第19回社会保障審議会年金部会(議事録)

日時

令和6年11月5日(火)15:00~17:00

場所

東京都港区新橋1-12-9 新橋プレイス

AP新橋 4階 D、Eルーム

出席者

会場出席委員

菊池部会長   玉木部会長代理   小野委員   小林委員   是枝委員   佐保委員   嵩 委員   永井委員   原 委員   平田委員

百瀬委員

オンライン出席委員

権丈委員   駒村委員   武田委員   堀 委員

井上参考人(出口委員代理人)

議題

(1)多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方について

(2)その他の制度改正事項について

議事

議事内容

○総務課長 ただいまから、第19回「社会保障審議会年金部会」を開催します。皆様、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。

 初めに、委員の御退任について報告します。

 深尾京司委員におかれましては、10月13日付で任期を満了され御退任されております。

 次に、本日の委員の出欠状況です。

 出口委員、島村委員、たかまつ委員は、御欠席です。

 また、駒村委員は遅れての参加、原委員は途中退席される御予定と伺っております。

 御欠席の出口委員の代理として、日本経済団体連合会の井上様に御出席いただく予定となっております。まだ、オンラインに入られていないようですけれども、井上様の御出席につきまして、部会の御承認をいただければと思います。いかがでしょうか。

(委員首肯)

○総務課長 ありがとうございます。

 権丈委員、駒村委員、武田委員、堀委員、井上様は、オンラインで参加されることになっております。出席委員が3分の1を超えていますので、本日の会議は成立しております。

 続いて、資料を確認します。

 本日の部会はペーパーレスで開催しています。傍聴者の方は、厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。

 時間の都合により、資料番号のみ読み上げます。本日の資料は、資料1から3までを事務局で用意しています。

 また、権丈委員から資料の提出がありました。

 事務局からは以上です。

 以降の進行は、菊池部会長にお願いいたします。

○菊池部会長 皆様、こんにちは。本日も大変お忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。

 カメラの方は、ここで御退室をお願いいたします。

(カメラ退室)

○菊池部会長 それでは、議事に入らせていただきます。

 本日は「多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方について」「その他の制度改正事項について」、以上2点を議題といたします。

 これらの説明に入ります前に、社会保障審議会年金部会におけるアーカイブ配信について、事務局より御説明いただきます。よろしくお願いします。

○総務課長 資料の1を御覧ください。

 表紙をおめくりいただきまして、前々回の年金部会におきまして、部会の会議のアーカイブ配信を行うことについて御意見がございました。

 これを受けまして、事務局で整理をした対応案が、資料のとおりでございます。

 資料の2枚目の真ん中辺りから御覧ください。

 まず、アーカイブ配信を行う前に、会議の議事録自体をできるだけ早く公表してはどうかという御意見がございました。

 このため、会議後1週間を目途として、可能な限り速やかに議事録を公表することとしてはどうかと考えております。

 なお、議事録の公表につきましては、実は前回の部会から従前と比べて早く公表するような取組を既に始めているところでございます。

 ただ一方で、委員の皆様方も大変お忙しいと思いますので、すぐに議事録の確認ができないという場合もあろうかと思いますので、そのような事情がある場合には配慮いたしますので、可能な範囲で、あくまで1週間というのは目安として、できるだけ早く議事録を公表できるように御協力いただければと考えております。

 続きまして、アーカイブ配信につきましては、部会の正式な記録は議事録であるということを前提としつつ、議事録を公開するまでの間、会議の音声記録を配信することとしてはどうかと考えております。

 また、委員の方からお申し出があった場合には、その委員の方の発言の全部または一部を非公開とすることもできることとしてはどうかと考えております。

 このような運用につきましては、あくまで試行という形で実施をさせていただいて、必要があれば、適宜やり方を見直していくこととしてはどうかと考えております。

 このような方針で、もし、本日御了承いただけるのであれば、早速、本日の部会からアーカイブ配信を開始してはどうかと考えているところでございます。

 説明は以上になります。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 この間、事務局のほうでいろいろ調整をしてくださいまして、一方では、国民の知る権利への配慮というものも必要ですし、その一方で、委員の皆様の自由な発言環境の確保ということもございますので、その辺りも勘案の上、事務局のほうで丁寧に、この間、御調整いただいたと認識してございます。

 今、御説明ございましたことに関しまして、皆様から御意見、御質問がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。

 会場で、佐保委員、お願いします。

○佐保委員 資料1のアーカイブ配信についてでございますが、会議の議事録を速やかに公表していくこと自体に異論はございません。

 その上で確認をさせてください。部会としての正式な記録は音声でなく、後日に公表する議事録とするとのことであります。また、委員からの申出によって、該当委員の音声記録の全部または一部を公開しないことができるとのことでございますが、その申出の期間や、音声公開された後の対応が可能なのかどうか、これについて確認をさせてください。

 以上です。

○菊池部会長 いかがでしょうか。

○総務課長 ありがとうございます。

 配信につきまして、できるだけ早くやることが望ましいと思っておりますので、可能であれば、会議が終わったその日のうちにも、もし御本人の御発言の中で気になる部分があるようであれば、速やかにお申出をいただけるのがありがたいとは考えております。そこで特段問題がなければ、会議の翌日には配信を開始したいと思っております。

 ただ、配信をした後であっても、やはりどうしてもここはということがあれば、そこは、また対応したいと思いますので、お申出をいただければと思っております。

○菊池部会長 いかがでしょうか。

○佐保委員 ありがとうございます。

○菊池部会長 ほかには、是枝委員。

○是枝委員 アーカイブ配信の実現及び議事録の早期公開に向けて、事務局に御尽力いただいたことに感謝いたします。今後の対応の方針に賛成でございます。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 ほかには、いかがでしょうか。

 オンラインの皆様からもございませんでしょうか。よろしいですか。

 ありがとうございます。

 それでは、試行的にということでございますが、早速、今回から進めさせていただきますので、また何かお気づきの点などあれば、事務局のほうにお寄せいただければと思います。どうもありがとうございます。

 それでは、議題に入らせていただきます。

 議題1、議題2につきまして、まとめて事務局から御説明をお願いいたします。

○年金課長 年金課長でございます。

 私からは議事1と2をまとめて、資料2と3を説明させていただきます。

 まず、資料2を御覧いただければと思います。

 「多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方について」ということで、本年5月の第15回年金部会で一度御議論いただいたものです。

 そのときにどういうものを提出したか、振り返らせていただきたいと思っており、飛んで恐縮なのですが、資料2の18ページと19ページを御覧ください。

 右の下にスライド番号ございまして、この2枚が5月に事務局からお示ししたものです。

 これまでは、いわゆるモデル年金ということで、18ページで言いますと、②の43.9万円という男性の平均的な収入をベースにした厚生年金の世帯かつその妻の基礎年金が40年という形で1つだけお示ししてまいりましたが、いろいろなパターンを示してはどうかということで、18ページにあるように収入を1.25倍あるいは0.75倍と機械的に変えた場合にどうなるのかということをお出ししました。

 18ページは単身世帯で、かつ被保険者期間は全て40年のため基礎年金の額は全て同じとなっています。

 この単身世帯の年金額の組み合わせが、夫婦世帯ということで、19ページに共働きの場合のイメージ、それから片働きのイメージとして複数のパターン、かなり多くをお示ししたところです。

 これを基に先生方から頂いた御意見を踏まえたものが、本日お願いする議論になります。

 少し戻りまして3ページと4ページが、前回議論をいただいた際の御意見を私どもでまとめたものになります。

 示し方については、特に年代に着目する視点ということで、若い世代の方々が自分たちの世代の年金はどうなのかというイメージをつかみたい、将来どれぐらいもらえるのかを示してはどうか、ということを1ついただいております。

 それから、男女に分けない単身のみで収入別、加入別のパターンを示せばいいのではないか、それから、そもそも年金のシミュレーター、今日も資料にございますが、こういうものを使って試算できるのであれば、それを使えばいいのではないかという指摘もございました。

