08/04/22 社会保障審議会年金部会
第7回議事録
日 時:平成20年4月22日(火)15:00~17:14
場 所:東海大学校友会館「阿蘇の間」
出席委員:稲上部会長、渡辺部会長代理、
稲垣委員、今井委員、江口委員、
岡本委員、小島委員、権丈委員、
杉山委員、都村委員、中名生委員、
西沢委員、林委員、山口委員、
山崎委員、米澤委員
○総務課長
それでは、「社会保障審議会年金部会」を開催させていただきたいと思います。本日は御多忙のところお集まりいただきましてありがとうございます。
本日の出欠の状況について、最初に御報告をさせていただきたいと思います。樋口委員と宮武委員は本日欠席の予定でございます。権丈委員と米澤委員は遅れて御参加いただけるということで御連絡を受けています。
それから、役所のほうですが、大変恐縮でございますが、年金局長、審議官、社会保険庁運営部長は、国会用務の関係で遅れますので失礼をさせていただきたいと思います。
最初に、資料の確認をさせていただきたいと思います。きょうは非常に量の多い資料をお配りしていますので、順番に御確認をしていただければと思います。
資料1「経済前提専門委員会開催状況」でございます。
資料2でございますが、「基礎年金の国庫負担割合2分の1実現の意義について」でございます。
資料3は「社会保障国民会議の状況について」。
資料4-1「現物給付との関係も含めた老後の安心の全体像」。
資料4-2「第3号被保険者制度等について」。
資料4-3「市町村の所得情報の活用について」。
資料5-1「公的年金制度に関する各種提言等」。
資料5-2「関係団体からの提言」。
資料5-3「報道機関からの提言」。
資料5-4「雑誌等に掲載された提言」。
資料6-1「年金制度見直しに係る最近の国会での主な議論について」。
資料6-2「民主党案と民主党案に関連する最近の国会での主な議論について」。
資料7「平成16年改正後の残された課題に対する各方面からの主な提案」。
資料8「平成16年改正法の施行状況について」。
資料9「被用者年金一元化法案の状況について」。
資料10「企業年金における住所管理対策について」。最後に権丈委員提出資料を配付させていただいております。
もし無いような資料がございましたら、御連絡いただければと思います。
それでは、議事に入らせていただきたいと思いますが、大変恐縮でございますが、議事に入る前に一言申し上げさせていただきたいことがございます。
最近一部の報道におきまして、厚生労働省が具体的な方向性をもって制度改正の検討を始めた旨報じられているところでございますが、そうした事実はございません。本日の部会においても、先ほど御確認いただいたように、各方面からの提言や提案を紹介する資料を用意させていただいておりますが、厚生労働省としては、今後当部会におきまして、皆様方の自由な御議論をお願いできればというふうに思っているところでございます。
それでは、部会長よろしくお願いいたします。
○稲上部会長
それでは、ただいまの資料、お手元に大変たくさんございますが、議事の進め方について、最初にちょっと御説明をさせていただきたいと思います。
今、お話ございましたように、米澤委員が少し遅れられるようでございますが、お見えになりましたら、平成21年の財政検証における経済前提について、昨年の3月だったと思いますが、本部会で専門委員会を設置させていただいております。米澤委員長からその検討状況につきまして御説明をいただきまして、皆様方から御質問、御意見をちょうだいしたいと考えております。
それから、資料2でございますが「基礎年金の国庫負担割合2分の1実現の意義について」となっておりますが、平成20年度国庫負担引上げ法案を含めまして、事務局から御説明をいただきまして、これも御質問、御意見をちょうだいしたいと考えております。
それから、資料3と4でございます。資料3は、社会保障国民会議の関連のものでございます。資料4が、3種類ございますが、前回の部会で宿題となっておりました事柄につきまして、事務局からの御報告をさせていただきます。これらの報告につきましての御質問、御意見がございましたら、それは後ほどまとめてお願いしたいと考えております。
それから、資料5、これも数が多うございますが、資料5が4種類ございます。公的年金制度に関する各種の提言をまとめていただいているものでございます。
資料6も2種類ございまして、民主党案とそれに関する最近の国会での議論をまとめていただいたものでございます。
資料7が、平成16年改正後の残された課題に対する各方面からの主な提案について、それぞれ事務局でまとめていただいたものでございますが、それらについて簡潔に御説明を伺いました上で、資料5、6あるいは資料7も含めていただいてよろしいかと思いますが、前回に引き続きまして、基礎年金の国庫負担引上げ、基礎年金の税方式化などにつきまして自由に皆様方からの御意見をちょうだいしたいと考えております。
なお、盛りだくさんでございますので、資料7につきましては、最後に申し上げたいと思いますが、次回以降、改めて事務局から議論の素材などを提出していただきまして、順次項目を追って検討していきたいと考えているところでございます。
それから、今も御説明がありましたように、権丈委員から文書が出されております。
お見えになりましたら御本人から御説明をいただきまして、ただ、もしお見えになれないという場合、教授会が入っていると伺っておりますが、その場合には私からお諮りをしたいと考えております。
ちょっと駆け足で申し上げましたけれども、たくさん資料がございますので、今申し上げましたような形で議事を進めさせていただきたいと思います。
それでは、初めに、米澤委員がお見えになりますまで、資料2につきまして、事務局から御説明をいただきたいと思います。
○総務課長
それでは、資料2でございますが、「基礎年金の国庫負担割合2分の1実現の意義について」という資料でございます。
御承知のように、平成21年度までに国庫負担を2分の1に引上げるという方針で臨んでおるところでございますが、再度国庫負担を2分の1に引上げるということはどういう意義があるのかについて整理した資料でございます。
まず、1ページ目「(1)国庫負担の意義」でございますが、社会保険方式は、事業主、被保険者の拠出する保険料を主な財源とするものですが、公的年金制度の運営についての国の責任の具体的表明として、給付水準の改善、保険料負担の軽減などの観点から、費用の一部に対して国庫負担を行っているということでございます。
我が国の公的年金制度は、社会保険方式を基本とし、無業者や低所得者などの保険料負担が困難な方も含めてすべての国民の方に年金保障を及ぼす「国民皆年金」を実現しているところでございます。
こうした中で、社会保険料に加え、国庫負担を組み合わせることにより、低所得者でも負担できる保険料水準に抑えるとともに、保険料負担が困難な方に対しては一定の給付を保障する制度(免除制度)の実施を可能にしているということでございます。
2ページ目でございますが、平成16年の改正以前は国庫負担割合が3分の1でございました。その3分の1の国庫負担というのはどういう経緯で設けられたかについての過去の経緯を整理したものでございます。
国民年金につきましては、昭和36年に制度が創設されたわけでございますが、当時、厚生年金が給付費の15%の国庫負担が行われたという現状を踏まえまして、国民年金は、事業者負担がないことであるとか、保険料負担能力の乏しい低所得者が多いことから、厚生年金よりも高い割合の3分の1の国庫負担ということにされたところでございます。
制度発足時は、小さな字で書いてありますが、保険料拠出時に負担するという制度でございましたが、昭和51年にこれが年金給付する際に3分の1を国庫負担するという制度に変更が行われているところでございます。
昭和60年の改正で、御承知のとおり、全国民共通の基礎年金制度が創設されたわけでございますが、それに伴いまして、国庫負担は厚生年金の分も含めまして、老齢保障の基礎的な部分である基礎年金部分の3分の1に集中するというような取扱いをしてきたところでございます。
そして3分の1から、国庫負担2分の1、平成16年改正で引上げを図ったところでございます。(3)にありますように16年改正におきましては、基礎年金の国庫負担については、国民年金の本則上、既に2分の1というふうに法律上規定をしております。その一方で、改正法の附則の規定によりまして、2分の1を実現する「特定年度」については、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、平成21年度までの間のいずれかの年度を別に法律で定めることとされているということでございます。
最後に書いてありますが、国庫負担割合2分の1実現は、年金制度を持続可能なものとするための必要な前提ということであろうかと思っております。
3ページ目は、これは参考でございますが、この年金部会におきましても、国庫負担2分の1への引上げについては、将来の保険料水準を過大なものとせず、給付も適切な水準を保つため、必要不可欠だというような御意見をいただいているということでございます。
下のほうに、16年財政再計算におきまして、最終保険料の見通しがマクロ経済スライドも含めて、改正前に比べて低い水準に抑えられているわけですが、その中で国庫負担を3分の1から2分の1に引上げることによって、その水準にも貢献しているということでございます。
4ページでございますが、2分の1の実現によりまして、免除期間の給付であります評価も、現行の3分の1から2分の1に引上げるということにしております。それぞれ免除期間におきまして、給付の水準がそこに書いてあるような水準になるということにさせていただいております。
それから、基礎年金国庫負担割合2分の1実現は、将来の給付と負担の関係で、世代ごとの給付と負担の比率でございますが、それについて確実に給付を増やしていくというような拠出のメリットを高めるというような役割があるということでございます。
最後のページに飛んでいただきたいと思いますが、今年度につきまして、平成20年度国庫負担引上げつきまして、基礎年金の国庫負担を現行の36.5から37.3%に引上げるという法律案を現在国民年金法等の一部を改正する法律案でございますが、これを現在の通常国会に提出しているところでございますが、現在では議案の付託が行われておらず、審議がなされていない状況でございます。
法律が成立しないことに伴います影響につきましては、現在のところ、本年度の国庫負担は従前の負担36.5%という割合でお願いしているところでございまして、事務的な混乱はなく対応はされているというところでございます。
しかし、予算上措置されています国庫負担の一部が執行できないというような状況でございます。
現在、国庫負担で賄うべき部分については保険料財源で暫定的に肩代わりをしているという状況でございます。その意味では資金の運用機会を逃しているという点があろうかと思いますが、年金財政への深刻な影響は見られないという状況でございます。
ちなみにこの運用機会を逃していることに伴います損失といいますか、そういうものにつきまして、約0.5億円程度というような状況なっているところでございます。
なお、平成16年財政再計算、昨年お示ししました暫定試算においては、平成20年度における今回の国庫負担の引上げは見込まない形で算定しておりますので、両試算には影響ないというような状況でございます。
以上でございます。
○稲上部会長
どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問あるいは御意見ございましたらお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。平成16年改正から現在に至ります経緯の御説明であると基本的には考えておりますが、後で、先ほどお話しさせていただきましたように、基礎年金の国庫負担引上げ、基礎年金の税方式化などについて御議論いただきます前提であると思いますので、そこで改めて御議論いただいてもよろしいかと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
それでは、米澤委員がお見えですので、先ほどお断りいたしましたように、資料1に戻っていただきまして、経済前提専門委員会の米澤委員長から、検討状況についての御説明を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
○米澤委員
