々を規定することを想定しております。また、最後の(5)が中小零細事業所への配慮ということで、従業員が300人以下のところには新たな基準の適用を猶予すると。猶予期間は、別に法律で定める日までという規定になっております。この基準を当てはめた場合に、新たに適用対象となる人数につきましては、約10万~20万人程度というふうに現時点のデータでは推計をしているところでございます。
その下の※は、現在、4分の3以上の基準で既に適用対象とされている方は引き続き現行の基準によることとしております。
健康保険・介護保険につきましても、上記と同様の整理で適用することとしております。この部分の施行時期につきましては、23年9月と先ほど申しましたが、何といっても制度の集中していること、また、企業においても適切な対応をしていくための準備期間が相当必要であるということ、また、行政実務につきまして、現在、別途、今回提出しております社会保険庁改革法案の中で、日本年金機構という新しい組織を平成22年1月予定で発足させていこうということにしておりますので、その新しい期間がきちんと準備を整える時間、そういった観点から23年9月からの施行としているところでございます。
以上、大変多岐にわたる内容を駆け足で恐縮でございましたけれども、今回の法律案の概要の御説明とさせていただきます。どうもありがとうございました。
○稲上部会長
どうもありがとうございました。大変盛りだくさんの内容でございますが、委員の皆様から御質問、あるいは御意見を伺いたいと思います。どうぞどなたからでもお願いいたします。
○小島委員
今御説明いただきました被用者年金の一元化とパート労働者の適用拡大についてですけれども、2つほど意見と質問、あるいは要望も踏まえて発言したいと思います。
被用者年金の一元化について、説明を伺いましたけれども、この問題については従来から何度もこの年金部会の中でも発言をしてきました。従来、厚生年金と各共済年金の統合、一元化という議論をしてきたときには、関係者による一元化懇談会といったような協議の場を持って、そこでの合意に基づいて統合なり一元化を進めてきたという経緯があります。今回、法律ができるまでの間、そういう協議の場が全く持たれなかったということについては極めて問題があると思っております。そういうこともあるので、どうも厚生年金の積立金と各共済グループの積立金を共通財源とするということがいまいちよく理解できないというところがある。それは、特に民間厚生年金グループにおいて、そのことが十分に説明されていなかったということがある。幾つか新聞等でも、その辺が不透明ではないかといった記事も出ている。関係者の協議の場がなかったということが、経緯あるいは財政のあり方について余り公表されていなかったということだと思います。それについては問題があると言っておきたいと思います。
それから、これは質問というか、要望になります。今回の法案では、1・2階の保険料については共通財源にする、積立金についても5.5年分、1・2階に相当するところについては、これは厚生年金、共済グループの共通財源にするということになっております。そうなった場合に、共通財源になった場合の中長期的な財政見通しというのがまだ示されていない。厚生年金の財政見通し、あるいは各共済は各共済の方の財政見通しというのがありますけれども、それが一元化された場合はどうなるかということが示されていない。これは早急に現行の制度を前提にして、一元化された場合にその財政見通しはどうなるのか。とりあえず統合時は積立金が5.5年分ということでありますが、それと保険料が共済グループの方が平成22年に1.4%ほど一気に引き上げるという予定になっています。そういうことを含めた共通財源としての積立金、保険料の見通し、あるいは給付がどうなるのかということについて、早急に示す必要があるだろうと思います。そこは要望として出しておきたいと思います。そういうものを示した上で合意を得るのが本来の姿だと思いますので、そこはぜひお願いをしたいところであります。
それからもう1つ、パートの問題、これも前回も発言をしましたけれども、ワーキンググループの皆さんが10回にわたって熱心な討議をいただいて、せっかくまとめていただいた報告が実質的に生かされていないというふうに私は判断します。そして、ワーキンググループが出された報告書にも書いていなかったことが、政府・与党の合意の中では300人以下のところは当面除外するといったような規定まで盛り込まれてしまっている。極めて問題があると思います。現安倍政権が再チャレンジ政策の大きな柱として位置づけていたパート労働者に対する厚生年金の適用拡大がこの程度のものかという思いです。最終的に国会論議を通じてどうなるかというのはまだわかりませんけれども、極めて問題があるということの指摘、意見は述べておきたいと思います。
○稲上部会長
年金課長、何かコメントございますか。
○高倉年金課長
ありがとうございます。それでは、私の方から1点目の手続き・プロセスの御指摘につきまして、今回の経緯について少し御説明させていただきたいと存じます。
今回の被用者年金制度の一元化につきましては、当然ながら、厚生年金だけの改正ではなくて、共済など、それぞれ歴史を持った制度を横断した検討が必要であるというのが1点。
また2点目としては、旧JR共済などの統合時とは異なりまして、各制度が分立したままでの持続可能な状況にあって、その意味では当事者に切迫した動機は乏しいという中で、しかし、一元化を達成していくという必要があるということ。
3つ目には、先ほども冒頭、少し背景を申しましたが、16年改正のときを契機に、国会におきましても年金一元化に関する議論が非常に高まっていた中でやったということ。
そういった状況を受けまして、各制度の関係当事者によるそういった一元化懇談会といったスタイルでの協議を待つのではなくて、与党の主導によって精力的に検討と調整が進められてきたということが今回の特徴でございます。
