第21回社会保障審議会年金部会(議事録)

日時

令和6年11月25日(月)14:00~16:30

場所

東京都千代田区平河町2-4-2

全国都市会館 3階 第1会議室

出席者

会場出席委員

菊池部会長   玉木部会長代理   小野委員   小林委員   駒村委員

是枝委員   佐保委員   島村委員   たかまつ委員   永井委員

百瀬委員

オンライン出席委員

出口委員   権丈委員   武田委員   原 委員   平田委員

議題

(1)マクロ経済スライドによる給付調整の早期終了(マクロ経済スライドの調整期間の一致)について

(2)在職老齢年金制度について

(3)標準報酬月額の上限について

 

議事

議事内容

○総務課長 ただいまから、第21回「社会保障審議会年金部会」を開催します。お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。

 本日は、嵩委員、堀委員は御欠席、たかまつ委員は途中退席される御予定です。

 出口委員、権丈委員、武田委員、原委員、平田委員はオンラインでの御参加です。

 出席委員が3分の1を超えているので、会議は成立しています。

 次に、資料を確認します。傍聴者の方は、厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。

 本日の資料は、議題(1)について資料1、議題(2)について資料2、議題(3)について資料3を事務局で用意しています。また、是枝委員から資料の提出がありました。

 事務局からは以上です。

 以降の進行は菊池部会長にお願いいたします。

○菊池部会長 皆さん、こんにちは。本日も、大変お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 カメラの方はここで退室をお願いいたします。

(カメラ退室)

○菊池部会長 それでは、早速議事に入らせていただきます。

 本日は、「基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了(マクロ経済スライドの調整期間の一致について)」「在職老齢年金制度について」「標準報酬月額の上限について」、以上3つを議題といたします。

 当初より2時間半という予定を確保していただいています。少し長いですので途中で一旦休憩を挟もうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、まず議題1について事務局から御説明をお願いいたします。

○数理課長 数理課長でございます。

 私のほうから資料1について御説明いたします。

 昨年11月の年金部会でも御議論いただきましたが、そのときはマクロ経済スライドの調整期間の一致と呼んでおりました。見直しの手段を基に名前をつけておりましたが、その趣旨とか目的が伝わりにくいということでありましたので、趣旨、目的より給付調整の早期終了と呼ぶことといたしました。したがって、タイトルもそのようにつけております。

 表紙をめくって2ページを御覧ください。給付調整の早期終了の背景・必要性をまとめております。

 1つ目は、マクロ経済スライドについて、少子高齢化が進む中で持続可能性を確保するため、すなわち現役世代の保険料水準の上昇を抑えつつ、将来の給付水準を確保するために必要な仕組みであります。

 2つ目ですが、一方、デフレ経済が続いたことから、給付調整の期間が長期化しております。特に基礎年金の給付調整は、過去30年投影ケースで、30年以上にわたって大きく低下していく見込みであり、これにより将来においては厚生年金の受給者を含めた年金額が低下するとともに所得再分配機能も低下し、低所得層ほど年金額が低下する見込みであります。

 3つ目の○でありますが、賃金や物価が上昇する経済に移行してきた中で、1階の基礎年金と2階の報酬比例の調整期間が一致することによって、公的年金全体としてマクロ経済スライドをできる限り早期に終了させ、年金額が賃金や物価に連動して動く、そのような姿に早期に復帰していくことが必要ではないかということであります。

 3ページを御覧ください。本年7月に公表した財政検証の結果であります。

 中段、現行のままでは比例の調整は2年で終了するのに対して、基礎の調整は33年続き、基礎年金の水準が低下していくとともに、基礎年金の割合も6割から5割に低下していきます。これによって、厚生年金の中での所得再分配機能も低下していくことになります。

 給付調整を早期に終了すれば、基礎年金の調整期間は短縮し、基礎年金の割合も6割で維持されるということであります。この結果、厚生年金の所得再分配機能の低下を防ぐことができるということであります。

 4ページを御覧ください。今お話しした厚生年金の所得再分配機能の低下を図示したものとなります。

 この絵にありますように、現状のままでは厚生年金の受給者の中でも低所得層ほど年金水準が低下していくことになってしまいます。給付水準調整の早期終了は低年金層の年金低下を防止する効果があるというところであります。すなわち、基礎年金のみの受給者だけではなくて、厚生年金の中でも低所得層に効果が大きいというものであります。

 続く5~8ページは、これまでの年金部会での御議論を整理したものであります。

 9ページを御覧ください。給付水準調整の早期終了の趣旨を図示したものであります。

 左側が現行制度の場合であります。この場合、比例の調整は2026年に終了いたしますが、基礎年金の調整は2057年度まで続きます。この間、年金の伸びは賃金、物価の上昇より伸びが抑えられることとなります。

 右側が早期終了した場合であります。この場合、比例の調整期間は延びることになりますが、これによって基礎の調整期間は21年間短縮する。早期に年金額が賃金、物価の上昇に応じて伸びるという姿に戻ることになります。また、これによって、将来的には厚生年金の受給者も含めてほとんどの方の年金水準が向上することとなります。

 続いて10ページを御覧ください。今お話しした将来の給付水準の上昇につきまして、その効果を説明した資料となります。

 給付水準の上昇には2つの効果があります。1つは緑色の部分であります。世代間の調整であります。比例の調整が続くことによりまして、足元の受給世代の比例の財源が将来の受給世代の基礎年金に充てられることになります。この絵にあります①の部分の財源が②の給付に充てられるというものであります。これによって将来の給付水準が上昇し、所得代替率で見ますと1.9%上昇するということになります。

 一方、①の部分は一時的に足元の世代の給付が現行制度より低下することとなりますので、課題の一つと考えているところであります。ただ、この部分につきましては、マクロ経済スライドの趣旨に沿ったものと考えております。マクロ経済スライドは、将来の給付水準を確保するために、将来の受給世代だけでなく足元の受給世代にも等しく協力を求めるものであります。まさにそれを実現するものと考えております。

 また、デフレ経済などによって、マクロ経済スライド調整の発動はまだ5回と少ないこともありまして、将来のためにもう少し給付水準の調整の継続に御協力、御理解をいただけないかと考えているというものであります。これによって、就職氷河期以降の世代の年金水準の引上げに効果があるというものでありまして、特にこの世代の低年金の防止に効果が大きいと考えております。この効果は、早く給付水準調整を行えば、その分将来の水準が上昇するという効果でありまして、いわゆるマクロ経済スライドの名目下限の撤廃と同様の効果といえるものと考えております。

 もう一つの効果が、基礎年金が上昇いたしますので、その2分の1の国庫負担も増加するというものであります。この効果が所得代替率で3.9%上昇するというものであります。先ほどの効果と2つ合わせて、所得代替率が5.8%上昇するというものであります。

 国庫負担の増加により財源が純増するということから、将来的には厚生年金の受給者も含めほとんどの方、先日の財政検証の結果で見れば99.9%以上の受給者の給付が上昇することが見込まれているところであります。また、基礎年金の上昇によって、低所得層ほどその効果も大きいということになります。ただ、一方で、将来的な国庫負担の増加がありますので、将来のことでありますが、その財源の確保は課題となるものであります。

 続いて11ページを御覧ください。給付調整の早期終了によりまして基礎年金の財政構造がどのように変化するかを見ております。

 数字は全ての100年分の給付と財源を2024年度の一時金に換算して示しております。左側が現行制度であります。半分は国庫負担で賄われて、残りの半分は保険料と積立金で賄われるということであります。給付水準の早期終了を行えば基礎年金の水準が上昇いたしますので、給付と必要な財源が増えるということであります。これが上の矢印で示しているところであります。半分は国庫負担で賄われますので、国庫負担の増が65兆円となるところであります。繰り返しになりますが、この国庫負担の増によって、厚生年金の受給者を含めてほとんどの方の年金水準が上昇するということになります。

 残りの半分は保険料及び積立金で賄うことになりますが、保険料は固定で変わりませんので、上の矢印の部分は厚生年金の積立金を1階に重点活用することになります。こちらもトータルで65兆円ということでありますが、このうち7兆円が、基礎年金拠出金の仕組みの見直しによって、厚生年金の拠出金が増加する部分となります。

 次の12ページ、13ページについては、適用拡大と給付調整の早期終了を組み合わせた場合について、同様の資料となっております。

 適用拡大を行いますと、1号被保険者が2号被保険者となることによって、先ほどの7兆円を減少していくということであります。

 13ページのように、適用拡大②、200万人ベースの適用拡大を仮定しますと、5兆円まで減少すると試算しているところであります。このように給付調整の早期終了を行いますと、厚生年金の積立金のうち基礎年金に充てる額が増加することになります。その大部分は2号被保険者、3号被保険者自身の基礎年金を増加させるということになりますが、一部は1号被保険者の給付等にも充てられるということであります。これをどう考えるかというのも課題の一つでありますが、賦課方式の年金制度における積立金の性質を考えると、一定の合理性もあるのではないかと考えているところであります。

 14ページを御覧ください。

 既に年金部会でお示ししている資料でありますが、賦課方式の年金制度では、個人の持ち分という考え方はないため、1号と2号、3号の間で被保険者が移動しても積立金は移動しないというところであります。つまり、積立金にはポータビリティーがないということであります。したがいまして、厚生年金、国民年金の積立金は、必ずしもそれぞれの制度の現在の被保険者が積み立てたものではないということになります。

 また、15ページ、16ページにおいては、被保険者の移動が多いということを示しております。

 15ページを見ていただきますと、1号期間のみの者は65歳の受給者では3%でありますし、次の16ページを見ていただきますと、40歳の被保険者で見れば5.6%となっております。

 こういったことから、厚生年金の積立金を共通の基礎年金を使っていくことにも一定の合理性があると考えているものであります。

 続いて17ページを御覧ください。給付調整の早期終了を行った場合、過去30年投影ケースでは2036年にマクロ経済スライドが終了する見通しということが示されておりますが、状況が変化すればさらに早期に終了することも可能であることをお示ししているものであります。

 例えば運用利回りについて、GPIFの運用実績を基に保守的な前提を設定しております。既に経済前提の専門委員会でお示ししているものでありますが、バックテストの結果をお示ししております。バックテストというのは、GPIFの基本ポートフォリオは、左下の表にありますように変更してきているところでありますが、仮に現在の基本ポートフォリオで過去から運用してきた場合、どの程度の運用利回りを確保できるかというものを試算したものであります。このバックテストによりますと、運用利回りは過去30年投影ケースで基礎とした実績よりも0.2%程度上昇するということであります。そこで、仮に運用利回りが0.2%程度上昇すれば給付調整がどの程度短くできるかを試算しますと、さらに3年程度短縮できるというものが見込まれているところであります。

 ここでは運用利回りを例にお示ししておりましたが、社会経済がよくなったり、年金財政上プラスの制度改正が行われるなどがありますと、給付調整がさらに早期終了できる可能性をお示ししているところであります。

 続いて18ページを御覧ください。こちらが全体をまとめてお諮りする資料となります。

 改正の必要性、意義につきましては、御説明したとおりであります。

 意義につきましては、年金の持続可能性を確保しつつ、将来の公的年金全体の給付水準の確保を図る観点から、基礎年金の給付調整を早期に終了させ、賃金、物価に連動した年金額を実現するということにあります。

 同時に、将来の基礎年金水準を向上させ、それによって厚生年金の受給者を含めてほぼ全ての方の年金水準が上昇いたします。特に再分配機能の強化によって、低所得層への効果が大きいということになります。

 「3.見直しの方向性」でありますが、○に方向性、※印に課題を記載しております。

 1つ目の○でありますが、2階の報酬比例部分のマクロ経済スライドを継続し、1階と2階の給付調整を一致させることによって、公的年金全体として給付調整を早期に終了させることについてどう考えるか御意見をいただければと思います。

 そのときの課題といたしましては、早期終了により、調整終了後はほぼ全ての受給者の年金水準が上昇いたしますが、2階の調整が長くなることによりまして、この期間中は給付水準が一時的に低下することをどう考えるかというものがあります。