米澤です。遅れまして、どうも申し訳ありませんでした。
それでは、今、御説明ありましたように、経済前提専門委員会でどのようなことが議論されているか、現在のところまで御報告したいと思います。今、御案内ありましたように、資料1をごらんになってください。
そもそも経済前提専門委員会と申しますのはどういうミッションがあるかといいますと、5年に一度の財政検証、その場合における経済前提について、その時点で利用可能な情報の下で確固たる数字を推計するということを任務としております。具体的に言いますと、物価上昇率、賃金上昇率、積立金の運用利回りに関する数字を出すということをミッションとしております。現在のところですと、平成21年までにこの作業を行う必要があるということで、そこでの財政検証のための経済前提を議論をしております。もちろんその数字が固まりつつある頃には、こちらの社会保障審議会の年金部会において御議論いただくためにその数字を御報告して議論させていただきたいと思っております。
これまで、資料1にありますように、3回ほど会議を持ちまして、以下どういうようなことを議論したかを簡単に報告したいと思います。ちょっと説明が足りませんでしたけれども、財政検証に当たりましては、御存じのように、最近ですと100年の期間の年金財政が収支均衡するようなことを念頭に置いております。ですからそれを前提にして、具体的には向こう100年ぐらいの、先ほど言いましたデータを中心に予測するというようなことを目的としております。具体的には人口、労働人口、資本、それに伴うGDP等を予測して、そのもとから物価上昇率、賃金上昇率、運用利回りなどを求めるという作業を行っております。それがもともとのミッションでございます。
具体的には、まず第1回目は、これは昨年の3月に行われました。御存じのように、その前の2月に暫定試算の結果が出ておりますので、その紹介を受けまして、年金積立金の基本ポートフォリオについての説明を受け、そこを基本としてスタートしてまいりました。
第2回目は、諸外国の公的年金の将来見通しについてどういうようなことを各国ではやっているのかということを事務局から説明を受けまして、片や我々が想定しています作業と照らし合わせてどうなのか、何かもっといい方法があれば、そちらのほうを使わせていただこうというような意図の下で比較しながら検討いたしました。
第3回目は、つい最近、今月の2日に行われました。新しいデータをもとに、労働政策研究・研修機構の担当者をお呼びしまして、労働力推計に関しての説明を受けました。
これは先ほど言いましたように、いろい100年先までの推計を行う際に労働力がどうなるかという一番重要なところですが、そこのところの労働力推計に関してどういうような議論が行われているかを説明受けました。
同時に、内閣府や民間の研究機関・研究センター等の経済見通しなどについての数字もレクチャー受けました。もちろんそれらの民間の研究機関とは、せいぜい先行き10年程度のところですので、我々の100年というのには非常になじみが薄いのですけれども、とりあえず足元の10年とどういうような予測をしているのかということを非常に参考にさせていただきました。
以上のような、今まで3回の議論を行っておりまして、その際にいくつかいろんな委員の方から出た議論、ないしは今後詰めなくてはいけないような議論のところを少しまとめさせていただきたいと思います。
100年の予測というのは、我々委員の中でも非常に難しいということは百も承知なのですが、その際に今後日本の国の経済が世界の中でどういう位置付けになっているか、そこのところを少し押さえておいたほうが有効な議論ができるのではないかということで、より具体的には、諸外国に比べて急速な人口の減少局面にある我が国が、今後世界の中でどういうような経済的な位置付けになるのか、そういうところを少し把握しておいて、そこから議論したほうが、少なくとも読者にとっては説得力があるのではないだろうかというようなところです。最終的には定量的なことが必要なのですけれども、少し定性的なところの位置付けも必要ではないだろうかということです。今言いましたように、その際のキーポイントは急スピードで進んでいます人口減少が1つ重要な点ではないかということの意識です。
今、ちょっと申しましたが、100年を予測というか、100年間のデータを使って議論するというのはしょせん無理というか、難しい点もありますので、むしろ経済前提の在り方というものは、5年に1回の財政検証を行うわけですが、その際に、5年に1回の将来を見直していくというところ、そこのほうに意義があるのではないだろうか。100年を予測して、それで終わりではないわけで、5年たったら新しいデータの下で、もう一度予測し直すということですので、そういうことでやっていけば、むしろそちらのほうに意義があると。ですから、そこのところで重大な経済的な事実がありましたら、それを考慮して、また新たに将来推計を修正していくというような作業をしていくので、そこのところの5年に1回の作業というふうに位置付けるということが適当ではないだろうかということで、大半な方が、それしかないでしょうというような格好で納得しております。
他方、方法としましてはやや技術的な面になるのですが、コブダグラスという生産関数をもとにして何十年も先まで予測の作業を行っています。これは日本の経済が、簡単にいうと資本と、先ほど出ましたけれども、労働力等によってGDPが生まれていくというような簡単な生産関数というものを想定して、もちろん途中では技術進歩というものがありますが、大きくは技術進歩を込みにした生産関数を想定して、それでもって何十年後はどうなっていくかということを想定していくというような作業を行っています。
マクロモデルというと言い過ぎですけれども、その中で一番簡単なマクロモデルみたいなのを使っているということなので、これは2回目におきまして、諸外国の方法と比してみると、もっと諸外国はアバウトな方法が多いんですね。ということで、何人かの先生からは、日本のこの方法は優れているのではないだろうかというような御意見をいただいております。平均点以上というか、その中にあっては一番いい方法ではないだろうかというようなことを承っております。
次は、仮にこのような基本的な作業からアウトプットが出てきました場合には、先ほどの3番目の運用利回りについてどういうような水準を選ぶかという問題がございます。
実は前回の2004年のときは、比較的簡単に経済の利潤率等に合わせて、ほとんどリスクをとることなくここのところを決めてきたわけなのですが、昨今いろいろマスコミ等では、政府系ファンドの話が出ておりますし、そのときには日本の年金資金はリスクを全くとれないがゆえにリターンを逸しているというような議論までございます。そうはいっても、そんなリスクをとれるわけではないというように我々は認識していますが、そこのところをもう一度幅広く、できれば、もう一度この場をかりて、どの程度のリターンをねらっていくのか。これは簡単にいえば、リスクをとれば、その分だけ理論的には平均的なリターンを高めることはできます。それはあくまでも平均的なリターンですので、そうでない場合は当然あるわけです。今実際にとっているのは、その中でリスクをとってないというところで平均的なリターンは低めなところを行っているわけですが、そこのところをもう少し幅広に議論する必要があるのではないだろうかということの認識でございます。
それから、先ほどの労働力の推計ということを行いました。これはかなり細かな議論をするわけなんですが、その際に1つ、最近の正規・非正規社員の問題です。非正規の問題でパートタイムの労働者が現在はかなり多いわけですが、これをどうのように考慮していくのか。将来的にこれがさらに増えるのか、いや、これはかなり一時的な現象であるということなので、これは単に物理的な労働人口はわかっても、その後で労働力を出すときに随分関わってくる議論ですので、これをわからないなりに、例えばケース分けして議論するという方法があるのではないだろうかと、今そういう認識でおります。
加えて、正規・非正規のところはあまり深堀をしない状況においても、将来の労働力人口が、最近言われていますワーク・ライフ・バランスによってどうなっていくのか、もう少しイメージを膨らませていただきますと、女性がどのぐらいより働くことになるのかというようなことの想定、ここのところが随分効いていきます。そのためにはもちろんそういうことができるようなインフラも必要ですし、国としてはそういう政策・施策をとっているわけですが、それとの関連で議論していく必要がありますということですので、単にこのぐらいの労働力になるということではなくて、こういう場合にはこのぐらいのことが望めると。でもそれはどのぐらい実現性があるのかというようなことも議論しなくてはいけないだろうと認識しております。
最初の議論に戻りますが、以前、高度成長のときは、結構政府が長期経済計画とかということでかなり長い期間の経済成長なども政府の案として出していただいていたわけなんですが、御存じのように最近はそういうものはなくなっているわけです。たかだか短期的な、5年とかそのぐらいの長さですと出ておりますが、それ以上の長さ、まして100年も出てないわけですので、その中にあって、我々が責任持ってつくらなくてはいけないということは大変だなということが、またここに戻ってきますけれども、そういうような認識をしております。
繰り返しになりますけれども、5年で見直していくということの意義、すなわち100年先を当てる、ないしは100年間のものを当てるということではなくて、5年間のところで新しい数字を持って修正していくということで、むしろリスク管理を5年間ずつきちんとやっていくというような認識の下でやっていくほうが実践的で有効的であろうというような考えになっております。
以上、やや順番が整理されてなかったかもしれませんが、このようなことを議論して、ほぼデータが出揃っておりますので、あとは実際に、先ほど言いましたコブダグラスの生産関数等の議論に従って技術的な方法でアウトプットを出していく作業に入るような状況でございます。引き続き機会があれば、この場でいろいろ御議論いただいて御検討いただくことをこちらのほうとしても期待しておりますので、その節はよろしくお願いしたいと思います。
今のところ、このような状況でおります。
○稲上部会長
どうもありがとうございました。それでは、御質問なり、あるいは御意見なりございましたら、はい、どうぞ。
○中名生委員
2点ほど御質問したいのですが、第1点は、米澤委員長も今非常に報告の中で強調されましたように、100年先までというのはなかなか人知の及びがたいところがありまして、政府がこれまでやってきた長期の展望・ビジョンというのも、たまにせいぜい20年ぐらいまでということだったのだろうと思いますが、そこで御質問なのですけど、この100年先までというのを年金計算上必要だとすると、100年先といっても、その100年の期間が全部一律の期間ではなくて、米澤委員のお話にもあったように、目先10年とか、あるいは25年というのはある程度可能性の高いシナリオを考える。それから先は、これはいかんともしがたいので、いわば単純延長的な期間という、そういう何か期間の性格分けが必要ではないかという気もするんですが、そこは今この専門委員会の中でどういう御議論になっているかというのをお伺いしたいというのが第1点であります。
第2点は、これは米澤委員長に対するご質問というよりは、厚生労働省に対する質問ですけど、財政検証の際の1つの要因として、出生率、合計特殊出生率というのがあると思いますが、2005年に最低をつけて、2006年に若干戻しているという状況になっていますが、2007年の数字が判明するのはいつ頃になるのかというのをお伺いしたいというのが2点目です。
○稲上部会長
米澤委員からお願いできますか。
○米澤委員
それでは1番のほうに関してお答えしたいと思います。いろいろ有効な御指示ありがとうございました。多分そういうようなことが一番いいのではないかと思いますが、具体的に、前の財政再計算のときに行ったことも参考に言いますと、足元5年ぐらいは政府の予測がございますので、そこのところに合わせにいきたいと思っております。ただ、それは5年でしたか、非常に短いところですので、その先ですが、これは2点目のほうのご回答とも関連していますが、人口に関しましては、もともとの人口推計は議論はあろうかと思いますが、かなり長期まで出ておりますし、それをもとにして労働力なども計算をかなりできる状況にございます。それは使える限り細かな議論をしていきたいと思いますが、もう一つの資本がどのぐらい伸びていくかという話は、実際には今御発言されましたような格好になっています。途中までは設備投資に近いような関数を追っかけるような格好になっていますが、最後は平均値になるような格好で抑えております。意識的にそうしていたわけではないのですが、きょうの御発言でむしろ積極的にそのようにしたほうがいいのかということも非常に参考になりますので、それは参考にさせていただきたいと思っております。
