第1回社会保障審議会年金部会 議事録

日時

令和4年10月25日(火)12:30~14:30

場所

東京都港区新橋1-12-9新橋プレイス

AP新橋 3F Aルーム

出席者

○会場出席委員

小野委員、菊池委員、駒村委員、是枝委員、佐保委員、島村委員、嵩委員、永井委員、原委員、平田委員、深尾委員、百瀬委員

○オンライン出席委員

武田委員、堀委員、酒向参考人(出口委員代理)

議題

(1)部会長・部会長代理の選出について

(2)「年金財政における経済前提に関する専門委員会」(案)の設置について

(3)年金制度の意義・役割とこれまでの経緯等について

議事

議事内容

○総務課長 定刻になりましたので、ただいまより第1回「社会保障審議会年金部会」を開催いたします。

 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 部会長選出までの間、年金局総務課長の岡部が議事進行を務めます。

 開催に先立ちまして、事務的な御連絡を申し上げます。

 本日は、オンライン併用による開催をしております。

 オンライン会議における発言方法につきまして確認いたします。

 オンラインにて御参加される委員におかれましては、会議中に御発言される際には「手を挙げる」ボタンをクリックして、部会長の指名を受けてから、マイクのミュートを解除して御発言をお願いいたします。御発言終了後は、再度マイクをミュートにしてくださいますようお願いいたします。

 また、議題に関しまして御賛同いただく際には、カメラに向かってうなずいていただくことで、いわゆる異議なしの旨を確認することといたします。

 また、本日の会議は傍聴希望者向けに動画配信システムにおいてライブ配信をしております。

 まず、今回御承認いただきました委員の皆様につきまして、五十音順に御紹介いたします。

 最初に、日本経済団体連合会社会保障委員会年金改革部会長、出口博基様です。本日は御欠席でございます。

 次に、年金数理人、小野正昭委員でございます。

 次に、早稲田大学理事・法学学術院教授、菊池馨実委員です。

 次に、慶應義塾大学商学部教授、権丈善一委員です。遅れていらっしゃいます。

 次に、東京商工会議所社会保障委員会委員、小林洋一委員です。今日は御欠席でいらっしゃいます。

 次に、慶應義塾大学経済学部教授、駒村康平委員です。本日は少し遅れていらっしゃいます。

 株式会社大和総研金融調査部主任研究員、是枝俊悟委員です。

 日本労働組合総連合会総合政策推進局長、佐保昌一委員です。

 立教大学法学部教授、島村暁代委員です。

 株式会社三菱総合研究所研究理事シンクタンク部門副部門長兼政策・経済センター長、武田洋子委員です。オンラインで参加です。

 東北大学大学院法学研究科教授、嵩さやか委員です。

 大妻女子大学短期大学部教授、玉木伸介委員です。本日は御欠席でいらっしゃいます。

 UAゼンセン副書記長、永井幸子委員です。

 株式会社TIMコンサルティング取締役、社会保険労務士、原佳奈子委員です。

 株式会社働きかた研究所代表取締役、平田未緒委員です。

 日本貿易振興機構アジア経済研究所所長、一橋大学特命教授、深尾京司委員です。

 独立行政法人労働政策研究・研修機構副統括研究員、堀有喜衣委員です。オンラインで御参加でございます。

 流通経済大学経済学部教授、百瀬優委員です。

 本日は、出口委員、小林委員、玉木委員から御欠席の連絡をいただいております。

 本日御欠席の出口委員の代理といたしまして、日本経済団体連合会、酒向参考人に御出席をいただいております。酒向参考人の御出席につきまして、部会の御承認をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

(首肯する委員あり)

○総務課長 ありがとうございます。

 本日、武田委員、堀委員、酒向参考人にはオンラインにて参加をいただきます。

 駒村委員と権丈委員におかれましては、少々遅れるということで御連絡をいただいております。

 また、武田委員、権丈委員におかれましては、所用により途中退席されると伺っております。

 参考資料でお配りしております社会保障審議会令第8条第1項の規定によりまして、本部会は委員の3分の1以上の出席で成立するものとされております。本日御出席いただいております委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。

 次に、事務局より、年金局長の橋本より御挨拶申し上げます。

○橋本局長 年金局長の橋本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 年金部会の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。

 委員の皆様方におかれましては、それぞれ大変お忙しい中を当部会の委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。改めて御礼を申し上げたいと思います。

 さて、公的年金は今や約6700万人の方々が加入をし、そして、約4000万人の方々が受給するという我が国の社会保障制度の根幹をなす制度となっております。長生きする方が増え、高齢化が進みました我が国の社会経済において、この公的年金というのは必要不可欠な社会基盤として定着しております。そして、我が国の社会が将来にわたって持続し、我々の子や孫、ひ孫、さらにその先々の世代も含めて、この国の社会で生きる全ての方々が安心して暮らしていくことができるように、公的年金というものを強靱な社会基盤として持続させていかなければなりません。

 御承知のとおり、年金制度が産声を上げて以来、国民皆年金の達成、基礎年金の創設、被用者年金の一元化、そういった数々の制度改正を通じて、定額の1階部分、報酬比例の2階部分という2階建ての公的年金の仕組みが整備されてまいりました。そして、平成16年には、保険料上限の固定、基礎年金の2分の1国庫負担、積立金の活用、マクロ経済スライドの導入、5年ごとの財政検証といった、現在の年金制度の財政基盤を確立する制度改正が行われました。このような長年にわたって積み上げられてきた制度の根幹を継承し、将来にわたって堅持していけるように、これからも絶えざる努力が必要だと、そのように考えております。

 直近におきましては、令和2年に制度改正を行い、被用者年金の適用拡大をはじめとする様々な改善措置を講じました。同時に、この改正においては、今後の課題といたしまして、公的年金の所得再分配機能の強化、あるいは被用者年金、被用者保険のさらなる適用拡大といった宿題もいただいております。これらの宿題事項も含めまして、50年先、100年先も視野に入れて、今、何をなすべきかということが年金制度を預かる我々に問われております。当部会の委員をお引き受けいただきました皆様方におかれましては、それぞれがお持ちの豊富な知識、経験を存分に発揮していただきまして、忌憚のない御意見を賜り、次の財政検証、そして、その先の制度改正につなげていっていただきたいと思っております。何とぞよろしくお願いいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、公的年金については5年に1度財政検証を行うこととされております。前回は令和元年に財政検証を行ったところであり、次の財政検証は令和6年に行うことを予定しております。財政検証に当たりましては、賃金、物価、運用利回りなど、年金財政に関わる専門的、技術的な事項について検討する必要がありますので、これまで財政検証の都度、当部会の下に年金財政における経済前提に関する専門委員会を設置してまいりました。次の財政検証に向けましても、同様に専門委員会を設置したいと考えておりまして、そのためには、当部会におきまして専門委員会の設置について御了承いただく必要がございます。次の改正に向けた種々の検討については追ってじっくりと御議論いただきたいと考えておりまして、まず、本日は専門委員会の設置についてお諮りしたいと考えております。

 年金制度は、基本的に保険料や年金といったお金の動きだけで成り立っている仕組みであります。このため、医療や介護といったほかの社会保障制度と比べますと、病院や介護施設のような様々な現場、そこで働くスタッフの方々の姿といった目に見える要素がない上、保険料を納める時期と年金を受給する時期が離れておりまして、一人一人の国民にとって、特に若い世代の方々にとって分かりにくい、実感が湧きにくい、そういった声をよく耳にするところでございます。一人一人の暮らしを左右する大切な仕組みを今後とも安定的に運営していくためには、世代を超えて制度に対する理解と信頼を得ていくことが重要でございます。どうしても専門的、技術的で分かりにくい要素があることは確かでございますが、私ども事務局としても、できるだけ分かりやすい説明を心がけていきたいと考えております。

 以上をもちまして、開会に当たりましての私からの挨拶とさせていただきます。今後とも何とぞよろしくお願いいたします。

○総務課長 そのほかの事務方からの出席者について御紹介いたします。

 まず、大臣官房審議官(総合政策、年金担当)の朝川でございます。

 首席年金数理官の村田でございます。

 年金課長の若林でございます。

 数理課長の佐藤でございます。

 数理調整管理官の木村でございます。

 議事に入ります前に、議事の公開及びペーパーレス化の御説明と資料の確認をいたします。

 参考資料でお配りしております「社会保障審議会関係法令・規則」に基づきまして、本部会及び議事録につきましては、原則公開することとしております。

 また、厚生労働省では、審議会のペーパーレス化を推進しておりまして、本日の部会においてもペーパーレスで実施をいたします。

 傍聴される方には、あらかじめ厚生労働省ホームページでお知らせしておりますとおり、御自身の携帯端末を使用して厚生労働省ホームページから資料をダウンロードして御覧いただくこととしております。