 もう一つの課題といたしましては、現行制度と比べ国庫負担が将来的に増加します。増加するのは基礎年金の給付水準調整が終了した後となりますので、過去30年投影ケースで2036年以降となりますが、この将来的な財源確保についてどう考えるかということがあります。

 2つ目の○でありますが、給付調整の早期終了については基礎年金拠出金の見直しが必要となります。この算定方法を現行の人数按分に加えまして積立金も勘案して計算する仕組みに変更することが考えられますが、これについてどう考えるかというものであります。

 そのときの課題といたしましては、現行と比べ厚生年金の基礎年金拠出金が増加することになりますが、これをどう考えるかというものであります。

 19ページ以降は極めてテクニカルな話になりますが、基礎年金拠出金の仕組みの見直しについてお示ししているものであります。

 この見直しにつきましては、被用者年金一元化における厚生年金拠出金の計算と同様の仕組みを導入してはどうかと考えているものであります。具体的には、毎年の基礎年金給付費のうち国庫負担を除いた部分について、保険料で賄う部分については従来どおり加入者数で案分し、積立金で賄う部分については積立金の残高で案分する仕組みにしてはどうかと考えております。この算定方法を導入するに当たって2つほど決定すべき係数があります。いずれも財政検証で決定することになります。

 20ページを飛ばしまして21ページを御覧ください。

 1つ目の係数ですが、保険料財源比率であります。保険料で賄う部分の割合に相当するというものであります。財政検証ごとに100年間の平均で決定いたしますが、基礎年金相当の保険料は国民年金保険料を基礎として計算いたします。その際、国民年金保険料を基礎とするのは、1号被保険者だけではなくて、2号被保険者及び3号被保険者も等しく国民年金保険料を基礎として計算するというものであります。このようにして、令和6年財政検証を基に保険料賄う部分の割合を計算いたしますと62%となるということであります。したがって、残りの38%が積立金で賄う割合となります。

 続いて22ページを御覧ください。こちらはもう一つの係数であります基礎年金部分比率の設定になります。

 厚生年金の積立金は、1階に充てる部分と2階に充てる部分があります。この比率を財政検証の結果によって設定するというものであります。こちらも令和6年財政検証結果から計算いたしますと、基礎年金に充てる割は58%となります。

 参考として、右側にあります絵を見ていただきますと、現行制度においてこの割合を計算すると35%となるものであります。給付調整を早期終了する場合、基礎年金に充てる積立金が増加することになります。これによって基礎年金のマクロ経済スライドが早期に終了して、給付水準が上昇するというものであります。

 23ページを御覧ください。給付調整の早期終了によって増加する国庫負担の見通しとなります。

 こちらについては財政検証で既にお示ししているものでありますが、過去30年投影ケースで見ると、遠い将来になりますが、2060年で2.5兆円の財源が必要というものであります。

 続いて24、25ページは適用拡大を前提とした場合の国庫負担の増加の見通しとなります。

 適用拡大を行いますと、適用拡大によって基礎年金水準が上昇し、国庫負担が増加いたしますが、※印に記載しているとおりでありますが、国保の国庫負担の減少を勘案して、適用拡大による国庫負担の増加に財源を要しないと仮定いたしますと、財源の必要額は減少するというものであります。

 例えば25ページの適用拡大により200万人が新たに適用となるケースを仮定いたしますと、2026年で2.0兆円に必要財源が減るところであります。

 以降は参考資料となりますが、新しい数字について1つだけ御紹介させていただきたいと思います。37~40ページになりますが、39ページを御覧ください。

 前々回、第19回の年金部会におきまして、分布推計を用いて新たな年金額の示し方を御提示いたしましたが、その際、制度改正を実施するとどうなるかという御質問がありました。これにお答えするものでもあります。

 このページ、女性については200万人ベースの適用拡大②というものと給付調整の早期終了を仮定して影響を見たものであります。

 左側の2列につきましては、前々回の年金部会で既にお示ししているものであります。現在65歳の者に比べて30歳の者は厚生年金中心の方が増えまして、全体の平均年金額も上昇いたします。ただ、下段の過去30年投影ケースで見ますと同じ類型、例えば同じ厚生年金中心で比較しますと平均年金額が低下しているところでありました。

 制度改正を行った場合、30歳の方の年金がどのように変化するかを右2列に示しております。適用拡大を行いますと構成割合が変化するということで、まず厚生年金中心の方がさらに増加し、それに加えて全体の平均年金額も上昇するところであります。さらに給付調整の早期終了を行いますと、構成割合は変わりませんが、平均年金額が上昇するところであります。特に基礎年金の上昇が大きいことから、1号中心、3号中心の方の年金額の上昇が大きいところでありますが、厚生年金中心の方の年金額も上昇しているところであります。その結果、30歳の厚生年金中心の方の年金額は、現在65歳の方の厚生年金中心と比べても増加することになっております。

 この結果から見ましても、給付調整の早期終了は厚生年金受給者も含めて年金額の上昇に効果が大きいということが確認できるかと思います。

 次の38ページは男性についてお示ししておりますが、男性についても同様の結果が見られるというものであります。

 私からの説明は以上となります。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、説明いただきました議題(1)につきまして、皆様から御意見、御質問などを承りたく存じます。

 なお、たかまつ委員が所用により途中退席される予定とのことですので、後の議題の部分も含めてで結構ですので、よろしければ最初に御発言をお願いいたします。

○たかまつ委員 ありがとうございます。

 それでは、まず基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了についてお話ししたいと思います。

 マクロ経済スライドを早期に終了することは、給付水準の世代間格差をなくしていくということのため、私は賛成です。ただ、国庫負担が将来1~2兆円増えていくというのは、膨らむ社会保障費がさらに増えてしまうので、疑問を感じます。

 また、低年金の方がいるので、1階部分を厚くすることで年金水準の全体を上げていくということに狙いがあると思うのですが、全体の年金水準を上げるのではなく、年金生活者支援給付金のような低年金に絞った人を対象にお金を給付し、その水準を上げるというやり方のほうが、再分配の政治の役割を果たせるのではないでしょうか。また、財政を健全化したり、世代間格差や世代内格差をなくしていくためにも、余裕がある高齢者の方からは課税するなどということも一案としてあると考えています。

 ほかのテーマもお話しさせていただきます。

 在職老齢年金については、現行の制度のままでいいと思います。自分で働いて生活できなくなる、余裕がある高齢者の人の給付は抑え、その分、将来世代に回すということ、世代間格差をなくしていくということが大切だと思っています。

 先ほどともかぶりますが、さらに私はより高額な収入を得ている人や金融資産を持っている方には課税をするなども検討し、将来世代に回していくことも必要だと思っています。

 標準報酬月額の上限については、より高い等級を設置することに賛成します。私は、上限については特に設ける必要はないと考えています。年金財政は、これから少子高齢化により財政基盤が不安視される中、所得が高い人や余裕がある人により保険保険料を負担してもらうことによって年金財政を安定させ、それを運用させ、厚生年金全体としての将来の受給金額を上げることが重要だと思います。本人にとっても、将来的な受給金額が増えるのでいいのではないかと考えています。

 以上になります。お先に発言させてもらい、ありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、いつものようにまず会場からお願いできればと思いますが、是枝委員、お願いします。

○是枝委員 まず、私からお配りした「マクロ経済スライドの調整期間の一致についての意見」を御覧いただきながらお願いいたします。

 マクロ経済スライドの調整期間の一致、あるいは基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了というのは、そのための方法は事務局提示の拠出金の案分ルールの変更による方法と、適用拡大マル4までを実施することによる方法の2つがあります。両者は、再分配を生じさせることでは似ているのですが、どこからどこにお金を移しているのか、その構造が大きく異なると私は考えています。

 適用拡大による方法では、私の資料の2ページ目、裏面の図表3に示しているとおりであり、あくまで厚生年金内部での再分配にとどまると私は考えております。

 一方で、事務局提示の按分ルールの変更による方法の場合は、実質的に厚生年金から国民年金に積立金を移転することになると私は考えています。端数処理や細かい前提が違うので若干の差が出ているのですが、事務局資料の資料1の11ページに記載されていた拠出金按分率の変化分の7兆円という数字は、私の資料の2ページ、図表2に記載されたマル2の厚年から国年への再分配が8兆円と書いているものが、事務局の資料と同じものを指しています。

 以下、私の資料の数字で御説明させていただきます。

 事務局の先ほどの説明では、厚年積立金を1階に重点活用とありましたが、私の図表2を見ていただくと、厚生年金の2階から厚生年金の1階に移るのは56兆円であり、残り8兆円は厚生年金の2階から国民年金の1階に移転するというように解釈することができるかと思います。8兆円を実質的に厚生年金から国民年金に移転することについてどう考えるかということが問われているものと思います。

 1986年の基礎年金制度創設以後、産業構造の変化と制度改正によって、国民年金第1号の被保険者数は減り、厚生年金の被保険者数は増えてきました。先ほど事務局の説明にもあったとおり、国民年金から厚生年金に被保険者が移る際、その者が納めた国民年金保険料から成る積立金というものは国民年金に残されて、厚生年金の内部で既存の加入者から新規加入者に対して再分配が行われてきました。これらの再分配については、産業構造が変わる中で、賦課方式の公的年金制度を支えていくために必要な再分配としてこれまで許容されており、今後も納得性が高いものと私は思います。

 按分ルールの変更を行った後に適用拡大を実施すれば、厚生年金内部での移転に少しずつ切り替わっていき、厚生年金から国民年金への実質的な移転の部分の金額は減っていきます。前回の年金部会にておおむね方向性が固まった適用拡大マル2を実施すれば、厚生年金から国民年金へ実質的に移転する金額は8兆円から約2兆円減って約6兆円となります。最終的に適用拡大マル4までを実施することができれば、厚生年金から国民年金に実質的に渡す額はゼロに近くなります。

 私は、今回2025年改正で按分ルールの変更を行うのであれば、少なくとも中長期的には適用拡大マル4までを実施する方針を明確化し、最終的には厚生年金内部での再分配に近い形とすることの担保が必要なのではないかと思います。それであれば、厚生年金保険料を負担する労働者や企業の納得を得やすいのではないかと私は考えています。将来的な財源の確保の観点でも、適用拡大を進めることによって、国保の公費負担を減らしていく、それによって財源の一部を賄っていくという方向性を明確に示すべきではないかと私は考えております。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 いかがでしょうか。

 小林委員、お願いします。

○小林委員 御説明ありがとうございました。

 マクロ経済スライドの早期終了により、基礎年金部分が手厚くなり、将来世代の給付水準が上昇するとのことであり、改正の必要性や意義については理解いたしました。

 一方で、今回示された見直しの具体案については、まだ腹落ちしていない、というのが正直なところです。

 受給に関しては、基礎年金だけの人に限らず、厚生年金の人についてもほとんどの人の給付水準が高まる、誰も損をしない、という御説明がありました。

一方、厚生年金は、事業者が保険料を半分負担しており、その余剰である積立金を、厚生年金に関わらなかった基礎年金受給者の底上げ分として活用するとの御説明もあったかと思います。これに関し、事業者に対して理解と納得ができるような御説明を、まずはお願いしたいと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 永井委員、お願いします。

○永井委員 ありがとうございます。連合を構成する組織として意見申し上げたいと思います。

 基礎年金の財政基盤を強化し、将来的な所得代替率を引き上げる必要性は認識しております。その方法として、基礎年金の国庫負担割合の段階的な引上げなど、幅広い選択肢の下で基礎年金をマクロ経済スライドの対象から外すといったことも検討すべきと考えております。

 なお、基礎年金と報酬比例部分のマクロ経済スライド調整期間の一致については、社会保険の適用拡大や保険料拠出期間の延長を優先に取り組み、試算結果に基づいて慎重に検討すべきと考えます。

 加えて、障害厚生年金受給者や、一定期間年金水準が低下する可能性がある受給者などへの改正による影響について、丁寧に検証するとともに、拠出者の納得性と合理性を追求すべきと考えます。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 いかがでしょうか。