私のほうは以上です。
○稲上部会長
お願いいたします。
○数理課長
第2点のほうでございますが、2007年の出生率、厚生労働省として取りまとめて発表いたしますのは、例年どおりでございますと、6月の初旬ぐらいということでございます。
それとあと第1点、先ほど米澤委員長の御発言に付け加えさせていただきますが、平成16年の財政再計算に当たりましての経済前提を設定いたしますときに行ったことから申し上げますと、経済前提そのものは100年間用いるものでございますが、委員長の御発言にありましたように、足元5年間程度を当時の改革と展望の参考試算に基づいたものといたしまして、その先のところを日本経済の成長力の見方等々に基づきまして推計いたしたのでございますが、一応計算上は2030年過ぎ、2032年だったかと思いますが、までの間の平均というようなものをとりあえず計算いたしまして、その先はまさに、中名生委員おっしゃいますように単純延長という形でやらせていただいておりまして、それが1つの下敷きになって今後作業を進めさせていただくというようなことで考えております。
以上でございます。
○都村委員
経済前提と申しますと、物価、賃金、運用利回りということですけれども、年金の財政検証に影響を及ぼすのみならず、年金制度における公平とか平等を追求する場合に非常に重要なのは労働力人口の問題だと思うのです。連帯とともに自立が重要ということで、有給の雇用を通じて経済的自立を促進するということが大事だと思います。
北欧諸国などはこの方法で随分成功してきていると思います。これまでの労働力率の推計では、トレンドで伸ばしていくというような方法なのでしょうか、女性の将来の労働力率は先進諸国に比べて非常に低い状態が続くとされていました。ワーク・ライフ・バランスに関する政策とか、高齢者とか障害者とか女性とかが働くことに対する支援を拡充するという、そういう政策を考慮に入れて、かなり大きな発想の転換をして、将来の労働力率をこういう水準まで持っていくというような、そういう目標値を含めた試算が必要ではないかと思います。
少子化の問題もあります。この際、年金財政に大きな影響を与える労働力率の推計はとりわけ重要なのではないかと思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。
○米澤委員
先ほど第3回目のときにそのようなレクチャーを我々受けたわけなんですが、その際には、今、御意見がありましたように、ケースを3つに分けまして、特に女性が中心になるかと思いますけれども、それが今と同じような状況で推移した場合と、女性及び高齢者がどのぐらいまで働くかということですが、それがある程度参入が見込める場合と、それから、非常に参入が見込める場合というか、3種類ですね。「現状の」と「ある程度」と、それから「非常に」ということで、ケースA、ケースB、ケースCでもってどうなるかということのレクチャーを受けました。
先ほど言いましたように、それをもって、まだ最終的な作業は行っておりませんが、少なくともこのケース分けによって、作業は途中まで進める予定になっております。ただ、最後はどうするのか、最後もケース分けということにはいきませんので、最後のところは、場合によってはこういうところで御議論いただいて、どれをとるかということになるかと思います。
○小島委員
私も2点ほどあります。1つは、今、都村委員が指摘されました女性の就業率をどう高めるか、どう見込むかということ。もう一つは労働の今多様化といいますか、流動性が高まっているということで、非正規労働者:パート・派遣等が雇用労働者の3分の1を超えているということで、この推移がどうなるか。私ども連合としては、これ以上、非正規を増やすべきではない。逆に非正規を正規雇用に戻すべきだと考えておりますので、今後の推移をどう考えるか。これは制度で言いますと、パートの第3号被保険者と第2号との関係、第2号が増えれば、その分、年金財政としては支え手が増えるということになりますので、それをどう見込むか。これは1つのポイントになると思います。
そういう意味で、ワーク・ライフ・バランスに関する政労使の「憲章」あるいは行動指針というのが昨年末に取りまとめられた。その中に女性の就業率を高めるという数値目標も入っています。そういったものもベースに置きながら、あとは政策計数なんでしょうか、そういうことの整合性ということもぜひ必要になってくるのではないかと思っています。
それともう一つ、米澤委員が指摘されましたが、今政府系ファンドの問題で、議論されている年金積立金の運用問題です。日本の公的年金の積立金150兆円の運用は、世界最大の機関投資家ということになっていますが、それをもっと積極的な運用、リスクをとって高いリターンをとったらどうかという議論もあります。昨年、経済財政諮問会議のワーキンググループの報告が出ておりまして、そこでも公的資金の運用を、もっと自由度を高めて積極的な運用をしたらどうかという報告が出ている。最近はそれについて更に具体的な議論も進んでいるという話であります。しかし、公的年金の性格、積立金の性格ということをきちんと押さえる必要があるだろう。これまでの議論の中で、厚生年金であれば、労使の保険料の積立金でありますので、リスクをとってハイリターンを求めるという性格ではないことを確認してきた。もう一度この間の議論を整理・確認する必要があるのではないかと思っています。
私は、かつての年金資金運用分科会のメンバーだったときに、そういう議論も出てくるので、なるべく積立金は持つなという主張をしてきました。そうはいっても150兆円を持ってしまったので、それは安全な運用に徹するべきだと何度も繰り返してきた経緯があります。そこはもう一度、過去の議論と現状についてきちんと押さえておく必要があるのではないかと思っています。
○稲上部会長
米澤委員、何かございますか。
○米澤委員
今のは承りましたということで、ごもっともでございますので、特に正規・非正規のほうも、まだ具体的にはどういうふうにするかは決まってないのですが、それも検討していかなくてはいけないだろうということになっています。
もう一つは、一応100年です。後半50年は平均とるにしても、前半それが長く続くということもないだろうということで、どういうふうに取り組んでいったらどうかということで検討はさせていただくことになっております。
○参事官
先ほど経済財政諮問会議の話が出ましたけれども、これは諮問会議の下部機関であります金融資本市場ワーキンググループというところで、金融市場活性化のための方策ということで、現在議論が行われている最中だというふうに承知しております。
一部新聞に、今おっしゃられたような積極運用というような形で、骨子のようなものが既に公表されているということでございます。このワーキンググループの議論は非公開で行われておりまして、私ども詳細に承知する立場にはないのですけれども、ただ、一般的な議論で申し上げますと、現在の国内債券中心のポートフォリオというものは、16年年金制度改正の際に与党等が示した基本方針を踏まえて作成されたものであると。安全性を重視する考え方は厚年法等にも明記されているということでございます。
今、お話にもございましたけれども、年金積立金の原資は年金加入者の方々から強制適用によって徴収された保険料でございますので、国民的な議論を経ることなく運用の基本的な考え方を変更することはできないのではないかというふうに考えております。
○稲上部会長
ありがとうございました。
○西沢委員
2つお願いと、あと2つ意見を申し上げますと、1つは、推計に当たって、平均寿命ですか、死亡率が改善した場合、今度から死亡率の低・中・高位が人口推計で出るようになったと思いますので、例えば死亡率が改善すると年金財政ダメージを受けるわけですので、死亡率改善ケースなどもぜひシナリオの中でやっていただけたらいいかと思います。
2つ目のぜひやっていただいたらいいかと思うことが、物価や賃金について、進路と戦略を使う以降の期間については、べたっと2.1なり1.0なりを使いますけれども、マクロ経済スライドでスライド調整率を差し引いていかないといけないわけで、例えば物価や賃金はゼロになったり、3になったり、でこぼこしてくると思うんですね。そうしますと、スライド調整率が差し引けない年度も当然出てくるのが現実的なケースだと思いますので、平均が仮に物価が1%としても0%、2%、0%、2%、こんなでこぼこしないとしても、引ききれないような物価上昇率にとどまる、スライド調整率が引ききれないような賃金上昇率にとどまるとしても、でこぼこしてくると思いますので、スライド調整期間が終わるまでの間については、終わった後はフラットでいいと思うんですけれども、でこぼこした期間が生じてしまうと、というか、実際の経済ではそうなると思うんですけれども、その場合、スライド調整期間をどこまで延長しなければいけないかといったことも私は本当は腹づもりを持っておいたほうがいいと思います。
あと2つは意見ですので、聞き流していただいてもいいのですが、1つは、進路と戦略というのは、私願望が入っていると思うのですけれども、時の政権が、経済成長がこうあったらいいという願望が入っていると思いますので、年金財政の計算をするときはよりコンサーバティブに前提を置いたほうがいいと思います。会計でいう保守性の原則、何らかの原則を定めて、より後の世代のほうにつけを回さないような形、堅めに置いたほうが私はいいと思いますので、本当は進路と戦略などは私は使うべきでないと思っています。
最後に、ソブリン・ウエルス・ファンドなどの議論が出て、年金ももっと積極的に運用しようということだと思うんですけど、年金積立金はソブリンじゃないと思うんですね。あくまで所有権は国民にあるわけで、ソブリン・ウエルス・ファンドの中に一括りにするのは、私はそもそも議論として間違っていると思いますし、また、マクロ経済スライドという仕組みがある下では、運用損が発生するとスライド調整期間の長期化になってしまうわけで、確かにリスクをとる現世代がリスクをとるとしても、リスクの帰着先が将来の世代になってしまう危険性があるわけですから、マクロ経済スライドという仕組みを我々が持っている中で、そういうリスクをとろうという意思決定をする人と、リスクの帰着先が将来の世代になってしまうということはよくよく考えてやったほうがいいと思います。
以上です。
○稲上部会長
ありがとうございました。何か米澤委員ありますか。
○米澤委員
答えるとすればというか、最初の物価上昇率、賃金上昇率、それを一定数値で抑えるのではなくてということなのですが、それは特に今言ったスライドの調整のマクロ経済スライドがある場合、そのとおりだと思うんですが、可変的な予測値はやってできないことはないのですが、そこまで我々確固たる何とかモデルを持っているわけではないので、そこのところは、検討してみますが、信頼に足る数値が出るかどうかというのは、私は悲観的なので、1つの数値が出てくるのが精いっぱいかなという感じは今のところしています。ただ、御意見は賜って、よくわかりました。
○数理課長
最初の点でございますが、推計に当たって死亡率が改善した場合を悲観的なケースとして行っていくべきではないかということで、実際のところ、経済前提の物価や賃金や運用利回りを定める際にはあまりそこのところは関係するということではなくて、むしろ年金財政全体を、100年間ぐらい算出するときにということで、経済前提専門委員会のミッションとしてというよりは、最終的な財政検証の際にそういうケースも計算すべきではないかという御意見として受けとめまして、昨年発表いたしました暫定試算におきましても、死亡率が高・中・低と3通りにつきまして、大体どのぐらい年金財政に影響があるかの大まかな評価については発表させていただいておりますので、最終的な財政検証におきましても、その辺のところの影響の評価というものは取り組ませていただくということで考えております。
○稲上部会長
ほかにございますでしょうか。
○山崎委員
