第18回社会保障審議会年金部会(議事録)
日時
令和6年9月20日(金)15:00~17:00
場所
東京都千代田区平河町2-4-2
全国都市会館 2階 大ホール
出席者
会場出席委員
菊池部会長 玉木部会長代理 出口委員 小野委員 小林委員 駒村委員
是枝委員 佐保委員 たかまつ委員 武田委員 永井委員 原 委員
堀 委員 百瀬委員
オンライン出席委員
権丈委員 島村委員 平田委員
議題
(1)「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会における議論の取りまとめ」について
(2)その他の制度改正事項について
(3)公的年金シミュレーターについて
議事
議事内容
○総務課長 ただいまから、第18回「社会保障審議会年金部会」を開催します。皆様、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。
初めに、委員の出欠状況を報告します。
嵩委員、深尾委員は御欠席、島村委員は少々遅れて参加される旨の御連絡をいただいております。権丈委員、島村委員、平田委員はオンラインでの参加となります。出席委員が3分の1を超えていますので、会議は成立しています。
続いて、資料を確認します。
本日の部会はペーパーレスで開催しています。傍聴者の方は、厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。
時間の都合により、資料番号のみ読み上げます。本日の資料は、議題1につきまして資料1と参考資料の1、2、議題2につきまして資料2、3、議題3について資料4を事務局で用意しています。また、権丈委員から資料の提出がありました。
事務局からは以上です。
以降の進行は、菊池部会長にお願いいたします。
○菊池部会長 皆様、こんにちは。本日も大変暑い中、お集まりいただきましてどうもありがとうございます。
カメラの方は、ここで退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○菊池部会長 それでは、早速議事に入らせていただきます。
本日は「「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会における議論の取りまとめ」について」、「その他の制度改正事項について」「公的年金シミュレーターについて」、以上3点を議題といたします。
それでは、以上の議題につきまして事務局からまとめて説明をお願いいたします。
○年金課長 年金課長でございます。私のほうから議題の1と2、資料では1から3まで御説明します。
まず、資料1をお開きください。こちらは「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方」いわゆる適用拡大についてとなります。
2ページを御覧いただくと、年金部会では昨年5月に議論いただきました。それから、年金部会での議論に資するようにということで「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」を立ち上げて計8回開催して、本年7月3日に取りまとめをいただきました。同日の年金部会で御報告をしております。
ただ、当日は時間の関係で内容の御紹介ができておりませんので、本日はこの内容を御紹介して委員の御議論をお願いしたいと考えております。項目については、2ページの下にある項目になります。
続いて3ページからは、昨年提出させていただいた資料になっており、3ページは適用拡大のこれまでの経緯で、平成24年改正で導入されて28年10月から施行されています。
それから、4ページも適用拡大の経緯ですが、一番直近で申し上げると真ん中の一番右、前回令和2年改正で期間要件の撤廃、それから企業規模要件について500人超だったものを2024年10月から100人超、それから本年10月から50人超まで拡大してきています。
続いて5ページ、短時間労働者に対する適用要件は4つございます。週労働時間20時間以上、賃金月額8.8万円以上、学生は適用対象外、それから企業規模要件があり、企業規模要件については法附則に当分の間の経過措置として規定されています。
それから6ページは、拡大の方向性で、企業規模要件、時間要件、賃金要件について検討を行っています。
続いて7ページは個人事業所の適用関係になります。
7ページのとおり、赤い枠の中が強制適用事業所になっており、全ての法人と、常時5人以上の者を使用する個人事業主について法定17業種、これは下にあるマル1からマル17の業種に限って適用となっております。それ以外については任意包括適用ということで、強制適用の対象外になります。
非適用の具体的な業種については、8ページを御覧いただくと赤で記載しています。人数の多いところでは、農業、それから飲食、宿泊業、生活関連サービス業、この辺りは非適用業種が多い状況です。
9ページから11ページは、昨年5月にいただいた意見をまとめたもので、本年1月にも提出させていただきました。【適用拡大の意義】、それから【企業規模要件・非適用業種】【週20時間要件・賃金要件】等々、そこにあるような御意見を頂戴したところです。
それから11ページでは、【フリーランス・ギグワーカー、副業・兼業】、【適用拡大を進める際の留意点】として挙げられたものです。ここまでは振り返りで12ページからが懇談会の内容になります。
まず12ページは、懇談会の概要で、保険局と年金局で合同開催し、医療保険部会と年金部会における検討に資するようにしており、医療のことも念頭に置いた懇談会になっています。そこにある構成員の先生方に参加いただいて、年金部会からは菊池先生、嵩先生に参加いただきました。それから団体の方も参加いただきました。
「経過」はその下にあり、主にヒアリングを中心に開催し、ヒアリング先が一番下にある皆様です。短時間労働者の方が多く働いていらっしゃる業界、あるいは個人事業所が多くある業界の皆様から話を伺っております。ヒアリング、意見交換、論点整理を経て、7月3日に取りまとめをいただきました。
以下、取りまとめ内容の御説明になります。13ページから御覧ください。
13ページは、基本的な視点ということで3点ございます。「被用者にふさわしい保障の実現」として、老後の保障あるいはセーフティーネットを拡大するという観点から適用拡大の重要性がうたわれております。
それから2番目は「働き方に中立的な制度の構築」で、勤め先や働き方、雇い方の選択において中立的な制度を構築していくという点が書かれております。
それから「年収の壁」を意識した就業調整の話もございますので、被用者保険の意義やメリットを分かりやすく発信することの必要性が指摘されております。
それから3番目は「事業所への配慮等」で、適用拡大すると事務負担であったり、新たな保険料発生で経営への影響がある、こういった点への配慮、あるいは環境整備が必要といただいております。
また、医療保険制度については、保険者が分立していますので、適用拡大に伴って被保険者の移動があり、保険者の財政や運営に影響を与えるという点が指摘されており、制度の在り方についても議論が必要だとなっています。
続いて14ページは、短時間労働者に対する適用の在り方です。こちらは、先ほど御紹介した4要件についてそれぞれ取りまとめ部分の抜粋です。
まず「企業規模要件」については、経過措置として設けられているということもあり、ほかの要件に優先して撤廃の方向での検討を進めるべきとなっています。
他方で、事業所への影響という観点から慎重な意見も見られたところで、必要な配慮措置あるいは支援策、そのあたりについては※にあるとおり、段階的な適用の要否を含む準備期間の確保、あるいは専門家による事務支援、助成金等々といった様々な意見があったところです。
それから、その下の「労働時間要件」については、雇用保険が週10時間まで適用拡大することもあって検討が必要であるという見方がある一方、様々な保険料や事務負担の増加という課題に留意すべきだというご意見、それから年金と医療については、国民健康保険あるいは国民年金というセーフティーネットが存在しており、雇用保険とは異なる事情がある中で、被用者保険の被用者の範囲をどう線引きするか、この議論を深めることが重要という意見がありました。そういった意味で、雇用保険の施行状況も見ながら慎重な検討が必要であるといただいております。
続いて「賃金要件」については、引き下げるという議論があり、これも労働時間要件の引下げと同じような側面がありますが、特に特有の論点としては、年収換算で106万円という額が就業調整の基準として意識されている一方で、最低賃金が上がっておりますので、週20時間という労働条件を満たせばおのずと賃金要件を満たすような場合も増えてきていると、こういった点を踏まえた検討が必要であるといただいております。
それから「学生除外要件」については現状維持が望ましいという意見が多く、見直しの必要性は低いということでいただいております。
続いて15ページ、個人事業所に係る適用等々です。
まず個人事業所については、常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種については、5人未満の適用の是非の検討に優先して解消の方向で検討を進めるべきであるということでいただいております。
また、併せてということで、こちらも企業規模の話と同じですが、新たな負担、それから対象となるところが比較的小規模であるということも踏まえて、事務負担、経営への影響、それから保険者の財政運営の影響等に留意して、配慮措置あるいは支援策の検討が必要であるといただいております。
それから、話は変わって、複数の事業所で勤務する方への適用の在り方の議論もいただきまして、その下ですが、労働時間を合算した形で適用することの是非についてはマイナンバーの活用状況、あるいは雇用保険に似たような仕組みでマルチジョブフォルダー制度が施行されているので、そこを参考にしながら実務における実行可能性も見極めつつ、慎重な検討が必要であるといただいております。
その上で、現行でも複数事業者に勤務される方は適用になっていますが、この事務手続について合理化、負担軽減を図るということの指摘もいただいております。
最後に、フリーランスの方への適用についても御議論いただいております。その下で、まずは労働基準法上の労働者の方、これは現行でも被用者保険の被用者の要件を満たすことから確実に適用するということでいただいております。
それから、それとは別に労働基準法の労働者概念そのものについて、これは国際的な動向も踏まえて厚労省の中の労働基準関係法制研究会で議論いただいておりまして、ここでの議論を注視する必要があるという指摘になっています。
それから、そうではなくて従来の自営者に近いような自律した働き方を行っている方については、既に国民健康保険、国民年金という自営業者の方を念頭に置いたセーフティーネットが存在するので、こちらは諸外国の動向等を踏まえながら中長期的な課題で検討していくといただいております。
以上、懇談会でいただいた意見の概略です。こちらを御覧いただきながら御意見をいただければと思っております。
以下、16ページ、17ページは参考でして、財政検証のオプション試算で適用拡大を行った場合の影響です。16ページの上にマル1の90万人からマル4の860万までのケースがありまして、17ページはそれぞれマル1からマル4に応じて、どれくらい代替率に影響するかで、基礎年金の代替率がプラス1から5.9%の範囲で増えるという効果が確認されています。
続いて、資料2を御覧ください。こちらは新しいテーマで「国民年金保険料の納付猶予制度について」の概要と検討の方向性になります。