 それから、○○世帯と細かく分けるのではなくて、もう少し違う示し方があるのではないかというところもございました。

 また、下のほうですが、年金額は個人の年金の合算であることが分かるのがいいのではないかという御意見もいただいております。また、実際の報酬に近い額で、当人にとってリアリティに近いものを出すのがいいのではないか、というのを一番下の辺りでいただいております。

 それから4ページですが、いろいろな姿を示すという目的や、年金は報酬比例と基礎年金という2つのパーツから出来上がっていると、こういうこともしっかりと浸透させてはどうかという御意見がありました。

 それから、ターゲットに置くのは、例えば単身高齢者のような方々ではないか、これまでは夫婦世帯をイメージして、いわゆるモデル年金として示していましたが、単身ではどうなるかを強く伝えるべきではないか、こういった御意見をいただいたところです。

 以上を踏まえて、2ページが本日御議論いただきたい論点になります。

 最初は、今御紹介した第15回年金部会でいただいた意見を書かせていただいております。

 その下ですが、5月に議論して以降の新しいものとして、7月に報告した令和6年財政検証において世代ごとに将来の年金額の見通しを示した分布推計を公表しています。

 これは将来の年金を示すものとして活用できるということで、分布推計を踏まえた形での検討例を本日新たにお示ししています。

 5ページをお開きいただくと「年金額分布推計を踏まえた多様な年金水準」としており、前提としては2024年度に65歳になって年金を受け取る方の実際の例を示しています。

 1人当たりの老齢年金額は、単身を念頭に置いた額を示していて、①から⑤までございますが、①と②が男性、③、④、⑤が女性になります。①と②の違いは、現役時代の経歴について厚生年金期間中心が①、1号期間中心が②です。

 この○○中心というのは、※2で定義を置いていて、例えば厚生年金期間中心とは、厚生年金の被保険者期間が20年以上、1号期間中心は1号被保険者期間が20年以上、3号中心は3号被保険者期間が20年以上となっており、それぞれ20年以上というものを○○中心としています。

 それによって、過去にその方がどういう経歴が長かったか、厚生年金期間だといわゆる被用者としての期間が長いということになりますが、これによって年金額が変わるところが違いになります。

 見ていくと、一番上の①男性の厚年期間中心だと年金額は17万223円で、内訳はそれぞれある通りです。

 ここで「基礎年金相当」という表現を置いていて、これは※3で注を置いていますが、この額には、基礎年金本体の給付に加えて、振替加算、経過的加算、付加年金等々を合計したものとなっていて、それをこの資料では基礎年金相当という言い方をしています。

 それから、その額の下に平均的な厚生年金の加入期間と収入を示しています。

 ②以降も同様で、②は男性の1号期間中心で年金額が6万1188円です。1号期間が中心ですが、その下にあるとおり厚年期間が少し7.6年ありまして、厚生年金が1万4068円、基礎年金相当は4万7120円になっています。

 その下にありますが、この1号期間中心の方の基礎年金相当には、免除期間あるいは猶予といったことで基礎年金の給付額が10分の10つかない期間も含まれておりまして、その分期間が短くなって年金額についても基礎年金相当で4万7000円になっています。

 その下からは女性の場合で、③が厚年期間中心、④が1号期間中心、⑤が3号期間中心となっており、構成は上と同じで厚生年金と基礎年金相当の額を足したものが合計額になります。

 ③を御覧いただくと、女性で厚年期間中心の方の期間については33.4年となっており、男性の39.8年と比べてもそれほど離れていませんが、収入の額が35.6万円と男性の50.9万円と比べると低いこともありまして、これが厚生年金の年金額の差になっています。

 他方で基礎年金相当額については、経過的加算等々の加算も含めると、40.7年という期間で基礎年金相当額は6万9251円となっており、この5パターンの中では一番高い額となっています。

 ④の1号期間中心の方は、合計が5万9509円で、やはり若干の厚生年金期間がありまして8,327円になっています。

 それから、⑤の3号中心の方々も少し厚生年金期間があって8,887円と、それに基礎年金相当額は6万6492円で納付済期間が39年です。3号被保険者の期間はそのまま納付済期間になりますので、額としては女性の中では上から2番目の厚生年金期間中心の方に次いで高くなっています。

 このほかに年金制度では、右側の箱に少し書いていますが、前年の所得額が老齢基礎年金満額以下の場合には、年金生活者支援給付金というのが別途給付されますが、今回の年金額にはこの給付金は含まれておりません。所得にもよりますが、老齢基礎年金満額以下の場合、これは②の方あるいは④の方ですが、生活者支援給付金が支給されている可能性が高いことになります。

 それから世帯の年金はお一人の年金額の組み合わせですので、例えば共働き(①+③)のパターンや、片働き(①+⑤)のパターンを挙げております。

 最後に、これまでのいわゆる「モデル年金」の額は、40年加入が前提ですが、22万8372円でこれは従来の示し方と変わっていません。

こういった形で今年65歳になる方の年金を幾つか示せればと考えております。

 続いて、これが将来どうなるのかというのが、6ページ、7ページの資料です。6ページは女性です。

 左側の円グラフは、先ほど御覧いただいた今年65歳になる方の年金額の数字を丸めており、それぞれ○○中心として3パターンに色分けをしています。

 それから平均年金額についても5ページの数字を持ってくる形で、女性の③から⑤の数字を記しています。全体の平均年金額は9.3万円です。

 これが右側になると、1994年度生まれ、つまり今年30歳の方が2059年で65歳になったときの年金額です。これは分布推計から持ってきています。

 ケースが2パターンあり、右上が成長ケース、つまり4つのうちの上から2番目のケースで、右下が30年投影ケースで上から3番目のケースになります。

 左側と大きく異なっているは御覧のとおりで、まずは厚年期間中心の方が大幅に2倍近く増えることです。

 他方で、1号期間中心の方が少なくなり、それから3号期間中心の方も半分から3の1程度になるということで、これは分布推計でもお示ししましたが、若い世代の方ほど厚生年金の被保険者期間が長い方が増える一方で、1号期間や3号期間が中心の方が減るという見通しを踏まえています。

 年金額についても、それぞれ書いていますが、平均年金額で御覧いただくと左の9.3万円が、右の上だと16.4万円、右の下でも10.7万円ということで、この額は2024年度に割り戻した数字ですが、厚生年金の被保険者期間が延びることが年金額に大きく影響することがお分かりいただけると思っています。

 そういう意味では、将来世代は現役時代の経歴によって年金額が変わるということが、これでお示しできるのではないかと思っております。

 同様なものが7ページで男性になります。御覧いただくと、現在でも厚年期間中心の方が多いということもあり、右の上、右の下でそれぞれ若干は厚生年金期間が増えて、1号期間が短くなっており、全体として現在と大きくは変わっていません。

 年金額についてもそれぞれの通りで、平均年金額は現在の14.9万円が、右上の成長ケースですと高くなって21.6万円、右の下の30年ケースですと14.7万と下がります。

 これまでは、いわゆるモデル年金という形で、例えば1月の年金額の公表であったり、あるいは様々な公表資料の中で、厚生年金の額がこれぐらいということを示していましたが、今後は様々なケースをお示ししたいと考えています。

今回の御意見も踏まえて、様々な場面において、年金額は現役時代の経歴によって違うということ、それから将来も変わっていくことについて、この5ページから7ページのような資料を用いながら、皆様が年金額をイメージしやすいような形での広報、プレゼンをしていきたいと思っております。

 以下の資料はバックデータです。

 8ページは、6ページの円グラフのバックデータで、女性の年金額については一番上に平均年金月額で9.3万円とありますが、これが円グラフに書いてあった数字になります。

 9ページは、女性についての厚年期間についてです。現在は、一番上にあるとおり厚年期間が17.2年ですが、これが成長ケースだと29.5年、過去30年ケースでは28.2年と大きく伸びるところです。その内訳について色分けをしています。

 10ページは、男性についての年金額のバックデータです。薄い青が15万以上の年金額、緑とか黄色は15万以下で、分布がどうなっているかも分かります。

 11ページは、男性の厚生年金期間について同じように見てとれます。

 このような形で年金額については、先ほどお示ししたいくつかのパターンの中から、自分の現役時代の経歴がどれに近いかということで、大まかな年金額のイメージがつかめると考えています。