ちょっと教えていただきたいのですが、あまり超長期になると大変だろうと思うんですが、卑近なところ、私ども産業界で、この産業構造といいますか、そういうものがどういうふうに変化するかというのが結構影響が出てくるのではないか、企業構造にも。場合によっては、そういう産業構造の変化というものが、サービス的な第三次産業に大きくシフトしてくるようになると生産性の問題も出てくるし、賃金等に影響してくるのではないかと思うんですが、そういう産業構造についての見方というのは何か議論になっておるのでしょうか。
○米澤委員
なっておるのでしょうかと言われますと、今までのところはしてなくて、それに関わると言ったら語弊がありますけれども、技術進歩率、最近割とよく出ていますTFT、どのぐらい進歩率があったかということですね。そこのところが結構一番効いてくる。例えば今後GDPがどのくらい成長していくか、そこのところがかなり効いてくるということですので、そこはなるべく政府の意見等をもとにして少し細かく見ていきたい。前回そこのところは3通りを見てやっていますが、それ以外のところ、例えば資本ストックの集計方法を少し変えてみるというようなことまではやっておりません。
確かに随分サービス化になって、そういうところは出てきているかと思いますので、場合によっては、生産関数の形のところで少し調整するのかなという感じはありますけれども、確かに重要な点ですけれども、必ずしも十分には反映されてないということでございます。
○稲上部会長
ほかにございますでしょうか。それでは、引き続き、米澤委員長の下で、よろしく御検討いただきますようお願い申し上げたいと思います。
先ほど申し上げましたように、続きまして、資料の3、4、これは事務局からの御報告をいただきたいと思います。
○総務課長
それでは、3と4について御報告させていただきたいと思います。資料3は、社会保障国民会議の開催の状況でございます。1ページ目に全体の状況をまとめさせていただいています。
2ページでございますが、社会保障国民会議の設置の趣旨でございますが、国民に信頼される社会保障制度に裏打ちされて、すべての人が安心して暮らし、本当の意味での豊かさを実感できる社会をつくっていくために取り組んでいくことが必要という観点から、有識者の方が集まって、社会保障のあるべき姿、その中で、政府はどういう役割を果たしていくのか、どのような負担を分かち合うかということを、国民が具体的に思い描くような議論を行うためにこの会議は開催されているということでございます。
有識者の方は16名の方で構成されておりまして、内閣総理大臣が開催するということで、必要に応じ、関係大臣が出席するということになっております。
座長は、東京大学の吉川先生がされているということでございます。
国民会議の下に分科会が、以下の3つの分科会、所得確保・保障〔雇用・年金〕を主に扱うということでございます。
サービス保障〔医療・介護・福祉〕を扱う分科会。
持続可能な社会の構築〔少子化・ワーク・ライフ・バランスの調和〕というような分科会を設けているということでございます。
国民会議のメンバーが3ページのとおりでございます。
4ページ目は、基本問題ワーキンググループというのが設けられておりまして、3番目のメンバーのところでございますが、各分科会の座長さんと、伊藤補佐官、官房長官が集まって、各分科会が制度横断的な視点から検討すべき事項、各分科会が共有すべき検討の視点を調整するという観点で設けられているところでございます。
一番下にありますが、4の(3)各分科会の検討を踏まえ、6月から、中間報告の検討を行うということになっています。
5ページ目は、分科会の第1分科会ですが、所得確保・保障(雇用・年金)分科会のメンバーでございます。本部会の何人かの先生方も御参加されているということでございます。
6ページで、この分科会の今後のスケジュールでございますが、第2回が4月14日でこれまで終わっています。第3回が4月30日に予定されておりまして、高齢者の所得保障のあるべき姿、第4回は、雇用と社会保障の制度論、特に年金の給付と負担についての基本的考え方を議論するということになっております。最後は6月中旬には中間報告をというようなスケジュールで進むというように聞いているところでございます。
それから、資料4-1から4-3まででございますが、これは前回の部会でお求めのあった資料を整理したものでございます。
資料4-1は、現物給付との関係も含めた老後の安心の全体像ということでございますが、1ページ目にありますように、ライフサイクルで見て、年齢別に見て上が給付、下がそれぞれの年齢の平均的にされている負担という状況でございます。給付の面ではライフサイクルに応じて一定の給付がありますが、特に高齢期に手厚い給付が行われている現状だと思います。負担につきましては、就労期の所得の増大に伴いまして社会保険料、税負担が増大するということになっています。
2ページ以降、各社会保障の制度について概略、大体給付の水準であるとか、3ページ目にありますが、例えば医療サービス、サービスの提供体制の状況と実際の給付の状況、4ページ目は、介護につきまして、同じようにサービスの提供と介護給付、5ページ目に障害者の福祉の関係の資料を用意させていただいております。6ページは子育ての支援サービスの関係の資料でございます。
7ページは、ミクロベースで見て、保険料を大体各制度、どういった形で負担されているかということを、制度的にどうなっているかというのを上の表で整理したものでございまして、サラリーマン(夫婦子2人)という4人世帯での拠出・負担のイメージ、それぞれ年収別にそこに示されているようなイメージではないかということでございます。
8ページで、トータルの社会保障の給付と負担の現状でございますが、19年度の予算ベースで、社会保障給付費は約90兆円、このうち年金は50兆円弱、49.5兆円で5割をちょっと超す水準だというようなことでございます。医療費が3割、福祉、その他が残りだというようなことでございます。
その財源は、55兆が保険料、21.9兆が国庫負担、地方負担は8.2兆で、資産収入とありますが、年金の積立金の運用収益というものが使われているということでございます。
国庫負担につきましては、国の歳出82.9兆円と一般歳出で47兆円でございますので、そのうち大体社会保障給付費関係費用として25%、一般歳出で45%が使われているというような状況でございます。
次のページですが、これは社会保障給付規模の国際的な比較ということで、横軸に高齢化率と、縦軸に社会支出の国民所得比をお示ししております。我が国は世界のトップを切って高齢化率が20%を超えているわけでございますが、社会保障給付の国民経済に対する規模を見ますと欧米の水準と同程度というようなことでおわかりいただけるのではないかと思います。
10ページは、社会保障給付の部門別の国際的な比較ということで、日本は一番左でございますが、国民所得に対しまして、年金が12.6、医療が8.5、福祉、その他が4.5というような状況でございまして、年金は欧米を上回る水準ですが、他のヨーロッパ諸国をやや下回る水準。医療は英米とほぼ同水準で、他のヨーロッパ諸国をやや下回る規模。
その他の給付につきましては、米国を上回りますが、ヨーロッパ諸国をかなり下回る規模というような状況であります。
資料4-2でございますが、これは第3号被保険者制度について、これまでの状況を簡単におまとめした資料でございます。
1ページ目でございますが、第3号被保険者制度が導入されましたのは昭和60年の改正でございまして、基礎年金を導入するに際して、サラリーマン世帯の専業主婦について、第3号被保険者として国民年金に強制適用対象とするということで、第3号被保険者制度が設けられたところでございます。
その後、3ページにございますが、平成16年の改正に際しまして、「女性と年金」に関わる様々な議論がございまして、この部会でもかなりの議論がされたと聞いておりますが、いくつかの案が議論されましたけれども、多くの論点があって、結果としては、成案を得るに至ってないというような状況でございますが、16年改正では一応合意が得られたところにつきまして、改正法案に盛り込むのだというようなことではないかと思います。
その16年で対応したことにつきましては、表の下にありますが、専業主婦自身に新たに保険料を負担させるのではなく、夫が世帯単位で負担している保険料は夫婦が共同して負担したものという基本的認識に立って、離婚時の分割という制度を導入したということでございます。
それから、改正法附則におきまして「短時間労働者に対する厚生年金適用」について、総合的に検討するという旨を規定したわけでございます。
その後、5ページでございますが、16年改正以降、特に改正法附則でありました「短時間労働者に対する厚生年金保険法の適用」につきまして、必要な措置を講ずるということを踏まえまして、年金部会の下でワーキンググループを設けるということで精力的な御審議をいただきまして、「パートタイム労働者への拡大ということで、被保険者年金一元化法にその内容を見据えて国会に提出しているというような状況でございます。
以上、簡単でございますが、資料2について御説明を終わります。
それから、資料4-3でございますが、「市町村からの所得情報の活用について」ということでございます。
1ページ目をごらんいただきたいと思いますが、平成16年改正におきまして、国民年金保険料の納付勧奨、強制徴収、免除周知を的確に実施するという観点から、所得に関する情報を社会保険庁長官が得られるよう必要な法的な整備が行われているというようなことでございます。
次のページ、具体的に提供されている所得情報でございますが、未納期間が1ケ月以上ある方の所得につきまして、年に1回から数回社会保険庁から市町村に提供を求めて、これに579万件の提供がされているというような状況でございます。
この市町村から提供される情報は、市町村が住民税の課税のために有している所得情報ということでございまして、その所得の内容は、給与所得や事業所得の内容はわからないという形で、総所得という形で提供されているということでございます。
なお、この税情報につきましては、特に自営業者の必要経費の控除の在り方について様々な議論があって、一般の給与者にとっては、税負担の「不公正感」が根強く存在するということが指摘されているということは御承知のとおりだろうと思います。
3ページ目に、制度活用状況ということで、提供されています市町村は、19年9月末で約1,800強ということで、99.1%、市町村から提供いただいているという状況でございます。
以上でございます。
○稲上部会長
どうもありがとうございました。先ほど申し上げましたように、前回の部会で宿題になっていたようなこともございますので、技術的なことなりで御質問がありましたら、それをお受けしたいと思いますが、御意見は後でまとめてお願いできたらありがたいと思います。江口委員、どうぞ。
○江口委員
済みません、確認的な質問なのですが、3号被保険者制度について、先ほど経緯の御説明があって、16年改正でいわゆる3号分割が導入されたということであります。それはそのとおりなのですが、実は16年改正で、併せて合意分割というのも導入されておりまして、両者は似ているのですが、微妙に違うのです。この考え方の整理として、3号分割というのは、いわゆる3号被保険者問題を受けて夫婦が共同負担を前提に、報酬比例部分を分割しようという制度である。
それに対して、合意分割というのは、離婚時の財産分与的な考え方を前提に、お互いの報酬比例分を含めて合意を基本に分割しようということでよいのでしょうか。要は考え方の基本が、3号分割と合意分割でどこが違うのかということを簡単に教えていただければと思うのですが。
○年金企画官
年金企画官の大鶴でございます。今の御質問ですけれども、合意分割と3号分割でございますけれども、合意分割については、両当事者の合意を前提として、その婚姻期間中に係る被保険者の年金の報酬比例の年金権をどのように分割していくかということでございます。基本的に婚姻解消時に、将来の女性の年金権を保障するというのが主な目的となっておりまして、それを婚姻期間中のそれぞれの拠出に応じた年金を分割していくという考え方でございます。
合意分割は、両当事者の将来の年金をどのように分割するかについて合意をもって決定していくというものでございます。