 小野委員、お願いします。その次、駒村委員、お願いします。

○小野委員 ありがとうございます。

 マクロ経済スライドの調整期間の一致について、全被保険者に共通の基礎年金の水準が第1号被保険者の趨勢に依存するという財政構造についての問題意識は共有いたします。

 御提案について、基礎年金の給付水準の低下防止を通じて、所得再分配機能を確保し、結果として将来世代の給付水準の確保に効果があることは指摘されているとおりです。しかしながら、資料が示すとおり、基礎年金の給付水準の半分は国庫負担の増加、つまり将来世代の税負担の増加によって賄われていることを認識すべきだと思います。しかも、この税負担は、経済前提が控え目なほど大きいと分析されています。恐らくこの方法によって制度運営が走り出してしまえば、基礎年金の国庫負担水準を3分の1から2分の1に引き上げたときのように、国庫負担の増加分が毎年度明示されることはないと思います。結果として、一体改革によって消費税を引き上げて財源を確保するまでの間、交付国債の発行でつなぐといったような当時のどたばたが再現されるというようなこともないかもしれないということです。

 しかしながら、財政制度等審議会は、後年度に発生する多額の国庫負担に対する財源を確実に確保する方策と併せて検討を行う必要があるとくぎを刺しています。私としては、財源の確保を議論する際には、被用者保険の適用拡大に加えまして、保険料拠出期間の5年延長、マクロ経済スライドの徹底等、年金制度側で汗をかくような施策も提案しない限り、果たして年金制度の議論の外側にいらっしゃる政策立案者が取り合ってくれるかというのが非常に気になるところでございます。しかしながら、5年延長を取り下げざるを得なかったことなど諸般の事情もあると思いますので、やや潔くはないのですけれども、意見表明はせずに、コメントだけということにさせていただきたいと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 基礎年金の継続的な低下は、所得保障政策から考えると、老齢年金、障害年金、遺族年金も道連れ、低下する話ですので、当然ながら厚生労働省としてはこれを食い止めなければいけないというのは正しい判断だと思いますので、早期停止は賛成です。ただ、国庫負担については避けて通れない話ですので、2036年までにそのめどをつける注意みたいなものは必要ではないかと思います。

 基礎年金の45年化は、寿命の伸長と労働期間の長期化に対応するためには、必ず必要な改革であったのが今回見送られて、これをやった場合も国庫負担が発生しますので、今後、2つの国庫負担が発生し得るかもしれない。これをどう考えていくか少し整理しておく必要がある。

 資料について、大事な資料が続いていますので、例えば10ページは、縦軸はモデル年金の代替率の動きをイメージ化したということでよろしいのですしょうか。そして、クロスする点は一体何を意味しているか、いつクロスするかとか、どういう意味なのか、御説明を追加でしていただいたほうがいいかなと思います。

 それから、資料全般で、例えば11ページ、23ページ、37ページという形で、一定のルールで割り引いた金額が書いてある。運用利回りで割り引いている部分と、賃金上昇率で割り引いている部分と、物価上昇率で割り引いている部分があると思うのですけれども、これは当然ながらストックを見ているのか、給付水準を見ているのか、公費を見ているのか、割り引かない金額を見ているのかでそれぞれ違う性格のものです。割り引き方が違うのは当然なのですけれども、一度、どういう原則で、どの割引率を使うのかということを整理されたほうが分かりやすいのではないかなと思います。これは意見です。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 後段は御意見ということで、今後踏まえていただきたいと。何らかの形で御説明いただく機会があればと思いますが、取りあえずは前段部分の御質問についていかがでしょうか。

○数理課長 10ページのところで御質問がありましたけれども、数字につきましてきちんと整理した上で、どういう示し方がいいか検討していきたいと思います。

○菊池部会長 分かりました。

 よろしいですか。

○駒村委員 10ページは後でまた精査いただけるということで、結構です。

○菊池部会長 では、そのようにしていただきます。ありがとうございます。

 それでは、佐保委員、どうぞ。

○佐保委員 ありがとうございます。

 基礎年金の給付水準引上げの必要性は認識をしております。以前にも申し上げましたが、調整期間の一致、基礎年金の拠出期間の延長は選択肢の一つであり、資産課税の強化などを財源とする国庫負担割合の引上げ、財源を確保した上で基礎年金をマクロ経済スライドの対象から外すことなど、広い視点で議論すべきと考えております。

 また、国民年金における改革、対応も必要と考えます。

 私からは以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 島村委員、どうぞ。

○島村委員 ありがとうございます。

 そもそも厚生年金と基礎年金で調整期間がずれて、厚生年金が早く終わるのは財政構造として30ページでお示しいただいているとおり2段階の構造があるからと理解しています。1段階目の基礎年金水準が低いほど報酬比例分が上昇する関係にあって、それを一体なものとして考えるというのは、1階、国民年金、2階、厚生年金という2階建ての公的年金制度において、取り得ない選択肢ではないと思っています。ただ、法律も別ですし、運用もいろいろ別ですので、慎重な検討が必要かと思います。

 考えてみると、基礎年金の水準が低いほど報酬比例部分が高くなって、その分、厚生年金の財政が早く均衡するというのも、そもそも基礎年金と厚生年金とが別個独立の関係ではなく、連関した関係性があるからこそだと思います。沿革をたどれば、国民年金と厚生年金はばらばらで分立していたものを、1985年改正で基礎年金制度をつくることで連携させたのであり、就業人口が減る産業とか、財政の厳しくなる年金制度を救い、財政悪化を緩和しようとして基礎年金制度が導入されたと理解しています。そのときと同様に、今回も国民年金におけるピンチを救う必要はあると思います。

 先ほど是枝委員もおっしゃったとおり、結果的には国民年金から厚生年金への資金融通というところがあり、そこについては私も慎重に考える必要があると思っています。何度も述べるとおり、国民年金と厚生年金が連関していまして、国民年金の保険料を厚生年金の被保険者は国民年金の保険料としては負担していなくて、実質的には厚生年金の保険料に含まれる形で、基礎年金拠出金として資金移動がされています。現状の基礎年金拠出金は20~60歳の被保険者の数をベースに按分で決まっていますけれども、それは現役が高齢者を支えるという面から見れば合理性のある制度だと思います。

 その一方で、厚生年金の被保険者には、20歳前から働く方や60歳以降も働く方もいて、彼らは同時に第2号被保険者であり、厚生年金の保険料を払っています。そうすると、厚生年金の保険料として集まったものから基礎年金拠出金の分を引いて残ったものをみたときに、国民年金の保険料としての性質が皆無というわけではないようにも思えて、もちろん全部では全然ないのですけれども、そういうものが積立金として積み立てられてきたという理解もできるのではないかなと考えています。

 2階建ての公的年金制度において、定額支給の基礎年金が十分な額を支給するという視点は非常に重要で、そこに所得再分配の意義があるかと思います。国民年金と厚生年金の関係性を改めて問い直して、厚生年金と国民年金の連携や所得再分配の在り方を改めて見直す一歩として、意義のあるものではないかと思います。

 長くなって申し訳ないのですけれども、受給者の視点からもちょっと検討させていただきたいのですが、終わるはずの厚生年金の調整が終わらなくて、実質的価値が低下し続けると、やはり財産権侵害の観点から慎重な検討が必要です。マクロ経済スライドによる減額が違憲かどうかについて判断した最高裁判決はまだありませんが、特例水準の解消が違憲かどうかを判断して、違憲ではないとした最高裁判決があり、その中でマクロに関する指摘もされています。少子高齢化の進展が見込まれる中で、世代間の公平に配慮しながら、財政の均衡を図りつつ、年金制度を存続させていくための制度として、合理性を有するものとして構築されたというように触れている部分があって、マクロ経済スライドには合理性があるという点を最高裁が認めたとも読める書き方がされています。ほかにも、将来受給者との関係で考察して、長期的な視点だとか持続可能性といった点を最高裁は重視していて、それはこれまで制度をつくる上では重視されてきた点かと思いますが、最高裁によっても認められているというのは重要かなと思っています。

 今回の御提案については、そもそもマクロが終わるかどうかというところは社会経済的な情勢によって不確定なところがあって、終わりに対する期待はそれほど高いものとはいえないという余地もあるかなというところとか、マクロ自体に名目下限措置があったりして生活への配慮がある点、あと将来の受給者のためではあるけれども、現在の高齢者に支給される年金よりも上げる趣旨ではなくて、現在の高齢者が受ける基礎年金よりも下がることを前提に、その下げ幅を少しでも減らすための政策であるので、今の高齢者のみに負担を過度に押しつける形にはなっておらず、合理性があると考える余地はあるのではないかと考えた次第です。もっとも、その調整期間が際限なく続くなどがないように、期間的な上限などのバッファーについては設ける必要があるのではないかと思っております。

 長くなり申し訳ございません。以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、百瀬委員、お願いします。

○百瀬委員 まず、この提案に対して私は賛成の立場をとります。

 私自身は、基礎年金の拠出期間45年化がベストな選択肢だったと考えておりますが、それが実現できないというのであれば、基礎年金の水準低下を防ぐ手段として、この方法がよいのではないかと思います。特に、障害年金や遺族年金を研究している立場からいいましても、基礎年金の水準低下が著しくなれば、障害のある方、遺族の方の所得保障を大きく低下させることになりますので、ぜひとも基礎年金の水準低下を防いでいただきたいと思っております。

 それから、大前提として、厚生年金の加入者も国民年金に加入していることがどこまで国民の皆様に伝わっているのかが少し分からないところがあります。今まで以上に、その点についてきちんと説明していく必要があると思っております。

 1点確認がございます。先日、日本年金学会において、ニッセイ基礎研の中嶋さんが適用拡大について報告をされました。厚生年金の適用拡大を行った場合、国民年金の第1号被保険者が減少していきます。それによって第1号被保険者の1人当たりの積立金が増加するので、基礎年金の水準が上がることになります。ただし、財政検証のオプション試算の適用拡大マル4まで行くと第1号被保険者が非常に少なくなり、積立金に財政状況が左右される要素が大きくなってしまいます。以上のような発表内容でした。この点について厚生労働省ではどのような認識でいるのでしょうか。また、もしそれが事実であるとすれば、適用拡大は調整期間の一致とセットで行わなければ、基礎年金の給付水準に不安定性を残してしまうことになるように思っております。

 私からは以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、御説明をお願いします。

○数理課長 適用拡大のみ行って早期終了を行わなかった場合どうなるかという御質問かと思いますが、中嶋さんの御指摘のとおり、適用拡大だけ行うことになりますと、適用拡大で基礎年金の水準が上昇するのは、国民年金の積立度合いが大きく上昇するためです。その結果、積立金に大きく頼ることとなりますので、中嶋さんの御指摘のとおり、運用の影響を基礎年金の水準が大きく受けることとなります。すなわち基礎年金の水準が運用の結果によりよって大きく変わってくるという効果があります。ですから、リスクが高まるということになるかと思います。

 一方、早期調整を行いますと、全体で支えるような形になりますので、運用のリスクは早期終了を行わなかったときよりも小さくなるということであります。そういった違いがあるということです。

○百瀬委員 ありがとうございました。そうであれば、適用拡大と調整期間の一致をセットで行っていくべきだと思いました。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 会場では一通り御発言いただけました。

 オンライン参加の皆様からお願いしたいと思います。

 それでは、出口委員からお願いします。

○出口委員 ありがとうございます。

 私どもも、将来の基礎年金給付の確保の意義とか重要性は理解しておりまして、そのための方策を議論する必要性も十分理解しております。

 その上で、御説明の内容を踏まえて2点ほど申し上げたいのですが、まず1点目です。そもそも厚生年金における基礎年金の位置づけが曖昧だと考えております。厚生年金加入者の納得と信頼が得られるように、保険料や積立金の使途を明確にして、透明性を高めるなどの公正・公平で分かりやすい仕組みとすることが不可欠だと感じております。

 2点目は、御説明を伺う限りにおいては、将来の安定財源の確保の時期などが曖昧だと感じました。厚生年金のスライド調整がそういう曖昧な状態のまま継続するということも課題です。