 他方で、今回お示ししたのは、今年65歳になる方と今30歳の方の2つのパターンでして、その間の40歳、50歳と年代によって様々に変わってまいります。実際の年金額は、公的年金シミュレーター、これは何回か御紹介していますが、こちらを使うと、暮らし方、働き方の変化による多様なライフコースに応じた受給額を簡単に計算できます。かなり利用されており、引き続きこちらを使っていただくよう働きかけていきたいと思っております。

 以下は参考資料です。

 14ページから17ページまでは、分布推計そのものの資料で7月3日の部会に出したものです。18ページと19ページは冒頭に御紹介した5月の資料になります。

 続きまして、資料3を御覧ください。2点ございます。

 1つは、3ページからの離婚時の年金分割の請求期限の延長になります。

 この離婚時の年金分割の制度は平成16年改正で創設されました。婚姻期間中に関わる厚生年金の保険料納付記録を分割する仕組みとなっています。

 この請求期限は、制度創設時の民法の離婚時の財産分与請求権が2年ということを踏まえて、離婚した翌日から2年以内となっています。

 他方で、この民法については先の通常国会で改正法が成立して、請求期限が2年から5年に延長されました。

 その理由を国会の議事録を確認しますと、離婚前後の様々な事情で2年以内に財産分与の請求ができず、結果として経済的に困窮する方が存在することを踏まえて、債権一般の消滅時効期間も踏まえた5年にするとされています。

 法律は既に成立しており、施行日については、※のとおり2年を超えない範囲で政令で定める日となっており、現在法務省で検討していると聞いています。

 そこでの附帯決議では、離婚時の年金分割の請求期限の延長についても早急に検討するとございまして、見直しの方向性としては、この民法の請求期間の延長に伴い、離婚時の年金分割についても5年に延長すると、これは法改正事項になりますが、こういった方向で対応してはどうかと考えております。

 4ページは、現行の離婚時分割制度でして2つございます。左側の合意による分割(離婚分割)、それから右側がいわゆる3号分割というものです。

 この利用状況ですが、令和4年度でこの2つの分割の合計で3.7万件の利用がありました。左側の合意分割が2.5万件、右側の3号分割は1.2万件で、合わせて3.7万件です。

 それから令和4年度の離婚件数で言うと約18万組という統計になっています。

 続いて「被用者年金一元化に伴う厚生年金拠出金の按分率に係る特例措置の終了」について2つ目の改正事項として考えております。

 6ページが概要になります。

 被用者年金一元化とは、平成27年に施行されたもので、それまでは厚生年金のほかに各共済組合、具体的には国共済、地共済、私学共済と3共済ありまして、それぞれが被用者年金として保険料の額を設定し、あるいは年金給付を行っておりました。

 これが、厚生年金に一元化して合わせるということが法律で決まり、2015年(平成27年)から施行されています。

 ただ施行時点では、厚生年金と各共済の間で、特に保険料率に差が生じておりまして、これを徐々に解消することもその時に決められました。それに加えて施行時に特例措置が置かれており、これが今回の論点になりますが、一元化後の負担や給付は原則として厚生年金に合わせることになるものの、各共済が保有する積立金が違っているので、厚生年金への拠出金という形でそれぞれの制度が持ち寄る仕組みを導入しました。

 その拠出金の算定方法については2つの種類を用いており、1つ目は標準報酬按分率というもので、各共済なり厚生年金の報酬の水準に着目して、高いか、低いかという標準報酬を加味するというもの。

 2つ目は、積立金按分率というもので、積立金をどれぐらい持っているのかというものです。

 要は各共済の財政状態を念頭に置いて、それを加味した形でそれぞれ拠出金を持ち寄って厚生年金に納めるという、こういう仕組みになっております。

 他方、その仕組みについては「ただし」ということで、2番目の○ですが、そのルールで拠出した場合、当時の各共済あるいは厚生年金の被保険者の構成や標準報酬の分布、積立金の保有状況等によると、特定の機関の拠出金が急激に増加して財政が悪化するということが見込まれていました。

 そのため激変緩和という形で、先ほど御紹介した標準報酬あるいは積立金の按分率に加えて、支出費というのも按分率に加味することになりました。

 これが現在に至るまでの激変緩和の経過措置で、一番下の○ですが、全ての機関の保険料率が18.3%となって引上げが完了する令和8年(2026年)までの措置として設けられました。その上で令和8年以降は必要な措置を講ずるとされております。

 見直しの方向性として、具体的に私学共済については、現在は保険料率に違いが残っているところですが、令和9年度からは18.3%となって厚生年金と同じ率になります。これによって保険料率が統一されるということで、一元化当時から10年と少し経って、ようやく同じになりますので、この按分率の経過措置についても終了する方向で検討したいと思っております。

 具体的にどれぐらい保険料率が違うのかというと、次の資料では赤の縦の枠が2つありますが、左側が一元化法の施行時で、この時点では黒の厚生年金、青の公務員と、それから赤が私学共済で保険料率に差があったところですが、右にありますとおり、令和9年で統一されることになります。

 8ページはその影響で、拠出金の算定の仕組みについて「本来の姿」とありますが、これが当初予定したもので、85%は標準報酬を用いて按分し、15%は積立金を用いた按分です。これが本来の姿だったわけですが、この方式に基づくと、特に私学共済の財政状況がほかの機関と比べて悪化する見込みとなっていました。

 これに対応して左側のところの激変緩和措置による経過的な姿が導入されており、Cの支出費按分率が現在は入っております。これが50%になっています。

 先ほど御覧いただいたとおり、私学共済の保険料率の引上げが完了することに伴って、今回この経過措置を終了してはどうかと考えております。

 それでどうなるのかというのが8ページの右側で、これは2024年度を100として積立金の推移を見ていますが、2015年の一元化当時は、赤の私学共済が一番下でしたが、この経過措置によって現在に至っています。

 一方で、この経過措置を継続した場合には、点線にある通り私学共済の積立金が、ほかと比べて高い水準に推移して、さらに乖離していく見込みです。

 そういう意味でも当初予定していたとおり今回のタイミングでこの経過措置を終了して、本来の姿に戻ることにしてはどうかと考えております。

 かなり各共済によって財政状況は違いまして、積立金だけ見ても、厚年1号では約200兆円を超えますし、一方で私学共済は2.6兆円です。給付費で見ても、厚生年金が年間約24兆円のところを私学共済は0.3兆円と、私学共済など各共済と厚生年金では財政状況は違うこともあり、これまではこういう経過措置がありましたが、今回予定どおり終了することを見直しの方向性としております。

 資料の説明は以上になります。よろしくお願いいたします。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいま御説明いただきました議題1、議題2につきまして、御意見、御質問などがございましたら、お願いいたします。いつものように、まず、会場からいただければと思いますが、百瀬委員、どうぞ。

○百瀬委員 幾つか質問がございます。まず、資料3の年金分割についてです。

 年金分割の請求期限の延長について異論はありませんが、1点確認をさせてください。

 現行制度では、2年を原則としつつも、調停が長引いた場合などに、2年経過後でも分割請求することができる特例がございます。

 今回、請求期限が5年に延長されることになったとしても、この特例措置というのは、そのまま残すという理解でよろしいのでしょうか。

 また、分割の件数が3.7万件程度で、離婚件数が18万件というお話がありました。

 もちろん、分割する記録がない方もいらっしゃるわけですが、この18万件に対して3.7万件程度というのは、どのような評価になるのでしょうか。例えば分割できるけれども、制度を知らなくて、それをしていない方が多くいらっしゃるのでしょうか。どのような理由で18万件に対して3.7万件程度なのかというところをお聞きしたいと思います。

 次に、資料2の給付水準の示し方についてです。今回、新しい資料を御提示いただきましたが、前回の検討例というのは、完全に取り下げたという理解でいいのでしょうかということが確認したい点です。

 もう一点、資料2の5ページの給付水準の示し方ですが、これを、1年に1回公表される「年金額改定のお知らせ」等に載せるという理解でいいのでしょうか。これは分布推計を基にしているということですが、毎年分布推計をして、毎年これを載せるということになるのでしょうか。