これに対して3号分割については、婚姻期間中に専業主婦が保険料を個人では拠出せずに、将来基礎年金をもらいますけれども、報酬比例部分については扶養している側だけで年金が保障されていたというものについて、被扶養配偶者の保険料拠出をどのように考えるかということで、扶養している側の保険料拠出を両当事者で負担しているものという考え方、扶養している者と扶養されている3号の方の両者で保険料を拠出したという考え方。これに応じた将来の年金、報酬比例部分の年金を分割するということでございます。
もう一度申し上げますと、合意分割というのは、婚姻をしていた方々の将来の年金保障を合意によって分割するもの。3号被保険者の分割は、保険料負担について、両当事者が負担していたという考え方から、その期間中の厚生年金の保険料拠出を両者で行ったという考え方から、その3号期間中の保険料について分割して、将来の年金に結びつけるというものでございます。
○稲上部会長
よろしゅうございますか。
○江口委員
そうすると、3号分割の場合、当事者、つまり妻からだけの申し立てでもできるし、夫が合意しなくても、社会保険庁長官がある意味で強制的に分割できると考えていいんですね。
○年金企画官
そのように、3号側からの申し立てによって分割する仕組みになっております。
○稲上部会長
ほかにございますでしょうか。それでは、次の資料5、6、7につきまして、事務局からご説明をいただきたいと思います。
○総務課長
資料5-1から5-4まで用意されていますが、これは「公的年金制度に関する各種提言等」という5-1に沿って概要を御説明させていただければと思っています。
公的年金制度の在り方につきましては、以下に明示しますように、労使の関係団体、報道機関の論評、国会での議論などを通じて、様々な見解が示されているということでございます。
そこに関係団体では日本経団連、経済同友会、連合。報道機関では日本経済新聞社、朝日新聞、読売新聞、政党・その他では、各政党のマニフェストのほか、年金制度を抜本的に考える会、社会保障国民会議の塩川委員、麻生太郎衆議院議員、丹羽雄哉衆議院議員というような方々からいろんな提言がされているというような状況でございます。
2ページ目でございますが、これも大きく類型化という形ですが、ちょっと整理してみるとこういうようなことではないかということを非常に雑駁でございますが、整理したものがこの2ページ目でございます。
1つは、基礎部分を、税方式とするという提案でございます。この場合、具体的な案は、例えば次のような観点からいろんな違いがございます。
1つは、すべての高齢者に同額の給付を行うとする提案もありますし、所得の多寡、日本の中における居住期間の長短に応じて給付を制限するというようなことを提案されているということもあります。現行制度からどう税方式に移行するかにつきましては、基本的に給付を出した上で、その上に納付期間に応じた給付を加算するというような仕組みをするというような提案もありますし、それから、過去の未納期間に応じて給付を減額するというような提案もあるというようなことでございます。
それから、給付の水準は、現行の基礎年金は約6.6万円でございますが、これを現行程度とするか、7万円に引き上げるかというような提案もございます。
税方式の財源につきましては、専ら消費税とするか、一般財源や事業主負担など各種財源を組み合わせるというような提案もございます。
基礎年金の基礎部分については、国民負担付きの社会保険方式を基本とするものがございます。この場合は、低年金者等への対応として、生活保護を受けやすくするような配慮を検討してはどうかというようなものや最低保障年金を創設し、一定収入以下の高齢者世帯に一定額を保障するというような御提案もあります。また、一定年齢以下の子育て世帯の両親の基礎年金保険料を国が税財源で負担するというような提案もございます。
それから、いわゆる二階建ての報酬比例の部分ですが、これにつきましては、積立方式とするもの、社会保険方式を基本とするという2通りございますが、積立方式とするものにつきましても、(1)任意の積立を可能にするのか、(2)民営化して私的年金とするのかなど観点によって、具体案の内容は異なっているというような状況でございます。
所得比例の部分につきまして、社会保険方式を基本とするものにつきましても、例えば、(1)被用者のみを対象としてパート労働者への適用範囲を大幅に拡大したらどうかというような御提案。それから、(2)自営業者等を対象とする仕組みを創設するか、(3)被用者と自営業者を一緒に対象とする一元的な仕組みにしたらどうかというような提案がございまして、具体案はそれぞれ異なっているというような状況でございます。
資料5-2は、関係団体からの御提案をまとめて1つにしたものでございます。
資料5-3は、報道機関からの御提案をまとめて整理させていただいているものでございます。
資料5-4は、雑誌等に掲載されました政治家の方々の提言を整理させていただいております。
資料6-1でございますが、これは年金制度見直しに係る最近の国会での主な議論を時系列によって整理させていただいております。
資料6-2ですが、民主党がマニフェストの中で掲げております改革案、それとその民主党の改革案に関連しまして、最近の国会で行われております主な議論を整理させていただいております。続きまして、資料7でございますが、会議の冒頭でもお話させていただきましたけれども、一部の報道におきまして、厚生労働省が具体的な方向性を持って制度改正の検討を始めたと報じられていますが、そうした事実はなく、今後当部会において委員の皆様に自由な御議論をお願いできればというふうに考えております。本日、資料7として用意させていただいているものは、平成16年の改正後の残された課題、先ほど資料5-1から5-6につきまして御説明しましたものは、むしろ税方式の転換といったかなり抜本的な改革の部分が多いわけですが、ここで整理いたしましたのは、平成16年改正の給付と負担の基本的な枠組みを前提とした形でのいろんな提案のうち、主なものを例示させていただいたということでございます。メルクマールを一応つくってみたものですが、国会とか政府の審議会などにおいて御提案とか御議論いただいているというようなメルクマールをもとにして例示させていただいております。各方面からこれ以外にも様々な提案が行われているというふうに承知しております。この部分につきましても、当部会で御議論いただくことになれば、事務方としてはそうした議論を虚心坦懐に受けとめてまいりたいと考えております。ちょっと前置きが長くなりましたが、今、御説明したような観点から、どんな提案がなされているかを整理したのが資料7でございます。
1つは、国民年金保険料の徴収時効ということでございますが、資料の1ページにありますが、保険料を徴収する権利は、2年で時効消滅するということで、2年をさかのぼって、それ以上の過去分の保険料を後から払おうとしても払えないという状況になっておりまして、それをもう少し長くしたらどうかというような御議論があるということでございます。2ページにありますが、これは国民年金だけではなくて、厚生年金とか、ほかの医療、それから、労働保険料も2年になっているというようなことでございます。最初に戻りますが、老齢基礎年金の受給資格25年の見直しでございます。これについては、諸外国はもっと短いのではないかということで、短くしたらどうかというような御議論があります。
3ページ目に考え方を整理させていただいておりますが、確かに諸外国との関係で、日本の25年に比べて諸外国は短いのが現状でございますが、諸外国では、日本と異なりまして、収入の無い者も含めた「国民皆年金」という形で実施されているということはないということでございまして、一定の収入がある方だけを対象にした制度ということで、収入の無い方は公的年金の適用対象外とされている国が多いということでございまして、そういう観点から、できるだけ短い期間でも拾うというような観点からではないかというふうに考えております。一方、我が国では、「国民皆年金」ということで、すべての方を対象にする制度を実現するということで、そういった制度体系になっていると。低所得や無収入の方につきましては、免除制度を設けることによりまして、その期間も通算して25年ということで、受給期間を満たすということで、そういった制度の体制をとっているところでございます。ちょっと飛びますが、5ページを見ていただきたいと思いますが、25年としているのは、厚生年金は20年ということに対して、40年を加入原則とする国民年金は、25年としても特別に長いとは判断しなかったということで、下のほうにありますが、保険料納付期間によりまして、給付の水準が下がっていくということで、40年納付したときに、6万6,000円で、25年納付は4万1,000円ということで、仮に全期間40年間免除とした場合、3万3,000円というようなことでございますから、そういうことのバランスも考える必要があるのではないかと思っております。最初のページに戻っていただきますが、3つ目の提案としまして、低所得の方に対する加算の制度。
それから、4つ目でございますが、国民年金の保険料、先ほど低所得の方、無収入の方については免除制度を設けているということで申し上げましたけれども、その免除制度をさらに見直したらどうかというような御提案もされております。
それから、非正規雇用者に対する厚生年金適用の拡大ということで、これは先ほども御紹介いたしましたけれども、昨年パートの適用の問題につきまして相当御議論をした経緯がございますが、こうした厚生年金適用をさらに拡大すべきではないかという御議論がございます。
それから、成人年齢の見直しと国民年金制度の適用年齢の関係でございますが、資料の13ページをごらんいただきたいと思います。憲法改正のための国民投票法が成立いたしまして、投票権者として、18歳以上の方を対象にするということで決められたところでございます。
その附則で、18歳から20歳前の方については、国民投票法との整合性を図るべく公職選挙法、民法その他の法令の規定について検討を加えていくというような附則が書かれているということでございまして、法制審議会のほうで、今議論が始まっているというふうなことを聞いているところでございます。
御承知のように、国民年金は20歳から60歳まで、40年間加入して、65から受給するということで、その20歳という年齢をどう考えるかというようなことが、これとの関係で問題になってくるのかということでございます。
一方で、学生はなかなか所得がなくて国民年金の保険料を払えないのではないかというような御議論がございまして、学生を終わってから適用としたらどうかというような御議論もあるということではないかと思っております。
1ページ目の最後でございますが、今後、労働力人口が減少していく中で、高齢者の方にどう働いていただくかというような観点から、それに整合的な仕組みを設ける必要があるのではないかということで、特に在職老齢年金の支給につきまして見直したらどうかというような御議論があるということでございます。
以上が資料7の説明でございます。
○稲上部会長 どうもありがとうございました。もう一度、議事の進め方について申し上げたいと思いますが、権丈委員お見えでございまして、冒頭申し上げましたように、御提案がございます。ただ、できましたら、今、御説明がありました資料5、6、7につきまして、それも7まで行きますと非常に論点がたくさんございまして、やや拡散的になる可能性もありますので、最初に申し上げましたとおり、前回に引き続きまして、基礎年金の国庫負担引上げ、基礎年金の税方式化ということを中心にして、自由な議論をいただきたいと思っております。それで、次回以降、資料7につきまして、後で御提案させていただきたいと思っておりますが、きょうは、御質問、御意見いただくのは結構でございますが、拡散的になり過ぎるかもしれませんので、前回に引き続き基礎年金の国庫負担、基礎年金の税方式化につきまして、御議論いただければありがたいと思っております。その後で、権丈委員から御提案ございますことについて諮らせていただきたいと思っております。
それでは、御自由に御質問、あるいは御意見をちょうだいしたいと思います。江口委員どうぞ。
○江口委員
済みません、口火を切るという意味で、質問と意見を申し上げたいのですが、1点は質問で、資料5-1の2枚目ですが、一番最後に「所得比例部分は、積立方式とするものと社会保険方式を基本とする」とございますが、これはどう違うのかがよくわからないとい。つまり、社会保険方式の中に積立方式と賦課方式があるように思うので、ここでいう積立方式と社会保険方式という概念がちょっとはっきりしないというのが質問でございます。