 こうした点が明確にならない状態で早急に見直そうとすれば、かえって年金制度全体に対する疑念とか不信を生むのではないかということを懸念しております。

 最後に、基礎年金水準の確保という観点からは、国民年金財政自体の改善努力についても検討していくことが必要ではないかと考えます。例えば、応能負担を求める観点から、国民年金保険料の在り方の見直しといったことも検討していくことがあり得ると考えております。

 私からは以上でございます。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、原委員、お願いします。

○原委員 ありがとうございます。

 基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了についてコメントだけさせていただきます。

 まず、本資料の9ページ、10ページにあるように、現行の年金制度については、マクロ経済スライドの調整により、賃金や物価の伸びよりも年金額の伸びを抑えているというわけで、これについてはマクロ経済スライドを公的年金全体で早期に終了した場合は、年金額は賃金、物価に連動して上昇するという本来の姿になるということで、将来の給付水準の上昇効果があるということですが、これは、1階部分に基礎年金を持つ厚生年金の加入者も含めてということになるかと思います。 次に、14ページにありますように、もともと賦課方式の年金制度における積立金は、過去の被保険者の保険料の残余が積み立てられ、運用によって増大してきたものということになるかと思いますので、必ずしも今のそれぞれの制度の現在の被保険者が積み立てたものではないということがあります。

 また、15ページにもありますように、老齢基礎年金の算定基礎となる加入履歴については、第1号被保険者期間のみである人が65歳の受給権者で3%ということで、残り97%は第2号、第3号被保険者の履歴がある人となっているということです。

 したがって、もともと2ページにいろいろと背景や必要性がありますが、特に将来の年金額を確保するという点からも18ページに見直しの方向性にあるとおり、公的年金全体として給付調整を早期に終了させることについては、方向性としてはよいのではないかと思います。現在の状況においては、公的年金制度全体でバランスを取るということは考えなければならないのではないかと思っております。

 なお、23ページにも図がありましたけれども、将来の基礎年金の水準が上昇する結果、基礎年金にもともと投入されている国庫負担が現在と比べると増加することについては、増加が始まるのは基礎年金のマクロ経済スライド調整終了後であるということも踏まえて、それまでには具体的な検討が必要なのではないかと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 平田委員、どうぞ。

○平田委員 ありがとうございます。

 基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了については賛成です。基礎年金の比率が下がってしまうこと、所得再分配機能が低下することは、今の時代において大きな問題ではないかと思っております。働けない方、2号でも賃金が低い方にとって、基礎年金が果たす役割はやはり大きいと思います。そして、フリーランスの方にとっても同様であり続けると思っています。というのは、業務委託の形で働く人は本当に様々で、実態として使用関係にあるかないかをさらに精査していくこと以外に、厚生年金の仕組みの中にフリーランスの方を組み入れることは、実際問題上は難しいと私は考えているからです。なので、やはり基礎年金のところをきっちりしておくことが大事だということです。

 その場合、案分ルールの変更は、社会保障の基盤となる基礎年金を守る上で必要ではないかと考えています。このことは、大きく捉えれば国民全体で国民全体を支えるという趣旨には合致すると思います。

 一方で、使用者側が自社の社員の保険料を折半して持つことには納得がいくけれども、これを全体性の観点でとらえることは難しいと思われるのも自然のことだと思います。

是枝委員の資料及びレポートを拝読させていただきまして、適用拡大、特に時間要件のさらなる拡大がもたらす全体に対するプラスの影響もより理解できたと思います。その上で、案分ルールに関しても、適用拡大に関しても、そもそも年金というものはどういうものなのかということ、労使というものは何なのかということをしっかり議論して、労使含む国民全体に理解されることなくしては進まないのではないかと思いました。加えて、拡大が進めば進むほど、国民年金と厚生年金の2つがある意味は何なのかとも思ってしまいました。

 国庫負担の増加については、必要な財源を税金で得るのか、社会保険料と積立金の中で賄える範囲とするのかということかと思います。その際、社会保険においては、資産が全く勘案されずに保険料を支払うことになっているので、全体で全体を支えるという側面からは、税金を活用した再分配機能を高める方向も一つではないかと思っています。どのように課税するかということまでには至っておりませんけれども、今、資産の多寡というものが、非常に大きく生活に影響していると考えておりまして、そこは懸念しているところでございます。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 権丈委員、お願いします。

○権丈委員 大変な資料作り、本当にお疲れさまです。

 今回、基礎年金の水準論の話が資料の中にはないですね。そこはとても評価できると思います。基礎年金の水準論の話というのは、2004年改革で、年金の政治的な持続可能性を確保するために、給付建てから拠出建てに切り替えるというぎりぎりの厳しい決断をしたときに、実はこの国、日本の年金というのは、その問題を表には出さないという決断をすることによって、日本の年金の持続可能性を高めたというのがあるわけですけれども、さすがに年金局はその話、基礎年金のあるべき水準はこうだとかいう話は使わなかったというのを、私は高く評価しております。

 そこで今回は再分配効果というロジックで資料をつくってきた。ただ、既に公的年金の中で広範囲で行っている再分配をさらに表に出すことによって、国庫負担の支出先として競合する例えば子ども・子育てとか介護などと、優先順位を戦えるのかというのはある。

 今日の議論で、調整期間の一致というか、国民年金財政と厚生年金財政を統合するというのが基本的な考え方であるわけですけれども、そういう話に関して、私は一度もよい政策と思ったことはなく、トロイの木馬によるトロイの破滅を予言したカッサンドラの不吉な予言のようなことばかり言ってきたわけです。今日もそういう話になると思います。

 まず、積立金を一緒にするという政策の原動力は、資料1の8ページの中ほどに「王道(適用拡大と45年化)の改革路線と比べて」と書いておりますように、厚生年金のマクロ経済スライドが早々に終了して、基礎年金だけが続いていく状況になったときに、野党などからの批判に耐えられないという政治的理由がどうもあると私は見ています。

 動かしている原動力は、年金論ではないなと。年金論を論じる今日の年金部会で仮に全員が反対しても、この話は進められるのだろうと見ています。

年金論者や年金部会は、昔からデフレ経済にも耐えうるようにマクロ経済スライドのフル適用を言ってきたのですけれども、それを政治は拒んだ。その結果が主な理由となって調整期間のずれが生じたわけです。そうした政治が、今は積立金を統合するとそれが国庫負担増の呼び水になって、調整期間のずれを修復できるという手段に着目している。だから、予言という意味では、この話は年金論とは関係なく前に進むのだろうと見ています。

 ただし、7月3日の財政再計算のときに、年金局長は、「マクロ経済スライドによる調整を経てもなお比較的高い給付水準を将来にわたって確保できる見通しになった」という言葉を使い、同日に厚労大臣は、「基礎年金の拠出期間を延長し、国民に追加的な保険料負担を求めてまで給付水準を改善する必要性は乏しい」と発言しているわけです。それでも調整期間の一致をやるのは、政治的理由があるからだろうなと私には思えるわけです。

 ここで資料1の6ページに「兆円単位の額を国庫に抑えられていたら、あとは政治に委ねられるものは仕方がない。果たしてこれから今回の財政検証の試算、投影どおりに進んでいくのか。政治の投影はできないので予測するしかないけれども、今後の年金に関する予測という意味ではどういう展開になっていくのか」という私の発言があるわけですが、ここで不吉な予測をするとすれば、追加的な国庫負担と引き換えに国庫負担2分の1の原則が壊されるおそれ、そして一度壊されると歯止めなく進められるおそれがある。そうなったとしても、再分配という視点から見れば、例えばクローバックの導入というようなものは、再分配の強化となって現れてくるかもしれないので、年金局が今つくっているロジックと矛盾はしない。

 さらに不吉な予言をするとすれば、今出ている資料1の改革をやるとすると、45年化の改革の芽は消えます。資料33ページにオプション試算の組合せ試算がありますけれども、足元の61.2%が、この適用拡大と調整期間の一致とそして45年化をやっていくと経済が順調なケースでは68.8%になる。過去30年投影の場合でも63%代になり、今の所得代替率を超える。このように45年化という王道の改革を早々に放棄した政治が、モデル年金の所得代替率を、法律にある下限の基準50%をはるかに超えるために汗をかくわけがない。

汗をかくというのは小野委員の言葉なのですけれども、年金は汗をかかなければいけなかったけれども、それをやらなかった。そこで生まれた調整期間のずれを国庫負担という形で今ごまかそうとしているのだよねっと、この話が出てきた当初から言っていたわけです。

適用拡大を④の10時間以上20時間未満のところまでしっかりと行っていく方針を明確に立てましょうという是枝委員の意見に私は賛成です。しかし、年金を動かしている政治には、そうしたインセンティブがないです。

ゆえに45年化も、さらなる適用拡大も、調整期間のずれという政治問題が解決すると葬られることになるという、私はカッサンドラの予言みたいな誰も信じない不吉な予言をずっとしているわけなのですけれども、今年の7月3日の政治的判断を見て、この予言は本当に当たるのかもしれないなと思った次第です。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 武田委員、お願いします。

○武田委員 御説明ありがとうございました。

 基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了についての意義・重要性は高いと思います。特にバブル崩壊後、具体的には1990年代半ば頃からですが、雇用環境は極

めて厳しい時代が続きました。就職氷河期世代が生まれ、非正規雇用で雇用が非常に不安定になったという時代背景もございます。そうした世代が中高年に入りつつある中、どうすれば老後の生活の安定性を確保できるかについて、我々がしっかり議論することは非常に重要と考えます。

 ただし、皆さんの議論にも出ておりましたとおり、国民年金と厚生年金それぞれの意義、関係性については拠出期間の問題も併せて丁寧な議論と説明が必要と思います。

 また、本日の資料にもございましたように、基礎年金の給付水準を上昇させていこうとすると、他の法制度改革なかりせば、国庫負担が増加する中、増加分の安定財源をきちんと確保する方策が検討される必要があるると思います。この点について議論を深める必要があると感じています。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 それでは、玉木部会長代理からお願いします。

○玉木部会長代理 皆様、御意見ありがとうございます。

 私は、この件につきましては、厚生年金制度が持つ再分配効果を維持するという観点から考えてみたところでございます。

 御案内のとおり、厚生年金制度が有する再分配効果の大きさは基礎年金の水準と密接に関係しますが、デフレでマクロ経済スライドが長期化した、あるいはその実施がディスラプトされたという事実がございまして、その結果として基礎年金が小さくなる、再分配効果の意図せざる後退が起きることになりつつあるわけでございますが、これはいかにもおかしいのではないかと思います。再分配を小さくしよう、再分配効果を後退させようという政策は誰も思っていませんので、それが起きてしまうことは、やはり何とかして防ぐ必要があるかと思います。

 基礎年金の水準の低下は、御案内のとおり今後増加が予想される単身高齢者や低年金の方々、あるいは障害基礎年金に依存される方々など、そういった方々の貧困リスクを高めるという重大な問題がございます。こういった状況がある中で、厚生年金の積立金の充当の配分を変えていく方法を取ることは、ファーストベストと言い切れるかどうかは分かりませんけれども、現在の状況において私は賛成でございます。

 ただ、皆様からも幾つか御指摘があったとおり、安定財源の確保という点につきましては、今回の早期終了を進める以上は何がしかの義理を負うことになるわけでございまして、これについては社会保障に関係する方々において、我々含めてですけれども、十分留意して国民に粘り強く説明していく必要があるのだろうと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 これで一当たり皆様から御意見いただくことができましたが、追加で何か御意見がおありの方。

 是枝委員、どうぞ。

○是枝委員 百瀬先生御指摘の適用拡大マル4のみを実施して調整期間の一致を行わなかった場合、確かに国民年金の積立金の運用実績によって将来の給付水準がずれてしまう、リスクが大きくなるという点は私も認識しております。ですので、最終的な基礎年金の水準の期待値を調整する意味では、適用拡大を実施する必要があるのではないかと思います。

 その上で、リスク、振れ幅を小さくするという観点であれば、水準を動かすのではなくリスクを低減するという意味では、調整期間の一致と適用拡大マル4まで行う方針をセットで定めることが重要なのではないかというのは、百瀬委員と同じ意見ではないかと思います。