まず資料の3ページが制度の概要になります。国民年金の第1号被保険者が対象の制度で、現行制度は被保険者本人が保険料を納付するのが原則ですが、世帯主と配偶者が連帯して保険料を納付するという納付義務が課されています。
それから、その関連で国民年金の保険料免除制度では、仮に御本人が例えば就職が困難、あるいは失業中で所得が低い場合でも先ほどの連帯義務がありますので、収入のある親、世帯主と同居している場合には保険料免除の対象とならないというのが現行の仕組みです。そういう前提の中で、平成16年改正の当時、20歳代の非正規雇用の労働者が増大していたといった状況を踏まえて、30歳未満の方について時限措置10年で、新たに世帯主の所得にかかわらず本人及び配偶者の所得要件のみで納付猶予する制度が創設されたものです。
これは平成28年7月にさらに範囲が拡大されて、現在では20歳から50歳未満の方が利用できる制度になっています。時限措置で令和12年6月までの措置になっています。
制度については、4ページは平成16年にこの制度が発足した当時の経緯、当時の年金部会の意見です。当時、納付率が低かったということ、それから雇用情勢の悪化、あるいは若年失業者の増大、フリーターの増加、こういった社会背景の下にこの制度が創設されました。
続いて5ページは、対象を50歳まで拡大したときの報告書です。引き続き非正規雇用の労働者が中高年を含む幅広い世代で増加しているということで、対象年齢の見直しがこのときに導入されました。
それから5ページの一番下ですが、前回令和2年の改正で、この納付猶予制度の期限が5年間延長されており、令和12年6月までとなっています。
続いて、制度の適用状況のデータが何枚か続きます。
まず7ページは、納付猶予制度の適用者数です。このグラフにあるとおり、現在約60万人近い方が利用されています。縦の棒グラフです。途中で色が変わっておりますが、ここを境に、対象者が50歳まで拡大されたことから数が増えています。適用者数は増加傾向にあり、第1号被保険者の数は減っているので、赤い折れ線グラフである適用率は上がっている状況です。
続いて8ページは、年代別の適用者数です。経年で見て、青の平成20年以降から、赤が令和2年と、5つにわたっています。20代の利用者が一定程度いらっしゃり、数としては多くなっています。30代以降については、平成28年より対象範囲が拡大され、総数は少ないですが、平成29年と令和2年を比べると各年代とも増加傾向にあります。
9ページは、納付猶予を受けている方の適用期間で、どれくらいの期間を利用されているかです。左は男性、右は女性で、20代を見ると、青あるいは緑の「2年以下」の利用者が多いのがこの世代です。一方で30代、40代を御覧いただくと、赤の「10年超」、あるいはピンクの「5年超」の方が増えていて、30歳代では「5年超」の方が半分以上となっており、長く利用されている方がいらっしゃる状況です。
続いて10ページは、現在納付猶予を利用している方の就労状況です。総数が左の下、56万1000人とあります。右側はその就労状況で、一番多いのが右から2番目の「無職」の29万7000人で、約半数は無職となっています。
それから、その隣の「パート・アルバイト」が19万2000人でして、無職あるいは不詳を除いて、働いている方のうち75%は「パート・アルバイト・臨時」の方になっています。
続いて11ページは、この納付猶予適用者がいる世帯を見て、その世帯の中で最も高い所得の方の分布を見たものです。折れ線グラフは年代別に見ておりますが、年代ごとで特に大きな差はなく、御覧いただきたいのは下の所得区分のところの総数に占める割合です。左側を御覧いただくと、所得でいうと100万円、収入ベースでおおむね400万円以下のところに5割超の方がいらっしゃいます。
一方で右のほう、所得で450万円、あるいは収入で850万円より上の高い水準に、1割弱がいて、そういう意味では、世帯主の所得として高い世帯であっても納付猶予を使っているケースが見られます。
続いて12ページは、納付猶予を受けている方の世帯の人数になります。単身世帯の方は赤で囲っていて一定数いますが、この単身世帯の方については、納付猶予と全額免除の所得基準が同じことから、仮に単身世帯であれば納付猶予ではなくて全額免除を適用できることになります。この場合は国庫負担が2分の1つくので有利になるわけですが、納付猶予にとどまっているケースがあることが、このデータから見て取れるところです。
以上を踏まえ、14ページで「納付猶予制度の現状」としてまとめております。
最初は導入と変遷で、平成16年当時の雇用情勢の悪化等を踏まえて時限措置として導入され、その後対象者の拡大あるいは期限が延長されまし。その結果、当初の20代という一定の世代に限られたものではなく、幅広く利用できる制度になっています。
また、当時の年金受給に必要な資格期間は25年必要でしたが、現在は10年に短縮されている点が導入時からの変化としてあります。
また平成16年当時と比べると雇用環境は改善してきており、それから適用拡大が進んでおりますので、パートあるいはアルバイトの働き方であっても社会保険に加入できる機会が広がっています。
他方で、現在の状況を見ると、先ほどのデータにあるとおり令和4年度時点で約58万人が利用されており、納付猶予期間が2年以下と短い方が半数いらっしゃる一方で、5年以上のような長い方もいるところです。
それから、先ほどの単身世帯で見ましたが、全額免除が適用できる状態の方もいらっしゃるのと、世帯主に一定以上の所得がある場合もあるということです。そういった状況の中で、令和12年6月までの時限措置をどうするかが今回の問題意識です。
15ページに検討の方向性ということで、以上を踏まえたものを提示しております。
令和12年6月までの時限措置について以下のように考えてはどうかということで、1つ目は、制度自体についての対象年齢の要件、これは現在50歳未満ですが、現行どおりとした上で時限措置を延長してはどうかということです。
それから2つ目には、延長に際して、現在の仕組みでは本人及び配偶者の所得が一定額以下であることを要件にしていますが、本来であれば保険料を納付いただいて御本人の年金給付にきちんと反映するのが原則ですので、そこに立ち返りまして、もしその世帯で世帯主の方、例えば親御さんに一定以上の所得がある場合には、この制度の対象外として保険料納付を求めることを検討してはどうかというのが2点目です。
それから、先ほども御紹介した単身世帯の場合ですが、これは世帯構成が年度の途中で変化した際に、円滑に保険料免除へと移行するような運用上の整理を行ってはどうかと考えております。その下の※にあるとおり、現行実務においても新しい年度では免除に切り替える運用を行っており、年度途中についても円滑な移行を図りたいということです。
一番下で、今回見直した場合に変わる点を赤で囲っています。現行制度は本人・配偶者の前年所得を見ているところ、加えて世帯主の所得も見て、一定以上の所得がある場合に制限するという案です。この一定以上の所得というのは、この後先生方の御意見等を踏まえて私どもで検討してまいりたいと考えております。
以降は、参考資料で、雇用環境の変化ということで17ページは就業率、完全失業率の変化、あるいは18ページの有効求人倍率、就職率の変化といった制度発足後の変化を資料としてつけております。
続いて、資料3「国民年金における任意加入の特例(高齢任意加入)について」です。
2ページを御覧ください。制度の概要は、左の下が分かりやすいと思いますが、国民年金の第1号被保険者に関する話になります。60歳までは強制加入、60歳から65歳までは任意加入の仕組みがあります。
これは、昭和60年改正法による措置で設けられたもので、何らかの事情により40年間納付ができなかったという方について、480月つまり40年を上限として任意加入できる仕組みです。これは時限措置ではありません。
それから65歳以降で、こちらが本日の議論の対象になりますが、通常だと65歳時点で受給権が発生するわけですが、受給権がない方について、受給権を取得するまでの間、任意で加入できる制度になります。
受給権は、この制度が入った当時は25年で発生しましたが、現在は10年に短縮されており、この10年間が満たされていない方が利用できる制度になっています。
こちらは時限措置として対象者が限定されていて、一番直近ですと平成16年改正で、昭和30年4月2日から昭和40年4月1日までに生まれた方が対象になっています。
右の下が利用状況でして、約1,500人いらっしゃる現状です。
こちらについて【見直しの方向性】ということで3ページを御覧ください。任意加入の特例で、現在は昭和40年4月1日までに生まれた方が対象となっていますが、この方が令和11年、2029年には65歳に到達するので、今回の改正で何らか措置を行わない場合にはそれ以降の方は利用できないことになります。そうした中で今回どうするかですが、この制度を見ると、10年という資格期間を満たさない方について年金受給権の取得につながるような役割を果たしており、先ほど御紹介したとおり、その下に折れ線グラフがありますが、現在1,500人が利用しています。
人数は、資格要件が25年から10年まで短縮された時点で減少していますが、これまでの経緯を踏まえると、保険料納付意欲がある方の年金受給の道を開き、年金受給権を確保する観点から、今回新たに昭和50年4月1日までに生まれた者を対象とすることで検討してはどうかとで考えております。
以上、資料3の説明になります。よろしくお願いいたします。
○総務課長 続いて、資料の4を御覧ください。「公的年金シミュレーターについて」です。
ページを開いていただいて、まず4ページです。これは、令和元年における年金部会での議論の整理になります。
一番下にございますように「年金の見える化」ということで、将来の受給可能見込み額などの「見える化」を進めていくという御提言をいただいております。
これを踏まえまして次の5ページになりますけれども、年金局で公的年金シミュレーターの開発を進めまして、令和4年4月から運用を開始しております。その後、様々な機能を追加しつつ、実際に試算を行った回数は今月に500万回を超えたところでございます。
なお、このシミュレーターにつきましては、いろいろな方に御利用いただきたいと考えておりますけれども、その中でも適用拡大の対象になるような方にぜひ使っていただきたいと思っておりまして、後で出てまいりますが、適用拡大の広報に合わせてこのシミュレーターの広報を行っております。
それで、来月10月から短時間労働者の適用拡大が実施されることになっておりまして、先月くらいからテレビコマーシャルなどの広報に力を入れておるところでございますけれども、それに連動するようにシミュレーターの利用件数も伸びてきているという状況にございます。
次の6ページがシミュレーターの機能になりますけれども、このような棒グラフで年金受給見込み額を示せることになっております。それで、年収ですとか受給を開始する年齢などを操作することによって、視覚的に受給額の変化を見せることができます。
また、右側にございますように、働き方の変化によって年金額がどう変わるかといったことも簡単にシミュレーションできるようになっております。
次に7ページになりますけれども、先ほど申し上げましたように、適用拡大の様々な広報物やホームページの中でこのシミュレーターを取り上げております。また、右側にございますように、中高生の教育資材などでもこのシミュレーターを取り上げまして、学生などにも年金への理解を深めていただけるようにしております。
また、8ページにございますように、金融経済教育との連携ということで、今年度発足いたしました金融経済教育推進機構が作成している資料の中でもシミュレーターなどを取り上げていただいております。
続いて、9ページ以降がシミュレーターを取り巻く状況ということになります。