それから、意見でありますが、今、税方式年金等についていろいろ意見が出されているということですが、それを議論する前に、税方式年金等の意見が出てくる背景は何なのか。例えば保険料の滞納とか免除、それによって将来、無年金、低年金が増えるということなのか、つまりいろんな制度の提言を並べて、どの提言がいいかということを議論する前に、それぞれの提言がねらいとしているもの、なぜそういった提言が出てくるかということを一度できれば整理した上で、例えば無年金者、低年金者対策として税方式年金だけがとるべき方策なのか、ほかに何らかの方法が考えられないのかというような議論が可能なのではないかと思います。そういう意味では、いろんな提言を整理していただいた御努力には感謝いたしますけれども、まずはそういった論点といいますか、現行の年金制度で何が問題なのか、そこを明らかにした上で議論したほうがいいのではないかというのが1点目であります。
それから、2点目は、それとの関連で、税方式年金を主張されている方も当然念頭にあるわけですが、生活保護との関係です。つまり現在生活保護受給世帯の半分近くは高齢世帯になっているわけですね。そうすると現在の社会保障制度の下では、低年金者ないしは無年金者で所得、資産がない方は現実には生活保護を受けることになる。そうなってきますと、年金制度の在り方をどう考えるかというときに、生活保護制度の在り方を抜きに年金制度だけを議論するというわけにいかないのではないか。そういう意味では、少し生活保護世帯の現状、問題点を視野において年金制度のあり方も議論すべきではないかというのが2点目であります。
3点目は、先ほどの資料5-1の2枚目の所得比例年金の中に、自営業者も適用対象にするべきかという議論の前提としてなのですが、次回以降、ぜひ資料としてお願いしたいのは、年金制度と所得再分配機能についてです。つまり国民年金の場合には定額保険料、定額給付ですから、基本的には所得再分配機能はないわけです。報酬比例年金も給付乗率が一定ですから基本的にはないはずなのです。しかし、厚生年金の場合には、定額部分と報酬比例部分が一体となっていますから、その範囲で所得の再分配があるはずなのです。
自営業者を入れるかどうかを議論する際に、よく9・6・4つまり所得捕捉の問題が議論されますけれども、仮に年金制度には所得再分配機能が大してないということになれば、拠出保険料と給付との見合いだけで議論できる。つまり所得捕捉の問題というのは少なくともネグレジブルという議論も可能になるわけです。そういう意味で、現行の年金制度がどの程度所得再分配機能を果たしているのか。その際に国庫負担による所得再分配は当然あるわけでして、基礎年金で全国民に共通に3分の1、今後2分の1で再分配されるわけですから、それを除いた現行の特に厚生年金における所得再分配がどの程度機能しているのかというのがわかれば教えていただきたいと思います。
以上です。
○年金課長
遅れて申し訳ございません、年金課長・塚本でございます。
1点目というか、御質問の部分でございますけれども、所得比例部分に関して積立方式と社会保険方式、ここが整理でどうなっているのかという御質問でございますが、正直申しまして各種提言を我々として読んで整理をするという中で、社会保険方式を前提としているという提言なのか、そうでないのかがよくわからない。あるいはここに書いていますように、任意の積立を可能にするというのは社会保険方式に分類されるのかどうか、その辺が必ずしもよくわからない部分もございます。そういったものを含めて、一応整理をしたということでございまして、もちろん委員おっしゃられるように、社会保険方式の中で積立方式をとるという類型が一般論としてあるということは否定しているわけではございませんが、今申し上げたような事情で、このペーパーではこういう形で整理をさせていただいているということでございます。
○稲上部会長
ほかにございますか。
○年金課長
残りの御意見については、また整理をして資料を提出させていただきたいと思います。
○稲上部会長
ほかにございますでしょうか。小島委員どうぞ。
○小島委員
資料7の目次のところに、各方面からの提案というところで、3つ目に「低所得者に対する加算等」というのがありますけれども、これは今朝の某新聞が掲載されていたような内容ではないかと思うんですけれども、これについては、特段参考資料がついてないので、これはどんなところから出されている考え方なのかということなんですけれども、実はこれは前回の基礎年金の税方式について、連合案についても議論いただきましたけれども、その際には、切り替え時、経過措置をどう考えるか、税方式に切り替えた時点のときに過去に国民年金の保険料を納めてなかった人、あるいは免除だった人、そういう人たちをどうこれから扱うかということで、連合の考え方は切り替えた時点で保険料の未納期間があれば、その分、年金受給時には減額するということを原則で考えていますけれども、そうすると現在の無年金、低年金については何の解消にならないという、当然それは批判があります。
そういうことであるということであれば、経過的には一定の所得要件を設けるとして、低所得層に対しては加算、補足年金というか、さらにそこに加えるというような形で、そこは一定解消できるという話にもなると思いますので、そこはどう考えるか、そういうことを考えた場合に、ここの資料7で出されているような低所得者に対する加算等、そういうのが一部補強すれば、経過的な税方式に切り替えた時点の過去の未納期間に対する救済というようなことにも使えなくはないと思いますので、これについては具体的な提案というか別途出されているのかということであれば、ここは質問なのですけれども。
○稲上部会長
お願いいたします。
○年金課長
網羅的かどうかは、恐縮でございますけれども、まず資料6-1で、1ページ目に、国会での議論として、福島議員の、大臣の答弁のちょっと前でございますけれども、こういう御提案が、こういう御提案というのは、「国民年金の給付に加算を設けて最低保障機能を充実させるべきではないか、このように考えております」という御提言もございますし、また、資料5-3のところで、12ページにも、ちょっとぱっと出てこないのでございますが、生活保護をもっと受けやすくするような配慮をしてはどうかというような御提言もございますし、また14ページで「最低保障年金」の創設というような御提言もございます。申し訳ございません、これで全部網羅しているかどうか自信はございませんけれども、こういう様々な御提言があるということでございます。
○権丈委員
別件でよろしいですか。江口委員の……
○稲上部会長
どうぞ。
○権丈委員
せっかくきょう配っていただいておりますので、再分配のところについて、第4回資料の26ページ、「パート労働者に対する厚生年金の適用の拡大について」という資料の26ページに……
○小島委員
参考資料3ですね。
○権丈委員
参考資料3の26ページ、ここに恐らく垂直的な再分配というのを、所得が
高くなれば所得代替率が低くなるということで示されているのではないかと思うのですけれども。
○江口委員
これには、多分基礎年金も入っているのです。そうすると、これは国庫負担も入っているわけですね。私が申し上げているのは、国庫負担というのは、これは全国民共通に行くわけです。しかも税の所得再分配と社会保険の所得再分配を分けなければいけない。そう考えると、社会保険料部分だけでどこまで再分配が行われているのか、つまり税方式か、社会保険方式かという議論のときに、税による再分配機能と社会保険料の再分配と本当は厳密に分けて考えないとダメなんです。これの資料では所得の低い方が代替率が高いというのは、多分基礎年金で調整されているからなんです。私が申し上げているのは、税の再分配以外の部分、そこを検証したいとこういうことなんですね。
そうすると、例えば社会保険料が、実は厚生年金の算定式だけ見れば、あれは期間×乗率×平均賃金ですから、これは全く再分配がないんですね。期間が長い人が、所得が高い人の方が年金も高くなるのです。その限りでは、厚生年金の保険金額算定式というのは全く再分配機能を持たないんですよ。にも関わらず、実は厚生年金は、さっき言いましたように定額部分と報酬比例部分、定額部分に基礎年金拠出が入っているから、制度としての再分配はあるのです。
何が言いたいかというと、つまり自営業者を入れる場合に、常に所得捕捉が問題になって、所得の捕捉率が違うから、再分配を行えば非常に不公平が生じるのではないかという議論があるんですね。それに対して、仮に保険料による再分配効果が極めて低いならば、端的にいえば厚生年金と同じ算定式を自営業者にも適用すれば、同じ保険料を払えば同じ給付がもらえるだけの話で、所得捕捉の問題と無関係だという議論ができるんです。そういう意味では、このデータでは答えになってないということです。
○稲上部会長
やや細かい議論になりましたが、ちょっと言葉遣いの問題もあろうかと思いますが。
○権丈委員
1階部分はカウントしないということですね。
○江口委員
税の部分。
○権丈委員
税をのっけた部分の1階部分もカウントするわけですね。
○江口委員
ええ。
○権丈委員
だったら、ちょっとシフトさせればいいのではないかという気がしないでもないです。
○稲上部会長
ほかに、どうぞ、林委員。
○林委員
税方式の問題がテーマということですので、それに関してですけれども、いろんなところでいろんな提言が出ていて、税方式もかなり出ておりますし、今後も出てくると思いますけれども、部会として、この問題にはさっさと結論を出してしまいませんかと思います。何か出てくる度に税方式にすればいいじゃないかという議論があるとなかなか、税方式にするということと、従来の枠組みの中でより改善していくということの議論を並行して進めるのは難しいというか、なかなかできにくいと思うのですけど、16年改正からの残された課題の中でも、例えば受給資格の見直しだとか、免除制度の見直しとか、あと3号問題というのがありますけれども、こういうのを税方式にするという選択肢があると議論に入れないというか、入ってもあまり意味がないのではないかと思うので、税方式、それにするならするでいいんですけれども、そういうのを引きずりながら各論に入っていくことがなかなかできないのではないかと思って、とてもちょっと歯がゆい思いをしているんですけれども、ですから早くこれには結論を出しませんかと思います。
それを考えるに当たってですけれども、税方式言われるときに、未納問題の解決になるとか、無年金者をなくすことができるとか、3号問題の不公平感も解消されるとかいろいろメリット出ておりますけれども、そことも含めて、私ども読売新聞社の11月の世論調査において、基礎年金の財源について、保険料を主な財源として納めた人が受け取るという方式を続けるべきだというのが68.3%、あと税だけを財源として、国民年金が受け取る制度に変えるべきだというのが25.8%、7:3みたいな割合で現状の社会保険方式を国民は支持しているという結果が出ております。いろいろ言われているけれども、給付と負担の関係が明確であることだとか、受給権がはっきりしているということを国民は公平だと思い、安心だと思っていることのあらわれではないかなと私は理解しております。というのを御参考までにと思います。
この税方式か、社会保険方式かということに、早く決着をつけた上で、残された課題であるとか、また、いろいろ現行制度をよくするためにどういう課題があるかということでいろいろ出てきていることについて検討を始めていきたいなというふうなことを思っているわけですけれども、そういう意味では、この資料7に出てきたものに加えて、もちろん3号問題もそうですし、子育て支援策であるとか、3号問題に絡んでいえば、3号というのは子育てや介護の負担もあるのだからということでいえば、自営業者の方々にはそういった制度がないということなど、子育て支援策の観点から、子育て世帯についての保険料免除制度を拡充するというようなことも1つ検討課題に入れてほしいなというふうに思っております。
以上です。
○渡辺部会長代理
今の意見に対して全く反対ですね。つまり税方式であれ、何であれ、
年金部会は全く自由な議論をするところであって、何か早めに決着をするとか、何か一本に絞ってというふうなことをする必要が全くなくて、我々は自由な意見を言ってそれを厚生労働大臣に意見書で出せばいいわけです。最初から答申する必要もなければ、自由な議論を、最初から封鎖する必要は全くないわけでありまして、そういった意味では、今の林委員のおっしゃることは全く反対です。
○林委員