また、政府部内におきましても、各省庁にまたがる課題でございますことから、内閣官房を中心に厚生労働省と共済所管各省で共同して検討作業を行って、政府全体としてまとめてきたという経緯がございます。また、与党主導の検討過程におきまして、各共済年金制度の労使関係団体からのヒアリングを実施するといった幅広い意見聴取に努めてこられてこられたところでございますし、また、その場に政府としても、内閣官房を中心として与党の意見聴取に参加するということもさせていただきしたし、また、政府自体での関係団体の実務者との意見交換会なども昨年の夏行わせていただいた。いろいろなことを可能な範囲でやらせていただいてまいりました。また、そういった与党主導、内閣官房中心の経緯ではございますけれども、厚生労働省といたしましても、厚生年金に深く関わるこの年金部会の場でも、昨年第1回におきまして、閣議決定、与党合意等についての報告をし、御意見を伺わせていただくなど、できる限り努めさせてはいただいたというところでございます。結果的に従前の方式とは異なる進め方となってしまったわけでございますけれども、今申し上げましたような経緯が背景にあるということで御理解いただければと考えております。
私の方からは以上でございます。
○山崎数理課長
数理課長でございます。2つございました一元化に伴う年金財政の将来の見通しということに関しまして、私どもはただいま共済各省と協力いたしまして、昨年の暮れに出ました新しい人口推計を踏まえたものというのがやはり今後御議論に当たって必要であろうということで、そういうベースでのものをお示しすべく鋭意作業を進めているところでございます。できるだけ早く作業を取りまとめまして、お示しできるようにしたいというふうに考えているところでございます。
○小島委員
そのめどは。
○山崎数理課長
これは共済各省それぞれとデータをやりとりしつつ確認をしながらの作業でございまして、作業のめどのほうははっきり今ここで申し上げる状況でなくて恐縮でございますが、できるだけ早く進めたいということで準備しているところでございます。
○江口委員
幾つか質問があるのでございますけれども、一元化というのは政府全体の方針ということで、それはそれでやむを得ないと思うのですが、今後のために少し論点を明確にしておきたいのです。1つは、厚生年金というのは昭和17年に労働者年金保険としてできておりまして、更に申し上げれば、戦後、昭和20年代から30年代にかけて、例えば私学共済とか、農林事業団体共済が厚生年金から分離した歴史があります。それが近年、一元化の方向に大きく舵を切った。それはそれで1つの政策判断だと思うのですが、かつては制度がばらばらだったわけでして、そうすると、保険料というのも各制度によってばらばらだったわけです。当然、高い保険料を払っていたところもあれば、低い保険料を払っていたところもある。それを今後、厚生年金に全部保険料を合わせていくと。これは1つの政策判断なわけですが、そのときに、一本化という方法をとった場合に、言ってみれば、過去の損得、つまり高い保険料を長い間払ってきたところと、低い保険料を払ってきたところも全部同じにしますと、こういう議論になるわけです。
もう少し厳密に言うと、さっき言いましたように、例えば私学共済は、昭和三十何年頃からスタートしているので、給付もそのときの分からしかないと思うんです。一番古いのは国家公務員とかの恩給ですね。厚生年金は昭和17年ですから、例えば厚生年金の受給者で、20歳で厚生年金に入った人というのは今85歳ぐらいのはずです。そうやって考えたときに、例えば積立金の移換を今の積立比率でやってしまうということが本当に厳密に公平なのか。つまり、一元化というのは大変に美しいのですが、過去の履歴を考えたときに、それが本当に公平なのかという疑問が第1点です。
更に、公平ということで考えると、例えば公務員の職員年金を廃止するというのも1つの政策判断ですが、それについて民間とのバランスで言えば、3階部分を公務員になぜ設けないのかということは1つの論点になるというのが2番目です。
それから、3番目ですが、今日の御説明で、資料1の2ぺージ目ですが、これは施行時の在老といいますか、既裁定年金について、公務員について10%を下限に減額をするということです。前回たしか27%の適用については労使の保険料負担のバランスを考えてという御説明があったと思うのですが、これはそういった考えもなく、とにかく既にもらっている人は10%を上限にカットします、35万円を下限にカットしますということですよね。つまり、一元化という大義のもとで、例えばこういう方々の既得権といいますか、受給権保護というのがどういう考え方で整理をされているのかということが3番目です。
つまり選択肢として、実は一元化にもいろいろなやり方があって、制度を一本化するというやり方もあれば、財政調整をするというやり方もある。多分、今回は制度を一本化するというやり方をしたがためにこういうような形になったのではないかと思うのですが、そのことによって、今申し上げたように、過去を踏まえた本当の公平というのは図られているのかとか、それから、例えば受給権保護も財産権と考えれば大事な観点で、そこについてどういう考え方でこういうカットをされているのかとか、他方、公務員について職域年金を廃止して、今後の課題ではあるにしても、3階部分は明確に示されていないといった問題が生じているのではないかと思うのです。
ちなみに、国家公務員共済の場合には、厚年よりも保険料については過去高かったはずです。そうすると、高い保険料率を払っていて、職域年金も少なくなって、3階はどうなるかわからないということが本当に公平なのかとか、幾つか素朴な一元化についての疑問を感じましたので、お答えがあれば教えていただきたいということです。
○高倉年金課長
ありがとうございます。今の3点につきましてお答えをさせていただきたいと思います。