 また、1号期間、2号期間、3号期間というのを、皆さん、基本的に行き来するので、被保険者種別ごとに加入年数40年に固定するのではなくて、その実態に合わせて、1号期間中心、2号期間中心、3号期間中心という形で示すことについて、基本的には賛成です。しかし、そうであるがゆえに、この資料の5ページ、※印の注と括弧参考が非常に多いと思います。これを、例えば1年に1回示されたとして、国民が、すっと受け入れられるかどうか、少し疑問に思った次第です。

 とりとめがなくて申し訳ないのですが、以上、幾つか質問をさせていただきました。よろしくお願いします。

○菊池部会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。

○年金課長 ありがとうございます。

 まず、1点目、特例措置についてのお尋ねですが、これまでの2年を今回5年にした場合には特例措置についても残すことで考えているところです。

 それから2つ目、私が御紹介した3.7万件の離婚時分割の利用状況と、離婚件数18万件というところの評価はなかなか難しいのですが、少し前の平成30年の数字を見ますと、離婚件数が20万8000件という中で、分割件数が3万3000件となっています。

 離婚の件数は、そこから徐々に減っていて、今は18万件と2万件減っておりますが、利用件数は3万3000件から3万8000件へと年々増えている状況でして、そう意味では、制度の周知であったり、あるいはこういうものが広く知られてきて財産分与の際に併せて使われるというところもあり、割合としては増えているということかと思っております。

 それから、給付水準の示し方で2点いただきまして、1つは、前回の示し方を取り下げたという表現でのお尋ねですけれども、取り下げたというよりは、前回のものについて委員の御意見を踏まえてさらにアップデートしたという受け止めです。さらに改善の余地がありますし、これは法律事項ではなく、ここで決めてどうというものではありませんから、今後も良いものにアップデートしていきたいと思っております。

 それから、5ページに示した分布推計の部分について、どういう形でお知らせするのかというお尋ねだと思っております。

 確かに分布推計自体を毎年やるのはなかなか難しくて、恐らく5年に一度ということになります。この5ページの数字は、今回の分布推計を踏まえたものなので、これを今後5年間どうするのかについては、少し考える必要があります。最初の1回はこれでいいとして、その後の5年間も毎年毎年同じものをお示しするのかは、考えなくてはいけないと思います。

 他方で、仮に来年の法改正なりで、例えば適用拡大といった変化があれば、それを織り込んだ形でさらに厚生年金期間が延びるとか、そういったアップデートはできるかなと思っています。

 示し方については、これは個人の年金額のお知らせに載せるものではなく、全体としてプレスリリースするような時を考えており、一番念頭に置いているのは、毎年1月に、新しい年度の年金額を公表していますので、ここに使ってはどうかと思っております。それから様々なパンフレットなり、広報にも使ってはどうかと思っております。

 5年の間の示し方について、例えば5ページの年金額をさらに物価でスライドさせるのかとか、そこは考えなくてはいけなくて、そういった点も御意見いただければ取り込んで改良していきたいと思っております。

 以上です。

○菊池部会長 百瀬委員、いかがでしょうか。

○百瀬委員 先ほど申し上げたのですが、非常に※注と参考が多いというところに関しては、いかがでしょうか。

○年金課長 やはり年金部会の先生方に御意見をいただく際には正確に書いたほうがいいだろうということで、今回はかなり細かく書いています。

 他方で、広報資料としての性格を考えると、ここまで必要なのかという点はありますので、エッセンスであったり、少し丸めた数字であったり、その使い方は工夫したいと思います。

○百瀬委員 ありがとうございます。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 原委員、どうぞ。

○原委員 ありがとうございます。

 私からは、多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方について、今、百瀬委員からの御質問にお答えいただいたので、最初のところは割愛しますが、少し細かい点になるのですが、幾つかコメントをさせていただければと思います。

 この部分は、やはり1月20日のプレスリリースの発表のところの数字が気になっていたので、若い世代がイメージしやすくなるためにということで、財政検証時の分布推計を活用して示されたということかと思いますが、まず、5ページの右上のところに「2024年度に65歳になり年金を受け取る者の例」と書いてあります。これは、もう少し強調したほうがいいのではないかと思います。

 また、①から⑤まで、年金加入期間の中心となる種別ごとの例が男女別々に示されています。

 それぞれ年金額や、その基となる収入額などが書いてあるのですが、特に、例えば厚生年金期間中心の例などは、男女の差などがどうしてもありますので、現在の65歳の人の例であるということは、まず、強調されないといけないのではないかと思います。若い人たちがイメージしやすくなるためにということを、重きに置くとすれば、区別して書いていただいたほうがよいのではないかと思います。①、③について見ると、、雇用環境などの時代背景もあるので、収入額や年金額に差が出てしまっているということがあるかと思います。

 ですので、「若い世代がイメージしやすいようにすること」が目的の1つであるため、これらの額の伝わり方がやや不安に感じるところではありますので、これは、あくまで現在の65歳の例ということをきちんと発信するのも重要かと思います。

 その次の6ページなのですけれども、こちらも広報などで、あるいは年金教育の場で使われるかどうかということもあるのですが、これは女性の例なのですけれども、今、30歳の人の女性の例ということで、右側にありますが、1994年度生まれで2059年度に65歳ということで、現在30歳の人の35年後の姿と見えるのですけれども、そもそも男女別に示されているわけですが、現在30歳の女性の将来の65歳時の姿ということを考えると、割合としては縮小していくという姿になっていますが、3号期間20年以上の人が、1号期間(これはフリーランスなどの人も入りますが)20年以上の人より平均年金額も割合も大きくなっています。

 そうすると、現在30歳の人が65歳になる2059年度、35年後においても、3号期間20年以上の人のモデルというのが、将来の姿として合っているのかなというのが、やや疑問に思われるところです。

 もちろん、今の制度内容を反映させてということと、現在の実態に基づいてということかと思いますので、このようになるということだと思います。

 繰り返しになりますが、今の大学生なども含め、20代、30代ぐらいの人、若い世代がイメージしやすいようにということから考えると、就業する人も増えて、働き方も多様化していく中で、こういう姿になるとは限らないということもあるかと思いますので、若い人への伝え方、見せ方など少し工夫があってもよいのではないかと思います。

 例えば、中高生や大学生向けの年金教育教材に、もし載せることがあることを考えるならば、そういう工夫が必要だと思います。

 あと、これは、すごく細かい事なのですけれども、この図を見ると、やはり色分けについては若干気になります。「厚年期間中心」が寒色系の淡い青で、例えば3号期間中心が暖色系のはっきりした黄色になっています。今後も増加していく厚年期間の色については、その次の8ページにありますが、もう少しくっきりした青や明るい色にして、反対に、縮小している3号期間のところがもう少し淡い色にするなどしたほうが印象も違ってくると思います。もしこれが何か教材や広報などに使うものの元になるのであれば、また印象も変わってくるのではないかと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 御意見ということで承らせていただきます。

 いかがでしょうか。

 小野委員、どうぞ。

○小野委員 ありがとうございます。

 先ほど課長から御説明いただきましたとおり、今回の財政検証を受けて、これから制度改正が想定されるわけですので、こういった分布推計も含めて、制度改正後というのが必要になってくるのではないかなと、これは、そもそも財政検証本体でも必要になってくるかなということで、これをやっていただけると、年金数理部会の委員としても非常にありがたいなということを思っております。

 それで、資料2の案は賛成しますけれども、少しコメントだけさせていただきます。

 まず、今、議論になっていましたリリースの時期とか頻度とかという問題があって、今の話ですと、例えば、今年で言いますと、1月19日にプレスリリースがありました。

 当然なのですけれども、そのときには財政検証はありませんでしたので、そもそもこの数値というのは間に合わないなということで、その後、では、翌年度どうするのかということを考えると、これも、今、御指摘いただきましたとおりで、この数字にスライド率を掛けて更新するというやり方が1つあるのだろうと思います。