 次に、資料の確認をいたします。資料は右上に番号を付しております。

 資料1「「年金財政における経済前提に関する専門委員会」(案)の設置について」。

 資料2「年金制度の意義・役割とこれまでの経緯等について」。

 参考資料1「社会保障審議会関係法令・規則」。

 参考資料2「社会保障審議会年金部会における議論の整理(令和元年12月27日社会保障審議会年金部会)」。

 以上をお配りしております。

 初めに、本部会の部会長の選出に移ります。

 部会長の選出につきましては、参考資料でお配りしております社会保障審議会令の第6条第3項で「部会に部会長を置き、当該部会に属する委員の互選により選任する」と規定されております。社会保障審議会の委員で本部会に所属されているのは、菊池委員、武田委員のお二人でございます。事前にこのお二方に互選をいただきましたところ、菊池委員に部会長をお願いすることとなりましたので、御報告いたします。

 それでは、菊池委員は部会長席への御移動をお願いいたします。

(菊池部会長、部会長席へ移動)

○総務課長 それでは、これからの議事運営につきましては、菊池部会長によろしくお願いいたします。

○菊池部会長 ただいま御指名にあずかりました、早稲田大学の菊池でございます。

 部会長という大役で身の引き締まる思いでございます。部会長は親委員会の委員がなるという習わしになってございますので、今回御指名をいただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

 私はこれまでも委員を拝命しており、今回、引き続き御一緒させていただく先生方もいらっしゃいますけれども、大幅に委員のメンバーが替わったように思ってございます。半分ないし3分の2ぐらいの委員の先生方と新しく御一緒させていただくことになりました。

 私はこれまでも幾つかの社会保障系の審議会の委員を仰せつかってまいりましたが、この年金部会というのは比較的アカデミックな議論がなされ得る場だという認識を持ってございます。その意味では、理論的な議論が闘わされる場であるということで、どうか委員の先生方には忌憚のない御議論をいただきますようお願いしますと同時に、私の最大の役目は、委員の皆様に存分に御意見を述べていただく、その環境づくりを事務局ともども進めさせていただく、そこが最大の任務だと認識してございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。これから次期改正に向けてかなり長丁場の議論になると予想されますが、どうかよろしく御指導のほどお願い申し上げます。

 まず、部会長代理の指名をさせていただきます。

 社会保障審議会令第6条第5項に「部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員又は臨時委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する」と規定してございます。そこで、部会長代理につきましては、本日あいにく御欠席ではございますが、玉木委員にお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。

(首肯する委員あり)

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、御異議ございませんので、玉木委員に部会長代理をお願いしたいと存じます。

 それでは、カメラの方はここで御退室をお願い申し上げます。

(カメラ退室)

○菊池部会長 それでは、議事に入らせていただきます。

 本日は「「年金財政における経済前提に関する専門委員会」(案)の設置について」、そして「年金制度の意義・役割とこれまでの経緯等について」、この2つを議題としております。

 初めに、年金財政における経済前提に関する専門委員会の設置について、事務局から御説明をお願いいたします。

○数理課長 数理課長でございます。

 私から、年金財政における経済前提に関する専門委員会の設置について御説明させていただきます。

 資料1を御覧ください。冒頭、局長からの挨拶にも御説明がありましたので、繰り返しになるところもあるかもしれませんが、御容赦ください。

 まず、公的年金の財政検証につきましては、2004年改正における財政フレームにおいて導入されましたが、少なくとも5年に1度実施することとされております。次回は令和6年に実施する予定となっているところであります。財政検証におきましては、長期にわたる将来見通しを作成しまして、併せてマクロ経済スライドにおける給付水準調整がどの程度必要になるかの見通しを作成することとされております。

 この見通しを作成するに当たりまして、重要な前提が3つあります。一つが将来の人口がどうなっていくか、もう一つが将来の労働参加がどのようになっていくか、もう一つが将来の経済がどうなっていくかということであります。この経済の前提については、具体的に申しますと、物価上昇率と賃金上昇率、運用利回り、この3つが将来どのような水準になるかということになります。

 2004年以降、過去3回ほど財政検証が実施されてきましたが、この3回とも、人口につきましては社会保障・人口問題研究所が作成する将来推計人口を用いる、労働参加につきましては労働政策研究・研修機構、いわゆるJILPTが作成いたします労働力の需給推計を用いることとされております。

 また、経済の前提につきましては、年金部会の下に経済、金融などの専門家で構成いたします専門委員会を設置しまして、そこで専門的、技術的な事項について御検討いただきまして、その結果を年金部会に報告いただいて経済前提を設定することとしてきているところであります。今回も同様に専門家の議論により経済前提を設定することとしたいと考えておりますので、この専門委員会の設置をお諮りするものであります。

 資料1に設置要綱(案)をお示ししておりますが、ここの「1.設置の趣旨」「2.委員会の構成」につきましては、今、御説明したとおりであります。「3.運営等」につきましては、記載のとおりであります。説明は省略させていただきます。

 なお、ここで設置について御了承が得られましたら、速やかに専門委員会を立ち上げまして、経済前提の議論を開始したいと考えているところであります。よろしくお願いいたします。

 私からは以上です。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいま御説明がございました専門委員会の設置につきまして、御意見、御質問などがございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。ございませんでしょうか。よろしいですか。

 それでは、年金部会の下に年金財政における経済前提に関する専門委員会を設けることにつきまして、御承認いただけたということにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(首肯する委員あり)

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、専門委員会の設置につきまして、部会として承認することといたします。よろしくお願いいたします。

 続きまして、年金制度の意義・役割とこれまでの経緯等について、事務局から説明をお願いいたします。

○年金課長 年金課長でございます。

 私から、資料2について御説明さしあげます。画面または紙がある方は御覧ください。

 本日の部会の主な目的は、専門委員会の設置ということで、御了承いただいたところですが、この年金部会、令和元年12月以来3年ぶりの開催になります。また、新しい委員の方もいらっしゃるので、年金制度の意義や役割、改正経緯といった基本的な事項を振り返り、言わば現在までの到達点を確認することと、今後の課題として前の年金部会に取りまとめていただいたので、御紹介したいと思っております。なるべく議論の時間を取りたいと思っており、駆け足で御説明することをお許しください。資料2から、スライド番号を右に振っておりますが、順番に御説明します。

 最初のページ、公的年金制度の成り立ちで「かつては」ということで、親と同居しながら言わばプライベート、私的に親の扶養をしていた。その後、地方から都市部に出ていくサラリーマンの方が増加し、親世帯がふるさとに残る例が増えた。左下の図、皆年金と言われた1961年、そこからの変化ですが、3世代同居世帯が減って高齢者の単身世帯が急増している。あるいは非婚や未婚といった結婚されていない、されないまま単身で暮らされている方も増えています。そういう意味では、個人個人ではなく社会全体で高齢者を支える仕組みの整備、これが公的年金の成り立ちです。現在では年間約39兆円の保険料、13兆円の税財源を基に、56兆円の年金を給付する、それまで個人で行っていた仕送りを社会全体で行う仕組みとなっております。

 3ページを御覧ください。それを形にしたのが賦課方式と呼ばれる現在の仕組みです。現役世代が納めた保険料や税を基に、時々の高齢者の年金給付に充てるということを採用しています。これは歴史的に同じような公的年金制度を有するような諸外国も採用していますが、日本の特徴としては、相当額の積立金を保有しているということです。賦課方式を採用しつつも積立方式の要素を取り入れるハイブリッド型とも言えるような形で運営しています。資料にはありませんが、これに対するようなものが積立方式で、これは納められた保険料、言わば貯金のように積み上げて老後の給付に充てるというものですが、我が国の制度は現在採用しておりません。また、多くの国でも賦課方式を採用しています。

 この要因につながるものとして、次の4ページを御覧いただければと思います。こちらは公的年金の役割として、予測できない将来に備える「保険」ということをタイトルに上げております。そこに3つの予測できないリスク、長寿リスク、あるいは突然所得を失うリスク、インフレなど経済の変動で年金の実質的価値が失われるリスク、こういうものがリスクとしてある。実際に左の下、物価の変動の数字、「昔と今の物価」というところですが、大きく変わっております。また、昨今、不透明な時代ですので、今後数十年、さらに物価、インフレはどうなるのか誰にも分からないというのがあります。そういう中で上のようなリスクに対応するもの、民間商品でもなかなかこういうものの開発は難しいだろう。そういう意味では貯金、いわゆる積立方式での対応は困難というのが今の状況だと考えております。いっとき、先進国以外で2000年代、積立方式の年金を導入するところもございました。ただ、その後、リーマンショックであったり、インフレであったり、非常に目減りする、あるいはその価値を維持するのは想像以上に大変だということで、積立方式では経済の変動には十分に対応できないことが明らかになってきました。繰り返しになりますが、将来予測できない、また、個人にとって様々なリスクがある、経済の変動もある。そういう中で、保険としての安定性があるのは賦課方式である、という共通理解が進んでいると承知しています。