10ページは、シミュレーターに関するこれまでの年金部会での御意見になります。
続いて、11ページ以降になります。シミュレーターの目的の一つは、年金制度の仕組みをシミュレーターを使いながら理解していただくということがございます。このため、現状年金に対する理解、認知がどの程度進んでいるかを世論調査の結果から見たものがこちらの資料になっております。
11ページの左側、老齢年金に関する認知の状況ということになりますけれども、例えば上から2番目の60歳から75歳の間で支給開始の時期を選べるとか、あるいは4番目にある保険料の納付状況に応じて年金額が変わるといったことについては、シミュレーターを通じて理解が深まる部分ではないかと思っております。この資料は字が切れておりまして失礼いたしました。
一方、11ページの右側のほうですけれども、障害年金や遺族年金の認知度が出ておりますが、特に障害年金の認知度が6割を切っているということで、やや低いということになっております。
また、12ページでは障害年金の認知度を年代別に見ておりますけれども、やはり若い方ほど認知度は下がる傾向にございまして、特に18歳から29歳までですと43.7%といった5割を切った数字になっております。
続いて、13ページは障害年金について何を知りたいかという調査でございます。青い棒グラフの部分が多くなっておりますけれども、これは受給要件ということになります。それに次いで多いのは、障害年金を請求する方法であったり、あるいは障害年金の金額のシミュレーションといったものが続いております。
さらに、14ページは私的年金について詳しく知りたいことということで、こちらは加入のメリットであったり、将来の受給可能見込み額が多くなっております。
こうした状況を踏まえまして、今後のシミュレーターの在り方をどうするかということでございます。
16ページを御覧ください。上にございますように、現在運用しているシミュレーターにつきましては令和7年度末で保守、運用の契約が終了することになっております。このため、令和8年度以降、新たに運用を開始するシミュレーターについて開発の進め方を検討したいと考えております。
開発の方針の案といたしましては、基本的に現在のシミュレーターのいいところは生かしておこうと考えております。シミュレーターの目的としましては、年金の仕組みなどを国民の皆様に分かりやすく周知することや、働き方などの変化に伴う年金額の変化を「見える化」していくということが今後とも大きな目的になると考えております。
また、シミュレーターのいいところとしては、手軽に利用できる、円滑な操作ができる、また個人情報を記録保存せず、IDパスワードも使わずに簡単に利用できるということが大きな特徴ですので、こうした特徴は維持していきたいと考えております。
その上でシミュレーターの機能といたしまして、老齢年金については基本的に現在の機能を維持したいと考えております。
一方で、老齢年金に加えまして障害年金、あるいはiDeCoの試算機能を追加してはどうかと考えております。
次に、17ページを御覧ください。
まず障害年金の試算機能を設ける目的、考え方になりますけれども、先ほどの世論調査の結果でもありましたように、障害年金の認知度がほかと比べてもやや低いという状況がございます。また、特に若い世代から見ると、老齢年金というのはどうしても遠い将来の話になってしまいますけれども、障害年金であれば若いうちから受給する可能性があるということで、その障害年金の意義であったり、または老齢年金とは異なる最低保障機能があるといった特徴を御理解いただけるようなものにしてはどうかと考えております。
また、その下の(注)にございますけれども、遺族年金につきましては障害年金よりも制度が複雑になっておりますので、利用できる端末の機能などにも一定の制約がある中で、どのような試算機能を設けることができるかということについて引き続き検討したいと考えております。
また、iDeCoにつきましても私的年金はいろいろございますけれども、1号から3号まで全ての国民年金被保険者が加入できる共通の制度ということで、その利用を促進していく観点から試算機能を設けてはどうかと考えております。私的年金にはiDeCo以外にも企業年金などございますけれども、事業主ごとに設計が異なるなど事情がございますので、まずは統一的に表示できるiDeCoから対応してはどうかと考えているところでございます。
最後の18ページは、デンマークのPensionInfoというものの例ですけれども、障害年金に相当するような就労不能給付の表示の例ということで、金額が出ているだけではございますけれども、御参考までにお示ししたものになります。
説明は以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、御説明のありました議題1、2、3に関わりまして個別にそれぞれということではなく、まとめて御発言をお願いできればと存じます。いつものように、まず会場参加の皆様からお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
では、是枝委員からお願いします。
○是枝委員 資料4つ、それぞれ1つずつ申し上げます。
まず資料1についてですが、基礎年金の拠出期間も含めて学生の適用除外について意見を述べます。
これまで、そもそも基礎年金拠出期間を20歳から65歳までの45年とすることを前提に考えていましたが、今回の改正ではメディアやネット上の批判もさることながら、巨額の国民負担を求めてまで年金水準を高めなければならない状況でもないということもあり、基礎年金45年化は行わないということとなりました。
そうであるならば、高学歴化が進み、高校を卒業した者の6割近くが4年制大学に通うようになった現在において、本当に基礎年金の拠出期間が20歳からでよいのか。5年後の年金部会で改めて考え直してもよいのではないかと思っております。
まだ就学中の学生の時期に国民年金保険料を負担するのは過酷であり、学生納付特例制度を利用したとしても賃金がまだ高くなく、貸与奨学金の返済などもある時期に追納することは非常に困難でございます。現在のライフサイクルに合わせるのであれば、例えば22歳から65歳までの43年間を新たな基礎年金の拠出期間とすることも選択肢ではないかと思い、5年後に再度検討させていただきたいと思います。
これまで私は20歳からの基礎年金拠出を前提として、学生のうち被用者性の高いものについてはなるべく取り込んではどうかということを考えておりましたが、ひとまず今回の制度改正では学生の適用除外については現状のまま保留でよいのではないかと意見を変えさせていただきます。
2点目、資料2の「国民年金の納付猶予制度について」ですが、世帯主の連帯納付義務と併せて意見を述べさせていただきます。
そもそも論になりますが、現行制度では国民年金の保険料につき、世帯主に連帯納付義務を課していますが、これはもう現代的意義を見出しづらいと私は考えております。個人としての保険料負担能力がなくても、世帯全体で保険料の負担能力があるならば、なるべく年金の受給権につなげるために負担していただくという趣旨は分かりますが、それでも世帯主だけを特別視するということ自体が古い家制度の家長や戸主といった考え方を引きずっているのではないかとも思います。
これもすぐの見直しは難しいとは思いますが、5年後の制度改正に向けて国民年金保険料の連帯納付義務の範囲についてもそもそも検討すべきではないかと思います。成人の世帯員全員の義務とするか、あるいはそもそも連帯納付義務自体を撤廃すべきかを含めて再考する必要があると思います。
その上で納付猶予制度についてですが、私は将来的にはこれは廃止したいと思っております。現状、納付猶予を受けている人のほとんどが非正規雇用者か、もしくは無職の方です。非正規雇用者の方には、適用拡大によって厚生年金に入っていただきたいです。無職の方については、世帯としても負担能力がないのであれば、免除制度によって救うべきと考えております。
今回の改正でどうすべきかというと、所得を見る範囲をいたずらに変えるのではなくて、5年後に見直しの余地を残すために5年間の単純延長でいいのではないかと考えております。
資料3の高齢任意加入についてです。結論を先に申し上げると、10年ではなく5年の延長とすべきではないかと考えております。受給資格期間が10年に短縮されておりますが、その中で65歳になってもなお10年の受給資格期間を満たさない者というのはそもそもなくすべきであると考えております。高齢任意加入という最後の救済措置の存在が、かえって本来の納付期間に保険料を納付しなかったり、行うべき手続を行わせないという性質も持っているため、私は将来的にはこの制度は廃止したいと考えています。
一方で、長い人生の中で保険料納付が難しかったり、手続ができなかったりすることで、幾らか基礎年金の受給につながらない期間があるというのは致し方ないことだと思います。満額の基礎年金に少し満たない方に対する任意加入制度というのは残すべきです。
今回の改正では断念されることとなりましたが、基礎年金の拠出期間が65歳まで延長されることとなった際には、65歳から70歳の期間について年金受給権がある方も含めて任意加入できる制度にすべきではないかと思います。
したがって、次回の制度改正で基礎年金の拠出期間を延ばす可能性があるということも踏まえて、その際には65歳から70歳までの期間について高齢任意加入ではなくて基礎年金満額に満たない者が誰でも入れる任意加入制度に統合する可能性を踏まえて、10年ではなく5年の延長にしてはどうかと思います。
最後に、資料4の「公的年金シミュレーターについて」ですが、iDeCoの試算機能を設けるというのはよいことなのですが、iDeCoからの給付額を算出する際には、公的年金と私的年金を合わせた資産形成において誤解が生じないように運用利回りの設定に十分な注意が必要だと思います。
公的年金シミュレーターは現行制度を前提として現在の金額で表示した年金額を表示しておりますが、iDeCoについて運用利回りなどを設定する際に、iDeCoのほうにだけ運用利回りを名目で設定するようなことをしてしまいますと、公的年金と私的年金のバランスのイメージが大きく崩れてしまいます。このため、利回りの設定などについては十分に留意していただきたいということを申し上げます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
出口委員、お手を挙げていらっしゃいましたね。お願いします。
○出口委員 私からは、資料1と2と4につきまして触れさせていただきます。
まず資料1でございますが、懇談会において本当に真摯に御検討を重ねていただいた関係の皆様に改めて御礼申し上げます。
被用者保険の適用の在り方につきましては、就労形態の多様化が進展する中、働き方に中立な制度の構築に向けて適用拡大をさらに推進していくことが基本だと考えております。これを踏まえまして、資料の14ページ、15ページにあります懇談会の取りまとめのポイントのところに記載があるとおり、次期改正で企業規模要件の撤廃や個人事業所の非適用業種の解消は実現すべきであると考えております。
見直しに当たりましては、被保険者本人や企業、保険者などの対象となる方の負担に十分配慮するということが必要です。実施時期への配慮、各種支援策の実施などが不可欠であると思っております。とりわけ事務手続の合理化と事務負担の軽減、これは厚労省としても速やかに取り組んでいただきたいと考えております。
また、適用拡大の対象となる中小企業の中には今般、賃金引上げを行った企業もたくさんあると認識しております。経団連としても、パートナーシップ構築宣言の参画企業の増加と実効性の確保に努めまして、事業主負担増の部分も含めた労務費などの適切な価格転嫁が重要という認識が社会的規範、ソーシャルノルムになるような形で取り組んでいきたいと思っております。