 いろいろな基礎数値が1歳ずれると変動するというデメリットは多分あるのだろうと思いますので、そういったところをどう評価するかということなのだろうと思いますけれども、2024年度で64歳の人を使うのかどうかというのは、いろいろ議論のあるところだろうと思います。私としては、スライド率を掛けるということでも、よろしいのではないのかなということを思いました。

 あとは意見なのですけれども、御提示いただいた資料というのは、平均値に基づいているということでしたけれども、目安の指標としては、平均値と中央値があると思います。 資料を見ていますと、中央値という御意見もあったかと思いますけれども、平均値と中央値というのは、分布の形状によって大小関係が変わるということがありますが、各分布を見ていますと、非常に様々だなと、大小関係もどっちが大きくなるということは言えないような状況だと推測されますので、これは一定の割り切りが必要だと思いまして、平均値を用いるということでよろしいのではないのかなと思いました。

 最後に、この資料は非常によい資料だと思いますけれども、最終的には、個々人が自分ごととして公的年金シミュレーターに向かうことが重要だと思いますので、お示しする際には、そこのところは十分御配慮をいただきたいと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 小林委員、お願いします。

○小林委員 御説明ありがとうございました。

 まず、私のほうからは、議題1について意見を申し上げます。

 厚生労働省や関係機関の皆様には、年金制度の広報に御尽力いただいておりますが、やはり、公的年金制度は複雑できちんと理解することが難しく、国民に正しい認識がなかなか浸透していないというのが現状だと思います。

 そのため、財政検証結果が示されてたにもかかわらず、未だに「保険料を払ったところで、どうせ年金はもらえない」といった誤解も根強く存在しているように思われます。

 今回御提示いただいた資料は、非常に丁寧に作成していただいており、本部会で専門的な観点から議論を深めるためには適切だと思います。

 他方で、この資料を国民に示した場合を考えますと、どれくらいの人が理解できるか、少し心配な面がございます。そう思う理由は、提示されている図表が事項ごとの平均値だからではないかと思います。資料を見た人、一人一人が、自分のケースに近い形でイメージできるような示し方をしていただくなど、分かりやすく広報することが何より大切であると思います。

 例えば、高卒Aさんの場合、初任給何万円、毎年少しずつ昇給していき、60歳とか65歳で定年をしたとしたら、年金は幾らぐらい。また、大卒Bさんのライフコースで見たら幾らぐらいだとか、同じく大卒Cさんの場合は、就職後、例えば30歳から5年間、育児等で仕事を離れて職場復帰、それが2回あったなどという具合に、全く同じライフコースではないけれども、それに近いな、といった人生のケースで、その後、受け取り得る年金額などをお示ししていただくと、イメージがつかめるのではないかと思います。

 その上で、より詳しく知りたい方は、公的年金シミュレーター等を活用して試算してもらうように誘導するなど、まずは、一目見て、年金が幾らもらえるかというのが、すっと頭にイメージされるようにするのがよいと思います。

 次に、議題2について意見を申し上げます。

 両件とも、基本的に事務局がお示しした見直しの方向性に異論はございません。制度改正によって想定外の悪影響が出ないよう、実務面での検討もしっかり行っていただきたいと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 是枝委員、お願いします。

○是枝委員 4点、意見を述べさせていただきます。

 まず、1点目、多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方です。資料2の5ページを見ながら説明いたします。

 基本的に、このように各男性何々中心といったような金額を示すのは、財政検証が行われない年なので、来年以降、2025、26、27、28の4年間について、2024の財政検証の年金分布を使ってスライド率を乗じて示すと。

 それで、5年に一度の財政検証の際には、それに加えて働き方の変化などによって、厚年期間や平均収入などがどのように変化したかも含めて、5年に一度示すという形でいいのではないかと考えております。

 厚年期間中心の方、3号期間中心の方については、事務局提案のとおりの示し方でよいかと思いますが、1号期間中心の方については、2点留意点があるかと思います。

 まず、今年65歳となる1959年生まれの方は、結婚や出産を機に退職して、第3号被保険者になることが多かったかと思います。

 この場合でも高校や短大を卒業して就職してから、結婚や出産で退職するまで平均して6、7年の厚年期間があり、その分の報酬比例年金が出ますので、3号期間中心の方であっても、基礎年金満額より少し多い額というのが平均的なイメージとしてよく伝わるのではないかと思います。

 一方で、1号期間中心の方については、確かにずっと自営業者だったというわけではなく、新卒後、会社員として一定期間働いた後に独立するというパターンも多くあるわけですが、独立するまで何年会社員として働いたかというのは個人差が非常に大きく、平均の厚年期間が7年程度だといっても、正直あまり参考にならないような気がしております。

 もう一点は、1号期間中心の方の基礎年金相当の納付済期間が30年程度ということです。

 確かに1号被保険者の半数程度は保険料の免除を受けたり、未納としたりしているため、基礎年金相当が30年分の5万円程度というのは、1号期間中心の方の平均としてはリアルな金額ではあると思います。

 しかし、これもまた保険料を全額納めている方と、未納期間が多い方との開きが大きいものと思います。

 1号期間中心の方については、従来どおりの基礎年金の満額の水準というのも大変参考になる水準ですので、どちらのほうを前のほうに出すのか、保険料の納付済期間によって給付の金額が変わってくるということを、丁寧に伝わるように示す必要があるのではないかと思います。

 2点目に、今回の議題からは少し離れますが、資料2の5ページを見ながら、経過的加算について意見を述べます。

 厚年期間中心の方につき、女性の場合、この資料ですと基礎年金相当の納付済期間が40年を上回って40.7年となっています。これは、経過的加算の効果だと思います。

 経過的加算は、20歳未満または60歳以後に厚生年金に加入し、かつ、厚年期間が40年以下である範囲についてつくものとなっていますが、男性の場合と比べて女性の場合は、間に3号期間を挟むことが多いため、厚年期間が40年未満となりやすく、60歳以後の就業期間につき、経過的加算がつきやすくなっています。

 20歳から60歳まで40年間フルで厚年に入っていた方は、60歳以後働いていても、1階部分に当たる経過的加算の年金が増えないのに対し、間に3号や1号の期間がある人については、1階部分が増えるということになっており、こちらは不公平だと思います。

 1号については、国年保険料を払っているからまだよいとしても、3号については、自ら保険料を全く払っていないわけですから、保険料を払った人よりも保険料を払っていない人のほうが、年金額が多くなるという仕組みは、特に不公平だと思います。

 私は、今回の改正で経過的加算の上限年数を撤廃して、この問題を解消すべきと考えております。

 3点目に、議題2の離婚時分割について意見を述べます。

 今回の改正で請求期間を5年に延長することには賛成いたします。

 これに加えて、今回の改正ですぐに実現が難しいかもしれませんが、離婚時分割の将来的な検討課題として2点、意見を述べます。

 1点目は、分割される側の配偶者の老齢厚生年金の裁定前であれば、離婚後5年以内に限らず、請求を認めてよいのではないかという意見です。

 民法においては、離婚前後の様々な事情によって、2年以内に財産分与を請求することができず、結果的に経済的に困窮する者が存在していることから、債権一般の消滅時効期間も踏まえ、5年間に延ばすということとされました。

 預貯金や有価証券、不動産など、その時点で処分可能な財産の財産権については、長期間権利者が不安定な状態に置かれることが望ましくないため、財産分与の請求期間については一定の除斥期間、時効というものが必要だと思います。

 これに対して、年金受給権というのは、裁定を受ける前までであれば、そもそもその権利が未確定であり、未確定であるからこそ、経済社会上の要請に基づく制度改正を行っても、憲法が保障する財産権の侵害には値しないと解されております。

 離婚された方には、DVなど様々な事情があり、まずは離婚を成立させることを優先し、財産分与請求を行っていない方が多数います。

 先ほどの御説明でも、18万件の離婚のうち、年金分割の請求があったのは3.7万件にとどまるという御説明がありました。

 3号分割は請求だけで一方的にできますが、合意分割については、元配偶者との協議が必要となり、期限が2年から5年に延長されたとしても、なおハードルが高いものと思います。

 老齢年金の支給時期が近づく50代になってから、改めて婚姻期間中の年金拠出実績の分割を受けたいと思い至った場合についても、離婚時年金分割の対象として認めるべきではないでしょうか。