 その点も含めて5ページ、年金制度の機能という形で整理しました。これは堀先生の御著書からお借りして整理させていただいたもので、1、2、3と3つあって、最初は突然所得を失うリスク、いわゆる防貧機能、これが生活の安定を図り、安心をもたらすというものです。それから、所得再分配機能、能力に応じて負担いただき、それを元に所得の格差を緩和する、これは次ページで改めて御説明します。最後に、経済の安定や成長に資する機能で、年金は好況あるいは不況にかかわらず継続的に現金を支給するということを通じて、高齢者の生活の安定だけでなく消費活動を通じて経済社会の安定にもつながるという機能も持っています。

 次のページ、所得再分配機能について、改めてのスライドになります。厚生年金の2階建ての構造のうち1階部分の基礎年金が定額であることから、こういう機能があると言われています。下の図は厚生年金の加入者について、左が負担、右が給付を図示したものです。負担のほうは賃金掛ける保険料率、現在18.3%になりますので、比例的になります。一方で、給付は右のほうですが、負担のいかんにかかわらず、加入の月数に応じて基礎年金が給付されます。黄色部分になりますが、この部分が再分配機能を有すると言われています。その下のところで数字で見ると、例えばですが、賃金が40万から20万と半分になった場合、保険料負担は半分になる一方で、給付のほうは基礎年金の定額がありますので半分にはならない、ここでいうと28%減に抑えられている。これは高い保険料を負担した方から言わば所得が移転されている、再分配が行われているというものです。したがいまして、定額のこの基礎年金の水準が高くなれば所得再分配の効果は大きくなりますし、これが低くなれば効果は小さくなる。そういう意味で基礎年金の水準が非常に重要になってくるものと捉えております。

 駆け足で恐縮ですが、ここからはこれまでの経緯、いわゆる歴史に関するところです。

 スライド7、8を御覧いただければと思います。昭和17年、今の厚生年金の前身となる制度が創設されまして、昭和36年、国民年金が始まります。ここで全ての国民がいずれかの年金制度に入る道が用意され、皆年金と呼んでいます。そこから昭和60年、この国民年金を拡充する形で基礎年金が創設されました。その後幾つか改正していますが、大切なところは平成16年、現在につながる財政フレームの導入という点です。以下、順を追って見てまいります。

 次は9ページになります。最初は60年改正です。上が60年改正前ですが、これは昔の法律、旧法と言われますが、国民年金、厚生年金、共済と縦割りで別々の財政運営、支給要件、給付水準もまちまちでした。そこで、その下ですが、昭和60年改正で基礎年金ができて、全国民強制加入という形になり、給付の財源としてもこの基礎年金の給付に対する国庫負担、当時3分の1というものが共通して充てられております。そして、この全国民の共通の給付、この基礎年金の誕生が、先ほど申し上げたとおり所得再分配機能を有することの誕生につながったということでございます。2階建ての現在の仕組みでは、厚生年金の被保険者は同時に国民年金の第2号の被保険者でもありますし、厚生年金受給者は同時に基礎年金の受給者でもあります。また、財政的にも厚生年金の保険料には国民年金の保険料相当分、これは拠出金という形で含まれており、資金のやり取りも行っている。言わば60年改正前、旧法の縦割りの世界と比べますと、財政的にも一体的な関係が出てきたというのが60年改正後の世界であり、今にも続いています。

 続きまして、大きな改正として10ページですが、平成16年改正です。これは令和元年の年金部会の報告書から引用させていただいております。16年の改正前ですが、このときは5年ごとに財政再計算を行っており、制度をバランスさせるために、追加で負担の増加あるいは給付の削減という推計を出しておりました。これは言わば先の見えない負担増、給付減として、若い世代の制度に対する不安にもつながるという意見がございました。そこで、16年の改正では、先ほど局長からの挨拶でも触れたとおり、保険料負担の上限固定、その範囲内での給付水準の調整ということを構築して、今に至るまでこの枠組みで運営しております。

 11ページ、これはそのときの財政フレームの資料、何度も出てくる資料でもあります。下のシーソーのようになっていますが、左側の財源と右側の給付がバランスすること、このバランスしている状態が財政的に持続可能な状態であるということです。平成16年にこのスキームを導入して、これを構成する4つ、下のマル1からマル4のうち、保険料上限については2017年で引上げ完了、積立金の活用、マル3についても今、既に実施しております。残った2つ、国庫負担の引上げ、これはこの後御説明します24年の一体改革まで時間を要しました。またマル4、マクロ経済スライドについては、デフレが続いたということもあり、機能するまでさらに時間を要しています。また、平成16年以降の改正は、このマル4あるいはマル2の財政フレームをうまく機能させるために力を尽くしてきたという側面がございます。それから、マル4の一番下ですけれども、このときに所得代替率について50%を上回るということを法定化しております。また、これを確認するということから5年に1度の財政検証をしており、現在に至ります。

 そこで、16年改正以降の改正について12ページを御覧ください。この次は平成24年の社会保障と税の一体改革です。ここで国庫負担2分の1について、平成26年4月に、消費税5%から8%へ引き上げる中で財源を確保して恒久化しました。これをもって保険料、国庫負担、積立金と、収入面は手当てがなされてきたという評価ができると思っております。一方で、給付についてはマクロ経済スライドがなかなか発動しないという中、12ページの下ですけれども、平成28年改正を措置するまで引き続きの課題になりました。

 次に、13ページ、一体改革当時の法案ですが、御覧いただきたいのは右側の成立した4本の法律です。最終的にこの4本になり、下からですが、被用者年金の一元化法、これで公務員と厚生年金が統合され、平成27年、2015年から実施しています。その上の年金機能強化法では、国庫負担3分の1から2分の1の引上げをやるとともに、受給期間の短縮、あるいは今に至る適用拡大なども措置しました。それから、その上の年金生活者支援給付金法、こちらは成立したのは平成24年ですが、実施は消費税10%の引上げ時、令和元年、2019年10月からとなっております。最後に一番上、国年法等改正法、こちらは国庫負担について平成26年の恒久化の前の24年、25年の財源について措置しています。それから、マクロ経済スライドの関連で年金額の特例水準の解消が発動の地ならしになっており、これをやりました。

 14ページを御覧ください。平成25年に国民会議から報告書が出されて、課題が上げられております。今につながるような点がありますので、御紹介します。1つ目は、マクロ経済スライドの見直しで、デフレ経済が続くと調整が十分に機能しない。他方で、早期に年金水準調整を進めたほうが将来の水準は高く維持できるということで、在り方を検討するということでいただいております。それから、このときも基礎年金の調整期間が長期化するという点について指摘をいただいています。2つ目、短時間労働者の適用拡大、これは現在に至るまで引き続きということでいただいております。3つ目、高齢期の就労と年金受給の在り方、3番目の○ですが、就労期間を延ばし、より長く保険料を拠出してもらうことを通じて水準確保を図るということで、前回改正に至る様々な見直しはこの辺の視点からになります。それから、支給開始年齢の問題についても最後の○ですが、マクロ経済スライドあるいは16年スキームとの関係で、年金財政上の観点というよりは一人一人の人生、社会全体の就労・非就労のバランスの問題として検討されるべき、こういう御指摘をいただいたところです。

 このマクロ経済スライドの発動に関連して、15ページをつけました。これは早期に機能させることの重要性という25年でも御指摘いただいたことです。左軸が所得代替率、横が時間軸です。平成16年以降、まずはデフレが進行して賃金が減少する中で代替率の分母が低下、それから、マクロ経済スライドが発動できず分子は維持という中で、結果的に代替率は逆に上昇する、それが左の上の楕円のあたりが起きたところです。実際、マクロ経済スライドについて実施したのは平成27年(2015年)、令和元年(2019年)、令和2年(2020年)の3回という状況です。本来、実線のとおり代替率が先に低下した後、早く調整期間が終了する、その結果、一定レベルを維持するというところ、実際には点線のとおり推移するような形になっています。この仕組みはマル1とマル2の面積が同じという点が重要な点で、早く調整したほうが将来の受給者の水準は相対的に高い。言い換えれば、16年改正で固定された負担の下での給付全体のパイについて現在と将来でどう切り分けるか、このトレードオフの関係、この機能を早期に発揮することが重要ということになります。