まず、1点目の過去のいろいろな履歴、保険開始時期ですとか、あるいは保険料率の制度間での高い低いですとか、そういったことがある中での今回の整理というものが公平なのかということでございますけれども、一言で言えば公平であるということでございますけれども、その参考としまして、まず、恐れ入りますが、参考資料1の1ぺージ目、4月の閣議決定をお開きいただきたいと存じます。これを横に置いておいて申し上げさせていただきますけれども、今、江口委員、御指摘のとおり、保険料率につきましては、過去、共済年金の方が高い時期がございました。しかし、一方である時点からは厚生年金の方が高いというように変わってきたりしておりまして、過去の部分についての評価をどのように行うかというのは技術的にも大変難しい問題ではございます。そういったそれぞれ歴史を背負っている制度を、しかし、今後の大きな政策判断として、1ぺージの閣議決定の上にございますように、今後の制度の成熟化や少子・高齢化の一層の進展などに備えていくという考え方で、予防的に一元化をしていくということをどうしようかという議論をして、政府そして与党で大変な議論があったわけでございますけれども、与党主導の議論の中で、4行目に書いてございますが、将来に向けて、同一報酬、同一保険料、同一給付という公平性を確保することにより、全体に対する信頼を高めるためにやろうと、こういうような整理が行われたわけでございます。
したがって、基本的には、今回の被用者年金の一元化というのは、これから将来に向かって一本化、一元化をしていくという考え方に立っておるということでございまして、途中で御説明させていただきましたように、保険料率につきましても、しばらくの間はまだ差が残っております。これは経過措置ということで差が残っておりますけれども、それぞれの時点において明確に厚生年金の保険料率とぴったりそろえるということで統一していくことを明示する。それが将来に向けての公平性の確保ということで、国民の信頼を高める上で必要であるという政策判断を行って、将来志向でやったということでございます。
その場合において、積立金の部分、これはまさに過去の蓄積でございますので、どのように整理するかということについて、いろいろな角度からの考え方もあろうかと思いますけれども、そういった将来に向けての公平を図っていく一元化ということを前提にして議論して検討した中で、過去は積立方式的な形でそれぞれ発足しつつ、段階的に財政運営が移行してきて、今日では賦課方式を基本とする財政運営という姿にそれぞれほぼなってきている。そういうときに、これから将来に向かっての一元化を整理する場合においては、現時点でそこにきているところの賦課方式を基本とする財政運営をしているという現実を踏まえて考えてみようと。そうすると、今年の保険料で賄うべき給付1・2階分の総額に対して何年分を保有しているかという賦課方式的な発想で評価する、積立比率方式で年数をそろえて拠出し合うということが我々としては一番公平であるという結論に至りまして、政府・与党の合意としてそういった整理が公平であるという判断をしたということでございます。それが1点目でございます。
2点目として、3階部分の御指摘がございました。なぜ今回の法案で設けないのかという部分ですが、これは参考資料1の9ぺージを御覧いただきたいと存じます。この右肩に「被用者年金一元化等に関する役員会」とございますが、これは自由民主党の関係部会の役員会でございますけれども、そこの整理で、公明党においても同じ内容の整理をされておりますけれども、まず1つ目の丸で、頭の整理でありますが、今回の一元化法案は、公的年金である1・2階の一元化及びこれまで公的年金としてあった職域部分の廃止のための法案であるということでございます。新2階年金につきましては、各共済において別に法律で定めるもので、公的年金ではないものとして別に法律で定めるものであるというふうな区分けをした。その上で、この一元化法案については、準備期間、あるいは追加費用の減額の20年度実施、こういったことを勘案すれば、本通常国会での提出が必要であるということで、現に4月13日に提出させていただいた。
他方、次の丸でございますが、新3階年金については、22年度の職域部分廃止と同時に実施するものである。準備期間を考えれば、本年中には成案を得て、来年20年の通常国会に法案を提出する必要があることから、一層の精力的な検討に努めることが望まれるという整理でございます。
その上で、ただ、それだけで何も明確に規定しないといけないという声が強くて、なおということで、一元化法案の附則におきまして、新3階年金については、19年中に検討を加えることとし、結果に基づいて別に法律で創設して、職域部分の廃止と同時に実施するという趣旨を規定することが必要と。このような整理がなされて、先ほど申しました今回の法律案の附則にその旨を明記したということでございます。
したがいまして、今回の公的年金の1・2階に純化して公的年金として一本化していくという一元化法案には新3階部分はまだ入っておりませんけれども、その附則におきまして、本年中に検討し、来年の通常国会に提出するという前提、つまり職域の廃止というのを実施する際には、新3階年金という新しいものを実施するということを明記した形で法律案を出しているということでございまして、設けないということではなくて、設けるということでございます。その方向での検討をするということでございます。内容については、その検討の結果を待たなければならないわけでございますけれども、方針はそういうふうに示されております。
最後に、3点目でございます。今回の概要版の2ぺージ目で、60代前半、あるいは70歳以上の方のあたりの既裁定の方についても、新しいルールを適用する際の配慮措置として10%と決めた。この部分が追加費用の部分での27%減額という数字と、そこ自体を見るとちょっと違うわけですが、そのあたりの関係がどうかということを含めての既裁定年金に対する考え方の御質問と存じます。
まず、先ほど説明をちょっと省略させていただきました4ページの「追加費用削減のため、~」という部分をもう一度御覧いただきたいと存じます。4ぺージ、横長でございますけれども、これは27%引き下げると。この引き下げる理由として、ポツの下の矢印で書いてございますが、税財源である恩給期間に係る給付については、本人の負担の差に着目してと。これは恩給自体が恩給納金が2%であった。共済に切り替えた後は労使合計8.8%、本人負担4.4%である。その差に着目した27%減額でございますけれども、ただしということで、配慮措置の部分につきましては、そういった既裁定の方の財産権であります年金額でありますので、その給付額に対する引下げ額の割合が10%を上回らないことにするという整理にしたわけでございます。