続きまして資料2のところでございますが、国民年金保険料の納付猶予制度につきましてはエビデンスに基づいた議論が必要だと思っています。適切な判断が行えるよう、例えば追納した方の割合などのデータもぜひ示していただけたらと思っております。
3番目は、資料4の公的年金シミュレーターでございます。加入者自らが将来の生活設計の目安として年金制度の実感をより持てるという点では、やはり非常に重要な機能だと考えております。今回のように、より実感が持ちやすいように、新たな機能を設ける方向性は有用だと思っております。
また、国民の将来不安を少しでも払拭するという観点からは、先ほど来お話がありましたが、シミュレーターの存在そのものをもっと広く積極的に周知する方法も模索していただいて、多くの国民に使っていただくことが重要だと思っております。引き続き、取組をお願いしたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
たかまつ委員がお手を挙げていらっしゃいましたね。お願いします。
○たかまつ委員 私のほうは、まず働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方についてお話ししたいと思います。
企業規模要件や個人事業主の非適用業種の拡大については、私は小さい会社に勤めている人が将来定年期になってしまったり、老後の貧困化を防ぐためにも、できるだけ適用拡大が望ましいと考えています。
しかし、労務とか人事担当者がいない規模の事業者には負担が大きいため、適用拡大をしながらも、例えば労務や人事を外注できる分の費用ですとか、人事担当者分を新たに採用できるような人件費の補助金など、そういうものをプッシュ型、あるいはA4で1枚の簡易な申請ができるものなどがあるといいと思っています。5人以下の企業についても、そのような形でならば適用拡大というのを検討してもいいと考えています。
続いて、複数の事業所の勤務やフリーランスについてなのですけれども、副業を残業時間管理や社会保険の管理をするのが難しいから雇用という形では禁止しているという会社が私も取材して多かったです。
でも、それでは時代と逆行していると私は考えます。ですから、企業などの運用が可能な形での適用拡大というのをする必要がありまして、制度が現状に追いついていないと思うので、改めて副業する人やフリーランスの人、企業の労務、人事担当者、社労士などのヒアリングや懇談会などをして検討するべきではないかと考えています。
そして、学生の除外要件については煩雑になるので、現状の維持でいいと思います。学生については学費を自分で払う人や奨学金を利用する人が増えている中で、年金も猶予があるとはいえ、大学卒業後に奨学金を合わせると大きな負担に感じている人が多くいらっしゃると思います。このような金銭的な負担によって若いうちにできる、例えば海外旅行とか、そういうような経験の機会が奪われたり、出会いの場などが少なくなることにつながって、結果、少子化にも私はつながっていると思います。ですから、一律加入の開始年齢を例えば22歳以上にするなど、受給開始年齢の議論だけではなく、加入開始年齢の議論もできるといいのではないかと考えています。
そして、国民年金保険料の納付猶予制度についてなのですけれども、時限措置の延長については生活に困っている人もいるため、私は賛成です。
ただ、親などの所得が多い場合、納付猶予の対象外にすることについては反対します。それは、年金や社会保障制度は家族に頼る私的な扶養だけではなくて、困ったときに社会に頼るというのが大切な考え方であり、安心感につながると思うので、本人が困っているときに家族任せにせず、手を差し伸べられる社会にするという考えのほうがいいと思います。
また、親の年収が高いからといって年が離れたきょうだいの学費や、障害を持つ子がいる場合など、所得だけでは見えない事情というのもあると思うので、親の所得が高いから親が負担するべきという考えはあまりよくないのではないかと思います。親など誰かが肩代わりするのではなく、本人が働いて保険料を負担できるように社会が支援するということのほうが必要だと考えています。
そして、国民年金における任意加入の特例についてなのですけれども、こちらは若いときに何かしら事情があった方もいらっしゃると思うので、高齢者の貧困を防ぐという視点でも私は賛成です。
そして、公的年金シミュレーターについてなのですけれども、次期公的年金シミュレーターについては、私は賛成しています。
ただ、試作の段階で若者などが実際に使ってみたり、一時的にアクセスしてフィードバックなどを公開で集めたりすることによって、より理解があるものをつくれたほうがいいと思うので、そのような場を提案します。
また、シミュレーターの中にライフプラン教育ですとか金融教育などの学べるようなコンテンツもあると、さらにシミュレーターの出た結果をどのように捉えればいいのか。さらに、自分のライフプランを考えるきっかけにもつながると考えています。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
佐保委員、お願いします。
○佐保委員 ありがとうございます。私からは、資料1、2、3についてそれぞれ意見を述べたいと思っております。
最初の資料1でございますが、これまでも申し上げてきたとおり、全ての労働者への被用者保険の適用に向けて企業規模要件や個人事業主にかかる非適用業種を撤廃するとともに、5人未満の個人事業所にも適用すべきであると考えます。同時に、中小企業や個人事業主の負担軽減のための方策を政府として検討するとともに、労務費を含む価格転嫁を推進すべきであると考えております。
なお、年金部会としてこれまでの議論も踏まえれば、適用拡大の方向性についての認識はおおむね一致しているというふうに理解をしております。政治状況が不透明な中ではございますが、これまでの議論を踏まえ、次期改正に向けた前向きな議論をお願いしたいと思っております。
続いて、資料2の「国民年金保険料の納付猶予制度について」、意見を述べたいと思います。
将来の無年金、低年金を防止する役割を維持しつつ、将来の年金給付につなげるため、納付猶予制度を延長することについて異論はございません。
ただ、令和22年までに多くの年金制度の改正が行われる可能性があるとともに、社会、経済情勢の変化も想定されるため、10年間という期間の妥当性についてはさらなる検討が必要と考えます。
また、先ほど出口委員からも御発言がございましたが、今後の議論では納付猶予制度を利用した人のうち、追納した人の割合やその属性のデータなども必要と考えております。日本年金機構との連携により、学生納付特例制度利用者も含め、追納の実態を調査いただき、資料として提示いただくようお願いいたします。
次に、資料3の「国民年金における任意加入の特例について」です。
年金受給権確保の観点で、対象者を見直すことに異論はございません。今回の提案と直接関連する論点ではございませんが、任意加入する人の中には65歳以上でも就労している人が多くいると考えます。高齢期の就業率などを踏まえて、拠出期間を延長すべきであるということは改めて申し上げておきたいと思います。
私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
百瀬委員、お願いします。
○百瀬委員 ありがとうございます。3点、意見を述べさせてください。
最初に被用者保険の適用拡大について、今回改正での企業規模要件の撤廃に賛成いたします。また、以前の部会でも述べましたが、1950年代や80年代の改正時とは異なって、現在は特定の業種を非適用とする根拠が見出せません。経過措置や支援策を設けた上で、5人以上の個人事業所における非適用業種を解消することにも賛成いたします。
一方で、少なくとも今回の改正では労働時間要件を週20時間未満にまで下げることには慎重であるべきだと思います。その理由として、資料1の14ページで指摘されていることが挙げられます。それ以外でも、被用者保険の適用拡大となれば健康保険も週20時間未満に適用拡大となりますが、そのことが医療保険の実務や国民健康保険に及ぼす影響が大きいと考えられます。この点も以前の部会で指摘しましたが、まだ十分な検討がなされていないように思います。
第2に、納付猶予の見直しについてです。これについては、私もたかまつ委員と近い意見です。世帯主の所得が高い場合に納付猶予の対象外とする、という見直しにはあまり賛成ができません。現行制度であれば、本人の所得が極めて低い場合、同居の親の所得にかかわらず納付猶予を利用して保険料の滞納を防ぐことができます。
例えば、かつて私の教えた学生が大学院の受験に失敗して浪人をしました。そのときは、学生ではないので、学生納付特例は利用できないわけですが、納付猶予があったのでこれを利用して滞納を防ぐことができました。
それに対して今回提案されている見直し案の場合、親の所得によっては、何らかの事情で収入が極めて低くなった20歳以上の子の保険料を、その親に納付させるということになります。もちろん保険料の連帯納付義務があることは承知していますが、このような状況が望ましいと言えるのか、若干の疑問があります。
さらに、同居をしていると言っても親子の関係は様々ですので、親が高所得であっても、子の保険料を納付するとは限りません。結果として、これまで納付猶予を利用していた方の中で保険料滞納が増える可能性も考えられます。特に障害年金の場合、短期間の未納でも無年金となることがあるので、その点を懸念しております。
ですので、今回の見直しにはあまり賛成ができないのですが、もし制度の見直しをするというのであれば、改正法の施行後に、納付猶予者が保険料滞納者に移行していないか、実態把握を行っていただきたいと思います。
第3に、公的年金シミュレーターについてです。障害年金の試算機能はぜひ導入していただきたいと思います。一方で、iDeCoの試算機能についてはイメージがまだつかめていません。
そもそもiDeCoの場合、運用結果によって受取額が異なるわけです。もちろん、試算にあたって一定の利回りを設定するということはあり得るとは思いますが、各個人の運用方針によっては、実際の運用結果は試算結果とかなり異なってきます。また、受け取り方も一時金だったり、年金だったり、それを併用したりなど多様になっています。
さらに、iDeCoのメリットとして大きいのが税制優遇ですが、これもシミュレーターでは示しにくいように思います。いずれにせよ、iDeCoについては試算結果の示し方が難しく、利用者にとって分かりにくくなる可能性もあるかもしれません。
機能を増やすということも重要ですが、シンプルで分かりやすいという今のシミュレーターの特徴もぜひとも維持していただきたいと思います。
私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
堀委員もお手を挙げていらっしゃいましたね。
○堀委員 どうもありがとうございます。私からは、3点お願いしたいと思います。
まず第1に、懇談会の皆様の御議論に敬意を表したいと思います。その上で、懇談会の方針につきましては使用者側の御理解を得ながらぜひお進めいただければと考えております。
第2点目ですけれども、納付猶予制度の延長については賛成なのですが、親などに一定以上の所得がある場合には納付猶予の対象外とするということにつきましては、改めて慎重な御検討をお願いしたいと思います。幾つかデータをお示しいただきましたが、実情はよく分からないというのが率直な印象で、先ほど出口委員や佐保委員がおっしゃったように、もう少し詳細なデータをお示しいただけると大変ありがたいです。