 それを措置したのが平成28年改正ということで、次の16ページを御覧ください。ここに改正の概要で5点ありますが、本日御説明したいのは3番のところで、年金額の改定ルールの見直しです。

 これはさらに別スライドを用意しており17ページになります。2つやっていて、1つはマクロ経済スライドのキャリーオーバーと呼ばれる仕組みです。その下のマル1の絵のところ、マクロ経済スライドの利き方について、左のような場合には十分利くのですが、景気後退期あるいは賃金、物価が十分上がらないような場合では、真ん中の絵ですけれども、十分利かない。その黒線より下のはみ出した部分、これが本来ならその年に発動したかったものの、できなかったマクロ経済スライドの部分です。これを翌年以降にキャリーオーバーするというのがこのとき改正した措置です。物価、賃金は年々変動しますので、それをならす形で調整していく仕組みです。これは平成30年から施行されており、これまで計3回、3年分といいますか、本来できなかった平成30年、令和3年、4年の分について繰越しになっている状況です。現在の令和3年と4年の2年分については、来年の物価、賃金の変動との関係でどうなるかということになります。

 2つ目がその下、スライドそのものの見直しです。これは真ん中あるいは右にあるような状態、物価と賃金がマイナスの場合のスライドについて、赤い点々の矢印を新たに改定する仕組みを導入しました。これは令和3年度から施行されており、実は今年度、令和4年度の年金額改定でも適用されました。この真ん中の絵です。0より物価がマイナス、物価が去年1年間でマイナス0.2でした。それから、賃金はさらに低くて、マイナス0.4でした。これが改正前の仕組みですとマイナス0.2の物価を用いた改定になるところ、今年度については賃金のマイナス0.4を使って改定をしております。

 そういう意味では28年改正を通じて、マクロ経済スライドあるいはスライドそのものについて発動する環境が整った状態になりました。平成16年の導入からしばらく時間がたって、その下地が整ってきたことになります。

 その次が前回の令和2年の改正、前の年金部会の御議論になります。18ページですが、平成30年4月から議論を開始いただき、財政フレームについては一区切りついたということだったと思いますが、それ以外のそこにあるような議題を御議論いただきました。途中の過程では、右の緑のところですが、適用の在り方について別途懇談会で議論して整理をいただいております。結果、元年12月に議論の整理ということで取りまとめいただきました。

 19ページ、各回の開催状況と議題になります。全15回の中で第9回、令和元年8月に令和元年の財政検証の結果を事務局から報告させていただいております。

 その財政検証結果の報告が20ページからになります。従来同様、人口推計について低位、中位、高位、これは当時2017年4月に公表された人口推計を用いています。それから6つの経済前提、これは今日設置いただいた経済前提委員会での御議論を踏まえたもので、それから、オプション試算を2種類実施しております。その結果経済成長と労働参加が進むケースでは、現行制度の下で引き続き50%を100年間確保できる、このような結果になったことを確認したということでございます。

 21ページから、その数字になります。財政検証については、改めて説明する機会を設けたいと思っており、本日は資料の紹介にとどめおかせていただきます。

 21ページは、基本となる人口中位の下で2019年時点に61.7%である所得代替率が、ケースIからVIに応じて、括弧の年度でこうなるということで示したものです。

 22ページ、23ページは、それぞれ結果について年金額を記載する形で比較したものになります。こちらも本日は紹介にとどめます。

 24ページ、これは当時行ったオプション試算で、オプション試算というのは、仮にこのような改正を行った場合に、基本となる検証結果に加えてどのような変化が所得代替率で起きるかを確認したものと捉えています。オプションA、24ページの上ですが、被用者保険のさらなる適用拡大について3つのパターンで、だんだんその拡大ペースが大きくなっています。企業規模要件を廃止する、あるいは賃金要件を廃止する、全ての被用者へ拡大する、こういうパターンで試算をしています。それからオプションB、これは拠出期間の延長と受給開始時期の選択などですが、拠出期間の延長というのは、基礎年金について現在は20歳から59歳までの40年間加入いただきますけれども、これを45年に延長し、さらに納付年数が延びた分に合わせて基礎年金を増額するという場合で試算をしたものです。それから、在職老齢年金の見直し等々、様々なパターンについて試算しています。

 その結果について、25ページは、オプションA、被用者保険の適用拡大をした場合です。青い部分が既に適用になっているところですが、オレンジの部分が125万人、325万人というように対象範囲を拡大した場合です。結果は一番上の赤で、適用拡大は年金の給付水準を確保する上でプラスになる、特に基礎年金にプラスということが確認されたものでございます。実際、代替率にどの程度影響があるかは、右にそれぞれ書いております。

 次の26ページ、これはオプションBの仮定でして、結果は27ページです。上のところに試算結果があり、基礎年金拠出期間を延長した場合にどれぐらい現行から上がるのかについては一番上になり、拠出期間の延長あるいは繰下げの選択、これは給付水準を確保する上でプラスになることの確認をしたということでございます。ここまでが令和元年の財政検証の概略です。

 この財政検証を踏まえて、それから、年金部会で議論の整理をいただいて、それを法案化したものが28ページ以降になります。

 29ページ、こちらをいわゆる令和2年改正法ということで国会に提出して、5月に成立、6月公布となり、現在段階的に施行しているものです。公的年金関係は主に3点を改正しました。一番上、1.被用者保険の適用拡大、これは企業規模要件について、段階的に拡大するもので、この10月に100人超、さらに2年後は50人超と拡大します。それから、個人事業所についても税理士、弁護士といった士業について追加をしております。2番目の在職中の年金受給の在り方見直しについては、在職中の年金受給者の方について年金額を毎年定時に改定する仕組みです。在職老齢年金制度はその下ですが、60から64歳、いわゆる特老厚という60代前半の年金受給者の方が働いた場合の在職老齢年金制度について、年金給付の停止基準額を引き上げることをしております。それから、受給開始時期の選択肢を拡大するということで3番、それまで60歳から70歳となっていたものを75歳の間に拡大してございます。

 このそれぞれの改正内容が、その後ろの資料になっており、こちらは少し割愛していきたいと思っております。

 30ページ、31ページは適用拡大の関係です。申し上げたとおり段階的に拡大しており、この2年後、2024年10月から50人超の規模企業まで拡大するということで決まっております。この10月に施行して、私どもも注視していましたが、大きなトラブルや問題なく施行されたと捉えております。

 31ページは、先ほど申し上げた非適用業種の見直しについてで、こちらも今年の10月から適用しております。

 32ページ、在職定時改定の導入ということで、この4月から施行されており、定時改定の時期が毎年10月ですので、今回やっております。

 33ページ、在職老齢年金の見直しについてで、低在老といっていますが、60歳台前半の在職老齢年金制度の基準を高在老と同じ47万に引き上げたもので、こちらもこの4月から施行しております。

 最後、繰下げの話が34ページになります。年齢上限を引き上げて、下のところに60歳から75歳までの繰上げあるいは繰下げの減額・増額率をお示ししております。このとき、繰上げ減額率についても見直しをしており、それまでの0.5%から0.4%に改正をしています。

 以上、駆け足でここまでの歴史を振り返りましたが最後に、今後の検討課題ということでいただいている点を御紹介してまいります。

 36ページからは、は令和元年12月にいただいた議論の整理からほぼそのまま抜粋してきたものです。最初に検討の視点ということで、社会経済あるいは労働市場の変化に対応した制度、これは雇用政策とも連携しながら検討を進める必要という御指摘です。それから、財政検証はPDCAサイクルだという御指摘、その中でオプション試算が非常に重要だという御指摘をいただいております。1番目は、被用者保険の適用拡大で、企業規模要件について、影響の検証を行いながらさらなる拡大について議論すべきという御意見。その次は、個人事業主の適用業種について引き続き士業以外についても検討すべきという御意見です。3番目は兼業・副業といったものを含め、適用基準を満たさない働き方をされている方、こういう方々に対する保障をどうするかという点。それから、フリーランス、ギグワーカー、請負といった、そもそも現行法では被用者として適用されず、そういう意味では個人事業主として国民年金の1号被保険者なのだけれども実態は雇用に近いという方々への保障の在り方について、問題提起をいただいております。第3号被保険者制度についても、このときは適用拡大を通じて縮小・見直しに向けたステップを踏むということで御指摘いただいております。

 37ページ、高齢期の就労と年金受給の在り方について前回、改正しなかった高在老を含め、在り方について引き続き検討という御指摘。それから、高齢期の就労が変化しておりますので、その就労と年金の在り方についての検討、あるいは組合せの選択について検討するよう御指摘をいただいております。

