意見陳述書

2012年12月17日

 

 原  告  河 原 由 治

 

1 私は、この裁判の原告団事務局を担当している河原由治です。法政大学には1964年に就任し、退職する2002年まで38年間在籍しておりました。法政大学は2011年4月より本件退職年金減額を実施しておりますが、私たち原告はこの減額実施に当初から反対しておりました。何故、私たちがこの年金減額に反対しているのか、法政大学年金制度の内容に触れながら述べることにします。

2 法政大学年金は、「法政大学に勤務する専任教職員が安んじて職務に専念できるようにすることを期し、その退職後の生活を保障することを目的とする」(「年金規程第1条」)として、1962年4月1日に発足した私的な企業年金制度であります。この年金制度は採用された専任教職員全員が加入するもので、加入者側の1000分の40、法人側の1000分の60の拠出金とその運用益で成っています。私たち受給者にとって、拠出金の1000分の40は在籍期間中に長年にわたり給与と夏季・冬季手当から拠出してきたもので、いわば私有財産に当たります。1000分の60は法人からの賃金の後払いであります。

  年金規程には「本制度実施以前又は改定以前の教職員の拠出金の不足額については、別に定める基準により本法人がこれを負担する」(第28条1項)とあり、同2項には「再設計に際し新たに発生する債務については第一拠出金と基金の運用収益で負担する」と定めております。ところが法人は、1996年4月の改定時に78億円あった過去勤務債務の内、30億円については20年で特別償却しましたが、48億円については未償却のままです。1999年には第1回目の減額を実施したのですが、その後、未償却過去勤務債務は増大し、年金財政は改善しなかったのであります。その主要因は累積した未償却過去勤務債務の無責任な放置であって、年金規程を遵守して基金充足責任を果たさなかった法人の責任であります。

ところが、今回実施されている本件退職年金減額は、過去勤務債務の償却と受給者減額を抱き合わせにしたもので、2009年に否決された「20年漸減案」の10年間の実施であります。ところが「20年漸減案」の『償却ルール』『第二拠出金』は廃止され、10年後に問題を先送りしたもとなっております。法政大学年金制度を維持し、継続する手立てが大きく後退しているばかりか、10年後の再々減額を前提としたこのような減額実施を私たちは認めることはできません。

3 私たち年金受給者は、退職時の年金契約により生活設計を立て、ささやかな日々の生活を送っているものであります。漸減方式は一見、受給者の生活に配慮したかに見えますが、老いへの不安を抱えながら生活している私たちにしてみれば、その不安感を一層駆り立てるものであります。年金受給額が半額である遺族への減額はより深刻なものがあります。このような減額実施はあってはならないものであると私たちは強く考えております。

4 私たち年金受給者は退職時の「年金証書」により受給額を確認しております。法人側は今回の減額案提示の説明で「受給権は重い」と再三説明していましたが、「受給権が重い」と認識すればこのような私たちの財産権を侵害し、契約に違反した減額案の提示はできなかったはずであります。

また、3分の2をわずか3名上回っただけで、300名もの他の受給者の意志に反するものです。

今回の減額実施はこれらのことを全く無視するもので、私たちは断じて認めることはできません。公正な裁定をお願いするものです。

以上

 

 

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