また一方、全体金額基準を設けております。250万円としておりますが、給付削減率については、恩給期間部分については27%引き下げるけれども、恩給期間部分以外に、社会保険期間になった後の共済年金の給付も合わせて受給している方も多うございまして、そういった方について、全体の年金額を捉えて10%を上限にする。
参考資料2の分厚いものの63ぺージを御覧いただきたいと思いますが、「追加費用の減額について」という一枚紙でございます。基本的考え方として、上に図示した恩給期間について27%、本人負担差着目で減額するという図がございます。ただ、下の括弧で括りました図の中にありますように、恩給期間の長短によって、結果的にどれだけ減額するかが変わってくる。より前に就職して恩給期間が長い、この図のようなイメージの方の場合には、左側の部分の27%カットというのは、全体の共済期間を込みにした年金総額に占めるカット割合も、27%にはならないにしても、かなり大きな割合になる。
例として、勤続35年の方で10年、25年という組み合わせであった場合には、これは27%部分が少ないため、約8%と10%以内になりますけれども、これが逆で、恩給期間が20年で共済が15年とか、そういうふうに前が長い方の場合には、実は全体額で見ても10%を上回る削減になってしまうということになるので、「配慮措置」の2に書いてございますが、(1)で給付額減額率の上限を設けるということで、全体で10%の上限を設けること。これは、考え方としては、丸に書いてございますように、受給者の生活の安定を確保し、財産権を保障する観点からということでございます。
今回の薄い紙の2ぺージ目にございます10%を上限にするというのは、追加費用の方の27%の部分のパラレルな数字ではなくて、配慮措置としての減額率上限としての10%と同じ考え方で設けられているものであるということでございます。なぜ10%までならいいのかという点については、まだこれは理論的な根拠ということにはならないわけでございますけれども、過去の農業者の年金の例等を踏まえながら、与党主導の検討過程におきまして、さまざまな後輩の方々の負担の今後の上昇等を考える中で、追加費用については、全体の10%までは我慢をしていただけないだろうかということを1つの判断として決めたということでございます。そして、今回、追加的に12月の整理に基づいて行う60前半在老関係の厳しくする部分の配慮措置につきましては、その追加費用のときの配慮措置の考え方との整合性を確保する観点から、実際に賃金と年金で暮しておられるわけですから、その合計額の10%を超える切り込みをしますと、生活の安定、財産権の保障という観点から問題が大きいのではないかということで、同じ比率である10%というところを限界にする、そういった判断をしたということでございます。
○江口委員
御説明はわかりました。1点確認ですが、基礎年金を導入する際には、昭和36年4月の皆年金以降の給付について各制度共通の負担にするということにしたわけですが、今回の一元化というのは、要は、そういった期限を設けずに、過去分の給付はすべて、極端に言えば、明治生まれの人の分についても、私学共済も遡ってみんな一緒にもちましょう、それは積立比率で整理しましょうと、こう考えてよろしいわけですね。
○高倉年金課長
そのとおりでございますが、その意味では、一番古くからの社会保険としての給付を抱えているのが厚生年金と。私学共済が昭和29年発足であったと存じますが、その後の期間分。公務員共済は国共済が昭和34年、地共済は昭和37年、それ以降の給付、これらをすべて今後は共通の1・2階財源プールからみていく、こういうふうなことでございます。
○稲上部会長
ほかにございますでしょうか。
○西沢委員 3点ほど、意見と申しますか、お願いを申し上げたいと思うんですけれども、1つは、厚生年金と共済年金の一元化についてですけれども、私は、これは早く話を終わらせたいというふうに思っています。というのも、86年改正で、それ以前はかなり不公平だったと思いますが、相当程度けりがついて、20年たってぶり返してきたわけですけれども、厚生と共済の問題よりも、むしろ私の関心というか、賦課方式の年金財政を維持していく上で、もっと考えなければいけないのは、所得の増加、あるいは少子・高齢化の中でどうするのか。そういった年金財政の与件をどうするかということと、年金制度自体をどうつくっていくかというのは、中長期のスパンのことと共に、もっと力点があると思いますし、喫緊の課題で言えば、基礎年金の国庫負担2分の1への引上げ財源、2009年度までどうするかといったこともほとんど議論されていないですね。
冷静に考えると、そういったことの方がより重要なはずで、そういった状況の中で、今、被用者年金の一元化とか、マージナルと言ってしまえば言い過ぎかもしれませんけれども、我々はそれに時間を多く割いてしまっているというような感じだと思います。
ですから、厚生・共済の一元化というのは、できればこれでもう話は終わりにしたい。
ただ、あえて2つ、厚生と共済について申し上げますと、1つは、事務組織につきまして、積算があってもいいような気がします。というのも、日本年金機構に共済の事務組織を統合したとき、確かに移行費用はかかるかもしれませんが、その移行費用と、あと統合後にランニングコストが減る分を比較検討して、どちらが高いか安いかといったことは積算されていいような気がいたします。