私見では、成人をはるかに超えた年齢の子供が親と同居して年金保険料すら払えない状況がこれだけ失業率が低い中で生じているということを考えますと、働かないというよりは働くことに困難を抱えている層が多いのではないかと推測いたします。
例えばひきこもり状況なのか、あるいは病気療養なのか、何か資格試験の勉強をしていたり、先ほど百瀬委員がおっしゃったような大学院を目指しているなどの前向きな状況なのか、相当多様なのではないかというふうに推測いたします。
もともと日本社会は国際的に見て、親が子供に責任を持つ期間が非常に長いわけなのですけれども、たとえ親の収入が高く、同居しているとしても、成人した子供の年金納付を求めるというのはやや時代に逆行しているような感覚もいたします。
また、この部会を超えた話ではあるのですけれども、例えば納付猶予の相談があったときには、ぜひ窓口の方に自治体等の相談機関を御紹介いただくなど連携を取っていただき、孤独・孤立を防ぐような役割も併せてお願いできれば幸いでございます。
第3に、高齢任意加入につきましては、御本人が御希望されているということでありますればぜひ延長をしていただきたいと存じます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
永井委員。
○永井委員 ありがとうございます。私からは「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」の件で、資料1のほうに意見と質問を述べたいと思います。
懇談会でも構成員をさせていただきましたので申し上げましたが、現行制度は働き方などに中立的ではなく不合理であるのではないかと思っております。全ての労働者に被用者保険が適用されるべきだと考えます。
議論の取りまとめでは、企業規模要件の撤廃や個人事業所の非適用業種の解消については明示されておりますが、その他の要件については明確な方向性が出されていないのではないかと率直に残念に感じているところでございます。
その上で賃金要件についてですが、議論の取りまとめにもあるとおり、8.8万円は1号被保険者との負担と給付のバランスを踏まえて設定された基準とのことですが、以前の部会でも他の委員から発言があったと思いますが、賃金要件を引き下げた場合、被保険者個人から見れば確かにバランスが崩れるように見えますが、国民年金勘定と厚生年金勘定からそれぞれ基礎年金拠出金を拠出する現行の財政の仕組み、または定額保険料と標準報酬に基づく保険料という支払い方法の違いなどを踏まえれば、1号と2号の負担と給付のバランスを取らなければいけないのかと感じるところでもございます。
また、同様の視点を第3号被保険者制度に当てはめれば、3号そのものが負担と給付のバランスが取れていない制度となるのではないかと考えます。
よって、1号と2号の負担と給付のバランスをもって賃金要件引き下げに至らない理由にはならないと認識をしております。
以上から、この間の賃金上昇や中立的な制度を目指そうという観点も踏まえ、賃金要件を設ける必要性は乏しいのではないか。将来的には労働時間要件の撤廃を目指しつつ、次期改正では最低限賃金要件を撤廃するということも含め、検討していく必要があると考えます。
財政検証においても、適用拡大が基礎年金の将来の所得代替率の引上げに影響することも示されたことから、今後の部会において賃金要件の撤廃に向けた前向きの議論に期待をしたいと思っております。
また、賃金要件の撤廃とともに、社会保険の被扶養者の収入要件についても見直すべきであるということも重ねて申し添えておきたいと思います。
関連しての質問になりますが、日本年金機構では、被用者保険が適用されるべき労働者への適用漏れを防ぐために、事業所調査を精力的に実施していると理解しております。そのような調査におきまして、勤務実態や雇用契約書を同時に確認し、労働時間要件と賃金要件、どちらにも当てはまるかというのを判断されているのか。
例えば、まずは雇用契約書上の労働時間により判断し、そこに当てはまった場合には支払われている賃金を確認するなど、順を追った確認といったようなことがされているのか。そういったことについて、賃金要件の撤廃は実務にも大きな影響があると考えられるので、実態を把握していれば教えていただきたいと存じます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
御質問がございましたので、いかがでしょうか。
○事業管理課長 事業管理課長の重永と申します。
今、御指摘のありました企業における適用をきちんとするというところにつきましては重要な点だと思っておりまして、年金機構においても毎年、数万事業所という単位で適用の調査を行っております。その際には、勤務の実態も踏まえて本来社会保険に適用されるべき方が適用されているという確認していると承知をしております。
○永井委員 ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、原委員、小林委員、駒村委員の順にお願いいたしたいと思います。
原委員、お願いします。
○原委員 ありがとうございます。私からも何点かコメントさせていただきます。
まず適用拡大の資料のところですけれども、懇談会の皆様には非常にきちんとまとめていただきましてありがとうございます。こちらの資料の13ページ、14ページ、15ページに基本的な視点がありましたけれども、適用拡大につきましては今までも議論がありましたが、企業規模要件については他の要件に優先して撤廃の方向で進めるべきと考えております。
併せて、事業所における事務負担ですとか経営への影響等には留意しながら、必要な配慮措置ですとか支援措置の在り方についての検討を行うということ、あるいは考慮を行うということも必要だと思っております。
それから、14ページの2個目の「労働時間要件」に書いてあるところなのですけれども、先ほど百瀬委員からもお話がありましたが、ここに書いてあるところではあるのですが13ページの「被用者保険の適用に関する基本的な視点」の中で「被用者にふさわしい保障の実現」というのがあるのですが、この被用者であるというのはどういうことかという観点が重要かと思います。14ページにも、国民皆保険・皆年金の下で、一定程度働く人についてという文言があります。事業主と被用者との関係性の基盤とか、働く人々の相互に支え合う仕組みなどということであり、被用者保険の中でこの被用者の範囲をどのように線引きするかということだと思います。
また、そういった意味では事業主の責任がどこまでなのかということですとか、保険料事務負担についても触れられていますが、そういったことも挙げられると思います。一定程度働くということで現在20時間以上となっていますが、これは働き方の実情とともにどうしていくかということで、やはり健康保険側からも考えなければいけないと思います。事務の点とか、そういったことも含めてですが、トータルで考えますとやはり私も現在においては労働時間の要件というのは現状のままでいいのではないかと思っています。
雇用保険は確かに適用拡大という部分で短くなっていきますが、労働保険としての雇用保険のスタンスというものと、社会保険としての健康保険、厚生年金といったものの意味合いの違いといいますか、先ほども言いましたけれども、その部分の違いというのはあると思います。そういった意味で確かに雇用保険の適用拡大の施行状況等も慎重に見極めながらということかと思いますけれども、検討を行う必要があるかと思います。この部分については次の議論になるのではないかと思っております。
それから、先に公的年金シミュレーターについてコメントさせていただきます。公的年金シミュレーターは年金広報検討会でもいろいろと御説明いただいていたわけなのですけれども、障害年金の試算機能を設けるということは若い年代の方に、公的年金には老齢だけではなく障害年金があるということ、予測できないリスクに備えるための保険であるということを理解してもらうために、そういった取組みは非常にいいことだと私も思います。
ただ、障害年金については公的年金の障害等級が何級になるのかなど、どのくらいの等級になるかというのは自分で判断することができないので、それはもう添付書類を含めて請求して国から認定されるというものでございますので、その辺りは誤解のないようにしておくことも必要かと思っております。
その他については、調査にあった中で、公的年金は一生涯といいますか、終身の年金という理解があまり高くなかったという調査があったので、その辺りの工夫といいますか、どうしても図は限りがあるので短くなってしまうのですが、終身であるというのは非常に重要ですので、そこも伝わればいいかなと思っております。
あとは、iDeCoの試算機能の追加は何人かの委員の方から御発言がありましたけれども、老後の資産形成を考える際、若い方は特にライフプランとか老後資産形成から入っていくということもありますので、年金制度を軸として考えていただきたいという思いもありますから、個人的にはiDeCoの試算機能を設けるということはいいのではないかと思っております。
ただ、御存じのとおり、今年の12月から拠出限度額についての改正があって、DB等の他制度掛金相当額の考え方が導入されますので、厚生年金被保険者の場合、加入者は多いと思うのですけれども、自身が企業年金、DB、あるいはDCに加入しているのかどうかということについて確認してもらうといったことも今後は後々必要になってくるかと思います。それによって拠出の上限が変わってくるということもあるかと思います。
ただ、まずは簡易的な方法かもしれませんが、iDeCoの仕組み、特徴、あとは加入メリット、それとNISAとの違いなどを周知していただいた上で、iDeCoの利活用の具体的なイメージを持ってもらうことが必要だと思いますので、そういった取組みの方向で進めていただければと思います。
もう一つ、先ほどからちょっと議論が割れているのでなかなか私も難しいと思うのですけれども、納付猶予制度の50歳未満の延長というところはいろいろな意見が出て、なかなか慎重な意見もあるかと思います。確かに慎重に議論していくべきだと思いますが、資料2の11ページの図を見ると、このグラフで所得の分布でピンクのところが右側にもあるというのが出ているので、当初この制度ができたとき、つまり、50歳に延びたときにもいろいろと想定されたこともあったかと思うのですけれども、もちろんどういう事情があるかとか、追納状況がどうなっているかなど、そういうことをもっと知ることは必要だと思います。
ただ、納付猶予というのはやはり追納しないと年金額に結びつかないので、そういった意味ではなるべく納付済みにしていくということは必要だと思います。こういう所得の調査が出てきたということで、これはよく検討して、どういうふうにしていくかというのは決めていけばいいのではないかと思っております。
以上です。ありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
小林委員、お願いします。
○小林委員 まずは、御説明ありがとうございました。
私の方からは、まず議題1について意見を申し上げます。
支え手の増加による年金制度の安定性向上や将来の年金給付の充実といった観点から、被用者保険の適用を拡大する方向性については理解をしております。
他方、これまでも申し上げてきましたが、取りまとめの資料にも記載されておりますとおり、適用拡大の対象となる事業者においては、事務負担や保険料負担が新たに発生または増加します。より小規模の事業者であればあるほどその負担は大きく、経営に与える影響が相対的に大きなものとなります。そのため、制度改正に当たっては性急に事を進めるのではなく、事業者の認識と理解が浸透し、円滑に対応することができるよう、十分な時間を取ることが必要と考えております。