 2点目は、子供がいる夫婦が離婚した場合、婚姻期間中だけでなく、末子が18歳に達するまでなど、一定の子の養育期間について、離婚後の期間も含めて、離婚時年金分割の対象とすることを検討すべきではないかという意見です。

 今年5月に民法が改正され、離婚後に共同親権を持つことが選択可能になり、養育費の支払いの実効性を高める法定養育費制度なども導入されました。

 これまで長らく日本では、離婚後に母親が単独親権を持つことが多い一方、離婚後に父親から母親の養育費が支払われないことが多くあるという事情でございました。

 しかし、子供の心身の健全な発達を図るため、父及び母が離婚後も共同して子供の養育責任を負うという方向に日本の社会は向かってきています。

 離婚時年金分割の制度は、婚姻期間中の厚生年金保険料を夫婦が共同して負担したものであるという基本認識のもとで分割するものですが、子供がいる夫婦の場合については、離婚後も引き続き末子が成年に達するまでなどの期間について、父及び母が共同して子供の養育責任を負うこととなります。

 離婚後も離婚前と同じように、父及び母によって子供を養育するための労働収入を得るとともに、子供のケアを行うわけですが、現行の年金制度のもとでは、離婚後に労働収入を得ていたほうの親だけが老齢厚生年金を得て、子供のケアに専念していたほうの親については、老齢厚生年金を得られないということになっていますが、それは不合理ではないかと思います。

 離婚後の期間について分割を行うとした場合、その後、再婚したらどうするのかとか、収入が多いほうの親が逆転した場合はどうするのかといった、実務上詰めなければならない課題は多数ありますが、課題を整理した上で、次回、2030年の年金改正に向けて検討する価値があるのではないかと思っております。

 最後に4点目、被用者年金一元化に伴う特例措置の終了について意見を述べます。

 こちらは、激減緩和措置の終了を遅らせることで、仮に私学共済の積立金が短期的に増えたとしても、その増えた積立金に積立金按分率がかかることとなるため、マクロで見た最終的な結果はほとんど変わらないのではないかと思います。

 ただし、厚生年金実施機関としての各共済制度については、積立金の運用に一定の裁量があることとなるため、その実施機関としての裁量が過大にならないようにするため、激変緩和措置を終了することが適当だと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 次回改正に向けた御意見を承りまして、どうもありがとうございます。

 では、佐保委員、お願いします。

○佐保委員 ありがとうございます。

 私からは、議題2の離婚時の年金分割について発言をさせてください。

 民法における離婚時の財産分与請求権の除斥期間が伸長されることに伴い、離婚時の年金分割の請求期限についても、現行の2年から5年以内に伸長するとの見直しの方向性に異論はございません。

 その上で、1点確認をさせてください。

 民法等の一部を改正する法律は、5月24日に公布され、施行日は公布の日から起算して2年を超えない範囲内において、政令で定める日とされております。

 この民法等の一部改正する法律の施行日と、離婚時の年金分割制度の改正のタイミングを合わせていくよう、調整を想定しているのかお伺いをいたします。

 できるなら調整をして、できるだけ近づけていくといったものがよかろうかと思いますので御質問をさせてください。

 私からは以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 いかがでしょうか。

○年金課長 御指摘ありがとうございます。

 離婚時分割の時期については、法改正するかどうかについて今日方針をご相談している段階ですので何とも言えませんが、私どもとしても、できることであれば施行をそろえたいと思っております。

 そう意味で、法務省とは事務的な調整をしておりまして、そこは混乱が生じないようにといいますか、もちろん年金法でも改正する前提ではありますが、なるべく近づける、あるいは同時にするということで考えていきたいと思っております。

○佐保委員 ありがとうございます。

○菊池部会長 ほかには、永井委員、どうぞ。

○永井委員 ありがとうございます。

 私のほうからは、議題1、資料2、多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方について、1点の補足の説明のお願いと、1点の質問をさせていただきたいと思います。

 これまでも御発言がありました、5ページ目の1人当たりの老齢年金額月額のところで、まず、補足説明をお願いしたいのですが、マル3の女性の厚生年金中心のところですけれども、12万9654円のうち厚生年金が6万403円、基礎年金相当が6万9250円となっております。

 この基礎年金相当に反映する納付済期間が40.7年と長くなっておりまして、この基礎年金相当は、先ほども御説明がありましたが、5つのパターンで一番高くなっておりまして、また、現在の満額よりも高くなっております。

 この点、資料を見させていただいたときに少しびっくりしましたので、この点について、どうしてそのようになっているのか、先ほど少し委員の御発言にもあったかと思いますけれども、補足説明をお願いできればと思います。

 次に質問ですけれども、6ページ、7ページの「現役時代の経歴類型の変化」というところでございますが、この試算は、現行の制度を前提とした試算という認識でよろしいかということが1つ。

 その上で、今後、今検討しております適用拡大などが実施された場合の試算を行っているのかを知りたいと思います。行っているのであれば、各属性、○号期間中心といったところの割合や平均年金額にどのような変化があるのか、教えていただければと思っております。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 補足説明と御質問ということで、お願いします。

○数理課長 まず、5ページの女性の厚生年金中心の方の基礎年金相当期間が40.7年となっていることですけれども、こちらは、是枝委員からも御指摘がありましたが、この基礎年金相当には、経過的加算も入っております。この経過的加算は、60歳以上に厚生年金に加入した期間について、40年を上限に1階の給付が出るというものでして、この期間を足すと基礎年金満額の40年を超えて40.7年になるところであります。

 2点目の6ページ、7ページ、こちらは、現行制度を前提にしたものかというご質問ですけれども、これは委員御指摘のとおり、現行制度を前提にしたものであります。

 それで、今、検討されている適用拡大や、基礎年金の調整を早めに終了させるといった改正を行いますと、65歳のところには、影響はないかなと思いますけれども、30歳のところについては影響してくるということになるかと思います。

 制度改正を行った場合の試算については、制度改正の議論が進んだところで、検討させていただきたいと思います。

○菊池部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 嵩委員、お願いします。

○嵩委員 ありがとうございます。

 私のほうからは、議題1についてと、議題2の離婚時年金分割についての簡単な意見をさせていただきます。

 まず、今回資料2では、財政検証で示された年金額分布推計に基づいて、被保険者資格の長さに応じた各カテゴリーについて、年金額を提示していただきましてありがとうございます。

 個人単位で、かつ多様なライフコースごとに現実のデータを取り入れた年金額を示していただきまして、前回の資料よりもリアルな給付水準を拝見することができておりまして、年金額にかかる情報提供を充実させる見直しとして評価できると思います。

 この給付水準がよりリアルとなる分、現行の給付水準の妥当性の検討とか、あるいは各カテゴリーの給付水準の比較も容易になってきます。それによって給付水準や被保険者間の均衡に関する関心も高まって、様々な議論もより活性化されると思います。

 この給付水準の示し方の見直しとともに、引き続き、世論の展開も含めて、例えば振替加算や経過的加算、あと、第3号被保険者制度の在り方なども含めて、議論を展開して継続していく必要があると思います。

 次に、資料3の離婚時年金分割についてですが、こちらの請求期間を5年に延ばす点については、今年の民法改正に合わせた見直しとして適当だと思います。

 先ほど、離婚件数に対する分割件数の紹介がありましたけれども、恐らく潜在的に分割できるケースというのが、まだあるのだと思います。

 今回まだ決まっていませんが、5年にもし延長した場合には、離婚後少し落ち着いてから請求するケースも考えられますので、年金分割そのものの仕組みと、あと改正内容の周知がより一層重要になってくると思います。

 また、請求期間の延長によって、請求期間中で、かつ分割請求の前に元配偶者が死亡するという可能性も増えてくるかなと、これによって分割請求が、かなり制限されてできなくなるというケースも現行より増加すると思いますので、分割請求前に元配偶者が死亡した場合の取扱いについて、既にホームページ等で周知されていますけれども、改正をするのであれば、改めて分かりやすく周知するなどの対応が必要だと思っております。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 平田委員、どうぞ。