 以上です。

○菊池部会長 玉木部会長代理、どうぞ。

○玉木部会長代理 さっき言い忘れたところがございます。

 資料1の10ページにありますとおり、報酬比例部分の代替率は一時的に低下するわけでございます。10ページのマル1のところです。左肩が上がっている三角形の部分が出現することは事実でございます。この点だけ見れば確かに不利を被る方がおられることは事実でございます。

 ただ、過去のデフレ期にマクロスライドが実施されなかったといったことが出発点となって、様々なひずみが生じている中で、そのひずみのしわ伸ばしといいますか、そういったものは必ずどこかでは起きなければならないといったことでございます。

 この点は踏まえつつも、私としては、給付と物価、賃金の連動性を回復して、なるべく早く正常なメカニズムに復帰するといった点を重く考えたいところでございます。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 オンラインから権丈委員、どうぞ。

○権丈委員 出口委員と私は似ているところがあって、国民年金、基礎年金のほうで今どんな状況かというところ、予定以上に給付水準が高くなっているということは、こういう議論をする上では、みんなで共有しておいていいのではないかと思います。

 そして基礎年金、これは政治が決めるのでどうしようもないわけだけれども、出口委員がおっしゃっているように、国民年金、基礎年金のほうで何らかの要するに汗をかくというようなこと、そしてその原因をつくった人たちが、ほかのところからお金を持ってきて埋めたらいいという着想というか、発想というか、この展開というのは、私は何か違うよなと思う。年金が抱える問題はしっかりと年金で解決しておかなければいけなかったのだけれども、それを我々が幾ら報告書に書いて、いろいろと言っても動かないという展開になっていたということは、我々はみんな共有しておいてもいいのかもしれないと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。

 様々な御意見をいただき、ありがとうございます。

 本日、事務局から提案がございました基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了につきまして、意義・目的についてはおおむね御理解いただけているのかなと思いました。見直しの方向性、賛成の御意見もかなりいただけたとは認識しておりますが、一方で、賛否を留保される、あるいは慎重なお立場の議論もいただいたと認識してございます。さらにしっかりした説明をといった求めもございましたので、それらを踏まえてさらに事務局で検討していただくということにさせていただいて、それを踏まえてまたこの部会での扱いを整理できればと思ってございます。よろしいでしょうか。

 差し当たりはそういった本日のまとめとさせていただきます。どうもありがとうございます。

 それでは、この後もまた重い議題ですので、一旦休みを挟ませていただいて、15時20分に再開させていただきます。

 

(休憩)

 

○菊池部会長 それでは、時間になりましたので再開させていただきます。

 続きまして、議題の(2)と(3)につきまして、まとめて事務局から御説明をお願いいたします。

○年金課長 年金課長でございます。

 私のほうからは、資料2と3を併せて御説明いたします。

 まず資料2は、在職老齢年金制度についてです。

 2ページを御覧ください。制度の概要で、在職老齢年金制度は、現役世代の負担が重くなる中で、報酬のある方に年金制度を支える側に回ってもらうという考え方に基づいて導入されています。

 適用事業所で就労し、一定以上の賃金がある方に保険料負担を求めるとともに、支給停止を行う仕組みで、その基準額は合わせて50万円となっています。

 右側は、厚生年金が10万円の方のイメージですが、そこにあるとおり年金と賃金を足して50万円を超えると年金額が徐々に支給停止になり、この場合ですと、合わせて70万円になると全額停止になります。繰り下げた場合でも支給停止分は反映されない仕組みで、基準額の50万円は毎年改定されています。

 前回の改正では60代前半のいわゆる低在老の部分について、基準額を引き上げる改正を行っております。

 続いて、3ページが現行の支給停止の状況になります。

 オレンジの部分の約50万人が在職支給停止の対象者数です。この支給停止対象者数はこの10年間で約24万人増加しています。支給停止対象額は約4500億円です。

 4ページ、5ページは、昨年このテーマについて議論いただいた際の主な御意見です。

 上のほうから、制度が従業員の就労意欲あるいは中小企業の人手不足、両方にマイナスの影響を及ぼすケースがあるというような指摘、保険事故が発生しても支給されないのは諸外国の制度と比較して異質ではないかという指摘がありました。また、先ほどの3ページを御覧いただくと、足して50万円の手前の48万円の辺りで人数が増えて、その後下がっていることから、制度が何か影響しているのではないかという指摘もございました。

 5ページですが、現在の仕組みで支給停止の対象となるのは賃金でして、自営業や請負契約等で働いた場合の収入、その他の収入は対象にならないということから、就業形態の違いによる公平性の指摘等についてもご意見がありました。

 6ページは昨年もお出しした高齢期の働き方に関する調査です。

 左側が内閣府の調査で、厚生年金を受け取る年齢になったときの働き方を聞いていますが、年金額が減らないように就業時間を調整しながら会社などで働くという方が一定程度いらっしゃいます。右側の過去の年金局調査でも同じような傾向が見てとれます。

 続いて、7ページは今回新しい資料になります。

 高齢者の就業に関する業界の声ということで、多くの産業で人手不足が生じており、それから就業者が高齢化していく中で、在職老齢年金制度に関心を持つような年齢が高い方が多くいらっしゃる業界に影響を聞いたところを、私どもの責任でまとめたものです。

 上から各業界についてで、スーパーマーケットが一番上になっていますが、参考1にあるとおり、65歳以上の就業者数を産業別に見ると卸小売りが一番多いということです。

伺ったところでは、人手不足の中で高齢者の活躍が期待されており、現時点で停止基準に該当する方は少ないが、特に地方では就労抑制が増え始めていて、年金の支給停止を嫌って就労抑制することは、人材確保にとっては大きな問題であるというような声でした。

 その下のタクシー業界では、運転手さんの平均年齢が60歳弱ということで伺ったところ、3行目辺りですが、インバウンド需要も増えて人手不足が深刻化している中で、地域における公共交通の供給にも影響が出るのではないかといった声でした。

 そこから下、製造業について幾つか伺ったものになります。

 製造業については、特に熟練した経験あるいは専門知識といったものをお持ちの方からの技能継承の観点からお声をいただいているところです。現時点ではそれほど多くないという声も幾つかありましたが、今後様々に高齢者の就業が進展する中で、この問題は出てくるのではないかということです。

 以上を踏まえ、8ページに見直しの背景、意義ということでまとめています。

 まず背景について、そもそも年金制度では保険料を拠出された方に対して見合う給付を行うことが原則になります。そういった中で、この制度は2000年改正で年金制度を支える側に回ってもらうという考え方から導入されました。その後の2004年改正でマクロ経済スライドが導入されて、今回の財政検証では、労働参加の進展による支え手の増加が年金の財政状況、すなわち将来の給与水準にプラスの影響をもたらすことが確認されています。そういう意味で、高齢者の活躍を促進することは、年金制度にとっても重要な側面があります。

 それから意義の部分ですが、65歳以上の在職老齢年金制度による就業抑制効果について、実証研究に基づく定量的な効果は確認されていませんが、先ほど御紹介したとおり、世論調査を見ると在老を意識されている方がいらっしゃるということでした。

 それから、幾つかの業界からのお声として、人材確保あるいは技能継承の観点の重要性が高まっており、実際に在老を意識して就労を調整する方がいらして、サービスあるいは製品の供給に支障が出かねないという声も聞かれているところです。

 一番下ですが、そうした中で、この在老制度が高齢者の就業意欲をそぎ、さらなる労働参加を妨げる例も存在していることを踏まえ、高齢者の活躍を後押しし、できるだけ就業を抑制しない働き方に中立的な仕組みとする観点から見直しを検討してはどうかと考えております。

 具体的にはということで、9ページになります。

 在職老齢年金制度については、先ほど申し上げた見直しに向けた御意見がある一方で、制度を撤廃した場合には将来世代の給付水準が低下する影響があるので、現行制度を維持すべきという御意見もございます。このため制度の見直しの方向性については、撤廃する案に加えて、基準額を引き上げる案を2つ置いています。

 案1から案2、案3とあって、案1が撤廃、案2が71万円への引上げ、案3は62万円への引上げです。それぞれの案における停止対象者数、停止対象額は右にあります。

 それぞれの額の考え方についてもそれぞれで書いていて、基本的には長く働いていて65歳以上の在職老齢年金の対象になりそうな方、50代、60代の方が現役時と同じような働き方を65歳以降もした場合に、平均的な年金を受給しても支給停止にならないような基準を勘案して額をご提案しています。

 それから、一番下の参考のところで、所得代替率の影響を記載しており、案1~案3について、それぞれ▲0.5%、▲0.3%、▲0.2%という数字が影響になります。

 以下は参考資料で昨年お出ししたものになります。それぞれ制度の概要、見直しの経緯、あるいは繰下げとの関係の資料もあります。諸外国の状況が17ページ、18ページ以降は60代の皆様の高齢期の働き方のデータ関係です。

 続いて、資料3は標準報酬月額の上限についてです。

 3ページが現在の等級表で、健康保険と厚生年金で等級の上限が違っていて、厚生年金については32等級の65万円が上限になっています。

 続いて4ページは上限設定の基準の経緯で、表にあるとおりで上限を引き上げてまいりましたが、現行の引上げルールになったのは、平成16年に法定化されてからです。

現役被保険者の平均標準報酬額のおおむね2倍に当たる額を基準に改定することとしており、このルールを私どもは「2倍ルール」と申し上げておりますが、この「2倍ルール」で現在に至っており、最後では令和2年9月に65万円、つまり現在の等級が追加されています。

 このルールに基づく分布状況が5ページからです。

 5ページは、まず男女計という数字ですが、左側が厚生年金、右側が健康保険で、健康保険についてはピラミッドのような形で標準報酬等級の該当者が分布していますが、厚生年金は上限65万円に該当する方が6.5%いらっしゃいます。ちょっと飛び出た感じになっています。

 6ページで男性のみを御覧いただくと、厚生年金では上限65万円に該当する方が一番多くなっており、最頻値の9.6%を占める状況になっています。

 7ページの女性については、上限に該当されている方は2.0%という数字です。

 このテーマも昨年議論いただいて、8ページから10ページまで、そのときの御意見を載せていますが、説明は割愛させていただきます。

 以上を踏まえて、11ページでは上限の在り方の見直しについてまとめたものです。

 現行制度及び現状は御紹介したとおりで、平成16年改正で「2倍ルール」が入って以降の経緯を書いています。

 それから、見直しの意義及び方向性が11ページ下になります。2倍ルールの法定化以降、令和2年9月に1段階の等級を引き上げていますが、依然として上限等級に多くの方が該当している状態が継続しています。上限該当者の方は負担能力に対して相対的に低い保険料負担となっていると考えて、今後賃上げが継続すると見込んだ場合、負担能力に応じた負担をお願いしてはどうかというものです。当然それは将来の給付も増やすことになりますので、現行ルールの見直しを検討してはどうかと結んでおります。

 具体的には、男女ともに上限等級に該当する方が最頻値とならないような見直しを図ることとし、そのためのルールについては、健康保険の例を参考に、上限に該当する方が占める割合に着目したルールへの見直しを検討してはどうかと考えております。

 その意義ですが、そうした場合、新たに上限等級に該当する方の年金額、報酬比例部分が増加します。それから制度全体で見ても、保険料収入が増加して、これは給付に結びつくまでタイムラグがありますので、その間の運用益の増加が将来の全体の給与水準につながっていきます。これを通じて高齢期の経済基盤の安定、所得保障・再分配機能の強化につながるものと考えております。

 12ページでは、ここまでの考え方に基づいて、以下の案を検討してはどうかということです。

 左側は現行上限の65万円と「2倍ルール」を書いていますが、見直し後は改定ルールを健康保険のルールを参考に見直して、例えば一番上の上限98万円では、上限該当者が2%を超えると上限を引き上げるという新しいルールになります。

 以下、改定ルールとして該当者3%が越えた場合とすると83万円、それから該当者が3.5%、4%と、上限該当者の割合の数字を変えた形で案が4つに分かれています。

 それから、こちらも参考として一番下に所得代替率への影響で、上限98万の場合はプラス0.5%、以下、プラス0.4%、プラス0.3%とプラスの効果があるということです。