経営の予見性の観点から先々のスケジュールを示すとともに、例えば企業規模要件の件一つを取りましても、中小企業というカテゴリーの中の多くは従業員20人以下の小規模事業者であるという具合で、一気に進めても対応できるかどうか懸念があります。そうしたことから、規模要件について段階的な拡大も検討の視野に入れていただくなど、中小・小規模事業者の実態を踏まえた丁寧な議論をお願いしたいと思います。
次に、資料2の「国民年金保険料の納付猶予制度」について申し上げます。
無年金・低年金の防止や応能負担といった観点から、納付猶予制度を延長するとともに、世帯主に一定以上の所得がある場合も納付猶予の対象外とする事務局の御提案について、大きな異論はありません。制度創設時から社会情勢も変化しておりますので、見直しの検討を進めていただきたいと思います。
なお、前回の延長は5年間であったこと、今回の改正で新たな所得制限が検討されることになっていることなどから、今回の延長についても5年間とし、制度改正の影響や実態の把握を行うなど、少し細かく検討していく形とすることがよいのではないかと思います。
最後に、資料3の「国民年金における任意加入の特例(高齢任意加入)」についてですが、事務局の御提案の方向での検討に異論はありません。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
駒村委員、お願いします。
○駒村委員 ありがとうございます。
資料1の適用拡大からですけれども、なるべく私は広いほうがいいとは思っておりまして、270万くらいは目指してもらいたい。860万人になると、ちょっと労働時間上は別の違うステージです。どこまで被用者としてカバーするのかという別の次元の話も出てくるので、そこから先はやや長期的な展望で議論する必要があると思いますけれども、なるべく可能な範囲で270万くらいを目指していただきたいと思います。
その際に、今までも議論がありました中小、零細、個人事業主が入ってきますので、事業主負担をどういうふうに確保するのか。価格に転嫁するしかないということになると思いますけれども、これがスムーズにいくように産業政策、中小企業政策と密接に連携を進めていただきたい。この辺も視野に入れた上でやっていただきたい。そうしないと事業主が行き詰まったり、あるいは業務請負みたいな形にシフトしてしまうおそれがあるだろうと思います。
それから、適用拡大においては、7月に、適用拡大においても国庫負担は発生するという議論があって、ここについては資料には明記されていませんでしたけれども、中身を計算できるようにはなっていたと思います。
これは90万から860万でインパクトはかなり違いますが、あのときは保険のほうで少し国庫負担が調整されるような議論があったので、適用拡大による健康保険へのインパクトについて資料をいただきたいと思います。今どういう検討状況になっているのか、国庫負担の見込みも含めて教えてもらいたいと思います。
それから、資料2の問題ですね。先ほどからも問題になっている猶予ですけれども、猶予というのは、結果的に納付に繋がっていないのならば、なるべく免除を使うように誘導すべきではないか。猶予というのは、例えばこれまで議論があった国庫負担分がつかないというのと、それから年金生活者支援給付金の計算のときにもゼロカウントになってしまうということで、不利な部分も多いわけです。未納よりはましだということだと思いますが、免除に比べると損の部分も多いと思いますので、なるべく免除に誘導するような改革をしてもらいたいと思います。いきなり、もう次回から近々に廃止するというほどではないと思いますけれども、免除のほうに誘導できるようには改革をする必要があるのではないかと思います。この猶予というのは優しいようで、給付に与える影響は冷たい部分もあるということで、今日も議論がありましたけれども、少し猶予が納付に繋がっているのか、低年金にどういうふうにつながっているのか、データや分析が不十分のように考える。
例えば、資料2の8ページをもってみても、これは人数ベースで出ているのですけれども、30歳以降が増えているようにも見える。ただ、本来は加入者総数で割って比率で見ないと人口のインパクトなどもあると思いますから、この動向はよく分からないということなので、見直しをするならば継続的に議論をやったほうがいいのではないかと思います。
それから、特例の加入の話で、任意加入の特例でありますけれども、これは今回議論しないと昭和40年4月1日よりも若い世代はこれが使えなくなってしまうので、議論をしなければいけないということで事情はよく分かりました。
ただ、資料3の1行目に書いてあるのですけれども、保険というのはそのときに払わなければいけなくて、保険事故が発生してから後払いするというのは本来、保険原理から見ればおかしいはずなんです。だから、本当はこれは例外的である。保険原理というのは保険事故が起きる前に65歳前に払うというのが筋である。これは例外中の例外だということはちゃんと関係者が認識した上でどうするかという議論をすべきだと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
小野委員、お願いします。その後に、武田委員お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
私からは、資料1と4についてコメントをさせていただきます。
多くの委員の方から御指摘いただいているのですけれども、オプション試算で言うと適用拡大のマル3でしょうか。そこまでは進めてほしいというようなご意見が多いのではないかと思っておりますけれども、その場合には基本的に労働時間要件が残るという話になります。
その前提でお話をさせていただきたいのですけれども、両側に事業主団体の委員の方がいらっしゃる中で大変恐縮なのですが、次の財政検証に向けて事業主団体の方にぜひお願いしたいことがございます。これまでいわゆる「年収の壁」に関連して、労働者側の就業調整する問題に焦点が当てられてきました。
ところが、北海道大学大学院の安部由紀子教授によりますと、有配偶女性パートの労働者の労働時間を増やしたいという意向を妨げる要因として、社会保険等の社会制度のためという要因よりも、勤務制度などの会社都合の理由というものを挙げる割合が3倍程度高いという調査結果が公表されております。
つまり、本人が就業調整することよりも事業主が収入調整させるという、労働者にとってこれが真の壁になるわけですけれども、このほうが深刻な問題なのではないかと思います。つまり、マル3まで進んだとしても、やはり就業調整というのは残るのではないかと思います。
例えば、所定労働時間を20時間未満として採用募集することは違法ではないと言われておりますし、大手メディアの報道では、事業主から厚生年金に加入するならば時給を下げると言われたような例もあるということです。こうしたことをなくさない限り、就業調整の問題は次に議論するときも根強く残っているだろうと思います。
私は、この件に関して権丈委員が提案する厚生年金ハーフが最良と考えておりますけれども、皆様方は労使折半の原則を根拠に否定されたということです。しからばどのような方策があるのか、これをお伺いしたいということでございます。
なお、厚生年金ハーフは、これを適用するとマルチワーカーの問題に対してもかなりうまく対応できる施策だと私は考えております。
以上が資料1に関してです。
公的年金シミュレーターの問題なのですけれども、さらなる開発というのは大変よいことだと思いまして、その上で3点申し上げます。
第1点は比較的軽いのですけれども、iDeCoといいますとやはり対として国民年金基金というものを考えてしまうのです。国民年金基金が入っていないということは私が推測するに、これは加入できる範囲が非常に限られているとか、厳に加入者が少ないとかということがあると思いますので、こういったところが入れていなかった理由かなと思っております。
第2点は重々御承知とは思いますけれども、iDeCoというのは民間の金融商品に投資するということでございます。ということは、民間のプロバイダーでも同様のシミュレーションを提供している場合、結果に齟齬が発生する可能性というのは多分あるだろうと思います。その点を誤解のないように対処していただく必要があるということだけは申し上げておきたいと思います。
3点目は是枝委員の御指摘と重なる部分がありますけれども、スライドする公的年金と異なりまして、iDeCoや国民年金基金の給付というのは原則スライドしません。そのために、将来の残高や給付を名目額で示すと、物価や賃金の水準変動との関係でやや混乱するかもしれないと思いますので、これも御認識とは思いますけれども、御留意いただきたいということでございます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
武田委員、お願いします。
○武田委員 ありがとうございます。
資料2、3については特に異論はございませんので、その他の2点について意見を申し上げます。
1点目は、適用拡大についてです。懇談会で大変熱心に御議論いただき、まとめていただいた皆様に厚く御礼申し上げます。前回も申し上げましたとおり、経済成長、社会の変化、そして社会保障制度の持続可能性確保の観点から基本的に目指すべき方向性の下で年金制度と、小野委員もおっしゃられた労働市場の慣行を見直していく方向性が望ましいと思います。
では、目指す方向性は何かといえば、人手不足の時代になる中で、働き方に中立な制度、慣習にしていくことだと思います。就労調整は制度だけではないとおっしゃる御意見はそのとおりですが、就労調整に多少なりとも影響を及ぼしている制度を残して良いかというと、それもまた違うと思います。まずは就労調整の減少による人手不足緩和という観点から経済へのプラス効果、多様な働き方という個人の選択肢の拡大と老後の安心、さらには年金制度の持続可能性の向上、こうした点を実現していくことで、適用拡大については、できるだけ拡大していく方向が望ましいという考え方です。
2点目は公的年金シミュレーターです。国民の不安解消という観点でいいますと、マクロ的な観点で財政や国民負担等の将来見通しを示していくことは大切ですが、同時に国民一人一人が自分の将来に対する予見可能性を高めるような情報提供も非常に重要と思います。
以前当社で社会保障全体に対するアンケートを行い、年金だけではありませんが、社会保障への関心、財源に関する知識等々は、若い方ほど知らなかったという回答比率が多い結果になりました。質問は異なりますが、大きな傾向としては本日御説明いただいた資料の方向と同様です。
具体的には「社会保障制度の財源の仕組みなどについて知らなかった」、「全く知らなかった」と回答した20代が55%、30代では46%の数字です。
一方で、「社会保障制度に対する不安を解消するためには何が必要か」ということについては、「自分自身が支払った保険料に対し、将来どの程度給付されるか示してほしい。」「社会保障制度や財政に対して国民負担の将来の見通しについて分かりやすく示してほしい。」などの回答比率が非常に高いです。
さらに興味深いのは、知りたいという意向は高齢者ほど高くなりますが、唯一若い層になるほど回答比率が高い項目が、制度の仕組みを理解できるよう学校や職場で教えてほしいという項目です。本日も金融経済教育推進機構の講義資料で、今回のシミュレーターを取り入れているという御報告がございましたが、こうした取組はぜひ連携されると良いのではないかと、アンケートからも感じます。
また、本日御説明いただいた取組は大変野心的であるとは思いますが、できるだけ情報を前広に知ることが、過度な将来不安を抱えないという観点からも良い取組と思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
