意見陳述書 原告 横内 康隆 私は、この裁判の原告団団長の横内廣隆です。法政大学には1962年に書紀として嘱任、以後、39年間在職しました。 表記の年金制度(退職金制度とは別の)は、1962年に発足してすでに五十年を超えています。この年、適格年が誕生しましたが、学校法人は法人税の対象外であり、税制上の制約がなかったので、本学は自社年金を設立しました。基金への拠出は、全額企業負担がー般的でしたが、学校法人(以下、「法人」)が六、教職員が四の割合で負担し、なお、退職一時金のかなりの部分を減額して年金に備えたと聞いています。しかし他方で、法人は原始的過去勤務債務(制度発足時に過去20年の勤務に遡及適用した期間についての拠出金債務)を拠出しませんでした(永久債却方式:利子部分のみ拠出)。 教育機関である大学は、戦後十数年を経て志望者の急激な増大に直面していましたが、国は、その困難な対応に正面から立ち向かうことなく、この受皿を私学が担うことになりましたが、教育の内容としては、マスプロ教育で切り抜けようとするものでした。この現象は施設の大型化などにより、一見、経営の充実のように写りましたが、内実は悲惨なもので、当時のはげしいインフレの下で学費の値上げもままならない(激しい「学費値上げ反対闘争」により)事情を抱えていました当時、このような先が見えない時期に設立された年金に、明日の糧に応えられなくても何かで応えようとする「法人の誠意」に感激したものです。本件年金制度は、このようにして、教職員の将来の生活への安定を約束することで、教職員の人材を確保してきたのです。 年金受給者の多くは、前述した時期に大学を支えてきた教職員であり、その後、国の公費助成を要求する運動、教学改革では複数キャンパスの開設など、教職員は、学生・卒菓生と父母と力を合わせ実現してきました。 ところがその後法人は、1996年の改定では、バプル崩壊の影響に配慮した制度改革を他の企業年金に倣って行い、1999年の制度の改定では、多くの規程改悪とともにはじめて年金受給者の給付減額に踏み切りました。受給者は年金運営の当事者ではなく、話し合う場もなく、一方的な提案の前に右往左往するしかありませんでした。法人はこの時、年金財政の検討を長い間怠り、過去勤務債務の累積を放置してきたことを反省し、今後受給者の年金を減額することほないことを表明しました。 また、減額実施に際して法人は総長声明を発し、受給権は厳粛に守られるべき権利であり、年金制度の安定強化について宣言しています。 しかし、その後法人は、その声明や約束を反故にする年金受給額減額を繰り返し企図し、ついに2011年4月から本件年金減額を実施するに至りました,それも10年後には更なる減額が想定されています。しかしこれは、前回の減額改定の経緯に反するとともに、過去勤務債務の完全償却など、法人の基金充足責任をないがしろにするものです。そして、今日まで生涯をかけて法政大学を支えてきた教職員の誠意と努力を根底から否定し、その権利を奪うものです。私たちは、この措置が如何に不当、不法であるかを争い、年金制度を守っていく所存です。これまではルールのない所で争ってきましたが、やっと対等に争うことのできる場に立ちましたので、公正な裁定をお願いいたします。

 

団体