 13ページは、御紹介した所得代替率の効果あるいは実際に該当者の負担と給付がどうなるのかというイメージになります。

 13ページ上の左側が上限に該当する方ですが、この方については保険料負担が増加することになる一方で、上限の引上げに該当しない多くの方について負担は変わりません。

 一方で、右側の年金額を御覧いただきますと、当然保険料を多く負担いただいた方については報酬比例の年金も増加します。加えて、先ほど御紹介した将来の所得代替率へのプラスの影響がありますので、上限に該当する方のみならず、引上げに該当しない方についても給付水準が上がります。これは緑のところで「調整期間短縮により報酬比例が増」と書いているところです。

 具体的にどれぐらい個人における負担が増えるのかが下で、75万円の例で御覧いただくと、保険料負担が月額で0.9万円増となり、事業主負担も同じ額が増えます。

 給付の方は、老齢厚生年金は加入期間によりますが、負担が増えた分、年額で増加することになります。

 続いて、委員からお求めがあった資料を紹介させていただきます。

 16ページは、厚生年金の報酬比例の年金額について、65歳の方の今の分布を示しています。委員からお求めの中で、現行の「2倍ルール」は、年金額の差があまり大きくならないように採用しているという説明に対して、実際の受給者を見たときに年金額で2倍ぐらいの差があるのかということで、分布を示しほしいということで用意しました。

 赤い線が右側ありますが、これは65万円の報酬上限とボーナスについても上限150万円に該当する方が40年間加入し続けた場合の年金額で、注3にある計算式から18.5万円になります。この方々が全体に占める割合は0.001%ということで極めて低い数字になります。年金額を計算する場合は、加入期間全体の報酬の平均を使いますので、多くの方は若い頃は20万、30万といった賃金の水準からだんだん上がっていくことになり、平均的にはあまり年金額が高くは上がらず、御覧いただきますとおり10万円前後のところに多くいらっしゃる状況です。

 同じような観点から、17ページは年齢ごとに見た等級の分布状況になります。

 御覧いただくと、20代では上限等級の該当の方はそれほど多くないですが、50代になると増えます。

 18ページも委員からお求めがあった資料で、上限に該当する方が企業の規模でどういった分布になるのかということです。

 この資料では、例えば900万円を超える方はどういう企業にお勤めかという点を資本金別に見ています。900万円としたのは、上限65万円を12倍すると780万円でして、その方々のボーナスを見ると、右の欄で200万円弱となっており、合わせた900万円を基準として調べたものです。

 左側に分布があります。資本金2000万円未満の会社でいいますと、900万円超の方が42万5540人いらして、当該企業に勤める方が占める割合は4.2%になっています。会社が大きくなって資本金10億円以上だと20.7%ということで、大きな会社ほど給与階級900万円を超える方が高い状況が見てとれます。

 参考2のところで、別の統計から資本金の規模でどれぐらいの企業数があるのかというと、資本金1000万円未満の企業数は約100万社で全体に占める割合は59.3%、3000万円未満ですと31.8%となっていて、この2つで大体9割で多くは資本金3000万円未満の企業となっています。それから1億円以上ですと3万社で1.7%になります。

 19ページは、12ページで案としてお示しした75、79、83、98万円について黄色にしていますが、それ以外の全ての等級についての該当者数と保険料収入の増加額を示しています。

 以下、参考資料で昨年お出ししたものと同じで、説明は割愛させていただきます。

 説明は以上になります。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、御説明いただきました議題(2)及び議題(3)につきまして、御意見、御質問などをお願いいたします。

 それでは、まず会場からいかがでしょうか。

 是枝委員、どうぞ。

○是枝委員 まず私は、高齢者の就労インセンティブをそがない制度設計にする観点から、在職老齢年金の撤廃または基準額の引上げに賛成です。

 また、標準報酬月額については、応能負担の徹底と労働者に報酬に見合った年金を支給すべきという観点から、上限の引上げに賛成でございます。

 両者を同時に実施することで、よりよい制度にするために、高所得者内で再分配を行うという設計にすることができますので、将来世代の給付水準を下げるだとか、逆再分配になるだとかといった批判を防ぐことができるのではないかと思います。なるべく所得代替率への影響が両者合わせてプラスマイナスゼロに近い水準にすべきと思います。どの水準までやるべきかというのは、労使で特に納得がいく水準で決定するのがよいのではないかと思います。

 その上で、今まで論じられなかった論点として、標準報酬月額の上限を引き上げるのであれば、標準賞与額の上限についても引き上げるべきと主張させていただきます。第11回年金部会では、最高等級である標準報酬月額65万円の者の4割に賞与がないという衝撃的な資料が出て、賞与を月給に組み込むような形で保険料を抑えようとしているという実態が推定されました。

 一方で、先週末開催された第186回医療保険部会では逆の現象が確認されています。健康保険において賞与が年間573万円の上限に達しているにもかかわらず、標準報酬月額が9万8000円以下であるという者が一定数確認され、こちらは逆に月給を賞与に組み込むような形にして保険料を抑えようとしている、あるいは、健保においては高額療養費において等級の段階があり、標準報酬月額で判定することとなりますので、高額療養費などの段階を抑えるためにそういったことをしていることも考えられるところでございます。

 私は、第11回年金部会において、保険料の公平な負担を求める観点と、現役期の収入に応じた適切な給付を行うという両面から、理想的には月給と賞与を合わせた年収ベースで賦課対象とする報酬上限を定めるのがよいと主張いたしました。その考えは、先週末の医療保険部会資料を見てより一層強くなりました。

 システムや実務の都合上、年収ベースで上限を定めるというのがすぐには難しいということもあろうかと思いますが、その際はせめて、標準報酬月額の上限を引き上げるのであれば、標準賞与額の上限も同時に引き上げる、あるいは賞与の支給回数を調整することで標準賞与額を抑えるといったことがないように、健保と同じように標準賞与額について年間上限にすることも必要ではないかと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 いかがでしょうか。

 小林委員、どうぞ。

○小林委員 御説明ありがとうございました。

 まず、在職老齢年金制度について意見を申し上げます。

 中小企業は深刻な人手不足に直面しております。働く意欲や能力があるなら、高齢者であろうと年齢に関係なく働いていただきたいのですが、資料2の6~7ページのとおり、在職老齢年金制度の存在により、就業を調整してしまう方も少なくありません。従業員の働く意欲と中小企業の人手不足の双方に負の影響を与えていると考えられる制度は、ぜひ見直すべきだと思います。事務局が示した見直しの方向性で御検討をお願いしたいと思います。

 次に、標準報酬月額の上限について意見を申し上げます。

 まず、参考となるデータを揃えていただき、感謝を申し上げたいと思います。資料3の18ページを見ますと、大企業は該当者がやはり多いなと思いつつ、中小企業にも一定数の該当者がいることが分かります。企業ごとに賃金分布は異なりますが、12~13ページの見直し案がいきなり適用されると、中小企業の保険料負担としては、かなり重いインパクトとなります。引上げ基準を変更するとなれば、その的確性・妥当性が強く問われると思いますので、議論を尽くすべきだと思います。その上で、仮に引き上げるとした場合にも、小幅で段階的な引上げで様子を見ていくのが現実的と思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 いかがでしょうか。

 島村委員、どうぞ。

○島村委員 ありがとうございます。

 私も、在職老齢年金については、所得制限のように機能してしまうというところがありますので、社会保険において所得制限はおかしくて、しっかり支給した上で、必要があれば税で徴収していくという方向性がよいかと思っています。ですので、在老については撤廃でよいと思います。高齢者の就労がどんどん増えていくことというのが望ましいと思います。そうすると、70歳を厚生年金の被保険者資格の上限としている点についても、今後の検討課題になるのではないかと考えております。

 もう一つの標準報酬月額の上限について、負担能力に応じて負担していただくという意味で、現在だと相対的に軽い負担で済んでいた方を、ほかの所得階層の方と同じように能力に応じた負担にさせようとするものですので、必要な改正ではないかと思っています。

 ただ、2倍ルールの趣旨が給付額の差があまり大きくならないようにということでしたが、それを上限等級に該当する人がどれくらいいるかというふうに変えるというのは、趣旨が随分変わることになるかと思います。そうすると給付額の差については考えなくてよいのかというのは慎重に考えたいと思っています。現役世代での賃金格差を年金制度でどう受け止めるのか、所得再分配を年金制度でどう利かせていくのかに関わる問題かと思いますので、給付額の差が広がり過ぎないようにというのはもう考えないでいいのか、それとも考えるのかについての方向性は事務局にお伺いしたいところです。

○菊池部会長 質問ですか。

○島村委員 もし可能であれば。

○菊池部会長 いかがでしょうか。

○年金課長 御指摘ありがとうございます。

 給付額への影響については、お求めがあった資料16ページがそれを意識して御用意したものです。現行の2倍ルールは、恐らく給付額で2倍を超えないという形で、差が広がらないこと意識をして設定していると思いますが、実際の年金額の計算は、加入期間の平均になるので、仮に40年ずっと高い収入の方が多くいた場合には、おっしゃる通り給付額に差が広がることも予想されるわけです。これをデータで見るとそれほど差が広がるような形になっていない、つまり給付の計算時に加入期間を平均するため極端な差が起きていることにはなっていないのではないかと見ております。もちろん新しいルールを設定する場合には、こういったところの影響も意識しながら考えてまいりたいと思います。

○島村委員 ありがとうございます。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 佐保委員、お願いします。

○佐保委員 ありがとうございます。

 私からは、在職老齢年金について意見をしたいと思います。

 今回、3つの案が示されております。令和2年の年金法改正では、在職老齢年金制度は低在老について高在老と同じ48万円、この後、改定により令和6年度では50万円となりましたが、この際の改定における影響や就業抑制効果を分析し、明確なエビデンスを示した上で検討を行うべきと考えております。こうした分析結果があれば、確認をさせていただきたいと思います。

 なお、連合といたしましては、在職老齢年金制度について、そもそも厚生年金保険の適用要件を満たさず加入していない人や、賃金以外の収入がある人との公平性を確保するため、事業所得、家賃、配当、利子など総収入をベースに年金額を調整する制度や、働きながら年金を受給する人の支給停止部分を部分繰下げ扱いとし、一定の増額率を乗じた額を退職時に受給できる制度などに見直すべきと考えております。

 また、資料2の7ページの高齢者の就業に関する業界の声の中のタクシーのところに、在職老齢年金制度に関する広報が足りないといったことや、実際には支給停止基準に該当しない場合であっても、感覚的に労働時間を減らす方もいるのではないかといった声もあることから、こういった周知広報についても力を入れるべきと考えております。

 私からは以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 確認のお求めがあったかと思いますが、いかがでしょう。

○年金課長 前回改正で60代前半の支給停止基準を引き上げた影響ということだと思いますが、確認をしたいと思います。ここまでの検討の過程では、60代前半でこう変わったというところのエビデンスなりなんなりを手元に持ち合わせていないので、どういった確認ができるか引き取らせていただきます。

○菊池部会長 では、よろしくお願いいたします。

 永井委員、どうぞ。

○永井委員 ありがとうございます。

 私からは、標準報酬月額の上限について述べたいと思います。

 現在、健康保険よりも低くなっている厚生年金保険の上限65万円について、公的年金制度が持つ世代内の再分配効果を強化するため、年金額の格差に留意しつつ、引上げを検討する必要はあると考えております。

 また、厚生年金保険と健康保険で下限、上限が異なる標準報酬月額の等級について、厚生年金保険の適用拡大により、基礎年金に加えて報酬比例部分を受給できる短時間労働者が今後増えることを踏まえ、賃金要件や労働時間要件の見直しを念頭に、下限引下げについても検討すべきと考えます。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 ありがとうございます。

 それぞれについてコメント、意見を申し上げたいと思います。

 まず在老なのですけれども、人手不足の状況、それから、これからより多くの期間、年金財政に貢献してもらうということで、基本的には完全撤廃をしたほうがいいのではないかと思います。もちろん経過として段階的な状態があってもやむを得ない部分はあるかなと思いますけれども、最終的には完全撤廃がよろしいかと思います。