一通り、会場参加の皆様から御意見を承りました。オンライン参加の委員の皆様から伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、島村委員お願いします。
○島村委員 どうもありがとうございます。今日は御説明いただきましてありがとうございます。
まず被用者保険の適用については、被用者として働いている方についてできるだけ厚生年金に入れるように、企業規模要件の撤廃ですとか、個人事業所への拡大をしていくべきとの方向性に私も賛成しております。
労働時間については、正社員の週の法定労働時間40時間との関係で、半分以上働く人を対象とする現行制度というのは理にかなっている部分が大きいのかなというふうに直感的には思っておりまして、線引きの問題ではあるのですけれども、報告書で言うように今は慎重な方向でもよいのではないかと思っております。
フリーランスについては、偽装フリーランスといいますか、本当は労働者なのに労働者としては保護されていないケースというのがなくなるように、労働監督行政とも連携して年金のカバーに入れていくのが重要だということを改めて強調させていただきたいと思います。労働者として認められた上で、年金でも被用者となるルートがあるというのがあまり知られていないということがないようにしていきたいと思っています。
厚生年金の適用対象である、使用されるという概念については社長が含まれているなど、労働法とは違う部分というのも既に存在しておりますので、労働法での議論を参考にしつつも、独自の解釈によって広げるアプローチもあり得るかと思いますので、その点も含めて検討していけるとよいのではないかと考えております。
国民年金の納付猶予については、個人的には免除もある中で、老齢年金について追納がなければ実にならない猶予にどれほどの存在意義があるか、疑問がなくはないと思っていて、将来的には廃止の方向というのがよいのではないかと思っております。
他方で、一定程度利用者がいるのであれば、単に終了としてしまうと障害年金を受ける手だてがなくなるですとか、追納しづらくなるということがございますので、出口委員ほかの先生方からも御指摘がありましたが、追納などがどれだけ行われているのか、追納のタイミングが2年以内になされているのかなどのデータも含めて拝見させていただいた上で議論できるといいなと思っております。できるだけ免除で救える人はそちらで切り替えていく実務というのを強化していく方向性に賛成でございます。
シミュレーターについては、総論としてはiDeCoを皮切りに私的年金との連携というのがどんどん進んでいくことを期待しております。プラットフォームとしていろいろなものを見えるようにする必要性というのは高いかと思っております。
ただ、一方で、先ほども御指摘がありましたとおり、資産形成については運用利回りの難しさというのがあって、誤解を与えないような制度にしていく必要性が非常に高いかと思います。限度額も属性によってかなり違いがあるかと思いますので、それも分かるような表示にしていただけるとよいと考えております。
以上です。ありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
平田委員、お願いします。
○平田委員 ありがとうございます。
まずは、資料1の適用拡大について申し上げます。
企業規模要件の撤廃、非適用業種の解消について、賛成です。これは、社会保障の大きな仕組みである厚生年金において、勤務先による差異が生じてはいけないという理由に尽きます。
以前から申し上げていることで、今日の御意見にもありましたけれども、時間要件の20時間未満への適用拡大は、もし行う場合でも一定の議論を踏まえるべきだと強く思っております。すなわち、被用者とは何か、なぜ雇用主が労働者の保険料を折半で負担するのかということについて、明らかにして国民全体で共有することが必要だと思います。
いただいた資料の中に、「事業主と被用者との関係性を基盤として働く人々が相互に支え合う仕組み」とありました。実際にそのとおりなのですけれども、仕事柄、多数の企業の声を聞いている中、本質的、あるいは心情的な部分では必ずしもそうなっていないというのが実際かと思います。20時間未満になればなおのことそうなりやすいと思い、つまり本質を共有していないと偽装請合や偽装フリーランス的な働かせ方を助長することにもつながろうかと思います。
一方、適用拡大に当たり、小規模事業者への支援は非常に大切だと思っています。
ただ、その場合、生産性向上を意図した社内コミュニケーションの向上に使えるものを検討してはどうかと真剣に思っています。私は仕事柄、いろいろな企業の組織内の生産性向上というものに関わっているのですけれども、社内のコミュニケーションの円滑化ほど人の自発性、成長意欲を引き出して生産性を高めるものはないと、実感として持っています。
もちろんコミュニケーション以外の取組も必要で、それだけで済むわけではないのですが、人間関係というものがあらゆる取組の土台になっているのは間違いないと思います。小規模であると、人が少ないからコミュニケーションを取りやすそうですけれども、一概にそうとも言えないと思います。
DXもいいですけれども、そもそも自社に適切な仕組みにできなかったり、仕組みを適切に運用できなければ宝の持ち腐れになるという面も多く見ております。そこにも人と人との関係性が非常に大事になっているなというのが実感ですので、情報提供を含め、申し上げました。
国民年金保険料の納付猶予制度についてです。これは制度の利用者が増えていて、これで助かる人がいるのであれば継続という考えもうなずけると思います。反面、30歳以上で平成29年より令和2年の方が適用者数が増えており、猶予の制度があるからこれに乗っかって行き続けやすいというのもやはりあると思うんです。結果無年金になるなど、意図せぬようなところに制度が持っていってしまってはいないかということを、長期的な視点で見ていくことはとても大事なのではないかと思います。
一方、世帯主に一定の所得がある場合、保険料納付を求めること、これも無年金にならないために大事な観点でもありましょうけれども、年金はそもそも社会保障であり、社会全体で支え合う仕組みなわけです。介護なども以前は家の中に閉じていたものが、介護保険などを通じて社会化が進んでいる面があると思います。いたずらに世帯主に子供に対する保険料納付ということを求めることが時代に逆行しないかというところに懸念を覚えております。
最後に、公的年金シミュレーターについてです。分かりやすく操作しやすいのが、使用が増えている理由の一つなのだろうと思っています。したがって、複雑になり分かりづらくなったり、重くなったりというようなことにならないように改善していくというのがとても大事だと思っています。
その上で、まずは障害年金について組み込んでいくことには賛成です。というのは、公的年金シミュレーターは、国民が自ら年金について知りに行くという積極性を生み出している、稀有なツールではないかと思っているからです。そこに障害年金の例えば情報が載ることを通じて、誰にでも起こり得る万が一の対応を社会全体で支え合っているんだ、という年金の本質がメッセージとして伝わる可能性があるのではないか。そんなことも含めて、何を載せていくかということを、考えてみてもいいのではないかと思いました。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
権丈委員、お願いします。
○権丈委員 今、労働市場でいろいろと興味深いことが起こっていて、最低賃金の世界では目安50円よりも9円上げて59円とした県が公労使の全会一致で採決されたり、目安よりも34円も上げた県で使用者側の賛成者がいるかと思えば、一方で労働者側の反対者もいたりする。今までは考えられないようなことが起こってきているわけです。
何が起こっているのかというと、労働市場が緩んでいた、弛緩していた状態から、逼迫した状態に転換してきたことが大きいと考えています。
我々の用語で言えば、無制限労働供給を意味する水平的な労働供給曲線が反時計周りに回転し始めて、労働力が希少な社会に入ってきた。これは企業、特に中小企業が生き残る戦略を180度転換させます。例えば、無制限労働供給の時代には、企業へのコンサルというのは社会保険料を払わなくても済む方法とか、法律に抵触しないで賃金を下げる方法をアドバイスするのが顧客が生き残るための有益なアドバイスになり得ました。
ところが、フェーズが変わって労働力希少社会に入ると、そうしたアドバイスをすればその顧客は数か月後には人手不足倒産しているかもしれない。顧客である企業が生き残るためには、労働者に魅力のある職場のつくり方とか、被用者保険の適用は労働条件のミニマムですよと、少々厳しいことを言うことのほうが、本当は企業に優しい有益なアドバイスだということになる。
だから、東京都の最低賃金もそうなのですが、東商とか日商とかというところは関連企業から適用拡大に反対するようにとか、最賃を上げないようにと言われてくるわけですけれども、そういう政府への要望が通って、そこでできたルールを真に受けていたら、企業は人手不足倒産して、そこでの労働力はより生産的に活用してくれる経営者のところに移動します。そういうことが労働力希少社会では普通になる。
アダム・スミスはこうした市場の力を高く評価していたわけで、私もこの点は市場はすばらしいと思っています。
今日は、『女性セブン』の「厚生年金にいますぐ入りなさい」という特集の記事を配付させてもらっていて、少々愛嬌のある勇み足ぎみのことが書かれている記事なのですけれども、ここに書かれていることがいかに世の中に広く理解されるかということが、適用拡大がなされる来月10月1日を前にして重要だと思っています。
この記事の最後のほうに、適用拡大が進んでも時間がかかるだろうから、既に被用者保険に入ることができる会社に転職したらいいと私は話していて、労働市場が弛緩していた、緩んでいたかつてでは言っても意味がなかったけれども、今は意味があります。
それで、大手全国の6紙の新聞とNHKニュースを対象として「年金」と「年収の壁」というキーワードで検索をかけますと、2021年にはヒット数がゼロです。それで、2022年に野村総研が出した働き損レポートをきっかけとして報道合戦が始まってブームが起こるわけですね。そして、2016年の適用拡大時よりも2022年の適用拡大時のときのほうが3号で就業調整した人の割合は高かったという報告もありますけれども、その原因として2022年後半から年収の壁、働き損という報道が盛り上がっていたことが一つ考えられます。
昔からこうした現象を私は「予言の自己実現」と呼んでいるのですけれども、今回はそうした喜劇、悲劇を避けたく思って今日は『女性セブン』の記事を資料として提出させてもらいました。
ちなみに、『女性セブン』は9月号では今度、「女の年金は2歳繰下げをしなさい」という特集を組んでいました。
それで、今日の議題に制度論としてコメントをするとしたら、強制適用の条件を満たしていなくても被用者保険に入ることができる任意適用の制度をしっかりと広報してもらいたいと思います。中小企業も、もう待っていられないと思います。そして、労働者には「見えない壁」を意識した企業が情報弱者の立場にある人たちに就業調整を誘導しているところが今もあるということを記者たちからもいろいろ聞いているわけですけれども、今はそうしたことをやっていると潰れるよという報道を、今回メディアには年収の壁のときの勢いで大展開してもらいたいと思っています。
こういう状況をある程度解決していく話としては、先ほど小野委員が発言されていた厚生年金ハーフというのが私は妥当だと思っておりまして、論敵は法律学者になるというふうに昔から書いておりますので、それはそういうものだろうと考えております。