済みません、議論を封じようというわけではないんですけれども、いずれかの時点で、どっちかを選択しないと話に入るのが難しいのではないかというふうに思ったので、そこに行く過程としていくらでも議論をするのは重要だと思いますけれども、議論を封じようというようなつもりでいたわけではないので済みません。そのように。
○渡辺部会長代理
年金部会そのものの私の解釈では、例えば、前回の2004年改革に向けての年金部会でも、例えば3号被保険者の問題で、ある委員がこういうことをおっしゃった。3号被保険者の問題で決着しなければ、年金部会として恥ずかしいというような趣旨のことを、前委員会の話ですが、私はそのときも反対しました。恥ずかしくも何ともないのであって、年金部会はあくまでも諮問を受けてやっているわけではなくて、責任ある厚生行政、大臣に対して我々は意見書を出せばいいわけであって、我々は全く自由にいろんな意見を、併用であろうが何であろうが出せばいいのであって、何かを前提にしなければ、そこから先に進まないという、また今おっしゃった論理はおかしいと思うんですね。全く常に自由に、どんな前提であれ議論していって、それを意見書であれ、例えばばらばらであったって、それを意見書として出せばいいわけで、どれを選択するかは厚生労働省最高責任者の大臣の責任であると。我々はそういった責任は何ら付託されてないわけですね。自由な意見を言うべきであると、そういう意味です。
○稲上部会長
岡本委員どうぞ。
○岡本委員
今の税方式についてということで、部会長が一応議論の焦点を絞って、意見を聴取しておられるわけなのですが、社会保障制度というのはそんな簡単なものではありませんし、年金制度についても、いろんなところから、いろんな考え方の提言があって、その中で解決できる問題、解決できない問題いろいろあるわけですから、我々としては、今、部会長代理もおっしゃったように、いろんな考え方があれば、それを大いに出していきたいと、こういうふうに私自身は思っておるわけです。
2004年の改定しました年金制度についても、随分といい方向で改作できましたけれども、相変わらず解決できない問題もたくさん残しておりますし、また議論して現在の制度をよりよいものにするという議論もたくさん残っておるわけでありますので、そういう議論を私はこれから継続してやっていきたいと思っているんです。
ただ、米澤委員のほうから、100年の財政検証というお話がありましたから、私もその100年の財政検証という視点に立って年金問題を考えますと、日本の労働人口といいますか、出生率の改善の余地というのは今のところ見えてこないということで、言ってみれば、現役世代の労働人口が減っていくということは、これは100年の検証でなくしても、30年から40年の原理で随分と減っていくというのは現実であって、誰もこれは否定ができないわけなんです。
私も現役の世代が活力があるという社会が高齢化社会にとっても大事であるし、そういう中で、現役の方々の負担というものをどう、受給される方々の負担というか、そういうものを広く考えて、年金の在り方というものについて将来の議論をしていくべきだと。そう考えますと、私は現役の世代の皆さん方の負担だけでは、10年後か20年後かわかりませんが、必ず限界が、今の経済成長率を前提とする限り、よほど日本がまた奇跡の高度成長でもすれば別ですけれども、今、我々が予見できるいろんな前提条件の中で考えますと、恐らく財政検証でも経済成長率何%できるかどうかわかりませんが、そういう成長率の中では、現役の方の負担の限界は当然あるわけでありますから、そういう点からすると、私はこの場でも何度も申しておりますけれども、弱者というのはどういう方々を本当に弱者として救済するか、どういう方々が保護されるべきかということもきちんと議論をしながら、高齢した方々で負担できる知恵があるのであれば、私はそういう方々にも応分の負担の議論をして、年金財政あるいは将来の健康保険なり介護保険を含めて、社会保険の必要な原資財務というものは、日本の国民全体で知恵を出して負担をしていくというようなことは、私は前向きに議論すべきだろうと思いますから、そういう点から言って、税方式というものを、私は是か非かというすぐに結論出すのではなくて、そういうことをもっともっと前向きに議論していくというような雰囲気をこういう場であっても、あるいは日本の社会全体の中でも、そういう議論を大いにしていくということを私は進めるべきであると、こんなふうに思っております。
以上でございます。
○杉山委員
ありがとうございます。私は大きな議論と目の前で1つひとつやっていかなければならない議論がごっちゃになりながら動いていくというのは本当に大変苦手で、とにかく今急いで議論しなければならないことは何なのかという部分をやりながら、そういう意味では、資料2にありましたように、基礎年金国庫負担割合2分の1の実現は本当に必要だよねということはもう一回確認をしたいし、ここに載っていましたが、8ページのところで、平成20年度の国庫負担の引上げの状況も実は審議もなされていない状況ですよ、今というお話などもあって、大丈夫かしらって、ちょっと気をもんでみたりとか、そういう状況ではあります。とにかく必要なことをちゃんとやっていくのを見守りたいというのが1点。
そういう議論と、それから税方式どうしましょうというような、本当に大切な議論で、時間もかかるでしょうというような議論を少し分けながら議事を進めていっていただけるとありがたいのかなというふうに思っています。
それで、事務局の方にちょっとお願いなのですけれども、いろんなメディア、それから各団体ですとか、政治家の先生方が提言を出されていらっしゃるということで資料を今みさせていただいているのですが、私も江口先生と同じように、一度整理をしたものを一覧表にでもして御提出していただいて、特に提言のねらいはどこなのかとか、先生おっしゃったように、なぜこうした提言が出てきたのか、問題点がそこから浮き彫りになってくると思いますので、そういったところを見ながら議論の素材にさせていただくようにしていったほうがよいのかなというふうに思ったりいたしました。
その中で、今、資料を読ませていただいて、基礎年金部分、未納・未加入の人がとにかく増えていて、その部分で税だと問題解決になるでしょうというお話もあったのですが、未納・未加入なぜそうなるのだろうかというような根本的な問題を解決しないで、未納・未加入が増えたから税でと。でも負担は実はそんなに変わらなかったりするという部分で、どうして未納・未加入になってしまったのだろうかというような背景、特に若年の方たちの置かれている生活の状況の中で、こういった不信が生まれてきているのであれば、そこの要因は何なのだろうかというようなことも、数字で出すのは多分難しいかと思うのですけれども、ちょっと踏まえる。それは多分雇用の問題にもつながってくるのだろうとは思うのですが、そこを受けとめながら議論を進めていくことも必要かなと思います。
以上です。
○稲上部会長
ありがとうございました。山口委員どうぞ。
○山口委員
税方式の議論をするときの1つの、よく言われる話として、先ほども岡本さんがおっしゃったのですけれども、高齢者にも負担していただけるという考え方があります。多分消費税を想定されていて、それで物を買えば消費税払うから自動的に負担することになるという議論だと思うのですが、私たちこの審議会のメンバーとして、基本的な認識として確認しておきたいことは、物を買えば消費税を払っているということなのですけれども、今の物価スライドの仕組みがあって、その中で物価が消費税の分だけ上がったら、それが結局翌年の年金額にはね返るといったようなプロセスを経て、実質的に年金受給者が負担していないという構造になるということがあるわけですよね。
ただ、マクロ経済スライドがありますので少し引き算することになるから、まるまる全部が年金額にハネかえるかというとそれはちょっと違うよというのはあると思うのですが、基本的には、高齢者が本当に負担していることになるのかどうかということについて、税方式の基本的な話なのですけれども、我々は共通の認識を持つべきではないかなというふうに、先ほどのお話でちょっと感じました。
それともう一つは、これは我が国の年金制度が国民年金制度をつくってから、「国民皆年金」というのを達成したということで、すべての国民が年金に等しく入るという非常にいいシステムになったわけですけれども、その後、今日に至るまで、実際には所得のほとんどない人が適用の対象になってくる。特に学生とか、そういった人も含めて、20歳になれば全員を対象にしたといったような中で、いろんな工夫をして免除の仕組みをつくったりして、国民皆年金のシステムを維持しながら何とかやっていくのだということで非常な努力をされてこられているわけです。ただ、でき上がった姿から逆に考えると、全額免除しているといった加入者がおられる国民皆年金というものは、当初の理念と現実との間の相当のギャップがそこにあると言わざるを得ないと思うんですね。
諸外国で必ずしも全部国民皆年金にはしてないわけで、アメリカなんかは御承知のとおり、所得のない人は社会保障の対象にしてないということなので、社会保障の対象とするフィールド、それから先ほどの江口先生がおっしゃったような生活保護でやっていく、そういうフィールドといったようなものをもう一度分けて考えることによって見えてくる姿というのは随分違ってくると思うんですね。私も「国民皆年金」というのがすばらしい考え方で、そういうことについては非常に賛成する立場ではいたのですけれども、現実と理想とのギャップというものを改めてもう一度見直したときに、それを維持し続けて、それでいつまでも未納・未加入という問題が存在し続けるといったようなことが果たしていいのだろうかといったようなことについても、少し皆さんの考えを教えていただきたいなというふうに考えておるところでございます。
○稲上部会長
ありがとうございました。山崎委員どうぞ。
○山崎委員
私は考え方の基本としては、自助自律、自分の老後というものは自分である程度つくっていくのだと、そういう考え方が基本にあることは、今の日本の自由主義の社会の中では必要なのではないかと思うんですね、自助自律という。そういう意味で考えていくと、今の年金制度は自分が支払った保険料に応じた、それの給付がある意味では得られるということで、1つわかりやすい自分の努力というものが老後について備えられる。もちろん老後は年金だけではないわけですね。自分の貯蓄だってあっていいわけだし、違うことはいくつもあってもいい。その中の1つで年金があっていいのではないかというように思うんです。
税方式で、仮に基礎年金だけだとしても、消費税で賄おうとした場合に一番問題になるのは、税金で賄って、自分が支払っているという感覚がなくなるんですね、感覚として。確かに消費税で払っているけれども、本当に年金としてもらうようなものにそれが回ってくるか。理屈ではそういうことになるわけだけれども、そこの実感性というものに乏しいのではないか、こういうふうに思います。自律していく、あるいは自助の精神でいくということのためには自分で支払っていく、そして自分で老後をつくっていく、こういう考え方を基本的に持っておいたほうがいいだろう。
それでは弱者はどうするのかという話が当然出てきて、無年金の人や、あるいは年金がない人はどうするのという話が出てくるけれど、そのときは、それは違う社会制度の問題として扱うべきではないか。国民皆年金の中にそれを含めるということがいいのかどうか、これは根本的な議論としてあるのかもしれませんけれども、憲法までさかのぼるのかもしれませんけれども、そういうふうに整理して考えたほうがいいのではないかという考えです。
○稲上部会長
とても根本問題が出されましたけれども、時間もございますので、先ほどお約束いたしましたように、権丈委員から御提案がありますので、それを諮らせていただきたいと思います。先生のほうから御提案をいただけますでしょうか。
○権丈委員
文書にしております。きょうも遅れてきまして、下記のとおり、文書で意見を提出させていただきますということで、昨今、与野党、マスコミ様々な方々から年金改革案、特に基礎年金租税方式化に関する提案が行われています。これらの提案について定性的な議論をすることももちろん大切ですが、それに上乗せした形で定量的な議論も必要であると考えています。
このため、私は、社会保障国民会議の「所得確保・保障(雇用・年金)分科会」の第1回会合において、同一資料を提出し、事務局に作業をお願いいたしました。