○平田委員 ありがとうございます。

 私からは、資料2、議事1について意見を申し上げたいと思います。

 こちらにお示しの案について、方向性としては賛成です。その上で、こういったことを意識してはどうかということを思っております。

 具体的には、世帯の老齢年金額は、あくまで個人がもらう年金の合算であるということがより明確に分かるようにするということ。

 2点目として、個人がもらう老齢年金は、男女でも年齢でもなくて、個人の現役の加入状況と、厚生年金については、報酬の高で決まるということを明確に示していくということです。その上で、その示し方としては少し工夫の余地があるかなと思っております。

 今申し上げた1番目、2番目を強く思う理由といたしましては、まずもって世帯、つまり家族の形態は今後もどんどん変わっていくだろうなと。離婚も多いけれども、再婚もあるといういろいろなことが生じるだろうということです。

 そして、何よりも今後は男女とも一人一人が自分の人生をより主体的に選んでいくという時代になると思うからです。

 そのときに、自分が何をどう選択するのかということを考えるにおいて、年金というのは重要な判断材料になり得ると。不確実な世帯よりも個人で示し、ではフリーランスを選ぶのか、やはり雇用されて働くのかということを、3号になるのかということを一人一人が考えるということのきっかけになっていけばいいなと思います。

 その上で、主体的にこういったことを選べない人もいる、つまり病ですとか、不慮の事故ですとか、家庭環境でそうしたことが難しい方の生活困窮を支えるのが、年金の大きな役割ということもメッセージできればいいなと思っております。

 続きまして、そのパターンの示し方ですけれども、これまで委員の方々からいろいろ御意見があって、私もそこに共感いたしました。

 その上で、少し突飛に感じられるかもしれないのですけれども、パターンとして比率は多くはないけれども、確かに存在する層というものを明示するというのはどうかなと思っております。

 例えば、高齢者の方でも単身、非婚の方はどうなのかとか、氷河期世代の方で、こういう方はどうなのかということです。

 こう思う背景としまして、今すごく世代の分断が進んでいて、私もここに参加させていただいて、年金についていろいろと御意見をされたり、聞くことは多いのですけれども、高齢者は年金をもらい過ぎだと断じていて、聞き耳を持たれないようなことがよくあります。

 でも、これは高齢者といってもいろいろですし、若い人といってもいろいろだということが、やはり見えていないからだと思うのです。

 何かイメージで理解してしまって、思い込んでいるということが、この年金に関する国民的議論を難しくしているような背景があるように感じています。

 ですので、十把一からげではなくて、個別の状況に互いが気づき、結果として年金の再分配機能にもより深い納得が得られるという、そんなことも、この資料を見ながら、願い、意見を申し上げました。

 大きくは以上です。

 その上で、資料5について1点だけ、この表記はどうかなと思ったことを申し上げます。

 下の部分に、世帯の老齢年金額は、上記の年金額の組み合わせとなると書いてあって、共働き世帯、片働き世帯とありますが、片働き世帯が1+5、つまり3号中心となっています。

 これは、3号の人が働いていないよという、何かいらぬメッセージを送ってしまいかねないなと思いまして、どうかなと思いました。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、お待たせしました。オンライン参加の皆様からお願いします。

 まず、駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 非常にシンプルな質問です。資料2の5ページのこの数字についてです。

 これは、あくまでも分布推計なので、サンプルの分析結果ということで確認をさせてください。

 もし、そうであるならば、より統計というか、年金に関する財政状況報告とか、前に発行されている全数調査と比べて、乖離がないのかどうなのかと、この分布推計については、いずれ詳細な統計が発表されるとは思うのですけれども、より大きな全体的な統計ですね、年金財政の本当の全部をカバーする統計と比べて、整合性のある数字になっているかどうかという確認はされたのかどうかということを確認させてください。

 例えば、これは年次が違いますけれども、2023年公的年金財政状況報告によると、2023年時点での新規裁定者の男性の厚生年金の加入年数は大体37、38年になっていますので少し乖離があるように思えるのですが、この代表性についてのチェックの有無を確認したいと思います。それだけです。よろしくお願いします。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 いかがでしょうか。

○数理課長 分布推計につきましては、5分の1のサンプル調査ということで、全数調査ではないわけですが、ただ、分布推計でしか分からないこともありまして、一般の厚生年金の統計は、厚生年金の第1号期間だけの統計、つまり共済期間も通算した年金額は示されていないわけですけれども、この分布推計は、全ての1号、2号、3号、共済期間も含めて、全て通算した上で計算しております。

 そういった意味で、先ほどおっしゃった厚生年金の期間については、少し分布推計のほうが長くなるということになっているのだと考えております。

○菊池部会長 駒村委員、いかがでしょうか。

 ちょっと聞こえないのですが、御発言が聞こえなくなっております。

 一旦、井上参考人に、先に御発言をいただいて、その間に、事務局のほうで調整を試みてもらいたいと思いますので、すみません、少しお待ちいただければと思います。

 井上参考人、お願いします。

○井上参考人 よろしくお願いします。ありがとうございます。

 資料の2につきまして、コメントさせていただきたいと思います。

 現在、成長と分配の好循環、これを維持、定着させていこうということで進められているわけですけれども、やはりそのためには、特に若年層の漠とした将来不安を払拭することが必須です。特に現役世代は、消費性向がなかなか上がっていかないというのも、そういうところに原因があると思われます。将来不安が大きいのは老後の生活ということですので、今回このような形で、年金制度に対する信頼感を取り戻し、ライフスタイルに応じた給付水準を示すという方向性については、大賛成であります。

 色々な御説明がありましたけれども、ぜひ提示する際には、現役世代、特に若い世代が簡単に理解できるよう、また誤解がないよう、なるべく分かりやすく説明をお願いしたいと思います。

 併せまして、例えば、納付期間を長くすることのメリットでありますとか、追納ができることでありますとか、さらには被用者保険へ加入するということが目先の負担増だけではなくて将来的には非常にプラスになることもしっかりと広報していただきたいと思います。ここに示されたのは、あくまで年金額分布推計を踏まえた年金水準でございますので、具体的には、やはり公的年金シミュレーターで計算するところへ誘導するような形で進めていただきたい。

 この周知の仕方につきましても、先ほどありましたけれども、なるべく若い世代に分かりやすいような形で、色々な媒体を使って広報していただきたいと思います。また、政府では、今、金融経済教育に随分力を入れています。年金も重要な将来のライフコース、Well-beingをどうするかという話ですので、その辺りと少し合わせて実施していくことも考えられるのではないかと思いました。

 以上でございます。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 少し事務方のほうでも調整中なのですが、駒村先生からチャットでメッセージをいただきまして、それを読み上げさせていただきます。

 事務局としてサンプルデータの代表性には問題ないということで、よろしいでしょうかということです。

○数理課長 はい、そのように考えておりますが、引き続き、検証は続けていきたいと思います。

○菊池部会長 では、そういったことで御回答をいただきましたので、また何かあれば、お願いいたします。

 それでは、ほかの皆様から、いかがでしょうか。

 では、権丈委員、どうぞ。

○権丈委員 今日は「多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方について」となっています。

 利用者に理解しやすい示し方という意味で理解すると、示し方というのは、公的年金の一種の広報の在り方と見ることもできるわけですけれども、広報の在り方を考える際のポイントは、今の時代、文字だと人は見てくれないということを前提にしてもいいと思います。

 そういう意味で年金の給付水準を示す際には、どんな場面でも1ページ目に、公的年金シミュレーターの紹介があったほうがいいと思います。

 今日の資料では、12ページに参考資料とあるのですけれども、これをいつも最初に持ってくる。次に来るのが専門家とか、記者向けの文字が書かれた資料という感じにするのがいいのではないかと思います。

 ただ、2019年の財政検証でつくられた資料4というのは、以前第14回年金部会でも話しましたけれども、公的年金の誤解を解いて、正確に理解してもらうための資料としてかなり良質、完成度の高いものだったのですけれども、あの資料の重要性はあまり理解されていなかった。世の中そういうものだという前提で広報活動をしたほうがいいと思います。