もう1つ、積立金の共通部分について、5.5年分というのは厚生年金並みというのが基準になっているようですけれども、これは単年度の積立金の割合で、本来、もっと長期スパンで、共済年金の2100年までのキャッシュフローを考えて、2100年までの収入のプレゼント・バリューを計算して、支出のプレゼント・バリューを計算して、当然収入のプレゼント・バリューの方が支出のプレゼント・バリューの総和より若干少ないでしょうから、その差額分の積立金が厚生年金の方に持ってこれれば、それが1つのメルクマールになるはずです。それが結果として、足元で見て5.5年分なのか、5.4年分なのか、5.6年分なのかということになるはずであって、単年度の積立度合いではなかなか比較しにくいものがある。こういった資料が出ていないというか、小島委員もおっしゃいましたけれども、何がベンチマークになるかといったことについて、もう少し今からでもやれば、多分、計算すると5.5年分を前後した数字になってくると思うんですけれども、それが1つの基準なのかなと思います。
あともう2点ありますが、2番目はパートの年金についてですけれども、今回9万8,000円になったという基準が、第3回部会から今回の間にかけて決まったものの1つだと思います。非常に適用基準が狭まったという見方もできますけれども、私は、反面ほっとしているところもあります。それは、事業主負担が減るからとか、そういった了見ではなくて、9万8,000円を下回ってしまうと基礎年金拠出金単価を当然下回ってくることになります。そうしますと、国民年金と厚生年金との制度間の公平が維持しにくくなります。これはかなり大きな問題かなと思います。国民年金に入っている人よりもよほど低い基礎年金拠出金単価で、1階のみならず、2階ももらえる。第3号がいれば、第3号の分までもらえてしまうということになります。
これは、相当時間をかけて議論すべきであって、9万8,000円を下回ってくるときに、では、基礎年金の費用負担方法が制度によって異なるといった大きな問題の解決になる。
これは抜本改革になると思います。ですから、相当程度時間をかけて議論すべき話であって、今回は9万8,000円にとどまっているというのは、もう一歩二歩踏み込んでいくための入口というか、時間的猶予が今回与られたといいますか、そういうふうに私は積極的に肯定的に捉えております。
最後に3番目に、これはお願いといいますか、パートの適用拡大の執行の問題です。
資料を拝見しますと、9万8,000円の賃金のある人は日本年金機構に申告するといったような書きぶりになっていると思いますが、これがどれぐらい適正に執行されるかというのは、前回も申し上げましたけれども、日本年金機構の方の御努力にもかかっていると思いますし、私は、これは日本年金機構だけではなくて、今回は強制徴収だけ国税庁に委託にできるというような書きぶりになっていると思いますけれども、そうではなく、適用部分に関しましても国税庁はは源泉徴収しているわけですし、あるいは市町村は住民税の特別徴収をしています。根っこの部分でいち早く所得情報を押さえているわけですから、これは活用させてもらうようなことができないかというふうに思います。1年間の給料が9万8,000円掛ける12ある人というのは、国税や市町村は日本年金機構よりも把握しやすいわけですから、そういったことも使いながら適用の公平を図ることが、さらに適用拡大していくための前提条件になれば公平になるのかなと思います。
以上です。
○高倉年金課長
では、事務局の方から順次コメントさせていただきますけれども、まず、いろいろな分析について、定性的なものだけでなくて、できるだけ定量的なものもという御指摘については、なるほどと思っておりまして、また後ほど積立金関係では数理課から申しますけれども、そういった指摘を踏まえながら、今後どこまで何ができるか検討していきたいと思っております。
また、2点目。私の方からは、9万8,000円というパート労働者の適用基準に関する西沢委員のコメントにつきまして、1点だけ、おっしゃるところはまさにそういった議論を考えまして、私どもとしては、現行の制度体系を前提とした中では、この9万8,000円という厚生年金の標準報酬の下限という金額で線を設けるということが適切であると考えておるわけでございますけれども、先ほど、用語の問題にすぎないのですが、西沢委員の方から、9万8,000円よりも低いと国民年金の基礎年金の拠出金単価を下回るという用語でおっしゃられましたけれども、基礎年金拠出金単価自体は、これは1号グループ、2号・3号グループ、みんな共通でそれを割算して決めていくというものでございます。むしろおっしゃっているような国民年金の1号の方は定額の保険料でございますので、そちらについて、まさに今、西沢委員も御指摘くださいましたけれども、そのものとの均衡があまり崩れてしまうといけないといったような観点も確かにあろうというふうに考えております。今回は、基本的には正社員と同じ働き方をしている人に拡大するという考え方から、最低のラインとしての標準報酬の下限で9万8,000円という線を提示しているというのが一番の基本でございますけれども、それを下回った場合には、併せて、今、西沢委員御指摘のような国民年金定額保険料負担との不均衡、不公平感といった問題点も生じてくるということはそのとおりだというふうに考えております。
私の方からはその2点でございます。
○山崎数理課長
積立金の仕分け、積立比率での仕分けという際に、それを評価する際のメルクマールといたしまして、各制度の将来の保険料収入を現価、プレゼント・バリューにしたものと、一方で各制度ごとの支出をプレゼント・バリュー、現価にしたもの、そこは当然差額が出るわけで、それとの対比で見ていくというのが1つのメルクマールになるのではないかという貴重な御指摘をいただきまして、私どもは今、共済各省と協力して将来の財政見通しを進めておりますが、当然、将来の見通しが出れば、それをプレゼントバリューにしてということで、そういう数値も整理することはできるということでございますので、その御指摘を踏まえまして作業の方は進めていきたいというふうに考えております。
○西沢委員
共済年金といいますと、あたかも国共済、地共済、私学共済と3つしかないような感じですけれども、個別の東京都職員共済とか、それぞれ財政状況は異なると思うんです。それを、例えば地共済であれば30か40あるんでしょうか、それを総額にしてやっていると思うのですけれども、個別のものを出して、どんな有益な情報があるかどうかはわからないですけれども、皆さんベースでは個別のものがあるかもしれませんし、それはどうなんでしょうか。総合計でやっているんでしょうか。