 38ページは所得再分配機能の維持というくくりでいただいており、基礎年金について、これは冒頭御説明したとおり、所得再分配機能を有していますが、マクロスライドの調整期間が長期化することでこの機能が低下する点について非常に重要という問題意識をいただいております。そのためにもまずは適用拡大をということ、さらに、マクロ経済スライドの効果について引き続きその検証を行うべきということです。4つ目は、保険料拠出期間の延長、これは先ほど御紹介したオプション試算Bになりますが、これについて必要な財源確保の在り方も検討した上で検討といただいています。

 39ページ、その他ということでいろいろいただいていますが、障害年金・遺族年金については前回の年金部会では資料という形でお示ししたものの、議論する時間がなかなか取れなかったと聞いております。こういうものについて、社会経済状況の変化に合わせた見直しを行う必要があるのではないかということです。中ほどでは、モデル年金以外の所得保障の状況についていただいております。それから、広報関係では、周知や年金教育が非常に重要だということで、こちらは私どもも年金広報室という専門の室があり、そこでやっていることもございます。また状況を見て御報告させていただければと思っております。

  40ページは、令和2年改正法の附則です。条文ですので分かりにくいのですが、いただいたものは年金部会のものと重なっております。最初の第1項は所得再分配機能の話です。第2項は適用拡大の話、第3項については調整期間が長引くという点についての指摘です。第4項は、国民年金の第1号被保険者の保険料負担、これは産前産後期間については2019年4月から保険料を免除しており、保険料の引上げも行いましたが、育児期間についても配慮を考えるべきではないかということでいただいているものです。

 41ページ、42ページは、国会の御審議の中で附帯決議という形で、左側は衆議院の厚生労働委員会、右側は参議院の厚生労働委員会からいただいたものです。こちらも重複する点が多々ございます。最初の被用者保険の適用拡大については、企業要件についてできるだけ早期に撤廃、速やかに検討開始というもので、ただし、負担が増加する中小企業に対しては、各種の支援措置の充実を検討することも併せていただいています。それから、財政検証について、これは参議院のほうから、経済前提の設定の仕方について、現実的かつ多様な経済前提の下でその結果を示すとともに、モデル年金世帯以外の多様な世帯の代替率を試算する、より実態に即した検証を行うということをいただいております。一番下、基礎年金の水準、これは調整期間の話、それから基礎年金拠出期間の延長で45年とすることについて速やかに検討を進めるということで、衆参ともにいただいております。

 最後、42ページです。一番上の繰下げ受給、これは繰下げの中で老後の加給や振替加算などやや複雑になっているところを分かりやすく周知徹底すべきではないかという御指摘です。下のほうで第3号被保険者について検討を進めるということ。それから、年金生活者支援給付金についての検討。最後に、育児期の免除、これは国民年金の保険料免除に併せて国民健康保険についても検討するという指摘です。

 以上、駆け足ですが、これまでの歴史あるいは年金部会でいただいた御指摘を紹介させていただきました。前回改正の報告書は言わば前の体制からの引継書だと思っており、参考資料2につけましたので、お時間があれば御覧いただきたいと思っております。

 以上になります。よろしくお願いいたします。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、委員の皆様から御意見、御質問などを承りたいと存じます。今日は第1回目でございますので、もしよろしければ御出席の皆様全員に御発言をいただければと思ってございます。御意見、御質問があれば御発言いただければと思いますし、ございませんようでしたら、簡単な自己紹介でも結構でございます。これから長丁場で議論してまいりますので、どういったメンバーで議論していくのかをお互い知る意義はあるのではないかと思ってございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、出口委員は御欠席でございます。酒向参考人は後ほど御発言いただきたいと存じます。小野委員からお願いできますでしょうか。五十音順ですみませんが、お願いいたします。

○小野委員 御指名いただきました、小野でございます。肩書は年金数理人ということで書かせていただいておりますけれども、主に数理面ということで前回から参画をさせていただいているということでございます。よろしくお願いいたします。

 前回からの参加ということで、前回の制度改正に関して個人的には消化不良だったと思っているのが、被用者保険の適用拡大の問題でございます。被用者保険の適用拡大というのは、本来、被用者には全て被用者保険を適用すべきとの原則がありまして、これが何より重要なのではないかと思っております。事業主に社会保険料を負担せずに済む働かせ方を認めますと、事業主の裁定行為によりまして、労働者への処遇が底上げされない。また、労働の質という面でも長期的には様々な影響が懸念されると思っております。こうした労働者を極力なくす被用者保険の適用拡大の徹底は、多くの労働者にとっても、また、国の財政にとっても好ましい解決方法だと思っておりまして、社会保険側で努力すべき政策だと考えてございます。

 以上でございます。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 権丈委員が御欠席と承っております。小林委員は御欠席ということでございますので、途中間に合って御参加いただきました駒村委員からお願いできますでしょうか。

○駒村委員 ありがとうございます。慶應義塾の駒村でございます。遅れまして大変失礼いたしました。

 前回から引き続きということでございます。これからどういう議論をしていくのか、今日はこれまでの動きを御紹介いただきました。

 当然ながら、1つ目は、人口推計に連動して行うということがありますので、特に少子化の傾向がどう今後続いていくのかというところは極めて重要な問題だと思います。これは1つ目です。

 2つ目は、プラットフォーマー等々、ギグワーカー等、新しい働き方が出てきていることに対しても対応しなければいけないと思っています。

 財政的な問題としては、3つ目になりますけれども、45年加入、国民年金45年の問題も前から取り残してきた問題でありますし、特に大きな問題に今後なっていくだろうというのが、マクロ経済スライドによる基礎年金の給付水準がかなり多めに下がっていく、これに対してどういう手当てをするのか。

 あとは、今も小野委員からもありましたけれども、適用拡大の問題あるいは免除に関することも幾つも残っているのではないかと思います。

 高在老も前回詰め不足というか、もう少し議論したかったテーマだと思っています。

 あとは、これがどう続くか分かりませんけれども、積立金の運用の見通し、これは今後大きな経済政策の変化が出てくると、従来ほど貢献してくれるのかどうかという心配も出てきているのではないかと思います。

 最後に、公私年金の連携というか、一体的な見方も大事かと思います。前回の改正も実質的には公私年金をもってどういう老後生活を保障するのかという視点があったと思います。生涯を通じて自分の公私年金をどう形成していき、どのように取り崩していくのか、いつまで働いていくのかということを多くの国民に分かりやすく伝える方法、仕組み、機関かもしれませんけれども、考えなければいけないのではないかと。これはこの部会の守備範囲を超えるかもしれませんけれども、公的年金に関してきちんと理解をいただき使いこなしていただくためには、支給開始年齢等々の問題もいつからもらい始めるかという問題もあると思いますので、そのためには多くの国民が自分の年金がどう見込まれるのか、いつからもらうとどういうことになるのかをより分かりやすく理解できる仕組みを検討すべきではないかと。これは公的年金、それと本体の守備範囲等は超えますけれども、そういう点が大事かと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 是枝委員、お願いできますでしょうか。

○是枝委員 大和総研の是枝俊悟です。今回から初めて参加させていただきます。

 税制や社会保障制度のほか、個人の資産運用、ライフプランニング、男女の働き方や子育ての関わり方などについて研究しております。昭和60年生まれになりますので、年金制度でいう基礎年金制度がつくられて、第3号被保険者制度がつくられた年に生まれた36歳になります。今回の年金部会の中では恐らく最年少かと思います。制度の知識については先輩方には及ばないところかと思いますが、より若い世代の声を拾いやすい立場におりますので、働き方、暮らし方、世帯や家族の在り方が変わりゆく中で、個人や世帯で背負うことが難しいリスクを年金制度としてどのように社会で分担していくべきか、全世代的な議論をさせていただければと思います。

 今回、これから長い期間をかけてゆっくり議論していくということですので、具体論に踏み込まずに、年金制度改正を意識する際に大局的な視点について幾つか述べさせていただきたいと思います。

 現在、厚生年金の保険料率は18.3%で固定されておりまして、給付水準は先ほど御説明があったとおり、この保険料と定率の国庫負担、若干の積立金で賄える水準に向けて調整が進められているところです。この基本的な仕組みの下では、年金制度というのは、今の現役世代が今の高齢者を支えるという一方的なものではないことの理解が重要だと思っております。むしろ自分たちの世代が現役世代に築き上げてきたものの結果を、自分たちの高齢期に受け取るという関係になっております。自分たちの世代がより多くの子供を残すことができれば、自分たちが高齢者になったときにその子供たちに保険料を納めてもらって、自分たちの年金が増えるという関係にあります。また、自分たちの世代が男女問わず高齢になっても働ける社会をつくっていければ、その社会の基盤を後ろに生まれた世代が引き継いでくれることになりますので、保険料を通じて自分たちの年金が増えるという関係になっております。