年金制度に関する専門家が集まっている当部会においても、基礎年金租税方式化論等について是非とも議論を進めてほしいと考えており、かねてより、当部会にもシミュレーションを提出し、議論に役立てていただくように問題提起しておりました。
仮に、社会保障国民会議で私が依頼した「医療や介護、その他の社会保障給付も踏まえたシミュレーション」について本部会の守備範囲を超えるということであれば、年金のみのシミュレーションでも構わないと思いますという形で、ここの次に付けております文章を国民会議の雇用・年金分科会の第1分科会のほうに提出しておりまして、定性的な議論も必要ですし、かなりこれは私たちみんなやったのではないかと思いますので、実際どんなふうになるのか、財源がいくらぐらいかかるのかというようなこと。
分科会のほうに出した資料の2ページのほうに書いてありますけれども、第2次ベビーブーマーを支える時代の保険料がどうなるかというようなことを考えていくと、今いくらかかるからいくらになるというような話ではちょっと違ってくるので、そのあたりをはっきりとさせていただく形でシミュレーションしていただけないだろうかということを分科会のほうにもお願いしておりまして、ただ、できれば、分科会のほうは、社会保障国民会議というのは、医療や介護とかも全部やっていくので、それも上乗せした形でやってほしいとお願いしております。
それがここではちょっと無理かもしれないのですけれども、年金の部分だけでも皆さんに御議論いただければと思って提案させていただきました。
○稲上部会長
御意見がございますでしょうか。
○岡本委員
今の提案、大変私有意義だと思いまして、さっきの話でありませんけれども、定性的な話というのは、あるいは理念的な話で随分と出ておるわけでございますので、本当に財政的・財源的にどこまで何ができるのかというようなことも頭に置きながら議論していくという意味においては、権丈先生からの御提案があったシミュレーションは必要でございますし、また、事務局のほうでもいろいろと検討いただいて、これ以外にもっと具体的に議論ができるようなシミュレーションがあるのであれば、私はいろんなシミュレーションを出してもらって、具体的な議論も時間のある範囲でしたいと、あるいはすべきではないかと、こんなふうに思っております。
○稲上部会長
ありがとうございます。
○西沢委員
厚生年金特別会計や共済年金や国民年金特別会計に積立金があると思うんですけれども、そのうち積立金がいくらのうち、いくらが基礎年金拠出金相当部分で、いくらが厚生年金、2階部分なのか。国民年金はすべて拠出金相当部分と考えていいと思いますけれども、シミュレーションする際に、一部積立金を持つ基礎年金の税方式なのか、あるいは各方面から出ているシミュレーションなら、完全賦課方式で計算されていると思いますけれども、積立金をいくらか持てば、税で賄う額が減ると思いますので、積立金の仕分けなどもしたバージョンがあるとよりいいと思うんですけれども。
○稲上部会長
ほかにございますでしょうか。
○岡本委員
済みません。
○稲上部会長
どうぞ。
○岡本委員
時間来ているのですが、資料7の関連でちょっと気づいた点、1~2、済みません、時間がありませんが述べさせていただきます。
○稲上部会長
岡本委員、ちょっと先によろしゅうございますか。今の権丈委員から出ております御提案につきましては、私からもぜひお願いしたいと思っております。これから議論をしてまいりますときに、量的に数字がありませんと議論がしにくいので、議論を深めていく素材として大変大事なものであると思います。定量的なシミュレーションを事務局にお願いをしたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。どうぞ御発言ください。
○岡本委員
ありがとうございます。資料7の11ページの「国民年金保険料徴収の円滑化のための取組み」ということでありますが、この中で、事業主も大いに国民年金保険の納入率を高めるために、指導キャンペーンといいますか、やるべきであるというか、やってほしいと、こういうことが第1点に書いてありまして、これについてはもちろん社会的責任として私は大いに各企業もそういう指導といいますか、広報といいますか、意識化といいますか、そういうことに大いに協力をするというか、大いにやっていくべきだとこう思うんです。
ただ、一番最後の2行のところ、ちょっと私気になっておりまして、「給与所得に対する所得税の源泉徴収の仕組みなどを参考にして保険料徴収についてもより強い協力を得られないか検討すべきである」と、検討は自由にするということで結構でございますけど、私はかねがね日本人のコスト意識であるとか、保険料の支払い意識であるとか、税金の納入意識というのは企業のチェックオフが随分と、私はそういう意識を欠如する方向に働いていると。ただ、これは私安易に何でも企業がチェックオフするということについて、本当に国民の納税者の当事者意識を持たせることにとっていいかどうかという、そういう意味で、私は、モラルダウンでありませんけれども、決められたものを払うという意識というのは、まさに自助自律の世界でありますから、そういう意味から見て軽々にチェックオフすれば簡単に集まるからいいのだというような議論は、これは私は慎重であるべきだというのが第1点。
もう一つは、パートの方であるとか、あるいは短時間労働者の方等々というのは結構いろんなところを短期間で移られるわけです。ということは転職が多いわけです。転職に伴う事務処理の間違いというのは、まさに年金記録の例の問題でも、そういうものも随分あるわけでありまして、しかも転職されるところがいろんな企業がありますから、事務処理が必ずしも全部的確かどうかわかりませんし、本人自体も転職することによって会社がやってくれているものだと思って何もしないということがありますので、私は指導ということについて大いに協力してやるべきだと思いますけれども、チェックオフをするということについての議論だけはなるべく慎重というか、是非について議論した上で結論出してほしいとこんなふうに思っております。
以上でございます。
○稲上部会長
お約束の時間が来ておりますのですけれども、ほかに、どうぞ、米澤委員。
○米澤委員
済みません、ついでと言ったら語弊ありますけれども、私はニッセイ基礎研の方たちとも、ちょっと簡単な実験経済学みたいのをやったことあるんですが、基礎年金に関しまして、学生の年齢の人たちに実験してみまして、今の基礎年金・国民年金に入ったほうがいいか、入らないほうがいいかといったときに、入りたくないという方がいたんですけど、その内訳見ますと、そういう方に限って、今の状況、知識がない方なんですね。平たく言うと、どれだけ払って、どれだけ返ってくるか、別に貯金ではないんですけれども、そのような基礎な情報に関して知識がない人たちです。その後、情報を公開して、もう一度どうしますかといったときには、かなりの方が、入ったほうがいいということに変わりました。ですから、この点は、まず広い意味で広報みたいなところを、これが非常に不足しているので、単にいろんな事務的なところで問題があるということもありますけれども、それ以前に基礎的な知識があれば、もう少し払うというインセンティブ、もちろん今の年金制度が続くかどうか、それはまた別の話ですけれども、少なくとも今のところで、どのぐらい払って、どのぐらいのものがもらえるかということがわかってないことで、それがわかれば、決して入ることに対するインセンティブが低いというわけではないということ、この点はやはり事実としてありますので、広報みたいなことを含めて、これは重要な点ではないかと思っております。参考までにということで。
○稲上部会長
ありがとうございました。特に御発言ございますでしょうか。それでは、
今井委員どうぞ。
○今井委員
先程の林委員のご意見すごくよくわかります。特に資料7というところに深く入っていきたいと思ったときに、税方式となれば、これが進まないと思いました。税方式でやることになったとしても、今までの未納問題はじめいろんな問題が解決するわけではないので、先程江口委員がおっしゃったように、背景とか、もうちょっと組み込んだ内容で、ぜひお願いしたいと思います。
○稲上部会長
ありがとうございました。年金局長何かお話。
○年金局長
時間ももう押しておりますので、お手元に残りの資料番号ついているのは、現状を説明しているだけの資料でございますので省略させていただきたいと思います。
それで、先ほど来、当部会における議論の範囲について基本的な御意見の開陳がございましたけれども、私の方から少し整理の上でも、部会長を補佐する上でも御発言をお許しいただきたいと思います。
第1点は、基礎年金税方式化のような制度体系自体の根本的な見直しにつきましては、先ほど権丈委員から定義の提案ございました定量的なシミュレーションというものを私どもとしてもぜひ行わせていただきたいと思っております。もとより社会保障国民会議でも並行しながら、こういうシミュレーション、さらに上乗せしたシミュレーションをどうしたらいいかという検討が内々進んでおるやに承知しておりますので、そういうところを見極めながらではございますが、ぜひ部会長と御相談しながら、当部会にふさわしい資料の提出をさせていただきたいと思っております。これらを材料といたしまして、諸般の事情をもちろん見極めながらですが、引き続き、大変恐縮でございますが、こうした制度体系に関する自由討議というものを進めさせていただきたいと思っております。
また、先ほど来、各委員の方々気になって御覧になっておられる資料7でございますが、様々な提案の中にはそうした制度体系の議論と併せて様々に現行制度の少し弱点とでも言われるような問題点について御提案がございます。そういうものが並んでいるわけでございますが、この中には少し想像していただくとすぐおわかりのとおり、新たに財源の必要となるものも混ざっております。従来の私ども厚生労働省の立場といたしましては、そうした新規の、とりわけ国庫負担財源の必要となるものについては慎重に御議論いただきたいというのが普通の審議会運営の立場なのでございますが、無年金、低年金問題といったもの等々、平成16年改正後に残された課題と言われるものについて、現に急ぎの対応も求められておるわけでございますし、一方、昨年暮れの与党の税制改正大綱におきましても、社会保障と税制というものは非常に大きく取り上げられているわけでございます。別途税制改正等による安定的な財源を確保する必要があるという認識を前提とせざるを得ないと思いますが、平成16年改正の給付と負担の枠組み、とりわけ保険料負担の枠組みを変更してしまうというようなことではなく、その枠組みの範囲内であれば、租税財源の活用も含めて年金政策としての是非を御議論いただくということが当部会として御議論いただいて差し支えないのではないかと私も判断いたしますので、そういうことを含めて、資料7、あるいはこの資料7に書かれてないけれども、重要な提案もあるという御指摘もございましたが、そういう点も含めてぜひ御議論を進めていただければというふうに考えております。
○稲上部会長
ありがとうございました。これからの部会の進め方について、最後にちょっと発言をさせていただきたいと思います。まず、今も触れていただいております資料7がございます。また、先ほど来、税方式化についていろいろ御議論もいただいております。先ほどお願いいたしましたように、定量的シミュレーションの作業をしていただきまして、本部会にその結果を御報告いただきまして、さらに検討を深めてまいりたいと思います。
資料7につきましては、きょうほとんど時間もございませんで、議論していただいておりません。税方式化の問題ということと二者択一ということではなくて、資料7についての検討も進めてまいりたいと思っております。そこで当面この夏までくらいでしょうか、今までは数カ月に一度という感じでございましたけれども、できましたら月に一度程度、この部会を開かせていただきたいと思います。何を議論するかにつきましては、きょう江口委員のほうからも御注文もございましたし、事務局ともよく御相談をした上で議題を絞ってまいりたいと思います。そのときには資料7についても、繰り返しになりますけれども、扱わせていただきたいと思っております。また、もし何か部会として意見がまとまるようであれば、中間的な取りまとめもできればありがたいというふうに考えております。
時間を過ごしておりますので、きょうの議論はここまでにさせていただきたいと思います。次回につきましては、改めて事務局から御連絡をさせていただきます。
どうもありがとうございました。
(連絡先)
厚生労働省年金局総務課企画係
03-5253-1111(内線3316)