 そういう意味で、今日は東京都の活動を配付しています。彼らは、年金を扱う部署ではなく、女性の働き方、ライフコースを自ら、今、見直して女性にももっと活躍してもらいたいと願っている部署ですので、年収とか年金の給付水準ではなく、生涯収入という観点から広報活動を展開しています。恐らく、年金周りを報道されている女性の記者たちも、そうした観点だと思います。

 東京都は、継続就業コースと出産して離職するコースでは、生涯収入が約2億円違い、そのうち3000万円が年金ですよという伝え方をしています。

 近視眼的な認知バイアスを持つ人間というもの、そして彼ら、そういう人間が間違えた年金情報を信じ切っている今の世の中では、こういう情報の伝え方でないと、年金に関して、働き方の見直しという、今週、今月、今年の判断に届くように理解してくれないのだと思います。年金局にもぜひとも生涯収入という観点も意識してもらえればと思う。データは、年金を計算するためにベースとしてあるわけですから、それとリンクした形で。

 東京都は、イフキャリという働き方によって生涯のキャッシュフローを可視化することができる試算ツールを使って、一般公開しています。できれば、あのツールと公的年金シミュレーターを連携してもらいたい。

 さらに言えば、マイナポータルで自分が払ってきた年金保険料の履歴を全部見ることができますが、できればマイナポータルと公的年金シミュレーターを連携してもらいたい。そうすると、年金を勉強するぞっと構えることなく、いつでも喫茶店でも、レストランでも、賃金が高ければ、長く働けば年金が増えるという自分の将来を見ることができるようになります。もうそういう時代になってきているのではないかと思います。

 年金局にはTikTokをつくろうとは言いませんけれども、文字による広報というのは、ハードルが昔より高くなっているということを、僕ら世代は気をつけておいたほうがいいかなと思っています。

 年収の壁の話は、昨年よりも一層盛り上がっていますので、これは、やり方によっては被用者保険に加入することのメリットを国民に伝えて、一層の適用拡大をサポートする動きになり得ます。やり方によってはですけれども。

 昔、3号は廃止して1号の保険料を徴収しようと言っていた、私にはそういう黒歴史があるのですけれども、共同負担規定のもとに設計されている今の制度の合理性と、その役割、そして昭和から平成、令和と、世帯類型とか労働市場が大きく変化しても対応できるタフな構造になっていることには、どうもがいてもかなわないと思って、3号廃止を言うのをやめました。

 今日は、離婚分割の時効延期の話がありましたが、こういう話はどんどん報道してもらって、世間に共同負担の話を理解してもらいたいと思います。

 個人的には、時効は3年から5年と言わず、永遠に請求できるほうが望ましいと思うし、もっと言えば、離婚時に限らず、3号制度を利用している期間は、自動的に年金権が分割されて、それがねんきん定期便にも反映されるように、共同負担を徹底してもらえればとも思っています。

 そうすると、3号制度を得だと勘違いして利用していた男性たちは、しっかりと制度を理解できるようになっていって、3号の利用は減ると見ています。

 今年6月の財政審の建議には、「第3号被保険者の制度について、保険料は直接払わずとも、被保険者が負担した保険料について、被扶養配偶者が共同して負担したものであるという基本的認識のもとに」と書いてあります。

 最近の報道では、保険料を払わずともではなく、自ら保険料を払わずとも、今朝の新聞にもありましたけれども、そのように徐々に変わってきています。共同負担の理解が進んでいるのだと思います。

 これまで年金局は、3号に対する批判に対して、適用拡大が進めば少なくなりますから勘弁してくださいというスタンスだったように見えましたけれども、せっかく盛り上がっているのですから、日本の公的年金は、基本は個人単位であること、そして共同負担という規定を設けて、配偶者に対するセーフティーネットを例外的に準備してきたのだけれども、それは夫の年金権を配偶者に渡す方法でやってきたこと。そして、仮に基礎年金の財源を消費税に求めても、負担の構造は1人当たり賃金が同じだったら、負担も給付も同じという制度設計と変わらないことなどの説明に、そろそろ本気を出して取りかかってもいいのではないかと期待しています。頑張ってください。 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 武田委員、お願いします。

○武田委員 年金の給付水準について、詳細にお示しいただきありがとうございました。

 ライフコースが多様になる中、モデル年金以外に、このように示していただく意義は本当に大きいと思います。

 こうしたデータに基づき、広報なども周知いただければと思いますが、権丈先生がおっしゃったとおり、特に若い方は、スマホでシミュレーターを活用することにより有用性を発揮すると思いますので、広報活動において、シミュレーターの周知もお願いできればと考えます。

 また、本日は、詳細をデータで示すことが主旨と理解しておりますが、本質的な議論としては、多様なライフコースや働き方に対して、制度が中立かという点にあると思います。

 他の委員からも言及がございましたが、5ページの数字を見ても明らかなとおり公平性や働き方への中立性という観点から、時代的に是正すべきときが来ていると思います。

 こうした状況も踏まえ、年金の制度改革の議論を着実に前に進めていくことが必要と感じます。

 以上です。ありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 ほかにはよろしいですか。

 それでは、玉木部会長代理からお願いします。

○玉木部会長代理 私からは、資料2につきまして3点、感想を申し上げます。

 1つは、資料2の6ページの女性に関する円グラフでございます。

 私は、この資料を拝見しまして、非常に大きな情報が含まれている、若い女性にぜひ見てもらいたい表だと思いました。

 と申しますのも、家族の在り方あるいは働き方が、どの制度に入っている期間が多いのかといった形で分類されるわけですけれども、例えば、3号期間中心の方が、現在は3人に1人以上いるけれども、35年後には、7人に1人とか8人に1人になるのだといった辺りというのは、若い女性に対してライフプランというのは選べる問題、あるいは変わっていくものだといったことを伝えるという点で大変有効だろうと思います。

 第2点目の感想としては、資料2の5ページにあるような様々な前提をつけてカテゴリー分けをしているわけですけれども、そのカテゴリーによって全然給付額が違うわけですね。

 恐らく、私が学生に対してこの資料を使うとしたら、資料5は、ともかくこれだけ違うのだと、1と2と3と4と5で違うのだということさえ分かってもらえれば、もうそれでいいのだろうなと思います。

 では、私の場合どうするのですかということになってくると、シミュレーターに行かせればいいということで、この資料2の5ページあるいは6ページのような情報というのは、若い方々にシミュレーターを使わせるという導入部として大変有効ではないかと思ったところでございます。

 また、ここに出ている数字は、全て65歳受給開始の前提だろうと思います。この前提を外してどうなるのかといったことになると、シミュレーターは大変便利に、1つスライドさせれば全部動いてしまいますので、大変便利にできているといった辺りも使い出として評価できるところではないかと思います。

 もう一つ、最後の感想なのですけれども、次回の財政検証でも、また、同じような分布推計を新しいデータを使っておやりになるのだろうと期待しているのですけれども、それは、結局5年間の変化が将来にどう投影されるかといったことを非常にうまくコンパクトに伝える、そういう威力のあるツールになるのだろうなと思ってございますので、この分布推計につきましては、これから数理部会等でも様々活用されると思いますけれども、長く活用できるものだなという感想を持ったところでございます。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 皆様から一通り御意見をいただきましたが、追加で御発言の方はいらっしゃいますでしょうか。

 よろしいですか。なさそうですので、本日は、ここまでとさせていただきます。

 今の玉木部会長代理に触発されて、私もあさっての授業で、5ページ、6ページ、7ページ、12ページを学生に見せて、反応を見たいなと、実験をしてみたいなと思いました。ありがとうございます。

 それでは、本日は以上で、少し早いのですが終了とさせていただきます。

 今後の予定につきまして、事務局からお願いいたします。

○総務課長 次回の議題や日程につきましては、また、追って正式に御連絡をいたします。

 なお、本日、最初に御議論いただきましたように、今回からアーカイブ配信を行いたいと考えております。準備ができ次第、早ければ明日からでも開始をしたいと思っておりますので、御自身の御発言で気になることなどがございましたら、速やかに事務局まで御連絡をいただければと思います。

 以上です。

○菊池部会長 それでは、本日の審議は終了とさせていただきます。

 お忙しい中、お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。