 現在、将来の年金給付水準の見通しについては、夫婦のうち夫のみが40年間働く世帯をモデルとしたモデル年金というものをベースに示しております。現在の年金受給者についていえば、モデル年金は現在の夫婦の平均年金受給額とおおむね合致しております。しかし、現在の現役世代はより多くの女性が厚生年金に加入しており、男性も加入期間が延びていく見通しです。さらに支給開始年齢は標準的なものとして65歳が設定されていますが、この繰下げ受給が進むこととなれば、その平均的な受給開始時期を基にした年金受給水準を検討することもできるかと思います。より若い世代が、より多くの人が厚生年金に加入して高い賃金で働く、より長い期間働くことができるようになることで、自分たちの年金を増やしていけるのだという見通しをしっかりと示していく必要があるのではないかと思っております。

 また、年金制度には、保障内容が男女で異なっている制度が幾つか残っております。所得を得ることが難しい状況となった人に手厚い保障を行うという考え方自体は正しいことと思いますが、それを今もなお男女で判断するのがよいのか、再検討が必要な時期に来ていると思っております。また、制度が男女の賃金差を固定化してしまう面もございますので、男女の賃金差の解消を促すように制度を改正するという視点も持つべきではないかと思っております。

 以上です。よろしくお願いいたします。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 佐保委員、お願いいたします。

○佐保委員 ありがとうございます。連合で社会保障分野を担当しております、佐保といいます。どうぞよろしくお願いします。

 前回の見直しの際にも委員として携わっておりましたが、途中から交代で委員として入りましたので、取りまとめの間、2か月ほどこの年金部会に参画をさせていただきました。

 ほかの委員から前回の振り返り等を含めていろいろ御意見が出されましたが、私からは基礎年金について話をさせていただきます。

 厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、公的年金収入だけで生活する高齢者世帯の割合は、2021年時点で24.9%です。2019年と比較すると大幅に減少していますが、依然として高齢者世帯の収入の6割以上を公的年金が占めており、老後の生活の柱であることに変わりはありません。したがって、あるべき公的年金制度を検討するに当たっては、財政の持続可能性だけではなく給付の十分性を確保する視点が求められると考えます。

 その上で、令和2年年金改正法では、将来の所得代替率の低下が見込まれる基礎年金の給付水準の底上げが行われなかったことは残念であるものの、与野党を超えて充実の必要性が共有され、両院において速やかな検討を進める旨の附帯決議が議決されたことは、前向きに受け止めております。

 基礎年金はあくまで老後の基礎的部分を保障するものですが、基礎年金の給付水準の低下は社会保険制度が発揮すべき防貧機能を低下させるとともに、厚生年金保険の所得再分配機能を低下させることになり、第1号被保険者期間が長い人や低賃金の厚生年金保険加入者ほど深刻な影響を受けやすいと考えます。フリーランス等、曖昧な雇用で働く人が増加し、団塊ジュニア世代が高齢期を迎える2035年頃も迫る中、誰もが安心して暮らし続けられるよう、今後の年金部会では、さらなる国庫負担割合の引上げも含め、基礎年金の財政基盤を抜本的に強化するための議論を行うべきと考えます。

 私からは以上です。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 島村委員、お願いします。

○島村委員 初めて参加させていただきます、立教大学法学部の島村と申します。専門は社会保障法と労働法になります。

 私から、今、佐保委員からもありました十分性のお話をさせていただきたいと思います。

 これまでデフレによってマクロ経済スライドがあまり適用されなかったことで、現状では本来あるべき水準よりも高い水準で基礎年金は支給されていると思うのですが、その一方で、物価などの高騰が相次ぐ中で、基礎年金の水準として十分なのかという問題があると思います。制度の創設当初は、基礎年金は、先ほどのお話にもありましたとおり、老後生活の基礎部分を保障するものという発想だったかと思いますが、2004年の改正を経て、現状では年金生活者支援給付金の額を合わせた形でないと高齢者の基礎的な消費支出を満たすことができない状況にもなっているかと思います。今後、マクロの発動によって基礎年金の実質的価値がますます低下することになるとすると、基礎年金の水準としてこのままでよいのか、水準を考える上でよって立つべき指針といいましょうか、基礎年金は何をそもそも保障するものなのかを改めて整理した上で、所得の再分配機能については議論をしていきたいと考えております。

 もう一点なのですが、高齢者の就労と年金の関係についても問題意識を持っております。60歳以降で働く場合でも、働き方によっては70歳まで厚生年金の被保険者となって保険料を拠出しますが、拠出した保険料は厚生年金勘定にとどまって、基礎年金拠出金の算定対象にはならないというところがあるかと思います。厚生年金の経過的加算で処理がされているのかと思いますが、その意味で、高齢者の就労促進が幾ら進んだとしても、基礎年金勘定がその恩恵を受けることはできないというのが現状かと思いまして、そこに問題意識を持っております。基礎年金拠出金の仕組みをどうするか、経過的加算を今後も維持するのかを含めて、高齢期の就労が厚生年金だけでなく国民年金との関係でも意味のあるような仕組みにする必要があるのではないかと考えております。

 最後に、駒村委員もおっしゃっておられました公私年金、私的年金等も併せた上でどういう設計にしていくのかという点についても重要性が非常に高いと思っておりますので、付け加えさせていただきます。

 以上です。ありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 オンライン参加の武田委員、お願いできますでしょうか。

○武田委員 ありがとうございます。三菱総合研究所の武田でございます。私は前回に引き続き議論に参加させていただきますが、改めてどうぞよろしくお願いいたします。

 今後の年金制度の改革の方向性を御提示いただきましたが、この方向性について大きな違和感等はございません。中でも特に重要と考えておりますのが、被用者保険の適用拡大で、これをしっかり進めていければと考えております。資料にもございますとおり、老後の生活を支えるという重要な役割があると思います。この点はこれまでも取り組んでまいりましたが、規模要件の撤廃も含めました見直しや非適用業種の見直しをぜひ検討していければと考えます。また、国民のライフスタイルも随分多様化しております。これから重要な点は、いかに働き方に中立な制度を築いていくか、であると思います。その観点からも、被用者保険の適用拡大を進めながら第3号被保険者制度の縮小・見直しのステップにつなげていくことが極めて重要と考えます。

 勤労者皆保険の実現は、全世代型社会保障構築会議でも一つの大きな柱になっており、そこも含めてぜひ本部会で皆様と御議論させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 武田委員がおっしゃいましたように、全社会議で勤労者皆保険の議論がされていますので、そちらの動向も見ながらになるのかと思ってございます。ありがとうございます。

 それでは、嵩委員、お願いします。

○嵩委員 東北大学の嵩と申します。社会保障法を専攻しております。よろしくお願いいたします。

 私からは大きく多分3点になります。まず1つ目は、御説明もありましたし、多くの委員の方々がおっしゃっておりますように、被用者年金の適用拡大について今後も進めていくべきと考えております。被用者年金の適用拡大については、厚生年金の理念というか考え方が少しここで転換されたのではないかと考えています。もともと厚生年金はフルタイムの人を中心に比較的所得が高い人たちの間での助け合いという仕組みだったと思うのですけれども、適用拡大によりまして、パートタイマーの方々で比較的所得の低い人たちも含めた連帯の仕組みという形に機能が拡大しているかと思います。それに伴いまして、先ほど来、ここで御説明がありましたように、再分配が基礎年金の存在のため強化されているということかと思います。このように厚生年金の機能が拡充しておりますので、今後とも事業規模にかかわらず多くの人たちを包摂していく必要があると思います。そのため、もちろん理念としては速やかに拡大していくことが望ましいかと思いますが、他方で、それに伴って雇用にどういう影響を与えるのかも注視していく必要があると思います。また、もう一つは、拡大に当たっては適用業務に大変な負担が生じますので、制度改正の確実な実施という視点も踏まえて、適用業務の実効性にも配慮しながら、拡大要件の緩和を慎重に検討していく必要があると考えております。

 2つ目は、遺族年金についてです。今回の資料においては「その他」というところに入っておりますけれども、厚生年金保険では遺族年金について性別によって区別がありますので、こちらについても見直しを今後検討していく必要があるかと考えております。あとは、女性の就労率が高くなっていることから、遺族年金のうち特に稼働年齢層における遺族年金の位置づけを見直す必要が出てきているのではないかと考えています。