○高倉年金課長
今、西沢委員御指摘のとおり、地共済組合連合会の傘下には、個別の地方公務員共済がございます。たしか六十幾つになるんでしょうか、参考資料2で1ヶ所、事務組織のところに関連いたしまして御質問をいただいております。48ぺージでございますが、地方公務員共済連合会という保険者と、その下に68の共済組合がございます。ただ、実は地共済組合員法の法律ニゴウセイとしましては、これらの個別の組合は、いわば実施機関のような位置づけでございまして、年金財政の単位としては、これは実はすべて一本化された形で財政運営がされてきておりますことから、私どもとしては、全体の一元化を考えていく際には、まとまった地共済連合会で分割している全体を一本として取り扱うということが現行法制における地共済の財政の整理と制度実態をどういうふうに考えております。
○稲上部会長
ほかにございますでしょうか。
○松岡庁・医療保険課長
社会保険庁の医療保険課長でございます。
パートの適用の執行の関係については、非常に重要な課題でございまして、今回の改正で20時間以上の方という形でパートの適用拡大がされますと、これは公平に執行されるようにしていく必要があるということが重要であると考えております。この施行につきましては、23年の9月ということでございますので、現在、法案を出しております日本年金機構ができてからといった形になってまいりますので、具体的なやり方とか、そういったことは今後検討していくということになると考えておりますが、この事業を具体的に進めていくに当たりましては、事業主の方の協力が必要でございますので、パートの適用の要件とかといったことについては、しっかり事業主の方に周知し説明させていただく。
それから、301人以上の方の事業主、対象になる事業主の方からは、届出を出していただくなりして、我々のところは対象になるんだといったことを把握をして、そういったところにしっかり周知をして、日本年金機構においても調査をしていく。こういった形をとっていくといったことが必要だろうと考えております。
いずれにしても、この具体的やり方をうまく公平にできるように考えていくといったことが重要であると考えております。
○渡辺部会長代理
2点です。答弁は要りませんが、先ほど江口委員がおっしゃった点に関連して、例えば職域年金を廃止するということは、ある意味では官民格差の是正で当然だという世論が多いわけでありますが、江口委員がちょっと御指摘なさった本当に公平かといえば、幾つか公平でないという部分があると私も思います。例えば、職域年金とは一体何だというのは、私なりに過去のあれを調べてみると、昔はこれはいわば民間が持っている企業年金相当分であると。これは、調べてみると、大平内閣のときの竹下大蔵大臣が大蔵委員会で答弁なさっていますが、企業年金というのは民間では退職金のいわば振り替えである、公務員に当てはめるのはおかしいという議論があって、その後、これは公務の特性、最初は公務の特殊性という言い方をしていて、「特殊」と言うとまたおかしいじゃないかということで、いわば公務の特性によるものが職域年金で、つまり労働基本権の問題、あるいは守秘義務の問題、あるいはアルバイト、つまり兼業禁止といった公務に課せられた特性だから職域年金も置いているんだという理屈で、これまで公的年金として設けてきたわけですね。
それが、今回廃止になるということは、確かに、これまでの議論は一体何だったんだと。これまで公務の特性がゆえに設けてきたというものは、一体どういう理屈でか、これは消えてしまったわけです。そういった意味からすると、私は別にこれを復活しろという意味じゃなくて、逆に言うと、今回の一元化というのは、いわば世論の官民年金格差はけしからんという世論によって、一緒にしようというような、言えば、ややそういった世論に押されて、特に先ほど御説明があった与党あるいは官邸が中心となって、とにかく一元化しようという、いわばそういった理屈というか、そういった論法、論理の方が強かったのではないか。それに合わせて、何か理屈をこしらえなければいけないという部分で、かなり理屈をこしらえた部分もあるのかなと。そうなってくると、理屈に合わない部分もあるのかなという気もしないではないです。
最後に、そういった意味から言いますと、今度の年金の一元化、つまり年金を官民一緒にするということになると、もう1つ私が気になるのは、例えば公務員の問題として、賃金、退職手当、そして年金というものはいわばお金絡みでやるあわけでありまして、賃金は相変わらず人事院勧告に基づく、退職手当は総務省が決めるといった話になってくる。では、あとの2つはどうなるのか。つまり、公務員制度全体と関わってくる問題だと私は捉えておりますので、これをきっかけとして、ただ年金の一元化にとどまらず、公務員制度全体のあり方も政府全体で議論していただく、これをお願いしておきます。
以上であります。
○稲上部会長
ほかにございますでしょうか。
○米澤委員
大所高所の話の次に非常に技術的で申しわけないんですけれども、積立金の運用に関してちょっとお聞きしたいと思います。
参考資料2の 47ぺージの下の2つのポツのところに書かれていますが、それからもう1つ、次の49ぺージの図のところで、要は、全体として1つのポートフォリオで運用されるのか。さもなければ、各事務組織はまだ残るということなので、ポートフォリオとしては一様に決めるのですけれども、その範囲内で事務組織のところで運用するのか。私、法律を読んでいないんですけど、その辺のところが決まっているのか。さもなければ、これから決めるのか。その際に、今現在ある国共済とか、ポートフォリオがありますが、そこは必ずしも一様でないし、ややややこしいのは、金融資産でないものも入っている、不動産みたいなものも入っているわけですけれども、その辺の調整も含めて、どの程度まで具体的に決まっているのか、わかる範囲で教えていただければと思います。
○宮本参事官
資金運用担当の参事官でございます。恐縮でございますけれども、参考資料2の57ぺージを御覧いただきたいと思います。