次にシミュレーターのところにいきますけれども、人間は時間軸が関わることが理解できないという認知バイアスを持つ生き物です。そういうことをずっと書いているわけですが、そういう近視眼的認知バイアスがある限り、人間は自然状態では公的年金保険を理解できません。だから、長期的に考えると、その制度に守ってもらっているほうがメリットがあるのに、強制適用になっているわけですね。そういうふうに私はいろいろと書いているわけですが、人間が時間軸に関わることができない生き物である以上、今のところ考えられる有効な方法というのはシミュレーションによる可視化、及び好事例を用いた広報活動ということになるかなというのが昔からです。
今日は年金部会での話ですが、医療介護の提供体制の改革も時間軸上の人間の弱点を克服するために、シミュレーションによる可視化及び好事例の広報活動という方法を取ることになります。そして、医療のほうでは2025年までの可視化、シミュレーションによる可視化というのは威力が小さかったですけれども、2040年までの人口減少を視野に入れた可視化には少々力が備わってきているかなというようなものを感じています。
公的年金シミュレーターも人間の認知バイアスを克服する効果が絶大だと評価していますので、大いに展開してもらいたい。今、利用回数が500万ということらしいのですけれども、少ない。東京都も協力しているわけですけれども、これで500万というのは少ない。もっともっと大きな高めの目標を掲げてやってもらいたいと思います。
2022年12月にまとめられた全世代型社会保障構築会議の報告書には、被用者保険適用に伴う好事例や具体的なメリットを事業所官庁、省庁、いろいろな省庁から全部協力を得て広範かつ継続的な広範啓発活動を展開すべきであると書かれてあります。
この意図は、厚労省は年金の存在意義とか適用拡大の意義は十分に分かっている。しかし、他の省庁、本当はここは府省庁と書かなければいけなかったのかな。府がついているところがおかしなことをやったりしますので、他の府省庁と言うべきかもしれないんですけれども、分かっていないところがあるんですね。そこも巻き込んで勉強してもらうようにということが、全世代型社会保障構築会議の報告書に込められた意図でした。そういうことをぜひ他府省庁も巻き込んで、政府全体で適用拡大の意義とか、ひいては社会保障の存在意義を勉強する機会を設けてもらいたいと思っています。
最後に1つ、東京くらし方会議の資料で公的年金シミュレーターを紹介しています。その資料で事務局がつくった原案には、エプロンをつけて三角巾をかぶった女性が2人登場してきて、それだけしかいなかったわけですけれども、私は座長権限を使ってエプロン女性を1人にしてもらって、スーツを着た女性と男性の漫画も加えてもらいました。公的年金シミュレーターを使ってもらいたい人たちというのは、今日の資料4の7ページの左のほうにある図の中でエプロンをつけて三角巾をした女性のほかにもいろいろあるはずなんです。そういうことも含めて、今の時代は本当にイメージとしてエプロンをつけた三角巾の女性にシミュレーターを使ってもらいたい、年金の意義を理解してもらいたい、本当にそれだけなのか。そういうようなところから、根本的にみんなで考え直していこうよというようなところを提案して終わりたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、最後に玉木部会長代理からお願いいたします。
○玉木部会長代理 ありがとうございます。
私も、適用拡大というところにつきましてはフィージビリティーの範囲内で極力大胆に進めていただきたいと思うところでございます。
あとは、今日の話を伺って思ったことも含めて、広報について一言申し上げたいと思います。
広報というのは非常に困難な戦いでありまして、そのための武器と戦力ということを考えたいと思います。最近、武器として少なくとも強力な新兵器が2つできていると思います。1つはシミュレーター、もう一つは例の分布推計でございます。この2つが最近の新兵器だろうと思います。戦力はどうかというと、年金局の皆さんは頑張っておられると思いますけれども、いかんせん人数が少のうございます。
他方で、例えば私の授業にお願いすると年金機構の方が来てくださいます。このように、年金機構というのはもちろん全国にあるわけですけれども、戦力として大変頼りになります。
さらに加えて、年金委員という方々が地域、職域にたくさんおられまして、私も何回か年金委員の皆さんの研修会でのスピーチをしたりしますと大変な熱気でございまして、人数も相当なものがあります。また、そういった講演は東京だけでなく行われると思います。
さらに加えまして、最近ですと金融経済教育推進機構、J-FLECが社会保障、年金に直接の関心を示しておりまして、こちらは学校での出前的な授業と職域でのお話と、両方やる気になっておられますし、または一つの戦力として金融庁、日銀というのが入ってきたわけでございます。
こういったものを使った戦いを考えるときに、やはりいろいろな意味で最近の変化に応じていくべきかと思います。というのも、先ほど権丈委員から我が国の労働市場の大きな変化があったというお話がございましたけれども、若い人のライフプランニングというものも相当大きく変わってきております。恐らくライフプランニングに関するものの見方という点では、多分この部屋にいる人の平均年齢の日本と、20代、30代の平均年齢の日本と、少なくとも日本は2つある。もしかしたら3つか4つあるだろうと思います。それぞれの日本に応じた戦い方をする必要があって、その際には最近、年金局が開発した新兵器を活用して、または使える戦力はどんどん統合的に運用して効果を高めていただきたいと思います。
この効果がないと、発現されませんと、適用拡大という正しい方向での措置に対して国民的な支持が高まってくるのが遅くなってしまうのではないかというところがございます。先ほど、社会保険に入れない、社保完ではない職場についての御指摘も権丈委員からございましたけれども、私はそういった職場が衰退していくといいますか、少し小さくなって、そうではない職場が大きくなっていくというのが全ての日本について、1つだけの日本ではなくて全ての日本において求められているのではないかと思うところでございます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
これで、全員の皆様から御意見を頂戴することができました。何か追加で御意見がおありの方はいらっしゃいますでしょうか。
是枝委員、どうぞ。
○是枝委員 すみませんが、少し時間に余裕があるので、前回の年金部会でお話しした遺族年金の改正について少し質問をさせていただきたいと思います。
前回の年金部会で大きな方向性については議論ができたところですが、詳細な制度設計を行うに当たり、幾つか詰めなければならない点があると思いますので、ぜひ年末までにもう一度議論する機会をいただきたいと思っております。2点、詰めたいことについて質問しますので、現時点で分かる範囲で事務局にお答えいただければと思います。
1点目は、子供が18歳になった後の配偶者への給付についてです。前回の年金部会で事務局から、子を養育する間の世帯の給付内容は変わらないという説明がありましたが、これは裏を返すと、制度改正時に40歳未満の世代については18歳未満の子のいる世帯であっても、子が18歳になるか、または配偶者死亡時から5年経過するか、いずれか遅い時期までの有期給付であり、それ以後、65歳になるまでの間について遺族年金は支給されないものと理解しましたが、この理解で合っていますでしょうか。
子が18歳以上になったら、多くの場合はケアによる就労の制約は限定的であるため、配偶者死亡による所得低下に対する保障としての遺族厚生年金の支給の必要性は高くないものと理解いたしました。
一方で、子供に障害がある場合は子が18歳や20歳に達しても、なお引き続きケアによって就労に制約が生じる場合があります。こうした観点から、障害を持つ子供を持つ親の方から遺族年金の改正について懸念が示されております。この点について、遺族年金で対応するか、あるいは障害者福祉制度などで対応すべきか、事務局に考えがあれば教えてください。
2点目は、有期給付加算の対象者についてです。前回の年金部会で、遺族厚生年金を有期給付化するに当たり、配偶者と死別直後の生活再建を支援する観点から、有期給付加算として給付額を3分の1増額したいという旨の説明がありました。これの対象者について、新たに5年有期給付の対象となる子のない配偶者のみとなるのか、それとも子のある配偶者や子に支給される場合についても当初5年間については増額対象とするのか、どちらを考えているのか、現時点で考えがありましたら教えてください。
私としては、18歳未満の子のいる世帯にこそ生活再建のための一時的な給付増額の必要性が高いと思いますので、子のある配偶者や子に支給される場合についても増額の対象にすべきと考えております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
御意見として承りますが、いかがですか。今、答えられることはございますか。
○年金課長 御指摘ありがとうございます。
前回の遺族年金で御提示した資料については、それまで子がいない配偶者の場合に男女の差があるところが部会の議論の中心でしたので、子供がいない配偶者、20代、30代、若い世代ですけれども、その方々の取扱いとして5年間の有期給付の提案をさせていただいたところです。
他方で、子がある場合については、前回の議論の焦点である男女差の解消というところから少し違っており、詳細な資料あるいは制度設計はお出ししていない状況です。
御指摘があったお子さんがいる場合の18歳以降はどうなるのか、あるいは有期給付加算の対象者で子供がある場合はどうなのかという、子がある場合については、改めて資料としてお出しして御相談したいと思っております。
現時点で様々な声をいただいておりまして、7月30日の案から少し変えるところ、あるいはアップデートするところはないか精査しているところです。また御相談させていただきたいと思いますのでよろしくお願いします。
○是枝委員 ありがとうございます。
○菊池部会長 いずれにしても、遺族年金についてはまだ詰めるべき論点はあるので、また追って議論の場を設けるということですね。
ほかにはいかがでしょうか。
よろしいですか。
ありがとうございます。今日も様々な御意見をいただきましてありがとうございました。今日は4つの資料がございましたが、とりわけ1番の被用者保険の適用拡大については懇談会の取りまとめがございますが、それに加えて本日の御意見も踏まえてまた事務局で、取りまとめに向けて作業していただくということになるかと思います。
それ以外に関しては、とりわけ2つ目の納付猶予につきまして、かなり多くの方から様々な御意見をいただいた中で、エビデンスですね。追納していた人の割合など、データをもう少し出してほしいという御意見が多かったと思います。要するに、払えるようになったら払う制度、まさに猶予制度として機能しているかどうかというところの実態を検証した上で時限措置の延長をどうするかという議論をしてはどうかという御意見と私も受け止めておりますので、どこまでデータを出せるかということはあると思いますが、御検討いただければと思います。それ以外にも様々な御意見、どうもありがとうございました。
それでは、本日は以上で終了とさせていただきます。
今後の予定につきまして、お願いいたします。
○総務課長 次回の議題や日程につきましては、追って連絡をいたします。
○菊池部会長 それでは、本日の審議はこれで終了とさせていただきます。
本日も、お集まりいただきましてどうもありがとうございました。