 最後に、令和2年の法改正においては、高齢者の長期就労を前提にして、あるいはそれを促進するような形の仕組みが充実していきまして、それが今後の受給水準の向上に資するのだということだと思うので、その拡充を今後進めていくことは重要かと思います。ただ、他方で、60歳代前半とか比較的若い段階で就労できなくなる方がどのくらいいるのかを把握する必要がありますが、そういった方々に対する年金保険の機能をいま一度見つめ直す必要もあるかと思います。今まで厚生年金などですと格差が縮小するように、現役期の格差が老後に引き継がないようにということで様々な仕組みが講じられたと思いますけれども、そのように、社会保険によって少なくとも格差が拡大しないような視点が重要かと思っておりますので、比較的若い段階の高齢期に就労が難しくなる方に対する配慮も必要かと考えております。

 以上になります。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 玉木部会長代理は御欠席でいらっしゃいますので、永井委員、お願いいたします。

○永井委員 ありがとうございます。連合の構成組織のUAゼンセンの永井と申します。前回の議論から参加させていただいております。

 私の組織はパートタイマーをはじめとする短時間労働者が多く加入している組織であり、前回も短時間労働者の適用拡大を中心に意見を述べており、本日も社会保険の適用拡大について、今後の年金部会の議論に当たって申し上げたいと思っております。

 1つ目は、令和2年の法改正により、この10月から士業が追加されたり、企業規模や勤務期間要件も拡大されていますが、私どもも被用者は被用者保険が適用されるべきという考えから、雇用形態、勤務先の企業規模や業種などによって社会保険の適用の有無が変わることについてはいかがかと思っているところでございます。今後の年金部会においては、先ほども御説明のありました両院の附帯決議を踏まえた企業規模要件の速やかな撤廃、個人事業所の適用業種の見直し、さらには年収要件の引下げなども含めて、全ての労働者への社会保険の適用に向けた前向きな議論を行っていくべきだと考えております。

 2つ目に、お伺いしたいことなのですが、先ほども全世代型社会保障構築会議の話が出ておりましたけれども、私どもも今、収入の壁といったことについては非常に関心を持ち、また、大きな課題だと思っております。適用拡大における年収要件については、過去の部会においても第1号被保険者とのバランスなどを踏まえ現行を維持すべきとの意見があったと承知しておりますが、第3号被保険者制度を含め、社会保険制度における被扶養者の収入要件とともに大きく関連していると認識しております。お伺いしたいのは、この全世代型社会保障構築会議の議論の内容や結果はこの年金部会ではどのように取り扱う予定なのか、この部会ではあくまでも第3号被保険者制度に関する課題のみに対する議論を行う予定なのか、この辺の進め方も後で教えていただければと思っております。ありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 後でということですが、今の段階でお答えできるものがあれば、事務局からございますでしょうか。

○年金課長 御指摘をありがとうございます。

 御案内のとおり、全世代型社会保障構築会議という官邸の下の会議で勤労者皆保険は一つテーマになって議論が進んでいます。それから、この年金部会の先生方の中にもそちらにも参加されている方がいらっしゃるとことは、先ほどお話があったとおりです。そういう意味で、そちらの議論は当然見ていくと思いますし、ただ、どのような扱いをするかは、これは部会長を含め皆様と御相談かと思っております。御意見を承りましたので、また調整させていただきます。

○永井委員 ありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、原委員、お願いします。

○原委員 TIMコンサルティング、社会保険労務士の原でございます。

 前回から参加させていただいております。年金に関しては、20年以上ですが携わってはおりますが、現在は、金融機関などで年金業務に携わっている方、または、年金について一般の方に教えるお立場の方に対してや、あとは、いろいろな企業で従業員の方等に対して、公的年金や企業年金・個人年金、あるいは将来設計などについての研修等の企画・運営支援などを行っております。

 今回、大まかな大枠的なコメントということで、特に今後の検討課題にあったところから主に3つ、具体的なことというよりは大枠的にコメントさせていただきます。

 まず、就労と年金というところについて、36ページにあったと思うのですけれども、被用者の方については適用拡大が進められてきておりまして、既に改正が進んでいるということですから、今後どう進めていくかということも大事だと思います。また、働き方が多様化していく中で、それまでの自分の専門性、技能を生かして独立して働いている人たちもいます。その中には実態は雇用に近いような働き方をしている人もいらっしゃるということもありますし、また一方では、完全にフリーで働いている方もいらっしゃって、働き方が非常に多様化といいますか、様々な働き方をしている方がいらっしゃいますので、職種にもよるかとは思いますけれども、今後の就労と年金については柔軟に考えることも必要なのではないかと思います。それについては、以前に別途懇談会が行われていましたけれども、あの時のような感じで、或いは違う形でもよいので、関係者の方から直接ヒアリングできるような機会を設けていただくなどすると良いのではないかとは思っております。

 そういった中で、現在の受給者の方ですとか、あるいは受給者に近い方への影響はもちろん重要だと思いますけれども、今後の将来の年金の姿といいますか、いろいろな社会の姿を長期的に考えていく必要があると思います。つまり、大学でも少し、主に年金制度について、学生の方に教える機会をいただいておりますけれども、大学生でも社会人でも若年層の方々から見た視点で考えていくことも必要なのではないかと思います。例えば長く働くことができる環境がこれからどんどんできていく想定をする場合に、そのような社会で年金制度の在り方を考えてみますと、現行の制度の中には、例えばいわゆる旧法時代の厚生年金などの制度にもあると思うのですが、すでに合っていないものがあるように思います。つまりは、以前からずっとそのままにしてきたといいますか、そういう制度・仕組みがあるように思われます。そういったものを若い方から見てもできる限り分かりやすい仕組み、納得しやすい仕組みで、シンプルなところはシンプルにしていくということで、今後の20代、30代といった若年層の方々の将来の年金の姿も念頭にしながら、変えていくところは変えていくとして、或いは、そのままにしておくところはそのままにしておくという柔軟性があってもいいのかと思います。

 2つめなのですけれども、高齢期の就労と年金のところなのですが、前回の改正で幾つか細かいといいますか、例えば、在職定時改定が導入されたり、繰上げの減額率が緩和されたり、低在老の基準額を緩和したり、いろいろな改正がありました。これまでの経緯を見てもいろいろな改正時・改正事項にも言えると思うのですけれども、年金制度の中で一つの仕組みを変えることになると、年金制度の中の他の仕組みに影響したり、あるいは想定していない方向へ動いていくようなことがあるように思います。したがって、年金制度で何かを変更する際の議論では、当たり前かもしれませんが、広い視点が必要だと改めて感じています。こういう制度改正をしたらどういう連鎖が起こるか、どういう行動を起こす人が出てくるかなど、関連する制度を広く、全体的に見ながら、変えていくべきところは変えていくといったことが必要なのではないかと感じております。なかなか難しいところではあると思うのですけれども、そういったこともあるかと思います。

 最後に、広報についてコメントさせていただきます。今、見える化ということが非常に言われていて、年金額もすぐに大体いくら受け取れるのかというのがシミュレーションできて、簡単に分かるようになってきており、これは非常に重要なことかと思いますし、これからも見える化はすごく大事だと思っております。ただ一方で、その金額の意味するところや公的年金の加入の種類など、基礎的な仕組みをしっかりと引き続き発信していく必要もあると思います。例えば公的年金の構造とか、保険料とか、給付の種類とか、もちろん今までどおり、公的年金の意義や役割をしっかりと伝えるということは最も重要な事だと考えますので、さらに発信していく必要はあるのですが、公的年金の仕組み、つまり、公的年金の構造、保険料、給付の種類なども含めて、正確な基礎知識をたくさんの人に持ってもらえるようにしなければいけないと改めて感じております。子供の頃から生涯を通じた年金教育の取組をさらに進める必要もあると思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、平田委員、お願いいたします。

○平田委員 ありがとうございます。働きかた研究所の代表をしております、平田未緖と申します。

 この社会保障審議会年金部会は初めての委員になります。その前に、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大の特別部会、そして、働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会にて、ここに関連するものとして委員を務めさせていただきました。

 人事のコンサルタントとしていろいろな企業に入り込みまして、その企業が人の面から活性化していくお手伝いを、いろいろなことをやっているというのが私自身の現在の仕事です。そのときに、いわゆるコンサルタントとして机上でやり方だけお伝えするということではなく、現場に入り込んで社員の方と一緒に現場を改善するような取組をしているところが特徴かと思います。前職は人事関係の情報誌の編集記者をしておりまして、そのキャリアが実は20年近くございます。そのときに、企業で労使がうまくいっている会社はどんなものか、そこに興味関心を持ってたくさんの取材をしてきた、特にパート・アルバイトさんを雇用している企業及びパート・アルバイトで働く当人の声をたくさん聞いてきたということがございまして、そういった背景からお声がけをいただいているのかと認識しております。