今回の一元化に伴いまして、各共済制度、あるいは現厚生年金が持っております積立金につきましては、制度の位置づけとしては、統合後の拡大されました厚生年金の共通財源として位置づけになりますので、この積立金全体から見ました積立金の運用につきましても、厚生年金として一貫性のある考え方のもとに運用していただくということに整理をさせていただいております。57ぺージの上の方の図でございますけれども、これは運用に当たりまして、現在はそれぞればらばらに運用しているものを、今後どういう形で統一感を持って運用するのかということを図に示したものでございますけれども、まず、簡単に申し上げますと、関係する主務大臣がこの共通する1・2階部分の実態につきましては、基本指針という形で統一的な方向性を示す。その中には、当然、共通の1・2階部分につきまして、資産の構成の目標、基本ポートフォリオに類似するようなものという位置づけだろうと思っておりますけれども、こういったものも作成を指示しながら、それに合わせて各共済組合が自らのポートフォリオとして律するものをまた別途策定していただく。ここら辺につきまして、基本指針でどういう形で、どういう資産で運用するのか。それらはどういう資産構成割合になるのか。また、それが現実の資産構成割合と相互の関係で整合性があるのかないのかといったことを、主務大臣あるいは所管大臣がそれぞれチェックすることによりまして、また、下の表にございますように、その結果は事後的な関与としまして、現在、厚生年金につきましては、御案内のように、年金積立金管理運用独立行政法人の評価を評価委員会が毎年度評価するという形で行っておりますけれども、それに近い形での評価をし、検証し、場合によりましては必要な規制措置を各主務大臣から所管大臣に対しまして、基づく措置をとるようお願いするという形で両輪からチェックも図るという形のものを考えております。
ちなみに、※にございますように、それぞれのところは主務大臣が共同して行うということになっておりますけれども、この共同して行う際に、厚生年金全体の中ではかなりの部分を占めますので、当然、厚生労働大臣がイニシアチブをとる形にしまして全体の合意をとりたいと思っております。なお、詳細につきまして、御指摘がありました普通の伝統的なといいますか、それとはちょっと異なる独自事業の運用の中で行われていることにつきましては、閣議決定の際に、その独自事業が歴史的に果たしてきた経緯、それから必要性等につきまして改めて評価した上で、必要な部分は、基本指針の作成の際に整理をしたいと考えております。
以上でございます。
○山口委員
先ほど来出ておりました共通財源の算出に関して、ちょっと感想を申し上げておきたいのですが、細部に対応する資産というものをどのように出すかというのは、方法は実はさまざまあって、今回採用された方法というのもわかりやすい1つのメルクマールではあるというふうに思っております。ただ、でき上がりの金額から見た場合に、やはり1・2階に対応する資産と、その他の資産という配分は、必ずしも納得性が余り高くないような気がいたします。仮にそれぞれの、例えば給付でもいいのですが、1・2階に対する給付とその他の給付といった給付額で資産額を分けるといったようなやり方をした場合には多分違う答えになるんだろうと思いますし、どれがいいかというのはそれぞれ一長一短なんですけれども、でき上がりの金額としては、納得性が必ずしも高くないなという感想を持ちましたことを1つ申し上げたいということと、先ほど江口先生がおっしゃった点ですけれども、既裁定の受給権者、在職の方ですけれども、10%を限度にして給付額を減額をするという問題は、これは財産権の侵害といったようなことで、従来、直接的な形でこういう減額をするというのは例が余りなかったように思っております。年金の受給権の保護といったような観点で考えた場合に、これはかなり重要なテーマでありまして、今後、公的年金全体にこの種の考え方というのは適用されるとするならば、これはかなり慎重に考えていく必要のある問題ではないかというふうに感じましたので、あえて発言をさせていただきたいと思います。
○稲上部会長
ありがとうございました。
○林委員
パートの適用拡大についてですけれども、今回法案に盛り込まれたこと自体は大変前進だと思っております。ただ、範囲がずいぶん限定されてしまったなというのが率直な感想でもあります。それで、1つ御質問ですけれども、 300人以下の中小零細企業は適用猶予ということが別に法律で定める日までというふうになっておりますけれども、これはワーキンググループの報告書では、例外的な措置なのであって、できるだけ早期にそういった特例は外すようにという内容だったと思うんですけれども、これに関して、別に法律で定める日というのはどれぐらいを念頭に置いておられるのか。あるいは、どういう判断材料で、どういう状況であれば外せるというふうにお考えなのかということをお伺いしたいと思います。
それから、私どもの新聞に寄せられる読者の声であるとか、パートの方にお話を伺ったりしていて、これに関して、これから20時間以上働かせてもらえなくなるんじゃないかとか、1年以上働かせてもらえなくなるんじゃないかというような心配が結構あるなというふうに思っております。昨日たまたまいただいたはがきもあったのですけれども、適用拡大はとても歓迎するけれども、既に事業主から、先々は20時間働いてもらえなくなるというようなことを言われていて、2ヶ所目の職場をもう見つけてきたというようなお話もありました。先ほど適用をきっちりするというお話をいただきましたけれども、それだけではなくて、こういった雇い止めとか、就労抑制とか、そういったことが起こらないような措置というのをぜひお願いしたいと思っております。
以上です。
○高倉年金課長
それでは、今、山口委員、林委員からいただいた御指摘、御質問等に関しまして簡単に述べさせていただきます。