 それから、報酬の上限の話ですけれども、能力に応じて払っていただくのが原則でありますので、基本的には98万円まで上げていくというのがあるべき姿かなと思います。先ほど是枝委員からもあったように、足してそれぞれマクロ経済スライドに対する影響をキャンセルアウトできるような形が説得力があるかなと思います。

 資料2について、11ページは前から話をしていたことだと思いますけれども、このシミュレーションは、例えば50万人の人に対して在老停止がなくなったことで支払う年金が増えるという影響です。ただ、。その結果、この人たちがより高い賃金で働いて、保険料を払って、経済成長に寄与して、年金財政にも貢献するという動態的なループは入っていないという点では、資料にも見込んでいないと書いてありますので、4500億円というのはそういう効果が入っていない意味ではやや過大推計かなと思います。

 以上です。

○菊池部会長 最後は御意見として承ります。

 小野委員、お願いします。

○小野委員 ありがとうございます。

 やや雑駁な意見になってしまいますけれども、在職老齢年金制度に関しては、他国の例を参考に、保険事故が発生したら保険金を支払うという保険の大原則を徹底する観点からは、廃止すべきだと考えます。給与収入以外の収入、例えば業務委託などで収入があっても、現在は支給停止にならないわけですので、バランスが悪く、働き方にも影響するかもしれません。仮に支給停止基準の引上げで対応する場合につきましては、少なくとも被保険者でない70歳以上の受給者の支給停止は廃止すべきだと思います。

 次に、標準報酬月額の上限改定ルールの変更については賛成いたします。現行の倍率基準は、上限を適用した報酬で平均を取って、その2倍によって判定するわけですので、これによって上限を引き上げれば平均値も上昇してしまうことになりますので、基準としてはいま一つかなと思います。むしろ上限等級に該当する者の割合に着目する割合基準のほうが合理的だと思います。

 上限の水準については、先ほど是枝委員から年収ベースというお話があって、私もそれは賛成なのですけれども、賞与と月給との配分調整という保険料負担に関わる裁定行為があるのではないかと過去に指摘されましたが、これを牽制する観点からは、月額という観点からいうと、できるだけ高く設定するのがよいと思います。

 また、将来的には、標準報酬月額の等級制の在り方の見直しが必要だと思います。前回、権丈委員が、「アナログ感がある」ということを指摘されましたが、そのとおりだと思います。等級制によって複数事業主間の調整に支障を来す面があることが確認できたわけですので、今後、マルチワーカーへの対処等が必要になる局面を想定しますと、改めて検討する必要があると思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 百瀬委員、お願いします。

○百瀬委員 まず在職老齢年金について意見を述べさせてください。

 在職老齢年金が65歳以上の高齢者の就業意欲を抑制するから見直すというのであれば、見直しにはあまり賛同できません。

 第一に、高在老の支給停止基準額は50万円以上と比較的高く、その対象になり得る人は必ずしも多くありません。さらに支給停止基準額も賃金変動に応じて見直されています。

 また、仮にそれを超えたとしても、働くことで手取りが減るというような逆転現象は起きない調整方法になっています。

 第二に、賃金と年金の合計額に応じて支給停止が行われますが、この年金は厚生年金部分だけです。基礎年金は含まれません。さらに、支給停止額を超えた場合でも基礎年金は減額されません。

 第三に、内閣府の調査を見ますと、年齢が高くなるに従って、高齢者が就業する理由として、経済的理由以外の理由が増加する傾向が見られています。65歳以降も高い収入を稼げる方の中には、働くことそのものに価値を見いだしている場合も考えられます。

 以上、様々なことを考えれば、65歳以降に関しては、在老の就業抑制効果がゼロとはいいませんが、そこまで大きくないと考えられます。実際に資料2でも書かれているように、65歳以降では、60代前半で認められているような就業抑制効果について、定量的な確認がなされていません。それゆえに、高齢者の就業抑制の解消という観点から、将来世代の給付水準を若干下げてまで制度を見直すことについて、私は積極的な賛成はできません。

 ただし、その一方で、老齢年金の保険事故が65歳到達によって発生すると多くの国民が考えているのであれば、仮にその後に就労していた場合でも、保険料の拠出実績に見合った給付を行うという年金制度の原則を重視すべきだ、という指摘は理解できます。

 それから、働き方の多様化や収入源の多様化が進む中で、厚生年金の適用事業所で働く者の賃金だけが調整の対象になるのは不公平だ、という指摘もそのとおりだと思います。もしこうした観点から高在老を見直したいというのであれば、見直しに私は賛成いたします。そして、こうした観点から見直しをするのであれば、支給停止基準額の引上げでは目的は達成できないので、撤廃を目指すべきということになります。ですので、現時点では、見直しの目的に応じて、現状維持か撤廃のどちらかを支持したいと思っています。

 続いて、標準報酬月額の上限額引上げについてです。

 過去の部会で議論したときに、厚生年金のほうが健康保険よりも上限額が相当に低くなっている理由として、給付額の格差があまり拡大しないように配慮していることが挙げられていました。今回新たに資料を御提示いただきましたが、そこから判断する限り、何十年にもわたって上限額を超えるような方は極めて少ないと判断できます。年金額を計算するときは、加入期間全体の標準報酬を平均にするため、上限額を上げたとしても、そこまで給付額の格差は広がらないと考えられます。一方で、上限額を引き上げることで、高所得者は年金額が増えるというメリットを享受できますし、年金財政の好転を通じて、そうでない方の給付水準も若干上昇します。また、負担能力に応じた公平な負担という観点からも、引上げに賛成します。その引上げ幅については、急激な変更をした場合の事業主負担の増加に配慮して、現時点では案マル1や案マル2を支持したいと思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、オンライン参加の皆様からお願いします。

 出口委員、どうぞ。

○出口委員 ありがとうございます。

 まず、在職老齢年金制度についてでございますが、高齢者の就労を促して、働き方に中立な制度にしていくという観点から、将来的な廃止も視野に見直すべきと考えております。もちろん年金財政の影響に対して懸念があることも承知しておりますので、まずは対象者の縮小にとどめることが適当ではないかと考えております。あわせて、在老を見直す際は、年金を含めて高い収入のある高齢者に対する応能負担を徹底して、高齢者の中で再分配を強化するということも重要な課題ではないかと考えております。

 続きまして、標準報酬月額の上限についてでございます。

 単なる財源対策ではなくて、負担能力に応じた負担を求めて再分配機能を強化する方向性ということで理解しております。仮に上限を引き上げる場合は、公正・公平で合理性のあるルールを設けて、予見可能性を高めることが必要だろうと思います。また、上限を引き上げることの負担感は、被保険者本人にとってもそうですが、事業主にとっても相当大きいものであります。

 そうしたことを踏まえますと、例えば、資料12ページの案を示していただいておりますが、これだけでなく、かつて行われた上限該当者5%とすることも考えられるのではないかと思っています。仮にその場合でも、直近20年間の2回の引上げ幅と比較して大きくなるということも十分御留意いただければと思います。

 いずれにしましても、本見直しによって、再分配の強化を通じて厚生年金受給者全体の将来の給付水準が上昇するということは強調しておきたいと思います。高所得者の負担増による受給者全体の将来の給付水準上昇への貢献ということも踏まえまして、例えば、企業型確定拠出年金等の私的年金の拠出限度額の引上げも併せて検討していくべきと考えております。

 以上でございます。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 平田委員、お願いします。

○平田委員 ありがとうございます。

 まず、在職老齢年金に関してですが、税も含めた全体性の中で、再分配というものが再考されるのであれば、撤廃に賛成です。在職老齢年金制度が従業員の方の就労意欲をそいでいる、そのことが中小企業の人手不足にマイナスの影響を及ぼしているということは、ヒアリング調査からもわかりますし、実態としてもあると思います。人は分かりやすく損したくない、というところがあると思うので、その意向もやはり働くものだろうなということです。

 在職老齢年金に引っかかるのは、普通に考えれば難易度の高い仕事をなさっている方だと思います。その方々からの次世代への技術移転であるとか、あるいは本当に人手が足りなくなっている中で、できる人にできることをやってもらうという観点からも、撤廃でよいのではないかと思います。

つまり、もらうものはもらって、一方で、資産に対する課税も含め、払うものは税金で払うとしたほうがすっきりするのではないか、ということで、全体性の中で考えるという方向性であれば賛成です。

 標準報酬月額の上限に関してですが、これも再分配機能の強化につながるという観点から、上限見直しに賛成です。

 ただ、気がかりもございまして、1つは事業主負担もそれに応じて増えるということです。今、人材獲得競争は本当に熾烈になっていまして、特定の技術や技能を持つ方を中心に、非常に高単価の方が出てきていると思うのです。そうした方々は年齢を問わずということで、若い方にも出ています。そういう中で社会保険料も上がっていくとなると、中小企業にとっては極めて厳しい人材獲得競争に投じられるという現実があろうかと思います。

 そして、今申し上げたとおり、かつてのような年功序列賃金が崩れていくなかで、今後は生涯を通じて年収の高い人が、少なくとも今よりは増えていくのではないか。そのときに2倍ルールとは言わないまでも、その給付の水準に無自覚でいていいのかという疑問は若干持っております。

 なお、賞与についての見直しも私は必要だと思っております。理由は、是枝委員が先ほどおっしゃったまさにそのとおりです。特に小規模企業において、現行制度において、制度を利用した操作がなされているということは実際にあると感じておりますので、この辺りはそういうことのないようにしていくことが大事ではないかと思っております。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 権丈委員、お願いします。

○権丈委員 高在老の支持者が多いのは、資料2の2ページの図を見て、高所得者の年金を減らすのは再分配なのだから良いことではないかと判断しているところがあるのでしょうね。しかし、この制度の問題は、2019年の『年金部会における議論の整理』にあるように、「同じような所得を得る者の間での公平性の問題」とか、また、「繰下げ受給しても在職支給停止相当分は増額対象にならない」という理不尽さにあるんですね。

どうして対象は賃金だけなのですかとか、本当のお金持ちがいるところの役員報酬とかは何で対象ではないのですかという疑問に対する理由がない。ほかにも、どうして繰り下げても減額されたままなのですかという疑問にも理由もない。そういう素朴な疑問に答えることができないから、みんな初めてこの問題に直面した時にえっと思うことになる。65歳になって、みんなそのことに気づいていって、年金への不信感を高めていったりする。

 そういう理不尽さがこの高在老が抱えている問題で、資料2の4ページに、「高在老の対象者は働くことはあまり苦と感じず、就業調整をしないだろうが、この制度の理不尽さに不満を持ちながら従わされているのが現状ではないか」という言葉があります。つまり、昨年12月に話したように「みんなおかしな制度だと思いながら泣き寝入り状態なわけです。この泣き寝入りはなかなか検証できない」と私は見ています。年金事務所で制度を教えてもらってはじめて理不尽さに気づいた時、一人で制度に抵抗してもどうしようもないですからね。でもみんな年金制度への不快な思い、嫌悪感を抱きながら大方働くんですね。

 この引用に続いて、「この不満を緩和・解消するために、現行の標準報酬月額の上限を超えて賦課した保険料を財源に高在老の改革を行うことが考えられる」とありまして、これかはなり前から言っていたことです。この意味することは、アメリカのように公的年金の中に再分配効果を組み込みたいのならば、昨年12月の第11回年金部会で話しているように、現在の標準報酬月額以上の報酬に年金保険料を賦課して、その財源を高在老改革の財源とする、ということを私は意図していました。昨年12月に話した日本型ベンド方式、つまり今の上限以上の「保険料が全部、自分の給付の算定基礎になるわけではない意味では一種のベンド方式」を考えていました。高所得者問題は高所得者間で解決することにして、高所得者優遇だという批判を封じる。

今の高在老は65歳以上になった時のその時点での賃金とか年金額そのものが基準だから話がおかしくなっています。アメリカでは、生涯拠出してきた平均標準報酬月額を基準として乗率を下げていくわけで、日本の高在老とは全く意味が違う。

 標準報酬月額の上限を上げて高在老撤廃の財源を得ようと長く言っていると、7月の財政検証で、標準報酬上限を引き上げると、拠出と給付の間にタイムラグがあり、その間の積立金の運用などを介して、将来の年金受給全体の給付水準も上昇することが示されたわけです。