 今回のテーマの中での問題意識としては、さんざん出ている感じがありますが、適用拡大のところ、そして、3号のところ。そして、雇用類似の方々に関しても、非常に多くなっているので、悩ましいなと思っております。その上で、私の立ち位置としてなのですが、ロジカルにアカデミックに見通していくこともとても大事だと思うのですけれども、そこに専門性はございません。そうではなく、年金を払う人ももらう人も血の通った一人一人の生活者であり働く人なわけです。そういった現場の声も大事にしながら、この議論が血の通ったものになるような、抽象的ですけれども、そうなるために存在していきたいと思っております。

 議論において一人一人の声を聞くと、使用者も被用者も「自分が損をするのは困る」ということになりがちだと思います。そうすると収拾がつかない。あるいは多数決の世界になってしまう。果たしてそれがいいのかどうか、という点に難しさがあると思います。これに当たっては、いろいろな人のいろいろな声をできるだけ拾うことによって、みなでそれを見られるようにしたい。全体性を俯瞰して見ることで、一体何が最適かということが、人間の良心、これも抽象的で恐縮ですけれども、そういったところからおのずから見えてくるものもあるのではないかと思っております。同時に、人口問題や財政問題もあるので、社会保障制度としてどうあるべきかということもここできちんと議論しながらも、一人一人の人生にも目を向けたいと思います。先ほど高齢者のところで、年金支給開始年齢に関して「一人一人の人生や社会全体の就労と非就労のバランスの問題として検討されるべき」とありましたけれども、これは女性労働についても同じだと思います。一人一人がどう働き、あるいは報酬を得る形では働かないことを選択し、どう生きていくのかを考えられるような。そんなことも少しはここで話されることによって、国民一人一人が私も含めて自らの人生を考えられるような、その源になるような場になったらいいなと個人的に思っております。

 以上です。ありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、深尾委員、お願いできますでしょうか。

○深尾委員 一橋大学とアジア経済研究所に所属している深尾と申します。

 私は経済学が専門で、特に関心があるのは労働生産性を中心に日本経済の長期停滞の原因を探るということと、明治期以来の日本の長期の経済史、経済発展を研究するというのを専門にしています。年金部会については今回から参加させていただくということで、いろいろ素人なので、ぜひ勉強させていただきたいと思います。関心事としては、2点お話ししたいと思います。

 1点目は、日本の長期経済停滞を考えるとき、その大きな原因は優秀な労働者をうまく使いこなしていないということで、女性の多くや高齢者の多くが非正規雇用の形で雇われていて、雇い止め等で人的資本が蓄積されていないことが非常に重要な問題だと考えています。それから、中小企業や自営業で安い労働の形で便利使いというか、有効に利用されていないのも重要な問題だと思います。そういう視点から見ると、年金制度が雇用にどういう影響を与えるかということに私は関心がありまして、その意味では被保険者の適用拡大は非常に正しい方向だと思います。つまり、労働者をいかに有効に使っていくかを考え、労働者を差別、区別していかないという視点が非常に大事だと思います。

 2点目の関心事は、足元で非常に大きな経済変動が起きているということで、御承知のように、国際的な資源価格の上昇や円安で、実質賃金がかつてないくらい低下しつつある。それから、物的・人的資本の蓄積が停滞しているために潜在成長率が非常に落ち込んでいます。これが例えば年金制度の持続可能性やマクロ経済スライドにどう影響するかということにも非常に関心があります。

 いずれにしても、年金制度は素人なので、これから勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、オンライン参加の堀委員、お願いできますでしょうか。

○堀委員 どうもありがとうございます。初めて参加させていただきます、労働政策研究・研修機構の堀と申します。

 私は教育社会学の研究者でして、若者の働き方や意識についての研究をしております。その観点から、3点今回貢献したいと考えている点がございます。

 まず、1点目なのですけれども、若者の働き方や意識は変わっているわけなのですが、とりわけ近年の傾向としまして、自分でキャリアを主体的につくりたいという意識を持つ若者の割合が非常に増えていると認識しております。また、1つの企業に長く勤めるほうがよいという割合は、過去20年で最も低くなっている状況であります。多くの委員の先生方も御指摘されましたが、フリーランスなどを含め、多様化するキャリアを前提とした議論が必要かと存じます。

 また、第2点目ですけれども、若い世代では共働き世帯が急増しておりまして、先生方も御存じのとおり、特に若い世代にとってはモデル年金のリアリティーがますます薄れていると考えております。この点は、若者に対する年金の周知・広報の観点からも非常に課題が大きいのではないかと推測をしております。

 最後に、3号の被保険者につきましては、全体としては縮小の方向にあるのだろうと推測しておるのですけれども、少子化対策の観点からも、子育て世帯に対しては格別の御配慮をお願いしたいと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、百瀬委員、お願いします。

○百瀬委員 流通経済大学の百瀬と申します。今回から初めて年金部会に参加させていただくことになりました。

 今、皆様の議論を聞きまして、また、年金局からの説明も聞きまして、今後の年金改正の大きな論点は3つあったかと思います。1つ目が被用者保険の適用拡大、2つ目が基礎年金の拠出期間の45年化、3つ目が再分配機能の強化になるかと思います。

 この3つの大きな論点のうち、後ろの2つについてはかなり誤解を招きやすい、あるいは、なかなか理解するのが難しいところもあります。それゆえ、制度の加入者である皆様に分かりやすく伝える必要がある、特に改正が求められる背景について分かりやすく説明する必要あると思っています。例えば、基礎年金の調整期間は厚生年金の調整期間よりも長くなることが見込まれていますが、なぜそうなるのかというのは専門家の方たちはもちろん知っているわけですけれども、それが専門家でない方たちにも分かるように、伝わるように説明する必要があります。以上が1点目です。

 2点目ですけれども、前回の年金部会からの宿題として、障害年金・遺族年金の見直しがありました。障害年金に関しては、初診日関連の見直しが論点の一つになってくると思っています。遺族年金に関しては、既に何人かの委員の方がおっしゃいましたように、男女差の解消が論点になってくるかと思います。その際に、遺族年金の男女差については、男性が遺族年金を受給しにくいという側面がかなりクローズアップされるのですが、海外の動向などを見ると、むしろ女性の保険料拠出が遺族年金に反映されにくいという点が男女差解消の根拠の一つになっています。そういった視点もぜひ入れていただきたいと思っています。

 私からは以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、お待たせいたしました。酒向参考人、お願いいたします。

○酒向参考人 ありがとうございます。本日、出口委員が御欠席ということで、代わりに発言させていただきます。3点述べたいと思います。

 第1点目は、全世代型社会保障構築会議で議論されている勤労者皆保険制度の件でございます。こちらは年金部会で議論されるかどうか今後決めていくという御説明があったところですが、もし議論されることになりました場合には、労働者性など関連する法の制度での議論の積み重ねですとか、実務上の対応可能性も十分に考慮することが重要であると考えます。

 2点目でございます。資料2の38ページ目にありました所得再分配機能の維持・強化に向けた方向性ということでございまして、これはこれまでの1985年あるいは2004年の大きな改正をさらに一歩進めて見直していこうということかと思っておりますが、今後の議論に当たりましては、既に局長や百瀬委員からも御発言があったかと思いますけれども、国民にとって分かりやすいデータ、資料を御準備いただくことが大切であると考えております。そのほうが建設的な議論につながると思っております。

 3点目でございますが、年金制度全体を通した議論の必要性でございます。これは既に複数の委員の方から御発言があったところでございますが、年金に関しては公的年金以外に税や企業年金・個人年金、それぞれの役割・機能を果たしておりますので、節目節目で年金制度全体を見た議論を行うことが大事であると考えております。

 以上でございます。ありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 これで一当たり皆様から御発言をいただきました。さらにこの点を補足したい、あるいは追加で御発言されたいという方がおられましたら合図をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 会場ではいかがですか。ございませんか。

 オンラインではいかがですか。よろしいですか。

 ありがとうございます。

 少し時間が余ってございますが、御発言は一巡したということで、全体を通じて事務局から何かございますでしょうか。

○総務課長 次回の議題、開催日程につきましては、また追って御連絡をさせていただきます。本日はありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 最後のほうで委員の皆様から分かりやすいデータあるいは分かりやすい説明というお話がございまして、もちろんここでの議論は多くはマスコミを通じて国民の皆様に報道されることになると思いますが、我々はどういう議論をしているのかということを国民の皆様に分かりやすくお届けいただくという意味でも、データの出し方、説明の仕方等、事務局には今後御尽力いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。

 それでは、これにて本日の審議は終了いたします。御多忙の折お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。お疲れさまでした。