まず、山口委員から、全体的につきまして給付額の比率で分けた場合とは相当違うという御指摘でございます。それは、おっしゃるとおり違ってまいります。私どもは、そういった方式で今回やっていない理由につきまてしは、一番大きいのは職域部分につきまして今後、賦課方式を公的年金として実施というのをやめる、廃止ということになったわけでございまして、従来どおり賦課方式でフレッシュな後輩の方の保険料も入ってくる形で新3階、過去期間を賄い続けるということを前提とした割り方が先ほど山口委員の御指摘のような割り方になろうかと。ところが、前提が変わってしまいましたので、そういった手法は適用できないのではないかというふうな1つの議論があったということを御紹介させていただきたいと思います。
あと、既裁定の減額については、非常に慎重にというのはおっしゃるとおりでございまして、今回、さまざまな検討を経てこの線で打ち出したということでございますけれども、軽々にいろいろなものに広げていくということではないというふうに考えております。
あと、パートの適用につきまして、別に法律で定める日ということについてでございますけれども、現時点で具体的なめどというものはまだございません。ワーキンググループの報告書で先ほどの御指摘のとおりの御意見をいただいておるということが当然ありますので、そういったことも踏まえながらでございますが、これは今後の議論ということで考えております。
また、先ほど医療保険課長からも申しましたけれども、適用に当たって、きちんといろいろな不適切な、本来の目的にそぐわないことが起きないようにしていくべきであるという御指摘につきましては、誠にそのとおりでございまして、与党の参考資料1の4とか5とか、あるいは自民党コメントの指摘の中でも、その点につきましては、例えば自民党の方でも、参考資料1の11ぺージでございますけれども、6.で適用逃れを狙った雇用調整等が行われないよう厳格に運用するためのガイドラインを作成するという御指摘をいただいておりますし、また、ほぼ同文で、13ぺージのコメントからの御指摘の6.で、適用逃れを狙った雇用調整等が行われないよう運用のガイドラインを策定するとともに、適切な調査・指導を進めるという、こういう御指摘をいただいております。今後、成立の暁に、ガイドラインの作成という作業を着実に行って、御指摘のように、こういった与党からもいただいているような話の御指摘に沿って努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
○山崎数理課長
数理課長でございますが、積立金の仕分けの話に関しましてちょっと補足させていただきます。
先ほど年金課長から説明しましたことに加えまして、仮に、現に共済組合が持っております積立金を何らかの形で1・2階と3階の給付費の比率で分けるというような考え方でもし仕分けをして、その分を1・2階に持ってくるという考え方にしたといたしますと、厚生年金がどれだけ積立金を持っているかということには全く関わりなく、1・2階に持ってくる額が決まってしまうということになるわけでございますが、今回の一元化は、厚生年金、共済組合、それぞれ将来に向けて健全な制度が対等な立場で財政を統合していく、こういう考え方でございますので、やはりお互いの間での納得性ということを考えますと、お互いの間の横並びがそろっているということが納得性としては非常に重要であろうということでございまして、そういう意味からも、今回の積立比率をそろえるという考え方で整理させていただいたというところでございます。
以上でございます。
○稲上部会長
ほかにございますでしょうか。
○遠藤(岡本委員代理)
参考資料1の自民党の確認事項の中で、最後に党として引き続き検討するという事項が9番目の項目にありますが、この項目のうち、年金部会として取り組むべき問題もあると思いますので、この年金部会でも検討をしていただきたいと存じます。
先ほどガイドラインの作成等という説明がございました。事業主も関心がございますので、引き続きその意見もよく聞いて検討いただきたいと思います。
参考資料2の50ぺージに「被用者年金一元化後の交付金・拠出金の計算のしくみ」があります。この※の5の保険料財源比率の定義の意味合いは、例えば2100年度までの保険料を現価に換算して、その現価と積立金の仕分けした金額の比率というようなイメージでよろしいのでしょうか。
○山崎数理課長
最後にお尋ねのございました保険料財源比率をどう考えるかということでございますが、2100年までの間、毎年々給付を賄うために保険料からどれだけ支出され、あと積立金は、その積立金の元本の取崩しと、あと運用収入の方が支出されているということで、それは毎年々比率は違ってまいりますので、そちらの方の2100年ベースでの平均値というようなことで考えているところでございます。
○岡田総務課長
パート適用についてのガイドラインの作成につきましては、これは事業主さんともよく相談させていただきたいと思っております。
それから、数理的な諸問題に関する御指摘でございますが、これは第1回で御説明いたしましたように、年金部会におきまして、今後21年に向けての財政検証に向けた御議論をお願いするということになっておりまして、経済全体専門委員会での議論などを踏まえて、今後御議論いただくことになると思いますが、その中でそういった問題も御議論していただくことになるのではないかというふうに考えております。
今回これで被用者年金一元化法が国会に提出いたしましたので、そこでの議論、それから別途、社会保険庁改革法案が国会でもいろいろと議論されますので、そういった国会の状況等も踏まえまして、今後どう進めるかにつきましては部会長ともよく御相談させていただきたいというふうに思っております。
以上でございます。
○稲上部会長
よろしゅうございますでしょうか。予定しておりました時間を少し過ごしておりますので、どうもいろいろたくさんの貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。本日の審議はこれで終わらせていただきたいと思います。
次回の日程につきましては、追って事務局から御連絡をさせていただきたいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
(照会先)
厚生労働省年金局総務課企画係
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