もちろん今の高在老を撤廃するためには4500億円の財源を必要として、標準報酬月額を98万円まで上げる必要がある。それは政治的に難しく、上限の引き上げはある程度に留めて、高在老を適用する収入を引き上げるというのはあるのかもしれないけれども、そうであれば標準報酬月額の上限引上げと生涯の平均標準報酬を基準としたベンドポイント方式を組み合わせなどを考えることによって、今、働いている今年、今月の賃金と年金月額にリンクした高在老は撤廃するところまで持ち込んでもらえればと思います。

 高在老に不満を抱いている人たちの多くは、恐らく再分配そのものには不満があるのではなく、年金減額への理由が、保険料率を少し下げるために財源が必要だったから、その財源措置のために繰り下げても支給停止分は繰下げ増額の対象にならないというような、理由が財源措置だからという以外にないことへの理不尽さに不満を持っているのだと思います。繰下げた先の5年後、10年後に、高所得である保証はないわけですし。

 Work Longerが経済社会政策の最上位に位置づけられる今の時代に、それを実行していこうとするとペナルティーが課される。しかも正当な理由もないというような政策は、私は早急になくしていったほうがいいと思います。

 ただ、なくそうとすると高所得者優遇の声が起こって改革が極めて難しくなる理不尽な制度をつくった先輩たちの失策を完全に帳消しにするのは難しくて、昨年12月の年金部会で言ったように、「高在老というゆがんだ制度を政治に求められて過去につくってしまったから生まれた」傷痕がこれからも残るのですけれども、何度もチャレンジしては高所得者優遇だという声に潰された高在老の理不尽さの見直し、それは年金局には頑張ってもらいたいと思います。

 先ほどのマクロ経済スライドの調整期間のところは、私はトロイの木馬だよと言って、年金制度、いろいろなものを壊してしまうよという話をしたわけですけれども、これは年金局に頑張ってもらいたいと思っていますので、応援していきたいと思います。よろしく。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 原委員、お願いします。

○原委員 在職老齢年金についてなのですけれども、これも非常に悩ましいところであって、というのも改正に改正を重ねてきたところだと思うからです8ページにも書いてありますが、

 平成12年改正で、少子高齢化の進行などによりその支え手になってもらうという観点から支給停止の対象となったということで、その後、平成16年改正の財政フレームで被保険者の増加は将来の給付水準の向上につながるということになって、今年の令和6年の財政検証においても、労働参加の進展による支え手の増加が年金の将来の給付水準にプラスの影響をもたらしているとという理由が書いてありますけれども、また、現在においては、働く意欲のある高齢者の活躍を促進するということで、これは確かにそうだと思います。

 現在のところ、先ほども百瀬委員から指摘等ありましたが、高在老による就業抑制効果について、定量的な確認はされていないというようなこともありました。ただ、世論調査などからということで、、在職老齢年金、高在老の部分で、高齢者の就業意欲をそぎ、さらなる労働参加を妨げている例も存在しているということがございましたので、そういうことを踏まえるのであれば、できるだけ就業を抑制しない働き方に中立的な仕組みとする観点から在職老齢年金制度の見直しを検討するという方向性はいいのではないかと思います。

 あとは標準報酬月額の上限について、この間も申し上げたのですけれども、グラフのところです。資料3の5ページにあるように上限である65万円以上の割合が厚生年金保険については少しいびつな感じがしています。実際の負担能力に応じた保険料負担ということも、ここで検討してもよいのではないかと思っております。

 具体的には12ページや14ページにお示ししていただいたところになるかと思いますが、この辺りは今後の検討ということかと思いますけれども、そういったところでどこかのラインで、案1なり案2なりで考えるかと思いますが、この辺は決めていただきながら、標準報酬月額の上限については見直しということで進めていただければと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 武田委員、お願いします。

○武田委員 ありがとうございます。

 在職老齢年金制度は、最終的に撤廃すべきと考えます。仮に途中経過として、段階を設けるとしても、撤廃の方向性は示すべきと思います。

 日本では長年デフレが課題でしたが、明らかにマクロ経済環境は変わってきています。今後の経済成長を考えますと、労働資本、全要素生産性の上昇という供給力の向上が課題になります。資料で御説明いただいたミクロの視点でも、業界の声として、就労調整につながる事例も出ているという報告があり、あまり悠長に構えていられない状況との実感を改めて持ちました。

 こうした環境変化を踏まえ、以前より申し上げているとおり、様々な制度を働き方に中立なものに見直す方向性を早急に示す必要があると思います。働き方に中立にしていくという原則やフィロソフィーに基づき政策の予見可能性を高めることで、人々の行動や就労の慣行が変わっていくことが重要と思います。

 最終的に就労が増加する、ないしは就業者数の減少が和らぐことになれば、年金財政にとってもプラスになります。この点は動学的に捉えて考えるべきと思います。

 同時に所得再分配機能はもちろん重要で、別途対応を考えていくことが必要と思います。年金の中で全て閉じた議論になりがちですが、他の委員も若干名おっしゃったとおり、税制も含めてこの点を考えていく必要があると考えます。政府としては、全体最適でぜひ議論、検討をしていく必要があると思います。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございました。

 それでは、玉木部会長代理、お願いします。

○玉木部会長代理 私は、この2つの論点、在老と標準報酬につきましては、社会保険あるいは年金制度の原理原則に立ち返って考えてみたいと思います。

 まず在老でございますけれども、何人かの方から御指摘のとおり、原理としておかしいというものでございます。しかも実際問題として、資料にもございますとおり、2013年には25.5万人だった支給停止の方が、今やほぼ倍になっているわけでございまして、おかしいという気持ちを強くお持ちの方がどんどん増えているといった点にも十分に注意する必要があるかと思います。

 よく在老の弊害としまして、労働供給に対する非中立性あるいは就業の妨げになるといったことがしばしば指摘されます。この点に関連しまして、資料2の8ページ中ほどに、現在のところ65歳以上の在職老齢年金制度による就業抑制効果については、実証研究に基づく定量的な確認はされていないとあります。それはそうだろうとは思いますけれども、しかし、就業抑制だけが在老という仕組みの弊害かといえば、そんなことは全くありません。在老の仕組みを知った国民は、不可解あるいは理不尽だという印象を持ちます。そうすると、これは年金制度全体についてよく分からないという印象につながります。説明を聞いてよく分からない制度を信認する人はいるでしょうか。いないと思います。すなわち、在老によって国民の年金制度全体に対する素朴な信認が傷ついているのではないでしょうか。これは非常に大きな弊害と言えると思います。

 つい15年かそこら前までは、65歳以上で月に40万円、50万円、こういった収入がある方は恵まれた方であるという認識も可能であったでしょうし、そうした方には我慢していただく、あるいは在老の廃止は高収入者の優遇ではないかという指摘がありましたけれども、こういったものにある程度の説得力はあったかもしれません。しかし、今や状況は非常に大きく変化しております。企業は、かつてとはさま変わりに、スキルを要する現場のたくみとも言うべき方々には少しでも長く働いてほしいと切実にお思いだと思います。こういう求められる方、企業にとって限界生産性の高い方に相応の報酬が伴うことは当たり前でございます。

 そうなると、今、日本の平均的な年収は500万円前後だと思いますけれども、それに届くあるいは超える方が65歳を過ぎてもかなりの程度いるということは当然考えられるわけでございまして、そうなりますと、言わばある程度スキルをお持ちの普通の庶民が支給を停止されるということになっていきます。これはもうどう見ても不可解、理不尽でございますので、先ほど申し上げたように信認が傷つくわけでございます。

 資料の7ページには産業界の方々の切実な声がまとめられておりますけれども、このようなことをおっしゃる経営者の皆さん、あるいはその経営者の皆さんが日々接している労働者の皆さんが、年金制度についてどうお思いになるでしょうか。我々はよく考える必要があるだろうと思います。

 何より大事なのは、国民の年金制度に対する信認を守ることです。そのためには、国民にシンプルで強いメッセージをなるべく早く発することが必要だろうと思います。すなわち、不可解な制度を廃止するということが最善の道ではないかと思います。

 今回、基準額の引上げの場合、たとえ大幅にやったとしましても、不可解な仕組み自体は残ります。そうすると国民は、政府は不可解な仕組みを残した、やはり年金はどこかおかしい、この先どうなるか分かったものではないというふうに受け取るのではないでしょうか。すなわち、制度への信認は傷つきます。高収入者優遇だからけしからんなどという、私に言わせれば視野の狭い議論にこだわることなく、国民の年金制度に対する素朴な信認を守るという観点から、この問題は考えるべきかと思います。

 標準報酬につきましては、私は今回の資料で、薄々知ってはいたけれどもびっくりしたのは、男性では上限が最頻値になっているということでございます。これはもう応能負担の原理から大きく大きく逸脱していると言わざるを得ません。もちろんこうなったことにはそれなりの経緯あるいはお考えがあってのことだろうと思いますけれども、現在の状況からすると、基本となっているルールから変えるというのは妥当な御反応ではないかと思います。

 もちろん上限を引き上げた結果、あまりに大きな、国民の受け止め方が害されてしまうような大きなジャンボ年金とでもいうようなものになるのであれば話は別でございますけれども、今回の案でいきますと、98万円まで引き上げても年間20万円とか40万円とかそういうオーダーの変化でございますので、人々の信認を害するようなジャンボ年金にはならないのではないかなということでございます。

 私としては、今回の年金制度改正におきましては、原理原則に立ち返るという観点から、在老と標準報酬をセットで国民に御説明していくことが、行く行くは長期的には信認の向上につながるのではないかと考えるところでございます。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 一通り皆様から御意見をいただきましたが、追加で何かございます方はいらっしゃいますでしょうか。

 是枝委員、どうぞ。

○是枝委員 権丈委員から、標準報酬月額の上限引上げが難しい場合にベンドポイント方式を取ってはという御意見がありましたが、私はこれに反対いたします。ベンドポイント方式を取る場合、既裁定者に対して報酬比例年金を減らすということは難しいと思いますので、今後の新規裁定者のみベンドポイント方式が適用されるようなことになろうかと思います。それは、求める形としては、既に支給されている人に対しては年金が減額されず、これから支給される人にだけルールを変更することになりますので、こういった形は反対です。

 以上です。

○菊池部会長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。ございませんか。よろしいですか。

 ありがとうございます。

 後半部分、2つの論点につきましても、様々な御意見をいただきましてありがとうございます。

 在職老齢年金制度につきましては、消極論、慎重論もいただきましたが、多くの皆様からは、廃止、縮小の方向での御意見をいただけたのかなと思ってございます。その中でも、廃止につきましても、将来的な廃止を見据えてという御意見も複数いただいていたかと思います。その具体的な基準等については、引き続き事務局で検討していただくことになろうかと思います。

 標準報酬月額の上限については、おおむね引上げの方向で賛成の御意見をいただけたかと思います。中には段階的にといった条件を述べられた御意見もあったかと思いますが、方向性としてはおおむね一致したように思います。こちらも具体的な基準をどうするかという議論もございますし、また、複数、この2つの論点をセットでというような御意見もあったかと思います。そういったものも含めて、事務局で取扱いを検討していただきたいということです。

 また、今のベンドポイント方式もありましたが、それ以外にも幾つも御意見を委員からいただいていますので、それも事務局で検討をお願いしたい。今後に向けてというものもございましたが、御検討、整理をお願いしたいと思います。

 以上、皆様からいただいた御意見を基に、また部会での取扱いを整理させていただきたいと思ってございます。

 どうもありがとうございます。

 それでは、以上、本日予定しておりました議事は終了とさせていただきます。

 今後の予定につきまして、事務局からお願いします。

○総務課長 本日は、長時間にわたりありがとうございました。

 次回の年金部会は、来週12月3日火曜日の14時から、場所は本日と同じ全国都市会館を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○菊池部会長 それでは、本日の審議は終了いたします。

 大変長時間にわたりまして、御多忙の中、御議論していただきまして、どうもありがとうございました。

 

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